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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】パンダ型偏波保持光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/024 20060101AFI20220104BHJP
   G02B 6/036 20060101ALI20220104BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
G02B6/024 301
G02B6/036
G02B6/44 331
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021514131
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(85)【翻訳文提出日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2019124883
(87)【国際公開番号】W WO2020248549
(87)【国際公開日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】201910507961.4
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521099165
【氏名又は名称】ファイバーホーム テレコミュニケーション テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521100128
【氏名又は名称】ルイグアン テレコミュニケーション テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ルオ、ウェンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、バオピン
(72)【発明者】
【氏名】ケ、イリ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン、タオ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】チュー、チアオ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン、ファンチウ
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB09
2H250AB10
2H250AC43
2H250AD29
2H250AD32
2H250AD34
2H250AD35
2H250AD42
2H250AE63
2H250AG18
2H250AH23
2H250AH25
2H250BC02
2H250BD17
(57)【要約】
コア層(1)と石英クラッド(2)とを備え、コア層(1)に沿って中心対称である2つの応力領域(3)は石英クラッド(2)に提供され、応力領域(3)と同心である遷移環状領域(4)は応力領域(3)の外部に提供された、パンダ型偏波保持光ファイバであって、コア層(1)は、内部から外部へと連続的に配置されたゲルマニウムドープコア層(10)と、フッ素ドープコア層(11)とを備え、ゲルマニウムドープコア層(10)は、内部から外部へと連続的に配置された平坦なゲルマニウムドープ層(100)と、勾配ゲルマニウムドープ層(101)とを備え、勾配ゲルマニウムドープ層(101)の屈折率プロファイルは放物線状であり、勾配ゲルマニウムドープ層(101)の屈折率は、平坦なゲルマニウムドープ層(100)から離れる方向において徐々に減少し、フッ素ドープコア層(11)は、内部から外部へと連続的に配置された石英コア層(110)と、第1勾配フッ素ドープ層(111)と、平坦なフッ素ドープ層(112)と、第2勾配フッ素ドープ層(113)とを備え、第1勾配フッ素ドープ層(111)の屈折率プロファイルと、第2勾配フッ素ドープ層(113)の屈折率プロファイルとの両方は、曲線形状であり、平坦なフッ素ドープ層(112)の屈折率プロファイルに沿って対称であり、第1勾配フッ素ドープ層(111)の屈折率は、石英コア層(110)から離れる方向において徐々に減少する、パンダ型偏波保持光ファイバが開示される。偏波保持光ファイバのカットオフ波長は830nmより短い。パンダ型偏波保持光ファイバは、複数の帯域に適用可能であり、良好な減衰および良好な消光比を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部から外部へと連続的に配置されたコア層と、石英クラッド層とを備え、前記コア層に沿って中心対称である2つの応力区域は前記石英クラッド層に提供され、前記応力区域と同心である遷移環状領域は前記応力区域の外部に配置された、パンダ型偏波保持光ファイバであって、
前記コア層は、前記内部から前記外部へと連続的に配置されたゲルマニウムドープコア層と、フッ素ドープコア層とを有し、前記ゲルマニウムドープコア層は、前記内部から前記外部へと連続的に配置された平坦なゲルマニウムドープ層と、勾配ゲルマニウムドープ層とを含み、前記勾配ゲルマニウムドープ層の屈折率プロファイルは放物線状であり、前記勾配ゲルマニウムドープ層の屈折率は、前記平坦なゲルマニウムドープ層から離れる方向において徐々に減少し、前記フッ素ドープコア層は、前記内部から前記外部へと連続的に配置された石英コア層と、第1勾配フッ素ドープ層と、平坦なフッ素ドープ層と、第2勾配フッ素ドープ層とを含み、前記第1勾配フッ素ドープ層の屈折率プロファイルと前記第2勾配フッ素ドープ層の屈折率プロファイルとの両方は、曲線形状であり、前記平坦なフッ素ドープ層の屈折率プロファイルに沿って互いに対称であり、前記第1勾配フッ素ドープ層の屈折率は前記石英コア層から離れる方向において徐々に減少し、前記パンダ型偏波保持光ファイバのカットオフ波長は830nmより短い、パンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項2】
前記石英クラッド層の前記屈折率はnであり、前記平坦なゲルマニウムドープ層の前記屈折率はn100であり、n100とnとの間の比屈折率差Δn100は、0.6%から1.4%の範囲である、請求項1に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項3】
前記石英クラッド層の前記屈折率はnであり、前記平坦なゲルマニウムドープ層の前記屈折率はn100であり、前記勾配ゲルマニウムドープ層の前記屈折率はn101であり、n101とnとの間の比屈折率差Δn101は、Δn101=Δn100×(1-a101 101)により算出され、Δn100は、n100とnとの間の比屈折率差であり、x101は、前記勾配ゲルマニウムドープ層の任意の点から前記平坦なゲルマニウムドープ層までの距離であり、a101は、前記勾配ゲルマニウムドープ層の勾配係数であり、3≦a101≦10である、請求項1または2に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項4】
前記平坦なフッ素ドープ層の前記屈折率はn112であり、前記石英クラッド層の前記屈折率はnであり、n112とnとの間の比屈折率差Δn112は、-0.1%から-0.5%の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項5】
前記平坦なフッ素ドープ層の前記屈折率はn112であり、前記石英クラッド層の前記屈折率はnであり、前記第1勾配フッ素ドープ層の前記屈折率はn111であり、n111とnとの間の比屈折率差Δn111は、Δn111=Δn112×(1-a111 111)により算出され、ここで、Δn112はn112とnとの間の比屈折率差であり、x111は、前記第1勾配フッ素ドープ層の任意の点から前記平坦なフッ素ドープ層の内縁までの距離であり、a111は、前記第1勾配フッ素ドープ層の勾配係数であり、10≦a111≦30である、請求項1から4のいずれか一項に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項6】
前記応力区域のホウ素含有量は、60ppm~1200ppmである、請求項1から5のいずれか一項に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項7】
前記遷移環状領域におけるホウ素含有量Yは、Y=a(x+x )により算出され、ここで、xは、前記遷移環状領域の任意の点から前記遷移環状領域の外縁までの距離であり、aは、前記遷移環状領域の勾配係数であり、2≦a≦40である、請求項1から6のいずれか一項に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項8】
前記内部から前記外部までの前記石英クラッド層の外部に、内側コーティング層および外側コーティング層が連続的に配置されており、前記内側コーティング層のヤング率は、前記外側コーティング層のそれより小さい、請求項1から7のいずれか一項に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項9】
前記内側コーティング層の前記ヤング率は0.5Mpa~2.5Mpaであり、前記外側コーティング層の前記ヤング率は550Gpa~1550Gpaである、請求項8に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項10】
前記石英クラッド層の直径はdであり、前記内側コーティング層の直径および前記外側コーティング層の直径はそれぞれdおよびdであり、
39.0μm≦d≦41.0μmである場合、52.0μm≦d≦65.0μm且つ78.0μm≦d≦83.0μmであり、
59.0μm≦d≦61.0μmである場合、72.0μm≦d≦85.0μm且つ98.0μm≦d≦105.0μmであり、
79.0μm≦d≦81.0μmである場合、100.0μm≦d≦115.0μm且つ134.0μm≦d≦140.0μmであるか、または115.0μm≦d≦135.0μm且つ164.0μm≦d≦170.0μmであり、
124.0μm≦d≦126.0μmである場合、170.0μm≦d≦205.0μm且つ235.0μm≦d≦250.0μmである、請求項8に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【請求項11】
動作波長が850nmである場合、前記パンダ型偏波保持光ファイバの減衰は2.2dB/kmより小さく、消光比は20dB/kmより高く、前記動作波長が1310nmである場合、前記パンダ型偏波保持光ファイバの前記減衰は0.4dB/kmより小さく、前記消光比は28dB/kmより高く、前記動作波長が1550nmである場合、前記パンダ型偏波保持光ファイバの前記減衰は0.3dB/kmより小さく、前記消光比は25dB/kmより高く、-55℃~90℃の温度において、1550nmの前記動作波長における前記パンダ型偏波保持光ファイバの1キロメートルあたりの全体の温度減衰変化は0.2dBより小さく、全体の温度消光比変化は3dBより小さい、請求項1に記載のパンダ型偏波保持光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏波保持光ファイバの技術分野、特に、パンダ型偏波保持光ファイバに関連する。
【背景技術】
【0002】
慣性技術は、キャリアの姿勢と軌跡制御を実現するのに使用される完全に自律的な主要技術である。他の種類のジャイロスコープと比べると、光ファイバジャイロスコープは、起動時間が短い、構造が単純である、軽量である、可動部がない、および環境適応性が強いことなどの多くの利点を有し、リングレーザジャイロスコープのロック現象を克服し、低速時に感度を維持するための機械的な揺れを防止する措置(anti-mechanical shake measures)に対する必要をなくす。光ファイバジャイロスコープは、慣性ナビゲーション技術分野の急激な開発の主な方向のうち1つとなっており、航空機、自動車および船舶のナビゲーションシステムならびに動きの検出などの多くの分野に広く使用されている。
【0003】
偏波保持光ファイバで作製された光ファイバリングは、光ファイバジャイロスコープのコアに影響されるユニットであり、それらの性能が光ファイバジャイロスコープの性能を決定する。光のシングルモード伝送特性を実現しつつ直線偏波状態を維持する特殊なファイバである偏波保持光ファイバ(PMF)は、多くの偏波関連応用分野(多次元多重コヒーレント通信、光ファイバジャイロスコープ技術、電流相互誘導技術、光ファイバのハイドロフォンおよび偏波の感知などといった)において応用価値を有する。
【0004】
小型化する方向で光ファイバジャイロスコープを開発するにつれて、既に適用可能である1310nmおよび1550nmと比べると、850nmなどの波長は、精度、良好な減衰、および優れた消光比を維持しつつコイルのボリュームを低減するのに使用される。しかしながら、既存の偏波保持光ファイバは、この種類の微細径偏波保持光ファイバ製品をサポートしていないので、関連する技術の開発が要求される。
【発明の概要】
【0005】
従来技術に既に存在する欠陥を考慮して、本発明の目的は、850nm、1310nmおよび1550nmの波長を満たし得、良好な減衰および優れた消光比を有するパンダ型偏波保持光ファイバを提供することである。
【0006】
上記の目的を実現するために、本発明は、以下の技術的解決手段を採用する。内部から外部へと連続的に配置されたコア層1と、石英クラッド層2とを備え、コア層1に沿って中心対称である2つの応力区域は石英クラッド2に提供され、応力区域3と同心である遷移環状領域は応力区域3の外部に配置された、パンダ型偏波保持光ファイバであって、コア層は、内部から外部へと連続的に配置されたゲルマニウムドープコア層と、フッ素ドープコア層とを備え、ゲルマニウムドープコア層は、内部から外部へと連続的に配置された平坦なゲルマニウムドープ層と、勾配ゲルマニウムドープ層とを備え、勾配ゲルマニウムドープ層の屈折率プロファイルは放物線状であり、勾配ゲルマニウムドープ層の屈折率は、平坦なゲルマニウムドープ層から離れる方向において徐々に減少し、フッ素ドープコア層は、内部から外部へと連続的に配置された石英コア層と、第1勾配フッ素ドープ層と、平坦なフッ素ドープ層と、第2勾配フッ素ドープ層とを備え、第1勾配フッ素ドープ層の屈折率プロファイルと第2勾配フッ素ドープ層の屈折率プロファイルとの両方は、曲線形状であり、平坦なフッ素ドープ層の屈折率プロファイルに沿って互いに対称であり、第1勾配フッ素ドープ層の屈折率は石英コア層から離れる方向において徐々に減少し、偏波保持光ファイバのカットオフ波長は830nmより短い、パンダ型偏波保持光ファイバ。
【0007】
さらに、石英クラッド層の屈折率はnであり、平坦なゲルマニウムドープ層の屈折率はn100であり、n100とnとの間の比屈折率差Δn100は、0.6%から1.4%の範囲である。
【0008】
さらに、石英クラッド層の屈折率はnであり、平坦なゲルマニウムドープ層の屈折率はn100であり、勾配ゲルマニウムドープ層の屈折率はn101であり、n101とnとの間の比屈折率差Δn101は、Δn101=Δn100×(1-a101 101)により算出され、Δn100は、n100とnとの間の比屈折率差であり、x101は、勾配ゲルマニウムドープ層の任意の点から平坦なゲルマニウムドープ層までの距離であり、a101は、勾配ゲルマニウムドープ層の勾配係数であり、3≦a101≦10である。
【0009】
さらに、平坦なフッ素ドープ層の屈折率はn112であり、石英クラッド層の屈折率はnであり、n112とnとの間の比屈折率差Δn112は、-0.1%から-0.5%の範囲である。
【0010】
さらに、平坦なフッ素ドープ層の屈折率はn112であり、石英クラッド層の屈折率はnであり、第1勾配フッ素ドープ層の屈折率はn111であり、n111とnとの間の比屈折率差Δn111は、Δn111=Δn112×(1-a111 111)により算出され、ここで、Δn112はn112とnとの間の比屈折率差であり、x111は、第1勾配フッ素ドープ層の任意の点から平坦なフッ素ドープ層の内縁までの距離であり、a111は、第1勾配フッ素ドープ層の勾配係数であり、10≦a111≦30である。
【0011】
さらに、応力区域のホウ素含有量は60ppm~1200ppmである。
【0012】
さらに、遷移環状領域におけるホウ素含有量Yは、Y=a(x+x )により算出され、ここで、xは、遷移環状領域の任意の点から遷移環状領域の外縁までの距離であり、aは、遷移環状領域の勾配係数であり、2≦a≦40である。
【0013】
さらに、内部から外部までの石英クラッド層の外部に、内側コーティング層および外側コーティング層が連続的に配置されており、内側コーティング層のヤング率は、外側コーティング層のそれより小さい。
【0014】
さらに、内側コーティング層のヤング率は0.5Mpa~2.5Mpaであり、外側コーティング層のヤング率は550Gpa~1550Gpaである。
【0015】
さらに、石英クラッド層の直径はdであり、内側コーティング層の直径および外側コーティング層の直径はそれぞれdおよびdであり、
39.0μm≦d≦41.0μmである場合、52.0μm≦d≦65.0μm且つ78.0μm≦d≦83.0μmであり、
59.0μm≦d≦61.0μmである場合、72.0μm≦d≦85.0μm且つ98.0μm≦d≦105.0μmであり、
79.0μm≦d≦81.0μmである場合、100.0μm≦d≦115.0μm且つ134.0μm≦d≦140.0μmであるか、または115.0μm≦d≦135.0μm且つ164.0μm≦d≦170.0μmであり、
124.0μm≦d≦126.0μmである場合、170.0μm≦d≦205.0μm且つ235.0μm≦d≦250.0μmである。
【0016】
さらに、動作波長が850nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は2.2dB/kmより小さく、消光比は20dB/kmより高い。動作波長が1310nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は0.4dB/kmより小さく、消光比は28dB/kmより高い。動作波長が1550nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は0.3dB/kmより小さく、消光比は25dB/kmより高い。-55℃~90℃の温度において、1550nmの動作波長における偏波保持光ファイバの1キロメートルあたりの全体の温度減衰変化は0.2dBより小さく、全体の温度消光比変化は3dBより小さい。
【0017】
従来技術と比べると、本発明は以下の利点を有する。
【0018】
本発明は、偏波保持光ファイバの新しい導波路構造を設計する。偏波保持光ファイバのゲルマニウムドープコア層は、放物線状の隆起を有する段階型導波路構造を形成し、その比屈折率差は比較的に高く、より短いカットオフ波長を有し得、その結果、偏波保持光ファイバは、850nm、1310nmおよび1550nmの光ファイバジャイロスコープの巻線要件を満たし得る。
【0019】
本発明は、ゲルマニウムドープコア層の周囲に陥没したフッ素ドープコア層を有するように設計されており、これは、石英クラッド層の直径が減少した場合に、石英領域全体における応力区域の過剰な割合により引き起こされる大きな減衰の問題を解決し得る。
【0020】
さらに、動作波長が850nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は2.2dB/kmより小さく、消光比は20dB/kmより高い。動作波長が1310nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は0.4dB/kmより小さく、消光比は28dB/kmより高い。動作波長が1550nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は0.3dB/kmより小さく、消光比は25dB/kmより高い。本発明は、良好な減衰および優れた消光比を有するのみならず、-55℃~90℃の温度において、偏波保持光ファイバの1キロメートルあたりの全体の温度減衰変化は0.2dBより小さく、全体の温度消光比変化は3dBより小さい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態におけるパンダ型偏波保持光ファイバの端面構造の概略図である。
図2】本発明の実施形態におけるパンダ型偏波保持光ファイバのコア層の端面構造の概略図である。
図3】本発明の実施形態におけるパンダ型偏波保持光ファイバの導波路構造の概略図である。
図4】本発明の実施形態におけるコーティング層でコーティングされたパンダ型偏波保持光ファイバの端面構造の概略図である。 図面において、1‐コア層、10‐ゲルマニウムドープコア層、100‐平坦なゲルマニウムドープ層、101‐勾配ゲルマニウムドープ層、11‐フッ素ドープコア層、110‐石英コア層、111‐第1勾配フッ素ドープ層、112‐平坦なフッ素ドープ層、113‐第2勾配フッ素ドープ層、2‐石英クラッド層、3‐応力区域、4‐遷移環状領域、5‐内側コーティング層、6‐外側コーティング層である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明はさらに、実施形態と組み合わせて、図面を参照して、以下に詳細に説明される。
【0023】
図1に示されるように、本発明の実施形態は、パンダ型偏波保持光ファイバを提供し、光ファイバの半径方向に沿って、偏波保持光ファイバは、内部から外部へと連続的に配置されたコア層1と石英クラッド層2とを備え、石英クラッド層2は純粋石英で作製されている。
【0024】
図1に示されるように、パンダ型偏波保持光ファイバに対して、実施形態はさらに、石英クラッド層2内に2つの円形の応力区域3を提供し、ここで2つの応力区域3はコア層1に沿って中心対称であり、応力区域3と同心である遷移環状領域4が各応力区域3の外部に配置されているので、2つの応力区域3の遷移環状領域4もコア層1に沿って中心対称であり、遷移環状領域4とコア層1との間に間隔が存在し、コア層1、応力区域3および遷移環状領域4の中心は、同じ直線上にある。
【0025】
図1に示されるように、コア層1は、内部から外部へと連続的に配置されたゲルマニウムドープコア層10とフッ素ドープコア層11とを備える。より具体的には、図2に示されるように、ゲルマニウムドープコア層10は、内部から外部へと連続的に配置された平坦なゲルマニウムドープ層100と勾配ゲルマニウムドープ層101とを備え、勾配ゲルマニウムドープ層101の屈折率プロファイルは放物線状であり、勾配ゲルマニウムドープ層101の屈折率は、平坦なゲルマニウムドープ層100から離れる方向において徐々に減少し、勾配ゲルマニウムドープ層101は、平坦なゲルマニウムドープ層100から離れる方向においてゲルマニウムドーピングを徐々に低減する方法を採用し、その結果、勾配ゲルマニウムドープ層101の屈折率プロファイルは放物線状であり、これはゲルマニウムドープコア層10とフッ素ドープコア層11との間のマッチング関係を向上させ、それにより減衰を低減し得る。
【0026】
ゲルマニウムが屈折率を上昇させ得るので、ゲルマニウムドープコア層10は、ゲルマニウムをドーピングすることによって、放物線状の隆起を有する段階型導波路構造として形成され得、これは、より高い比屈折率差を有し、より短いカットオフ波長、具体的には830nmより短いカットオフ波長を有し得る。その結果、偏波保持光ファイバは、850nm、1310nmおよび1550nmの波長を有する光ファイバジャイロスコープの巻線を満たし得る。
【0027】
同時に、微細径偏波保持光ファイバの要件に応じて、偏波保持光ファイバの石英クラッド層2の直径が減少する場合に、石英区域全体を占有する応力区域3の過剰な割合により引き起こされ得る大きな減衰の問題を解決するために、陥没したフッ素ドープコア層11は、ゲルマニウムドープコア層10の周囲に設計される。図2に示されるように、フッ素ドープコア層11は、内部から外部へと連続的に配置された石英コア層110と、第1勾配フッ素ドープ層111と、平坦なフッ素ドープ層112と、第2勾配フッ素ドープ層113とを備える。第1勾配フッ素ドープ層111の屈折率プロファイルと第2勾配フッ素ドープ層113の屈折率プロファイルとの両方は、曲線形状であり、平坦なフッ素ドープ層112の屈折率プロファイルに沿って互いに対称である。第1勾配フッ素ドープ層111の屈折率は、石英コア層110から離れる方向に向かって徐々に減少する。図3に示されるように、第1勾配フッ素ドープ層111の屈折率プロファイルと第2勾配フッ素ドープ層113の屈折率プロファイルとは、放物線状を有する。そのような設計によって、一方では、光信号がファイバコアにより良く拘束され、他方では、ゲルマニウムドープコア層10に対する応力区域3の圧迫効果が軽減される。したがって、一方では、ゲルマニウムドープコア層10に対して応力区域3により引き起こされる応力複屈折が保持され、その結果、そこに伝送された光モードフィールドは楕円となり、偏波を実現する。他方では、ゲルマニウムドープコア層10に対する応力区域3の望ましくない圧迫が軽減され、それにより光ファイバの減衰性能を最適化する。
【0028】
この実施形態において、動作波長が850nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は2.2dB/kmより小さく、消光比は20dB/kmより高い。動作波長が1310nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は0.4dB/kmより小さく、消光比は28dB/kmより高い。動作波長が1550nmである場合、偏波保持光ファイバの減衰は0.3dB/kmより小さく、消光比は25dB/kmより高い。応力区域3は、リング状勾配フッ素ドープ層と結合され、これにより、応力伝達効果を最適化し、ゲルマニウムドープコア層10に対してより良い応力複屈折を実現し、優れた消光比を実現する。他方では、多層ゲルマニウムドープコア層の設計は、リング状の勾配フッ素ドープの設計と結合され、これは界面応力を最適化し、優れた減衰を実現し得る。これに加えて、リング状の勾配フッ素ドープの設計は、ファイバコアにおける光信号の伝送をより良く拘束し得、これにより、光ファイバが曲がった場合に光信号の散逸をより少なくし、その結果、それは良好な減衰と優れた消光比とを有するのみならず、-55℃~90℃の温度において、1550nmにおける偏波保持光ファイバの1キロメートルあたりの全体の温度減衰変化は0.2dBより小さく、全体の温度消光比変化は3dBより小さい。
【0029】
偏波保持光ファイバの導波路構造図である図3に示されるように、本発明により提供される実施形態は、以下の式を使用して比屈折率差Δを算出する。
【0030】
Δ=(n屈折率-n)/(n屈折率+n)×100%
【0031】
ここで、石英クラッド層2の屈折率がnであり、平坦なゲルマニウムドープ層100と石英クラッド層2との間の比屈折率差Δn100を算出する場合、上記の式におけるn屈折率は、平坦なゲルマニウムドープ層100の屈折率n100である。勾配ゲルマニウムドープ層101と石英クラッド層2との間の比屈折率差Δn101を算出する場合、上記の式におけるn屈折率は、勾配ゲルマニウムドープ層101の屈折率n101である。平坦なフッ素ドープ層112と石英クラッド層2との間の比屈折率差Δn112を算出する場合、上記の式におけるn屈折率は、平坦なフッ素ドープ層112の屈折率n112である。第1勾配フッ素ドープ層111と石英クラッド層2との間の比屈折率差Δn111を算出する場合、上記の式におけるn屈折率は、第1勾配フッ素ドープ層111の屈折率n111である。
【0032】
石英コア層110の屈折率n110は、石英クラッド層2の屈折率nと同じである。
【0033】
平坦なゲルマニウムドープ層100の屈折率n100とnとの間の比屈折率差Δn100は、0.6%から1.4%の範囲である。
【0034】
勾配ゲルマニウムドープ層101の屈折率n101とnとの間の比屈折率差Δn101は、Δn101=Δn100×(1-a101 101)により算出され、ここでΔn100は、n100とnとの間の比屈折率差であり、x101は、勾配ゲルマニウムドープ層101の任意の点から平坦なゲルマニウムドープ層100の縁部までの距離であり、x101≧0であり、その最高値は、勾配ゲルマニウムドープ層101の厚さであり、a101は、勾配ゲルマニウムドープ層101の勾配係数であり、a101の範囲は3≦a101≦10である。
【0035】
平坦なフッ素ドープ層112の屈折率n112とnとの間の比屈折率差Δn112は、-0.1%から-0.5%の範囲である。
【0036】
第1勾配フッ素ドープ層111の屈折率は、n111とnとの間の比屈折率差Δn111であり、これは、Δn111=Δn112×(1-a111 111)により算出され、ここでΔn112は、n112とnとの間の比屈折率差であり、x111は、第1勾配フッ素ドープ層111の任意の点から平坦なフッ素ドープ層112の内縁までの距離であり、x111≧0であり、その最高値は、第1勾配フッ素ドープ層111の厚さであり、a111は、第1勾配フッ素ドープ層111の勾配係数であり、a111の範囲は10≦a111≦30であり、第2勾配フッ素ドープ層113の屈折率n113と第1勾配フッ素ドープ層111の屈折率n111とが平坦なフッ素ドープ層112の屈折率n112に沿って対称であるので、詳細についてはここで繰り返し説明しない。
【0037】
さらに、応力区域3は高応力区域であり、そのホウ素含有量は60ppm~1200ppmである。
【0038】
より少ないホウ素のドーピングによって、応力伝動効果をより良く最適化しより良い応力複屈折効果を実現することで、応力を小さくすることを実現するために、遷移環状領域4が配置される。これは放物線状を提示しており、これにより応力複屈折をより良く最適化し、その結果、より小さい応力の条件下でより高い応力複屈折が取得され得る。これにより、偏波保持光ファイバにおいて優れた消光比を実現し、同時に光ファイバの応力区域3における過剰な応力に起因する光ファイバ寿命の低減を回避する。遷移環状領域4のホウ素含有量Yは、Y=a(x+x )により算出され、ここでxは、遷移環状領域4の任意の点から遷移環状領域4の外縁までの距離であり、x≧0であり、その最高値は、遷移環状領域4の厚さであり、aは遷移環状領域4の勾配係数であり、2≦a≦40の値を有する。図3に示されるように、遷移環状領域4は放物線状であり、応力区域3は平坦な水平線の形状である。
【0039】
図4に示されるように、内側コーティング層5と外側コーティング層6とが、内部から外部までの石英クラッド層2の外部に連続的に配置されており、内側コーティング層5のヤング率は外側コーティング層6のそれより小さい。ここで内側コーティング層5は、石英クラッド層2と直接接触しており、比較的柔らかく、外側コーティング層6は光ファイバの最も外側の保護シェルであり、比較的に硬い。このように、異なるヤング率を有する2層のコーティング層を提供することによって、より硬い外側コーティング層6は保護シェルを形成し、より柔らかい内側コーティング層5は応力の衝撃を緩衝し、その結果、光ファイバは多様な環境に適用できる良好な応用性能を有する。実施形態において、内側コーティング層5のヤング率は0.5Mpa~2.5Mpaであり、外側コーティング層6のヤング率は550Gpa~1550Gpaである。
【0040】
図4に示されるように、石英クラッド層2の直径はdであり、内側コーティング層5の直径および外側コーティング層6の直径はそれぞれdおよびdである。
石英クラッド層2の中心径が40μmである場合、dの範囲は、39.0μm≦d≦41.0μm,52.0μm≦d≦65.0μm,および78.0μm≦d≦83.0μmである。
石英クラッド層2の中心径が60μmである場合、dの範囲は、59.0μm≦d≦61.0μm,72.0μm≦d≦85.0μm,および98.0μm≦d≦105.0μmである。
石英クラッド層2の中心径が80μmである場合、dの範囲は、79.0μm≦d≦81.0μm,100.0μm≦d≦115.0μm,および134.0μm≦d≦140.0μmであるか、または、115.0μm≦d≦135.0μm,および164.0μm≦d≦170.0μmである。
石英クラッド層2の中心径が125μmである場合、dの範囲は、124.0μm≦d≦126.0μm,170.0μm≦d≦205.0μm,および235.0μm≦d≦250.0μmである。
【0041】
光ファイバの石英クラッド層2の直径は40μm~125μmをカバーし、コーティング層の直径は80μm~250μmをカバーし、これは、光ファイバジャイロスコープの高精度および小型化の開発需要を十分に満たし得ることが、上記から理解され得る。
【0042】
本発明はさらに、実施形態および図面と組み合わせて以下に詳細に説明される。
【0043】
石英クラッド層2の中心径が40μmである場合、4つのタイプの光ファイバが実装される。具体的なパラメータは表1に示される。
[表1]中心径が40μmである石英クラッド層
【表1】
石英クラッド層2の中心径が60μmである場合、4つのタイプの光ファイバが実装される。具体的なパラメータは表2に示される。
[表2]中心径が60μmである石英クラッド層
【表2】
石英クラッド層2の中心径が80μmである場合、4つのタイプの光ファイバが実装される。具体的なパラメータは表3に示される。
[表3]中心径が80μmである石英クラッド層
【表3】
石英クラッド層2の中心径が125μmである場合、4つのタイプの光ファイバが実装される。具体的なパラメータは表4に示される。
[表4]中心径が125μmである石英クラッド層
【表4】
【0044】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本発明の原則から逸脱することなく、いくつかの改良および修正を行い得、これらの改良および修正も、本発明の保護範囲内にあるとみなされる。本明細書に詳細に説明されていない内容は、当業者に周知の従来技術に属する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】