(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】成形体への圧縮を目的とした粉末材料用添加剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/14 20060101AFI20220105BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220105BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20220105BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220105BHJP
C07C 69/33 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K47/14
A61K9/20
A23L29/10
A23L5/00 A
C07C69/33
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517957
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(85)【翻訳文提出日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 DE2019000115
(87)【国際公開番号】W WO2020083412
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】PCT/DE2018/000302
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】PCT/DE2018/000363
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521076786
【氏名又は名称】イーオーイー オレオ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロックマン、ダーク
(72)【発明者】
【氏名】レイヤー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】サラール ベーザディ、シャラレー
(72)【発明者】
【氏名】シュテアー、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ジマー、アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4B035
4C076
4H006
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE01
4B035LG09
4B035LG26
4B035LP21
4B035LP36
4B035LT11
4C076AA36
4C076BB01
4C076DD46
4C076FF01
4H006AA01
4H006AB61
4H006BN10
(57)【要約】
本発明は、成形体への圧縮を目的とした粉末材料用の添加剤に関する。添加剤は、異物性表面上での凝集および滑りやすさに関して粉末材料に影響を与えるために使用され、2~8個のグリセリル単位を含有する直鎖または分岐ポリグリセロールの、それぞれが6~22個の炭素原子を含有する1つまたは複数の脂肪酸との完全なまたは部分的なエステル化によってそれぞれが得られる1つまたは複数のポリグリセロール脂肪酸を主成分として含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品への機械的圧縮のために提供されて且つ粒子からなる粉末の外部表面上での凝集および潤滑に影響を与えるための添加剤であって、
2~8個のグリセリル単位を含有する直鎖または分岐ポリグリセロールの、それぞれ6~22個の炭素原子を含有する1つまたは複数の脂肪酸との完全なまたは部分的なエステル化からそれぞれ取得可能な、主成分としての1つまたは複数のポリグリセロール脂肪酸エステルによって特徴付けられる、添加剤。
【請求項2】
前記1つのポリグリセロール脂肪酸エステルまたは複数のポリグリセロール脂肪酸エステルが基礎としている脂肪酸が、飽和または非分岐または飽和かつ非分岐であることを特徴とする、
請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記1つのポリグリセロール脂肪酸エステルまたは複数のポリグリセロール脂肪酸エステルが基礎としている脂肪酸が、16、18、20または22個の炭素原子を含有することを特徴とする、
請求項1または2のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項4】
熱流束示差走査熱量測定を使用する個々のポリグリセロール脂肪酸エステルまたは複数のポリグリセロール脂肪酸エステルの調査が、加熱すると、それぞれ、ただ1つの吸熱最小値を生成し、冷却すると、それぞれ、ただ1つの発熱最大値を生成することを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項5】
前記1つのポリグリセロール脂肪酸エステルまたは複数のポリグリセロール脂肪酸エステルが、WAXS分析によって決定されたブラッグ角の評価によると実質的に一定である層状分離を40℃で少なくとも6ヶ月にわたって有する凝固温度未満で安定なサブセルラー形態を有することを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項6】
前記1つのポリグリセロール脂肪酸エステルまたは複数のポリグリセロール脂肪酸エステルが、シェラーの式を用いて評価されたSAXS分析によると40℃で少なくとも6ヶ月にわたって実質的に一定の層状構造化された微結晶の厚さを有する凝固温度未満で安定なサブセルラー形態を有することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項7】
以下の群から得られる少なくとも1つのポリグリセロール脂肪酸エステル:
PG(2)-C18完全エステル、15~100のヒドロキシル価を有するPG(2)-C22部分エステル、PG(2)-C22完全エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(3)-C16/C18部分エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(3)-C22部分エステル、PG(3)-C22完全エステル、150~250のヒドロキシル価を有するPG(4)-C16部分エステル、PG(4)-C16完全エステル、150~250のヒドロキシル価を有するPG(4)-C16/C18部分エステル、PG(4)-C16/C18完全エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(4)-C18部分エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(4)-C22部分エステル、200~300のヒドロキシル価を有するPG(6)-C16/C18部分エステル、PG(6)-C16/C18完全エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(6)-C18部分エステル、炭素原子の数故に異なる2つの脂肪酸残基を含有するポリグリセロール脂肪酸エステルにおいては、より少ない数を有するものは35%~45%の量で存在し、対応する相補的なより多い数を有するものは55%~65%の量で存在し、指定された完全エステルは、好ましくは、5未満のヒドロキシル価値を有する、によって特徴付けられる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項8】
前記1つのポリグリセロール脂肪酸エステルまたは個々の複数のポリグリセロール脂肪酸エステルが、75℃未満および40℃超の凝固温度を有することを特徴とする、
請求項1~7のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項9】
疎水性の決定中の前記1つのポリグリセロール脂肪酸エステルまたは個々の複数のポリグリセロール脂肪酸エステルの接触角が、40℃および20℃で16時間後に開始値から10°未満異なることを特徴とする、
請求項1~8のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項10】
異なる反応対が使用されるためにまたは異なる反応条件が使用されるために異なるエステル化反応からそれぞれ取得可能である複数のポリグリセロール脂肪酸エステルの合成後混合によって特徴付けられる、
請求項1~9のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項11】
粒子の直径の中央値が1μm~300μm、好ましくは5μm~15μmであることを特徴とする、
請求項1~10のいずれか一項に記載の添加剤。
【請求項12】
添加剤の割合が5重量%以下、好ましくは0.05重量%~0.5重量%であることを特徴とする、
請求項1~11のいずれか一項に記載の添加剤と請求項1に記載の粉末とから得られる圧縮材料。
【請求項13】
前記粉末が医薬物質を含有することを特徴とする、
請求項12に記載の圧縮材料。
【請求項14】
前記粉末が微結晶性セルロースを含有することを特徴とする、
請求項12~13のいずれか一項に記載の圧縮材料。
【請求項15】
0.05重量%~0.5重量%の添加剤および99.5重量%~99.95重量%の粉末によって特徴付けられ、前記添加剤は、それぞれ50重量%のPG(3)-C22完全エステルと100~200のヒドロキシル価を有するPG(3)-C22部分エステルとの混合物からまたは専ら同一のヒドロキシル価を有するPG(3)-C22部分エステルからなる、
請求項12~14のいずれか一項に記載の圧縮材料。
【請求項16】
15重量%の割合のメトホルミン-HClと84.5重量%~84.95重量%の割合の微結晶性セルロースによって特徴付けられる、
請求項12~15のいずれか一項に記載の圧縮材料。
【請求項17】
8mmの直径を有する円筒状ダイ中で285mgの圧縮材料重量に関して、輪転機の上パンチにおける10kNの最大押圧力の90%~99%を下パンチ上に伝達する特性によって特徴付けられる、
請求項12~16のいずれか一項に記載の圧縮材料。
【請求項18】
圧縮の前に、好ましくは圧縮部位への供給の前に、請求項1~11のいずれか一項に記載の添加剤が前記粉末に添加されることを特徴とする、
機械的圧縮によって粉末から成形品を調製する方法。
【請求項19】
請求項12~17のいずれか一項に記載の圧縮材料の組成と同一の組成物によって特徴付けられる、
ダイ内での機械的圧縮によって製造された成形品、好ましくは錠剤。
【請求項20】
他の点では同一の条件下で成形品をダイから排出するために必要な力が、少なくとも40重量%の添加剤がMgStによって置き換えられおよび残りが使用される充填剤、好ましくは微結晶性セルロースによって必要に応じて置き換えられた試験成形品に対する排出力の150%以下であることを特徴とする、
請求項19に記載の成形品。
【請求項21】
最大150N、好ましくは最大200N、特に好ましくは最大250Nの線形有効力下での破壊強度によって特徴付けられる、
請求項19~20のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項22】
欧州薬局方、第8.0号に従って決定された、0.02重量%~0.25重量%の摩耗によって特徴付けられる、
請求項19~21のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項23】
欧州薬局方、第8.0号に従って試験された、2~4分の崩壊時間によって特徴付けられる、
請求項19~22のいずれか一項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
医薬品を製造する場合、および栄養補助食品を製造する場合、粉末化された成分を圧縮して、通常円筒形状であり、主に錠剤として使用される成形品(shaped article(s))にする必要がしばしば存在する。他の産業分野でも、成形品は粉末から製造されている。例は、洗剤産業においてである。ここで、成形品の十分な破壊強度(breaking strength)と低摩耗に加えて、医薬品材料の再現性のある放出が保証されなければならないので、製薬産業における要件は特に厳格である。さらに、成形品は大量に生産され、圧縮されるべき粉末を高速輪転機上で均一に圧縮できることが要求され、ここでは、押圧用具は過剰な剪断力によって損傷されてはならず、使用時において成形品を溶解することが損なわれてもならない。さらに、圧縮を目的とした粉末の均一な供給は、迅速な連続する圧縮過程の円滑な実行に不可欠である。しかしながら、これは、粉末が十分に流動性を有し、供給に問題をもたらして、停止に至らしめることがある凝集物を一切形成しない場合にのみ、通常成功し得る。
【0002】
結果が良好であると同時に、摩耗した部品のための機械稼働停止時間(downtimes)および維持管理サイクルが最適化された迅速で効果的かつ均一な機械的圧縮(mechanical compression)過程を得るために、圧縮を目的とした粉末に、潤滑剤として知られるものを添加剤として添加することが標準的な慣行となっており、潤滑剤は、湿潤性および稠度に関して粉末から形成された成形品の特性に多大な影響を与えることなく、粉末成分の相互凝集と外部表面(extrinsic surface(s))への粉末の接着をいずれも低下させる。ジステアリン酸マグネシウムC36H70MgO4、略号MgStの使用は、特に有利であることが示されている。別の例として、例えば、PEGと略記されるポリエチレングリコールまたはジベヘン酸グリセリルも使用することができ、後者は、主成分としてジエステルのみを含有するベヘン酸のモノエステル、ジエステルおよびトリエステルの混合物として使用される。したがって、例えば、抗ウイルス剤アシクロビル、抗凝固剤クロピドグレル、降圧剤カプトプリル、抗生物質エリスロマイシンもしくはペニシリンまたは鎮痛剤アセチルサリチル酸を含有する場合に、医薬品を含有する粉末と不適合性が発生することがあるので、MgStの代替物が大いに必要とされている。メトホルミンは残留水分の存在下で加水分解され得、ルイス酸であるMgStと反応し得るので、メトホルミン-HClとしてその水溶性形態で使用される抗糖尿病薬メトホルミンでさえ、MgStと不適合である可能性を有する。例えば、PEGは、最も広く使用されている抗炎症薬イブプロフェンまたは上記のクロピドグレルとの適合性がない。代替潤滑剤であるジベヘン酸グリセリルに関しては、成形品の特性に関して常に最適な結果が得られるとは限らない。「気体中の固体」カテゴリーの分散系として、成形品に圧縮するために与えられる粉末は、500μm未満の粒径を有する固体粒子からなり得るのみならず、より大きな成分、例えば、事前に造粒された成分も含み得る。
【発明の概要】
【0003】
したがって、目的は、従来の潤滑剤を使用する際に不適合性または品質に伴う問題がある場合に代替物を提供するために、同程度に良好な結果を与えることができる、前述の潤滑剤に対する他の代替物を提供することである。この目的は、添加剤の有利な選択が従属項2~11中に定義されている請求項1に記載の添加剤によって、有利な圧縮材料(compressed material)が従属項13~17中に定義されている、請求項12に記載の粉末および添加剤から構成される圧縮材料によって、請求項1~11のいずれか一項に記載の添加剤がその中で使用される請求項18に記載の方法によって、ならびに請求項20~23に定義された有利な特性を有する請求項19に記載の成形品によって達成される。
【0004】
驚くべきことに、請求項1によれば、PGFEと略記されるポリグリセロール脂肪酸エステルを主成分として有する添加剤は、2~8個のグリセリル単位を含有する直鎖または分岐ポリグリセロールの、6~22個の炭素原子をそれぞれ含有する1つまたは複数の脂肪酸との完全なまたは部分的なエステル化からそれぞれ得ることができるこのようなPGFEが使用される場合に、MgStの代替物として、成形品への機械的圧縮を目的とした粉末の外部表面上での凝集および潤滑に影響を与えるのに極めて適していることがここに初めて示された。
【0005】
適切なエステル化のための出発物質を形成することができる最も単純なポリグリセロールは、実験式C6O5H14を有する直鎖および分岐ジグリセロールであり、これは、例えば、エーテル結合の形成を伴う塩基性触媒作用下でグリセロールを2,3-エポキシ-1-プロパノールと反応させることによってまたは塩基触媒作用下での熱縮合によって、工業的な規模でおよび公知の様式で合成することができ、主にジグリセロールを含有する画分はその後に分離することができる。
【0006】
ジグリセロールは、3つの異なる構造的に異性体の形態で、すなわち、関与する2つのグリセロール分子のそれぞれの第一の炭素原子の間にエーテル架橋が形成されている直鎖形態で、使用される第1のグリセロール分子の第1の炭素原子と使用される第2のグリセロール分子の第2の炭素原子との間にエーテル架橋が形成される分岐形態で、およびそれぞれの第2の炭素原子の間にエーテル架橋が形成されるヌクレオデンドリマー形態で生じることができる。アルカリによって触媒される2つのグリセロール分子の縮合の場合には、最大およそ80%が直鎖形態で、最大およそ20%が分岐形態で生じるが、ヌクレオデンドリマー形態は極めて少量生成されるに過ぎない。
【0007】
脂肪酸とのエステル化の場合、2つより多くのグリセリル単位を含有するポリグリセロールも使用され得る。一般に、ポリグリセロールは「PG」と略記され、ポリグリセリル単位の数を与える整数nが接尾辞、すなわち「PGn」として付加される。例として、トリグリセロールはPG3と記載され、実験式CC9O7H20を有する。ここで、脂肪酸との、例えばステアリン酸との完全なエステル化は、PGn分子のすべての遊離ヒドロキシル基において起きるはずである。直鎖PG3の場合、次いで、これは、第1のグリセリル単位の第1および第2の炭素原子において、第2のグリセリル単位の第2の炭素原子において、および第3のグリセリル単位の第2および第3の炭素原子において起こるであろう。したがって、この例に対する実験式は、C9O7H15R5として与えられ、ここで、各Rは、脂肪酸残基を表し、選択された例において、実験式C18OH35を有する。
【0008】
しかしながら、飽和非分岐脂肪酸とエステル化されたポリグリセロールの確立された略号は、PG(n)-Cm完全エステル、または適宜、PG(n)-Cm部分エステルという表記であり、ここで、括弧内の「n」はポリグリセロールに対する表記と同様に、分子中に含有されるグリセリル単位の数を与え、mは、エステル化反応のために使用される飽和脂肪酸の炭素原子の数を表す。したがって、「n」は、グリセリル単位の数を表し、限界(marginal)グリセリル単位に対する実験式はC3O2H5RまたはC3O3H5R2であり、ここで、Rは、脂肪酸残基または遊離ヒドロキシル基の水素原子を表し得る。したがって、「PG(2)-C18完全エステル」は、主成分として実験式C78O9H150を有するポリグリセロール脂肪酸完全エステルを表す。PG部分エステルの場合には、脂肪酸残基の数は平均化されており、同時に、実験式は、多数を占めて存在するエステル化の変動を有する画分を与える。ポリグリセロール脂肪酸部分エステルのより正確な表記は、ヒドロキシル価を追加して提供することによって与えられ、ヒドロキシル価はエステル化されていないヒドロキシル基含有量の尺度であり、したがって、部分エステルのエステル化の程度に関する情報を与える。おそらく立体的な理由のために、この事例におけるエステル化反応は外側から内側へと優先的に起こる。したがって、最初には、エステル化されるヒドロキシル基は、脂肪酸残基に最高の自由度を許容するヒドロキシル基である。次いで、直鎖ポリグリセロールにおける第1のエステル化反応は、限界ポリグリセリル単位の第1の炭素原子のヒドロキシル基において優先的に起こり、次いで、第2のエステル化反応は、他端における限界ポリグリセリル単位の第3の炭素原子のヒドロキシル基において起こる。次に、すでにエステル化されている位置に直接隣接する炭素原子位置におけるヒドロキシル基がエステル化され、以下同様である。
【0009】
本明細書において使用される「脂肪酸」という用語は、6~22個の炭素原子を含有する脂肪族モノカルボン酸を意味すると理解されるべきであり、好ましくは非分岐で飽和であり、偶数の炭素原子を有するが、奇数を含有してもよく、または分岐および/もしくは不飽和であり得る。好ましくは、添加剤の主成分として使用されるPGFEのエステル化のために、飽和および/または非分岐である脂肪酸が使用される。より有利には、16、18、20または22個のC原子を含有する非分岐飽和脂肪酸、すなわちパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸またはベヘン酸がエステル化のために使用される。
【0010】
圧縮のために通常使用される圧縮材料に対する10kNおよびそれを超える押圧力(pressing force)は、不適切な添加剤成分が使用されたときに、温度の上昇が生じ得、圧縮材料の多形転移と制御困難な成形品の特性とをもたらし得ることを意味するので、有利には、使用されるこの種類のPGFEは、複数のPGFEまたは個々のPGFEが熱流束示差走査熱量測定を使用して調査されたときに、調査の間、加熱時に、ただ1つの吸熱最小値を有し、冷却時に、ただ1つの発熱最大値を有するPGFEである。追加の多形形態は、示差走査熱量測定を使用して調査すると、試料を加熱したときの局所的な発熱最大値および試料を冷却したときの局所的な吸熱最小値の出現によって区別することができるであろう。保存中のしばらく後に発生する、成分の多形が肉眼で見える体積の大幅な増加を引き起こす「ブルーミング」は、多形を示さない添加剤を使用することによって回避することができる。特に、トリパルミチン酸グリセロールまたはトリステアリン酸グリセロールなどのトリグリセリドは、多形を有し得る、すなわち、それぞれ、結晶性の不安定なa修飾と準安定なb’修飾または安定なb修飾の両方が存在し得、一方から他方の修飾に転移し得る。この点で、これらの修飾は、特に、サブセルラー単位(subcellular unit(s))とも記載される層状の充填された結晶性サブユニットの厚さにおいて異なる。一例として、トリステアリン酸グリセロールのa修飾については、特定の条件下で、サブセルラー単位あたり平均6つの層状構造の積層を検出することができ、b修飾への完全な転移後には、サブセルラー単位当たり平均10.5の層状構造の積層およびおよそ67%の結晶厚の増加が観察された。この場合には、75%という計算で求められた予想された増加が得られないので、これは、b修飾の個々の層が、a修飾と比べて傾斜した位置故により密な層の充填を有するという事実によるものと推定される。(D G Lopes,K Becker,M Stehr,D Lochmann et al.,in the Journal of Pharmaceutical Sciences 104:4257-4265,2015を参照)。
【0011】
添加剤は最終製品中に残存するので、使用されるPGFEは、少なくとも6ヶ月間、40℃および75%の相対湿度で、すなわち加速安定性試験のための保存条件下でPGFEの凝固温度未満における安定なサブセルラー形態(subcellular form)、SAXSと略記される小角X線散乱を利用し、シェラーの式を適用することによって評価される層状構造微結晶(crystallite(s))の本質的に一定な厚さを有することも有利である。SAXSにより、微結晶のサイズ、形状および内面に関して結論を導くことができる。ここで、それぞれの微結晶の厚さは、D=Kλ/FWHMcos(θ)というシェラーの式を使用して計算することができる。ここで、Dは微結晶の厚さを、Kは無次元のシェラー定数を表し、シェラー定数は微結晶の形状の予測を可能とし、通例、優れた近似として0.9と見なすことができる。FWHMは「半値全幅」、すなわち、バックグラウンドを上回る高さの半分における最大強度のピークのラジアンで測定された幅を表し、θはブラッグ角、すなわち格子面上への放射線の入射角である。10%ポリソルベート65で安定化されたトリパルミチン酸グリセロールの試料は、室温での6ヶ月間の保存後に、7つの層に相当する31nmの微結晶厚さを有するが、40℃での6ヶ月間の保存後での微結晶の厚さは、12層に相当する52nmであり、ほぼ2倍であって、前述のポリグリセロール脂肪酸エステルは通常、2~4層に対応する20~30nmの微結晶厚さを呈し、40℃での6ヶ月の保存後に安定であり、修飾は変化しない。これに対して、ポリグリセロール完全エステルは通常、5~8層に対応する30~40nmというわずかにより高い微結晶厚さを呈して、組織化の程度がより高いことを示し、同じく、加速安定性試験の保存状況下で修飾は変化を受けず、安定である。
【0012】
PGFEが上記の条件下で使用される場合において、「WAXS」と略記される広角X線散乱を使用するブラッグ角の評価による層状分離が実質的に一定であれば、同じく有利である。WAXSを使用した、提案されたポリグリセロール脂肪酸エステルのそれぞれの凝固温度未満での個々の調査は、調査されたすべてのポリグリセロール脂肪酸エステルに対して1つの最大強度を示し、これは、およそ2θ、すなわちブラッグ角の2倍に相当する21.4°の各偏角を推定することができ、これは、415pmの格子面の分離を与え、ここでは、調査されている分子の層充填密度と相関する。この距離は、それぞれの層状構造が互いに平行な六角形の格子中に配置され、分子が互いに積み重ねられて平面を形成するa修飾と構造的に関連付けることができる。その他の修飾は同定することができない。同定されたa修飾の安定性は、同じくWAXSを使用して、室温とおよび40℃の両方で6ヶ月間観察された。ここでも、驚くべきことに、専ら、調査されているそれぞれのポリグリセロール脂肪酸エステルは安定なa修飾を呈した。
【0013】
添加剤の調製のためには、次の群からのPGFEが好ましく選択される:PG(2)-C18完全エステル、15~100のヒドロキシル価を有するPG(2)-C22部分エステル、PG(2)-C22完全エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(3)-C16/C18部分エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(3)-C22部分エステル、PG(3)-C22完全エステル、150~250のヒドロキシル価を有するPG(4)-C16部分エステル、PG(4)-C16完全エステル、150~250のヒドロキシル価を有するPG(4)-C16/C18部分エステル、PG(4)-C16/C18完全エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(4)-C18部分エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(4)-C22部分エステル、200~300のヒドロキシル価を有するPG(6)-C16/C18部分エステル、PG(6)-C16/C18完全エステル、100~200のヒドロキシル価を有するPG(6)-C18部分エステル、炭素原子の数故に 異なる2つの脂肪酸残基を含有する前記ポリグリセロール脂肪酸エステルにおいては、より少ない数を有するものが35%~45%の量で存在し、対応する相補的なより多い数を有するものが55%~65%の量で存在し、指定された完全エステルが、好ましくは、5未満のヒドロキシル価を有する。
【0014】
請求項1に記載の添加剤のためのPGFEの考慮されるべき有利な特性は、接触角を決定することによって決定することができる疎水性である。疎水性の決定は、固体物理状態にあるPGFEと精製された水の液滴との間の接触角を決定することによって実施される。ヤングの式によれば、cosθ=(γSV-γSL)/γLV、ここで、γSLはPGFEと水の間の界面張力であり、γLVは水滴の界面張力であり、γSVはPGFEと周囲の空気との間の表面張力である。θは接触角である。したがって、接触角θが大きいほど、PGFEと水との間の表面張力が高くなり、調査されているPGFEの疎水性が高くなる。提案されたポリグリセロール脂肪酸エステルの接触角は、製薬技術においてしばしば使用されるHLB値とも相関し、HLB値は、0~20のスケールであり、親水性分子画分に対する親油性分子画分の比率に関する情報を与え、親水性画分はHLB値が増加するとともに増加する。1つまたは複数の医薬物質を含む粉末の圧縮の場合、保存条件下で添加剤として使用されるPGFEの接触角は、完成した成形品から生じる1つまたは複数の医薬物質の放出動態の安定性が損なわれないように、わずかな変化のみを受けるべきである。したがって、好ましくは、40℃でおよび20℃で16週後に、開始値から10°未満逸脱する水との接触角を有するポリグリセロール脂肪酸エステルが、好ましくは、添加剤の主成分として使用される。一例として、トリステアリン酸グリセロールは、記載された条件下で40°という、比較的高い水との接触角偏差(deviation)を有し、したがって、所望の放出動態安定性から逸脱するが、これは、保存中のa修飾からb修飾への転移に起因する可能性がある。添加剤として使用されるPGFEの凝固温度は、好ましくは75℃未満であるが、40℃を超える。ここで、凝固温度は、示差走査熱量測定を使用した試料の分析中に、熱流束の最高発熱ピークの最大値が生じる温度に対する値として定義される。
【0015】
PGFEの合成の条件の故に、PGFEは、特に部分エステルの場合には、常に異なる分子の混合物である。しかしながら、異なる反応対または異なる反応条件が使用されるので、異なるエステル化反応によってそれぞれ取得することができるPGFEを混合することによって、請求項1に記載の適切な添加剤を合成後に提供することも可能である。
【0016】
添加剤の粒径は、添加剤の総表面積に対する影響を有し、したがって、圧縮用の粉末および添加剤によって形成される組成物の特性対する影響を有する。原則として、添加剤の粒径が1~300μm、好ましくは5μm~15μmであることが有利であることが示された。これに対応して、組成物中の添加剤の割合も、成形品へと機械的に圧縮するときの添加剤の挙動に対して影響を有し、有利には5重量%を超えるべきではなく、好ましくは、0.05重量%~0.5重量%に過ぎない。多すぎる添加剤には、組成物の疎水性の増加が伴い、調製された成形品の湿潤性に対して悪影響を有する可能性があり、次いで、その溶解挙動は、望ましくない態様で遅くなることがある。
【0017】
製薬産業での用途の場合、成形品への機械的圧縮のために提供される粉末および添加剤から形成された圧縮材料は、例えば、メトホルミン-HClなどの少なくとも1つの医薬物質を含む。「医薬物質」という用語は、直接薬理学的に有効な物質およびインビボで活性形態に転換された後にのみ有効である物質の両方を意味すると理解されるべきである。さらに、粉末は、好ましくは、充填剤として微結晶性セルロースを含有し、圧縮材料中での微結晶性セルロースの割合によって、成形品の体積を調節することが可能になる。
【0018】
添加剤および粉末から形成される圧縮材料は、わずか0.05重量%~0.5重量%の添加剤および99.5重量%~99.95重量%の粉末を有することが有利であることが示され、ここで、添加剤は、それぞれ50重量%のPG(3)-C22完全エステルと100~200のヒドロキシル価を有するPG(3)-C22部分エステルとの混合物からまたは専ら同一のヒドロキシル価を有するPG(3)-C22部分エステルからなる。添加剤に加えて、圧縮材料は、例えば、15重量%の割合のメトホルミン-HClおよび84.5重量%~84.95重量%の割合の微結晶性セルロースも含有し得る。
【0019】
成形品への機械的圧縮を目的とした粉末の外部表面上での凝集および潤滑に対する影響に関して添加剤の作用を最適化するために、圧縮の前に、好ましくは圧縮部位に供給される前に、添加剤は、好ましくは、粉末と混合される。これは、成形品圧縮機中の圧縮部位への、一般には
打錠機(tablet press)のダイ中への正しい供給も、圧縮材料の供給が均一に、停止することなく起こるように、添加剤によって影響を受ける粉末の流動特性に決定的に依存するからである。
【0020】
さらに、調製された成形品のそれぞれの型からの取り出しは、成形品の組成が外部表面上での十分な潤滑を保証する場合にのみ問題なく実施することができる過程である。したがって、成形品は、圧縮材料と同じ組成を有するべきであり、圧縮中およびそれに付随するエネルギーの供給中に、化学変化を受けるべきではない。成形品を排出するために必要とされる力が、少なくとも40重量%の添加剤がMgStによって置き換えられおよび残りが使用される充填剤、好ましくは微結晶性セルロースによって必要に応じて置き換えられた試験成形品に対して他の点では同一の条件下で必要とされる排出力の150%以下であれば、これは有利である。排出力を決定するために、20個の成形品に対する値が毎回平均される。
【0021】
輪転機(rotary press)による添加剤および粉末から構成される圧縮材料の圧縮の間、圧縮過程の最終工程では、下パンチ(lower punch)上に置かれている圧縮材料上に上パンチ(upper punch)が押し付けられ、この工程では、下パンチは上パンチの方に動かされる。したがって、それぞれの圧縮過程の上パンチにおける特定の最大圧力は、圧縮材料を介して下パンチ上にある程度伝達される。有利には、上パンチでの10kNの最大圧力の時点で、8mmのパンチ直径および285mgの圧縮材料の注入に対して、下パンチでの最大圧力が上パンチの最大圧力の92%~98%であるような添加剤の量が、圧縮を目的とした粉末に添加される。
【0022】
成形品への圧縮を目的とした粉末に、少なすぎる添加剤の量が加えられると、所望の効果、すなわち、粉末粒子の互いに対する低下した凝集および外部表面への低下した接着が十分でないというリスクが存在し、その結果、圧縮材料が圧縮部位に供給されているときでさえ、圧縮材料が流動を停止させ得、粘着する粒子によって押圧用具が詰まることがあり、または必要とされる圧力がなお極めて高いために、得られた成形品の溶解が生理的条件下では遅すぎることがあり、そのため、物質が十分に素早く取り込まれず、医薬品の効果が発生しない。他方、添加剤の量が多すぎると、医薬品に必要とされる硬度を有さない、圧縮によって得られる成形品がもたらされる可能性があり、そのため、望ましくない破壊が起こり得る、または摩耗しすぎて、成形品の目標とされる均一な活性成分含量に許容され得ない変動をもたらし得る。したがって、有利にかつ望ましくは、圧縮を目的とした粉末に添加される添加剤の量は正しく測定される。これは、成形品の得られる特性に基づいて確立することが可能であり、好ましくは、最大100N、好ましくは最大150N、特に好ましくは最大200Nの線形有効力(linear effective force)下で破損を示さない。破壊強度を決定するために、線形有効力は、それぞれ10の成形品に適用され、平均値を求める。さらに、摩耗は、欧州薬局方の第8.0号(the European Pharmacopoeia, issue 8.0)に従って決定され、すべての摩耗した材料またはすでに存在するほこりを注意深く取り除いた後に、6.5gにできる限り近い総重量を有する多数の成形品を回転ドラム中に配置する。次いで、毎分25回転の速度で、ドラムを100回、回転させる。次に、成形品から再度注意深く摩耗した材料およびほこりを取り除き、重量を測定し、決定された平均重量を開始重量と比較する。この手順を使用したほこりによる重量低下は、0.02重量%~0.25重量%以下であることが有利であることが示されている。
【0023】
最後に、欧州薬局方、第8.0号によれば、本発明による成形品は、有利には2~4分の崩壊時間を有するべきである。これに関して、各事例において、それぞれ別々のバスケットに入れられた6つの成形品を、37℃(±2℃)の温度に加熱された100mLの精製水、アクアピュリフィカタ(aqua purificata)中に入れる。次に、1分当たり29~32回、バスケットを53~57mm前後に動かし、所定の時間に、水から取り出された成形品およびバスケットの崩壊状態を、欧州薬局方の第8.0号に従って評価する。
【0024】
ここで、本発明による添加剤、本発明による圧縮材料、本発明による方法および本発明による成形品の例を用いて、本発明を例示する。
【0025】
まず、流体として二酸化炭素を使用して、「SCFT」と略記される超臨界流体技術を用いて、138のヒドロキシル価を有するPG(3)-C22部分エステルを微粉化した;すべての粒子の粒径の中央値は13.15μm(±0.05μm)であった。これらの粒子の一部を添加剤として使用した。医薬物質はメトホルミン-HClであった。充填剤は、商品名Avicel PH102で知られる微結晶性セルロースであった。混合する前に、メトホルミン-HClを200μmの孔径を有するふるいに通した。したがって、この例では、粉末はメトホルミン-HClと微結晶性セルロースの混合物であり、添加剤はPG(3)-C22部分エステル-[138]であり、角括弧内の数字はここでのヒドロキシル価を表す。毎分75回転で10分間、Willy A Bachofen Maschinenfabrik(CH)のTurbula TC2ミキサー中でこれらの成分を混合することによって、圧縮材料を得た。圧縮材料は、15重量%のメトホルミン-HCl、84.75重量%の微結晶性セルロースおよび0.25重量%のPG(3)-C22部分エステル-[138]からなった。8mmの直径を有するNatoli(USA)のパンチおよびダイを使用して、Medelpharm(FR)のStylcam 200R圧縮シミュレータ中で、圧縮材料を平らな錠剤に圧縮した。欧州薬局方第8.0号に従った、調製された錠剤のその後の調査は、わずか2分の崩壊時間、0.12%の摩耗を与えた。錠剤の破壊強度は、最大140Nの線形有効力に耐えるのに十分な強さであった。錠剤をダイから取り出すための排出力はわずか120Nであった
【0026】
第2の例では、圧縮材料の組成を変化させた。84.9重量%の微結晶性セルロース、15重量%のメトホルミン-HClおよび0.1重量%の、PG(3)-C22完全エステルとPG(3)-C22部分エステル-[138]の等量の混合物を圧縮した。この例では、崩壊時間は4分、摩耗はわずか0.02%、錠剤の破壊強度は最大200Nの線形有効力に耐えるのに十分な強さであり、必要とされる排出力は175Nであった。
【0027】
各成分のラマンスペクトルと比較されたおよび各成分から調製された錠剤のラマンスペクトルと比較された、95%メトホルミン-HClと5%添加剤または50%メトホルミン-HClと50%添加剤からなる修飾された圧縮材料のラマンスペクトルの調査は、40℃で1時間の錠剤の保存後でさえ、添加剤と医薬物質間に相互作用または不適合性は存在しないことを示した。充填剤を省くことによって圧縮前、圧縮中および圧縮後に成分の相反する影響を誘発し、これをより顕著にするために、前の例と比較した圧縮材料の組成の変化を施した。
【0028】
ここで、いくつかのPGFEの特性を、図面を使用して、例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】部分エステルPG(4)-C18は、質量分析と連結されたガスクロマトグラフィー(GC-MS)を使用して調査した場合、
図1に示されている定量的な主構造を有していた。
【0030】
【
図2】示差走査熱量測定を使用したPG(4)-C18の調査の結果を示し、ここで、温度値は図のX軸上にあり、mW/gで表した熱流束はY軸上にある。
図2の左側の図は、部分エステルPG(4)-C18の2つの測定に対する2つのほぼ一致する曲線を示しており、それぞれが、部分エステルの融解時に、固相から液相へのエネルギーを消費する転移に割り当てることができる正確に1つの吸熱最小値を示す。
図2の部分エステルPG(4)-C18の右側の図は、部分エステルの凝固時の液相から固相へのエネルギーを放出する転移に割り当てることができる正確に1つの発熱最大値を示す。測定は、Nietzsch Geratebau GmbH 95100、Selb、ドイツのDSC 204 F1 Phoenixを使用して実施した。これに関して、3~4mgの試料をアルミニウムるつぼ中に秤量し、毎分5Kの加熱速度で熱流束を連続的に記録した。同じ加熱速度を使用して、2度目の実行を行った。
【0031】
【
図3】ポリグリセロール脂肪酸エステルの望ましい挙動との対照として、示差走査熱量測定を使用した調査中および加熱時の多形トリアシルグリセロールの典型的な挙動を示す。ここでは、中間の発熱最大値を有する2つの局所的な吸熱最小値を見ることができ、ここで、左側の第1の吸熱最小値は不安定なa修飾の融解によるものであり、その後に、より安定したb-修飾を形成する結晶化時の発熱最大値が続き、右側の第2の局所的な吸熱最小値から明らかように、これは、次に、温度がさらに上昇するにつれて融解する。
【0032】
【
図4】室温で6ヶ月間保存した後に、加熱時に示差走査熱量測定を使用して調査されたPG(4)-C18部分エステルを示す。
【
図5】40℃で6ヶ月保存した後に加熱した際の、示差走査熱量測定を使用して調査されたPG(4)-C18部分エステルを示す。いずれの場合にも、前記のように、より安定した修飾への結晶化を示し得る発熱最大値は存在しない。
【0033】
WAXSおよびSAXS分析のために、スポット集束カメラシステムS3-MICRO、以前はHecus X ray Systems Gesmbh、8020 Graz、オーストリア、現在はBruker AXS GmbH、76187 Karlsruhe、ドイツに、3.3~4.9オングストローム(WAXS)および10~1500オングストローム(SAXS)の解像度を有する2つの線形位置敏感型検出器を装備した。次いで、ワックスで密封され、回転式キャピラリーユニット中に配置されたおよそ2mmの直径を有するガラスキャピラリー中に試料を導入した。1.542オングストロームの波長のX線の光線に1300秒間曝露することによって、室温で個々の測定を行った。
【0034】
【
図6】その凝固温度より下での、PG(4)-C18部分エステル(標識された)を含む様々なポリグリセロール脂肪酸エステルに対するWAXS分析の結果を示し、これらはすべて、21.4°の2θにおいて最大強度を示す。ブラッグ角は、415pmの格子面の分離に対応し、これは、a修飾の層充填に典型的である。
【
図7】最大強度は、
図7に示されているように室温で6ヶ月間保存した後安定していた。
【
図8】
図8に示されているように40℃で6ヶ月間保存した後安定していた。
【0035】
【
図9】様々なポリグリセロール脂肪酸エステルのSAXS分析の結果を示す。PG(4)-C18部分エステルの場合、65.2オングストロームの層状分離を誘導することができる。シェラーの式から計算された微結晶の厚さは12.5nmであり、シェラー定数は0.9、波長は1.542オングストローム、FWHM値は0.0111、ブラッグ角θは0.047(ラジアン)であった。PG(4)-C18部分エステルのSAXS分析の値は、室温と40℃の両方で6ヶ月間保存した後でさえ、同じままであった(図示せず)。
【0036】
示差走査熱量測定からの分析によって、PG(4)-C18部分エステルの凝固温度についての予測を行うことも可能になった。試料を冷却したときの発熱最大値のピークは53.4℃~57.0℃、最大値は55.2℃であり、これは凝固温度を示す。
【0037】
【
図10】接触角の測定を示す図を示す(パラグラフ[0020]を参照)。PG(4)-C18部分エステルの場合、接触角はおよそ84°であり、これはおよそ5.2のHLB値に相関する。
【
図11】他のポリグリセロール脂肪酸エステルと比較して、PG(4)-C18部分エステルは、
図11から明らかなように、親水性ポリグリセロール脂肪酸エステルに割り当てることができる(ここでは、PG4-C18)。
【
図12】室温で16週後(中央の列)および40℃で16週後(右側の列)での、開始測定(左側の列)に対するPG(4)-C18部分エステルの接触角の変化を示す、中央のグラフを参照。接触角は10°以下で変化し、疎水性は、例えばトリステアリルグリセロールなどのモノグリセロール脂肪酸エステルと比較して安定であると記述することができるこれは、
図12の左側のグラフにも示されているPG3-C16/C18部分エステル、および右側のグラフのPG6-C18部分エステルにも当てはまる。
【国際調査報告】