(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】多関節アームを備えるロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/06 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
B25J9/06 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517429
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(85)【翻訳文提出日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 FR2019052285
(87)【国際公開番号】W WO2020070412
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521017217
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ル アーブル ノルマンディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブレス,ジョン-フランソワ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS23
3C707CV05
3C707CX01
3C707CX03
3C707CY36
3C707HS27
3C707HT19
3C707HT21
(57)【要約】
本発明は、多関節アームを備えたロボットシステムに関する。多関節アーム(100)は、少なくとも1つの変形可能な構造体を形成すべく平行なピボット軸(10~13)により連結された複数のバー(1~4)から成る変形可能なアッセンブリを有する。この変形可能なアッセンブリの遠位端/先端(12)は、機械的インタフェースを支持する。本発明のロボットシステムは更に、バー(1~4)のうちの2つを回転させる2つのアクチュエータを備えると共に、前記変形可能なアッセンブリの、ピボット軸(10~13)に平行な方向への並進運動を制御する第3のアクチュエータを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多関節アームを備えてなるロボットシステムにおいて、
前記多関節アーム(100)は、少なくとも1つの変形可能な構造体を形成すべく平行なピボット軸(10~13)により連接される複数のバー(1~4)から成る変形可能なアッセンブリを有しており、前記変形可能なアッセンブリの遠位端(12)は、機械的インタフェースを支持し、
当該ロボットシステムは更に、前記バー(1~4)のうちの2つの回転を駆動する2つのアクチュエータを備え、
当該ロボットシステムは更に、前記変形可能なアッセンブリの、前記ピボット軸(10~13)に平行な方向への並進運動を制御する第3のアクチュエータを備えている、ことを特徴とする、ロボットシステム。
【請求項2】
メインフレームを備え、前記アクチュエータのうちの少なくとも2つは、前記メインフレーム上に配置されている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記並進運動は、不可逆的なねじ/ナットシステムによって確保される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記複数のバー(1~4)のうちの各バーは、スペーサにより連接される2つのプロファイルのアッセンブリから成り得る、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
バー(1)の2つのプロファイルは、別のバー(2)の2つのプロファイルによって、前記ピボット軸に平行な方向で包囲されている、請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
当該ロボットシステムは、U字形のメインフレームを備え、該U字形のメインフレームの側枝の各々は、前記平行なピボット軸の力を引き受ける、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記多関節アーム(100)は、少なくとも1つの変形可能な構造体を形成すべく平行なピボット軸(10~13)により連接される複数のバー(1~4)から成る変形可能なアッセンブリを有しており、前記変形可能なアッセンブリの遠位端(12)は、機械的インタフェースを支持し、前記変形可能なアッセンブリの近位端は、その角度位置が2つのアクチュエータにより制御される2つの近位バー(1,2)から成り、前記近位端は、第3のアクチュエータによって、前記ピボット軸(10~13)に平行な方向へ並進運動可能である、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記変形可能なアッセンブリ(100)は、共通のバー(3,4)を共有してなる少なくとも2つの連続する変形可能な四辺形から成る、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記変形可能なアッセンブリ(100)は、
中央ピボット(12)によって連結された共通のバーを共有してなると共に、バー(1~6)により画定される平面に垂直な軸zのピボット連接により組み立てられた6つのバー(1~6)からなる2つの変形可能な菱形から成っている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記変形可能なアッセンブリは、
中央ピボットによって連結された共通のバーを共有してなると共に、軸zのピボット連接により組み立てられた2N+2個のバーからなるところのN個の変形可能な菱形のアッセンブリから成っている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項11】
前記近位バー(1,2)は、全てメインフレーム上に位置づけられる3つのアクチュエータによって作動される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項12】
少なくとも1つの中間フレームを備えており、
前記近位バー(1,2)は、全てがメインフレーム上に位置づけられるアクチュエータによって制御される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項13】
前記変形可能なアッセンブリの平面に垂直な軸zに沿ったロボットアームの高さが、第1のアクチュエータ(28)により駆動されるねじ付きロッド(27)によって作動されるプレート(26)により調節される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項14】
前記第1の近位バー(1)は、アクチュエータ(29)によりシャフト(30)を介して駆動され、前記第2の近位バー(2)は、別のアクチュエータ(32)により、互いに対して自由にスライド可能である一連の中空シャフト(40~42)を介して角度をつけて駆動される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項15】
前記第1の近位バー(1)は、アクチュエータ(29)によりシャフト(30)を介して駆動され、前記第2の近位バー(2)は、別のアクチュエータ(32)により、第2のシャフト(31)と、スライド式歯付きピニオン(33)及び(34)またはスライド式歯付きベルトのシステムとを介して角度をつけて駆動される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項16】
第1のアクチュエータ(32)が、メインフレーム(25)に固定されて、シャフト(31)を介して中間フレーム(35)の方位制御を保証し、その結果として近位バー(2)の方位制御を保証し、
前記メインフレーム(25)上または前記中間フレーム(35)上に固定された第2のアクチュエータ(29)は、シャフト(30)を介して近位バー(1)の方位を制御する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項17】
第1のアクチュエータ(32)が、メインフレーム(25)に固定されて第1の中間フレーム(35)の方位制御を保証し、
前記第1の中間フレーム(35)上に配置されたスライド連接部は、前記変形可能なアッセンブリ(100)により画定される平面に垂直な軸zに沿った配置を保証し、
第2の中間フレーム(23)は、前記変形可能なアッセンブリ(100)の近位端を支持し、
前記第2の中間フレーム(23)上または前記第1の中間フレーム(35)上または前記メインフレーム(25)上に固定された第3のアクチュエータ(29)は、シャフト(30)を介して近位バー(1)の方位を制御し、他方で、近位バー(2)は、前記第2の中間フレーム(23)に対し固定されたままである、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項18】
前記変形可能なアッセンブリの近位バー(1,2)は、スライド連接部(36)および第1のアクチュエータ(28)により並進を制御される中間フレーム(23)上に組み立てられており、前記近位バーの方位は、メインフレーム上または中間フレーム(23)上に固定された2つのアクチュエータ(29)および(32)によって制御される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項19】
前記変形可能なアッセンブリは、ピボット軸(11~16)により連結されたバー(3~6)で形成され、前記変形可能なアッセンブリの近位関節(11,13)間の相対距離は、アクチュエータによって制御され、前記ピボット軸(11~16)に垂直な平面における前記変形可能なアッセンブリの方位は、方位をアクチュエータにより制御される中間フレーム(35)に依存する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項20】
前記多関節なバーは、ピボット軸により連結された複数のバーで形成される変形可能なアッセンブリを有し、前記変形可能なアッセンブリの遠位端は、把持部材またはツール(20)を支持し、前記変形可能なアッセンブリの近位端は、二つのバー(1)及び(2)から成っており、これら二つのバーの近位回転軸(17)および(18)は平行だが一致せず、且つそれら二つのバーの角度位置が2つのアクチュエータにより制御される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項21】
ロボットアームの遠位端(20)は、アクチュエータと、軸zに沿ったピボット連接部とを備えており、把持手段又はツールを支持する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項22】
ロボットアームの遠位端(20)は、少なくとも1つの電動関節を備えるリストを備えており、把持手段又はツールを支持する、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項23】
ロボットアームの遠位端(20)は、軸zに沿って連節されると共に機械的インタフェースを支持する追加アーム(51)の方位の制御を可能にするアクチュエータを備えている、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項24】
キャリッジまたは移動ロボット上に組み立てられるメインフレームを備える、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項25】
地面に固定されるメインフレームを備える、請求項1に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限られた空間内で、たとえば、アイテムの表層とアイテムコンテナより上に位置を定められる棚または表面との間に残るスペースがほとんどない深いラックまたは棚の中で、アイテムを把持しかつ移動させるための、すなわち、製造タスク用のツールを操作するためのロボットアームの分野に関する。
【0002】
本発明は、物体把持のアプリケーション(用途)に関し、特に、ロジスティクス、及び、倉庫もしくは貯蔵ラック、または、工業部品を保管する若しくはパレタイズ/デパレタイズ等するためのラックに関するが、これらに限定されない。
【0003】
倉庫は、製品をクライアント向けに出荷するまで保管することを目的とするロジスティクスビルであることが想起される。倉庫内で実装される主たるプロセスは、受注、在庫の補充、注文品の用意、出荷および在庫の管理である。概して、本発明は、製品が、別の場所において、利用可能なスペースが高さおよび幅の双方で極めて制限され得る、または制約され得る状態で回収されかつ置かれなければならない状況、かつ逆に、深さが重要となり得る状況に関する。
【0004】
ロジスティクス用途の場合、倉庫における受入れの流れは、概して、物品が、物品を搬入口(プラットホーム)上へ置く大型トラックによりパレットに載って配送されることから成る。
【0005】
オペレータは、大型トラックからパレットを降ろし、次にこれをパレットの待機所となるラック上に保管する。出荷の流れは、同種のパレット(パレットごとに単一の参照)、または異なるタイプの参照製品が集められる異種のパレットから成る。したがって、概してラック下の地面上の場所に置かれる使用中の複数のパレットから、様々な製品が回収されなければならず、この作業を「ピッキング」と呼ぶ。パレットが空のときは、補給要求が起こされ、オペレータは、フォークリフトを操作して高所のパレットを回収し、ラック下の地面上の場所に置く。
【0006】
本発明は、より具体的には、注文品を用意するためのステーション(「ピッキングステーション」とも呼ばれる)を備えるアッセンブリ、具体的には、但し排他的ではなく、それが、貯蔵ラックと注文品を用意するための1つまたは複数のステーションとを備える自動貯蔵システムの一部を形成する場合のアッセンブリ、に関する。
【0007】
本発明は、あらゆるタイプの注文品の用意に適用可能であり、とりわけ、下記に適用可能である:
* 貯蔵コンテナ内の製品をサンプリングすることによる注文品の用意: オペレータ(またはオートマトン、すなわちロボット)は、出荷されるべき荷物(出荷用コンテナとも呼ばれる)ごとに、出荷用コンテナ内に集めかつ出荷されるべき荷物の中に一纏めにして入れなければならない製品タイプごとの数量を示すアイテムリストを(紙上、端末画面上または音声形式で)受け取る、および、
* 製品を含む貯蔵コンテナ自体をパレタイズすることによる注文品の用意: オペレータ(またはオートマトン)は、出荷されるべきパレット(出荷用コンテナとも呼ばれる)ごとに、彼らが集めかつ出荷されるべきパレット上に積み下ろさなければならない貯蔵コンテナタイプ(たとえば、箱)ごとの数量を示すアイテムリストを(紙上、端末画面上、音声形式、またはオートマトンの場合には電子化されたタスク形式で)受け取る。
【0008】
概して、注文品を用意するためのステーションとしては、移動ステーションおよび固定ステーションの2種類に区別される。
【0009】
移動ステーションは、「人から商品へ」の原則を実施するものであり、この原則によれば、用意する者がサンプリング場所へ移動され、そこで、注文された数の製品の数を取得する。
【0010】
固定ステーションは、「商品から人へ」の原則を実施するものであり、この原則によれば、各々が所与のタイプの製品を入れている複数の貯蔵コンテナ(たとえば、箱またはプレート)が、貯蔵マガジンから(キャリッジまたはシャトルと呼ばれる移送デバイス上へ)自動的に取り出されて、用意する者の前または近くに到着し、用意する者は、これらの貯蔵コンテナの各々から注文された数の製品を取り出さなければならない。
【0011】
移動ステーションと固定ステーションとの間のこの区別は、パレチゼーション(palletization、パレットへ載せること)の場合にも当てはまる、すなわち、用意する者は、出かけて行って輸送されるべきパレット上へ荷降ろしされる貯蔵コンテナを探すために移動するか、これらの貯蔵コンテナが(たとえば、自動貯蔵/回収システムにより)用意する者のところへ自動的に持ってこられる。
【0012】
本発明は、ロボットアームのフレームが地面に固定されている場合に注文品を用意するための固定ステーションの事例でも、ロボットアームのメインフレームがキャリッジまたは移動ロボット上に固定されている場合の移動ステーションの事例と全く同じように使用されることが可能である。
【0013】
本明細書本文において、エレベータとは、1つまたは複数の積荷(貯蔵または出荷用コンテナ)を所与のレベル(高さ)まで持って行き、かつそれを別のレベルに置くための任意のシステムを意味する。
【0014】
貯蔵倉庫は、概して、アイテムが貯蔵されるラックの列で構成される。
【0015】
地上のラック下段は、管理命令に従ってアイテムを取り出すためのものである。「ピッキング」と呼ばれるこの作業は、手動で行われ、または、移動キャリッジに取り付けられたロボットアームを用いて行われることが多くなっている。
【0016】
また、本発明は、ツールの導入および位置合わせがある方向における大きい動作振幅を許容せず、一方でこの制限付き方向に対して垂直な平面におけるより大きい動作振幅を要求する、制限された空間における製造タスク用ツールの動きなどの他の適用分野にも関する。これは、たとえば、2つの表面、たとえば地上に置かれた車両のシャーシの下面と地面との間への介入、互いに近接した2つのプレート間への介入、他である。
【0017】
製造タスクは、たとえば、塗装、ねじ締め、溶接、トリミング、リベット留め、機械加工、3D印刷(付加製造)、エッチング、レーザカット、電食、他である。
【背景技術】
【0018】
移動ロボットは、特許文献1に記載の従来技術により知られており、当該文献に係る特許出願は、車台と車台へ取り付けられるロボットアームとを備えるロボットアーム、ならびに物品の暫定的貯蔵用に設計される物品サポートを含みかつ物品サポートを移送するように設計される自己誘導車両を含むロジスティックシステム、ならびに対応する移動ロボットについて記載している。
【0019】
特許文献2は、航空輸送中の荷物の迅速な積込みを目的とする、ロボットによる積込みおよび移送ダブルアームを開示している。このロボットアームは、機械式アーム、ディスク機構およびガイドレール機構で構成されるクランプモジュールと、移送用に使用されるコンベヤベルトモジュールとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開WO2018/086748号パンフレット
【特許文献2】中国特許出願公開(CN)106112952号A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
先行技術の解決策には、様々な欠点がある。
【0022】
第1に、ロボットアームは、多くの場合、把持されるべきコンテナまたはアイテムの上部と次の棚との間の高さが僅か数センチでしかない可能性がある、極めて限られた空間内で動作することができなければならない。また、アームは、高さが等しくないアイテムの積層間に横方向で位置合わせされることも可能でなければならず、横方向の関節運動が制限される。
【0023】
さらに、シリーズタイプ(直列型)のロボットアームは、概して、アームの長さ全体に延びる電動関節を必要とする。これは、堅牢でかさばるアーキテクチャを必要とする、かなりの移動可能塊体によって運ばれる(又は支持される)。
【0024】
最後に、シリーズタイプの保持アームの大部分が運ぶ有効積載量は、概して、それらの可動塊体に対して極めて低い。輸送されるべき積載量は、数十キログラムと比較的大きくなる可能性があり、これは、強力かつ重いモータの使用を必要とし、よって、エネルギーコストが多大となる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
これらの欠点を克服するために、本発明は、その最も一般的な意味において、多関節アームを備えたロボットシステムに関するものであり、次の点を特徴とする、即ち、
前記多関節アームが、少なくとも1つの変形可能な構造体を形成すべく平行なピボット軸により連接される複数のバーから成る変形可能なアッセンブリを有しており、
前記変形可能なアッセンブリの遠位端は、機械的インタフェースを支持し、
当該システムは更に、前記バーのうちの2つを回転させる2つのアクチュエータを備え、当該システムは更に、前記ピボット軸に平行な方向に前記変形可能なアッセンブリの並進運動を制御する第3のアクチュエータを備えている。
【0026】
「機械的インタフェース」とは、本特許の意味するところにおいて、ロボットシステムにより移動される、かつ移動されるべき物体のクランプまたは把持機構などのツール、または製造作業を実行するためのツールを結合するために提供される、手段を意味する。
【0027】
「バー」とは、本特許の意味するところにおいて、任意の横断面で、その長さより厚さが少なく、長くて剛性のある部分又は部品を意味する。
【0028】
変形可能なアッセンブリは、変形可能な四辺形から成り、それは好ましくは変形可能な平行四辺形であり、さらにより好ましくは変形可能な菱形である、。
【0029】
単独または互いに組み合わされた実施形態の変形例によれば、本発明は、以下のような特徴によっても特徴づけられる:(即ち)
- 前記多関節アームは、少なくとも1つの変形可能な構造体を形成すべく平行なピボット軸により連接される複数のバーから成る変形可能なアッセンブリを有し、前記変形可能なアッセンブリの遠位端(先端)は、機械的インタフェースを支持し、前記変形可能なアッセンブリの近位端(基端)は、その角度位置が2つのアクチュエータにより制御される2つの近位バーから成り、前記近位端は、第3のアクチュエータによって、ピボット軸に平行する方向へ並進運動されることが可能であること。
- 前記変形可能なアッセンブリは、共通のバーを共有する少なくとも2つの連続する変形可能な平行四辺形から成ること。
- 前記変形可能なアッセンブリは、共通のバーを共有する、中心ピボットにより連接され、かつ複数のバーにより画定される平面に垂直な軸zのピボット連接により組み立てられる6つのバーから成る、2つの変形可能な菱形から成ること。
- 前記変形可能なアッセンブリは、共通のバーを共有する、中心ピボットにより連接され、かつ軸zのピボット連接により組み立てられる2N+2個のバーから成る、N個の変形可能な菱形のアッセンブリから成ること。
- 前記近位バーは、全てがメインフレーム上に位置づけられる3つのアクチュエータによって制御されること。
【0030】
- 前記ロボットシステムは、少なくとも1つの中間フレームを備え、かつ前記近位バーは、全てがメインフレーム上に位置づけられるアクチュエータによって制御されること。
- 前記変形可能なアッセンブリの平面に垂直な軸zに沿ったロボットアームの高さは、第1のアクチュエータにより駆動されるねじ付きロッドによって作動されるプレートで調整されること。
- 前記第1の近位バーは、アクチュエータによりシャフトを介して駆動され、かつ前記第2の近位バーは、別のアクチュエータにより、互いに対して自由に滑動することも可能である一連の中空シャフトを介して角度をつけて駆動されること。
- 前記第1の近位バーは、アクチュエータによりシャフトを介して駆動され、かつ前記第2の近位バーは、別のアクチュエータにより、第2のシャフトおよび歯付き滑動ピニオンまたは歯付き滑動ベルトのシステムを介して角度をつけて駆動されること。
【0031】
- 第1のアクチュエータが、メインフレームに固定されて第1の中間フレームの方位制御を保証し、第1の中間フレーム上に置かれる電動スライド連接部は、前記変形可能なアッセンブリにより画定される平面に垂直な軸zに沿った配置を保証し、第2の中間フレームは、前記変形可能なアッセンブリの近位端を支持し、第2の中間フレーム上または第1の中間フレーム上またはメインフレーム上に固定される第3のアクチュエータは、近位バーの方位をシャフトを介して制御し、近位バーは、第2の中間フレームに対して固定されたままであること。
- 第1のアクチュエータは、メインフレームに固定されて、シャフトを介する中間フレームの方位制御を保証し、かつ結果的に、2つの近位バーのうちの一方の方位制御を保証し、メインフレーム上または中間フレーム上に固定される第2のアクチュエータは、第2の近位バーの方位をシャフトによって制御すること。
- 前記変形可能なアッセンブリの(これらの)近位バーは、スライド連接部および第1のアクチュエータによりzに沿った並進を制御されて中間フレーム上へ組み立てられ、前記近位バーの方位は、メインフレーム上または中間フレーム上に固定される2つのアクチュエータによって制御されること。
- 前記変形可能なアッセンブリの(これらの)近位バーは、スライド連接部および第1のアクチュエータにより並進を制御されて中間フレーム上へ組み立てられ、前記近位バーの方位は、中間フレーム上に固定される2つのアクチュエータによって制御されること。
- 前記変形可能なアッセンブリは、ピボット軸により連接される複数のバーで形成され、前記変形可能なアッセンブリの近位関節間の相対距離は、アクチュエータによって制御され、ピボット軸に垂直な平面における前記変形可能なアッセンブリの方位は、方位をアクチュエータにより制御される中間フレームに依存すること。
【0032】
- 前記多関節バーは、ピボット軸により連接される複数のバーで形成される変形可能なアッセンブリを有し、変形可能なアッセンブリの遠位端(先端)は、把持部材またはツールを支持し、変形可能なアッセンブリの近位端(基端)は、その近位回転軸が平行で合致しない、かつその角度位置が2つのアクチュエータにより制御される、2つのバーから成ること。
- ロボットアームの遠位端は、軸zに沿ってモータとピボット連接部とを備え、かつ把持手段またはツールを支持すること。
- ロボットアームの遠位端は、少なくとも1つの電動関節を備えるリストを備え、かつ把持手段またはツールなどの機械的インタフェースを支持すること。
- ロボットアームの遠位端は、軸zに沿って連節される追加アームの方位制御を可能にするモータを備え、かつ機械的インタフェースを支持すること。
- ロボットシステムは、キャリッジまたは移動ロボット上に組み立てられるメインフレームを備えること。
- ロボットシステムは、地面に固定されるメインフレームを備えること。
【0033】
本発明は、実施の非限定的実施例を示す添付の図面を参照して以下の説明を読めば、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第1の実施形態変形例を示す略斜視図である。
【
図2】共通のバーを共有する2つの変形可能な菱形を含む、本発明の第2の変形例を示す略上面図である。
【
図3】同じフレーム上に固定された3つのギヤ付きモータを実装する、ロボットアームを駆動するためのメカニズムを備えると共に、2つのギヤ付きモータが、同じ軸上に位置づけられる変形可能なアッセンブリを作動させる、本発明の第3の実施形態変形例を示す略図である。
【
図4】変形可能なアッセンブリの近位端の関節軸がもはや同軸ではない、本発明によるロボットアームの動力学の代替変形例を示す略図である。
【
図5】本発明に従うロボットアームの駆動機構の第2の実施形態変形例を示す略図(その1)である。
【
図6】本発明に従うロボットアームの駆動機構の第2の実施形態変形例を示す略図(その2)である。
【
図7】本発明に従うロボットアームの駆動機構の第3の実施形態変形例を示す略図である。
【
図8】本発明に従うロボットアームの駆動機構の第4の実施形態変形例を示す略図である。
【
図9】本発明に従う変形可能なアッセンブリの駆動機構の第5の実施形態変形例を示す略図である。
【
図10】本発明に従うロボットアームの駆動機構の第6の実施形態変形例を示す略図である。
【
図11】本発明に従うロボットアームの駆動機構の第7の実施形態変形例を示す略図である。
【
図12】遠位端に、ギヤ付きモータにより制御され、かつその遠位端で把持手段またはツールを支持する追加のアームが追加される場合の、本発明の動力学を示す略図である。
【
図13】本発明の特定の一変形例の動力学を示す略図である。
【
図14】本発明の特定の一変形例の動力学を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[本発明の背景]
本発明によるロボットマニピュレータは、次の3つの自由度を有する:
- 遠位端に、ツールまたはグリッパ(20)などの機械的インタフェースを有する変形可能な多関節アッセンブリによって形成されるアーム(100)の平面内での運動、
- サポート(200)に対する、特にアーム(100)に垂直な軸に沿った運動。
【0036】
本発明に従うロボットマニピュレータは、下記の利点を提供するアーキテクチャを有してなる、即ち、
- 多大な積載量を取り出すことができる。
- 消費エネルギーが極めて少なく、特に、垂直方向の並進が不可逆的なねじ/ナットシステムによって提供される場合、重い物体を保持するための消費エネルギーは事実上ゼロであり、よって、マニピュレータは、マニピュレータの安全性を保証するための制動装置を必要としない。アームは事実上、先行技術に従うマニピュレータであれば制動装置を必要とする(ところの)、落下がユーザにとってリスクとなる可能性もある多大な載荷を運ぶべく特に意図されている。
- 複数のバー(1~4)のうちの少なくとも2つのバー(1,2)、好ましくは全てのバーは、各々、スペーサにより連接される2つのプロファイルのアッセンブリから成ることが可能であり、これにより製造コストが低減され、かつ材料の使用が最適化される。
- バー(1)の2つのプロファイルは、別のバー(2)の2つのプロファイルによりピボット軸と平行方向に包囲されることが可能であって、この新しい機械的設計により、遠位端に多大な垂直載荷が加えられた場合の曲げ力に起因する平坦に変形可能な機構の変形を制限し、かつこの機械的設計により各バーの2つのサポート間に達成される多大な空間によって、近位バーのピボット連接サポートの長さを低減することが可能となり、よって、ブレーシング現象(bracing phenomena)が制御され、かつ各サポートにかかる反力が、先行技術における同等の有効積載量に対するものより遙かに低くなる。
- U字形のメインフレームは、その側枝の各々が、平行なピボット軸の力を(直接または間接的に)吸収して、これが剛性の向上を確実にし、これにより、遠位端に関する遙かに高い精度が得られ、遠位端上の等価の垂直載荷によるもののように中間フレームを動かすこと、または直に機械的インタフェースを動かすことが可能となり、垂直スライド連接部における曲げ力から生じる中間フレームの変形が、先行技術によるマニピュレータの場合より小さくなる。
- メインフレームおよび、前記アクチュエータのうちの少なくとも2つは、前記メインフレーム上に配置され、よって、マニピュレータの動的性能が向上し、メインフレームが少なくとも2つのアクチュエータを支持する場合、「有効質量」/「移動質量」比は、先行技術によるものより遙かに好ましい。
- 作業平面におけるアーム(100)の端が到達可能なゾーンは、通常の擬人化されたロボットアームに比較して多大である。
- アーム(100)が折り畳まれる際に、嵩が減る。
- デバイスの制御は単純であり、逆幾何学的モデルを解析的に解くことができる。
【0037】
特に、このデバイスは、その作業空間が拡張されるという事実、及び、ピックアンドプレース・タスクを実行するための空きスペースが縮小されているゾーンに配備可能であるという事実により、パレタイズ/デパレタイズ作業の実行に極めて有利である。
【0038】
特に、当該アームは、広い作業空間、その操作性および低いエネルギー消費に起因して移動ロボットから実行される必要がある「ピックアンドプレース」作業の実行に、極めて有利である。
【0039】
また、本発明に従うこのデバイスは、アーム(100)の遠位端に固定されるツールの制限された空間における、たとえば利用可能な高さが低く、有効面上でのツールの位置合わせを精密かつ再生可能的に行なう必要がある困難な状況で介入するための運動に特に適している。
【0040】
当該アーム(100)により支持されるツールは、塗装用途用のスプレーノズル、付加印刷ヘッドまたは機械加工ツールもしくは組立てツールであり得る。
【0041】
[単純な事例]
図1は、パンタグラフ形の多関節アーム(100)が変形可能な四辺形の範囲内におさめられている、本発明の動力学を示す略図である。
【0042】
パンタグラフは、変形可能な平らな四辺形を形成するためにパンタグラフにより画定される平面に垂直なピボット関節(10~13)によって連接される、4つの剛体すなわち「バー」(1~4)から成る。
【0043】
本明細書において、「パンタグラフ」は、平面に垂直な軸のピボット連接により組み立てられる、一連の変形可能な平坦な四辺形を画定するバーの多関節アッセンブリ、または、同一平面上の連続する変形可能な四辺形のアッセンブリ、を意味する。後者の場合、連続する2つの四辺形は、共通のピークを有し、かつこの共通のピークに対して旋回する2つの共通するバーを共有する。
【0044】
「近位」(proximal)とは、サポート(200)に最も近いアーム(100)の部分を意味し、「遠位」(distal)または「末端」(terminal)とは、その運動が制御される機械的インタフェース(20)が位置決めされるところの最遠部分を意味する。
【0045】
3つのピボット関節(11~13)は受動的であり、ピボット関節(10)は、電動化され、かつ近位バー(1,2)の各々の角度運動を個々に独立制御する2つのアクチュエータを統合する。変形可能な四辺形の近位端は、平面に垂直な軸(7)に沿って並進的に移動され、変形可能な四辺形の遠位端の軸zに沿った高さでの位置決めを可能にする。アーム(100)は、その遠位端に、把持手段(20)、たとえば吸着カップまたはツール、を有する。
【0046】
2つの近位バー(1,2)は、アクチュエータにより独立して回動される。本明細書において、「アクチュエータ」とは、ワイヤまたは無線周波数により伝送される電気信号で制御される、概して360゜未満の角度的運動を保証するデバイスを意味する。
【0047】
非限定的に、回転またはリニア電気モータは、本特許が意味するところのアクチュエータ、具体的には電磁型、油圧型、空気圧型、圧電型のアクチュエータ、電磁アクチュエータ、ギヤ付きモータと見なされる。
【0048】
四辺形が菱形を形成していて、2つのバー(1,2)が同じ角度で反対方向へ動かされるとき、遠位端(20)は、水平面と軸(10)および軸(12)との交点を結ぶ直線軌道上を移動し、これにより、把持手段(20)を把持されるべきアイテムの上に位置決めすることが可能となる。
【0049】
近位バー(1)の運動角度が他方の近位バー(2)の運動角度と異なる場合、遠位端(20)は、横方向成分による湾曲運動に従って移動する。
【0050】
したがって、近位バー(1,2)の角度を縮小された空間内で低い高さに調整することにより、作業面を把持手段またはツールによってスキャンすることが可能である。
【0051】
図2は、パンタグラフが、軸zの中心ピボット(12)により連接される2つの隣接する変形可能な四辺形(110,120)、この場合は菱形、を含む、本発明の動力学を示す略図である。運動連鎖は、軸zのピボット連接部により組み立てられる6つのバー(1~6)から成り、バー(1,2,5,6)は、同じ長さLであり、変形可能な2つの四辺形(110,120)に共通するバー(3および4)は、長さ2Lである。
【0052】
アッセンブリは、同一の2つの菱形に従って変形され、該変形は、バー(1)およびバー(2)がメインフレームの長手方向軸Xに対して成す角θ1および角θ2の機械的制御によって制御される。
【0053】
当然ながら、パンタグラフの四辺形単位の数は、増やすことができる。
【0054】
フラット機構の代替バージョンにおいて、パンタグラフの運動連鎖の折り畳みは、軸(7)上の回転機構と、パンタグラフの運動連鎖の任意の2点間に挿入される、例えば、モータ機構、およびねじ、およびねじ/ナットシステムにより得られるピボット(11,13)間の距離の制御によって慎重に選択される並進機構とを関連付けることにより、達成されることが可能である。後続の変形例で詳述するように、2つの近位バー(1および2)を取り外すことさえも可能である。
【0055】
[本発明の操作性]
ロボットマニピュレータ・アームは、運動連鎖と制御システムとから成る。
【0056】
運動連鎖は、下記の2つの機能性を保証する:
1)xyzで参照される並進空間の3自由度に従った機械的インタフェースの位置合わせ。
2)この機械的インタフェースを支持する電動リストが運動連鎖の端へ追加される場合の、物体の回転空間の3自由度に従った機械的インタフェースの方位。
【0057】
機械的インタフェースとは、ツール、リスト、グリッパまたはエフェクタを意味する。
【0058】
第1の機能は、以下の原理を用いて達成される:
a)運動連鎖の遠位端のzにおける位置合わせを可能にする、軸zに沿ったフラットパンタグラフ型機構の並進。
b)2つの第1のバー1および2の回転の制御、およびその最も単純なバージョンにおける4つのバー、その一般的なバージョンにおける6つのバー、およびより展開されたバージョンにおける2N個のバーから成る運動連鎖によって、終端の、xy平面における位置合わせを可能にするフラットパンタグラフ型機構。
【0059】
[実施形態変形例]
図3は、2つのバー(1,2)が、同じフレーム(25)上に位置合わせされた2つのモータ(29,32)によって制御される実施形態の一変形例を示す。このフレーム(25)は、メインフレームとも、固定フレームとも呼ばれる。これは、地面に固定されることもあれば、キャリッジまたは移動ロボットに固定されることもある。
【0060】
アーム(100)の高さは、ねじ付きロッド(27)で作動されるプレート(26)によって調整され、ねじ付きロッド(27)は、第1のギヤ付きモータ(28)により、ねじ/ナット機構によって駆動される。プレート(26)は、シャフト(30)上を自由に滑動(スライド)し、かつねじ付きロッド(27)によって拘束されるという事実により、平面xyにおけるその方位(又は配向)は、一定であって、長手方向軸を提供する。
【0061】
第1のバー(1)は、第2のギヤ付きモータ(29)により、シャフト(30)を介して駆動される。説明している実施例において、このシャフト(30)は、第1のバー(1)と一体であって、フレーム(25)に付けられた基準点に対するその角度運動を駆動する。アーム(100)のサポートは、機械的連接がスロットまたはピン/溝デバイスによって、またはシャフト(30)用に非円形の断面を用いることによって、または他の任意の同等デバイスによって拘束されるという事実に起因して、スライド連接部(30)によりシャフト(30)に沿って滑動(スライド)することができる。シャフト(30)は、スロット付きフランジ(40)まで延びて、プレート(26)の端の位置合わせを保証し、第2のバー(2)および中空シャフトセット(41~42)がこのシャフト(30)上を自由に滑動するように支持する。
【0062】
第2のバー(2)は、第3のギヤ付きモータ(32)により、第2のシャフト(31)を介して角度的に駆動される。この第2のシャフト(31)は、一連の中空シャフト(40~42)が、当接システムにより制限される最大軸方向関節の限界内で第2のシャフト(31)と第2のバー(2)との間を軸方向に自由に滑動することによって、バー(2)と回転が一体化し、複数の中空シャフトの相対的回転は、ピン/溝システム、スロット、非円形断面の使用、または回転なしの並進を可能にする他の同等デバイスによって防止される。最後の中空シャフト(42)は、第2のバー(2)上へ、ねじまたは他の同等の機械的デバイスによって固定される。異なる中空シャフトの累積軸方向関節の合計は、終端(20)が垂直軸上を所望される距離に応じて移動できるように計算される。
【0063】
[2つの非同軸近位回転軸を有する実施形態変形例]
図4は、フラット機構の近位作動軸がもはや同軸ではない、本発明に従うロボットアームの動力学の代替変形例を示す略図である。
【0064】
ギヤ付きモータ(29)は、シャフト(17)を回転させる。バー(1)は、スロット付きまたは溝付きシャフトであるシャフト(17)と一体式に回転する。
【0065】
ギヤ付きモータ(32)は、シャフト(18)を回転させる。バー(2)は、スロット付きまたは溝付きシャフトであるシャフト(18)と一体式に回転する。
【0066】
ギヤ付きモータ(28)は、シャフト(7)を、たとえばねじ/ナットシステムによって回転させ、プレート(26)の垂直運動を生じさせる。プレート(26)は、シャフト(17)および(18)に対し、これらの2つのシャフトに対して回転を拘束されることなく、自由に滑動(スライド)して並進することができる。この変形例では、機械的実装が単純化され、よって中空シャフトのアッセンブリを必要としない。しかしながら、ロボットの関節座標θ1、θ2、zと作業座標x、y、zとをリンクする直接および逆幾何学的モデルを取得することはより困難であり、作業空間は第1の変形例より縮小される。
【0067】
[アームのうちの1つに歯付きピニオンによるトルク伝達を含む実施形態変形例]
図5および
図6は、同じフレーム(25)上に固定される3つのギヤ付きモータ(28,29,32)を備える、本発明に従うロボットアームの駆動機構の第2の実施形態変形例を示す2つの略図である。中間フレーム(23)は、ねじ/ナットシステムを作動させるギヤ付きモータ(28)によって、zに沿った並進を駆動される。この中間フレーム(23)は、移動フレームとも呼ばれる。パンタグラフの近位バー(1,2)を作動させる2つのギヤ付きモータ(29)および(32)は、2つの異なる軸上に位置づけられ、パンタグラフの2つのアクティブなピボット連接部は、提案しているピニオンシステム(33,34)によって同軸のままである。近位バー(1)は、ギヤ付きモータ(32)によりスロット付きシャフト(31)を介して制御され、一方で、近位バー(2)は、ギヤ付きモータ(29)によりスロット付きシャフト(30)および2つの歯付きピニオン(33、34)を介して制御される。近位バー(2)は、軸(31)上を自由に滑動して並進しかつ回転する。歯付きピニオン(34)は、スロット付きシャフト(30)沿いに自由に滑動して並進するが、このシャフトに対する回転は拘束される。歯付きピニオン(33)は、スロット付きシャフト(31)に沿い、このシャフトに対して回転を拘束されることなく滑動し、ピニオン(33)は、ねじ型または同等の機械的固定によって近位バー(2)と一体である。スペーサ(21)は、ピニオン(34)の位置(合わせ)を、ピニオン(33)が歯の永続的接触を可能にする同じ高さに拘束する。中間フレーム(23)は、シャフト(30)および(31)上を自由に滑動して並進かつ回転し、その内幅は、機械的エレメント(アーム、ピニオン、スペーサ、他)の配置の一貫性を保証する。ギヤ付きモータ(28)により制御されるねじ付きシャフト(27)は、ねじ/ナットシステムによるプレートの垂直運動を保証することを可能にする。
【0068】
図7は、パンタグラフをzに沿って駆動する中間フレーム(23)が、スライド連接部および固定フレーム(25)と一体のリニアモータ(24)によって並進運動される、本発明に従うロボットアームの駆動機構の第3の実施形態変形例を示す略図である。
【0069】
バー(1)は、ギヤ付きモータ(32)によりスロット付きシャフト(31)を介して制御され、一方で、バー(2)は、ギヤ付きモータ(29)によりスロット付きシャフト(30)および2つの歯付きピニオン(33,34)を介して制御される。
【0070】
[固定フレームから回転を制御される中間フレームを備える変形例]
図8は、中間フレーム(35)が回転運動され、かつパンタグラフを作動する2つのギヤ付きモータ(29)および(32)がメインフレーム(25)上へ位置づけられる、本発明に従うロボットアームの駆動機構の第4の実施形態変形例を示す略図である。
【0071】
ギヤ付きモータ(28)は、中間フレーム(35)と一体であって、その関連するねじ付きシャフト(27)を介して、バー(2)とねじ付きシャフト(27)との間のねじ/ナットシステムによるバー(1)およびバー(2)のアッセンブリのzに沿った位置の制御を可能にする。シャフト(27)およびシャフト(30)は、バー(2)の中間フレーム(35)に対する回転の遮断を可能にし、よって、バー(2)の方位は、シャフト(30)とシャフト(31)とが同軸であるという事実に起因して、ギヤ付きモータ(32)により制御される。しかしながら、所定の変形例では、シャフト(30)およびシャフト(31)が同軸でないことがあるが、軸同士は平行のままである。
【0072】
ギヤ付きモータ(32)は、固定フレーム(25)に固定されていて、その出力シャフト(31)の中間フレーム(35)への固定によって中間フレーム(35)の方位制御を保証する。
【0073】
固定フレーム(25)と一体であるギヤ付きモータ(29)は、バー(1)の絶対方位をスロット付きまたは溝付きシャフト(30)によって制御することを可能にする。所定の変形例において、中間フレーム(35)と一体であり得るこのギヤ付きモータ(29)は、バー(1)のバー(2)に対する相対方位の制御を可能にする。
【0074】
図9は、本発明に従うロボットアームの駆動機構の第5の実施形態変形例を示す略図である。
【0075】
第1のアクチュエータ(32)は、軸zに沿って旋回する第1の中間フレーム(35)の、メインフレーム(25)に対する方位(又は配向)を制御する。この第1の中間フレーム(35)は、回転運動されて、第2のフレーム(23)を移動させる。この第2のフレーム(23)は、リニアモータ(24)によりスライド連接部を介して、第1の中間フレーム(35)に対して並進運動される。これにより、パンタグラフの2つの近位バー(1、2)の相対方位の制御を可能にするギヤ付きモータ(29)を移動させる。
【0076】
フレーム(23)に固定されるギヤ付きモータ(29)は、バー(1)のバー(2)に対する相対方位を、近位バー(1)と一体であるシャフト(30)によって制御することを可能にし、近位バー(2)は、フレーム(23)に対して固定されている。ギヤ付きモータ(32)は、中間フレーム(35)の回転をシャフト(31)によって制御する。中間フレーム(23)の並進運動は、
図8と同じ原理により、ねじ/ナットシステム、シャフト(27)およびギヤ付きモータ(28)により制御されることも可能である。
【0077】
第5の変形例の実施形態の、第5の変形例との相違のみを記述する変形例(不図示)によれば、第2のアクチュエータ(29)が第1の中間フレーム(35)上またはメインフレーム(25)上に固定される実施形態が提供される。
【0078】
概して、先行する変形例で提案しているねじ/ナットシステムは、ねじ/ナットシステムの不可逆性により、安全性の観点から興味深いものであり、モータにエネルギーが供給されなくなった場合に機械的ブレーキを実装する必要を回避する。アームは、多大な載荷を移動させるよう意図されており、載荷の落下は、ユーザもしくは動かされるべき製品、または機械システム自体にとってリスクとなる可能性もあることから、このような偶発的事態については、慎重に考慮されなければならない。
【0079】
しかしながら、別のボールねじ型の並進システム、またはスライド連接部上のリニアモータを実装して、zに沿ったアームの並進を管理することができる。
【0080】
このマニピュレータロボットの好ましい設置方向は、方向zが垂直軸に一致するものである。
【0081】
したがって、重い載荷を水平運動で移動させる際には、ギヤ付きモータ(28)は不要であって、ギヤ付きモータ(29,32)は、単に、同じ軌跡を実行する擬人化型ロボットにより支持されるトルクに対してより低いトルクを支持する。エネルギー消費量は、大幅に低減される。
【0082】
機械的構造は、高質量の物体をピック/プレースするタスク中に発生する多大な静的かつ動的な力をサポートするように設計される。
【0083】
バー(1,2)の断面の慣性モーメントは、多大な載荷を支持することができるように計算され、特に、
図9に略示されているものなどのアームの幾何学的形状は、最適なサイジング(sizing)を可能にする。バー(1,2)のこの構造は、たとえばスペーサにより周期的に連接される2つのプロファイルによって形成される標準コンポーネントを使用し、よって、完成した機構の曲げおよび捻れに対する高い抵抗をアッセンブリによって達成することを可能にする。
【0084】
[固定フレームに対する並進を制御される中間フレームを備えた実施形態変形例]
図10は、本発明に従うロボットアームの駆動機構の第6の実施形態変形例を示す略図である。
【0085】
パンタグラフの近位バー(1,2)は中間フレーム(23)から関節で繋げられる。
【0086】
パンタグラフをzに沿って駆動する中間フレーム(23)は、スライド連接部(36)およびねじ/ナット型の駆動装置によって並進運動され、メインフレーム(25)に固定されるギヤ付きモータ(32)は、スロット付きシャフト(31)によってパンタグラフの第1の近位バー(1)の制御を可能にし、一方で、中間フレーム(23)に組み込まれた第2のギヤ付きモータ(29)は、ギヤ(33)およびギヤ(34)のシステムにより、シャフト(30)を介してパンタグラフの第2のバー(2)を制御することを可能にする。
【0087】
ギヤ付きモータ(28)により駆動されるねじ付きシャフト(27)は、中間フレーム(23)の、ねじ/ナットシステムによるzに沿った並進誘導を保証する。
【0088】
歯付きピニオンシステム(33)および(34)は、可能性として、2つの非同軸シャフト間で回転運動を伝達するように意図された、同等のベルト、ノッチ付きベルトまたは他のタイプのシステムに置換されることが可能である。第6の変形例の実施形態の、第6の変形例との相違のみを記述する変形例(不図示)によれば、第2のアクチュエータ(29)がメインフレーム(25)上に固定される実施形態が提供される。
【0089】
図11は、本発明に従うロボットアームの駆動機構の第7の実施形態変形例を示す略図であり、当該変形例では、パンタグラフをzに沿って駆動する中間フレーム(23)が、スライド連接部およびねじ/ナット型の駆動装置により、ねじ付きシャフト(27)およびギヤ付きモータ(28)を介して並進運動される、中間フレーム(23)に固定される2つのギヤ付きモータ(29,32)は、軸同士が同軸であるスロット付きシャフト(30)および(31)によるパンタグラフの2つの近位アームの方位制御を可能にする。
【0090】
ギヤ付きモータ(29)は、バー(1)の方位をスロット付きシャフト(30)によって制御し、一方で、ギヤ付きモータ(32)は、バー(2)の方位をスロット付きシャフト(31)によって制御する。バー(1)は、シャフト(31)に対して自由に回転運動され、一方で、バー(2)は、シャフト(30)に対して自由に回転運動される。
【0091】
ギヤ付きモータの出力シャフトは、同軸でなく、かつ回転運動の伝達は、歯付きピニオンシステムまたはこれと同等のものによって達成される、という可能性もある。
【0092】
この変形例の場合、中間フレームを駆動するスライド連接部は、zとは異なる方向に、たとえばパンタグラフの平面に平行な方向に作られる、と考えることができる。遠位端には、垂直移動性を追加することもできる。
【0093】
[混雑した環境で作業を行うためのロボットアームの使用(法)]
図12は、遠位端(先端)に、ギヤ付きモータ(50)により制御され且つ当該遠位端で把持手段またはツール(20)を支持する追加のアーム(51)が追加される場合の、本発明の動力学を示す略図である。
【0094】
この場合、後者(把持手段またはツール)のセグメントの回転は、高さおよび幅の双方で極めて狭くかつ制約のある空間内で作業することを可能にする。
【0095】
グリッパ(把持手段)またはツールがギヤ付きモータ(50)へ直に固定されている事例では、終端(または、端部に固定されるグリッパまたはツールにより把持される物体)は、文献でシェーンフリース(Schoenflies)と呼ばれる変位、すなわち、xyzに沿って並進運動され且つ軸zを中心として回転運動される変位、を実行することができる。シェーンフリース変位とは、3次元空間における直線運動と、固定方向の軸を中心とする方位とから成る剛体の運動を意味する。ロボットハンドリングの場合、これは、ある平面から物体またはツールを動かし、かつこれを別の平行な平面上へ異なる方位で動かすために必要な操作に適合された運動である。
【0096】
SCARAマニピュレータは、類似の運動を提供した最初のマニピュレータのうちの1つであることから、SCARA型の運動と呼ばれることが多い。今日、その一部は平行運動アーキテクチャを有する多数のロボットマニピュレータが、電子製品の製造から食品の形質転換およびパッケージングの業界に至るアプリケーション(利用/用途)のために業界で使用されている。
【0097】
本バージョンは、ピック/プレース、パレタイズ/デパレタイズといったタスクを市販のSCARAロボットより高い有効性で実行できるマニピュレータロボットの保有を可能にする。
【0098】
また、リスト(wrist、手関節)として機能する3つの電動機械連接部を遠位端(20)に追加することも可能である。この場合、マニピュレータアームは、xyzにおける3自由度および方位の3自由度を制御することにより、物体を配置することができる。
【0099】
[他の実施形態変形例]
別の実施形態変形例は、2つの第1の近位バーが取り除かれると共に、パンタグラフの開口が残りの運動連鎖の2点間の距離を制御することにより制御される、という事実によって、先行する変形例と区別されるメカニズムに関する。
【0100】
【0101】
パンタグラフは、2つの近位バー(1,2)が切り取られている。切り取られたパンタグラフの2つの近位ピーク間の距離を制御するアクチュエータは、その開口の制御を可能にする。
【0102】
ギヤ付きモータ(32)は、第1の中間フレーム(35)の方位をシャフト(31)によって制御することを可能にする。
【0103】
スライド連接部およびリニアモータ(24)は、第2の中間フレーム(23)のz方向並進の制御を可能にする。
【0104】
バー(3)のパッシブなピボット関節(13)は、ナット(52)上に固定されたシャフト(57)および(58)上に関節で繋がれており、当該ナットは、第1のシャフト(59)と、右にねじ山のあるねじ付きシャフト(55)、歯付きピニオン(54)および左にねじ山のあるねじ付きシャフト(56)から成る第2の機械的アッセンブリとによって並進を拘束されている。ナット(52)は、シャフト(59)上を自由に滑動(スライド)する一方で、ねじ付きシャフト(55)とのねじ/ナット型連接の実行を可能にする内ねじ(めねじ)を有する。
【0105】
同じ原理により、ナット(53)上のバー(4)のパッシブ接続(11)の連接が調整されている。
【0106】
フレーム(23)と一体化したギヤ付きモータ(29)は、機械的アッセンブリ(54~56)の回転を歯付きピニオン(60,54)によって制御することを可能にする。歯付きピニオン(54)は、単に回転運動されることが可能であって、この回転運動を2つのねじ付きシャフト(55)および(56)に伝達し、ねじ付きシャフト(55)および(56)は、それらのねじ山が逆であることに起因して、バー(3)およびバー(4)の関節(11)および(13)を、等しい長さだけ近づけ又は遠ざけて移動させる。
【0107】
シャフト(31)の軸は、関節(11~13)の突起により形成される二等辺三角形の底辺の、Bで参照される真ん中を構成する1点においてピニオン(54)を通過する。
【0108】
方向xと直線(BA’)との間の角度は、ギヤ付きモータ(32)の回転によって制御され、一方で、距離BA’は、ギヤ付きモータ(29)の回転によって制御される。
【符号の説明】
【0109】
1,2,3,4,5,6 バー
(1,2…近位バー、3,4…共通のバー)
10,11,12,13,14,15,16 ピボット軸
25 メインフレーム
26 (可動)プレート
35,23 中間フレーム
(35…第1の中間フレーム、23…第2の中間フレーム)
51 追加アーム
100 多関節アーム(ロボットアーム、変形可能なアッセンブリ)
【国際調査報告】