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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】マイクロフルイディクスチップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20220105BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20220105BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220105BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20220105BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20220105BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N35/08 E
G01N21/59 Z
G01N21/27 Z
G01N21/03 Z
G01N37/00 101
G01N1/00 101F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020572763
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 CN2019118001
(87)【国際公開番号】W WO2020103739
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】201811378532.3
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】507134301
【氏名又は名称】北京京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Xihuanzhonglu, BDA, Beijing, 100176, P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲瑩▼▲瑩▼
(72)【発明者】
【氏名】蔡 佩芝
(72)【発明者】
【氏名】古 ▲楽▼
(72)【発明者】
【氏名】▲パン▼ ▲鳳▼春
(72)【発明者】
【氏名】耿 越
(72)【発明者】
【氏名】肖 月磊
(72)【発明者】
【氏名】崔 皓辰
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 楠
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】姚 文▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲車▼ 春城
【テーマコード(参考)】
2G052
2G057
2G058
2G059
【Fターム(参考)】
2G052AA40
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052CA04
2G052CA08
2G052DA09
2G052DA23
2G052HC03
2G052HC04
2G052HC32
2G052HC42
2G052JA06
2G052JA07
2G052JA08
2G057AA01
2G057AB01
2G057AB06
2G057AC01
2G057BA10
2G057BB10
2G057DA02
2G057DA05
2G057DA06
2G057DA11
2G057DB10
2G057GA10
2G058EA14
2G058GA06
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB13
2G059DD04
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF09
2G059HH02
2G059JJ05
2G059JJ17
2G059JJ18
2G059JJ23
2G059KK04
2G059LL04
(57)【要約】
本開示は、対向配置された第1のベース基板及び第2のベース基板と、前記第1のベース基板と第2のベース基板との間に設けられ、印加された電圧に応じて、前記第1のベース基板と第2のベース基板との間で液滴が移動するのを制御する第1の電極及び第2の電極と、前記第1のベース基板において伝播される光線を導出し、当該光線を前記液滴に射出する光線導出アセンブリと、間隔を置いて配置され、液滴を透過した光線を検出アセンブリに伝送するための光透過領域を有する遮光アセンブリと、前記第2のベース基板に設けられ、受信した、光透過領域から射出した前記液滴を透過した光線の強度に基づいて、前記液滴の性能を取得する検出アセンブリと、を備えるマイクロフルイディクスチップを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1のベース基板及び第2のベース基板と、
前記第1のベース基板と第2のベース基板との間に設けられ、印加された電圧に応じて、前記第1のベース基板と第2のベース基板との間で液滴が移動するのを制御する第1の電極及び第2の電極と、
前記第1のベース基板において伝播される光線を導出し、当該光線を前記液滴に射出する光線導出アセンブリと、
間隔を置いて配置され、液滴を透過した光線を検出アセンブリに伝送するための光透過領域を有する遮光アセンブリと、
前記第2のベース基板に設けられ、受信した、光透過領域から射出した前記液滴を透過した光線の強度に基づいて、前記液滴の性能を取得する検出アセンブリと、を備える
マイクロフルイディクスチップ。
【請求項2】
前記第1のベース基板は光導波路層を備え、前記光導波路層において光線が全反射的に伝播され、
前記光線導出アセンブリは、前記光導波路層の前記第1の電極に近い側に設けられ、かつ前記光導波路層において伝送される光の一部を抽出し、抽出された光を前記液滴上にコリメートに導出するように構成された格子構造を備える
請求項1に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項3】
前記格子構造は、前記光導波路層において伝送される複色光から単色光を抽出し、抽出された単色光を前記液滴上にコリメートに導出するように構成される
請求項2に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項4】
前記光導波路層において伝送される光は単色光である
請求項2に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項5】
前記第1のベース基板上への前記格子構造の正射影と、前記第2のベース基板上への前記遮光アセンブリの光透過領域の正射影は、少なくとも部分的に重なっている
請求項2に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項6】
前記検出アセンブリはさらに、前記液滴を透過した自然光の光強度を検出し、前記液滴の所在位置を判断する
請求項2に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項7】
前記光線導出アセンブリは、前記格子構造の前記光導波路層から背き離れた側に設けられた光線制御層をさらに備え、前記光線制御層は、前記検出アセンブリによって検出された液滴の所在位置に基づいて、前記格子構造が光線を導出する位置を制御し、かつ、コリメートされずに伝送される光をフィルタ・アウトする
請求項2に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項8】
前記光線制御層は、対向配置された第3の電極層及び第4の電極層と、第3の電極層と第4の電極層との間に設けられた第1のエレクトロクロミック層とを備え、
前記第3の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第3の電極を含み、前記第4の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第4の電極を含み、前記第1のエレクトロクロミック層上で前記第3の電極と前記第4の電極の正射影が重なっており、
前記第3の電極と前記第4の電極は、印加された電圧に応じて前記第1のエレクトロクロミック層の状態を制御することにより、前記格子構造が光線を導出する位置を制御し、かつ、コリメートされずに伝送される光をフィルタ・アウトする
請求項7に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項9】
前記光導波路層と格子構造は一体的に形成されている
請求項2に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項10】
前記遮光アセンブリは、対向配置された第5の電極層及び第6の電極層と、前記第5の電極層と前記第6の電極層との間に設けられた第2のエレクトロクロミック層とを備え、
前記第5の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第5の電極を含み、前記第6の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第5の電極を含み、前記第2のエレクトロクロミック層上で前記第5の電極と前記第6の電極の正射影が重なっており、
前記第5の電極と第6の電極は、印加された電圧に応じて第2のエレクトロクロミック層の状態を制御することにより、前記遮光アセンブリにおける光透過領域の形成位置を制御する
請求項1に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項11】
前記遮光アセンブリと前記検出アセンブリは、前記第2の電極の前記第2のベース基板に近い側にこの順で設けられている
請求項1に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項12】
前記検出アセンブリは、アレイ状に配置された複数の検出ユニットを備える
請求項1に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項13】
前記検出ユニットは光学センサを含む
請求項12に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項14】
対向配置された第1の誘電体層及び第2の誘電体層と、対向配置された第1の疎水層及び第2の疎水層とをさらに備え、
前記第1の誘電体層及び第2の誘電体層は前記第1の電極と第2の電極との間に設けられており、
前記第1の疎水層及び第2の疎水層は前記第1の誘電体層と第2の誘電体層との間に設けられている
請求項1に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項15】
前記光線制御層は、前記第1の電極と前記光導波路層との間に設けられている
請求項7に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項16】
前記光線制御層は、前記第1の電極の前記光導波路層から離れた側に設けられている
請求項7に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【請求項17】
前記第1のベース基板は光導波路層を備え、前記光導波路層において光線が全反射的に伝播され、
前記光線導出アセンブリは複数の格子構造を備え、前記格子構造のそれぞれは前記光導波路層の前記第1の電極に近い側に設けられ、かつ前記光導波路層において伝送される光の一部を抽出し、抽出された光を前記液滴上にコリメートに導出するように構成され、
前記光導波路層において伝送される光は複色光であり、前記複数の格子構造が前記光導波路から抽出した光の色は互いに異なる
請求項1に記載のマイクロフルイディクスチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2018年11月19日に提出された中国特許出願No.201811378532.3の優先権を主張し、当該出願で公開されているすべての内容を参照により援用する。
【0002】
本開示は、マイクロフルイディクスチップの技術分野に属し、具体的にマイクロフルイディクスチップに関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、デジタルマイクロフルイディクスチップ技術は、その体積が小さく、消費電力が低く、コストが低く、必要なサンプル及び試薬の量が少なく、液滴単独、精密操作が可能であり、検出時間が短く、感度が高く、他のデバイスとの集積が容易である等の利点により、生物、化学、医学等の分野に広く用いられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本開示は、
対向配置された第1のベース基板及び第2のベース基板と、
前記第1のベース基板と第2のベース基板との間に設けられ、印加された電圧に応じて、前記第1のベース基板と第2のベース基板との間で液滴が移動するのを制御する第1の電極及び第2の電極と、
前記第1のベース基板において伝播される光線を導出し、当該光線を前記液滴に射出する光線導出アセンブリと、
間隔を置いて配置され、液滴を透過した光線を検出アセンブリに伝送するための光透過領域を有する遮光アセンブリと、
前記第2のベース基板に設けられ、受信した、光透過領域から射出した前記液滴を透過した光線の強度に基づいて、前記液滴の性能を取得する検出アセンブリと、を備える
マイクロフルイディクスチップを提供する。
【0005】
本開示の実施例によれば、前記第1のベース基板は光導波路層を備え、前記光導波路層において光線が全反射的に伝播され、
前記光線導出アセンブリは、前記光導波路層の前記第1の電極に近い側に設けられ、かつ前記光導波路層において伝送される光の一部を抽出し、抽出された光を前記液滴上にコリメートに導出するように構成された格子構造を備える。
【0006】
本開示の実施例によれば、前記格子構造は、前記光導波路層において伝送される複色光から単色光を抽出し、抽出された単色光を前記液滴上にコリメートに導出するように構成される。
【0007】
本開示の実施例によれば、前記光導波路層において伝送される光は単色光である。
【0008】
本開示の実施例によれば、前記第1のベース基板上への前記格子構造の正射影と、前記第2のベース基板上への前記遮光アセンブリの光透過領域の正射影は、少なくとも部分的に重なっている。
【0009】
本開示の実施例によれば、前記検出アセンブリはさらに、前記液滴を透過した自然光の光強度を検出し、前記液滴の所在位置を判断する。
【0010】
本開示の実施例によれば、前記光線導出アセンブリは、前記格子構造の前記光導波路層から背き離れた側に設けられた光線制御層をさらに備え、前記光線制御層は、前記検出アセンブリによって検出された液滴の所在位置に基づいて、前記格子構造が光線を導出する位置を制御し、かつ、コリメートされずに伝送される光をフィルタ・アウトする。
【0011】
本開示の実施例によれば、前記光線制御層は、対向配置された第3の電極層及び第4の電極層と、第3の電極層と第4の電極層との間に設けられた第1のエレクトロクロミック層とを備え、
【0012】
前記第3の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第3の電極を含み、前記第4の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第4の電極を含み、前記第1のエレクトロクロミック層上で前記第3の電極と前記第4の電極の正射影が重なっており、
前記第3の電極と前記第4の電極は、印加された電圧に応じて前記第1のエレクトロクロミック層の状態を制御することにより、前記格子構造が光線を導出する位置を制御し、かつ、コリメートされずに伝送される光をフィルタ・アウトする。
【0013】
本開示の実施例によれば、前記光導波路層と格子構造は一体的に形成されている。
【0014】
本開示の実施例によれば、前記遮光アセンブリは、対向配置された第5の電極層及び第6の電極層と、前記第5の電極層と前記第6の電極層との間に設けられた第2のエレクトロクロミック層とを備え、
【0015】
前記第5の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第5の電極を含み、前記第6の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第5の電極を含み、前記第2のエレクトロクロミック層上で前記第5の電極と前記第6の電極の正射影が重なっており、
前記第5の電極と第6の電極は、印加された電圧に応じて第2のエレクトロクロミック層の状態を制御することにより、前記遮光アセンブリにおける光透過領域の形成位置を制御する。
【0016】
本開示の実施例によれば、前記遮光アセンブリと前記検出アセンブリは、前記第2の電極の前記第2のベース基板に近い側にこの順で設けられている。
【0017】
本開示の実施例によれば、前記検出アセンブリは、アレイ状に配置された複数の検出ユニットを備える。
【0018】
本開示の実施例によれば、前記検出ユニットは光学センサを含む。
【0019】
本開示の実施例によれば、前記マイクロフルイディクスチップは、対向配置された第1の誘電体層及び第2の誘電体層と、対向配置された第1の疎水層及び第2の疎水層とをさらに備え、
前記第1の誘電体層及び第2の誘電体層は前記第1の電極と第2の電極との間に設けられており、
前記第1の疎水層及び第2の疎水層は前記第1の誘電体層と第2の誘電体層との間に設けられている。
【0020】
本開示の実施例によれば、前記光線制御層は、前記第1の電極と前記光導波路層との間に設けられている。
【0021】
本開示の実施例によれば、前記光線制御層は、前記第1の電極の前記光導波路層から離れた側に設けられている。
【0022】
本開示の実施例によれば、前記第1のベース基板は光導波路層を備え、前記光導波路層において光線が全反射的に伝播され、
前記光線導出アセンブリは複数の格子構造を備え、前記格子構造のそれぞれは前記光導波路層の前記第1の電極に近い側に設けられ、かつ前記光導波路層において伝送される光の一部を抽出し、抽出された光を前記液滴上にコリメートに導出するように構成され、
前記光導波路層において伝送される光は複色光であり、前記複数の格子構造が前記光導波路から抽出した光の色は互いに異なる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本開示の実施例によるマイクロフルイディクスチップの構造の概略図である。
図2図2は、本開示の実施例による光線制御層の構造の概略図である。
図3図3は、本開示の実施例によるマイクロフルイディクスチップにおける第1の電極及び第2の電極が液滴の動きを制御することを示す概略図である。
図4図4は、本開示の実施例によるマイクロフルイディクスチップの概略図である。
図5図5は、本開示の実施例による、ある生体サンプルの濃度パラメータCと吸光度パラメータAの標準曲線図である。
図6図6は、本開示の実施例による光線制御層と格子構造のレイアウトの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
当業者が本開示の技術案をよりよく理解できるように、以下では図面及び具体的な実施形態を組み合わせて本開示についてさらに詳細に説明する。
【0025】
特に定義されていない限り、本開示で使用される技術用語又は科学用語は、本開示が属する分野における通常の技能を有する者によって理解される通常の意味である。本開示で使用される「第1の」、「第2の」及び類似の単語は、いかなる順序、数、又は重要性を示すものでもなく、異なる構成部分を区別するために使用されるものであるにすぎない。「備える」などの類似の単語は、当該単語の前に存在する要素又は物品が、当該単語の後に列挙される要素又は物品及びその均等物を包含することを意味し、他の要素又は物品を排除するものではない。「上」、「下」、「左」、「右」などは、相対的な位置関係を示すものであり、記載された対象の絶対的な位置が変化する場合、当該相対的な位置関係もそれに応じて変化する可能性がある。
【0026】
デジタルマイクロフルイディクスチップに基づいて、生体サンプルの濃度分析に用いられるマイクロトータル分析システムを構築することができる。マイクロトータル分析システムは、プラットフォームとしてのデジタルマイクロフルイディクスチップと、当該デジタルマイクロフルイディクスチップの周囲に構築された生体サンプルの濃度分析用の光学検出システムとを備え得る。なお、光学検出システムは、光線を校正する光学校正デバイス、光強度値を検出する検出器、及び電子学制御デバイス等の複雑な補助設備を含み、これら補助設備がデジタルマイクロフルイディクスチップの周囲に設けられているため、マイクロトータル分析システム全体は体積が非常に大きく、消費電力及びコストも高い。
【0027】
図1に示すように、本実施例は、対向配置された第1のベース基板1及び第2のベース基板2と、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間に設けられた第1の電極3及び第2の電極4と、光線導出アセンブリと、遮光アセンブリ12と、検出アセンブリとを備えるマイクロフルイディクスチップを提供する。第1の電極3と第2の電極4は、両者に印加された電圧に応じて、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間で液滴が移動するのを制御する。光線導出アセンブリは、第1のベース基板1において伝播される光線を導出し、液滴上に射出する。遮光アセンブリ12は、液滴を透過した光線を検出アセンブリに伝送するための光透過領域を有し、検出アセンブリは、第2のベース基板2に設けられ、光透過領域から射出した液滴を透過した光線の強度を検出し、検出された強度に基づいて液滴の性能を取得する。
【0028】
本開示の実施例によれば、液滴は、生体サンプルの液滴、例えば血液であってもよい。液滴の性能としては、生体サンプルの濃度や吸光度などが挙げられる。本実施例では、検出アセンブリは液滴を透過した光線の強度(例えば、液滴の吸光度)を検出することにより、液滴の濃度を検出することを例として説明する。
【0029】
本開示の実施例によれば、マイクロフルイディクスチップを用いて液滴を検出するときに、第1の電極3及び第2の電極4は、両者に印加された電圧に応じて、マイクロフルイディクスチップの検出領域(即ち、図3に示す領域b)に到達するまで、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間で液滴が移動するのを制御する。実施例において光線導出アセンブリは、第1のベース基板1において伝播される光線を導出し、導出された光線を液滴に射出することにより、液滴を透過した光線が遮光アセンブリ12の光透過領域を通過して検出アセンブリに照射されるようにし、検出アセンブリが受信した、液滴を透過した光線の強度を検出して、当該液滴の濃度を取得するようにしてもよい。
【0030】
ここから分かるように、本実施例では、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間に光線導出アセンブリ、遮光アセンブリ12および検出アセンブリを集積するという方式で、液滴濃度の検出に必要な光線導出システムおよび検出システムを共に本実施例のマイクロフルイディクスチップ内に集積することにより、液滴濃度を検出するための検出システムの体積を減少させ、同時に、コンパクトな構造は、検出アセンブリと、液滴を透過した光線との間の距離をより短くし、光信号の信号対雑音比を向上させ、光信号検出限界を低下させる。また、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間の液滴の移動は、第1の電極3及び第2の電極4に印加された電圧によるものであるため、シリンジポンプ、パイプラインなどの複雑な外部接続の流体駆動制御装置が不要となり、マイクロフルイディクスチップの集積度が向上し、マイクロフルイディクスチップの操作難易度が低減される。
【0031】
図1に示すように、本実施例は、対向配置された第1のベース基板1及び第2のベース基板2と、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間に設けられた第1の電極3及び第2の電極4と、光線導出アセンブリと、遮光アセンブリ12と、検出アセンブリとを備えるマイクロフルイディクスチップを提供する。第1の電極3と第2の電極4は、両者に印加された電圧に応じて、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間で液滴が移動するのを制御する。光線導出アセンブリは格子構造15を含む。実施例において、第1のベース基板1は、光線を伝播する光導波路層を含む。実施例において、光源14により放出された光は光導波路層において全反射する。実施例において、第1のベース基板1は光導波路として用いることができる。格子構造15は、光導波路層の第1の電極3に近い側に設けられ、光導波路層において全反射方式により伝播された光線を導出する。実施例において、第1のベース基板1には開口部が設けられてもよく、格子構造15が開口部に設けられる。遮光アセンブリ12は、液滴を透過した光線を検出アセンブリに伝送するための光透過領域を有し、検出アセンブリは、第2のベース基板2に設けられ、受信した、光透過領域から射出した液滴を透過した光線の強度に基づいて、液滴の性能を取得する。実施例において、第1のベース基板1上への格子構造15の正射影と、第2のベース基板2上への遮光アセンブリ12の光透過領域の正射影は、少なくとも部分的に重なっている。例えば、第1のベース基板1への格子構造15の正射影と、第2のベース基板2への遮光アセンブリ12の光透過領域の正射影は、完全に重なっている。また例えば、第1のベース基板1への格子構造の正射影は、第2のベース基板2への遮光アセンブリ12の光透過領域の正射影によって覆われている。当該第1の電極3及び第2の電極4の材料は、インジウムスズ酸化物、モリブデン、アルミニウム及び銅のいずれか1つを含む。ただし、第1の電極3及び第2の電極4の材料は、前述した材料に限定されず、ここでは限定しない。
【0032】
実施例において、光源14により放出された光が白色光(即ち、複色光)である場合、格子構造15は、白色光から単色光を抽出し、当該単色光を検出待ち液滴に向けてコリメートに射出することができる。
【0033】
格子方程式は、式(a+b)(sinφ±sinθ)=kλで表すことができる。ここで、aはスリット幅を表し、bはスリットピッチを表し、a+bは格子定数と呼ばれる。φは回折角でありθは光の入射方向と格子面の法線との間の角度である。kは明縞スペクトル級数(k=0、±1、±2……。ここでは、スペクトル級数が1である場合を考慮する)であり、λは波長である。したがって、異なる波長の光は異なる回折角φを有し、格子構造は分光の目的を達成することができる。
【0034】
実施例において、特定の波長を有する光(例えば赤色光)を特定の回折角(例えば0°)で格子構造15から射出するためには、格子構造の格子定数及び光の入射方向と格子面の法線との間の角度(即ちθ)を調整することにより実現できる。したがって、格子定数及びθを調整することにより、格子構造15で分光された単色光を検出待ち液滴に向けてコリメートに射出する。
【0035】
実施例において、光源14により放出された光が単色光である場合、格子構造15は当該単色光を検出待ち液滴に向けてコリメートに射出することができる。実施例において、単色光が格子を通過した後の回折角φが0°となるように、格子方程式(a+b)(sinφ±sinθ)=kλと単色光の波長に基づいて、格子定数及びθを調整することができる。したがって、当該単色光を液滴に向けてコリメートに射出することができる。
【0036】
実施例において、光線導出アセンブリは光線制御層をさらに含む。光線制御層は、格子構造15の光導波路層から背き離れた側に設けられ、検出アセンブリによって検出された液滴の位置に基づいて、格子構造15が光線を導出する位置を制御する。
【0037】
実施例において、図2に示すように、光線制御層は、対向配置された第3の電極層111及び第4の電極層113と、第3の電極層と第4の電極層との間に設けられた第1のエレクトロクロミック層112とを備え、第3の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第3の電極を含み、第4の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第4の電極を含み、第3の電極及び第4の電極は、印加された電圧に応じて第1のエレクトロクロミック層の状態を制御することにより、格子構造15が光線を導出する位置を制御する。第1のエレクトロクロミック層112上で第3の電極と第4の電極の正射影が重なっている(例えば、完全に重なっている)。
【0038】
実施例において、第1のエレクトロクロミック層の状態は、遮光状態と透光状態とを含む。第3の電極と第4の電極に異なる電圧を印加すると、第1のエレクトロクロミック層は透光状態にある。第3の電極と第4の電極に電圧を印加しないかまたは同一の電圧を印加すると、第1のエレクトロクロミック層は遮光状態にある。ここでは、第1のエレクトロクロミック層が遮光状態にあるとき、自然光及び格子構造15が光導波路層から導出した光線の両方は、当該第1のエレクトロクロミック層を通して液滴の表面に照射することができず、第1のエレクトロクロミック層が透光状態にあるとき、自然光及び格子構造15が光導波路層から導出した光線は、第1のエレクトロクロミック層における透光部分(即ち、透明な第3の電極及び第4の電極に対応する部分)と、透明な第3の電極及び第4の電極とを通して液滴の表面に照射することができるということが容易に理解できる。
【0039】
また、光源14から放出される光が白色光である場合、光線制御層はさらに、格子構造15によって分光された他の色の光(例えば、赤色光以外の色の光)をフィルタ・アウトし、コリメートされた単色光(例えば、赤色光)のみを検出待ち液滴に透過することができる(図6に示す通り)。即ち、光線制御層は、コリメートされずに伝送される光をフィルタ・アウトすることができる。
【0040】
実施例において、光線制御層は、スペクトル級数が1である(k=1)以外の他のスペクトル級数の光をフィルタ・アウトすることができる。
【0041】
実施例において、光線制御層は第1の電極3と格子構造15との間に設けられてもよい。あるいは、光線制御層は、例えば図6に示すように、第1の電極3の第1のベース基板1から離れた側に設けられてもよい。
【0042】
本実施例の遮光アセンブリ12は、対向配置された第5の電極層及び第6の電極層と、第5の電極層と第6の電極層との間に設けられた第2のエレクトロクロミック層とを備え、第5の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第5の電極を含み、第6の電極層は、間隔を置いて配置された複数の透明な第6の電極を含み、第5の電極及び第6の電極は、印加された電圧に応じて第2のエレクトロクロミック層の状態を制御することにより、遮光アセンブリ12における光透過領域の形成位置を制御する。この光透過領域は光透過スリットに相当し、液滴を透過する光線が当該光透過スリットを介して検出アセンブリに照射されると理解される。この場合、光透過スリットは開口が小さいため、液滴内で多重反射、屈折した迷光をフィルタ・アウトでき、光信号の信号対雑音比を向上させ、光信号検出限界を低下させることができる。
【0043】
実施例において、遮光アセンブリ12は、図2に示すように、光線制御層と同一の構造を有してもよい。第2のエレクトロクロミック層の状態は前述の第1のエレクトロクロミック層の状態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、同一の液滴に対して、格子構造15は、光導波路層から導出された光線を当該液滴のみに照射し、当該液滴を透過した光線を検出アセンブリの一部のみに照射することにより、検出アセンブリの当該一部に検出作業を行わせ、本実施例のマイクロフルイディクスチップの検出精度を向上させるために、当該液滴に対応する第1のエレクトロクロミック層の透光状態にある位置と、第2のエレクトロクロミック層の透光状態にある位置は1対1で対応しなければならない。
【0044】
マイクロフルイディクスチップの製造工程を簡略化するために、光導波路層と格子構造15は一体的に形成されている。具体的には、本実施例の格子構造15は、ナノインプリント技術又はレーザー直描技術を用いて、光導波路層の第1の電極3に近い側に複数の凸条を形成することによって得ることができる。当然ながら、他の技術を用いて光導波路層に格子構造15を形成してもよく、ここでは限定しない。実施例において、格子構造15はナノスケールの格子構造である。例えば、格子構造15のスリット幅及びスリットピッチのいずれもナノスケールである。
【0045】
実施例において、検出アセンブリは、アレイ状に配置された複数の検出ユニット11を備える。当該検出ユニット11は光学センサであってもよく、当該光学センサは受信した光信号を相応の電気信号に変換することができ、その際、電気信号を分析することにより、当該液滴の濃度を得ることができる。当然ながら、検出ユニット11は光学センサに限定されず、CCD、CMOSなどであってもよく、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
実施例において、遮光アセンブリ12と検出アセンブリは、第2の電極4の第2のベース基板2に近い側にこの順で設けられている。
【0047】
光導波路と第2のベース基板2との間の液滴の無損失の流れを確保するために、本実施例のマイクロフルイディクスチップは、対向配置された第1の誘電体層5及び第2の誘電体層6と、対向配置された第1の疎水層7及び第2の疎水層8とをさらに備え、第1の誘電体層5及び第2の誘電体層6は第1の電極3と第2の電極4との間に設けられており、第1の疎水層7及び第2の疎水層8は第1の誘電体層5と第2の誘電体層6との間に設けられている。ここで、第1の疎水層7と第2の疎水層8との間にフレームシーラント13を設けてマイクロフルイディクスチップを密封することができる。
【0048】
なお、図1に示すように、第1の疎水層7と第2の疎水層8との間の距離が大きいと、液滴が両者の間で球状を維持することができ、このように、格子構造の開口位置から射出した光線がこの球状の液滴に照射されると、液滴はそれ自体の曲率を利用して光線のセルフアライメント、セルフフォーカシングを実現することができ、光源の利用率が向上する。
【0049】
実施例において、第1の誘電体層5及び第2の誘電体層6の材料は、窒化シリコン、二酸化シリコン、ネガ型フォトレジスト、樹脂のいずれか1つを含む。第1の疎水層7及び第2の疎水層8の材料は、テフロン(登録商標)又はパリレンを含む。
【0050】
本実施例によるマイクロフルイディクスチップの動作原理を明瞭に理解できるように、以下では、当該マイクロフルイディクスチップを用いて液滴濃度を検出するステップについて具体的に説明する。
【0051】
ステップS1:マイクロフルイディクスチップの検出領域(即ち図4に示す領域b)に液滴を駆動する。
【0052】
実施例において、第1の電極3及び第2の電極4は、印加された電圧に応じて、第1のベース基板1と第2のベース基板2との間に液滴が移動するのを制御し、当該液滴がマイクロフルイディクスチップの検出領域(即ち図4に示す領域b)に到達するようにさせる。
【0053】
図3に示すように、本実施例において、第1の電極3が面電極であり、第2の電極4がアレイ電極であり、かつ、当該第1の電極3が接地電極であり、第2の電極4が駆動電極である場合を例として、液滴の動きを制御する原理について説明する。実施例において、本実施例における液滴が第1の疎水層7と第2の疎水層8との間に置かれているため、当該液滴の右側に位置し、かつ当該液滴に隣接する第2の電極4(即ち図3に示す第2の電極d)に正電圧を印加すると、印加された電圧は液滴の右側の上下の角に等量の負電荷を誘起させることができる。このとき、液滴は上下面で同性電荷を有するため、同性電荷間の反発力が増加し、液滴は広がりやすくなり、固液界面の表面張力が減少し、液滴は疎水状態から親水状態になり、このとき当該液滴は右方向に移動できる。
【0054】
ステップS2:検出領域における液滴の所在位置を確定する。
【0055】
なお、検出アセンブリは、液滴を透過した自然光を検出することにより液滴の所在位置を確定することができるため、このステップにおいて、第3の電極層における全ての第3の電極及び第4の電極層における全ての第4の電極に電圧を印加することにより、両者の間に位置する第1のエレクトロクロミック層が透光状態にあるのを制御して、自然光が第3の電極、第1のエレクトロクロミック層における透光部分及び第4の電極を透過して液滴表面に照射されることを容易にする。それに対応して、検出アセンブリが検出領域に透過した自然光を検出して液滴の所在位置を確定できるようにするために、第5の電極層における全ての第5の電極及び第6の電極層における全ての第6の電極に電圧を印加することにより、両者の間に位置する第2のエレクトロクロミック層が透光状態にあるのを制御して、自然光が当該第2のエレクトロクロミック層を透過して検出アセンブリに照射されることを容易にする。
【0056】
ステップS3:液滴濃度を検出する。
【0057】
実施例において、このステップは以下のステップを含む。
【0058】
ステップS30:ステップS2の終了後、第3の電極層における全ての第3の電極、第4の電極層における全ての第4の電極、第5の電極層における全ての第5の電極及び第6の電極層における全ての第6の電極への電圧の印加を停止して、ステップS2で透光状態にある第1のエレクトロクロミック層と第2のエレクトロクロミック層を遮光状態に変換する。
【0059】
ステップS31:検出アセンブリが検出した液滴の所在位置に基づいて、当該液滴の位置に対応する第3の電極及び第4の電極に電圧を印加して、第1のエレクトロクロミック層における、当該液滴の位置に対応する部分を遮光状態から透光状態に変換するのを制御する。ここで、当該第1のエレクトロクロミック層における、透光状態にある位置は、格子構造15が光線を導出する位置である。
【0060】
ステップS32:検出アセンブリが検出した液滴の所在位置に基づいて、当該液滴の位置に対応する第5の電極及び第6の電極に電圧を印加して、第2のエレクトロクロミック層における、当該液滴の位置に対応する部分を遮光状態から透光状態に変換するのを制御する。ここで、当該第2のエレクトロクロミック層における、透光状態にある位置は、即ち遮光アセンブリ12の光透過領域であり、当該光透過領域の位置と、ステップS31で得られた格子構造15の開口位置は1対1で対応している。
【0061】
なお、本実施例においては、ステップS32を先に実行してからステップS31を実行してもよく、これに限定されない。
【0062】
ステップS33:白色光光源14を用いて光導波路層に光線を伝送し、このとき、光導波路層において伝播される白色光がステップS31で得られた格子構造15を通過することにより、コリメートされた単色光が得られる。液滴は球状であるため、凸レンズと見なすことができ、コリメートされた単色光に対し集光作用を有する。液滴を通過した単色光は、液滴を透過してステップS32で得られた遮光アセンブリ12の光透過領域に到達し、検出ユニット11に照射される。このとき、当該検出ユニット11は光センサであるため、受信した光信号の強度を電気信号に変換して表すことができ、その後にランバートビールの法則A=κCL=lgI/Iを用いて当該液滴の濃度を得ることを容易にする。ここで、Aは液滴の吸光度、κは比例定数、Cは液滴の濃度、Lは液滴の厚み、Iは入射光強度、Iは透射光強度、即ち本実施例の光学センサにより検出された液滴を透過した単色光の強度である。
【0063】
図1に示すように、本実施例において、液滴が1つの参照液滴9と1つのサンプル液滴10とを含むことを例として説明する。ここで、参照液滴9とサンプル液滴10は同一の生体サンプルの液滴であり、参照液滴9の濃度は既知であり、サンプル液滴10は本実施例の濃度検出待ちの液滴である。
【0064】
具体的には、ランバートビールの法則により、上記サンプル液滴10の濃度と参照液滴9の濃度との関係は
【0065】
【数1】
【0066】
であり、ここで、Creferenceは参照液滴9の濃度であり、Csampleはサンプル液滴10の濃度であり、入射光強度Iは本実施例の単色光が参照液滴9又はサンプル液滴10の表面に入射する強度であり、本実施例においては液滴に入射する光が単色光であるため、参照液滴9とサンプル液滴10はIが同一であり、Ireferenceは参照液滴9の透射光強度であり、即ち本実施例の光学センサによって検出された、単色光と参照液滴9とが化学的、物理的反応した後に当該参照液滴9を透過する光線の強度であり、Isampleはサンプル液滴10の透射光強度である。ここから分かるように、本実施例の光学センサによって検出されたIreference及びIsampleにより、サンプル液滴10の濃度パラメータCを得ることができる。また、ランバートビールの法則に基づいて液滴の吸光度パラメータAを得ることもできる。
【0067】
さらに、異なる濃度の液滴をそれぞれ測定して、各濃度の液滴の吸光度パラメータを得ることにより、図5に示す濃度パラメータCと吸光度パラメータAの標準曲線図を得ることができる。したがって、サンプル濃度C(即ち前述のCsample)が既知であるという前提の下で、このような濃度でのサンプル液滴10の吸光度パラメータAが得られ、同様の理由から、サンプル液滴10の吸光度パラメータAが既知である場合に、当該液滴の濃度が得られる。
【0068】
これにより、液滴の濃度の検出が完了する。
【0069】
以上のように、本実施例において、光線を変調するための光学導出アセンブリ、及び液滴濃度を検出するための検出アセンブリのいずれもマイクロフルイディクスチップ内に集積され、従来技術において液滴濃度を検出するための検出装置がマイクロフルイディクスチップの周囲に配置されることによって招く、検出システム全体の体積が大き過ぎるという問題を解決し、これにより本実施例のマイクロフルイディクスチップの操作がより柔軟になり、より広く応用される。また、本実施例における格子構造15が光線を導出する位置、及び遮光アセンブリ12の光透過領域は、液滴の所在位置に応じて動的に調整可能であり、格子構造15は、光導波路層から導出された光線を当該液滴のみに照射し、当該液滴を透過した光線もこれに対応する検出ユニット11のみに照射して、当該検出ユニット11に検出作業を行わせ、本実施例のマイクロフルイディクスチップの検出精度を向上させる。
【0070】
実施例において、図4に示すように、本実施例のマイクロフルイディクスチップは、異なる濃度を有する検出待ち液滴を得るために、液滴に対して分裂、融合等の処理を行う前処理領域(即ち図4に示す領域a)と、液滴の性能を検出する検出領域(即ち図4に示す領域b)と、検出後の液滴に対して回収処理を行う廃液領域(即ち図4に示す領域c)という3つの領域を有している。ここで、図4の検出領域における3種類の形状は、液滴そのものの形状を表すものではなく、液滴の3種類をそれぞれ表すものである。同一列に位置し、同一の形状で表された複数の液滴は、それぞれ異なる濃度の同一物質の液滴を表す。ここから分かるように、図4におけるマイクロフルイディクスチップは、少なくとも3つの異なる種類の液滴を検出するために用いられ、それぞれの液滴は少なくとも4つの異なる濃度値を有する。
【0071】
このように、本実施例のマイクロフルイディクスチップを用いて、図4における三角形で表された液滴の濃度を検出する場合、この位置の格子構造は、白色光光源14から射出された光線を複数の異なる波長の単色光に分光する。格子構造のパラメータ(例えば格子定数)を調整することにより、特定の波長の単色光(例えば赤色光)を垂直に光導波路層から射出することができ、光線制御層は、垂直に射出された赤色光を検出待ち液滴に照射して他の色の光をフィルタ・アウトし、この三角形で表された液滴の濃度を検出することができる。正方形で表された液滴の濃度の検出も同様に行うことができる。実施例において、正方形が配置される位置における格子構造のパラメータ(例えば、格子定数)は、特定の波長の単色光(例えば、緑色光)を光導波路層から垂直に射出するように調整することができ、光線制御層は、垂直に射出された緑色光を検出待ち液滴に照射して他の色の光をフィルタ・アウトし、この正方形で表された液滴の濃度を検出することができる。同時に、本実施例のマイクロフルイディクスチップは、上記の三角形や正方形で表された液滴を検出するステップに従って、他の形状で表された液滴を検出し、本実施例によるマイクロフルイディクスチップの検出効率を向上させることができる。
【0072】
以上のように、異なる種類の液滴は、異なる波長の光に対する透射の度合いが異なるため、異なる種類の液滴に対し適切な波長の光を選択することができる。実施例において、パラメータの異なる格子構造を第1のベース基板内に設けることができ、これにより、本実施例によるマイクロフルイディクスチップは、複数の異なる種類の液滴を同時に検出するという目的を実現することができ、本実施例によるマイクロフルイディクスチップの検出効率を向上させることができる。
【0073】
以上の実施形態は、本開示の原理を説明するために用いた例示的な実施形態にすぎず、本開示はそれらに限定されないと理解されたい。当業者にとって、本開示の精神と実質的な状況を逸脱しない範囲で種々の変形と改良が可能であり、それらの変形と改良も本開示の請求範囲と見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】