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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】神経変性疾患のためのネットワーク法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20220104BHJP
   A61B 5/374 20210101ALI20220104BHJP
   A61B 5/384 20210101ALI20220104BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20220104BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220104BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/374
A61B5/384
A61B5/055 380
G06N20/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021512400
(86)(22)【出願日】2018-09-05
(85)【翻訳文提出日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018073906
(87)【国際公開番号】W WO2020048593
(87)【国際公開日】2020-03-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518244507
【氏名又は名称】ゲンティング タークス ダイアグノースティク センター エスディエヌ ビーエイチディ
【氏名又は名称原語表記】GENTING TAURX DIAGNOSTIC CENTRE SDN BHD
【住所又は居所原語表記】24th Floor,Wisma Genting,Jalan Sultan Ismail,Kuala Lumpur,50250,Malaysia
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィシック,クロード ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】シェルター,ビョルン オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ソマーレイド,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】ヴクサノビッチ,ヴェスナ
(72)【発明者】
【氏名】スタッフ,ロジャー トッド
(72)【発明者】
【氏名】アラン,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】モアソン,スザンナ マリー
(72)【発明者】
【氏名】ティー,リプ ジン
【テーマコード(参考)】
4C096
4C127
【Fターム(参考)】
4C096AA03
4C096AC01
4C096AD14
4C096DC24
4C127AA03
4C127GG01
4C127GG15
4C127HH13
(57)【要約】
【課題】神経認知障害の調査におけるネットワーク法の用途に関する。
【解決手段】神経薬理学的介入に対する患者応答を決定する方法、1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定する方法、及びそれらのためのシステム。1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定する方法であって、患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るステップ;少なくとも部分的に得られたデータに基づきネットワークを作成するステップであって、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、ネットワークは、患者の脳内の電気活動の流れの指標となる、ステップ;それぞれのノードについて、ノードに入る連結の数及び/又は強度並びにノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するステップ;並びに計算された差を使用して、1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定するステップを含む方法。
【選択図】図41
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経薬理学的介入に対する患者応答を決定する方法であって、
神経薬理学的介入前に複数の患者から構造神経学的データを得るステップであって、前記構造神経学的データは、複数の皮質領域の物理的構造の指標となる、ステップ;
脳の皮質領域に対応する複数の構造ノードを割り当てること;及び
少なくとも部分的に前記構造神経学的データの対応データに基づき前記構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により前記構造神経学的データから第1の相関行列を作成するステップ;
神経薬理学的介入後に前記複数の患者からさらなる構造神経学的データを得るステップであって、前記さらなる構造神経学的データは、前記複数の皮質領域の物理的構造の指標となる、ステップ;並びに
少なくとも部分的に前記さらなる構造神経学的データの対応データに基づき前記構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により前記さらなる構造神経学的データから第2の相関行列を作成するステップ
を含み、
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することであって、それにより前記神経薬理学的介入に対する患者応答を決定すること
を含む方法。
【請求項2】
前記物理的構造は、皮質厚及び/又は表面積である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれのペアワイズ相関についてp値を決定し、有意水準と比較し、前記有意水準未満のp値のみを使用して前記対応する相関行列を作成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することは、前記第1の相関行列における逆相関の数及び/又は密度を前記第2の相関行列における逆相関の数及び/又は密度と比較することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脳の皮質領域に対応する前記複数の構造ノードを割り当てることは、同種又は非同種脳葉に対応する構造ノードを含有する群を定義することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することは、異なる構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することは、前頭葉並びに頭頂葉及び後頭葉中にそれぞれ局在する構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者は、神経認知疾患と診断されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記神経薬理学的介入は、疾患修飾医薬であり、任意にタウ凝集阻害剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記神経薬理学的介入は、対症療法である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記神経薬理学的介入は、疾患修飾医薬であり、前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列の前部及び後部脳領域間の相関の数及び/又は密度の低減により効能を確立する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
磁気共鳴画像法を介して前記構造神経学的データを得る、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定する方法であって:
前記患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るステップ;
少なくとも部分的に前記得られたデータに基づきネットワークを作成するステップであって、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、前記ネットワークは、前記患者の前記脳内の前記電気活動の流れの指標となる、ステップ;
それぞれのノードについて、前記ノードに入る連結の数及び/又は強度並びに前記ノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するステップ;並びに
前記計算された差を使用して、1つ以上の神経障害を発症する前記患者の見込みを決定するステップ
を含む方法。
【請求項14】
前記ネットワークは、再正規化部分有向コヒーレンスネットワークである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脳内の電気活動の指標となる前記データは、脳波データである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記脳波データは、β帯域脳波データである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者の感受性を決定することは、機械学習分類器を使用して実施する、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも部分的に前記ノードの状態に基づきヒートマップを生成するステップであって、前記ヒートマップは、前記患者の前記脳内のシンクとして定義されるノード及びソースとして定義されるノードの局在及び/又は強度の指標となる、ステップをさらに含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ノードの前記状態を使用して、シンク及びソースに対応する前記脳内のノードの前記局在及び/又は強度における左右非対称の程度の指標を導出するステップをさらに含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記神経障害は、神経認知疾患であり、任意にアルツハイマー病である、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較すること、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較することにより、1つ以上の神経障害に対する前記患者の感受性を決定する、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値を超過する場合、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値を超過する場合、患者を感受性のリスクが高いと決定する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するためのシステムであって、
神経薬理学的介入前に複数の患者から構造神経学的データを得るように構成され、前記構造神経学的データは、複数の皮質領域の物理的構造の指標となるデータ収集手段;
脳の皮質領域に対応する複数の構造ノードを割り当てること;及び
少なくとも部分的に前記構造神経学的データの対応データに基づき前記構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により前記構造神経学的データから第1の相関行列を作成するように構成される相関行列作成手段
を含み、
前記データ収集手段は、神経薬理学的介入後に前記複数の患者からさらなる構造神経学的データを得るようにも構成され、前記さらなる構造神経学的データは、前記複数の皮質領域の物理的構造を示し;
前記相関行列作成手段は、
少なくとも部分的に前記さらなる構造神経学的データの対応データに基づき前記構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により前記さらなる構造神経学的データから第2の相関行列を作成するようにも構成され、
前記システムは、以下のいずれか:
前記第1の相関行列及び第2の相関行列を提示するための表示手段;又は
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較するための比較手段であって、それにより前記神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するための比較手段
をさらに含むシステム。
【請求項24】
前記物理的構造は、皮質厚及び/又は表面積である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
それぞれのペアワイズ相関についてp値を決定し、前記p値を有意水準と比較するように構成される検証手段をさらに含み、前記相関行列作成手段は、相関行列を作成する場合に、前記有意水準未満のp値のみを使用するように構成される、請求項23又は24に記載のシステム。
【請求項26】
前記比較手段は、前記第1の相関行列における逆相関の数及び/又は密度を前記第2の相関行列における逆相関の数及び/又は密度と比較するように構成される、請求項23~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記脳の皮質領域に対応する前記複数の構造ノードを割り当てることは、同種又は非同種脳葉に対応する構造ノードを含有する群を定義することをさらに含む、請求項23~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記比較手段は、異なる構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することにより前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較するように構成される、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記比較手段は、前頭葉並びに頭頂葉及び後頭葉中にそれぞれ局在する構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することにより前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較するように構成される、請求項27又は28に記載のシステム。
【請求項30】
前記患者は、神経認知疾患と診断されている、請求項23~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記神経薬理学的介入は、疾患修飾医薬であり、任意にタウ凝集阻害剤である、請求項23~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記神経薬理学的介入は、対症療法である、請求項23~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記神経薬理学的介入は、疾患修飾医薬であり、前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列の前部及び後部脳領域間の相関の数及び/又は密度の低減により効能を確立する、請求項23~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
磁気共鳴画像法を介して前記構造神経学的データを得る、請求項23~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
1つ以上の神経障害に対する患者の感受性を決定するためのシステムであって:
前記患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るように構成されるデータ収集手段;
少なくとも部分的に前記得られたデータに基づきネットワークを作成するように構成され、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、前記ネットワークは、前記患者の前記脳内の前記電気活動の流れの指標となる、ネットワーク作成手段;
それぞれのノードについて、前記ノードに入る連結の数及び/又は強度並びに前記ノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するように構成される差計算手段;並びに以下のいずれか:
前記計算された差の表現を表示するように構成される表示手段;又は
前記計算された差を使用して、1つ以上の神経障害に対する前記患者の感受性を決定するように構成される決定手段
を含むシステム。
【請求項36】
前記ネットワークは、再正規化部分有向コヒーレンスネットワークである、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記脳内の電気活動の指標となる前記データは、脳波データである、請求項35又は36に記載のシステム。
【請求項38】
前記脳波データは、β帯域脳波データである、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
決定手段は、機械学習分類器を使用して1つ以上の神経障害に対する前記患者の感受性を決定するように構成される、請求項35~38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
少なくとも部分的に前記ノードの状態に基づきヒートマップを生成するように構成され、前記ヒートマップは、前記患者の前記脳内のシンクとして定義されるノード及びソースとして定義されるノードの局在及び/又は強度の指標となるヒートマップ作成手段を含む、請求項35~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記ノードの状態を使用して、シンク及びソースに対応する前記脳内のノードの前記局在及び/又は強度における左右非対称の程度の指標を導出するように構成される非対称マップ作成手段をさらに含む、請求項35~40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記神経障害は、神経認知疾患であり、任意にアルツハイマー病である、請求項35~41のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記決定手段は、後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較し、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較する、請求項35~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記決定手段は、後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値を超過する場合、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値を超過する場合、患者を感受性のリスクが高いと決定する、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
コンピュータ上で実行される場合、前記コンピュータに請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施させる実行可能コードであって、非一時的ストレージ媒体上に保存される実行可能コードを含むコンピュータプログラム。
【請求項46】
コンピュータ上で実行される場合、前記コンピュータに請求項13~22のいずれか一項に記載の方法を実施させる実行可能コードであって、非一時的ストレージ媒体上に保存される実行可能コードを含むコンピュータプログラム。
【請求項47】
神経薬理学的介入に対する前記患者応答が、神経認知疾患の治療における医薬の効能を評価するための臨床試験の状況で決定され、前記医薬の前記効能は、全体的又は部分的に前記患者群応答と前記介入を受けなかった比較群との比較に基づき評価される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法、又は請求項23~34のいずれか一項に記載のシステム、又は請求項45に記載のコンピュータプログラム。
【請求項48】
神経障害に対する神経薬理学的介入に対する患者応答を決定する方法であって、前記神経薬理学的介入前の:
(a)前記患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るステップ;
(b)少なくとも部分的に前記得られたデータに基づきネットワークを作成するステップであって、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、前記ネットワークは、前記患者の前記脳内の電気活動の流れの指標となる、ステップ;
(c)それぞれのノードについて、前記ノードに入る連結の数及び/又は強度並びに前記ノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するステップ;並びに
(d)前記計算された差を使用して、前記神経障害に関する前記患者の状態を決定するステップ;
(e)前記神経薬理学的介入後にステップ(a)~(d)を繰り返すステップであって、前記神経障害に関する前記患者のさらなる状態を決定する、ステップ;並びに
(f)前記第1の状態及び前記第2の状態に基づき、前記神経薬理学的介入に対する前記患者応答を決定するステップ
を含む方法。
【請求項49】
(i)前記ネットワークは、再正規化部分有向コヒーレンスネットワークである、及び/又は;
(ii)前記脳内の電気活動の指標となる前記データは、脳波データであり、任意にβ帯域脳波データである、及び/又は;
(iii)機械学習分類器を使用して前記患者の感受性を実施する、及び/又は;
(iv)前記方法は、少なくとも部分的に前記ノードの状態に基づきヒートマップを生成するステップをさらに含み、前記ヒートマップは、前記患者の前記脳内のシンクとして定義されるノード及びソースとして定義されるノードの局在及び/又は強度の指標となる、及び/又は;
(v)前記方法は、前記ノードの状態を使用して、シンク及びソースに対応する前記脳内のノードの前記局在及び/又は強度における左右非対称の程度の指標を導出するステップをさらに含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記神経障害は、神経認知疾患であり、任意にAD、前駆期AD、又はMCIから選択される、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
請求項48~50のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合されるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、神経認知障害の調査におけるネットワーク法の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
内部連結したサブユニットの複雑ネットワークとしてのヒト脳のモデルは正常脳組織の理解を改善しており、それにより神経障害における機能的変化に対処することが可能になっている。これらのサブユニットは、いわゆる脳モジュール、すなわち、領域内の高密度の連結を有し、群間の連結は低密度である領域の群を構成する。脳のモジュラー組織は、多様な認知及び行動機能を支持する空間的に離れたニューラルプロセス間の効率的な統合を支えることが示唆されている。脳ネットワークの変化は、アルツハイマー病(AD)及び行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)を有する患者の同定を支援し得る。
【0003】
例えば、領域容積の変更が、T1重み付き磁気共鳴画像(MRI)のインビボ計測から導出された皮質領域容積又は厚さのペアワイズ相関が試験された健常及び疾患における構造ネットワークの研究を介して統合失調症患者において同定された。このアプローチは、統合失調症患者における領域容積の変更を明らかにすることにより臨床的関連を示している。しかしながら、皮質厚(CT)及び表面積(SA)の積を表す容積計測は、根本的な差を混同し得る。例えば、皮質厚の変化の検討は、いかに疾患が皮質層内の細胞のサイズ、密度、及び配置を変更するかについての洞察を提供し得る。他方、表面積の変化は、疾患脳のカラムの群間の機能的統合の障害に関する情報を提供し得る。
【0004】
既に、神経薬理学的介入に対する効果をモニタリングするため、全脳又は脳葉容積が使用されている。しかしながら、これは比較的粗いレベルの分析である。
【0005】
脳の理解におけるネットワークの使用のさらなる例として、国際公開第2017/118733号(その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)に考察されるとおり、患者から収集されたEEGデータを使用して脳内の電気の流れの強度及び方向性を検出することができる。
【0006】
表題“Organisation of cortical thickness networks in Alzheimer’s disease and behavioural variant frontotemporal dementia across brain lobes”のポスターが、6th Cambridge Neuroscience Symposium,Neural Networks in Health and Disease September 7-8 2017においてVuksanovic et al.により提示された。
【0007】
表題“Divergent changes in structural correlation networks in Alzheimer’s disease and behavioural variant frontotemporal dementia”のさらなるポスターが、ARUK Conference 2018,20-21 March,London,UKにおいてVuksanovic et al.により提示された。
【0008】
表題“Modular organisation of cortical thickness and surface area structural correlation networks in Alzheimer’s disease (AD) and behavioural variant frontotemporal dementia (bvFTD)”のプレゼンテーションが10th SINAPSE Annual Scientific Meeting 25 June 2018 EdinburghにおいてVuksanovic,Vにより示された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
第1の態様において、本発明は、神経薬理学的介入に対する患者応答を決定する方法であって、
神経薬理学的介入前に複数の患者から構造神経学的データを得るステップであって、前記構造神経学的データは、複数の皮質領域の物理的構造の指標となる、ステップ;
脳の皮質領域に対応する複数の構造ノードを割り当てること;及び
少なくとも部分的に構造神経学的データの対応データに基づき構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により構造神経学的データから第1の相関行列を作成するステップ;
神経薬理学的介入後に複数の患者からさらなる構造神経学的データを得るステップであって、前記さらなる構造神経学的データは、複数の皮質領域の物理的構造の指標となる、ステップ;並びに
少なくとも部分的にさらなる構造神経学的データの対応データに基づき構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
によりさらなる構造神経学的データから第2の相関行列を作成するステップ
を含み、
第1の相関行列及び第2の相関行列を比較することであって、それにより神経薬理学的介入に対する患者応答を決定すること
を含む方法を提供する。
【0010】
本発明の任意選択の特徴部を目下記載する。これらは単独で又は本発明の任意の態様との任意の組合せで適用可能である。
【0011】
相関行列は、次いで行列により表すことができる構造相関ネットワークを作成することを意味し得る。
【0012】
一実施形態において、患者応答は、例えば、神経認知疾患の治療における医薬の効能を評価するための臨床試験の状況におけるものであり得る。したがって、患者群(複数の患者)は疾患と診断された治療群であり得、又は対照(「正常」)群であり得る。最終的に、医薬の効能は、全体的又は部分的に本発明により決定された患者群応答に基づき評価することができ、任意に、介入を受容しなかった比較群と比較することができる。
【0013】
計測され、又は得られる物理的構造は、皮質厚及び/又は表面積であり得る。皮質厚及び/又は表面積についての値は、構造神経学的データから得られる平均値であり得る。構造神経学的データは、それぞれの患者について磁気共鳴画像法(MRI)データ又はコンピュータ断層撮影データから収集することができる。構造神経学的データ及びさらなる構造神経学的データは、異なる時点において得る。本明細書において考察されるとおり、構造神経学的データは、それぞれの患者について磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影、又は陽電子放出断層撮影を介して得ることができる。これらの技術は、当業者にそれ自体周知である-例えば、Mangrum,Wells,et al.Duke Review of MRI Principles:Case Review Series E-book.Elsevier Health Sciences,2018、及び“Standardized low-resolution electromagnetic tomography(sLORETA):technical details”Methods Find Exp.Clin.Pharmacol.2002:24 Suppl.D:5-12;Pascual-Marqui RDなど参照。
【0014】
複数の皮質領域は、少なくとも60個、又は少なくとも65個であり得る。例えば、68個である。皮質領域は、例えば、Desikan-Killianyアトラス(Desikan et al.2006)により提供されるものであり得る。
【0015】
p値は、複数の対象にわたりそれぞれのペアワイズ相関について決定することができ、有意水準と比較することができ、有意水準未満のp値のみを使用して対応する相関行列を作成する。構造ノードのペア間のペアワイズ相関の決定において、それぞれの構造ノードの対応する値を参照値と比較し、それらの共変量を決定することができる。有意水準は、アルファ(「α」)と称することができる。
【0016】
第1の相関行列及び第2の相関行列を比較することは、第1の相関行列における逆相関の数及び/又は密度を第2の相関行列における逆相関の数及び/又は密度と比較することを含み得る。比較において、同じ葉に対応する構造ノードの群を同定することができ、第1及び第2の相関行列間の比較は同じ葉を利用し得る。
【0017】
脳の皮質領域に対応する複数の構造ノードを割り当てることは、同種又は非同種脳葉に対応する構造ノードを含有する群を定義することをさらに含み得る。第1の相関行列及び第2の相関行列を比較することは、異なる構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することを含み得る。別の表現では、第1及び第2の相関行列を比較することは、非同種である構造ノードのペア間の相関を比較することを含み得る。
【0018】
一部の例において、第1の相関行列及び第2の相関行列を比較することは、前頭葉中(前部ノード)並びに側頭及び後頭葉(後部ノード)中にそれぞれ局在する構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することを含み得る。有効な神経薬理学的介入の例において、前部及び後部ノード間の逆相関の数及び/又は密度が減少することが見出された。逆相関は、あるノードの萎縮が機能的リンクノードの肥大と関連する代償性リンク構築を示すと仮定されるため、逆相関の数及び/又は密度の減少は代償性リンクの数の減少を示すことが認識される。
【0019】
典型的には、神経認知疾患又は認知障害は、認知症を引き起こす神経変性障害、例えば、タウオパチーである。
【0020】
患者は、神経認知疾患、例えば、アルツハイマー病又は行動障害型前頭側頭型認知症と診断されていてよい。疾患は、軽度又は中等度アルツハイマー病であり得る。疾患は、軽度認知障害であり得る。しかしながら、本明細書に記載の本発明者らの知見は、他の神経認知疾患に対する適用性も有する。
【0021】
タウオパチー、及び他の神経認知疾患の診断基準及び治療は当該技術分野において公知であり、例えば、国際公開第2018/019823号、及びそれに引用される参照文献に考察されている。
【0022】
疾患は、行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)であり得る。bvFTDの診断基準及び治療は、例えば、国際公開第2018/041739号、及びそれに引用される参照文献に考察されている。
【0023】
本明細書において説明されるとおり、構造ネットワーク中の障害のトポロジーはそれら2つの病状(AD及びbvFTD)において異なり、両方とも正常な老化とは異なる。正常からの変化はグローバルな特徴であり、bvFTDにおける前頭-側頭葉及びADにおける側頭-頭頂葉に限定されず、両方のグローバル相関強度、特に逆相関により定義される非同種脳葉間連結度の増加の指標となる。
【0024】
これらの変化は機能的リンクノードにおける対応する障害を代償する、皮質厚及び表面積の協調的な増加を反映する、適応性のある特徴と思われる。効果は、bvFTDにおいては皮質厚ネットワークにおいて、ADにおいては表面積ネットワークにおいてより顕著であった。
【0025】
本発明者らは、両方の形態の認知症を正常高齢対照から区別する重要な変化が、病変に起因する障害の機能的適応又は代償に関連し得る前部及び後部脳領域を結びつける有意な逆相関ネットワークの出現であることを観察した。具体的には、逆相関は、あるノードの萎縮が機能的リンクノードの肥大と関連する代償性リンク構築の指標となると仮定され、逆相関の数及び/又は密度の減少は代償性リンクの数の減少の指標となることが認識される。
【0026】
したがって、神経薬理学的介入が有効である場合、ネットワーク組織が正常(非疾患)比較集団について観察されるものに戻されることが予測される。病態が十分に早期のステージにおいて治療される場合、ネットワーク組織は正常対照と完全に同等のものに戻され得る。したがって、本方法は、疾患修飾治療を対症療法(symptomatic treatment)から区別する客観的手段を提供し:対症療法では、異常ネットワークアーキテクチャが強調され、健常脳領域への(例えば)プリオン様疾患プロセスの伝播のリスクが実際に強調され得る。逆に、疾患修飾薬は逆方向で機能し、病変により罹患された領域の機能を正常化することにより相対的に軽い障害の脳領域からの代償性入力の必要性を低減させる。
【0027】
本明細書の開示に照らして、構造又はネットワーク組織の分析は臨床試験におけるより大きいパワーの提供において特に有用であり、それにより、より少ない対象の使用及びより短い治療時間を可能とすることが認識される。特に、疾患、例えば、軽度AD、軽度認知障害及び前軽度認知障害などにおいて、臨床試験エンドポイント(認知及び機能)は比較的低感度であり得、ゆえに多数の対象及び/又はより長い期間を要求する(国際公開第2009/060191号参照)。
【0028】
したがって、典型的には、神経薬理学的介入は、医薬介入である。
【0029】
神経薬理学的介入は、対症療法であり得る。このような化合物としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEl)が挙げられ、それらとしては、タクリン、ドネペジル、リバスチグミン、及びガランタミンが挙げられる。さらなる対症療法は、メマンチンである。これらの治療は、国際公開第2018/041739号に記載されている。
【0030】
上記で説明されるとおり、本発明者らは、代償性ネットワーク(そのような治療を受けた患者群に存在する非同種逆相関の数及び/又は密度)の増加を見出した。
【0031】
神経薬理学的介入は、対症療法的医薬ではなく疾患修飾医薬であり得る。これらの治療は、例えば、患者が積極的治療を中断した場合に生じるものに基づき区別することができる。対症療法薬剤は、基礎疾患プロセスに影響を与えずに疾患の症状を遅らせ、初期治療期間後のより長期間の機能低下の速度を変化させない(又は少なくとも改善しない)。中断後、患者が治療なしの状態に戻る場合、その治療は対症療法的であると判断される(Cummings,J.L.(2006)Challenges to demonstrating disease-modifying effects in Alzheimer’s disease clinical trials.Alzheimer’s and Dementia,2:263-271)。
【0032】
例えば、疾患修飾治療は、病原性タンパク質凝集の阻害剤、例えば、3,7-ジアミノフェノチアジン(DAPTZ)化合物であり得る。このような化合物は、国際公開第2018/041739号、国際公開第2007/110627号、及び国際公開第2012/107706号に記載されている。後者は、ロイコメチルチオニニウムビス(ヒドロメタンスルホネート)を記載しており、それはロイコメチルチオニニウムメシレート(LMTM;USAN名:ヒドロメチルチオニンメシレート)としても公知である。
【化1】
【0033】
これらの国際公開刊行物が規定するDAPTZ化合物に関するこれらの国際公開刊行物の全ての内容は、相互参照により具体的に含められる。
【0034】
LMTMによる治療は、代償性ネットワーク相関(特に非同種、正及び逆相関)を低減させることが示されている。
【0035】
神経薬理学的介入は疾患修飾医薬であり得、第1の相関行列及び第2の相関行列の前部及び後部脳領域間の相関の数及び/又は密度の低減により効能を確立することができる。
【0036】
したがって、有効な神経薬理学的介入(例えば、疾患修飾治療)の例において、前部及び後部葉間の逆相関の数及び/又は密度が減少することを結論づけることができる。
【0037】
本発明は、(例えば、「認知予備能(cognitive reserve)」を調査するための、)患者集団における、病変に起因する障害の機能的適応又は代償の同定に活用することもできる。本発明は、慣用の診断又は予後診断評価基準との組合せで使用することができる。これらの尺度としては、アルツハイマー病評価尺度の認知機能下位尺度(Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive subscale)(ADAS-Cog)、National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke-Alzheimer’s Disease and Related Disorders Association(NINCDS-ADRDA)、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4thEdn(DSMIV)、及び臨床的認知症尺度(CDR)の尺度が挙げられる。
【0038】
上記で説明されるとおり、神経薬理学的介入に対する患者応答を決定する方法を順次使用して神経薬理学的介入の臨床試験における異なる患者コホートを評価することができる。例えば、本方法は、患者群における神経薬理学的介入の有効性を決定する方法であり得る。本方法は、患者群をそれらの患者応答に従って(例えば、決定された相関/逆相関に関して)定義するために使用することができる。患者群は、神経薬理学的介入のそれらの事前使用に関して同定することができ、任意に、患者応答に適切なさらなる治療のために選択することができる。
【0039】
第2の態様において、本発明は、1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定する方法であって、
患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るステップ;
少なくとも部分的に得られたデータに基づきネットワークを作成するステップであって、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、ネットワークは、患者の脳内の電気活動の流れの指標となる、ステップ;
それぞれのノードについて、ノードに入る連結の数及び/又は強度並びにノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するステップ;並びに
計算された差を使用して、1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定するステップ
を含む方法を提供する。
【0040】
本発明者らは、(例えば)脳のEEGを使用する実に非常に短時間の分析を使用して1つ以上の神経認知疾患(例えば、AD)に対して感受性である患者を潜在的に同定することができることを示した。具体的には、このような個体(患者又は対象、この用語は互換的に使用される)は、後部葉中の相対的に多数の「シンク」、又は相対的に強いシンク、並びに側頭及び/又は前頭葉中の相対的に多数の「ソース」、又は相対的に強いソースを有し得る。見かけ上正常な又は前駆期症状の対象において、好ましい実施形態において、本方法は、そのようなリスクを決定するために一般に使用される精神測定評価基準よりも感受性であり得る。
【0041】
本発明の任意選択の特徴部を目下記載する。これらは単独で又は本発明の任意の態様との任意の組合せで適用可能である。
【0042】
1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みは、1つ以上の神経障害に対する患者の感受性と称することができる。本方法は、ノードを計算された差に基づきシンク又はソースのいずれかと定義する、それぞれのノードについての状態を定義するステップを含み得る。
【0043】
ネットワークは、再正規化部分有向コヒーレンスネットワーク(renormalized partial directed coherence network)であり得る。本方法のステップのいずれもオフラインで、すなわち、患者上の作動なしで実施することができる。例えば、データを得ることは、患者から既に記録されたデータをネットワーク上で受信することにより実施することができる。
【0044】
脳内の電気活動の指標となるデータは、脳波データであり得る。脳波データは、β帯域脳波データであり得る。脳内の電気活動の指標となるデータは、磁気脳波データ又は機能磁気共鳴画像法データでもあり得る。
【0045】
患者の感受性を決定することは、機械学習分類器を使用して実施することができる。例えば、マルコフモデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、又はニューラルネットワークである。
【0046】
本方法は、少なくとも部分的にノードの状態に基づきヒートマップを生成するステップであって、前記ヒートマップは、患者の脳内のシンクとして定義されるノード及びソースとして定義されるノードの局在及び/又は強度の指標となる、ステップを含み得る。定義されるノードのこの表現は、患者の感受性の決定を(例えば、人間工学的に)補助し得る。
【0047】
患者の感受性の決定において、頭頂葉及び/又は後頭葉内のソースの数及び/又は強度と、前頭及び/又は側頭葉内のシンクの数及び/又は強度との間で比較を行うことができる。1つ以上の神経変性疾患(特にアルツハイマー病)に対して感受性である患者は、後部葉中の相対的に高い強度のシンク、並びに側頭及び/又は前頭葉中の相対的に高い強度のソースを有することが実験的に確認された。
【0048】
本方法は、ノードの状態を使用して、シンク及びソースに対応する脳内のノードの局在及び/又は強度における左右非対称の程度の指標を導出するステップをさらに含み得る。
【0049】
神経障害は、アルツハイマー病であり得る神経認知疾患であり得る。
【0050】
1つ以上の神経障害に対する患者の感受性は、後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較すること、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較することにより決定することができる。後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値を超過する場合、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値(例えば、「対照」対象若しくは低リスクを有すると確立された対象、又はそれらの対象から得られた参照データ(例えば、病歴参照データ)に基づく)を超過する場合、患者を感受性のリスクが高いと決定することができる。別の表現では、及びより一般には、感受性に関する決定は、患者が脳のある領域中で脳の別の領域に対して多い及び/又は強いソース及び/又はシンクを有するか否かに基づき得る。例えば、側頭及び/又は前頭葉中に予測されるものよりも多い及び/又は強いソースが存在する場合、及び/又は患者が後部葉中に対照対象からのデータに基づき予測されるものよりも多い及び/又は強いシンクを有するか否かで、患者を神経変性障害のリスクがあると決定することができる。対照対象からのこのようなデータは、ベースライン評価後の長期モニタリングにより確立することができる。
【0051】
本発明者らは、対症療法が非投薬群と比較して前頭葉からの外向きの活動を増加させることをさらに観察した。
【0052】
この態様による本発明の方法は、任意の目的のための1つ以上の神経障害に対する対象の感受性の評価、検査、又は分類のために使用することができる。例えば、この検査のスコア値又は他の出力を使用して対象の精神状態又は病状を所定の基準に従って分類することができる。
【0053】
対象は、任意のヒト対象であり得る。一実施形態において、対象は、神経認知疾患若しくは障害、例えば、本明細書に記載の神経変性若しくは血管疾患の罹患が疑われる対象であり得、又はリスクがあると同定されていない対象であり得る。
【0054】
一実施形態において、本方法は、対象における認知障害、例えば、神経認知疾患の早期診断又は予後診断の目的のためのものである。
【0055】
疾患は、軽度から中等度のアルツハイマー病であり得る。
【0056】
疾患は、軽度認知障害であり得る。
【0057】
しかしながら、本明細書に記載の本発明者らの知見は、他の神経認知疾患への適用性も有する。例えば、疾患は、異なる認知症、例えば、血管性認知症であり得る。
【0058】
本方法は、任意に、例えば、画像法又は侵襲的若しくは非侵襲的バイオマーカー評価の他の方法に基づくさらなる診断ステップ又は介入を対象に通知するために使用することができ、そのような方法は当該技術分野においてそれ自体公知である。
【0059】
一部の実施形態において、本方法は、対象における神経認知障害のリスクを決定する目的のためのものであり得る。任意に、前記リスクは、さらなる因子、例えば、年齢、ライフスタイル因子、及び他の計測される身体的又は精神的基準を使用してさらに計算することができる。前記リスクは、「高」若しくは「低」の分類であり得、又は尺度若しくはスペクトルとして提示することができる。
【0060】
本明細書の開示から、1つ以上の神経障害を発症する見込みの評価に加え、同じ方法を使用して前記リスクを低減させ、及び/又は前記疾患を治療する疾患修飾治療の効能を評価する、すなわち、疾患又は障害の予防又は治療についての医薬の効能を評価することができることが明らかである。これは、任意に、本明細書に記載の臨床試験の状況におけるもの、例えば、プラセボ、又は他の正常対照との比較におけるものであり得る。
【0061】
具体的には、本明細書の開示は、本発明の方法(例えば、EEG技術に基づく)が対象に対する疾患インパクトの強力且つ高感度の評価基準を提供し得ることを示す。これは、現在利用可能な方法を使用して考えられるものよりも少数の対象の群(例えば、治療及び比較アームにおける200、150、100、又は50人以下)における、及び短い間隔(例えば、6、5、4、又は3ヶ月以下)にわたる、及び疾患の早期ステージ又は重症度の低い疾患(例えば、前駆期AD、MCI又はさらには前MCI)における疾患修飾治療の効能を実証する機会を開拓する。
【0062】
したがって、上記で考察されるとおり、本方法は、神経薬理学的介入の臨床試験における異なる患者コホートについて使用することができ、例えば、患者群(複数の患者)は、推定疾患修飾治療により治療される疾患(例えば、早期ステージ疾患)と診断された治療群と、プラセボにより治療される群であり得る。
【0063】
したがって、1つのさらなる態様において、第2の態様の方法ステップを使用して1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定するのではなく患者における疾患状態又は重症度を決定する。その状態は、順次、臨床管理又は臨床試験の一部としてモニタリングすることができる。
【0064】
したがって、本発明の1つのさらなる態様において、神経障害に対する神経薬理学的介入に対する患者応答を決定する方法であって、
神経薬理学的介入前の:
(a)患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るステップ;
(b)少なくとも部分的に得られたデータに基づきネットワークを作成するステップであって、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、ネットワークは、患者の脳内の電気活動の流れの指標となる、ステップ;
(c)それぞれのノードについて、ノードに入る連結の数及び/又は強度並びにノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するステップ;並びに
(d)計算された差を使用して、神経障害に関する患者の状態を決定するステップ;
(e)神経薬理学的介入後にステップ(a)~(d)を繰り返すステップであって、神経障害に関する患者のさらなる状態を決定する、ステップ;並びに
(f)前記第1の状態及び前記第2の状態に基づき(例えば、その2つを比較することにより)、神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するステップ
を含む方法が提供される。
【0065】
任意に、ステップ(e)及び(f)を繰り返し、後続の状態を使用して経時的に患者応答を決定する。
【0066】
したがって、第2の及びさらなる態様のそれらの方法(及び以下に考察される対応するシステム)は、臨床試験及び臨床管理の両方に使用することができる。臨床管理に関して、患者の脳内の電気活動(例えば、EEGを使用して評価)が「正常な」(すなわち、目下、診断未確定の)者において異常である高い確実性の程度(例えば、70%、80%、90%、又は95%の確率)は、認知症投薬治療の即時開始についての強い指標であり得る。EEGは、例えば、1、2、3、4、5、又は6ヶ月の間隔において使用して治療に対する応答をモニタリングすることもできる。逆に、異常EEGのより低い確率(例えば、30%、40%、50%、55%、又は60%)を有する者は、より接近して月1回、2ヶ月に1回、又は3ヶ月に1回の間隔において追跡することができる。障害に適切な他の手段によるさらなる検査、例えば、当該技術分野において公知のもの(例えば、アミロイド若しくはタウPET又はCSFに基づくバイオマーカーの評価)を任意に、本方法とともに使用することができる。
【0067】
第2の態様の方法に関する任意選択の特徴部は、この態様に準用される。
【0068】
第3の態様において、本発明は、神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するためのシステムであって、
神経薬理学的介入前に複数の患者から構造神経学的データを得るように構成され、前記構造神経学的データは、複数の皮質領域の物理的構造の指標となるデータ収集手段;
脳の皮質領域に対応する複数の構造ノードを割り当てること;及び
少なくとも部分的に構造神経学的データの対応データに基づき構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により構造神経学的データから第1の相関行列を作成するように構成される相関行列作成手段
を含み、
データ収集手段は、神経薬理学的介入後に複数の患者からさらなる構造神経学的データを得るようにも構成され、前記さらなる構造神経学的データは、複数の皮質領域の物理的構造を示し;
相関行列作成手段は、
少なくとも部分的にさらなる構造神経学的データの対応データに基づき構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
によりさらなる構造神経学的データから第2の相関行列を作成するようにも構成され、
システムは、以下のいずれか:
第1の相関行列及び第2の相関行列を提示するための表示手段;又は
第1の相関行列及び第2の相関行列を比較するための比較手段であって、それにより神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するための比較手段
をさらに含むシステムを提供する。
【0069】
本発明の任意選択の特徴部を目下記載する。これらは、単独で又は本発明の任意の態様との任意の組合せで適用可能である。
【0070】
相関行列は、次いで行列により表すことができる構造相関ネットワークを作成することを意味し得る。
【0071】
計測され、又は得られる物理的構造は、皮質厚及び/又は表面積であり得る。皮質厚及び/又は表面積についての値は、構造神経学的データから得られる平均値であり得る。構造神経学的データは、それぞれの患者について磁気共鳴画像法(MRI)データ又はコンピュータ断層撮影データから収集することができる。構造神経学的データ及びさらなる構造神経学的データは、異なる時点において得る。本明細書において考察されるとおり、構造神経学的データは、それぞれの患者について磁気共鳴画像法、コンピュータ断層撮影、又は陽電子放出断層撮影を介して得ることができる。これらの技術は、当業者にそれ自体周知である-例えば、Mangrum,Wells,et al.Duke Review of MRI Principles:Case Review Series E-book.Elsevier Health Sciences,2018、及び“Standardized low-resolution electromagnetic tomography(sLORETA):technical details”Methods Find Exp.Clin.Pharmacol.2002:24 Suppl.D:5-12;Pascual-Marqui RDなど参照。
【0072】
複数の皮質領域は、少なくとも60個、又は少なくとも65個であり得る。例えば、68個である。皮質領域は、例えば、Desikan-Killianyアトラス(Desikan et al.2006)により提供されるものであり得る。
【0073】
表示手段は、第1の相関行列及び第2の相関行列のそれぞれを表示部上に提供し得、それぞれの相関行列における相関値に、相関の相対的振幅又は強度に対応する色を付す。
【0074】
検証手段は、それぞれのペアワイズ相関についてのp値を決定し、それぞれのペアワイズ相関についてのp値を比較するように構成することができ、p値を有意水準と比較し得、相関行列作成手段は、相関行列を作成する場合に、補正有意水準未満のp値のみを使用するように構成することができる。有意水準は、アルファ(「α」)と称することができる。
【0075】
比較手段は、第1の相関行列における逆相関の数及び/又は密度を、第2の相関行列における逆相関の数及び/又は密度と比較するように構成することができる。比較において、同じ葉に対応する構造ノードの群を同定することができ、第1及び第2の相関行列間の比較は同じ葉を利用し得る。
【0076】
脳の皮質領域に対応する複数の構造ノードを割り当てることは、同種又は非同種脳葉に対応する構造ノードを含有する群を定義することをさらに含み得る。比較手段は、異なる構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することにより、第1の相関行列及び第2の相関行列を比較するように構成することができる。別の表現では、第1及び第2の相関行列を比較することは、非同種である構造ノードのペアを比較することを含み得る。
【0077】
比較手段は、前頭葉(前部ノード)並びに頭頂葉及び後頭葉(後部ノード)中にそれぞれ局在する構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することにより、第1の相関行列及び第2の相関行列を比較するように構成することができる。有効な神経薬理学的介入の例において、前部及び後部ノード間の逆相関の数及び/又は密度が減少することが見出された。逆相関は、あるノードの萎縮が機能的リンクノードの肥大と関連する代償性リンク構築の指標となると仮定されるため、逆相関の数及び/又は密度の減少は代償性リンクの数の減少の指標となることが認識される。
【0078】
一実施形態において、患者応答は、例えば、神経認知疾患の治療における医薬の効能を評価するための臨床試験の状況におけるものであり得る。したがって、患者群(複数の患者)は疾患と診断された治療群であり得、又は対照(「正常」)群であり得る。最終的に、医薬の効能は全体的又は部分的に本発明により決定された患者群応答に基づき評価することができる。
【0079】
第1の態様に関連して説明されるとおり、神経認知疾患は、一般に、認知症を引き起こす神経変性障害、例えば、タウオパチーである。
【0080】
患者は、神経認知疾患、例えば、アルツハイマー病又は行動障害型前頭側頭型認知症と診断されていてよい。疾患は、軽度又は中等度アルツハイマー病であり得る。疾患は、軽度認知障害であり得る。
【0081】
タウオパチー、及びそれらの障害の診断基準及び治療は、例えば、国際公開第2018/019823号、及びそれに引用される参照文献に考察されている。
【0082】
疾患は、行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)であり得る。bvFTDの診断基準及び治療は、例えば、国際公開第2018/041739号、及びそれに引用される参照文献に考察されている。
【0083】
本明細書において説明されるとおり、構造ネットワーク中の障害のトポロジーはそれら2つの病状(AD及びbvFTD)において異なり、両方とも正常な老化とは異なる。これらの変化は特性が適応性であると思われ、機能的リンクノードにおける対応する損傷を代償する皮質厚及び表面積の協調的な増加を反映する。
【0084】
したがって、神経薬理学的介入が有効である場合、ネットワーク組織は正常状態に戻されることが予測される。病態が十分に早期のステージにおいて治療される場合、ネットワーク組織は正常に戻され、病状の停止又は好転を示し得る。したがって、システムは、疾患修飾治療を上記の対症療法から区別する客観的手段を提供する。
【0085】
典型的には、神経薬理学的介入は、医薬介入である。
【0086】
神経薬理学的介入は、上記の対症療法であり得る。
【0087】
例えば、疾患修飾治療は、病原性タンパク質凝集の阻害剤、例えば、上記の3,7-ジアミノフェノチアジン(DAPTZ)化合物であり得る。
【0088】
第4の態様において、本発明は、1つ以上の神経障害に対する患者の感受性を決定するためのシステムであって:
患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るように構成されるデータ収集手段;
少なくとも部分的に得られたデータに基づきネットワークを作成するように構成され、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、ネットワークは、患者の脳内の電気活動の流れの指標となるネットワーク作成手段;
それぞれのノードについて、ノードに入る連結の数及び/又は強度並びにノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するように構成される差計算手段;並びに以下のいずれか:
計算された差の表現を表示するように構成される表示手段;又は
計算された差を使用して、1つ以上の神経障害に対する患者の感受性を決定するように構成される決定手段
を含むシステムを提供する。
【0089】
第2の態様に関して上記のとおり、本発明者らは、(例えば)脳のEEGを使用する実に非常に短時間の分析を使用して1つ以上の神経認知疾患(例えば、AD)に対して感受性である患者を潜在的に同定することができることを示した。
【0090】
本システムは、臨床試験及び臨床管理の両方に使用することができる。
【0091】
したがって、さらなる態様において、神経障害に対する神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するための上記システムが提供される。この態様において、決定手段システムは、計算された差を使用して、神経障害に関する患者の状態を決定するために構成することができる。
【0092】
本システムを使用して神経薬理学的介入後の患者のさらなる状態を決定することができ、任意に、第1の及び1つ以上の後続の状態に基づき、対応する方法に関して上記の神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するように構成することができる。
【0093】
本発明の他の任意選択の特徴部を目下記載する。これらは、単独で又は本発明の任意の態様との任意の組合せで適用可能である。
【0094】
本システムは、ノードを計算された差に基づきシンク又はソースのいずれかと定義するように構成される状態定義手段を含み得る。
【0095】
ネットワークは、再正規化部分有向コヒーレンスネットワークであり得る。本システムは、「オフライン」で、すなわち、患者上の作動なしで稼働し得る。例えば、データを得ることは、患者から既に記録されたデータをネットワーク上で受信することにより実施することができる。
【0096】
脳内の電気活動の指標となるデータは、脳波データであり得る。脳波データは、β帯域脳波データであり得る。脳内の電気活動の指標となるデータは、磁気脳波データ又は機能磁気共鳴画像法データでもあり得る。
【0097】
決定手段は、機械学習分類器を使用して1つ以上の神経障害に対する患者の感受性を決定するように構成することができる。例えば、マルコフモデル、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、又はニューラルネットワークである。
【0098】
表示手段は、脳内のシンクとして定義されるノード及びソースとして定義されるノードの局在及び/又は強度の指標となるヒートマップを提示するように構成することができる。定義されるノードのこの表現は、患者の感受性の決定を(例えば、人間工学的に)補助し得る。
【0099】
本システムは、少なくとも部分的にノードの状態に基づきヒートマップを生成するように構成され、前記ヒートマップは、患者の脳内のシンクとして定義されるノード及びソースとして定義されるノードの局在及び/又は強度の指標となるヒートマップ作成手段をさらに含み得る。定義されるノードのこの表現は、患者の感受性の決定を(例えば、人間工学的に)補助し得る。
【0100】
決定手段は、頭頂葉及び/又は後頭葉内のソースの数及び/又は強度を前頭及び/又は側頭葉内のシンクの数及び/又は強度と比較して比較し得る。1つ以上の神経変性疾患(特にアルツハイマー病)に対して感受性である患者は、後部葉中の相対的に高い数及び/又は強度のシンク、並びに側頭及び/又は前頭葉中の相対的に高い数及び/又は強度のソースを有することが実験的に確認された。
【0101】
本システムは、ノードの状態を使用して、シンク及びソースに対応する脳中のノードの局在及び/又は密度における左右非対称の程度の指標を導出するように構成される非対称マップ作成手段をさらに含み得る。
【0102】
神経障害は、任意に、アルツハイマー病であり得る神経認知疾患であり得る。
【0103】
決定手段は、後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較し、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度を所定の値と比較し得る。決定手段は、後部葉中のシンクとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値を超過する場合、及び/又は側頭及び/又は前頭葉中のソースとして定義されるノードの数及び/又は強度が所定の値を超過する場合、患者が感受性のリスクが高いと決定し得る。別の表現では、及びより一般には、感受性に関する決定は、患者が脳のある領域中で脳の別の領域に対して多い及び/又は強いソース及び/又はシンクを有するか否かに基づき得る。例えば、側頭及び/又は前頭葉中に予測されるものよりも多い及び/又は強いソースが存在する場合、及び/又は患者が後部葉中に対照対象からのデータに基づき予測されるものよりも多い及び/又は強いシンクを有するか否かで、患者を神経変性障害のリスクがあると決定することができる。
【0104】
本発明者らは、対症療法が非投薬群と比較して前頭葉からの外向きの活動を増加させることをさらに観察した。
【0105】
この態様による本発明のシステムは、任意の目的のための1つ以上の神経障害に対する対象の感受性の評価、検査、又は分類のために使用することができる。例えば、この検査のスコア値又は他の出力を使用して対象の精神状態又は病状を所定の基準に従って分類することができる。
【0106】
対象は、任意のヒト対象であり得る。一実施形態において、対象は、神経認知疾患若しくは障害、例えば、本明細書に記載の神経変性若しくは血管疾患の罹患が疑われる対象であり得、又はリスクがあると同定されていない対象であり得る。
【0107】
一実施形態において、本システムは、上記の対象における認知障害、例えば、神経認知疾患の早期診断又は予後診断の目的のためのものである。
【0108】
本システムは、任意に、例えば、画像法又は侵襲的若しくは非侵襲的バイオマーカー評価の他のシステムに基づくさらなる診断ステップ又は介入を対象に通知するために使用することができ、そのようなシステムは当該技術分野において自体公知である。
【0109】
一部の実施形態において、本システムは、対象における神経認知障害のリスクを決定する目的のためのものであり得る。任意に、前記リスクは、さらなる因子、例えば、年齢、ライフスタイル因子、及び他の計測される身体的又は精神的基準を使用してさらに計算することができる。前記リスクは、「高」若しくは「低」の分類であり得、又は尺度若しくはスペクトルとして提示することができる。
【0110】
本明細書に記載の方法と同様に、本システムは、臨床試験の状況において使用して神経薬理学的介入の効能を評価することができる。本システムを使用して疾患修飾治療、例えば、LMTMの効能を、比較的少数の対象(例えば、50人)において、比較的短い時間尺度(例えば、6ヶ月)にわたり、及び早期疾患ステージ(例えば、軽度認知障害又は可能性がある前軽度認知損傷)において実証することができる。
【0111】
本発明のさらなる態様は、コンピュータ上で実行される場合、コンピュータに第1又は第2の態様の方法を実行させる実行可能コードを含むコンピュータプログラム;コンピュータ上で実行される場合、コンピュータに第1又は第2の態様の方法を実行させるコードを含むコンピュータプログラムを保存するコンピュータ可読媒体;及び第1又は第2の態様の方法を実行するようにプログラムされるコンピュータシステムを提供する。例えば、コンピュータシステムであって、第1又は第2の態様の方法を実行するように構成される1つ以上のプロセッサを含むコンピュータシステムを提供することができる。したがって、本システムは、第1又は第2の態様の方法に対応する。本システムは、プロセッサに操作可能に接続される1つ又は複数のコンピュータ可読媒体であって、第1又は第2の態様の方法に対応するコンピュータ実行可能指示を保存する1つ又は複数のコンピュータ可読媒体をさらに含み得る。
【0112】
本発明の実施形態を目下、例として添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】Desikan-Killiany脳アトラスの一例を示す。
図2】行動障害型前頭側頭型認知症と診断された対象の群についての葉により群分けされたペアワイズ相関を有する皮質表面積相関行列の一例を示す。
図3A】(i)HE対象の群についてのペアワイズ相関行列として示される群ベース皮質厚相関ネットワークを示す。
図3B】(ii)bvFTD対象の群についてのペアワイズ相関行列として示される群ベース皮質厚相関ネットワークを示す。
図3C】(iii)AD対象の群についてのペアワイズ相関行列として示される群ベース皮質厚相関ネットワークを示す。
図4A】(i)HE対象の群についてのペアワイズ相関行列として示される群ベース表面積相関ネットワークを示す。
図4B】(ii)bvFTD対象の群についてのペアワイズ相関行列として示される群ベース表面積相関ネットワークを示す。
図4C】(iii)AD対象の群についてのペアワイズ相関行列として示される群ベース表面積相関ネットワークを示す。
図5】脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群間で比較された皮質厚相関ネットワークの平均エッジ強度のプロットを示し、上段プロットは正相関のネットワークについてのものであり、下段プロットは逆相関のネットワークについてのものである。
図6】脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群間で比較された表面積相関ネットワークの平均エッジ強度のプロットを示し、左側プロットは逆相関のネットワークについてのものであり、右側プロットは正相関のネットワークについてのものである。
図7】HE、bvFTD、及びAD群にわたり脳葉にわたり平均化された皮質厚相関ネットワークのノード次数のプロットを示し、上段プロットは正相関のネットワークについてのものであり、下段プロットは逆相関のネットワークについてのものである。
図8】脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群にわたり比較された正相関についての皮質厚相関ネットワークのノード葉間参加インデックスのプロットを示す。
図9】脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群にわたり比較された表面積相関ネットワークのノード次数のプロットを示し、上段プロットは正相関のネットワークについてのものであり、下段プロットは逆相関のネットワークについてのものである。
図10】脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群にわたり比較された表面積相関ネットワークのノード葉間参加インデックスのプロットを示し、上段プロットは正相関のネットワークについてのものであり、下段プロットは逆相関のネットワークについてのものである。
図11】上段プロットについては正相関したノードについての、下段プロットについては逆相関したノードについての、HE、bvFTD、及びAD群についての皮質厚ネットワークにおけるハブの脳空間の可視化を示す。
図12】上段プロットについては正相関したノードについての、下段プロットについては逆相関したノードについての、HE、bvFTD、及びAD群についての表面積ネットワークにおけるハブの脳空間の可視化を示す。
図13】HE、bvFTD、及びHE群についての皮質厚及び皮質表面積の正のネットワーク間の相互作用の脳空間の可視化を示す。
図14】皮質厚(上段の3つのプロット)及び表面積(下段の3つのプロット)相関ネットワークにおける保持されたエッジのヒストグラムを示す。
図15】100個のサロゲートデータセットに基づき作成された領域皮質厚相関ネットワーク中のモジュラリティインデックス(Q)の分布を示すプロットである。
図16】HE、bvFTD、及びAD群についての皮質厚ネットワーク(上段の3つの図)及び表面積(下段の3つの図)の二値化相関行列を示し、白色は有意な正相関を表し、黒色は有意な逆相関を表す。
図17図17A~17Dは、ADについての対症療法薬(コリンエステラーゼ阻害剤及び/又はメマンチン)による治療状態によるベースライン(すなわち、第1週)における相関行列を示し、ach0は治療なしを示し、ach1はそのような治療の存在を示す。
図18図18A~18Dは、対症療法AD薬(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤及び/又はメマンチン)による治療状態によるベースラインノード次数における非同種脳葉間相関のノード次数のプロットを示す。
図19図19A及び19Bは、8mg/日のLMTMを対症療法との組合せで受容した患者におけるベースライン(第1週)における皮質厚相関行列及び65週間後(第65週)の時間的に離隔した皮質厚相関行列を示す。
図20A】8mg/日のLMTMを対症療法との組合せで受容した患者におけるベースラインにおける及び65週間後の皮質厚(CT)の正の非同種脳葉間ノード次数の相関のプロットを示す。
図20B】8mg/日のLMTMを対症療法との組合せで受容した患者におけるベースラインにおける及び65週間後の皮質厚(CT)の逆の非同種脳葉間ノード次数の相関のプロットを示す。
図20C】8mg/日のLMTMを対症療法との組合せで受容した患者におけるベースラインにおける及び65週間後の表面積(SA)の正の非同種脳葉間ノード次数の相関のプロットを示す。
図20D】8mg/日のLMTMを対症療法との組合せで受容した患者におけるベースラインにおける及び65週間後の表面積(SA)の逆の非同種脳葉間ノード次数の相関のプロットを示す。
図21A】8mg/日のLMTMを単剤療法として(すなわち、対症療法AD治療との組合せでない)受容した患者におけるベースライン(第1週)における皮質厚相関行列を示す。
図21B】8mg/日のLMTMを単剤療法として(すなわち、対症療法AD治療との組合せでない)受容した患者における65週間後(第65週)の時間的に離隔した皮質厚相関行列を示す。
図22図22A及び22Bは、8mg/日のLMTMを単剤療法としての組合せでの(すなわち、対症療法AD治療との組合せでない)受容した患者におけるベースラインにおける及び65週間後の皮質厚相関ネットワークについての非同種脳葉間ノード次数のプロットを示す。
図23A】8mg/日のLMTMを単剤療法として(すなわち、対症療法AD治療との組合せでない)受容した患者におけるベースライン(第1週)における表面積相関行列を示す。
図23B】8mg/日のLMTMを単剤療法として(すなわち、対症療法AD治療との組合せでない)受容した患者における65週間後(第65週)の時間的に離隔した表面積相関行列を示す。
図24図24A及び24Bは、8mg/日のLMTMを単剤療法としての組合せでの(すなわち、対症療法的AD治療との組合せでない)受容した患者におけるベースラインにおける及び65週間後の表面積相関ネットワークについての非同種脳葉間ノード次数のプロットを示す。
図25A】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療のベースラインにおけるAD(臨床的認知症尺度0.5、1、及び2)についての皮質厚相関行列を示す。
図25B】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての皮質厚相関行列を示す。
図25C】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療の65週間後のAD(臨床的認知症尺度0.5、1、及び2)についての時間的に離隔した皮質厚相関行列を示す。
図25D】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての皮質厚相関行列を示す。
図26A】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療のベースラインにおけるAD(臨床的認知症尺度0.5、1、及び2)についての表面積相関行列を示す。
図26B】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての表面積相関行列を示す。
図26C】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療の65週間後のAD(臨床的認知症尺度0.5、1、及び2)についての時間的に離隔した表面積相関行列を示す。
図26D】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての表面積相関行列を示す。
図27A】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療のベースラインにおけるAD(臨床的認知症尺度0.5)についての皮質厚相関行列を示す。
図27B】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての皮質厚相関行列を示す。
図27C】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療の65週間後のAD(臨床的認知症尺度0.5)についての時間的に離隔した皮質厚相関行列を示す。
図27D】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての皮質厚相関行列を示す。
図28A】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療のベースラインにおけるAD(臨床的認知症尺度0.5)についての表面積相関行列を示す。
図28B】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての表面積相関行列を示す。
図28C】単剤療法としてのLMTM8mg/日による治療の65週間後のAD(臨床認知症格付け0.5)についての時間的に離隔した表面積相関行列を示す。
図28D】治療後の行列の正常化を示すための高齢対照群(HE)についての表面積相関行列を示す。
図29】安静時脳波データの一例を示す。
図30】脳波データから導出された有向ネットワークの一例を示す。
図31】電気活動の流入する流れ及び電気活動の流出する流間の差としてのノード状態の決定を模式的に示す。
図32】対象の群の脳内のネットシンク(黄色/赤色)及びネットソース(青色)の局在のヒートマップを示す。
図33図32のヒートマップの左側及び右側間のソース及びシンクの分布の非対称を示すヒートマップを示す。
図34】アルツハイマー病と診断された対象の群の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップを示す。
図35】アルツハイマー病と診断されていない対象(すなわち、ペアの被験者)の群の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップを示す。
図36】アルツハイマー病と診断されていない対象(すなわち、ペアの被験者)の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップを示す。
図37】アルツハイマー病と診断された対象の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップを示す。
図38】例えば、アルツハイマー病を有することに起因して認知症又は認知機能低下のリスクがあると決定される対象の群の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップを示す。
図39】アルツハイマー病のリスクがないと決定される対象の群の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップを示す。
図40】ADのリスクがある及びADのリスクがない対象における群レベルにおける前部及び後部脳領域からのEEGネットワークにおけるソース及びシンクを比較する箱ひげ図である。
図41】有意な逆非同種脳葉間相関の強度及び数の増加を示すAD群についての皮質厚相関行列(左側)と、後部脳領域に向けられる皮質厚における代償性構造逆非同種相関の増加並びに安静状態EEGのrPDCコヒーレンス分析により示されるシンクとしての脳の後部領域への流入連結の強度及び数の増加間の対応性を示すADと診断された対象の群の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップとの間の比較を示す。
図42】HE群についての表面積相関行列と、後部脳領域に向けられる皮質厚における代償性構造逆非同種相関の相対的欠落並びに安静状態EEGのrPDCコヒーレンス分析により示されるシンクとしての脳の後領域への流入連結の数及び強度の低減間の対応性を示す健常高齢者対象の群の脳内のソース及びシンクの局在のヒートマップとの間の比較を示す。
図43】高齢対照からの軽度ADの量的な差を示す箱ひげ図である。
図44】投薬及び非投薬AD患者並びにペアの被験者を群レベルにおいて比較する3つのヒートマップを示す。
図45】投薬及び非投薬AD患者、並びにペアの被験者を比較する群レベルネットワークの箱ひげ図である。
【発明を実施するための形態】
【0114】
詳細な説明及びさらなる任意選択の特徴部
本発明の態様及び実施形態を目下、添付の図面を参照して考察する。さらなる態様及び実施形態は、当業者に明らかである。本文に挙げられる全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
図1は、Desikan-Killiany脳アトラスの一例を示す。Desikan-Killiany脳アトラスは、MRIスキャン上でヒト大脳皮質を脳回ベースの関心領域に分割する。18個の領域を図面に示す一方、Desikan-Killiany全脳アトラスはヒト皮質を68個の関心領域に分割する。
【0116】
本文献に考察される対象は、目下完了した3つのグローバル第3相臨床試験に参加した。この臨床試験の2つは軽度から中等度のADにおけるものであり(Gauthier et al.,2016;Wilcock et al.,2018)、3つ目はbvFTDの大規模試験からのものであった(Feldman et al.,2016)。比較データは、Aberdeen 1936 Birth Cohort(ABC36)(Murray et al.,2011)の継続中の長期試験に参加している十分に特性決定された健常高齢者(HE)対象から利用可能であった。全てにおいて、本明細書に考察される例において、628人の対象が存在し、認知症の群のそれぞれ213人及び202人の健常高齢者対象であった。bvFTD患者は、bvFTDの国際コンセンサス基準に従って診断され、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが20~30(両端を含む)の軽度の重症度であった。AD患者は、National Institute of Aging and the Alzheimer’s Associationからの基準に従って診断され、MMSEスコア14~26(両端を含む)及び臨床的認知症尺度(CDR)合計スコア1又は2により定義される軽度から中等度の重症度であった。これらは対応するより大規模の群(N=1132)から抜き出してbvFTD群における参加者の数と適合させた。健常高齢者(HE)対象は、十分に特性決定されたAberdeen 1936 Birth Cohortから選択した。
【0117】
以下に考察される相関行列を作成するために使用されるマルチサイドソース(multi-side source)画像法データセットは、同等の製造業者仕様3DT1シーケンスを使用して収集される標準的T1重み付きMRI画像であった。試験患者からのデータをプールして全体的な群ごとの比較を可能とした。トレインスキャナ(train scanner)は、3社の製造業者(Philips、GE、及びSiemens)からの1.5T及び3T(30%)電界強度に限定した。ABC36コホートにおけるMRI画像は、同じ(Philips)の3Tスキャナを使用して全て収集した。自体公知の様式で実装された自動プロセスパイプラインを使用して画像を加工した。画像加工の容積ベース方法に加え、パイプラインは、皮質形態、例えば、厚さ、局所屈曲又は表面積の表面ベース領域計測を生成する。上記方法に好適な自動加工パイプラインの一例は、Athinoula A.Martinos Centre for Biomedical Imaging at Massachusetts General Hospitalから入手可能なFreeSurfer v5.3.0である。
【0118】
表面積は、灰白質/白質界面及び白質/脳脊髄液境界(軟膜表面と称される)の三角テッセレーションを使用して画像法データセットから計算した。皮質厚は、軟膜表面上の最接近点の白質表面からの、及び白質表面までの最接近点に戻る点からの距離の平均として計算した。自体公知の区分化スキームを使用してDesikan-Killianyアトラスに基づき両半球からの68個の皮質領域の皮質厚及び表面積を抽出した。領域及びそれらの葉の割り当てのリストを付録Aの表A.1に示す。
【0119】
図2は、bvFTDと診断された対象の群についての皮質表面積相関行列を示す。それぞれの行列要素は、Desikan-Killianyアトラスからの皮質表面積の68個のペア間の相関強度(「エッジ強度」)を表す。右側への強度バーは、相関/エッジ強度を示す。68個の皮質表面領域(ネットワークノード)を、それらの所属の前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉に従って並べる。単一葉領域を四角内で囲み、上方から下方に/左側から右側に、前頭、側頭、頭頂、及び後頭で並べる。本質的には、相関行列は、皮質厚の68個のペア間の偏相関から構築されるネットワークを表す。図3A~3Cは、それぞれ、健常高齢者、行動障害型前頭側頭型認知症対象、及びアルツハイマー病対象についての皮質表面積相関行列を示す。顕著な差は、健常高齢者とbvFTD及びAD対象の両方との間で確認することができる。特に、葉内相関はbvFTD及びAD対象について有意に強度が増加した。さらに、逆相関の数は非同種ノード間で増加した。確認することができるとおり、HE対象は疎相関を有し、それらは同種脳葉間でほとんど正相関である。それに対して、bvFTD及びADの両方は、HE群と比較して正及び逆相関によりリンクされる有意に増加した数のノードを有する。認知症の両方の形態の相関の数の増加は、同じ葉(同種、主に正)間又は異なる葉(非同種、主に負)間であり得る。一般に、逆葉間非同種相関は高度に異常である。また、bvFTDは、特に、皮質厚におけるより高密度の逆非同種相関と関連することを確認することができる。
【0120】
図4A~4Cは、それぞれ、健常高齢者、行動障害型前頭側頭型認知症対象、及びアルツハイマー病対象についての表面積相関行列を示す。顕著な差は、健常高齢者とbvFTD及びAD対象の両方との間で確認することができる。さらに、ADは特に、表面積におけるより高密度の逆非同種相関と関連することに留意すべきである。
【0121】
これらの図面において、ゼロのエントリは非有意相関に対応する。有意なネットワーク相関は正及び負の値の両方を有したことが見出された(説明について図14及び16参照)。有意な逆相関の数並びにHE群に対するbvFTD及びADにおけるネットワークの相関強度の見かけの増加のため、有意な正及び負相関のサブネットワークを別個に検討した。診断群に従って葉ネットワーク構造の見かけの差を考慮して、それらの差を定量することができるか否かを決定することを試みた。
【0122】
相関行列としてこれらの図面に表されるネットワークは、表面積又は皮質厚を特定の診断カテゴリー(すなわち、HE、bvFTD、及びAD)内の全ての対象にわたり相関させることにより構築することができる。皮質領域(Desikan-Killiany脳アトラスにより定義)はノードを表し、ノード間のペアワイズ相関はグラフエッジを表し、又はそれぞれの診断カテゴリー内の全ての参加者にわたりSA若しくはCTのいずれかを相関させるリンク/連結を構築した。それぞれの相関行列は、それぞれの郡内のS人の対象からのN個の領域CT/SA値を含有するS×N配列に基づき計算した。このように、6個のN×N(例えば、68×68)相関行列を得た(それぞれの試験群について1つのCT又はSA構造相関行列)。行列要素eijは、領域i及びj(i,j=1、2、…N)間(すなわち、それぞれの群内の対象からの領域計測値を含有するベクトルx及びx間)の偏相関の値である。偏相関は、すべての他の領域m≠(i;j)の影響を最初に除去し、次いで制御変数(別個の配列S×Cにおいて格納され、Cは、制御変数の数を表す)についてx及びxの両方を調整した後にx及びxのペア間の線形ピアソン相関係数として計算した。これは、相関分析前に線形回帰をあらゆるxに対して実施して年齢、性別、及び平均CT(全てのエリアの平均皮質厚)又は総表面積(全表面積の和)の影響を除去することを意味する。自己相関(主行列対角線ネットワーク(main matrix diagonnetwork)評価基準により表される、は、行列の下三角部に基づき計算した。偏相関eij(すなわち、エッジ荷重)は、以下の一般式に従って計算することができる:
【数1】
【0123】
式中、xi;jは、変数の配列を示し、xは、条件付け変数の任意のサブセットを示す。偏相関のこの一般形態を導くため、この処理は、i、j、c=1、2、3から開始する:
【数2】
【0124】
したがって、条件付け変数のcの任意のサブセットについて:
【数3】
【0125】
一部の例において、ネットワークが統計的に有意な相関のみを保持したことを検証するため、Storey,2002に記載の偽発見率(FDR)手順を使用して計算された相関係数を多重検定のために調整した。FDR手順は、それぞれの計算p値(ペアワイズ相関計算からのもの)を補正有意水準、この例においてα=0.05に対して検定し、調整有意水準よりも小さいp値のみを真に有意なものとして受容する。FDR検定に合格しなかったそれらのペアワイズ相関はゼロに設定することができ;そうでなければ、全ての非ゼロ相関を正か負かにかかわらず保持した(以下により詳細に考察される図14参照)。
【0126】
このように、68×68相関行列をそれぞれの臨床群におけるCT又はSAのいずれかについて構築することができ、それは皮質厚の表面積のいずれかについての構造相関ネットワークを表す。行列要素は、皮質厚又は表面積のいずれかについての皮質領域間の相関の強度を定量し、それはそれ自体では実際の物理的連結を表さない。神経変性障害における構造相関ネットワーク分析の状況において、そのような相関は、脳領域間の同時萎縮関係(正の場合)又は逆萎縮/肥大関係(負の場合)のいずれか意味するとみなされる。
【0127】
上記方法を使用して作成される構造相関ネットワーク及び/又は行列に関して、3つの臨床群の構造ネットワーク特性を比較するための以下の評価基準:エッジ強度、ノード次数、ノードモジュール内次数zスコア(node within-module degree z-score)、及び参加インデックス(participation index)を使用することが有用である。エッジ強度及びノード次数は2つの基本的なネットワーク属性を表し;それらはそれぞれ、ノード間の相関強度及びそれぞれのノードについてのペアワイズ相関の数を定量する。皮質葉がモジュールを表すか否かを評価するため、ネットワーク相互作用におけるモジュラリティを評価する2つのネットワーク評価基準、すなわち、モジュール内次数zスコア及び参加インデックスを利用した。全ての評価基準(ノード次数を除く)を重み付きグラフに基づきコンピュータにより計算し、4つの葉にわたる平均として推定した(下記)。評価基準をバイナリ又は重み付きグラフのいずれかに基づきコンピュータにより計算した(以下に考察されるとおり)。純粋に理論的な研究から、ネットワークの計算されたトポロジカル特性は、閾値の選択に依存することが公知である(van Wijk et al.2010)。本文献において、それぞれの群ベース相関行列についての固定閾値が選択される。
【0128】
ノード次数
ノード次数kは、ネットワーク中のそれぞれのノードについての有意相関の数を表す。一般に、ノード次数は二値化相関行列から計算され、その行列におけるそれぞれの有意相関はそれが有意である場合に1に、又はそれが有意でない場合に0に置き換えられる。二値化行列の例を図16に示す。二値化行列は、隣接行列と称することもできる。図16において、上段の3つのプロットは皮質厚に対応し、下段の3つのプロットの対応は表面積に対応する。有意な正相関を白色で示す一方、有意な逆相関を黒色で示す。
【0129】
ノードiの次数、すなわち、ノードに連結される有意なリンクの数は、
【数4】

(Nは、ノードの数であり、aijは、ノード間の直接連結が存在する場合に1の値を有し、そうでなければ0を有するノードi及びj間の連結を表す)として計算することができる。
【0130】
モジュラリティインデックス
ノード参加インデックス及びモジュール内次数zスコアは、モジュールに従うノードの役割を評価する。ネットワークモジュール(コミュニティ構造としても公知)は、高密度で連結されたネットワークのサブグラフ、すなわち、ネットワーク連結がより高密度であり、連結がより疎なノードのサブセットを表す。モジュールとして定義される皮質厚又は表面積ネットワークの前頭、側頭、頭頂、及び後頭部のモジュラー組織を試験することが有用である。皮質表面積のこれらの葉部は必ずしもそれら自体がモジュラーである必要はないため、葉部が本質的にモジュラーであるか否かを最初に検定することが必要であり得る。1つの例において、これは、それぞれの葉に従うネットワークのモジュラリティインデックス(Q)を計算することによって行うことができる。モジュラリティインデックスは、連結がネットワークにわたりランダム分布された場合に予測されるものに対するモジュール内次数値の実測分数を定量する。構築された皮質厚及び表面積ネットワークは正及び負の両方のエッジ強度を含有するため、モジュラリティ品質関数の非対称一般化を使用することが可能である。例えば、Rubinov and Sporns(2011)において導入されるとおり:
【数5】
【0131】
式中、
【数6】

は、ωij>0の場合、相関行列のi、j番目の要素、すなわち、皮質領域間のペアワイズ相関の強度ωijに等しく、そうでなければゼロに等しい。同様に、
【数7】

は、ωij>0の場合、-ωijに等しく、そうでなければゼロに等しい。用語
【数8】

は、強度保存されたランダムヌルモデル、
【数9】

及び
【数10】

を考慮した正又は負の連結荷重の予測密度を意味する。クロネッカーのデルタ関数
【数11】

は、i、j番目のノードが同じモジュール内に存在する場合に1に等しく、そうでなければ0に等しい。モジュールへのネットワークの所与の分離の性能は、当該技術分野において自体公知のコミュニティ検出関数を適用する一方、初期コミュニティ所属ベクトルとしての特定のノードを有するノードの所属のベクトルを用いることにより検定した。
【0132】
前頭、頭頂、側頭、及び後頭部への皮質表面の葉組織は、実際にモジュラーであることが見出された(付録A参照)。したがって、葉モジュールへの個々のノードの寄与をノード参加インデックス及びモジュール内zスコアとして計算することが次いで可能であり、それらはノード葉間参加インデックス及びノード葉内zスコアと称される。
【0133】
ノード葉間参加インデックス
一般に、参加インデックスpは、モジュラー間連結を評価する。これは、ネットワーク中の葉内ノードエッジと全ての他の葉モジュールとの比とみなすことができ、ノードpは、ノードがそれ自体のモジュール内で排他的にリンクを有する場合に0の傾向であり、ノードがそれ自体のモジュールの外側で排他的にリンクする場合に1の傾向である。重み付きネットワーク参加は、
【数12】

(式中、Mは、モジュールのセットであり、
【数13】

は、モジュール中の全ての他のノードへのi番目のノードの重み付けされたリンクの数であり、mはモジュラー間次数であり、
【数14】

は、i番目のノードの総次数である)により計算される。本文献内で、葉内参加という用語は、このネットワーク評価基準に使用される。
【0134】
ノード葉内次数zスコア
葉間参加インデックスの補完は、正規化葉内次数zであり、それは、zスコアにより、すなわち、それぞれの平均次数分布を用いてノードの葉間次数の正規化偏差により葉内連結度を評価する。したがって、ノード葉内zスコアzは、モジュラー間平均連結度に対して多いモジュラー内連結を有するノードについて大きい。相関強度が保存されるネットワークについて、ノードモジュール内次数zスコアは、
【数15】

(式中、
【数16】

は、上記のとおりであり、
【数17】

は、モジュール内m次数分布の平均であり、
【数18】

は、モジュール内m次数分布の標準偏差である)として計算される。
【0135】
ネットワークモジュラー組織におけるノードの役割
モジュラー葉組織についてのノードの役割はz-pパラメータ空間中のその位置に依存する。ノードがネットワーク中で有し得る4つの考えられる役割が存在し、それらはノード特性の平均評価基準よりも高いものに基づき割り当てられる。これらの役割の2つ、いわゆるコネクタ又はグローバルネットワークハブ(高い葉間参加及び高い葉内次数zスコアを有する)及びいわゆる地方ハブ(高い葉内次数zスコア及び低い葉間参加を有する)を検討することが有用である。z及びpの高及び低値についての閾値を、1.5及び0.05超にそれぞれ設定した。
【0136】
統計的分析
対象におけるデモグラフィック及び認知スコアの統計差は、一元配置分散分析又は両側t検定のいずれかを使用して評価した。データは、一標本コルモゴロフ・スミルノフ検定を使用して正規分布について確認した。カイ二乗検定を使用して群間の男性及び女性の分布の差を検定した。診断群に従うグローバルネットワーク相関強度の統計差は、不均衡サンプルサイズについての一元配置分散分析を使用して検定した(ネットワークにわたる奇数の有意相関を説明するため)。ノード次数、葉内zスコアz、及び葉間参加インデックスpを、クラスカル・ウォリス検定、ノンパラメトリック一元配置分散分析検定を使用して群にわたり比較した。結果は、水準p<0.05において有意であると報告した。
【0137】
結果
以下の表1は、臨床診断に従うそれぞれの群についてのデモグラフィック、認知、並びに平均CT及びSAを示す。3つの群は年齢が有意に異なり、AD患者はHE及びbvFTDよりも高齢である(全ての検定においてp<10-4)。有意差はMMSE尺度での認知スコアにおいても確認され、AD患者は最も損傷を受け、bvFTDはHE対象よりも損傷を受けている(全ての検定においてp<10-4)。平均CT及び総SAは、群にわたり異なった。
【0138】
【表1】
【0139】
HE及び両方の患者群間の差は、平均CT(両方の検定においてp<10-4)及び総SA(両方の検定においてp<0.003)の両方に関して有意であったが、bvFTD及びAD群は互いに異なることはなかった。脳葉ごとに平均化された平均CT及び総SA値を、付録Aの表A.3に示す。したがって、AD及びbvFTDは病変、年齢及び認知障害の重症度の葉分布に関して異なるが、皮質菲薄化の全体的な程度も平均表面積の変化も2つの病態を区別する手段を提供しない。
【0140】
構造相関ネットワークの葉特性
相関ベースネットワーク組織の定義は閾値の選択に依存するため、密度/疎値(κ)を計算することにより本明細書に定義されるネットワークがそれらのグローバルトポロジーにおいて非ランダムであることを確保することが有用である。脳ネットワークは、κ>0.1の場合、非ランダム(スモールワールド)トポロジーを示すとみなし、それは本明細書において検討される全てのネットワークに当てはまった。逆相関が閾値処理後に省略されなかったことを確保することも有用である(図14参照)。したがって、本明細書において検討される全ての正及び逆のCT及びSA相関ネットワークは、非ランダムである。3つの群におけるCT及びSAについてのκについてのグローバル値については表A.3も参照。
【0141】
モジュラリティインデックスを使用して、調査を実施して慣用的に定義される皮質葉がCTネットワーク中のネットワークモジュールに対応するか否かを決定した。CTネットワーク中の2つのホモログペア(後帯状皮質及び中心前皮質)及びSAネットワーク中の2つのホモログペア(後帯状皮質及び中心傍溝及び上側頭溝の右側土手のみが、モジュラリティインデックスアルゴリズムにおいて誤って割り当てられたことが見出された。表A.2(付録A)は、アルゴリズム入力及び出力の詳細を与える。実際、0.3超のQ値がネットワーク中の有意なモジュールの存在の良好な指標であることが受容される。データセットについてのQ値の信頼区間を推定するため、サロゲートデータセット上で作成された100個のCT行列に対する反復計算を実施した。100個のサロゲートCT及びSA行列のそれぞれは、3つの試験コホートから213人の対象をランダムに引き抜き、CT及びSAについて得られた相関行列に対するQ値を計算することにより作成した。Qの値を図15に示し、それは100個のサロゲートデータセットに基づき作成された領域CTネットワーク中のモジュラリティインデックスQの分布のプロットである。中央の線は平均値を示し、上方及び下方の線は平均から離れた1.5標準偏差(Q=0.36±0.02)、すなわちランダムを示し、その場合、Q値はランダムグラフのものと類似する。試験群について、以下の値:「正」サブネットワークについてQHE=0.49、QbvFTD=0.49、及びQAD=0.45並びに「負」サブネットワークについてQHE=0.39、QbvFTD=0.28、及びQAD=0.29が得られ、それらは前頭、側頭、頭頂、及び後頭部のCT/SA相関ネットワークにおける非ランダムモジュラートポロジカル組織を示す。
【0142】
したがって、慣用的に記載される皮質葉がCTネットワーク中の非ランダムモジュールに対応することを結論づけることができる。
【0143】
CT及びSAネットワークの平均相関強度
図5は、脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群間で比較されたそれぞれの皮質厚相関ネットワークのエッジ強度を示す。データを正(上段プロット)及び逆(下段プロット)相関のネットワークについて示す。アスタリスクは、3つの群間の有意差を示す(p<0.05;**p<0.01)。図5において確認することができるとおり、CTについての平均相関強度は、前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉においてHE、bvFTD、及びAD対象間の有意差を示した(全ての検定についてp<10-4)。平均相関強度は、前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉においてHE対象よりもbvFTD及びADにおいて高かった(全てのペアワイズ相関についてp≦0.003)。平均相関強度は、前頭(p<10-4)及び側頭(p=0.005)葉においてADよりもbvFTDにおいて高かった。
【0144】
CTネットワークにおける逆相関のネットワークの平均強度は、前頭及び側頭葉においても異なった、図5下段プロット参照。ここでも、bvFTD及びAD群の両方は前頭及び側頭葉においてHE群よりも高い平均相関強度を示し(全ての検定においてp≦0.03)、bvFTD群は前頭葉においてAD群よりも高い平均逆相関強度を有した(p=0.003)。
【0145】
図6は、それぞれの表面のエッジ強度が前頭脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群間で比較された相関ネットワークであることを示す。データを正(右側プロット)及び逆(左側プロット)相関のネットワークについて示す。アスタリスクは、3つ群間の有意差を示す(p<0.05;**p<0.01)。プロットは、SAネットワークにわたる平均相関強度における有意差を示す。診断群は前頭葉においてのみ異なり、AD群はHE群よりも低い平均相関強度を有した(p=0.03)。同様に、逆SAネットワーク相関は前頭葉において有意に異なり、HE群と比較した場合、bvFTD及びAD群において平均相関強度が低かった(両方の検定においてp≦0.02)。これは、健常高齢者対象における狭い度数分布を有する疎なネットワークと比較して疾患において見出される強度における広い度数分布を有する多数の相関に起因する(図14参照)。
【0146】
CTネットワークにおけるノード評価基準
ノード次数
ノード当たりの有意な正相関の平均数を定量するノード次数を、CTネットワークについて前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉にわたり平均化して図7に示す。ノード次数をHE、bvFTD、及びAD群にわたり比較する。データを正(上段プロット)及び逆(下段プロット)相関のネットワークについて示す。アスタリスクは、3つの群間の有意差を示す(p<0.05;**p<0.01)。
【0147】
前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉における群間の有意差が存在した(全ての検定においてp≦10-4)。bvFTD及びAD対象の両方は、HE対象と比較して前頭及び側頭葉において高いノード次数を有した(全ての検定についてp<0.006)。bvFTD群は、頭頂葉及び後頭葉においてAD群よりも特に高いノード次数を有した(全ての検定についてp≦0.02)。同様のパターンは、前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉におけるCTネットワークにおける逆相関の数について見出された(全ての検定においてp≦0.02)。これらの差は、4つ全ての葉にわたるHE群よりもbvFTD及びADにおける多数の有意な逆相関により推進された(全ての検定においてp<0.01)。bvFTD及びAD群間の差は有意でなかった。
【0148】
ノード葉間参加インデックス
群の差は、CTについてのノード葉間参加インデックスにおいて見出された。このインデックスは、異なる葉におけるノードとの有意な正相関の程度を計測する。これは、側頭、頭頂葉、及び後頭葉中に局在する葉について有意であった(全ての検定についてp≦0.03)。差は、頭頂葉(両群においてp<0.003)、側頭(ADにおいてp=0.01)及び後頭(bvFTDにおいてp=0.002)葉においてHE群に対して高いインデックス値を反映する。これを図8に示し、脳葉にわたり平均化された皮質厚相関ネットワークのノード葉間参加インデックスを、HE、bvFTD、及びAD群にわたり比較する。データをプロット中で正相関についてのみ示す。アスタリスクは、群間の有意差を示す(p<0.05;**p<0.01)。葉間参加インデックス比較は、CTネットワークにおける逆相関についていずれの葉においても有意に異なることはなかった。
【0149】
SAネットワークにおけるノード評価基準
ノード次数
SAネットワークにおけるノード次数値を、前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉について図9に示す。図中、表面積相関ネットワークのノード次数を脳葉にわたり平均化し、HE、bvFTD、及びAD群にわたり比較する。データを正(上段プロット)及び逆(下段プロット)相関のネットワークについて示す。アスタリスクは、3つの群間の有意差を示す(p<0.05;**p<0.01)。
【0150】
正相関は、前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉において診断群間で異なった(p≦0.03)。CTネットワークと同様、bvFTD及びAD群の両方が前頭、側頭、及び頭頂葉においてHE群よりも高いSAノード次数を有した(全ての検定においてp<10-4)。後頭葉については、有意だった唯一の差はAD及びHE群間であった(p=0.04)。CTネットワークと対照的に、頭頂葉におけるノード次数もbvFTDよりもADにおいて有意に高かった(p=0.004)。
【0151】
逆相関SAネットワークは、前頭、側頭、頭頂、及び後頭葉において有意な群差も示した(全ての検定においてp≦0.001)。ここでも、bvFTD及びAD群の両方が、4つ全ての葉においてHE群よりも高いノード次数を有した(全ての検定についてp<0.001)。CT逆相関ネットワークと対照的に、AD群は、前頭(p=0.02)及び頭頂(p=0.01)葉においてbvFTD群よりも高いノード次数を有した。
【0152】
ノード葉間参加インデックス
図10は、SAネットワーク組織についてのノード葉間参加インデックスにおける群差を示す。本図は、脳葉にわたり平均化され、HE、bvFTD、及びAD群にわたり比較されたノード葉間参加インデックスを示す。データを正(上段プロット)及び逆(下段プロット)相関のネットワークについて示す。アスタリスクは、3つの群間の有意差を示す(p<0.05;**p<0.01)。
【0153】
bvFTD及びAD群の両方が、4つ全ての葉において正SA相関ネットワークについてHE群よりも高いインデックス値を有した(p<10-4)。CT相関ネットワークと対照的に、逆SA相関ネットワークはまた、前頭及び頭頂葉において(両方の患者群についてp≦0.04)、並びにAD群について側頭葉において(p<0.001)HE群に対して有意差を示した。
【0154】
構造相関ネットワークのハブ
CTネットワークハブ
葉間参加インデックス(p高/低)及び葉内(with-lobe)zスコア(高/低)の平均値の4つの考えられる組合せが存在する。ここで、高い葉間インデックス及び高い葉内zスコアの場合のみを考慮して高いハブ様特徴のノードにフォーカスする。表A.4~A.6(付録A参照)は、グローバル及び地方ネットワークハブについてのデータを提供する。残り2つの組合せを試験したが、情報価値はなかった。正CT相関ネットワーク中の高いp及び高いz値内のネットワークハブの数及び分布は、試験群間で異なった。HE対象において、ハブは皮質全体にわたり分布し;それぞれの葉は少なくとも1つのハブを有し、前頭葉においては4つのハブであった。ハブトポロジーの再組織化は、2つの疾患群において異なって生じた。これを、皮質厚ネットワークのハブの脳空間における可視化である図11の上段パネルに示した。bvFTDにおいて、前頭葉におけるハブの数は4から9に増加し、後頭葉においては2から1に減少し、頭頂及び側頭葉においては完全に消失した。対照的に、ADにおいてハブは4つ全ての葉にわたりほぼ等しく分布した。前頭葉におけるハブの数はHE群に対して減少した一方(2対4)、その数は側頭及び後頭葉において増加した(それぞれ1対3及び2対3)。CTネットワークにおいてハブ様特性を有するノードの完全なリストを、葉位置とともに表A.4(付録A参照)に提供する。
【0155】
逆相関CT行列においてハブ様特性を有するノードは、3つ全ての群において前頭及び側頭葉において排他的に存在し、それらのトポロジカル分布は群間で異なった。図11の下段パネル、及び付録Aの表A.4参照。
【0156】
SAネットワークハブ
正相関SAネットワーク中のハブを図12の上段パネルに示す。表A.5(付録A参照)は、葉間参加インデックス及び葉内zスコアに従って分類されるノード及び葉局在のリストを提供する。群間のハブトポロジーの可視的比較は、左半球が全ての診断群においてハブ様特性を有するより多くのノードを有したことを示す。しかしながら、HE対象は、1つのSAハブのみを有した一方(左の島)、両方の疾患群はそれぞれの葉においてより多くのハブを有した。AD群はbvFTDと比較して2倍多いSAハブを有した(14対7)。驚くべきことに、bvFTD群は前頭葉よりも側頭葉において多くのSAハブを有した一方(4対1)、AD対象は側頭ハブよりも多い前頭ハブを有した(6対4)。AD対象は、頭頂葉においてbvFTD対象における1つと比較して3つのハブを有した。
【0157】
逆相関SAネットワーク中のハブは、3つ全ての群において前頭又は側頭葉のいずれかのみにおいて存在した。しかしながら、HE群は頭頂(楔前部)において1つのハブを有し、bvFTDは2つのハブを有した(下頭頂回及び中心傍回)(付録Aの表A.5参照)。興味深いことに、ADにおける逆相関SAハブのほとんどは前頭葉において見出された。
【0158】
皮質厚-皮質表面積結合トポロジー
CT及びSAノード間の結合強度を、対応するCT及びSA相関行列の要素ごとの乗算により計算した。図13は、脳空間において可視化されたCT/SA結合強度を示す。HE対象において、半球間ホモログのペアが結合CT/SA相関を示すことを確認することができる。対照的に、AD及びbvFTD群におけるCT/SA結合は互いに極めて類似し、HE群と異なる。bvFTD及びAD群の両方は、同側及び対側半球における非同種ノード間のより多くの結合を示した。葉間相関も、bvFTD及びAD群間で顕著に異なった。bvFTD群において、葉間CT/SA相関のほとんどは前頭-側頭相互作用に起因した。ADにおいて、葉間CT/SA結合のほとんどは前頭-頭頂相互作用に起因した。CT/SA結合トポロジーのハブのリストを付録Aの表A.6に示す。
【0159】
考察
3つの大規模グローバル臨床試験におけるbvFTD又はADのいずれかと臨床的に診断された対象におけるベースライン構造相関ネットワークを試験し、十分に特性決定された出生コホートにおける健常高齢者対象と比較した。それぞれの群について、厚さ及び表面積に関して皮質表面領域(ノード)の68×68ペア間の偏相関からネットワークを構築した。採用されたアプローチは、3つの臨床的状況における正及び逆ネットワーク相関の両方がある場合、体系的分析を可能とした。本明細書に考察される方法及びデータは、患者の大規模集団における皮質厚及び表面積の最初の体系的な比較分析を表す。数が3つの群において同等であることが必要であるため、全体的な試験サイズは利用可能なbvFTD対象の数により決定した。これは希少疾患であるため、試験のbvFTD成分についてグローバルであることが必要であり、13か国における70箇所の試験施設から患者が参加した。213人の患者が本試験に含められ、これは、これまで利用可能なbvFTD対象におけるMRIスキャンデータの最大セットを表す。これに適合させるため、213人の患者を、試験TRx-237-005について12か国における116箇所の施設及び試験TRx-237-015(例えば、US National Library of Medicineからアクセス可能)について16か国における128箇所の施設から参加した1131人のAD患者のかなり大規模の群からランダムに引き抜いた。202人の正常高齢対象は、長期間試験された十分に特性決定された出生コホートから参加した。したがって、報告された知見はロバストであり、国際人口会議により承認された診断基準の代表例とみなすことができる。
【0160】
葉ごとのネットワークのモジュラリティ
皮質表面の前頭、側頭、頭頂、及び後頭部における構造相関は、皮質厚及び表面積ネットワークの両方について本質的にモジュラーであることが示された。すなわち、結果は、皮質の標準的な葉区分が共通のネットワークモジュラリティ属性を共有し、その結果、それらは同等のランダムネットワークにおいて予測されるものと異なることを裏付ける。高度にクラスタ化されたネットワークのモジュールはいわゆる「スモールワールド」ネットワーク特性を付与し、局所的な特殊化及びグローバルな統合間の最適なバランスを提供すると考えられる。健常高齢者対象からの結果は、より小さく若年の健常群における従来の研究と同等であり、それは領域厚さ相関ネットワークにおける根本的なモジュラーアーキテクチャを明らかにする。結果は、固有の葉ごとのモジュラリティがbvFTD及びADの両方で持続することも示し、ネットワークの全体的な葉アーキテクチャが神経変性変化の存在下で保存されることを示す。以下にさらに考察されるとおり、これは、疾患特異的に変化するネットワークのハブ様組織と対照的である。
【0161】
健常高齢者対象に対するAD及びbvFTD間の類似性及び差
両方の患者群(bvFTD及びAD)についての形態相関ネットワークは、健常高齢者対象についての対応するネットワークと高度に有意に異なることが見出された。両方の群は、健常高齢者対象と比較して厚さ及び表面積ネットワークにおける全体的相関強度の顕著な増加を示した。効果は、正及び逆相関の両方について全ての葉において皮質厚ネットワークにおいてより顕著であった。これは、ADにおける前頭葉における表面積及びbvFTDにおける方向的に類似の差について正常に対して有意に低い相関強度と対照的である。これは、健常高齢者対象における狭い度数分布を有する疎なネットワークと比較した疾患における広い度数分布を有する多数の相関に起因し得る。増加した全体的な相関強度に加え、ノード次数により計測された葉内正及び逆相関の数は、両方の認知症群において健常高齢者対照よりも全ての葉において多かった。葉間参加インデックスにより計測された厚さにおける葉間正相関の数も、全ての葉において多かった。葉内及び葉間正表面積相関の数も、前頭、側頭、及び頭頂葉においてbvFTD及びADの両方で健常高齢者対象よりも大きかった。両方の疾患群はまた、皮質厚及び表面積間の結合における相関に関して健常高齢者対象と異なった。したがって、両方の疾患は、葉内で局所的に及び葉間でグローバルに生じる構造相関の強度及び程度の全体的増加により特徴づけられる。
【0162】
構造相関の全体的な強度及び程度の顕著な増加に関する2つの病態間の類似性は、試験における対象の分類のベースとなるbvFTD及びAD間の臨床的区別に疑問を投げかけると思われ得る。実際、全体的な皮質厚及び表面積に関して2つの病態間の差は存在しなかった。しかしながら、2つの病態間の多数の重要なネットワークの差が存在した。皮質厚ネットワークにおいて、全体的な正相関強度は前頭及び側頭葉においてADよりもbvFTDにおいて大きく、逆相関強度も前頭葉においてADよりもbvFTDにおいて大きかった。有意な正葉内相関の数は、頭頂及び後頭葉においてADよりもbvFTDにおいて多かった。逆に、正及び逆葉内相関の数は、前頭及び頭頂葉においてbvFTDよりもADにおいて大きかった。皮質厚及び表面積における逆相関のほとんどは、bvFTDにおいて半球間非同種前頭-側頭葉に及びADにおいて前頭-頭頂葉に関連した。
【0163】
相関ネットワークのハブ様組織も、2つの病態においてかなり異なった。ネットワークコネクターハブは、ネットワーク統合を提供する一方、地方ハブはネットワーク分離を提供すると考えられる。ハブは神経変性障害の損傷に対するレジリエンスを提供することが提案された。或いは、ハブは、特定の脆弱性の局在を表すことが示唆された。したがって、神経変性疾患の状況においてハブがどのように変化するかを試験することが興味深い。bvFTDは、前頭葉における皮質厚ハブの数の増加並びに側頭、頭頂、及び後頭葉におけるハブの低減又は排除により特徴づけられた。対照的に、ADは、全ての葉において分布したハブ、bvFTDと比較した前頭皮質におけるハブの数の低減、並びに側頭及び後頭葉におけるハブの増加により特徴づけられた。表面積についての正相関ネットワークにおいて、AD対象は、bvFTDよりも全体的に2倍多いハブを有し、それらのハブのトポロジーは異なった。したがって、まとめると、ADは厚さ及び表面積変性ネットワークの両方においてbvFTDよりもかなり多い分布パターンのハブにより特徴づけられる。対照的に、bvFTDにおいてハブ様組織がかなり多く局在する。bvFTDは、限局性であるがハブ周囲に集中する不均一な萎縮を有する臨床症候群であることが議論された。逆ネットワークハブ(CTネットワークについてbvFTD及びAD群の両方)の1つとしての島状領域の同定は、bvFTDにおける島のハブ様ファイバー連結度が増加が存在する拡散MRIからの近年の予測されない知見と一致する。他方、健常高齢者群のハブは、同種の様式で葉内及び葉間で高度に連結され、そうでなければ互いにリンクされなかった。AD及びbvFTD間のハブ様組織の差は、2つの病態において異なって代償するノード脆弱性の階層及びネットワーク適応の組織の差を示す。したがって、神経変性疾患において保存される葉モジュラリティと異なり、一定のハブ様組織は保存されず、それは既存のハブが皮質ネットワーク組織の固有の構造特性でないことを意味する。
【0164】
ADは皮質厚の変化によっても特徴づけられるが、それらは全体としてbvFTDよりも顕著でない一方、表面積の変化はADにおいてより顕著であり、それは隣接罹患カラムの数の協調的変化を示唆する。これらの差は、より局在化したリンクを有する介在ニューロン及びアストロサイトを冒すbvFTDの病変と一致する。ADにおける表面積相関の優位性は主に、主細胞により媒介される長索路皮質-皮質間投射系を冒す病変と一致する。bvFTDは多数の重要な点でADと異なり:bvFTDにおいてコリン作動性欠損が存在せず、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤又はメマンチンのいずれかによる治療からの治療的利益が存在せず、bvFTDは顕著なアストロサイト病変により特徴づけられ、新皮質中で罹患されるニューロンは、II及びVI層中の主に有棘介在ニューロン(III及びV層中の錐体細胞は主にADにおいて罹患される)及び海馬の歯状回であり(ADにおいて罹患されるニューロンは、CA1~4中のものであり、歯状回でない)、bvFTDは新皮質中の増加したグルタミン酸レベルにより特徴づけられるが、ADはそうでない。しかしながら、これらの病態は、本明細書に記載の相関構造変化の異なる分布パターンについての簡易な説明を提供しない。
【0165】
認知症におけるネットワーク変化のグローバル特性及び有意性
試験された2つの疾患群から現れる全体像は、ネットワークアーキテクチャが正及び逆相関の両方に関して全脳の全体にわたり協調的に変化することである。これら2つの病態における神経変性プロセスが一般にbvFTDの症例においては前頭及び側頭葉に、並びにADにおいては側頭及び頭頂葉に解剖学的に制限されるとみなされることを考慮すると、これは驚くべきことである。むしろ、ネットワーク分析は、全ての葉をグローバルに冒す両方の病態において皮質厚及び表面積ネットワークの変化が存在することを示唆するが、変化の解剖学的トポロジーの差が存在することを示唆する。タウ及びTDP-43凝集病変の両方は、プリオン様に拡散し、それにより罹患ニューロン集団の病変は、連結されているがそれまで非罹患のニューロン集団において病変を開始させ得ることが公知である。したがって、正相関は既存の正常ネットワークにおける病変の拡散を部分的に反映し得、それにより既存の機能的ネットワークが一緒に罹患され、又は免れる。或いは、このような相関は、機能的独立性を表現し得、その結果、協力関係のあるメンバーの機能の損失が、罹患ノードと機能的に通常同調されるパートナーの機能の並行損失をもたらす。この解釈は、正相関が拡散ベース軸索連結に収斂することが見出された健常成人における皮質厚相関に関する従来の研究と一致する。
【0166】
本明細書に考察される研究は、逆相関ネットワークの有意性を最初に強調する。両方の神経変性障害において見られる逆相関は主に葉間非同種関連を反映するため、それらは分析に対する葉ベースアプローチのみを使用して検出されなかったことに留意すべきである。これは特に、これらの非同種逆葉間相関の出現並びに神経変性疾患及び正常老化間の最も明瞭な全体的な差を表すそれらの強度の増加である。対照的に、正常老化脳は、かなり弱い同種正相関により特徴づけられる。有力な仮説は、あるノードが機能的に損傷するため、他の依然として非罹患のノードが代償し、疾患における非同種関連を強調することである。これは、観察される構造ネットワークにおける主要な再組織化が、部分的に特性が適応性であり得ることを意味する。構造的可塑性は他の状況において実証されており、機能的代償は限局性疾患において生じることが公知である。
【0167】
本明細書に考察される研究は、健常老化に対するbvFTD及びADにおける相関構造ネットワーク異常の最初の比較試験を表す。これらの相関は、2つの病状における皮質厚及び表面積における正及び逆リンク変化の両方から生じ、それらは正常高齢対象において見られるものと完全に異なる。疾患において見られる変化は特性がグローバルであり、bvFTD及びADにおいてそれぞれ前頭-側頭葉及び側頭-頭頂葉に制限されない。むしろ、これらは、2つの病態において異なる神経変性に対する構造的適応を表すと考えられる。さらに、相関ネットワークの全ては、正常と異なる及び2つの形態の認知症間で異なる完全に区別されるハブ様組織を示した。疾患において一定のままであるネットワークの葉組織と異なり、ハブ様組織は基礎病変によって変動する。これは、ハブ様組織が脳の固定化特性でなく、ハブに関して疾患を説明する試みが不適切であり得ることを意味する。報告されたAD及びbvFTD間の差は、2つの認知症集団の臨床的差が皮質の根本的なネットワーク構造の体系的な差に対応することを裏付ける。厚さ及び表面積ハブ様組織のトポロジカルな差、並びに根本的な正及び逆相関ネットワークは、単なる臨床的基準により区別することが困難であり得る2つの病態における鑑別診断を補助するための分析ツールの開発の基盤を提供し得る。
【0168】
神経薬理学的介入に対する患者群応答の決定における相関行列の使用
上記で考察される方法を使用して神経薬理学的介入に対する患者群応答を決定した。
【0169】
図17A~17Dは、2つの患者群、対症療法AD薬により治療された群(コリンエステラーゼ阻害剤及び/又はメマンチン;図の説明文中のach1)及び治療されなかった群(図の説明文中のach0)についての相関行列を示す。対象は、0.5、1、又は2からの臨床的認知症尺度(CDR)スコアの範囲であった。図17Aは、対症療法を受けていないADと診断された96人の対象についてのベースライン(すなわち、第0週)における皮質厚相関行列である。対照的に、図17Bは、対症療法を受けているADと診断された445人の対象についてのベースリンクにおける皮質厚相関行列である。図17Cは、対症療法を受けていないADと診断された96人の対象についてのベースラインにおける表面積相関行列であり、図17Dは、対症療法を受けているADと診断された445人の対象についてのベースラインにおける表面積相関行列である。
【0170】
図17A~17Dから確認することができるとおり、ADのための対症療法は、非治療患者(図17A及び17C)と比較して葉間非同種逆相関ネットワークの有意な増加を誘導する(図17B及び17Dの青色)。これは特に表面積ネットワークについて顕著である。
【0171】
これらの連結は、特定のノード(典型的には、脳の後部に局在)における罹患エリアの容積又は表面積の減少がリンクノードと統計的に有意に相関される逆相関を表し、そこでは容積又は表面積の対応する増加が存在する。上記で考察されるとおり、これらの非同種逆相関の存在は神経変性疾患を示し、病変から生じる後部機能不全のための前部代償を表す可能性が最も高い。対症的AD治療は、これらの非同種代償性結合の増加を誘導する。
【0172】
図18A~18Dは、それぞれ、皮質厚-正相関、皮質厚-逆相関、表面積-正相関、及び表面積-逆相関についての非同種脳葉間ノード次数(上記考察)のプロットである。これらのプロットから確認することができるとおり、有意な非同種脳葉間代償性逆相関の数は、対症的AD治療により大幅に増加する。
【0173】
図19A及び19Bは、時間的に離隔した構造神経学的データに基づく皮質厚相関行列を示す。図19Aは、対症的AD治療により治療されている445人のAD診断患者の群についての第0週における(すなわち、ベースラインにおける)皮質厚相関行列である。図19Bは、445人のAD診断患者の同じ群についての第65週における皮質厚相関行列である。介入期間の間、群をロイコメチルチオニニウムメシレート(LMTM;USAN名:ヒドロメチルチオニンメシレート)、タウ凝集阻害剤によっても、8mg/日(ここで及び以下で4mgを1日2回与えた)の投与量において治療した。確認することができるとおり、LMTMは、ADのための対症療法を受ける患者において構造相関ネットワークに対する最小の効果を有する。
【0174】
図20A~20Dは、それぞれ、皮質厚-正相関、皮質厚-逆相関、表面積-正相関、及び表面積-逆相関についてのach1群(対症的AD治療を同時に受ける)における第0週及び第65週間で比較された非同種脳葉間ノード次数のプロットである。確認することができるとおり、65週間にわたる脳ネットワーク相関構造に対するアドオンとしてのLMTMの最小の全体的効果が存在する。これは、ベースラインにおける患者がLMTMによる治療の65週間後に生じる変化についてのそれら自体の対照として機能するコホート内分析であることに留意することが重要である。
【0175】
図21A及び21Bは、時間的に離隔した構造神経学的データに基づく皮質厚相関行列を示す。図21Aは、単剤療法としてのLMTMを8mg/日の投与量において服用した96人のAD診断患者の群についての第0週における(すなわち、ベースラインにおける)における皮質厚相関行列である。図21Bは、96人のAD診断患者の同じ群についての第65週における皮質厚相関行列である。このコホート中の96人の患者は、LMTMとの組合せで対症的AD治療を受けていなかった。確認することができるとおり、単剤療法としてのLMTMは厚さ相関、葉内(正)及び葉間代償性(逆)相関の両方の大幅な低減を生成する。これは、ベースラインにおける患者がLMTMによる治療の65週間後に生じる変化についてのそれら自体の対照として機能するコホート内分析である。
【0176】
図22A及び22Bは、皮質厚-正相関及び皮質厚-逆相関についてのach0群における第0週及び第65週間で比較された葉間ノード次数のプロットである。プロットは、AD群における葉間相関の数に対する単剤療法としての8mg/日のLMTMの高度に有意な効果を示す。正及び逆非同種皮質厚相関の数の有意な低減は、65週間後に見られる。これは、LMTMが病変を低減させ、病変から生じるニューロン機能不全を低減させ、それにより脳の非罹患又は軽度罹患の前部領域の代償性入力形態の必要性を低減させる、脳の後部におけるニューロン機能の正常化に起因する可能性が高い。
【0177】
図23A及び23Bは、時間的に離隔した構造神経学的データに基づく表面積厚さ相関行列を示す。図23Aは、単剤療法としてのLMTMを8mg/日の投与量において服用し続けた96人のAD診断患者の群についての第0週(すなわち、ベースライン)における表面積相関行列である。図23Bは、96人のAD診断患者の同じ群についての第65週における表面積相関行列である。このコホート中の96人の患者は、同時対症的AD治療を服用していなかった。確認することができるとおり、単剤療法としてのLMTMは表面積相関、葉内(正)及び葉間代償性(逆)相関の両方の有意な低減を生成する。これは、ベースラインにおける患者がLMTMによる治療の65週間後に生じる変化についてのそれら自体の対照として機能するコホート内分析である。
【0178】
図24A及び24Bは、表面積-正相関及び表面積-逆相関についてのach0群における第0週及び第65週間で比較された非同種脳葉間ノード次数のプロットである。プロットは、AD群における葉間相関の数に対する単剤療法としての8mg/日のLMTMの有意な効果を示す。特に、65週間後の正及び逆/代償性表面積相関の数の有意な低減が存在する。
【0179】
図25A~25Dは、202人の対象の健常高齢者対照群と比較されたベースライン及び第65週における96人の患者AD群(CDR0.5、1、又は2を有する)間で比較された皮質厚相関行列を示す。確認することができるとおり、単剤療法としての8mg/日におけるLMTMは皮質厚ネットワークを正常に接近させる。
【0180】
図26A~26Dは、202人の対象の健常高齢者対照群と比較されたベースライン及び第65週における96人の患者AD群(CDR0.5、1、又は2を有する)間で比較された表面積相関行列を示す。確認することができるとおり、単剤療法としての8mg/日におけるLMTMは、表面積ネットワークを正常化させる。
【0181】
図27A~27Dは、202人の対象の健常高齢者対照群と比較されたベースライン及び第65週における0.5のCDRのみを有する54人の患者AD群間で比較された皮質厚相関行列を示す。確認することができるとおり、単剤療法としての8mg/日におけるLMTMは、逆/代償性非同種相関の数を低減させて正常高齢対照と同等にする。
【0182】
図28A~28Dは、202人の対象の健常高齢者対照群と比較されたベースライン及び第65週における0.5のCDRのみを有する54人の患者AD群間で比較された表面積相関行列を示す。確認することができるとおり、単剤療法としての8mg/日におけるLMTMは、逆/代償性非同種相関の数を低減させて正常高齢対照と同等又はそれよりも低くする。
【0183】
まとめると、上記で考察される構造相関ネットワーク分析は、AD及びbvFTDにおける高度に異常な逆非同種脳葉間相関の出現を明らかにする。これらは疾患が非罹患又は軽度罹患の前部脳領域からの代償性入力を表すことが仮定される。対症療法及びLMTMは、構造相関ネットワークに関してADにおいて根本的に異なる様式で作用する。対症療法は、代償性ネットワークのかなりの増加を誘導する。単剤療法としてのLMTMは、一次病変を低減させることによりそれらの代償性ネットワークについての必要性を低減させ、それにより罹患ニューロンをより正常に機能させる。これらの結果は、神経変性疾患を疾患修飾治療により好転させ、又は減衰させることができるが、対症的AD治療によってはできないため、神経変性疾患、例えば、ADにおいて見られる異常な逆非同種相関が特性が適応性であることを裏付ける。効果は、ベースラインにおける対象が、65週間の単剤療法としての8mg/日におけるLMTM治療の受容後に生じる変化についてのそれら自体の対照として機能するコホート内前/後分析において見られる。これらの分析は、粗い全脳又は葉容積分析よりも治療効果に対してかなり高感度である。さらに、以下に考察されるとおり、構造相関ネットワークに関して見られる結果は、再正規化部分有向コヒーレンス脳波分析技術により見られる機能的効果と一致する。
【0184】
脳波(EEG)を使用する構造/機能相関
EEGデータに対する再正規化部分有向コヒーレンス(rPDC)ネットワークアプローチは、ネットワークアプローチを使用して調査すべき脳内の電気活動の方向及び強度の指標を可能とする。これらは、例えば、国際公開第2017/118733号(その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)において考察されている。図29は、未加工EEGデータの一例を示し、図30は、収集されたEEGデータから得られたrPDCネットワークの一例を示す。
【0185】
図30に示されるとおり、得られたネットワークは、脳内のおよその局在を示す多数のノードを含む(図は、鼻を示す上部における三角形を有する頭部を見下ろす模式的様式で描画する)。ノードの局在は、EEGデータ、例えば、図29に示されるものを得るために使用される頭皮表面上の電極の配置により決定される。ノード間の有向連結は、脳内のあるノードから別のノードへの電気活動の流れを示す。
【0186】
所与のノードに入る及びそれから出る有向連結の数を計数し、及び/又はそれらの強度を計測することにより、ノードがシンク(であり、且つ出るものよりも多い及び/又は強い入る連結を有する)かソース(であり、且つ入るものよりも多い及び/又は強い出る連結を有する)かを定義することが可能である。これを図31に模式的に示し、内向き有向連結の数/強度を、外向き有向連結の数/強度から差し引く。したがって、極端な場合、差が負である場合、ノードはネットソースとして作用しており、それが正である場合、ノードはネットシンクとして作用している。より一般には、図40に示されるようなプロットにおいて確認することができるとおり、より低い値は、より多い/より強い外向き連結を示し、より高い値は、より多い/より強い内向き連結を示す。
【0187】
全てのノードについて内向き及び外向き連結間の差を導出した後、次いで患者の脳内のシンク及びソースの局在及び強度を示すヒートマップを提供することが可能である。これは、それぞれのノードをシンク又はソースのいずれかとして定義するステップを含み得る。このようなヒートマップの一例を図32に示す。この例において、青色領域(矢印A)は、より多い外向き連結を示し、ゆえにより多いソースノードを含有する一方、赤色/黄色領域(矢印B)は、より多い内向き連結を示し、ゆえにより多いシンクノードを含有する。このタイプのヒートマップは、「脳プリント(brainprint)」と称することができる。
【0188】
図33は、図32のヒートマップにおける非対称性の可視化を説明し、片側上のソース及びシンクの数を比較する。ヒートマップの左及び右側間のソース及びシンクのより高い差は黄色(矢印A)として現れる一方、より低い差は黒色(矢印B)として現れる。
【0189】
上記で考察される方法を使用して、初回評価(第1来院)における167人の診断対象(DS)及び162人のペアの被験者(PV)に分割された329人の対象から提供されたデータを分析した。
【0190】
【表2】
【0191】
確認することができるとおり、診断対象は、MMSE及びADAS-Cog精神測定尺度で有意に多く認知的に損傷を受け、全体的な臨床的認知症尺度(CDR)尺度でもより高いスコアを有する。他の点では、年齢分布でも性分布でも差は存在しない。
【0192】
図34は、ベースラインにおける診断対象の群の脳内のシンク及びソースの局在を可視化するヒートマップを示す。矢印Aは、より多い/より強いソースを含有する青色エリアのエリアを示し、矢印Bは、より多い/より強いシンクを含有する赤色エリアを示す。図35は、ペアの被験者の群の脳内のシンク及びソースの局在を可視化するヒートマップを示す。2つの画像を比較した場合、ADの罹患者は、ペアの被験者よりもその前頭葉において有意に強いソース(すなわち、多い/強い外向き連結、青色で示される)並びにその後部の頭頂、側頭及び後頭葉において有意に強いシンク(すなわち、多い/強い内向き連結、赤色/橙色で示される)を有することが明らかになる。
【0193】
上記で考察される329人の対象により提供されるデータのセットに対して機械学習分類器を訓練した。閉眼安静状態の間の100秒の脳活動からのβ帯域EEGデータをそれぞれの症例において使用してrPDCネットワークを調製した。次いで、機械学習分類器を使用して329人全ての対象をAD又はペアの被験者(PV)のいずれかとして分類し、95%の精度を達成した。さらに、機械学習分類器を使用して対象がADを有する確率を推定し、単なる二分決定ではなくそれ以上を可能とすることができる。例えば、ヒートマップが図36に示される対象はADを有する。対象は、臨床的診断を介してADを有することは既知である。機械学習分類器は、その患者がADを有することを99%の確率で推定し、したがってこの対象を正確に分類した。図37は、臨床的診断を介してADを有することが既知の対象からのヒートマップのさらなる例である。この例において、機械学習分類器は、患者がADを有する63%の確率、及び(したがって)患者がADを有さない37%の確率が存在したことを推定した。この情報を使用して臨床的診断がされていないADに対する患者の感受性を決定することができる。さらに、根本的な機能不全を示す異常シンク領域の特定の分布パターンは、さらにより詳述される神経心理学的検査及び将来的な臨床的評価についての臨床試験の特定のパターンと相関づけることができた。例えば、図36に説明される例は、AD以外の認知症の形態を有し得るが、本明細書においてはADを罹患すると分類した。
【0194】
見かけ上健常なコホートの精神測定検査は、対象のサブセットにおける18ヶ月にわたるホプキンス言語学習テストで下向きの認知機能の経過を示した。コホートの特徴は以下のとおりであった。確認することができるとおり、機能低下のリスクがあると見出されたものとリスクがないと見出されたものとの間でMMSE尺度でベースラインにおける認知スコアに関する差は存在しなかった。
【0195】
【表3】
【0196】
リスクがある対象の群のヒートマップを図38に示す一方、リスクがない対象の群のヒートマップを図39に示す。両方の群を見かけ上健常なコホートから採用するため、差は上記のAD対PV群についてほど明らかでない。図38は、ヒートマップ中でより強度の赤色/橙色として可視的な後部脳領域におけるより多い/より強いシンクを示す。図40は、群レベルにおける前部及び後部脳領域からのEEGネットワークにおけるソース及びシンクを比較する箱ひげ図である。この図から確認することができるとおり、リスクがある群は、前頭皮質からの外向き活動の増加及び後部脳領域への内向き活動の増加により特徴づけられる。EEG記録は、ベースライン、ホプキンス言語学習タスク(Hopkins Verbal Learning Task)に基づく任意の計測可能な機能低下前に実施した。したがって、続く18ヶ月後にわたり機能低下のリスクがある見かけ上正常な対象は、EEG分析により非侵襲的に得られるその脳活動のヒートマップに基づきベースラインにおいて既に同定することができる。
【0197】
上記により示されたとおり、診断対象及びペアの被験者間でネットワークにおける明らかな差が存在する。これらの差は、群レベルにおいて高度に有意である。認識されるとおり、機械学習分類器の第1のバージョンは、定型的な表面上の臨床的評価よりも高いレベルの精度を有し、さらなる臨床的管理における決定に使用することができる個々の対象レベルにおけるADを有する確率を与える。
【0198】
図41は、群レベル診断対象のヒートマップと比較したach0AD群についての第0週における皮質厚相関行列(上記考察)間の比較を示す。確認することができるとおり、前頭葉と後部の頭頂及び後頭脳領域との間で有意な数の逆非同種相関が存在する。診断対象の群のヒートマップは、EEGにより計測されるとおり脳連結度に関して同じ現象を示す。構造及びEEGアプローチの両方が、増加した前部から後部の活動の同じパターンを示す。図42は、群レベルのペアの被験者のヒートマップと比較した健常高齢者群についての第0週における皮質厚相関行列(上記考察)間の比較を示す。確認することができるとおり、前部脳領域と後部の頭頂及び後頭脳領域との間の任意の逆非同種相関の不存在は、前部から後部の電気活動の増加の不存在によりEEG上で適合する。
【0199】
図41に見られる非同種脳葉間代償性逆相関ネットワークの増加は、機能EEG変化として見られる特徴的なヒートマップ変化についての構造的基盤を提供する。
【0200】
図43は、高齢対照からの軽度ADの量的な差を示す箱ひげ図を示す。確認することができるとおり、AD対象は、β帯域においてより多い前部皮質からの外向き活動及びより多い後部皮質への内向き活動を有する。
【0201】
図44は3つのヒートマップを示し、左側から右側にかけて、それらは、対症療法により投薬された診断AD対象の群(med)、対症療法により投薬されなかった診断AD対象の群(nonMed)、及びペアの被験者の群である。図45は、投薬あり、投薬なし、及びペアの被験者についての群レベルネットワークを比較する箱ひげ図である。このデータは、53人の診断対象(DS)、15人の標準的投薬を受けている対象及び38人の標準的投薬を受けていない対象を含む予備試験に由来する。2つの群の特徴を以下の表に示す。非投薬群がかなり若い一方、MMSE又は性分布により計測されるとおり認知スコアに関して2つの群間で差は存在しない。
【0202】
【表4】
【0203】
ADAS-Cog尺度においてもCDR尺度においても統計的に有意な差は存在しなかった。
【0204】
図44及び45において確認することができるとおり、AD対象の両方の群は、β帯域においてペアの被験者よりも多い前部皮質からの外向き活動を有する。さらに、対症療法は、非投薬群と比較して前頭葉から外に向く活動を増加させることを確認することができる。これを図45において箱ひげ図に示す。投薬群は、前部皮質からの有意に多い外向き電気活動を有する。後部脳領域において、対症療法は、支持的な内向き電気活動の必要性を低減させる。
【0205】
前頭葉は、図17A~D及び図18A~Dにおける相関ネットワークの構造分析により示されるものと同じ現象をEEGにより示す。図44は、群レベルにおいてMRI構造分析により検出することができる差がEEGによっても検出することができることを示す。対症療法を受けている及び受けていない患者間のネットワーク差の構造分析は、脳の後部領域に向けられる非同種脳葉間連結度の増加を示唆するが、EEG分析は、後部領域に向けられる少ない内向き活動を示すことに留意すべきである。目下、対症療法は、他の周波帯域において後部脳領域への内向き活動を増加させることが仮定される。
【0206】
上記実施形態のシステム及び方法は、記載の構造成分及びユーザーインタラクションに加え、コンピュータシステム中で(特にコンピュータハードウェア中又はコンピュータソフトウェア中で)実装することができる。
【0207】
用語「コンピュータシステム」は、上記実施形態によるシステムを具現化し、又はその方法を実施するためのハードウェア、ソフトウェア及びデータストレージデバイスを含む。例えば、コンピュータシステムは、中央演算処理装置(CPU)、入力手段、出力手段及びデータストレージを含み得る。好ましくは、コンピュータシステムは、可視的な出力表示を提供するためのモニタを有する。データストレージは、RAM、ディスクドライブ又は他のコンピュータ可読媒体を含み得る。コンピュータシステムは、ネットワークにより連結された複数のコンピュータデバイスを含み得、そのネットワーク上で互いにコミュニケートし得る。
【0208】
上記実施形態の方法は、コンピュータプログラムとして又はコンピュータプログラム製品若しくはコンピュータ上で実行される場合、上記の方法を実施するように配置されるコンピュータプログラムを担持するコンピュータ可読媒体として提供することができる。
【0209】
用語「コンピュータ可読媒体」は、限定されるものではないが、コンピュータ又はコンピュータシステムにより直接読み取り、アクセスすることができる1つ又は複数の任意の非一時的媒体を含む。媒体としては、限定されるものではないが、磁気ストレージ媒体、例えば、フロッピーディスク、ハードディスクストレージ媒体及び磁気テープ;光学ストレージ媒体、例えば、光学ディスク又はCD-OM;電気ストレージ媒体、例えば、メモリ、例として、RAM、ROM及びフラッシュメモリ;並びに上記のハイブリッド及び組合せ、例えば、磁気/光学ストレージ媒体を挙げることができる。
【0210】
本発明を上記の例示的な実施形態とともに記載してきた一方、本開示を考慮して多くの均等な改変及び変更が当業者に明らかである。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、説明的なものであり、限定的なものではないとみなされる。記載の実施形態の種々の変更は、本発明の主旨及び範囲から逸脱せずに行うことができる。
【0211】
特に、上記実施形態の方法を記載の実施形態のシステム上で実装されるものとして記載してきたが、本開示の方法及びシステムは、互いに同時に実装する必要はないが、代替的なシステム上で、又は代替的方法を使用してそれぞれ実装することができる。
【0212】
付録A
【0213】
【表5】
【0214】
【表6】
【0215】
【表7】
【0216】
【表8】
【0217】
【表9】
【0218】
【表10】
【0219】
【表11】
【0220】
【表12】
【0221】
参考文献
Gauthier, S. et al. “Efficacy and safety of tau-aggregation inhibitor therapy in patients with mild or moderate Alzheimer’s disease: a randomised, controlled, double-blind, parallel-arm, phase 3 trial”, The Lancet 388,2873-2884(2016)
Wilcock, G. K. et al “Potential of low dose leuco-methylthioninium bis (hydromethanesulphonate) (lmtm) monotherapy for treatment of mild Alzheimer’s disease: Cohort analysis as modified primary outcome in a phase iii clinical trial. Journal of Alzheimer’s disease 61, 635-657 (2018)
Feldman, H. et al “A phase 3 trial of the tau and tdp-43 aggregation inhibitor, leuco-methylthioninium bis(hydromethanesulfonate) (lmtm), for behavioural variant frontotemporal dementia(bvFTD)” Journal of Neurochemistry 138,255 (2016)
Murray, A. D. et al “The balance between cognitive reserve and brain imaging biomarkers of cerebrovascular and Alzheimer’s diseases” Brain 134,3687-3696 (2011)
Storey, J. D. “A direct approach to false discovery rates” Journal of the Royal Statistical Society: Series B (Statistical Methodology) 64, 479-498 (2002)
Van Wijk, B. C., Stam, C.J. & Daffertshofer, A. “Comparing brain networks of different size and connectivity density using graph theory.” PLoS One 5,e13701 (2010)
Rubinov M, Sporns O. “Weight-conserving characterization of complex functional brain networks”, Neuroimage, 56(4):2068-79 (2011)
【0222】
上記に言及される全ての参照文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
【手続補正書】
【提出日】2021-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経薬理学的介入に対する患者応答を決定する方法であって、
神経薬理学的介入前に複数の患者から構造神経学的データを得るステップであって、前記構造神経学的データは、複数の皮質領域の物理的構造の指標となる、ステップ;
脳の皮質領域に対応する複数の構造ノードを割り当てること;及び
少なくとも部分的に前記構造神経学的データの対応データに基づき前記構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により前記構造神経学的データから第1の相関行列を作成するステップ;
神経薬理学的介入後に前記複数の患者からさらなる構造神経学的データを得るステップであって、前記さらなる構造神経学的データは、前記複数の皮質領域の物理的構造の指標となる、ステップ;並びに
少なくとも部分的に前記さらなる構造神経学的データの対応データに基づき前記構造ノードのペア間のペアワイズ相関を決定すること
により前記さらなる構造神経学的データから第2の相関行列を作成するステップ
を含み、
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することであって、それにより前記神経薬理学的介入に対する患者応答を決定すること
を含む方法。
【請求項2】
前記物理的構造は、皮質厚及び/又は表面積である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれのペアワイズ相関についてp値を決定し、有意水準と比較し、前記有意水準未満のp値のみを使用して前記対応する相関行列を作成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することは、前記第1の相関行列における逆相関の数及び/又は密度を前記第2の相関行列における逆相関の数及び/又は密度と比較することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脳の皮質領域に対応する前記複数の構造ノードを割り当てることは、同種又は非同種脳葉に対応する構造ノードを含有する群を定義することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することは、異なる構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することを含む、並びに/或いは
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較することは、前頭葉並びに頭頂葉及び後頭葉中にそれぞれ局在する構造ノードの群間の相関の数及び/又は密度を比較することを含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者は、神経認知疾患と診断されている、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記神経薬理学的介入は、疾患修飾医薬であり、任意にタウ凝集阻害剤である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記神経薬理学的介入は、対症療法である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記神経薬理学的介入は、疾患修飾医薬であり、前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列の前部及び後部脳領域間の相関の数及び/又は密度の低減により効能を確立する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
磁気共鳴画像法を介して前記構造神経学的データを得る、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上の神経障害を発症する患者の見込みを決定する方法であって:
前記患者の脳内の電気活動の指標となるデータを得るステップ;
少なくとも部分的に前記得られたデータに基づきネットワークを作成するステップであって、前記ネットワークは、複数のノード及びノード間の有向連結を含み、前記ネットワークは、前記患者の前記脳内の前記電気活動の流れの指標となる、ステップ;
それぞれのノードについて、前記ノードに入る連結の数及び/又は強度並びに前記ノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するステップ;並びに
前記計算された差を使用して、1つ以上の神経障害を発症する前記患者の見込みを決定するステップ
を含む方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成されるシステムであって、
前記構造神経学的データを得るように構成されデータ収集手段;
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を作成するように構成される相関行列作成手段
を含み
記システムは、以下のいずれか:
前記第1の相関行列及び第2の相関行列を提示するための表示手段;又は
前記第1の相関行列及び前記第2の相関行列を比較するための比較手段であって、それにより前記神経薬理学的介入に対する患者応答を決定するための比較手段
をさらに含むシステム。
【請求項14】
請求項12に記載の方法を実行するよう構成されるシステムであって:
前記患者の脳内の電気活動の指標となる前記データを得るように構成されるデータ収集手段;
少なくとも部分的に前記得られたデータに基づき前記ネットワークを作成するように構成されるネットワーク作成手段;
それぞれのノードについて、前記ノードに入る連結の数及び/又は強度並びに前記ノードから出る連結の数及び/又は強度の差を計算するように構成される差計算手段;並びに以下のいずれか:
前記計算された差の表現を表示するように構成される表示手段;又は
前記計算された差を使用して、1つ以上の神経障害に対する前記患者の感受性を決定するように構成される決定手段
を含むシステム。
【請求項15】
コンピュータ上で実行される場合、前記コンピュータに請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施させる実行可能コードであって、非一時的ストレージ媒体上に保存される実行可能コードを含むコンピュータプログラム。
【国際調査報告】