(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】低分子量シルクフィブロインを含む化粧組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20220104BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220104BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220104BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q5/00
A61Q5/02
C07K7/06 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021515024
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2019077177
(87)【国際公開番号】W WO2020083636
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/111503
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ハン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シン
(72)【発明者】
【氏名】プラマニック,アミタヴァ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ゼンゾン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ジンロン
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,ウェイゼン
【テーマコード(参考)】
4C083
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD451
4C083AD452
4C083CC31
4C083CC38
4C083FF01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA51
4H045EA15
4H045FA16
(57)【要約】
本発明は、低分子量シルクフィブロインおよび化粧的に許容される担体を含む化粧組成物であって、ここで、前記低分子量シルクフィブロインは、分子量2500Da未満の少なくとも85部のペプチドを含み、ここで、ペプチドの少なくとも50重量%のアミノ酸配列が、GAGY、GAGAGAGY、GAGVGAGYまたはAWSSESDFであり、そしてここで、前記シルクフィブロインが、以下の工程を含む方法によって産生され:
(i) 0.01~20重量%の重量平均分子量6~100KDaの高分子量シルクフィブロインを含む水溶液を、25~45℃の温度で、6~9のpH下で、4~24時間、α-キモトリプシンと混合し、ここで、前記溶液中の前記α-キモトリプシンに対する前記高分子量シルクフィブロインの比は、100:1~300:1重量部であり;(ii) 過剰のα-キモトリプシンを不活性化し、不活性化されたα-キモトリプシンを工程(i)の反応混合物から分離し;そして(iii) 前記反応混合物を乾燥し、前記低分子量シルクフィブロインを得る;
ここで、前記組成物は、0.1~10重量%の低分子量シルクフィブロインを含む、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量シルクフィブロインおよび化粧的に許容される担体を含む化粧組成物であって、ここで、前記低分子量シルクフィブロインは、分子量2500Da未満のペプチドを少なくとも85部含み、ここで、前記ペプチドの少なくとも50重量%のアミノ酸配列が、GAGY、GAGAGAGY、GAGVGAGYまたはAWSSESDFであり、そしてここで、前記シルクフィブロインが、以下の工程を含む方法によって産生され:
(i) 0.01~20重量%の重量平均分子量6~100KDaの高分子量シルクフィブロインを含む水溶液を、25~45℃の温度で、6~9のpH下で、4~24時間、α-キモトリプシンと混合し、ここで、前記溶液中の前記α-キモトリプシンに対する前記高分子量シルクフィブロインの比は、100:1~300:1重量部であり;
(ii) 過剰のα-キモトリプシンを不活性化し、不活性化されたα-キモトリプシンを工程(i)の反応混合物から分離し;そして
(iii) 前記反応混合物を乾燥し、前記低分子量シルクフィブロインを得る;
ここで、前記組成物は、0.1~10重量%の低分子量シルクフィブロインを含む、組成物。
【請求項2】
前記低分子量シルクフィブロインがチロシンを含み、そして、前記低分子量シルクフィブロイン中のそのモル分率が、10モル%以上である、請求項1に記載の化粧組成物。
【請求項3】
前記低分子量シルクフィブロインの水への溶解度が、11~42g/100g水である、請求項1または2に記載の化粧組成物。
【請求項4】
前記化粧組成物がヘアケア組成物である、請求項1~3に記載の化粧組成物。
【請求項5】
前記ヘアケア組成物がシャンプーである、請求項4に記載の化粧組成物。
【請求項6】
組成物が、0.1~5重量%の前記低分子量シルクフィブロインを含む、請求項4または5に記載の化粧組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の化粧組成物の局所適用工程を含む、毛髪繊維の少なくとも1つの内部特徴を改変する方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の化粧組成物の局所適用工程を含む、毛髪繊維の少なくとも1つの表面特性を改質する方法。
【請求項9】
毛髪繊維の少なくとも1つの内部特徴を改変するための、請求項1~6のいずれかに記載の化粧組成物の使用。
【請求項10】
毛髪繊維の少なくとも1つの表面特性を改質するための、請求項1~6のいずれかに記載のヘアケア組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量シルクフィブロインを含む化粧組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シルクフィブロインは絹中に存在する一種の繊維性タンパク質であり、繊維構造の点でケラチン(毛髪の主成分である)に幾分類似している。さらに、シルクフィブロインは水素結合および疎水性相互作用のような分子間相互作用のために、ケラチンに対して良好な親和性を有する。したがって、シルクフィブロインは、ケラチンに対して良好な親和性を示すと考えられ、毛髪修復および増強の高い可能性を有する。一般に、シルクフィブロインには、水溶性のランダムコイルと水不溶性のβシートという2つの主要なタイプの二次構造がある。シルク繭繊維において、繊維軸に沿った高度に配向されたβシート構造は、その滑らかさ、光沢、および強い機械的強度を含むシルク繊維の独特の特性に最も寄与する。
【0003】
低分子量シルクフィブロイン(短いペプチド)は、単純な構造、生体適合性および生分解性のような様々の利点のために、より注目を集めている。絹から種々のペプチドセグメントを切断するために、シルクフィブロインの酵素分解に対する多くの努力が報告されている。しかしながら、現在市販されている低分子量シルクフィブロインは、そのユニークな構造を失う傾向があるシルクフィブロイン分子鎖をランダムに分解するシルクフィブロインの分解産物が主である。したがって、多くの望ましい品質または特性が失われる。したがって、低分子量シルクフィブロインを含む、より有効な化粧組成物が必要とされている。
【0004】
JP7067686A(信濃ケンシ株式会社、1995)は、低分子量を有し、食品および化粧品に有用なシルクフィブロインペプチドの製造方法に関する。このプロセスは、高分子量シルクフィブロインを中性無機酸で分解し、分解生成物をプロテイナーゼで加水分解して低分子量シルクフィブロインペプチドの水溶液を得、電気透析によって溶液を脱塩することによって行われる。
【0005】
JP60112710A(カネボー株式会社、1983)は、特定のフィブロインペプチドおよび液体多価アルコールを含有し、毛髪への損傷を防止し、化学的および機械的刺激から毛髪を保護し、毛髪の良好な感触、光沢、コーミング特性およびセッティング効果を付与することができる組成物を開示している。このようなフィブロインペプチドは、300~3500Daの平均分子量を有し、シルクフィブロインを、酵素、酸またはアルカリで加水分解することによって調製することができる。
【0006】
US2007041925A(Beiersdorf AG、2007)は、化粧調製物、特に、絹、パスミナ、カシュメア羊毛、メリノウールおよび/またはモヘア、イガイ糸抽出物、ビズス糸、ならびにセリシンおよび/またはセリシン加水分解物のタンパク質加水分解物を含有するヘアケア調製物またはヘアケア製品に関する。開示される加水分解シルクタンパク質の一例は、Silkpro(登録商標)である。このようなシルクフィブロインは、Bombyx moriの繭の酸性、アルカリ性または酵素加水分解によって得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】JP7067686A
【特許文献2】JP60112710A
【特許文献3】US2007041925A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、選択された酵素を用いて酵素分解により調製された特定の低分子量シルクフィブロインを開発した。このプロセスは、高分子量シルクフィブロイン鎖の特定の選択部位のみを切断することによって、元の高分子量シルクフィブロイン鎖由来の特定のペプチドの独特の配列を保持することを可能にする。驚くべきことに、低分子シルクフィブロインは、毛髪繊維の表面に良好に沈着するだけでなく、繊維のコアに浸透することが観察される。したがって、毛髪の修復、保護、および潤滑のようないくつかの利点をもたらすことができる。
【0009】
第1の態様は、低分子量シルクフィブロインおよび化粧的に許容される担体を含む化粧組成物であって、ここで、前記低分子量シルクフィブロインは、分子量2500Da未満のペプチドを少なくとも85部含み、ここで、ペプチドの少なくとも50重量%のアミノ酸配列が、GAGY、GAGAGAGY、GAGVGAGYまたはAWSSESDFであり、そしてここで、前記シルクフィブロインが、以下の工程を含む方法によって産生され:
(i) 0.01~20重量%の重量平均分子量6~100KDaの高分子量シルクフィブロインを含む水溶液を、25~45℃の温度で、6~9のpH下で、4~24時間、α-キモトリプシンと混合し、ここで、前記溶液中の前記α-キモトリプシンに対する前記高分子量シルクフィブロインの比は、100:1~300:1重量部であり;
(ii) 過剰のα-キモトリプシンを不活性化し、不活性化されたα-キモトリプシンを工程(i)の反応混合物から分離し;そして
(iii) 前記反応混合物を乾燥し、前記低分子量シルクフィブロインを得る;
ここで、前記組成物は、0.1~10重量%の低分子量シルクフィブロインを含む。
【0010】
第2の態様によれば、毛髪繊維の少なくとも1つの表面特徴を改質するための方法であって、第1の態様の化粧組成物を局所適用する工程を含む方法が開示される。
【0011】
第3の態様によれば、第1の態様の化粧組成物の局所適用の工程を含む、毛髪繊維の少なくとも1つの内部特性を改質するための方法が開示される。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、毛髪繊維の少なくとも1つの内部特性を改質するための第2の態様のヘアケア組成物の使用を提供する。
【0013】
本発明の他の全ての態様は以下の詳細な説明および実施例を考慮することにより、より容易に明らかになるのであろう。
【0014】
実施例を除いてまたは明示的に示されなければ、材料の量または反応条件、材料の物理的特性および/または使用を示す本明細書中のすべての数字は、任意に「約」という語によって修飾されると理解され得る。
【0015】
全ての量は、特に明記しない限り化粧組成物の重量による。
【0016】
任意の範囲の値を指定する際に、任意の特定の上限値を、任意の特定の下限値に関連付けることができることに留意されたい。
【0017】
疑義を避けるために、「含む」(comprising)という単語は「含む」(including)を意味することを意図しているが、必ずしも「からなる」(consisting of)または「からなる」(composed of)ことを意味するものではない。言い換えれば、列挙されたステップまたはオプションは、網羅的である必要はない。
【0018】
本明細書で見出される本発明の開示は、請求項が複数の依存性または冗長性なしに見出され得るという事実にかかわらず、請求項で見出されるすべての実施形態を、互いに複数の依存性を有するものとして網羅するとみなされる。
【0019】
本発明の特定の態様(例えば、本発明の組成物)に関して特徴が開示される場合、そのような開示は、必要な変更を加えて本発明の任意の他の態様(例えば、本発明の方法)にも適用されるとみなされる。
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書で使用される「化粧組成物」とは、哺乳動物、特にヒトの皮膚への局所適用のための組成物を含むことを意味する。このような組成物は一般にリーブオンまたはリンスオフとして分類され得るが、好ましくはリーブオンタイプである。組成物は、特に外観を改善するために人体に適用される製品に配合されるが、さらに、クレンジング、臭気制御または一般的な美観を提供することもできる。本発明の組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ゲル、またはトナーの形態であってもよく、または用具を用いて、またはフェースマスクもしくはパッドを介して適用されてもよい。このような組成物の非限定的な例としては、リーブオンスキンローション、クリーム、制汗剤、デオドラント、口紅、ファンデーション、マスカラ、日焼けのない日焼け止めローションおよび日焼け止めローションを含む。本発明の組成物は、好ましくはリーブオン組成物である。本明細書で使用される「皮膚」は、顔および身体(例えば、首、胸、背中、腕、下腕、手、脚、臀部および頭皮)、特にその太陽に露出した部分を含むことを意味する。
【0021】
本明細書で使用される「ヘアケア組成物」は、哺乳動物、特にヒトの毛髪および/または頭皮への局所適用のための組成物を含むことを意味する。このような組成物は、一般に、リーブオンまたはリンスオフとして分類することができ、外観、クレンジング、臭気制御または一般的な美観も改善するために人体に適用される任意の製品を含む。本発明の組成物は、液体、ローション、クリーム、フォーム、スクラブ、ゲル、またはバーの形態であり得る。このような組成物の非限定的な例としては、リーブオンヘアローション、クリーム、およびウォッシュオフシャンプー、コンディショナー、シャワーゲル、またはトイレットバーを含む。本発明の化粧組成物がヘアケア組成物である場合、それは好ましくはウォッシュオフ組成物であり、特に好ましくはシャンプーまたはコンディショナーである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
低分子量シルクフィブロイン
分子量2500Da未満のペプチドの少なくとも85部を含む低分子量シルクフィブロインであって、ここで、前記ペプチドの少なくとも50重量%のアミノ酸配列が、GAGY、GAGAGAGY、GAGVGAGYまたはAWSSESDFであり、低分子量シルクフィブロインは、以下の工程を含む方法によって製造される:
(i) 0.01~20重量%の重量平均分子量6~100KDaの高分子量シルクフィブロインを含む水溶液を、25~45℃の温度で、6~9のpH下で、4~24時間、α-キモトリプシンと混合し、ここで、前記溶液中の前記α-キモトリプシンに対する前記高分子量シルクフィブロインの比は、100:1~300:1重量部であり;
(ii) 過剰のα-キモトリプシンを不活性化し、不活性化されたα-キモトリプシンを工程(i)の反応混合物から分離し;そして
(iii) 前記反応混合物を乾燥し、前記低分子量シルクフィブロインを得る。
【0023】
好ましくは、工程(i)の水溶液は、α-キモトリプシンと共に0.1~10重量%の高分子量シルクフィブロインを含む。好ましくは、工程(i)における前記α-キモトリプシンに対する高分子量シルクフィブロインの比は、重量部で150:1~250:1である。
【0024】
工程(i)の温度は、30~45℃であることが好ましい。好ましくは、工程(i)の水溶液のpHは8~9である。さらに、好ましくは、加熱プロセスは6~15時間継続する。
【0025】
本発明による低分子量シルクフィブロインは、2500Da未満の分子量のペプチドを少なくとも85重量部、好ましくは2500Da未満の分子量のペプチドを少なくとも95重量部、より好ましくは2000Da未満の分子量のペプチドを少なくとも95重量部含む。本発明による低分子量のシルクフィブロインは、分子量が150~2500Daのペプチドを少なくとも85重量部含み、より好ましくは、分子量が150~2000Daのペプチドを少なくとも85重量部含むことが好ましい。ペプチドの少なくとも50重量%のアミノ酸配列は、GAGY、GAGAGAGY、GAGVGAGYまたはAWSSESDFである。
【0026】
明確化のため、用語の意味は、以下の通りであることをここに明確にする:
A:アラニン
D:アスパラギン酸
E:グルタミン酸
F:フェニルアラニン
G:グリシン
S:セリン
W:トリプトファン
Y:チロシン
【0027】
ケラチン関連タンパク質中のチロシンはカチオン-π相互作用によって中間フィラメントタンパク質中のアルギニンと相互作用し、中間フィラメントタンパク質の二量体化およびらせん配列を促進し、したがって毛髪繊維の特性を改善することが周知である。したがって、本発明の低分子量シルクフィブロインは、チロシンを含み、低分子量シルクフィブロイン中のチロシンのモル分率が10モル%以上であることが好ましい。このモル分率は、10モル%~32モル%であることがより好ましい。
【0028】
化粧組成物に容易に配合するために、本発明による低分子量シルクフィブロインの溶解度は、11~42g/100g水であることが好ましい。
【0029】
理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、α-キモトリプシンが、プロセスの特定の条件下で元の高分子量シルクフィブロイン分子鎖の特定の部位のみを切断すると考える。したがって、高分子量シルクフィブロイン中の独特の配列は無傷に保つことができ、それによって、毛髪修復、潤滑および保護のようなより良好なヘアケア利益を提供するように、βシート構造を形成する可能性を有する低分子量シルクフィブロインをもたらす。
【0030】
化粧組成物
第1の態様によれば、本発明の低分子量シルクフィブロインおよび化粧上許容される担体を含む化粧組成物が開示される。化粧組成物は、ヘアケア組成物であることが好ましい。本発明の化粧組成物がヘアケア組成物である場合、シャンプー、ヘアコンディショナーまたはリーブオンヘアケア組成物であることがより好ましい。ヘアケア組成物はシャンプーであることが最も好ましい。
【0031】
組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、最も好ましくは0.1~2重量%の前記低分子量シルクフィブロインを含むことが好ましい。
【0032】
本発明の化粧組成物は、化粧として許容される担体を含む。担体の成分は、組成物の性質に依存する。最も好ましい担体は、エマルジョンである。エマルジョンは、油と水の混合物、通常は熱力学的に安定な混合物である。エマルジョンは、水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンまたはより複雑なエマルジョンであってもよい。エマルジョンは、一般に、有機界面活性剤が最も一般的な型である乳化剤を使用して安定化される。本発明によるエマルジョンは、好ましくは水中油型エマルジョンである。エマルジョンを調製するために使用される油は、好ましくは、植物油、鉱油、シリコーン油またはそれらの混合物から選択される。植物油は、好ましくは、パーム油、カノーラ油、トウモロコシ油、ニーム油、オリーブ油、綿実油、ココナッツ油、分別ココナッツ油、ナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油またはヒマワリ油のうちの1つ以上から選択される。油は、組成物の0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%含まれることが好ましい。
【0033】
本発明の化粧組成物は、特にシャンプーのようなヘアケア組成物の形態である場合、好ましくは、アニオン性界面活性剤、例えば、硫酸アルキルおよび/またはエトキシル化硫酸アルキル界面活性剤を含む。これらのアニオン性界面活性剤は、好ましくは組成物の2~16重量%、より好ましくは3~16重量%のレベルで存在する。好ましいアルキル硫酸塩は、C8~18アルキル硫酸塩、より好ましくはC12~18アルキル硫酸塩であり、好ましくはナトリウム、カリウム、アンモニウムまたは置換アンモニウムのような可溶化カチオンとの塩の形態である。例は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
【0034】
好ましいアルキルエーテルサルフェートは、以下の式を有するものであり:
RO(CH2CH2O)nSO3M;
式中、Rは、8~18(好ましくは12~18)個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニルであり;nは、少なくとも0.5より大きく、好ましくは1~3、より好ましくは2~3の平均値を有する数であり;そして、Mは、ナトリウム、カリウム、アンモニウムまたは置換アンモニウムのような可溶化カチオンである。一例は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。
【0035】
好ましいエトキシル化アルキル硫酸アニオン界面活性剤は、0.5~3、好ましくは1~3の平均エトキシル化度を有するラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。
【0036】
本発明による化粧組成物は、必要に応じておよび好ましくは、追加的に、ベタイン界面活性剤を含む。好ましい態様において、組成物は、0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、より好ましくは1~5重量%のベタイン界面活性剤、好ましくはアルキルアミドプロピルベタイン、例えばココアミドプロピルベタインを含む。
【0037】
本発明によるシャンプー組成物は、化粧的に許容され、毛髪への局所適用に適した1つ以上のさらなるアニオン性クレンジング界面活性剤を含み得る。
【0038】
さらなる適切なアニオン性クレンジング界面活性剤の例は、アルカリルスルホネート、アルキルコハク酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルスルホコハク酸塩、N-アルキルサルコシネート、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、およびアルキルエーテルカルボン酸およびそれらの塩、特にそれらのナトリウム、マグネシウム、アンモニウム、および、モノ、ジおよびトリエタノールアミン塩である。アルキル基およびアシル基は、一般に8~18個、好ましくは10~16個の炭素原子を含有し、不飽和であってもよい。アルキルエーテルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルリン酸塩およびアルキルエーテルカルボン酸ならびにそれらの塩は、1分子あたり1~20個のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド単位を含有し得る。本発明のシャンプー組成物に使用するための典型的なアニオン性クレンジング界面活性剤には、オレイルコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸アンモニウム、ラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トリエタノールアミンドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルエーテルカルボン酸およびN-ラウリルサルコシネートナトリウムが含まれる。
【0039】
適切な好ましい追加のアニオン性クレンジング界面活性剤は、ラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム(n)EO(ここで、nは1~3である)、ラウリルエーテルカルボン酸(n)EO(ここで、nは10~20である)である。
【0040】
前述のアニオン性クレンジング界面活性剤のいずれかの混合物もまた、適切であり得る。
【0041】
添加される場合、本発明のシャンプー組成物中のアニオン性クレンジング界面活性剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、アニオン性クレンジング界面活性剤の総重量%で計算して、一般に0.5~45重量%、好ましくは1.5~35重量%、より好ましくは5~20重量%の範囲であり得る。
【0042】
本発明の化粧組成物がヘアコンディショニング組成物である場合、それは、好ましくは単独でまたは混合して使用される、カチオン性界面活性剤から選択されるコンディショニング界面活性剤を含む。好ましくは、カチオン性界面活性剤は、式N+R1R2R3R4を有し、ここで、R1、R2、R3およびR4は、独立して、(C1~C30)アルキルまたはベンジルである。好ましくは、R1、R2、R3及びR4の1つ、2つ又は3つは、独立して(C4~C30)アルキルであり、他のR1、R2、R3及びR4基は、(C1~C6)アルキル又はベンジルである。より好ましくは、R1、R2、R3およびR4の1つまたは2つは、独立して(C6~C30)アルキルであり、他のR1、R2、R3およびR4基は、(C1~C6)アルキルまたはベンジル基である。任意に、アルキル基は、アルキル鎖内に1以上のエステル(-OCO-または-COO-)および/またはエーテル(-O-)結合を含むことができる。アルキル基は、1個以上の水酸基で置換されていてもよい。アルキル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、3個以上の炭素原子を有するアルキル基については環状であってもよい。アルキル基は飽和されていてもよく、または1つ以上の炭素-炭素二重結合(例えば、オレイル)を含んでいてもよい。アルキル基は、場合によりアルキル鎖上で1個以上のエチレンオキシ基でエトキシル化される。
【0043】
本発明によるコンディショナー組成物に使用するのに適したカチオン性界面活性剤には、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベフェニルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化デシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジドデシルジメチルアンモニウム、塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、塩化牛脂トリメチルアンモニウム、塩化ジ水素化牛脂ジメチルアンモニウム(例、Akzo NobelからのArquad 2HT/75)、塩化ココトリメチルアンモニウム、塩化PEG-2-オレアンモニウム、およびそれらの対応する水酸化物が含まれる。さらに適切なカチオン性界面活性剤には、CTFA名称Quaternium-5、Quaternium-31およびQuaternium-18を有する材料が含まれる。前述の材料のいずれかの混合物も好適であり得る。本発明によるコンディショナーでの使用のための特に有用なカチオン性界面活性剤は、例えば、GENAMIN CTAC、ex Hoechst Celaneseとして市販されている塩化セチルトリメチルアンモニウムである。本発明によるコンディショナーで使用するための別の特に有用なカチオン性界面活性剤は、例えばGENAMIN KDMP、ex Clariantとして市販されている塩化ベフェニルトリメチルアンモニウムである。さらに別の好ましいカチオン性界面活性剤は、ステアラミドプロピルジメチルアミンである。
【0044】
組成物に使用するのに最も好ましいカチオン性界面活性剤は、ステアラミドプロピルジメチルアミン、塩化ベヘントリモニウムまたは塩化ステアリルトリメチルアンモニウムである。本発明のコンディショナーにおいて、カチオン性界面活性剤のレベルは、一般に、組成物の0.1~5重量%、好ましくは0.5~2.5重量%の範囲である。
【0045】
本発明のヘアコンディショニング組成物はまた、好ましくは、脂肪アルコールをさらに含んでもよい。コンディショニング組成物における脂肪アルコールおよびカチオン性界面活性剤の併用は、これがラメラ相の形成をもたらし、その中にカチオン性界面活性剤が分散されるので、特に有利であると考えられる。
【0046】
代表的な脂肪アルコールは、8~22個の炭素原子、より好ましくは16~22個の炭素原子を含む。脂肪アルコールは、典型的には直鎖アルキル基を含有する化合物である。適切な脂肪アルコールの例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびそれらの混合物を含む。これらの材料の使用はまた、それらが本発明の組成物の全体的なコンディショニング特性に寄与するという点で有利である。
【0047】
本発明のコンディショナー中の脂肪アルコールのレベルは、組成物の0.5~10重量%、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは0.2~7重量%、最も好ましくは0.3~6重量%の範囲である。カチオン性界面活性剤対脂肪アルコールの重量比は、好ましくは1:1~1:10、より好ましくは1:1.5~1:8、最適には1:2~1:5である。
【0048】
本発明の別の態様によれば、本発明の化粧組成物は、リーブオン組成物として送達することができる。そのような場合、シャンプーまたはコンディショナーとして製品を送達するために使用される追加の界面活性剤および他の活性剤は、必要とされない場合がある。そのような製品中の化粧品として許容されるビヒクルは、単に水またはポリマーで構造化された水であってもよい。
【0049】
方法および使用
本発明は、本発明の第1の態様の化粧組成物を局所適用する工程を含む、毛髪繊維の少なくとも1つの表面特徴を改質する方法を提供する。
【0050】
本発明は、本発明の第1の態様の化粧組成物を局所適用する工程を含む、毛髪繊維の少なくとも1つの内部特性を改質する方法を提供する。
【0051】
本発明はまた、毛髪繊維の少なくとも1つの表面特徴を改質するための、本発明の第1の態様のヘアケア組成物の使用を提供する。好ましくは、表面特性が毛髪繊維の潤滑性である。
【0052】
本発明はまた、毛髪繊維の少なくとも1つの内部特性を改質するための、本発明の第1の態様のヘアケア組成物の使用を提供する。特に、内部特性は、深毛修復または毛髪強化のうちの少なくとも1つを意味する。
【0053】
本発明による使用は、好ましくは本来非治療的であり、より好ましくは、本来化粧品である。
【0054】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0055】
実施例1
表1に詳述されるような種々の低分子量シルクフィブロインを、以下に記載されるプロセスによって調製した。参照番号1の低分子量シルクフィブロインは、本発明によるものである。シルクフィブロインの残りはそうではなかった。
調製後、以下に詳述するように、いくつかの試験を行う:
【0056】
【0057】
自社製(インハウス)の低分子量シルクフィブロイン(参照番号1、AおよびB)を、表1に示すような対応する酵素を用いて、以下のプロセスによって調製した:
【0058】
(i) 高分子量(95kDa)シルクフィブロインの4%水溶液を、以下の方法を用いて調製した:
脱ガム:生のBombyx moriカイコ繭を、0.5重量%炭酸ナトリウム溶液中で2回(各20分)煮沸して、セリシンを除去した。
溶解:脱ガムした乾燥シルクを、40℃で40分間、9.5mol/L臭化リチウム水溶液に溶解した。
精製:濾過した後、溶液を脱イオン水に対して室温で72時間、12~14kDaの分子量カットオフ透析膜で透析し、塩を除去した。次いで、8,000rpmで8分間遠心分離することによって、透析溶液を清澄化した。シルクフィブロイン水溶液である上清を回収し、使用前に4℃で保存した。
【0059】
(ii) 次いで、関連する酵素を高分子量シルクフィブロインの溶液に添加した。酵素に対する高分子量シルクフィブロインの比は、各実験について200:1重量部に維持した。pHを8.5に調整し、反応を37℃で8時間続けた。
【0060】
(iii) 工程(ii)の反応混合物を85℃に加熱し、15分間放置して酵素を不活性化し、次いで不活性化酵素を反応混合物から分離した。
【0061】
(iv) 次いで、反応混合物を乾燥させて、対応する低分子量シルクフィブロインを得た。
【0062】
低分子量シルクフィブロインのキャラクタリゼーション
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、分子を分離し、材料の分子量分布を提供する分析技術である。低分子量シルクフィブロイン(参照番号1、A)の分子量分布を測定し、下記表-2に示した。
【0063】
【0064】
上記表2のデータは、少なくとも85%の低分子量シルクフィブロイン(参照番号1およびA)が2500Da未満の分子量を有することを示す。
【0065】
低分子量シルクフィブロイン(参照番号1およびA)の主なペプチドをHPLC-MSによって評価し、以下の表-3に示した:
【0066】
【0067】
上記表-3のデータは、本発明による低分子量シルクフィブロイン(参照番号1)が低分子量のペプチドを含み、主要ペプチドの少なくとも50wt%のアミノ酸配列がGAGY、GAGAGAGY、GAGVGAGYまたはAWSSESDFであることを示す。
【0068】
これらのペプチドのアミノ酸配列の重量%は、理論的方法を用いて以下のように計算した:
【0069】
高分子量シルクフィブロインは、疎水性反復ドメインおよび親水性非反復ドメインからなる両親媒性構造を有する。α-キモトリプシンによる加水分解後、疎水性反復ドメインの配列は、不溶性凝集体に会合する(これは約60重量%で遠心分離によって除去される)。上清中のほとんどの成分は、親水性非反復ドメイン(重鎖の非結晶領域、重量の40%)に由来する。
【0070】
シルクフィブロインの高分子量シルクフィブロイン(アミノ酸残基5263個を有する)の理論分子量は、391593である。α-キモトリプシン加水分解フィブロイン産物(上清部分)における典型的な配列であるGAGAGAGY(分子量:622)は、高分子量シルクフィブロインの鎖において54倍見出すことができる。次に、GAGAGAGYの計算重量分率=54×622/(391593×40%)=21.4%であった。他のペプチドの重量パーセンテージは、同じ方法を用いて計算した。結果を以下の表-4に要約する:
【0071】
【0072】
表1の各シルクフィブロインのチロシン含量を、L-8900アミノ酸アナライザー(日立製作所)によって評価した。低分子量シルクフィブロイン中のチロシン(ペプチド中に含まれる遊離チロシンおよびチロシンを含む)のモルパーセンテージを計算し、以下の表-5に要約する:
【0073】
【0074】
上記表-5のデータは、本発明(参照番号1)による低分子量シルクフィブロインが10モル%を超える、より高いモル分率のチロシンを含むことを示す。
【0075】
実施例2
低分子量シルクフィブロインのヘアケア効果
ヘアスイッチ:チャイニーズブラックスイッチは、IHIP Co.から商業的に入手した。
低分子量シルクフィブロインによるヘアスイッチの処理:
【0076】
- 前処理:
ベース溶液(0.1mL/g毛髪)をスイッチの長さに均一に適用し、次いでスイッチの両端を保持し、ベース溶液を毛髪に30秒間穏やかにマッサージすることによって、ヘアスイッチを14%SLESベースで洗浄した。その後、5秒ごとに指をスイッチにかけて30秒間すすぎ、余分な水を取り除く。次いで、このプロセスを繰り返し、ヘアスイッチを20℃/50%相対湿度で一晩乾燥させた。
【0077】
- 浸漬処理:
前処理したヘアスイッチを、関連する低分子量シルクフィブロイン(1%)の溶液に1時間浸漬した。
【0078】
本発明による低分子量シルクフィブロインの毛髪繊維への沈着および浸透:
本発明(参照番号1)による低分子量シルクフィブロインの毛髪繊維の表面への沈着を確認し、毛髪繊維のコアに浸透することができるかどうかを調べるために、毛髪繊維を本発明による低分子量シルクフィブロインと標識されたローダミンBで処理した(浸漬処理)(参照番号1)。処理前後の毛髪繊維の表面および断面を、それぞれ蛍光顕微鏡(IX71、オリンパス、日本)およびレーザー走査共焦点顕微鏡(C2+、ニコン、日本)によって観察した。毛髪繊維の断面画像を得るために、それらをエポキシ樹脂中に埋め込み、ミクロトーム(FC7-UC7、Leica、ドイツ)によってスライスに切断した。
【0079】
本発明(参照番号1)のように低分子量シルクフィブロインで処理した漂白毛髪の外層および内側部分は強い赤色蛍光を示し、毛髪繊維の表面への低分子量シルクフィブロインの沈着およびコアへの浸透を確認したが、未使用毛髪および漂白毛髪の両方が蛍光画像でほとんど見えなかったことが観察された。これは、活性物質の浸透が毛髪繊維のいかなる修復にも必要であるため、重要な観察であった。
【0080】
毛髪損傷修復に対する低分子量シルクフィブロインの効果:
文献に報告されているように、漂白された毛髪繊維は、通常、未使用の毛髪繊維と比較して変性温度が低く、損傷が修復されると変性温度が上昇する(または正常に戻る)。示差走査熱量測定(DSC)は、毛髪損傷および対応する損傷修復効果を評価するために一般に使用される高感度の方法である。DSCを用いて、損傷および処理された毛髪繊維の変性温度を特徴付けた。
【0081】
漂白したヘアスイッチを、それぞれ表-1からの低分子量シルクフィブロインを含む溶液(1%)に1時間浸漬した。
【0082】
ヘアスイッチは、根から先端まで5つのセグメントに均等に分割され、各セグメントは4cmであった。各セグメントの毛髪を非常に小さな断片に細かく切断し、十分に混合した。5~7mgの小毛片を中圧るつぼに入れ、次いで50μLのミリ-Q-水を添加し、12時間後、それらをDSC(メトラー、スイス)によって試験した。プログラムは、50~100℃、10℃/分、3.0分間保持、100~180℃、5℃/分であった。
【0083】
データを以下の表-6に要約する。
【0084】
【0085】
表-6のデータは、漂白された毛髪繊維を本発明のように低分子シルクフィブロインで処理した後に変性温度が最も上昇することを示す(参照番号1)。これは、本発明による低分子シルクフィブロインが、本発明外の低分子シルクフィブロインと比較して毛髪の固有強度に対するより良好な損傷修復を提供することを示す(参照番号A~D)。
【0086】
実施例3
本発明によるヘアケア組成物のヘアケア効果
表7に示すような以下のヘアケア組成物を調製した。本発明による組成物の参照番号は、参照番号2であった。
【0087】
【0088】
毛髪損傷修復に対する本発明によるヘアケア組成物の効果:
ヘアスイッチは、以下に詳述する手順に従って、ヘアケア組成物で1回洗浄して処理した。
【0089】
組成物(0.1mL/g毛髪)をスイッチの長さに沿って均一に適用し、次にスイッチの両端を保持し、組成物を毛髪に30秒間穏やかにマッサージした。その後、5秒ごとに指をスイッチの下に動かし、過剰の水を除去することによって、ヘアスイッチを30秒間すすいだ。次に、毛髪スイッチを20℃/50%相対湿度で一晩乾燥させた。
【0090】
ヘアスイッチの変性温度を、先に記載した手順に従ってDSCを用いて測定した。データを表-8に要約する。
【0091】
【0092】
上記表-8のデータは、低分子量シルクフィブロインを含む本発明(参照番号2)のように、組成物で処理した後の漂白毛髪繊維は、低分子量シルクフィブロインを含まない組成物で処理したもの(参照番号E)と比較して高い変性温度を有することを示している。これは、本発明によるヘアケア組成物(参照番号2)が、毛髪の固有強度のためのより良好な損傷修復を提供することを示す。
【0093】
本発明によるヘアケア組成物の毛髪保護に対する効果:
ヘアスイッチを、上記の手順に従ってヘアケア組成物で1回洗浄して処理した。
【0094】
ヘアライフサイクルリグ(HLCR)により5000ストロークでヘアスイッチを自動的にコーミングし、破断した繊維の数を計数した。5つの複製ヘアスイッチを各処理について試験した。データを以下の表-9に要約する。
【0095】
【0096】
上記表9のデータは低分子量シルクフィブロインを含む本発明の組成物(参照番号2)で処理した後、破損した毛髪繊維の数が劇的に減少したことを示している。本発明のヘアケア組成物(参照番号2)は、より良好な毛髪保護効果を提供することを示している。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2020-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子量シルクフィブロインおよび化粧的に許容される担体を含む化粧組成物であって、ここで、前記低分子量シルクフィブロインは、分子量2500Da未満の少なくとも85部のペプチドを含み、ここで、ペプチドの少なくとも50重量%のアミノ酸配列が、GAGY、GAGAGAGY、GAGVGAGYまたはAWSSESDFであり、そしてここで、前記シルクフィブロインが、以下の工程を含む方法によって産生され:
(i) 0.01~20重量%の重量平均分子量6~100KDaの高分子量シルクフィブロインを含む水溶液を、25~45℃の温度で、6~9のpH下で、4~24時間、α-キモトリプシンと混合し、ここで、前記溶液中の前記α-キモトリプシンに対する前記高分子量シルクフィブロインの比は、100:1~300:1重量部であり;
(ii) 過剰のα-キモトリプシンを不活性化し、不活性化されたα-キモトリプシンを工程(i)の反応混合物から分離し;そして
(iii) 前記反応混合物を乾燥し、前記低分子量シルクフィブロインを得る;
ここで、前記組成物は、0.1~10重量%の低分子量シルクフィブロインを含み、
ここで、前記低分子量シルクフィブロインがチロシンを含み、そして、前記低分子量シルクフィブロイン中のそのモル分率が、10モル%以上であり、ここで、
前記組成物は、ヘアケア組成物である、組成物。
【請求項2】
前記低分子量シルクフィブロインの水への溶解度が、11~42g/100g水である、請求項1に記載の化粧組成物。
【請求項3】
前記ヘアケア組成物がシャンプーである、請求項1又は2に記載の化粧組成物。
【請求項4】
組成物が、0.1~5重量%の前記低分子量シルクフィブロインを含む、請求項1~3のいずれかに記載の化粧組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の化粧組成物の局所適用工程を含む、毛髪繊維の少なくとも1つの内部特徴を改変する方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の化粧組成物の局所適用工程を含む、毛髪繊維の少なくとも1つの表面特性を改質する方法。
【請求項7】
毛髪繊維の少なくとも1つの内部特徴を改変するための、請求項1~4のいずれかに記載の化粧組成物の使用。
【請求項8】
毛髪繊維の少なくとも1つの表面特性を改質するための、請求項1~4のいずれかに記載のヘアケア組成物の使用。
【国際調査報告】