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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20220104BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 5/44 20060101ALI20220104BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20220104BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/04
C08K3/06
C08K5/44
C08K5/40
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021513196
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(85)【翻訳文提出日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 FR2019052097
(87)【国際公開番号】W WO2020053520
(87)【国際公開日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】1858135
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100179305
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 幸大
(72)【発明者】
【氏名】アロホ ダ シルヴァ, ホセ・カルロス
(72)【発明者】
【氏名】クロシェ, オロール
(72)【発明者】
【氏名】トリゲル, オレリー
(72)【発明者】
【氏名】ルメルル, フレデリック
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BC33
4J002BB151
4J002DA036
4J002DA047
4J002DE100
4J002DJ016
4J002EF050
4J002EV169
4J002EV278
4J002EV348
4J002FD016
4J002FD070
4J002FD147
4J002FD158
4J002FD159
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、タイヤであって、そのトレッドが、少なくとも80phrの、少なくとも70mol%のエチレン単位を含むエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーと、25phr~55phrの間のカーボンブラックと、1phr未満の硫黄と、加硫促進剤とを含むゴム組成物から全体的又は部分的になり、カーボンブラックが、ゴム組成物の補強用充填剤の60重量%を超え、ゴム組成中の硫黄の含有量の、加硫促進剤の量に対する重量比が1未満であり、加硫促進剤が一次促進剤、又は一次促進剤と二次促進剤との混合物である、タイヤに関する。このような組成物は良好な凝集特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを含むタイヤであって、転動する地面への接触が意図される部分であるトレッドが、少なくとも、高飽和ジエンエラストマーと、カーボンブラックを含む補強用充填剤と、硫黄及び加硫促進剤を含む加硫系とをベースとするゴム組成物から全体的又は部分的になり、
- 前記高飽和ジエンエラストマーが、コポリマーのモノマー単位の少なくとも70mol%となるエチレン単位を含むエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーであり、
- 前記ゴム組成物中の前記高飽和ジエンエラストマーの含有量が少なくとも80phrであり、
- 前記ゴム組成物中の前記カーボンブラックが、前記補強用充填剤の60質量%を超え、
- 前記ゴム組成物中の前記カーボンブラックの含有量が25phr~55phrの間であり、
- 前記ゴム組成物中の硫黄の含有量が1phr未満であり、
- 前記ゴム組成物中の前記硫黄含有量と前記加硫促進剤の量との間の質量比が1未満であり、
- 前記加硫促進剤が、一次促進剤、又は一次促進剤と二次促進剤との混合物であり、
- 前記質量比は、phrの単位で表される含有量及び量から計算される、
タイヤ。
【請求項2】
前記高飽和ジエンエラストマーが、75mol%から95mol%未満のエチレン単位、好ましくは75mol%~90mol%の間のエチレン単位を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物中の高飽和ジエンエラストマーの含有量が80~100phr、好ましくは90~100phrに及ぶ範囲内で変動する、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記1,3-ジエンが1,3-ブタジエンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記高飽和ジエンエラストマーが、式(I)の単位若しくは式(II)の単位、又は式(I)及び式(II)の単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【化1】
-CH-CH(CH=CH)- (II)
【請求項6】
前記高飽和ジエンエラストマーが統計的である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記式(I)の単位及び前記式(II)の単位のモルパーセント値、それぞれo及びpが、好ましくは以下の式(eq.1)を満たし、より優先的には式(eq.2)を満たし、o及びpは、前記高飽和ジエンエラストマーのすべてのモノマー単位を基準として計算される、請求項5又は6のいずれかに記載のタイヤ。
0<o+p≦25 (eq.1)
0<o+p<20 (eq.2)
【請求項8】
前記ゴム組成物中の前記硫黄含有量が、0.95phr未満、好ましくは0.3phr~0.95phrの間である、請求項1~7のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物中の前記硫黄含有量が、0.8phr未満、好ましくは0.3phr~0.8phrの間である、請求項1~8のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム組成物中の前記硫黄含有量と加硫促進剤の量との間の質量比が0.7以下、好ましくは0.6未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記一次促進剤が、スルフェンアミド、好ましくはN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドである、請求項1~10のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記二次促進剤が、チウラムジスルフィド、好ましくはテトラベンジルチウラムジスルフィドである、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ゴム組成物中の二次促進剤の量と加硫促進剤の量との間の質量比が0.5未満、優先的には0.3以下であり、前記質量比がphrの単位で表される量から計算される、請求項1~12のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記補強用充填剤がシリカを含む請求項1~13のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項15】
カーボンブラックが、前記補強用充填剤の85質量%を超え、好ましくは前記補強用充填剤の100質量%である、請求項1~14のいずれか一項に記載のタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、トレッドが、高飽和ジエンエラストマーに富むゴム組成物から全体的又は部分的になるタイヤの分野である。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物中に、酸化感受性が低いコポリマー、例えば、エラストマーのモノマー単位の50mol%を超えるモル含有量でエチレン単位を含むエラストマーである高飽和ジエンエラストマーを使用する方法が知られている。例えば、50mol%を超えるエチレンを含むエチレンと1,3-ジエンとのコポリマー、特にエチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーを挙げることができる。タイヤトレッド中でのこのようなエチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーの使用は、例えば、国際公開第2014/114607A1号パンフレットに記載されており、転がり抵抗と耐摩耗性との間の性能に関して改善された妥協点をタイヤに付与する効果が得られる。
【0003】
例えば、国際公開第2016/012259A1号パンフレットに記載されるように、耐高速摩耗性を向上させるために、航空機用タイヤトレッド中でこのようなコポリマーを使用する方法も知られている。
【0004】
トレッドが良好な凝集力を示す有用なタイヤを有することも重要である。この理由は、回転中、トレッドは、地面に直接接触することにより生じる機械的応力及び応力係数にさらされるからである。結果として、亀裂発生部位が形成される。表面又はトレッド内部においてそれらが伝播する間に、亀裂発生部位によって、トレッドを構成する材料が破壊されることがある。このトレッドの損傷によって、タイヤトレッドの有効寿命が短縮される。タイヤに生じる機械的応力及び応力係数は、タイヤが運ぶ重量の影響下で増幅されるので、重荷重を運搬する車両上に搭載されるタイヤの場合、良好な凝集力が特に探求される。
【0005】
したがって、タイヤの性能のさらなる改善、特に、それ自体エチレンが非常に富むエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーを主として含むゴム組成物から全体的又は部分的になるそのトレッドの凝集力の改善が、依然として問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、この問題に適応できるタイヤを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の第1の主題は、トレッドを含むタイヤであって、転動する地面への接触が意図される部分であるトレッドが、少なくとも、高飽和ジエンエラストマーと、カーボンブラックを含む補強用充填剤と、硫黄及び加硫促進剤を含む加硫系とをベースとするゴム組成物から全体的又は部分的になり、
- 高飽和ジエンエラストマーが、コポリマーのモノマー単位の少なくとも70mol%となるエチレン単位を含むエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーであり、
- ゴム組成物中の高飽和ジエンエラストマーの含有量が少なくとも80phrであり、
- ゴム組成物中のカーボンブラックが、補強用充填剤の60質量%を超え、
- ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量が25phr~55phrの間であり、
- ゴム組成物中の硫黄の含有量が1phr未満であり、
- ゴム組成物中の硫黄含有量と加硫促進剤の量との間の質量比が1未満であり、
- 加硫促進剤が、一次促進剤、又は一次促進剤と二次促進剤との混合物であり、
- 質量比は、phrの単位で表される含有量及び量から計算される、
タイヤである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
I.発明の詳細な説明
「a~bの間」という表現によって示されるあらゆる値の区間は、「a」を超え「b」未満の値の範囲(すなわち端の値a及びbは除外される)を表し、一方、「a~b」という表現によって示されるあらゆる値の区間は、「a」から「b」までに及ぶ値の範囲を意味する(すなわち厳密な端の値のa及びbを含む)。「phr」という略語は、100部のエラストマー(ゴム)(数種類のエラストマーが存在する場合は、それらのエラストマーの合計)当たりの重量部を意味する。
【0009】
本特許出願において、ゴム組成物の種々の成分の間の質量比は、phrの単位で表される成分の含有量又は量から計算される。
【0010】
本明細書の説明において、「~をベースとする組成物」という表現は、使用される種々の成分の、混合物、及び/又はその場反応の生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これらのベース成分の一部(例えばエラストマー、充填剤、若しくは加硫系の成分、又はタイヤの製造が意図されるゴム組成物中に従来使用される別の添加剤)は、タイヤの製造が意図される組成物の製造の種々の段階中に少なくとも部分的に互いに反応しやすい、又は互いに反応することが意図される。
【0011】
本特許出願において、「エラストマーのすべてのモノマー単位」又は「エラストマーのモノマー単位の総量」という表現は、重合によってエラストマー鎖中にモノマーが挿入されることで得られるエラストマーのすべての構成繰り返し単位を意味する。特に示されるのでなければ、高飽和ジエンエラストマー中のモノマー単位又は繰り返し単位の含有量は、エラストマーのすべてのモノマー単位を基準として計算されるモルパーセント値として表される。
【0012】
説明において言及される化合物は、化石又はバイオベースに由来するものであってよい。後者の場合、それらは、バイオマスから部分的に若しくは完全に誘導されてよく、又はバイオマスから誘導される再生可能な出発物質から得られてよい。エラストマー、可塑剤、充填剤などが特に関係する。
【0013】
本発明の目的に有用なエラストマーは、好ましくは統計的であり、エチレンの重合によって得られるエチレン単位を含む高飽和ジエンエラストマーである。周知の方法の1つでは、用語「エチレン単位」は、エラストマー鎖中へのエチレンの挿入によって得られる-(CH-CH)-単位を意味する。エチレン単位が、エラストマーのすべてのモノマー単位の少なくとも70mol%となるので、高飽和ジエンエラストマーは、エチレン単位に非常に富んでいる。
【0014】
好ましくは、高飽和ジエンエラストマーは、75mol%から95mol%未満のエチレン単位を含む。言い換えるとエチレン単位は、優先的には、高飽和ジエンエラストマーのすべてのモノマー単位の75mol%から95mol%未満である。より優先的には、高飽和ジエンエラストマーは75mol%~90mol%の間のエチレン単位を含み、モルパーセント値は、高飽和ジエンエラストマーすべてのモノマー単位を基準として計算される。
【0015】
高飽和ジエンエラストマーはエチレンと1,3-ジエンとのコポリマーであるので、これは1,3-ジエンの重合から得られる1,3-ジエン単位も含む。周知の方法の1つでは、「1,3-ジエン単位」という用語は、1,4付加、1,2付加、又はイソプレンの場合の3,4付加による1,3-ジエンの挿入によって得られる単位を意味する。1,3-ジエン単位は、例えば、4~12個の炭素原子を含む1,3-ジエン、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、又はアリール-1,3-ブタジエンの単位である。好ましくは、1,3-ジエンは1,3-ブタジエンである。
【0016】
本発明の第1の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは、式(I)の単位を含む。コポリマー中の式(I)の飽和6員環単位の1,2-シクロヘキサンジイルの存在は、成長中のポリマー鎖中へのエチレン及び1,3-ブタジエンの一連の非常に特殊な挿入によって得ることができる。
【化1】
【0017】
本発明の第2の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは式(II)の単位を含む。
-CH-CH(CH=CH)- (II)
【0018】
本発明の第3の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは式(I)及び式(II)の単位を含む。
【0019】
本発明の第4の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは式(I)の単位を含まない。この第4の実施形態によると、エチレンと1,3-ジエンとのコポリマーは好ましくは式(II)の単位を含む。
【0020】
高飽和ジエンエラストマーが式(I)の単位又は式(II)の単位を含む場合、高飽和ジエンエラストマー中の式(I)の単位及び式(II)の単位のモルパーセント値、それぞれo及びpは、好ましくは以下の式(eq.1)、より優先的には式(eq.2)を満たし、o及びpは、すべてのモノマー単位を基準として計算される。o及びpの優先的な値のこれらの範囲は、本発明のいずれの実施形態にも適用可能であり、すなわち優先的な変形形態を含めた第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、及び第4の実施形態に適用可能である。
0<o+p≦25 (eq.1)
0<o+p<20 (eq.2)
【0021】
優先的な変形形態を含めた、第1の実施形態、本発明の第2の実施形態、第3の実施形態、及び第4の実施形態によると、高飽和ジエンエラストマーは優先的には統計コポリマーである。
【0022】
特に第1の実施形態、本発明の第2の実施形態、第3の実施形態、及び第4の実施形態により規定される、本発明の目的に有用な高飽和ジエンエラストマーは、特に高飽和ジエンエラストマーの目標ミクロ構造に応じた当業者に周知の種々の合成方法により得ることができる。一般に、これは、周知の合成方法による、特にメタロセン錯体を含む触媒系の存在下での、少なくとも1,3-ジエン、好ましくは1,3-ブタジエンと、エチレンとの共重合によって調製することができる。この点において、メタロセン錯体をベースとする触媒系を挙げることができるが、これらの触媒系は、本出願人による欧州特許第1092731号明細書、国際公開第2004/035639号パンフレット、国際公開第2007/054223号パンフレット、及び国際公開第2007/054224号パンフレットに記載されている。統計的である場合も含めた高飽和ジエンエラストマーは、国際公開第2017/093654A1号パンフレット、国際公開第2018/020122A1号パンフレット、及び国際公開第2018/020123A1号パンフレットに記載されるものなどの予備形成型の触媒系を用いる方法によって調製することもできる。
【0023】
本発明の目的に有用な高飽和ジエンエラストマーは、ミクロ構造又はマクロ構造が互いに異なる複数の高飽和ジエンエラストマーの混合物からなることができる。
【0024】
本発明の第1の実施形態、本発明の第2の実施形態、第3の実施形態、及び第4の実施形態により規定される高飽和ジエンエラストマーにおいて、1,3-ジエンは好ましくは1,3-ブタジエンであり、その場合、高飽和ジエンエラストマーはエチレンと1,3-ブタジエンとのコポリマーであり、好ましくは統計的である。
【0025】
本発明によると、ゴム組成物中の高飽和ジエンエラストマーの含有量は、ゴム組成物のエラストマー(ゴム)100部当たり(phr)、少なくとも80重量部である。好ましくはゴム組成物中の高飽和ジエンエラストマーの含有量は、80~100phrに及ぶ範囲内で変動する。より優先的には、これは90~100phrに及ぶ範囲内で変動する。
【0026】
本発明の目的に有用な加硫系は、硫黄及び加硫促進剤を含むことを本質的な特徴とする。規定によって、加硫系中の硫黄含有量及び加硫促進剤の量は厳密に0phrを超える。有利には、請求項1~15のいずれか一項に規定されるゴム組成物中の硫黄含有量は0.3phrを超える。有利には、請求項1~15のいずれか一項に規定されるゴム組成物中の加硫促進剤の量は、一次促進剤、又は一次促進剤と二次促進剤との混合物のいずれの場合でも、少なくとも0.5phrである。
【0027】
硫黄は、典型的には分子硫黄又は硫黄供与剤の形態、好ましくは分子形態で提供される。分子形態の硫黄は、分子硫黄という用語でも呼ばれる。「硫黄供与体」という用語は、エラストマー鎖の加硫及び架橋中に形成されるポリスルフィド鎖の中に挿入可能な、ポリスルフィド鎖の形態で場合により結合する、硫黄原子を放出するあらゆる化合物を意味する。本発明によると、硫黄は1phr未満の含有量でゴム組成物中に使用され、ゴム組成物中の硫黄含有量と加硫促進剤の量との間の質量比は1未満である。硫黄含有量、及び硫黄含有量と加硫促進剤の量との間の質量比に関するこの二重の条件と、カーボンブラックで主として補強されるゴム組成物中の高飽和ジエンエラストマーの非常に主要な使用との組み合わせによって、転動する地面に接触することが意図される部分であるトレッド部分中に含まれるゴム組成物の凝集力を大幅に改善することが可能となる。
【0028】
第1の代替形態によると、加硫促進剤は一次促進剤であり、この場合、一次促進剤だけがゴム組成物の促進剤となる。第2の代替形態によると、加硫促進剤は一次促進剤と二次促進剤との混合物であり、この場合、一次促進剤及び二次促進剤だけがゴム組成物の促進剤となる。「一次促進剤」という用語は、1つの一次促進剤、又は複数の一次促進剤の混合物を意味する。同様に、「二次促進剤」という用語は、1つの二次促進剤、又は複数の二次促進剤の混合物を意味する。
【0029】
加硫促進剤が一次促進剤と二次促進剤との混合物である場合、二次促進剤は優先的には加硫促進剤の50質量%未満であり、これによって、ゴム組成物中の二次促進剤の量と加硫促進剤の量との間の質量比が優先的には0.5未満になる。より優先的には、ゴム組成物中の二次促進剤の量と加硫促進剤の量との間の質量比は優先的には0.3以下である。
【0030】
加硫促進剤が一次促進剤と二次促進剤との混合物である場合、請求項1~15のいずれか一項に規定されるゴム組成物中の二次促進剤の量と加硫促進剤の量との間の質量比は、好ましくは0.05を超え、特に0.05~0.7の間である。
【0031】
(一次又は二次)加硫促進剤として、硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫の促進剤として機能できるあらゆる化合物、特にチアゾール型及びそれらの誘導体の促進剤、一次促進剤に関してスルフェンアミド型の促進剤、又は二次促進剤に関して、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオ尿素、及びキサンテート型の促進剤を使用することができる。
【0032】
一次促進剤の例として、特に、スルフェンアミド化合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「DCBS」)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(「TBBS」)、及びこれらの化合物の混合物を挙げることができる。一次促進剤は、優先的にはスルフェンアミドであり、より優先的にはN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドである。
【0033】
二次促進剤の例として、特に、チウラムジスルフィド、例えばテトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド(「TBTD」)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)及び、これらの化合物の混合物を挙げることができる。二次促進剤は、優先的にはチウラムジスルフィドであり、より優先的にはテトラベンジルチウラムジスルフィドである。
【0034】
加硫促進剤がスルフェンアミドである場合、これは好ましくはN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドである。加硫促進剤が一次促進剤と二次促進剤との混合物である場合、加硫促進剤は、好ましくはスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物であり、特にN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物であり、さらに特にN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である。
【0035】
加硫促進剤がスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物である場合、二次促進剤の量と加硫促進剤の量との間の質量比は、優先的には0.5未満、より優先的には0.3以下である。
【0036】
加硫促進剤がN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物である場合、二次促進剤の量と加硫促進剤の量との間の質量比は、優先的には0.5未満、より優先的には0.3以下である。
【0037】
加硫促進剤がN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である場合、二次促進剤の量と加硫促進剤の量との間の質量比は、優先的には0.5未満、より優先的には0.3以下である。
【0038】
有利には、使用される硫黄は分子硫黄であり、使用される加硫促進剤は、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、特にN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、さらに特にN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である。
【0039】
好ましくは、ゴム組成物中の硫黄含有量は、0.95phr未満、好ましくは0.3phr~0.95phrの間である。さらにより優先的には、ゴム組成物中の硫黄含有量は、0.8phr未満、好ましくは0.3phr~0.8phrの間である。これらの優先的な範囲は、硫黄が分子硫黄である場合に特に適用することができる。これらの優先的な範囲は、加硫促進剤が、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である場合に特に適用することができる。これらの優先的な範囲は、硫黄が分子硫黄であり、加硫促進剤が、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である場合に特に適用することができる。
【0040】
第1の優先的な変形形態によると、硫黄含有量と加硫促進剤の量との間の質量比は0.7以下である。この第1の変形形態は、硫黄が分子硫黄である場合に適用することができる。この第1の変形形態は、加硫促進剤が、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である場合に適用することができる。この第1の変形形態は、硫黄が分子硫黄であり、加硫促進剤が、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である場合に適用することができる。
【0041】
第2のより優先的な変形形態によると、硫黄含有量と加硫促進剤の量との間の質量比は0.6未満である。この第2の変形形態は、硫黄が分子硫黄である場合に適用することができる。この第2の変形形態は、加硫促進剤が、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である場合に適用することができる。この第2の変形形態は、硫黄が分子硫黄であり、加硫促進剤が、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である場合に適用することができる。
【0042】
周知の方法の1つでは、加硫系は、加硫活性化剤、例えば酸化亜鉛などの金属酸化物、又はステアリン酸などの脂肪酸を含むこともできる。
【0043】
本発明の目的に有用なゴム組成物は、補強用充填剤を含むことを本質的な特徴とする。補強用充填剤は、タイヤの製造に使用可能なゴム組成物を補強する能力で知られているあらゆる種類の充填剤、例えば、カーボンブラックなどの無機充填剤、周知の方法でカップリング剤と会合するシリカなどの無機補強用充填剤、又はこれら2種類の充填剤の混合物を含むことができる。このような補強用充填剤は、典型的には、平均(質量平均)サイズが1マイクロメートル未満、一般に500nm未満、通常は20~200nmの間、特により優先的には20~150nmの間であるナノ粒子からなる。
【0044】
本発明の目的に有用な補強用充填剤は、カーボンブラックを含むことを本質的な特徴とする。本発明によると、ゴム組成物中のカーボンブラックは補強用充填剤の60質量%を超え、言い換えると上記補強用充填剤は、補強用充填剤の全重量に対して60質量%を超えるカーボンブラックを含む。本発明によると、ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は25phr~55phrの間である。
【0045】
第5の実施形態として知られる本発明の特定の実施形態によると、補強用充填剤はシリカを含む。使用されるシリカは、当業者に周知のあらゆる補強用シリカであってよく、特に、BET比表面積、及びさらにCTAB比表面積の両方が450m/g未満、好ましくは30~400m/gに及ぶ範囲、特に60~300m/gであるあらゆる沈降シリカ又はヒュームドシリカであってよい。あらゆる種類の沈降シリカ、特に高分散性シリカ(HDS)を使用することができる。これらの沈降シリカ、高分散性の場合も高分散性ではない場合もあるこれらの沈降シリカは当業者に周知である。例えば、特許出願の国際公開第03/016215-A1号パンフレット及び国際公開第03/016387-A1号パンフレットに記載のシリカを挙げることができる。本明細書において、BET比表面積は、The Journal of the American Chemical Society,Vol.60,page 309,February 1938に記載のBrunauer-Emmett-Teller法を用いたガス吸着による周知の方法で求められ、より詳細には1996年12月のフランス規格NF ISO 9277(多点(5点)体積測定法-ガス:窒素-脱気:160℃において1時間-相対圧力p/po範囲:0.05~0.17)により求められる。CTAB比表面積は、1987年11月のフランス規格NF T 45-007(方法B)により求められる外表面積である。
【0046】
シリカを高飽和ジエンエラストマーにカップリングさせるために、周知の方法で、シリカ(その粒子の表面)とエラストマーとの間で化学的及び/又は物理的な性質の十分な連結を得ることが意図される少なくとも二官能性のカップリング剤(又は結合剤)を使用することができる。特に、少なくとも二官能性のオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンが使用される。優先的には、オルガノシランは、TESPTと略記されEvonik社よりSi69の名称で販売されるビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのオルガノシランポリスルフィド(対称又は非対称)からなる群から選択される。
【0047】
本発明の第5の実施形態によると、硫黄は、優先的には分子硫黄である。本発明の第5の実施形態によると、加硫促進剤は、好ましくは、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である。本発明の第5の実施形態によると、加硫系は、より優先的には、硫黄として分子硫黄を含み、加硫促進剤として、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物を含む。第5の実施形態の優先的な変形形態は、いずれかの実施形態、すなわち、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、及び第4の実施形態と組み合わせることができる。
【0048】
第6の実施形態として知られる本発明の別の実施形態によると、カーボンブラックは、補強用充填剤の85質量%を超え、好ましくは補強用充填剤の100質量%である。カーボンブラックが100質量%である場合、補強用充填剤はカーボンブラックからなる。
【0049】
本発明の第6の実施形態によると、硫黄は優先的には分子硫黄である。本発明の第6の実施形態によると加硫促進剤は、好ましくは、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物である。本発明の第6の実施形態によると、加硫系は、より優先的には、硫黄として分子硫黄を含み、加硫促進剤として、スルフェンアミド、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、又はスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、例えばN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとチウラムジスルフィドとの混合物、又はN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとテトラベンジルチウラムジスルフィドとの混合物を含む。
【0050】
あらゆるカーボンブラック、特にタイヤトレッド中に従来使用されるブラック(タイヤグレードブラックとして知られる)が、カーボンブラックとしての使用に適切である。カーボンブラックは、単離された形態で、市販のものとして、又は別のあらゆる形態で、例えば使用されるゴム添加剤の一部の担体として使用することができる。特に、100、200、及び300シリーズの補強用カーボンブラック、又は500、600、若しくは700シリーズ(ASTMグレード)のブラックを挙げることができる。有利には、本発明の目的に有用であり、特に請求項1~15のいずれか一項に規定されるゴム組成物中、カーボンブラックは、100又は200シリーズのカーボンブラックである。
【0051】
本発明の目的に有用なゴム組成物は、トレッドを構成することが意図されるエラストマー組成物中に従来使用される通常の添加剤のすべて又は一部、例えば加工剤、可塑剤、顔料、保護剤、例えば抗オゾンワックス、化学的酸化防止剤、又は酸化防止剤を含むこともできる。
【0052】
第7の実施形態として知られる本発明の一実施形態によると、本発明の目的に有用であり、特に請求項1~15のいずれか一項に規定されるゴム組成物は、式(III)(式中、R、R、及びRは、互いに独立して、水素原子、又は線状、分岐、若しくは環状のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアリール基から選択され、場合により1つ以上のヘテロ原子で中断されるC~C炭化水素ベースの基を表し、R及びRを合わせたものが場合により非芳香環を形成する)の亜鉛塩の形態の亜鉛ジアクリレート誘導体を含まない。第7の実施形態は、本発明のいずれかの実施形態、すなわち優先的な変形形態を含めた第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、第5の実施形態、及び第6の実施形態と組み合わせることができる。
【化2】
【0053】
ゴム組成物は、110℃~190℃の間、好ましくは130℃~180℃の間の最高温度までの高温での熱機械的作業又は混練の第1の段階(場合により「非生産」段階と呼ばれる)と、引き続き、典型的には110℃未満、例えば40℃~100℃のより低い温度での機械的作業の第2の段階(場合により「生産」段階と呼ばれる)との当業者に周知の一般手順による調製の2つの連続する段階を用いて、適切なミキサー中で製造することができ、その最終段階中に硫黄若しくは硫黄供与体及び加硫促進剤とが混入される。
【0054】
例として、第1の段階(非生産)は、1つの熱機械的ステップとして行われ、その間に、硫黄及び加硫促進剤を除いて、すべての必要成分、任意選択の追加の加工剤、及びその他の種々の添加剤が、従来の内部ミキサーなどの適切なミキサー中に導入される。この非生産段階中の全混練時間は、好ましくは1~15分の間である。第1の非生産段階中にこうして得られた混合物を冷却した後、次に硫黄及び加硫促進剤が低温において、一般にオープンミルなどの外部ミキサー中に加えられ;全体が数分、例えば2~15分の間混合される(生産段階)。
【0055】
一実施形態によると、ゴム組成物が押出成形されて、タイヤのトレッドプロファイルの全体又は一部が形成される。次に、外側から内側までの半径方向に、トレッド、クラウン補強材、及びカーカス補強材を通常含むタイヤの組立中に、クラウン補強材の半径方向外側にトレッドが配置される。「半径方向」という用語は、周知の方法で、タイヤの回転軸に対して半径方向にあることを意味する。
【0056】
タイヤは、生の形態(すなわち、タイヤを硬化させるステップの前)又は硬化したい形態(すなわち、タイヤを硬化させるステップの後)であってよい。タイヤは優先的には、重荷重の運搬が意図される車両、例えば重量物運搬車及び土木車両のためのタイヤである。
【0057】
上記の本発明の特徴、及びその他のものは、非限定的な例証として提供される本発明の幾つかの実施例の以下の説明を読めば、より明確に理解されるであろう。
【実施例
【0058】
II.本発明の実施例
II.1 試験及び測定:
II.1-1 エラストマーのミクロ構造の決定:
エラストマーのミクロ構造の決定は、H NMR分析によって行われ、H NMR分析の分解能では、すべての種の帰属及び定量を行うことができない場合に13C NMR分析を組み合わせて行われる。測定は、Brueker 500 MHz NMR分光計を用いて、プロトン測定の場合500.43MHz、及び炭素測定の場合125.83MHzの周波数において行われる。
【0059】
溶媒中に膨潤する性質を有する不溶性エラストマーの場合、4mm z-grad HRMASプローブが、プロトンデカップルモードでのプロトン及び炭素の測定に使用される。スペクトルは4000Hz~5000Hzの回転速度で取得される。
【0060】
可溶性エラストマーに対する測定の場合、液体NMRプローブが、プロトンでのカップルモードでのプロトン及び炭素の測定に使用される。
【0061】
不溶性試料の調製は、分析される材料と、膨潤可能な重水素化溶媒、一般に重水素化クロロホルム(CDCl3)とを満たしたローター中で行われる。使用される溶媒は、常に重水素化される必要があり、その化学的性質は当業者によって適合させることができる。使用される材料の量は、十分な感度及び分解能のスペクトルが得られるように調節される。
【0062】
可溶性試料は、重水素化溶媒中(1mL中約25mgのエラストマー)、一般に重水素化クロロホルム(CDCl3)中に溶解される。使用される溶媒又は溶媒ブレンドは常に重水素化される必要があり、その化学的性質は当業者によって適合させることができる。
【0063】
両方の場合(可溶性試料又は膨潤試料)で:
30°シングルパルスシーケンスがプロトンNMRに使用される。スペクトルウィンドウは、分析される分子に帰属するすべての共鳴線が測定されるように設定される。積算回数は、各単位の定量に十分な信号対雑音比が得られるように設定される。各パルス間のリサイクル遅延は、定量的測定が行われるように適合される。
【0064】
30° シングルパルスシーケンスが炭素NMRに使用され、プロトンデカップリングは、核オーバーハウザー効果(NOE)を回避し定量性を維持するために取得中にのみ行われる。スペクトルウィンドウは、分析される分子に帰属するすべての共鳴線が測定されるように設定される。積算回数は、各単位の定量に十分な信号対雑音比が得られるように設定される。各パルス間のリサイクル遅延は、定量的測定が行われるように適合される。
【0065】
NMR測定は25℃で行われる。
【0066】
II.1-2 亀裂発生部位の存在下での機械的強度(引裂性):
試験片を破壊するために500mm/分で延伸される試験片の引裂強度及び変形が測定される。引張試験片は、平行六面体型のゴムスラブからなり、例えば1~2mmの間の厚さ、130~170mmの間の長さ、及び10~15mmの間の幅を有し、二つの側端のそれぞれが、引張試験機のジョーに固定するための円筒形ゴムビーズ(直径5mm)で長手方向で覆われる。試験開始前に、試験片の長手方向に中間の長さにおいて整列させて、試験片の各末端に1つと中央に1つの、15~20mmの間の長さの3つの非常に微細なノッチをかみそりの刃を用いて形成する。破壊するために作用する力(N/mm)が求められ、破断時伸びが測定される。この試験は空気中、100℃の温度で行った。高い値は、亀裂発生部位を有してもゴム組成物の凝集力が良好であることを反映している。
【0067】
II.1-3 引張試験:
破断時伸び(EB%)及び破断応力(BS)の試験は、H2ダンベル試験片上での2005年12月の規格NF ISO 37に基づいており、500mm/分の牽引速度で測定される。破断時伸びは、伸びのパーセント値として表される。破断応力はMPaの単位で表される。すべての引張試験測定は60℃で行われる。
【0068】
II.2 ゴム組成物の調製:
配合の詳細が表1に示されるゴム組成物を以下の方法で調製した:
エラストマーと、補強用充填剤と、硫黄及び加硫促進剤を除いた種々の他の成分とを、連続して内部ミキサー中に導入し(最終充填度:約70容積%)、その最初の容器温度は約80℃である。次に、熱機械的作業(非生産段階)を1段階で行い、165℃の最高「降下」温度に到達するまで、合計約3~4分間続ける。こうして得られた混合物を回収し、冷却して、次に硫黄及び加硫促進剤をミキサー(ホモフィニッシャー)上30℃で混入し、全体を適切な時間(例えば約10分)混練する(生産段階)。
【0069】
こうして得られた組成物は続いて、それらの物理的若しくは機械的性質の測定のためにスラブ(2~3mmの厚さ)若しくは薄いゴムシートのいずれかの形態にカレンダー加工され、又はタイヤトレッドの形態に押出成形される。
【0070】
エラストマー(EBR)は以下の手順により調製される:
30mgのメタロセン[{MeSiFluNd(μ-BHLi(THF)}、記号Fluは式C13のフルオレニル基を表す]が、第1のグローブボックス中のSteinie中に導入される。第2のSteinieボトル中の300mlのメチルシクロヘキサン中にあらかじめ溶解させた共触媒のブチルオクチルマグネシウムを、メタロセンが入った第1のSteinieボトル中に、0.00007mol/Lのメタロセン、0.0004mol/Lの共触媒の比率で導入する。室温で10分間接触させた後、触媒溶液が得られる。この触媒溶液を次に重合反応器中に導入させる。次に反応器中の温度を80℃まで上昇させる。この温度に到達してから、エチレンと1,3-ブタジエンとの気体混合物(80/20mol%)を反応器中に注入することによって反応を開始する。重合反応は8barの圧力で進行させる。メタロセン及び共触媒の比率は、それぞれ0.00007mol/L及び0.0004mol/Lである。冷却させることによって重合反応を停止し、反応器を脱気し、エタノールを加える。ポリマー溶液に酸化防止剤を加える。真空オーブン中で乾燥させることによってコポリマーを回収する。
【0071】
II.3 結果:
結果を表1中に示す。
【0072】
硫黄含有量が1未満であり、硫黄含有量と加硫促進剤の量との間の質量比が1未満である本発明によるゴム組成物C1、C4、C5、C6、C7、C8、C9、及びC10は、準拠していないゴム組成物C2及びC3よりもはるかに大きい破断時伸びの値を有する。亀裂発生部位が存在しても存在しなくても、本発明による組成物C1、C4、C5、C6、C7、C8、C9、及びC10は、組成物C2及びC3よりもはるかに機械的に強靭であり凝集性であることが分かる。
【0073】
したがって、転動する地面への接触が意図される部分が、組成物C2及びC3ではなく本発明による組成物C1、C4、C5、C6、C7、C8、C9、及びC10から全体的又は部分的になるトレッドを含む場合に、タイヤは改善された有効寿命を有する。
【0074】
【表1】
【国際調査報告】