(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】キレート化剤の非晶質形態及びそれを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 229/16 20060101AFI20220104BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220104BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220104BHJP
A61K 8/362 20060101ALI20220104BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20220104BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220104BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220104BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220104BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20220104BHJP
A23L 2/44 20060101ALI20220104BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C07C229/16
A61K8/44
A61K8/55
A61K8/362
A61K47/16
A61K47/24
A61K47/12
A61K38/02
A23L29/00
A23L2/00 P
A23L2/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021516727
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(85)【翻訳文提出日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 GB2019052799
(87)【国際公開番号】W WO2020070508
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】315015195
【氏名又は名称】ホビオネ サイエンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】サルダーニャ, スサーナ
(72)【発明者】
【氏名】パレイラ, アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】セケイラ, サラ
(72)【発明者】
【氏名】アントゥネス, ラファエル
【テーマコード(参考)】
4B035
4B117
4C076
4C083
4C084
4H006
【Fターム(参考)】
4B035LC05
4B035LG06
4B035LG07
4B117LC15
4B117LK08
4B117LL07
4C076DD42
4C076DD43
4C076DD51
4C076DD63
4C076FF43
4C076FF63
4C083AC291
4C083AC30
4C083AC531
4C083AC641
4C083AC901
4C084AA01
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB20
4H006AD15
(57)【要約】
キレート化剤の非晶質形態が提供される。キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)、ヒドロキサム酸、シュウ酸、ガラクタル酸、メタリン酸、若しくはフィチン酸、又は上述の酸のうちのいずれか1種若しくは複数の塩、又は上述の酸若しくはそれらの塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含んでよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キレート化剤の非晶質形態。
【請求項2】
前記キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)、ヒドロキサム酸、シュウ酸、ガラクタル酸、メタリン酸、若しくはフィチン酸、又は上述の酸のうちのいずれか1種若しくは複数の塩、又は上述の酸若しくはそれらの塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、請求項1に記載の非晶質形態。
【請求項3】
前記非晶質形態が、水和物、無水物、又は溶媒和物の形態である、請求項1又は2に記載の非晶質形態。
【請求項4】
前記非晶質形態が、添加剤又は支持マトリックスを含まない、請求項1、2、又は3に記載の非晶質形態。
【請求項5】
前記キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ペンテト酸五ナトリウム、若しくはペンテト酸三ナトリウムカルシウム、又は上述の酸若しくは塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の非晶質形態。
【請求項6】
水溶性が対応する結晶形態の水溶性より高い、請求項1~5のいずれか一項に記載のキレート化剤の非晶質形態。
【請求項7】
キレート化剤の非晶質形態を調製する方法であって、
a)適切な溶媒に前記キレート化剤を溶解するステップと、
b)任意選択で、溶液を精製するステップと、
c)前記キレート化剤の非晶質形態を単離するステップと、
d)任意選択で、前記キレート化剤の前記非晶質形態を事後乾燥又は状態調節するステップと、を含む方法。
【請求項8】
前記キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)、ヒドロキサム酸、シュウ酸、ガラクタル酸、メタリン酸、若しくはフィチン酸、又は上述の酸のうちのいずれか1種若しくは複数の塩、又は上述の酸若しくはそれらの塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質形態が、水和物、無水物、又は溶媒和物の形態である、請求項7又は8に記載の非晶質形態。
【請求項10】
前記非晶質形態が、添加剤又は支持マトリックスを含まない、請求項7、8、又は9に記載の非晶質形態。
【請求項11】
前記キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ペンテト酸五ナトリウム、ペンテト酸三ナトリウムカルシウム、又は上述の酸若しくは塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が、1種若しくは複数の樹脂を使用して、活性炭を使用して、又は、ろ過によって、精製される、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、水、水酸化ナトリウムの水溶液、アンモニア溶液の水溶液、又はこれらの溶媒のうちの2種以上の混合物である、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
有機溶媒が加えられていてもよく、任意選択で、前記加えられた溶媒がアルコール又はアセトンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記キレート化剤の非晶質形態を単離することが、溶媒除去によって実行される、請求項7~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
凍結乾燥、真空乾燥、又は噴霧乾燥などの溶媒除去手法が用いられる、請求項7~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
事後乾燥又は状態調節するステップが実施される、請求項7~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記非晶質のキレート化剤の粒度分布が制御される、請求項7~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工業、農業、又は家庭分野でのプロセス又は組成物における、請求項1~6のいずれか一項に記載の非晶質のキレート化剤の使用。
【請求項20】
前記分野が、パルプ漂白、食品及び飲料の保存、工業用洗浄、洗剤、セメント、パーソナルケア品及び化粧品、肥料、水処理、又は布中の金属イオンの除去及び失活を含む、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
a)活性医薬成分と、
b)請求項1~6のいずれか一項に記載の非晶質のキレート化剤と、を含む、医薬又はバイオ医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[発明の分野]
[0001]本発明は、一般に、キレート化剤の新規の安定な非晶質形態、その組成物及び使用、並びに安定な非晶質キレート化剤、特にその粒子を作製する方法に関する。より詳細には、本発明は、キレート化剤を適切な溶媒又は溶媒の混合物に溶解し、任意選択で溶液を精製し、溶媒除去、好ましくは噴霧乾燥によって、本質的に非晶質であるキレート化剤の粒子を単離することによって、非晶質キレート化剤を作製する方法に関する。さらに、本発明の方法に従って作製される非晶質微粒子は、バッチ間での粒度の一貫性及び可溶性に関して有利な特徴を示す。これらの薬剤は、たとえば、医薬分野で、特に、組成物中にこれらの賦形剤を有する新規の製剤において適用できる。
【0002】
[従来技術の説明]
[0002]キレート化剤とは、2つ以上のドナー原子(又は部位)が同時に単一金属イオンに結合することを可能にする構造の化合物である(Floraら、2015年)。これらの分子は、キレート剤、錯化剤、又は金属イオン封鎖剤とも呼ばれる。
【0003】
キレート化剤のいくつかの例は、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム(3NaCa-DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)キトサン、ヒドロキサム酸、シュウ酸、ガラクタル酸、メタリン酸、フィチン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、又はマルトールである。最も使用されるキレート化剤のいくつかは、EDTA、2Na-EDTA、2NaCa-EDTA、及びDTPAである。構造式は以下に表される。
【0004】
【0005】
[0003]キレート化剤は、化学的水処理、肥料、紙及び布の生産、清掃及び洗濯作業、微生物の増殖の防止/抑制、土壌修復、廃棄物及び廃水処理、金属電気めっき及び他の表面処理、なめし処理、セメント混和、写真、食品、並びに化粧品などの、工業及び農業用途で使用されるだけではない。キレート化剤は、有毒な金属剤を不活性型に変換して解毒するキレート療法、MRI(磁気共鳴画像)スキャニングの造影剤、放射性同位体キレート剤、及び医薬における賦形剤又は加工補助剤などのいくつかの医療用途に使用される。
【0006】
[0004]医薬工業において、キレート化剤は、自動酸化を防ぐために製剤に添加することができる。即ち、キレート化剤は、酸化反応を開始するためにしばしば必要とされる重金属イオンと錯体を形成する(Loftsson、2014年)ことによって、また治療薬の製造、貯蔵、及び配送において使用される成分及び材料から生じる金属浸出物をキレート化する(Zhouら、2010年)ために作用する。
【0007】
キレート化特性は、バイオ医薬において大変重要である。小分子と比較して、タンパク質は元来、物理化学的特性が構造及びコンフォメーションに強く依存するために、著しく低い安定性を示す。このこと及びタンパク質が概して大型であるために、浸出物(金属イオンのような)との潜在的な相互作用部位が多数もたらされ、活性の低下及び喪失のリスクが増大する。金属錯化剤であるEDTA二ナトリウム(2Na-EDTA)は、非経口製剤において一般に使用されている。DTPAも、いくつかの承認された非経口製品において使用されている(Zhouら、2010年、FDA Inactive ingredient database)。
【0008】
EDTA及びDTPAなどのキレート化剤は、タンパク質の構造及びコンフォメーションに影響を与え得る条件である、室温で高めのpH(8周辺)でのみ水溶性である。
【0009】
[0005]非晶質形態又は非晶質固体分散体を作製するいくつかの手法、すなわち、凍結乾燥、沈殿、溶融押出、及び噴霧乾燥があるが、これらに限定されない。
【0010】
[0006]噴霧乾燥は、水溶性の低い薬物を送達するための有効な方策となり得る確立された製造手法である(Singh及びMooter、2015年)。
【0011】
典型的な噴霧乾燥機は、乾燥チャンバー、溶媒含有供給原料を乾燥チャンバー内へ霧化する霧化手段、乾燥チャンバー内へ流入して、霧化された溶媒含有供給原料及び製品から溶媒を除去する加熱乾燥ガスの供給源を含む。
【0012】
[0007]キレート化剤の噴霧乾燥は、以下の特許文献に開示される。
【0013】
[0008]U5958866では、キレート化剤とアルカリ土類金属硫酸塩との懸濁液が噴霧乾燥される。しかしながら、この場合において噴霧乾燥されるのは、キレート化剤と金属との錯体である。
【0014】
[0009]米国特許第4636336号では、有機アミンキレート化剤を含有する液状廃棄物の体積を低減する方法が記載され、当該方法において、液状廃棄物の微細に霧化された噴霧は、キレート化剤の熱分解温度を超える温度を有するガス流に接触される。この方法の目的は、生成される放射性廃棄物の体積を低減することであり、乾燥温度は、キレート化剤の熱分解温度より高く、即ち200℃より高く(より正確には250~400℃)、本発明において規定される温度(50~100℃である)よりはるかに高くなければならない。
【0015】
[0010]国際公開第9929656A1号では、エチレンジアミン四酢酸の四ナトリウム塩(4Na-EDTA)の高純度の結晶を作製する方法が記載される。この発明において、結晶形態が作製され、それらの結晶は、噴霧乾燥し、有機溶媒を消費することによって回収できる。
【0016】
[0011]ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)のペンタエチルエステルプロドラッグの固体分散体の論文には、DTPAのプロドラッグのマトリックス(非晶質固体分散体)への噴霧乾燥による取り込みが記載される。しかしながら、これはDTPAのプロドラッグであり、DTPAのプロドラッグを安定化させるためにポリマーマトリックスが使用される(Yangら、2014年)。
【0017】
[0012]EDTA(及びその塩)又はDTPA(及びその塩)などの非晶質キレート化剤の安定な形態を記載する先行技術も、添加剤又は支持マトリックス(固体分散体)を使用せずに非晶質形態を得る方法を記載する先行技術も存在しない。
【0018】
[0013]現在、キレート化剤の低い水溶性に対する解決法は塩の形成である。たとえば、EDTA四ナトリウム(4Na-EDTA)は、高水溶性であり、EDTA二ナトリウム(2Na-EDTA)は水に徐溶性である。脱プロトン化レベルが高いほど(置換カルボキシル基が多いほど)、可溶性は高い。しかしながら、脱プロトン化が高いほど溶液のpHは高くなり、たとえば、2Na-EDTA溶液のpHは4~6の範囲であり、4Na-EDTAは10~11の範囲である。pHはタンパク質の安定性にとって肝要であり、理想的には最適値(6~7の範囲のpH)に制御されるべきである(Challener、2015年)。したがって、製剤の観点から、より多く、より速く溶解する塩を、より少なくプロトン化させることが非常に望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】非晶質DTPAの噴霧乾燥された粒子のSEM画像の図である。
【
図3】噴霧乾燥によって得られたDTPAのXRPDディフラクトグラムの図である。
【
図4】非晶質EDTAの噴霧乾燥された粒子のSEM画像である。
【
図5】噴霧乾燥によって得られたEDTAのXRPDディフラクトグラムの図である。
【
図6】非晶質EDTA二アンモニウムの噴霧乾燥された粒子のSEM画像である。
【
図7】噴霧乾燥によって得られたEDTA二アンモニウムのXRPDディフラクトグラムの図である。
【
図8】非晶質2Na-EDTAの噴霧乾燥された粒子のSEM画像である。
【
図9】噴霧乾燥によって得られた2Na-EDTAのXRPDディフラクトグラムの図である。
【
図10】結晶質2Na-EDTA溶解速度のグラフである。
【
図11】非晶質2Na-EDTA溶解速度のグラフである。
【0020】
[発明の詳細な説明]
[0024]本発明は、EDTA及びDTPAなどのキレート化剤の新規な非晶質固体形態、並びにそれらの非晶質形態を調製する方法を提供する。驚いたことには、たとえば、キレート化剤の溶液の噴霧乾燥を含む、簡単で工業的な方法によって、非晶質キレート化剤を得ることができることを見出した。用いられる噴霧乾燥手法に起因して、これらの非晶質形態はまた、制御された粒度分布を有する。
【0021】
[0025]本発明の一態様において、非晶質キレート化剤が提供され、非晶質キレート化剤は、ヒト及び獣医学の医薬用途において使用されるのに適切である。本発明の別の態様において、非晶質キレート化剤が提供され、非晶質キレート化剤は、バイオ医薬製剤及び医薬製剤において使用されるのに適切である。
【0022】
[0026]本発明者らは、制御された粒度を有する粒子状のキレート化剤の安定な非晶質形態が、改変された可溶性プロファイルに起因して、有利な溶液をもたらすことになることを今や見出した。しかしながら、これらに限定されないが、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、ジエチレントリアミン-五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)、ヒドロキサム酸、シュウ酸、ガラクタル酸、メタリン酸、又はフィチン酸、及びそれらの塩などのキレート化剤が、安定な非晶質形態で単離されたことは報告されていない。
【0023】
[0027]本発明の一態様によれば、キレート化剤の非晶質形態が提供される。非晶質形態は安定であり、安定性を与える他のいかなる化合物も必要とせずに「純粋な」状態で提供され得る。
【0024】
[0028]好ましくは、キレート化剤の非晶質形態は粒子状で提供される。
【0025】
[0029]好ましくは、キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)若しくはその塩、又はジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)若しくはその塩を含むが、本発明者らは、他のキレート化剤も非晶質形態で提供され得ることを見出した。
【0026】
[0030]好ましくは、非晶質形態は噴霧乾燥によって得られるが、他の適切な手法を使用してもよい。このようにして、本発明は、噴霧乾燥されたキレート化剤の非晶質形態を提供する。エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)若しくはその塩の噴霧乾燥された非晶質形態、又はジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)若しくはその塩の噴霧乾燥された非晶質形態が特に好ましい。
【0027】
[0031]適切には、キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)、ヒドロキサム酸、シュウ酸、ガラクタル酸、メタリン酸、若しくはフィチン酸、又は上述の酸のうちのいずれか1種若しくは複数の塩、又は上述の酸若しくはそれらの塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含んでもよい。本発明者らは、これらの化合物が非晶質形態で提供され得ることを見出した。好ましくは、これらの化合物は噴霧乾燥される。
【0028】
[0032]一態様において、キレート化剤の非晶質形態は、水和物、無水物、又は溶媒和物の形態である。
【0029】
[0033]本発明の別の態様において、本発明によって提供されるキレート化剤の非晶質形態は、添加剤を含まない、たとえば、金属又は金属含有化合物を含まない。本発明者らは、極めて驚いたことには、本発明のキレート化剤が、非晶質形態を安定化させるいかなる追加の化合物又は添加剤も必要とせずに提供され得ること、及び本発明のキレート化剤が安定であることを見出した。このようにして、本発明は、添加剤を含まない、キレート化剤の単離された非晶質形態を提供する。本発明はまた、金属イオン又は金属塩などの金属又は金属含有化合物を含まない、キレート化剤の単離された非晶質形態を提供する。
【0030】
[0034]本発明の別の態様において、本発明によって提供されるキレート化剤の非晶質形態は、たとえばポリマーマトリックスなどの支持マトリックスを含まない。本発明者らはまた、極めて驚いたことには、本発明のキレート化剤が、非晶質形態を安定化させるいかなる支持マトリックスも必要とせずに提供され得ること、及び本発明のキレート化剤が安定であることを見出した。このようにして、本発明は、ポリマーマトリックスなどの支持マトリックスを含まない、キレート化剤の単離された非晶質形態を提供する。好ましくは、本発明によって提供されるキレート化剤の各非晶質形態は、添加剤を含まず、且つポリマーマトリックスなどの支持マトリックスを含まない。
【0031】
[0035]本発明の好ましい態様において、キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ペンテト酸五ナトリウム、若しくはペンテト酸三ナトリウムカルシウム、又は上述の酸若しくは塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、キレート化剤の非晶質形態が提供される。
【0032】
[0036]本発明はまた、非晶質形態の水溶性が、対応する結晶形態の水溶性より高い、上述されるキレート化剤の非晶質形態を提供する。このことは、実施例において以下でさらに例示され、本発明によって提供される非晶質キレート化剤の特別の利点である。ここで提供される非晶質キレート化剤は、一般に、水などの水性媒体により高い溶解速度も有しており、このことはさらなる利点である。
【0033】
[0037]さらなる態様において、本発明は、キレート化剤の非晶質形態を調製する方法であって、
a)適切な溶媒にキレート化剤を溶解するステップと、
b)任意選択で溶液を精製するステップと、
c)キレート化剤の非晶質形態を単離するステップと、
d)任意選択でキレート化剤の非晶質形態を事後乾燥又は状態調節するステップと
を含む方法を提供する。
【0034】
[0038]本発明の方法において、任意の適切なキレート化剤を使用してもよいが、特に適切なキレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)、ヒドロキサム酸、シュウ酸、ガラクタル酸、メタリン酸、若しくはフィチン酸、又は上述の酸のうちのいずれか1種若しくは複数の塩、又は上述の酸若しくはそれらの塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む。
【0035】
[0039]本方法の一態様において、キレート化剤の非晶質形態は、水和物、無水物、又は溶媒和物の形態である。
【0036】
[0040]化合物それ自体と同様に、本発明の方法において、作製される非晶質形態は、好ましくは添加剤又はポリマーマトリックスなどの支持マトリックスを含まない。
【0037】
[0041]本発明の方法は特に、キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ペンテト酸五ナトリウム、ペンテト酸三ナトリウムカルシウム、又は上述の酸若しくは塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、キレート化剤の非晶質形態を供するために利用してもよい。
【0038】
[0042]このようにして、本発明は、
a)適切な溶媒でキレート化剤の溶液を調製するステップと、
b)キレート化剤の非晶質形態を単離するステップと
を含む、非晶質キレート化剤を調製する方法を提供する。
【0039】
[0043]ステップa)におけるキレート化剤の溶液を調製するステップは、適切な溶媒に結晶質キレート化剤を添加することを含む。キレート化剤の結晶形態は、当業者には明白なように、容易に得ることができる。
【0040】
[0044]キレート化剤の溶液を調製するために使用される溶媒温度は、適切には約20℃~約60℃である。キレート化剤は、任意の適切な溶媒に溶解することができ、適切な溶媒は、化合物に悪影響を及ぼさず、出発材料を有用な程度まで溶解することができる、任意の溶媒を含む。そのような溶媒の例としては、水、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液、又は2種以上のそのような溶媒の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。代替的に又は追加的に、溶媒は有機溶媒であってもよく、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、若しくはアセトン、又は2種以上のそのような溶媒の混合物を含んでもよい。
【0041】
[0045]可溶性限度まで、任意の適度なキレート化剤濃度を使用してもよい。しかしながら、約0.05%~約10%w/wの溶液濃度が好ましく、理想的には0.5%~5.0%w/wの間であり、「%w/w」は、全溶液質量の百分率でのキレート化剤の質量を指す。採用される濃度は一般に、溶媒中のキレート化剤の可溶性によって限定されることになる。
【0042】
[0046]ステップa)は任意選択で、たとえば、樹脂、活性炭、ろ過、又は他の適切な方法を用いた、化合物の精製ステップを含んでもよい。
【0043】
[0047]ステップb)は、ステップa)において得られた溶液からキレート化剤の非晶質形態を単離するステップを伴う。キレート化剤の非晶質形態の単離は、凍結乾燥、真空乾燥、又は噴霧乾燥などの任意の公知の手法、好ましくは噴霧乾燥による、溶媒の除去を含む。
ステップb)の後、任意選択で事後乾燥又は状態調節するステップを実行してもよい。
【0044】
[0048]任意の適切な又は市販の設備を用いて噴霧乾燥を実施してもよい。
【0045】
[0049]選択される設備に応じて、様々な霧化法を用いることができる。たとえば、本発明者らは、1.4mmの空気噴霧ノズル開口部が適切であるが、2流体又は3流体ノズル、回転ノズル、圧力ノズル、及び超音波ノズルなどの代替の霧化法を採用してもよいことを見出した。
【0046】
[0050]1時間当たりのリットルを単位とする優先的な霧化ガス流量は、使用中の設備に適合することができ、任意の適切な霧化ガス流量でも使用できる。典型的には、小規模の装置の場合は、1時間当たり150~300ミリリットルが好ましい。工業的規模においては、異なる流量を使用してもよい。好ましい実施形態において、ノズルアセンブリは、噴霧乾燥中に適切な流体を用いて冷却して製品劣化を最小限にし得る。
【0047】
任意の適切な乾燥温度を用い得る。本発明の一態様において、出口温度の範囲は、約20℃~約220℃、好ましくは約40℃~約80℃、より好ましくは約50℃~約70℃であってもよい。
【0048】
[0051]理解されるように、入口温度は、望ましい出口温度を達成しるように調節してもよい。
【0049】
[0052]任意の適切な溶液流速が用いられ得る。小規模の装置の場合は、溶液流速は、1.4mmノズルに関して、好ましくは約1~約20ml/min、より好ましくは2~15ml/minであってもよい。工業的規模の場合、溶液流速は、選択されるノズルに応じて調節してもよい。
【0050】
[0053]小規模の噴霧乾燥器のための乾燥ガス流量は、適切には約20kg/h~約120kg/h、好ましくは約40kg/h~約80kg/h、最も好ましくは約40kg/hであってもよい。より大きい噴霧乾燥器のための乾燥ガス流量は、たとえば、約120kg/h超、好ましくは約360kg/h~約1250kg/h、たとえば、約650kg/h又は約1250kg/hであってもよい。
【0051】
[0054]他の試験されたパラメーターの中でも特に、出口温度、霧化流速、溶液濃度、及び溶液流速は、適切な品質を有する化合物を得るように組み合わせて、調節し得る。
【0052】
[0055]本発明の方法を用いて得られる化合物は、経時的に安定性を示す非晶質固体である。
【0053】
[0056]好ましい態様において、本発明の方法は、非晶質キレート化剤の粒度分布が制御されるように実行される。溶媒蒸発のために噴霧乾燥手法を用いることによって、望ましい粒度を得るために液滴サイズ及び溶液濃度を調節することができる。この種類の乾燥手法のために通常規定される範囲は、平均粒度分布が約25μm未満且つ1μm超である。たとえば、1~20μm、又は2~18μm、又は3~15μmの平均粒度分布範囲を使用してもよい。
【0054】
[0057]さらなる態様において、本発明は、工業、農業、又は家庭分野でのプロセス又は組成物における、本明細書に記載される本発明による非晶質キレート化剤の使用を提供する。
【0055】
[0058]たとえば、工業、農業、又は家庭分野でのプロセス又は組成物におけるそのような使用は、パルプ漂白、食品及び飲料の保存、工業用洗浄、洗剤、セメント、パーソナルケア品及び化粧品、肥料、水処理、又は布中の金属イオンの除去及び失活を含み得る。
【0056】
[0059]本発明の非晶質キレート化剤は、従来のキレート化剤が使用される方法と同様の手法で、医薬及びバイオ医薬分野における従来の方法で使用してもよい。このようにして、さらなる態様において、本発明はまた、
a)活性医薬成分(API)と、
b)本明細書で開示される非晶質キレート化剤と
を含む、医薬又はバイオ医薬組成物を提供する。
【0057】
[0060]本発明のある特定の態様及び実施形態を、以下の実施例を参照しながらより詳細に説明する。実施例1、2、3、及び4は、本発明を理解する際の例示及び補助のために述べられるが、本発明の範囲をいかなる方法によっても限定することを意図するものではなく、限定するものと考えるべきではない。報告される実験は、BUCHIモデルB-290アドバンス噴霧乾燥器を用いて実行した。
【0058】
実施例1:噴霧乾燥による非晶質DTPAの作製
[0061]キレート化剤(DTPA)溶液の調製:
質量割合0.5%(w/w)のDTPAを40℃で水に溶解し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
【0059】
[0062]キレート化剤(DTPA)非晶質粒子の単離:
2流体ノズルが備え付けられた実験室規模の噴霧乾燥器(Buchi、モデルB-290)を使用して溶液を霧化し、乾燥した。並流窒素を使用して霧化後の乾燥を促進した。噴霧乾燥装置をオープンサイクル方式で(すなわち、乾燥ガスの再循環なしで)動作させた。
図1は、使用される噴霧乾燥の構成を概略的に示す。
【0060】
[0063]ノズルに溶液を供給する前に、窒素を用いて噴霧乾燥装置を安定化させ、安定な入口温度(T_in)及び出口温度(T_out)を確実にした。安定化後、溶液を、ぜん動ポンプを用いてノズルに供給し、ノズルの先端部で霧化した。次いで噴霧乾燥チャンバー中で窒素流によって液滴を乾燥した。乾燥した粒子を含有する流れをサイクロンにさし向け、底部で回収した。噴霧乾燥プロセス中の主な動作パラメーターを表1に要約する。
【0061】
【0062】
[0064]本発明の方法を用いて得られる化合物は、対応する結晶形態と比較して、高い可溶性及び溶解速度(水性媒体において)を有する非晶質固体である。X線粉末回折(XRPD)又は示差走査熱量測定(DSC)などのいくつかの試験において、非晶質固体の非晶質形態が確認される。
【0063】
[0065]霧化された材料の外観を、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて特徴付けした。得られた粒子の代表的な画像を
図2に示す。
【0064】
本明細書において開示される方法による噴霧乾燥によって得られたDTPAのX線粉末回折パターンを
図3に提示する。試料を分析するために適用されるXRPD法の設定を以下の表に示す。
【0065】
【0066】
[0066]溶解度法及び分類は、欧州薬局方(Ph.Eur.)、5章11節.Characters section in monographsに記載されている。これを以下の試験において使用した。
【0067】
表2に提示される欧州薬局方(Ph.Eur.)に準ずる可溶性試験の結果は、結晶質DTPAと比較した場合、非晶質DTPAの高い可溶性を示す。
【0068】
【0069】
[0067]上に言及した欧州薬局方の方法を用いて可溶性を評価し、当該方法において、水を増量しながら100mgの粉末に完全溶解まで加える(又は完全溶解しない)。この方法によれば、100mgが30ml中で可溶化しなければ、材料は不溶性と考えられる。しかしながら、この場合において、材料の実際の可溶性を確認するために、30mlの後、水を増量しながら加えた。
【0070】
実施例2:噴霧乾燥による非晶質EDTAの作製
[0068]キレート化剤(EDTA)溶液の調製:
質量割合0.05%(w/w)のEDTAを60℃で水に溶解し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
【0071】
[0069]キレート化剤(EDTA)非晶質粒子の単離:
2流体ノズルが備え付けられた実験室規模の噴霧乾燥器(Buchi、モデルB-290)を使用して溶液を霧化し、乾燥した。並流窒素を使用して霧化後の乾燥を促進した。噴霧乾燥装置をオープンサイクル方式で(すなわち、乾燥ガスの再循環なしで)動作させた。
図1は、使用される噴霧乾燥の構成を概略的に示す。
【0072】
[0070]ノズルに溶液を供給する前に、窒素を用いて噴霧乾燥装置を安定化させ、安定な入口温度(T_in)及び出口温度(T_out)を確実にした。安定化後、溶液を、ぜん動ポンプを用いてノズルに供給し、ノズルの先端部で霧化した。次いで噴霧乾燥チャンバー中で並流窒素によって液滴を乾燥した。乾燥した粒子を含有する流れをサイクロンにさし向け、底部で回収した。噴霧乾燥プロセス中の主な動作パラメーターを表3に要約する。
【0073】
【0074】
[0071]本発明の方法を用いて得られる化合物は、対応する結晶形態と比較して、高い可溶性及び溶解速度を有する非晶質固体である。X線粉末回折(XRPD)又は示差走査熱量測定(DSC)などのいくつかの試験において、非晶質固体の非晶質形態が確認される。
【0075】
[0072]霧化された材料の外観を、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて特徴付けした。得られた粒子の代表的な画像を
図4に示す。
【0076】
本明細書において開示される方法による噴霧乾燥によって得られたEDTAのX線粉末回折パターンを
図5に提示する。試料を分析するために用いられる方法は、実施例1において記載されるとおりである。
【0077】
[0073]溶解度法及び分類は、欧州薬局方(Ph.Eur.)、5章11節.Characters section in monographsに記載されている。
【0078】
表4に提示される欧州薬局方(Ph.Eur.)に準ずる可溶性試験の結果は、結晶質EDTAと比較した場合、非晶質EDTAの高い可溶性を示す。
【0079】
【0080】
[0074]実施例1において記載される欧州薬局方の試験のとおり、可溶性を試験した(100mgの粉末を用いて)。
【0081】
実施例3:噴霧乾燥による非晶質EDTA二アンモニウムの作製
[0075]キレート化剤(2NH4-EDTA)溶液の調製:
質量割合0.5%(w/w)のEDTAを22℃で0.4%水酸化アンモニウムを有する水に溶解し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
【0082】
[0076]キレート化剤(2NH4-EDTA)非晶質粒子の単離:
2流体ノズルが備え付けられた実験室規模の噴霧乾燥器(Buchi、モデルB-290)を使用して溶液を霧化し、乾燥した。並流窒素を使用して霧化後の乾燥を促進した。噴霧乾燥装置をオープンサイクル方式で(すなわち、乾燥ガスの再循環なしで)動作させた。
図1は、使用される噴霧乾燥の構成を概略的に示す。
【0083】
[0077]ノズルに溶液を供給する前に、窒素を用いて噴霧乾燥装置を安定化させ、安定な入口温度(T_in)及び出口温度(T_out)を確実にした。安定化後、溶液を、ぜん動ポンプを用いてノズルに供給し、ノズルの先端部で霧化した。次いで噴霧乾燥チャンバー中で並流窒素によって液滴を乾燥した。乾燥した粒子を含有する流れをサイクロンにさし向け、底部で回収した。噴霧乾燥プロセス中の主な動作パラメーターを表5に要約する。
【0084】
【0085】
[0078]本発明の方法を用いて得られる化合物は、対応する結晶形態と比較して、高い可溶性及び溶解速度を有する非晶質固体である。X線粉末回折(XRPD)又は示差走査熱量測定(DSC)などのいくつかの試験において、非晶質固体の非晶質形態が確認される。
【0086】
[0079]霧化された材料の外観を、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて特徴付けした。得られた粒子の代表的な画像を
図6に示す。
【0087】
[0080]本明細書において開示される方法による噴霧乾燥によって得られたEDTA二アンモニウムのX線粉末回折パターンを
図7に提示する。試料を分析するために用いられる方法は、実施例1において記載されるとおりである。
【0088】
[0081]溶解度法及び分類は、欧州薬局方(Ph.Eur.)、5章11節.Characters section in monographsに記載されている。
【0089】
[0082]表6に提示される欧州薬局方(Ph.Eur.)に準ずる可溶性試験の結果は、結晶質EDTAと比較した場合、得られた非晶質EDTAの高い可溶性を示す。
【0090】
【0091】
[0083]実施例1において記載される欧州薬局方の試験のとおり、可溶性を試験した(100mgの粉末を用いて)。
【0092】
実施例4:噴霧乾燥による非晶質2Na-EDTAの作製
[0084]キレート化剤(2Na-EDTA)溶液の調製:
質量割合0.7%(w/w)の2Na-EDTAを22℃で水に溶解し、透明な溶液が得られるまで撹拌した。
【0093】
[0085]キレート化剤(2Na-EDTA)非晶質粒子の単離:
2流体ノズルが備え付けられた実験室規模の噴霧乾燥器(Buchi、モデルB-290)を使用して溶液を霧化し、乾燥した。並流窒素を使用して霧化後の乾燥を促進した。噴霧乾燥装置をオープンサイクル方式で(すなわち、乾燥ガスの再循環なしで)動作させた。
図1は、使用される噴霧乾燥の構成を概略的に記載する。
【0094】
[0086]ノズルに溶液を供給する前に、窒素を用いて噴霧乾燥装置を安定化させ、安定な入口温度(T_in)及び出口温度(T_out)を確実にした。安定化後、溶液を、ぜん動ポンプを用いてノズルに供給し、ノズルの先端部で霧化した。次いで噴霧乾燥チャンバー中で並流窒素によって液滴を乾燥した。乾燥した粒子を含有する流れをサイクロンにさし向け、底部で回収した。噴霧乾燥プロセス中の主な動作パラメーターを表7に要約する。
【0095】
【0096】
[0087]本発明の方法を用いて得られる化合物は、対応する結晶形態と比較して、高い可溶性及び溶解速度を有する非晶質固体である。X線粉末回折(XRPD)又は示差走査熱量測定(DSC)などのいくつかの試験において、非晶質固体の非晶質形態が確認される。
【0097】
[0088]霧化された材料の外観を、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて特徴付けした。得られた粒子の代表的な画像を
図8に示す。
【0098】
本明細書において開示される方法による噴霧乾燥によって得られた2Na-EDTAのX線粉末回折パターンを
図9に提示する。試料を分析するために用いられる方法は、実施例1において記載されるとおりである。
【0099】
[0089]溶解度法及び分類は、欧州薬局方(Ph.Eur.)、5章11節.Characters section in monographsに記載されている。
【0100】
[0090]表8に提示される欧州薬局方(Ph.Eur.)に準ずる可溶性試験の結果は、非晶質2Na-EDTA及び結晶質2Na-EDTAの可溶性を示す。
【0101】
【0102】
[0091]両方の形態学上の形態が可溶性であるため、溶解速度を試験した。5mlに250mgを溶解するための各形態の溶解時間を評価し、結果を表9に提示する。設備クリスタライン(Crystalline)(登録商標)を用いて試験を実施した。この設備は、液体の透過率を示し、100%の透過率は、溶液が存在し、粉末は完全に溶解していることを意味する。水を満たした設備の容器に粉末を加え(0.5%w/w濃度)、100%の透過率に達する時間を測定した。結晶形態及び非晶質形態の結果をそれぞれ
図10及び11に提示する。
【0103】
【0104】
参考文献
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【手続補正書】
【提出日】2020-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、エデト酸二アンモニウム((NH
4
)
2
-EDTA)、又は、
(b)ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン二コハク酸(EDDS)、イミノ二コハク酸(IDS)、ヒドロキサム酸、ガラクタル酸、メタリン酸、若しくはフィチン酸、又は、上述の酸のうちのいずれか1種若しくは複数の塩、又は、
(c)(a)又は(b)から選択される酸またはその塩のうちのいずれかの2種以上の混合物、
から選択されるキレート化剤の非晶質形態
であって、
前記非晶質形態が、追加の化合物、又は、支持マトリックスを含まない、キレート化剤の非晶質形態。
【請求項2】
前記非晶質形態が、水和物、無水物、又は溶媒和物の形態である、請求項
1に記載の非晶質形態。
【請求項3】
前記キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、
エデト酸二アンモニウム((NH
4
)
2
-EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ペンテト酸五ナトリウム、若しくはペンテト酸三ナトリウムカルシウム、又は上述の酸若しくは塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の非晶質形態。
【請求項4】
水溶性が対応する結晶形態の水溶性より高い、請求項1~
3のいずれか一項に記載のキレート化剤の非晶質形態。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のキレート化剤の非晶質形態を調製する方法であって、
a)適切な溶媒に前記キレート化剤を溶解するステップと、
b)任意選択で、溶液を精製するステップと、
c)前記キレート化剤の非晶質形態を単離するステップと、
d)任意選択で、前記キレート化剤の前記非晶質形態を事後乾燥又は状態調節するステップと、を含む方法。
【請求項6】
前記非晶質形態が、水和物、無水物、又は溶媒和物の形態である、請求項
5に記載の
方法。
【請求項7】
前記非晶質形態が
、支持マトリックスを含まない、請求項
6に記載の
方法。
【請求項8】
前記キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸/エデト酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム(Na-EDTA)、エデト酸二ナトリウム(2Na-EDTA)、エデト酸二カリウム(2K-EDTA)、エデト酸二ナトリウムカルシウム(2NaCa-EDTA)、エデト酸三ナトリウム(3Na-EDTA)、
エデト酸二アンモニウム((NH
4
)
2
-EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸/ペンテト酸(DTPA)、ペンテト酸五ナトリウム、ペンテト酸三ナトリウムカルシウム、又は上述の酸若しくは塩のうちのいずれかの2種以上の混合物を含む、請求項
5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、1種若しくは複数の樹脂を使用して、活性炭を使用して、又は、ろ過によって、精製される、請求項
5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、水、水酸化ナトリウムの水溶液、アンモニア溶液の水溶液、又はこれらの溶媒のうちの2種以上の混合物である、請求項
5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒が加えられていてもよく、任意選択で、前記加えられた溶媒がアルコール又はアセトンである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記キレート化剤の非晶質形態を単離することが、溶媒除去によって実行される、請求項
5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
凍結乾燥、真空乾燥、又は噴霧乾燥などの溶媒除去手法が用いられる、請求項
5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
事後乾燥又は状態調節するステップが実施される、請求項
5~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記非晶質のキレート化剤の粒度分布が制御される、請求項
5~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工業、農業、又は家庭分野でのプロセス又は組成物における、請求項1~
4のいずれか一項に記載の非晶質のキレート化剤の使用。
【請求項17】
前記分野が、パルプ漂白、食品及び飲料の保存、工業用洗浄、洗剤、セメント、パーソナルケア品及び化粧品、肥料、水処理、又は布中の金属イオンの除去及び失活を含む、請求項
16に記載の使用。
【請求項18】
a)活性医薬成分と、
b)請求項1~
4のいずれか一項に記載の非晶質のキレート化剤と、を含む、医薬又はバイオ医薬組成物。
【国際調査報告】