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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】外科医コンソールの触覚制御
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20220104BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J3/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517329
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(85)【翻訳文提出日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 GB2019053155
(87)【国際公開番号】W WO2020095053
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】1818320.2
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516263638
【氏名又は名称】シーエムアール サージカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CMR SURGICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリーウッド,ロス ハミルトン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS10
3C707JT04
3C707KS03
3C707KS31
3C707KS33
3C707KS35
3C707KS39
3C707LV18
(57)【要約】
外科用ロボットシステムは、外科医コンソールと、遠隔外科用ロボットと、制御ユニットと、を備える。外科医コンソールは、リンケージによってハンドコントローラに接続された基部を備え、リンケージは、複数のジョイントを備え、それによって、リンケージの構成を変更することができる。外科医コンソールは、各ジョイントを駆動して移動させるためのドライバを備える。外科医コンソールは、ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するための存在センサをさらに備える。制御ユニットは、ハンドコントローラからユーザ入力を受信し、受信したユーザ入力を、外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換し、存在センサを含むセンサから知覚入力を受信し、外科手術中に、受信した知覚入力から、(i)ハンドコントローラ上に外科医の手がないこと、および(ii)重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していることを、同時に検出することに対して、ドライバを制御してジョイントを外力の方向に減衰した応答で駆動することによって応答する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ロボットシステムを制御するための制御ユニットであって、前記外科用ロボットシステムが、外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットを備え、前記外科医コンソールが、リンケージによってハンドコントローラに接続された基部を備え、前記リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、前記リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに前記外科医コンソールが、前記ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備え、前記外科医コンソールが、前記ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサをさらに備え、前記制御ユニットが、
前記ハンドコントローラからユーザ入力を受信することと、
前記受信したユーザ入力を、前記外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換することと、
前記存在センサを含むセンサから知覚入力を受信することと、
外科手術中に、前記受信した知覚入力から、(i)前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないこと、および(ii)重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを、同時に検出することに対して、前記ドライバを制御して前記ジョイントを前記外力の方向に減衰した応答で駆動することによって応答することと、を行うように構成されている、制御ユニット。
【請求項2】
前記存在センサが、静電容量センサであり、前記制御ユニットが、前記静電容量センサから、検出された静電容量を示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項3】
前記存在センサが、誘導性センサであり、前記制御ユニットが、前記誘導性センサから、検出されたインダクタンスを示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項4】
前記存在センサが、パルスオキシメータであり、前記制御ユニットが、前記パルスオキシメータから、検出された酸素飽和度を示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項5】
前記存在センサが、光学センサであり、前記制御ユニットが、前記光学センサから、検出された光信号またはその欠如を示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項6】
前記存在センサが、前記ハンドコントローラと前記外科医の手の手掌との接触、または前記外科医の手がないことを、検出するように構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項7】
前記存在センサが、位置センサのセットであり、各位置センサが、前記リンケージのジョイントの位置を検知し、前記制御ユニットが、前記位置センサから、ジョイント位置のセットを受信するように構成されており、前記制御ユニットが、そのジョイント位置のセットに対する前記リンケージの構成を決定し、その後に受信したジョイント位置のセットから、前記リンケージの運動を決定するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項8】
前記リンケージの前記決定された運動が閾値の勾配よりも大きい勾配で移動した距離の時間的なプロファイルを有する場合に、前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないことを検出するように構成されている、請求項7に記載の制御ユニット。
【請求項9】
前記存在センサが、トルクセンサのセットであり、各トルクセンサが、前記リンケージのジョイントのトルクを検知し、前記制御ユニットが、前記トルクセンサから、ジョイントトルクのセットを受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記受信したジョイントトルクのセットのうちのあるジョイントトルクの大きさが閾値を超える場合に、前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないことを検出するように構成されている、請求項9に記載の制御ユニット。
【請求項11】
前記外科医コンソールが、位置センサのセットであり、各位置センサが、前記リンケージのジョイントの位置を検知し、前記制御ユニットが、前記位置センサから、ジョイント位置のセットを受信するように構成されており、前記制御ユニットが、そのジョイント位置のセットに対する前記リンケージの構成を決定し、その後に受信したジョイント位置のセットから、前記リンケージの運動を決定するように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項12】
前記リンケージの前記決定された運動が非ゼロである場合、重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを検出するように構成されている、請求項11に記載の制御ユニット。
【請求項13】
前記外科医コンソールが、トルクセンサのセットを備え、各トルクセンサが、前記リンケージのジョイントのトルクを検知し、前記制御ユニットが、前記トルクセンサから、ジョイントトルクのセットを受信するように構成されている、請求項1~10のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項14】
前記受信したジョイントトルクのセットのうちのあるジョイントトルクの大きさがベースラインの値を超える場合、重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを検出するように構成されている、請求項13に記載の制御ユニット。
【請求項15】
前記外力の方向に運動を大きく減衰させるように、前記ドライバを制御して前記ジョイントを駆動するように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項16】
前記外力の方向に運動を軽く減衰させるように、前記ドライバを制御して前記ジョイントを駆動するように構成されている、請求項1~14のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項17】
前記知覚入力によって示される、前記リンケージ構成における前記ジョイントの重力トルクを決定することと、
前記ジョイント上の前記重力トルクを相殺するように、前記ドライバを制御して前記ジョイントを駆動することと、を行うように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項18】
外科医コンソールであって、
リンケージによってハンドコントローラに接続された基部であって、前記リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、前記リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに前記外科医コンソールが、前記ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備える、基部と、
前記ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサと、
先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニットと、を備える、外科医コンソール。
【請求項19】
外科用ロボットシステムであって、外科医コンソールと、前記外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットと、先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニットと、を備え、前記制御ユニットが、前記外科医コンソールから遠隔にある、外科用ロボットシステム。
【請求項20】
外科用ロボットシステムの外科医コンソールのハンドコントローラの運動を制御する方法であって、前記外科用ロボットシステムが、制御ユニットと、前記外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットと、を備え、前記外科医コンソールが、リンケージによって前記ハンドコントローラに接続された基部を備え、前記リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、前記リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに前記外科医コンソールが、前記ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備え、前記外科医コンソールが、前記ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサをさらに備え、前記方法が、
前記ハンドコントローラからユーザ入力を受信することと、
前記受信したユーザ入力を、前記外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換することと、
前記存在センサを含むセンサから知覚入力を受信することと、
外科手術中に、前記受信した知覚入力から、(i)前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないこと、および(ii)重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを、同時に検出することに対して、前記ドライバを制御して前記ジョイントを前記外力の方向に減衰した応答で駆動することによって応答することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、遠隔外科医コンソールから外科用ロボットの運動を制御することに関する。
【0002】
図1は、人物104に対して手術を行っている外科用ロボット101、102、103を例示する。各ロボットは、可撓性アームを介して外科用器具に接続された基部を備える。ロボットは、外科医によって遠隔制御される。外科医は、図2に示される外科医コンソール200に位置する。外科医は、ハンドコントローラ201、202を操作する。制御システムは、ハンドコントローラの動きを制御信号に変換して、外科用ロボットのアームジョイントおよび/または器具エンドエフェクタを移動させる。手術部位の内視鏡からのビデオフィードがディスプレイ203上に表示されることにより、外科医は、自身がハンドコントローラ201、202で操作している器具エンドエフェクタを視認することが可能になる。
【0003】
ハンドコントローラ201、202を支持することによって引き起こされる外科医の疲労を低減するために、各ハンドコントローラの重力を補償することが知られている。言い換えれば、制御システムは、ハンドコントローラを支持するリンケージの各ジョイントを、そのジョイントに作用する重力を相殺する力を提供するように駆動する。外科医がハンドコントローラを手放しても、ハンドコントローラは、重力下で落ちるのではなく同じ位置に留まる。したがって、外科医は、ハンドコントローラを操作している間、ハンドコントローラの質量を支持する必要はない。
【0004】
重力補償型ハンドコントローラは、軽くて扱いやすく、操作が簡単である。これは、特に長時間手術を行う外科医にとって望ましい。しかしながら、ハンドコントローラは、わずかな接触でも動きが生じるため、ノックされやすい。次いで、この動きを、ロボットアームおよび/または器具エンドエフェクタで再現することができる。
【0005】
いわゆる死んだ人のハンドルをハンドコントローラ上で使用することが知られている。これは、外科医がハンドコントローラを手放したときにシステムにブレーキをかける、機械的ブレーキシステムである。この追加のブレーキシステムは、効果的であるが、ハンドコントローラおよび支持リンケージにかなりの重量を加え、これは、望ましくない。
【0006】
意図せずに移動する可能性が低い一方で、軽くて、外科的手技中に外科医が簡単に扱うことができるような、外科医のハンドコントローラを制御するための制御システムへの必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様によれば、外科用ロボットシステムを制御するための制御ユニットであって、外科用ロボットシステムが、外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットを備え、外科医コンソールが、リンケージによってハンドコントローラに接続された基部を備え、リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに外科医コンソールが、ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備え、外科医コンソールが、ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサをさらに備え、制御ユニットが、ハンドコントローラからユーザ入力を受信することと、受信したユーザ入力を、外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換することと、存在センサを含むセンサから知覚入力を受信することと、外科手術中に、受信した知覚入力から、(i)ハンドコントローラ上に外科医の手がないこと、および(ii)重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していることを、同時に検出することに対して、ドライバを制御してジョイントを外力の方向に減衰した応答で駆動することによって応答することと、を行うように構成されている、制御ユニットが提供される。
【0008】
存在センサは、静電容量センサであり得、制御ユニットは、静電容量センサから、検出された静電容量を示す知覚入力を受信するように構成される。
【0009】
存在センサは、誘導性センサであり得、制御ユニットは、誘導性センサから、検出されたインダクタンスを示す知覚入力を受信するように構成される。
【0010】
存在センサは、パルスオキシメータであり得、制御ユニットは、パルスオキシメータから、検出された酸素飽和度を示す知覚入力を受信するように構成される。
【0011】
存在センサは、光学センサであり得、制御ユニットは、光学センサから、検出された光信号またはその欠如を示す知覚入力を受信するように構成される。
【0012】
存在センサは、ハンドコントローラと外科医の手の手掌との接触、または外科医の手がないことを、検出するように構成され得る。
【0013】
存在センサは、位置センサのセットであり得、各位置センサは、リンケージのジョイントの位置を検知し、制御ユニットは、位置センサから、ジョイント位置のセットを受信するように構成され、制御ユニットは、そのジョイント位置のセットに対するリンケージの構成を決定し、その後に受信したジョイント位置のセットから、リンケージの運動を決定するように構成される。
【0014】
制御ユニットは、リンケージの決定された運動が閾値の勾配よりも大きい勾配で移動した距離の時間的なプロファイルを有する場合に、ハンドコントローラ上に外科医の手がないことを検出し得る。
【0015】
存在センサは、トルクセンサのセットであり得、各トルクセンサは、リンケージのジョイントのトルクを検知し、制御ユニットは、トルクセンサから、ジョイントトルクのセットを受信するように構成される。
【0016】
制御ユニットは、受信したジョイントトルクのセットのうちのあるジョイントトルクの大きさが閾値を超える場合に、ハンドコントローラ上に外科医の手がないことを検出し得る。
【0017】
外科医コンソールは、位置センサのセットを備えることができ、各位置センサは、リンケージのジョイントの位置を検知し、制御ユニットは、位置センサから、ジョイント位置のセットを受信するように構成され、制御ユニットは、そのジョイント位置のセットに対するリンケージの構成を決定し、その後に受信したジョイント位置のセットから、リンケージの運動を決定するように構成される。
【0018】
制御ユニットは、リンケージの決定された運動が非ゼロである場合、重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していることを検出し得る。
【0019】
外科医コンソールは、トルクセンサのセットを備えることができ、各トルクセンサは、リンケージのジョイントのトルクを検知し、制御ユニットは、トルクセンサから、ジョイントトルクのセットを受信するように構成される。
【0020】
制御ユニットは、受信したジョイントトルクのセットのうちのあるジョイントトルクの大きさがベースラインの値を超える場合、重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していることを検出し得る。
【0021】
制御ユニットは、運動を外力の方向に大きく減衰させるように、ドライバを制御してジョイントを駆動し得る。
【0022】
制御ユニットは、運動を外力の方向に軽く減衰させるように、ドライバを制御してジョイントを駆動し得る。
【0023】
制御ユニットは、知覚入力によって示される、リンケージ構成におけるジョイントの重力トルクを決定し、ジョイントの重力トルクを相殺するように、ドライバを制御してジョイントを駆動し得る。
【0024】
第2の態様によれば、外科医コンソールであって、外科医コンソールが、リンケージによってハンドコントローラに接続された基部であって、リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに外科医コンソールが、ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備える、基部と、ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサと、上の段落のいずれかに記載の制御ユニットと、を備える、外科医コンソールが提供される。
【0025】
第3の態様によれば、外科用ロボットシステムであって、外科医コンソールと、外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットと、上の段落のいずれかに記載の制御ユニットと、を備え、制御ユニットが、外科医コンソールから遠隔にある、外科用ロボットシステムが提供される。
【0026】
第4の態様によれば、外科用ロボットシステムの外科医コンソールのハンドコントローラの運動を制御する方法であって、外科用ロボットシステムが、制御ユニットと、外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットと、を備え、外科医コンソールが、リンケージによってハンドコントローラに接続された基部を備え、リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに外科医コンソールが、ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備え、外科医コンソールが、ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサをさらに備え、方法が、ハンドコントローラからユーザ入力を受信することと、受信したユーザ入力を、外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換することと、存在センサを含むセンサから知覚入力を受信することと、外科手術中に、受信した知覚入力から、(i)ハンドコントローラ上に外科医の手がないこと、および(ii)重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していることを、同時に検出することに対して、ドライバを制御してジョイントを外力の方向に減衰した応答で駆動することによって応答することと、を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
ここで、添付図面を参照して、本開示を例として説明する。
図1】外科用ロボットのセットによって手術されている人物を例示する。
図2】外科医コンソールを例示する。
図3】外科用ロボットシステムの概略図を例示する。
図4】ロボットを例示する。
図5】ハンドコントローラおよび外科医コンソールのリンケージを例示する。
図6】ハンドコントローラの重力を相殺し、外科医コンソールのリンケージを支持する、プロセスを示すフローチャートである。
図7】ハンドコントローラの運動に抵抗するプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明は、外科用ロボットと、外科医コンソールと、制御ユニットと、を備える、外科用ロボットシステムに関する。外科医は、外科医コンソールの重力補償型ハンドコントローラを操作する。制御ユニットは、この動きを、遠隔外科用ロボットの対応する操作を駆動するためのコマンド信号に変換する。外科医コンソールは、ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するための存在センサを備える。この存在センサは、その知覚データを制御ユニットに中継する。制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないことを検出し、同時に、(重力に加えて)ハンドコントローラに作用する外力を検出した場合、外科医コンソールを制御してハンドコントローラを外力の方向に減衰した応答で駆動する。
【0029】
図3は、外科用ロボットシステム300を例示する。外科用ロボットシステム300は、2つの外科用ロボット301、302と、制御ユニット303と、外科医コンソール304と、を備える。外科医コンソール304は、第1および第2のハンドコントローラ305、306を備える。各ハンドコントローラは、可撓性リンケージによって外科医コンソールの基部に接続される。制御ユニット303は、ハンドコントローラからユーザ入力307を受信する。制御ユニット303はまた、外科医コンソールから知覚入力308を受信する。知覚入力308は、ハンドコントローラに関連し、存在センサ309からの知覚入力を含む。知覚入力はまた、ハンドコントローラを外科医コンソールの基部に接続するリンケージのジョイントを検知する位置センサおよび/またはトルクセンサからの知覚データを含み得る。位置センサおよび/またはトルクセンサのうちの1つ以上は、ジョイント自体上に位置し得る。例えば、位置/トルクセンサは、検知しているジョイントのアクチュエータ上に位置し得、そのアクチュエータは、ジョイントと共に位置する。代替的にまたはさらに、位置センサおよび/またはトルクセンサのうちの1つ以上がジョイントから遠隔に位置し得る。例えば、位置/トルクセンサは、検知しているジョイントの遠隔アクチュエータ上に位置し得る。駆動しているジョイントから遠隔にあるアクチュエータは、例えば、ケーブルによってそのジョイントを駆動することができる。制御ユニットは、外科医コンソールから、フットペダル(複数可)入力、ボタン入力、音声認識入力、ジェスチャ認識入力、視線認識入力などのような他の入力310を受信し得る。制御ユニット303はまた、外科用ロボット301、302から入力311を受信し得る。これらの入力には、ロボットアームのジョイントを検知する、位置センサおよびトルクセンサからの知覚データが含まれる。制御ユニット303は、各ロボットから、力フィードバック、外科用器具からのデータなどのような他の入力311を受信し得る。制御ユニット303は、ロボットおよび外科医コンソールから受信する入力に応答して、ロボット301、302を駆動する。制御ユニットは、外科医コンソールから受信する入力に応答して、ハンドコントローラ305、306の運動を調節する。制御ユニット303は、プロセッサ312およびメモリ313を備える。メモリは、プロセッサによって実行され得るソフトウェアコードを非一時的な方法で記憶して、プロセッサに、本明細書に記載の様式でドライバを制御させる。制御ユニット303は、外科医コンソールおよび外科用ロボットの両方から遠隔にあるものとして示される。代替的に、制御ユニット303を外科医コンソール304内に組み込むことができる。さらなる代替として、制御ユニット303を、外科用ロボット301、302のうちのいずれか1つの中に組み込むことができる。
【0030】
各外科用ロボット301、302は、図4に例示される形態のものである。ロボットは、基部401を備える。可撓性アーム402は、ロボットの基部401から外科用器具404の取付具403まで延在する。アーム402は、その長さに沿って複数の可撓性ジョイント405によって関節式に連結される。ジョイント間にあるのは、剛性アーム部材406である。アームは、ドライバのセットを備え、各ドライバ407は、1つ以上のジョイント405を駆動する。
【0031】
図5は、外科医コンソールのハンドコントローラ、およびその外科医コンソールの基部への接続を例示する。ハンドコントローラ501は、関節式に連結されたリンケージ502によって外科医コンソール503の基部に接続される。リンケージ502は、その長さに沿って複数の可撓性ジョイント504によって関節式に連結される。ジョイント間にあるのは、剛性リンク505である。したがって、リンケージ502の構成は、ジョイントを操作することによって変更することができる。リンケージは、ドライバ506のセットを備える。各ドライバ506は、1つ以上のジョイント504を駆動する。
【0032】
外科医コンソールは、一連のセンサを備える。これらのセンサは、ジョイントごとに、ジョイントの位置を検知するための位置センサ507、およびジョイントの回転軸の周りに加えられたトルクを検知するためのトルクセンサ508のうちの一方または両方を備える。ジョイントの位置センサおよびトルクセンサのうちの一方または両方を、そのジョイントのモータと一体化させることができる。センサの出力は、それらがプロセッサ312への入力を形成する制御ユニット303に渡される。
【0033】
外科医コンソールは、存在センサを備える。存在センサは、ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成される。例えば、存在センサは、ハンドコントローラと外科医の手掌との接触(またはそれがないこと)を検出し得る。存在センサは、以下のうちのいずれか1つ以上であってもよい。
1.静電容量センサ。静電容量センサは、ハンドコントローラ上に位置する。静電容量センサは、ハンドコントローラを操作する間に外科医が自身の手と接触する、ハンドコントローラの表面の一部分上に位置する。静電容量センサは、知覚入力を制御ユニット303に送信し、これらの知覚入力は、検出された静電容量を示す。制御ユニット303は、検出された静電容量を閾値の静電容量と比較する。検出された静電容量が閾値の静電容量よりも低い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にあると決定する。検出された静電容量が閾値の静電容量よりも高い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定する。
2.誘導性センサ。誘導性センサは、ハンドコントローラ上に位置する。誘導性センサは、ハンドコントローラを操作する間に外科医が自身の手と接触する、ハンドコントローラの表面の一部分上に位置する。誘導性センサは、知覚入力を制御ユニット303に送信し、これらの知覚入力は、検出されたインダクタンスを示す。制御ユニット303は、検出したインダクタンスを閾値のインダクタンスと比較する。検出されたインダクタンスが閾値のインダクタンスよりも高い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にあると決定する。検出されたインダクタンスが閾値のインダクタンスよりも低い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定する。
3.パルスオキシメータ。パルスオキシメータは、ハンドコントローラ上に位置する。パルスオキシメータは、ハンドコントローラを操作する間に外科医が自身の手と接触する、ハンドコントローラの表面の一部分上に位置する。パルスオキシメータは、知覚入力を制御ユニット303に送信し、これらの知覚入力は、検出された酸素飽和度を示す。制御ユニット303は、検出された酸素飽和度を閾値の酸素飽和度と比較する。検出された酸素飽和度が閾値の酸素飽和度よりも高い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にあると決定する。検出された酸素飽和度が閾値の酸素飽和度よりも低い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定する。
4.光学センサ。光学センサは、トランスミッタおよび検出器を有する。検出器は、ハンドコントローラ上に位置する。トランスミッタは、外科医が自身の手の中にハンドコントローラを保持していない場合、検出器の視線内の外科医コンソール上に位置する。トランスミッタは、外科医が自身の手の中にハンドコントローラを保持している場合、検出器の視線内にない外科医コンソール上に位置する。光学センサは、知覚入力を制御ユニット303に送信し、これらの知覚入力は、検出された光信号を示す。制御ユニット303は、検出された光レベルを閾値の光レベルと比較する。検出された光レベルが閾値の光レベルよりも低い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にあると決定する。検出された光レベルが閾値の光レベルよりも高い場合、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定する。
5.リンケージ上のジョイント位置センサ。各位置センサは、その関連付けられたジョイントの位置を検知する。例えば、ジョイントのジョイント角度を検知し得る。制御ユニットは、ジョイント位置センサからジョイント位置を受信する。制御ユニットは、リンケージの幾何学的形状/レイアウトをメモリ313に記憶している。リンケージの幾何学的形状および受信したジョイント位置から、制御ユニット303は、リンケージの現在の構成を決定する。受信したジョイント位置の後続のセットから、制御ユニットは、リンケージの後続の構成を決定する。したがって、制御ユニットは、経時的なリンケージの運動を決定する。制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうかを検出するために、リンケージの運動を分析する。リンケージの運動が、外科医が外科的手技中にハンドコントローラを移動することによって引き起こされたリンケージの典型的な動きと一致する場合、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあることを検出する。リンケージの運動が、外科医が外科的手技中にハンドコントローラを移動することによって引き起こされたリンケージの典型的な動きと一致しない場合、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないことを検出する。例えば、制御ユニットは、リンケージによって移動した距離の時間的なプロファイルを評価し得る。このプロファイルが閾値の勾配よりも大きい勾配を有する場合、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定し得る。
6.リンケージ上のジョイントトルクセンサ。各トルクセンサは、その関連付けられたジョイントのトルクを検知する。制御ユニットは、ジョイントトルクセンサからジョイントトルクを受信する。任意の個々のジョイントトルクが閾値を超える場合、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定し得る。代替的にまたはさらに、制御ユニットは、リンケージの幾何学的形状/レイアウトをメモリ313に記憶し得る。リンケージの幾何学的形状および受信したジョイントトルクのセットから、制御ユニット303は、経時的なリンケージの運動を決定する。制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうかを検出するために、リンケージの運動を分析する。リンケージの運動が、外科医が外科的手技中にハンドコントローラを移動することによって引き起こされたリンケージの典型的な動きと一致する場合、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあることを検出する。リンケージの運動が、外科医が外科的手技中にハンドコントローラを移動することによって引き起こされたリンケージの典型的な動きと一致しない場合、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないことを検出する。例えば、制御ユニットは、リンケージによって移動した距離の時間的なプロファイルを評価し得る。このプロファイルが閾値の勾配よりも大きい勾配を有する場合、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定し得る。
【0034】
制御ユニットは、ジョイントの重力トルクを相殺するように、ハンドコントローラを外科医のコンソールの基部に接続するリンケージのジョイントを駆動する。図6は、これを行うために制御ユニット303によって実施されるステップを例示する。
【0035】
制御ユニットは、入力位置として、リンケージのジョイントを検知する位置センサ507からの知覚データ601を受信する。例えば、各位置センサは、検知しているジョイントのジョイント角度を報告し得る。制御ユニットは、リンケージ502の幾何学的形状/レイアウトをメモリ313に記憶する。制御ユニットのプロセッサ312は、メモリ313から、リンケージの記憶された幾何学的形状を検索する。ステップ602において、制御ユニットのプロセッサ309は、受信した位置知覚データおよびリンケージの幾何学的形状からリンケージの現在の構成を決定する。リンケージの構成は、リンケージの姿勢としても知られている。好適には、プロセッサ312は、リンケージの現在の構成をメモリ313に記憶する。
【0036】
制御ユニットは、リンケージの重力モデル603をメモリ313に記憶する。メモリ313は、リンケージおよび取り付けられたハンドコントローラの要素ごとに、その質量、リンケージのすぐ前のジョイントからその重心までの距離、および重心とすぐ前のジョイントのジョイントセンサの位置出力との関係を記憶する。制御ユニットのプロセッサ312は、メモリ313から、記憶された重力モデル603を検索する。ステップ604において、制御ユニットのプロセッサ312は、リンケージの現在の構成および重力モデルを使用して、リンケージの現在の構成について、リンケージの要素に対する重力の影響をモデル化する。これを行う際に、プロセッサ312は、リンケージの各ジョイントに作用する重力によるトルクを決定する。
【0037】
ステップ605において、プロセッサ312は、リンケージのジョイントのドライバ506を制御してリンケージの各ジョイント504を、そのジョイントに作用する、ステップ604で計算された重力トルクを補償するように、駆動する。このようにして、制御ユニットは、重力に対してハンドコントローラの位置を維持する。したがって、コンソールは、外科医ではなく、重力に対してハンドコントローラの質量を支持する。外科医がハンドコントローラを手放しても、ハンドコントローラは重力を受けない。代わりに、その現在の位置に留まる。これにより、ハンドコントローラが外科医の使用のために軽くなる。外科医がハンドコントローラに加えた任意の力により、ハンドコントローラが移動する。
【0038】
制御ユニットが実際にリンケージの構成を決定する必要はない。制御ユニットは、重力トルクを、位置知覚データ、リンケージの既知の幾何学的形状、および重力モデルから直接計算し得る。
【0039】
制御ユニットは、接続されているハンドコントローラごとに、図6に関連して説明されるステップを行う。
【0040】
制御ユニットは、外科医が操作しているハンドコントローラ(複数可)から受信したユーザ入力に応答して、ロボットアームのジョイントを駆動する。ハンドコントローラ(複数可)からのユーザ入力307は、制御ユニット303によって受信される。制御ユニット303は、ハンドコントローラ(複数可)からのユーザ入力を、外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換する。次いで、制御ユニット303は、コマンド信号314を外科用ロボットのドライバ407に送信する。ドライバ407は、それらのそれぞれのジョイント405をコマンド信号314に従って駆動することによって、コマンド信号314に応答する。
【0041】
以下では、制御ユニット303が、外科医コンソール304から受信した知覚データを利用して、重力補償型ハンドコントローラが外科的手技中に外科医の手によって加えられた力以外の力によって移動したときを検出する実施例を説明する。制御ユニット303は、外力の方向に抵抗応答を提供するように、リンケージのドライバを制御してリンケージのジョイントを駆動することによって応答する。制御システムによって各ジョイントに加えられる力(ジョイントに作用する重力トルクを相殺するために加えられる力を除く)は、以下(のベクトルバージョン)によって求められる。
【数1】
【0042】
制御ユニット303は、方程式1の力を加えるように、ドライバを制御してリンケージのジョイントを駆動するため、制御ユニットは、外科医に所望の感触を提供するように、m、B、およびkの値を選択し得る。例えば、制御ユニット300は、軽量モード、重量モード、応答モード、減衰モードのうちのいずれか1つを選択することができ、軽量モードでは、リンケージおよびハンドコントローラが軽いため、外科医が使用するのに疲れないように、mは小さくなり、重量モードでは、リンケージおよびハンドコントローラが重いため、外科医がより簡単に制御することができるように、mは大きくなり、応答モードでは、ハンドコントローラが外科医の手によって加えられた力に応答するように、Bは小さくなり、減衰モードでは、ハンドコントローラの運動が減衰するように、Bは大きくなる。
【0043】
ばね定数は小さくてもよい。k<1N/mm。好適には、減衰パラメータBは、システムを制御可能にするのに十分大きいが、システムが移動しにくいほど大きくはない。ダンピングパラメータBは、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうかに依存して、制御ユニットによって修正される。減衰パラメータBは、外科医の手がハンドコントローラ上にある場合、B1に設定され得、外科医の手がハンドコントローラ上にない場合、B2に設定され得る。B1の値は、ハンドコントローラの運動が軽く、外科医の手によって加えられた力に応答するように、選択される。B2の値は、ハンドコントローラの運動が、外科医の手以外の実体によって加えられた力に応答して大きく減衰するように、選択される。好適には、B2はB1よりも大きい。好ましくは、B2>>B1である。
【0044】
図7を参照すると、制御ユニットは、ステップ701で、外科医コンソールから知覚入力を受信する。これらの知覚入力には、存在センサからの入力が含まれる。存在センサは、上述の存在センサのいずれか1つまたは組み合わせであってもよい。
【0045】
ステップ702において、外科医コンソールのハンドコントローラごとに、制御ユニット303は、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうかを決定する。制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあるか否かを検出するために、上述のように存在センサからの知覚入力を分析する。制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあることを検出するか、または外科医の手がハンドコントローラ上にないことを検出する。制御ユニットが、外科医の手がハンドコントローラ上にあると決定した場合、プロセスはステップ703に進む。ステップ703において、制御ユニットは、減衰パラメータの値をBからB1に設定する。減衰パラメータBは、ステップ702において既にB1に設定されていてもよい。この場合、制御ユニットは、減衰パラメータの値をB1に保つ。しかしながら、ステップ702で減衰パラメータBがB2に設定されている場合、制御ユニットは、減衰パラメータの値をBからB1に変更する。次いで、プロセスは、より多くの知覚入力が存在センサから受信されるステップ701に戻る。ステップ702において、制御ユニットが、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定した場合、プロセスはステップ704に進む。
【0046】
ステップ704において、制御ユニットは、減衰パラメータの値をBからB2に設定する。減衰パラメータBは、ステップ702において既にB2に設定されていてもよい。この場合、制御ユニットは、減衰パラメータの値をB2に保つ。しかしながら、ステップ702で減衰パラメータBがB1に設定されている場合、制御ユニットは、減衰パラメータの値をBからB2に変更する。次いで、プロセスはステップ705に進む。
【0047】
ステップ705において、制御ユニットは、ハンドコントローラに作用する外力があるかどうかを評価する。制御ユニットは、リンケージ502のジョイント504を検知する、位置センサおよびトルクセンサのいずれかまたは両方からの知覚データを使用して、ハンドコントローラに作用する外力があるかどうかを決定する。上述のように、この外力は、ハンドコントローラに作用する重力に追加されるものである。
【0048】
位置センサの場合、制御ユニットは、位置センサから、リンケージジョイントのジョイント位置のセットを受信する。これと、リンケージの記憶された幾何学的形状から、制御ユニットは、そのジョイント位置のセットに対するリンケージの構成を決定する。制御ユニットは、後続の時間における後続のジョイント位置のセットを受信する。制御ユニットは、これらの後続の時間の各々におけるリンケージの構成を決定する。したがって、制御ユニットは、経時的なリンケージの変位、すなわち、リンケージの速度を決定する。制御ユニットは、重力が考慮された後に、リンケージの速度が非ゼロである場合、重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していると決定する。制御ユニットは、重力が考慮された後に、リンケージの速度がゼロである場合、重力に加えていかなる外力もハンドコントローラに作用していないと決定する。
【0049】
トルクセンサの場合、制御ユニットは、トルクセンサから、リンケージジョイントのジョイントトルクのセットを受信する。制御ユニットは、ジョイントトルクの各々をベースラインの値と比較する。制御ユニットは、重力が考慮された後に、ジョイントトルクの大きさがベースラインの値を超える場合、重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していると決定する。制御ユニットは、重力が考慮された後に、大きさがベースラインを超えるジョイントトルクがない場合、重力に加えていかなる外力もハンドコントローラに作用していないと決定する。
【0050】
ステップ705において、制御ユニットが、重力に加えていかなる外力もハンドコントローラに作用していないと決定した場合、プロセスは、より多くの知覚入力が存在センサから受信されるステップ701に戻る。制御ユニットが、重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していると決定した場合、プロセスはステップ706に進む。ステップ706において、外科医の手がハンドコントローラ上にないのと同時に、重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していると決定すると、制御ユニットは、外力の方向に減衰した応答を提供するように、リンケージのドライバを制御してリンケージジョイントを駆動する。制御ユニットは、上記の方程式1のベクトルバージョンによって求められた力に従って、リンケージのドライバを制御してリンケージジョイントを駆動する。この方程式では、x、x’、およびx’’はすべて、位置/トルク知覚データから導き出される。例えば、位置センサからの知覚データを使用する場合、xは、ジョイント位置センサによって測定された外力によって引き起こされたジョイントの変位であり、x’は、xの時刻履歴から計算されたxの第1の微分係数であり、x’’は、xの時間履歴から計算されたxの第2の微分係数である。知覚データを、方程式1で使用する前にフィルタリングして、力を決定することができる。例えば、まずx’をローパスフィルタでフィルタリングして、高周波制御ジッタを除去することができる。mおよびkの値は、上述のようにシステムに対して設定される。Bの値はB2に設定される。次いで、制御ユニットは、方程式1に従って、ドライバを制御して、リンケージのジョイントに抵抗トルクを加える。制御ユニットはドライバにリンケージを外力の方向に駆動させるが、その駆動された運動は、力の速度成分の係数B2のため、大きく減衰する。
【0051】
制御ユニットは、外力の検出に対する以下の応答のうちのいずれか1つを提供するように、B2の値を選択し得る。外力の方向に大きく減衰した運動、外力の方向に軽く減衰した運動、またはハンドコントローラが全く移動しないように、外力の方向に完全に減衰した運動。制御ユニットは、外力の方向に非線形の減衰運動を提供するように選択し得る。この減衰動作は、ばね状であってもよい。
【0052】
図7のフローチャートでは、制御ユニットは、重力に加えて、ハンドコントローラに作用する外力があるかどうかを評価する前に、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうかを評価する。一実装例では、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないと決定した場合、重力に加えて、ハンドコントローラに作用する外力があるかどうかのみを評価する。別の実装例では、ステップ702と705とが逆である。したがって、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうかを評価する前に、重力に加えて、ハンドコントローラに作用する外力があるかどうかを評価する。任意選択で、制御ユニットは、重力に加えて、ハンドコントローラに作用する外力があることを検出する場合にのみ、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうかを評価する。別の実装例では、制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にあるかどうか、および重力に加えて、ハンドコントローラに作用する外力があるかどうかを、同時に決定する。制御ユニットは、外科医の手がハンドコントローラ上にないこと、および重力に加えて外力がハンドコントローラに作用していることの両方を検出すると、ドライバを制御してハンドコントローラの運動に抵抗する。
【0053】
存在センサを位置センサのセットによって実装する場合、これらの位置センサは、存在センサに対する知覚入力、および重力に加えて外力がハンドコントローラに作用しているかどうかを決定するための知覚入力の両方を提供し得る。
【0054】
存在センサをトルクセンサのセットによって実装する場合、これらのトルクセンサは、存在センサに対する知覚入力、および重力に加えて外力がハンドコントローラに作用しているかどうかを決定するための知覚入力の両方を提供し得る。
【0055】
ハンドコントローラの重力を補償することにより、ハンドコントローラは軽くて、外科医が簡単に操作することができるようになる。しかしながら、これにより、ハンドコントローラが意図せずに移動しやすくもなる。これにより、先行技術のシステムでは、器具エンドエフェクタが外科的部位で移動する可能性がある。これによりまた、外科医が制御を再開することを望む場合に、ハンドコントローラが外科医にとって望ましくない位置に移動する可能性がある。図7に関して説明されるプロセスは、この性質の意図しない運動を検出し、その運動に対する応答を減衰させる。
【0056】
図7に関して説明されるプロセスは、外科的手技中の使用を意図するものである。これは、外科的手技が行われる前または外科的手技が行われた後に、外科医がハンドコントローラを待機させている間の使用を意図するものではない。
【0057】
位置センサは、例えば、電位差計、光学位置エンコーダ、超音波または無線距離センサであってもよい。トルクセンサは、例えば、抵抗ベースの歪みゲージ、圧電歪みゲージ、または半導体歪みゲージであってもよい。リンケージのジョイントを駆動して移動させるためのドライバは、回転モータもしくは線形モータ、またはモータ以外の手段、例えば、水圧ラムもしくは空気圧ラムであってもよい。
【0058】
ロボットは、外科手術以外の目的に使用され得る。例えば、ロボットは、エンジンの内側を視認するために、自動車製造時に使用され得る。
【0059】
これにより、本出願人は、本明細書に記載の各個々の特徴および2つ以上のかかる特徴の任意の組み合わせを、かかる特徴または組み合わせが、当業者の共通の一般知識に照らして、全体として本明細書に基づいて行うことができるような程度まで、かかる特徴または特徴の組み合わせが、本明細書に開示される任意の問題を解決するかどうかにかかわらず、かつ特許請求の範囲の範囲を限定することなく、分離して開示する。本出願人は、本発明の態様が、任意のかかる個々の特徴または特徴の組み合わせからなり得ることを示している。前述の説明を考慮すると、本発明の範囲内で様々な修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用ロボットシステムを制御するための制御ユニットであって、前記外科用ロボットシステムが、外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットを備え、前記外科医コンソールが、リンケージによってハンドコントローラに接続された基部を備え、前記リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、前記リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに前記外科医コンソールが、前記ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備え、前記外科医コンソールが、前記ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサをさらに備え、前記制御ユニットが、
前記ハンドコントローラからユーザ入力を受信することと、
前記受信したユーザ入力を、前記外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換することと、
前記存在センサを含むセンサから知覚入力を受信することと、
外科手術中に、前記受信した知覚入力から、(i)前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないこと、および(ii)重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを、同時に検出することに対して、前記ドライバを制御して前記ジョイントを前記外力の方向に減衰した応答で駆動することによって応答することと、を行うように構成されている、制御ユニット。
【請求項2】
前記存在センサが、静電容量センサであり、前記制御ユニットが、前記静電容量センサから、検出された静電容量を示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項3】
前記存在センサが、誘導性センサであり、前記制御ユニットが、前記誘導性センサから、検出されたインダクタンスを示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項4】
前記存在センサが、パルスオキシメータであり、前記制御ユニットが、前記パルスオキシメータから、検出された酸素飽和度を示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項5】
前記存在センサが、光学センサであり、前記制御ユニットが、前記光学センサから、検出された光信号またはその欠如を示す知覚入力を受信するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項6】
前記存在センサが、前記ハンドコントローラと前記外科医の手の手掌との接触、または前記外科医の手がないことを、検出するように構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項7】
前記存在センサが、位置センサのセットであり、各位置センサが、前記リンケージのジョイントの位置を検知し、前記制御ユニットが、前記位置センサから、ジョイント位置のセットを受信するように構成されており、前記制御ユニットが、そのジョイント位置のセットに対する前記リンケージの構成を決定し、その後に受信したジョイント位置のセットから、前記リンケージの運動を決定するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項8】
前記リンケージの前記決定された運動が閾値の勾配よりも大きい勾配で移動した距離の時間的なプロファイルを有する場合に、前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないことを検出するように構成されている、請求項7に記載の制御ユニット。
【請求項9】
前記存在センサが、トルクセンサのセットであり、各トルクセンサが、前記リンケージのジョイントのトルクを検知し、前記制御ユニットが、前記トルクセンサから、ジョイントトルクのセットを受信するように構成されており、
前記受信したジョイントトルクのセットのうちのあるジョイントトルクの大きさが閾値を超える場合に、前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないことを検出するように構成されている、請求項1に記載の制御ユニット。
【請求項10】
前記外科医コンソールが、位置センサのセットであり、各位置センサが、前記リンケージのジョイントの位置を検知し、前記制御ユニットが、前記位置センサから、ジョイント位置のセットを受信するように構成されており、前記制御ユニットが、そのジョイント位置のセットに対する前記リンケージの構成を決定し、その後に受信したジョイント位置のセットから、前記リンケージの運動を決定するように構成されており、前記リンケージの前記決定された運動が非ゼロである場合、重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを検出するように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項11】
前記外科医コンソールが、トルクセンサのセットを備え、各トルクセンサが、前記リンケージのジョイントのトルクを検知し、前記制御ユニットが、前記トルクセンサから、ジョイントトルクのセットを受信するように構成されており、
前記受信したジョイントトルクのセットのうちのあるジョイントトルクの大きさがベースラインの値を超える場合、重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを検出するように構成されている、請求項1~のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項12】
前記外力の方向に運動を大きく減衰させるように、前記ドライバを制御して前記ジョイントを駆動するように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項13】
前記外力の方向に運動を軽く減衰させるように、前記ドライバを制御して前記ジョイントを駆動するように構成されている、請求項1~11のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項14】
前記知覚入力によって示される、前記リンケージ構成における前記ジョイントの重力トルクを決定することと、
前記ジョイント上の前記重力トルクを相殺するように、前記ドライバを制御して前記ジョイントを駆動することと、を行うように構成されている、先行する請求項のいずれかに記載の制御ユニット。
【請求項15】
外科用ロボットシステムの外科医コンソールのハンドコントローラの運動を制御する方法であって、前記外科用ロボットシステムが、制御ユニットと、前記外科医コンソールから遠隔の外科用ロボットと、を備え、前記外科医コンソールが、リンケージによって前記ハンドコントローラに接続された基部を備え、前記リンケージが、複数のジョイントを備え、それによって、前記リンケージの構成を変更することができ、ジョイントごとに前記外科医コンソールが、前記ジョイントを駆動して移動させるように構成されたドライバを備え、前記外科医コンソールが、前記ハンドコントローラ上の外科医の手の存在を検知するように構成された存在センサをさらに備え、前記方法が、
前記ハンドコントローラからユーザ入力を受信することと、
前記受信したユーザ入力を、前記外科用ロボットの操作を駆動するためのコマンド信号に変換することと、
前記存在センサを含むセンサから知覚入力を受信することと、
外科手術中に、前記受信した知覚入力から、(i)前記ハンドコントローラ上に外科医の手がないこと、および(ii)重力に加えて外力が前記ハンドコントローラに作用していることを、同時に検出することに対して、前記ドライバを制御して前記ジョイントを前記外力の方向に減衰した応答で駆動することによって応答することと、を含む、方法。
【国際調査報告】