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特表2022-503882フルエンスルホンの製造のための方法及び中間体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】フルエンスルホンの製造のための方法及び中間体
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/36 20060101AFI20220104BHJP
【FI】
C07D277/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517567
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(85)【翻訳文提出日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 IL2019051063
(87)【国際公開番号】W WO2020065652
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】62/736,498
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593091979
【氏名又は名称】アダマ・マクテシム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,シュロミ
(57)【要約】
本発明は、式:Cl-R-S(O)n-(CH-CFX-CF(中間体B)[式中、X及びXは独立してハロゲン原子である]の化合物の前記X及びX原子の除去のための脱ハロゲン化の段階を含む式:Cl-R-S(O)n-(CH-CF=CF(式I’)[式中、Rは複素環式5員芳香環であり、nは0、1又は2である]の複素環式フルオロアルケニルスルホンならびにそれらのチオエーテル及びスルホキシド前駆体の製造方法を提供する。新規な中間化合物も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
Cl-R-S(O)n-(CH-CFX-CF (中間体B)
[式中、X及びXは独立してハロゲン原子である]
の化合物を脱ハロゲン化して、前記X及びX原子を除去する段階を含む、
式:
Cl-R-S(O)n-(CH-CF=CF (式I’)
[式中、Rは複素環式5員芳香環であり、nは0、1又は2である]
の複素環式フルオロアルケニルスルホンならびにそれらのチオエーテル及びスルホキシド前駆体の製造方法。
【請求項2】
A)第一の有機溶媒中で、式L-(CH-CFX-CF[式中、Lはチオール基による置換が可能な離脱基であり、そしてX及びXは同一又は異なり得るハロゲン原子である]のフッ素化ハロアルカンを用いて、チオールR-SH[式中、Rは複素環式5員芳香環である]をアルキル化して、式:
R-S-(CH-CFX-CF (中間体A)
を有するチオエーテルを形成し、
B)任意に第二の有機溶媒中で、中間体Aを環塩素化して、式:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
を有する塩素置換チオエーテルを製造し、そして任意に中間体Bをその対応する酸化形態Cl-R-S(O)-(CH-CFX-CF[式中、nは1又は2である]に酸化し;
C)第三の有機溶媒中で、中間体B又はその酸化形態を脱ハロゲン化して、前記X及びX原子を除去し、式I’:
Cl-R-S(O)-(CH-CF=CF (式I’)
の化合物を製造し、
そしてn=0又はn=1の場合、任意に前記式I’の化合物を酸化して、複素環式フルオロアルケニルスルホン:
Cl-R-SO-(CH-CF=CF (式I)
を与える
段階を含み、ここで連続する段階で用いられる溶媒は同一又は異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
A)チオールR-SHをアルキル化して中間体A:
R-S-(CH-CFX-CF (中間体A)
を与え;
B)中間体Aを環塩素化して中間体B:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
を製造し、
C)中間体Bを脱ハロゲン化してX及びXハロゲン原子を除去し、式:
Cl-R-S-(CH-CF=CF (中間体C)
のチオエーテルフッ素化アルケンを製造し、
そして任意に中間体Cを酸化して、複素環式フルオロアルケニルスルホン:
Cl-R-SO-(CH-CF=CF (式I)
を与えることを含む、脱ハロゲン化を経ている中間体Bが式Cl-R-S-(CH-CFX-CFの塩素置換チオエーテルである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
チオールR-SHが2-メルカプトチアゾール:
【化1】
である請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
式L-(CH-CFX-CFのフッ素化ハロアルカンがHal-(CH-CFX-CFであり、式中、Halはハライドである請求項2ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
アルキル化段階が、第一の溶媒中で塩基の存在下に加熱下で2-メルカプトチアゾールをフッ素化ハロアルキルハライドHal-(CH-CFX-CFと合わせ、反応を完了させ、仕上げられた有機溶液を集め、仕上げられた有機溶液から中間体Aを単離し、任意に精製するか、又は中間体Aを含む有機溶液を環塩素化段階に進めることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
フッ素化ハロアルキルハライドHal-(CH-CFX-CFが1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタンである、請求項5又は6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
環塩素化反応が、第二の有機溶媒中で中間体A:
R-S-(CH-CFX-CF (中間体A)
と塩素化剤を合わせ、そして反応混合物から中間体B:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
を回収することを含む、請求項3ないし7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
塩素化剤が塩化スルフリル、元素状塩素、トリクロロイソシアヌル酸及びN-クロロスクシンイミドからなる群より選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
環塩素化反応を経る中間体Aが、式:
【化2】
のものであり、中間体B:
【化3】
を与える、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
及びXハロゲン原子を除去するための式:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
の中間体Bの脱ハロゲン化反応が、還元剤の使用を含む、先行する請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
還元剤が還元性金属である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
還元性金属が亜鉛である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
脱ハロゲン化反応を経る中間体Bが式:
【化4】
のものである請求項11ないし13に記載の方法。
【請求項15】
用いられるチオールが2-メルカプトチアゾールであり、それは第一の有機溶媒中の溶液の形態でアルキル化段階(A)に供給され、前記溶液は、酸性水性媒体中でジチオカルバメート塩を用いてクロロアセトアルデヒドの閉環反応を行い、4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオン、その互変異性体又は異性体を与え、それを脱水して前記2-メルカプトチアゾールを与え:
【化5】
前記第一の有機溶媒中の前記2-メルカプトチアゾールの仕上げられた溶液を集めた後に回収される、仕上げられた有機溶液である、請求項2ないし14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
第一の有機溶媒が要件:
1)第一の溶媒中の2-メルカプトチアゾールの25℃における溶解度は5重量%以上である;及び
2)溶媒は少なくとも1種の塩素化試薬に対して十分に不活性である
を満たす水に非混和性の有機溶媒である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アルキル化段階が完了した後に、第一の有機溶媒中の
【化6】
の仕上げられた溶液を集め、前記仕上げられた溶液を環塩素化段階に進め、第一及び第二の有機溶媒が同一であるようにする段階を含み、それにより2-メルカプトチアゾールの合成ならびに続くアルキル化及び塩素化反応を短縮する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第一の溶媒が脂肪族ニトリル及びR1が脂肪族環であり、R2が直鎖状若しくは分枝鎖状アルキルである式R1-O-R2のエーテルからなる群より選ばれる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
第一の溶媒が脂肪族ニトリルであり、それはn-ブチロニトリルである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第一の有機溶媒が水に非混和性のC4-C5アルカノールであり、方法がアルキル化生成物を単離し、そして塩素化反応の前に第二の有機溶媒に溶媒交換する段階を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
水に非混和性のアルカノールが1-ペンタノールであり、それは塩素化の前にハロゲン化芳香族炭化水素に交換される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに中間体Cを酸化することを含む請求項3ないし21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
フルエンスルホン:
【化7】
が製造される、請求項1ないし22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
式Cl-R-SO-(CH-CFX-CFの中間体Bの酸化形態が脱ハロゲン化を経る請求項2に記載の方法であって、前記方法は
A)チオールR-SHをアルキル化してチオエーテル
R-S-(CH-CFX-CF (中間体A)
を与え;
B)中間体Aを環塩素化して式:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
の塩素置換チオエーテル化合物を製造し、
C)中間体Bを酸化して対応する中間体Bの酸化形態を製造し、それは式:
Cl-R-SO-(CH-CFX-CF
のスルホンであり、
D)前記中間体Bの酸化形態を脱ハロゲン化して複素環式フルオロアルケニルスルホン:
Cl-R-SO-(CH-CF=CF (式I)
を与えることを含み、ここで連続する段階で用いられる溶媒は同一又は異なる、方法。
【請求項25】
酸化を経る中間体Bが:
【化8】
である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
中間体Bが混合物KHSO・0.5KHSO・0.5KSOからなる酸化剤を用いて酸化される、請求項24又は25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
あらかじめアルカノール及び中間体B1が装入された反応容器に試薬KHSO・0.5KHSO・0.5KSOを徐々に加えることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
脱ハロゲン化を経る中間体Bの酸化形態が:
【化9】
である、請求項25ないし27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
脱ハロゲン化反応が還元性金属の使用を含む、請求項24ないし28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
テトラヒドロフラン中における亜鉛の使用を含み、前記亜鉛をその場活性化する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】

【化10】
[式中、n=0,1又は2である]
の化合物又はその酸付加塩。
【請求項32】
m=0である請求項31に記載の化合物:
【化11】
【請求項33】
式:
【化12】
[式中、n=0,1又は2である]
の化合物又はその酸付加塩。
【請求項34】
n=0である請求項33に記載の化合物:
【化13】
【請求項35】
n=2である請求項33に記載の化合物:
【化14】
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
複素環式フルオロアルケニルスルホンの種類に属する強力な殺線虫剤(nematicide)であるフルエンスルホンは以下の化学構造を有する。
【0002】
【化1】
【0003】
フルエンスルホン[化学名:5-クロロ-2-[(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)スルホニル]チアゾール]は乳化性濃厚調剤(emulsifiable concentrate formulation)として市場で商業的に入手可能である。それは特許文献1、実施例3において最初に報告され、そこでそれは下記の2段階合成を介して製造された:
【0004】
【化2】
【0005】
合成は、芳香環への塩素原子の付加のための式III{化学的に2-[(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)チオ]チアゾールと命名される}の化合物の塩素化からなり、続いてスルホニル基の形成のために式IIの塩素保有スルフィドを酸化し、フルエンスルホンに達することがわかる。かくしてフルエンスルホンの直接の前駆体は式IIの化合物である。その化学名は5-クロロ-2-[(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)チオ]チアゾールである。下記でそれを「中間体C1」と命名する場合がある。
【0006】
特許文献1に従って出発材料として用いられた式IIIの化合物はもっと前の公開文献、特許文献2から既知である。特許文献2の実施例16は、2-メルカプトチアゾールと1,1,2-トリフルオロ-4-ブロモ-1-ブテンのカップリングにより2-[(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)チオ]チアゾールが製造されることを示している:
【0007】
【化3】
【0008】
実際に、特許文献2に示される通り、式Vの混合ハロアルケンは活性複素環式フルオロアルケニルスルホンの製造において重要な役割を果たし、それはハロアルケン(V)を用いる複素環式チオール(IV)のアルキル化が必須のフルオロアルケニル官能基を化合物の構造中に直接導入するからである。この理由で、先行技術で報告される複素環式フルオロアルケニルスルホンの製造は多くの場合に式Vの混合ハロアルケンに基づいている。
【0009】
しかしながら、この発明の支持において行われた実験研究は、炭素-炭素二重結合の導入が塩素化され易い部位を形成し、かくして環塩素化反応を迂回し、それは望ましくない副生成物に続くので、上記で概述されるスキームに従って複素環式チオール(IV)とハロアルケンVのカップリングを行うのは早すぎることを示している。フルエンスルホンのための先行技術に基づく合成は望ましくない副反応のために収率の低下に苦しめられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1200418号明細書
【特許文献2】国際公開第86/07590号パンフレット
【発明の概要】
【0011】
今回我々は、式Vの混合ハロアルケンの使用を必要としない合成経路を介してフルエンスルホンのような複素環上にハロゲン原子を保有する複素環式フルオロアルケニルスルホンを得られることを見出した。複素環式チオール(IV)のアルキル化は混合ハロアルン(V)の代わりに混合ハロアルンを用いて、例えば1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタン(BrCH-CH-CFCl-CFBr)を用いて達成され、対応するスルフィド(チオエーテル)を形成する。アルキル化反応に塩素化が続き、競争的な炭素-炭素二重結合の不在下で塩素原子を複素環に独占的に結合させる。後になってから末端炭素-炭素二重結合を形成する脱ハロゲン化(例えば還元)反応を介して、必要な炭素-炭素二重結合を分子に導入する。スルフィドをスルホニル基に転換する酸化段階に関し、それは塩素化段階又は脱ハロゲン化段階のいずれかの後に行われる場合がある。酸化形態が塩素化に適していないことは注目に値する。従って合成は段階の順序において互いに異なる経路を介して行われる場合があり;方法に課せられる(placed on)主な要件は塩素化段階が脱ハロゲン化(還元)段階に先行することである。方法の二者択一的経路、経路1及び経路2を、塩素化段階について失敗した経路3と一緒に、下記に描かれる反応スキーム(スキームでは前記の2-メルカプトチアゾール出発材料のアルキル化段階において1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタンを用いた)により示す:
【0012】
【化4】
【0013】
経路1に従う合成経路が好ましい;それは下記に示され、そこにおいて矢印1、2、3はそれぞれアルキル化(カップリング)、塩素化及び脱ハロゲン化(還元)段階に対応する。経路1の合成が通過する最も好ましい重要中間体はそれぞれ中間体A1、B1及びC1と命名される。
【0014】
【化5】
【0015】
上記で示した方法の有効性は、段階を短縮する(telescoping)ことにより、すなわち反応混合物又は仕上げられた溶液を1つの段階から続く段階に直接、中間生成物の単離又は溶媒の交換なしで進めることによりさらに強化される。多段階反応において、多くの場合、1つの段階から次の段階に進む時に溶媒を置き換えることが必要である。下記に報告する1系列の試験は、合成経路が下記の通りに2-メルカプトチアゾール(IV)の合成で出発し、同じ溶媒を用いてアルキル化(1)及び塩素化(2)に進む短縮設計に適していることを示す。選ばれる溶媒は2つの主要な要件:(i)2-メルカプトチアゾールに関する優れた、すなわち10重量%以上の可溶化能力(solubilization capacity);及び(ii)塩素化に対する十分な不活性性を満たす。短縮法における使用用の溶媒選択のために役立つことができる試験を下記に示す。しかしながら本発明の方法は短縮設計に制限されない;方法は1種以上の中間体の単離、それらの精製及び方法段階の間の溶媒の交換を用いて行われる場合がある。例えば2-メルカプトチアゾール(IV)の合成及びアルキル化段階(1)を短縮し、続いて塩素化段階(2)の前に溶媒を交換することができる。
【0016】
従って、本発明は主に式:
Cl-R-S(O)n-(CH-CFX-CF (中間体B)
[式中、X及びXは独立してハロゲン原子である]
の化合物の前記X及びX原子の除去のための脱ハロゲン化の段階を含む式:
Cl-R-S(O)n-(CH-CF=CF (式I’)
[式中、Rは複素環式、好ましくは5員芳香環(特にチアゾール)であり、nは0、1又は2である]
の複素環式フルオロアルケニルスルホンならびにそれらのチオエーテル及びスルホキシド前駆体の製造方法を目的とする。
【0017】
特に前記方法は:
1)第一の有機溶媒中で式L-(CH-CFX-CF[式中、Lはチオール基による置換が可能な離脱基であり、例えばLはブロミド又はヨーダイドのようなハライドであり;X及びXは同一又は異なる場合があるハロゲン原子、例えば塩素、臭素又はヨウ素である]のフッ素化ハロアルカンを用いてチオールR-SH[式中、Rは複素環式5員芳香環、特にチオフェン、チアゾール及びチアジアゾールからなる群より選ばれる硫黄含有環、最も好ましくチアゾールであり、R-SHは式:
【0018】
【化6】
【0019】
のチオールである]
をアルキル化して式:
R-S-(CH-CFX-CF (中間体A)
を有するチオエーテルを形成し、
2)任意的に第二の有機溶媒中で(すなわち無溶媒反応が可能である)中間体Aを環塩素化して式:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
の塩素置換化合物を製造し、そして任意的に中間体Bをその対応する酸化形態Cl-R-S(O)-(CH-CFX-CF[式中、nは1又は2である]に酸化し;
3)第三の有機溶媒中で中間体B又はその酸化形態を脱ハロゲン化して前記X及びX原子を除去し、式:
Cl-R-S(O)-(CH-CF=CF (n=0、1、2;式I’)
の化合物を製造し、
そしてn=0又はn=1の場合、任意的に式I’の化合物を酸化して殺線虫活性を有する式I:
Cl-R-SO-(CH-CF=CF (式I)
の複素環式フルオロアルケニルスルホンを与える
段階を含む。
【0020】
式I’はスルホン(n=2、特定的に式Iにより同定される)及びそれらの非酸化前駆体を包含することが注目される。特にn=0の場合、脱ハロゲン化に続いて本明細書で中間体C:
Cl-R-S-(CH-CF=CF (中間体C)
として同定されるチオエーテルフッ素化アルケン化合物が得られる。
【0021】
連続する段階で用いられる溶媒(例えばアルキル化及び塩素化において用いられる第一及び第二の溶媒)は同一又は異なることができることにも注目するべきである。
【0022】
前記方法の好ましい変形は:
A)チオールR-SHをアルキル化してチオエーテル
R-S-(CH-CFX-CF (中間体A)
を与え;
B)中間体Aを環塩素化して式:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
の塩素置換チオエーテル化合物を製造し、
C)中間体Bを脱ハロゲン化してX及びXハロゲン原子を除去し、式:
Cl-R-S-(CH-CF=CF (中間体C)
のチオエーテルフッ素化アルケンを製造し、
そして任意的に中間体Cを酸化して複素環式フルオロアルケニルスルホン(例えばフルエンスルホン):
Cl-R-SO-(CH-CF=CF (式I)
を与えることを含む。
【0023】
好ましくは、Rはチアゾールであり、XはClであり、XはBrである。従ってそれぞれ次式:
【0024】
【化7】
【0025】
により示される中間体A1及びB1は本発明の追加の側面を形成し;特に有用なのはn=0である中間体A1及びB1ならびにそれらの塩(酸付加塩)である:
【0026】
【化8】
【0027】
アルキル化段階(1)のために必要な出発材料は商業的に入手可能であるか又は既知の方法により製造され得る。
【0028】
離脱基Lがハライド(Hal)である出発材料L-(CH-CFX-CFは本明細書で「フッ素化ハロアルキルハライド」と命名され;X及びXが互いに異なる場合、出発材料は1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタン(HalはBrであり、XはClであり、そしてX はBrである)のように「混合フッ素化ハロアルキルハライド」と命名される。これらの化合物は、例えばジクロロメタン中で式Hal-(CH-CF=CFの4-ハロ-1,1,2-トリフルオロブテンの二重結合にハロゲン(Cl2、Br)又は混合ハロゲン(BrCl、ICl、IBr)を付加し、式Hal-(CH-CFX-CFのビシナルジハライド、例えば隣接炭素上の塩素/臭素/ヨウ素原子を与えることにより、又は文献中で、例えばShellhamer et al.による論文[Journal of Organic Chemistry 73(12) p.4532-4538(2008)及び補足資料]中で見い出され得る他の方法により製造され得る。別の有用な方法はTarrant et al.[The Journal of Organic Chemistry 34(4),p.864-869(1969)]により記載されている通り、エチレンをCF-CFXと反応させることからなる。
【0029】
アルキル化段階に関与する他の出発材料、チオール(IV)、すなわち2-メルカプトチアゾールは、米国特許第2,603,647号明細書及び米国特許第2,603,648号明細書に示されている環化反応により、すなわちチオシアノアセトアルデヒドを硫化水素又はチオウレアと反応させることにより得られ得る。
【0030】
意図される短縮設計に十分に適合し、従って本発明の別の側面を形成するチオール(IV)の合成への好ましい方法は、チオール(IV)の合成からの仕上げられた溶液を回収する段階を含み、その方法では仕上げられた溶液をチオール(IV)の単離なしでアルキル化段階に進めることができるように、チオール(IV)を水に非混和性の有機溶媒中に溶解する。
【0031】
下記に示され、米国特許第5,994,553号明細書に記載されている製造方法を用いてこの方法を実現することができ、それはジチオカルバメート塩(DTCと省略される)を用いてクロロアセトアルデヒド(2-CAA)を閉環反応させて4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオン(下記に描かれる反応スキーム中の135又はヒドロキシが環の5位における炭素に結合しているその異性体又はそれらの互変異性体;下記では4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオンの名前により集合的に示す)を与え、続いて脱水して水分子を失い、2-メルカプトチアゾール(MTZと省略)に達することを含む:
【0032】
【化9】
【0033】
かくしてジチオカルバメート塩を用いてクロロアセトアルデヒドを閉環反応させ、それは酸性水性媒体中で、一般的に室温で行われて4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオン、それらの異性体又は異性体の混合物を形成し、脱水反応が続き、それは高められた温度で行われ、そこにおいて4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオンは水性媒体中で脱水を受け、その後、水に非混和性の有機溶媒を用いてそのようにして生成する2-メルカプトチアゾールを抽出し、それにより水に非混和性の有機溶媒中に溶解した2-メルカプトチアゾールからなる仕上げられた有機溶液を回収することにより2-メルカプトチアゾールが得られる。
【0034】
好ましくは2-メルカプトチアゾールは、酸性水性環境中で(酸性環境は無機又は有機酸により供給される)クロロアセトアルデヒドをジチオカルバメート塩[HNC(S)S,式中、Mは好ましくはアンモニウムであり;アンモニウム塩は本明細書でADTCと省略され;しかしナトリウム及びカリウム塩も用いられ得る]と反応させて4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオンの水性懸濁液を形成し、反応混合物を加熱して反応を完了させ、水に非混和性の有機溶媒を用いて反応混合物を抽出し、反応塊を有機相と水相に分離し、有機相から2-メルカプトチアゾールを単離する(そして任意的に精製する)か又は2-メルカプトチアゾールを含む仕上げられた有機溶液をアルキル化段階に進めることにより得られる。
【0035】
例えばクロロアセトアルデヒド水溶液を塩酸のような無機酸又は有機酸の添加により酸性化し、それに続いてジチオカルバメート塩の水溶液を反応容器に徐々に供給する。塩の添加はある時間をかけて、例えば最高で数時間かけて行われ;添加は0から50℃まで、例えば20-35℃までの温度で行われる。
【0036】
ADTCを添加すると4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオンが水溶液から沈殿し、懸濁液が生成する。ADTCの添加が完了した後、懸濁液をある追加の時間、撹拌下に保つ。
【0037】
4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオンを2-メルカプトチアゾールに転換するために、反応混合物を35℃から還流温度まで、例えば50から90℃までの範囲内の温度に加熱する。
【0038】
次に、反応混合物の仕上げは2-メルカプトチアゾールの抽出を含む。2-メルカプトチアゾールの抽出のための有機溶媒の選択は、方法が短縮設計に適合するかどうかを決定する。すなわち2-メルカプトチアゾールの仕上げ段階及び続く塩素化段階に十分に適合する溶媒を選ぶ場合がある。溶媒の選択に影響する因子は、水への非混和性、2-メルカプトチアゾールに関する高い可溶化能力及び塩素化試薬への十分な不活性性であり、それらをここで詳細に説明する。
【0039】
有機溶媒に課せられる主な要件は、それが水中で低い溶解度を示すことである。「水に非混和性の有機溶媒」により、室温において5.0g/100ml未満、好ましくは3.0g/100ml未満、より好ましくは1.0g/100ml未満そしてさらにもっと好ましくは0.1g/100ml未満の水中の溶解度を有する溶媒を意味する。特に好ましいのは0.05g/100ml未満の溶解度を有する溶媒である。アルキル置換ベンゼン(例えばトルエン)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば1,2-ジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えばNBNと省略されるn-ブチロニトリル及びIBNと省略されるイソ-ブチロニトリル)、R1が脂肪族環(aliphatic ring)であり、R2が直鎖状若しくは分枝鎖状アルキルである式R1-O-R2のエーテル(CPMEと省略されるシクロペンチルメチルエーテルのような)、分子中に4個以上の炭素原子を有する高級アルコール(例えばイソブチルアルコール及びn-ペンタノール)ならびにR3が3個以上の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝鎖状アルキルであるCH-COO-R3のようなエステル(例えばIPAcと省略される酢酸イソプロピル)のような多様な有機溶媒が2-メルカプトチアゾールの抽出のために考慮される場合がある。
【0040】
しかしながら2-メルカプトチアゾールは上記の溶媒のいくつかにおいて極めて低い溶解度を示す;低下した溶解度は不溶性の相の形成を生じ、得られる反応塊が容易な仕上げに適していないという結果を伴い、例えば相分離を達成するのが困難な場合がある(例えば余分の溶媒などの添加及び追加の努力を必要とする場合がある)。それでも、十分なレベルの2-メルカプトチアゾール可溶化を与える適した種類の溶媒、特定的に脂肪族ニトリル(例えばNBN及びIBN)、エーテルR1-O-R2(例えばCPME)、高級アルコール(例えばイソブチルアルコール及び1-ペンタノールのような分子中に4個以上の炭素原子を有する)ならびにエステルCH-COO-R3(例えばIPAc)がある。
【0041】
上記で指摘した通り、2-メルカプトチアゾール生成反応及び仕上げが完了したら、仕上げられた有機溶液を集める。沈殿/結晶化のような通常の方法により2-メルカプトチアゾールを有機相から単離し、再結晶又はクロマトグラフィー精製により精製することができる。単離された2-メルカプトチアゾールは次いでアルキル化反応を経る。しかしながら2-メルカプトチアゾール生成反応に用いられる有機溶媒が塩素化に対して十分に不活性なら、2-メルカプトチアゾールを含む仕上げられた溶液を次の段階(アルキル化段階)及び続いて塩素化段階に直接進める場合がある。
【0042】
要約すると、2-メルカプトチアゾールの仕上げから出発し、塩素化反応に進む方法において用いるための好ましい水に非混和性の溶媒は以下の2つの要件を満たす:
1)25℃における第一の溶媒中の2-メルカプトチアゾールの溶解度は5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、例えば15から25重量%までである;そして
2)溶媒は芳香環を塩素化する少なくとも1種の塩素化剤(例えばCl、塩化スルフリル、N-クロロスクシンイミド及びトリクロロシアヌル酸)に対して十分に不活性である。
【0043】
本発明の状況における塩素化に対する溶媒の安定性を決定するためにそれを試験することができる種々の方法がある。例えば許容され得るレベルの芳香族塩素化を達成するのに必要な条件(例えば温度、時間、触媒及び光照射)下で塩素化試薬を用いて溶媒を処理すると、生成する前記溶媒の塩素化誘導体の量は、適した方法により測定されると溶媒の初期量に対して5%を超えない(好ましくは<3%、より好ましくは<1%)。
【0044】
溶媒が塩化スルフリルに対して(例えば8mlの溶媒を2mlのSOClと一緒に40℃において5時間撹拌すると、GC分析により測定される前記溶媒の塩素化誘導体のレベルは5面積%未満である);及び塩素ガスに対して(例えば20mlの溶媒を介して塩素を1mL/分の速度で2時間泡立たせ、続いて反応容器を閉めて試料を室温で8時間撹拌すると、GC分析により測定される前記溶媒の塩素化誘導体のレベルは5面積%未満である)十分に不活性かどうかを示す試験を下記に提示する。
【0045】
NBN、IBN及びCPMEは下記に報告する実験研究から短縮法に適した溶媒として浮上した。
【0046】
ここでアルキル化段階(1)に移ると、アルキル化反応は、チオールR-SH、例えば2-メルカプトチアゾールを有機溶媒中で塩基の存在下に、例えば0℃から還流温度までの加熱下でフッ素化ハロアルキルハライドHal-(CH-CFX-CFと合わせ、反応を完了させ、仕上げられた有機溶液を集め、そして中間体Aを仕上げられた有機溶液から単離(及び任意的に精製)するか又は中間体Aを含む有機溶液を塩素化段階に進めることを含む。
【0047】
例えば反応容器に上記で挙げた溶媒の群から選ばれる溶媒(例えばエーテル、脂肪族及び芳香族炭化水素、塩素化溶媒、エステル及びケトン;例えばテトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン)ならびに精製されたチオールを装入する。あるいはまた、短縮設計が意図されている場合、チオールを含む仕上げられた粗溶液(例えば2-メルカプトチアゾールを含むNBN溶液又は2-メルカプトチアゾールを含むCPME溶液)をアルキル化反応器に直接加える。
【0048】
2-メルカプトチアゾール:塩基のモル比は好ましくは0.01から10までである。適した塩基にはアルカリカーボネート、例えばNaCO及びKCOならびにアルカリヒドロキシドが含まれる。塩基を固体形態、例えば顆粒/ペレットにおいて、又は例えば反応混合物に供給される溶液中のアルカリカーボネートの濃度が0.01Mから飽和までである水溶液の形態で加える場合がある。従って反応混合物は、加えられる固体塩基を有する単一の有機相又は液体有機相及びアルカリ性薬剤が溶解されている液体水相からなる液体-液体二相系からなる場合がある。両方の場合に、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)のような相間移動触媒の添加から反応が利益を受ける場合がある;相間移動触媒の装入量は一般に2-メルカプトチアゾールに対して約0.1から10モル%までである。
【0049】
次にフッ素化ハロアルキルハライド、Hal-(CH-CFX-CF、特に1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタンのような混合フッ素化ハロアルキルハライドを、好ましくは加熱され激しく撹拌されている反応混合物に加える。2-メルカプトチアゾール:Hal-(CH-CFX-CFのモル比は例えば1:10から10:1までで広く変わる場合があることに注目するべきであり、過剰の1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタンは蒸留により容易に回収可能である。過剰のMTZは沈殿/結晶化により回収される場合がある。
【0050】
Hal-(CH-CFX-CFの添加が完了した後、反応混合物をある追加の時間、撹拌下に保つ。仕上げは水の添加、酸性化及び中に中間体Aが溶解している仕上げられた有機溶液を集めるための相分離を含む。例えば濃縮により粗中間体Aを仕上げられた有機溶液から単離し、精製することができる(例えば蒸留又はクロマトグラフィークリーニング(chromatographic cleaning)により)。あるいはまた、仕上げられた溶液は塩素化段階に向けられる。
【0051】
ここで塩素化段階(2)に移ると、塩素化反応は好ましくは有機溶媒中で中間体Aと塩素化剤を合わせ(例えばあらかじめ中間体A及び有機溶媒が装入された反応容器に塩素化剤を加えることにより)、反応を完了させ、中間体Bを反応混合物から回収することを含む。
【0052】
主なハロゲン化剤の例をいくつか挙げるとCl、塩化スルフリル、N-クロロスクシンイミド及びトリクロロシアヌル酸のような芳香族塩素化において有効であることが既知の塩素化剤を用いることができる。考慮されている塩素化剤に十分に不活性であるいずれの有機溶媒も用いられる場合がある;そのような溶媒には四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、アセトニトリル及びジメチルホルムアミドが含まれる。しかしながら好ましくはアルキル化段階に回収される仕上げられた溶液を乾燥し(例えば蒸留を行って0.1w/w%の含水率に達せしめ)、乾燥された溶液を塩素化反応器、例えばNBN中の中間体A1の溶液に装入する。次いで反応器に塩素化剤を徐々に供給する。
【0053】
例えば中間体B1を生成する中間体A1の塩素化は塩化スルフリルを用いて達成される:
【0054】
【化10】
【0055】
塩化スルフリルをそのままの形態(neat form)で、又は中間体Aを溶解するために用いられると同じ有機溶媒、例えばNBN中の溶液の形態で反応混合物に供給する。SOCl溶液の添加はある時間をかけて、例えば最高で数時間をかけて徐々に行われる場合がある。塩素化反応は発熱性である。
【0056】
SOClの添加が完了したら、反応混合物を追加の時間、室温で撹拌し、その時間の間に周期的に反応塊を試料採取して適した分析法により反応の進行を監視する。
【0057】
仕上げは水の添加、ろ過及びろ液の有機相と水相への分離を含む。中間体B1を揮発性物質の除去により有機相から分離し、任意的に分別蒸留又はクロマトグラフィークリーニングにより精製してからそれを次の(脱ハロゲン化)段階に進める。
【0058】
本発明の別の態様において、中間体B1を生成する中間体A1の塩素化を元素状塩素(elemental chlorine)を用いて達成する:
【0059】
【化11】
【0060】
あらかじめ中間体A1、有機溶媒(例えばアルキル化段階に回収された仕上げられた有機溶液;仕上げられた有機溶液は塩素化段階の前に乾燥される)及びトリエチルアミンのような有機塩基が装入された反応容器に塩素を供給する。溶液を介して泡立てられ、中間体A1との反応に利用可能な塩素の量は好ましくは約1.0ないし2.5当量である。許容され得る収率の達成のために反応に供給されねばならない塩素の合計量は反応温度に依存する場合がある(反応は発熱性であり、反応混合物を冷却しそれを室温に保つことは塩素の量の増加を必要とする場合がある)。
【0061】
仕上げは水を用いる洗浄及び有機相と水相への分離を含む。中間体B1を揮発性物質の除去により有機相から分離し、任意的に分別蒸留又はクロマトグラフィークリーニングにより精製してからそれを次の(脱ハロゲン化)段階に進める。
【0062】
上記で指摘した通り、2-メルカプトチアゾール合成、アルキル化(1)及び塩素化(2)の段階の短縮の代替手段(alternative)がある。代替手段は、2-メルカプトチアゾールを含む仕上げられた溶液(例えば1-ペンタノールのような水に非混和性のC4-C5アルカノール中の)をアルキル化段階に進め、アルキル化生成物(中間体A)を単離し、塩素化反応の前に溶媒を例えばクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素又は上記で挙げた塩素化溶媒のリストから選ばれる別の溶媒に交換することを含む。
【0063】
ここで脱ハロゲン化段階(3)に移ると、中間体B1:
【0064】
【化12】
【0065】
中間体B1
のような中間体B[Cl-R-S-(CH-CFX-CF]の1位及び2位における隣接炭素上の2つのハロゲン原子、X及びXの脱離は、好ましくは還元剤、例えば強力な還元性金属、特に亜鉛を用いて達成される。金属は典型的に高められた温度で適した溶媒、例えばメタノール又はエタノールのような低級アルコールあるいは酢酸と組み合されて十分に働く。Zn/メタノールの組み合わせは好ましい;反応の副生成物は対応するハロゲン化亜鉛塩である。単純なビシナルジハライドの脱ハロゲン化に役立つことが既知であるZn/メタノールの組み合わせは、ハロゲン化されたフッ素化アルカン鎖を保有するチオエーテル(中間体B1)の選択的脱ハロゲン化にも有効であり、対応するチオエーテルフッ素化アルケン(中間体C1)に到達することも見いだされた。
【0066】
好ましい脱ハロゲン化反応を下記に示す:
【0067】
【化13】
【0068】
脱ハロゲン化反応は、メタノール及び亜鉛金属(好ましくは顆粒形態又は粉末形態において、しかしワイア、シート及びウールのような他の金属形態も用いられ得る)を反応器に装入し、反応混合物に中間体B(例えばB1)を加えることにより行われる。
【0069】
亜鉛:メタノールの重量比は広い範囲内で変わる場合がある。必要なら既知の方法により、例えば少量の元素状臭素を用いるか又はハロゲン化亜鉛を添加することにより中間体Bの導入の前に金属を活性化する場合がある。中間体Bの添加は、好ましくは(任意的に活性化された)亜鉛を含む媒体を高められた温度に加熱した後に開始するが、反応は遅い速度とはいえ室温でも進行する。
【0070】
中間体Bの添加が完了した後、反応混合物をある追加の時間、高められた温度で撹拌下に保つ。反応生成物、中間体C、特に中間体C1{5-クロロ-2-(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)チオ]チアゾール}を通常の方法(冷却、酸性化及び有機相の回収)により分離し、分別蒸留又はクロマトグラフィーにより精製する。
【0071】
最後に、化合物C1{5-クロロ-2-(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)チオ]チアゾール}は酸化を経てフルエンスルホンを与えることができる。酸化反応は当該技術分野で既知の方法により、欧州特許第1200418号明細書及び米国特許第2006/0004196号明細書示されている通り、過酸化水素、m-クロロペルオキシ安息香酸、ペルオキシ酢酸、ペルオキシ安息香酸、モノペルオキシフタル酸マグネシウム、ペルオキシ一硫酸カリウムのような酸化剤を用いて行われる。スルフィドをスルホンに、すなわち中間体Bをその酸化形態に転換するための本明細書に挙げられる他の酸化反応を行うためにも酸化剤を用いることができる:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF
Cl-R-S(O)-(CH-CFX-CF (n=1,2)
殺線虫的に活性な材料、例えばフルエンスルホンを欧州特許第1200418号明細書に記載されている目的のために用いることができる。
【0072】
ここで経路2に移ると、前記方法は塩素化段階に続いて経路2に迂回し、そこで合成経路は中間体Bの酸化に進行して対応する中間体Bのスルホン形態を与え、それは脱ハロゲン化を経て活性化合物、すなわちフルエンスルホンを生ずることが上記の一般的なスキームにおいてわかる。従って経路2は以下の:
A)チオールR-SHをアルキル化してチオエーテル
R-S-(CH-CFX-CF (中間体A)
を与え;
B)中間体Aを環塩素化して式:
Cl-R-S-(CH-CFX-CF (中間体B)
の塩素置換チオエーテル化合物を製造し、
C)中間体Bを酸化して式:
Cl-R-SO-(CH-CFX-CF (中間体B、スルホン形態)
の対応するスルホンを製造し、
D)中間体Bのスルホン形態を脱ハロゲン化して複素環式フルオロアルケニルスルホン(すなわち殺線虫的に活性な材料):
Cl-R-SO-(CH-CF=CF (式I)
を与える
段階を含む方法により記述される。
【0073】
中間体A1、B1及びB2を通過する経路2に従う好ましい合成経路を下記に示し、そこで矢印1、2、3はそれぞれアルキル化(カップリング)、塩素化及び酸化段階に対応する:
【0074】
【化14】
【0075】
経路1及び2はアルキル化(1)及び塩素化(2)の段階を共有するので、下記の記述は酸化反応(3)及び続く活性化合物を与える脱ハロゲン化に関する。
【0076】
酸化試薬は上記で示した、例えばスルフィドの対応するスルホンへの転換において優れた収率を達成することができる強力な酸化剤のリストから選ばれる。例えば1モルのペルオキシ一硫酸カリウムと0.5モルの重硫酸カリウム及び0.5モルの硫酸カリウムからなる混合物(Oxone(登録商標)として商業的に入手可能なKHSO・0.5KHSO・0.5KSO)を用いることができる。塩混合物は有機溶媒中に可溶性でないが、アルカノール-水(例えばメタノール-水又はエタノール-水)或いは酢酸-水のような水性/有機溶媒系中で、任意的にわずかにアルカリ性のpH範囲内で、好ましくは活性酸素の損失を防ぐために低温で、例えば最高で25℃の温度で酸化反応を進行させることができ、10℃未満の温度でさえ用いられ得る。酸化反応、不溶性塩のろ過及びアルコール溶媒の除去が完了したら、水相の抽出的仕上げにより生成物を回収する。
【0077】
従って酸化反応の好ましい変形は、あらかじめアルカノール(例えばメタノール)及び中間体B1{すなわち2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]-5-クロロ-1,3-チアゾール}が装入された反応容器に試薬KHSO・0.5KHSO・0.5KSOの水溶液を徐々に加えることを含む。
【0078】
試薬KHSO・0.5KHSO・0.5KSOの合計量はいくつかの部分に分けられ、それらを2つの連続する段階に(-SO- → -SO-に対応する)反応に供給し、ここで各段階は撹拌下で、10℃未満の温度における水溶液の形態での主要部分(例えば約1.0-1.1当量の試薬)の添加及び10℃より高い、例えば室温近辺の温度における補助的部分(例えば0.1当量未満の試薬)の添加を含む。第二段階はpH制御下で行われ、ここで反応混合物のpHはアルカリヒドロキシドのような塩基を用いてわずかにアルカリ性に保たれる。
【0079】
例えば前記方法は以下の:
-水性形態における第一の主要量の試薬(例えば1.0-1.1当量)を2-8℃、例えば約5℃の温度で反応混合物に徐々に加え;
-懸濁液を17-23℃、例えば約20℃の温度で撹拌下に保ち;
-第一の補助的量、例えば0.1当量未満を懸濁液に加え;
-懸濁液を撹拌下に保ち;
-懸濁液を2-8℃、例えば約5℃の温度に冷却し;
-反応混合物のpHを例えば8から9までのわずかにアルカリ性の範囲に調整し;
-水性形態における第二の主要量の試薬(例えば1.0-1.1当量)を徐々に加え;
-懸濁液を前記pH範囲において17-23℃、例えば約20℃の温度で撹拌下に保ち;
-第二の補助的量、例えば0.1当量未満を懸濁液に加え;
そして懸濁液を撹拌下に保持して酸化反応を完了させる
段階を含む。
【0080】
不溶性塩を例えばろ過により分離し、任意的に液相を還元剤で処理して残留酸化剤を除去し、液相のアルカノール成分を例えば蒸留により除去し、そして酸化生成物B2を例えば適した有機溶媒を用いる抽出により水相から回収し、それに続いて例えば抽出溶媒を蒸発させることにより酸化生成物B2を抽出溶媒から白色の固体の形態で集めることにより反応混合物を仕上げる。
【0081】
得られる中間体B2は化学的に2-(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチルルスホニル)-5-クロロ-1,3-チアゾール:
【0082】
【化15】
【0083】
と命名され、本発明の別の側面を形成する。
【0084】
次に、中間体B2は脱ハロゲン化を経て殺線虫的に活性な化合物、例えばフルエンスルホンを与える。条件は、経路1に関して上記に記載した脱ハロゲン化段階で適用した条件と類似である。選択される還元剤は亜鉛(例えば粉末又は顆粒形態における)であるが;この場合、脱ハロゲン化反応は好ましくは加熱下におけるテトラヒドロフランのようなエーテル中で、例えば還流THF中で、既知の方法による亜鉛のその場活性化の後に行われ、例えば添加剤及び促進剤を用いる化学的活性化は、少量の元素状ハロゲン(ヨウ素の結晶又は液体臭素)の添加、ハロゲン化亜鉛、第一銅塩又は第二銅塩、例えば臭素化第二銅の添加により達成され得る。脱ハロゲン化反応段階に用いられ得る他の溶媒はDMF及びメタノールである。
【0085】
中間体B2の添加は、好ましくは(任意的に活性化された)亜鉛を含む媒体を高められた温度に加熱した後に開始されるが、反応は遅い速度とはいえ室温でも進行する。反応の進行を追跡し(例えば液体クロマトグラフィー-質量分析)、中間体B2の転換率を決定する。必要なら補足量の上記の添加剤及び促進剤を反応混合物中に導入する。次いで例えば数時間に及ぶ還流及び撹拌下で反応を完了させる。
【0086】
活性化合物の回収のための仕上げは未反応金属のろ過、酸性化、抽出法ならびに例えばカラムクロマトグラフィー法及び他による精製を含む。
略語
本明細書で、化合物をそれらの分子量及び以下の略語により互換的に同定する;互変異性体が存在する場合、それも構造及び本明細書で用いられる名称により包含される:
2-CAA:クロロアセトアルデヒド
ADTC:ジチオカルバメートアンモニウム塩
135:4-ヒドロキシ-2-チアゾリジンチオン
MTZ,117:2-メルカプトチアゾール
1,4-DiBr:1,4-ジブロモ-2-クロロ-1,1,2-トリフルオロブタン
339:2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]チアゾール
374:本明細書で互換的に命名される5-クロロ-2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]チアゾール;及び2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]-5-クロロ-1,3-チアゾール
259:5-クロロ-2-[(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)チオ]チアゾール
406:2-(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチルスルホニル)-5-クロロ-1,3-チアゾール
【発明を実施するための形態】
【0087】
実施例
分析法
1)LC-MS分析
デガッサーを有するAccela 600ポンプ、Accela PDA検出器、Accelaオートサンプラー及びExtractive MS Detector(Orbitrap)からなるThermo Scientific LC/MS系を用いてLC-MS分析を行った。測定のためにHypersil Gold Column(250x4.6mm,LOT 7237,#0160665T)を用い、カラムオーブンの温度を40℃に設定した。以下のプログラムを用いた:0-2分:MeCN(アセトニトリル)とギ酸の50:50混合物(+水中の0.1Mギ酸溶液)。2-8分:MeCN対ギ酸の60:40の比を選んだ。8-15分 MeCN対ギ酸の95:5の比を用いた。15-18分まで MeCN対ギ酸の30:70の比を用いた。それぞれの時間間隔において流量を1000μl/分に設定する。15の全実験時間を記録し、Aチャンネルを254nmに設定して230-360nmの範囲内の波長を測定した。
2)GC-MS分析
Restek Rxi-5Sil MSカラムが供えられたThermo Scientific GC/MSモデルITQ1100を用いてGC-MS分析を行った。以下のオーブン温度プログラムを用いた:初期温度=34℃、初期時間2分、40℃/分で125℃まで加熱、次いで保持時間なしで10℃/分で330℃の最終的な温度まで加熱。次いでこの最終的な温度を5分間保持し、その後温度プログラムを終了した(the end of the temperature program was reached)。
【0088】
製造1
2-メルカプトチアゾール(化合物IV)の製造
【0089】
【化16】
【0090】
米国特許第5,994,553号明細書に記載されている方法に従って2-メルカプトチアゾールを製造した。50.0gの全体量の2-クロロアセトアルデヒドを用いて反応が完了したら、反応混合物を20℃に冷却し、400gのNBNを用いて1回及び100gのNBNを用いて2回抽出した。
【0091】
有機抽出物を一緒に合わせた。MTZは分析標準に対する溶液の定量分析により約75-80%の収率でNBN溶液中において得られる。
【0092】
製造2
2-メルカプトチアゾール(化合物IV)の製造
【0093】
【化17】
【0094】
米国特許第5,994,553号明細書に記載されている方法に従って2-メルカプトチアゾールを製造した。110gの全体量の2-クロロアセトアルデヒドを用いて反応が完了したら、1-ペンタノール(200グラム)を加え、温度を70℃に上昇させる。反応物を完了まで1.5時間撹拌する。
【0095】
混合物を20℃に冷却し、ろ過し、続いて相を分離する。水相をペンタノールで2回抽出し(2x50グラム)、ペンタノール中のMTZの溶液を得る。
【実施例1】
【0096】
(経路1)
化合物IVのアルキル化による中間体A1の製造
2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]チアゾール
【0097】
【化18】
【0098】
撹拌機、還流コンデンサー、温度計及びpHメーターが供えられた1Lの反応器に製造1で得たNBN中のMTZ溶液(16.5重量%MTZ溶液の350g,492.79ミリモル,1.0当量)及び水(25g)を加え、続いて水酸化ナトリウム水溶液(15重量%)を撹拌下で滴下してpH4に達せしめた。
【0099】
次にTBAB(7.54g,23.41ミリモル)を反応混合物に加え、続いて1,4-DiBr(143.5g,468.12ミリモル,0.95当量)を加えた。次いでNaCOをゆっくり加えた(11.53g,122.7ミリモル,0.23当量)。次いで反応混合物を70℃に加熱し、水酸化ナトリウム水溶液(約100gの15重量%溶液)を加えてpH~8-8.2に達せしめた。反応混合物を撹拌下に約1時間保ち、その時間の間に反応混合物を周期的に試料採取して反応の進行を追跡した。
【0100】
反応混合物を室温に冷却した。HCl水溶液(32重量%)を用いてpHを4に修正した。反応混合物をろ過した。ろ液を水相と有機相に分離した。有機相(440g)はNBN中に溶解された~35重量%の表題生成物(中間体A1)からなる。収率:分析標準に対する定量分析により~95%。溶液をさらなる精製なしで塩素化反応において用いた。
【0101】
中間体A1の同定を上記に概述したGC-MS-分析により確認した。従って、精製試料(カラム分離により精製された)を注入し、10.56分の保持時間において1つのピークを生じた。このピークのMSスペクトルは約m/z340.6の質量ピークの予測されるスプリットパターン(splitting pattern)を示す。
【0102】
クロマトグラム及び質量スペクトルをそれぞれ図1A及び1Bに示す。1HNMR、13CNMR及び19FNMRをそれぞれ図2A、2B及び2Cに添付する。
【実施例2】
【0103】
(経路1)
SOClを用いる中間体A1の塩素化による中間体B1の製造
5-クロロ-2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]チアゾール
【0104】
【化19】
【0105】
実施例1で得たNBN中の中間体A1の乾燥溶液(NBN中の28.0重量%溶液の504.0g)が装入された1000mlの反応器において塩素化反応を行った。塩化スルフリル(70g,NBN中の50%溶液として加えられる)を25℃において2.5時間かけて滴下した。添加は発熱性である;最高で5℃の温度上昇が観察された。
【0106】
SOCl添加が完了したら、反応混合物を室温でさらに90分間撹拌し、その時間の間に反応塊を周期的に試料採取して反応の進行を監視する。反応がもう進行しない場合、追加量のSOClを加える必要がある。さらに60分間撹拌した後、反応物を周期的に試料採取する。
【0107】
反応の最後に到達したら、水(250g)を反応容器に加え、反応混合物を15分間撹拌した。ろ紙を介して反応混合物をろ過した。ろ紙を少量のNBNで洗浄した。ろ液を水相と有機相に分離した。有機相(~750g)はNBN中に溶解された17.5重量%の表題生成物(中間体B1)からなる。収率:分析標準に対する定量分析により~84%。
【0108】
中間体B1の同定を上記に概述したLC-MS分析により確認した。従って、精製試料(カラム分離により精製された)を注入し、11-19分の保持時間において1つのピークを生じた。このピークのMSスペクトルは約m/z375.8の質量ピークの予測されるスプリットパターンを示す。
【0109】
クロマトグラム及び質量スペクトルをそれぞれ図3A及び3Bに示す。1HNMR、13CNMR及び19FNMRをそれぞれ図4A、4B及び4Cに添付する。
【実施例3】
【0110】
(経路1)
塩素ガスを用いる中間体A1の塩素化による中間体B1の製造
5-クロロ-2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]チアゾール
【0111】
【化20】
【0112】
塩素化反応を1つの三口フラスコ反応器において行った。実施例1で得たNBN中の中間体A1の溶液を回転蒸発器上で蒸発させ、次いでトルエンを用いる追加の同時蒸発を行った。蒸留されたNBN(含水率が0.1w/w以下である)を加え、NBN中の中間体A1の~25重量%溶液を与え、それを反応器中に装入した。トリエチルアミン(0.1当量)を溶液に加えた。反応器に塩素ガスを供給した;キャリブレーションされたバブラー(bubbler)を用いてガスの量を調整した。ガスの流量は0.6-0.9ミリモル/分であった。加えられた塩素の合計量は約1.7当量であった。
【0113】
シンターNr.4(sinter Nr.4)を用いるデカライト(decalite)を介して反応混合物をろ過した。有機ろ液を30mlの塩化ナトリウム水溶液(5重量%)で2回洗浄した。相分離が達成されたら、NBN中の表題生成物(中間体B1)の溶液を集める(24%含有率、分析標準に対する定量分析により95%の収率を示す)。
【0114】
この試料のLC-MS分析は実施例2で観察されたものと同一であった。
【実施例4】
【0115】
(経路1)
金属亜鉛を用いる脱ハロゲン化による中間体B1からの中間体C1の製造
5-クロロ-2-[(3,4,4-トリフルオロ-3-ブテン-1-イル)チオ]チアゾール
【0116】
【化21】
【0117】
回転蒸発器上での溶液の蒸発により、実施例2のNBN溶液から中間体B1を単離した。粗粘性材料(163g)をメタノール(100g)中に溶解した。
【0118】
1Lの反応器に140mLのメタノール及び32.4gの金属亜鉛(亜鉛顆粒 +60;Numinorから入手可能)を装入し、撹拌下で加熱して50℃に達せしめた。次にメタノール中の中間体B1の溶液を1.5時間かけて滴下した。添加が完了したら、反応混合物をさらに2時間還流させ且つ撹拌し、混合物を周期的に試料採取して反応の進行を追跡する。
【0119】
反応混合物を5℃に冷却する。1MのHCl溶液をpH<3のpHが得られるまでゆっくり加える(冷却下で)。揮発性物質を反応混合物から蒸発させる(MeOH)。得られる2相系をろ過する。有機相を分離する;表題生成物の含有率は約60重量%であり、分析標準に対する定量分析により最高で85%の収率に相当する。
【実施例5】
【0120】
短縮法のための溶媒選択
2-メルカプトチアゾールの溶解度を室温において多様な溶媒中で評価した。大量の2-メルカプトチアゾールを試験される溶媒に加えた。混合物を終夜撹拌した。残留固体をろ過により除去した。次いで溶液を分析標準に対する定量分析により分析し、2-メルカプトチアゾールの濃度を決定した。結果を表1に記録する。
【0121】
【表1】
【0122】
2-メルカプトチアゾールのかなり濃縮された溶液(>5重量%)を生ずる選択基準を満たすいくつかの溶媒を、塩素化試薬として塩化スルフリル又はガス状塩素を用いて塩素化に対するそれらの不活性さを決定するために試験した。塩素化反応の条件及び結果-GC分析により測定される塩素化生成物-を表2において表にする(tabulated)。
【0123】
【表2】
【0124】
結果は、NBN、IBN及びCPMEが短縮法における使用に適した溶媒として浮上することを示しており、それはそれらが両方の試験の要件(高濃度の2-メルカプトチアゾールを溶解すること及び少なくとも1種の塩素化剤に不活性であること)を満たすからである。
【実施例6】
【0125】
(経路1)
化合物IVのアルキル化による中間体A1の製造
2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]チアゾール
【0126】
【化22】
【0127】
撹拌機、還流コンデンサー、温度計及びpHメーターが供えられた1Lの反応器に製造2で得たペンタノール中のMTZ溶液(14.3重量%MTZ溶液の350g)及び水(25g)を加え、続いて水酸化ナトリウム水溶液(45重量%)を撹拌下で滴下してpH4に達せしめた。
【0128】
次にTBAB(6.6g)を反応混合物に加え、続いて1,4-DiBr(124g)を加えた。次いでNaCOをゆっくり加えた(10g)。次いで反応混合物を35℃に加熱し、水酸化ナトリウム水溶液(45重量%溶液)を加えてpH~8-8.5に達せしめた。反応混合物を撹拌下に約1時間保ち、その時間の間に反応混合物を周期的に試料採取して反応の進行を追跡した。
【0129】
反応混合物を室温に冷却した。HCl水溶液(32重量%)を用いてpHを4に修正した。反応混合物をろ過した。ろ液を水相と有機相に分離した。表題生成物(中間体A1)を含む有機相中の有機溶媒を蒸留により除去し、続いて生成物をトップ蒸留(top distillation)した。90%収率。中間体A1を実施例1に記載した通りに同定した。
【実施例7】
【0130】
(経路1)
SOClを用いる中間体A1の塩素化による中間体B1の製造
2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]-5-クロロ-1,3-チアゾール
【0131】
【化23】
【0132】
中間体A1(96.6重量%の100g)及び乾燥MCB 300グラムが装入された1000mlの反応器において塩素化反応を行った。塩化スルフリル(45g)を25℃において1時間かけて滴下した。添加は発熱性でない。
【0133】
SOCl添加が完了したら、反応混合物を50℃でさらに30分間撹拌し、その時間の間に反応塊を周期的に試料採取して反応の進行を監視する。反応がもう進行しない場合、追加量のSOClを加える必要がある。さらなる60分間の撹拌の間に、反応物を周期的に試料採取する。
【0134】
反応の最後に到達したら、水(200g)を反応容器に加え、反応混合物を15分間撹拌した。相を水相と有機相に分離する。有機溶媒を減圧下で有機相から除去し、粗生成物を得る(中間体B1)。収率:分析標準に対する定量分析により~90%。中間体B1を実施例2に記載した通りに同定した。
【実施例8】
【0135】
(経路2)
中間体B2を与えるための中間体B1の酸化
2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)スルホニル]-5-クロロ-1,3-チアゾール
メタノール(190ml,20体積(20vol.))中の2-[(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチル)チオ]-5-クロロ-1,3-チアゾール(9.5g,0.025モル,1.0当量)に水(45.6ml,4.80体積)中のOxone(登録商標)(8.56g,0.0278モル,1.1当量)の溶液を、撹拌下に5℃において30分以内に滴下した。続いて白色の懸濁液を20℃で1.5時間撹拌した。この時間の後にOxone(登録商標)(0.43g,1.39ミリモル,0.06当量)を再び加え、混合物をさらに60分間撹拌した。続いて混合物を再び5℃に冷却し、4MのNaOHを用いて8-9のpHを調整し、水(45.6ml,4.80体積)中のOxone(登録商標)(8.56g,0.0278モル,1.1当量)の溶液を60分以内に滴下し、その間pHはまだ8-9に保持された。次いで混合物をpH制御下で20℃において60分間撹拌した。この時間の後、Oxone(登録商標)(0.26g,0.09ミリモル,0.033当量)をもう一度加え、混合物をさらに60分間撹拌した。
【0136】
塩を吸引ろ過し、白色の残留物をメタノールで2回洗浄し、次いでろ液を重亜硫酸ナトリウム溶液(9.50ml,1.0体積)と一緒に撹拌した。メタノール画分を真空中でろ液から蒸留した。酢酸エチルを加え、有機相を水相から分離し、2相性残留物及び水相を再び酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、蒸発させて9.7gの表題生成物を白色の固体として94%の収率で与えた。LCMS及びNMRは構造を裏付けた;1HNMR、13CNMR及び19FNMRスペクトルをそれぞれ図5A、5B及び5Cに添付する。
【実施例9】
【0137】
(経路2)
金属亜鉛を用いる脱ハロゲン化による中間体B2からのフルエンスルホンの製造
反応フラスコに亜鉛(粉末,2.4g,36.9ミリモル,3.0当量)及び無水THF(100ml)を装入した。3滴のBrを加え、反応混合物を30分間撹拌してZnを活性化した。ZnCl(3.34g,24.6ミリモル,2.0当量)を加え、温度を還流温度にした(brought to reflux)。次いで2-(4-ブロモ-3-クロロ-3,4,4-トリフルオロブチルスルホニル)-5-クロロ-1,3-チアゾール(5.0g,12ミリモル,1.0当量)を加え、反応混合物を24時間還流において撹拌した。この時間の後、LCMS分析に従うと部分的な転換が達成された。1当量(12ミリモル)のZnClを加え、反応をさらに7時間続けた。次いで亜鉛残留物をろ過し、ろ液に2MのHClを加え、続いてAcOEtを加えた。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して3.7gの粗生成物(crude)を生じた。残留物にEtOを加え、沈殿する結晶をろ過した。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(100% DCM)により精製し、純粋な所望の生成物を無色の油として47%の収率で与えた。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1A】中間体A1のクロマトグラムを示す。
図1B】中間体A1の質量スペクトルを示す。
図2A】中間体A1の1HNMRを示す。
図2B】中間体A1の13CNMRを示す。
図2C】中間体A1の19FNMRを示す。
図3A】中間体B1のクロマトグラムを示す。
図3B】中間体B1の質量スペクトルを示す。
図4A】中間体B1の1HNMRを示す。
図4B】中間体B1の13CNMRを示す。
図4C】中間体B1の19FNMRを示す。
図5A】中間体B2の1HNMRを示す。
図5B】中間体B2の13CNMRを示す。
図5C】中間体B2の19FNMRを示す。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
【国際調査報告】