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特表2022-504055アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩、酒石酸塩またはこれらの組み合わせを含む薬剤学的組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩、酒石酸塩またはこれらの組み合わせを含む薬剤学的組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20220105BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/4015 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K31/165
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/28
A61K9/19
A61K31/4164
A61K31/4015
A61K31/341
A61K31/381
A61K31/40
A61K31/445
A61P43/00 121
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517997
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(85)【翻訳文提出日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 KR2019014234
(87)【国際公開番号】W WO2020091326
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0129576
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515178085
【氏名又は名称】クリスタルジェノミクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CRYSTALGENOMICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジェ・ピョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジョン・ミュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC27
4C076DD08
4C076DD27
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD42
4C076DD46
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF36
4C076FF41
4C076GG06
4C076GG47
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA03
4C086BB02
4C086BC07
4C086BC08
4C086BC21
4C086BC38
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA14
4C206KA14
4C206KA15
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA64
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩(以下、CG200745PPA)化合物またはその誘導体を含む薬剤学的組成物に関するものであって、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル、乾燥シロップ剤または注射剤の形態の薬剤学的組成物を提供することができる。多様な形態の組成物を提供することにより、経口投与が難しい場合、適した形態を選択して容易に適用させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1の化合物、化学式2の化合物またはこれらの組み合わせを含む、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル、乾燥シロップ剤または注射剤の形態の薬剤学的組成物。
【化1】
【化2】
〔前記化学式1または化学式2において、
は、ハロフェニル、C1-3アルコキシ、C1-3アルコキシC1-3アルキル、シクロヘキサニル、フラニル、チオフェニル、イミダゾール、イミダゾリジニルC1-3アルキル、C1-3アルキルアミノ、ジC1-3アルキルアミノ、ヒドロキシフェニル、テトラヒドロフラニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オキソピロリジニル、C1-3アルコキシフェニル、ジC1-3アルキルアミノフェニル、C1-3アルキルピロリジニル、及びトリフルオロメトキシフェニルで構成された群から選択された1つ以上の置換体で置換または非置換のC1-3アルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキルC1-3アルキル、ベンジル、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルカボニルで置換または非置換のピロリジン、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルで置換されたピペリジン、フラン、またはC3-8シクロアルキルであり、
但し、非置換のC1-2アルキル及びC1-2アルキルピロリジニルで置換されたC1-2アルキルは除く。〕
【請求項2】
前記化学式1または化学式2のアルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド構造が、下記化合物で構成された群から選択される、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
1)(E)-N1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)オクテンジアミド、
2)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(4-ヒドロキシフェネチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
3)(E)-N1-(3-(ジメチルアミノ)-2,2-ジメチルプロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)オクテンジアミド、
4)(E)-N1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)オクテンジアミド、
5)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(1-メトキシプロパン-2-イル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
6)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(4-メトキシベンジル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
7)(E)-N1-(4-フルオロフェネチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
8)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)-2-オクテンジアミド、
9)(E)-N1-(2-シクロヘキセニルエチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
10)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(3-(2-オキソピロリジン-1-イル)プロピル)-2-オクテンジアミド、
11)(E)-N1-(フラン-2-イルメチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
12)(E)-N1-(4-(ジメチルアミノ)ベンジル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
13)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(2-メトキシエチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
14)(E)-N1-シクロヘキシル-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
15)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(チオフェン-2-イルメチル)-2-オクテンジアミド、
16)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(4-メトキシフェネチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
17)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(4-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)-2-オクテンジアミド、
18)(E)-N1-(1-(シクロヘキシルメチル)ピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
19)(E)-N1-(1-シクロペンチルピペリジン-4-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
20)(E)-N1-(1-ベンジルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
21)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(1-イソプロピルピロリジン-3-イル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
22)(E)-N1-(1-(シクロヘキサンカルボニル)ピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
23)(E)-3-(8-(ヒドロキシアミノ)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-8-オキソ-2-オクタンアミド)ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチルエステル、
24)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(ピロリジン-3-イル)2-オクテンジアミド、
25)(E)-N1-(1-シクロヘキシルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-2-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
26)(E)-N1-(1-シクロプロピルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
27)(E)-N1-(1-シクロプロピルピペリジン-4-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
28)(E)-N1-(1-エチルピペリジン-4-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
29)(E)-N1-(1-エチルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
30)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、及び
31)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(1-イソプロピルピペリジン-4-イル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
32)(E)-N1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド。
【請求項3】
前記錠剤またはカプセル剤100重量部に対して、コーティング層を1~10重量%の含量で含む、請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項4】
前記組成物が、液相または凍結乾燥物の形態である、注射剤用の請求項1に記載の薬剤学的組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の化学式1の化合物、化学式2の化合物またはこれらの組み合わせを含む、抗癌剤用の薬剤学的組成物。
【請求項6】
化学式1の化合物、化学式2の化合物またはこれらの組み合わせを含む薬剤学的組成物の製造方法であって、
1)アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド化合物またはその誘導体に有機溶媒を添加して遊離塩基を抽出する段階と、
2)前記遊離塩基溶液にリン酸または酒石酸を添加する段階と、を含む、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル、乾燥シロップ剤または注射剤の形態の、薬剤学的組成物を製造する方法。
【化3】
【化4】
〔前記化学式1または化学式2において、
は、ハロフェニル、C1-3アルコキシ、C1-3アルコキシC1-3アルキル、シクロヘキサニル、フラニル、チオフェニル、イミダゾール、イミダゾリジニルC1-3アルキル、C1-3アルキルアミノ、ジC1-3アルキルアミノ、ヒドロキシフェニル、テトラヒドロフラニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オキソピロリジニル、C1-3アルコキシフェニル、ジC1-3アルキルアミノフェニル、C1-3アルキルピロリジニル、及びトリフルオロメトキシフェニルで構成された群から選択された1つ以上の置換体で置換または非置換のC1-3アルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキルC1-3アルキル、ベンジル、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルカボニルで置換または非置換のピロリジン、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルで置換されたピペリジン、フラン、またはC3-8シクロアルキルであり、
但し、非置換のC1-2アルキル及びC1-2アルキルピロリジニルで置換されたC1-2アルキルは除く。〕
【請求項7】
前記1)段階の有機溶媒よりも溶解度が低い溶媒をさらに添加する段階をさらに含む、請求項6に記載の薬剤学的組成物の製造方法。
【請求項8】
前記1)段階の有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、及び酢酸エチルからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項6に記載の薬剤学的組成物の製造方法。
【請求項9】
前記1)段階の溶媒よりも溶解度が低い溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノールを含むアルコール類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、及びアセトンからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項7に記載の薬剤学的組成物の製造方法。
【請求項10】
高温減圧滅菌法または無菌濾過法で滅菌処理する段階をさらに含む、請求項6に記載の薬剤学的組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩(alkylcarbamoyl naphthalenyloxy octenoyl hydroxyamide phosphate)化合物、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド酒石酸塩(alkylcarbamoyl naphthalenyloxy octenoyl hydroxyamide tartrate)化合物またはこれらの組み合わせを含む薬剤学的組成物に関する。
【0002】
また、前記薬剤学的組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒストンは、真核細胞の核内DNAと結合している塩基性タンパク質であって、ヒストンの各分子のうち、特定位置のリジン残基のアミノ基に可逆的なアセチル化が起こる。このようなヒストンのアセチル化反応は、染色質(chromatin)の高次構造形成や細胞分裂周期などと関係があって、遺伝子情報の発現調節に関与し、ヒストンアセチル転移酵素(acetyltransferases、HATs)及びヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase、HDACs)によって安定して調節される。前記酵素は、ヒストンのアミノ末端に存在するリジン残基(H4の場合、4個)の正電荷をアセチル化で中和させて転写活性を誘導するか、脱アセチル化させて、再び電荷を付与して転写を抑制することにより、ヒストンのアセチル化レベルの平衡を誘導して、転写レベルで遺伝子発現を調節すると知られている。
【0004】
HDACは、低酸素症、低ブドウ糖、細胞癌化など劣悪な環境条件で高発現されて細胞増殖抑制因子の発現を阻害することにより、細胞増殖を促進させる役割を行うということが最近明らかになり、細胞の癌化及び分化を調節するに当たって、重要な因子として認識されている。すなわち、染色質の高いアセチル化状態が細胞の増殖を抑制し、分化を促進するならば、HDACは、ヒストンの脱アセチル化を通じて細胞増殖を誘導するのに決定的な役割を果たす。このような事実は、HDAC抑制因子(inhibitor)を処理すれば、細胞の増殖や血管新生が抑制される結果として裏付けられており、より選択的であり、薬効に優れたHDAC阻害剤の開発が要求されている。これにより、本発明者らは、HDAC阻害剤としてアルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドの可能性を確認し、これについての研究が進行しつつある。
【0005】
しかし、前記アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドは、大気中の水分を吸収する性質を有しているので、物理化学的安定性に脆弱な問題点が発生する恐れがある。引湿によって発生する柔軟物質を除去するための多数の精製作業は、生産コストを上昇させ、高吸湿性によって固体状態への保持が難しくて、固型製剤の量産が困難なので、別途の冷凍保管装置または包装などの手段がさらに必要であるという短所がある。
【0006】
したがって、効果の発現が迅速でありながら同時に製造が便利であり、安定化されたHDAC阻害剤としての薬剤学的組成物についての研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド塩酸塩化合物、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド酒石酸塩化合物またはこれらの組み合わせを含む錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル、乾燥シロップ剤または注射剤の形態の薬剤学的組成物を提供する。
【0008】
また、前記薬剤学的組成物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、化学式1の化合物(アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩)、化学式2の化合物(アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド酒石酸塩)またはこれらの組み合わせを含む、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル、乾燥シロップ剤または注射剤の形態の薬剤学的組成物を提供する。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
前記化学式1または化学式2において、Rは、ハロフェニル、C1-3アルコキシ、C1-3アルコキシC1-3アルキル、シクロヘキサニル、フラニル、チオフェニル、イミダゾール、イミダゾリジニルC1-3アルキル、C1-3アルキルアミノ、ジC1-3アルキルアミノ、ヒドロキシフェニル、テトラヒドロフラニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オキソピロリジニル、C1-3アルコキシフェニル、ジC1-3アルキルアミノフェニル、C1-3アルキルピロリジニル、及びトリフルオロメトキシフェニルで構成された群から選択された1つ以上の置換体で置換または非置換のC1-3アルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキルC1-3アルキル、ベンジル、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルカボニルで置換または非置換のピロリジン、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルで置換されたピペリジン、フラン、またはC3-8シクロアルキルであり、
但し、非置換のC1-2アルキル及びC1-2アルキルピロリジニルで置換されたC1-2アルキルは除く。
【0013】
一具現例によれば、前記錠剤またはカプセル剤100重量部に対して、コーティング層を1~10重量%の含量で含みうる。
【0014】
一具現例によれば、前記組成物は、液相または凍結乾燥物の形態である、注射剤用薬剤学的組成物である。
【0015】
一具現例によれば、化学式1の化合物、化学式2の化合物またはこれらの組み合わせを含むものである、抗癌剤用薬剤学的組成物を提供することができる。
【0016】
さらに他の具現例によれば、1)アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド化合物またはその誘導体に有機溶媒を添加して遊離塩基を抽出する段階、及び2)前記遊離塩基溶液にリン酸(phosphoric acid)または酒石酸(tartaric acid)を添加する段階、を含む、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル、乾燥シロップ剤または注射剤の形態の薬剤学的組成物を製造する方法を提供する。
【0017】
一具現例によれば、前記1)段階の有機溶媒よりも溶解度が低い溶媒をさらに添加する段階をさらに含みうる。
【0018】
一具現例によれば、前記1)段階の有機溶媒は、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、クロロホルム(chloroform)、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide、DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、アセトニトリル(acetonitrile)、及び酢酸エチル(ethyl acetate)からなる群から選択される1つ以上を含みうる。
【0019】
一具現例によれば、前記1)段階の溶媒よりも溶解度が低い溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノールを含むアルコール類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、及びアセトン(acetone)からなる群から選択される1つ以上を含みうる。
【0020】
一具現例によれば、高温減圧滅菌法または無菌濾過法で滅菌処理する段階をさらに含みうる。
【0021】
その他の本発明の具現例の具体的な事項は、以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0022】
本発明のアルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩化合物、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド酒石酸塩化合物またはこれらの組み合わせによれば、薬効及び有効量などの特性を保持しながらも、水分に対する安定性を向上させうる。また、吸湿性を改善させることにより、製剤の生産及び製品化工程を単純化することができる。特に、製造過程中に安定性を保持させることにより、柔軟物質の生成を防止して、安全かつ製造が容易な化合物及び薬剤学的組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩錠剤の溶出パターンを示すグラフである。
図2】アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩カプセルの溶出パターンを示すグラフである。
図3】実施例12の柔軟物質の生成量を測定した結果を示すグラフである。
図4】水分含有量の変化を示すグラフである。
図5】実施例及び比較例の柔軟物質の生成量を比較したグラフである。
図6】保管温度による実施例13の柔軟物質の生成量を示すグラフである。
図7】保管温度による実施例14の柔軟物質の生成量を示すグラフである。
図8】アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩凍結乾燥注射剤組成物の性状を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施例を有することができるので、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0025】
本明細書に使われる用語、「薬剤学的組成物」は、「薬学的組成物」及び「薬学的に許容可能な組成物」と混用して記載し、投与対象に比較的非毒性であり、無害な有効作用ができる組成物であって、前記組成物から起因する副作用が薬物の効能を低下させず、化合物が投与される対象に深刻な刺激を誘発せず、化合物の生物学的活性と物性とを損傷させない任意の有機または無機化合物の剤型を意味する。
【0026】
本発明で使われる用語「投与対象」とは、「適用対象」、「投与個体」及び「投与有機体」と混用して記載し、HDAC抑制が必要なヒトを含んだあらゆる動物を意味する。
【0027】
以下、本発明の具現例によるアルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド酒石酸塩、またはこれらの組み合わせを含む薬剤学的組成物についてより詳細に説明する。
【0028】
アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドまたはその誘導体は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)抑制剤としての可能性が確認されている(大韓民国登録特許第0814092号)。本発明では、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドまたはその誘導体の薬効及び有効量などの特性を保持しながらも、水分に対する安定性を改善するために、多種の許容可能な塩のうちから物理化学的に最も理想的であり、安定した形態を保持する塩の形態について研究した。
【0029】
具体的に、本発明は、化学式1(アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩)の化合物、化学式2(アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド酒石酸塩)の化合物またはこれらの組み合わせを含む薬剤学的組成物を提供する。
【0030】
【化3】
【0031】
【化4】
【0032】
前記化学式1または化学式2において、Rは、ハロフェニル、C1-3アルコキシ、C1-3アルコキシC1-3アルキル、シクロヘキサニル、フラニル、チオフェニル、イミダゾール、イミダゾリジニルC1-3アルキル、C1-3アルキルアミノ、ジC1-3アルキルアミノ、ヒドロキシフェニル、テトラヒドロフラニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オキソピロリジニル、C1-3アルコキシフェニル、ジC1-3アルキルアミノフェニル、C1-3アルキルピロリジニル、及びトリフルオロメトキシフェニルで構成された群から選択された1つ以上の置換体で置換または非置換のC1-3アルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキルC1-3アルキル、ベンジル、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルカボニルで置換または非置換のピロリジン、C1-3アルキルまたはC3-8シクロアルキルで置換されたピペリジン、フラン、またはC3-8シクロアルキルであり、
但し、非置換のC1-2アルキル及びC1-2アルキルピロリジニルで置換されたC1-2アルキルは除く。
【0033】
また、具体的な具現例によれば、前記Rは、N,N-ジメチルプロピルアミンである。
【0034】
本発明は、化学式1または化学式2のように、リン酸塩または酒石酸塩を含むアルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド化合物を提供し、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド誘導体として望ましい化合物としては、下記化合物で構成された群から選択されうる。
【0035】
1)(E)-N1-(3-(1H-イミダゾール-1-イル)プロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)オクテンジアミド、
2)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(4-ヒドロキシフェネチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
3)(E)-N1-(3-(ジメチルアミノ)-2,2-ジメチルプロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)オクテンジアミド、
4)(E)-N1-(2-(ジイソプロピルアミノ)エチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)オクテンジアミド、
5)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(1-メトキシプロパン-2-イル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
6)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(4-メトキシベンジル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
7)(E)-N1-(4-フルオロフェネチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
8)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)-2-オクテンジアミド、
9)(E)-N1-(2-シクロヘキセニルエチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
10)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(3-(2-オキソピロリジン-1-イル)プロピル)-2-オクテンジアミド、
11)(E)-N1-(フラン-2-イルメチル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
12)(E)-N1-(4-(ジメチルアミノ)ベンジル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
13)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(2-メトキシエチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
14)(E)-N1-シクロヘキシル-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
15)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(チオフェン-2-イルメチル)-2-オクテンジアミド、
16)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(4-メトキシフェネチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
17)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(4-(トリフルオロメトキシ)ベンジル)-2-オクテンジアミド、
18)(E)-N1-(1-(シクロヘキシルメチル)ピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
19)(E)-N1-(1-シクロペンチルピペリジン-4-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
20)(E)-N1-(1-ベンジルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
21)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(1-イソプロピルピロリジン-3-イル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
22)(E)-N1-(1-(シクロヘキサンカルボニル)ピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
23)(E)-3-(8-(ヒドロキシアミノ)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-8-オキソ-2-オクタンアミド)ピロリジン-1-カルボン酸t-ブチルエステル、
24)(E)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-N1-(ピロリジン-3-イル)2-オクテンジアミド、
25)(E)-N1-(1-シクロヘキシルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-2-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
26)(E)-N1-(1-シクロプロピルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
27)(E)-N1-(1-シクロプロピルピペリジン-4-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
28)(E)-N1-(1-エチルピペリジン-4-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
29)(E)-N1-(1-エチルピロリジン-3-イル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
30)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(2-(1-メチルピロリジン-2-イル)エチル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、及び
31)(E)-N8-ヒドロキシ-N1-(1-イソプロピルピペリジン-4-イル)-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド、
32)(E)-N1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド。
【0036】
本発明の他の具現例によれば、
1)アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド化合物またはその誘導体に有機溶媒を添加して遊離塩基を抽出する段階、及び、
2)前記遊離塩基溶液にリン酸または酒石酸を添加する段階、を含む、化学式1または化学式2の化合物またはこれらの組み合わせを含む薬剤学的組成物の製造方法を提供する。
【0037】
一具現例によれば、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドまたはその誘導体は、固体、ゲルまたは溶液の状態であり、前記溶液の状態は、有機溶媒に完全に溶解されている状態または懸濁液の状態を意味する。
【0038】
一具現例によれば、前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、及び酢酸エチルからなる群から選択される1つ以上を含みうる。例えば、比較的溶解度が高いメタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される1つ以上を含みうる。
【0039】
一具現例によれば、前記1)段階の有機溶媒よりも溶解度が低い溶媒をさらに添加する段階をさらに含みうる。例えば、前記1)段階の溶媒よりも溶解度が低い溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノールを含むアルコール(alcohol)類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、及びアセトンからなる群から選択される1つ以上を含みうる。例えば、有機溶媒をアルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドまたはその誘導体に添加した後、沈殿、すなわち、塩の生成有無を観察し、必要に応じて、前記添加した有機溶媒よりも溶解度が低い溶媒をさらに添加して沈殿有無を観察することができる。前記溶解度が低い溶媒の添加は、2~5回繰り返し、例えば、2回繰り返して塩を収得することができる。
【0040】
本発明の薬剤学的組成物は、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル、乾燥シロップ剤または注射剤の形態で提供されうる。具体的に、水または他の適当な液体媒質と共に再構成に適したタブレット、ペレット、顆粒、カプセル、懸濁液、エマルジョンまたは粉末の形態のような如何なる便利な形態にも提供されうる。また、経口投与剤または注射剤の形態で適用可能である。
【0041】
経口投与用薬剤学的組成物としては、微結晶セルロース、マンニトール、乳糖及びラクトースからなる群から選択される1種以上の希釈剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びベヘン酸グリセリルからなる群から選択される1種以上の滑沢剤、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される1種以上の結合剤を含みうる。また、例えば、錠剤またはカプセル剤100重量部に対して、コーティング層を1~10重量%の含量で含みうる。具体的に、例えば、コーティング層は、水溶性コーティング基剤を含み、通常使われるコーティング基剤を使用することができる。さらに具体的に、例えば、ポリビニルアルコール誘導体、メタクリル酸誘導体及びポリアクリル酸誘導体を含むコーティング基剤を含み、例えば、Opadry(登録商標)、Kollicoat(登録商標)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群から選択される1種または2種以上を利用することができ、例えば、水分及び光の遮断効果が比較的優れたポリビニルアルコール含有Opadry(登録商標)を利用できる。
【0042】
経口投与用組成物顆粒剤を製造する場合、水分安定性が不安定であるという特性を勘案して、結合溶媒として精製水は使用しないことが望ましく、製造工程のうち、除去が容易なエタノールを使用することができる。通常の経口投与用組成物に使われる滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムは、本発明によるアルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドと配合適合性が不良であるので、代替物を使用することができる。
【0043】
一具現例によれば、前記添加物の以外に化合物と配合適合性に優れた医薬品賦形剤を添加することができる。
【0044】
注射剤組成物としては、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド成分は、水によく溶ける水溶性物質であるために、液相の形態で提供され、一般的に、難溶性物質に使われる可溶化剤及びその他の添加剤の使用が必須的ではなく、添加剤との配合適合性が不安定するので、最小の添加剤を使用することが望ましく、さらに具体的には、窒素パージされた注射用水に溶解後,凍結乾燥させて製造することができる。
【0045】
一具現例によれば、滅菌処理する段階をさらに含みうる。滅菌処理方法としては、乾熱滅菌、加圧または減圧滅菌、濾過滅菌、ガス滅菌、放射線滅菌などを含みうる。濾過滅菌法には、例えば、ニトロセルロース膜フィルターを使用し、例えば、0.45μm、0.2μmなどのフィルターを使用することができる。本発明では、例えば、高温減圧滅菌法または無菌濾過法で滅菌処理する段階をさらに含みうる。
【0046】
本発明の他の具現例によれば、前記したような化学式1の化合物、化学式2の化合物またはこれらの組み合わせを有効成分として含有する抗癌剤用薬剤学的組成物を提供することができる。
【実施例
【0047】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例1ないし実施例4
服用の便利性及び生産製造が容易な錠剤組成物を製造するために、配合適合性の試験結果に基づいて表1の組成のように、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩と安定性が確保された添加剤を使用して錠剤組成物を製造した。アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩として、(E)-N1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミドリン酸塩化合物(CG200745PPA)を使用した。以下の表に示した重量の単位は、mgである。
【0049】
CG200745PPAの流動性が不良であるという性状を理由に、直打法による製造方法よりは結合溶媒としてエタノールを使用することにより、顆粒法で錠剤組成物を製造した。また、CG200745PPA原料特性上、打錠工程で打錠圧を受ける時に、パンチと錠剤との分離が難しいので、添加される賦形剤の比率を高めて、主成分性状の影響を最小化しようとした。
【0050】
また、表2に錠剤パンチ時に、組成物が機械に挟まれる程度によって、分離程度(mold release)の良好及び不良と示し、機械表面に貼り付く程度(sticking)によって、○:貼り付かない、X:貼り付く、△:良好と示し、打錠後、錠剤の層割れ現象によって、キャッピング(capping)程度を、○:キャッピングなし、X:キャッピング発生と示した。評価は、分離程度及びスティッキング(sticking)を肉眼で観察し、キャッピング程度は、手で錠剤に物理的な力を加えて分離させながら確認する方法で進行した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
実施例1ないし実施例4の結果、主成分に比べて、賦形剤の比率が2:8の比率にも、パンチで錠剤が挟まれる現象があって、錠剤の射出が難しく、パンチ表面に混合物が貼り付くスティッキング現象が発生することを確認した。これは、滑沢剤の種類及び量を増加しても、大きく改善されないことを確認した。
【0054】
実施例5ないし実施例8
スティッキング現象を改善するために、表3のように賦形剤の量を増加させて、主成分の比率を下げて錠剤を製造した。また、打錠性の評価に対して表4に示した。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
実施例9及び実施例10
CG200745PPAは、抗癌剤として適用可能であり、投薬対象のほとんどが抗癌の治療を受けている患者であって、錠剤のサイズが大きくなれば、服用するのに非常に難しいだけではなく、服用に拒否感が生じる恐れがあるために、それを改善しようとした。打錠工程のように製造に物理的な影響が少なく、工程が単純なカプセル剤型組成物を製造した。表5の組成のように、服用の便利性のために、製造可能な最小限の賦形剤を使用し、工程単純化のために、直混合で製造した。また、安息角測定器を使用して、表6による安息角測定基準(General Chapters;1174、USP)に流動性を評価した結果を表7に良好及び不良と示し、スティッキング程度を示した。
【0058】
0号カプセル号及び1号カプセル号は、EMBO CAPS(硬質カプセル、ソーフン)を使用した。
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
実施例11及び実施例12
流動性を改善するために、顆粒で混合物を製造し、表8によって、1号カプセルに充填が可能な組成物を製造した。また、流動性、スティッキング程度及び質量偏差を表9に示した。
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
顆粒を充填させたカプセルは、流動性が良好であって、質量偏差が少ない結果を示した。総重量290mgは、混合物の大きな体積の特性のために、1号充填時に問題があると見られて、総重量260mgの混合物の組成物を選定した。
【0066】
実験例1:錠剤の溶出評価
大韓民国薬典溶出試験法の第2法(パドル法、装置2)の規格によって、実施例8の製剤に対する生体外(in vitro)溶出試験を進行した。溶出液は、4液全液で進行し、その結果は、図1及び表10に示した。
【0067】
【表10】
【0068】
実験例2:カプセルの溶出評価
実験例1と同様にCG200745PPAカプセルも、大韓民国薬典溶出試験法の第2法(パドル法、装置2)の規格によって、実施例12の製剤に対する生体外溶出試験を進行した。溶出液は、4液全液で進行し、その結果は、図2及び表11に示した。
【0069】
【表11】
【0070】
実験例3:実施例12のカプセル組成物の柔軟物質の評価
実施例12の柔軟物質の変化量を評価するために、実施例12の組成物を加速条件チャンバ(45℃±2、75%±5)に入れ、6ヶ月間柔軟物質の生成量を測定した。柔軟物質の生成量の測定は、実施例12の組成物を前処理後、大韓民国薬典一般試験法の液体クロマトグラフ法によって試験して、生成された柔軟物質のピーク面積を測定した(それぞれ柔軟物質0.2%以下、総柔軟物質1.0%、測定装備:HPLC LC-2030C_Shimadzu)。その結果は、表12及び図3に示した。表12において、柔軟物質の生成量の単位は、%である。また、図3は、加速条件28分時点の柔軟物質を測定した結果であり、基準値は、0.2%である。
【0071】
【表12】
【0072】
表12及び図3に示されたように、RT28.3分のピーク(peak)を除いた残りの柔軟物質の生成量は、不備であり、RT28.3柔軟物質ピークも、それぞれ柔軟物質基準に加速6ヶ月間適したことを確認した。
【0073】
実験例4:安定性の評価
本発明による化合物の安定性を評価するために、比較例1として、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド化合物を使用し、実施例13として、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミド酒石酸塩を使用し、実施例14として、アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドリン酸塩を使用した。アルキルカルバモイルナフタレンイルオキシオクテノイルヒドロキシアミドとしては、(E)-N1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N8-ヒドロキシ-2-((ナフタレン-1-イルオキシ)メチル)-2-オクテンジアミド化合物を使用した。
【0074】
安定性の評価は、室温(20~25℃、50%以下)、長期(25±2℃及び60±5%RH)、加速(40±2℃及び75±5%RH)及び苛酷(60±2℃)条件で保管時間による変化を観察することで進行した。
【0075】
実験例4-1:水分含有量の変化の評価
水分含有量の変化を評価するために、実施例及び比較例による化合物を室温(20~25℃、50%以下)でオープン状態で保管し、初期水分含有量と3日後の水分含有量との差で変化を測定して、その結果を下記図4に示した。水分含有量は、大韓民国薬典一般試験法の水分測定法(カールフィッシャー法)のうち、容量滴定法によって測定した(測定装備:701KF_Metrohm)。
【0076】
図4に示されたように、比較例1の場合、約3%水分含有量が増加し、実施例13の場合、2%増加し、実施例14は、約0.01%であって、その変化量が極めて微小であった。
【0077】
実験例4-2:性状変化の評価
比較例及び実施例による化合物の性状変化を評価するために、下記表13のような条件によって、それぞれの化合物をオープンして保管した後、変化を観察した。
【0078】
【表13】
【0079】
表13に示されたように、比較例1の場合、1日(24時間)経過後、水分を吸収して、初期スポンジのような固相(foam)で粘性が高い液体またはゲル構造で性状が変化され、実施例14は、条件に関係なく性状が一定に保持されることを確認することができる。
【0080】
実験例4-3:含量変化の評価
実施例による化合物の含量変化を評価するために、それぞれの化合物をオープン状態またはポリエチレン瓶包装(シリカゲル追加)状態で保管して含量の変化を測定した。含量の測定は、比較例及び実施例を前処理後、各液を大韓民国薬典一般試験法の液体クロマトグラフ法によってCG200745ピーク面積を測定した(測定装備:HPLC LC-2030C_Shimadzu)。含量基準は、自社基準及び試験方法に基づいて表示量の95.0~105.5%に該当するCG200745を含有しなければならない。
【0081】
前記オープン状態で測定した結果は、下記表14に示し、前記瓶包装状態で測定した結果は、下記表15に示した。
【0082】
【表14】
【0083】
【表15】
【0084】
実験例4の結果を総合すれば、実施例13の場合、室温条件で含量が一定レベルに保持され、実施例14の場合、包装状態、加温及び湿度に影響なしに含量が一定に保持されることを確認することができる。
【0085】
実験例5:柔軟物質の変化量の比較
比較例及び実施例による化合物の柔軟物質の変化量を評価するために、それぞれの化合物をオープン状態で室温で3日間保管した後、実験例3と同じ方法で柔軟物質の生成量を測定して、図5に示した。図5に示されたように、比較例1の場合、柔軟物質が10%程度増加し、実施例13は、0.05%、実施例14は、0.02%であって、その増加量が相対的に微小であることを確認することができる。
【0086】
また、実施例13及び実施例14による化合物に対して、温度及び保管期間による柔軟物質の生成量の変化を下記図6及び図7に示した。図6に示されたように、実施例13は、比較的低い温度で柔軟物質の生成量がある程度範囲で保持され、図7に示されたように、実施例14の場合、柔軟物質の生成量が保管温度及び時間に影響を受けず、約0.22%の一定範囲内で均一に保持されることを確認することができる。
【0087】
実施例15
CG200745PPAは、抗癌剤として癌患者に癌の治療を目的として投与される薬物であるために、患者の状態によって、さまざまな投与経路を考慮しなければならない。すなわち、経口投与が難しい投与対象に投与可能な経路は、静脈、筋肉注射などがあり、そのためには、液相形態の注射剤または使用直前に直ちに希釈して使用する凍結乾燥注射剤組成物などがある。溶解状態で安定性及び他の添加剤との配合適合性を向上させるために、可溶化剤及びその他の添加剤を使用せず、表16のような組成で窒素パージさせた注射用水に溶かして凍結乾燥した。製造された組成物の写真を図8に示した。
【0088】
【表16】
【0089】
前記のような結果から確認できるように、本発明によるCG200745PPA化合物は、薬効及び有効量などの特性を保持させながら溶出率を向上させうる。
【0090】
したがって、HDAC阻害と関連した抗癌剤、例えば、経口投与及び注射剤として投与対象に容易に適用することができる。
【0091】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、当業者ならば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能である。また、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、このような実施例によって、本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって解釈されねばならず、それと同等な範囲内にあるあらゆる技術思想は、本発明の権利範囲に含まれると解釈されねばならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】