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特表2022-503879がん治療におけるENTファミリートランスポーター阻害剤の使用及びそのアデノシン受容体アンタゴニストとの組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】がん治療におけるENTファミリートランスポーター阻害剤の使用及びそのアデノシン受容体アンタゴニストとの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20220104BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/5355 20060101ALI20220104BHJP
   A61K 31/541 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K31/5355
A61K31/541
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517484
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(85)【翻訳文提出日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2019076244
(87)【国際公開番号】W WO2020065036
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】2018/0115
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(31)【優先権主張番号】62/737,717
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519350096
【氏名又は名称】アイテオ ベルギウム エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クロシニャーニ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ハウトハイス, エリカ ヨーケ カテライネ ヘレーン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ エノ, オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC42
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、がん治療のためのENTファミリートランスポーター阻害剤の使用に関する。本発明はさらに、がん治療のための、当該ENTファミリートランスポーター阻害剤とアデノシン受容体アンタゴニストとの併用に関する。本発明はさらに、当該組み合わせを含む医薬組成物及びパーツキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるがん治療に使用するためのENTファミリートランスポーター阻害剤。
【請求項2】
前記ENTファミリートランスポーターがENT1であり、前記阻害剤が、小分子、核酸、ペプチド、及び抗体からなる群より選択される、請求項1に記載の使用のためのENTファミリートランスポーター阻害剤。
【請求項3】
前記対象が前記ENTファミリートランスポーター阻害剤と組み合わせて追加治療薬で治療されるか、または前記ENTファミリートランスポーター阻害剤の投与から約14日以内に前記追加治療薬を与えられている、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の使用のためのENTファミリートランスポーター阻害剤。
【請求項4】
前記追加治療薬が、アデノシン受容体アンタゴニストを含む、請求項3に記載の使用のためのENTファミリートランスポーター阻害剤。
【請求項5】
前記対象が、以前に少なくとも1種の先行治療的処置を受けており、前記少なくとも1種の先行治療的処置の投与以降、ENTファミリートランスポーター阻害剤の投与前に進行している、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のためのENTファミリートランスポーター阻害剤。
【請求項6】
前記先行治療的処置が、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される、請求項5に記載の使用のためのENTファミリートランスポーター阻害剤。
【請求項7】
前記ENTファミリートランスポーター阻害剤が、アデノシン受容体アンタゴニストを含む前記追加治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に投与される、請求項4に記載の使用のためのENTファミリートランスポーター阻害剤。
【請求項8】
(a)有効量のENTファミリートランスポーター阻害剤と;
(b)有効量のアデノシン受容体アンタゴニストと、を含む、組み合わせ。
【請求項9】
(a)有効量のENTファミリートランスポーター阻害剤と;
(b)有効量のアデノシン受容体アンタゴニストと;
(c)少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項10】
(a)有効量のENTファミリートランスポーター阻害剤を含む第1の部分と;
(b)有効量のアデノシン受容体アンタゴニストを含む第2の部分と、を含む、パーツキット。
【請求項11】
前記アデノシン受容体アンタゴニストが、A2AまたはA2B受容体アンタゴニストである、請求項8~10のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項12】
前記アデノシン受容体アンタゴニストが、
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミン;
3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミン;及び
4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミド
から選択される、請求項8~11のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項13】
前記アデノシン受容体アンタゴニストが、式(I)
【化19】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
は、5員もしくは6員のヘテロアリールまたは5員もしくは6員のアリールを表し、ヘテロアリール基またはアリール基は任意選択で、C1~C6アルキル(好ましくはメチル)及びハロ(好ましくはフルオロまたはクロロ)から選択される1つ以上の置換基で置換され、好ましくは、Rは5員ヘテロアリールを表し、より好ましくは、Rはフリルを表し;
は、6員アリールまたは6員ヘテロアリールを表し、
前記ヘテロアリール基または前記アリール基は任意選択で、ハロ、アルキル、ヘテロシクリル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボニル、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、アルキルスルホンイミドイル、カルボニルアミノ、スルホニルアミノ、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換され;
前記置換基が任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されるか;
あるいは、前記ヘテロアリール基または前記アリール基は任意選択で、それらが結合する原子とともに5員もしくは6員のアリール環、5員もしくは6員のヘテロアリール環、5員もしくは6員のシクロアルキル環、または5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成する2個の置換基で置換され、任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される、請求項8~11のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項14】
前記ENTファミリートランスポーターがENT1である、請求項8~13のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項15】
追加治療薬をさらに含む、請求項8~14のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項16】
医療用である、請求項8~15のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項17】
がん治療に使用するための、請求項8~15のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項18】
前記ENTファミリートランスポーター阻害剤が、アデノシン受容体アンタゴニストの投与前、投与と同時、または投与後に投与される、請求項8~15のいずれか1項に記載の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキット。
【請求項19】
がん治療に使用するための医薬製剤であって、前記医薬製剤は、前記がん治療に有効な量でヒト対象に投与され、前記製剤が、
(a)ENTファミリートランスポーター阻害剤と;
(b)任意選択で、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む、前記医薬製剤。
【請求項20】
前記ENTファミリートランスポーターがENT1であり、前記阻害剤が、小分子、核酸、ペプチド、及び抗体からなる群より選択される、請求項19に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項21】
前記医薬製剤が追加治療薬をさらに含む、請求項19または請求項20のいずれか1項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項22】
前記追加治療薬が、アデノシン受容体アンタゴニストを含む、請求項21に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項23】
前記対象が、以前に少なくとも1種の先行治療的処置を受けている、請求項19~22のいずれか1項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項24】
前記先行治療的処置が、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される、請求項23に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項25】
前記医薬製剤が、アデノシン受容体アンタゴニストを含む前記追加治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に投与される、請求項21~24のいずれか1項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項26】
がん治療に使用するための医薬製剤であって、前記医薬製剤は、がん治療に有効な量でヒト対象に投与され、前記製剤が、
(a)ENTファミリートランスポーター阻害剤と;
(b)アデノシン受容体アンタゴニストと;
(c)任意選択で、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む、前記医薬製剤。
【請求項27】
前記アデノシン受容体アンタゴニストが、A2AまたはA2B受容体アンタゴニストを含む、請求項22~26のいずれか1項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項28】
前記アデノシン受容体アンタゴニストが、
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミン;
3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミン;及び
4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミド
から選択される、請求項22~27のいずれか1項に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項29】
前記アデノシン受容体アンタゴニストが、請求項13に定義される式(I)の化合物を含む、請求項22~27のいずれか1項に記載の使用のための医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療のためのENTファミリートランスポーター阻害剤の使用に関する。本発明はさらに、がん治療のための、当該ENTファミリートランスポーター阻害剤とアデノシン受容体アンタゴニストとの併用に関する。本発明はさらに、当該組み合わせを含む医薬組成物及びパーツキットに関する。
【背景技術】
【0002】
SLC29としても知られる平衡型ヌクレオシドトランスポーター(ENT)ファミリーは、ヌクレオシド基質を細胞に輸送する原形質膜輸送タンパク質群である。ENT1、ENT2、ENT3、及びENT4という名称の4つの公知のENTがある。
【0003】
ENTの内因性基質の1つは、多数の機能の強力な生理学的かつ薬理学的調節因子であるアデノシンである。アデノシンによる細胞シグナル伝達は、4つの公知のGタンパク質共役型アデノシン受容体A1、A2A、A2B、及びA3を介して起こる。ENTは、これらの受容体に提供されるアデノシンの濃度に影響を及ぼすことにより、冠状動脈の血流、炎症、及び神経伝達の調節など、様々な生理学的過程において重要な調節役割を果たす(Griffith DA and Jarvis SM,Biochim Biophys Acta,1996,1286,153-181;Shryock JC and Belardinelli L,Am J Cardiol,1997,79(12A),2-10;Anderson CM et al.,J Neurochem,1999,73,867-873)。
【0004】
ENTと相互作用し、アデノシンレベルを変化させる、ジラゼプ、ジピリダモール、及びドラフラジンなどの様々な薬剤が、心臓保護作用または血管拡張作用を目的として開発された。
【0005】
アデノシンは強力な免疫抑制代謝物でもあり、細胞外腫瘍微小環境(TME)において上昇が認められる場合が多い(Blay J et al.,Cancer Res,1997,57,2602-2605)。細胞外アデノシンは主に、エクトヌクレオチダーゼCD39及びCD73によるATPの変換によって生成される(Stagg J and Smyth MJ,Oncogene,2010,2,5346-5358)。アデノシンは、4つのGタンパク質共役型受容体サブタイプ(A1、A2A、A2B、及びA3)を活性化する。特に、A2A受容体の活性化は、抗腫瘍免疫応答の抑制につながる自然免疫細胞抑制及び獲得免疫細胞抑制の主たる促進因子であると考えられている(Ohta and Sitkovsky,Nature,2001,414,916-920)(Stagg and Smyth,Oncogene,2010,2,5346-5358)(Antonioli L et al.,Nature Reviews Cancer,2013,13,842-857)(Cekic C and Linden J,Nature Reviews,Immunology,2016,16,177-192)(Allard B et al.,Curr Op Pharmacol,2016,29,7-16)(Vijayan D et al.,Nature Reviews Cancer,2017,17,709-724)。
【0006】
アデノシンがENTによる細胞内取り込みを介してT細胞の活力を低下させ得るかどうかを評価するために、ヒト初代リンパ球での原形質膜に局在するENTトランスポーター(ENT1、ENT2、及びENT4)のmRNA発現レベルを公開RNA-seqデータベースで確認した(Bonnal RJP et al.,Nature,2015,2:150051)。B細胞、CD4T細胞、及びCD8T細胞は、ENT1(SLC29A1)、ENT2(SLC29A2)、及びENT4(SLC29A4)を発現した(図1A図1B、及び図1C)。
【0007】
本明細書の出願人は、アデノシンならびにATPが、T細胞増殖及びサイトカイン分泌(IL-2)を著しく抑制し、T細胞生存率を大幅に低下させることを明らかにしている。T細胞の生存率及び増殖の、アデノシン介在型及びATP介在型の抑制は、ENT阻害剤を使用すると正常に回復した。
【0008】
さらに、ENT阻害剤をアデノシン受容体アンタゴニストと併用すると、T細胞の生存率及び増殖の、アデノシン介在型及びATP介在型の抑制を回復するのみならず、T細胞のサイトカイン分泌も回復させることができた。
したがって、本発明は、がん治療のためのENTファミリートランスポーター阻害剤の使用を提供する。また、がん治療のための、当該ENTファミリートランスポーター阻害剤とアデノシン受容体アンタゴニストとの併用を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Griffith DA and Jarvis SM,Biochim Biophys Acta,1996,1286,153-181
【非特許文献2】Shryock JC and Belardinelli L,Am J Cardiol,1997,79(12A),2-10
【非特許文献3】Anderson CM et al.,J Neurochem,1999,73,867-873
【非特許文献4】Blay J et al.,Cancer Res,1997,57,2602-2605
【非特許文献5】Stagg J and Smyth MJ,Oncogene,2010,2,5346-5358
【非特許文献6】Ohta and Sitkovsky,Nature,2001,414,916-920
【非特許文献7】Antonioli L et al.,Nature Reviews Cancer,2013,13,842-857
【非特許文献8】Cekic C and Linden J,Nature Reviews,Immunology,2016,16,177-192
【非特許文献9】Allard B et al.,Curr Op Pharmacol,2016,29,7-16
【非特許文献10】Vijayan D et al.,Nature Reviews Cancer,2017,17,709-724
【非特許文献11】Bonnal RJP et al.,Nature,2015,2:150051
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、有効量のENTファミリートランスポーター阻害剤を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、がん治療の方法に関する。
【0011】
一実施形態では、ENTファミリートランスポーターはENT1であり、阻害剤は、小分子、核酸、ペプチド、及び抗体からなる群より選択される。
【0012】
一実施形態では、対象はENTファミリートランスポーター阻害剤と組み合わせて追加治療薬で治療されるか、またはENTファミリートランスポーター阻害剤の投与から約14日以内に追加治療薬を与えられている。一実施形態では、追加治療薬は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む。
【0013】
一実施形態では、対象は、以前に少なくとも1種の先行治療的処置を受けており、少なくとも1種の先行治療的処置の投与以降、ENTファミリートランスポーター阻害剤の投与前に進行している。一実施形態では、先行治療的処置は、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される。
【0014】
本発明はまた、ヒト対象でのがん治療に有効な量のENTファミリートランスポーター阻害剤を含む配合剤を提供する。
【0015】
一実施形態では、ENTファミリートランスポーター阻害剤は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む追加治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に投与される。
【0016】
本発明はまた、アデノシン受容体アンタゴニストとENTファミリートランスポーター阻害剤との組み合わせを、それを必要とする患者に投与することを含む、がん治療の方法に関する。
【0017】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2AまたはA2B受容体アンタゴニストである。
【0018】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、以下から選択される:
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミン;
3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミン;及び
4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミド。
【0019】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、以降に定義される式(I)の化合物である。
【0020】
一実施形態では、ENTファミリーメンバーはENT1である。
【0021】
一実施形態では、A2AまたはA2B受容体アンタゴニスト及びENT1阻害剤は、同じ製剤で提供される。
【0022】
本発明はさらに、有効量のENTファミリーメンバー阻害剤と組み合わせた有効量のアデノシン受容体アンタゴニストに加えて、薬学的に許容される賦形剤を含む製剤を提供する。
【0023】
一実施形態では、この製剤中のアデノシン受容体アンタゴニストは、A2AまたはA2B受容体アンタゴニストである。
【0024】
一実施形態では、製剤中のアデノシン受容体アンタゴニストは、以下から選択される:
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミン;
3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミン;及び
4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミド。
【0025】
一実施形態では、製剤中のアデノシン受容体は、以降に定義される式(I)の化合物である。
【0026】
一実施形態では、製剤中のENTファミリーメンバー阻害剤はENT1阻害剤である。
【0027】
一実施形態では、製剤は追加治療薬をさらに含む。
【0028】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0029】
「アルデヒド」という用語は、基-CHOを指す。
【0030】
「アルケニル」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、直鎖状または分枝状であり得る不飽和ヒドロカルビル基を指す。好適なアルケニル基は、2~6個の炭素原子、好ましくは、2~4個の炭素原子、なおもさらに好ましくは2~3個の炭素原子を含む。アルケニル基の例は、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニル及びその異性体、2-ヘキセニル及びその異性体、2,4-ペンタジエニルなどである。
【0031】
「アルケニルカルボニル」という用語は、基-(C=O)-アルケニルを指し、アルケニルは本明細書で定義される通りである。
【0032】
「アルケニルカルボニルアミノ」という用語は、基-NH-(C=O)-アルケニルを指し、アルケニルは本明細書で定義される通りである。
【0033】
「アルコキシ」という用語は、基-O-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0034】
「アルキル」という用語は、式C2n+1(式中、nは1以上の数である)のヒドロカルビルラジカルを指す。一般に、本発明のアルキル基は、1~8個の炭素原子を含み、より好ましくは、本発明のアルキル基は1~6個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。好適なアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルが挙げられる。
【0035】
「アルキルアミノアルキル」という用語は、基-アルキル-NH-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0036】
「アルキルアミノアルキルアミノカルボニル」という用語は、基-(C=O)-NH-アルキル-NH-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0037】
「(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル」という用語は、基-(C=O)-NRを指し、式中、Rはアルキル基であり、Rは-アルキル-NH-アルキル基であり、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0038】
「アルキルアミノアルキルカルボニル」という用語は、基-(C=O)-アルキル-NH-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0039】
「アルキルカルボニル」という用語は、基-(C=O)-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0040】
「アルキルヘテロアリール」という用語は、アルキル基で置換された任意のヘテロアリールを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0041】
「アルキルオキシカルボニル」という用語は、基-(C=O)-O-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0042】
「アルキルスルホニル」という用語は、基-SO-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0043】
「アルキルスルホンアルキル」という用語は、基-アルキル-SO-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0044】
「アルキルスルホンイミドイル」という用語は、基-S(=O)(=NH)-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0045】
「アルキルスルホキシド」という用語は、基-(S=O)-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0046】
「アルキルスルホキシドアルキル」という用語は、基-アルキル-SO-アルキルを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0047】
「アルキン」という用語は、1つ以上の炭素-炭素三重結合の存在により不飽和が生じる、一価の不飽和ヒドロカルビル基のクラスを指す。アルキニル基は通常かつ好ましくは、アルキル基に関して上記と同数の炭素原子を有する。アルキニル基の非限定的な例は、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ペンチニル及びその異性体、2-ヘキシニル及びその異性体などである。
【0048】
「アルキンアルキル」という用語は、基-アルキル-アルキンを指し、アルキル及びアルキンは本明細書で定義される通りである。
【0049】
「アミノ」という用語は、基-NHを指す。
【0050】
「アミノアルキル」という用語は、基-アルキル-NHを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0051】
「アミノアルキルアミノカルボニル」という用語は、基-(C=O)-NH-アルキル-NHを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0052】
「アミノアルキルカルボニルアミノ」という用語は、基-NH-(C=O)-アルキル-NHを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0053】
「アミノカルボニル」という用語は、基-(C=O)-NHを指す。
【0054】
「(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ」という用語は、基-NRを指し、式中、Rはアルキル基であり、Rは、-アルキル-(C=O)-NH基であり、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0055】
「アミノカルボニルアルキルアミノ」という用語は、基-NH-アルキル-(C=O)-NHを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0056】
「アミノスルホニル」という用語は、基-SO-NHを指す。
【0057】
「アリール」という用語は、典型的には5~12個、好ましくは5~10個の原子を含有する、単環(すなわちフェニル)または互いに縮合された芳香族多環(例えばナフチル)を有する多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指し、より好ましくは、アリールは5員または6員のアリールである。アリールの非限定的な例には、フェニル、ナフタレニルが含まれる。
【0058】
「カルボニル」という用語は、基-(C=O)-を指す。
【0059】
「カルボニルアミノ」という用語は、基-NH-(C=O)-を指す。
【0060】
「シクロアルキル」という用語は、環状アルキル基、すなわち、1つまたは2つの環状構造を有する一価、飽和、または不飽和のヒドロカルビル基を指す。シクロアルキルとして、単環式または二環式のヒドロカルビル基が挙げられる。シクロアルキル基は、環内に3個以上の炭素原子を含んでいてよく、本発明によれば、一般に3~10個、より好ましくは3~8個の炭素原子を含み、さらにより好ましくは、シクロアルキルは5員または6員のシクロアルキルであることがより好ましい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
「シクロアルキルオキシ」という用語は、基-O-シクロアルキルを指し、シクロアルキルは本明細書で定義される通りである。
【0062】
「ジアルキルアミノ」という用語は、基-NRを指し、R及びRはいずれも独立して本明細書で定義されるアルキル基である。
【0063】
「ジアルキルアミノアルキル」という用語は、基-アルキル-NRを指し、R及びRはいずれも独立して本明細書で定義されるアルキル基である。
【0064】
「ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル」という用語は、基-(C=O)-NH-アルキル-NRを指し、R及びRはいずれも本明細書で定義されるアルキル基である。
【0065】
「ジアルキルアミノアルキルカルボニル」という用語は、基-(C=O)-アルキル-NRを指し、R及びRはいずれも本明細書で定義されるアルキル基である。
【0066】
「ジヒドロキシアルキル」という用語は、2つのヒドロキシル(-OH)基で置換された、本明細書で定義されるアルキル基を指す。
【0067】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。
【0068】
「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置換された、本明細書で定義されるアリール基を指す。換言すれば、5~12個の炭素原子の芳香族単環、または通常は5~6個の原子を含有する互いに縮合された2つの環を含有する環系であり、環中の1つ以上の炭素原子が酸素原子、窒素原子、及び/または硫黄原子で置換されているものを指し、その場合、ヘテロ原子の窒素及び硫黄は任意選択で酸化されていてもよく、ヘテロ原子の窒素は任意選択で四級化されていてもよい。このようなヘテロアリールの非限定的な例として、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、フラニル、及びピロリルが挙げられる。好ましくは、ヘテロアリールは5員または6員のヘテロアリールであり、より好ましくは、5員または6員のヘテロアリールはフリルである。
【0069】
「ヘテロシクリル」という用語は、少なくとも1つの炭素原子を含有する環中に少なくとも1つのヘテロ原子を有する非芳香族環状基、完全飽和環状基、または部分不飽和環状基(例えば、3~7員の単環式、7~11員の二環式、または合計3~10個の環原子を含有するもの)を指す。好ましくは、ヘテロシクリルは5員または6員のヘテロシクリルである。ヘテロ原子を含有する複素環基の各環は、窒素原子、酸素原子、及び/または硫黄原子から選択される1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を有してよく、その場合、ヘテロ原子の窒素及び硫黄は任意選択で酸化されていてもよく、ヘテロ原子の窒素は任意選択で四級化されていてもよい。複素環基は、価数の許す限り、環または環系の任意のヘテロ原子または炭素原子に結合することができる。多環複素環の環は、縮合されていても、1つ以上のスピロ原子を介して架橋及び/または結合されていてもよい。非限定的な複素環基の例として、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、ピペリジニル、アゼチジニル、2-イミダゾリニル、ピラゾリジニルイミダゾリジニル、イソオキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピペリジニル、スクシンイミジル、3H-インドリル、インドリニル、イソインドリニル、2H-ピロリル、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、ピロリジニル、4H-キノリジニル、2-オキソピペラジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、2-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、オキセタニル、チエタニル、3-ジオキソラニル、1,4-ジオキサニル、2,5-ジオキシイミダゾリジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、インドリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリン-1-イル、テトラヒドロイソキノリン-2-イル、テトラヒドロイソキノリン-3-イル、テトラヒドロイソキノリン-4-イル、チオモルホリン-4-イル、1-オキシド-1-チオモルホリン-4-イル、1-ジオキシド-1-チオモルホリン-4-イル、1,3-ジオキソラニル、1,4-オキサチアニル、1,4-ジチアニル、1,3,5-トリオキサニル、1H-ピロリジニル、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチオフェニル、N-ホルミルピペラジニル、及びモルホリン-4-イルが挙げられる。
【0070】
「ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル」という用語は、基-(C=O)-NH-アルキル-ヘテロシクリルを指し、アルキル及びヘテロシクリルは本明細書で定義される通りである。
【0071】
「(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル」という用語は、基-アルキル-NRを指し、式中、Rはアルキル基であり、Rはヘテロシクリル基であり、アルキル及びヘテロシクリルは本明細書で定義される通りである。
【0072】
「ヘテロシクリルカルボニル」という用語は、基-(C=O)-ヘテロシクリルを指し、ヘテロシクリルは本明細書で定義される通りである。
【0073】
「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、基-アルキル-ヘテロシクリルを指し、アルキル及びヘテロシクリルは本明細書で定義される通りである。
【0074】
「ヘテロシクリルオキシ」という用語は、基-O-ヘテロシクリルを指し、ヘテロシクリルは本明細書で定義される通りである。
【0075】
「ヘテロシクリルスルホニル」という用語は、基-SO-ヘテロシクリルを指し、ヘテロシクリルは本明細書で定義される通りである。
【0076】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、基-アルキル-OHを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0077】
「ヒドロキシアルキルアミノアルキル」という用語は、基-アルキル-NH-アルキル-OHを指し、アルキルは本明細書で定義される通りである。
【0078】
「ヒドロキシカルボニル」という用語は、基-C(=O)-OHを指し、カルボニルは本明細書で定義される通りである。換言すれば、「ヒドロキシカルボニル」はカルボン酸基に対応する。
【0079】
「オキソ」という用語は、置換基=Oを指す。
【0080】
「スルホニルアミノ」という用語は、基-NH-SOを指す。
【0081】
数字に先行する「約」という用語は、当該数字の上下10%の値を包含する。「約」という用語が指示する値もそれ自体が明確に開示されることが好ましいと理解されるべきである。
【0082】
「投与」またはその変形(例えば「投与すること」)という用語は、単独で、または薬学的に許容される組成物の一部として、活性剤または活性成分を、病態、症状、または疾患を治療または予防しようとする患者に与えることを意味する。
【0083】
「アンタゴニスト」という用語は、タンパク質に結合して、タンパク質の生物学的活性化とそれによる上記タンパク質の作用を遮断する天然化合物または合成化合物を指す。タンパク質は、受容体、すなわち細胞外からの化学シグナルを受け取るタンパク質分子であり得る。したがって、「アデノシン受容体アンタゴニスト」は、患者に投与すると、アデノシン受容体の活性化に関連する生物学的活性の阻害または下方制御を患者にもたらす任意の化学物質を包含する。生物学的活性には、本来であれば天然リガンドのアデノシン受容体への結合により生じる下流の生物学的効果のいずれかを含む。そのようなアデノシン受容体アンタゴニストには、アデノシン受容体の活性化、またはアデノシン受容体活性化の下流の生物学的効果のいずれかを遮断することができる任意の薬剤が含まれる。
【0084】
「阻害剤」という用語は、遺伝子及び/またはタンパク質の発現を阻害または著しく低減もしくは下方制御する生物学的効果を有するか、あるいはタンパク質の生物学的活性を阻害または著しく低減する生物学的効果を有する天然または合成の化合物を指す。したがって、「ENT阻害剤」または「ENTファミリートランスポーター阻害剤」とは、ENTファミリートランスポーターの生物学的活性を阻害するか、または著しく低減もしくは下方制御する生物学的効果を有する化合物を指す。
【0085】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、それらが望ましい生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。
【0086】
「化学療法」という用語は、標準化学療法レジメンの一部として1種以上の抗がん剤(化学療法剤)を使用するがん治療の一種を指す。化学療法は、治癒を目的として行われる場合もあれば、延命または症状の軽減を目的とする場合もある。化学療法剤は、例えば、抗がん性アルキル化剤、抗がん性代謝拮抗剤、抗がん性抗生物質、植物由来抗がん剤、抗がん性白金配位化合物、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0087】
「ホルモン療法」という用語は、医学的治療でのホルモンの使用を指す。一実施形態では、ホルモン療法は腫瘍学的なホルモン療法である。
【0088】
「ヒト」という用語は、発達段階を問わない(すなわち、新生児、乳児、若年、青年、成人)両性の対象を指す。
【0089】
「患者」という用語は、医療を受けるのを待っているかもしくは受けている、または医療処置の対象であるか、対象となる哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。
【0090】
「免疫療法」という用語は、特異的標的、例えばがん細胞に対する免疫応答を誘導及び/または増強することを目的とする療法を指す。免疫療法は、チェックポイント阻害剤、チェックポイントアゴニスト(別称T細胞アゴニスト)、IDO阻害剤、PI3K阻害剤、アデノシン受容体阻害剤、アデノシン産生酵素阻害剤、養子移入、治療用ワクチン、及びそれらの組み合わせの使用を伴う場合がある。
【0091】
「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖いずれかの形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの、ホスホジエステル結合によって共有結合されたヌクレオチドのポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似する結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと類似する方法で代謝される天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。
【0092】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって互いに結合された50アミノ酸未満のアミノ酸の線状ポリマーを指す。
【0093】
「薬学的に許容される」という表現は、医薬組成物の成分が互いに適合性であり、それが投与される対象にとって有害ではないことを指す。
【0094】
「薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバント」という表現は、動物、好ましくはヒトに投与されたときに、副作用、アレルギー反応、または他の有害な反応を生じさせない物質を指す。それには、例えば、溶媒、共溶媒、抗酸化剤、界面活性剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤(または保存剤)、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、造粒剤または結合剤、滑沢剤、崩壊剤、流動促進剤、希釈剤または充填剤、吸着剤、分散剤、懸濁剤、コーティング剤、増量剤、剥離剤、吸収遅延剤、甘味剤、香味剤などのあらゆる非活性物質を含む。ヒト投与の場合、調製物は、例えばFDA局またはEMAなどの規制当局が要求する滅菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たす必要がある。
【0095】
本明細書で使用される「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、病態もしくは疾患及び/またはその付随症状の発症を遅延または排除する方法、患者が病態または疾患に罹患することを妨げる方法、あるいは患者が病態または疾患に罹患するリスクを軽減する方法を指す。
【0096】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、例えばエステルまたはアミドなど、そのin vivo生体内変換生成物が生物学活性薬物を生成する、式(I)の化合物の薬理学的に許容される誘導体を意味する。プロドラッグは一般に、バイオアベイラビリティの増加を特徴とし、in vivoで容易に代謝され、生物学的活性化合物になる。
【0097】
「放射線療法」という用語は、X線、ガンマ線、中性子線、電子線、陽子線、及び放射線源などの様々な放射線を用いたがん治療法を指す。これはがん治療の一部として、悪性細胞を制御または殺傷するために使用される。身体の一領域に限局しているものであれば、多くの種類のがんを放射線療法で治癒させることができる。また、原発性悪性腫瘍を切除する手術後の腫瘍の再発を防止するために、補助療法の一部として使用することもできる。放射線療法は主に、外照射放射線療法(EBRTまたはXRT);小線源療法または密封線源放射線療法;及び全身放射性同位元素療法(RIT)または非密封線源放射線療法の3通りに区分される。
【0098】
「治療有効量」または「有効量」または「治療有効用量」という用語は、著しい負の作用または有害な副作用を対象に引き起こすことなく、(1)対象におけるがんの発症を遅延もしくは予防すること;(2)がんの重篤度もしくは発生率を低下させること;(3)対象に影響を及ぼす、がんの1つ以上の症状の進行、重症化、もしくは悪化を減速もしくは停止させること;(4)対象に影響を及ぼす、がんの症状の改善をもたらすこと;または(5)対象に影響を及ぼす、がんを治癒することを目的とする活性成分の量または用量を指す。予防薬または予防処置として、がんの発症前に治療有効量を投与してもよい。代わりに、または加えて、治療処置として、がんの発病後に治療有効量を投与してもよい。
【0099】
「治療すること」または「治療」という用語は、治癒的治療を指し、その場合、標的となる病理的な病態または疾患を予防または減速することを目的とする。対象または哺乳動物が、本発明に従う治療を受けた後に、以下、すなわち、がん細胞数の減少;及び/または特定の疾患または病態に関連する1つ以上の症状のある程度の緩和;罹患率及び死亡率の低下、ならびに生活の質の問題の改善のうち、1つ以上の観察可能及び/または測定可能な減少または消失を示す場合、対象または哺乳動物は、疾患または異常または病態の「治療」は奏効している。疾患の治療の奏功及び改善を評価するための上記パラメーターは、医師が熟知している日常的な手順によって容易に測定可能である。
【0100】
「幹細胞移植」という用語は、健常造血細胞(幹細胞)を患者に与え、疾患によってまたは手順の一部として与えられる放射線もしくは高用量の抗がん剤によって破壊された自己細胞を置き換える手順を指す。健常幹細胞は、患者の血液または骨髄、ドナー、または新生児の臍帯血に由来し得る。幹細胞移植は、自家移植(処置前に採取して保存された患者自身の幹細胞を使用)、同種異系移植(一卵性双生児以外の他者から供与された幹細胞を使用)、または同種移植(一卵性双生児により供与された幹細胞を使用)であり得る。
【0101】
「対象」という用語は、哺乳動物を指し、好ましくはヒトである。一実施形態では、対象はがんと診断されている。一実施形態では、対象とは、医療を受けるのを待っているかもしくは受けている、または医療処置の対象であるか、またはがんなどの疾患の発生もしくは進行についてモニタリングされる患者、好ましくはヒト患者である。一実施形態では、対象とは、がんの発生もしくは進行について治療及び/またはモニタリングされるヒト患者である。一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。一実施形態では、対象は成人である。別の実施形態では、対象は小児である。
【発明を実施するための形態】
【0102】
がん治療に使用するためのENT阻害剤
本発明は、がん治療のためのENTファミリートランスポーター阻害剤の使用に関する。
【0103】
以下、ENTファミリートランスポーター阻害剤をENT阻害剤とも称する。
【0104】
SLC29としても知られる平衡型ヌクレオシドトランスポーター(ENT)ファミリーは、アデノシンのようなヌクレオシド基質を細胞に輸送する原形質膜輸送タンパク質群である。ENT1、ENT2、ENT3、及びENT4という名称の4つの公知のENTがある。
【0105】
一実施形態では、ENT阻害剤は、ENT1の阻害剤である。
【0106】
一実施形態では、ENT阻害剤は、ENT1に選択的な阻害剤である。一実施形態では、ENT阻害剤は、他のENT阻害剤と比較して、特にENT2及びENT4と比較してENT1に選択的な阻害剤である。
【0107】
一実施形態では、ENT阻害剤は、小分子、核酸、ペプチド、及び抗体からなる群より選択される。
【0108】
ENT阻害剤の例として、ジラゼプ、ジピリダモール、NBMPR(ニトロベンジルチオイノシン)、ドラフラジン、STI-571(グリベック)、チカグレロル、ソルフラジン、ミオフラジン、デシニウム-22、ロピナビル、キニジン、8MDP、TC-T 6000、5-ヨードツベルシジン、シロスタゾール、それらの塩、及びそれらの任意の混合物が挙げられる。具体的な実施形態では、ENT阻害剤は、NBMPR、ジピリダモール、ジラゼプ、チカグレロル、及びそれらの塩(ジラゼプ塩酸塩を含む)から選択される。具体的な実施形態では、ENT阻害剤は、ジピリダモール、ジラゼプ、チカグレロル、及びそれらの塩(ジラゼプ塩酸塩を含む)から選択される。一実施形態では、ENT阻害剤は、NBMPまたはその塩である。一実施形態では、ENT阻害剤は、ジピリダモールまたはその塩である。一実施形態では、ENT阻害剤は、ジラゼプまたはその塩(ジラゼプ塩酸塩を含む)である。一実施形態では、ENT阻害剤は、チカグレロルまたはその塩である。
【0109】
ENT1阻害剤の例として、ジラゼプ、ジピリダモール、NBMPR(ニトロベンジルチオイノシン)、ドラフラジン、STI-571(グリベック)、チカグレロル、8MDP、5-ヨードツベルシジン、シロスタゾール、それらの塩、及びそれらの任意の混合物が挙げられる。選択的ENT1阻害剤の例として、NBMPR、STI-571(グリベック)、チカグレロル、それらの塩、及びそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0110】
したがって、本発明は、ヒト対象におけるがん治療に使用されるENTファミリートランスポーター阻害剤に関する。
【0111】
一実施形態では、対象はENTファミリートランスポーター阻害剤と組み合わせて追加治療薬で治療されるか、またはENTファミリートランスポーター阻害剤の投与から約14日以内に追加治療薬を与えられている。一実施形態では、追加治療薬は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む。一実施形態では、ENTファミリートランスポーター阻害剤は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む追加治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に投与される。
【0112】
一実施形態では、対象は、以前に少なくとも1種の先行治療的処置を受けており、少なくとも1種の先行治療的処置の投与以降、ENTファミリートランスポーター阻害剤の投与前に進行している。一実施形態では、先行治療的処置は、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される。
【0113】
したがって、本発明は、有効量のENTファミリートランスポーター阻害剤を、それを必要とするヒト対象に投与することを含む、がん治療の方法に関する。
【0114】
一実施形態では、本発明の方法において、対象はENTファミリートランスポーター阻害剤と組み合わせて追加治療薬で治療されるか、またはENTファミリートランスポーター阻害剤の投与から約14日以内に追加治療薬を与えられている。一実施形態では、本発明の方法において、追加治療薬は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む。アデノシン受容体アンタゴニストに関するさらなる詳細を以下に記載する。
【0115】
一実施形態では、本発明の方法において、対象は、以前に少なくとも1種の先行治療的処置を受けており、少なくとも1種の先行治療的処置の投与以降、ENTファミリートランスポーター阻害剤の投与前に進行している。一実施形態では、本発明の方法において、先行治療的処置は、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される。
【0116】
本発明はまた、ヒト対象でのがん治療に有効な量のENTファミリートランスポーター阻害剤を含む配合剤に関する。
【0117】
一実施形態では、本発明の製剤において、ENTファミリートランスポーター阻害剤は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む追加治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に投与される。
【0118】
併用:ENT阻害剤とアデノシン受容体アンタゴニスト
本発明はさらに、ENT阻害剤とアデノシン受容体アンタゴニストとの併用に関する。
【0119】
したがって、本発明は、
(a)有効量のENT阻害剤と、
(b)有効量のアデノシン受容体アンタゴニストと、を含む組み合わせに関する。
【0120】
本発明の文脈において、「組み合わせ」という用語は、好ましくは、ENT阻害剤とA2ARアンタゴニストが組み合わされて存在することを意味する。したがって、本発明の組み合わせは、1つの同じ混合物中にすべての成分を含む1つの組成物(例えば、医薬組成物)として存在しても、または異なる成分がパーツキットの異なる部分を形成するようなパーツキットとして存在してもよい。ENT阻害剤の投与及びA2ARアンタゴニストの投与は、同時にまたは時差的に、ほぼ同じかまたは異なる投与時期に(すなわち、各成分の投与回数がほぼ同じかまたは異なる)、同じ投与部位または異なる投与部位のいずれかに、ほぼ同じか異なる剤形で行うことができる。
【0121】
本発明はさらに、アデノシン受容体アンタゴニストとENT阻害剤との組み合わせを、それを必要とする患者に投与することを含む、がん治療の方法に関する。
【0122】
ENT阻害剤に関する上記の実施形態は、本発明の組み合わせにも適用される。特に、一実施形態では、本発明の組み合わせにおいて、ENT阻害剤は、ENT1の阻害剤である。
【0123】
本発明の組み合わせは、第2の成分として少なくとも1種のアデノシン受容体アンタゴニストを含む。
【0124】
上記に定義する通り、「アデノシン受容体アンタゴニスト」とは、患者に投与すると、アデノシン受容体の活性化に関連する生物学的活性の阻害または下方制御を患者にもたらす化合物を指す。生物学的活性には、本来であれば天然リガンドのアデノシン受容体への結合により生じる下流の生物学的効果のいずれかを含む。そのようなアデノシン受容体アンタゴニストには、アデノシン受容体の活性化、またはアデノシン受容体活性化の下流の生物学的効果のいずれかを遮断することができる任意の薬剤が含まれる。
【0125】
アデノシン受容体(またはP1受容体)は、アデノシンを内因性リガンドとするプリン作動性Gタンパク質共役型受容体のクラスである。ヒトにおけるアデノシン受容体には、A1、A2A、A2B、及びA3という4つの公知の種類が存在し、それぞれが異なる遺伝子(それぞれADOARA1、ADORA2A、ADORA2B、及びADORA3)によってコードされる。
【0126】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A1受容体、A2A受容体、A2B受容体、A3受容体、またはそれらの組み合わせのアンタゴニストである。
【0127】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2A受容体、A2B受容体、またはそれらの組み合わせのアンタゴニストである。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2AまたはA2B受容体アンタゴニストである。
【0128】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2A受容体のアンタゴニスト(A2ARアンタゴニスト)である。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2B受容体のアンタゴニスト(A2BRアンタゴニスト)である。
【0129】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、他のアデノシン受容体と比較してA2A受容体に選択的なアンタゴニストである。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2B受容体と比較してA2A受容体に選択的なアンタゴニストである。
【0130】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、他のアデノシン受容体と比較してA2B受容体に選択的なアンタゴニストである。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2A受容体と比較してA2B受容体に選択的なアンタゴニストである。
【0131】
具体的な実施形態では、本発明の組み合わせは、本明細書で定義される少なくとも1種のA2A受容体アンタゴニストと、例えば少なくとも1種のENT1阻害剤などの、上記に定義される少なくとも1種のENT阻害剤とを含む。
【0132】
A2A受容体アンタゴニスト
一実施形態では、本発明の組み合わせは、少なくとも1種のA2ARアンタゴニストを含む。
【0133】
「A2ARアンタゴニスト」とは、患者に投与すると、A2A受容体の活性化に関連する生物学的活性の阻害または下方制御を患者にもたらす化合物を指す。生物学的活性には、本来であれば天然リガンドのA2A受容体への結合により生じる下流の生物学的効果のいずれかを含む。そのようなA2ARアンタゴニストには、A2A受容体の活性化、またはA2A受容体活性化の下流の生物学的効果のいずれかを遮断することができる任意の薬剤が含まれる。
【0134】
A2ARアンタゴニストの例として、プレラデナント(SCH-420,814)、ビパデナント(BIIB-014)、トザデナント(SYK-115)、ATL-444、イストラデフィリン(KW-6002)、MSX-3、SCH-58261、SCH-412,348、SCH-442,416、ST-1535、カフェイン、VER-6623、VER-6947、VER-7835、ZM-241,385、テオフィリンが挙げられる。また、WO2018/178338、WO2011/121418、WO2009/156737、WO2011/095626、またはWO2018/136700に開示されるA2ARアンタゴニストも含まれる。
【0135】
一実施形態では、A2ARアンタゴニストは、チオカルバメート誘導体、特にWO2018/178338に開示されるもののようなチオカルバメート誘導体である。より好ましくは、A2ARアンタゴニストは、以下に記載される式(I)のチオカルバメート誘導体である。
【0136】
したがって、具体的な実施形態では、本発明は
(a)ENT阻害剤と、
(b)式(I)
【化1】
(式中、R及びRは以下に定義される通りである)のチオカルバメート誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であるA2ARアンタゴニストと、
を含む組み合わせを提供する。
【0137】
好ましい実施形態では、A2ARアンタゴニストは、式(I):
【化2】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
は、5員もしくは6員のヘテロアリールまたは5員もしくは6員のアリールを表し、ヘテロアリール基またはアリール基は任意選択で、C1~C6アルキル(好ましくはメチル)及びハロ(好ましくはフルオロまたはクロロ)から選択される1つ以上の置換基で置換され、好ましくは、Rは5員ヘテロアリールを表し、より好ましくは、Rはフリルを表し;
は、6員アリールまたは6員ヘテロアリールを表し、
ヘテロアリール基またはアリール基は任意選択で、ハロ、アルキル、ヘテロシクリル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボニル、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、アルキルスルホンイミドイル、カルボニルアミノ、スルホニルアミノ、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換され;
上記置換基が任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されるか;
あるいは、ヘテロアリール基またはアリール基は任意選択で、それらが結合する原子とともに5員もしくは6員のアリール環、5員もしくは6員のヘテロアリール環、5員もしくは6員のシクロアルキル環、または5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成する2個の置換基で置換され、任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0138】
一実施形態では、式(I)の好ましい化合物は、式(Ia):
【化3】
のもの、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
は、5員もしくは6員のヘテロアリールまたは5員もしくは6員のアリールを表し、ヘテロアリール基またはアリール基は任意選択で、C1~C6アルキル(好ましくはメチル)及びハロ(好ましくはフルオロまたはクロロ)から選択される1つ以上の置換基で置換され、好ましくは、Rは5員ヘテロアリールを表し、より好ましくは、Rはフリルを表し;
及びXはそれぞれ独立してCまたはNを表し;
1’は、XがNである場合に存在しないか、XがCである場合に、R1’は、H、ハロ、アルキル、ヘテロシクリル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボニル、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、アルキルスルホンイミドイル、カルボニルアミノ、スルホニルアミノ、またはアルキルスルホンアルキルを表し、
上記置換基が任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換され;
2’は、H、ハロ、アルキル、ヘテロシクリル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボニル、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、アルキルスルホンイミドイル、カルボニルアミノ、スルホニルアミノ、またはアルキルスルホンアルキルを表し、
上記置換基が任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されるか;
あるいは、R1’及びR2’は、それらが結合する原子とともに5員もしくは6員のアリール環、5員もしくは6員のヘテロアリール環、5員もしくは6員のシクロアルキル環、または5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換され;
3’は、XがNである場合に存在しないか、XがCである場合に、R3’は、Hまたはハロ、好ましくは、HまたはFを表し;
4’は、Hまたはハロ、好ましくは、HまたはFを表し;
5’は、Hまたはハロ、好ましくは、HまたはFを表す。
【0139】
本発明の具体的な一実施形態では、Rは、5員もしくは6員のヘテロアリールまたは5員もしくは6員のアリールを表し、ヘテロアリール基またはアリール基は任意選択で、C1~C6アルキル(好ましくはメチル)及びハロ(好ましくはフルオロまたはクロロ)から選択される1つ以上の置換基で置換される。好ましい実施形態では、Rは5員ヘテロアリールを表し、より好ましくは、Rはフリルを表す。
【0140】
本発明の具体的な一実施形態では、X及びXはそれぞれ独立してCまたはNを表す。別の具体的な実施形態では、X及びXはいずれもCを表す。
【0141】
本発明の具体的な一実施形態では、R1’は、XがNである場合に存在しない。
【0142】
別の具体的な実施形態では、XがCである場合に、R1’は、H、ハロ、アルキル、ヘテロシクリル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボニル、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、アルキルスルホンイミドイル、カルボニルアミノ、スルホニルアミノ、またはアルキルスルホンアルキルを表し、上記置換基が任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0143】
好ましい実施形態では、R1’置換基は任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0144】
本発明の具体的な一実施形態では、R2’は、H、ハロ、アルキル、ヘテロシクリル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、カルボニル、アルキルカルボニル、アミノカルボニル、ヒドロキシカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヘテロシクリルスルホニル、アルキルスルホンイミドイル、カルボニルアミノ、スルホニルアミノ、またはアルキルスルホンアルキルを表し、上記置換基が任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0145】
好ましい実施形態では、R2’置換基は任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、ヘテロシクリルアルキル、ジヒドロキシアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0146】
本発明の別の具体的な実施形態では、R1’及びR2’は、それらが結合する原子とともに5員もしくは6員のアリール環、5員もしくは6員のヘテロアリール環、5員もしくは6員のシクロアルキル環、または5員もしくは6員のヘテロシクリル環を形成し、任意選択で、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0147】
本発明の具体的な一実施形態では、R3’は、XがNである場合に存在しない。本発明の別の具体的な実施形態では、R3’は、XがCである場合、Hまたはハロを表す。好ましい実施形態では、R3’は、XがCである場合、HまたはFを表す。
【0148】
本発明の具体的な一実施形態では、R4’は、Hまたはハロを表す。好ましい実施形態では、R4’は、HまたはFを表す。
【0149】
本発明の具体的な一実施形態では、R5’は、Hまたはハロを表す。好ましい実施形態では、R5’は、HまたはFを表す。
【0150】
一実施形態では、式(Ia)の好ましい化合物は、式(Ia-1):
【化4】
のもの、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、R、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’は、式(Ia)に定義される通りである。
【0151】
一実施形態では、式(Ia-1)の好ましい化合物は、式(Ia-1a):
【化5】
のもの、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
及びR3’は、式(Ia)に定義される通りであり;
1’’は、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の基で置換されたアルキル基またはヘテロシクリル基を表す。
【0152】
本発明の具体的な一実施形態では、R1’’は、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の基で置換されたアルキル基またはヘテロシクリル基を表す。
【0153】
好ましい実施形態では、R1’’は、ヒドロキシ、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の基で置換されたアルキル基またはヘテロシクリル基を表す。
【0154】
一実施形態では、式(Ia-1)の好ましい化合物は、式(Ia-1b):
【化6】
のもの、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
及びR3’は、式(Ia)に定義される通りであり;
1’は、Hまたはハロ、好ましくは、HまたはFを表し;
2’’は、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の基で置換されたアルキル基またはヘテロシクリル基を表す。
【0155】
本発明の具体的な一実施形態では、R1’は、Hまたはハロを表す。好ましい実施形態では、R1’は、HまたはFを表す。
【0156】
本発明の具体的な一実施形態では、R2’’は、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アルキル、アルケニル、アルデヒド、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホキシドアルキル、アルキルスルホニル、及びアルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の基で置換されたアルキル基またはヘテロシクリル基を表す。
【0157】
好ましい実施形態では、R2’’は、ヒドロキシ、シアノ、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキン、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、アルキルスルホキシド、アルキルスルホンアルキルから選択される1つ以上の基で置換されたアルキル基またはヘテロシクリル基を表す。
【0158】
一実施形態では、式(Ia-1)の好ましい化合物は、式(Ia-1c)または(Ia-1d):
【化7】
のもの、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
及びR3’は、式(Ia)に定義される通りであり;
1’は、Hまたはハロ、好ましくは、HまたはFを表し;
2’は、Hまたはハロ、好ましくは、HまたはFを表し;
1i及びR1iiは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキンアルキル、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシドアルキル、またはアルキルスルホンアルキルを表し;
2i及びR2iiは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキンアルキル、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシドアルキル、またはアルキルスルホンアルキルを表す。
【0159】
本発明の具体的な一実施形態では、R1’は、Hまたはハロを表す。好ましい実施形態では、R1’は、HまたはFを表す。
【0160】
本発明の具体的な一実施形態では、R2’は、Hまたはハロを表す。好ましい実施形態では、R2’は、HまたはFを表す。
【0161】
本発明の具体的な一実施形態では、R1i及びR1iiは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキンアルキル、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシドアルキル、またはアルキルスルホンアルキルを表す。
【0162】
好ましい実施形態では、R1i及びR1iiは、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、またはヘテロシクリルアルキルアミノカルボニルを表す。
【0163】
本発明の具体的な一実施形態では、R2i及びR2iiは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシアルキル、ジヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルアミノアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、(ヘテロシクリル)(アルキル)アミノアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルヘテロアリール、アルキンアルキル、アルコキシ、アミノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキルカルボニルアミノ、アミノカルボニルアルキルアミノ、(アミノカルボニルアルキル)(アルキル)アミノ、アルケニルカルボニルアミノ、ヒドロキシカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノアルキルアミノカルボニル、アルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクリルアルキルアミノカルボニル、(アルキルアミノアルキル)(アルキル)アミノカルボニル、アルキルアミノアルキルカルボニル、ジアルキルアミノアルキルカルボニル、ヘテロシクリルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アルキルスルホキシドアルキル、またはアルキルスルホンアルキルを表す。
【0164】
好ましい実施形態では、R2i及びR2iiは、それぞれ独立して、水素、アルキル、ヘテロシクリルアルキル、ジヒドロキシアルキル、ジアルキルアミノアルキル、またはヘテロシクリルアルキルアミノカルボニルを表す。好ましい実施形態では、R2i及びR2iiは、それぞれ独立して、水素、アルキル、またはジアルキルアミノアルキルを表す。
【0165】
一実施形態では、式(Ia)の好ましい化合物は、式(Ia-2)または(Ia-3):
【化8】
【化9】
のもの、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、式中、R、R2’、R3’、R4’、及びR5’は、式(Ia)に定義される通りである。
【0166】
本発明の式(I)の特に好ましい化合物は、以下の表1に列挙されるもの
ならびにその薬学的に許容される塩及び溶媒和物である。
表1
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【表1-27】
【表1-28】
【表1-29】
【表1-30】
【表1-31】
【表1-32】
【表1-33】
【表1-34】
【表1-35】
【表1-36】
【表1-37】
【表1-38】
【表1-39】
【0167】
表1において、「Cpd」という用語は化合物を意味する。
【0168】
表1の化合物は、ChemBioDraw(登録商標)Ultra version 12.0(PerkinElmer)使用して命名した。
【0169】
一実施形態では、A2ARアンタゴニストは、以下から選択される:
(R,S)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン(化合物7);
(+)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン(化合物8a)及び
(-)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン(化合物8b)。
【0170】
具体的な実施形態では、A2ARアンタゴニストは、以下から選択される:
(R,S)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン(化合物7);及び
(+)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン(化合物8a)。
【0171】
好ましい実施形態では、A2ARアンタゴニストは、(+)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン(化合物8a)である。
【0172】
別の好ましい実施形態では、A2ARアンタゴニストは、(-)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン(化合物8b)である。一実施形態では、本発明はまた、式(I)及びそのサブ式の化合物のエナンチオマー、塩、溶媒和物、多形、多成分錯体、及び液晶に関する。
【0173】
一実施形態では、本発明はまた、式(I)及びそのサブ式の化合物の多形及び晶相、そのプロドラッグ及び異性体(光学異性体、幾何異性体、及び互変異性異性体を含む)、ならびに式(I)及びそのサブ式の同位体標識化合物に関する。
【0174】
式(I)及びそのサブ式の化合物は、不斉中心を含み得るため、異なる立体異性体の形態で存在する場合がある。したがって、本発明は、すべての可能な立体異性体を包含し、ラセミ化合物のみならず、個々のエナンチオマー及びそれらの非ラセミ混合物も同様に包含する。単一のエナンチオマーとしての化合物が望ましい場合、そのようなものを立体特異的合成によって、最終生成物または任意の利便な中間体の分割によって、またはそれぞれが当技術分野において公知であるキラルクロマトグラフィー法によって得ることができる。最終生成物、中間体、または出発物質の分割は、当技術分野において公知である任意の好適な方法によって実施することができる。
【0175】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。式(I)及びそのサブ式の化合物の薬学的に許容される塩には、その酸付加塩及び塩基塩が含まれる。好適な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、及びキシナホ酸塩が挙げられる。好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例として、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩、2-(ジエチルアミノ)エタノール塩、エタノールアミン塩、モルホリン塩、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン塩、及び亜鉛塩が挙げられる。酸及び塩基のヘミ塩、例えば、ヘミ硫酸塩及びヘミカルシウム塩も形成され得る。好ましい薬学的に許容される塩として、塩酸塩/塩化物塩、臭化水素酸塩/臭化物塩、重硫酸塩/硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、トシル酸塩、エシル酸塩、及び酢酸塩が挙げられる。特に好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、HCl塩またはエシル酸塩の形態である。
【0176】
本発明の化合物が酸性基に加えて塩基性基を含有している場合、本発明の化合物はまた、内部塩を形成することができ、そのような化合物は本発明の範囲内である。本発明の化合物が水素供与性ヘテロ原子(例えば、NH)を含有している場合、本発明はまた、分子内の塩基性基または原子への上記水素原子の移動によって形成される塩及び/または異性体を包含する。
【0177】
式(I)及びそのサブ式の化合物の薬学的に許容される塩は、
(i)式(I)の化合物を望ましい酸と反応させること;
(ii)式(I)の化合物を望ましい塩基と反応させること;
(iii)式Iの化合物の好適な前駆体から、酸もしくは塩基に不安定な保護基を除去すること、または望ましい酸を用いて、好適な環状前駆体、例えば、ラクトンもしくはラクタムを開環すること;あるいは
(iv)適切な酸との反応によって、または好適なイオン交換カラムを用いて、式(I)の化合物のある塩を別の塩に変換することのうち、1つ以上の方法によって調製することができる。
【0178】
これらの反応はすべて、通常、溶液中で実施される。塩は、溶液から沈殿させ、これを濾取することも、または溶媒の蒸発によって回収することもできる。塩のイオン化の程度は、完全イオン化から、ほぼ非イオン化まで変動し得る。
【0179】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、酢酸塩、ラクトビオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、重炭酸塩、マレイン酸塩、重硫酸塩、マンデル酸塩、酒石酸水素塩、メシル酸塩、ホウ酸塩、臭化メチル、臭化物塩、メチル硝酸塩、エデト酸カルシウム、メチル硫酸塩、カンシル酸塩、ムチン酸塩、炭酸塩、ナプシル酸塩、塩化物塩、硝酸塩、クラブラン酸塩、N-メチルグルカミン、クエン酸塩、アンモニウム塩、二塩酸塩、オレイン酸塩、エデト酸塩、シュウ酸塩、エジシル酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、エストール酸塩、パルミチン酸塩、エシル酸塩、パントテン酸塩、フマル酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、グルセプト酸塩、ポリガラクツロン酸塩、グルコン酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩、ステアリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、硫酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、塩基性酢酸塩、ヒドラバミン塩、コハク酸塩、臭化水素酸塩、タンニン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、テオクル酸塩、ヨウ化物塩、トシル酸塩、イソチオン酸塩、トリエトヨウ化物、乳酸塩、パモ酸塩、及び吉草酸塩などのような、溶解性または加水分解特性を変更するための剤形として使用できるか、または徐放性製剤もしくはプロドラッグ製剤に使用することができる、許容される塩をすべて含むことを意図する。本発明の化合物の特定の機能に応じて、本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛などの陽イオンから形成されるもの、及びアンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルタミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N´-ジベンジルエチレン-ジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチル-アミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムなどの塩基から形成されるものが含まれる。
【0180】
これらの塩は、標準的な手順によって、例えば、遊離酸を好適な有機塩基または無機塩基と反応させることによって調製することができる。アミノなどの塩基性基が存在する場合、酸性塩、すなわち塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、パモ酸塩、エシル酸塩、トシル酸塩などを剤形として使用することができる。
【0181】
加えて、本発明の化合物の塩に関しては、一般に、薬学的に許容される塩が好ましいが、最も広義には、例えば、本発明の化合物の単離及び/または精製に使用できる非薬学的に許容される塩も本発明に含まれることに留意すべきである。例えば、光学活性な酸または塩基で形成される塩を使用して、上記の式(I)の化合物の光学活性異性体の分離を容易にすることができるジアステレオ異性体塩を形成することができる。
【0182】
本発明の化合物は、薬学的に許容される溶媒和物の形態であってもよい。式(I)及びそのサブ式の化合物の薬学的に許容される溶媒和物は、化学量論量または準化学量論量の1種以上の薬学的に許容される溶媒分子(エタノールまたは水など)を含有する。「水和物」という用語は、上記溶媒が水である場合を指す。
【0183】
また、アルコール基が存在する場合、薬学的に許容されるエステル、例えば、酢酸エステル、マレイン酸エステル、ピバロイルオキシメチルなどを使用することができ、これらのエステルは、溶解性または加水分解特性を変化させ、徐放性製剤またはプロドラッグ製剤として使用されることが当技術分野において公知である。
【0184】
別の実施形態では、A2ARアンタゴニストは、WO2011/121418に開示されるA2ARアンタゴニストである。特に、A2ARアンタゴニストは、WO2011/121418の実施例1の化合物、すなわち、NIR178としても知られる5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンである:
【化10】
【0185】
別の実施形態では、A2ARアンタゴニストは、WO2009/156737に開示されるA2ARアンタゴニストである。特に、A2ARアンタゴニストは、WO2009/156737の実施例1Sの化合物、すなわち、CPI-444としても知られる(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ))メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミンである:
【化11】
【0186】
別の実施形態では、A2ARアンタゴニストは、WO2011/095626に開示されるA2ARアンタゴニストである。特に、A2ARアンタゴニストは、WO2011/095626の化合物(cxiv)、すなわち、AZD4635としても知られる6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンである:
【化12】
【0187】
別の実施形態では、A2ARアンタゴニストは、WO2018/136700に開示されるA2ARアンタゴニストである。特に、A2ARアンタゴニストは、WO2018/136700の実施例1の化合物、すなわち、AB928としても知られる3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリルである:
【化13】
【0188】
別の実施形態では、A2ARアンタゴニストは、プレラデナント(SCH-420,814)、すなわち、2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミンである:
【化14】
【0189】
別の実施形態では、A2ARアンタゴニストは、ビパデナント(BIIB-014)、すなわち、3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミンである:
【化15】
【0190】
別の実施形態では、A2ARアンタゴニストは、トザデナント(SYK-115)、すなわち、4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミドである:
【化16】
【0191】
したがって、一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、以下から選択される:
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミン;
3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミン;及び
4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミド。
【0192】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミンである。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミンである。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミンである。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリルである。
【0193】
A2B受容体アンタゴニスト
一実施形態では、本発明の組み合わせは、少なくとも1種のA2BRアンタゴニストを含む。
【0194】
「A2BRアンタゴニスト」とは、患者に投与すると、A2B受容体の活性化に関連する生物学的活性の阻害または下方制御を患者にもたらす化合物を指す。生物学的活性には、本来であれば天然リガンドのA2B受容体への結合により生じる下流の生物学的効果のいずれかを含む。そのようなA2BRアンタゴニストには、A2B受容体の活性化、またはA2B受容体活性化の下流の生物学的効果のいずれかを遮断することができる任意の薬剤が含まれる。
【0195】
A2BRアンタゴニストの例として、ビパデナント(BIIB-014)、CVT-6883、MRS-1706、MRS-1754、PSB-603、PSB-0788、PSB-1115、OSIP-339,391、ATL-801、テオフィリン、カフェインが挙げられる。
【0196】
具体的な組み合わせ
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)好ましくは、NBMPR、ジピリダモール、ジラゼプ、チカグレロル、及びそれらの塩(ジラゼプ塩酸塩を含む)から選択される、有効量のENT阻害剤、好ましくはENT1阻害剤と、
(b)好ましくは、
(+)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン;
(-)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
及びその薬学的に許容される塩から選択される、有効量のアデノシン受容体アンタゴニスト、好ましくはA2ARアンタゴニストと、を含む。
【0197】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)ENT阻害剤として有効量のジピリダモールと、
(b)好ましくは、
(+)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン;
(-)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オン;
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
及びその薬学的に許容される塩から選択される、有効量のアデノシン受容体アンタゴニスト、好ましくはA2ARアンタゴニストと、を含む。
【0198】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)好ましくは、NBMPR、ジピリダモール、ジラゼプ、チカグレロル、及びそれらの塩(ジラゼプ塩酸塩を含む)から選択される、有効量のENT阻害剤、好ましくはENT1阻害剤と、
(b)A2ARアンタゴニストとして、有効量の(+)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オンと、を含む。
【0199】
一実施形態では、本発明の組み合わせは、
(a)好ましくは、NBMPR、ジピリダモール、ジラゼプ、チカグレロル、及びそれらの塩(ジラゼプ塩酸塩を含む)から選択される、有効量のENT阻害剤、好ましくはENT1阻害剤と、
(b)A2ARアンタゴニストとして、有効量の(-)-5-アミノ-3-(2-(4-(2,4-ジフルオロ-5-(2-(メチルスルフィニル)エトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)エチル)-8-(フラン-2-イル)チアゾロ[5,4-e][1,2,4]トリアゾロ[1,5-c]ピリミジン-2(3H)-オンと、を含む。
【0200】
製剤と医薬組成物
本発明はさらに、本発明の組み合わせを含む製剤に関する。特に、本発明は、有効量のENTファミリーメンバー阻害剤と組み合わせた有効量のアデノシン受容体アンタゴニストに加えて、薬学的に許容される賦形剤を含む製剤を提供する。
【0201】
上記に列挙するアデノシン受容体アンタゴニスト及びENTファミリートランスポーター阻害剤に関する具体的な実施形態は、本発明の製剤の文脈においても適用される。
【0202】
本発明はさらに、本発明の組み合わせを含む医薬組成物に関する。
【0203】
一実施形態では、医薬組成物は、
(a)有効量のENT阻害剤と、
(b)有効量のアデノシン受容体アンタゴニストと、
(c)少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む。
【0204】
ENT阻害剤及びアデノシン受容体アンタゴニストに関する上記の実施形態は、本発明の医薬組成物にも適用される。
【0205】
好ましい実施形態では、本発明は、
(a)例えばENT1阻害剤などの、有効量のENT阻害剤と、
(b)チオカルバメート誘導体、より好ましくは、上記に定義される式(I)
【化17】
のチオカルバメート誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である、有効量のA2ARアンタゴニストと、
(c)少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む医薬組成物を提供する。
【0206】
一実施形態では、本発明の製剤または医薬組成物は、追加治療薬をさらに含む。
【0207】
投与形態の調製に使用される少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントは、当業者には明らかであり、最新版のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0208】
特に、本発明の医薬組成物は任意選択で、一般的に医薬製剤で使用されるそのような不活性物質を含有することができ、例えば、共溶媒、脂質担体、抗酸化剤、界面活性剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤(または保存剤)、等張剤、安定剤、造粒剤または結合剤、析出抑制剤、滑沢剤、崩壊剤、流動促進剤、希釈剤または充填剤、吸着剤、分散剤、懸濁剤、増量剤、剥離剤、甘味剤、香味剤などである。
【0209】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される共溶媒を含む。好ましくは、共溶媒は、カプリル酸、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルイソソルビド、及びそれらの混合物から選択される。具体的な実施形態では、本発明の医薬組成物は、カプリル酸及び/またはPEGを含む。有利には、組成物が共溶媒としてPEGを含む場合、PEGは低分子量であり、好ましくは、PEGはPEG400である。代替実施形態では、組成物がPEGを含む場合、PEGは中分子量のもの、好ましくはPEG3350である。
【0210】
具体的な実施形態では、本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される脂質担体を含む。好ましい実施形態では、脂質担体は、ラウロイルポリオキシル-32グリセリドである。この賦形剤は、Gattefosse(Saint-Priest-France)によって製造されたGelucire(登録商標)44/14に相当する。この賦形剤は、以下のラウロイルポリオキシル-32グリセリドNF/USP(NF:国民医薬品集;USP:米国薬局方);ラウロイルマクロゴール-32グリセリドEP(欧州薬局方);水素化ココナッツPEG-32エステル(INCI);CAS番号57107-95-6という参照名でも知られている。Gelucire(登録商標)44/14は、ラウリン酸(C12)のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、ならびにPEG-32モノエステル及びジエステルで構成される明確に規定された多成分物質に相当する。Gelucire(登録商標)44/14は、融点が42.5℃~47.5℃(44℃平均)の範囲であり、親水性/親油性バランス(HLB)値が14である。
【0211】
別の実施形態では、脂質担体は、ビタミンE TPGSである。この賦形剤は、以下のD-α-トコフェロールポリエチレングリコール-1000スクシナート;トコフェルソラン(Tocophersolan);トコフェルソラン(Tocofersolan);VEGS;α-[4-[[(2R)-3,4-ジヒドロ-2,5,7,8-テトラメチル-2-[(4R,8R)-4,8,12-トリメチルトリデシル]-2H-1-ベンゾピラン-6-イル]オキシ]-1,4-ジオキソブチル]-ω-ヒドロキシ-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル);ビタミンE PEGスクシナートという参照名でも知られており、コハク酸リンカーを介してポリエチレングリコール1000と複合体化されたビタミンEから形成される。ビタミンE TPGSは、融点37~41℃の範囲であり、親水性/親油性バランス(HLB)値が13である。
【0212】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、1種以上の抗酸化剤をさらに含み、好ましくは、抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、クエン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、メチオニン、及びビタミンEから選択され、より好ましくは、抗酸化剤はBHTである。
【0213】
いくつかの実施形態では、界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ドクサートナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート(20、80など)、ポロキサマー(188、407など)、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ビタミンE TPGS(ビタミンEポリエチレングリコールスクシナート)、クレモフォールRH40(ポリオキシル40水添ヒマシ油)、クレモフォールEL(ポリオキシル35水添ヒマシ油)、ポリエチレングリコール660 12-モノステアレート、solutol HS15(ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸)、labrasol(カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド)、labrafil M1944(オレオイルポリオキシル-6グリセリド)、ポリラクチド-ポリエチレングリコールコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(Soluplus(登録商標))などが添加される。
【0214】
いくつかの実施形態では、湿潤剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ビタミンE TPGS、ドクサートナトリウム、ポリソルベート80、ポロキサマー407などが添加される。好ましい湿潤剤はポロキサマー407である。
【0215】
いくつかの実施形態では、乳化剤、例えば、カルボマー、カラギーナン、ラノリン、レシチン、鉱油、オレイン酸、オレイルアルコール、ペクチン、ポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、トリエタノールアミン、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールモノカプリレートなどが添加される。好ましい乳化剤は、例えば、ポロキサマー、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールジラウレート、及びプロピレングリコールモノカプリレートである。
【0216】
いくつかの実施形態では、生理的条件に近似する範囲にpHを維持しやすくするために緩衝剤が使用される。好適な緩衝剤には有機酸及び無機酸ならびにそれらの塩が含まれ、例えば、クエン酸塩緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩緩衝液(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩緩衝液(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、及び酢酸塩緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)である。さらに、リン酸塩緩衝液、ヒスチジン緩衝液、及びTrisなどのトリメチルアミン塩を使用することができる。
【0217】
いくつかの実施形態では、pH調整剤、例えば、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化カリウム、メグルミン、炭酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、フマル酸、コハク酸、及びリンゴ酸などが添加される。
【0218】
いくつかの実施形態では、微生物の増殖を阻止するために防腐剤が添加される。本開示との使用に適した防腐剤として、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、ハロゲン化ベンザルコニウム(例えば、塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、ヘキサメトニウムクロリド、及びメチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、及び3-ペンタノールが挙げられる。
【0219】
いくつかの実施形態では、「安定剤」と呼ばれる場合もある等張剤が添加され、これには、多価糖アルコール、例えば三価以上の糖アルコールが含まれ、例えば、グリセリン、エリスリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトールなどである。安定剤とは、広範なカテゴリーの賦形剤を指し、その機能の範囲は、増量剤から、治療薬を可溶化する添加剤、または変性もしくは容器壁への付着防止に役立つ添加剤、または活性成分の沈殿、粒子成長、もしくは凝集の阻害に役立つ添加剤にまで及び得る。典型的な安定剤は、多価糖アルコール(上に列挙);アルギニン、リジン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アラニン、オルニチン、L-ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニンなどのアミノ酸;イノシトールなどのシクリトールを含む、ラクトース、トレハロース、スタキオース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、リビトール、myoイニシトール、ガラクチトール、グリセロールなどの有機糖または糖アルコール;ポリエチレングリコール;アミノ酸ポリマー;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウムなどの硫黄含有還元剤;低分子量ポリペプチド(例えば、10残基以下のペプチド);ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;ポロキサマー407;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナートなどのセルロース誘導体;カルボキシメチルセルロース(Na/Ca);キシロース、マンノース、フルクトース、グルコースなどの単糖;ラクトース、マルトース、スクロースなどの二糖類、及びラフィノースなどの三糖類;デキストランなどの多糖類;ポリエチレングリコールメチルエーテル-ブロック-ポリ(D-L-ラクチド)コポリマー;ポリ(ブチルメタクリレート-co-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-co-メチルメタクリレート)1:2:1であり得る。好ましい安定剤は、例えば、グリセロール;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナートなどのセルロース誘導体;カルボキシメチルセルロース(Na/Ca);ポリエチレングリコールメチルエーテル-ブロック-ポリ(D-L-ラクチド)コポリマー;及びポリ(ブチルメタクリレート-co-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート-co-メチルメタクリレート)1:2:1;ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマーである。
【0220】
いくつかの実施形態では、例えば、デンプン、ガム(天然、半合成、及び合成を包含する)、微結晶セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドンなどのポリマー、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマーなどのような造粒剤/結合剤(複数可)が添加される。好ましい造粒剤は、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、及びポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマーである。
【0221】
いくつかの実施形態では、析出抑制剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースを含むセルロースの水溶性誘導体、ならびにポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン-ポリ酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、またはポロキサマー407などの水溶性ポリマーなどが添加される。好ましい析出抑制剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0222】
いくつかの実施形態では、例えば、ステアリン酸マグネシウム、グリセリルエステル、ベヘノイルポリオキシル-8グリセリドNf(Compritol HD5 ATO)、フマル酸ステアリルナトリウムなどのような滑沢剤が添加される。
【0223】
いくつかの実施形態では、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、コリドンCLのような合成物、及びローカストビーンガムなどのような天然由来物などの崩壊剤が添加される。
【0224】
いくつかの実施形態では、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、デンプンなどのような流動促進剤が添加される。
【0225】
いくつかの実施形態では、例えば、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微結晶セルロース、ソルビトール、スクロース、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム脱水物、デンプンなどのような希釈剤(または充填剤)が添加される。
【0226】
いくつかの実施形態では、例えば二酸化ケイ素、精製ケイ酸アルミニウムなどのような吸着剤が添加される。
【0227】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は錠剤の形態であり、例えば造粒剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、流動促進剤、希釈剤、吸着剤などのような錠剤化賦形剤が添加される。
【0228】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、カプセル剤の形態であり、カプセルシェルは、ゼラチンから、またはセルロースなどの非動物由来製品及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのその誘導体から作製される。可塑剤として作用するポリエチレングリコール;不透過性及び色の区別を可能にする二酸化チタンまたは酸化鉄などの顔料;カルナウバロウなどの滑沢剤;カラギーナンなどのゲル化剤、及びラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤などの他の成分をカプセルシェルに収めることができる。一実施形態では、本発明の医薬組成物はカプセル剤として製剤化され、その場合、カプセルシェルはゼラチンで構成され、任意選択で追加の成分、例えばポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウムなどがカプセルシェルに含まれる。
【0229】
非限定的な例によれば、医薬組成物は、経口投与、非経口投与(静脈内、筋肉内、もしくは皮下注射、または静脈内注入などによる)、局所投与(眼球を含む)、直腸投与、吸入、皮膚パッチ、埋込み、坐剤などによる投与用に適した形態であり得る。このような好適な投与形態(投与方法に応じて、固体、半固体、または液体であり得る)、ならびにその調製に使用するための方法、ならびに担体、希釈剤、及び賦形剤は、当業者には明らかであり、最新版のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0230】
組成物は、そこに含有された活性化合物(複数可)の迅速放出、持続放出、または遅延放出を可能にするように製剤化することができる。
【0231】
一実施形態によれば、医薬組成物は、経口投与に適合する形態である。経口投与に適合する形態は、固体、半固体、または液体であり得る。そのような形態の好ましいが非限定的ないくつかの例として、液体組成物、ペースト組成物、または固体組成物、より具体的には、錠剤、長期放出用または持続放出用に製剤化された錠剤、カプセル剤(軟質及び硬質ゼラチンカプセルを含む)、丸剤、糖衣錠、ロゼンジ剤、サシェ剤、カシェ剤、散剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、エリキシル剤、乳濁液、溶液、及び懸濁液が挙げられる。
【0232】
別の実施形態によれば、医薬組成物は、注射に適合する形態であり、特に静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、胸膜内注射、皮下注射、経皮注射、または輸注により対象に注入されるものである。
【0233】
本発明の医薬組成物の滅菌注射形態として、ボーラスとしての投与及び/または連続投与のための滅菌注射用溶液及び滅菌包装散剤(通常は使用前に再構成される)が挙げられる。
【0234】
本発明の医薬組成物の滅菌注射形態は、溶液または水性懸濁液もしくは油性懸濁液であり得る。このような懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を使用して、当技術分野において公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の薬学的に許容される希釈剤または溶媒中の、滅菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用できる許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、従来から滅菌不揮発性油が溶媒または懸濁媒として使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む、任意の無刺激の不揮発性油を使用してもよい。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、特にポリオキシエチル化型のオリーブ油またはヒマシ油などの天然の薬学的に許容される油と同様に、注射液の調製に有用である。このような油性溶液または懸濁液にはまた、乳濁液及び懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の製剤で一般的に使用されるカルボキシメチルセルロースまたは類似する分散剤などの長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含有し得る。薬学的に許容される固体、液体、または他の剤形の製造に一般的に使用される、Tween(登録商標)、Span(登録商標)、及びその他の乳化剤またはバイオアベイラビリティ増強剤などの他の一般的に使用される界面活性剤もまた、製剤化目的に使用することができる。
【0235】
別の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、局所投与に適合する形態である。局所投与に適合する形態の例として、液体組成物、ペースト組成物、または固体組成物、より具体的には、水溶液、液滴、分散液、スプレー、軟膏、クリーム、ローション、マイクロカプセル、マイクロ粒子もしくはナノ粒子、ポリマーパッチ、または制御放出型パッチなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
別の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、直腸投与に適合する形態である。直腸投与に適合する形態の例として、坐剤、小型浣腸、浣腸、ゲル、直腸フォーム、クリーム、軟膏などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0237】
別の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、吸入による投与に適合する形態である。吸入による投与に適合する形態の例として、限定されないがエアロゾルが挙げられる。
【0238】
本発明の医薬調製物は、好ましくは単位剤形であり、例えば、箱、ブリスター、バイアル、ボトル、サシェ、アンプル、または任意の他の好適な単回投与用または複数回投与用のホルダーまたは容器(それらは適切にラベル表示されてよい)に、任意選択で製品情報及び/または使用説明書を含む1つ以上のリーフレットとともに、適切に包装されていてもよい。
【0239】
パーツキット
本発明はさらに、本発明の組み合わせを含むパーツキットに関する。
【0240】
一実施形態では、本発明のパーツキットは、
(a)有効量のENT阻害剤を含む第1の部分と;
(b)有効量のアデノシン受容体アンタゴニストを含む第2の部分と、を含む。
【0241】
ENT阻害剤及びアデノシン受容体アンタゴニストに関する上記の実施形態は、本発明のパーツキットにも適用される。
【0242】
好ましい実施形態では、本発明は
(a)例えばENT1阻害剤などの有効量のENT阻害剤を含む第1の部分と;
(b)チオカルバメート誘導体、より好ましくは、上記に定義される式(I)
【化18】
のチオカルバメート誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である、有効量のA2ARアンタゴニストを含む第2の部分と、を含むパーツキットを提供する。
【0243】
ENT阻害剤及びアデノシン受容体アンタゴニストの種類に応じて、キットの第1の部分及び第2の部分は、医薬組成物の形態であってもよい。そのような医薬組成物の賦形剤、剤形、及び投与経路は、当業者には明らかであり(最新版のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照)、特に、本発明の医薬組成物に関して上記に列挙されたものであり得る。
【0244】
一実施形態では、キットの第2の部分には、A2ARアンタゴニスト、好ましくは上記に定義される式(I)のチオカルバメート誘導体と、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントとを含む医薬組成物が含まれる。パーツキットの第2の部分の医薬組成物の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントは、本発明の医薬組成物に関して上記に列挙されたものであり得る。
【0245】
以下に策定するように、キットの異なる部分の投与は、同時にまたは時差的に、同じ投与部位または異なる投与部位のいずれかに、ほぼ同じか異なる剤形で行うことができる。
【0246】
一実施形態では、本発明のパーツキットは、追加治療薬をさらに含む。
【0247】
投与レジメン
本発明の文脈において、ENT阻害剤及びアデノシン受容体アンタゴニストの投与は、同時にまたは時差的に、同じ投与部位または異なる投与部位のいずれかに、以下にさらに概説するような、ほぼ同じか異なる剤形で行うことができる。
【0248】
一実施形態では、ENT阻害剤は、アデノシン受容体アンタゴニストの投与前、投与と同時、または投与後に投与される。
【0249】
ENT阻害剤及びアデノシン受容体アンタゴニストによって誘発される個々の機序が互いに負の影響を受けないようにするために、アデノシン受容体アンタゴニストとENT阻害剤を、時間を分けて(時差的に)、すなわち逐次的に投与しても、及び/または異なる投与部位に投与してもよい。これは、アデノシン受容体アンタゴニストを、例えば、ENT阻害剤の前、同時、または後に投与しても、あるいはその反対でもよいことを意味する。代わりにまたは加えて、アデノシン受容体アンタゴニストとENT阻害剤を、異なる投与部位に投与しても、あるいは同じ投与部位に投与してもよく、その際は、時差的に投与することが好ましい。
【0250】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、ENT阻害剤の前及び/またはそれと同時に投与されるものとする。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、ENT阻害剤が投与される日の前または同日に投与されるものとする。
【0251】
別の実施形態では、ENT阻害剤は、アデノシン受容体アンタゴニストの前及び/またはそれと同時に投与されるものとする。一実施形態では、ENT阻害剤は、アデノシン受容体アンタゴニストが投与される日の前または同日に投与されるものとする。
【0252】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、ENT阻害剤の前及び/またはそれと同時に投与され、それ以降も継続的に投与されるものとする。
【0253】
別の実施形態では、ENT阻害剤は、アデノシン受容体アンタゴニストの前及び/またはそれと同時に投与され、それ以降も継続的に投与されるものとする。
【0254】
用量
予防または治療しようとする病態及び投与形態に応じて、ENT阻害剤及びアデノシン受容体アンタゴニストは、1日1回用量を1日1回以上の投与に分割して投与してもよい。
【0255】
アデノシン受容体アンタゴニストとENT阻害剤の合計1日用量は、堅実な医学的判断の範囲内で主治医が決定することになるものと理解される。特定の対象に対する具体的な用量は、治療しようとするがん、患者の年齢、体重、健康状態全般、性別、及び食事などの様々な要因、ならびに医療分野において周知されている同様の要因に応じて異なることになる。
【0256】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、アデノシン受容体アンタゴニストの用量、好ましくは、治療有効用量は、体重1キロあたり約0.01mg(mg/kg)~約5mg/kg、好ましくは約0.08mg/kg~約3.3mg/kg、より好ましくは約0.15mg/kg~約1.7mg/kgの範囲の用量である。
【0257】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、アデノシン受容体アンタゴニストの用量、好ましくは、治療有効用量は、1日ごとに体重1キロあたり約0.01mg(mg/kg/日)~約5mg/kg/日、好ましくは約0.08mg/kg/日~約3.3mg/kg/日、より好ましくは約0.15mg/kg/日~約1.7mg/kg/日の範囲の用量である。
【0258】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、アデノシン受容体アンタゴニストの用量、好ましくは、治療有効用量は、約1mg~約500mg、好ましくは約5mg~約200mg、より好ましくは約10mg~約100mgの範囲の用量である。
【0259】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、アデノシン受容体アンタゴニストの用量、好ましくは、治療有効用量は、投与あたり約1mg~約500mg、好ましくは投与あたり約5mg~約200mg、より好ましくは投与あたり約10mg~約100mgの範囲の用量である。
【0260】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、アデノシン受容体アンタゴニストの用量、好ましくは、治療有効用量は、約1mg~約500mg、好ましくは約5mg~約200mg、より好ましくは約10mg~約100mgの範囲の1日用量である。
【0261】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、アデノシン受容体アンタゴニストの用量、好ましくは、治療有効用量は、1回、2回、3回、またはそれ以上の摂取回数で投与される1日用量である。一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、アデノシン受容体アンタゴニストの用量、好ましくは、治療有効用量は、1回または2回の摂取回数で投与される1日用量である。
【0262】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、ENT阻害剤の用量、好ましくは、治療有効用量は、体重1キロあたり約0.01mg(mg/kg)~約5mg/kgの範囲の用量である。
【0263】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、ENT阻害剤の用量、好ましくは、治療有効用量は、1日ごとに体重1キロあたり約0.01mg(mg/kg/日)~約5mg/kg/日の範囲の用量である。
【0264】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、ENT阻害剤の用量、好ましくは、治療有効用量は、約1mg~約500mgの範囲の用量である。
【0265】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、ENT阻害剤の用量、好ましくは、治療有効用量は、投与あたり約1mg~約500mgの範囲の用量である。
【0266】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、ENT阻害剤の用量、好ましくは、治療有効用量は、約1mg~約500mgの範囲の1日用量である。
【0267】
一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、ENT阻害剤の用量、好ましくは、治療有効用量は、1回、2回、3回、またはそれ以上の摂取回数で投与される1日用量である。一実施形態では、対象は哺乳動物、好ましくはヒトであり、ENT阻害剤の用量、好ましくは、治療有効用量は、1回または2回の摂取回数で投与される1日用量である。
【0268】
用途
本発明の別の目的は、医薬品としての、すなわち医療用途の組み合わせの使用である。したがって、一実施形態では、医薬品の製造での本発明の組み合わせの使用を提供する。特に、本発明は、医薬品の製造での本発明の医薬組成物または本発明のキットの使用を提供する。
【0269】
特に、本発明は、がんの治療及び/または予防に使用するための本発明の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキットを提供する。
【0270】
本発明はさらに、がんを治療及び/または予防するための医薬品の製造での本発明の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキットの使用を提供する。
【0271】
本発明はさらに、本発明の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキットを、それを必要とする哺乳動物種に治療有効量で投与することを含む、がん治療の方法を提供する。
【0272】
特に、本発明は、アデノシン受容体アンタゴニストとENTファミリートランスポーター阻害剤との組み合わせを、それを必要とする患者に投与することを含む、がん治療の方法を提供する。上記に列挙するアデノシン受容体アンタゴニスト及びENTファミリートランスポーター阻害剤に関する具体的な実施形態は、本発明の治療方法の文脈においても適用される。
【0273】
本発明はまた、本発明の組み合わせ、医薬組成物、またはパーツキットを、それを必要とする患者に、薬学的有効量で投与することを含む、患者におけるがんの発症を遅延する方法を提供する。
【0274】
当技術分野において様々ながんが公知である。本発明の方法を使用して治療することができるがんには、固形がん及び非固形がん、特に、良性及び悪性の固形腫瘍、ならびに良性及び悪性の非固形腫瘍が含まれる。がんは転移性でも非転移性でもあり得る。がんは家族性でも突発性でもあり得る。
【0275】
一実施形態では、本発明に従って治療されるがんは固形がんである。本明細書で使用される場合、「固形がん」という用語は、腫瘤を形成せずに組織にびまん性に浸潤するがん(または悪性腫瘍)とは対照的に、離散的な腫瘤を形成する任意のがん(悪性腫瘍とも呼ばれる)を包含する。
【0276】
固形腫瘍の例として、胆道癌、脳腫瘍(神経膠芽腫及び髄芽腫を含む)、乳癌、カルチノイド、子宮頸癌、絨毛癌、結腸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、神経膠腫、頭頸部癌、上皮内新生物(ボーエン病及びパジェット病を含む)、肝臓癌、肺癌、神経芽細胞腫、口腔癌(扁平上皮癌を含む)、卵巣癌(上皮細胞、間質細胞、生殖細胞、及び間葉系細胞から生じるものを含む)、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌(腺癌及びウィルムス腫瘍を含む)、肉腫(平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、及び骨肉腫を含む)、皮膚癌(黒色腫、カポシ肉腫、基底細胞癌、及び扁平上皮癌を含む)、生殖細胞腫瘍を含む精巣癌(奇形腫及び絨毛癌などの精上皮腫及び非精上皮腫)、間質性腫瘍、生殖細胞腫瘍、甲状腺癌(甲状腺腺癌及び髄質癌を含む)、及び尿路上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0277】
別の実施形態では、本発明に従って治療されるがんは非固形がんである。非固形腫瘍の例として、血液新生物が挙げられるが、これに限定されない。本明細書で使用される場合、血液新生物は、リンパ性障害、骨髄性障害、及びAIDS関連白血病を含む技術用語である。
【0278】
リンパ性障害として、急性リンパ性白血病及び慢性リンパ増殖性障害(例えば、リンパ腫、骨髄腫、及び慢性リンパ性白血病)が挙げられるが、これらに限定されない。リンパ腫として、例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、及びリンパ球性リンパ腫が挙げられる。慢性リンパ性白血病として、例えば、T細胞慢性リンパ性白血病及びB細胞慢性リンパ性白血病が挙げられる。
【0279】
具体的な実施形態では、がんは、乳癌、カルチノイド、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、神経膠腫、頭頸部癌、肝臓癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腎臓癌、胃癌、甲状腺癌、及び尿路上皮癌から選択される。
【0280】
具体的な実施形態では、がんは乳癌である。具体的な実施形態では、がんはカルチノイド癌である。具体的な実施形態では、がんは子宮頸癌である。具体的な実施形態では、がんは大腸癌である。具体的な実施形態では、がんは子宮内膜癌である。具体的な実施形態では、がんは神経膠腫である。具体的な実施形態では、がんは頭頸部癌である。具体的な実施形態では、がんは肝臓癌である。具体的な実施形態では、がんは肺癌である。具体的な実施形態では、がんは黒色腫である。具体的な実施形態では、がんは卵巣癌である。具体的な実施形態では、がんは膵臓癌である。具体的な実施形態では、がんは前立腺癌である。具体的な実施形態では、がんは腎臓癌である。具体的な実施形態では、がんは胃癌である。具体的な実施形態では、がんは甲状腺癌である。具体的な実施形態では、がんは尿路上皮癌である。
【0281】
別の具体的な実施形態では、がんは、白血病及び多発性骨髄腫からなる群より選択される。
【0282】
好ましくは、患者は温血動物であり、より好ましくはヒトである。
【0283】
一実施形態では、ENTファミリートランスポーター阻害剤を与えられる対象は、ENTファミリートランスポーター阻害剤と組み合わせて追加治療薬で治療されるか、またはENTファミリートランスポーター阻害剤の投与から約14日以内に追加治療薬を与えられている。一実施形態では、追加治療薬は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む。
【0284】
一実施形態では、対象は、以前に少なくとも1種の先行治療的処置を受けており、少なくとも1種の先行治療的処置の投与以降、ENTファミリートランスポーター阻害剤の投与前に進行している。一実施形態では、先行治療的処置は、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される。
【0285】
本発明はまた、がん治療に使用するための医薬製剤に関するものであり、当該医薬製剤は、がん治療に有効な量でヒト対象に投与され、製剤は、
(a)ENTファミリートランスポーター阻害剤と;
(b)任意選択で、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む。
【0286】
一実施形態では、本発明の使用のための医薬製剤において、ENTファミリートランスポーターはENT1であり、阻害剤は、小分子、核酸、ペプチド、及び抗体からなる群より選択される。
【0287】
一実施形態では、本発明の使用のための医薬製剤において、医薬製剤は追加治療薬をさらに含む。一実施形態では、追加治療薬は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む。
【0288】
一実施形態では、本発明の使用のための医薬製剤において、対象は、以前に少なくとも1つの先行治療的処置を受けている。一実施形態では、先行治療的処置は、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される。
【0289】
一実施形態では、本発明の使用のための医薬製剤において、医薬製剤は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む追加治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に投与される。
【0290】
本発明はまた、がん治療に使用するための医薬製剤を提供し、当該医薬製剤は、がん治療に有効な量でヒト対象に投与され、製剤は、
(a)ENTファミリートランスポーター阻害剤と
(b)アデノシン受容体アンタゴニストと;
(c)任意選択で、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む。
【0291】
一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストを含む本発明の使用のための医薬製剤において、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2AまたはA2B受容体アンタゴニストを含む。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、以下から選択される:
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミン;
3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミン;及び
4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミド。
【0292】
別の実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、先に定義された式(I)の化合物を含む。
【0293】
本発明はまた、医薬製剤をがん治療に有効な量でヒト対象に投与することを含む、がん治療の方法を提供し、製剤は、
(a)ENTファミリートランスポーター阻害剤と;
(b)任意選択で、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む。
【0294】
一実施形態では、本発明の方法において、ENTファミリートランスポーターはENT1であり、阻害剤は、小分子、核酸、ペプチド、及び抗体からなる群より選択される。
【0295】
一実施形態では、本発明の方法において、医薬製剤は追加治療薬をさらに含む。一実施形態では、追加治療薬は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む。
【0296】
一実施形態では、本発明の方法において、対象は、以前に少なくとも1種の先行治療的処置を受けている。一実施形態では、先行治療的処置は、化学療法、免疫療法、放射線療法、幹細胞移植、ホルモン療法、及び外科手術からなる群より選択される。
【0297】
一実施形態では、本発明の方法において、医薬製剤は、アデノシン受容体アンタゴニストを含む追加治療薬の投与前、投与と同時、または投与後に投与される。
【0298】
本発明はまた、医薬製剤をがん治療に有効な量でヒト対象に投与することを含む、がん治療の方法を提供し、製剤は、
(a)ENTファミリートランスポーター阻害剤と
(b)アデノシン受容体アンタゴニストと、
(c)任意選択で、1種以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、及び/またはアジュバントと、を含む。
【0299】
一実施形態では、医薬製剤がアデノシン受容体アンタゴニストを含む本発明の方法において、アデノシン受容体アンタゴニストは、A2AまたはA2B受容体アンタゴニストを含む。一実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、以下から選択される:
5-ブロモ-2,6-ジ-(1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-4-アミン;
(S)-7-(5-メチルフラン-2-イル)-3-((6-(([テトラヒドロフラン-3-イル]オキシ)メチル)ピリジン-2-イル)メチル)-3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン-5-アミン;
6-(2-クロロ-6-メチルピリジン-4-イル)-5-(4-フルオロフェニル)-1,2,4-トリアジン-3-アミン;
3-(2-アミノ-6-(1-((6-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)ピリジン-2-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)ピリミジン-4-イル)-2-メチルベンゾニトリル;
2-(2-フラニル)-7-(2-(4-(4-(2-メトキシエトキシ)フェニル)-1-ピペラジニル)エチル)-7H-ピラゾロ(4,3-e)(1,2,4)トリアゾロ(1,5-c)ピリミジン-5-アミン;
3-(4-アミノ-3-メチルベンジル)-7-(2-フリル)-3H-(1,2,3)トリアゾロ(4,5-d)ピリミジン-5-アミン;及び
4-ヒドロキシ-N-(4-メトキシ-7-モルホリノベンゾ[d]チアゾール-2-イル)-4-メチルピペリジン-1-カルボキサミド。
【0300】
別の実施形態では、アデノシン受容体アンタゴニストは、先に定義された式(I)の化合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0301】
図1A】ヒト初代リンパ球におけるENT1の発現を表すグラフである。FPKM:キロベース100万あたりの断片。出典:Bonnal RJP,Nature 2015。
図1B】ヒト初代リンパ球におけるENT2の発現を表すグラフである。FPKM:キロベース100万あたりの断片。出典:Bonnal RJP,Nature 2015。
図1C】ヒト初代リンパ球におけるENT4の発現を表すグラフである。FPKM:キロベース100万あたりの断片。出典:Bonnal RJP,Nature 2015。
図2図2A及び図2Bは、異なる処置をしたCD3+ T細胞の生存率を表すグラフであり、ENT阻害剤により、アデノシン/ATP介在型のT細胞生存率の低下を逆転することを示している。ヒト初代CD3+ T細胞を抗CD3/抗CD28被覆マイクロビーズで刺激し、25μMアデノシン(図2A)または200μM ATP(図2B)で処理した。3日間のインキュベーション期間後にフローサイトメトリーによりT細胞の生存率を分析した。生物学的複製の平均+/-SDを示す。1名の健常ドナーの代表的なデータを示している。2名の健常ドナーで同様のデータが得られた。
図3-1】図3A図3B図3C、及び図3Dは、異なる処置をしたCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の増殖を表すグラフであり、ENT阻害剤により、アデノシン/ATP介在型のT細胞増殖の抑制がレスキューされることを示している。ヒト初代CD3+ T細胞を抗CD3/抗CD28被覆マイクロビーズで刺激し、25μMアデノシン(図3A及び図3C)または200μM ATP(図3B及び図3D)で処理した。3日間のインキュベーション期間後にフローサイトメトリーによりCD4+(図3A及び図3B)及びCD8+(図3C及び図3D)T細胞の増殖を分析した。生物学的複製の平均+/-SDを示す。1名の健常ドナーの代表的なデータを示している。2名の健常ドナーで同様のデータが得られた。
図3-2】図3A図3B図3C、及び図3Dは、異なる処置をしたCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の増殖を表すグラフであり、ENT阻害剤により、アデノシン/ATP介在型のT細胞増殖の抑制がレスキューされることを示している。ヒト初代CD3+ T細胞を抗CD3/抗CD28被覆マイクロビーズで刺激し、25μMアデノシン(図3A及び図3C)または200μM ATP(図3B及び図3D)で処理した。3日間のインキュベーション期間後にフローサイトメトリーによりCD4+(図3A及び図3B)及びCD8+(図3C及び図3D)T細胞の増殖を分析した。生物学的複製の平均+/-SDを示す。1名の健常ドナーの代表的なデータを示している。2名の健常ドナーで同様のデータが得られた。
図4図4A及び図4Bは、異なる処置をしたCD3+ T細胞のIL-2分泌を表すグラフであり、ENT阻害剤とA2ARアンタゴニストである化合物8aとの併用治療により、アデノシン/ATP介在型のT細胞サイトカイン分泌の抑制がレスキューされることを示している。CD3+ T細胞を抗CD3/抗CD28被覆マイクロビーズで刺激し、25μMアデノシン(図4A)または200μM ATP(図4B)で処理した。3日間のインキュベーション期間後にAlphaLISAにより上清中のIL-2分泌を分析した。生物学的複製の平均+/-SDを示す。1名の健常ドナーの代表的なデータを示している。2名の健常ドナーで同様のデータが得られた。
図5図5Aは、固定可能な生死判定用色素で染色することにより決定されたCD3+ T細胞の生存率を示す。図5Bは、CFSE希釈法によって決定されたCD8+ T細胞の増殖率を示す。図5Cは、細胞培養上清に存在するTNFαの濃度を示す。ヒト初代CD3+ T細胞を抗CD3/抗CD28被覆マイクロビーズで刺激し、100μM ATPまたは対照培地で処理した。3日間のインキュベーション期間後にフローサイトメトリーによりCD3+ T細胞の生存率(図5A)及びCD8+ T細胞の増殖(図5B)を分析した。AlphaLISAにより上清中のTNFα分泌を分析した。灰色の網掛けバーはA2ARアンタゴニストで処理したウェルを示し、透明のバーは同等濃度のDMSOで処理したウェルを示す。結果は、6連(DMSO)または2連(A2ARアンタゴニスト)のウェルから得た平均値±標準偏差として示されている。示したデータは、4つの独立実験において3名の健常個体で得たデータの代表である。
図6】化合物8b(A2ARアンタゴニスト)またはNBMPR(ENT1阻害剤)またはそれらの組み合わせで前処理した場合の、マウスにおけるin vivo LPS誘導性TNFアルファ産生を示す。LPS(1mg/kg、I.V)注射前に1時間、NBMPR(20mg/kg、p.o.)またはビヒクルでBALB/cマウスを前処置した。30分前に、マウスを化合物8b(3mg/kg、p.o.)またはビヒクルの単回投与で処置した。LPS処置の1時間後、マウスから血清を採取した。TNFアルファのレベルはELISAによって決定した(n=5)。P値はマンホイットニー検定を使用して示し、ns=有意差なしである。
図7-1】NBMPR(ENT1阻害剤)と併用される化合物8b(A2ARアンタゴニスト)による処置時のMCA205腫瘍成長を示す。図7Aは、腫瘍細胞の皮下接種後の経時的な腫瘍体積の中央値を表すグラフである。図7B~Dは、ビヒクル(図7B)、20mg/kg、BIDx22(11日目)のNBMPRを単独で(図7C)、または3mg/kg、BIDx22の化合物8bと組み合わせて(図7D)処置されたマウスの個々の腫瘍成長体積である。(n=10、*P=0.0043、**P=0.0015、***P<0.0001、線形混合モデル統計分析)。
図7-2】NBMPR(ENT1阻害剤)と併用される化合物8b(A2ARアンタゴニスト)による処置時のMCA205腫瘍成長を示す。図7Aは、腫瘍細胞の皮下接種後の経時的な腫瘍体積の中央値を表すグラフである。図7B~Dは、ビヒクル(図7B)、20mg/kg、BIDx22(11日目)のNBMPRを単独で(図7C)、または3mg/kg、BIDx22の化合物8bと組み合わせて(図7D)処置されたマウスの個々の腫瘍成長体積である。(n=10、*P=0.0043、**P=0.0015、***P<0.0001、線形混合モデル統計分析)。
【実施例
【0302】
以下の実施例を参照することにより、本発明をよりよく理解されるであろう。本実施例は本発明の具体的な実施形態を代表することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0303】
以下の略語を使用する:
ATP:アデノシン三リン酸
BSA:ウシ血清アルブミン
CFSE:カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FACS:蛍光活性化細胞選別
FBS:ウシ胎仔血清
mL:ミリリットル
μL:マイクロリットル
mM:ミリモル
nM:ナノモル
μM:マイクロモル
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
rpm:毎分回転数
RPMI:Roswell Park Memorial Institute培地
【0304】
実施例1.A2ARアンタゴニストと組み合わせたENT1阻害剤はT細胞におけるTNFアルファ産生を回復させる
材料
以下のアッセイに使用する試薬及び化合物の入手先は以下の通りである:
【表2-1】
【表2-2】
【0305】
方法
PBMC及びCD3T細胞の単離。健常志願者からの静脈血をUnite d’Investigation Clinique(Centre Hospitalier Universitaire de Tivoli,La Louviere,Belgium)から入手した。志願者は全員、倫理委員会(FOR-UIC-BV-050-01-01 ICF_HBS_HD Version 5.0)によって承認されたインフォームドコンセントに署名した。SepMate-50チューブ及びLymphoprepを製造業者の指示に従って使用して、密度勾配遠心分離により単核細胞を回収した。EasySep Human T Cell Isolation Kitを製造業者の指示に従って使用して、免疫磁気分離法の負の選択によりCD3T細胞を単離した。CD3T細胞を熱不活化FBS及び液体窒素中10%DMSOに保存した。
【0306】
ヒト初代T細胞培養。ヒト精製CD3T細胞を解凍し、10%hiFBS含有RPMI1640培地、1倍非必須アミノ酸を補充したUltraGlutamine(Lonza)、及び1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco)(完全培地)で2回洗浄した。最後の洗浄後、10%FBS含有PBSに細胞を再懸濁し、3μM CFSEを使用して室温で5分間標識した後、完全培地で2回洗浄した。最後の洗浄後、細胞を1.6×10細胞/mLでX-Vivo15培地中に懸濁した。細胞懸濁液(8×10T細胞)50μLを滅菌丸底96ウェルプレートのウェルに加えた。X-Vivo15培地に懸濁した、抗CD3抗CD28被覆マイクロビーズ(Dynabeads、ヒトT活性化因子CD3/CD28)50μLを、2細胞あたり1マイクロビーズの比率で添加することにより細胞を活性化した。アデノシン(DMSO中75mMのストック溶液)及びATP(粉末)をX-Vivo15培地で希釈し、最終アッセイ濃度が25μMアデノシンまたは200μM ATPに達するように25μLまたは50μLをウェルに加えた。100mMストック溶液(DMSO溶液または水溶液)から、X-Vivo15培地でENT阻害剤ジラゼプ二塩酸塩、ジピリダモール、及びチカグレロルの段階希釈液を調製し、25μLをウェルに加えた。A2ARアンタゴニスト化合物8a(DMSO中10mMストック)をX-Vivo15培地で希釈し、最終アッセイ濃度が300nMに達するように25μLをウェルに加えた。異なるA2ARアンタゴニストを含めた試験では、最終濃度300nMのA2ARアンタゴニスト化合物8a、最終濃度5μMのNIR178、最終濃度5μMのCPI-444、最終濃度1μMのAZD4635、もしくは最終濃度1μMのAB928のいずれか、または一致する濃度のDMSOをウェルに入れた。加えて、一部のウェルには、最終濃度1μMのENT-1阻害剤ジピリダモール、またはジピリダモールとA2ARアンタゴニストの組み合わせを入れた。このアッセイのDMSO最終濃度は0.05%であり、最終アッセイ容量は200μLであった。実験は生物学的に2連で実施され、DMSO対照を4連で追加した。5%COを流しながら、37℃の加湿した組織培養インキュベーターに細胞を72時間静置した。72時間後、細胞を1600rpmで5分間遠心分離してペレット化し、上清をV底96ウェルプレートに移し、サイトカインを定量した。フローサイトメトリー分析の場合は、細胞ペレットをFACS緩衝液(以下を参照)に再懸濁した。
【0307】
サイトカインの定量。上清を4000rpmで10分間遠心分離し、IL-2(ヒト)AlphaLISAビオチンフリー検出キットを使用してIL-2を定量し、AlphaLISAヒトTNFαビオチンフリー検出キットを製造業者の指示に従って使用して、TNFαを定量した。
【0308】
フローサイトメトリー。FACS緩衝液(2mM EDTA及び0.1%BSA含有PBS)で細胞を洗浄し、表面マーカー抗体及び生死判定用色素を用いて氷上で20分間染色した。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、LSRFortessa(BD biosciences)を使用してデータを取得した。FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用して分析を実施した。
【0309】
結果
ヒト初代T細胞に対するアデノシンの効果を評価するために、CD3T細胞を抗CD3/CD28被覆マイクロビーズで刺激し、アデノシンまたはATPで処理した。アデノシンならびにATPは、T細胞増殖及びサイトカイン分泌(IL-2)を著しく抑制し、T細胞生存率を大幅に低下させた(図2~4)。
【0310】
T細胞の生存率、増殖、及びIL-2分泌のアデノシン介在型及びATP介在型の抑制は、強力で選択的なA2ARアンタゴニストである化合物8aによって回復せず、T細胞抑制のA2AR非依存性機構を示唆した(図2~4)。
【0311】
細胞外アデノシンは、平衡型ヌクレオシドトランスポーター(ENT)によって細胞に取り込まれる。
【0312】
初代T細胞をアデノシンまたはATPで処理し、構造的関連性がない3つの異なるENT阻害剤、ジピリダモール、ジラゼプ塩酸塩、及びチカグレロルとインキュベートした。試験したENT阻害剤はすべて、T細胞の増殖と生存率を回復させたため(図2及び図3)、ENTによるアデノシンの細胞取り込みがT細胞代謝に与える有害作用を示している。しかしながら、ENT阻害剤はいずれも単剤としてはT細胞由来のIL-2分泌をレスキューしなかった。
【0313】
A2A受容体アンタゴニストである化合物8aとENT阻害剤との併用治療時には、アデノシン介在型及びATP介在型のT細胞サイトカイン分泌抑制の完全なレスキューが達成された(図4A及び図4B)。これらの結果は、アデノシンが細胞外機構ならびに細胞内機構の両方によってT細胞の機能及び活力を抑制するが、A2ARアンタゴニスト(以下でさらに示す通り、化合物8aに限定されない)とENT阻害剤との併用治療によってこれを逆転できることを示している。
【0314】
図5A~Cは、ENT-1阻害剤ジピリダモールとA2A受容体アンタゴニストである化合物8a、AB928、CPI-444、NIR178、及びAZD4635との組み合わせによって、ATPの存在下でのT細胞の阻害を逆転できることを示している。より具体的には、ATPはCD8+ T細胞の増殖を著しく阻害し、T細胞の生存率を低下させたが、これはENT-1阻害剤ジピリダモールによって完全に逆転された。ATPはまたTNFαの産生を著しく阻害した。A2ARとENT-1阻害剤はいずれも、個別にサイトカイン産生を部分的に回復させることができた。両方の阻害剤の組み合わせは、いずれかの治療単独と比較して、サイトカイン分泌の回復をさらに増加させた。総じて、これらのデータは、ATP/アデノシンが豊富な腫瘍微小環境におけるT細胞機能及び生存率の完全な回復を目的とする、化合物8a、AB928、AZD4635、NIR178、またはCPI-444とがん治療用ENT-1阻害剤との組み合わせが有益であることを示している。
【0315】
実施例2.A2ARアンタゴニストと組み合わせたENT1阻害剤は、内毒素血症のLPSモデルにおいてTNFアルファ産生を回復させる
アデノシン輸送の最も顕著な標的は平衡型ヌクレオシドトランスポーター、ENT1、ENT2、ENT3、及びENT4である。ENT阻害剤はヌクレオシドの内外輸送、例えば、平衡型ヌクレオシド輸送の阻害により細胞内のアデノシン濃度を低下させ、細胞外でのアデノシンの蓄積を可能にするように、細胞膜を横断するアデノシンを調節する。細胞内アデノシンが高いと、免疫細胞の増殖、生存、及び機能の抑制をもたらすことが示されている。他方で、細胞外アデノシンは、アデノシン受容体2A(A2AR)に結合することにより、例えば、免疫細胞の炎症誘発性サイトカイン産生及び細胞毒性などの活性化及び機能を低下させる。したがって、平衡型トランスポーターの阻害は、細胞内アデノシンを減少させ、それによって免疫細胞の生存、増殖、及び機能を高めることを目的とし、一方、A2ARの阻害は、細胞外アデノシンを阻害することにより、炎症誘発性活性、細胞毒性、及び免疫細胞活性化を回復させることを目的とする。
【0316】
NBMPR(6-S-[(4-ニトロフェニル)メチル]-6-チオイノシン)は特異的ENT1阻害剤であり、ヒトとマウスで類似する活性をもつ。したがって、マウスモデルにおいてNBMPRを使用するとENT1の活性を特異的に阻害する。
【0317】
炎症誘発性サイトカインTNFアルファの分泌を誘導することが知られているリポ多糖(LPS)モデルを使用して、ENT1阻害剤NBMPRの存在下で観察されたTNFアルファ介在型抑制が、A2ARアンタゴニストである化合物8bの添加によりレスキューできるかどうかを評価した。
【0318】
対照としてのビヒクル(2.5%DMSO、dHO中の10%Solutol HS15、pH3)または3mg/kgの化合物8bにより、BALB/cマウスをp.o.処置した。30分後、NBMPR20mg/kgのp.o.によりマウスを処置した。60分後、マウスをLPSで処置して採血し、血清中のTNFアルファをELISAにより測定した。
【0319】
LPSによる処置は、血清中のTNFアルファレベルを有意に上昇させた。A2ARアンタゴニスト、化合物8bは、LPS処置後のTNFアルファレベルにまったく影響しなかったが、NBMPRの処置は単独で、TNFアルファ産生をほぼ2倍有意に抑制した(p=0.008)。化合物8bによるマウスの前処置は、NBMPRの効果を逆転させ、TNFアルファ産生を2倍超レスキューした(p=0.016)(図6)。
【0320】
実施例3.A2ARアンタゴニストと組み合わせたENT1阻害剤は、マウス同系MCA205実験的線維肉腫モデルにおいて抗腫瘍効果を実証する
確立したマウス同系MCA205線維肉腫腫瘍モデルにおいて、ENT1阻害剤NBMPRと組み合わせたA2ARアンタゴニスト、化合物8bの抗腫瘍効果を評価した。
【0321】
MCA205腫瘍細胞をC57BL/6マウスの右側腹部に皮下接種した。腫瘍の平均サイズが約50mmに達した時点で、マウスをランダムに群に割り付けた。対照としてのビヒクル(2.5%DMSO、dHO中の10%Solutol HS15、pH3)をp.o.で、またはNBMPRを20mg/kg、p.o.、BIDx22(7日目~29日目)で単剤として、もしくは化合物8b、p.o.、3mg/kg、QDx22(7日目~29日目)と組み合わせてマウスに投与した。
【0322】
20mg/kg、p.o.で、1日2回(BID)22日間連続して単剤投与したNBMPRは、ビヒクルと比較して腫瘍増殖の有意な遅延(p=0.0043)を示した(図7A図7B、及び図7C)。
【0323】
3mg/kgの化合物8bをp.o.で、20mg/kgのNBMPRと組み合わせ、いずれも1日2回(BID)22日間連続して投与すると、ビヒクルと比較して有意な腫瘍増殖の遅延(p<0.0001)、さらにNBMPR単剤療法と比較した場合に有意な腫瘍増殖の遅延(p=0.0015)を示した(図7A~7D)。
図1A
図1B
図1C
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
【国際調査報告】