(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】菌糸体成長床
(51)【国際特許分類】
C12M 1/16 20060101AFI20220104BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20220104BHJP
A01G 18/62 20180101ALI20220104BHJP
【FI】
C12M1/16
C12N1/14 B
A01G18/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517589
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(85)【翻訳文提出日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 US2019057087
(87)【国際公開番号】W WO2020082043
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520032516
【氏名又は名称】マイコワークス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ロス フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】スカリン マット
(72)【発明者】
【氏名】ウエナー ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】チェイス ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー クイン
(72)【発明者】
【氏名】サルティドス ライアン
(72)【発明者】
【氏名】マックゴーイ フィル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA03
4B029AA08
4B029BB06
4B029CC07
4B029EA20
4B029GB07
4B065AA57X
4B065BB26
4B065BC34
4B065CA60
(57)【要約】
純粋な菌糸体又は制御された若しくは予測可能な特性を有する純粋な菌糸体複合材料を最適に生産するための菌糸体成長床であって、トレイ、運搬プラットフォーム、透過性膜、基質、多孔性材料、及び蓋を含む床が提供される。透過性膜は、トレイ内の運搬プラットフォーム上に位置する。基質は、透過性膜上に位置し、多孔性材料は、基質の上部に位置する。このシステムは、基質質量対周囲空間容積比が0.5~5.0g/ccであり、空気容積(周囲空間)対基質容積が0.01~1.0であり、空気容積(周囲空間)対基質面積が、0.5~5cc/cmである構成を提供し、CO
2濃度は3%よりも高く保たれ、相対湿度は40%よりも高く保たれ、子実体を有しない皮革様菌糸体を生産するために、O
2濃度は定常状態条件で20%未満に保たれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイであって、前記トレイ内に嵌合するように構成されている運搬プラットフォームを有するトレイ;前記運搬プラットフォーム上に位置している、複数の孔を有する透過性膜;真菌菌株が接種されており、前記透過性膜上に位置している基質;前記基質の上部に位置している多孔性材料;及び前記トレイに取り付けられて、基質質量対トレイ空き空間容積比が0.5~5.0g/ccになり、トレイ空き空間容積対基質容積が0.01~1.0になり、トレイ空き空間容積対基質面積が0.5~5.0cc/cm
2になるように最適な構成を形成する蓋を含み、子実体を有しない菌糸体成長を促進するために、CO
2濃度は、定常状態条件で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O
2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれる、菌糸体成長床。
【請求項2】
前記トレイは、包囲壁、前記蓋、又は前記包囲壁に脱着自在に取り付けられるように適合可能な床の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項3】
前記透過性膜上の前記複数の孔は、菌糸体の均等な成長を調節する、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項4】
前記トレイは、滅菌温度、基質コロニー形成、及び引っかき抵抗性を提供し、異なる容器間で基質を移送する必要性が排除される物理的属性を呈する、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項5】
前記蓋は、複数のガス交換開口部を含む、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項6】
前記複数のガス交換開口部は、前記蓋の表面積の最低でも0.2%である、請求項5に記載の菌糸体成長床。
【請求項7】
前記透過性膜は、メッシュ、繊維、及びナイロンからなる群から選択される、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項8】
前記基質は、窒素を多く含む粒で補完されている硬質木材粒子及び軟質木材粒子の混合物を含む、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項9】
前記基質質量対トレイ空き空間容積比は、0.75~4.0g/ccであり、前記トレイ空き空間容積対基質容積は、0.1~0.45であり、前記トレイ空き空間容積対基質面積は、1.5~3.0cc/cm
2である、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項10】
菌糸体と非反応性である前記透過性膜、並びに前記基質へと及び前記基質内に直接的に一体化されている前記多孔性材料を有する前記トレイの構造は、前記基質からの頂端発現菌糸体の成長及び前記菌糸体の容易な除去を可能にする、請求項1に記載の菌糸体成長床。
【請求項11】
純粋な菌糸体、又は制御された予測可能な特性を有する菌糸体複合材料を最適に生産するための菌糸体成長床であって、
包囲壁及び取り付けられた床を有するトレイ;
前記トレイ内に嵌合するように構成されており、菌糸体を生産する真菌菌株が接種された基質の質量を支えるように適合可能である運搬プラットフォーム;
前記運搬プラットフォーム上に位置している複数の孔を有する透過性膜であって、前記基質を保持し、菌糸体の均等な成長を提供する透過性膜;
前記基質の上部に位置し、前記透過性膜付近に保持される多孔性材料;及び
前記トレイの前記包囲壁に脱着自在に取り付けられて、基質質量対トレイ空き空間容積比が0.5~5.0g/ccになり、トレイ空き空間容積対基質容積が0.01~1.0になり、トレイ空き空間容積対基質面積が0.5~5cc/cm
2になるように最適な構成を形成するように適合可能な蓋を含み、子実体を有しない菌糸体成長を促進するために、CO
2濃度は、定常状態条件で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O
2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれ、
前記運搬プラットフォームを有する前記トレイ、前記基質を有する前記透過性膜、前記多孔性材料、及び前記蓋は、容積、質量、基質面積、及びガス交換パラメータを正確に制御して菌糸体を生産する最適な構成を獲得するように構成されている、菌糸体成長床。
【請求項12】
前記トレイは、プラスチック、木材、ガラス繊維、及び金属からなる群から選択される剛性材料を含む、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項13】
前記トレイは、滅菌温度を提供し、滑らかな内部表面、基質コロニー形成、引っかき抵抗性を維持し、耐光性であり、1~120回の反復サイクル使用に使用することが可能であり、異なる容器間で基質を移送する必要性が排除される物理的属性を呈する、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項14】
前記基質は、真菌菌糸体食物源からなる、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項15】
前記基質は、真菌菌糸体食物源を含む、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項16】
前記蓋は、複数のガス交換開口部を含む、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項17】
前記透過性膜は、それを通して菌糸体の成長を可能にし、メッシュ、繊維、及びナイロンからなる群から選択される、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項18】
前記基質は、窒素を多く含む粒材料で補完されている硬質木材粒子及び軟質木材粒子の混合物を含む、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項19】
前記トレイは、生体基質を越える菌糸体の頂端発現をもたらす、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項20】
前記床及び前記蓋は、容易に交換可能である、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項21】
前記蓋は、前記蓋の表面積の最低でも0.2%である複数のガス交換開口部を有する、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項22】
前記トレイは、菌糸体成長に必要とされる位相的構成要素の反転及び逆転を可能にする、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項23】
前記床及び前記蓋は、脱着自在である、請求項11に記載の菌糸体成長床。
【請求項24】
最適化されており、効率的であり、高スループットであり、低コストである、純粋な菌糸体又は制御された予測可能な特性を有する菌糸体複合材料を生産するための方法であって、
a.包囲壁、及びそこに嵌合するように構成されている運搬プラットフォームを有する床を有するトレイを準備するステップ;
b.複数の孔を有する透過性膜を前記運搬プラットフォーム上に位置付けるステップ;
c.真菌菌株が接種された基質を、前記透過性膜上に位置付けるステップ;
d.多孔性材料を、前記多孔性材料が前記透過性膜付近に保持されるように、前記基質の上部に位置付けるステップ;及び
e.前記トレイを蓋で閉鎖して、基質質量対トレイ空き空間容積比が0.5~5.0g/ccになり、トレイ空き空間容積対基質容積が、0.01~1.0になり、トレイ空き空間容積対基質面積が0.5~5.0cc/cm
2になるように最適な構成を作出するステップであって、子実体を有しない菌糸体成長を促進するために、CO
2濃度は、定常状態条件で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O
2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれる、ステップ
を含む方法。
【請求項25】
前記最適な構成は、菌糸体皮革を生産するために、容積、質量、基質面積、及びガス交換パラメータを正確に制御する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
菌糸体の頂端発現は、生体基質を越えてもたらされ、前記菌糸体の容易な除去を可能にする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
菌糸体の成長に必要とされる位相的構成要素の反転及び逆転が可能である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年10月18日に出願された米国特許仮出願第62/747571号明細書の利益を主張するものであり、この文献の開示はその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、概して、真菌菌糸体バイオファブリケーションという生まれたばかりの産業に関し、より具体的には、子実体を一切有しない菌糸体皮革を製造するための最適な構成を有する菌糸体成長床に関する。
【背景技術】
【0002】
菌糸体は、真菌の生活環の一部として成長する再生可能な天然資源である。キノコは、自然界の最も優れた分解者の1つであり、環境から栄養素を吸収し、有機廃棄物を新しい材料へと変換する。これが生じる際に、真菌は、分岐菌糸の塊の形態をとる場合がある。菌糸は、基質食物源内に又は上に酵素を分泌し、酵素は、食物源が菌糸体へと吸収され得るように食物源を分解する。こうした菌糸及び菌糸体の成長を制御及び指図することにより、及び特定の時間枠でそれらの成長を停止及び再開させることにより、皮革様材料を作出することができる。
近年、皮革様真菌菌糸体は、その機械的特性が様々な用途に活用され得る材料として多大な関心を集めている。菌糸体は、プラスチック及び皮革など、種々の化石燃料又は動物由来材料を代替することができる用途の広い材料として様々な応用において使用することができる。一部のそのような材料としては、ポリスチレン様包装材料又は皮革様バイオ布地(菌糸体皮革)が挙げられる。典型的には、こうした材料は、食物等のために真菌子実体を成長させる前に及び成長に備えて菌糸体を成長させる従来法から導出される。
【0003】
有機物を成長させるための従来手段としては、バイオリアクター、バッグ又はボックス等の槽、インキュベータ、発酵槽、液内反応器、及び固体発酵用のトレイを含む無数のシステムが挙げられる。そのような成長槽は、大豆成長及び麹発酵等の他の産業で使用されている。産業的食用キノコ栽培の分野で使用される1つのそのような従来の成長槽では、腐生性真菌の菌糸塊生産のために、おがくず又は他の繊維に基づく培地が使用される。大容積のリグノセルロース材料を成長させるが、これは、典型的には、子実体を有しない皮革様菌糸体を製造するためではなく、菌糸塊を作出し、料理目的及び/又は医薬品目的のために子実体を生成するというこうした産業の主要な機能を果たすように、大型のバッグ又はボトルで行われる。
菌糸体に基づく最終製品に対して向けられる真菌成長の場合、そのような従来法では十分ではないだろう。菌糸体成長を最大化するためには、制限的な環境制御が必要であることが判明している。当業者であれば、菌糸体に基づく材料はそのような方法により成長させることができることが示されているが、その基質内での菌糸体成長又は子実体成長のいずれでもなく、その基質の外側での菌糸体成長の最適化は、自明なことでもなく又は十分に理解されていることでもないことを理解する。今日まで、菌糸体に基づく材料、特に菌糸体皮革は、ボトル、バッグ、若しくはトラフにおいて、又は特別に制御された生物学的インキュベータ等において食用真菌子実体(キノコ)生産と一致する様式で実施される菌糸体成長から導出されているが、こうした様式では、調整可能性が広範囲であるため、並外れたコスト及び複雑さがもたらされる。言い換えれば、エキソモルフィック(exomorphic)栄養菌糸及び菌糸体成長は、環境的条件、化学的条件、物質的条件、チグモタキシー的(thigmotaxic)条件、及び他の可変条件に応答する。
【0004】
更に、菌糸体のシートを成長させるための現行方法は、全体にわたって、複数の槽及び複数の移動工程を必要とする。材料を移動させる毎に、感染の可能性、又は感染により発酵プロセスを潜在的に壊滅し得る二次要素が導入される可能性がある。このリスクに加えて、材料の交換及び移動の増加は、より多くの設備及び人員が必要になるため、費用の増加を意味する。また、各々の追加の逐次移動により、汚染及び感染を起こす媒介生物が導入される。更に、菌糸体のシートを成長させるために現在使用されている設備は、特定の方法を特に意図したものではなく、むしろ商業用に適切なシートを生成するための菌糸体成長に必要な特定の構成を実現させるために、他の目的のために製作された設備を変更しなければならない。更に、こうした方法では、皮革様菌糸体は生産されず、一貫した厚さ、均一性、又は機械的特性を有する菌糸体を生産することができず、従ってそれらの有用性は限定的なものである。
【0005】
菌糸体成長床の現行技術水準は、ガス、温度、水分、及び全体的環境という人工的条件を導入する精巧な制御システムを必要とする。本実施形態における新たな進歩では、真菌コロニーがそれ自体で微小環境を生成する能力が使用され、そうした微小環境では、菌糸体成長が助長され、感染性媒介生物が妨害され、自然界での自然な成長過程でのように菌糸体が子実体形成へと進行する傾向がない。現行の技術水準では、本実施形態でなされているもの等、反応器設計内で生成される受動的環境状態の洗練された使用がなされていない。
従って、菌糸体成長床の改良、並びに皮革様菌糸体材料及び複合材料を製造するための方法が必要とされている。そのような菌糸体成長床は、基質粒子及び子実体を含まない皮革様菌糸体を製造するための最適な構成を提供するだろう。そのような成長床は、制御された又は予測可能な特性を有する純粋な菌糸体又は純粋な菌糸体複合材料、並びに他の純粋菌糸体含有材料及び複合材料の製作に貢献する、菌糸体成長を促進するための狭くて特定の範囲内にある寸法、内容物、及びガス交換を有するだろう。更に、そのような成長床は、皮革様材料として使用される一貫した厚さ、均一性、及び機械的特性を有する菌糸体を生産するだろう。更に、そのような成長床は、自然界では稀少であるか又は新規である特定の条件を提供するだろう。更に、そのような成長床は、バッチ間で一貫して成長する均一な皮革様菌糸体の生産を可能にし、伝統的なキノコ発酵反応器では暗に不可避である等とされてきた子実体形成を起こさない、自然界では決して見られない環境条件を提供する。本実施形態は、こうした重要な目的を達成することにより、当該分野の欠点を克服する。
【発明の概要】
【0006】
既存のシステム及び方法に見られる制限を最小化し、本明細書を読むと明白になるだろう他の制限を最小化するために、本発明の好ましい実施形態は、菌糸体皮革を生産するための菌糸体成長床、及び菌糸体皮革を最適に生産するための方法を提供する。
菌糸体成長床は、トレイ、運搬プラットフォーム、透過性膜、基質、多孔性材料、及び1セットの交換可能な蓋を含む。トレイは、1セットの包囲壁、床、及び蓋を含む。床は、囲い壁から取り外されるように及び取り付けられるように適合可能である。トレイは、プラスチック、木材、ガラス繊維、及び金属からなる群から選択される剛性材料で製作されている。
床、壁、及び蓋を構成する材料は、特定の厚さ、剛性(又はコンプライアンス)、及び熱耐性を有するように選択される。これらは全て、床内の並びに床内にある基質内のトレーニング環境(training environment)の温度を適切に制御するためである。また、壁のコンプライアンスは、発酵過程全体にわたる操作及び作業中に、菌糸体化された(myceliated)基質の容易な除去を可能にするために重要である。
【0007】
運搬プラットフォームは、トレイ内に嵌合するように構成されており、菌糸体を生産する真菌菌株が接種された基質の質量を支えるように適合可能である。運搬プラットフォームは、好ましくは、それが設置されるトレイの内のり寸法よりも少なくとも1mm小さい寸法を有するが、1mmよりも大きいか又は1mm未満の寸法も同様に提供される。透過性膜は、運搬プラットフォーム上に位置している複数の孔を含み、基質は透過性膜上に位置する。複数の孔は、それを通って菌糸体の均等で規則的な成長を助長するように、透過性膜全体にわたって規則的に離間されている。
基質は、これらに限定されないが、ジャガイモデキストロース、リグニン、穀物、小麦、ミネラル、又はセルロースなど、任意の典型的で好適な真菌菌糸体食物源であってもよい。好ましい実施形態では、基質は、ライ麦粒、又はこれに限定されないがキビ等の窒素を多く含む材料で補完された硬質木材粒子及び柔質木材粒子の混合物を含む。多孔性材料は、基質の上部に位置し、透過性膜付近に保持される。多孔性材料としては、これらに限定されないが、成長基質の上部にある透過性膜の上部に導入される織布又はフェルト(不織)布が挙げられる。
蓋は、複数の開口部を有し、トレイの囲い壁が脱着自在に取り付けられるように適合可能である。蓋の複数の開口部は、水蒸気、二酸化炭素、窒素、及び酸素を含むガスの交換を可能にする。運搬プラットフォームを有するトレイ、基質を有する透過性膜、多孔性材料、及び蓋は、容積、質量、基質面積、並びに空気及びガス交換パラメータを正確に制御して、純粋な菌糸体の、又は菌糸体がそれを通って成長した多孔性層を含む菌糸体-布地複合材料の皮革様材料を生産する最適な構成を獲得するように構成される。
皮革様特性を有する純粋な菌糸体又は菌糸体複合材料を生産するための最適な構成は、子実体もいかなる子実体前駆体も形成せずに、栄養菌糸体のみが床内で成長することを保証するように設計される。
【0008】
上記構成は、基質質量対空気容積(基質により占められていないトレイ内の空き空間の容積)比が、空気容積1立方センチメートルあたりおよそ2.65グラムの基質であり、それに次いで好ましくは0.5~5g/ccである。空気容積対基質容積は、0.01~1.0cc/ccであり、空気容積対基質面積は、0.5~5.0cc/cm2であり、CO2濃度は、定常状態条件で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれる。これらは全て、子実体を形成することなく菌糸体成長を促進するためである。本文書の全体にわたって、「空気容積」という用語は、基質により占められていないトレイの空白空間又は空白容積を記述するために使用することができる。典型的にはこの空き空間容積はガスで満たされることになり、非常に典型的にはそのガスは慣習的に「空気」と称されるものであることになるが、任意のガスがこの容積を占めていてもよく、又はガスがこの容積に存在さえしなくともよいことが理解されるべきである。
【0009】
また、改良されたシステムは、菌糸体成長床を使用して菌糸体皮革を生産するための方法であって、1セットの包囲壁を有するトレイ、取外し可能であってもよく又は可能でなくともよく、それに嵌合するように構成されている運搬プラットフォームを必要としてもよく又は必要としなくてもよい床を準備するステップ、複数の孔を有する透過性膜を運搬プラットフォーム上に位置付けるステップを含む方法を含む。次いで、真菌菌株が接種された基質を透過性膜上に位置付け、多孔性材料が透過性膜付近に保持されるように多孔性材料を基質の上方に位置付け、トレイを蓋で閉鎖して、基質質量対空気容積比が空気容積1立方センチメートルあたり約2.65グラムの基質になり、それに次いで好ましくは0.5~5g/ccになるように最適な構成を作出する。空気容積対基質容積は、0.01~1.0cc/ccであり、空気容積対基質面積は、0.5~5.0cc/cm2であり、CO2濃度は、定常状態条件で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれる。これらは全て、子実体を形成することなく菌糸体成長を促進するためである。
【0010】
本実施形態の第1の目的は、改良された菌糸体成長床及び皮革様菌糸体材料を製造するための方法を提供することである。
本実施形態の第2の目的は、菌糸体成長床、並びに基質粒子及び子実体を含まない皮革様菌糸体を製造するための最適な構成を提供する方法を提供することである。
本実施形態の第3の目的は、皮革としての使用に貢献する菌糸体成長を促進するための狭くて特定の範囲内にある寸法、内容物、及びガス交換を有する菌糸体成長床を提供することである。
本実施形態の第4の目的は、皮革様材料として使用するための、一貫した厚さ、均一性、及び機械的特性を有する菌糸体を生産する菌糸体成長床を提供することである。
本実施形態の第5の目的は、自然界で稀少であり、実験室環境で特定することが極めて困難である特殊な条件を提供する菌糸体成長床を提供することである。
本実施形態の別の目的は、バッチ間で一貫して成長する均一な皮革様菌糸体の生産を可能にする自然界では決して見出されない環境条件を提供する菌糸体成長床を提供することである。
【0011】
本発明のこうした及び他の利点及び特徴は、当業者であれば本発明が理解可能になるように具体的に記載されている。
明瞭性を高め、種々の要素及び実施形態の理解を向上させるため、図中の要素は必ずしも一定の縮尺で描画されているわけではない。更に、一般的であることが公知であり、業界人により十分に理解されている要素は、本発明の種々の実施形態の明瞭な図を提供するために、描画されていない。従って、図面は、明瞭性及び簡潔性のために形態が一般化されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による菌糸体成長床の分解斜視図を示す図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態による菌糸体成長床のトレイの斜視図を示す図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態による菌糸体成長床のトレイ及び蓋の分解斜視図を示す図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態による菌糸体成長床の断面図を示す図である。
【
図5A】本発明の好ましい実施形態による、第1の方向における菌糸体成長床の断面図を示す図である。
【
図5B】本発明の好ましい実施形態による、第2の逆方向の菌糸体成長床の断面図を示す図である。
【
図6】本発明の好ましい実施形態による、菌糸体成長床を使用して菌糸体皮革を生産するための方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の幾つかの実施形態及び応用に関する以下の考察では、添付の図面が参照される。添付の図面は、本発明の一部を形成し、本発明を実施することができる具体的な実施形態が実例として示されている。他の実施形態を使用することができ、本発明の範囲から逸脱することなく変更をなすことができることが理解されるべきである。
各々を、互いに独立して又は他の特徴と組み合わせて使用することができる種々の発明の特徴が下記に記載されている。しかしながら、任意の単一の発明の特徴は、上記で考察されている問題のいずれにも関連しない場合があり、又は上記で考察されている問題の1つにしか関連しない場合がある。更に、上記で考察されている問題の1つ又は複数は、下記に記載されている特徴のいずれとも完全には関連しない場合がある。
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、状況が明らかに別様に指示しない限り、複数の参照対象を含む。「及び」は、本明細書で使用される場合、別様の明示的な記載がない限り、「又は」と同義的に使用される。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、表記されているパラメータの+/-5%を意味する。本発明の任意の態様の全ての実施形態は、状況が明らかに別様に指示しない限り、組み合わせて使用することができる。
状況が明らかに別様に要求しない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、「含む(comprise)」及び「含むこと(comprising)」等の単語は、排他的又は網羅的な意味ではなく、包括的な意味で、つまり「含むがそれに限定されない」という意味で解釈されるべきである。単数又は複数を使用する単語は、それぞれ複数形及び単数形も含む。加えて、「本明細書にて(herein)」、「そこに(wherein)」、「それに対して(whereas)」、「上記に(above)」、及び「下記に(below)」という単語並びに類似の趣旨の単語は、本出願で使用される場合、本出願の任意の特定の部分を参照するのではなく、本出願を全体として参照するものとする。
本開示の実施形態の説明は、網羅的であることも、又は本開示を、開示されている正確な形態に限定することも意図されていない。本開示の具体的な実施形態及び例は、本明細書では例示の目的で記載されているが、関連技術の当業者であれば認識することになるように、本開示の範囲内で種々の等価な改変が可能である。
【0014】
図1~3を参照すると、好ましい実施形態による、菌糸体皮革を生産するための菌糸体成長床10の分解斜視図が示されている。本発明の好ましい実施形態の菌糸体成長床10は、そのような菌糸体が環境に優しい皮革代替材料として使用されることに貢献する新規な様式で菌糸体成長を促進するように、狭くて特定の範囲内の寸法、内容物、及びガス交換を提供する。菌糸体を皮革として使用するためには、生産される菌糸体は、基質材料及び子実体を一切含んでいてはならない。更に、菌糸体細胞は、その基質の境界を越えて伸長するが、生殖キノコへの分化はまだ始まるべきではない。子実体を形成させずに菌糸体細胞を成長させて、それらの基質を越えて伸長させるには、特異的で特定の条件が必要とされる。本発明の菌糸体成長床10は、この稀少であり実現が困難な真菌菌糸体成長のための最適な構成を提供し、バッチ間で一貫して成長する均一な皮革様菌糸体の生産を可能にする。
【0015】
皮革様材料を最適に生産するための菌糸体成長床10は、トレイ12、運搬プラットフォーム18、透過性膜20、基質22、多孔性材料24、及び蓋26を含む。トレイ12は、
図2に示されているように、包囲壁14及び床16を含む。床16は、
図3に示されているように、包囲壁14が脱着自在に取り付けられるように適合可能である。トレイ12は、プラスチック、木材、ガラス繊維、繊維-ポリマー複合材料、及び金属からなる群から選択される剛性材料で製作されている。トレイ12の表面は、それが保持する生体培地による浸潤に対して耐性である。
運搬プラットフォーム18は、トレイ12内に嵌合するように構成されており、菌糸体を生産する真菌菌株(非表示)が接種された基質22の質量を支えるように適合可能である。運搬プラットフォーム18は、その内部に設置されるとトレイ12内での嵌合が可能になる寸法を有する任意の剛性表面であってもよい。運搬プラットフォーム18は、コロニーが形成された基質22の質量を支えるように構築されており、トレイ12から任意の二次位置へと移送される際もトレイ12内に嵌合しているように適合可能である。運搬プラットフォーム18は、その内部に設置されるトレイ12の内のり寸法よりも好ましくは少なくとも1mm小さい寸法を有しなければならないが、代替的な実施形態では、1mm又は1mm未満の量が想起される。運搬プラットフォーム18は、コロニーが形成された基質22の運搬スレッド又は搬送プラットフォームとして作用するという機能に適切であるとみなされる他の任意のより小さな寸法のものであってもよい。
【0016】
透過性膜20は、複数の孔28を含み、運搬プラットフォーム18上に位置付けされ、基質22は、透過性膜20上に位置付けされている。透過性膜20は、基質22を保持し、それを通して菌糸体の均等な成長を調節する。透過性膜20の複数の孔28の各々のサイズは、1ミクロン~1ミリメートルの範囲であってもよい。複数の孔28は、それを通して菌糸体の均等で規則的な成長を助長するように、透過性膜20の全体にわたって規則的に離間されている。透過性膜20は、分解可能に設計されていてもよく、又は腐生真菌との物理的付随による腐敗に耐性であるメッシュ、繊維、ナイロン、若しくは他の材料からなる群から選択することができる。代替的な実施形態では、膜20は、菌糸体成長の過程で消費される等、予想通り分解可能に設計されていてもよく、及び/又は基質が収穫後に廃棄される際に有機廃棄物として生分解される。
【0017】
基質22は、ジャガイモデキストロース、リグニン、又はセルロース等の任意の典型的な真菌菌糸体食物源であってもよい。一実施形態では、基質22は、特定の水分含有量(水)を有する、個別の粒子及び菌糸体成長のための栄養素の混合物である。好ましい実施形態では、基質22は、ライ麦粒又は窒素を多く含む材料で補完された硬質木材粒子及び柔質木材粒子の混合物を含む。本発明の好ましい最適な構成の場合、硬質木材粒子及び柔質木材粒子の混合物は、基質22の固体培地成分の最大95%を構成する。こうした硬質木材粒子及び柔質木材粒子は、ライ麦粒又は窒素を多く含む他の好適な材料で補完されている。ライ麦粒又は他の好適な材料は、基質22の総質量の5~15%を構成する。基質22は、基質22が菌糸体の最適な成長及び繁殖に適正となるように、炭酸カルシウム又は他のカルシウム源を添加することによりpHバランスに関して更に変更されている。基質22の水和が菌糸体の最適な成長及び繁殖に適正な飽和条件を提供するように、基質22には水が添加される。この実施形態では、基質22は、一般に褐色腐朽菌種及び白色腐朽菌種等の、リグニン及びセルロースを多く含む供給源から滋養を導出する全ての腐生真菌候補を含む、マンネンタケ属(Ganodermas)及びホウロクタケ属(Trametes)、タマチョレイタケ(Polyporales)目を含む真菌種に応じて機能するように調製される。多孔性材料24は、基質22の上部に位置付けされ、透過性膜20付近に保持される。多孔性材料24は、成長基材22の上部に導入される綿布地を含むが、これに限定されない。一実施形態では、多孔性材料24は、様々な種類のナイロン及び綿;電子メッシュ、Kevlar(登録商標)(DuPont de Nemours,Inc.社(米国デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))による[-CO-C6H4-CO-NH-C6H4-NH-]n)等の合成メッシュ、又は成長基質22内に直接組み込むことができる他の特殊材料等の他のメッシュを含むことができる。本実施形態では、多孔性材料は、巨視的な機械的特性の独自設計プロファイルを容易にするために、様々な方向に連続して追加される複数の独自材料の単一層又は複数層を含んでいてもよい。
【0018】
蓋26は、
図1及び3に示されているように、トレイ12の包囲壁14に脱着自在に取り付けられるように適合可能である。蓋26は、それらを介してガス交換が可能になる複数の開口部30を有する。蓋26のガス及び蒸気交換のための複数の開口部30は、蓋26の表面積の最低でも0.2%である。トレイ12が蓋26により覆われても、水蒸気、二酸化炭素、窒素、及び酸素を含む、一部のガス又は全てのガス種の交換が可能である。本実施形態における複数の開口部は、数学的設計により分布されている1セットの個別の穴である。別の実施形態では、穴は、DuPont de Nemours,Inc.社(米国デラウエア州ウィルミントン)によるTyvek(登録商標)等のフラッシュスパン高密度ポリエチレン繊維等の選択的透過性材料の層により覆われてもよく、又はそれら自体がそうした層を含んでいてもよい。
【0019】
運搬プラットフォーム18を有するトレイ12、基質22を有する透過性膜20、多孔性材料24、及び蓋26は、容積、質量、基質面積、並びに空気及びガス交換パラメータを正確に制御して菌糸体皮革を生産する最適な構成を獲得するように構成されている。本発明の好ましい実施形態の最適な構成は、空気容積対基質質量比が、空気容積1立方センチメートルあたりおよそ2.65グラムの基質であり、それに次いで好ましくは0.5~5g/ccである。空気容積対基質容積は、0.01~1.0cc/ccであり、空気容積対基質面積は、0.5~5.0cc/cm2であり、CO2濃度は、定常状態条件で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれる。本文書の全体にわたって、「空気容積」という用語は、基質により占められていないトレイの空白空間又は空白容積を記述するために使用することができる。典型的にはこの空き空間容積はガスで満たされることになり、非常に典型的にはそのガスは慣習的に「空気」と称されるものであることになるが、任意のガスがこの容積を占めていてもよく、又はガスがこの容積に存在さえしなくともよいことが理解されるべきである。
この最適な構成は、子実体を有しない皮革様菌糸体成長を促進する。
【0020】
トレイ12の寸法は、一実施形態では、商業的利益及び利用可能性を有する菌糸体皮革を作出するために、幅60.96cm(24インチ)×長さ91.44cm(36インチ)である。本開示の制限は、こうした寸法に束縛されず、任意の幅×任意の長さのトレイを使用することができる。トレイ12は、生体基質を越える菌糸体の頂端発現をもたらす。菌糸体と非反応性である透過性膜20、並びに基質22へと及び基質22内に直接的に一体化されている多孔性材料24を有するトレイ12の構造は、基質22からの頂端発現(栄養)菌糸体の成長を可能にする。また、菌糸体に非反応性である透過性膜20及び多孔性材料24を有するトレイ12は、必要に応じて菌糸体を容易に除去するための手段を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態では、トレイ12及び蓋26の寸法は、これに限定されないが、幅60.96cm(24インチ)×長さ91.44cm(36インチ)等、任意の寸法であり、基質質量対空気容積比は、0.05~1.5cc/gである。トレイ12の空気容積対基質容積比は0.05~1.5であり、その空気容積対基質面積は0.5~5cc/cm2であり、CO2濃度は、好ましくは、定常状態条件下で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、好ましくは、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O2濃度は、好ましくは、定常状態条件で20%未満に保たれる。他の代替形態では、CO2濃度は4%よりも高く保たれ、更に他の代替形態では、CO2濃度は10%よりも高く保たれる。
本発明の別の実施形態では、トレイ12及び蓋26の寸法は、任意の寸法であり、空気容積対基質質量比は、0.1~1.0cc/gである。トレイの空気容積対基質容積比は0.1~1.0であり、その空気容積対基質面積は1.0~2cc/cm2であり、CO2濃度は、定常状態条件下で4%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれる。他の代替形態では、CO2濃度は10%よりも高く保たれる。
【0022】
図4は、本発明の好ましい実施形態による菌糸体成長床10の断面図を示す。脱着自在な床16を有するトレイ12、運搬プラットフォーム18、基質22を有する透過性膜20、多孔性材料24、及び蓋26を有し、最適な構成を獲得するように構成されている菌糸体成長床10が、
図4に示されている。最適な構成は、容積、質量、基質面積、並びに空気及びガス交換パラメータを正確に制御して、菌糸体皮革を生産する。
本発明の更に別の代替的な実施形態では、トレイ12の包囲壁14は、熱可塑性プラスチックで製作されており、高さが2.54~15.24cm(1~6インチ)である。トレイ12の包囲壁14は、木材腐敗基質の調製に必要とされる滅菌温度に耐える能力を有し、引っかき抵抗性であり、耐光性であり、1~120回又はそれよりも多くの反復サイクル使用に使用することが可能な材料を含む。
本発明の別の好ましい実施形態では、トレイ12の床16は、トレイ12の包囲壁14に容易に据え付けられ、据え付けられた後、一緒に接合されて気密及び水密接続を形成することができるように構成される。包囲壁14と接合された後、トレイ12は、コロニーが形成された基質22の配分容積を保持することが可能であり、その調製及び処理の種々のステップ内で基質22を輸送する能力を有する。
【0023】
図5A及び5Bを参照すると、それぞれ第1の方向及び第2の逆方向における菌糸体成長床10の断面図が示されている。床16及び蓋26は容易に交換可能である。第1の方向では、蓋26は、トレイ12の上部に位置し、トレイ12の包囲壁14に取り付けられている。第2の逆構成では、床16は、包囲壁14の上部に位置し、蓋26は包囲壁14の底部に取り付けられている。トレイ12は、菌糸体の成長に必要とされる位相的構成要素(topological components)の反転及び逆転を可能にする。トレイ12は、内部の内容物に変形を引き起こすことなく、構成要素の容易な移動及び成長培地の変更を可能にする。
【0024】
本発明の別の実施形態では、トレイ12及び蓋26の寸法は、これに含まれないが(but not included to)、幅60.96cm(24インチ)×長さ91.44cm(36インチ)等の任意の寸法であり、蓋26は、トレイ12内部の環境とトレイ12外部の環境との間のガス交換を調節するように作用し、蓋26の透過性領域は、蓋26の4.445cm(1.75’’)四方の面積、又は基質22を覆う60.96cm(24’’)×91.44cm(36’’)の対応する面積の0.2%に相当する複数の開口部30に相当する。蓋26は、トレイ12の壁14に容易に据え付けることができ、据え付けられた後、一緒に接合されて好適な気密及び水密接続を形成することができるように構成される。トレイ12の床16及び蓋26の設計及び構造は、それらが容易に交換可能なように取り付けることができ、容易に分解して、
図5A及び
図5Bに示されているようにトレイ12の上部及び底部のこうした順序を逆にして一緒に組み立て直されるように固定機構又は構成要素を有することができるような様式である。
【0025】
本発明の更に別の代替的な実施形態では、蓋26、及びトレイ12の要素は、膜パッチを使用するのではなく、電子ポート等の能動的デバイス又は要素を含んでいてもよい。更に、この実施形態では、電子モニター装置は、ガス分析(及び特徴付け)をリアルタイムで可能にすることができ、空気ポンプ及びレギュレーターは、ガス交換を制御することができ、吸引器を使用して湿度を制御することができる。温度制御、可変設定、応答制御システムも、代替的な実施形態として使用することができる。
その代わりに、能動的な又は設計された要素を蓋26の一部として含む本発明のまた更なる実施形態を、大気湿度からの水結露を低減するために追加してもよい。
本発明の別の実施形態は、音又は振動、様々な持続時間の様々な波長の光及び音の両方、並びに菌糸及び菌糸体成長の駆動及び操作の他の代替形態等の遠隔作動又は制御により菌糸体の成長及び方向に影響を及ぼすことを含む。要素としては、接触屈性作用、音波若しくは他の信号、レーザー、(空気圧差又は水圧差、大気化学、生体信号)、又は空気振動、若しくは菌糸体の動きを引き起こし、その結果としてそれ自体と接触する任意の他の駆動手段が挙げられる。別の代替的な実施形態では、磁気デバイスを下方に位置付けすることができ、表面を回転及び移動してまわって、菌糸体を成長させる傾向のために必要とされる機能を達成することができるトレイ12内部のボール又は他の金属物体との連動を使用することができる。
【0026】
成長基質22に改変をなして、中間非反応層を用いない発現において類似の成長パラメータを実現することができる。これらに限定されないが、綿、リネン、ポリエステル、レーヨン、金属メッシュ、誘導孔を有するラテックス等のプラスチック、ナイロン、カシミアウール、Kevlar(登録商標)、シルク、サテン、又はスクリーン印刷等の透過性物理的材料を使用することができるが、成長基質表面の特定のXY座標における菌糸体の予定された発現又は非発現の同様の結果は、基質の表面に塗布される抗生物質を応用して、印刷されたネガにより地理物理的制限を画成するためのフォトリソグラフィに使用されるものと類似した投射マスク又はスクリムを作出することにより達成することができる。同様に、レーザー又は他の加熱要素を使用して生体基質の表面を焼結することにより、ナイロンと同じ透過能力を実現させ、それによりこの合成構築物による菌糸及び菌糸体成長の促進、否定、又は調節を可能にする。
【0027】
図6は、本発明の好ましい実施形態による、菌糸体成長床を使用して菌糸体皮革を生産するための方法のフローチャートを示す。この方法は、ブロック100に示されているように、包囲壁、及びそこに嵌合するように構成されている運搬プラットフォームを有する床を有するトレイを準備するステップを含む。ブロック102に示されているように、複数の孔を有する透過性膜を運搬プラットフォーム上に位置付ける。次いでブロック104に示されているように、真菌菌株が接種された基質を透過性膜上に位置付ける。ブロック106に示されているように、多孔性材料が透過性膜付近に保持されるように、多孔性材料を基質の上部に位置付け、ブロック108に示されているように、トレイを蓋で閉鎖して、基質質量対空気容積比が0.5~5g/ccになるように、菌糸体皮革を生産するための最適な構成を作出する。空気容積対基質容積は、0.01~1.0cc/ccであり、空気容積対基質面積は、0.5~5.0cc/cm
2であり、CO
2濃度は、定常状態条件で3%よりも高く保たれ、相対湿度は、定常状態条件で40%よりも高く保たれ、O
2濃度は、定常状態条件で20%未満に保たれる。これらは全て、子実体を形成することなく菌糸体成長を促進するためである。
【0028】
最適な構成は、菌糸体皮革を生産するために、容積、質量、基質面積、並びに空気及びガス交換パラメータを正確に制御する。この方法は、生体基質を越える菌糸体の頂端発現を提供し、必要に応じて菌糸体の容易な除去を可能にする。
本発明の好ましい実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。網羅的であることも、本発明を、開示されている正確な形態に限定することも意図されていない。上記の教示に照らして多数の改変及び変異が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明により限定されないが、本明細書に添付されている特許請求の範囲及び特許請求の範囲の均等物により限定されることが意図されている。
【国際調査報告】