IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴォルテエアロの特許一覧

特表2022-503951ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法
<>
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図1
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図1A
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図2
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図2A
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図2B
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図2C
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図3
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図3A
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図4
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図4A
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図5
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図5A
  • 特表-ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】ハイブリッドパワートレインを含む機械および対応する制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 35/08 20060101AFI20220104BHJP
   B64D 27/04 20060101ALI20220104BHJP
   B64D 27/10 20060101ALI20220104BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220104BHJP
【FI】
B64D35/08
B64D27/04
B64D27/10
B64D27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517786
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(85)【翻訳文提出日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 FR2019052456
(87)【国際公開番号】W WO2020079369
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】1801092
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126678
【氏名又は名称】ヴォルテエアロ
【氏名又は名称原語表記】VOLTAERO
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ボッティ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】エスティン,ディディエ
(57)【要約】
本発明は、パワートレインを備えたエンジン(100)に関し、パワートレインは、熱エンジン(1)および出力シャフト(A1)、電動モータ(2)、電動モータに供給するバッテリ(40)、および、プロペラ推進システムを含み、プロペラ推進システムは、プロペラ(3)、および、シャフトと称されて、プロペラ(3)が連結されるプロペラシャフト(A3)を含む。更に、パワートレインは、選択的に、電動モータの回転をプロペラに伝達せずに、熱エンジンによってプロペラを駆動させるか、熱エンジンの回転をプロペラに伝達せずに、電動モータによってプロペラを駆動させるか、熱エンジンの回転と電動モータの回転を組み合わせてプロペラに伝達することによって、プロペラを駆動させることを可能にする異なる構成とするように設計されたクラッチシステム(E123、E14、E23、E324)を含む。電動モータは、固定子、および、プロペラシャフトにリジッドに接続されるか連結されうるシャフトを中心に回転するように載置された回転子を含む。更に、本発明は、対応する制御方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワートレインを備えた航空機などの機械(100)において、
前記パワートレインは、
熱エンジン(1)、および、前記熱エンジンの出力シャフトと称されて、該熱エンジンによって回転駆動自在であるシャフト(A1)を含む熱パワートレインと、
電動モータ(2)を含む電気パワートレインと、
前記電動モータ(2)に電力を供給するバッテリ(40)を含む電力供給システム(4)と、
プロペラ(3)、および、プロペラシャフトと称されて、前記プロペラ(3)が連結されたシャフト(A3)を含むプロペラ推進システムと、
クラッチシステム(E123、E14、E23、E324)と
を含むものであり、
前記クラッチシステムは、選択的に、
前記電動モータ(2)の回転を前記プロペラ(3)に伝達せずに、該プロペラ(3)を前記熱エンジン(1)によって駆動させるか、
前記熱エンジン(1)の回転を前記プロペラ(3)に伝達せずに、該プロペラ(3)を前記電動モータ(2)によって駆動させるか、または、
前記プロペラ(3)を、前記熱エンジン(1)の回転運動の該プロペラ(3)への伝達と、前記電動モータ(2)の回転運動の該プロペラ(3)への伝達との組合せによって駆動させるように構成され、
前記パワートレインは、前記プロペラシャフト(A3)に、リジッドに接続されるか、または、回転状態で連結可能な中間シャフトと称されるシャフト(A2)を含むものであり、
更に、前記クラッチシステムは、
係合状態では、前記熱エンジン(1)の回転を前記中間シャフト(A2)に伝達するように構成された第1のクラッチ(E123)、
係合状態では、前記中間シャフト(A2)から回転を前記プロペラシャフト(A3)に伝達するように構成された第2のクラッチ(E23)、および/または、
係合状態では、前記電動モータ(2)の回転を前記プロペラシャフト(A3)に伝達するように構成された第3のクラッチ(E324)を
含むものであり、
前記電動モータ(2)は、固定子(201)、および、前記中間シャフト(A2)を中心に前記固定子(201)の内側で回転するように載置された回転子(202)を含むものであり、前記回転子(202)と該中間シャフト(A2)は同軸である機械。
【請求項2】
前記プロペラ(3)への運動伝達システムの一部を形成する各シャフト(A1、A2)は、前記プロペラシャフト(A3)と同軸である、請求項1に記載の機械(100)。
【請求項3】
前記固定子(201)は、巻線(21)を備えた空洞体の形態であり、前記回転子(202)は、磁石(22)を備えたものである、請求項1または2に記載の機械(100)。
【請求項4】
前記パワートレインは、更に、遊星歯車トレイン型の機械的伝達システム(S2、S23、C223)を含むものであり、
前記遊星歯車トレイン型の機械的伝達システムは、
太陽歯車と称されて、前記中間シャフト(2)の一部に対応する内側シャフト(S2)、および、前記回転子の前記空洞体の内部によって担持された環状歯車(C223)と、
前記太陽歯車(S2)と環状歯車(C223)の間に配置された遊星歯車(S23)、および、遊星キャリアと
を含み、
前記遊星歯車(S23)と反対側の前記遊星キャリアの端部は、前記第2のクラッチ(E23)の一部と回転するように制限され、該第2のクラッチ(E23)は、前記プロペラシャフト(A3)と回転するように制限された他の部分を含むものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の機械(100)。
【請求項5】
前記クラッチシステムは、係合状態では、前記熱エンジン(1)の回転を前記電動モータ(2)に伝達して、それを発電機として機能させるように構成された第4のクラッチ(E14)を含むものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の機械(100)。
【請求項6】
前記第4のクラッチ(E14)は、前記第1のクラッチ(E123)が係合状態では、前記熱エンジン(1)の前記出力シャフト(A1)と回転するように制限された部分、および、前記電動モータ(2)の前記回転子(202)上に載置され、該回転子(202)と回転するように制限された他の部分を含むものである、請求項5に記載の機械(100)。
【請求項7】
前記第3のクラッチ(E324)は、機械的伝達システム(S3、S223、C213)を介して前記電動モータ(2)の前記回転子(202)と回転するように制限された部分、および、前記プロペラ(3)と回転するように制限された部分を含むものである、請求項1から6のいずれか1項に記載の機械(100)。
【請求項8】
前記電力供給システム(4)は、更に、電気管理システム(41、42)を含み、それは、
前記バッテリ(40)と前記電動モータ(2)の間の電力供給回路を開閉する高圧ユニット(41)と、
前記バッテリ(40)によって供給されるか、または、前記電動モータ(2)が発電機として機能する場合には、該電動モータ(2)によって生成される電流を処理する制御部(42)と
を含むものである、請求項1から6のいずれか1項に記載の機械(100)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の機械(100)の制御方法において、
前記機械を、特に、離陸、および/または、上昇相中に電気推進させるには、前記クラッチは、
前記第1のクラッチ(E123)の係合を解除して、前記熱エンジン(1)を前記プロペラ(3)から解放させ、
前記第4のクラッチ(E14)が存在する場合には、好ましくは、該第4のクラッチ(E14)、および、前記第2のクラッチ(E23)の係合を解除し、
前記第3のクラッチ(E324)が存在する場合には、該第3のクラッチ(E324)を係合させて、前記電動モータ(2)の運動を前記プロペラ(3)に伝達するように構成されるものである方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の機械(100)の制御方法において、
例えば、電気伝達システムに故障を生じた場合に、前記電気パワートレインを使わずに、熱推進を行うには、前記クラッチは、
前記第1のクラッチ(E123)を係合させ、
第2のクラッチ(E23)を係合させて、前記熱エンジン(1)の運動を前記プロペラ(3)に伝達するように構成されるものである方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載の機械(100)の制御方法において、
前記熱エンジン(1)と前記電動モータ(2)とを組み合わせて用いることによって推進を行うには、前記クラッチは、
前記第1のクラッチ(E123)を係合させ、
前記第2のクラッチ(E23)を係合させて、前記熱エンジン(1)の運動を前記プロペラ(3)に伝達し、
前記第3のクラッチ(E324)が存在する場合には、該第3のクラッチ(E324)を係合させて、前記電動モータ(2)の運動を前記プロペラ(3)に伝達し、
前記第4のクラッチ(E14)が存在する場合には、該第4のクラッチ(E14)の係合を解除するように構成されるものである方法。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載の機械(100)の制御方法において、
前記クラッチシステムは、係合状態では、前記熱エンジン(1)の回転を前記電動モータ(2)に伝達して、それを、発電機として機能させるように構成された第4のクラッチ(E14)を含むものであり、
前記プロペラ(3)の回転駆動を維持しながら、前記バッテリ(40)を前記熱エンジン(1)を用いて充電するには、例えば、飛行中の前記機械を用いて充電するために、前記クラッチは、
前記プロペラシャフト(A3)を駆動させながら電流を生成するために、前記第1のクラッチ(E123)、前記第4のクラッチ(E14)、および、前記第2のクラッチ(E23)を係合させて、前記熱エンジン(1)が中間シャフト(A2)を駆動させて、前記回転子(202)を前記固定子(201)と相対的に回転させるように構成され、
前記電気管理システム(41、42)は、発電機として機能する前記電動モータ(2)によって生成された電流を制御して、前記バッテリ(40)を充電するものである方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか1項に記載の機械(100)の制御方法において、
前記クラッチシステムは、係合状態では、前記熱エンジン(1)の回転を前記電動モータ(2)に伝達して、それを、発電機として機能させるように構成された第4のクラッチ(E14)を含むものであり、
エネルギーを、風力駆動または水力駆動効果によって回復するには、クラッチは、
前記第1のクラッチ(E123)、および/または、前記第2のクラッチ(E14)の係合を解除して、前記プロペラ(3)を前記熱エンジン(1)から連結解除するか、または、前記回転子(202)を該熱エンジン(1)から連結解除し、
好ましくは、前記第2のクラッチ(E23)の係合を解除し、
前記第3のクラッチ(E324)を係合させて、前記プロペラ(3)の運動を前記電動モータ(2)の前記回転子(202)に伝達するように構成される方法。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか1項に記載の機械(100)の制御方法において、
前記クラッチシステムは、係合状態では、前記熱エンジン(1)の回転を前記電動モータ(2)に伝達して、それを、発電機として機能させるように構成された第4のクラッチ(E14)を含むものであり、
前記プロペラ(3)を駆動させずに、前記バッテリ(40)を前記熱エンジン(1)を用いて充電するには、前記クラッチは、
前記第3のクラッチ(E324)および前記第2のクラッチ(E23)の係合を解除し、
前記第1のクラッチ(E123)および第4のクラッチ(E14)を係合させて、前記熱エンジン(1)が前記中間シャフト(A2)を駆動させて、電気を生成するために、前記回転子(202)を回転させるように構成され、
前記電気管理システム(41、42)は、発電機として機能する前記電動モータ(2)によって生成された電流を制御して、前記バッテリ(40)を充電するものである方法。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか1項に記載の機械(100)の制御方法において、
前記機械は、該機械の電力供給バッテリ(40)に電気管理システム(41、42)を介して接続された電気パワートレインを備えた車輪を含むものであり、
電力を、前記車輪の前記電気パワートレインに、前記電気バッテリ(40)によって供給する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電動モータおよび熱エンジンを含むパワートレインを備えた航空機などの機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、以下のような構成のパワートレインを含む航空機などの機械が知られている。パワートレインは、プロペラ、プロペラを駆動させる電動モータ、電動モータに電力を供給するバッテリ、および、バッテリを充電する交流機に関連した熱エンジンを含む。
【0003】
しかしながら、バッテリおよび電動モータを含む電気制御システムが故障した場合、プロペラが駆動不能になりうる。
【0004】
したがって、この種の構成のパワートレインは、特に、離陸時に、深刻な安全上の問題を生じる。
【0005】
更に、特許文献1、特許文献2、および特許文献3の文献のパワートレインが知られているが、それらの構成も、全体的サイズおよび/または重さの問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012021340号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2964524号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/219779号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題のいくつか、または、全てを軽減する新しい機械を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、パワートレインを備えた航空機などの機械を提案し、
パワートレインは、
熱エンジン、および、熱エンジンの出力シャフトと称されて、熱エンジンによって回転駆動自在であるシャフトを含む熱パワートレインと、
電動モータを含む電気パワートレインと、
電動モータに電力を供給するバッテリを含む電力供給システムと、
プロペラ、および、プロペラシャフトと称されて、プロペラが連結されたシャフトを含むプロペラ推進システムと、
クラッチシステムと
を含むものであり、
クラッチシステムは、選択的に、
電動モータから回転をプロペラに伝達せずに、プロペラを熱エンジンによって駆動させるか、
熱エンジンから回転をプロペラに伝達せずに、プロペラを電動モータによって駆動させるか、または、
プロペラを、熱エンジンの回転運動のプロペラへの伝達と、電動モータの回転運動のプロペラへの伝達との組合せによって駆動させるように構成され、
パワートレインは、プロペラシャフトに、リジッドに接続されるか、または、回転状態で連結可能な中間シャフトと称されるシャフトを含むものであり、
更に、クラッチシステムは、
係合状態では、熱エンジンの回転を中間シャフトに伝達するように構成された第1のクラッチ、
係合状態では、中間シャフトの回転をプロペラシャフトに伝達するように構成された第2のクラッチ、および/または、
係合状態では、電動モータの回転をプロペラシャフトに伝達するように構成された第3のクラッチを
含むものであり、
電動モータは、固定子、および、中間シャフトを中心に固定子の内側で回転するように載置された回転子を含むものであり、回転子と中間シャフトは同軸である。
【0009】
回転子が、運動伝達システムの一部を形成する中間シャフトと同軸に載置され、中間シャフトの軸を中心に回転するこの機械設計は、(構成要素の数を制限することによって)コンパクト性および重さの点で節約を可能にし、結果的に、電力(kW)の質量(Kg)に対する比を高めることが可能となる。実際、機械的伝達ラインの一部を形成する中間シャフトは、回転子の内側で延伸し、回転子の回転軸と同軸である。1つの特定の態様によれば、中間シャフトは、プロペラシャフト、および、中間シャフトとプロペラシャフトを連結するか/連結解除するクラッチシステムとも同軸である。
【0010】
1つの特定の態様によれば、運動をプロペラに伝達するシステムの一部を形成する各シャフトは、プロペラシャフトと同軸である。
【0011】
1つの特定の態様によれば、固定子は、巻線を備えた空洞体の形態であり、回転子は、磁石を備えたものである。
【0012】
1つの特定の態様によれば、パワートレインは、更に、遊星歯車トレイン型の機械的伝達システムを含むものであり、
遊星歯車トレイン型の機械的伝達システムは、
太陽歯車と称されて、中間シャフトの一部に対応する内側シャフト、および、回転子の空洞体の内部によって担持された環状歯車と、
太陽歯車と環状歯車の間に配置された遊星歯車、および、遊星キャリアと
を含み、
遊星歯車と反対側の遊星キャリアの端部は、第2のクラッチの一部と回転するように制限され、第2のクラッチは、プロペラシャフトと回転するように制限された他の部分を含むものである。
【0013】
1つの特定の態様によれば、クラッチシステムは、係合状態では、熱エンジンの回転を電動モータに伝達して、それを発電機として機能させるように構成された第4のクラッチを含むものである。
【0014】
1つの特定の態様によれば、一方の熱エンジン/電動モータと他方のプロペラシャフトの間の運動伝達システムに関与する様々なシャフトは同軸である。換言すれば、プロペラシャフトへの運動伝達システムの一部を形成する各シャフトは、プロペラシャフトと同軸である。
【0015】
1つの特定の態様によれば、固定子は、巻線、および/または、磁石を、好ましくは、その内面に備えた空洞体の形態であり、回転子は、磁石、および/または、巻線を、好ましくは、その外縁面に備えたものである。
【0016】
一実施形態によれば、パワートレインを備えた航空機などの機械を提案し、
パワートレインは、
熱エンジン、および、熱エンジンの出力シャフトと称されて、熱エンジンによって回転駆動自在であるシャフトを含む熱パワートレインと、
電動モータを含む電気パワートレインと、
電動モータに電力を供給するバッテリを含む電力供給システムと、
プロペラ、および、プロペラシャフトと称されて、プロペラが連結されたシャフトを含むプロペラ推進システムと、
クラッチシステムと
を含むものであり、
クラッチシステムは、選択的に、
電動モータからの回転をプロペラに伝達せずに、プロペラを熱エンジンによって駆動させるか、
熱エンジンからの回転をプロペラに伝達せずに、プロペラを電動モータによって駆動させるか、または、
プロペラを、熱エンジンの回転運動のプロペラへの伝達と、電動モータの回転運動のプロペラへの伝達との組合せによって駆動させるように構成されたものである。
【0017】
したがって、機械のプロペラパワートレインは、電気パワートレイン、および/または、熱パワートレインによって、独立に、または、同時に駆動されうる。機械が航空機の場合に、電気パワートレインに問題を生じた場合に、代わりに、熱パワートレインがプロペラを駆動させるので、安全性、特に、離陸時の安全性が改良される。
【0018】
更に、電気パワートレインのみを用いることが可能なことで、航空機が都会または郊外地域で騒音を削減して離陸および着陸することが可能になる。機械は、以下の特徴の1つ以上も、技術的に可能な任意の組合せで含みうる。
【0019】
1つの特定の態様によれば、パワートレインは、プロペラシャフトに、リジッドに接続されるか、または、回転状態で連結されるように適合された中間シャフトと称されるシャフトを含むものであり、
クラッチシステムは、
係合状態では、熱エンジンの回転を中間シャフトに伝達するように構成された第1のクラッチ、および、
係合状態では、電動モータの回転をプロペラシャフトに伝達するように構成された第2のクラッチ、および/または、第3のクラッチを含む。
【0020】
1つの特定の態様によれば、第2のクラッチは、係合状態では、中間シャフトの回転をプロペラシャフトに伝達可能なように構成される。
【0021】
1つの特定の態様によれば、クラッチシステムは、係合状態では、熱エンジンの回転を電動モータに伝達して、それを発電機として機能させるように構成された第4のクラッチを含む。
【0022】
1つの特定の態様によれば、電動モータは、
巻線を内面に備えた空洞体の形態の固定子と、
中間シャフトを中心に、固定子の内側で回転する本体の形態の回転子と
を含むものであり、回転子の外縁面に磁石が備えられる。
【0023】
1つの特定の態様によれば、パワートレインは、例えば、クラッチを含み、回転子と中間シャフトの間で回転運動を伝達する伝達システムを含む。
【0024】
1つの特定の態様によれば、パワートレインは、第2のクラッチが存在する場合に、それが係合状態では、中間シャフトの回転をプロペラシャフトに伝達する機械的伝達システムを含む。1つの特定の態様によれば、機械的伝達システムは、減速システムである。
【0025】
機械的伝達システムは、回転子に収容されるのが有利である。
【0026】
機械的伝達システムは、例えば、遊星歯車トレインを含み、一部は中間シャフトに連結され、更に、一部は第2のクラッチの一部に連結され、第2のクラッチの他の部分は、プロペラシャフトに連結される。
【0027】
1つの特定の態様によれば、第2のクラッチは、中間シャフトに回転状態で、例えば、機械的伝達システムを介して連結される部分、および、プロペラシャフトと回転状態で連結、好ましくはリジッドに接続される部分を含む。
【0028】
1つの特定の態様によれば、第4のクラッチは、第1のクラッチが係合状態では、熱エンジンの出力シャフトと回転するように制限された部分、および、電動モータの回転子上に載置され、回転子と回転するように制限された他の部分を含むものである。
【0029】
1つの特定の態様によれば、第3のクラッチは、機械的伝達システムを介して電動モータの回転子と回転するように制限された部分、および、プロペラと回転するように制限された部分を含むものである。
【0030】
1つの特定の態様によれば、電力供給システムは、更に、電気管理システムも含み、それは、
バッテリと電動モータの間の電力供給回路を開閉する高圧ユニットと、
バッテリによって供給されるか、または、電動モータが発電機として機能する場合には、電動モータによって生成される電流を処理する制御部と
を含むものである。
【0031】
1つの特定の実施形態によれば、パワートレインを備えた航空機などの機械を提案し、
パワートレインは、
熱エンジン、および、熱エンジンの出力シャフトと称されて、熱エンジンによって回転駆動自在であるシャフトを含む熱パワートレインと、
電動モータを含む電気パワートレインと、
電動モータに電力を供給するバッテリを含む電力供給システムと、
プロペラ、および、プロペラシャフトと称されて、プロペラが連結されたシャフトを含むプロペラ推進システムと、
クラッチシステムと
を含むものであり、
クラッチシステムは、選択的に、
電動モータの回転をプロペラに伝達せずに、プロペラを熱エンジンによって駆動させるか、
熱エンジンの回転をプロペラに伝達せずに、プロペラを電動モータによって駆動させるか、または、
プロペラを、熱エンジンの回転運動のプロペラへの伝達と、電動モータの回転運動のプロペラへの伝達との組合せによって駆動させるように構成され、
パワートレインは、プロペラシャフトに、リジッドに接続されるか、または、回転状態で連結可能な中間シャフトと称されるシャフトを含むものであり、
更に、クラッチシステムは、
係合状態では、熱エンジンの回転を中間シャフトに伝達するように構成された第1のクラッチ、および
係合状態では、中間シャフトの回転をプロペラシャフトに伝達するように構成された第2のクラッチを含むものであり、
電動モータは、
空洞体の形態で、好ましくは、巻線を、その内面に備えた固定子、および、
中間シャフトを中心に固定子の内側で回転する本体の形態の回転子であって、好ましくは、磁石を、例えば、外縁面に備えた回転子を含むものであり、
パワートレインは、更に、
遊星歯車トレイン型の機械的伝達システムも含み、それは、
太陽歯車と称されて、中間シャフトの一部に対応する内側シャフト、および、回転子の空洞体の内部によって担持された環状歯車と、
太陽歯車と環状歯車の間に配置された遊星歯車、および、遊星歯車がリジッドに連結されて、中間シャフト、および、プロペラシャフトと同軸である遊星キャリアと
を含み、
遊星歯車と反対側の遊星キャリアの端部は、第2のクラッチの一部と回転するように制限され、第2のクラッチは、プロペラシャフトと回転するように制限された他の部分を含むものである。
【0032】
1つの特定の態様によれば、遊星歯車トレイン型の機械的伝達システムは、回転子に収容されるという点で、電動モータに含まれると考えられうる。
【0033】
1つの特定の態様によれば、クラッチシステムは、係合状態では、電動モータ、特に、回転子の回転をプロペラシャフトに伝達するように構成された第3のクラッチを含む。
【0034】
一実施形態によれば、上記機械の制御方法を提案し、
機械を、特に、離陸、および/または、上昇相中に電気推進させるには、クラッチは、
第1のクラッチの係合を解除して、熱エンジンをプロペラから解放させ、
第4のクラッチが存在する場合には、第4のクラッチ、および、第2のクラッチの係合を、好ましくは、解除し、
第3のクラッチが存在する場合には、第3のクラッチを係合させて、電動モータの運動をプロペラに伝達するように構成されるものである。
【0035】
一実施形態によれば、上記機械の制御方法を提案し、それは、
例えば、電気伝達システムに故障を生じた場合に、電気パワートレインを使わずに、熱推進を行うには、クラッチは、
第1のクラッチを係合させ、
第2のクラッチを係合させて、熱エンジンの運動をプロペラに伝達するように構成されるものである。
【0036】
一実施形態によれば、上記機械の制御方法を提案し、それは、
熱エンジンと電動モータとを組み合わせて用いることによって推進を行うには、クラッチは、
第1のクラッチを係合させ、
第2のクラッチを係合させて、熱エンジンの運動をプロペラに伝達し、
第3のクラッチが存在する場合には、第3のクラッチを係合させて、電動モータの運動をプロペラに伝達し、
第4のクラッチが存在する場合には、第4のクラッチの係合を解除するように構成されるものである。
【0037】
一実施形態によれば、上記機械の制御方法を提案し、それは、
プロペラの回転駆動を維持しながら、バッテリを熱エンジンを用いて充電するには、例えば、飛行中の機械を用いて充電するために、クラッチは、
第1のクラッチ、第4のクラッチ、および、第2のクラッチを係合させて、熱エンジンが中間シャフトを駆動させて、回転子を回転させるように構成され、好ましくは、回転子には固定子に対向する磁石が備えられ、好ましくは、固定子には巻線が備えられて、プロペラシャフトを駆動させながら(巻線で)電流を生成するために、回転子を回転させるものであり、
電気管理システムは、発電機として機能する電動モータによって生成された電流を制御して、バッテリを充電するものである。
【0038】
一実施形態によれば、上記機械の制御方法を提案し、それは、
エネルギーを、風力駆動または水力駆動効果によって回復するには、クラッチは、
第1のクラッチ、および/または、第2のクラッチの係合を解除して、プロペラを熱エンジンから連結解除するか、または、回転子を熱エンジンから連結解除し、
好ましくは、第2のクラッチの係合を解除し、
第3のクラッチを係合させて、プロペラの運動を電動モータの回転子に伝達するように構成される。
【0039】
一実施形態によれば、上記機械の制御方法を提案し、それは、
プロペラを駆動させずに、バッテリを熱エンジンを用いて充電するには、クラッチは、
第3のクラッチおよび第2のクラッチの係合を解除し、
第1のクラッチおよび第4のクラッチを係合させて、熱エンジンが中間シャフトを駆動させて、回転子を回転させ、好ましくは、回転子には固定子に対向する磁石が備えられ、好ましくは、固定子には巻線が備えられて、(巻線で)電流を生成するために、回転子を回転させるものであり、
電気管理システムは、発電機として機能する電動モータによって生成された電流を制御して、バッテリを充電するものである。
【0040】
一実施形態によれば、上記機械の制御方法を提案し、機械は、機械の電力供給バッテリに電気管理システムを介して接続された電気パワートレインを備えた車輪を含むものであり、
方法は、電力を、車輪の電気パワートレインに、電気バッテリによって供給する工程を含む。
【0041】
本発明の他の特徴および利点は、例示に過ぎず限定するものではない以下の記載から、より明らかになり、添付の図面を参照して読まなければならない、
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図1A】本発明の一実施形態による航空機のパワートレインの概略図である。
図2】離陸、および/または、上昇時の本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図2A】電気推進モードでの本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図2B】熱推進モードでの本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図2C】熱および電気推進モードでの本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図3】飛行時、例えば、水平飛行時の本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図3A】飛行中充電モードでの本発明の一実施形態による航空機のパワートレインの概略図である。
図4】航空機下降中の本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図4A】電気エネルギー回復モードでの本発明の一実施形態による航空機のパワートレインの概略図である。
図5】航空機が地上時の本発明の一実施形態による航空機の概略図である。
図5A】航空機が地上時、その熱エンジンを介した充電モードでの本発明の一実施形態による航空機のパワートレインの概略図である。
図6】他のパワートレインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の概念の実施形態を示した添付の図面を参照して、本発明の概念を、より完全に記載する。図面において、構成要素のサイズ、および、相対的サイズは、明瞭に示すために誇張したものでありうる。全図を通して、同様の番号は、同様の構成要素を称する。しかしながら、本発明の概念は、多数の異なる形態で実施しうるものであり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本明細書の記載を完全なものにして、当業者に本発明の概念を伝えるために提案するものである。以下の実施形態は、審査を簡単にするために、航空機の用語および構造について記載している。以下に記載するように、機械は、船舶であってもよい。
【0044】
本明細書のいずれの箇所でも、「実施形態」と記載した場合には、一実施形態について記載した機能、構造、または、特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の様々な箇所の「一実施形態において」という記載は、必ずしも同じ実施形態に言及したものではない。更に、1つ以上の実施形態において、機能、構造、および、特徴を、任意の適切な態様で組み合わせうる。
【0045】
図1は、回転翼航空機100である機械を示している。その航空機は、例えば、飛行機、ドローン、または、ヘリコプタである。
【0046】
航空機100は、パワーモジュールとしても知られた筐体190およびプロペラ推進システムを含むパワートレイン、熱パワートレイン、および、電気パワートレインを含む。図1から5に示し、以下に記載するように、筐体190は、熱パワートレイン、電動モータ2の回転子202、および、筐体190の一部によって形成される固定子201を収容する。
【0047】
パワートレインは、船舶の推進にも等しく利用しうるものであり、したがって、機械は、船舶でありうる。プロペラ推進システムは、プロペラ3、および、プロペラ3が固定されるプロペラシャフトA3を含む。
【0048】
例えば、図1に概略的に示すように、熱エンジン、および/または、電動モータは、1つ以上の他の補助プロペラ推進システム3’を駆動させうる。この種の構成を、「分散推進」と称しうる。
【0049】
熱パワートレインは、熱エンジンによって回転駆動されうる出力シャフトA1を有する熱エンジン1を含む。熱エンジンは、例えば、6000回/分程度の速度で回転しうる。
【0050】
1つの特定の態様によれば、パワートレインは、熱エンジンの非周期的動作を補正/平滑化するトルクダンパAM1を含む。
【0051】
電気パワートレインは、電動モータ2を含む。電動モータ2は、例えば、6000回/分程度の速度で回転しうる。電気パワートレインは、電動モータ2に電力を供給するバッテリ40を含む電力供給システム4も含む。
【0052】
減速システム、例えば、以下に記載の遊星歯車トレインは、プロペラを、それより低い速度、例えば、2000回/分程度で駆動させうる。
【0053】
電力供給システム4は、バッテリ40と電動モータ2の間の電力供給回路を開閉する高圧ユニット41を含む電気管理システム41、42も含む。電力供給システム4は、バッテリ40によって供給されるか、または、電動モータ2が発電機として機能する場合には、それによって生成される電流を処理する制御部42も含む。
【0054】
例えば、制御部42は、バッテリ40からの直流を、例えばチョッピングにより、交流に変換して、電動モータ2に供給し、逆に、電動モータ2が発電機として機能する場合、特に、以下に記載するように、電動モータ2の回転子が熱エンジン1またはプロペラ3によって駆動される場合には、電動モータ2によって生成された交流を、バッテリ40を充電する直流に変換することも可能である。
【0055】
パワートレインは、以下に詳細に記載するような複数の構成を想定可能に構成されたクラッチシステムも含む。
【0056】
以下に記載するように、電気パワートレイン、熱パワートレイン、および、プロペラ推進システムの配列は、クラッチシステムと組み合わせて、選択的に、
航空機を推進させるプロペラ推進システム3を、熱エンジン1のみによって駆動させるか、
航空機を推進させる意味では、プロペラ推進システム3を、熱エンジン1のみによって駆動させ、電動モータ2を熱エンジン1によって駆動させて、バッテリ、および、場合によっては、1つ以上の他のバッテリを充電するか、
航空機を推進させるプロペラ推進システム3を、電気パワートレイン2のみによって駆動させるか、
プロペラ推進システム3を、プロペラシャフトに伝達された熱エンジン1の出力シャフトの回転運動によって、更に、プロペラシャフト(または、プロペラ3)に伝達された電動モータ2の回転運動によっても駆動させる。換言すれば、この場合、プロペラの回転は、熱エンジンと電動モータの回転運動の組合せがプロペラシャフトA3(プロペラ3)に伝達されて生じる。
【0057】
1つの特定の実施形態によれば、パワートレインのクラッチシステムは、プロペラ3が風(または、水)によって駆動される場合に、電動モータ2を駆動させてバッテリ40を充電する構成を有する。
【0058】
クラッチシステムは、摩擦型、または、ドッグクラッチを含みうる。
【0059】
パワートレインは、中間シャフトA2を含む。図面から分かるように、中間シャフトA2は、出力シャフト1とプロペラシャフトA3の間に配置される。更に、中間シャフトA2は、回転子202に収容される。
【0060】
図1から5の実施形態によるクラッチシステム
図1から5の実施形態において、シャフトA2は、回転状態で、プロペラシャフトA3にクラッチE23を介してリジッドに接続(連結)されうる。図6に示し、本明細書に記載の代わりの実施形態において、シャフトA2は、上記プロペラシャフトA3の一部に対応する。
【0061】
クラッチシステムは、係合状態では、熱エンジン1の回転を中間シャフトA2に伝達するクラッチE123を含む。クラッチE123の係合を解除した状態では、熱パワートレイン1の回転は、中間シャフトA2に伝達されなくなる。クラッチE123は、熱エンジンの出力シャフトA1と中間シャフトA2に間に位置する。
【0062】
クラッチシステムは、係合状態では、電動モータ2の回転を、特に、回転子202からプロペラ3に伝達するクラッチE324も含む。クラッチE324の係合を解除した状態では、(特に、クラッチE14、および/または、E23の係合を解除した場合)回転子202は、プロペラ3にもプロペラシャフトA3にも、回転状態で連結されない。
【0063】
クラッチシステムは、係合状態では、中間シャフトA2の回転をプロペラシャフトA3に伝達可能なクラッチE23を含み、好ましくは、減速システムを備える。
【0064】
クラッチE23は、クラッチE123が係合状態では出力シャフトA1の回転に由来するか、および/または、クラッチE14が係合状態では回転子202の回転に由来する中間シャフトA2の回転を、プロペラシャフトA3に伝達するのを可能にする。
【0065】
クラッチの係合を解除することで、対応する運動の伝達の切断が可能になる。
【0066】
図1から5に示した例において、クラッチシステムは、クラッチE14を含み、その第1の部分は、第1のクラッチE123が係合状態では、熱エンジン1の出力シャフトA1と回転するように制限される。クラッチE14の第1の部分は、中間シャフトA2の一部と回転するように制限されるように載置される。クラッチE14の第2の部分は、電動モータ2の回転子202と回転するように制限されるように載置される。
【0067】
図1から5に示した例において、クラッチE324は、電動モータ2の回転子202に歯車S3、S223、C213の機械的伝達システムを介して(回転状態で)連結された部分を有し、他の部分は、プロペラ3(または、プロペラシャフト)と回転するように制限される。特に、他の部分は、プロペラプレートとも称されるプロペラ3のスピナーの基部により制限されるように載置される。したがって、クラッチE324は、電動モータ2の回転子202の回転をプロペラ3に(または、ここでも、プロペラにリジッドに接続されたプロペラシャフトA3に)伝達するのを可能にする。
【0068】
係合位置において、プロペラ3が外部フローに曝されて、それによって駆動される場合に(風力駆動または水力駆動効果)、クラッチE324は、電動モータ2をプロペラ3によって駆動させることを可能にする。
【0069】
機械的伝達システムS3、S223、C213は、歯車による伝達システムである。伝達システムは、好ましくは、遊星歯車トレイン型である。遊星歯車トレインは、(以下に記載のように)太陽歯車と称され、電動モータ2の回転子202の一部に対応する内側シャフトS3、および、固定子201の空洞体の内部に担持される環状歯車C213、更に、太陽歯車S3と環状歯車C213の間に配置された遊星歯車S223を含む。遊星歯車S223は、プロペラシャフトA3と同軸の遊星キャリアにリジッドに接続される。遊星歯車S223と反対側の遊星キャリアの端部は、クラッチE324の一部と回転するように制限されるように載置される。
【0070】
クラッチE23は、中間シャフトA2に、歯車による機械的伝達システムS2、S23、C223によって、(回転状態で)連結された部分、および、プロペラシャフトA3と回転するように制限される他の部分を含む。
【0071】
図1から5に示した例において、機械的伝達システムS2、S23、C223は、歯車による伝達システムである。伝達システムは、好ましくは、遊星歯車トレイン型である。遊星歯車トレインは、太陽歯車と称され、中間シャフト2の一部に対応する内側シャフトS2、および、回転子の空洞体の内部によって担持される環状歯車C223を含む。遊星歯車S23は、太陽歯車S2と環状歯車C223の間に配置される。遊星歯車S23は、中間シャフトA2およびプロペラシャフトA3と同軸の遊星キャリアにリジッドに接続される。遊星歯車S23と反対側の遊星キャリアの端部は、クラッチE23の一部と回転するように制限される。
【0072】
図1から5の実施形態による電気パワートレイン
図1から5に示した実施形態において、電動モータ2は、固定子201、および、回転子202を含む。固定子201は、その内面上に巻線21を備えた空洞体を有する。図1から5に示した例において、固定子201は、筐体190の一部である。
【0073】
回転子202は、固定子201の内側の中間シャフトA2の(縦)軸を中心に回転する本体を有する。クラッチシステムの構成に応じて、回転子は、中間シャフトA2を中心に、中間シャフトと相対的に回転可能であるか、中間シャフトA2の(縦)軸を中心に中間シャフトA2と回転可能である。回転子202の外周縁面に、磁石22を備えることが有利である。
【0074】
中間シャフトA2を、エンジン1の出力シャフトA1、または、電動モータ2の回転子202の回転によって回転駆動させることにより、遊星歯車S23、したがって、クラッチE23に連結された遊星キャリアを回転駆動させることが可能になる。クラッチE23を閉じることで、回転をプロペラシャフトA3に伝達して、プロペラ3を回転駆動させることが可能になる。
【0075】
したがって、中間シャフトA2の回転は、クラッチE23を閉じることによって、プロペラシャフトA3に伝達されて、したがって、プロペラ3に伝達されうる。
【0076】
更に、クラッチE324を閉じることで、電動モータ2の回転子202とプロペラ3の間で回転運動の伝達が可能になる。
【0077】
1つの特定の態様によれば、クラッチシステムE123、E14、E23、E324は、風力駆動または水力駆動効果によって回転したプロペラ3は、その回転運動を電動モータ2に伝達して、バッテリ40を充電する電流を生成するようにも構成される。
【0078】
1つの特定の態様によれば、クラッチE14、E324の一方は、他方のクラッチE324、E14が係合する場合は、係合を解除する。
【0079】
シャフトと回転するように制限されるように載置されたクラッチの1つの部分、または、各部分は、例えば、スプラインによって、シャフト上で摺動するように載置されて、係合位置から係合解除位置へ、更に、その逆に移動しうる。
【0080】
制御方法
以下に記載のパワートレインは、クラッチ構成を適合させることによって、航空機の異なる制御方法の使用を可能にする。
【0081】
図2A、2B、2C、3A、4A、5Aに示した例において、簡単に示すために、クラッチは、係合を解除して示している。それでも、以下の記載では、使用される制御方法により各クラッチの実際の係合を解除した、または、係合した構成を具体的に記載している。更に、(参照番号の矢印とは別の)矢印を加えて、適切な電流が電力供給システムによって送受された場合に作動する運動伝達システムを記号で表している。
【0082】
航空機を、離陸、および/または、上昇相中に最適に使用するために、パワートレインは、航空機の電気推進を可能にする。
【0083】
図2、2Aに示した例において、クラッチを、以下のような構成にする。クラッチE123の係合を解除して、熱エンジン1をプロペラ3から解放する。クラッチE14、および、クラッチE23は、好ましくは、係合を解除される。クラッチE324は係合されて、電動モータ2の運動をプロペラ3に伝達する。矢印は、電力をバッテリ40によって供給された電動モータ2の回転子202の回転運動が、プロペラ3に、クラッチE324を介して伝達されるのを示している。
【0084】
電気伝達システムが故障したと仮定して、パワートレインは、電気推進を使わずに、熱推進を可能にする。
【0085】
したがって、図2Bに示した例において、クラッチを、クラッチE123およびクラッチE23を係合して、熱エンジン1の運動をプロペラ3に伝達するような構成にする。熱エンジン1の運動は、プロペラ3に、シャフトA1、A2、A3を介して伝達される。図2Bに示した実施形態の特定の態様によれば、クラッチE14、および、クラッチE324は、係合を解除されて、電動モータ2の回転子202の回転を防ぐ。矢印は、熱エンジン1は、その回転運動を、プロペラ3にクラッチE123、E23を介して伝達するのを示している。
【0086】
故障は、例えば、バッテリの過熱、または、電気伝達システムの構成要素の誤作動により生じうる。その結果、電動モータの回転子は、回転しなくなる。
【0087】
上記のように、電気伝達システムに故障を生じた場合には、安全対策として、E324、更に、好ましくは、E14の係合を解除して、回転子202の一方向または他方向への回転により更なる電気的問題が生じる可能性を減らしうる。
【0088】
故障は、以下の判断基準の関数として検出されうるもので、任意の技術的に可能な組み合わせで、任意に採用しうる:
電力が閾値と比べて低下、
回転速度の低下、
飛行経路勾配の減少、
航空機の前進速度の低下、および、
電流の異常な増加。
【0089】
電気推進のみを用いている時に、電気的故障を検出した場合には、熱推進モードに切り換えて、電気伝達システムの故障を軽減することが可能である。
【0090】
熱エンジンのみによってプロペラの駆動を可能にする、つまり、電動モータから追加供給しない、この種のクラッチ構成を、通常の離陸時に用いて電気バッテリの充電を維持するか、または、電気バッテリが放電した場合にも用いうる。
【0091】
バッテリが十分に充電されていると考えられ、その充電を維持すべき場合には、クラッチのこの種の構成を、航空機の水平飛行でも用いうる。
【0092】
パワートレインは。更に、熱エンジンによって提供された回転運動と電動モータによって提供された回転運動を組み合わせて、プロペラを駆動させるのを可能にする。
【0093】
したがって、例えば、滑走路が短い場合に、所謂スーパーパワーモード、つまり、熱エンジン1と電動モータ2を合わせて使用した推進の恩恵を受けるために、クラッチを、図2Cに示したような以下の構成にしうる。クラッチE123は係合され、クラッチE14は係合を解除され、クラッチE23は係合されて、熱エンジン1の運動をプロペラ3に伝達し、更に、クラッチE324は係合されて、電動モータ2の運動をプロペラ3に伝達する。矢印は、熱エンジンが、その回転運動を、プロペラに、クラッチE123、E23を介して伝達し、一方、バッテリ40により電流を供給された電動モータ2の回転子202の回転運動は、プロペラに、クラッチE324を介して伝達されるのを示している。
【0094】
パワートレインは、プロペラ3が回転駆動され続ける間に、バッテリ40を、熱エンジン1によって充電するのも可能にする。したがって、例えば、図3、3Aに示すように、航空機を飛行中に充電するために、クラッチを、以下のような構成にする。クラッチE324の係合を解除する。クラッチE123、クラッチE14、および、クラッチE23を係合する。したがって、プロペラA3を駆動させながら、矢印が示すように、熱エンジン1は、中間シャフトA2を駆動させ、それが、固定子201の巻線21に対向する磁石22を備えて巻線21に電流を生成する回転子202を回転させる。電気管理システム41、42は、バッテリ40を充電のために、回転子202の回転により生成される電流を制御する。
【0095】
パワートレインのこの種の動作モードは、飛行中、特に、バッテリを、誘導路移動、離陸、および/または、上昇相での電気推進に用いる場合に、熱エンジン1からの余剰電力を、バッテリ40の充電に用いるのを可能にする。
【0096】
パワートレインは、風力駆動または水力駆動効果によって、エネルギーの回復を可能にする。したがって、図4、4Aに示すように、特に航空機が下降する間、航空機が中に位置する気流の影響により、プロペラ3が回転したままになり、クラッチを以下のような構成にしうる。クラッチE123、および、クラッチE14の係合を解除して、プロペラ3を熱エンジン1から連結解除し、回転子202を熱エンジン1から連結解除する。好ましくは、クラッチE23の係合を解除する。クラッチE324を係合する。したがって、矢印は、プロペラ3の運動が、電動モータ2の回転子202に、遊星歯車S223、および、太陽歯車S3を介して伝達されるのを示しており、このように生成された電流が、バッテリ40を充電するのに用いられる。
【0097】
パワートレインは、プロペラ3を駆動させずに、バッテリ40を、熱エンジン1によって充電するのを可能にする。したがって、例えば、地上で航空機を充電するために、図5、5Aに示すように、クラッチを、以下のような構成にしうる。クラッチE324、および、クラッチE23の係合を解除する。クラッチE123、および、クラッチE14を係合する。図5Aの矢印が示すように、バッテリ40を充電するように電気管理システム41、42が制御する電流を生成するために、熱エンジン1は、中間シャフトA2を駆動させて、固定子201の巻線21に対向する磁石22を備えた回転子202を回転させる。
【0098】
1つの特定の実施形態によれば、航空機は、その電力供給バッテリ40に電気管理システム41、42を介して接続された電気パワートレインを備えた車輪を含む。この場合、パワートレインは、電力を、電気バッテリ40によって、車輪の電気パワートレインに供給するのを可能にする。
【0099】
車輪の電気パワートレイン管理システムは、航空機の電動モータへの電力供給の管理にも使用するものか、または、バッテリと車輪の電気パワートレインの間に配置された別個の管理システムでもありうる。
【0100】
熱エンジン1を停止するか、使用を待つアイドル状態にさせうる。特に、熱エンジンを作動状態に切り換えた場合、プロペラを駆動させないようにするために、各クラッチE23、E324の係合を解除する。
【0101】
プロペラを駆動させないことで、プロペラ回転によるバッテリからの不要なエネルギー消費を防ぎながら、誘導路移動時に、航空機の周囲の器具および人の安全性を改良する。
【0102】
図6に示した他の実施形態
図6の実施形態において、パワートレインは、クラッチE123、例えば、摩擦クラッチを、熱エンジン1と中間シャフトA2の間に含む。
【0103】
図6に示すこの例において、プロペラシャフトA3は、中間シャフトA2に、リジッドに接続される。
【0104】
クラッチE123の一部は、熱エンジン1の出力シャフトA1に回転状態で連結され、クラッチE123の他の部分は、中間シャフトA2の一部に回転状態で連結される。
【0105】
中間シャフトA2は、互いに軸がずれた2つの部分から構成される。中間シャフトA2の2つの部分は、滑車ベルト伝達装置T12によって相互接続される。
【0106】
電気パワートレインは、プロペラシャフトA3に対して軸がずれた1つ以上の電動モータ2を含みうる。各電動モータの出力シャフト上で、かさ歯車システム、並びに、ドッグクラッチまたはクラッチシステムを用いて、「半径方向の」ずれを等しく与えられうる。
【0107】
各電動モータ2は、電力供給システム4に接続される。特に、制御部42は、各電動モータ2に備えられる。
【0108】
各電動モータ2の出力シャフトは、クラッチE324’、好ましくは、ドッグクラッチタイプのクラッチの一部と回転するように制限される。クラッチE324’の他の部分は、電気パワートレインの回転運動をプロペラシャフトA3に伝達するように適合された伝達システムT23、例えば、滑車およびベルトを備えたものと回転するように制限される。
【0109】
各クラッチE324’は、特に、上記電動モータまたは各電動モータの故障の場合に、関連した電動モータ2を伝達システムT23から連結解除するのを可能にする。
【0110】
したがって、図6に示した本実施形態において、各電動モータ2に、図1から5の実施形態のクラッチE324と機能的に同様である独立の摩擦またはドッグタイプのクラッチシステムE324’が備えられる。
【0111】
図6では、概略的に、2つだけの電動モータを示しているが、第3の電動モータが存在し、伝達システムT23に、例えば、クラッチE324’と同じ種類の摩擦またはドッグクラッチによって、他の電動モータと同様に接続される。電気パワートレインは、好ましくは、3つ以上の電動モータを含む。
【0112】
図1から5に示した例において、パワートレインのシャフトは同軸で、シャフトの運動は、クラッチにより伝達され、クラッチも同軸である。図6に示した他の態様によれば、シャフトA1、A3は、軸がずれている。
【0113】
したがって、プロペラシャフトA3は、各クラッチE234’が係合状態では、電気パワートレインによって、および/または、クラッチE123が係合状態では、熱エンジンによって駆動されうることが明らかである。
【0114】
特定の態様
クラッチシステムを、手動または自動制御装置によって、1つの構成から他の構成になるように制御しうる。特に、コンピュータなどの制御ユニットは、クラッチ作動システムを制御して、1つの構成から他の構成に移行するように指令しうる。制御ユニットは、プロセッサ、および、プロセッサが実行しうるコンピュータへの命令が保存されたデータメモリの形態か、または、マイクロ制御部の形態でありうる。
【0115】
換言すれば、記載した機能および工程は、ソフトウェアまたはハードウェア(例えば、プログラマブルゲートアレイ)によって実行されうる。特に、制御ユニットによって実行される機能および工程は、プロセッサまたは制御部が実行する命令またはソフトウエアモジュールによって、若しくは、FPGA、または、ASICタイプの構成要素の専用電子素子によって生成されうる。ソフトウェアと電子装置を組み合わせることも可能である。
【0116】
航空機が、車輪を有する飛行機の場合には、例えば、電動モータをハブに組み込むことによって、電気モータを1つ以上の車輪を備えることも等しく可能である。各車輪の電動モータは、航空機の電気管理システムに接続されうる。したがって、誘導路移動相について、車輪の電動モータに、電力供給システム4によって、バッテリ40による電力を供給しうる。
【0117】
航空機は、互いに独立に制御されうる複数の補助プロペラ推進システムを含みうる。
【0118】
1つの特定の態様によれば、航空機は、2つの補助(好ましくは、横方向の)プロペラエンジンを含み、更に、2つのプロペラエンジンの間に、本発明によるパワートレインのプロペラ推進システムを含みうる。これらの補助パワートレイン、および、パワートレインは、プッシュタイプ、または、プルタイプのいずれかでありうる。
【0119】
上記プロペラ、または、各プロペラは、様々なピッチのもので、使用しない時には、所謂フェザリング構成に配置して、空気抵抗を削減しうる。
【0120】
本発明は、図面に示した実施形態に限定されない。
【0121】
更に、「含む」という用語は、他の構成要素も工程も排除しない。更に、上記実施形態の1つについて記載した特徴または工程は、本明細書に記載の他の実施形態の特徴または工程と組み合わせて、等しく用いうる。
【符号の説明】
【0122】
1 熱エンジン
2 電気モータ
3 プロペラ
40 バッテリ
42 制御部
201 固定子
202 回転子
E123 第1のクラッチ
E23 第2のクラッチ
E324 第3のクラッチ
E14 第4のクラッチ
図1
図1A
図2
図2A
図2B
図2C
図3
図3A
図4
図4A
図5
図5A
図6
【国際調査報告】