(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】光学ガラス及びそれから作製されたガラス組立部材又は光学素子、及び光学機器
(51)【国際特許分類】
C03C 3/068 20060101AFI20220104BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517469
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2019101931
(87)【国際公開番号】W WO2020063208
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】201811128215.6
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511111585
【氏名又は名称】シーディージーエム グラス カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.359, Sec.3, Chenglong Avenue, LongQuan YI District Chengdu, Sichuan 610100 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クゥァン ブォ
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062CC10
4G062DA03
4G062DB01
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4G062HH01
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4G062HH05
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4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
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4G062JJ10
4G062KK01
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4G062KK07
4G062MM02
4G062NN02
4G062NN34
(57)【要約】
光学ガラス、及びそれから作製されたガラス組立部材又は光学素子、及び光学機器。光学ガラスの組成は、mol%にしたがって、1~10%のSi4+と、25~40%のB3+と、20~40%のLa3+と、0~15%のGd3+と、0より大きいが10%以下のY3+と、1~10%のZr4+と、1~12%のNb5+と、8~25%のTi4+と、0~10%のW6+とを含有しており、(Nb5++Ti4++W6+)/Y3+が26~40である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
mol%で、1~10%のSi
4+と25~40%のB
3+と、20~40%のLa
3+と、0~15%のGd
3+と、0より大きいが10%以下のY
3+と、1~10%のZr
4+と、1~12%のNb
5+と、8~25%のTi
4+と、0~10%のW
6+とを含有しており、(Nb
5++Ti
4++W
6+)/Y
3+が26~46であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
さらに、0~8%のZn
2+と、0~10%のR
2+と、0~10%のR
+とを含有しており、R
2+がBa
2+、Sr
2+、Ca
2+、又はMg
2+の1つ以上であり、R
+がLi
+、Na
+、K
+の1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
mol%で、1~10%のSi
4+と、25~40%のB
3+と、20~40%のLa
3+と、0~15%のGd
3+と、0より大きいが10%以下のY
3+と、1~10%のZr
4+と、1~12%のNb
5+と、8~25%のTi
4+と、0~8%のZn
2+と、0~10%のW
6+と、0~10%のR
2+と、0~10%のR
+とを含有しており、(Nb
5++Ti
4++W
6+)/Y
3+が26~46であり、R
2+がBa
2+、Sr
2+、Ca
2+、Mg
2+の1つ以上であり、R
+がLi
+、Na
+、K
+の1つ以上であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項4】
全構成要素が次の6つの条件を1つ以上満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス、
1)(Nb
5++Ti
4++W
6+)/Y
3+が26~40であり、
2)(La
3++Gd
3+)/Y
3+が39~65であり、
3)(Si
4++B
3+)/Y
3+が36~69であり、
4)Si
4+/(La
3++Gd
3++Y
3+)が0.02~0.4であり、
5)(Si
4++Zr
4+)/(Nb
5++Ti
4+)が0.06~2であり、
6)La
3+/(Si
4++Zr
4+)が1.5~15である。
【請求項5】
Si
4+が3~9%、及び/又はB
3+が26~35%、及び/又はLa
3+が25~35%、及び/又はGd
3+が0~10%、及び/又はY
3+が0.1~5%、及び/又はZr
4+が1~8%、及び/又はNb
5+が2~10%、及び/又はTi
4+が10~20%、及び/又はZn
2+が0.1~5%、及び/又はW
6+が0~5%、及び/又はR
2+が0~5%、及び/又はR
+が0~5%であり、R
2+がBa
2+、Sr
2+、Ca
2+、Mg
2+の1つ以上であり、R
+がLi
+、Na
+、K
+の1つ以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
全構成要素が次の6つの条件を1つ以上満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス、
1)(Nb
5++Ti
4++W
6+)/Y
3+が28~35であり、
2)(La
3++Gd
3+)/Y
3+が40~60であり、
3)(Si
4++B
3+)/Y
3+が40~65であり、
4)Si
4+/(La
3++Gd
3++Y
3+)が0.05~0.3であり、
5)(Si
4++Zr
4+)/(Nb
5++Ti
4+)が0.08~1であり、
6)La
3+/(Si
4++Zr
4+)が2~10である。
【請求項7】
Si
4+が4~8%、及び/又はB
3+が27~32%、及び/又はLa
3+が26~33%、及び/又はGd
3+が1~8%、及び/又はY
3+が0.3~3%、及び/又はZr
4+が2~6%、及び/又はNb
5+が3~8%、及び/又はTi
4+が14~20%、及び/又はZn
2+は1~4%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
全構成要素が次の5つの条件を1つ以上満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス、
1)(La
3++Gd
3+)/Y
3+が42~55であり、
2)(Si
4++B
3+)/Y
3+が45~58であり、
3)Si
4+/(La
3++Gd
3++Y
3+)が0.08~0.21であり、
4)(Si
4++Zr
4+)/(Nb
5++Ti
4+)が0.1~0.52であり、
5)La
3+/(Si
4++Zr
4+)が2.42~8である。
【請求項9】
W
6+及び/又はR
2+及び/又はR
+が含まれないことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
前記ガラスの屈折率(nd)が1.99~2.01であり、アッベ数(vd)が28~31であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
前記ガラスの耐酸性(D
A)が等級2以上、好ましくは等級1であり、前記ガラスの耐水性(D
W)が等級2以上、好ましくは1であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の前記光学ガラスから作製されることを特徴とするガラス組立部材。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の前記光学ガラス又は請求項12に記載の前記ガラス組立部材から作製されることを特徴とする光学素子。
【請求項14】
請求項13に記載の前記光学素子を含有することを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの技術分野、特に光学ガラス、それから作製されたガラス組立部材又は光学素子、及び光学機器に属する。
【背景技術】
【0002】
光学ガラスの化学的安定性とは、加工、保管、及び使用中に接触する様々な侵食媒体に対する光学部品の研磨面における耐食性のことである。光学ガラスの化学的安定性が低いと、光学部品の耐食性が低下し、光学部品に不規則な点状又は薄片状の黒い斑点が生成され、光学機器の性能及び機能が標準以下になり、光学機器の寿命に深刻な影響を及ぼす。従来技術では、ガラス中のアルカリ金属酸化物の含有量は、主にその化学的安定性を改善するために調整される。しかし、この方法で得られる光学ガラスは、屈折率が低く、製造コストが高いという問題を有する。
【0003】
したがって、優れた化学的安定性、高い屈折率、及び低い製造コストを有する光学ガラスを提供することは、当業者によって緊急に解決されるべき問題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の目的は、光学ガラスが化学的安定性に乏しく、屈折率が低く、製造コストが高いという従来技術における問題を解決する光学ガラスを提供することである。
【0005】
本発明の第2の目的は、光学ガラスから作製されたガラス組立部材を提供することである。
【0006】
本発明の第3の目的は、光学ガラスから作製された光学素子を提供することである。
【0007】
本発明の第4の目的は、光学素子を含有する光学機器を提供することである。
【0008】
目的を達成するための本発明の技術的解決策は以下の通りである。
【0009】
光学ガラスは、mol%で、1~10%のSi4+と25~40%のB3+と、20~40%のLa3+と、0~15%のGd3+と、0より大きいが10%以下のY3+と、1~10%のZr4+と、1~12%のNb5+と、8~25%のTi4+と、0~10%のW6+とを含有しており、(Nb5++Ti4++W6+)/Y3+が26~46である。
【0010】
0~8%のZn2+と、0~10%のR2+と、0~10%のR+とを含有しており、R2+がBa2+、Sr2+、Ca2+、及びMg2+の1つ以上であり、R+がLi+、Na+、及びK+の1つ以上である。
【0011】
光学ガラスは、mol%で、1~10%のSi4+と、25~40%のB3+と、20~40%のLa3+と、0~15%のGd3+と、0より大きいが10%以下のY3+と、1~10%のZr4+と、1~12%のNb5+と、8~25%のTi4+と、0~8%のZn2+と、0~10%のW6+と、0~10%のR2+と、0~10%のR+とを含有しており、(Nb5++Ti4++W6+)/Y3+が26~46であり、R2+がBa2+、Sr2+、Ca2+、又はMg2+の1つ以上であり、R+がLi+、Na+、K+の1つ以上である。
【0012】
さらに、全構成要素が次の6つの条件を1つ以上満たす。
【0013】
1)(Nb5++Ti4++W6+)/Y3+が26~40である。
【0014】
2)(La3++Gd3+)/Y3+が39~65である。
【0015】
3)(Si4++B3+)/Y3+が36~69である。
【0016】
4)Si4+/(La3++Gd3++Y3+)が0.02~0.4である。
【0017】
5)(Si4++Zr4+)/(Nb5++Ti4+)が0.06~2である。
【0018】
6)La3+/(Si4++Zr4+)が1.5~15である。
【0019】
さらに、Si4+が3~9%、及び/又はB3+が26~35%、及び/又はLa3+が25~35%、及び/又はGd3+が0~10%、及び/又はY3+が0.1~5%、及び/又はZr4+が1~8%、及び/又はNb5+が2~10%、及び/又はTi4+が10~20%、及び/又はZn2+が0.1~5%、及び/又はW6+が0~5%、及び/又はR2+が0~5%、及び/又はR+が0~5%であり、R2+がBa2+、Sr2+、Ca2+、及びMg2+の1つ以上であり、R+がLi+、Na+、及びK+の1つ以上である。
【0020】
さらに、全構成要素が次の6つの条件を1つ以上満たす。
【0021】
1)(Nb5++Ti4++W6+)/Y3+が28~35である。
【0022】
2)(La3++Gd3+)/Y3+が40~60である。
【0023】
3)(Si4++B3+)/Y3+が40~65である。
【0024】
4)Si4+/(La3++Gd3++Y3+)が0.05~0.3である。
【0025】
5)(Si4++Zr4+)/(Nb5++Ti4+)が、0.08~1である。
【0026】
6)La3+/(Si4++Zr4+)が2~10である。
【0027】
さらに、Si4+が4~8%、及び/又はB3+が27~32%、及び/又はLa3+が26~33%、及び/又はGd3+が1~8%、及び/又はY3+が0.3~3%、及び/又はZr4+が2~6%、及び/又はNb5+が3~8%、及び/又はTi4+が14~20%、及び/又はZn2+は1~4%である。
【0028】
さらに、全構成要素が次の5つの条件を1つ以上満たす。
【0029】
1)(La3++Gd3+)/Y3+が42~55である。
【0030】
2)(Si4++B3+)/Y3+が45~58である。
【0031】
3)Si4+/(La3++Gd3++Y3+)が0.08~0.21である。
【0032】
4)(Si4++Zr4+)/(Nb5++Ti4+)が0.1~0.52である。
【0033】
5)La3+/(Si4++Zr4+)が2.42~8である。
【0034】
さらに、W6+及び/又はR2+及び/又はR+が含まれない。
【0035】
さらに、前記ガラスの屈折率(nd)が1.99~2.01であり、アッベ数(vd)が28~31である。
【0036】
さらに、前記ガラスの耐酸性(DA)が等級2以上、好ましくは等級1であり、前記ガラスの耐水性(DW)が等級2以上、好ましくは1である。
【0037】
ガラス組立部材は、前記光学ガラスから作製される。
【0038】
光学素子は、前記光学ガラス又は前記ガラス組立部材から作製される。
【0039】
光学機器は、前記光学素子を含有する。
【0040】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0041】
本発明は、科学的設計、合理的な形成、優れた化学的安定性、高い屈折率、及び低い生産コストの利点を有する。
【0042】
本発明によれば、優れた化学的安定性、屈折率1.99~2.01、及びアッベ数28~31を有する光学ガラスは、アルカリ金属の含有量を少なくするか、又はアルカリ金属を含有しない状態で、様々な構成要素及び(Nb5++Ti4++W6+)/Y3+の比を最適化し、それによって光学ガラスの化学的安定性及び屈折率の高い要件を満たすことで得られる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
明細書において、全構成要素の含有量が具体的に記載されていない場合、陽イオンである構成要素の含有量は全陽イオンの合計モル数に占める陽イオンの百分率で表され、陰イオンの構成要素の含有量は全陰イオンの合計モル数に占める陰イオンの百分率で表される。また、以下の明細書において、所定値より下又は上で言及する場合、その所定値が含まれる。
【0044】
各構成要素のイオン価は、他のイオン価との違いがなく、便宜上の標準値であることに注意する必要がある。光学ガラスに存在する全構成要素のイオン価は、標準値に加えて他の可能性を有する。例えば、Siは4のイオン価の形態でガラス中に存在し、したがって本明細書の代表例としては「Si4+」を有するが、Siは他のイオン価の状態の可能性も有しており、本発明の保護範囲に入る。
【0045】
本発明のB3+酸化物は、ガラスネットワーク形成成分であり、ガラスを形成するために必要な成分であり、安定性及び溶融性を維持し、液相線温度を低下させ、ガラスの低分散を実現させる効果を有する。本発明において、B3+含有量が25%より低い場合、ガラスの結晶化安定性は低い。B3+含有量が40%より高いと、ガラスの液相線温度が上昇し、化学的安定性が低下する。したがって、本発明におけるその含有量の範囲は25~40%、好ましくは26~35%、さらに好ましくは27~32%であると定義される。
【0046】
本発明におけるSi4+酸化物は、ガラスネットワーク形成成分であり、ガラスの耐結晶化性能及び高温粘度を改善するためにほぼ導入され得る。その含有量が10%を超えると、ガラスの転化温度が上昇して、ガラスの溶融性が低下し、ガラスの化学的安定性が悪化する傾向がある。したがって、本発明におけるその含有量の範囲は1~10%、好ましくは3~9%、さらに好ましくは4~8%であると定義される。
【0047】
本発明の希土類イオン酸化物は、酸化物を修飾するネットワークとして、主にガラスのネットワーク空隙に充填されるため、ガラス構造がよりコンパクトになる。本発明の希土類イオンは、La3+、Gd3+、及びY3+を含有する。
【0048】
本発明のLa3+は、ガラスの化学的安定性、機械的強度、及び屈折率を改善し、ガラスの部分分散比を低下させることができる。しかし、その含有量が40%を超えると、ガラスの耐結晶化性能が明らかに低下する。その含有量が20%より小さい場合、ガラスの化学的安定性が低下する。したがって、本発明におけるその含有量の範囲は20~40%、好ましくは25~35%、さらに好ましくは26~33%であると定義される。
【0049】
本発明のGd3+はガラスの屈折率を改善することができ、耐結晶化性能及び化学的安定性を改善する効果を有する。しかしながら、その原料の価格は高く、又、その含有量が15%より高いと、ガラスの耐失透性が減少し、ガラスの密度が上昇する。本発明におけるGd3+含有量は0~15%、好ましくは0~10%、さらに好ましくは1~8%であると定義される。
【0050】
本発明のY3+はガラスの溶融性を改善することができ、ガラスの耐結晶化性能及び化学的安定性を改善することができる。その含有量が10%より高いと、ガラスの化学的安定性及び耐結晶化性能が減少する。したがって、本発明におけるY3+含有量の範囲の上限は10%、好ましくは8%、さらに好ましくは5%、より好ましくは3%、よりさらに好ましくは1%である。Y3+含有量の下限は、好ましくは0より大きく、さらに好ましくは0.1%、より好ましくは0.3%、よりさらに好ましくは0.5%である。
【0051】
多大な研究の後、発明者は、La3+、Gd3+、及びY3+が共存すると、ガラスの耐結晶化性能及び化学的安定性を改善する効果があることを発見した。特に、(La3++Gd3+)/Y3+の値が39~65、好ましくは40~60であるとき、ガラスは優れた化学的安定性を有する。(La3++Gd3+)/Y3+が42~55の場合、ガラスの耐酸性及び耐水性は等級2以上、好ましくは等級1に到達し得る。
【0052】
研究所見によると、本発明者はSi4++B3+の合計量とY3+との間に比例関係があると、優れた耐結晶化性能を有するガラスを得るのに有益であることを見出した。特に、(Si4++B3+)/Y3+の値が36から69の範囲である場合、ガラスは必要な光学特性を獲得し、優れた耐結晶化性能を有する。その範囲は好ましくは40~65、さらに好ましくは45~58であり、製造及びプレス中に結晶化が容易に起こらないようにすることができる。
【0053】
本発明によれば、Si4+と希土類イオンの合計量との間に比例関係がある場合、耐結晶化性能が良好なガラスが得られることを発見した。Si4+/(La3++Gd3++Y3+)の値が0.4より大きいと、その耐結晶化性能が低下する。その値が0.02より小さいと化学的安定性が悪化する。したがって、Si4+/(La3++Gd3++Y3+)の比の範囲は0.02~0.4、好ましくは0.05~0.3、さらに好ましくは0.08~0.21と定義される。
【0054】
本発明によれば、Zn2+は、ガラスの溶融性、化学的安定性及び耐結晶化性能を改善し、ガラスの転化温度を低下させる効果を有する。本発明によれば、Zn2+含有量が8%より高いと、その結晶化特性が低下し、分散が増化し、屈折率の要件を満たすことができない。本発明によれば、Zn2+含有量の範囲は0~8%、好ましくは0.1~5%、さらに好ましくは1~4%であると定義される。
【0055】
本発明によれば、Zr4+はガラスの化学的安定性を改善することができる。Zr4+の含有量が1~10%の場合、ガラスは適切な屈折率及び熱膨張係数と、優れた化学的安定性及び耐結晶化性能とを有する。その含有量が10%より高いと、ガラスの液相線温度が上昇し、ガラス透過率が低下する。その含有量が1%より小さいと、耐結晶化性能が低下し、屈折率の要件を満たすことができない。本発明によれば、Zn2+含有量の範囲は1~10%、好ましくは1~8%、さらに好ましくは2~6%であると定義される。
【0056】
多大な研究の後、本発明者は、Si4+及びZr4+の合計量と、La3+との間に比例的な関係があると、明らかにガラスの化学的安定性を改善できることを発見した。La3+/(Si4++Zr4+)の値が1.5より低い場合、ガラスの化学的安定性が悪化する。その値が15を超えると、耐結晶化性能が低下し、屈折率の要件を満たすことができない。本発明によれば、La3+/(Si4++Zr4+)の値は2~10が好ましく、さらに好ましくは2.42~8である。
【0057】
本発明によれば、Nb5+はガラスの屈折率を改善させ、分散性を増加させ、また、ガラスの化学的安定性を増加させる効果を有する。その含有量が12%より高いと、ガラスの可視領域の短波の透過率が低下し、ガラスが明らかに着色される。その含有量が1%より小さいと屈折率の要件が満たされず、化学的安定性が低下する。本発明によれば、Nb5+の含有量の範囲は1~12%、好ましくは2~10%、さらに好ましくは3~8%であると定義される。
【0058】
本発明によれば、Ti4+はガラスネットワークの形成に関与し、ガラスの屈折率及び化学的安定性を改善する効果がある。本発明によれば、Ti4+の含有量が8~25%の場合、ガラスは良好な化学的安定性を有し、屈折率を改善することができる。その含有量が25%より高いと、ガラスの可視領域における短波の透過率が低下して、ガラスが明らかに着色され、その含有量が8%より小さいと屈折率の要件を満たすことができず、化学的安定性が低下する。本発明によれば、Ti4+含有量の範囲は8~25%、好ましくは10~20%、さらに好ましくは14~20%であると定義される。
【0059】
多大な研究の後、本発明者は、Si4+及びZr4+の合計量とNb5+及びTi4+の合計量との間に比例関係があると、ガラスの形成安定性及びガラスの耐結晶化性能に影響を与えることを発見した。さらなる研究によれば、(Si4++Zr4+)/(Nb5++Ti4+)の比の範囲が0.06~2、(Si4++Zr4+)/(Nb5++Ti4+)の比が好ましくは0.08~1、さらに好ましくは0.1~0.52であるとき、ガラスの形成安定性及び耐結晶化性能が優れていることを発見した。
【0060】
本発明によれば、W6+はガラスの屈折率を改善する効果を有する。しかし、その含有量が10%より高いと、ガラスの化学的安定性、透過率、及び耐結晶化性能のすべてが悪化する。したがって、その含有範囲は0~10%、好ましくは0~5%、さらに好ましくはそれは含まれない。
【0061】
多大な研究によれば、本発明者は、Nb5+、Ti4+、及びW6+の合計量とY3+との間に比例関係があるとき、ガラスが優れた耐結晶化性能を有することを発見した。(Nb5++Ti4++W6+)/Y3+が26より小さいと、耐結晶化性能が低下する。その値が46より大きいと、その化学的安定性が低下する。したがって、その比の範囲は26~46、好ましくは26~40、さらに好ましくは28~35であると定義される。
【0062】
本発明によれば、Li+はガラスの溶融性を高め、転化温度を低下させることができる。その含有量が10%より高いと、ガラスの屈折率が設計要件に到達することができないので、その上限は10%に制御される。
【0063】
本発明によれば、Na+及びK+は両方ともガラス溶融性を改善する効果を有する。本発明によれば、Na+及びK+の含有量が10%より大きいと、ガラス屈折率は要件に達することができない。したがって、Na+及びK+含有量はそれぞれ10%以下と定義されている。
【0064】
本発明によれば、Li+、Na+、及びK+はアルカリ金属イオンであり、ガラスの光学データを調整し、ガラスの溶融効果を改善し、ガラスが低い転化温度を有するようにすることができる。Li++Na++K+の合計量が10%より小さい場合、ガラスは高い化学的安定性を有し、屈折率の要件を満たすことができる。その値が10%を超えると、ガラスの耐結晶化性能が低下する。したがって、Li++Na++K+の値は0~10%、好ましくは0~5%と定義され、さらに好ましくはそれらは含まれない。
【0065】
本発明によれば、Ba2+はガラスの屈折率を増加させ、ガラスの透過率を改善する効果を有する。その含有量が10%より大きいと、ガラスの化学的安定性及び耐結晶化性能の両方が悪化する。したがって、その含有範囲は0~10%、好ましくは0~5%、さらに好ましくはそれは含まれない。
【0066】
本発明によれば、Sr2+はガラスの屈折率及びアッベ数を効果的に調整することができる。また、その原料コストは高い。その含有量が10%より大きいと、ガラスの化学的安定性及び耐結晶化性能は両方とも悪化する。したがって、その含有範囲は0~10%、好ましくは0~5%、さらに好ましくはそれは含まれない。
【0067】
本発明によれば、Ca2+はガラスのアッベ数及び比重を低下させることができる。しかし、その含有量が10%より大きいと、ガラスの耐結晶化性能が低下する。したがって、その含有範囲は0~10%、好ましくは0~5%、さらに好ましくはそれは含まれない。
【0068】
本発明によれば、Mg2+はガラスの化学的安定性を改善することができる。しかし、その含有量が多すぎると、ガラスの屈折率が要件を満たさなくなり、結晶化特性及び化学的安定性が低下する。したがって、その含有範囲は0~10%、好ましくは0~5%、さらに好ましくはそれは含まれない。
【0069】
本発明によれば、Ba2+、Sr2+、Ca2+、及びMg2+はアルカリ土類金属イオンであり、ガラスの屈折率を調整し、ガラスの高温粘度を低下させることができる。Ba2+、Sr2+、Ca2+、及びMg2+の全体量、すなわち(Ba2++Sr2++Ca2++Mg2+)の値が10%より大きいと、ガラスの化学的安定性及び耐結晶化性能は明らかに悪化する。したがって、(Ba2++Sr2++Ca2++Mg2+)の値は0~10%、好ましくは0~5%であると定義され、さらに好ましくはそれらは含まれない。
【0070】
本発明によれば、主な陰イオンはO2-である。本発明によって提供される光学ガラスの特性に影響を与えることなく、F-及びCl-等の他の陰イオンがある程度含有されていてもよい。O2-含有量は95%以上、好ましくは98%以上、さらに好ましくは100%である。
【0071】
本発明によって提供される光学ガラスの屈折率(nd)は、1.99から2.01の範囲である。本発明によって提供されるガラスのアッベ数(vd)は、28から31の範囲であり、好ましくは28から30の範囲である。
【0072】
本発明によって提供されるガラスの耐結晶化性能の分析方法は、以下の工程を含む。試料ガラスを20×20×10mmの仕様に切断し、Tg+230℃の温度でマッフル炉に入れて30分間保温し、取り出した後、アニーリングのために保温綿に入れる、そして冷却後に表面結晶化を視覚的に観察する。
【0073】
本発明によれば、本発明によって提供されるガラスの化学的安定性は、耐水性DW及び耐酸性DAによって表される。本発明におけるガラスの耐水性(DW)は等級2以上、好ましくは等級1である。耐酸性(DA)は等級2以上、好ましくは等級1である。
【0074】
以下の段落は、実施形態と組み合わせて本発明をさらに描写する。本発明によって提供される方法は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0075】
実施例1
実施形態は、本発明によって提供される光学ガラスの製造方法を提供する。ガラスNo.1~33の各種光学ガラスは、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、及びホウ酸を原料とし、光学ガラスの組成に応じてすべての原料を比例的に秤量し、均一に混合して混合された原料を取得し、混合された原料を白金るつぼに入れ、1,250~1,450℃に加熱し、清澄化して3~5時間攪拌して均一な溶融ガラスを得た後、溶融ガラスを予熱した型に流し込み、最後に2~4時間600~700℃で保つことによって得られる。
【0076】
実施例2
実施形態は、本発明によって提供される光学ガラスの特性を分析するための方法、特に以下を提供する。
【0077】
屈折率(nd)は、GB/T7962.1-2010で指定された方法にしたがって分析される。
【0078】
アッベ数(vd)は、GB/T7962.1-2010で指定された方法にしたがって分析される。
【0079】
ガラスの耐結晶化性能の試験方法は、以下のステップを含む。サンプルガラスを20×20×10mmの仕様に切断し、Tg+230℃の温度でマッフル炉に入れて、30分間保温する。取り出した後、アニーリングのために保温綿に入れ、冷却後の表面結晶化を視覚的に観察する。「A」は明らかな結晶化がないことを示し、「B」は明らかな結晶化があることを示す。
【0080】
耐水性(DW)は、GB/T17129で指定された試験方法にしたがって分析される。
【0081】
耐酸性(DA)は、GB/T17129で指定される試験方法にしたがって分析される。
【0082】
実施例3
実施形態は、光学ガラスの組成及び特性を提供し、以下の表に詳細が示されている。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0083】
実施例4
実施形態は、本発明によって提供される光学ガラスを使用してガラスの組立部材を作製する方法を提供する。表1~4の光学ガラスは所定のサイズにカットされ、窒化ホウ素粉末の剥離剤が表面に均一に塗布された後、加熱及び軟化されて、凹面メニスカスレンズ、凸面メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、及び平凹レンズ等の各種レンズ及びプリズム用の組立部材にプレス成型される。
【0084】
実施例5
実施形態は、本発明によって提供されるガラス組立部材を使用して光学素子を作製する方法を提供する。
【0085】
実施形態4の方法で作製された光学組立部材がアニールされて、ガラス内部の歪みが低減されながら微調整されることにより、屈折率等の光学特性が所望の値にされる。次に、各組立部材が研削及び研磨され、凹面メニスカスレンズ、凸面メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、及び平凹レンズ等の様々なレンズ及びプリズムを形成する。反射防止膜が得られた光学素子の表面にコーティングされていてもよい。
【0086】
実施例6
光学機器の実施形態
【0087】
光学部品又は光学部材は、光学設計によって、又は1つ以上の光学素子によって、光学素子の実施形態で得られた光学素子によって形成される。光学部品又は光学部材は、画像装置、センサー、顕微鏡、医療技術、デジタル投影、通信、光通信技術/情報伝達、自動車分野における光学/照明、フォトリソグラフィー、エキシマレーザー、ウェーハ、コンピュータチップ、集積回路、並びにそのような回路及びチップを含む電子機器に使用され得る。
【0088】
実施形態は、単に本発明の好ましい実施形態の1つに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するために使用されるべきではない。しかしながら、本発明の主な設計思想及び精神に基づく実質的な意味をもたないすべての修正又は研磨は、それらが本発明の1つと一致する技術的問題を解決する場合には、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】