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特表2022-503975減衰全反射分光測定のための較正システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】減衰全反射分光測定のための較正システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/552 20140101AFI20220104BHJP
【FI】
G01N21/552
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517844
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(85)【翻訳文提出日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 US2019043287
(87)【国際公開番号】W WO2020068256
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】16/147,826
(32)【優先日】2018-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,クリストファー・ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ホーク,チャールズ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059GG01
2G059JJ11
2G059MM14
(57)【要約】
ATR走査器(80)およびそれを較正するための方法が開示される。走査器は、反射面と、第1の光ビームを受け取り、そして、第1の光ビームが反射面によって反射され、第1の光ビームのどの部分も臨界角よりも大きい角度で反射面に当たらないような反射面上の場所における点に第1の光ビームを集束させるように構成された光ポートとを有するATR対物レンズ(67)を含む。検出器(63b)は、反射面から反射された光の強度を測定する。コントローラ(69)は、焦点の場所を制御し、反射面に入射した光の強度を反射面上の位置の関数として、および反射面から反射された光の強度を反射面上の位置の関数として決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を含む第1の光学素子であり、前記反射面が臨界角によって特徴づけられる、第1の光学素子と、
第1の光ビームを受け取り、そして、前記第1の光ビームが前記反射面によって反射され、前記第1の光ビームのどの部分も前記臨界角よりも大きい角度で前記反射面に当たらないような前記反射面上の場所および波長によって特徴づけられる点に前記第1の光ビームを集束させるように構成された光ポートと
を含むATR対物レンズと、
前記反射面から反射された光の強度を測定する検出器と、
前記場所を制御する走査システムと、
前記走査システムを制御し、前記反射面に入射した光の強度を前記位置の関数として、および前記反射面から反射された光の強度を前記反射面上の位置の関数として決定するコントローラと
を含む、走査器。
【請求項2】
前記波長が前記コントローラによって決定される、請求項1に記載の走査器。
【請求項3】
前記走査システムが、第2の光ビームを受け取り、前記第2の光ビームを前記第1の光ビームに変更する、請求項1に記載の走査器。
【請求項4】
前記コントローラが、前記反射面上の各点の減衰値を前記波長の関数として提供する前記反射面の減衰マップを格納し、前記波長が複数の異なる値をとる、請求項1に記載の走査器。
【請求項5】
前記コントローラは、前記反射面が試料に接触する前に前記反射面上の較正場所に当たる光の強度の測定値と、前記減衰マップとから前記反射面に当たる光の強度を決定する、請求項4に記載の走査器。
【請求項6】
前記コントローラが、前記第2の光ビームの複数の異なる波長に対して前記光の強度の前記決定を繰り返す、請求項5に記載の走査器。
【請求項7】
前記コントローラは、前記試料が前記反射面に接触した後、前記試料に接触していない前記反射面上の場所を決定するように構成される、請求項5に記載の走査器。
【請求項8】
前記コントローラは、前記反射面上の別の場所が前記試料に接触している間に前記試料に接触していない前記反射面上の場所に当たる光の強度を測定することから前記反射面に当たる光の強度を決定する、請求項7に記載の走査器。
【請求項9】
前記第1の光ビームを生成する光源であり、前記走査器が、前記光源と前記ATR対物レンズとの間の第1の光路と、前記第1の光路に沿った第1の気体環境とによって特徴づけられる、光源と、
前記第1の光ビームを受け取り、それぞれ、前記第1の光路および前記第1の気体環境と実質的に同じ光路長および気体環境を有する較正経路に沿って前記第1の光信号を導き、前記第1の光信号を前記検出器に戻す較正システムと
をさらに含む、請求項1に記載の走査器。
【請求項10】
反射面を含む光学素子であり、前記反射面が臨界角によって特徴づけられる、光学素子と、波長によって特徴づけられる第1の光ビームを受け取り、そして、前記第1の光ビームが前記反射面によって反射され、前記第1の光ビームのどの部分も前記臨界角よりも大きい角度で前記反射面に当たらないような前記反射面上の場所によって特徴づけられる測定点に前記第1の光ビームが当たるようにするように構成された光ポートと、前記測定点から反射された光の強度を測定するように構成された検出器と、前記場所を制御するように構成されたコントローラとを含む走査器を較正するための方法であって、
複数の異なる波長に対して、前記反射面に入射した光の強度を前記測定点の前記場所の関数として、および前記反射面から反射された光の強度を前記反射面上の位置の関数として前記コントローラに決定させることと、
前記反射面上の各点の減衰値を前記第1の光ビームの前記波長の関数として提供する前記反射面の減衰マップを前記コントローラに決定させることと
を含む、方法。
【請求項11】
前記コントローラは、前記反射面が試料に接触する前に前記反射面上の較正場所に当たる光の強度の測定値と、前記減衰マップとから前記反射面に当たる光の強度を決定する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コントローラが、複数の異なる波長に対して前記光の強度の前記決定を繰り返す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が前記反射面に接触した後、前記試料に接触していない前記反射面上の場所を前記コントローラに決定させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コントローラは、前記反射面上の別の場所が前記試料に接触している間に前記試料に接触していない前記反射面上の場所に当たる光の強度を測定することから前記反射面に当たる光の強度を決定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の光ビームが、前記第1の光ビームを生成する光源と前記反射面との間の第1の経路長および第1の気体環境によって特徴づけられる経路を横切り、
前記第1の経路長および前記第1の気体環境と実質的に同じ経路長および気体環境を有する較正光路を用意することと、
前記第1の光ビームが前記較正光路を横切った後の前記第1の光ビームの較正光強度を前記第1の光ビームの波長の関数として測定することと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
量子カスケードレーザは、分光計測および画像に使用することができる調整可能な中赤外(MIR)光源を提供する。対象となる多くの化学成分には、5~25ミクロンの間の波長にわたる光学スペクトルのMIR領域で励起される分子振動がある。したがって、サンプルの様々な場所でMIR光の吸収を測定することにより、サンプルの位置の関数としてのサンプルの化学的性質に関する有用な情報を得ることができる。
【0002】
1つの種類のイメージング分光計は、サンプルから直接反射された光を、サンプル上の位置および照明したMIR光の波長の関数として測定する。反射される光量は、サンプルの化学的属性と物理的属性の両方に依存し、その理由は、試料の化学組成を反映するサンプルの吸収と、試料の表面の物理的状態に依存する散乱の両方によって、光が失われる可能性があるからである。したがって、ライブラリで利用可能な既知の化学吸収スペクトルを用いて、直接反射によって生成されたスペクトルと吸収を比較することは大きな課題をもたらす。
【0003】
減衰全反射(ATR)を利用して試料を照明するシステムは、試料による入射光の散乱によって引き起こされる問題を回避する。例えば、2018年1月9日に発行された米国特許第9,863,877号は、ATRを使用して試料の一部を走査するための方式を記載している。しかしながら、視野の各点でおよび減衰が測定される各波長で照明強度の較正を行うことは課題をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、減衰全反射光学部品を使用する走査器およびその走査器を較正するための方法を含む。走査器は、反射面を含む第1の光学素子であり、反射面が臨界角によって特徴づけられる、第1の光学素子と、第1の光ビームを受け取り、そして、第1の光ビームが反射面によって反射され、第1の光ビームのどの部分も臨界角よりも大きい角度で反射面に当たらないような反射面上の場所および波長によって特徴づけられる点に第1の光ビームを集束させるように構成された光ポートとを有するATR対物レンズを含む。走査器は、反射面から反射された光の強度を測定する検出器と、反射面上の場所を制御する走査システムとをさらに含む。走査器は、走査システムを制御し、反射面に入射した光の強度を反射面上の位置の関数として、および反射面から反射された光の強度を反射面上の位置の関数として決定するコントローラとをさらに含む。
【0005】
本発明の1つの態様では、波長は、コントローラによって決定される。
【0006】
本発明の別の態様では、走査システムは、第2の光ビームを受け取り、第2の光ビームを第1の光ビームに変更する。
【0007】
本発明の別の態様では、コントローラは、反射面上の各点の減衰値を波長の関数として提供する反射面の減衰マップを格納し、波長は、複数の異なる値をとる。
【0008】
本発明の別の態様では、コントローラは、反射面が試料に接触する前に反射面上の較正場所に当たる光の強度の測定値と、減衰マップとから反射面に当たる光の強度を決定する。
【0009】
本発明の別の態様では、コントローラは、第2の光ビームの複数の異なる波長に対して光の強度の決定を繰り返す。
【0010】
本発明の別の態様では、コントローラは、試料が反射面に接触した後、試料に接触していない反射面上の場所を決定するように構成される。
【0011】
本発明の別の態様では、コントローラは、反射面上の別の場所が試料に接触している間に試料に接触していない反射面上の場所に当たる光の強度を測定することから反射面に当たる光の強度を決定する。
【0012】
本発明の別の態様では、走査器は、第1の光ビームを生成する光源であり、走査器が、光源とATR対物レンズとの間の第1の光路と、光路に沿った第1の気体環境とによって特徴づけられる、光源と、第1の光信号を受け取り、それぞれ、第1の光路および第1の気体環境と実質的に同じ光路長および気体環境を有する較正経路に沿って第1の光信号を導き、第1の光信号を検出器に戻す較正システムとをさらに含む。
【0013】
この方法は、反射面を含む光学素子であり、反射面が臨界角によって特徴づけられる、光学素子と、波長によって特徴づけられる第1の光ビームを受け取り、そして、第1の光ビームが反射面によって反射され、第1の光ビームのどの部分も臨界角よりも大きい角度で反射面に当たらないような反射面上の場所によって特徴づけられる測定点に第1の光ビームが当たるようにするように構成された光ポートと、測定点から反射された光の強度を測定するように構成された検出器と、場所を制御するように構成されたコントローラとを含む走査器を較正することに関する。この方法は、複数の異なる波長に対して、反射面に入射した光の強度を測定点の場所の関数として、および反射面から反射された光の強度を反射面上の位置の関数としてコントローラに決定させることと、反射面上の各点の減衰値を第1の光ビームの波長の関数として提供する反射面の減衰マップをコントローラに決定させることとを含む。
【0014】
本発明の別の態様では、コントローラは、反射面が試料に接触する前に反射面上の較正場所に当たる光の強度の測定値と、減衰マップとから反射面に当たる光の強度を決定する。
【0015】
本発明の別の態様では、コントローラは、複数の異なる波長に対して光の強度の決定を繰り返す。
【0016】
本発明の別の態様では、試料が反射面に接触した後、試料に接触していない反射面上の場所をコントローラに決定させる。
【0017】
本発明の別の態様では、コントローラは、反射面上の別の場所が試料に接触している間に試料に接触していない反射面上の場所に当たる光の強度を測定することから反射面に当たる光の強度を決定する。
【0018】
本発明の別の態様では、第1の光ビームは、第1の光ビームを生成する光源と、反射面との間の第1の経路長および第1の気体環境によって特徴づけられる経路を横切り、この方法は、第1の経路長および第1の気体環境と実質的に同じ経路長および気体環境を有する較正光路を用意することと、第1の光ビームが較正光路を横切った後の第1の光ビームの較正光強度を第1の光ビームの波長の関数として測定することとをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】試料に取り付けられた単純なATR光学システムを示す図である。
図2】本発明を実施することができる走査型ATRシステムを示す図である。
図3】試料を試料に接触させた後でさえP(λ)を測定できるようにする本発明の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明が利点を提供する方式は、試料に取り付けられている単純なATR光学システムを示す図1を参照してより容易に理解することができる。図1は、反射幾何学モードでのサンプル27による光の吸収の測定を容易にすることができる界面結晶の断面図である。結晶21は、高い屈折率を有する。光ビーム26は、ポート22を通って結晶21に入り、臨界角よりも大きい角度でファセット23に当たる。光ビームは、ファセット23から全反射され、ポート24を通って結晶を出て行く。光ビームがファセット23から反射される点で、光ビームに関連する電場は、25で示されるように結晶の外に延びる。ファセット23の下の媒体が光ビーム26の波長の光を吸収する場合、エバネセント場が媒体と相互作用することになり、エネルギーが光ビームから媒体に移されることになる。この場合、結晶21を出るビームのエネルギーは減少することになる。波長の関数としての入力ビームと出力ビームとの間の強度の差は、高品質透過スペクトルと一致するスペクトルであり、様々な化学化合物の従来のスペクトルを一致させるために容易に使用することができる。
【0021】
上述で論じたタイプの界面結晶は、サンプル上の点のMIRスペクトルを測定するのに有用であるが、試料の区域の画像が必要である場合、特に、試料の表面が滑らかでない場合、課題をもたらす。画像を形成するには、界面が、試料に対して移動されなければならない。界面結晶が試料を損傷しないようにするために、試料を垂直に移動して、結晶を次の対象の点に配置できるようにしなければならない。そのようなポイントツーポイントの測定の時間は、高分解能で試料の各点のスペクトルを生成するのに非常に長い時間を利用できない限り、イメージングと分光計を組み合わせた機器を非現実的にする。
【0022】
上述の米国特許は、結晶を移動させる必要なしに、入力光ビームの相互作用の点を試料を横切って迅速に走査させることができるATR測定システムを教示している。次に、本発明を実施することができる走査型ATRシステム60を示す図2を参照する。レーザ61からの光18は、ビームスプリッタ62によって2つのビームに分割される。第1のビームは検出器63aに導かれ、検出器63aはレーザパルスの強度を測定する。第2のビームは位置調整器64に導かれ、位置調整器64は軸外し放物面反射器65上のビームの照明の点を調節する。この照明の位置は、放物面反射器65からの光が第2の軸外し放物面反射器66に当たる位置を決定する。放物面反射器66は、ビームを再コリメートし、ビームの直径をATR対物レンズ67の入力アパーチャと一致するように設定する。ATR対物レンズ67に入るビームの傾斜は、放物面反射器65上の照明の点によって決定される。ATR対物レンズ67によって反射されて戻る光は、入来光の経路を再び辿り、その光の一部は、ビームスプリッタ62によって検出器63bに導かれる。次いで、コントローラ69は、ATR対物レンズ67からの反射で失われた光量を決定し、したがって、サンプル27によって吸収された光量を決定することができる。サンプル27の別の小さい区域を画像化するために、コントローラ69は、3軸ステージ68を操作する。
【0023】
対象の多くの試料は、不規則な表面を有する。結果として生じる高さ変動は、多くの場合、ATR対物レンズの反射面での電場の深さよりも非常に大きい。上記のように、ATR対物レンズの反射面の下の電場の深さは、数ミクロンである。したがって、表面の変動が数ミクロン未満であるか、またはサンプルが圧縮可能である場合を除いては、対物レンズを試料に接触させたとき、一般に予め予測することができない孤立した接触点が存在する。ATR対物レンズの底面に接触する区域にわたって表面の変動が3ミクロン未満である試料は、平坦な試料であると定義されることになる。
【0024】
試料の吸収スペクトルを単一の場所でλの関数として測定する単純な場合でさえ、重大な課題がある。吸収を測定するには、システムは、光が集束される点でのATR対物レンズ結晶の反射面の入射光強度を「知る」必要がある。試料における電場は、わずか数ミクロンの深さであり、したがって、さらされる材料の量は非常に少ない。レーザから試料までの光路は、何センチメートルもあり、したがって、その経路中の吸収体は、試料によって実際に吸収される光と比較したとき、かなり大きい量だけ強度を変えることがある。
【0025】
検出器63aは、レーザ61を出る光の光強度を測定することができるが、その検出器は、ATR対物レンズ67の反射面に実際に当たるビームの光強度を測定することはできない。ビームスプリッタ62とATR対物レンズ67との間の光路は、真空ではない。光は、MIRに吸収帯がある気体環境を通過しなければならない。それらの吸収帯は、ATR対物レンズの反射面に達する光と、さらに、反射面から戻される光とを減少させる。例えば、経路は、一般に、ある程度の水蒸気を含む。水蒸気吸収は、波長と温度の関数である。これらの変動は、短期間に変化することがあり、したがって、周波数の関数として吸収を走査する直前に較正される必要がある。
【0026】
加えて、上記のように、試料との接触点は、一般に、予測可能ではない。接触点が決定された後、入来光の強度は、光が導かれる結晶上の点の関数である変動に対して補正されなければならない。これらの強度変動は、さらに、波長の関数である。
【0027】
原則として、ATR対物レンズ67の反射面上の各点のビーム強度は、対物レンズが試料に接触するようにATR対物レンズを移動させる直前に、波長の関数として測定することができる。しかしながら、そのような較正を実行する時間は、一般に、数十分である。さらに、バックグラウンドの吸収は、そのような期間にわたって変化することがあり、実際の測定が行われるまでに、較正が「古く」なる。
【0028】
以下の議論を簡単にするために、図2に示されるように、ATR対物レンズの反射面に平行なx-y面をもつ直角座標を定義する。一般に、入射光の波長がλである場合に、ATR対物レンズの反射面上の場所(x,y)に集束されるATR対物レンズへの入来ビームの光の強度を与える較正関数I(x,y,λ)がある。入射光が波長λを有する場合に(x,y)でのサンプルの吸収を計算するには、システムは、サンプルが存在しないときに表面に当たる光の強度と、検出器63bに達する前に吸収される反射光の割合とを知る必要がある。次いで、吸収が、この初期の強度と検出器63bによって測定された強度との差から計算される。
【0029】
本発明は、I(x,y,λ)を2つの関数に分解することができ、関数のうちの1つが測定中に経時的に大きく変化せず、他方の関数がATR対物レンズの視野内の一点での較正測定によって測定され得るという観察に基づく。
I(x,y,λ)=G(x,y,λ)P(λ)
ここで、P(λ)は、ATR対物レンズがサンプルに接触する前にATR対物レンズの視野内の所定の点で測定された入射光強度であり、G(x,y,λ)は、空間と波長の両方においてゆっくり変化する関数である。関数Gは、入射パワーを視野にわたって変化させる幾何学的パラメータによって決定される。Gはまた、入射光の波長に依存する。Gは、(x,y)とλの両方に関してゆっくり変化する関数であり、したがって、まばらにサンプリングされ、必要に応じて補間されてもよいことに留意されたい。G(x,y,λ)は、反射面に接触している試料がないときに、反射面に達し、その反射面から戻るレーザからの光の割合の尺度を提供する幾何学的減衰関数と見なすことができる。
【0030】
所与の波長に対して、G(x,y,λ)は、入射ビームが(x,y)に導かれ、ATR対物レンズが試料に接触していないときに、反射パワーを測定することによって測定される。次いで、関数は、測定された出力パワー値のすべてを(0,0)などのいくつかの所定の場所で測定されたパワーで除算することによって正規化される。上記のように、G(x,y,λ)は、(x,y)およびλに関してゆっくり変化する関数である。したがって、G(x,y,λ)は、まばらなグリッドでサンプリングすることができ、空間および波長の中間点の値は、補間によって得ることができる。本発明は、G(x,y,λ)が経時的に迅速に変化しないという観察に基づく。しかしながら、P(λ)は、時間とともに十分に変化し、したがって、各サンプルを測定する直前にP(λ)を測定する必要がある。
【0031】
1つの例示的な実施形態では、所望の範囲のλ値にわたるλの関数としてのP(λ)が、サンプルをATR対物レンズに接触させる直前に(0,0)で測定される。次いで、これらの測定された較正値は、サンプルがATR対物レンズに接触している点での吸収測定中に、入射ビームの測定値を生成するのに使用するために格納される。波長λにおける測定点での入射光強度は、G(x,y,λ)P(λ)であり、ここで、(x,y)は、ATR対物レンズの面上の測定点の座標であり、P(λ)は、波長λの光での(0,0)における測定されたビーム強度である。
【0032】
上記のように、対象の多くのサンプルは平坦でなく、したがって、サンプルは、単に、孤立した区域でATR対物レンズの反射面に接触する。接触区域の場所は、一般に、予め決定することができない。本発明の1つの態様では、試料をサンプルに接触させ、次いで、ATR対物レンズの視野が1つまたは複数の波長で走査されて、当該の波長の光を吸収する区域が識別される。吸収区域のマップが、図2に示されるユーザインタフェース74を介してユーザに提供され、ユーザは、吸収スペクトル(すなわち、λ値の範囲に対するλの関数としての吸収)が生成されるべき場所を示す。
【0033】
吸収していないATR対物レンズの視野の領域は、サンプル表面がATR対物レンズの内面から反射される光によって生成される電場の有効深さよりも大きい距離だけATR対物レンズ表面から隔てられていることに起因している。本発明の1つの態様では、これらの領域の1つを使用して、サンプルをATR対物レンズに接触させる直前に(0,0)でP(λ)を測定することに関して上述したものと類似した方式で、吸収スペクトル測定中にP(λ)を測定する。次いで、結果として生じたP(λ)値を使用して、機器較正関数を更新することができる。例えば、試料に接触している場所でλの関数として吸収を測定するとき、ビームを較正場所に切り替え、P(λ)の測定を行って較正を検証することができる。
【0034】
上述で論じた較正方式は、光源とATR対物レンズとの間の損失と、ATR対物レンズから検出器までの戻り浴槽の損失の両方を捕捉することに留意されたい。
【0035】
本発明の上述の実施形態は、光ビームを全反射光学部品の面上の測定点に導き、そこから反射された光を測定するために、特定のタイプのATR対物レンズを利用している。しかしながら、本発明の較正方法は、光ビームを臨界角よりも小さい角度で反射面上の点に導き、反射面上の位置および反射する光の波長の関数として反射光を測定する任意の分光計で実施することができる。上述の実施形態では、単一ポートが、光を反射面に導き、そこから反射された光を収集する。光を入力するためのおよび反射光を収集するための別個の複数のポートを有する実施形態を利用することもできる。同様に、反射面上の入来光ビームの接触点を移動させるために、他のタイプの走査システムを利用することができる。
【0036】
上述の実施形態では、P(λ)は、当該の場所を試料に接触させる前に、反射面上の所定の場所でATR対物レンズの反射面から反射された光を測定することによって測定される。場合によっては、P(λ)が測定中に変化していないことを保証するために、試料を試料に接触させた後、P(λ)を測定することが有利であることがある。上記のように、試料を反射面に接触させた後、試料表面の不規則性のために、試料に接触していない反射面上の場所がある場合、その点を利用することができるが、しかしながら、そのような非接触の場所が常に存在するとは限らない。
【0037】
次に、試料を試料に接触させた後でさえP(λ)を測定できるようにする本発明の一実施形態を示す図3を参照する。走査型ATRシステム60に関して上述した機能と類似した機能を実行する走査型ATRシステム80のそれらの要素は、同じ数字表示を与えられており、ここでは詳細に論じられない。走査型ATRシステム80は、位置調整器への往復の経路85に沿ってレーザビームを導くミラー81が回転し、その結果、レーザ出力の経路がミラー82および83によって較正光路84に定められるという点で、走査型ATRシステム60と異なる。較正光路は、ATR反射面への往復の経路と同じ経路長を有し、ATR対物レンズならびに関連する位置調整器65および放物面反射器65、66と同じチャンバに配置される。したがって、この較正光路から戻されたビーム強度は、P(λ)を測定する。この測定は、レーザの波長が変えられたとき、またはP(λ)の検証が必要とされるときはいつでも、反射面に対する試料の位置を変えることなく、単にミラー81を回転させることによって実行することができる。
【0038】
本発明の上述の実施形態は、本発明の様々な態様を説明するために提供された。しかしながら、様々な特定の実施形態に示されている本発明の様々な態様を組み合わせて、本発明の他の実施形態を提供することができることを理解されたい。加えて、本発明への様々な変形が、前述の説明および添付の図面から明らかになるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】