(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】大気メタン及び窒素酸化物排出を減少するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A23K 10/10 20160101AFI20220105BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20220105BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220105BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A23K10/10
A23K10/30
C12N1/00 P
C12N1/20 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518064
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 US2019055156
(87)【国際公開番号】W WO2020076800
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519246261
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(74)【代理人】
【識別番号】100201938
【氏名又は名称】杉山 静可
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック,ケン
(72)【発明者】
【氏名】ツォルナー,ポール,エス.
【テーマコード(参考)】
2B150
4B065
【Fターム(参考)】
2B150AA02
2B150AA04
2B150AB01
2B150AB03
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2B150AC01
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(57)【要約】
本発明は、家畜飼料添加物及び/又はサプリメントを使用して、大気中のメタン及び/又は亜酸化窒素排出を減少するための組成物及び方法を提供する。好ましい実施形態において、有益な微生物及び/又は微生物増殖副生成物を含む組成物を、動物が飼料及び/又は飲料水を摂取する前に、動物飼料及び/又は飲料水と接触させることを含む。本組成物は、例えば、動物の消化系内のメタン生成微生物を制御して、動物及び動物の老廃物から生成される腸溶性メタン放出の量を減少させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有益な微生物及び/又は微生物増殖副生成物を含む組成物を、家畜動物が飼料及び/又は飲料水を摂取する前に、前記動物の飼料及び/又は飲料水と接触させることを含み、
前記微生物は、
Wickerhamomyces anomalus、
Bacillus licheniformis、
Bacillus amyloliquefaciens、
Bacillus subtilis、
Starmerella bombicola、
Pichia occidentalis、
Pleurotus ostreatus、
Lentinula edodes、
Monascus purpureus、
Trichoderma harzianum、
Trichoderma viride、
Acremonium chrysogenum、
Saccharomyces cerevisiae、及び/又は
Saccharomyces boulardiiであり、
前記家畜動物は、飼料及び/又は飲料水を提供され、かつ/又は前記飼料及び/又は水を摂取し、
前記組成物の前記家畜の摂取は、前記組成物が前記家畜の消化器系に存在するメタン生成微生物と接触し、前記メタン生成微生物を制御することを可能にする、大気中のメタン放出を減少する方法。
【請求項2】
前記組成物は、前記微生物が培養された発酵ブロスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物
Wickerhamomyces anomalus、
Bacillus licheniformis、
Bacillus amyloliquefaciens、及び
Pleurotus ostreatusを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記増殖副生成物は、メタン生成微生物を制御することができる酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素は、エキソ-β-1,3-グルカナーゼである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増殖副生成物は、HMG-CoA阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記HMG-CoA阻害剤は、ロバスタチン及び/又は別のスタチンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記増殖副生成物は、バリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記増殖副生成物は、バイオサーファクタントである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バイオサーファクタントは、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリトリトール脂質、及びトレハロース脂質から選択される糖脂質である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオサーファクタントは、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アルスロファクチン及びリケニシンから選択されるリポペプチドである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記バイオサーファクタントは、粗形態であり、前記粗形態は、バイオサーファクタント生成微生物が培養された発酵ブロス中のバイオサーファクタントを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記粗形態バイオサーファクタントは、それを生成する微生物なしで使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物は、動物の飼料及び/又は飲料水と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物は、前記動物の飼料に処方される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物は、加工された乾燥動物飼料を製造するために使用される原料と混合され、前記原料は、モルセル、ペレット、キブル、ケーキ、ナッツ、トリート又はビスケットを形成するために加工及び/又は調理される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物は、乾燥干草、わら、穀物、マメ科植物及びサイレージから選択される動物飼料と混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物を前記飼料及び/又は水と接触させる前に、前記方法は、前記組成物が現地の条件に適用される家畜動物又は家畜生産施設を評価し、前記現地の条件に合わせてカスタマイズされた前記組成物の好ましい処方を決定し、前記動物又は施設から300マイル以内の微生物増殖施設で前記好ましい処方を用いて前記組成物を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記評価される現地の条件は、前記動物の年齢、健康、サイズ及び/又は種、前記動物を生産する目的、前記動物の腸内の微生物の種、施設における温室効果ガス排出の量及び種類、現在の気候、現在の季節及び時節、ならびに組成物の適用様式及び/又はレートうちの1つ以上を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
家畜生産に関与する事業者によって使用される炭素クレジットの数が減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
メタン放出の発生に対する前記方法の効果を評価するため、及び/又は前記動物の消化器系及び/又は老廃物中のメタン生成物の制御に対する前記方法の効果を評価するために測定を行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記動物の成長、免疫の健康、栄養吸収、及び/又は腸内微生物の健康が、前記組成物の摂取によって増進する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
家畜に給餌するための組成物であって、微生物及び/又は微生物増殖副生成物を含み、
前記微生物は、
Wickerhamomyces anomalus、
Bacillus licheniformis、
Bacillus amyloliquefaciens、
Bacillus subtilis、
Starmerella bombicola、
Pichia occidentalis、
Pleurotus ostreatus、
Lentinula edodes、
Monascus purpureus、
Trichoderma harzianum、
Trichoderma viride、
Acremonium chrysogenum、
Saccharomyces cerevisiae、及び/又は
Saccharomyces boulardiiである、組成物。
【請求項24】
前記増殖副生成物は、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリトリトール脂質、及びトレハロース脂質から選択される糖脂質バイオサーファクタントである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記増殖副生成物は、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アルスロファクチン及びリケニシンから選択されるリポペプチドである、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記増殖副生成物は、粗形態であり、前記粗形態は、増殖副生成物が生成された発酵ブロス中の増殖副生成物を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
粗形態増殖副生成物を生成した微生物を含まない粗形態増殖副生成物を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記微生物
Wickerhamomyces anomalus、
Bacillus licheniformis、
Bacillus amyloliquefaciens及び
Pleurotus ostreatusを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
前記増殖副生成物は、メタン生成微生物を制御することができる酵素である、請求項23に記載の組成物。
【請求項30】
前記酵素は、エキソ-β-1,3-グルカナーゼである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記増殖副生成物は、HMG-CoA阻害剤である、請求項23に記載の組成物。
【請求項32】
前記HMG-CoA阻害剤は、ロバスタチン及び/又は別のスタチンである、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記増殖副生成物は、バリンである、請求項23に記載の組成物。
【請求項34】
動物の健康を促進するための1つ以上の栄養素をさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項35】
前記1つ以上の栄養素は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ビタミン、微量元素、脂肪、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロール、酵素、及び微量ミネラルの選択された供給源である、請求項34に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2018年10月9日出願の米国仮出願第62/743,167号及び2019年8月13日出願の米国仮出願第62/885,929号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
大気中の熱を閉じ込めるガスは、「温室効果ガス」又は「GHG」と呼ばれ、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、及びフッ素化ガスを含む(非特許文献4の6)。
【0003】
二酸化炭素(CO2)は、化石燃料(石炭、天然ガス、及び石油)、固体廃棄物、木材及び木材製品を燃焼させることによって、またある種の化学反応、例えば、セメントの製造の結果として、大気中に入る。二酸化炭素は、例えば、生物学的炭素循環の一部としての植物による吸収によって、大気から除去される。
【0004】
亜酸化窒素(N2O)は、産業活動中や、化石燃料及び固体廃棄物の燃焼中に放出される。農業では、窒素含有肥料の過剰施用及び土壌管理の不十分さもまた、亜酸化窒素排出の増加につながり得る。
【0005】
例えば、ハイドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、六フッ化硫黄、三フッ化窒素等のフッ素化ガスは、さまざまな工業プロセスから排出される合成の強力な温室効果ガスである。
【0006】
メタン(CH4)は、石炭、天然ガス、石油の製造・運搬時に排出される。さらに、他の農業慣行、及びラグーン及び自治体の固形廃棄物埋立地における有機廃棄物の崩壊は、メタン放出を生じ得る。しかしながら、特に、メタン排出は家畜の製造からも生じ、その消化系の多くはメタン生成微生物を含む(非特許文献5)。
【0007】
世界中の監視ステーションからの最近の測定値、及び南極とグリーンランドからの氷層に捕捉された気泡からの古い気泡の測定値に基づいて、GHGの地球規模大気濃度は過去数百年にわたって著しく上昇している(非特許文献4の、例えば、6、15)。
【0008】
特に、1700年代に始まった産業革命以来、人間の活動が、化石燃料の燃焼、森林の伐採、その他活動により、大気中の温室効果ガスの排出量に貢献してきた。大気中に排出される温室効果ガスの多くは、10年から数千年に及ぶ長期間にわたって残存する。時間が経つにつれて、これらのガスは、化学反応によって、又は大気から温室効果ガスを吸収する海洋及び植物等の排出吸収源によって大気から除去される。それぞれの温室効果ガスは寿命が異なり、大気中の熱を捕捉する能力が異なる上に、異なるガスを比較できるようにするために、一般に、排出量を各ガスの地球温暖化係数を用いて二酸化炭素換算する。これは、一定量のガスが排出された後、100年間にどれだけの地球温暖化に寄与しているかを計測するものである。
【0009】
これらの考察に基づき、EPAは、「放射強制力」とも呼ばれる温室効果ガスによる暖房効果が、1990年以降、約37%増加したと判断した(非特許文献4の16)。
【0010】
1990年から2010年にかけて、主要な温室効果ガスの地球規模排出量は増加し、地球規模排出量の約3/4を占める二酸化炭素の純排出量は42%増加し、一方、メタンの排出量は約15%増加し、フッ素化ガスの排出量は2倍になり、亜酸化窒素の排出量は約9%増加した(非特許文献4の14)。
【0011】
世界の指導者たちは、条約やその他州間協定を通じて、GHG排出量の増加を抑制しようと試みてきた。そのような試みの1つは、炭素クレジットシステムの使用によるものである。炭素クレジットとは、1トンの二酸化炭素又は同等のGHGを排出する権利を表す取引可能な証明書又は許可証の総称である。典型的な炭素クレジットシステムでは、管理機関が、事業者が生産できるGHG排出量の割当量を設定する。これらの割当を超える場合、事業者は、すべての炭素クレジットを利用していない他の事業者から追加割当量を購入する必要がある。
【0012】
炭素クレジットシステムの1つのゴールは、このような割当の取引からの恩恵を得るために、企業に、環境技術、機械工業、実践への投資を促すことである。気候変動枠組条約(UNFCCC)の京都議定書に基づき、多くの国が、排出割当の取引を含むGHG削減政策に国際的に拘束されることに合意している。米国は京都議定書に拘束されておらず、米国には中央国家排出権取引制度は存在しないが、カリフォルニア州や北東部州のグループ等、いくつかの州ではこのような取引制度を採用し始めている。
【0013】
大気中のGHG、特にメタン排出を減少するための別の試みとしては、家畜生産における飼料添加物又はサプリメントの使用が挙げられる。例えば、ウシ、ヒツジ、水牛、ヤギ、シカ及びラクダのような反芻家畜は、繊維質の植物物質の消化を助ける微生物を含むルーメン(又は前胃)を持っている。しかしながら、これらの微生物の多くは、メタン生成性である。これらのメタン生成細菌による植物体の腸内発酵の結果、動物はげっぷによりメタンガスを大気中に放出する(非特許文献1)。
【0014】
メタン生成細菌を減少させる飼料添加物及びサプリメントを家畜の飼料に使用することによって、消化系内のメタン生成活性を減少させることができ、したがって大気中へのメタンの放出を減少させることができる。今日までの飼料添加物は、抗生物質を含む合成化学物質、ならびにタンニン、海藻、脂肪及び油等の天然物質を含んでいた(非特許文献1)。
【0015】
地球温暖化は、気温変動の急峻化、地球規模の降水量の増加、洪水や干ばつの増加、海面水温や海面水位の変化に寄与する可能性があるため、これらの有害な影響を緩やかにするために温室効果ガスを削減する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Government of Western Australia. (2018). "Carbon farming: reducing methane emissions from cattle using feed additives." https://www.agric.wa.gov.au/climate-change/carbon-farming-reducing-methane-emissions-cattle-using-feed-additives.("Carbon Farming 2018")
【非特許文献2】Pidwirny, M. (2006). "The Carbon Cycle". Fundamentals of Physical Geography, 2nd Edition. Viewed October 1, 2018. http://www.physicalgeography.net/fundamentals/9r.html. ("Pidwirny 2006").
【非特許文献3】Storm, Ida M.L.D., A.L.F. Hellwing, N.I. Nielsen, and J. Madsen. (2012). "Methods for Measuring and Estimating Methane Emission from Ruminants." Animals (Basel). Jun. 2(2): 160-183. doi: 10.3390/ani2020160.
【非特許文献4】United States Environmental Protection Agency. (2016). "Climate Change Indicators in the United States. "https://www.epa.gov/sites/production/files/2016-08/documents/climate_indicators_2016.pdf." ("EPA Report 2016").
【非特許文献5】United States Environmental Protection Agency. (2016). "Overview of Greenhouse Gases." Greenhouse Gas Emissions. https://www.epa.gov/ghgemissions/overview-greenhouse-gases "Greenhouse Gas Emissions 2016").
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の概要
本発明は、家畜飼料添加物及び/又はサプリメントを使用して、大気中のメタン及び/又は亜酸化窒素排出を減少するための組成物及び方法を提供する。好ましい実施形態において、1つ以上の有益な微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む組成物を、動物が飼料及び/又は飲料水を摂取する前に、動物飼料及び/又は飲料水と接触させることを含む。本組成物は、例えば、動物の消化系内のメタン生成微生物を制御して、動物及び動物の老廃物から生成される腸溶性メタン放出の量を減少させることができる。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は、1つ以上の有益な微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む飼料組成物又は飼料添加物組成物を提供する。有益な微生物は、活性又は不活性形態であり得る。好ましい実施形態において、有益な微生物は、非病原性真菌、酵母及び/又は細菌である。
【0019】
特定の実施形態において、組成物は、1つ以上の真菌及び/又はその1つ以上の増殖副生成物を含む。真菌は、例えば、Pleurotus 属真菌、例えば、P.ostreatus(ヒラタケ)、Lentinula属真菌、例えばL.edodes(シイタケ)、及び/又はTrichoderma属真菌、例えば、T.harzianum及び/又はT.virideである。真菌は、生細胞若しくは不活性細胞、菌糸体、胞子及び/又は子実体の形態である。子実体は、存在する場合、例えば、細断及び/又はブレンドして顆粒及び/又は粉末形態にすることができる。
【0020】
一実施形態において、本組成物は、1つ以上の酵母及び/又はその1つ以上の増殖副生成物を含む。酵母は、例えば、Wickerhamomyces anomalus、Saccharomyces属(例えば、S.cerevisiae及び/又はS.boulardii)、Starmerella bombicola、Meyerozyma guilliermondii、Pichia occidentalis、Monascus purpureus、及び/又はAcremonium chrysogenumである。酵母は、生細胞若しくは不活性細胞、又は胞子の形態、ならびに乾燥細胞塊及び/又は休眠細胞(例えば、酵母加水分解物)の形態である。
【0021】
一実施形態において、組成物は、1つ以上の追加の有益な微生物、例えば、1つ以上のBacillus属細菌を含む。特定の実施形態において、Bacillus属は、B.amyloliquefaciens、B.subtilis及び/又はB.licheniformisである。
【0022】
例示的な実施形態において、組成物はW.anomalusを含む。例示的な実施形態において、組成物は、W.anomalus、P.ostreatus、L.edodes、S.cerevisiae及び/又はS.boulardiiのうちの1つ以上を含む。
【0023】
好ましい実施形態において、微生物ベースの組成物は、微生物増殖副生成物を含む。本組成物は、微生物及び/又は増殖副生成物が生成された発酵培地を含むことができる。
【0024】
一実施形態において、増殖副生成物は、それが生成された発酵培地から精製されている。あるいは、一実施形態において、増殖副生成物は、粗形態で利用される。粗形態は、例えば、目的の増殖副生成物を生成する微生物の培養から生じる液体上清の形態をとることができる。
【0025】
増殖副生成物は、例えば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、酵素、バイオサーファクタント、溶剤及び/又は他の代謝生成物を含む、細胞増殖の結果として生成される代謝生成物又は他の生化学物質を含むことができる。
【0026】
一実施形態において、組成物はロバスタチンを含む。ロバスタチンは、Pleurotus ostreatusの増殖副生成物であり、メタン生成細菌細胞膜合成に必須であるイソプレノイド構成単位、HMG-CoA還元酵素の形成に関与する酵素の抑制を介して、メタン生成古細菌を抑制する。一実施形態において、組成物は、Pleurotus菌の有無にかかわらず、精製形態のロバスタチンを含む。
【0027】
一実施形態において、組成物は、ロバスタチンの生成なしにHMG-CoA還元酵素活性を阻害することができる生きたLentinula edodeを含む。
【0028】
一実施形態において、組成物は、Monascus purpureusの発酵米製品である赤色酵母米又は麹を含む。赤色酵母米は、ロバスタチンと類似の構造を有し、HMG-CoA還元酵素活性を阻害する類似の能力を有する、増殖副生成物モナコリンKを含む。
【0029】
一実施形態において、組成物はバリンを含む。バリンは、家畜の成長及び健康を支援するのを助けるとともに、動物の消化過程による窒素(例えば、アンモニウム)排泄量を減少させるWickerhamomyces anomalus及びSaccharomyces属によって生成されるアミノ酸である。一実施形態において、組成物は、それを生成する酵母の有無にかかわらず、精製された形態のバリンを含む。
【0030】
一実施形態において、本組成物の増殖副生成物は、例えば、糖脂質又はリポペプチド等のバイオサーファクタントである。糖脂質は、例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリトリトール脂質及びトレハロース脂質を含むことができる。リポペプチドとしては、例えば、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アルスロファクチン及びリケニシンが挙げられる。
【0031】
有利な点として、バイオサーファクタントは、反芻動物消化器系におけるメタン生成細菌を制御するのに有用な抗菌特性を有することができる。
【0032】
一実施形態において、バイオサーファクタントは、それが生成された発酵培地から精製されている。あるいは、一実施形態において、バイオサーファクタントは、粗形態で利用される。粗形態のバイオサーファクタントは、例えば、バイオサーファクタント生成微生物の培養から生じる発酵ブロス中のバイオサーファクタント沈殿物を含む液体混合物の形態をとることができる。
【0033】
特定の実施形態において、バイオサーファクタントは、バイオサーファクタント生成微生物の浸漬培養から生じる液体発酵ブロス及び細胞を含有する微生物培養物の形態で組成物に添加することができる。特定の実施形態において、バイオサーファクタントは、ソホロ脂質である場合、この「培養形態」バイオサーファクタントは、Starmerella bombicola酵母細胞、SLP、及び他の酵母増殖副生成物をその中に含む発酵ブロスを含むことができる。酵母細胞は、動物の飼料と接触させるか、又は動物の飼料と処方する時点で活性又は不活性である。より低い濃度のSLPが望まれる場合、S.bombicola培養物を生じるSLP部分を除去し、そして例えば、1~4g/Lの残留SLP及び任意で酵母細胞及び他の増殖副生成物を有する残留液体を、本発明の方法において利用することができる。別のバイオサーファクタントの使用が望まれる場合、他のバイオサーファクタントを生成することができる任意の他の微生物を利用する同様の生成物が想定される。
【0034】
本組成物の微生物及び/又は微生物増殖副生成物は、小規模から大規模までの範囲の培養プロセスを通して得ることができる。これらの培養プロセスには、浸漬培養/発酵、固相発酵(SSF)、及び変形、ハイブリッド、及び/又はこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
一実施形態において、本組成物は、動物の飼料を補い、動物の健康及び/又は幸福を促進するための1つ以上の物質及び/又は栄養素、例えば、アミノ酸(必須アミノ酸を含む)、ペプチド、タンパク質、ビタミン、微量元素、脂肪、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロール、酵素、ならびに、鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ヨウ素、セレン、モリブデン、ニッケル、フッ素、バナジウム、スズ及びケイ素等の微量ミネラルの供給源等を含むことができる。いくつかの実施形態において、組成物の微生物は、これらの物質を生成及び/又は提供する。
【0036】
一実施形態において、組成物は、ケルプ抽出物、干し草、アルファルファ、わら、サイレージ、穀物及び/又はマメ科植物等のプレバイオティクスの1つ又は複数の供給源を含む。
【0037】
特定の実施形態において、本発明による組成物は、例えば、酵母細胞壁の有利な特性のために、例えば、精製された微生物代謝生成物単独よりも優れている。これらの特性としては、高濃度のマンノプロテイン及び酵母細胞壁の外表面の一部としての生体高分子ベータ-グルカンが含まれる。これらの化合物は例えば、有効な乳化剤として働く。さらに、組成物は、培養物中の残留バイオサーファクタント、ならびに溶剤、酸、ビタミン、ミネラル、酵素及びタンパク質等の他の代謝生成物及び/又は細胞成分をさらに含むことができる。したがって、組成物は、他の多くの用途の中でも、バイオサーファクタントとして作用し、抗菌性及び表面/界面張力低下特性を有することができる。
【0038】
好ましい実施形態において、本発明は、有益な微生物及び/又はその増殖副生成物を含む組成物を、動物が飼料及び/又は水を摂取する前に、家畜動物の飼料及び/又は飲料水と接触させる、大気中のメタン及び/又は亜酸化窒素放出を減少するための方法を提供する。有利な点は、本方法は、例えば、動物の消化系内のメタン生成微生物を制御し、動物及び/又はその排泄物によって生成及び/又は放出されるメタンの量を減少するために有用なことある。特定の具体的な実施形態において、家畜動物は反芻動物である。
【0039】
一実施形態において、組成物は、液体又は乾燥製品のいずれかとして使用される。一実施形態において、組成物は、液体又は乾燥形態のいずれかで、動物の飼料に、又は飼料添加物及び/又はサプリメントとして動物の飲料水に導入される。
【0040】
一実施形態において、組成物は、加工された湿潤及び/又は乾燥動物飼料を製造する際に利用される標準的な原料飼料成分に添加される。
【0041】
一実施形態において、組成物は、例えば、加工された乾燥モルセル、キブル、トリート、ケーキ、ナッツ、ビスケット、又はペレットの製造に利用される成分に添加される。補充された乾燥飼料片は、一片当たり一貫した濃度の微生物ベースの組成物を含む。他の実施形態において、組成物は、乾燥飼料片上の表面コーティングとして利用することができる。乾燥加工飼料片を製造するための当技術分野で公知の方法を使用することができる。特定の好ましい実施形態において、「低温」ペレット化処理、又は高熱もしくは蒸気を使用しない処理が使用される。
【0042】
一実施形態において、組成物は、家畜に飼料を与えるために使用される、わら、干し草、穀物、又は他の乾燥植物ベースの物質等の乾燥動物飼料に添加される。他の実施形態において、組成物は、放牧動物のための飼料添加物として放牧場に適用される。
【0043】
いくつかの実施形態において、本方法は、例えば、動物の成長の増進、動物の免疫機能の増進、飼料からの水及び栄養素の吸収の改善、ならびに動物の腸内微生物の健康の改善を含む、動物の健康上の利益を与えることができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、家畜生産施設の事業者によって使用される炭素クレジットの削減に利用することができる。したがって、特定の実施形態において、本方法は、当技術分野で標準的な技法を使用して、メタン放出の発生に対する方法の効果を評価するために、及び/又は家畜の消化系及び/又は老廃物中のメタン原の制御に対する方法の効果を評価するために、測定を実施することをさらに含む。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明は、家畜飼料添加物及び/又はサプリメントを使用して大気中のメタン放出を減少するための組成物及び方法を提供する。好ましい実施形態において、1つ以上の有益な微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む組成物を、動物がそれを摂取する前に動物飼料及び/又は飲料水と接触させる。この組成物は、例えば、動物の消化系内のメタン生成微生物を制御することができ、したがって、動物及び動物の老廃物から生成される腸溶性メタン放出の量を減少させることができる。
【0046】
選択された定義
本明細書中で使用される「バイオフィルム」は、細菌等の微生物の複合的な凝集体であり、ここで、細胞は、細胞外多糖マトリックスを介して互いに、及び/又は表面に接着する。バイオフィルム中の細胞は、液体培地中で浮遊又は泳動することができる単一細胞であり、同じ生物のプランクトン細胞とは生理学的に異なる。
【0047】
本明細書で使用される、望ましくない微生物(例えば、メタン生成細菌)に関して使用される「制御」という用語は、微生物を殺す、無能にする、固定化する、及び/又は微生物の個体数を減少させる、及び/又は望ましくないプロセス(例えば、メタン生成)を微生物に実行させることができないようにする行為にまで及ぶ。
【0048】
本明細書で使用される「飼育」動物とは、ヒトによって一定数の世代にわたって影響を受け、繁殖され、飼い慣らされ、制御された種の動物であり、動物とヒトとの間に共生的関係が存在する。好ましい実施形態において、飼育動物は「家畜」であり、これには飼料、繊維、及び労働といった商品を生産するために農業又は工業環境で飼育された動物が含まれる。家畜という用語に含まれる動物の種類にはアルパカ、ラマ、肉牛及び乳牛、バイソン、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、アッセイ、ラクダ、イヌ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、モルモットの家禽、及びスクワブが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
特定の好ましい実施形態において、家畜は、「反芻動物」、又は特殊化された腸内微生物叢の助けを借りて消化する前に植物ベースの飼料を発酵させるのに適した区画化された胃を利用する哺乳動物である。反芻動物としては、例えば、ウシ(例えば、バイソン、ボンゴ、バッファロー、ウシ、ウシ、ブル、オックス、クドゥ、アンバラ、水牛、ヤク、ゼブ)、ヒツジ、ヤギ、アイベックス、ギラフ、シカ、エルク、モース、カリブー、レニジカ、アンテロープ、ガゼル、インパラ、ワイルドビースト、及びカンガルーが挙げられる。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「採取された」は、増殖容器から微生物ベースの組成物のいくつか又は全てを除去することをいう。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「単離された」又は「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、有機化合物(例えば、小分子(例えば、以下に記載されるもの))、又は他の化合物は、天然において関連する、他の化合物(例えば、細胞物質)を実質的に含まない。例えば、精製又は単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然に存在する状態でそれに隣接する遺伝子又は配列を含まない。精製又は単離されたポリペプチドは、その天然に存在する状態でそれに隣接するアミノ酸又は配列を含まない。精製又は単離された微生物株は、天然に存在する環境から除去される。従って、単離された株は例えば、生物学的に純粋な培養物として、又はキャリアと会合した胞子(又は株の他の形態)として存在し得る。
【0052】
特定の実施形態において、精製された化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%である。好ましくは、調製物が少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の目的化合物である。例えば、精製された化合物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、98重量%、99重量%、又は100重量%の所望の化合物である。純度は任意の適宜標準的な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。
【0053】
「代謝生成物」とは、代謝によって生成される任意の物質(例えば、増殖副生成物)又は特定の代謝プロセスに関与するために必要な物質をいう。代謝生成物は、代謝の出発物質、中間体、又は最終生成物である有機化合物である。代謝生成物の例としては酵素、毒素、酸、溶剤、アルコール、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸、ポリマー、及び界面活性剤が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「メタン生成細菌」は、代謝の副生成物としてメタンガスを生成する微生物である。メタン生成細菌は古細菌であり、反芻動物及び非反芻動物(例えば、豚、家禽及び馬)の消化器系及び代謝老廃物中に見出される。メタン生成細菌としては、これらに限定されるものではないが、Methanobacterium属(例えば、M.formicicum)、Methanobrevibacter属(例えば、Mruminantium)、Methanococcus属(例えば、M.paripaludis)、Methanoculleus属(例えば、M.bourgensis)、Methanoforens 属(例えば、M.stordalenmirensis)、Methanofollis liminatans、Methanogenium wolfei、Methanomicrobium属(例えば、M. mobile)、Methanopyrus kandleri、Methanoregula boonei、Methanosaeta属(例えば、M.concilii、M.thermophile)、Methanosarcina属(例えば、M. barkeri, M. mazeii)、Methanosphaera、Methanospirillium hungatei、Methanothermobacter属、及び/又はMethanothrix sochngeniiが例示される。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「微生物ベースの組成物」という場合、微生物又は他の細胞培養物の増殖の結果として生成された成分を含む組成物を意味する。したがって、微生物ベースの組成物は、微生物自体及び/又は微生物増殖の副生成物を含む。微生物は、栄養状態、胞子形態、菌糸形態、任意の他の形態の微生物繁殖体、又はこれらの混合物であってよい。微生物は、プランクトン性であっても、バイオフィルム形態であっても、又は両方の混合物であってもよい。増幅副生成物は、例えば、代謝生成物(例えば、バイオサーファクタント)、細胞膜成分、発現タンパク質、及び/又は他の細胞成分である。微生物は、無傷であっても溶解されていてもよい。細胞は完全に存在しないか、又は、例えば、組成の少なくとも1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×10CFU/ml以上の濃度で存在してもよい。
【0056】
本発明はさらに、所望の結果を達成するために実際に適用される生成物である「微生物ベースの生成物」を提供する。微生物ベースの生成物は、微生物培養プロセスから採取された微生物ベースの組成物である。あるいは、微生物ベースの生成物は、添加されたさらなる成分を含む。これらの追加の成分としては、例えば、安定剤、緩衝剤、キャリア(例えば、水又は塩溶液)、さらなる微生物増殖を補助する添加栄養素、非栄養増殖エンハンサー、及び/又は、適用される環境中の微生物及び/又は組成物の追跡を容易にする薬剤が挙げられる。微生物ベースの生成物はまた、微生物ベースの組成物の混合物を含んでいてもよい。微生物ベースの生成物はまた、これらに限定されるものではないが、濾過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等のような、何らかの方法で処理された微生物ベースの組成物の1つ以上の成分を含んでもよい。
【0057】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内の全ての値について簡潔にしたものと理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50からなるグループからの任意の数、組み合わせ、又は下位範囲、ならびに例えば1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9も含まれるものとする。下位範囲に関して、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子下位範囲」が具体的に考えられる。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子下位範囲は、一方向には、1~10、1~20、1~30、及び1~40、又は他方向には、50~40、50~30、50~20、及び50~10が含まれる。
【0058】
本明細書で使用される「減少」とは、負の変化を意味し、「増加」とは、正の変化を意味し、正又は負の変化は、少なくとも0.25%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である。
【0059】
「有する」又は「含有する」と同義である「含む」という移行語句は、包括的又は制限がなく、追加の、非記載の要素又は方法ステップを排除しない。対照的に、「からなる」という移行語句は、請求項に規定されていない要素、ステップ、又は成分を排除するものである。「から本質的になる」という移行語句は、請求項の範囲を、特定の材料又はステップに限定する。また、請求項に記載された発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。「含む」という用語の使用は、記載された構成要素「からなる」及び「本質的になる」実施形態が意図される。
【0060】
特に明記されない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」という用語は包括的と理解される。本明細書で使用される「1つ」及び「その」は、単数又は複数であると理解される。
【0061】
特に言及されない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内と理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。
【0062】
本明細書に記載される変位のいずれかの定義における化学基の列挙の引用は、いずれかの1個の基又は列挙された基の組み合わせとしての変位の定義を含む。本明細書中の変位又は態様のための実施形態の列挙は、その実施形態を任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態もしくはその一部と組み合わせて含む。
【0063】
本明細書に引用されている全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
微生物ベースの組成物
好ましい実施形態において、本発明は、飼育動物に給餌するための組成物であって、1つ以上の有益な微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む組成物を提供する。有益な微生物は、活性又は不活性形態である。
【0065】
有益な微生物は、例えば、細菌、酵母及び/又は真菌である。これらの微生物は、天然の微生物であってもよく、又は遺伝的に改変された微生物であってもよい。例えば、微生物は、特定の特徴を示すために特定の遺伝子で形質転換される。微生物はまた、所望の株の突然変異体であってもよい。本明細書中で使用される場合、「変異体」は、基準微生物の株、遺伝子変異体又はサブタイプを意味し、ここで、変異体は基準微生物と比較して、1つ以上の遺伝子変異(例えば、点変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、欠失、重複、フレームシフト変異又は反復拡大)を有する。変異体を作製するための手順は、微生物学的技術分野において周知である。例えば、UV突然変異誘発及びニトロソグアニジンは、この目的のために広く使用されている。
【0066】
一実施形態において、有益な微生物は、酵母及び/又は真菌である。本発明による使用に適した酵母及び真菌種には、Acaulospora、Acremonium chrysogenum、Aspergillus、Aureobasidium(例えば、A.pullulans)、Blakeslea、Candida(例えば、C.albicans、C.apicola、C.batistae、C.floricola、C.kuoi、C.nodaensis、C.stellate)、Cryptococcus、Debaryomyces(例えば、D.hansenii)、Entomophthora、Hansenula(例えば、H.uvarum)、Hansenula、Issatchenkia、Kluyveromyces(例えば、K.phaffii)、Lentinula属(例えば、L.edodes)、Meyerozyma(例えば、M.guilliermondii)、Monascus purpureus、Mortierella、Mucor(例えば、Mpiriformis)、Penicillium、Phythium、Phycomyces、Pichia(例えば、P.anomala、P.guilliermondii、P.occidentalis、P.kudriavzevii)、Pleurotus(例えば、P.ostreatus、P.sajorcaju、P.cystidiosus、P.cornucopiae、P.tuberregium、P.citrinopileatus及びP.flabellatus)、Pseudozyma(例えば、P.aphidis)、Rhizopus、Rhodotorula(例えば、R.bogoriensis)、Saccharomyces(例えば、S.cerevisiae、S.boulardii、S.torula)、Starmerella(例えば、S.bombicola)、Torulopsis、Thraustochytrium、Trichoderma(例えば、T.reesei、T.harzianum、T.viride)、Ustilago(例えば、U.maydis)、Wickerhamiella(W.domericqiae)、Wickerhamomyces(例えば、W.anomalus)、Williopsis(例えば、W.mrakii)、Zygosaccharomyces(例えば、Z.bailii)等が挙げられる。
【0067】
一実施形態において、酵母は、例えば、Wickerhamomyces anomalus、Saccharomyces属酵母(例えば、S.cerevisiae及び/又はS.boulardii)、Starmerella bombicola、Meyerozyma guilliermondii、Pichia occidentalis、及び/又はMonascus purpureusである。酵母は、生細胞若しくは不活性細胞又は胞子の形態、ならびに乾燥細胞塊及び/又は休眠細胞(例えば、酵母加水分解物)の形態である。
【0068】
特定の実施形態において、組成物は、生きたWickerhamomyces anomalus及び/又はSaccharomyces属酵母を含む。これらの酵母は、反芻動物消化系内の酢酸生成及び酢酸生成細菌による水素利用を促進する。有利な点は、これは動物の消化の健康に悪影響を及ぼすことなく、メタンが生成されるプロセスを実施するためのメタン生成微生物の水素入手可能性を低下させることである。したがって、一実施形態において、組成物中のWickerhamomyces anomalus及び/又はSaccharomyces属酵母(例えば、S.cerevisiae及び/又はS.boulardii)、及び/又はその増殖副生成物の存在は、反芻動物の腸内微生物腫中の酢酸生成細菌の量を増加させ、及び/又はその中のメタン生成細菌の量を減少させる。
【0069】
さらに、Wickerhamomyces anomalusは、飼料からのリンの消化及びバイオアベイラビリティの改善に有用な酵素であるフィターゼ、ならびに家畜に害を及ぼすことなく病原性及び/又はメタン生成性微生物を制御するのに有用な「キラー毒素」(例えば、酵素エキソ-β-1,3-グルカナーゼ)を生成する。この酵母はまた、リン脂質バイオサーファクタントを生成することもできる。
【0070】
いくつかの実施形態において、酵母細胞バイオマスの存在は、多数のタンパク質(乾燥細胞バイオマスの50%までを含む)、脂質及び炭素源、ならびにミネラル及びビタミンの全スペクトル(例えば、B1、B2、B3(PP)、B5、B7(H)、B6、E)をさらに提供する。
【0071】
一実施形態において、組成物は、Pleurotus ostreatusを含み、その培養物は、約2.5%~3.0%又は2.8%の濃度のロバスタチン(乾燥重量)を含む。
【0072】
ロバスタチンは、Pleurotusのポリケチド増殖副生成物であり、そしてそれらの細胞膜合成に必須であるイソプレノイド構成単位、HMG-CoA還元酵素の形成に関与する酵素の阻害を介してメタン生成古細菌を阻害する。有利な点は、ロバスタチンは、ルーメン中の他のセルロース分解性細菌に悪影響を及ぼすことなく、メタン生成物の成長を阻害することである。一実施形態において、組成物は、Pleurotus菌の有無にかかわらず、精製形態のロバスタチンを含む。
【0073】
一実施形態において、組成物は、ロバスタチンを生成せずに、HMG-CoA還元酵素活性を阻害することができる生きたLentinula edodeを含む。
【0074】
一実施形態において、組成物は、Trichoderma viride及び/又はAcremonium chrysogenumを含み、これらもロバスタチンと同様のスタチンを生成する。
【0075】
一実施形態において、組成物は、Monascus purpureusの発酵米製品である赤色酵母米又は麹を含む。赤色酵母米はロバスタチンと類似の構造を有し、HMG-CoA還元酵素活性を阻害する能力を有するモナコリンKを含む。
【0076】
一実施形態において、組成物は、合成又は生物学的に生成されたアミノ酸を含む。特定の実施形態において、アミノ酸はバリンである。バリンは、Wickerhamomyces anomalus及びSaccharomyces属によって生成されるアミノ酸であり、これは、飼育動物の成長及び健康を支援し、飼料中のタンパク質源のより完全な変換を可能にして、それらの廃棄物中に排泄される窒素、例えば、アンモニアの形態の量を、減少させる。一実施形態において、組成物がそれを生成する酵母の有無にかかわらず、精製された形態のバリンを含む。
【0077】
特定の実施形態において、組成物は、グラム陽性及びグラム陰性細菌を含む有益な細菌を含む。細菌は、例えば、Agrobacterium(例えば、A.radiobacter)、Azotobacter(A.vinelandii、A.chroococcum)、Azospirillum(例えば、A.brasiliensis)、Bacillus(例えば、B.amyloliquifaciens、B. firmus、B.laterosporus、B.licheniformis、B.megaterium、Bacillus mucilaginosus、B.subtilis)、Frateuria(例えば、F. aurantia)、Mlaevaniformans(例えば、M. laevaniformans)、Pantoea(例えば、P.agglomerans)、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa、P.chlororaphis、P.chlororaphis subsp. aureofaciens(Kluyver)、Pputida)、Rhizobium属、Rhodospirillum(例えば、R. rubrum)及び/又はS.phingomonas(例えば、S.paucimobilis)である。
【0078】
一実施形態において、組成物は、胞子及び/又は乾燥細胞塊の形態の1つ又は複数のBacillus属細菌を含む。特定の実施形態において、Bacillus属は、B.amyloliquefaciens、B.subtilis及び/又はB.licheniformisである。
【0079】
いくつかの実施形態において、B.amyloliquefaciensは、体重を増加させ、飼料摂取及び要求を増加させ、成長ホルモン(例えば、GH/IGH-1)レベルを増加させるために、ウシにおけるプロバイオティクスとして作用する。さらに、B.amyloliquefaciensは、他の有益な微生物(例えば、短鎖脂肪酸を生成する)の増殖を促進し、一方、例えば、抗菌性リポペプチドバイオサーファクタントを生成することによって、動物の腸内の電位病原性微生物の量を減少させることができる。いくつかの実施形態において、4×1010CFU/日の用量のB.amyloliquefaciensが、本発明の組成物の一部として動物に投与される。
【0080】
いくつかの実施形態において、B.licheniformisは、メタン生成物質によるメタン生成を減少させることができ、プロピオン酸及びリポペプチドバイオサーファクタント等の他の代謝生成物の生成を通じて、メタン生成細菌自体を阻害することができる。さらに、B.licheniformisは、牛のルーメン液中のアンモニア濃度を低下させるのに役立ち、一方で乳蛋白質生成を増加させる。豚では、B.licheniformis及びB.subtilisは糞便中のLactobacillus数を増加させるのに役立ち、窒素の消化率を上昇させ、アンモニア及びメルカプタンの排出を低下させる。いくつかの実施形態において、2×1010CFU/日の用量のB.licheniformisが、本発明の生成物の一部として動物に投与される。
【0081】
一実施形態において、微生物は、例えば、サーファクチン及び他のリポペプチドバイオサーファクタントの有効な生成体である、例えば、Bsubtilis var. locuseB1又はB2等のB.subtilisの株である。本明細書は、本明細書に開示された教示と一致する程度まで、国際公開第2017/044953号A1を参考文献として組み込まれる。
【0082】
例示的な一実施形態において、組成物は、Wickerhamomyces anomalus、Pleurotus ostreatus、Bacillus amyloliquefaciens及びBacillus licheniformisを含む。
【0083】
有意な量の、例えば、糖脂質、リポペプチド、マンノプロテイン、ベータ-グルカン、酵素、ならびに抗メタン生成性、生体乳化及び表面/界面張力低下特性を有する他の代謝生成物を蓄積することができる株を含む他の微生物株を、本発明に従って使用することができる。
【0084】
具体的な一実施形態において、組成物は、組成物中に存在する微生物のそれぞれの種の約1×106~約1×1013、約1×107~約1×1012、約1×108~約1×1011、又は約1×109~約1×1010CFU/mlを含む。
【0085】
特定の実施形態において、組成物の1回の適用における微生物の量は、1頭(家畜群における個々の動物)当たり約40~70グラム、又は1頭当たり約45~約65グラム、又は1頭当たり約50~約60グラムである。
【0086】
一実施形態において、組成物は、総体積で約1~100%、約10~90%、又は約20~75%の微生物を含む。
【0087】
一実施形態において、本組成物の1つ以上の微生物増殖副生成物は、バイオサーファクタントである。バイオサーファクタントは、微生物によって生成される構造的に多様な群の界面活性物質であり、生分解性で、再生可能な基質上の選択された生物を使用して効率的に生成される。バイオサーファクタントは、全て両親媒性物質である。それらは、2つの部分:極性(親水性)部分と非極性(疎水性)グループからなる。両親媒性構造のために、バイオサーファクタントは、疎水性の水不溶性物質の表面積を増加させ、そのような物質の水バイオアベイラビリティを増加させ、細菌細胞表面の特性を変化させる。
【0088】
バイオサーファクタントは、界面に蓄積し、これにより界面張力を減少させ、溶液中に凝集ミセル構造を形成させる。安全で有効な微生物バイオサーファクタントは、液体、固体、及び気体の分子間の表面及び界面張力を減少させる。バイオサーファクタントの、細孔を形成し、生体膜を不安定化する力によって、抗菌剤、抗真菌剤、及び溶血剤としての使用を可能にする。低毒性及び生分解性の特性と組み合わせて、バイオサーファクタントは、動物飼料、添加物及びサプリメントにおける使用に有利である。
【0089】
バイオサーファクタントには、糖脂質、リポペプチド、フラボ脂質、リン脂質、脂肪酸エステル、リポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体が含まれる。バイオサーファクタント分子の共通の親油性部分は、脂肪酸の炭化水素鎖であり、一方、親水性部分は、中性脂質のエステル又はアルコール基、脂肪酸又はアミノ酸(又はペプチド)のカルボキシレート基、フラボ脂質の場合には有機酸、又は糖脂質の場合には炭水化物によって形成される。
【0090】
微生物バイオサーファクタントは、増殖培地中の炭化水素源(例えば、油、糖、グリセロール等)の存在に応答して、細菌、真菌、及び酵母等の様々な微生物によって生成される。バイオサーファクタントは、当技術分野で知られている発酵プロセスによって得ることができる。
【0091】
一実施形態において、バイオサーファクタントは、糖脂質、リポペプチド又はリン脂質である。糖脂質は、例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリトリトール脂質及びトレハロース脂質を含むことができる。リポペプチは、例えば、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、及びリケニシンを含むことができる。リン脂質は、例えば、カルジオリピンを含むことができる。
【0092】
ある実施形態において、ソホロ脂質(ラクトン及び/又は直鎖状ソホロ脂質を含む)、サーファクチン及び/又はイチュリン(例えば、イチュリンA)の組み合わせを含む、バイオサーファクタントの混合物が使用される。
【0093】
特定の実施形態において、本発明の組成物は、有益な微生物及び/又は増殖副生成物が生成された発酵培地を含むことができる。有利な点は、特定の実施形態において、これは、例えば、酵母細胞壁の外表面の一部としての高濃度のマンノプロテイン及び生体高分子ベータグルカンのために、組成物を、例えば、精製された微生物代謝生成物単独よりも優れたものにすることができることである。これらの化合物は、例えば、有効な乳化剤として作用する。さらに、組成物は、培養物中の残留バイオサーファクタント、ならびに溶剤、酸、ビタミン、ミネラル、酵素及びタンパク質等の他の代謝生成物及び/又は細胞成分をさらに含むことができる。したがって、組成物は、他の多くの用途の中でも、バイオサーファクタントとして作用することができ、抗菌性及び表面/界面張力低下特性を有することができる。
【0094】
一実施形態において、バイオサーファクタントは、それが生成された発酵培地から精製されている。あるいは、一実施形態において、バイオサーファクタントは、粗形態で利用される。粗形態のバイオサーファクタントは、例えば、バイオサーファクタント生成微生物の培養から生じる発酵ブロス中のバイオサーファクタント沈殿物を含む液体混合物の形態をとることができる。この粗形態バイオサーファクタント溶液は、約0.001%~99%、約25%~約75%、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、約45%~約55%、又は約50%の純粋なバイオサーファクタントを含む。
【0095】
特定の実施形態において、バイオサーファクタントは、液体発酵ブロス及びバイオサーファクタント生成微生物の浸漬培養から生じる細胞を含有する微生物培養物の形態で組成物に添加することができる。特定の実施形態において、バイオサーファクタントがソホロ脂質である場合、この「培養形態」バイオサーファクタントは、Starmerella bombicola酵母細胞、ソホロ脂質(SLP)、及び他の酵母増殖副生成物を中に含む発酵ブロスを含むことができる。酵母細胞は、動物飼料と接触させるか、又は動物飼料と処方する時点で活性又は不活性である。より低い濃度のSLPが望ましい場合、S.bombicola培養物を生じるSLP部分を除去し、そして、例えば、1~4g/Lの残留SLP、及び、任意で酵母細胞及び他の増殖副生成物を有する残留液体を、本発明の方法において利用することができる。別のバイオサーファクタントの使用が望ましい場合、他のバイオサーファクタントを生成することができる任意の他の微生物を利用する同様の生成物が想定される。
【0096】
一実施形態において、組成物は、水をさらに含むことができる。例えば、微生物及び/又は増殖副生成物を、例えば、飼料添加物及び/又はサプリメントとして動物の飲料水と混合することができる。
【0097】
一実施形態において、組成物は、予め作製された湿潤又は乾燥した動物飼料をさらに含むことができ、ここで、予め作製された飼料は、動物の消費の準備ができるように調理及び/又は加工されている。例えば、微生物及び/又は増殖副生成物は、予め作られた飼料上に注いだり、混合されてもよく、又は微生物及び/又は増殖副生成物は、乾燥動物飼料片、例えば、モルセル、キブル又はペレットの外側上のコーティングとしてもよい。
【0098】
一実施形態において、組成物は、動物飼料を製造するための原材料をさらに含むことができ、原材料は、微生物及び/又は増殖副生成物と共に、加熱及び/又は処理されて、増強された乾燥又は湿潤飼料製品が製造される。
【0099】
特定の実施形態において、飼料における酵母の使用により、タンパク質及び/又は多糖類の豊富な供給源が提供される。一実施形態において、本組成物は、動物の食餌を補い、及び/又は動物の健康及び/又は幸福を促進するための追加の栄養素、例えば、アミノ酸(必須アミノ酸を含む)、ペプチド、タンパク質、ビタミン、微量元素、脂肪、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロール、酵素、プレバイオティクス、ならびに微量ミネラル、例えば、鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ヨウ素、セレン、モリブデン、ニッケル、フッ素、バナジウム、スズ及びケイ素を含む。
【0100】
好ましい組成物は、ビタミン及び/又はミネラルを任意の組み合わせで含む。本発明の組成物に使用するビタミンは、例えば、ビタミンA、E、K3、D3、B1、B3、B6、B12、C、ビオチン、葉酸、パントテン酸、ニコチン酸、塩化コリン、イノシトール及びパラアミノ安息香酸を含むことができる。鉱物は、例えば、カルシウム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、セレン及び亜鉛の塩を含むことができる。他の成分としては、抗酸化剤、ベータ-グルカン、胆汁酸塩、コレステロール、酵素、カロテノイド、及びその他の多くが挙げられ得るが、これらに限定されない。典型的なビタミン及びミネラルは、例えば、毎日の消費に推奨されるものであり、推奨される毎日の量(RDA)であるが、正確な量は様々である。組成物は、好ましくは、RDAビタミン、ミネラル及び微量ミネラルの複合体と、確立されたRDAを含まないが、健康な哺乳動物生理学において有益な役割を有する栄養素を含む。
【0101】
微生物及び/又は微生物増殖副生成物の製造
本発明は、微生物の培養及び微生物代謝生成物及び/又は微生物増殖のその他副生成物の製造のための方法を利用する。本発明はさらに、微生物の培養及び所望の規模での微生物代謝生成物の製造に適した培養プロセスを利用する。これらの培養プロセスには、浸漬培養/発酵、固相発酵(SSF)、及び改良、ハイブリッド、及び/又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
本明細書中で使用される場合、「発酵」は、制御された条件下での細胞の培養又は増殖をいう。成長は、好気性又は嫌気性である。好ましい実施形態において、微生物は、SSF及び/又はその改変版を使用して増殖される。
【0103】
一実施形態において、本発明は、バイオマス(例えば、生細胞物質)、細胞外代謝生成物、残留栄養素、及び/又は細胞内成分を生成するための物質及び方法を提供する。
【0104】
本発明に従って使用される微生物増殖容器は、工業的使用のための任意の発酵槽又は培養反応器である。一実施形態において、容器は、機能制御/センサを有してもよく、又はpH、酸素、圧力、温度、湿度、微生物密度及び/又は代謝生成物濃度等の培養プロセスにおける重要な因子を測定するために機能制御/センサに接続されてもよい。
【0105】
さらなる実施形態において、容器は、容器内の微生物の増殖(例えば、細胞数及び増殖相の測定)を監視できるものであってもよい。あるいは、毎日のサンプルを容器から採取し、希釈プレーティング技術等の当技術分野で公知の技術による計数に供してもよい。希釈プレーティングは、サンプル中の生物の数を推定するために使用される単純な技術である。この技術はまた、異なる環境又は処理を比較することができる指標を提供することもできる。
【0106】
一実施形態において、本方法は、窒素源を用いて培養を補うことを含む。窒素源は、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素樹脂、及び/又は塩化アンモニウムである。これらの窒素源は、単独で、又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0107】
本方法は、増殖培養物を酸素供給することができる。一実施形態は、低酸素含有空気を除去し、酸素供給された空気を導入するために、空気の緩慢な動きを利用する。浸漬発酵の場合、酸素供給された空気は、液体の機械的撹拌のためのインペラー、及び液体中への酸素の溶解のために液体に気泡を供給するための空気スパージャーを含む機構を介して毎日補充される周囲空気であってもよい。
【0108】
本方法は、培養物に炭素源を補充することをさらに含むことができる。炭素源は、典型的には、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、及び/又はマルトース等の炭水化物、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、及び/又はピルビン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、及び/又はグリセロール等のアルコール、大豆油、カノーラ油、米ぬか油、オリーブ油、トウモロコシ油、ゴマ油、及び/又はアマニ油等の油脂等である。これらの炭素源は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
一実施形態において、微生物の成長因子及び微量栄養素が培地に含まれる。これは、必要とされるビタミンの全てを生成することができない微生物を増殖させる場合に特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン及び/又はコバルトのような微量元素を含む無機栄養素もまた、培地に含まれる。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、及び微量元素の供給源は、例えば、トウモロコシ粉等の穀粉又はミールの形態で、又は酵母エキス、ジャガイモエキス、牛エキス、大豆エキス、バナナ皮エキス等のエキスの形態で、又は精製された形態で含まれ得る。アミノ酸、例えば、タンパク質の生合成に有用なアミノ酸もまた含めることができる。
【0110】
一実施形態において、無機塩も含まれる。使用可能な無機塩は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸水素マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、及び/又は炭酸ナトリウムである。これらの無機塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
一実施形態において、微生物の増殖速度を速める物質を意味する、1つ以上の生体刺激剤も含まれてもよい。生体刺激剤は、種に特異的であるか、又は種々の種の増殖速度を速める。
【0112】
いくつかの実施形態において、培養のための方法は、培養プロセスの前及び/又は間に、培地中に追加の酸及び/又は抗菌剤を添加することをさらに含んでもよい。抗菌剤又は抗生物質は、培養物を汚染から保護するために使用される。
【0113】
さらに、消泡剤を添加して、浸漬培養の間に気体が生成されるときの泡の形成及び/又は蓄積を防止することもできる。
【0114】
混合物のpHは、目的の微生物に適したものとする。緩衝液、及び炭酸塩及びリン酸塩等のpH調節剤を使用して、pHを好ましい値付近に安定化させることができる。金属イオンが高濃度で存在する場合、培地中にキレート化剤を使用することが必要である。
【0115】
微生物は、プランクトン形態、又はバイオフィルムとして増殖させることができる。バイオフィルムの場合、容器は、中で微生物をバイオフィルム状態で成長させることができる基質を有することができる。システムはまた、例えば、バイオフィルム成長特性を促進及び/又は改善する刺激(せん断力応力等)を印加する能力を有していてもよい。
【0116】
一実施形態において、微生物の培養方法は、約5℃~約100℃、好ましくは15~60℃、より好ましくは25~50℃で実施される。さらなる実施形態において、培養は、一定温度で連続的に実施されてもよい。他の実施形態において、培養は、変化する温度でなされてもよい。
【0117】
一実施形態において、方法及び培養プロセスで使用される装置は無菌のものである。反応器/容器のような培養装置は、滅菌ユニット、例えば、オートクレーブから離れているが、接続されている。培養装置はまた、接種を開始する前にインサイチュで滅菌する滅菌ユニットを有していてもよい。空気は、当技術分野で公知の方法によって滅菌することができる。例えば、周囲空気は、容器内に導入される前に、少なくとも1つのフィルタを通過させる。他の実施形態において、培地は、低温殺菌されてもよく、又は任意で、熱を全く加えなくてもよく、低水分活性及び低pHの使用により、望ましくない細菌増殖を制御してもよい。
【0118】
一実施形態において、本発明はさらに、増殖及び代謝生成物生成に適切な条件下で本発明の微生物株を培養することによって、例えば、バイオサーファクタント、酵素、タンパク質、エタノール、乳酸、ベータ-グルカン、ペプチド、代謝中間体、多価不飽和脂肪酸、及び脂質等の微生物代謝生成物を生成し、任意で、代謝生成物を精製する方法を提供する。本方法によって生成される代謝生成物含量は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である。
【0119】
発酵培地のバイオマス含量は、例えば、5g/l~180g/l以上、又は10g/l~150g/lである。細胞濃度は、例えば、最終製品1グラム当たり、少なくとも1×109、1×1010、1×1011、1×1012 又は1×1013個の細胞とする。
【0120】
目的の微生物によって生成される微生物増殖副生成物は、微生物中に保持されるか、又は増殖培地中に分泌される。培地は、微生物増殖副生成物の活性を安定化する化合物を含有していてもよい。
【0121】
微生物の培養及び微生物副生成物の製造のための方法及び装置は、バッチ、準連続処理、又は連続処理で実施することができる。
【0122】
一実施形態において、微生物培養組成物の全ては、培養の完了時に(例えば、所望の細胞密度、又は特定の代謝生成物の密度を達成した時に)除去される。このバッチ手順において、全く新しいバッチが、第1のバッチの採取時に開始される。
【0123】
他の実施形態において、発酵生成物の一部のみが、任意の時点で除去される。この実施形態において、生細胞、胞子、分生子、菌糸及び/又は菌糸を有するバイオマスは、新しい培養バッチのための接種物として容器内に残る。除去される組成物は、無細胞培地、又は細胞、胞子、もしくは他の生殖繁殖体、及び/又はそれらの組み合わせを含むことができる。このようにして、準連続システムが生成される。
【0124】
有利な点は、本方法は、複雑な施設や高いエネルギー消費を必要としないことである。目的の微生物は、現地で小規模又は大規模に培養され、培地と混合された状態でも利用できる。
【0125】
微生物ベースの生成物の調製
本発明は、家畜生産の結果として放出されるメタンの量を減少させるための微生物ベースの生成物を提供する。本発明の1つの微生物ベースの生成物は、単に、微生物及び/又は微生物によって生成される微生物代謝生成物及び/又は任意の残留栄養素を含有する発酵培地である。発酵生成物は、抽出又は精製することなく直接使用することができる。所望であれば、抽出及び精製は、文献に記載されている標準的な抽出及び/又は精製方法又は技術を用いて容易に行うことができる。
【0126】
一実施形態において、「Star3+」と呼ばれる酵母発酵生成物は、固相発酵の改変形態を使用して、キラー酵母、Wickerhamomyces anomalusの培養を介して得ることができる。培養物は、酵母が付着及び増殖し得る十分な表面積を有する基質(例えば、米、大豆、ヒヨコマメ、パスタ、オートミール又は豆)上で増殖される。酵母細胞が全体的に増殖する発酵培地全体は、例えば、25~30℃で3~5日間培養した後に採取することができる。培養物を基質とブレンドし、粉砕及び/又は微粉化し、任意で乾燥させることができる。これは、Star3+生成物を含む。1010~1012細胞/gを含むことができる配合物は、他の成分と混合する前に、例えば500~1,000倍に希釈することができる。
【0127】
他の実施形態において、酵母発酵生成物は、浸漬発酵を使用して得られ、酵母発酵生成物は、細胞及び任意の酵母増殖副生成物を含む液体ブロスを含む。汚染細菌増殖を防ぐために、必要な炭素源、窒素源、ミネラル源、及び任意に抗菌物質を含有する液体培地を使用することができる。培養物は、追加の炭素源、特に飽和油(例えば、15%キャノーラ油、又は使用済み調理植物油)を用いて増殖させることができる。典型的には、pHは5.0~5.5で開始され、次いで3.0~3.5に減少させ、そこで安定化される。例えば、25~30℃で24~72時間培養した後に採取することができる、細胞及び酵母増殖副生成物を有する発酵ブロスは、この代替形態のStar3+生成物を含む。
【0128】
一実施形態において、酵母発酵生成物は、バイオサーファクタント生成酵母、Starmerella bombicolaの浸漬培養を介して得ることができる。この酵母は、SLP等の糖脂質バイオサーファクタントの有効な生成体である。25℃で5日間培養した後の発酵ブロスは酵母細胞懸濁液を含み、例えば、150g/L以上のSLPを含むことができる。この酵母発酵生成物は、洗浄組成物においてより少ないバイオサーファクタントが望まれる場合にはさらに改変することができる。例えば、S.bombicolaの発酵は、SLPの識別可能な層への析出を生じる。このSLP層は除去することができ、1~4g/Lの残留SLPを依然として含有することができる残留液体及びバイオマスを、本発明の洗浄組成物において利用することができる。
【0129】
微生物ベースの生成物中の微生物は、活性又は不活性形態である。さらに、微生物を組成物から除去し、残留培養物を利用することができる。微生物ベースの生成物は、さらに安定化、保存、貯蔵することなく使用される。有利な点は、これらの微生物ベースの生成物の直接使用が微生物の高い生存率を保ち、異物や望ましくない微生物からの汚染の可能性を減少し、微生物増殖副生成物の活性を維持することである。
【0130】
微生物増殖から生じる微生物及び/又は培地(例えば、ブロス又は固体基質)は、増殖容器から除去されて、例えば、即時使用のための配管を介して移される。
【0131】
一実施形態において、微生物ベースの生成物は、単に微生物増殖副生成物である。例えば、微生物によって生成されたバイオサーファクタントは、例えば、液体ブロス中に約50%の純粋なバイオサーファクタントを含む、粗製形態の浸漬発酵容器から収集することができる。
【0132】
他の実施形態において、微生物ベースの生成物(微生物、培地、又は微生物と培地)は、例えば、意図される用途、意図される適用方法、発酵容器のサイズ、及び微生物増殖施設から使用場所への任意の運搬方式を考慮に入れて、適切なサイズの容器に入れることができる。したがって、微生物ベースの組成物が配置される容器は、例えば、1ガロン~1,000ガロン以上であってよい。他の実施形態において、容器は、2ガロン、5ガロン、25ガロン、又はそれ以上である。
【0133】
例えば、酵母発酵生成物を増殖容器から採取時、採取された生成物が容器に入れられ、及び/又はパイプで運ばれる(又は使用のために輸送される)際、さらなる成分を添加することができる。添加剤は、例えば、緩衝剤、担体、同じ又は異なる施設で製造された他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、防腐剤、微生物増殖のための栄養素、追跡剤、溶剤、殺生物剤、他の微生物及び意図された使用に特定他の成分である。
【0134】
本発明による処方に含有され得る他の適切な添加剤は、そのような調製物に慣習的に使用される物質を含む。このような添加剤の例には、界面活性剤、乳化剤、潤滑剤、緩衝剤、溶解性制御剤、pH調整剤、防腐剤、安定剤及び超耐性剤が含まれる。
【0135】
一実施形態において、生成物は、有機酸及びアミノ酸又はそれらの塩を含む緩衝剤をさらに含んでもよい。適切な緩衝剤には、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、アスパラギン酸塩、マロン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピルビン酸塩、ガラクタラート、グルカル酸塩、タルトロナート、グルタミン酸塩、グリシン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アルギニン及びそれらの混合物が含まれる。リン酸及びリン酸又はそれらの塩も使用することができる。合成緩衝液を使用することが適切であるが、自然な緩衝液(例えば、有機及びアミノ酸又は上記に列挙したそれらの塩)を使用することが好ましい。
【0136】
さらなる実施形態において、pH調整剤は、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム又は重炭酸カリウム、塩酸、硝酸、硫酸又は混合物を含む。
【0137】
一実施形態において、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重リン酸ナトリウム等の塩の水性調製物等の追加の成分を処方に含めることができる。
【0138】
有利な点は、本発明によれば、微生物ベースの生成物は、微生物が増殖したブロスを含むことである。生成物は、例えば、少なくとも、1重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、75重量%、又は100重量%ブロスである。生成物中のバイオマスの量は、例えば、それらの間の全てのパーセンテージを含めて0重量%~100重量%のいずれかである。
【0139】
任意で、生成物は、使用前に保管することができる。貯蔵時間は短いことが好ましい。したがって、貯蔵時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、又は12時間未満である。好ましい実施形態において、生細胞が生成物中に存在する場合、生成物は例えば、20℃、15℃、10℃、又は5℃未満等の低温で貯蔵され、一方、バイオサーファクタント組成物は典型的には周囲温度で貯蔵することができる。
【0140】
微生物ベースの生成物の現地生成
本発明の特定の実施形態において、微生物増殖施設は、所望の規模で、新鮮で高密度の微生物及び/又は目的の微生物増殖副生成物を生成する。微生物増殖施設は、適用部位又はその近くに位置していてもよい。施設は、バッチ培養、準連続培養、又は連続培養で高密度の微生物ベースの組成物を生成する。
【0141】
本発明の微生物増殖施設は、微生物ベースの生成物が使用される場所(例えば、放牧の牛牧草地)に配置することができる。例えば、微生物増殖施設は、使用場所から300、250、200、150、100、75、50、25、15、10、5、3、又は1マイル未満であってもよい。
【0142】
微生物ベースの生成物は、従来の微生物生成の微生物安定化、保存、貯蔵、及び輸送プロセスに頼ることなく、現地で生成することができるので、はるかに高い密度の微生物を生成することができ、それによって、現地で適用使用するのに必要とされる微生物ベースの生成物の体積はより少なく、所望の効力を達成するために必要な場合に、はるかに高い密度の微生物適用を可能にする。これより、システムを効率的にし、細胞を安定化させるか、又は培養培地からそれらを分離する必要性を排除することができる、規模を縮小したバイオリアクター(例えば、より小さい発酵容器、より少ない供給の開始物質、栄養素及びpH制御剤)が可能となる。微生物ベースの生成物の現地での生成はまた、生成物中への増殖培地の含有を容易にする。培地は、発酵の間に生成された、現地の使用に特に適した薬剤を含有することができる。
【0143】
現地で生成された高密度で頑強な微生物の培養は、サプライチェーンにしばらくの間残っていたものよりも、この分野においてより有効である。本発明の微生物ベースの生成物は、発酵増殖培地中に存在する代謝生成物及び栄養素から細胞が分離されている従来の生成物と比較して特に有利である。輸送時間の短縮は、地域の要求に応じて、微生物及び/又はそれらの代謝生成物の新鮮なバッチの製造及び配送を、その時間及び体積で可能にする。
【0144】
本発明の微生物増殖施設は、微生物自体、微生物代謝生成物、及び/又は微生物が増殖する培地の他の成分を含む、新鮮な微生物ベースの組成物を生成する。所望であれば、組成物は、高密度の栄養細胞、又は増殖体、又は栄養細胞と増殖体との混合物を有することができる。
【0145】
一実施形態において、微生物増殖施設は、微生物ベースの生成物が使用される場所(例えば、家畜生産施設)又は近くに、好ましくは300マイル以内、より好ましくは200マイル以内、さらにより好ましくは100マイル以内に位置する。有利な点は、これによって、組成物が指定された場所で使用のために調整できることである。微生物ベースの組成物の処方及び効能は、例えば、どの動物種が処置されているか、組成物が適用されているのがどの季節、気候及び/又は時季なのか、どの適用様式及び/又はレートが利用されているか、といった、適用時の特定の現地の条件に合わせてカスタマイズすることができる。
【0146】
有利な点は、分散型微生物増殖施設は、例えば、生存可能な高細胞数の生成物ならびに細胞が元々増殖する関連培地及び代謝生成物のタイムリーな配送及び適用を阻害する、上流の処理遅延、サプライチェーンのボトルネック、不適切な貯蔵、及び他の不測の事態に起因して生成物の品質が損なわれる、遠方の工業規模の生産者に依拠する現在の問題に対する解決策を提供する。
【0147】
さらに、組成物を現地で生成することによって、処方及び効能を、特定の位置及び適用時に存在する条件にリアルタイムで調節することができる。これにより、中心地で予め作製され、例えば、所与の位置に最適ではない設定比や処方を有する組成物よりも利点が得られる。
【0148】
微生物増殖施設は、目的地の地理との相乗効果を改善するために微生物ベースの生成物を調整する能力によって、製造の汎用性を提供する。有利な点は、好ましい実施形態において、本発明のシステムがGHG管理を改善するために、天然に存在する現地の微生物及びそれらの代謝副生成物の能力を利用することである。
【0149】
個々の容器の培養時間は。例えば、1~7日以上であってもよい。培養物は、多くの異なる方法のいずれかで採取することができる。
【0150】
例えば、発酵の24時間以内の現地での生成及び配送だと、純粋で高細胞密度の組成物と実質的に低い輸送コストという結果が得られる。より効果的で強力な微生物接種材料の開発における急速な進歩の見通しを考えると、消費者は、微生物ベースの生成物を迅速に配送するこの能力から大いに利益が得られる。
【0151】
大気中のメタン排出量を削減する方法
好ましい実施形態において、本発明は、大気中のメタン及び/又は亜酸化窒素放出を減少させるための方法であって、1つ以上の有益な微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む組成物を、動物が飼料及び/又は水を摂取する前に、家畜動物の飼料及び/又は飲料水と接触させることを含む方法を提供する。有利な点として、特定の実施形態において、本方法は、抗生物質の必要性を減少しながら、動物の消化系、及び動物の廃棄物中のメタン生成微生物を制御することができることである。
【0152】
本明細書で使用される「減少」とは負の変化を指し、「増加」とは正の変化を指し、負又は正の変化は、少なくとも0.25%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である。
【0153】
いくつかの実施形態において、所望の減少は、比較的短い期間内、例えば、1週間、2週間、3週間又は4週間以内に達成される。いくつかの実施形態において、所望の減少は、本発明の方法を使用した後、例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月又は6ヶ月以内に達成される。いくつかの実施形態において、所望の減少は、本方法を使用した後1年、2年、3年、4年、又は5年以内に達成される。
【0154】
いくつかの実施形態において、組成物を飼料又は水と接触させる前に、本方法は、現地の条件について、家畜動物又は家畜生産施設を評価し、現地の条件に合わせてカスタマイズされた組成物の好ましい処方(例えば、微生物及び/又は増殖副生成物の種類、組み合わせ及び/又は比率)を決定し、好ましい処方により組成物を生成することを含む。
【0155】
現地の条件には、例えば、動物の年齢、健康、サイズ及び種、動物を生産するための目的(例えば、肉、毛皮、繊維、卵、労働、乳等)、動物の腸の微生物集団内の種、施設におけるGHG排出量及び種類、現在の気候、及び/又は時節/時間等の環境条件、組成物の適用の様式及び/又は率、ならびに関連すると考えられるその他が含まれる。
【0156】
評価後、組成物がこれらの現地の条件に合わせてカスタマイズされるように、組成物の好ましい処方を決定することができる。次いで、組成物は、好ましくは、適用場所(例えば、動物又は家畜生産施設)から300マイル以内、好ましくは200マイル以内、さらにより好ましくは100マイル以内の微生物増殖施設で培養される。
【0157】
いくつかの実施形態において、現地の状態は、定期的に、例えば、毎年1回、毎年2回、又は毎月1回で評価される。このようにして、組成物の処方は、変化する現地の条件の要求を満たすために、必要に応じてリアルタイムで修正することができる。
【0158】
一実施形態において、組成物は、液体又は乾燥製品のいずれかとして、本方法に従って使用される。一実施形態において、組成物は、液体又は乾燥形態のいずれかで、動物の飼料に、又は動物の飲料水に導入される。
【0159】
一実施形態において、組成物は、湿潤及び/又は乾燥動物飼料に利用される標準原料飼料成分に添加される。
【0160】
本明細書で使用される場合、「乾燥飼料」は、典型的には、約5%~約15%又は20%w/vの範囲の限定された水分含量を有する飼料を指す。典型的には、乾燥加工飼料は、小~中サイズの個々のピース、例えば、モルセル、キブル、トリート、ビスケット、ナッツ、ケーキ又はペレットの形態で得られる。
【0161】
一実施形態において、組成物は、穀物、野菜、果物、乾燥植物物質、及び他の香味料、添加剤、及び/又は栄養源等の乾燥飼料の製造に利用される原料に添加することができる。補充された乾燥飼料片は、一片当たり一定濃度の微生物ベースの組成物を含むことができる。他の実施形態において、組成物は、乾燥飼料片上の表面コーティングとして利用することができる。加圧粉砕、押出、及び/又はペレット化を含む、乾燥加工飼料を製造するための当技術分野で公知の方法を使用することができる。
【0162】
例示的な実施形態において、乾燥飼料は、例えば、スクリュー押出成形によって調製されてもよく、スクリュー押出成形は、調理、成形、及び非常に短時間での特定の形状及びサイズへの原料の切断を含む。成分は、均質な発泡性生地に混合され、押出機内で調理され、圧力及び高熱下でダイに通してもよい。調理後、ペレットを冷却し、任意で、コーティングを噴霧する。このコーティングは、例えば、鶏又はウサギからの肝臓又は腸等の動物組織の液体又は粉末加水分解形態を含む液体脂肪又は消化物、及び/又は栄養油を含むことができる。他の実施形態において、ペレットは真空エンロービング技術を使用してコーティングされ、ここで、ペレットは真空に曝され、次いで、コーティング材料に曝され、その後、真空解除により、ペレット内部へコーティング材料を浸透させる。次いで、熱風乾燥を用いて、総水分含量を10%以下に減少させることができる。
【0163】
一実施形態において、乾燥飼料は、「低温」ペレット化処理、又は高熱もしくは蒸気を使用しない処理を用いて製造される。本方法は、例えば、本発明の組成物中の重要な成分及び/又は栄養素を変性又は分解するリスクなしに成分を一緒に保持するために、粘性及び凝集特性を有する液体バインダーを使用することができる。
【0164】
一実施形態において、組成物は、動物飼料に適用することができ、又は干し草、わら、サイレージ、発芽穀物、マメ科植物及び/又は穀物等の植物物質を切断し、乾燥させることができる。
【0165】
一実施形態において、家畜が放牧動物である場合、組成物は動物が給餌している放牧地のグラウンドカバー(例えば、草、クローバー、マメ科植物、広葉草本)上に導入することができる。組成物は、標準的農業及び/又は景観技術を用いて、例えば、潅漑及び/又は施肥システムを通して、牧草地の広い表面上に噴霧、散布、注入、又は適用することができる。
【0166】
一実施形態において、組成物は、噴霧乾燥バイオマス製品として調製されてもよい。バイオマスは、遠心分離、濾過、分離、デカンテーション、分離とデカンテーションの組み合わせ、限外濾過又は精密濾過等の公知の方法によって分離することができる。
【0167】
一実施形態において、組成物は、例えば、50%までのタンパク質、ならびに多糖類、ビタミン、及びミネラルを含む、高い栄養含量を有する。結果として、組成物は、完全な動物飼料組成物の全ての一部として使用される。一実施形態において、飼料組成物は、飼料の15%~飼料の100%の範囲の本組成物を含む。
【0168】
本組成物は、脂肪、脂肪酸、リン脂質などの脂質、ビタミン、必須アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、ステロール、酵素、及び鉄、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ヨウ素、セレン、モリブデン、ニッケル、フッ素、バナジウム、スズ及びケイ素などの微量ミネラルのうちの少なくとも1つ以上に富んでいてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、栄養サプリメントとして別の飼料組成物と同時投与することができる。栄養サプリメントは、グレービー、飲料水、飲料、ヨーグルト、粉末、顆粒、ペースト、懸濁液、チュー、モルセル、液体溶液、トリート、スナック、ペレット、ピル、カプセル、錠剤、サシェ、又は任意の他の適切な分配形態等、任意の適切な形態を有することができる。栄養サプリメントは、本微生物ベースの組成物と、ビタミン、ミネラル、プロバイオティクス、プレバイオティクス、及び抗酸化剤等の任意の化合物とを含むことができる。いくつかの実施形態において、栄養サプリメントは、動物への投与前に、飼料組成物又は水又は他の希釈剤と混合されてもよい。
【0170】
特定の実施形態において、動物飼料組成物は、動物の健康を促進するための栄養素を含む。
【0171】
一実施形態において、栄養素は、脂肪及び/又はアミノ酸である。一実施形態において、栄養素はタンパク質である。一実施形態において、栄養素はビタミン又は微量ミネラルである。ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、E、K3、D3、B1、B3、B6、B12、C、ビオチン、葉酸、パントテン酸、ニコチン酸、塩化コリン、イノシトール及びパラアミノ安息香酸が挙げられる。鉱物は、例えば、カルシウム、コバルト、銅、鉄、マグネシウム、リン、カリウム、セレン及び亜鉛の塩を含むことができる。他の成分としては、抗酸化剤、ベータ-グルカン、胆汁酸塩、コレステロール、酵素、カロテノイド、及びその他多くが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0172】
本発明の方法によれば、微生物ベースの組成物の投与は、動物の出産から成熟期までの期間にわたる食事療法の一部として行うことができる。特定の実施形態において、動物は、若い又は成長期の動物である。いくつかの実施形態において、動物は老化した動物である。他の実施形態において、投与は、例えば、動物がその予測又は予想寿命の約30%、40%、50%、60%、又は80%を超える寿命に達した場合に、定期的又はスパンの長い定期的に開始する。
【0173】
本明細書に記載の組成物は、動物の生活の質、健康及び幸福に悪影響を及ぼすことなく、動物から生成されるメタン放出量の減少等、本発明の1つ以上の目的を達成するのに必要な時間、動物の飼料及び/又は飲料水を介して動物に投与される。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、動物の飼料及び/又は飲料水と、定期的に、例えば、食事毎に、又は1日1回の食事毎に接触させる。
【0174】
いくつかの実施形態において、本方法によれば、例えば、動物の成長の増進、動物の免疫機能の増進、飼料からの水及び栄養素の吸収の改善、ならびに有益な腸内微生物のパーセンテージの増加及び/又は動物の消化器系における有害な腸内微生物のパーセンテージの減少による動物の腸内微生物の健康の改善を含む、動物に対する健康上の利益がもたらされる。
【0175】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、家畜生産施設の事業者によって使用される炭素クレジットの削減に利用することができる。したがって、特定の実施形態において、本方法は、動物の消化器系におけるメタン放出の発生及び/又はメタン生成微生物の減少に対する方法の効果を評価するための測定を行うことをさらに含む。これらの測定は、例えば、ガス捕捉及び定量化、クロマトグラフィー、呼吸チャンバー(個々の動物によって吐き出されるメタンの量を測定する)、及びインビトロガス製造技術(飼料は制御された実験室及び微生物条件下で発酵されて、乾燥物質1グラムあたりに放出されるメタンの量を決定する)を含む、当該分野で公知の方法(例えば、参照により本明細書中に組み込まれるStormら、2012を参照のこと)に従って行われる。測定はまた、例えば、乳、糞、及び/又は胃内容物をサンプリングし、例えば、DNA配列決定及び/又は細胞プレーティングを使用して、存在するメタン生成微生物の数を求めることによって、動物中の微生物集団を試験する形態で行うことができる。
【0176】
測定は、微生物ベースの組成物の適用後、特定の時点で行うことができる。いくつかの実施形態において、測定は、約1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、30日以内、60日以内、90日以内、120日以内、180日以内、及び/又は1年以内の後に行われる。
【0177】
さらに、測定は、経時的に繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、測定は、毎日、毎週、毎月、2ヶ月毎、半月毎、半年毎、及び/又は毎年繰り返される。
【0178】
実施例
本発明及びその多くの利点のより大きな理解は、例示として与えられる以下の実施例から得られる。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態及び変形のいくつかを例示するものである。それらは、本発明を限定するものと見なされるべきではない。本発明に関して、多くの変更及び修正を行うことができる。
【0179】
実施例1-ソホロ脂質の製造
発酵温度は、培養される微生物及び/又は微生物増殖副生成物に応じて、概して、約22~28℃の間である。Starmerella bombicolaについては、約25℃の温度が最適である。
【0180】
pHは、培養される微生物及び/又は微生物増殖副生成物に応じて、約2.0~約7.0、好ましくは約3.0~約6.5とする。さらに、汚染の可能性を減少するために、培養プロセスは、第1のpH範囲で開始し、次いで、第1のpH範囲よりも高いか又は低いかのいずれかの第2のpH範囲に調整することができる。
【0181】
これらの培養条件下で、バイオマス、バイオサーファクタント及び他の代謝生成物の工業的に有用な生産は、わずか24時間の発酵後に達成される。発酵が完了すると、増殖副生成物及び/又は残った培養物は、次いで、反応器から回収され、そして種々の産業上の目的のために適用される。
【0182】
次いで、反応器を再び滅菌し、同じ微生物ベースの生成物又は異なる微生物ベースの生成物のいずれかを発酵させるために再使用することができる。例えば、反応器は、SLPの生成のためにStarmerella bombicolaを培養するために使用され、滅菌され、次いで再びSLPを生成するために使用され、又は例えば、MELの生成のために、例えば、Pseudozyma aphidisを培養するために使用される。
【0183】
本システムは、工業的規模で、生成培養物の異物の混入なしに、ソホロ脂質(SLP)を生成するために使用することができる。
【0184】
一実施形態において、反応器にStarmerella bombicola酵母を接種する。培養培地は、炭素源、脂質、窒素源を含み、200ppmまでの純粋なソホロ脂質を補充することができる。
【0185】
酵母及び培養培地を、好気性条件下で、バイオマスの初期蓄積に十分な期間(典型的には約24時間~約48時間)、pH3.0~3.5でインキュベートする。温度を22℃~28℃に保ち、溶存酸素濃度を15%~30%(100%周囲空気の)内に保つ。初期バイオマス蓄積が達成されたら、pHを5.5に調整し、プロセスを続ける。
【0186】
培養物がpH 3.5に酸性化したら、発酵プロセスを継続し、培地中にSLPの十分な蓄積が達成されるまで、pHをこのレベルで安定に保つ。SLPは、例えば、培地中に褐色の半透明から不透明の沈殿物層を形成することができる。次いで、SLPを発酵培地から回収し、残りの酵母発酵生成物を別々に採取することができる。
【国際調査報告】