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特表2022-503696治療効果を高めるために単一タンパク質でカプセル化された医薬品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】治療効果を高めるために単一タンパク質でカプセル化された医薬品
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220104BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220104BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/498 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 31/08 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K45/06
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/16
A61K47/18
A61K39/395 Y
A61P35/00
A61P31/04
A61K31/704
A61K31/4745
A61K31/475
A61K31/136
A61K31/7048
A61K31/498
A61P31/08
A61K31/519
A61K31/496
A61K31/337
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021513955
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-03-09
(86)【国際出願番号】 US2019056133
(87)【国際公開番号】W WO2020081460
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】62/746,964
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521100069
【氏名又は名称】サンステイト バイオサイエンシーズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ユー, チャンジュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076CC27
4C076CC32
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD40
4C076DD48
4C076DD52
4C076EE23
4C076EE41
4C076FF12
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA37
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZC201
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA33
4C085BB33
4C085BB36
4C085BB37
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC51
4C086CA03
4C086CB05
4C086CB09
4C086CB14
4C086CB22
4C086EA10
4C086EA15
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA37
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA05
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA57
4C206NA05
4C206NA10
4C206ZB26
4C206ZC41
(57)【要約】
本発明は、医薬品の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合している単一タンパク質を含む組成物を提供する。組成物は、医薬品の毒性を低減するために、及び/またはその治療域を広げるために有用である。本発明は、かかる組成物を調製する方法もまた提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合している単一タンパク質を含む組成物。
【請求項2】
前記単一タンパク質がアルブミンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記単一タンパク質がグロブリンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記単一タンパク質がフィブリノーゲンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記単一タンパク質が、IgA、IgM、またはIgGである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記医薬品の複数の分子が、各単一タンパク質内にしっかりと結合される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記医薬品の少なくとも1つの分子が各単一タンパク質内にしっかりと結合される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記医薬品の各分子が、前記単一タンパク質内に完全にカプセル化される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬品の少なくとも1つの分子の表面積の一部のみが、前記単一タンパク質によってカプセル化される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
水及び1つ以上の水溶性有機溶媒を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記医薬品が、水に難溶である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記医薬品が、アミノ基を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記医薬品が、カルボキシル基を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記医薬品が、カルボキシル基及びアミノ基を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記医薬品が、抗がん化合物である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記医薬品が、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、またはビンカアルカロイドもしくはその誘導体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記医薬品が、アルキル化剤、代謝拮抗物質、微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞毒性抗生物質である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗がん化合物が、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、トポテカン、イリノテカン、アクチノマイシンD、イダルビシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、SN-38、イキサベピロン、エリブリン、ビンデシン、カンプトテシン、タキソール、ドセタキセル、ベンダムスチン、ネララビン、ピラルビシン、クロファラビン、バルルビシン、クロラムブシル、またはメルファランである、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記抗がん化合物がドキソルビシンである、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記医薬品が抗生物質である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記医薬品が、アンホテリシンB、クロファジミン、またはリファンピシンまたはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、またはフルオロキノロン抗生物質である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物中の前記医薬品の最大耐量が、遊離形態の前記医薬品単独の最大耐量より大きい、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物中の前記医薬品の最大耐量が、遊離形態の前記医薬品単独の最大耐量より少なくとも10%大きい、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物中の前記医薬品の有効性が、前記医薬品単独の有効性より大きい、請求項1~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物中の前記医薬品の有効性が、前記医薬品単独の有効性より少なくとも10%大きい、請求項1~23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記医薬品にしっかりと結合された前記単一タンパク質は、対応するしっかりと結合されていない単一タンパク質と比較して、吸収、蛍光、円偏光二色性スペクトル、またはFTIRが異なる、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
さらに、第二の医薬品の1つ以上の分子を含む、請求項1~25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記第二の医薬品の前記1つ以上の分子が、前記単一タンパク質にしっかりと結合される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記第二の医薬品の複数の分子が、各単一タンパク質内にカプセル化される、請求項27~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記第二の医薬品の少なくとも1つの分子が、各単一タンパク質内にカプセル化される、請求項27~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記第二の医薬品の各分子が、前記単一タンパク質内に完全にカプセル化される、請求項27~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記第二の医薬品の少なくとも1つの分子の表面積の一部のみが、前記単一タンパク質によってカプセル化される、請求項27~28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
水を含む、請求項27~32のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
前記第二の医薬品が、アミノ基を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
前記第二の医薬品が、カルボキシル基を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記第二の医薬品が、カルボキシル基及びアミノ基を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記第二の医薬品が、抗がん化合物である、請求項27~36のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記第二の医薬品が、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、またはビンカアルカロイドもしくはその誘導体である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
前記第二の医薬品が、アルキル化剤、代謝拮抗物質、微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞毒性抗生物質である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
前記第二の医薬品が、ミトキサントロン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、トポテカン、イリノテカン、アクチノマイシンD、イダルビシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、SN-38、イキサベピロン、エリブリン、ビンデシン、カンプトテシン、タキソール、ドセタキセル、ベンダムスチン、ネララビン、ピラルビシン、クロファラビン、バルルビシン、クロラムブシル、またはメルファランである、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
前記第二の医薬品がドセタキセルである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記医薬品がアントラサイクリンであり、前記第二の医薬品が細胞骨格破壊剤である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
前記医薬品がアントラサイクリンであり、前記第二の医薬品がビンカアルカロイドまたはその誘導体である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記医薬品が細胞骨格破壊剤であり、前記第二の医薬品がトポイソメラーゼIの阻害剤である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
前記医薬品が細胞骨格破壊剤であり、前記第二の医薬品がトポイソメラーゼIIの阻害剤である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記医薬品がアントラサイクリンであり、前記第二の医薬品がキナーゼ阻害剤である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記第二の医薬品が、アルキル化剤、代謝拮抗物質、微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞毒性抗生物質である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
前記医薬品が微小管阻害薬であり、前記第二の医薬品がトポイソメラーゼ阻害剤である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記医薬品が微小管阻害薬であり、前記第二の医薬品が細胞毒性抗生物質である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項50】
前記医薬品がトポイソメラーゼ阻害剤であり、前記第二の医薬品が細胞毒性抗生物質である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
前記医薬品が微小管阻害薬であり、前記第二の医薬品がアルキル化剤である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項52】
前記第二の医薬品が抗生物質である、請求項27~33のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項53】
前記第二の医薬品が、アンホテリシンB、クロファジミン、リファンピシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、またはフルオロキノロン抗生物質である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物中の前記第二の医薬品の最大耐量が、遊離形態の前記医薬品単独の最大耐量より大きい、請求項27~53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物中の前記第二の医薬品の最大耐量が、遊離形態の前記医薬品単独の最大耐量より少なくとも10%大きい、請求項27~53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
前記組成物中の前記第二の医薬品の有効性が、前記医薬品単独の有効性より大きい、請求項27~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項57】
前記組成物中の前記第二の医薬品の有効性が、前記医薬品単独の有効性より少なくとも10%大きい、請求項27~55のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項58】
前記第二の医薬品にしっかりと結合された前記単一タンパク質は、前記第二の医薬品にしっかりと結合されていない対応する単一タンパク質と比較して、吸収、蛍光、円偏光二色性スペクトル、またはFTIRが異なる、請求項27~57のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項59】
さらに、医薬的に許容される希釈剤または担体を含む、請求項1~58のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項60】
ヒトまたは動物のがんの治療方法であって、請求項15~19及び37~41のいずれか1項に記載の組成物を、前記ヒトまたは動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
前記治療薬がドキソルビシンであり、前記単一タンパク質組成物中の前記ドキソルビシンの最大耐量が、ドキソルビシン単独の最大耐量より少なくとも10%大きい、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
水、医薬品の1つ以上の分子、及び任意に1つ以上の水溶性有機溶媒を含む第一の溶液と、水、単一タンパク質、及び任意に1つ以上の水溶性有機溶媒を含む第二の溶液を混合し、第三の溶液を得ることを含む方法。
【請求項63】
さらに、前記第三の溶液を、微生物を除去する濾過を介して滅菌することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
各水溶性有機溶媒が、
a)水溶性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びt-ブタノール)、
b)水溶性ジオール及びトリオール、テトラオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセロール)、
c)水溶性アルデヒド及びケトン(例えば、アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、アセトアルデヒド、ホルミルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、及びブチルアルデヒド)、
d)水溶性ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、及びブタンニトリル)、
e)低分子量の水溶性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール)、
f)水溶性アミド(例えば、DMF、ジメチルアセトアミド、及びジメチルプロパンアミド)、
g)水溶性エーテル(例えば、ジエチルエーテル、THF、及びジオキサン)、ならびに
h)他の水溶性有機溶媒(例えば、DMSO)
からなる群から独立して選択される、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記医薬品が、ドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、またはイダルビシン、ドセタキセルである、請求項62~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記医薬品の前記分子にしっかりと結合された前記単一タンパク質は、前記医薬品の前記分子にしっかりと結合されていない対応する単一タンパク質と比較して、吸収、蛍光、FTIR、または円偏光二色性が異なる、請求項62~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
請求項62~66のいずれか1項に記載の方法によって調製される組成物。
【請求項68】
がんの予防的または治療的処置のための、請求項15~19及び37~51のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項69】
動物のがんを治療するための薬剤を調製するための、請求項15~18及び37~51のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項70】
細菌感染症の予防的または治療的処置のための、請求項20~21及び52~53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項71】
動物の細菌感染症を治療するための薬剤を調製するための、請求項20~21及び52~53のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月17日に出願された米国仮出願第62/746,964号の優先権を主張する。本出願の全内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
化学療法は、がん治療の一種であり、標準化された化学療法レジメンの一部として、1つ以上の抗がん剤(化学療法剤)を使用する。それは、有糸分裂、すなわち、細胞分裂を阻害する細胞内毒素の非特異的使用を暗示することになる。化学療法剤は、細胞毒性の場合もあれば、遺伝毒性の場合も、その両方の場合もある。化学療法技術には、使用する薬剤の種類に応じた様々な副作用がある。最も一般的な薬剤は、主に、急速に分裂する体の細胞、例えば、血液細胞、ならびに口、胃、及び腸の内側を覆う細胞に影響を与える。化学療法に関連する毒性は、投与後、数時間または数日以内に急性に生じる場合もあれば、数週間から数年、慢性的に生じる場合もある。重症の場合、化学療法剤は、臓器障害、例えば、アントラサイクリン系薬剤による心臓毒性(心臓障害)、多くの細胞毒性薬による肝毒性(肝臓障害)、腫瘍崩壊症候群による腎毒性(腎臓障害)及び白金系薬剤による中毒性難聴(内耳の損傷)を引き起こす場合がある。
【0003】
小分子アントラサイクリン系薬剤ドキソルビシン(DOX)は、広く使用されている抗がん治療薬の1つである。FDAに認可された最も強力な化学療法薬の中でも、アントラサイクリン系薬剤(Carvalho,C.,et el.,Curr Med Chem,2009, 16, 3267-3285)は、固形腫瘍及び血液系腫瘍の両方に対して広範囲の抗腫瘍活性を示す(Tacar,O.,S et el.,J Pharm Pharmacol,2013, 65, 157-170、Tahover,E.,et el.,Anticancer Drugs,2015, 26, 241-258、及びShafei,A.,et el.,Biomed Pharmacother,2017, 95, 1209-1218)。しかしながら、小分子かつ疎水性分子であるため、DOXは、すべての組織及び臓器に無差別に浸透し、全身毒性、例えば、心筋症及び骨髄抑制を引き起こす。DOXの累積投与量がある特定のレベルに達すると、うっ血性心不全の発生率が急激に増加する(Von Hoff,D.D.,et el.,Ann Intern Med,1979, 91, 710-717)ため、DOX治療の生涯の最大限度は、<450mg/mに設定されている。DOX誘発性の心筋症は、酸化ストレス、収縮性タンパク質の下方制御、及びp53誘導性アポトーシスを伴い得る(Chatterjee,K.,et el.,Cardiology, 2010, 115, 155-162)。その抗腫瘍作用は、DOXが、がん細胞膜に容易に浸透し、核に集中してDNAに効率的に結合し、その後、トポイソメラーゼ、DNA複製及び転写を阻害することができるという事実に由来する。同時に、これらの特性はまた、DOXがその経路で接触する健康な細胞に迅速に侵入することを可能にし、健康な臓器及び組織に深刻な損傷を引き起こす。さらに、DOXは、不十分な薬物動態(PK)を示し、これは、二相性曲線(Greene,R.F.,et el.,Cancer Res,1983, 43, 3417-3421、Speth,P.A.,Linssen,et el.,Cancer Chemother Pharmacol,1987, 20, 305-310、及びSpeth,P.A.,et el.,Clin Pharmacol Ther,1987, 41, 661-665)または三相性曲線(Benjamin,R.S.,et el.,Cancer Res,1977, 37, 1416-1420、及びEksborg,S.,et el.,Eur J Clin Pharmacol,1985, 28, 205-212)のいずれかで説明することができ、5~12分の短血漿循環半減期及び約30時間の終末相半減期を有する(Speth,P.A.,et el.,Clin Pharmacokine,1988,t 15, 15-31)。これらの望ましくない特徴は、その治療域の狭さに起因して、DOX治療の臨床転帰に深刻な影響を与える。
【0004】
DOXの毒性を低減するために様々な取り組み及び研究が行われてきた。成功への鍵は、正常細胞へのDOXの接近を制限すると同時に腫瘍へのその輸送/送達を増加させることであり、これは、原理上は、DOXと、約50kDの腎クリアランスを超えるMWの高分子、自己組織化、または凝集系との会合/結合/複合化/コンジュゲート化の合理的に設計された戦略によって達成され得る。DOXとナノサイズの部分を会合させることにより、かかる系は、腫瘍の不規則な血管新生及び不十分なリンパ液排出に起因する血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果により、DOXのPKを大幅に改善し、その循環寿命を劇的に延長し、腫瘍に対するその接近/送達を向上させる。リポソーム、ポリマーコンジュゲーション、タンパク質コンジュゲーション、タンパク質ナノ粒子及び金属/無機ナノ粒子(NP)を使用した多くの研究により、これらの基本原理が一貫して実証されている。しかしながら、現在の系の成果は限られており、これは、FDAに認可されたDoxilにも当てはまる(Petersen,G.H.,et el.,J Control Release,2016, 232, 255-264)。現在の系が、期待に応えられない理由はいくつかある。リポソームは、細胞膜と非特異的に融合して積荷であるDOXを降ろし、全身毒性を引き起こす。合成ポリマー及びタンパク質にDOXを化学的にコンジュゲートすることで、DOXを修飾してコンジュゲーションが可能になるが、同時に、化学修飾に起因するその制御放出及び特性の変化という課題に直面する。金属/無機NPは、かつて効率的な薬物送達用の特効薬として歓迎されたが、自然の系とは程遠い。それらと組織及び臓器の相互作用についてはまだ十分に理解されていない。さらに、これらの非自然系の多くは、我々の体の複雑な免疫系によって認識される可能性があり、患者ごとに異なり得る幅広い反応につながる。最後に、人体が人工的な系(合成ポリマー、金属/無機NP等)をどのように処理するかに関する知識は限られている。タンパク質及びアミド系ポリマーは、代謝によって使用/処理することができるモノマーまで酵素的に分解され得るが、非生分解性ポリマー及び金属/無機NPによる長期的な影響は不明である。ヒト血清アルブミンナノ粒子(HSA-NP)は、様々なサイズ及び化学的コンジュゲーション/架橋を有する様々な形態を有することができるが、それらはすべて、遊離のHSAとはかなり異なる(Kratz,F.,J Control Release,2008, 132, 171-183、Sebak,S.,et el.,Int J Nanomedicine,2010, 5, 525-532、Zensi,A.,J Drug Target,2010, 18, 842-848、Abbasi,S.,J Drug Deliv 2012, 686108、Elzoghby,A.O.,et el.,J Control Release,2012, 157, 168-182、Jin,G.,et el.,Oncol Rep,2012, 36, 871-876、Lomis,N.,et el.,Nanomaterials,2016,(Basel)6、及びNateghian,N.,et el.,Chem Biol Drug Des,2016, 87, 69-82)。その結果として、それらの循環PK、宿主の臓器/組織/細胞との相互作用、及び免疫反応の誘出の可能性は、天然のHSAのものとはかなり異なる可能性がある。これらの問題はすべて、現在の抗がん製剤/送達システムによる成果の制限に直接寄与している(Petersen,G.H.,et el.,J Control Release,2016, 232, 255-264、van der Meel,et el.,Expert Opin Drug Deliv,2017, 14, 1-5.、及びMukherjee,A.,et el.,1996,All About Albumin:Biochemistry,Genetics and Medical Applications.San Diego,CA:Academic Press Limited)。従って、DOX及び他の抗がん剤に関して毒性を低減するだけでなく、ヒトの臨床の場での有効性を高める製剤が緊急に必要である。
HSAは、体内で最も豊富な血清タンパク質であり、血行、リンパ系及び細胞外/細胞内区画に合計約460gが分布している(Peters,T.,1996,All About Albumin:Biochemistry,Genetics and Medical Applications.San Diego,CA:Academic Press Limited)。その機能には、必須のコロイド浸透圧の提供、血漿pHのバランス調整、ならびに疎水性分子、例えば、脂肪酸及びビリルビンの結合及び輸送が含まれる。HSAはいくつかのユニークな特性(Hoogenboezem,E.N.,and Duvall,C.L.,Adv Drug Deliv Rev,2018, 130, 73-89):1)溶解性及び熱安定性が高いこと、2)様々なリガンドに異なる結合親和性で結合することが可能であること、3)受容体を介して細胞に取り込まれること及び経細胞輸送されること、4)新生児型Fc受容体(FcRn)による効率的なエンドソームリサイクル、及びメガリン/キュビリンコンプレックスを介した腎クリアランスからのレスキュー(Chaudhury,C.,J Exp Med,2003, 197, 315-322、Anderson,C.L.,et el.,Trends Immunol,2006, 27, 343-348,Chaudhury,C.,et el.,Biochemistry,2006, 45, 4983-4990,及びKim,J.,Bronson,et el.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,2006, 290, G352-360)に起因して、19日間の異常に長い半減期を示すこと、5)EPR効果に起因して、腫瘍組織に蓄積することができること、ならびに6)がん細胞によって優先的に吸収され、代謝されて栄養素として機能すること(Stehle,G.,et el.,Crit Rev Oncol Hematol,1997, 26, 77-100、Commisso,C.,et el., Nature,2013, 497, 633-637、及びKamphorst,J.J.,et el.,Cancer Res,2015, 75, 544-553)を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Carvalho,C.,et el.,Curr Med Chem,2009, 16, 3267-3285
【非特許文献2】Tacar,O.,S et el.,J Pharm Pharmacol,2013, 65, 157-170
【非特許文献3】Tahover,E.,et el.,Anticancer Drugs,2015, 26, 241-258
【非特許文献4】Shafei,A.,et el.,Biomed Pharmacother,2017, 95, 1209-1218
【非特許文献5】Von Hoff,D.D.,et el.,Ann Intern Med,1979, 91, 710-717
【非特許文献6】Chatterjee,K.,et el.,Cardiology, 2010, 115, 155-162
【非特許文献7】Greene,R.F.,et el.,Cancer Res,1983, 43, 3417-3421
【非特許文献8】Speth,P.A.,Linssen,et el.,Cancer Chemother Pharmacol,1987, 20, 305-310
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
出願人は、治療薬(例えば、ドキソルビシン)を単一タンパク質(例えば、アルブミン)内にしっかりと結合させると同時に、単一タンパク質の特性を実質的に維持する方法を特定した。本方法は、より低毒性及び/またはより広い治療域を有する新たな組成物を提供する。
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、医薬品の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合している単一タンパク質を含む組成物を提供する。
【0008】
本発明はまた、抗がん剤の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合している単一タンパク質を含む組成物を動物に投与することを含む、動物のがんの治療方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、抗細菌剤または抗真菌剤の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合している単一タンパク質を含む組成物を動物に投与することを含む、動物の細菌または真菌感染症の治療方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、a)医薬品を含む第一の溶液を、単一タンパク質、水、及び極性有機溶媒を含む第二の溶液と混合し、第三の溶液を得ること、ならびにb)第三の溶液を、医薬品の1つ以上の分子が各単一タンパク質分子内にしっかりと結合することを可能にする条件下、攪拌することを含む方法を提供する。本発明はまた、本発明の方法によって調製される組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、1)医薬品の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合している単一タンパク質及び2)医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明はまた、がんの予防的または治療的処置のための本明細書に記載の組成物を提供する。
【0013】
本発明はまた、動物のがんを治療するための薬剤を調製するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【0014】
本発明はまた、細菌感染症の予防的または治療的処置のための本明細書に記載の組成物を提供する。
【0015】
本発明はまた、動物の細菌感染症を治療するための薬剤を調製するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のトポテカンのスペクトル変化。実施例2参照。
図2】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のエピルビシン(EPI)のスペクトル変化。実施例3参照。
図3】HSAでカプセル化されたエピルビシンのDLSによる粒度分布。実施例3参照。
図4】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のイダルビシンのスペクトル変化。実施例3参照。
図5】HSAでカプセル化されたイダルビシンのDLSによる粒度分布。実施例3参照。
図6】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のビンクリスチンのスペクトル変化。実施例5参照。
図7】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のダウノルビシンのUVスペクトル変化。実施例6参照。
図8】HSAでカプセル化されたダウノルビシンのDLSによる粒度分布。実施例6参照。
図9】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のミトキサントロンのスペクトル変化。実施例7参照。
図10】HSAでカプセル化されたミトキサントロンのDLSによる粒度分布。実施例7参照。
図11】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のドキソルビシンのUVスペクトル変化。実施例8参照。
図12】HSAでカプセル化されたドキソルビシンのDLSによる粒度分布。実施例8参照。
図13】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のアンホテリシンBのスペクトル変化。実施例8参照。
図14】HSAでカプセル化されたアンホテリシンBのDLSによる粒度分布。実施例8参照。
図15】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のクロファジミンのスペクトル変化。実施例10参照。
図16】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のメトトレキサートのスペクトル変化。実施例11参照。
図17】HSAでカプセル化されたメトトレキサートのDLSによる粒度分布。実施例11参照。
図18】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のリファンピシンのスペクトル変化。実施例12参照。
図19】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のビンブラスチンのスペクトル変化。実施例13参照。
図20】PBS(pH=7.4)中でのカプセル化の前後のビノレルビンのスペクトル変化。実施例14参照。
図21】組成物15におけるドキソルビシンのUVスペクトル変化。実施例20参照。
図22】遊離形態のドキソルビシン、HSA/DOX混合物及びHSAでカプセル化されたDOXの異なるpH値での透析の時間プロファイル。実施例16参照。
図23】対照、遊離Dox及び組成物7による平均腫瘍容積変化対処理日数。実施例17参照。
図24】対照、遊離ミトキサントロン及び組成物6による平均腫瘍容積変化対処理日数。実施例17参照。
図25】対照、遊離Dox及び組成物7による体重変化%(正規化)対処理日数。実施例17参照。
図26】対照、ミトキサントロン及び組成物6による体重変化%(正規化)対処理日数。実施例17参照。
図27】組成物7におけるDox当量の3倍(15mg/kg)及び4倍(20mg/kg)による体重変化%(正規化)対処理日数。実施例18参照。
図28】組成物7におけるDox当量の5倍(25mg/kg)及び6倍(30mg/kg)による体重変化%(正規化)対処理日数。実施例19参照。
図29】アルブミンでカプセル化された医薬品(薬物分子)の図。
図30】HSAで完全にカプセル化された医薬品。
図31】HSAで部分的にカプセル化された医薬品。
図32】DLSによるHSAの粒度分布。
図33】組成物16におけるエピルビシンのUVスペクトル変化。実施例21参照。
図34】組成物18におけるドキソルビシンのUVスペクトル変化。実施例23参照。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1つの実施形態では、本発明は、医薬品の1つ以上の分子をその中に「しっかりと結合して」いる単一タンパク質を含む組成物を提供する。本明細書で使用される、「しっかりと結合した」という用語は、医薬品の分子が、単一タンパク質内にカプセル化されていることを意味し、医薬品は、単一タンパク質に対して、直接的にも、介在基を介しても共有結合していない。1つの実施形態では、医薬品の分子は、単一タンパク質によって完全にカプセル化される(図30)。別の実施形態では、医薬品の分子の表面積の一部のみが単一タンパク質によってカプセル化される(図31参照)。別の実施形態では、医薬品の1つ以上の分子が単一タンパク質によって完全にカプセル化され、医薬品の1つ以上の分子がその表面積の一部を単一タンパク質によってカプセル化されるのみでもよい。
【0018】
本明細書で使用される、「単一タンパク質」という用語は、生物及び生物工学によって作られた系の両方から単離されたタンパク質を含め、天然及び合成起源の両方のタンパク質の単一分子種を含む。さらに、タンパク質は、他の非タンパク質成分を、共有結合または非共有相互作用のいずれかを介して含んでもよい。1つの実施形態では、用語は、多分子種のタンパク質、例えば、ダイマー、トリマー、オリゴマー、または多量体を含まない。1つの実施形態では、単一タンパク質は、アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン、IgA、IgM、IgG、または別のヒトタンパク質である。
【0019】
本明細書で使用される、「アルブミン」という用語は、任意のアルブミンを含む。1つの実施形態では、アルブミンは、哺乳類のものである。1つの実施形態では、アルブミンは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、またはブタアルブミンである。1つの実施形態では、アルブミンは、非哺乳類のものである。1つの実施形態では、アルブミンは、組み換え技術によって調製される。本発明の組成物では、アルブミンは、粒子、例えば、ナノ粒子の形態では存在しない。従って、しっかりと結合した医薬品の分子は、アルブミンナノ粒子の細孔内ではなく、アルブミン構造内のポケットにカプセル化される。
【0020】
本明細書で使用される、「グロブリン」という用語は、任意のグロブリンを含む。グロブリンは、アルブミンを含まない大きな血清タンパク質の異種群であり、塩溶液に溶解する。グロブリンには、3つの主要なサブセットがあり、それらのそれぞれの電気泳動移動度によって区別される:アルファグロブリン、ベータグロブリン、及びガンマグロブリン。様々なグロブリンの非限定的な例としては、凝固タンパク質、補体、多くの急性期タンパク質、免疫グロブリン(Ig)、及びリポタンパク質が挙げられる。1つの実施形態では、グロブリンは哺乳類のものである。1つの実施形態では、グロブリンは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、またはブタアルブミンである。1つの実施形態では、グロブリンは、非哺乳類のものである。1つの実施形態では、グロブリンは、組み換えグロブリンである。1つの実施形態では、グロブリンは、免疫グロブリン(Ig)、例えば、IgA、IgM、IgG、IgEまたはIgD抗体である。
【0021】
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、一本鎖可変断片(scFvまたは「ナノボディ」)、ヒト化、完全ヒトまたはキメラ抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、及びFc領域を含まない抗体の抗原結合断片(例えば、Fab断片)を含む。ある特定の実施形態では、抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体である。「ヒト化」抗体は、対応するフレームワークに組み換え的に結合された、各ドナー抗体の可変領域から3つのCDR(相補性決定領域)のみ、及び時として、いくつかの慎重に選択された「フレームワーク」残基(可変領域の非CDR部分)、ならびにヒト抗体配列の定常領域を含む。「完全ヒト化抗体」は、ヒト由来の抗体遺伝子のみを有するように遺伝子操作されたマウスからのハイブリドーマにおいて、またはヒト由来の抗体遺伝子のファージ提示ライブラリからの選択によって創出される。
【0022】
本明細書で使用される、「フィブリノーゲン」という用語は、任意のフィブリノーゲンを含む。フィブリノーゲンは、血漿に存在する可溶性糖タンパク質であり、酵素トロンビンの作用によってフィブリンがそれから産生される。1つの実施形態では、フィブリノーゲンは、哺乳類のものである。1つの実施形態では、フィブリノーゲンは、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、またはブタフィブリノーゲンである。1つの実施形態では、フィブリノーゲンは、非哺乳類のものである。1つの実施形態では、フィブリノーゲンは、組み換えフィブリノーゲンである。
【0023】
本明細書で使用される、「極性有機溶媒」という用語は、水と混和性の、または水に部分的に溶解する溶媒を含む。例えば、用語は、水混和性溶媒または水に部分的に溶解する溶媒を含む。「極性有機溶媒」という用語は、
(1)水溶性アルコール:メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、t-ブタノール等、
(2)水溶性ジオール及びトリオール、テトラオール:エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等、
(3)水溶性アルデヒド及びケトン:アセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、アセトアルデヒド、ホルミルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等、
(4)水溶性ニトリル:アセトニトリル、プロピオニトリル、ブタンニトリル等、
(5)低分子量の水溶性ポリマー:ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、
(6)水溶性アミド:DMF、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロパンアミド等、(7)水溶性エーテル:ジエチルエーテル、THF、ジオキサン等、
(8)すべての他の水溶性有機溶媒:DMSO等を含む。
【0024】
本明細書で使用される、「医薬品」という用語は、単一タンパク質内にしっかりと結合され得る任意の医薬的に活性な薬剤を含む。1つの実施形態では、医薬品は、疎水性である。1つの実施形態では、医薬品は、所望のpH値で水溶性である。1つの実施形態では、医薬品は、抗がん剤、抗炎症剤、CNS薬、抗真菌剤、または抗生物質製剤である。1つの実施形態では、医薬品は、抗がん化合物である。1つの実施形態では、医薬品は、ドキソルビシンである。特に、医薬品は、pH約-4~約20で水溶性である。1つの実施形態では、医薬品は、pH約0~約14で水溶性である。1つの実施形態では、医薬品は、任意のpH値で水溶性が限られている。1つの実施形態では、医薬品は、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、トポテカン、イリノテカン、アクチノマイシンD、イダルビシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、SN-38、イキサベピロン、エリブリン、ビンデシン、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ベンダムスチン、ネララビン、ピラルビシン、クロファラビン、バルルビシン、クロラムブシル等である。1つの実施形態では、医薬品は、アミノ基(複数可)を含む。1つの実施形態では、医薬品は、カルボン酸基(複数可)を含む。1つの実施形態では、医薬品は、カルボン酸基(複数可)及び1つのアミノ基を含む。1つの実施形態では、医薬品は、抗生物質製剤である。1つの実施形態では、医薬品は、アンホテリシンB、クロファジミン、リファンピシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、またはフルオロキノロン系抗生物質である。
【0025】
本明細書で使用される、「第二の医薬品」という用語は、任意の医薬的に活性な薬剤を含む。1つの実施形態では、第二の医薬品は、単一タンパク質内にしっかりと結合され得る。1つの実施形態では、第二の医薬品は、疎水性である。1つの実施形態では、第二の医薬品は、所望のpH値で水溶性である。1つの実施形態では、第二の医薬品は、抗がん剤、抗炎症剤、CNS薬、抗真菌剤、または抗生物質製剤である。1つの実施形態では、医薬品は、抗がん化合物である。1つの実施形態では、第二の医薬品は、ドキソルビシンである。1つの実施形態では、第二の医薬品は、ドセタキセルである。特に、第二の医薬品は、pH約-4~約20で水溶性である。1つの実施形態では、第二の医薬品は、pH約0~約14で水溶性である。1つの実施形態では、第二の医薬品は、任意のpH値で水溶性が限られている。1つの実施形態では、第二の医薬品は、ドキソルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンブラスチン、トポテカン、イリノテカン、アクチノマイシンD、イダルビシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、SN-38、イキサベピロン、エリブリン、ビンデシン、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ベンダムスチン、ネララビン、ピラルビシン、クロファラビン、バルルビシン、クロラムブシル等である。1つの実施形態では、第二の医薬品は、アミノ基(複数可)を含む。1つの実施形態では、第二の医薬品は、カルボン酸基(複数可)を含む。1つの実施形態では、第二の医薬品は、カルボン酸基(複数可)及び1つのアミノ基を含む。1つの実施形態では、第二の医薬品は、抗生物質製剤である。1つの実施形態では、第二の医薬品は、アンホテリシンB、またはクロファジミン、またはリファンピシン、クロラムフェニコール、またはテトラサイクリン、またはフルオロキノロン系抗生物質である。
【0026】
HSAは、環境が変化するとそのコンフォメーションが変化することで知られている。HSAは、酸性、中性及び塩基性条件で異なるコンフォメーションを示すことが報告されている。共溶媒、例えば、エタノール/水、またはメタノール/エタノール/水、または1,4-ジオキサン/水、または2-ブタノン/エタノール/水、またはアセトン/水、またはDMSO/水、または他の有機溶媒/水混合物中のHSAのコンフォメーションは、純水とは大きく異なる(Borisover,M.D.,et el.,Thermochimica Acta,1996, 284, 263-277)。この文献は、HSAを水/有機共溶媒に懸濁することにより、2つの主なプロセス、すなわち、(1)水の脱着・収着、(2)タンパク質間の接触の破壊に起因する非収着が、有機溶媒の性質及び水の含量に応じて生じることを示している。さらに、水/有機共溶媒中に調製されたHSA溶液は、目的のHSA懸濁液の水収着及び発熱特性を変化させる能力を有する接触可能表面積が増加する。水/有機共溶媒中のHSAは、その自然状態ではなくなり、一部変性される。共溶媒の相対的な極性が純水より低いという事実に起因して、結果として生じるHSAのコンフォメーションの所望の有機/水混合物中での変化により、いくつかの疎水性ポケットが広がり、医薬品を、これらの疎水性ポケットにしっかりと結合させるか、またはその中にカプセル化する。図29参照。例えば、下記組成物7では、複数のDOX分子が、各HSA分子の内部にしっかりと結合されている。DOX及びミトキサントロンがヒト血清アルブミン(HSA)に可逆的に会合した文献報告(Khan,S.N.,et el.,Eur J Pharm Sci,2008, 35, 371-382、及びAgudelo,D.,et el.,PLoS One,2012, 7,e43814)では、各HSAには、1分子のみのDOXまたはミトキサントロンが会合することが報告された。さらに、可逆的に会合したDOX及びミトキサントロンのUVスペクトルは、対応する未会合の物質からの変化を示さなかった。本発明では、ドキソルビシンまたはミトキサントロンがHSA分子内にカプセル化されると、ドキソルビシンまたはミトキサントロンに関するUVスペクトルのレッドシフトが認められた。組成物7に関する図11及び組成物6に関する図9参照。場合によっては、HSA分子にカプセル化されると、薬物分子の吸光度のバンドが消える。組成物8に関する図13参照。ここでは、アンホテリシンBの324nmの吸収が、HSA分子内にカプセル化されると完全に消える。他の場合では、ある特定の薬物分子がHSA分子内にカプセル化された後のUVスペクトルのブルーシフトが観察及び記録された。組成物9に関する図15参照。ここでは、クロファジミンがHSA分子内にカプセル化された。アルブミン内にしっかりと結合された医薬品分子を有する本発明の組成物は、新規な特性、例えば、治療効果の向上等を有する。
【0027】
1つの実施形態では、単一タンパク質は、単一タンパク質内へ医薬品のカプセル化を促進する少なくとも1つの水溶性有機溶媒を含む共溶媒に溶解される。カプセル化プロセスは、UVまたは他の機器によって観察される。単一タンパク質でカプセル化された医薬品の所望の割合が達成されると、カプセル化プロセスが終了され、最終製品が調製される。濾過(例えば、0.22umの膜を通して、または高速遠心分離もしくは他の滅菌手順による)後、医薬品濃度は、UV分光計、HPLCまたは他の方法によって、有機溶媒抽出後、タンパク質沈殿を介して定量化され得る。定量化後、単一タンパク質でカプセル化された医薬品溶液は、-20℃で凍結される場合もあれば、粉末製品まで凍結乾燥される場合もある。さらに、いくつかの実施形態では、単一タンパク質でカプセル化された医薬品は、Sephadex G25カラムを通してさらに精製され得る。ここでは、大きな分子である単一タンパク質でカプセル化された医薬品が最初に流れ、続いて未カプセル化医薬品が流れる。いくつかの実施形態では、単一タンパク質でカプセル化された医薬品は、様々な分画分子量の透析袋を使用した透析によってさらに精製され得る。ここでは、分子量の小さい未カプセル化医薬品が透過し、分子量>20kdの単一タンパク質でカプセル化された医薬品が透析袋の内部にとどまる。本発明は、単一タンパク質でカプセル化された医薬品を、単一タンパク質または目的の医薬品の構造を化学的に修飾することなく調製する新規な方法を提供する。
【0028】
HSAは、生体高分子であり、分子量約66,000g/モルを有し、動的光拡散(DLS)で測定される粒度は約10nm(図32)である。本発明の組成物では、医薬品の1つ以上の分子をその中にカプセル化しているアルブミンの粒度は変化しない。組成物3に関する図5、組成物5に関する図8、組成物6に関する図10、組成物7に関する図12、組成物8に関する図14、及び組成物10に関する図17参照。1つの実施形態では、医薬品の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合しているアルブミンは、水に溶解する。別の実施形態では、医薬品の1つ以上の分子をその中にカプセル化しているアルブミンは、pH約6~約8で水に溶解する。
【0029】
医薬品が抗がん剤の場合、医薬品の1つ以上の分子をその中にカプセル化している単一タンパク質を含む組成物は、薬剤のMTDを高め得る。これは、カプセル化された分子はがん細胞に向かうことを好み、正常細胞とは相互作用が少ないためである。医薬品が抗生物質の場合、医薬品の1つ以上の分子をその中にしっかりと結合している単一タンパク質を含む組成物は、微生物に対するMIC(最小発育阻止濃度)を低下させ得る。これは、しっかりと結合した分子は、細菌(グラム陽性及びグラム陰性)ならびに真菌の両方の表面に都合よく結合するためである。従って、いくつかの実施形態では、単一タンパク質でしっかりと結合された医薬品は、それらのMTDまたはMICを遊離形態の分子のものと比較することによって特徴づけることができる。
【0030】
前節で記載した通り、調製プロセス中に、単一タンパク質でしっかりと結合された医薬品が順調に調製されると、目的の医薬品分子が単一タンパク質の結合ポケットに取り込まれる。遊離形態と比較して、取り込まれた分子は、異なる環境に囲まれているため、それらのUVスペクトルまたは蛍光発光分光は変化し得る。取り込まれた分子の担体、結合及び近接関係は、吸収、蛍光、FTIR、または円偏光二色性を用いて特徴づけられ、分析され得る。
【0031】
単一タンパク質によるカプセル化は、溶解性が限られた医薬品で特に有用であり得る。例えば、単一タンパク質によるカプセル化は、投与を容易にするために1つ以上の界面活性剤または可溶化担体との製剤化が必要な医薬品で有用であり得る。多くの場合、界面活性剤及び可溶化担体は、投与時に望ましくない効果を生じる好ましくない特性を有する。溶解性が限られた医薬品を単一タンパク質内にカプセル化することで、好ましくない界面活性剤も可溶化担体も含まない、投与可能な形態の医薬品が提供され得る。従って、1つの実施形態では、第一の医薬品及び/または第二の医薬品は、難溶性(例えば、水への溶解度が約0.1μg/mL未満)の薬剤である。別の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、界面活性剤も可溶化担体も含まない。
【0032】
1つの実施形態では、医薬品は、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、またはビンカアルカロイドもしくはその誘導体である。
【0033】
1つの実施形態では、第二の医薬品は、アントラサイクリン、細胞骨格破壊剤、トポイソメラーゼIの阻害剤、トポイソメラーゼIIの阻害剤、キナーゼ阻害剤、またはビンカアルカロイドもしくはその誘導体である。
【0034】
1つの実施形態では、医薬品はアントラサイクリンであり、第二の医薬品は細胞骨格破壊剤である。
【0035】
1つの実施形態では、医薬品はアントラサイクリンであり、第二の医薬品は、ビンカアルカロイドまたはその誘導体である。
【0036】
1つの実施形態では、医薬品は細胞骨格破壊剤であり、第二の医薬品はトポイソメラーゼIの阻害剤である。
【0037】
1つの実施形態では、医薬品は細胞骨格破壊剤であり、第二の医薬品はトポイソメラーゼIIの阻害剤である。
【0038】
1つの実施形態では、医薬品はアントラサイクリンであり、第二の医薬品はキナーゼ阻害剤である。
【0039】
1つの実施形態では、医薬品は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞毒性抗生物質である。
【0040】
1つの実施形態では、第二の医薬品は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害剤、または細胞毒性抗生物質である。
【0041】
1つの実施形態では、医薬品は微小管阻害薬であり、第二の医薬品はトポイソメラーゼ阻害剤である。
【0042】
1つの実施形態では、医薬品は微小管阻害薬であり、第二の医薬品は細胞毒性抗生物質である。
【0043】
1つの実施形態では、医薬品はトポイソメラーゼ阻害剤であり、第二の医薬品は細胞毒性抗生物質である。
【0044】
1つの実施形態では、医薬品は微小管阻害薬であり、第二の医薬品はアルキル化剤である。
【0045】
1つの実施形態では、医薬品の複数の分子が、各単一タンパク質内にしっかりと結合される。
【0046】
1つの実施形態では、医薬品の少なくとも1つの分子が、各単一タンパク質内にしっかりと結合される。
【0047】
1つの実施形態では、組成物は、水及び1つ以上の水溶性有機溶媒を含む。
【0048】
1つの実施形態では、医薬品は、水に難溶である。
【0049】
1つの実施形態では、組成物中の医薬品の最大耐量は、遊離形態の医薬品単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の最大耐量より大きい。
【0050】
1つの実施形態では、組成物中の医薬品の最大耐量は、遊離形態の医薬品単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の最大耐量より少なくとも10%大きい。
【0051】
1つの実施形態では、組成物中の医薬品の有効性は、医薬品単独の有効性より大きい。
【0052】
1つの実施形態では、組成物中の医薬品の有効性は、医薬品単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の有効性より少なくとも10%大きい。
【0053】
1つの実施形態では、医薬品にしっかりと結合された単一タンパク質は、対応するしっかりと結合されていない単一タンパク質と比較して、吸収、蛍光、円偏光二色性スペクトル、またはFTIRが異なる。
【0054】
1つの実施形態では、第二の医薬品の1つ以上の分子が、単一タンパク質にしっかりと結合される。
【0055】
1つの実施形態では、第二の医薬品の複数の分子が、各単一タンパク質内にカプセル化される。
【0056】
1つの実施形態では、第二の医薬品の少なくとも1つの分子が、各単一タンパク質内にカプセル化される。
【0057】
1つの実施形態では、第二の医薬品の各分子が、単一タンパク質内に完全にカプセル化される。
【0058】
1つの実施形態では、第二の医薬品の少なくとも1つの分子の表面積の一部のみが、単一タンパク質によってカプセル化される。
【0059】
1つの実施形態では、第二の医薬品は、水に難溶である。
【0060】
1つの実施形態では、組成物中の第二の医薬品の最大耐量は、遊離形態の医薬品単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の最大耐量より大きい。
【0061】
1つの実施形態では、組成物中の第二の医薬品の最大耐量は、遊離形態の医薬品単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の最大耐量より少なくとも10%大きい。
【0062】
1つの実施形態では、組成物中の第二の医薬品の有効性は、医薬品単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の有効性より大きい。
【0063】
1つの実施形態では、組成物中の第二の医薬品の有効性は、医薬品単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の有効性より少なくとも10%大きい。
【0064】
1つの実施形態では、第二の医薬品にしっかりと結合された単一タンパク質は、第二の医薬品にしっかりと結合されていない対応する単一タンパク質と比較して、吸収、蛍光、円偏光二色性スペクトル、またはFTIRが異なる。
【0065】
1つの実施形態では、本発明は、本発明の組成物をヒトまたは動物に投与することを含む、ヒト及び動物のがんの治療方法を提供する。1つの実施形態では、治療薬はドキソルビシンであり、単一タンパク質組成物中のドキソルビシンの最大耐量は、ドキソルビシン単独(例えば、単一タンパク質を使用せずに製剤化されたもの)の最大耐量より少なくとも10%大きい。
【0066】
1つの実施形態では、本発明は、水、医薬品の1つ以上の分子、及び任意に1つ以上の水溶性有機溶媒を含む第一の溶液と、水、単一タンパク質、及び任意に1つ以上の水溶性有機溶媒を含む第二の溶液を混合し、第三の溶液を得ることを含む方法を提供する。1つの実施形態では、本発明は、さらに、第三の溶液を、微生物を除去する濾過を介して滅菌する。
【0067】
本発明の製剤は、全身投与、例えば、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体等の医薬的に許容される媒体と組み合わせて経口投与され得る。それらは、硬または軟殻ゼラチンカプセルに封入される場合もあれば、錠剤に打錠される場合もあり、患者食の食品に直接組み込まれる場合もある。経口治療投与の場合、製剤は、1つ以上の賦形剤と組み合わせて、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、ウェハース等の形態で使用され得る。かかる組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の製剤を含むべきである。組成物及び調製物の割合は、当然ながら、様々であってよく、便宜上、所与の単位剤形の重量の約2~約60%であり得る。
【0068】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等は、下記のものを含んでもよい:結合剤、例えば、トラガカントガム、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン、例えば、リン酸二カルシウム等の賦形剤、例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ならびに、例えば、スクロース、フルクトース、ラクトースもしくはアスパルテーム等の甘味剤、または、例えば、ペパーミント、冬緑油、もしくはチェリー香味料等の香味剤を加えてもよい。単位剤形がカプセルの場合、上記種類の材料に加えて、液体担体、例えば、植物油またはポリエチレングリコールを含んでもよい。様々な他の材料は、コーティングとして含まれる場合もあれば、固体単位剤形の物理的形態を修飾するために含まれる場合もある。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、ゼラチン、ワックス、シェラックまたは糖等でコーティングされ得る。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのスクロースまたはフルクトース、保存料としてのメチル及びプロピルパラベン、着色料ならびに香味料、例えば、チェリーまたはオレンジ香味料を含み得る。任意の単位剤形の調製に使用される任意の材料は、医薬的に許容されるべきであり、使用される量で実質的に無毒であるべきである。さらに、製剤は、持続放出製剤及び装置に組み込んでもよい。
【0069】
注射または注入に適した医薬剤形は、無菌注射剤もしくは注入剤または分散液の即時調製に適した、任意にリポソームにカプセル化された活性成分を含む滅菌水溶液もしくは分散液または滅菌粉末を含むことができる。すべての場合で、最終的な剤形は、無菌であり、流動性があり、製造及び保管条件下で安定であるべきである。液体担体または媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの適切な混合物を含む溶媒または液体分散媒であり得る。様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって、微生物の作用の防止をもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、緩衝剤または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0070】
無菌注射剤は、必要に応じて、上に列挙した他の様々な成分とともに適切な溶媒に必要な量の製剤を組み込んだ後、濾過滅菌することによって調製される。無菌注射剤の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、活性成分に加えて、予め滅菌濾過された溶液に含まれる任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。
【0071】
製剤の有用な用量は、それらのインビトロ活性と動物モデルでのインビボ活性を比較することによって決定され得る。マウス及び他の動物における有効用量をヒトに外挿するための方法は、当技術分野では既知であり、例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0072】
治療での使用に必要な製剤の量は、選択される特定の製剤、投与経路、治療される状態の性質、ならびに患者の年齢及び状態によって異なり、最終的には、担当医または臨床医の判断による。
【0073】
所望の用量は、便宜上、単回用量または適切な間隔で投与される分割用量、例えば、1日2回、3回、4回もしくはそれ以上の部分用量として含まれ得る。部分用量はそれ自体、例えば、いくつかの離散した大まかな間隔の投与にさらに分割してもよい。
【0074】
本発明の製剤は、他の治療薬と組み合わせても投与され得る。従って、1つの実施形態では、本発明は、本発明の製剤、少なくとも1つの他の治療薬、及び医薬的に許容される希釈剤または担体を含む組成物も提供する。本発明はまた、本発明の製剤、少なくとも1つの他の治療薬、包装材料、ならびに製剤及び他の治療薬(複数可)を動物に投与するための使用説明書を含むキットを提供する。
【0075】
HSAまたはIgGの異常に長い半減期は、多種多様な組織及び臓器で発現される(Sockolosky,J.T.,and Szoka,F.C.,Adv Drug Deliv Rev,2015, 91, 109-124)、FcRnまたはBrambell受容体によって主に維持される(Brambell,F.W.,et el.,Nature,1964, 203, 1352-1354)。この主要組織適合複合体クラスI関連受容体は、最初は、母から子へのIgGの送達に重要な役割を果たすこと、血清IgG濃度を調節すること、及び血清中でのIgGの長い半減期を維持することが見出された。FcRnは、IgGとHSAの両方に異なる部位で結合することができること及びIgGとHASの両方の長い半減期に関与することが後に発見された(Chaudhury,C.,J Exp Med,2003, 197, 315-322、Anderson,C.L.,et el.,Trends Immunol,2006, 27, 343-348、Chaudhury,C.,et el.,Biochemistry,2006, 45, 4983-4990、及びKim,J.,Bronson,et el.,Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,2006, 290,G352-360)。予想通り、FcRnの変異が、家族性の異化亢進による低タンパク血症を引き起こすことが分かった(Wani,M.A.,et el.,Proc Natl Acad Sci USA,2006, 103, 5084-5089)。
【0076】
HSAのレスキュー及びリサイクルの機序は、解明されており、下記を含む。
1.FcRnは、酸性pHでの高親和性のためにエンドソームでHSAに結合する。
2.結果として生じるFcRn-HSA複合体(1:1比)は、血流に戻される。
3.FcRn-HSA複合体は、pH7.4での低親和性のために解離し、HSAを血行に放出する。
低レベルのFcRnを発現する細胞では、HSAは、リソソームに取り込まれ、そこでアミノ酸まで分解される。結果として、このFcRnが媒介するリサイクル経路は、ヒトでのIgGとHSAの両方の長い半減期に寄与する主な要因であり、重要な病態生理学的意義及び治療との関連を有する。
【0077】
公開されているタンパク質発現データベース(Uhlen,M.,et el.,Science,2015, 347, 1260419、Lindskog,C.,Expert Rev Proteomics,2016, 13, 627-629、Tang,Z.,Nucleic Acids Res,2017, 45,W98-W102、Uhlen,M.,Science,2017, 357、及びPapatheodorou,I.,et el.,Nucleic Acids Res,2018, 46, D246-D251)から、異なるヒト臓器由来の正常組織とがん組織の間のFcRn発現の違いを調べた。31の異なる組織でFcRn発現の比較を行った。それらの中で、がん組織の半数超(16/31)がそれらの正常組織の対応物より少ないFcRnを発現し、がん組織の約4分の1超(12/31)がより多いFcRnを発現し、3つのみが同様のFcRnレベルを有する。第一群(16種のがん、表1)は、SPE抗がん剤の特異的標的である。
【表1-1】
【表1-2】
【0078】
以下、本発明を非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0079】
実施例1:SPE抗がん剤の標的効果
現在の抗がん製剤/送達システムに関連する問題を認識するため、生体高分子を高効率の薬物送達システムとして調べた。具体的には、調査は、1)すべての天然の生体高分子または自然にもしくは組み換え技術により産生されたタンパク質の成分を使用すること、ならびに2)化学的な修飾及びコンジュゲーションを避けることに重点を置いた。
【0080】
本研究に基づいて、新規薬物製剤のためのSPE(単一タンパク質カプセル化)プラットフォームを開発した。例えば、SPEをDOXのカプセル化に適用することで、2つの成分、DOX及びHSAを含むSPEDOX(単一タンパク質でカプセル化されたDOX)を産生する。通常はいくつかのHSA分子を化学的コンジュゲーション/架橋または凝集によって含むHSA-NPとは異なり、SPEDOXは、正確に制御され得る可変数のDOX分子を封入する単一HSA分子を含む安定で均一な分子系を提供する。
【0081】
ヒトでのFcRnによるHSAのレスキュー及びリサイクルの機序(Hoogenboezem,E.N.,and Duvall,C.L.,Adv Drug Deliv Rev,2018, 130, 73-89)によれば、低レベルのFcRnを発現する細胞により、HSAは吸収され、リソソームに取り込まれ、加水分解されてペプチド及びアミノ酸を生じる。本概念をSPE薬物送達プラットフォームに適用すると、正常細胞は、正常レベルのFcRnを発現し、これが、SPE薬物を効率的にリサイクルして体内での長い循環を維持する。一方、ある型のがん細胞がFcRnをほとんどまたは全く発現しない場合、SPE薬物は、この型のがん細胞によって吸収され、リソソームに取り込まれ、そこでHSAが加水分解され、薬物が放出される。結果として生じる薬物は、その後、リソソームからサイトゾルへ拡散し、そこで核膜孔複合体を介して核に輸送される。従って、FcRnをほとんどまたは全く発現しないがん型(表1)は、SPE薬物での治療の理想的な標的を提示する。
【0082】
実施例2:組成物1(HSAでカプセル化されたトポテカン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び50%プロピレングリコール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、トポテカンHCl塩25mg、50%プロピレングリコール/水1.2mL及び脱イオン水3.8mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの帯黄色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その赤色混合物を室温で1時間攪拌した後。その帯黄色溶液を12000RPMで7分間遠心分離し、上部の溶液を取り、UV分光計で分析した。カプセル化前後のトポテカンのスペクトル変化を図1に示した。
【0083】
実施例3:組成物2(HSAでカプセル化されたエピルビシン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)4mLに、脱イオン水3mL及び56%エタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、エピルビシンHCl塩72mg、56%エタノール/水2.0mL及び脱イオン水6mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの赤色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その赤色混合物を室温で1時間攪拌した後。その赤色溶液を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取り、UV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のエピルビシンのスペクトル変化を図2に示し、組成物2の粒度分布を図3に示した。
【0084】
実施例4:組成物3(HSAでカプセル化されたイダルビシン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び50%メタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。1. 15mLの遠心分離管に、イダルビシンHCl塩33mg、50%メタノール/水3.0mL及び脱イオン水6mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの帯赤色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その帯赤色混合物を室温で1時間攪拌した後、その混合物を、高真空ポンプを介して約9mLまで濃縮し、その混合物を4400RPMで10分間遠心分離した。この組成物3をさらにSephadex g25カラムで精製した。精製したHSAでカプセル化されたイダルビシンを、UV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のイダルビシンのスペクトル変化を図4に示し、組成物3の粒度分布を図5に示した。
【0085】
実施例5:組成物4(HSAでカプセル化されたビンクリスチン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び50%メタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、ビンクリスチン.HSO塩44mg、50%メタノール/水3.5mL及び脱イオン水6.5mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの無色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その混合物を室温で1時間攪拌した後、その混合物を、高真空ポンプを介して約8mLまで濃縮し、その混合物を4400RPMで10分間遠心分離し、得られた溶液を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取った。この組成物4をさらにSephadex g25カラムで精製した。精製したHSAでカプセル化されたビンクリスチンを、UV分光計で分析した。カプセル化前後のビンクリスチンのスペクトル変化を図6に示した。
【0086】
実施例6:組成物5(HSAでカプセル化されたダウノルビシン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び50%メタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、ダウノルビシンHCl塩29mg、50%メタノール/水2.0mL及び脱イオン水6mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの赤色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その赤色混合物を室温で1時間攪拌した後、その混合物を、高真空ポンプを介して約7mLまで濃縮し、得られた溶液を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取った。この組成物5をさらにSephadex g25カラムで精製した。精製したHSAでカプセル化されたダウノルビシンを、UV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のダウノルビシンのスペクトル変化を図7に示し、組成物5の粒度分布を図8に示した。
【0087】
実施例7:組成物6A(HSAでカプセル化されたミトキサントロン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)3mLに、脱イオン水2mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、ミトキサントロン2HCl塩47mg、50%メタノール/水3.0mL及び脱イオン水7mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの青色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その青色混合物を室温で1時間攪拌した後、その混合物を、高真空ポンプを介して約7mLまで濃縮し、得られた溶液を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取った。この組成物6をさらにSephadex g25カラムで精製した。精製したHSAでカプセル化されたミトキサントロンを、UV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のミトキサントロンのスペクトル変化を図9に示し、組成物6の粒度分布を図10に示した。
【0088】
実施例8:組成物7(HSAでカプセル化されたドキソルビシン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び56%エタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、ドキソルビシンHCl塩22mg、56%エタノール/水2mL及び脱イオン水8mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの赤色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その赤色混合物を室温で1時間攪拌した後。その赤色溶液を12000RPMで7分間遠心分離し、上部の溶液を取り、UV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のドキソルビシンのスペクトル変化を図11に示し、組成物7の粒度分布を図12に示した。
【0089】
実施例9:組成物8(HSAでカプセル化されたアンホテリシンB)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び50%メタノール/水溶液2mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、アンホテリシンB25mg、メタノール2mL及び脱イオン水10mLを加え、続いて、1.0MのHCl溶液7滴を加えた。十分に攪拌した後、調製したこの帯黄色溶液を、上記のHSA溶液に徐々に加えた。その赤色混合物を室温で1時間攪拌した後、その帯黄色混合物を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取った。この組成物8をさらにSephadex g25カラムで精製した。精製したHSAでカプセル化されたアンホテリシンBを、UV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のアンホテリシンBのスペクトル変化を図13に示し、組成物8の粒度分布を図14に示した。
【0090】
実施例10:組成物9(HSAでカプセル化されたクロファジミン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び56%エタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、クロファジミン27mg、エタノール2mL及び酢酸2滴を加え、暗赤色溶液を形成し、続いて脱イオン水6mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの暗赤色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その赤色混合物を室温で1時間攪拌した後。その赤色溶液を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取った。その溶液を12000RPMでさらに10分間遠心分離した。上部の溶液を取り、次いでUV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のクロファジミンのスペクトル変化を図15に示した。
【0091】
実施例11:組成物10(HSAでカプセル化されたメトトレキサート)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL及び50%メタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、メトトレキサート31mg、50%メタノール/水2.0mL及び脱イオン水7mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの帯黄色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その赤色混合物を室温で1時間攪拌した後、HSAでカプセル化されたメトトレキサートをUV分光計及び動的光拡散機器で分析した。カプセル化前後のメトトレキサートのスペクトル変化を図16に示し、組成物10の粒度分布を図17に示した。
【0092】
実施例12:組成物11(HSAでカプセル化されたリファンピシン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水9mL及び50%メタノール/水溶液1mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、リファンピシン44mg、メタノール2.0mL及び水1mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの赤色溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その赤色混合物を室温で2時間攪拌した後、その赤色混合物を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取り、これをさらにSephadex g25カラムで精製した。精製したHSAでカプセル化されたリファンピシンをUV分光計で分析した。カプセル化前後のリファンピシンのスペクトル変化を図18に示した。
【0093】
実施例13:組成物12(HSAでカプセル化されたビンブラスチン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水3mL及び50%メタノール/水溶液6mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、ビンブラスチン46mg、50%メタノール/水9.0mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その混合物を室温で2時間攪拌した後、その混合物を、高真空ポンプを介して約2mLまで濃縮した。脱イオン水をさらに8mL加えた後、その混合物を4400RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取り、12000RPMで7分間遠心分離した。このHSAでカプセル化されたビンブラスチンを、UV分光計で分析した。カプセル化前後のビンブラスチンのスペクトル変化を図19に示した。
【0094】
実施例14:組成物13(HSAでカプセル化されたビノレルビン)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水2mL、メタノール1mL及び50%メタノール/水溶液5mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、ビノレルビン44mg、50%メタノール/水9.0mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その混合物を室温で2時間攪拌した後、その混合物を、高真空ポンプを介して約2mLまで濃縮した。脱イオン水をさらに8mL加えた後、その混合物を4400RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取り、12000RPMで8分間遠心分離した。このHSAでカプセル化されたビノレルビンを、UV分光計で分析した。カプセル化前後のビンブラスチンのスペクトル変化を図20に示した。
【0095】
実施例15:組成物14(HSAでカプセル化されたパクリタキセル)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)2mLに、脱イオン水6mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、続いてメタノール3mL及び50%メタノール/水溶液5mLを加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、パクリタキセル40mg、メタノール3.0mL及び50%メタノール/水7mLを加えた。十分に攪拌した後、調製したこの溶液を、上記のHSA溶液に攪拌下徐々に加えた。その混合物を室温で1時間攪拌した後、その混合物を、高真空ポンプを介して約2mLまで濃縮した。脱イオン水をさらに8mL加えた後、その混合物を12000RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取り、これをさらにSephadex g25カラムで精製した。
【0096】
実施例16:遊離形態のドキソルビシン、HSA/DOX混合物及び組成物7の透析試験
3×3cmの平坦な透析チューブ(分画分子量:25kD)に、遊離形態のドキソルビシン3mg、HSA/DOX混合物のドキソルビシン当量3mgまたは組成物7のドキソルビシン当量3mgを含む脱イオン水2mLの赤色溶液を加えた。その透析チューブを密封し、100mLのPBS緩衝液(pH=7.4)または酢酸緩衝液(pH=5.5)のいずれかを磁気撹拌子とともに含むガラスビーカーに入れた。絶えず攪拌しながら、アリコート(500uL)を異なる時点でこのガラスビーカーから取り、UV分光計で分析した。異なるpH値でのこの透析チューブからの透過率を計算し、図22に示した。HSA/DOX混合物は、pH=7.4では24時間以内にほぼ100%が透過したことは極めて明確である。pH=7.4での遊離形態のドキソルビシンに関しては、早い時間に極めて急速に透過したが、pH=7.4での難溶性のため、透析袋に沈殿した。HSAでカプセル化されたDOXが、pH=5.5ではpH=7.4より約3.5倍速くこの透析チューブから透過することが分かることが最も興味深い。
【0097】
実施例17:有効性試験
乳癌腫瘍に対する有効性試験を実施例8(組成物7)及び実施例7(組成物6)の材料で行った。マウスモデルでは、遊離DOXの最大耐量(MTD)は、5mg/kgであり、遊離ミトキサントロンのMTDは3mg/kgであることが報告されている。雌の無胸腺ヌードマウスにおいて、乳癌細胞株であるMDA-MB231、遊離DOX5kg/mL、及び実施例7の材料10mg/kg(DOX当量、遊離DOXのMTDの2倍)、実施例6の材料6mg/kg(ミトキサントロン当量、遊離ミトキサントロンのMTDの2倍)を用いた異種移植モデルの有効性試験の結果を、図23及び図24に1で示す。ドキソルビシンに関しては、HSAがしっかりと結合したDoxは、腫瘍成長の阻害において遊離DOXより有意に良好(p<0.05)であり、サンプル7の材料でTGI%は54%であるのに対して、遊離DOXでは34である。ミトキサントロンに関しては、HSAがしっかりと結合したミトキサントロンは、腫瘍成長の阻害において遊離ミトキサントロンより有意にはるかに良好(p<0.01)であり、サンプル6の材料でTGI%は58%であるのに対して、遊離ミトキサントロンでは27である。さらに、図25及び図26に示す体重変化(正規化)を比較すると、組成物7は、DOX当量が2倍であるにもかかわらず、毒性を示さなかった(図25)が、しかしながら、実施例7の組成物6は、ミトキサントロン当量が2倍であるにもかかわらず、いくらかの許容可能な毒性を示す(平均10%の体重減少のみ、図26参照)。代表的な組成物に関する結果を表2に示す。
【表2】
【0098】
実施例18:毒性試験
組成物7の毒性を調べるため、有効性試験(実施例13)と同じ経路及び同様のスケジュールで、健康な雌の無胸腺ヌードマウス(1群当たり4匹)を使用したMTD試験を行い、完了した。得られたデータを図27に示す。これらのデータは、組成物7の材料においては、3倍及び4倍のDOX当量が毒性を示さなかったことを示す。
【0099】
実施例19:第二のMTD試験
第二のMTD試験を、異なる用量で同じプロトコルを使用して同様に完了した。得られたデータを図28に示す。これらのデータは、組成物7において、5倍及び6倍のDOX当量が依然として極めて安全であることを示す。
【0100】
実施例20:組成物15(IGGでカプセル化されたドキソルビシン)の調製
ドキソルビシン塩酸塩35mgに、脱イオン水10mLを加え、十分に振盪したところ、赤色溶液が生じた。この溶液に、IgG抗体粉末500mgを加え、その混合物を1時間攪拌し、赤色溶液を調製した。次いで、50%エタノール/HO4.0mLを加えた。この混合物を1時間攪拌し、混合物を4400RPMで12分間遠心分離し、上部の溶液を取り、0.5MのHCl溶液を加えてそのpHを7.3に調整した。このIgGでカプセル化されたドキソルビシン(組成物15)をUV分光計で分析した。カプセル化前後のドキソルビシンのスペクトル変化を図21に示す。
【0101】
実施例21:組成物16(IGGでカプセル化されたエピルビシン)の調製
エピルビシン塩酸塩28mgに、脱イオン水12mLを加え、十分に振盪したところ、赤色溶液が生じた。この溶液に、IgG抗体粉末500mgを加え、その混合物を1時間攪拌し、赤色溶液を調製した。次いで、50%エタノール/HO5.0mLを加えた。この混合物を1時間攪拌し、混合物を4400RPMで12分間遠心分離し、上部の溶液を取った。このIgGでカプセル化されたエピルビシン(組成物16)をUV分光計で分析した。カプセル化前後のドキソルビシンのスペクトル変化を図33に示す。
【0102】
実施例22:組成物17(HSAでカプセル化されたドセタキセル)の調製
市販のHSA溶液(25%HSA)6.5mLに、脱イオン水12.5mL及び50%tert-ブタノール/水溶液8.5mLを、磁気撹拌子を入れた50mLの丸底フラスコ内で加え、その混合物を5分間攪拌した。15mLの遠心分離管に、ドセタキセル71mg、エタノール3.0mLを加えた。得られたドセタキセル溶液を、上記のHSAに加えた。その混合物を室温で2時間攪拌した後、その混合物を4400RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取った。凍結乾燥後、HSAでカプセル化されたドセタキセル(組成物17)粉末を得た。
【0103】
実施例23:組成物18(HSAでカプセル化されたドキソルビシン及びドセタキセル)の調製
ドキソルビシン塩酸塩66mgに、脱イオン水14mLを加え、十分に振盪したところ、赤色溶液が生じた。この溶液に、HSA粉末1.6gを加え、その混合物を20分間攪拌し、次いで、50%エタノール/HO6.0mLを加えた。この混合物を30分間攪拌した。別の15mLの遠心管に、ドセタキセル46mg、エタノール3mLを加えた。得られたドセタキセル溶液を、上記の赤色溶液に加えた。その混合物を2時間攪拌し、混合物を4400RPMで10分間遠心分離し、上部の溶液を取った。このHSAでカプセル化されたドキソルビシン及びドセタキセル(組成物18)をUV分光計で分析した。カプセル化前後のドキソルビシンのスペクトル変化を図34に示す。凍結乾燥後、組成物18の粉末形態を得た。
【0104】
すべての刊行物、特許、及び特許文献は、参照することにより個別に組み込まれたものとして、参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明を、様々な特定の好ましい実施形態及び技術を参照して説明してきた。しかしながら、本発明の主旨及び範囲内にとどまりながら、多くの変動及び修正が行われ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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【国際調査報告】