(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(54)【発明の名称】電気モーターの上または内で結露が形成されそうであること、または、結露が既に形成されていることを検出する方法、および、電気モーターの上または内の結露の形成を防止し、かつ/または、結露を除去する方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20220104BHJP
H02K 11/26 20160101ALI20220104BHJP
H02P 29/60 20160101ALI20220104BHJP
【FI】
H02P29/024
H02K11/26
H02P29/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517864
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(85)【翻訳文提出日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 DE2019200109
(87)【国際公開番号】W WO2020074048
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】102018217429.6
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オブスト、 ラファエル シモン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンガー、 ビヨルン
(72)【発明者】
【氏名】カンメラー、 マティアス カルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ラトケ、 ジーニア
【テーマコード(参考)】
5H501
5H611
【Fターム(参考)】
5H501AA08
5H501BB08
5H501FF01
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501LL37
5H501LL39
5H501LL40
5H501LL42
5H501LL53
5H501MM01
5H501MM09
5H611AA01
5H611BB01
5H611PP01
5H611QQ04
(57)【要約】
本方法は、電気モーター、特に、ファンまたはファングループの部品としての電気モーターの上または内で、結露が形成されそうであること又は結露が既に形成されていることの識別に用いられる。
本方法は、部品温度、好ましくは、電子機器、電気モーター、ファン、ファングループの上または内の表面温度を判断するステップと、前記電子機器、電気モーター、ファン、またはファングループの上または内の露点温度を判断するステップと、それぞれの部品温度をそれぞれの露点温度と比較するステップと、部品温度が露点温度に近付いている際や、部品温度が露点温度を下回っている際に、結露が形成されそうであるか、結露が既に形成されているかを結論付けるステップと、を含む。
さらなる方法が、電気モーター、特に、ファンやファングループの部品としての電気モーターの上または内の、結露の前記形成を防止し、結露を除去するのに役立つ。
その方法は、電気モーターの上または内で結露が形成されそうであることおよび/または結露が既に形成されていることを検出するステップと、受動的な対策や能動的な対策によって結露の前記形成を防止し、前記結露を除去する対策を開始するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モーター、特に、ファンまたはファングループの部品としての電気モーターの上または内で結露が形成されそうであること、または、結露が既に形成されていることを検出する方法であって、
部品温度、好ましくは、(内部/外部)電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの上または内の表面温度を判断するステップと、
前記電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの上または内の露点温度を判断するステップと、
それぞれの前記部品温度をそれぞれの前記露点温度と比較するステップと、
前記部品温度が前記露点温度に近付いている際や、前記部品温度が前記露点温度を下回っている際に、結露が形成されそうであるか、結露が既に形成されているかを結論付けるステップと、
を含む、結露が形成されそうであること、または、結露が既に形成されていることを検出する方法。
【請求項2】
前記部品温度が、それぞれの前記部品について測定または判断される、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記部品温度が、重要な場所で測定または判断される、請求項1または請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記部品温度が、前記電気モーターの計算モデルから、または、前記ファンまたはファングループの別の(例えば、表もしくは近似式を使用する)参照方法から、導出される、請求項1に記載された方法。
【請求項5】
1つ以上の局所的な露点温度が、潜在的な結露の形成場所に関連して計算または判断される、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載された方法。
【請求項6】
前記露点温度が、湿度測定法によって測定される、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された方法。
【請求項7】
前記露点温度が、実蒸気圧から判断されることを特徴とし、
前記部品、前記電気モーター、前記ファンまたは前記ファングループの、温度依存性のある局所的な飽和蒸気圧と局所的な周囲空気湿度とが、前記蒸気圧の判断に組み込まれている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載された方法。
【請求項8】
低圧/高圧用途において前記露点温度を判断するために、圧力に関連する計算規則を考慮する、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載された方法。
【請求項9】
前記電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの周囲温度が、温度センサーによって局所的に測定される、請求項7または請求項8に記載された方法。
【請求項10】
前記電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの前記周囲温度が、内部の測定ユニットまたは(前記ファンの外部の、例えば、顧客の装置などの)分散型の測定ユニットから、(モーターマイクロプロセッサ、ゲートウェイ、クラウドなどの)評価ユニットへ送信される、請求項7または請求項8に記載された方法。
【請求項11】
前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの前記周囲温度が、(分析的、数値的、経験的、数学的、物理的および非物理的)計算モデルを用いて、関数に基づいて、(例えば、表から)間接的に判断される、請求項7または請求項8に記載された方法。
【請求項12】
前記局所的な周囲空気湿度(前記電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループを取り巻く空気の水分含有量)が、湿度センサーを用いて測定されることを特徴とし、
該湿度センサーが、オプションで、前記電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループに統合されているか、または、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの内側から外側へ誘導されているか、または、前記評価ユニット、前記電気モーターもしくは前記計算を実行する計算ユニットへと分散型測定ユニットから送信される、請求項7または請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載された方法。
【請求項13】
時間係数または計算モデルが、局所的な相対空気湿度の判断に用いられ、
前記電気モーターまたは前記測定場所を取り巻く空気の温度と相対湿度とが、前記実際の(局所的な)露点目標に等しくなるまでの時間を、該計算モデルが考慮する、請求項11または請求項12に記載された方法。
【請求項14】
電気モーター、特に、ファン、ファングループまたはその内部や外部の前記電子機器の部品としての電気モーターの上または内で結露の形成を防止し、かつ/または、結露を除去する方法であって、
請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載された、前記電気モーターの上または内で結露が形成されそうであること、および/または、結露が既に形成されていること、を検出するステップと、
受動的な対策や能動的な対策によって、結露の形成を防止し、かつ/または前記結露を除去する対策を開始するステップと、を含む、結露の形成を防止し、かつ/または、結露を除去する方法。
【請求項15】
前記対策が、ローターを回転させることによる任意の換気効果を用いて換気または通気をすることを含む、請求項14に記載された方法。
【請求項16】
前記対策が、電気モーターを静止状態から始動させる対策であり、前記ファンを始動させることを含む、請求項14または請求項15に記載された方法。
【請求項17】
前記対策が、電気モーター速度の調整を含む、請求項14乃至請求項16のいずれか一項に記載された方法。
【請求項18】
前記対策が、加熱させることを含み、
該加熱が、前記電気モーターの全体になされるか、個々のモーター部品になされるか、前記外部の電子機器になされることを含む、請求項14乃至請求項17のいずれか一項に記載された方法。
【請求項19】
警告メッセージが、前記対策の開始前または開始時に、上位レベルのシステムに対して生成される、請求項14乃至請求項18のいずれか一項に記載された方法。
【請求項20】
結露が既に形成されていること又は結露が形成されそうであることの検出、および/または開始された対策、および/または警告メッセージが、内部イベントメモリまたは外部イベントメモリに保存される、請求項14乃至請求項19のいずれか一項に記載された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モーター、特に、ファンまたはファングループの部品としての電気モーターの上または内で結露が形成されそうであること、又は、結露が既に形成されていることを検出する方法に関する。
さらに、本発明は、電気モーター、特に、ファンまたはファングループの部品としての電気モーターの上または内で結露の形成を防止し、かつ/または、結露を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1に、特許請求された方法は、電気モーター、特に、モーター電子機器が供給信号のシステムを生成するECモーター(電子整流モーター)に関連していることが重要である。
この供給信号のシステムは、電気モーター内に回転磁界を生成可能であり、これによりローターを回転させる。
ECモーターは、内部ローター設計や外部ローター設計として設計されていてもよい。
この場合、モーター電子機器は、電気モーターと一体であってもよいが、外部に配置されていてもよい。
【0003】
特別な用途および/または周囲条件下では、動作に応じて、電気モーターの内または上に結露が形成される場合がある。
特に悪い場合、結露の形成が、電気モーターの損傷または故障につながる可能性がある。
特に、水分は、徐々に蒸発するため、水分による故障は、検証が非常に難しいことがわかっている。
【0004】
着水を防ぐことなど、さまざまな場面での保護機能が、実用上すでに知られている。
この目的のために、定格電流が部分的に調整され、パルス型直流としてステータの巻線に供給される。
【0005】
空気湿度と結露とに関連する問題に関しては、問題を検出して解決する有用なアプローチは、知られていない。
これは、結露の形成が電気モーターの上または内のさまざまな場所で発生する可能性があるためである。
したがって、結露が形成されそうであること又は結露が既に形成されていることを検出することは非常に困難であり、さらに、電気モーターのみでなく、電気モーターを有するファンやファンアセンブリにも関連する広範囲の問題に対して、結露の形成の前または直後に、解決可能な対策を得ることは、非常に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の目的は、結露が形成されそうであること又は結露が既に形成されていることを、請求項1の特徴を用いて検出することで、達成される。
対策に関しては、電気モーターの上または内の結露の形成の防止、および/または、結露の除去に関しては、上述の目的は、従属請求項14の特徴によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1によれば、本方法は、
部品温度、好ましくは、前記(内部/外部)電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの上または内の表面温度を判断するステップと、
前記電子機器、前記電気モーター、前記ファンまたはファングループの上または内の前記露点温度を判断するステップと、
それぞれの前記部品温度をそれぞれの前記露点温度と比較するステップと、
前記部品温度が前記露点温度に近付いている際や、前記部品温度が前記露点温度を下回っている際に、結露が形成されそうであるか、結露が既に形成されているかを結論付けるステップと、を含む。
【0008】
結露の形成の防止および/または結露の除去に関して、以下の方法ステップが従属請求項14で特許請求されている。
請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載された、前記電気モーターの上または内で結露が形成されそうであること、および/または、結露が既に形成されていること、を検出するステップと、
受動的な対策や能動的な対策によって、結露の形成を防止し、かつ/または、前記結露を除去する対策を開始するステップ。
【0009】
本発明は、結露の形成が物理的条件に関連していることが、重要である。
部品の表面温度が露点温度を下回ると、結露が形成される。
【0010】
気体が凝縮して液体になるプロセスを、結露と呼ぶ。
このプロセスは、物質の物理的状態が、気体から液体へと遷移するプロセスである。
結露は、ガスまたは混合ガスにおいて、凝縮成分が過飽和になると形成される。
【0011】
前述の露点温度は、結露の発生を判断するのに重要である。
周囲空気とは、一定の圧力下にある特定の湿度を有する空気において、水蒸気が露または霧になるために、下回らなければならない温度である。
露点での空気湿度は、100%である。
この状態の空気は、水蒸気が飽和していると、言われることが多い。
【0012】
露点温度は、鏡面冷却式露点湿度計や他の湿度測定法を用いて、判断可能である。
あるいは、気温と湿度の測定を介して間接的に判断される。
【0013】
相対湿度は、湿度センサーを使用して測定可能である。
空気の温度は、温度計によって定期的に判断される。
露点温度は、次のように計算される。
φ_rel=(湿度センサーで測定される)パーセント表示での相対空気湿度
T=(センサーで測定されるか、他の方法で判断される)空気温度
定数は、特定の状況を基に次のように定義される。
a=7.5
b=237.3℃
飽和蒸気圧=6.1078hPa・10^((a・T)/(b+T))
蒸気圧=φ_rel・飽和蒸気圧
V=log10(蒸気圧/6.1078)
露点温度=(b・V)/(a―V)
【0014】
各部品の部品温度は、上記の物理的関係に基づいて評価可能である。
部品温度は、電気モーターまたはファンの上もしくは内の重要な場所で測定または判断され、評価される。
【0015】
部品温度を測定するのではなく、電気モーター、ファンまたはファングループの計算モデルから部品温度を導出することが考えられ、このようにすると有利な場合がある。
特に、有利な方法では、電気モーター、ファンまたはファングループのデジタルツインを、この目的で使用可能である。
【0016】
デジタルツインは、本発明による電気モーター、ファンまたはファンシステムにおける、実際の個々の要素のデジタル画像である。
デジタルツインは、計算モデルを用いて、必要であれば、電気モーターやファンの既知のデータを組み込んで、電気モーターやファンの特性を複製している。
デジタルツインの役割は、電気モーターやファンの部品の部品状態を仮想センサーを用いて、それぞれの動作状態の関数として計算することである。
このような計算に基づいて判断される部品の状態が、動作パラメータに固有のアルゴリズムに送信され、このアルゴリズムは、デジタルツインの動作データを用いて、ファンの動作パラメータや動作状態を判断、計算する。
その結果に基づいて、状況に適した計算規則の調整が可能である。
動作パラメータと動作状態とは、それらが計算可能な量である限り、同等の関係である。
【0017】
デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとの上述した組み合わせは、ファンの電気モーターに割り当てられているマイクロプロセッサ上でデジタルツインアルゴリズムの意味で実行されてもよく、固定部品としてファンに割り当てられていてもよい。
【0018】
デジタルツインアルゴリズムは、電気モーターやファンを表現するデジタルツインと、動作パラメータに固有になるように構成されている一種の知的アルゴリズムとの組み合わせである。
【0019】
適切に設計されたファンに対して、(たとえば、水分による損傷が原因の)ファン故障を防止することを目的とした、メンテナンスの予測がなされてもよい。
ファンの寿命を可能な限り長くできるよう、システムパラメータを状況に応じて調整可能になる。
【0020】
電気モーターやファンのデジタルイメージと動作パラメータに固有のアルゴリズムとを用いてメンテナンスを予測することによって、ファンの部品の寿命を可能な限り完全に使い切り、同時にファンの故障を防止することを目標としている。
ファンの寿命は、計算された部品の状態と、そこから得られる動作パラメータとに基づいて計算される。
【0021】
デジタルツインは、物理的、数学的、統計的、経験的またはそれらを組み合わせたモデルを用いて、熱的および機械的な部品の状態を計算する。
数学的モデルだけでなく、物理モデルと非物理モデルの両方が含まれている。
動作パラメータに固有のアルゴリズム(知的アルゴリズム)では、任意の動作パラメータを判断するために(たとえば、ファンの故障を予測するために)、デジタルツインが判断する部品状態が必要である。
【0022】
特定の部品の表面温度を判断するには、その特定の部品のすぐ近傍に温度センサーを配置する必要がある。
ファンまたは電気モーターの金銭的、幾何学的および機能的条件により、これは、不可能であることが多い。
したがって、特定の場所の温度などの部品の状態が、デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとを介して計算される。
表面温度は、従来のセンサーを用いて記録してもよい。
【0023】
この計算は、数学的モデルに基づいており、数学的モデルは、縮約結合された熱磁気計算モデルに基づいている。
デジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとを組み合わせることで、ファンモーターに関連する、熱源、ヒートシンクおよびシステム全体の熱状態が計算される。
デジタルツインの仮想センサーを用いて、部品温度が、ファンや電気モーターの動作状態の関数として判断可能であり、動作状態として動作パラメータに固有のアルゴリズムに組み込まれる。
【0024】
仮想センサーを含むデジタルツインと動作パラメータに固有のアルゴリズムとの両方が、既存のマイクロプロセッサ上で実行されてもよく、これにより、一定量の知的マシンが電気モーターやファンに組み込まれる。
【0025】
前述の方法は、ファンの考えられる全ての動作パラメータに関連していてもよい。
本発明による方法は、それぞれのパラメータを直接測定できない場合に、常に有用であり、この知識を用いて、ファンの動作を、特に、電気モーターやファンの特定の場所や部品温度を、最適化可能である。
【0026】
次に、電気モーター、ファンまたはファンアセンブリには、潜在的な結露の形成位置が、いくつか存在する。
したがって、潜在的な結露の形成位置ごとに、上述の記載に従って露点温度を個別に計算または判断することをお勧めする。
【0027】
原則として、湿度測定法を使用して、露点温度を測定する。
しかし、スペースとコストの理由から、この測定は、不可能であることが多い。
【0028】
あるいは、露点温度を間接的に(すなわち、実蒸気圧から)判断することが有利であり、この方法では、温度依存性のある飽和蒸気圧と電気モーター、ファンまたはファングループの周囲空気湿度とが、蒸気圧の計算に組み込まれる。
低圧/高圧の用途では、露点温度を計算するために、圧力に関連する計算規則および/またはパラメータを考慮してもよい。
【0029】
計算に必要な電気モーター、ファンまたはファングループの周囲温度は、温度センサーを使用して、現場で直接測定してもよい。
電気モーター、ファンまたはファングループの周囲温度は、分散型の測定ユニットを介して判断され、計算ユニットに送信されることも考えられる。
電気モーター、ファンまたはファングループの周囲温度を(たとえば、計算モデルを使用して)間接的に判断することも考えられる。
特に重要なのは、結露の形成のリスクのある面を取り巻く気温の判断である。
【0030】
計算ユニットは、ECモーターのマイクロプロセッサである。
適切な装置(PLC、ゲートウェイ、PC、クラウドなど)を用いて、電気モーターの外部で計算を実行することも考えられる。
【0031】
周囲の空気湿度(部品、電気モーター、ファンまたはファングループを取り巻く空気の水分含有量)は、湿度センサーを用いて測定してもよい。
この湿度センサーは、オプションで、電気モーター、ファンまたはファングループに統合されているか、または、電気モーター、ファンまたはファングループの内側から外側へ誘導されている。
得られた値を、分散型の測定ユニットから計算ユニットへ送信してもよい。
【0032】
周囲温度を判断すると、関連パラメータとしての温度Tが得られる。
周囲の空気湿度を判断すると、関連パラメータとして相対空気湿度φ_relが得られる。
【0033】
露点温度は、次のようなステップで計算される。
【0034】
a 飽和蒸気圧SDDの計算
物質の飽和蒸気圧とは、気体の物理的状態が液体の物理的状態と平衡状態になる圧力である。
これは、温度に依存し、マグヌスの式に従って、大まかに計算される。
【0035】
上述の式は、-45℃から+60℃の温度範囲で用いられ、ECモーターの典型的な作業環境をカバーしている。
【0036】
b 実蒸気圧DDの計算
実蒸気圧は、空気中の絶対水分量の尺度である。
相対空気湿度φ_relは、飽和蒸気圧に対してどれだけ飽和または到達しているかを、パーセントで示している。
【0037】
c 露点温度τの計算
露点温度とは、実蒸気圧が(相対湿度が100%の)飽和蒸気圧になる温度である。
部品の表面温度が下がり、表面に接している空気が露点温度よりも低くなると、水蒸気含有量が過飽和になる。
その結果、過剰な水蒸気が、結露の形態で特定の部品の表面に現れる。
【0038】
そして、露点温度τは、次のように大まかに計算される。
【0039】
飽和蒸気圧の場合も同様であるが、これらは、近似計算であるため、他の文献の式を見ると、他の数値も含まれている。
しかし、それらの式が適用されるそれぞれの温度範囲では、同等の結果が得られる。
【0040】
低圧/高圧の用途で用いられ、圧力に関連する露点の変化が無視できない場合は、圧力に関連する計算規則やパラメータを組み込む必要がある。
周囲圧力がほぼ一定の場合は、周囲圧力を電気モーターのマイクロプロセッサに固定値として保存するか、圧力センサーを使用して周囲圧力を動的に判断する必要がある。
【0041】
重要な部品の重要な場所の温度を監視することが、本方法では、重要である。
この場合、重要な場所は、設置位置などの設置条件によって異なる。
部品温度は、熱モデルを用いて間接的に監視してもよい。
オプションで、他のモデルや計算規則と組み合わせて、表面温度を推定してもよい。
表面温度は、熱モデルを用いて間接的に判断してもよい。
これにより、電気モーターの温度やその他の物理的変数が記録される。
【0042】
相対湿度を判断する際には、電気モーターを取り巻く空気の相対湿度が、実際の測定場所の空気の相対湿度と等しくなるまでの、時間の経過を考慮した時間係数を使用してもよい。
この場合、たとえば、モーター速度などの影響要因を考慮に入れた、対応する計算モデルも考えられる。
【0043】
結露の形成を防止するため、電気モーター、特に、ファンまたはファングループの部品としての電気モーターの上または内の、結露を除去/除去するための本発明による方法は、以下の方法ステップを含む。
電気モーターの上または内で結露が形成されそうであること、および/または、結露が既に形成されていること、を検出するステップと、
受動的な対策や能動的な対策によって、結露の形成を防止し、かつ/または結露を除去する対策を開始するステップ。
【0044】
この結果、保護メカニズムが実行される。
この保護メカニズムには、電気モーターのローターを回転させることによる換気効果を用いて換気/通気をするなど、さまざまな対策が含まれてもよい。
あるいは、電気モーター(すなわちファン)を、静止状態から始動させるという簡単な対策も考えられる。
また、モーター動作時にモーター速度を調整することも考えられる。
他のモーター加熱作用も考えられ、それにより、熱に関連する局所的な電力損失が引き起こされるが、電気モーターの部品を狙って制御することで、電気モーターが加熱する。
さらに適切な対策として、能動的な加熱が挙げられる。
この場合、加熱が、電気モーターの全体または個々のモーター部品(すなわち、結露の形成のリスクがある場所)に対して、なされてもよい。
前述の対策の開始前または開始時に、警告メッセージが生成され、上位レベルのシステムに送信されると、特に有利である。
イベントメモリやシステムメモリに保存可能であると、さらに有利である。
このメモリには、苦情が発生した場合にアクセスしてもよい。
このメモリは、内部イベントメモリまたは外部イベントメモリとしてもよい。
生成されたデータが、例えば、クラウドを介して、分散型コンピュータまたは中央コンピュータとメモリとに送信されることも、考えられる。
【0045】
さらに、いくつかまたは多くの露点温度が、電気モーターやファンの全体の関連する場所または部品で判断される場合、すなわち、それぞれの場合の潜在的な結露の形成場所に基づいて判断される場合、特に有利である。
結露のリスクがある場所に応じて、さまざまな保護メカニズムから最適なメカニズムを選択してもよい。
【0046】
特別な実施形態では、蒸発速度が判断/計算され、これにより、保護メカニズムやそれぞれの対策の持続時間を、指定してもよい。
本発明による方法を用いる自動動作が、このような計画された対策に基づいて、実行可能である。
【0047】
そして、本発明の方法を改良するためのさまざまなオプションが存在する。
この目的のために、一方では、請求項1に関連する請求項を参照し、他方では、図面による本発明の実施形態の説明を参照されたい。
図面による本発明の実施形態と併せて、より好ましい実施形態も説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】モーターの概略断面図であり、電気モーターの動作中に、本発明による方法を使用可能である。
【
図2】本発明による方法のシーケンスのフローチャートを、個々の方法ステップと共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、ファンまたはファングループの駆動ユニットとして使用される、外部ローター設計の電気モーターを、断面図で示している。
このような電気モーターには精通していることを前提としているため、詳細な説明は、不要と判断する。
【0050】
外部ローター設計の電気モーターの場合、ステータ1がモーター軸2の周りに配置され、ローター3がステータ1の周りに配置されて、ローター3がステータ1の周りを回転することが、不可欠である。
【0051】
ステータ1は、側壁5と同様に、内部が複数の領域に分割可能なハウジング6の一部である、ベアリング管4上に配置されている。
【0052】
ローター3は、ローター3と共に回転する壁7に囲まれている。
これは、
図1に不図示のファンの羽根車を、適切な手段を用いて、回転可能に固定して取り付け可能であることを意味している。
【0053】
マイクロプロセッサ8が、ハウジング6の内側に設けられ、通信ライン9が、マイクロプロセッサ8からハウジング6の外側に向かって延びている。
【0054】
さらに、センサー10、具体的には、湿度センサーがハウジング6の内部に配置されている。
ハウジング6内に、不図示の温度センサーを設けることも考えられる。
【0055】
湿度センサー10を介して得られた測定データは、マイクロプロセッサ8に送信され、通信ライン9を介して外部の電子機器または評価ユニットに供給可能である。
さらに、外部の測定ユニットからの測定データが、(有線または無線の)通信ライン9を介して電気モーターに送信可能であり、これらの測定データが、マイクロプロセッサ8によって評価される。
外部の評価ユニットを使用して結露のリスクを判断する場合、外部の評価ユニットは、通信ライン9を介して保護メカニズムを開始する評価ユニットでもある。
測定データは、電気モーターへ送信され、これにより、例えば、外部での測定結果が電気モーターに供給される。
結露の検出や防止は、外部機器(ゲートウェイ、PLC、クラウドなど)などで行うことが考えられる。
【0056】
図2は、結露の形成を検出および防止するための本発明による方法のシーケンスを、フローチャートで示している。
【0057】
この場合では、監視対象の電気モーター、ファンまたはファングループ全体の周囲温度が、測定または判断される。
一般的には、デジタルツインを用いる熱モデルを利用してもよい。
【0058】
監視対象の電気モーター、ファン(または、ファングループ全体)の周囲空気湿度が、判断される。
次に、露点温度が、電気モーターの内または上の重要な領域や重要な部品で計算される。
【0059】
電気モーターまたはファンの個々の部品の表面温度が、計算または測定される。
部品温度や表面温度がほぼ露点温度であったり、露点温度よりも低かったりする場合、たとえば、イベントメモリへの入力を実行し、オプションの保護機能を開始してもよい。
そうでない場合、適切な保護機能をほぼ自動的に始動して、露点が下限を下回ることを防いでもよい。
【0060】
繰り返しを避けるために、その他の場合については、本方法の詳細な説明を参照されたい。
【0061】
本発明の他の有利な発展に関して、繰り返しを避けるために、本明細書および特許請求の範囲を参照されたい。
【0062】
最後に、本発明の実施形態は、特許請求された発明を説明することのみを意図しており、特許請求された発明は、この実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0063】
1 ・・・ステータ
2 ・・・モーター軸
3 ・・・ローター
4 ・・・ベアリング管
5 ・・・壁(ステータ)
6 ・・・ハウジング
7 ・・・壁(ローター)
8 ・・・マイクロプロセッサ
9 ・・・通信ライン
10 ・・・センサー、湿度センサー
【国際調査報告】