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特表2022-504068有害大気ガスを低減するとともに炭素利用及び/又は隔離を強化するための材料及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】有害大気ガスを低減するとともに炭素利用及び/又は隔離を強化するための材料及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/14 20060101AFI20220105BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C12N1/14 A
C12N1/20 D
C12N9/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518074
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 US2019055153
(87)【国際公開番号】W WO2020076797
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】62/884,720
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/743,354
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519246261
【氏名又は名称】ローカス アイピー カンパニー、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(74)【代理人】
【識別番号】100201938
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 静可
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】アリベック,ケン
(72)【発明者】
【氏名】ツォルナー,ポール,エス.
(72)【発明者】
【氏名】カラサー,カールティク,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】ハイドコーン,キース
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050DD04
4B050LL10
4B065AA15X
4B065AA70X
4B065AA72X
4B065CA56
(57)【要約】
本発明は、有害な大気ガス、例えば、温室効果ガスを減少させるための材料及び方法を提供する。特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、土壌中の炭素隔離の増加と共に、植物の炭素利用及び貯蔵の強化を介して達成される。いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、農業、家畜生産、廃棄物管理、他の産業に関与する事業者によって使用される炭素クレジットの数を低減するために使用することができる。特定の実施形態において、本発明は、温室効果ガスの減少及び/又は炭素の隔離の強化のために、微生物ベースの生成物、ならびにこれらの微生物ベースの生成物を使用する方法を提供する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の有益な微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む、温室効果ガスを低減し、炭素利用を改善し、及び/又は炭素の隔離を強化するための組成物であって、
前記1つ以上の有益な微生物は、非病原性酵母、真菌及び細菌から選択され、
前記1つ以上の増殖副生成物は、バイオサーファクタント及び酵素から選択される、組成物。
【請求項2】
Wickerhamomyces anomalus酵母を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Starmerella bombicolaSaccharomyces boulardiiPichia occidentalisPichia kudriavzevii、及びMeyerozyma guilliermondiiから選択される1つ以上の酵母を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Trichoderma属真菌を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記Trichodermaが、Trichoderma harzianumである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
Bacillus subtilisBacillus amyloliquefaciensAzotobacter vinelandiiMyxococcus xanthusFrateuria aurantiaPseudomonas chlororaphis及びDyadobacter fermentersから選択される1つ以上の細菌を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
酵母、真菌及び/又は細菌の組み合わせが利用される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
グルコース、糖蜜及びグリセリンの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ケルプ抽出物、フルボ酸、フミン酸塩及びフミン酸の1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
水と混合されて液体処方を生成する乾燥粉末又は乾燥顆粒として処方される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記1つ以上の微生物が培養された発酵培地をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記微生物を含まない増殖副生成物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記バイオサーファクタントが、糖脂質及びリポペプチドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
糖脂質が、ソホロリピド、マンノシルエリスリトールリピド、ラムノリピド及びトレハロースリピドから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記リポペプチドが、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アンスロファクチン及びリケニシンから選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
酵素は、グリコシダーゼ又はフィターゼである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
温室効果ガスを低減し、炭素利用を改善し、及び/又は炭素の隔離を強化する組成物であって、Wickerhamomyces anomalusと、Wickerhamomyces anomalusの少なくとも1つの増殖副生成物とを含み、前記増殖副生成物がバイオサーファクタント及び酵素から選択される、組成物。
【請求項18】
Starmerella bombicolaSaccharomyces boulardiiPichia occidentalisPichia kudriavzeviiMeyerozyma guilliermondiiTrichoderma harzianumBacillus subtilisBacillus amyloliquefaciensMyxococcus xanthusAzotobacter vinelandiiFrateuria aurantiaPseudomonas chlororaphis及びDyadobacter fermentersから選択される1つ以上のさらなる微生物をさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記さらなる微生物が、Starmerella bombicolaSaccharomyces boulardiiPichia occidentalisPichia kudriavzevii及びMeyerozyma guilliermondiiから選択される酵母である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記さらなる微生物が、Trichoderma harzianumである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記さらなる微生物が、Bacillus subtilisBacillus amyloliquefaciensMyxococcus xanthusAzotobacter vinelandiiFrateuria aurantiaPseudomonas chlororaphis及びDyadobacter fermentersから選択される細菌である、請求項18に記載の組成物。
【請求項22】
前記さらなる微生物が、Bacillus amyloliquefaciensである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
温室効果ガスを低減し、炭素利用を改善し、及び/又は炭素の隔離を強化する組成物であって、Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensと、前記Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensの1つ以上の増殖副生成物とを含み、前記増殖副生成物がバイオサーファクタント及び酵素から選択される、組成物。
【請求項24】
1x106~1x1013CFU/mlのTrichoderma harzianum、及び1x106~1x1013CFU/mlのBacillus amyloliquefaciensを含む、請求項23に記載の組成。
【請求項25】
Wickerhamomyces anomalusStarmerella bombicolaSaccharomyces boulardiiPichia occidentalisPichia kudriavzeviiMeyerozyma guilliermondiiAzotobacter vinelandiiMyxococcus xanthusFrateuria aurantiaPseudomonas chlororaphis及びDyadobacter fermentersのうち1つ以上をさらに含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
地球の大気中に存在する有害な大気ガスの量を減少させる方法であって、
1つ以上の有益な微生物及び/又は1つ以上の微生物増殖副生成物を含む組成物を、前記有害な大気ガスの供給源である場所に適用し、
任意で微生物増殖のための栄養素を場所に適用し、
前記有害な大気ガスの減少に対する前記組成物の効果を評価するための測定を行うことを含む、方法。
【請求項27】
前記有益な微生物が、酵母、真菌、又は細菌である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酵母が、Wickerhamomyces anomalusStarmerella bombicolaSaccharomyces boulardiiPichia occidentalisPichia kudriavzevii、及びPichia guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii)から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記真菌が、Trichoderma属である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記Trichodermaが、Trichoderma harzianumである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細菌が、Bacillus subtilisBacillus amyloliquefaciensPseudomonas chlororaphisMyxococcus xanthusAzotobacter vinelandiiFrateuria aurantia及びDyadobacter fermentersから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
酵母、真菌及び/又は細菌の組み合わせが利用される、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記有害な大気ガスが、二酸化炭素、亜酸化窒素、又はメタンである、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記場所が、土壌である、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記組成物の前記1つ以上の微生物が、土壌及び/又は前記土壌中で成長する植物の根にコロニー形成し、前記コロニー形成によって、
葉の体積、茎の直径、幹の直径、根の成長、及び/又は植物の数の増加、
前記土壌中の微生物バイオマスの増加、
土壌生物多様性の改善、及び
微生物による有機植物分泌物の取り込みの増加がなされる、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
生物多様性の改善が、前記土壌中の嫌気性微生物に対する前記土壌中の好気性細菌種、酵母種、及び/又は真菌種の比率を増加させることを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
植物の炭素の利用及び貯蔵を強化することによって、大気中の二酸化炭素が低減される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記炭素隔離が強化される、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記微生物が、Bacillus amyloliquefaciensを含み、前記Bacillus amyloliquefaciensが前記土壌のpHを低下させ、植物使用可能な化合物への窒素の可溶化を強化する、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
窒素含有肥料を前記土壌に適用する必要性が低減され、それによって大気中の亜酸化窒素が低減される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記1つ以上の微生物が、Dyadobacter fermentersを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物中にD.fermentersを含めることが、脱窒することなく、空気及び/又は土壌から直接亜酸化窒素を土壌窒素に変換する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記植物が、柑橘類、トマト、ソッド、ターフ、ジャガイモ、サトウキビ、ブドウ、レタス、アーモンド、タマネギ、ニンジン、ベリー及び綿から選択される作物植物である、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
前記植物が、樹木、果樹園又は森林で生育する樹木である、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記植物が、牧草地、又はソッド若しくはターフファームで生育する草、低木、又は草本で請求項35に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、潅漑システムを用いて前記土壌に適用される、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記場所が、糞尿ラグーン又は稲作水田である、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物の微生物及び/又は増殖副生成物が、糞尿ラグーン又は稲作水田に存在するメタン生成微生物を制御し、大気中のメタンを減少させる、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記増殖副生成物が、メタン生成細菌に対する抗菌特性を有するバイオサーファクタントである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が、メタン生成細菌に対する抗菌特性を有する酵素を生成するキラー酵母を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が、稲作水田で生育するイネ植物のバイオマスをさらに強化する、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記場所に前記組成物を適用する前に、前記方法が、
現地の条件のための前記場所を評価し、
前記現地の条件のためにカスタマイズされた前記組成物のための好ましい処方を決定し、
前記好ましい処方を用いて、前記場所から300マイル以内の微生物増殖施設で組成物を製造する、ことを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項53】
前記評価される現地の条件が、土壌型、土壌微生物叢の種、土壌有機物含量の量及び/又は型、GHG前駆体基質の量及び/又は型、存在する肥料又は他の土壌添加剤又は改質剤の量及び/又は型、作物及び/又は植物条件、植物の型、植物の数、植物の年及び/又は健康、GHG排出の量及び/又は型、現在の気候、現在の季節/年、ならびに組成物の適用の様式及び/又はレートのうちの1つ以上を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記組成物の製造が、固相発酵を用いて、前記微生物及び/又は増殖副生成物を培養することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物の製造が、浸漬発酵を用いて、前記微生物及び/又は増殖副生成物を培養することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記微生物増殖施設が、前記場所から100マイル以内にある、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
排出物の測定を行うステップが、汚染活動の直接排出物を測定するステップ、又は燃料入力解析を行うステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項58】
場所の炭素含有量が、前記場所における植物の地上及び/又は地下バイオマスを定量化し、前記場所におけるリター、木質破片及び/又は土壌有機物含有量の炭素含有量を定量化することによって測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項59】
農業、家畜生産、伐採、牧草地管理、廃棄物管理、航空、石油及びガス生産、又は他の産業に関与する事業者によって使用される炭素クレジットの数が低減される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2018年10月9日出願の米国仮出願第62/743,354号及び2019年8月9日出願の米国仮出願第62/884,720号の優先権を主張するものであり、内容を参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
大気中の熱を捕捉するガスは「温室効果ガス」又は「GHG」と呼ばれ、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素及びフッ素化ガスを含む(非特許文献10)。
【0003】
二酸化炭素(CO2)は、化石燃料(石炭、天然ガス、及び石油)、固形廃棄物、木材及び木材製品を燃焼させることによって、また、ある種の化学反応、例えばセメントの製造の結果として、大気中に入る。二酸化炭素は、例えば、生物学的炭素循環の一部としての植物による吸収によって、大気から除去される。
【0004】
メタン(CH4)は、石炭、天然ガス、石油の製造・運搬時に排出される。メタン排出は、家畜の製造にも起因し、その消化器系の多くはメタン生成微生物を含む。さらに、他の農業慣行、ラグーン及び都市廃棄物埋立地における有機廃棄物の崩壊は、メタン排出を生じ得る。
【0005】
亜酸化窒素(N2O)は、産業活動中及び化石燃料及び固形廃棄物の燃焼中に排出される。農業では、窒素含有肥料の過剰施用及び土壌管理の不十分さもまた、亜酸化窒素排出の増加につながり得る。
【0006】
例えば、ハイドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、六フッ化硫黄、及び三フッ化窒素を含むフッ素化ガスは、様々な工業プロセスから排出される合成の強力な温室効果ガスである(非特許文献11)。
【0007】
世界中の監視ステーションからの最近の測定値、及び南極及びグリーンランドからの氷の層に捕捉された気泡からの古い気泡の測定値に基づいて、例えば、二酸化炭素の地球大気中濃度は、過去数百年にわたって著しく上昇している(非特許文献10)。
【0008】
特に、1700年代に始まった産業革命以来、人間活動は、化石燃料の燃焼、森林伐採等の産業活動を通じて、大気中の温室効果ガスの排出量に寄与してきた。大気中に排出される温室効果ガスの多くは、10年から数千年に及ぶ長期間にわたって残存する。時間が経つにつれて、これらのガスは、化学反応によって、又は大気から温室効果ガスを吸収する海洋及び植物等の排出シンクによって大気から除去される。
【0009】
それぞれの温室効果ガスは寿命が異なり、大気中の熱を捕捉する能力が異なる上に、異なるガスを比較できるようにするために、一般に排出量を各ガスの地球温暖化係数を用いて二酸化炭素換算する。これは、一定量のガスが排出された後、100年間にどれだけの地球温暖化に寄与しているかを計測するものである。
【0010】
これらの考察に基づき、EPAは、「放射強制力」とも呼ばれる温室効果ガスによって引き起こされる暖房効果が1990年以降約37%増加したと判断した(非特許文献10)。
【0011】
1990年から2010年にかけて、すべての主要な温室効果ガスの地球規模排出量は増加したが、地球規模排出量の約3/4を占める二酸化炭素の純排出量は42%増加し、一方、メタンの排出量は約15%増加し、フッ素化ガスの排出量は2倍になり、亜酸化窒素の排出量は約9%増加した(非特許文献10)。
【0012】
世界の指導者たちは、条約や他の州間協定を通じて、GHG排出量の増加を抑制しようと試みてきた。そのような試みの1つは、炭素クレジットシステムの使用によるものである。炭素クレジットとは、1トンの二酸化炭素を排出する権利を代表する取引可能な証明書又は許可証、又は同等のGHGの総称である。典型的な炭素クレジットシステムでは、管理機関が事業者が生産できるGHG排出量の割当量を設定する。これらの割当を超える場合、事業者は、すべての炭素クレジットを利用していない他の事業者から追加手当を購入する必要がある。
【0013】
炭素クレジットシステムの1つの目標は、これらのクレジットの取引から利益を得るために、企業がよりグリーンな技術、機械、及び慣行に投資することを奨励することである。気候変動枠組条約(UNFCCC)の京都議定書に基づき、多くの国が、排出権の貿易を含むGHG減少政策に国際的に拘束されることに合意している。米国は京都議定書に拘束されておらず、米国には中央国家排出権取引制度は存在しないが、カリフォルニア州や北東部州のグループ等、いくつかの州ではこのような取引制度を採用し始めている。
【0014】
大気中のCO2 レベルを低下させるための1つの方策は炭素隔離、又は例えば大気から土壌有機物への炭素の移動である。炭素は、地球の生物圏、土壌圏、水圏、岩石圏、及び大気中で交換され、以下の主要な吸収源に貯蔵される。(1)生物圏の生きている生物及び死んだ生物における有機分子として、(2)大気中のCO2として、(3)土壌中の有機物として、(4)石灰石、ドロマイト、及び岩石中のチョーク等の化石燃料及び堆積岩として、ならびに(5)海洋生物の溶解CO2及び炭酸カルシウム殻として(例えば、非特許文献7を参照のこと)。
【0015】
炭素吸収の性質に依存して、炭素隔離はいくつかの方法によって達成され得る。すなわち、炭酸塩/重炭酸塩の形態のCO2を溶解した鉱物及び塩と結合させて炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムのような化合物を形成させる無機化学反応によって直接的に、太陽光を使用して空気及び水からのCO2を結合させて植物の組織に貯蔵されるブドウ糖にする植物光合成によって、そして植物及び動物組織のバイオマスを他の化合物(例えば、炭水化物、タンパク質、有機酸、腐植物質、ワックス、石炭、石油、及び天然ガス)に微生物分解することによって間接的になされる。
【0016】
地球温暖化は、急激な気温変動、地球上の降水量の増加、洪水や干ばつ、海面温度や海面水位の変化に寄与する可能性があるため、これらの有害な影響を緩和するために、温室効果ガス、とりわけCO2を減少する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Brummell, M.E., and S.D. Siciliano. (2011). "Measurement of Carbon Dioxide, Methane, Nitrous Oxide, and Water Potential in Soil Ecosystems." Methods in Enzymology. 496:115-137. Doi: 10.1016/B978-0-12-386489-5.00005-1. ("Brummell and Siciliano 2011").
【非特許文献2】Gougoulias, C., Clark, J. M., & Shaw, L. J. (2014). The role of soil microbes in the global carbon cycle: tracking the below-ground microbial processing of plant-derived carbon for manipulating carbon dynamics in agricultural systems. Journal of the Science of Food and Agriculture, 94(12), 2362-2371. https://doi.org/10.1002/jsfa.6577
【非特許文献2】Government of Western Australia. (2018). "Carbon farming: reducing methane emissions from cattle using feed additives." https://www.agric.wa.gov.au/climate-change/carbon-farming-reducing-methane-emissions-cattle-using-feed-additives. ("Carbon Farming 2018").
【非特許文献4】Kumar, R., Pandey, S., & Pandey, A. (2006). Plant roots and carbon sequestration. Current Science, 91(7), 885-890. Retrieved from https://www.researchgate.net/profile/Rajeew_Kumar/publication/255642030_Plant_ Roots_and_Carbon_Sequestration/links/547ec84c0cf2c1e3d2dc29f0/Plant-Rootsand-Carbon-Sequestration.pdf
【非特許文献5】Lange, M., Eisenhauer, N., Sierra, C., & Bessler, H. (2015). Plant diversity increases soil microbial activity and soil carbon storage. Nature Communications, 6(6707), 1-8. Retrieved from https://www.nature.com/articles/ncomms7707
【非特許文献6】Malik, A., Blagodatskaya, E., & Gleixner, G. (2013). Soil microbial carbon turnover decreases with increasing molecular size. Soil Biology & Biochemistry, 62, 115-118. Retrieved from https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0038071713000849
【非特許文献7】Pidwirny, M. (2006). "The Carbon Cycle". Fundamentals of Physical Geography, 2nd Edition. Date Viewed. http://www.physicalgeography.net/fundamentals/9r.html. ("Pidwirny 2006").
【非特許文献8】Six, J., Frey, S., Thiet, R., & Batten, K. (2006). Bacterial and fungal contributions to carbon sequestration in agroecosystems. Soil Science Society of America, 70, 555-569.
【非特許文献9】Sparks, D.L., Page, A.L., Helmke, P.A., Loeppert, R.H., Soltanpou, P.N., Tabatabai, M.A., Johnston, C.T., Sumner, M.E. (1996). Methods of Soil Analysis. Part 3: Chemical Methods. Number 5 in the Soil Science Society of America Book Series. Madison, WI.
【非特許文献10】United States Environmental Protection Agency. (2016). "Climate Change Indicators in the United States." https://www.epa.gov/sites/production/files/2016-08/documents/climate_indicators_2016.pdf. ("EPA Report 2016").
【非特許文献11】United States Environmental Protection Agency. (2016). "Overview of Greenhouse Gases." Greenhouse Gas Emissions. https://www.epa.gov/ghgemissions/overview-greenhouse-gases. ("Greenhouse Gas Emissions 2016").
【非特許文献12】Xu, X., Thornton, P. E., & Post, W. M. (2013). A global analysis of soil microbial biomass carbon, nitrogen and phosphorus in terrestrial ecosystems. Global Ecology and Biogeography, 22(6), 737-749. https://doi.org/10.1111/geb.12029
【非特許文献13】Zhou, J., Xue, K., Xie, J., Deng, Y., Wu, L., & Cheng, X. (2012). Microbial mediation of carbon-cycle feedbacks to climate warming. Nature Climate Change, 2, 106-110. Retrieved from https://www.nature.com/articles/doi:10.1038%2Fnclimate1331
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、有害な大気ガス、例えば、温室効果ガスを減少させるための材料及び方法を提供する。特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、土壌中の炭素隔離の増加と共に、植物炭素利用及び貯蔵の強化を介して達成される。
【0019】
強化された植物の炭素の利用は、例えば、植物における葉の増加、茎及び/又はステムの直径の増加、根の成長の増加、及び/又は植物の数の増加の形態である。
【0020】
増加した土壌隔離は、例えば、増加した植物根成長、植物によって分泌される有機化合物の微生物による増加した取り込み(植物根からの分泌物を含む)、及び土壌の改善された微生物コロニー形成の形態である。
【0021】
特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、メタン生成微生物の数及び/又は活性の減少により達成される。
【0022】
メタン生成微生物の減少は、例えば、肥料及び/又は有機廃棄物の管理及び処分の強化、ならびに土地及び作物管理の強化の形態である。
【0023】
特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、改善された農業窒素ベースの施肥慣行、土壌微生物相における改善された生物多様性、及び改善された農業土壌管理によって達成される。
【0024】
改善された農業施肥実施、土壌生物多様性、及び/又は土壌管理は、窒素に富む肥料の減少、ならびにいくつかの又は全ての肥料、農薬、及び/又は他の土壌改良物の1つ以上の有益な土壌微生物との置き換えの形態である。
【0025】
本発明の一実施形態は、本発明の方法が、例えば、農業用地、ターフ又はソッド、牧草地又は草地、水生生態系又は森林生態系の温室効果ガスの生成及び/又は生成の減少及び/又は炭素含有量に及ぼす影響を評価するための測定を行うことを含む。
【0026】
特定の実施形態において、GHG生成を評価することは、本方法を使用する前後のGHG排出量を測定する形態をとることができる。GHG排出量の測定には、直接排出量の測定、すなわち燃料投入量分析が含まれる。直接排出量の測定には、例えば、汚染のある事業活動を特定し、連続排出監視システム(CEMS)を通してその活動の排出量を直接測定することが含まれる。燃料投入量分析は、エネルギー資源の使用量(例えば、電力、燃料、木材、バイオマス等の消費量)を計算し、燃料源中の、例えば、炭素の含有量を決定し、その炭素含有量を燃料の消費量に適用して排出量を決定することが含まれる。
【0027】
特定の実施形態において、例えば、植物の接地及び/又は地下バイオマスを定量化することによって、例えば、農業地、ターフ又はソッド、牧草地、水生生態系又は森林生態系等の場所における炭素含有量を測定することができる。一般に、例えば、樹木の炭素濃度は、バイオマスの約40~50%であると仮定される。
【0028】
バイオマス定量化は、例えば、サンプル領域で植物を採取し、乾燥前後の植物の異なる部分の重量を測定する形態をとることができる。バイオマス定量はまた、非破壊、観察方法、例えば、植物の体幹直径、高さ、体積、及び他の物理的パラメーターを測定することを使用して実施される。遠隔定量化、例えば、ドローンによるレーザープロファイリング及び分析を使用することもできる。
【0029】
いくつかの実施形態において、農場、ターフ又はソッドファーム、牧草地又は草地、水生生態系又は森林生態系の炭素含有量は、サンプリング区域のリター、木質破片及び/又は土壌有機物の炭素含有量をサンプリング及び測定することをさらに含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、農業、家畜生産、廃棄物管理、林業/再植林、航空、石油及びガス生産、ならびに他の産業に関与する事業者によって使用される炭素クレジットの数を低減するために使用することができる。
【0031】
特定の実施形態において、本発明は、大気中の温室効果ガスの減少、炭素の利用の増加、及び/又は炭素の隔離の強化のために、微生物ベースの生成物、ならびにこれらの微生物ベースの生成物を使用する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、土壌の特性を強化し、植物の接地及び地下バイオマスを強化し、例えばメタン生成微生物を制御することができる微生物ベースの組成物を提供する。有利な点としては、本発明の微生物ベースの生成物及び方法は、環境に優しく、無毒であり、費用効果があることである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1A~1Bは、未処理の対照柑橘樹(「栽培者慣行」)と、本明の実施形態による組成物で処理された柑橘樹のひげ根バイオマスの差を示す。図1Aは、処理済み及び未処理のグレープフルーツ樹の根バイオマス測定値を示す。図1Bは、処理済み及び未処理のオレンジ樹の根バイオマス測定値を示す。
図2図2A~2Bは、未処理の対照柑橘樹と、本発明の実施形態による組成物で処理された柑橘樹の林冠密度レーティングの差を示す。図2Aは、処理済み及び未処理の若いオレンジ樹についての林冠密度レーティングを示す。図2Bは、処理済み及び未処理の成熟オレンジ樹についての林冠密度レーティングを示す。
図3図3は、未処理の対照アーモンド樹と、本発明の実施形態による組成物で処理されたアーモンド樹の幹キャリパーの差を示す。
図4図4A~4Bは、未処理の対照ソッドと、本発明の実施形態による組成物で処理されたソッドの乾燥根質量の差を示す。図4Aは、処理済み及び未処理のライグラスソッドの乾燥根塊を示す。図4Bは、処理済み及び未処理のブルーライソッドの乾燥根塊を示す。
図5図5A~5Bは、未処理の対照ソッドと、本発明による組成物で処理されたソッドの乾燥根質量及びクロロフィルレーティングの差を示す。図5Aは、処理済み及び未処理のソッドの乾燥根塊を示す。図5Bは、処理済み及び未処理の土壌のクロロフィルレーティング(相対的な緑色度)を示す。
図6図6A~6Bは、未処理の対照タバコ植物と、本発明の実施形態による組成物で処理されたタバコ植物のクロロフィル含有量、葉の長さ及び葉の幅の差を示す。図6Aは、処理済みタバコ及び未処理のタバコのクロロフィル含量を示す。図6Bは、処理済みタバコ及び未処理のタバコの葉の長さ(上部)及び幅(下部)を示す。
図7図7A~7Bは、未処理の対照タバコ植物と、本発明の実施形態による組成物で処理されたタバコ植物の繊維根湿潤質量、根長及び幅との差を示す。図7Aは、処理タバコ及び未処理タバコの繊維性根湿潤塊を示す。7Bは、処理タバコ及び未処理タバコの根の長さ及び幅を示す。
図8図8A~8Bは、未処理の植物(左)と、本発明の実施形態による組成物で処理された植物(右)の湿式根塊(8A)及び根繊維の密度(8B)を示す。
図9図9は、本発明の実施形態による組成物で処理されたプロットと比較した、未処理のプロットにおける土壌の分析からの嵩密度の結果を示す。
図10図10は、本発明の実施形態による組成物で処理されたプロットと比較した、未処理対照プロットにおける土壌の分析からの全有機炭素(TOC)結果を示す。
図11図11は、本発明の実施形態による組成で処理されたプロットと比較した、未処理の対照プロットにおける土壌炭素プールに貯蔵されたCO2当量を示す。
図12図12は、本発明の実施形態による組成物、NPK肥料、及び/又は未処理プロットで処理されたプロットから測定された土壌亜酸化窒素放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は有害な大気ガス、例えば、温室効果ガスを減少させるための材料及び方法を提供する。特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、土壌中の炭素隔離の増加と共に、植物の炭素利用及び貯蔵の強化を介して達成される。
【0034】
特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、メタン生成微生物の減少を介して達成される。
【0035】
特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、改善された農業用窒素ベースの施肥慣行及び改善された農業用土壌管理(例えば、土壌微生物相の改善された生物多様性によって)によって達成される。
【0036】
本発明の一実施形態は、例えば、農業用地、ターフ又はソッドファーム、牧草地、水生生態系又は森林生態系の温室効果ガス及び/又は炭素含有量の生成及び/又は減少に対する本発明の方法の効果を評価するための測定を行うことを含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、農業、家畜生産、林業/再植林、廃棄物管理、航空、石油及びガス生産、又は他の産業に関与する事業者によって使用される炭素クレジットの数を低減するために使用することができる。
【0038】
一実施形態において、本発明は、土壌の特性を強化し、植物の地上及び地下バイオマスを強化し、例えば、メタン生成微生物を制御することができる微生物ベースの組成物を提供する。
【0039】
選択した定義
本発明は「微生物ベースの組成物」を利用し、これは、微生物又は他の細胞培養物の増殖の結果として生成された成分を含む組成物を意味する。従って、微生物ベースの組成物は、微生物自体及び/又は微生物増殖の副生成物を含む。微生物は、植物状態、胞子又は分生子形態、菌糸形態、任意の他の形態の微生物繁殖体、又はこれらの混合物であってよい。微生物は、プランクトン性であっても、バイオフィルム形態であっても、又は両方の混合物であってもよい。増幅副生成物は、例えば、代謝生成物、細胞膜成分、タンパク質、及び/又は他の細胞成分である。微生物は、無傷であっても溶解されていてもよい。好ましい実施形態において、微生物は、微生物ベースの組成物中に、それらが増殖した増殖培地と共に存在する。微生物は、例えば、組成物の1グラム当たり又は1ml当たり、少なくとも1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×10CFU/ml以上の濃度で存在してもよい。
【0040】
本発明はさらに、所望の結果を達成するために実際に適用される生成物である「微生物ベースの生成物」を提供する。微生物ベースの生成物は、微生物培養プロセスから採取された微生物ベースの組成物である。あるいは、微生物ベースの生成物は、添加されたさらなる成分を含む。これらの追加の成分としては、例えば、安定剤、緩衝剤、キャリア(例えば、水又は塩溶液)、さらなる微生物増殖を補助する添加栄養素、非栄養増殖エンハンサー、及び/又は微生物及び/又はそれが適用される環境中の組成物の追跡を容易にする薬剤が挙げられる。微生物ベースの生成物はまた、微生物ベースの組成物の混合物を含んでいてもよい。微生物ベースの生成物はまた、これらに限定されるものではないが、濾過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等のような、何らかの方法で処理された微生物ベースの組成物の1つ以上の成分を含んでもよい。
【0041】
本明細書中で使用される場合、微生物ベースの組成物の発酵の文脈において「採取された」とは、微生物ベースの組成物の一部又は全部を増殖容器から除去することを指す。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「バイオフィルム」は、細胞が互いに及び/又は表面に接着した微生物の複合的な凝集体である。いくつかの実施形態において、細胞は、凝集体全体を取り囲む多糖障壁を分泌する。バイオフィルム中の細胞は、液体培地中で浮遊又は泳動する単一細胞である同じ生物のプランクトン細胞とは生理学的に異なる。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「単離された」又は「精製された」化合物は、他の化合物、例えば、それが天然において関連する細胞物質を実質的に含まない。精製された又は単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然に存在する状態においてそれに隣接する遺伝子又は配列を含まない。精製された又は単離されたポリペプチドは、その天然に存在する状態においてそれに隣接するアミノ酸又は配列を含まない。微生物株の文脈において「単離された」は、株が天然に存在する環境から除去されることを意味する。従って、単離された株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、又は担体に関連する胞子(又は株の他の形態)として存在し得る。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「生物学的に純粋な培養物」は、天然において関連する材料から単離された培養物である。好ましい実施形態において、培養物は、全ての他の生細胞から単離されている。さらなる好ましい実施形態において、生物学的に純粋な培養物は、天然に存在するのと同じ微生物の培養物と比較して有利な特徴を有する。有利な特徴は、例えば、1つ以上の増殖副生成物の強化された生成である。
【0045】
特定の実施形態において、精製された化合物は、目的の化合物の少なくとも60重量%である。好ましくは、調製物は、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の目的化合物である。例えば、精製された化合物は、少なくとも90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、98重量%、99重量%、又は100重量%の所望の化合物である。純度は任意の適した標準的な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって測定される。
【0046】
「代謝生成物」とは、代謝によって生成される任意の物質(例えば、増殖副生成物)又は特定の代謝プロセスに関与するために必要な物質をいう。代謝生成物は、代謝の出発物質、中間体、又は最終生成物である有機化合物である。代謝生成物の例としては、バイオサーファクタント、バイオポリマー、酵素、酸、溶剤、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、及びアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「調節する」は、変化(例えば、増加又は低下)を引き起こすことを意味する。このような変化は、標準的な公知の方法によって検出される。
【0048】
本明細書で提供される範囲は、その範囲内の全ての値について簡潔にしたものと理解される。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20からなるグループからの任意の数、組み合わせ、又は下位範囲、ならびに、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9も含まれるものとする。下位範囲に関して、範囲のいずれかの終点から延びる「入れ子下位範囲」が具体的に考えられる。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子下位範囲は、一方向には、1~10、1~20、1~30、及び1~40、又は他方向には、50~40、50~30、50~20、及び50~10が含まれる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「減少」とは、負の変化を意味し、「増加」とは、正の変化を意味し、正又は負の変化は、少なくとも0.25%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「参照」は、標準又は対照条件をいう。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「界面活性剤」とは、相間の表面張力(界面張力)を低下させる化合物をいう。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び分散剤として作用する。「バイオサーファクタント」は、生体によって生成される界面活性剤である。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「農業」は、食品、繊維、バイオ燃料、医薬品、化粧品、サプリメント、装飾目的及び他の用途のための植物、藻類及び/又は真菌の栽培、培養及び繁殖を意味する。本発明によれば、農業にはまた、園芸、造園、ガーデニング、植物保護、林業及び再植林、牧草地及び草地の修復、果樹園、樹木栽培、ならびに作物栽培学が含まれる。さらに、農業には、土壌のケア、モニタリング及び維持が含まれる。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「強化する」は、改善又は増加を意味する。例えば、強化された植物の健康とは、種の発芽及び/又は発育の増加、害虫及び/又は病気を防御する能力の改善、ならびに干ばつ及び/又は過剰水分供給等の環境ストレス因子に耐える能力の改善を含む、植物の成長及び繁殖能力を改善することを意味する。植物成長及び/又は植物バイオマスの強化は、地面上及び地下の両方での植物のサイズ及び/又はは質量を増加させ(例えば、林冠/葉体積、高さ、幹キャリパー、枝長、シュート長、蛋白質含量、根サイズ/密度及び/又は全成長指数の増加)、並びに/又は植物が所望のサイズ及び/又は質量に達する能力を改善する。歩留りの強化は、例えば、植物当たりの果実、葉、根及び/又は塊茎の数及び/又はサイズを増加させることによって、及び/又は果実、葉、根及び/又は塊茎の品質を改善することによって(例えば、味、食感、ブリックス、クロロフィル含有量及び/又は色を改善することによって)、作物中の植物によって生成される最終生成物を改善することを意味する。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「植物」という用語は、木質、観賞用又は装飾用、作物又は穀類、果実又は野菜、果実植物又は野菜植物、花又は樹木、巨大藻類又は微細藻類、植物プランクトン及び光合成藻類(例えば、緑藻類Chlamydomonas reinhardtii)の任意の種を含むが、これらに限定されない。「植物」にはまた、単細胞植物(例えば、微細藻類)及びコロニー(例えば、ボルボックス)又は植物の発育の任意の段階に存在する構造に大きく分化される複数の植物細胞を含む。そのような構造には、果実、種、シュート、根、茎、葉、花等が含まれるが、それらに限定されない。さらに、植物は、例えば、芝生又は庭で独立していてもよく、又は、例えば、果樹園、森林又は作物の一部として、多くの植物のうちの1つであってもよい。例示的な実施形態において、植物は、柑橘類、トマト、ソッド、ターフ、ジャガイモ、サトウキビ、ブドウ、レタス、アーモンド、タマネギ、ニンジン、ベリー、及び綿から選択される作物植物;及び/又は木立、森林又は果樹園で生育する樹木;水生環境で生育する水生植物(ハイドロフィート)又は大型植物(マクロフィート);及び/又は牧草地、又はソッド若しくはターフファームで生育する草、低木又は草本(herb)である。
【0055】
「植物組織」という用語には、根、シュート、葉、花粉、種、腫瘍、又はこぶに存在するものを含む植物の分化及び未分化組織、ならびに培養細胞(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚、カルス等)が含まれる。植物組織は、植物、器官培養、組織培養、又は細胞培養であってもよい。本明細書で使用される「植物部分」という用語は、植物構造又は植物組織を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、状況又は発生の「防止」又は「予防」は、状況又は発生の開始、広がり又は進行を遅延、阻害、抑制、未然防止、及び/又は最小化することを意味する。予防には、無期限の、絶対的又は完全な予防が含まれるが、これを必要とするものではなく、徴候又は症状が後になっても発現することがあることを意味する。予防には、そのような病気、状態又は障害の発症の重症度を低下させること、及び/又はその状態又は障害のより重篤な状態又は障害への進行を阻害することが含まれる。
【0057】
本明細書で使用される場合、有害生物を参照して用いる「制御」という語は、有害生物を殺す、無能にする、動かなくする、又は個体数を減少させる、あるいは有害生物を実質的に害を引き起こすことができないようにすることを意味する。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「有害生物」は、ヒト又はヒトの関係すること(例えば、農業、園芸)に対して破壊的及び/又は有害である、ヒト以外の任意の生物である。全てではないが、いくつかの例では有害生物が病原生物である可能性がある。有害生物は、感染、寄生及び/又は病気を引き起こしたり、媒介生物となったりすることがある。あるいは、単に生組織を食べたり、その他の身体に危害を加えることもある。有害生物は、ウイルス、真菌、細菌、寄生虫、原虫及び/又は線虫を含むが、これらに限定されない単細胞又は多細胞生物であり得る。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「土壌改質剤(soil amendment)」又は「土壌コンディショナー(soil conditioner)」は、土壌及び/又は根圏の特性を強化するために土壌に添加される任意の化合物、材料、又は化合物や材料の組み合わせである。土壌改質剤は、有機及び無機物質を含むことができ、さらに、例えば、肥料、農薬及び/又は除草剤を含むことができる。栄養豊富で排水性の高い土壌は、植物の成長と健康に不可欠であり、従って土壌の栄養と水分含量を変えることによって植物バイオマスを強化するために土壌改質剤を用いることができる。土壌改質剤はまた、土壌構造(例えば、圧密の防止)、栄養濃度及び貯蔵能力の改善、乾燥土壌中の水分保持の改善、ならびに水分含有土壌中の排水の改善を含むが、これらに限定されない、土壌の多くの異なる品質を改善するために使用することができる。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「非生物的ストレッサー」とは、特定の環境において生体に悪影響を及ぼす非生物状態である。非生物的ストレッサーは、その通常の変動範囲を超えて環境に影響を及ぼして、生体の個体数又は個体の生理に有意な影響を及ぼすものとする。非生物的ストレッサーの例としては、干ばつ、極端な温度(高温又は低温)、洪水、強風、自然災害(例えば、ハリケーン、雪崩、竜巻)、土壌pH変化、高な放射線、土壌の締固め、汚染等が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、「生物的ストレッサー」は、別の生体による生体に対する損傷作用及び/又は有害作用を引き起こす。生物学的ストレッサーには、例えば、有害生物によって引き起こされる損傷及び/又は疾患、資源及び/又は空間についての他の生物との競合、種々の人間活動が含まれる。
【0061】
「有する」又は「含有する」と同義である「含む」という移行語句は、包括的又は制限がなく、追加の、非記載の要素又は方法ステップを排除しない。対照的に、「からなる」という移行語句は、請求項に規定されていない要素、ステップ、又は成分を排除するものである。「から本質的になる」という移行語句は、請求項の範囲を、特定の材料又はステップに限定する。また、請求項に記載された発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。「含む」という用語の使用は、記載された構成要素「からなる」及び「本質的になる」実施形態が意図される。
【0062】
特に明記されない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」という用語は包括的と理解される。本明細書で使用される「1つ」及び「その」は、単数又は複数であると理解される。
【0063】
特に言及されない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差内と理解される。約は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内と理解することができる。
【0064】
本明細書に記載される変位のいずれかの定義における化学基の列挙の引用は、いずれかの1個の基又は列挙された基の組み合わせとしての変位の定義を含む。本明細書中の変位又は態様のための実施形態の列挙は、その実施形態を任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態もしくはその一部と組み合わせて含む。
【0065】
本明細書に引用されている全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
有害大気ガスの減少方法
本発明は、温室効果ガス(GHG)等の有害な大気ガスを低減するための方法を提供する。GHGは、例えば、二酸化炭素、亜酸化窒素及び/又はメタンである。
【0067】
有利な点を挙げると、いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、農業、家畜生産、林業/再植林、廃棄物管理、航空、石油及びガス生産、又は他の産業に関与する事業者によって使用される炭素クレジットの数を低減するために使用することができることである。
【0068】
特定の実施形態において、地球の大気中に存在する有害な大気ガスの量を減少させるための方法が提供され、本方法は、1つ以上の有益な微生物及び/又は微生物増殖副生成物、ならびに任意で、微生物増殖を促進するための栄養素(例えば、プレバイオティクス)を含む組成物を、有害な大気ガスの供給源である場所に適用することを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、その場所は、例えば、呼吸又は分解等の天然プロセスによって有害な大気ガス放出に変換することができる有機物を含んでいる。本発明は、例えば、これらのプロセスの有害な大気ガス副生成物の放出を制御及び/又は防止するために使用することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、組成物をその場所に適用する前に、本方法は、現地の条件についてその場所を評価し、現地の条件についてカスタマイズされる組成物についての好ましい処方(例えば、微生物及び/又は増殖副生成物の型、組み合わせ及び/又は比率)を決定し、好ましい処方を用いて組成物を生成することを含む。
【0071】
現地の条件は、例えば、土壌条件(例えば、土壌型、土壌微生物相の種、土壌有機物含量の量及び/又は型、GHG前駆体基質の量及び/又は型、肥料又は他の土壌添加物又は改質剤の量及び/又は型)、作物及び/又は植物の状態(例えば、栽培される植物の型、数、年齢及び/又は健康)、環境条件(例えば、現在の気候、季節又は時季)、現地におけるGHG排出量及び型、現地に関連する組成物の適用モード及び/又は速度、その他を含むことができる。
【0072】
評価後、組成物がこれらの現地の条件に合わせてカスタマイズされるように、組成物の好ましい処方を決定することができる。次いで、組成物を、好ましくは適用場所から300マイル以内、好ましくは200マイル以内、さらにより好ましくは100マイル以内の微生物増殖施設で培養する。
【0073】
いくつかの実施形態において、現地の条件は、定期的に、例えば、毎年1回、毎年2回、又は毎月1回で評価される。このようにして、組成物の処方は、変化する現地の条件の独特の必要性を満たすために、必要に応じてリアルタイムで修正することができる。
【0074】
適用モード
本明細書で使用される場合、組成物又は生成物を場所に「適用する」とは、組成物又は生成物がその場所で効果を有することができるように、組成物又は生成物をその場所と接触させることをいう。この効果は、例えば、微生物の増殖及びコロニー形成、及び/又は代謝生成物、酵素、バイオサーファクタント、又は他の微生物増殖副生成物の作用によるものである。適用モードは、組成物の処方に依存し、例えば、噴霧、注入、散布、インジェクション、スプレッド、混合、浸漬、霧化及びミストが含まれる。処方は、例えば、液体、乾燥及び/又は湿潤性粉末、流動性粉末、ダスト、顆粒、ペレット、エマルジョン、マイクロカプセル、ステーク、油、ゲル、ペースト及び/又はエアロゾルが含まれる。例示的な実施形態において、例えば、組成物を水に溶解することによって組成物が調製された後に、組成物は適用される。
【0075】
一実施形態において、組成物が適用される場所は、植物が植えられるか、又は成長している土壌(又は根圏)(例えば、作物、畑、果樹園、木立、牧草地/草地、又は森林)である。本発明の組成物は、潅水流体と予め混合することができ、組成物は土壌を通して浸透し、根の微生物相に影響を及ぼすために、例えば、植物の根に送達することができる。
【0076】
一実施形態において、組成物は、水の有無にかかわらず、土壌表面に適用され、土壌適用の有益な効果は、降雨、スプリンクラー、洪水、又は滴下潅漑によって活性化される。
【0077】
一実施形態において、場所は、家畜廃棄物が堆積及び/又は処理される肥料ラグーンである。一実施形態において、場所は、稲田又は生育期に作物畑が浸水する同様の農作業である。適用は、本発明の組成物を、注入、噴霧、インジェクション等によってラグーン及び/又は浸水した稲田の液体と接触させること、そして、場合により、組成物を混合させることによりなされる。
【0078】
一実施形態において、場所は、植物又は植物の一部分である。組成物を、種子処理として、又は植物もしくは植物の一部分の表面(例えば、根、塊茎、茎、花、葉、果実、もしくは花の表面)に直接適用することができる。特定の実施形態において、組成物は、植物の1つ以上の根と接触させる。組成物は、例えば、根を噴霧又は沈めることによって、及び/又は間接的に、例えば、植物が成長する土壌(又は根圏)に組成物を投与することによって、根に直接適用することができる。組成物は、植え付け前又は植え付け時に植物の種子に、又は植物の任意の他の部分及び/又はその周囲環境に適用することができる。
【0079】
本方法が、柑橘園、牧草地又は草地、森林、ソッド又はターフファーム、又は農作物等の大規模な環境で使用される一実施形態において、本方法は、水、肥料、農薬、又は他の液体組成物を供給するために使用される潅漑システムに連結されたタンクに組成物を投与することを含む。従って、植物及び/又は植物を取り囲む土壌は、例えば、土壌インジェクション、土壌浸漬、センターピボット潅漑システムの使用、シード溝上への噴霧、マイクロジェット、浸漬噴霧器、ブーム噴霧器、スプリンクラー、及び/又は滴下潅漑器によって、組成物で処理することができる。有利な点を挙げると、本方法は、数百エーカーの土地を処理するのに適していることである。
【0080】
本方法が、家庭園や温室等のより小規模な環境で使用される一実施形態において、本方法は、組成物(水及び他の任意の添加剤と混合された)をハンドヘルド式芝生及び庭園噴霧器のタンクに注ぎ、土壌又は別の場所に組成物を噴霧することを含む。組成物はまた、標準的なハンドヘルド給水缶で混合し、その場所に注ぐこともできる。
【0081】
植物及び/又はそれらの環境は、植物を栽培するプロセス中の任意の時点で処理することができる。例えば、組成物は、種子が植え付けられる前、それと同時に、又はその後に土壌に適用することができる。それはまた、植物が開花、果実化している場合、及び落葉中及び/又は後を含む、植物の発育及び成長の間のその後の任意の時点で適用することもできる。
【0082】
有害大気ガスの減少
いくつかの実施形態において、本方法による有害な大気ガスの減少は、植物の炭素利用及び貯蔵の強化、ならびに土壌中の炭素隔離の増加によって達成される。例えば、強化された植物の炭素利用とは、例えば、植物における葉の増加、茎及び/又は幹の直径の増加、根の成長の強化、及び/又は植物の数の増加の形態である。
【0083】
さらに、増加した土壌隔離とは、例えば、増加した植物根成長、植物が分泌する有機化合物(植物根からの分泌物を含む)の微生物による取り込みの増加、土壌及び根の改善された微生物コロニー形成の形態である。
【0084】
本明細書で使用される「減少」とは負の変化を指し、「増加」とは正の変化を指し、負又は正の変化は、少なくとも0.01%、0.1%、0.25%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%である。
【0085】
いくつかの実施形態において、所望の減少は、比較的短い期間内、例えば、1週間、2週間、3週間又は4週間以内に達成される。いくつかの実施形態において、所望の減少は、本発明の方法を使用した後、例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月又は6ヶ月以内に達成される。いくつかの実施形態において、所望の減少は、本方法を使用した後1年、2年、3年、4年、又は5年以内に達成される。
【0086】
特定の実施形態において、本方法は、大気中の二酸化炭素を減少するために使用される。植物のバイオマスを地上及び地下で増加させることによって、植物は光合成の間に炭素を固定し、バイオマスとして炭素を貯蔵することによって、炭素シンクとして作用する。さらに、増加した植物根バイオマスは、微生物が沈降し得る根構造を増加させるだけでなく、分泌速度、適用されたものと天然の微生物バイオマスを供給する、植物根から滲出される糖及び他の栄養素の量を増加させる。次に、微生物は、植物ベースの材料を、土壌に貯蔵された増加したレベルの炭素に変換する。従って、地下の刺激された微生物集団(添加されたものと天然の両方)は、炭素の貯蔵システムとしてさらに役立つ。特定の実施形態において、微生物細胞バイオマスは、酵母バイオマスである。
【0087】
特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、改善された農業施肥の実施及び改善された農業土壌管理によって達成される。
【0088】
改善された農業施肥の実施は、例えば、窒素に富む肥料の減少、一部又は全ての肥料、農薬、及び/又は他の土壌改質剤の、1つ以上の環境に優しい土壌微生物を含む組成物との置き換えの形態である。有利な点を挙げると、肥料及び他の化学物質の適用を減少させることは、植物によって吸収されずに残されたときに、土壌及び地下水を汚染するこれらの化学物質の量を減少させ、さらに他の水源へのそれらの流出を減少させることである。さらに、施肥量を減らすことは、そのような適用から生じる亜酸化窒素及び二酸化炭素土壌排出量を減らす。
【0089】
本発明の方法は、例えば、葉の体積の増加、茎及び/又は幹の直径の増加、根の成長及び/又は密度の増加、及び/又は植物の数の増加を含む、植物の地上及び地下のバイオマスを増加させることができる。一実施形態において、これは植物の根が成長している根圏の全体的な親和性を改善することによって、例えば、根圏の栄養及び/又は保湿特性を改善することによって達成される。
【0090】
従って、本発明は、植林努力、枯渇した草原及び/又は牧草地を回復する努力に利益をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、草原/牧草地及び/又は森林における植生の量が、家畜による過放牧、伐採、商業、都市及び/又は住宅開発、及び/又は投棄等の人為的原因によって枯渇している。いくつかの実施形態において、植生の量は、火災、疾病、又は他の自然及び/又は環境ストレッサーのために枯渇している。
【0091】
さらに、一実施形態において、本方法を用いて、土壌及び/又は植物の根圏に有益な微生物を接種することができる。本発明の微生物ベースの組成物の微生物は、例えば、好気性細菌、酵母、及び/又は真菌による、植物の根及び/又は根圏、ならびに維管束系植物のコロニー形成を促進することができる。
【0092】
特定の実施形態において、本方法を用いて、空気及び/又は土壌から亜酸化窒素を直接除去することができる。例えば、本発明による特定の微生物(例えば、Dyadobacter fermenters)は、脱窒することなく、土壌中の亜酸化窒素を窒素に還元することができる。脱硝は、硝酸塩及び亜硝酸塩の分子状窒素への還元である。還元プロセスの中間体は、大気中に漏れる亜酸化窒素のような酸化窒素生成物を含む。
【0093】
一実施形態において、コロニー形成の促進が土壌微生物の生物多様性の改善をもたらす。本明細書中で使用される場合、生物多様性を改善することは、土壌内の微生物種の多様性を増加させることを指す。好ましくは、生物多様性の改善は、土壌中の嫌気性微生物に対する好気性細菌種、酵母種、及び/又は真菌種の比率を増加させることを含む。
【0094】
例えば、一実施形態において、本組成物の微生物は、根、土壌及び/又は根圏にコロニー形成し、Rhizobium及び/又はMycorrhizae等の他の栄養素固定微生物、ならびに植物バイオマス蓄積を促進する他の内因性及び/又は外因性の微生物のコロニー形成を促進することができる。
【0095】
一実施形態において、土壌生物多様性及び根コロニー形成は、土壌への生物刺激剤、又は微生物の増殖速度の増加を促進する物質の適用によってさらに強化することができる。
【0096】
一実施形態において、改善された土壌生物多様性が、強化された栄養素の可溶化及び/又は取り込みを促進する。例えば、特定の好気性細菌種は、土壌を酸性化し、NPK肥料を植物使用可能な形態に可溶化することができる。
【0097】
さらに他の実施形態において、本方法を用いて、有害であるか、又は有益な土壌微生物と競合し得る土壌微生物による根圏のコロニー形成を阻害及び/又は阻止することができる。例えば、多くの好気性微生物が土壌中に存在する場合、増殖して亜酸化窒素等の有害な大気副生成物を生成する硝酸塩還元微生物等の嫌気性微生物は少ない。
【0098】
一実施形態において、本方法を用いて、例えば根圏の根と土壌の境界における、根細胞の外層を通る有益な分子の浸透を強化することができる。
【0099】
本発明を用いて、任意の種類の土壌、例えば、粘土、砂質土、シルト質土、ピーティ土、チョーク質土、ローム質土、及び/又はそれらの組み合わせの任意の数の品質を改善することができる。さらに、本方法及び組成物を用いて、乾燥した、水分を含んだ、多孔質の、枯渇した、圧縮された土壌及び/又はそれらの組み合わせの品質を改善することができる。土壌には、根圏に存在する土壌又は根圏の外側にある土壌が含まれる。
【0100】
一実施形態において、本方法を用いて、水分を多く含む土壌中の水の排水及び/又は分散を改善することができる。一実施形態において、本方法を乾燥土壌中の保水性を改善するために使用することができる。
【0101】
一実施形態において、本方法を多孔質及び/又は枯渇した土壌における栄養素の保持を改善するために使用することができる。
【0102】
一実施形態において、本方法を浸食土壌の構造及び/又は栄養素含有量を改善するために使用することができる。
【0103】
一実施形態において、本方法を用いて、化学肥料又は合成肥料を低減及び/又は置換することができ、組成物は土壌中の窒素、カリウム、リン(又はリン酸塩)及び/又は他の微量栄養素を固定、可溶化及び/又は移動することができる微生物を含む。
【0104】
特定の実施形態において、有害な大気ガスの減少は、動物起源及び環境起源の両方のメタン生成微生物の減少を介して達成される。メタン生成微生物の減少は、例えば、肥料及び/又は有機廃棄物の管理及び処分の強化、土地及び作物管理の強化の形態とすることができる。
【0105】
一実施形態において、本組成物が適用される場所は、ラグーンである。肥料ラグーンは、畜産業の動物廃棄物で満たされた嫌気性流域である。いくつかのラグーンはまた、工業廃水及び/又は都市廃水を前処理するために使用される。廃水中の有機物を供給するメタン生成微生物の存在により、ラグーンはメタン放出の大きな源である。
【0106】
一実施形態において、本発明の組成物が適用される場所は、稲田である。標準的な稲作実施は、栽培シーズン中に稲田の洪水を伴う。しかしながら、洪水の間、メタン生成微生物は、水中の腐敗する有機物上で繁殖し、大量のメタン放出を放出する。
【0107】
本発明の組成物を、ラグーン又は稲田中の水及び他の液体に適用することによって、本発明の方法は、メタン生成微生物の制御により、大気中のメタン放出を効果的に減少させることができる。例えば、一実施形態において、組成物がバイオサーファクタント及び/又はバイオサーファクタントを生成する微生物を含む場合、組成物はメタン生成菌に対して抗細菌特性を示すことができる。他の実施形態において、組成物がキラー酵母、例えばWickerhamomyces anomalusを含む場合、組成物はキラー酵母によって分泌される外毒素のために、メタン生成微生物を制御するのに有効である。
【0108】
本方法の一実施形態は、有害な大気ガスの供給源であるその場所の温室効果ガス及び/又は炭素含有量の生成又は生成の減少に対する組成物の効果を評価するために測定を行うことを含む。
【0109】
測定は、微生物ベースの組成物をその場所に適用した後の特定の時点で行うことができる。いくつかの実施形態において、測定は、約1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、30日以内、60日以内、90日以内、120日以内、180日以内、及び/又は1年以内後に行われる。
【0110】
さらに、測定は、経時的に繰り返すことができる。いくつかの実施形態において、測定は、毎日、毎週、毎月、2ヶ月毎、半月毎、半年毎、及び/又は毎年繰り返される。
【0111】
特定の実施形態において、GHG生成の評価は、その場所からのGHG排出量を測定する形態をとることができる。ガスクロマトグラフィー及び電子捕獲が、実験室設定でサンプルを試験するのに一般的に使用される。特定の実施形態において、GHG排出はまた、例えば、フラックス測定及び/又はインサイチュの土壌探査を使用して、現地で行うことができる。フラックス測定では、土壌表面から大気へのガスの放出を分析する。たとえば、土壌の領域を囲むチャンバーを使用し、一定期間にわたるチャンバー内部のガスの蓄積を観察することによって、フラックスを推定する。プローブを使用して、土壌ガスプロファイルを生成することができ、これは、土壌中の特定の深さでの対象ガスの濃度の測定から開始され、プローブと周囲表面条件とを直接比較する(Brummell and Siciliano 2011、118)。
【0112】
GHG排出量の測定はまた、直接排出量測定及び/又は燃料入力分析の他の形態も含むことができる。直接排出量測定には、例えば、汚染をもたらす事業活動(燃料燃焼自動車等)を特定し、その活動の排出量を連続排出監視システム(CEMS)によって直接測定することが含まれる。燃料入力解析には、使用されるエネルギー資源の量(例えば、電力、燃料、木材、バイオマス等の消費量)を計算し、例えば、燃料源中の炭素の含有量を求め、その炭素含有量を消費される燃料の量に適用して排出量を求めることが含まれる。
【0113】
特定の実施形態において、作物が生育している場所、例えば、農場、作物、ソッド又はターフファーム、牧草地/草地、又は森林の炭素含有量は、例えば、作物の地上及び/又は地下バイオマスを定量化することによって測定することができる。一般に、例えば、樹木の炭素濃度は、バイオマスの約40~50%であると仮定される。
【0114】
バイオマス定量化は、例えば、サンプル領域で植物を採取し、乾燥前後の植物の異なる部分の重量を測定する形態をとることができる。バイオマス定量はまた、非破壊、観察方法、例えば、植物の幹直径、高さ、体積、及び他の物理的パラメーターを測定することにより行うこともできる。例えば、レーザープロファイリング及び/又はドローン解析等の遠隔定量化も使用することができる。
【0115】
いくつかの実施形態において、その場所の炭素含有量は、さらに、サンプリング領域のリター、木質破片、及び/又は土壌の炭素含有量をサンプリング及び測定することにより求めることができる。特に、土壌は、例えば、乾式燃焼を用いて、全有機炭素(Total Organic Carbon)(TOC)パーセントを決定し、活性炭を検出するための過マンガン酸カリウム酸化分析によって、そして、炭素パーセントからトン/エーカーに変換するための嵩密度測定(単位体積当たりの重量)によって分析することができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、農業、林業/再植林、畜産、廃棄物管理、航空、石油及びガス、又は他の産業に関与する事業者によって使用される炭素クレジットの数を低減するために使用することができる。
【0117】
組成物
一実施形態において、本発明は、1つ以上の微生物及び/又は微生物増殖副生成物を含む組成物を提供し、1つ以上の微生物は、有益な、非病原性の、土壌コロニー形成微生物である。この組成物は、温室効果ガスの減少、炭素利用の改善、炭素隔離の強化及び/又はメタン生成微生物の制御に使用することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、根圏特性の強化、植物バイオマスの強化、及び/又は、例えば、メタン生成微生物の制御にも有用な1つ以上の微生物を含む。
【0118】
好ましい実施形態において、微生物増殖副生成物は、バイオサーファクタント及び/又は酵素であるが、他の代謝生成物も組成物中に存在していてもよい。
【0119】
有利な点を挙げると、好ましい実施形態において、本発明による微生物ベースの組成物は、非毒性であり、例えば、ヒト又は他の非害虫動物の皮膚又は消化管に刺激を引き起こすことなく、高濃度で適用される。従って、本発明は、微生物ベースの組成物の適用が、栽培者や家畜等の生体の存在下でなされる場合に特に有用である。
【0120】
一実施形態において、複数の微生物を一緒に使用することができ、この場合、微生物はGHG減少及び/又は炭素隔離に対して相乗的利益をもたらす。
【0121】
組成物中の微生物及び他の成分の種及び比率は、例えば、どの土壌の種類、植物及び/又は作物が処理されているか、組成物が適用されているときがどの季節、気候及び/又は時季であるか、ならびにどのモード及び/又は適用レートが利用されているか等、適用時の特定の現地の条件に合わせてカスタマイズし、最適化することができる。従って、組成物は、任意の所定の場所に対してカスタマイズすることができる。
【0122】
一実施形態において、組成物は、酵母、例えば、Starmerella bombicolaSaccharomyces boulardiiPseudozyma aphidis、及び/又はPichia属酵母(spp. yeast)(例えば、Pichia occidentalisPichia kudriavzevii、及び/又はPichia guilliermondiiMeyerozyma guilliermondii))を含む。
【0123】
一実施形態において、組成物は、少なくとも1つのキラー酵母を含む。好ましくは、組成物は、非病原性「キラー酵母」株、例えば、Wickerhamomyces anomalus、又は、同じ系列及び/又は属内の他の酵母を含む。W. anomalusは、フィターゼ、グリコシダーゼ、及びエキソベータ-1、3グルカナーゼ等の酵素、ならびにリン脂質等のバイオサーファクタントを含む、様々な代謝生成物を生成することができる。
【0124】
一実施形態において、組成物は、真菌、例えば、Pleurotus ostreatusLentinula edodes、又はTrichoderma属真菌(spp. fungus)、例えば、T. harzianumT. virideT. hamatum、及び/又はT. reeseiを含む。
【0125】
一実施形態において、組成物は、Pseudomonas chlororaphis等の細菌、又は、例えば、B. subtilis及び/又はB. amyloliquefaciens(例えば、B. amyloliquefaciens subsp. locus)等のBacillus属細菌(spp. bacterium)を含む。
【0126】
一実施形態において、粘液細菌が含まれ、粘液細菌はMyxococcus xanthusである。
【0127】
一実施形態において、組成物は、土壌中の窒素、カリウム、リン(又はリン酸)及び/又は他の微量栄養素を固定、可溶化及び/又は移動することができる微生物を含む。一実施形態において、カリウム移動細菌、例えばFrateuria aurantiaを含むことができる。一実施形態において、窒素固定細菌、例えば、Azotobacter vinelandiiPaenibacillus polymyxa及び/又はBacillus amyloliquefaciensを含むことができる。
【0128】
一実施形態において、組成物は、大気からの亜酸化窒素を土壌中の窒素に変換することができる非脱窒微生物、例えば、Dyadobacter fermentersを含む。
【0129】
特定の実施において、組成物に含まれる各微生物の濃度は、組成物の1×106 ~1×1013CFU/g、1×107 ~1×1012CFU/g、1×108 ~1×1011CFU/g、又は1×109 ~1×1010 CFU/gである。
【0130】
一実施形態において、組成物の全微生物細胞濃度は、少なくとも1×106CFU/gであり、1×109CFU/g、1×1010、1×1011、1×1012及び/又は1×1013までのCFU/gを含む。一実施形態において、本組成物の微生物は、全組成物の約5~20重量%、又は約8~15重量%、又は約10~12重量%含まれる。
【0131】
組成物は、残りの発酵基質及び/又は酵素、バイオサーファクタント及び/又は他の代謝生成物等の精製又は未精製の増殖副生成物を含むことができる。微生物は生きていても不活性であってもよい。
【0132】
本発明の微生物及び微生物ベースの組成物は、例えば、植物バイオマスを増加させ、メタン生成物を制御するのに有用な多くの有益な特性を有する。例えば、組成物は、精製形態又は粗形態のいずれかで、微生物の増殖から生じる生成物、例えば、バイオサーファクタント、タンパク質及び/又は酵素を含むことができる。さらに、微生物は、植物成長を強化し、オーキシン生成を誘導し、土壌中の栄養素の可溶化、吸収及び/又は均衡を可能にし、有害生物及び病原体から植物を保護することができる。
【0133】
一実施形態において、本組成物の微生物は、バイオサーファクタントを生成することができる。他の実施形態において、バイオサーファクタントは、他の微生物によって別々に生成されて、精製形態か粗形態のいずれかで組成物に添加される。粗形態バイオサーファクタントは、例えば、バイオサーファクタント生成微生物の培養から生じる残りの発酵培地中の細胞増殖のバイオサーファクタント及びその他生成物を含むことができる。この粗形態バイオサーファクタント組成物は、約0.001%~約90%、約25%~約75%、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、約45%~約55%、又は約50%の純粋なバイオサーファクタントを含むことができる。
【0134】
バイオサーファクタントは、細菌、真菌、及び酵母等の様々な微生物によって生成される重要な部類の二次代謝生成物を形成する。両親媒性分子として、微生物バイオサーファクタントは、液体、固体、及び気体の分子間の表面及び界面張力を減少させる。さらに、本発明によるバイオサーファクタントは生分解性であり、毒性が低く、土壌中の不溶性化合物を可溶化及び分解するのに有効であり、低コストで再生可能な資源を使用して生成される。それらは、種々の表面への望ましくない微生物の付着を阻害し、バイオフィルムの形成を防止し、強力な乳化及び解乳化特性を有する。さらに、バイオサーファクタントはまた、濡れ性を改善し、土壌中の肥料、栄養素、及び水の均一な可溶化及び/又は分配を達成するためにも使用される。
【0135】
本方法によるバイオサーファクタントは、例えば、低分子量糖脂質(例えば、ソホロリピド、セロビオースリピド、ラムノリピド、マンノシルエリスリトールリピド及びトレハロースリピド)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イチュリン、フェンギシン、アンスロファクチン及びリケニシン)、フラボリピド、リン脂質(例えば、カルジオリピン)、脂肪酸エステル、ならびにリポタンパク質、リポ多糖-タンパク質複合体、及び多糖-タンパク質-脂肪酸複合体等の高分子量ポリマーから選択することができる。
【0136】
組成物は、0.001重量%~10重量%、0.01重量%~5重量%、0.05重量%~2重量%、及び/又は0.1重量%~1重量%の濃度で1つ以上のバイオサーファクタントを含むことができる。
【0137】
この組成物は、活性及び/又は不活性培養物、精製又は粗形態の増殖副生成物、例えば、バイオサーファクタント、酵素、及び/又は他の代謝生成物、及び/又は任意の残留栄養素を含む発酵培地を含む。
【0138】
発酵生成物は、抽出又は精製を伴って、又は伴わずに、直接使用される。所望であれば、抽出及び精製は、文献に記載されている標準的な抽出及び/又は精製方法又は技術を用いて容易に達成することができる。
【0139】
組成物中の微生物は、活性又は不活性形態、又は栄養細胞、生殖胞子、菌糸体、菌糸、分生子、又は任意の他の形態の微生物繁殖体である。組成物はまた、これらの微生物形態のいずれかの組み合わせを含んでいてもよい。
【0140】
一実施形態において、微生物株の組み合わせが組成物に含まれる場合、異なる微生物株を別々に増殖させてから、併せて混合して組成物を生成する。
【0141】
有利な点を挙げると、本発明に従って、組成物は、微生物が増殖した培地を含んでいてもよいことである。組成物は、例えば、少なくとも1重量%、5重量%、10重量%、25重量%、50重量%、75重量%、又は100重量%の増殖培地であってよい。組成物中のバイオマスの量は重量で、例えば、それらの間の全てのパーセンテージを含む0%~100%のいずれかであり得る。
【0142】
一実施形態において、組成物は、好ましくは、土壌、シード、植物全体、又は植物一部(根、塊茎、茎、幹、花及び葉を含むが、これらに限定されない)への適用のために処方される。特定の実施形態において、組成物は、例えば、液体、粉塵、顆粒、微小顆粒、ペレット、湿潤性粉末、流動性粉末、エマルジョン、マイクロカプセル、油、又はエアロゾルとして処方される。
【0143】
組成物の効果を改善又は安定化するために、組成物を適切なアジュバントとブレンドし、必要に応じて、そのまま又は希釈後に使用することができる。好ましい実施形態において、組成物は、水及び他の成分と混合して液体生成物を形成することができる液体、濃縮液体、又は乾燥粉末又は顆粒として処方される。一実施形態において、組成物は、乾燥生成物の貯蔵及び輸送中に最適な浸透圧を確保するために、浸透物質に加えて、グルコース(例えば、糖蜜の形態で)を含むことができる。
【0144】
組成物は、単独か、又は他の化合物及び/又は方法と組み合わせて用いて、植物の健康、成長及び/又は収量を効率的に強化したり、組成物中の微生物増殖を補うことができる。例えば、一実施形態において、組成物は、マグネシウム、リン酸塩、窒素、カリウム、セレン、カルシウム、硫黄、鉄、銅、及び亜鉛等の植物及び/又は微生物の増殖を強化するための栄養素及び/又は微量栄養素;及び/又はケルプ抽出物、フルビン酸、キチン、フミン酸塩、及び/又はフミン酸等の1つ又は複数のプレバイオティクス;を含み、及び/又はそれと同時に適用することができる。正確な材料及びその量は、本開示により利益を得られる栽培者又は農業科学者が判断することができる。
【0145】
組成物はまた、他の農業化合物及び/又は作物管理システムと組み合わせて使用することもできる。一実施形態において、組成物は、任意で、例えば、天然及び/又は化学殺虫剤、忌避剤、除草剤、肥料、水処理剤、非イオン性界面活性剤及び/又は土壌改質剤を含むことができ、又はそれらと共に適用することができる。しかしながら、好ましくは、組成物は、ベノミル、ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、二酸化水素/ペルオキシ酢酸、イマジリル、プロピコナゾール、テブコナゾール、又はトリフルミゾールを含まず、及び/又はこれらと共に使用されない。
【0146】
組成物が相溶性化学添加剤と混合される場合、化学物質は、好ましくは、本組成物を添加する前に水で希釈される。
【0147】
さらなる成分、例えば、緩衝剤、担体、同じ又は異なる施設で製造された他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、防腐剤、微生物増殖のための栄養素、追跡剤、殺生物剤、他の微生物、界面活性剤、乳化剤、潤滑剤、溶解性制御剤、pH調整剤、防腐剤、安定剤及び紫外線防止剤を組成物に添加することができる。
【0148】
微生物ベースの組成物のpHは、目的の微生物に適しているものとする。好ましい実施形態において、組成物のpHは、約3.5~7.0、約4.0~6.5、又は約5.0である。
【0149】
任意で、組成物は、使用前に貯蔵することができる。貯蔵時間は短いことが好ましい。従って、貯蔵時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、又は12時間未満である。好ましい実施形態において、生細胞が生成物中に存在する場合、生成物は、例えば、20℃、15℃、10℃、又は5℃未満等の低温で貯蔵される。
【0150】
しかしながら、微生物ベースの組成物は、さらなる安定化、保存、及び貯蔵なしに使用されてもよい。有利な点を挙げると、これらの微生物ベースの組成物の直接使用が微生物の高い生存率を保持し、外来エージェント及び望ましくない微生物からの汚染の可能性を低減し、微生物増殖の副生成物の活性を維持することである。
【0151】
他の実施形態において、組成物(微生物、増殖培地、又は微生物と培地)は、例えば、意図される用途、意図される適用方法、発酵容器のサイズ、及び微生物増殖施設から使用場所への任意の運搬モードを考慮して、適切なサイズの容器に配置される。従って、微生物ベースの組成物が配置される容器は、例えば、1パイント~1,000ガロン以上であってもよい。特定の実施形態において、容器は、1ガロン、2ガロン、5ガロン、25ガロン、又はそれ以上である。
【0152】
本発明による微生物の増殖
本発明は、微生物の培養及び微生物代謝生成物及び/又は他の微生物増殖副生成物の生成のための方法を利用する。本発明はさらに、微生物の培養及び所望の規模での微生物代謝生成物の生成に適した培養プロセスを利用する。これらの培養プロセスには、浸漬培養/発酵、固相発酵(SSF)、及び組換え(modifications)、混合(hybrids)、及び/又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0153】
本明細書中で使用される場合、「発酵」は、制御された条件下での細胞の培養又は増殖をいう。増殖は、好気性又は嫌気性である。好ましい実施形態において、微生物は、SSF及び/又はその改変版を使用して増殖される。
【0154】
一実施形態において、本発明は、バイオマス(例えば、生存細胞物質)、細胞外代謝生成物(例えば、小分子及びタンパク質)、残留栄養素及び/又は細胞内成分(例えば、酵素及び他のタンパク質)を生成するための物質及び方法を提供する。
【0155】
本発明に従って使用される微生物増殖容器は、工業的使用のための任意の発酵槽又は培養反応器である。一実施形態において、容器は、機能制御/センサを有してもよく、又はpH、酸素、圧力、温度、湿度、微生物密度及び/又は代謝生成物濃度等の培養プロセスにおける重要な因子を測定するために機能制御/センサに接続されてもよい。
【0156】
さらなる実施形態において、容器は、容器内の微生物の増殖(例えば、細胞数及び増殖相の測定)を監視できるものであってもよい。あるいは、毎日のサンプルを容器から採取し、希釈プレーティング技術等の当技術分野で公知の技術による計数に供してもよい。希釈プレーティングは、サンプル中の生物の数を推定するために使用される単純な技術である。この技術はまた、異なる環境又は処理を比較することができる指標を提供することもできる。
【0157】
一実施形態において、本方法は、窒素源を用いて培養を補うことを含む。窒素源は、例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素樹脂、及び/又は塩化アンモニウムである。これらの窒素源は、単独で、又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0158】
本方法は、増殖培養物に酸素供給することができる。一実施形態は、低酸素含有空気を除去し、酸素供給された空気を導入するために、空気の緩慢な動きを利用する。浸漬発酵の場合、酸素供給された空気は、液体の機械的撹拌のためのインペラー、及び液体中への酸素の溶解のために液体に気泡を供給するための空気スパージャーを含む機構を介して毎日補充される周囲空気であってもよい。
【0159】
本方法は、培養物に炭素源を補充することをさらに含むことができる。炭素源は、典型的には、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、及び/又はマルトース等の炭水化物;酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、及び/又はピルビン酸等の有機酸;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、及び/又はグリセロール等のアルコール;大豆油、カノーラ油、米ぬか油、オリーブ油、トウモロコシ油、ゴマ油、及び/又はアマニ油等の油脂等;である。これらの炭素源は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
一実施形態において、微生物の成長因子及び微量栄養素が培地に含まれる。これは、必要とされるビタミンの全てを生成することができない微生物を増殖させる場合に特に好ましい。鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデン及び/又はコバルトのような微量元素を含む無機栄養素もまた、培地に含まれる。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、及び微量元素の供給源は、例えば、トウモロコシ粉等の穀粉又はミールの形態で、又は酵母エキス、ジャガイモエキス、牛エキス、大豆エキス、バナナ皮エキス等のエキスの形態で、又は精製された形態で含まれ得る。アミノ酸、例えば、タンパク質の生合成に有用なアミノ酸もまた含めることができる。
【0161】
一実施形態において、無機塩も含まれる。使用可能な無機塩は、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸水素マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、及び/又は炭酸ナトリウムである。これらの無機塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
いくつかの実施形態において、培養のための方法は、培養プロセスの前及び/又は間に、培地中に追加の酸及び/又は抗菌剤を添加することをさらに含んでもよい。抗菌剤又は抗生物質は、培養物を汚染から保護するために使用される。
【0163】
さらに、消泡剤を添加して、浸漬培養の間に気体が生成されるときの泡の形成及び/又は蓄積を防止することもできる。
【0164】
混合物のpHは、目的の微生物に適したものとする。緩衝液、及び炭酸塩及びリン酸塩等のpH調節剤を使用して、pHを好ましい値付近に安定化させることができる。金属イオンが高濃度で存在する場合、培地中にキレート化剤を使用することが必要である。
【0165】
微生物は、プランクトン形態、又はバイオフィルムとして増殖させることができる。バイオフィルムの場合、容器は、中で微生物をバイオフィルム状態で増殖させることができる基質を有することができる。システムはまた、例えば、バイオフィルム増殖特性を促進及び/又は改善する刺激(せん断力応力等)を印加する能力を有していてもよい。
【0166】
一実施形態において、微生物の培養方法は、約5℃~約100℃、好ましくは15~60℃、より好ましくは25~50℃で実施される。さらなる実施形態において、培養は、一定温度で連続的に実施されてもよい。他の実施形態において、培養は、変化する温度でなされてもよい。
【0167】
一実施形態において、方法及び培養プロセスで使用される装置は無菌のものである。反応器/容器のような培養装置は、滅菌ユニット、例えば、オートクレーブから離れているが、接続されている。培養装置はまた、接種を開始する前にインサイチュで滅菌する滅菌ユニットを有していてもよい。空気は、当技術分野で公知の方法によって滅菌することができる。例えば、周囲空気は、容器内に導入される前に、少なくとも1つのフィルタを通過させる。他の実施形態において、培地は、低温殺菌されてもよく、又は任意で、熱を全く加えなくてもよく、低水分活性及び低pHの使用により、望ましくない細菌増殖を制御してもよい。
【0168】
一実施形態において、本発明はさらに、増殖及び代謝生成物生成に適切な条件下で本発明の微生物株を培養することによって、例えば、バイオサーファクタント、酵素、タンパク質、エタノール、乳酸、ベータ-グルカン、ペプチド、代謝中間体、多価不飽和脂肪酸、及び脂質等の微生物代謝生成物を生成し、任意で、代謝生成物を精製する方法を提供する。本方法によって生成される代謝生成物含量は、例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%である。
【0169】
目的の微生物によって生成される微生物増殖副生成物は、微生物中に保持されるか、又は増殖培地中に分泌される。培地は、微生物増殖副生成物の活性を安定化する化合物を含有していてもよい。
【0170】
発酵培地のバイオマス含量は、例えば、5g/l~180g/l以上、又は10g/l~150g/lである。
【0171】
細胞濃度は、例えば、最終生成物1グラム当たり、少なくとも1×10/g~1×1013、1×10~1×1012、1×10~1×1011又は1×10~1×1010CFU/mlである。
【0172】
微生物の培養及び微生物副生成物の製造のための方法及び装置は、バッチ、準連続処理、又は連続処理で実施することができる。
【0173】
一実施形態において、微生物培養組成物の全ては、培養の完了時に(例えば、所望の細胞密度、又は特定の代謝生成物の密度を達成した時に)除去される。このバッチ手順において、全く新しいバッチが、第1のバッチの採取時に開始される。
【0174】
他の実施形態において、発酵生成物の一部のみが、任意の時点で除去される。この実施形態において、生細胞、胞子、分生子、菌糸及び/又は菌糸を有するバイオマスは、新しい培養バッチのための接種物として容器内に残る。除去される組成物は、無細胞培地、又は細胞、胞子、もしくは他の生殖繁殖体、及び/又はそれらの組み合わせを含むことができる。このようにして、準連続システムが生成される。
【0175】
有利な点は、本方法は、複雑な施設や高いエネルギー消費を必要としないことである。目的の微生物は、現地で小規模又は大規模に培養され、培地と混合された状態でも利用できる。
【0176】
有利な点を挙げると、微生物ベースの生成物を遠隔地で製造することができることである。微生物増殖施設は、例えば、太陽光、風力及び/又は水力を利用することによって、グリッドから外れて操作することができる。
【0177】
微生物株
本発明による有用な微生物は、例えば、細菌、酵母及び/又は真菌の非植物病原性株である。これらの微生物は、天然の微生物であっても、又は遺伝的組換えされた微生物であってもよい。例えば、微生物は、特定の特徴を示すために特定の遺伝子で形質転換される。微生物はまた、所望の株の突然変異体であってもよい。本明細書中で使用される、「突然変異体」は、対照微生物の株、遺伝的変異体又はサブタイプを意味し、ここで、突然変異体は、対照微生物と比較して、1以上の遺伝的変異(例えば、点突然変異、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、欠失、重複、フレームシフト突然変異又は反復拡大)を有する。変異体を作製するための手順は、微生物学分野において周知されている。例えば、UV突然変異誘発及びニトロソグアニジンは、この目的のために広く使用されている。
【0178】
一実施形態において、微生物は酵母又は真菌である。本発明による使用に適した酵母及び真菌種には、Aureobasidium(例えば、A. pullulans)、BlakesleaCandida(例えば、C. apicolaC. bombicolaC. nodaensis)、CryptococcusDebaryomyces(例えば、D. hansenii)、EntomophthoraHanseniaspora(例えば、H. uvarum)、HansenulaIssatchenkiaKluyveromyces(例えば、K. phaffii)、Lentinula edodesMortierellaMycorrhizaMeyerozymaM. guilliermondii)、PenicilliumPhycomycesPichia(例えば、P. anomalaP. guilliermondiiP. occidentalisP. kudriavzevii)、Pleurotus 属(spp.)(例えば、P. ostreatus)、Pseudozyma(例えば、P. aphidis)、Saccharomyces(例えば、S. boulardii sequelaS. cerevisiaeS. torula)、Starmerella(例えば、S. bombicola)、TorulopsisTrichoderma(例えば、T. reeseiT. harzianumT. hamatumT. viride)、Ustilago(例えば、U. maydis)、Wickerhamomyces(例えば、W. anomalus)、Williopsis(例えば、W. mrakii)、Zygosaccharomyces(例えば、Z. bailii)その他がある。
【0179】
例示的な実施形態において、本発明は、他の微生物種に対して毒性である酵素及び他の化合物を生成することができる酵母であるキラー酵母を利用する。好ましくは、これらの酵母は、根と土壌の境界で、植物の根にコロニー形成することができ、根圏に多くの利点を提供する。さらにより具体的には、キラー酵母にはWickerhamomyces anomalusPichia anomala)が含まれる。他の密接に関連する種(例えば、Wickerhamomyces及び/又はPichiaクレードの他のメンバー)もまた想定される。
【0180】
W. anomalusは、有利な代謝生成物を生成する能力を含む、本発明に有用な多くの有益な特徴を有する。例えば、W. anomalusは、エキソ-β-1,3-グルカナーゼ活性が可能であり、メタン原を含む広範囲の微生物の増殖を制御又は阻害することが可能である。さらに、5~7日間培養した場合、W. anomalusは水の表面/界面張力を低下させ、抗菌特性及び抗真菌特性を示すバイオサーファクタントを生成する。
【0181】
種々の副生成物に加えて、これらの酵母は、フィターゼを生成し、多数のタンパク質(50%までの乾燥細胞バイオマスを含む)、脂質及び炭素源、ならびにミネラル及びビタミンの全スペクトル(B1、B2、B3(PP)、B5、B7(H)、B6、E)を提供する。
【0182】
特定の実施形態において、微生物は、別の酵母、例えば、Starmerella bombicolaSaccharomyces boulardiiPseudozyma aphidis及び/又はPichia酵母(例えば、Pichia occidentalisPichia kudriavzevii及び/又はPichia guilliermondii(Meyerozyma guilliermondii))である。
【0183】
一実施形態において、微生物は、Lentinula edodesPleurotus ostreatus、又はTrichoderma属真菌(spp. fungus)(例えば、TharzianumTvirideThamatum、及び/又はTreesei)等の真菌であり得る。
【0184】
特定の実施形態において、微生物は、グラム陽性及びグラム陰性細菌を含む細菌である。細菌は、例えば、Agrobacterium(例えば、A. radiobacter)、AzotobacterA. vinelandiiA. chroococcum)、Azospirillum(例えば、A. brasiliensis)、Bacillus(例えば、B. amyloliquefaciensB. circulansB. firmusB. laterosporusB. licheniformisB. megateriumBacillus mucilaginosusB. subtilis)、Frateuria(例えば、F. aurantia)、Microbacterium(例えば、M. laevaniformans)、myxobacteria(例えば、Myxococcus xanthusStignatella aurantiacaSorangium cellulosumMinicystis rosea)、Paenibacillus polymyxaPantoea(例えば、P. agglomerans)、Pseudomonas(例えば、P. aeruginosa、P. chlororaphis subsp. aureofaciensKluyver)、P. putida)、Rhizobium属(spp.)、Rhodospirillum(例えば、R. rubrum)、Sphingomonas(例えば、S. paucimobilis)及び/又はThiobacillus thiooxidansAcidothiobacillus thiooxidans)である。
【0185】
一実施形態において、微生物は、Pseudomonas chlororaphis等の細菌、又はBacillus属細菌、例えばB. subtilis及び/又はB. amyloliquefaciens(例えばB. amyloliquefaciens subsp. locus)等の細菌である。有利な点を挙げると、特に、B.amyloliquefaciensは、土壌のpHを低下させ、NPK肥料中の栄養素を可溶化して、植物の根の取り込みに、より容易に利用可能にすることができる。場合によっては、B. amyloliquefaciensは、大気中の窒素を固定し、窒素をアンモニアに還元することもできる。
【0186】
一実施形態において、微生物は、粘液細菌又は粘液形成細菌である。具体的には、一実施形態において、粘液細菌は、Myxococcus属細菌、例えば、M. xanthusである。
【0187】
特定の実施形態において、微生物は、土壌中の窒素、カリウム、リン及び/又は他の微量栄養素を固定及び/又は可溶化することができるものである。
【0188】
一実施形態において、微生物は、例えば、AzospirillumAzotobacterChlorobiaceaeCyanotheceFrankiaKlebsiellarhizobiaTrichodesmium、及びいくつかのArchaeaの種から選択される窒素固定微生物又はジアゾトロフである。特定の実施形態において、窒素固定細菌は、Azotobacter vinelandiiである。
【0189】
一実施形態において、微生物は、例えば、Bacillus mucilaginosusFrateuria aurantia又はGlomus mosseaeから選択されるカリウム移動微生物又はKMBである。特定の実施形態において、カリウム移動微生物はFrateuria aurantiaである。
【0190】
一実施形態において、微生物は、例えば、Dyadobacter fermentersのような、大気から土壌中の窒素に亜酸化窒素を変換することができる非脱窒微生物である。
【0191】
一実施形態において、微生物の組み合わせは、本微生物ベースの組成物に使いられ、微生物は植物バイオマスを強化し、及び/又は根圏の特性を強化するために、互いに相乗的に働く。
【0192】
微生物ベースの生成物の調製
本発明の微生物ベースの生成物は、単に、微生物及び/又は微生物によって生成された微生物代謝生成物及び/又は任意の残留栄養素を含有する発酵培地である。発酵生成物は、抽出又は精製することなく直接使用することができる。所望であれば、抽出及び精製は、文献に記載されている標準的な抽出及び/又は精製方法又は技術を用いて容易に行うことができる。
【0193】
微生物ベースの生成物中の微生物は、活性又は不活性形態、又は栄養細胞、生殖胞子、分生子、菌糸体、菌糸体、又は任意の他の形態の微生物繁殖体である。微生物ベースの生成物はまた、微生物のこれらの形態のいずれかの組み合わせを含有していてもよい。
【0194】
一実施形態において、異なる微生物株を別々に増殖させ、次いで一緒に混合して、微生物ベースの生成物を生成する。微生物は、任意で、混合前に増殖させ乾燥させる培地とブレンドすることができる。
【0195】
一実施形態において、異なる株は一緒に混合されず、植物及び/又はその環境に、別個の微生物ベースの生成物として適用される。
【0196】
微生物ベースの生成物は、さらなる安定化、保存、及び貯蔵なしに使用される。有利な点を挙げると、これらの微生物ベースの組成物の直接使用が微生物の高い生存率を保持し、外来エージェント及び望ましくない微生物からの汚染の可能性を低減し、微生物増殖の副生成物の活性を維持することである。
【0197】
増殖容器から微生物ベースの組成物を採取すると、収穫された生成物が容器に入れられるか、又は使用のために輸送されるときに、さらなる成分を添加することができる。添加剤は、例えば、緩衝剤、担体、同じ又は異なる施設で製造された他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、防腐剤、微生物増殖のための栄養剤、界面活性剤、乳化剤、滑沢剤、溶解性制御剤、追跡剤、溶剤、殺生物剤、抗生物質、pH調整剤、キレート剤、安定剤、紫外線防止剤、他の微生物及び調製物のために慣習的に使用される他の適切な添加剤である。
【0198】
一実施形態において、有機酸及びアミノ酸又はそれらの塩を含む緩衝剤を添加することができる。適切な緩衝剤には、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、アスパラギン酸塩、マロン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピルビン酸塩、ガラクタラート、グルカル酸塩、タルトロナート、グルタミン酸塩、グリシン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アルギニン及びそれらの混合物が含まれる。リン酸及び亜リン酸又はそれらの塩も使用することができる。合成緩衝液を使用することが適切であるが、例えば、有機及びアミノ酸又は上記に列挙したそれらの塩等の天然緩衝液を使用することが好ましい。
【0199】
さらなる実施形態において、pH調整剤は、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム又は重炭酸カリウム、塩酸、硝酸、硫酸又は混合物を含む。
【0200】
微生物ベースの組成物のpHは、目的の微生物に適したものとする。好ましい実施形態において、組成物のpHは、約3.5~7.0、約4.0~6.5、又は約5.0である。
【0201】
一実施形態において、塩の水性調製物、例えば、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重リン酸ナトリウムといった追加の成分を、処方に含めることができる。
【0202】
特定の実施形態において、生成物を植物の一部へ長く付着させるために、付着性物質を組成物に添加することができる。例えば、キサンタンガム、グアーガム、レバン、キシリナン、ゲランガム、カードラン、プルラン、デキストラン等の荷電高分子又は多糖ベースの物質等の高分子を使用することができる。
【0203】
好ましい実施形態において、市販等級のキサンタンガムが付着剤として使用される。ガムの濃度は、市販の製品中のガムの含有量に基づいて選択される。キサンタンガムが高純度である場合、0.001%(w/v-キサンタンガム/溶液)で十分である。
【0204】
一実施形態において、グルコース、グリセロール及び/又はグリセリンを微生物ベースの生成物に添加して、例えば、貯蔵及び輸送中の浸透圧用材料として作用する。一実施形態において、糖蜜を含む。
【0205】
一実施形態において、微生物増殖を強化するために、プレバイオティクスを微生物ベースの生成物に加え、及び/又は微生物ベースの生成物と同時に適用することができる。適切なプレバイオティクスとしては、例えば、ケルプ抽出物、フルボ酸、キチン、フミン酸塩及び/又はフミン酸が挙げられる。特定の実施形態において、適用されるプレバイオティクスの量は、約0.1L/エーカー~約0.5L/エーカー、又は約0.2L/エーカー~約0.4L/エーカーである。
【0206】
一実施形態において、微生物接種及び増殖を強化するために、特定の栄養素が微生物ベースの生成物に添加され、及び/又はそれと同時に適用される。例えば、可溶性酸化カリウム(KO)、マグネシウム、硫黄、ホウ素、鉄、マンガン、及び/又は亜鉛が挙げられる。栄養素は、例えば、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、及び/又は硫酸亜鉛から誘導することができる。
【0207】
任意で、生成物は、使用前に貯蔵することができる。貯蔵時間は短いことが好ましい。従って、貯蔵時間は、60日未満、45日未満、30日未満、20日未満、15日未満、10日未満、7日未満、5日未満、3日未満、2日未満、1日未満、又は12時間未満である。好ましい実施形態において、生細胞が生成物中に存在する場合、生成物は、例えば、20℃、15℃、10℃、又は5℃未満等の低温で貯蔵される。
【0208】
微生物ベースの生成物の現地生成
本発明の特定の実施形態において、微生物増殖施設は、所望の規模で、目的の新鮮な高密度の微生物及び/又は微生物増殖副生成物を生成する。微生物増殖施設は、適用場所又はその近くに位置している。この施設は、バッチ培養、準連続培養、又は連続培養で高密度の微生物ベースの組成物を生成する。
【0209】
本発明の微生物増殖施設は微生物ベースの生成物が使用される場所(例えば、柑橘園)に配置することができる。例えば、微生物増殖施設は、使用場所から300、250、200、150、100、75、50、25、15、10、5、3、又は1マイル未満であってもよい。
【0210】
微生物ベースの生成物は、従来の微生物生成の微生物安定化、保存、貯蔵及び輸送プロセスに頼ることなく、現地生成することができるので、非常に高密度の微生物を生成することができ、それによって、現場適用で使用するのに必要とされる微生物ベースの生成物は、より少ない体積でよく、所望の効率を達成するために必要な場合、非常に高密度の微生物適用が可能となる。これより、システムを効率的にし、細胞を安定化させるか、又は培養培地からそれらを分離する必要性を排除することができる、規模を縮小したバイオリアクター(例えば、より小さい発酵容器、より少ない供給の出発材料、栄養素及びpH制御剤)が可能となる。微生物ベースの生成物の現地生成はまた、生成物中への増殖培地の含有を容易にする。培地は、発酵の間に生成された、現地使用に特に適した薬剤を含有することができる。
【0211】
現地生成された高密度で頑強な微生物の培養は、サプライチェーンにしばらくの間残っていたものよりも、この分野においてより有効である。本発明の微生物ベースの生成物は、発酵増殖培地中に存在する代謝生成物及び栄養素から細胞が分離されている従来の生成物と比較して特に有利である。輸送時間の短縮は、微生物及び/又はそれらの代謝生成物の新鮮なバッチの製造及び配送を、現地で要求される時間及び体積で可能にする。
【0212】
本発明の微生物増殖施設は、微生物自体、微生物代謝生成物、及び/又は微生物が増殖する培地の他の成分を含む、新鮮な微生物ベースの組成物を生成する。所望であれば、組成物は、高密度の栄養細胞、又は増殖体、又は栄養細胞と増殖体との混合物を有することができる。
【0213】
一実施形態において、微生物増殖施設は、微生物ベースの生成物が使用される場所(例えば、柑橘園)の、例えば、300マイル、200マイル、又はさらには100マイル以内、又はその近くに位置する。有利な点を挙げると、組成物を、特定の場所での使用のために調整できることである。微生物ベースの組成物の処方及び効力は、例えば、どの土壌の種類、植物及び/又は作物が処理されているか、組成物が適用されている時期がどの季節、気候及び/又は時季であるか、どの適用様式及び/又はレートが利用されているか、といった、適用時の特定の現地の条件に合わせてカスタマイズすることができる。
【0214】
有利な点を挙げると、分散型微生物増殖施設は、例えば、生存可能な高細胞数の生成物ならびに細胞が元々増殖する関連培地及び代謝生成物のタイムリーな配送及び適用を阻害する、上流の処理遅延、サプライチェーンのボトルネック、不適切な貯蔵、及び他の不測の事態に起因して生成物の品質が損なわれる、遠方の工業規模の生産者に依拠する現在の問題に対する解決策を提供することである。
【0215】
さらに、組成物を現地生成することによって、処方及び効能を、特定の位置及び適用時に存在する条件にリアルタイムで調節することができる。これにより、中央の場所で予め作製され、例えば、所与の位置に最適ではない設定比や処方を有する組成物よりも利点が得られる。
【0216】
微生物増殖施設は、目的地の地理との相乗効果を改善するために微生物ベースの生成物を調整する能力によって、製造の汎用性を提供する。有利な点を挙げると、好ましい実施形態において、本発明のシステムがGHG管理を改善するために、天然に存在する現地の微生物及びそれらの代謝副生成物の能力を利用することである。
【0217】
個々の容器の培養時間は、例えば、1~7日以上であってもよい。培養物は、多くの異なる方法のいずれかで採取することができる。
【0218】
例えば、発酵の24時間以内の現地生成及び配送だと、純粋で高細胞密度の組成物と実質的に低い輸送コストという結果が得られる。より効果的で強力な微生物接種材料の開発における急速な進歩の見通しを考えると、消費者は、微生物ベースの生成物を迅速に配送するこの能力から大いに利益が得られる。
【0219】
実施例
本発明及びその多くの利点のより大きな理解は、例示として与えられる以下の実施例から得られ得る。以下の実施例は、本発明の方法、用途、実施形態及び変異体のいくつかを例示するものである。それらは、本発明を限定するものと見なされるべきではない。本発明に関して、多数の変更及び修正を行うことができる。
【0220】
実施例1-マイクロビーズベースの組成物
GHGの低減、炭素利用の改善、及び/又は炭素の隔離の強化に使用するための、本発明の特定の実施形態による組成物が例示される。この例は、限定を意図するものではない。ここで例示されるものの代わりに、又はそれに加えて、他の種の微生物を含む処方が、組成物に含まれてもよい。
【0221】
この組成物は、Trichoderma属真菌及びBacillus属細菌を含む微生物接種物を含む。特定の例において、組成物は、Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む。さらにより具体的には、B. amyloliquefaciensの株は、B. amyloliquefaciens subsp.
locusである。
【0222】
一実施形態において、組成物は、1~99重量%のTrichoderma及び99~1重量%のBacillusを含む。いくつかの実施形態において、TrichodermaBacillusの細胞計数比は、約1:9~約9:1、約1:8~約8:1、約1:7~約7:1、約1:6~約6:1、約1:5~約5:1、又は約1:4~約4:1である。
【0223】
組成物は、約1×10~1×1012、1×107 ~1×1011、1×108 ~1×1010、又は1×109 CFU/mlのTrichodermaを含み、約1×10~1×1012、1×107 ~1×1011、1×108 ~1×1010、又は1×109 CFU/mlのBacillusを含む。
【0224】
組成物は、組成物中の微生物の初期増殖を促進するために、追加の「出発」材料と混合され、及び/又は同時に適用される。これには、例えば、プレバイオティクス及び/又はナノサイズ肥料(例えば、Aqua-Yield、NanoGroTM)が含まれる。
【0225】
このような増殖促進「出発」材料の1つの例示的な処方は、
可溶性炭酸カリウム(KO)(1.0%~2.5%、又は約2.0%)、
マグネシウム(Mg)(0.25%~0.75%、約0.5%)、
硫黄(S)(2.5~3.0%、約2.7%)、
ホウ素(B)(0.01%~0.05%、約0.02%)、
鉄(Fe)(0.25%~0.75%、約0.5%)、
マンガン(Mn)(0.25%~0.75%、約0.5%)、
亜鉛(Zn)(0.25%~0.75%、約0.5%)、
フミン酸(8%~12%、又は約10%)、
ケルプ抽出物(5%~10%、又は約6%)、
水(70~85%、約77~80%)を含む。
【0226】
微生物接種材料及び/又は任意の増殖促進「出発」材料は、潅漑システムタンク内で水と混合され、土壌に適用される。
【0227】
具体的な例として、組成物は、10.0重量%の微生物接種剤、及び90重量%の水を含み、ここで、接種剤は1×108 CFU/mLのTrichoderma harzianum及び1×109CFU/mLのBacillus amyloliquefaciensを含む。
【0228】
実施例2-柑橘樹の地下バイオマス(根質量)の増加
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む組成物を、オレンジ樹及びグレープフルーツ樹が生育している土壌に2ヶ月毎に3回適用した。根質量を、処理の前後に測定し、そして未処理の対照樹と比較した(「栽培者慣行」)。
【0229】
図1A~1Bに示すように、未処理対照樹と処理樹との間で、線維性根バイオマスの統計的に有意な差が得られた。
【0230】
実施例3-柑橘樹の地上バイオマス(樹冠密度)の増加
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む組成物を、成熟オレンジ樹及び若いオレンジ樹が生育している土壌に2ヶ月毎に3回適用した。処理の前後に林冠密度等級を測定し、増加を未処理対照樹と比較した(「栽培者慣行」)。
【0231】
図2A~2Bに示すように、同じ樹齢の未処理対照樹で観察された等級と比較した場合、成熟及び若いオレンジ樹の両方について、より大きな林冠密度等級が得られた。
【0232】
実施例4-ALMOND木の地上バイオマス(キャリパー)の増加
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む組成物を、アーモンド樹が生育している土壌に2回、隔月で適用した。幹キャリパー(直径)を、処理の前後に測定し、未処理対照樹と比較した(「栽培者慣行(Grower's Practice)」)。
【0233】
図3に示すように、処理樹と未処理樹との間で、キャリパー測定値に統計的に有意な差(約30%)が得られた。
【0234】
実施例5-ソッドの地下バイオマス(根質量)の増加
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む組成物を、ライグラスソッド及びブルーライムソッドが生育している土壌に半月毎に3回適用した。乾燥根の質量を、処理前後に測定し、未処理の対照ソッドと比較した(「栽培者慣行」)。
【0235】
図4A~4Bに示すように、処理したライグラスと未処理のライグラスとの間(約35%)、及び処理した青色ライムギと未処理の青色ライムギとの間(約31%)で、乾燥根質量の統計的に有意な差が得られた。
【0236】
実施例6-ソッドの根バイオマス及びクロロフィルレーティングの増加
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む組成物を、ソッドグラスが生育している土壌に2ヶ月毎に3回適用した。乾燥根質量及びクロロフィルレーティング(相対緑色度)を、処理前後に測定し、未処理対照ソッドと比較した(「栽培者慣行」)。
【0237】
図5A~5Bに示すように、未処理の対照ソッドと比較した場合、ソッドグラスについて、乾燥根質量及びクロロフィルレーティングが増加した。
【0238】
実施例7-タバコのクロロフィル、葉の長さ及び葉の幅の増加
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む組成物を、タバコ植物を移植した土壌に1回適用した。平均クロロフィルレーティング(相対緑色度)、葉の長さ及び葉の幅を、処理前後に測定し、未処理の対照タバコ植物と比較した(「栽培者慣行」)。
【0239】
図6A~6Bに示すように、処理されたタバコ植物は、栽培者慣行と比較して、4%高いクロロフィル含量(6A)、16~18%増加した葉の長さ、及び7~35%増加した葉の幅(6B)を示した。
【0240】
実施例8-タバコ植物における強化された根の発達
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む組成物を、タバコ植物が移植された土壌に2回適用した(最初は設定時、2回目はその後30日目)。根の平均湿潤根重量及び平均サイズ(長さ及び幅)を、処理前後に測定し、未処理の対照タバコ植物と比較した(「栽培者慣行」)。
【0241】
図7A~7Bに示すように、処理されたタバコ植物は、栽培者慣行と比較して、線維性根湿潤質量の61%の増加(7A)、49%までの根の長さの増加及び3%の根の幅の増加(7B)を示した。
【0242】
図8Aに示すように、未処理植物(左)の湿式根塊(8A)及び根繊維の密度(8B)は、処理植物(右)のものよりも目に見えて小さかった。
【0243】
実施例9-温室効果ガス排出及び炭素隔離のサンプリングプロトコル
GHG排出を緩和するための本発明の能力、及び炭素及び窒素を隔離するための本発明に従って処理された土壌の能力を判断するために、本発明の実施形態に従って調製された組成物で処理された農業用土壌を、栽培者慣行、及び未変性の未培養土壌と比較する。
【0244】
この作業は、組成物で約1年間処理された成熟及び未成熟フロリダ柑橘樹と、組成物で約6ヶ月間処理されたカリフォルニアの食用ブドウとを含む柑橘園で行われる。サンプリング位置は、処理土壌と栽培者慣行と比較するように決定される。制御及び処理位置は同じ条件下でモニターされ、処理位置は実施例1で調製された組成物を含む土壌改質剤で処理される。
【0245】
各作物型のための全てのサンプリング位置は、隣接するブロック内にあり、従って、土壌型、地理、及び作物型における変動性が制限される。さらに、処理土壌及び対照土壌の両方に隣接する天然土壌を試験して、農業慣行を適用しないで、天然土壌のバックグラウンド排出を求める。
【0246】
流量測定(CO、NO、CH4)
Li-Cor 8100-103 20cmサーベイチャンバと一体化したGasmet DX-4040携帯型FTIR(フーリエ変換赤外線)マルチガス分析部を用いて、土壌からのCO2、N2O、CH4、及びNH4流速を測定した。サンプリングの前に、カラーを各位置の土壌表面に設置し、乱れた後に土壌が元の状態の平衡状態に戻るように最低3時間放置する。流速は、ガス濃度対サンプリング時間に線形回帰をフィットすることによって計算される。
【0247】
土壌サンプル
土壌サンプルを7/8×21インチの土壌サンプルプローブで収集する。各位置において、約2フィートの半径を有する円が、フラックス測定土壌カラーの周りで測定され、12個の土壌サンプルが、円の円周に沿って、互いにほぼ等しい距離で収集される。
【0248】
各個々の土壌サンプルを6インチの深さまで収集する。10個のサンプルを褐色紙袋に集め、各位置で均質なサンプルを作るために一緒に凝集させる。これらのサンプルを、有機炭素、全窒素、過マンガン酸塩酸化性炭素、pH及び3日間の微生物呼吸について分析する。他の2つの土壌サンプルを個々のビニール袋に入れ、嵩密度(Bulk Density)について分析する。
【0249】
土壌測定
POGO土壌水分センサを用いて、各サンプリング位置における土壌の土壌温度、水分含量、及びバルク導電率を測定する。
【0250】
結果
サンプルを、4カ所、すなわち、フロリダ州の3か所の柑橘園及びカリフォルニア州の1か所の食用ブドウ園から収集した。これらの採取場所では、処理土壌が柑橘類では4.38メートルトンCO2e/エーカー(2.94Mg/ha)の土壌有機炭素の増加を示し、ブドウでは3.53メートルトンCO2e/エーカー(2.37Mg/ha)の増加を示した。
【0251】
GHG排出量
1つの柑橘園で、2.53メートルトンCO-Cエーカー-yr-1の減少が観測された。CO2は、1.29メートルトンCO-Cエーカー-yr-1に、NOは、1.04メートルトンCO2エーカー-yr-1に寄与した。
【0252】
実施例10-2つのフロリダ柑橘園についての土壌炭素測定
柑橘園1
成熟オレンジ樹を含む4つの柑橘プロットの土壌を、10ヶ月の生育期間後に嵩密度及び全有機炭素レベルについて試験した。1つのプロットを、標準的栽培者慣行に従って栽培した(対照)。他の3つのプロットは、以下の表1に示すように、本発明の実施形態による組成物で処理した。
【0253】
【表1】
【0254】
各プロットの潅漑は、組成物の適用前に15分間行った。組成物を注入器具へ混合し、潅漑システムにポンプで送り込み、続いて塗布直後に30分間流した。
【0255】
プロットをサンプリングし、分析した。結果を以下の表2及び表3に示す。
【0256】
【表2】
【0257】
【表3】
【0258】
果樹園2
成熟オレンジ樹を含む4つの柑橘プロットの土壌を、10ヶ月の生育期間後に嵩密度(Bulk Density)及び全有機炭素レベルについて試験した。2つのプロットを、標準的栽培者慣行に従って栽培した(対照)。他の2つのプロットを、以下の表4に示すように、本発明の実施形態による組成物で処理した。
【0259】
【表4】
【0260】
各プロットの潅漑は、組成物の適用前に15分間行った。組成物を注入器具へ混合し、潅漑システムにポンプで送り込み、続いて塗布直後に30分間流した。
【0261】
プロットをサンプリングし、分析した。結果を以下の表5及び6に報告する。
【0262】
【表5】
【0263】
【表6】
【0264】
実施例11-土壌炭素データ-複数の作物
様々な作物を3つの異なる状態で生育させている処理済及び対照プロットから、表面土壌サンプルを収集した。具体的には、作物にはカリフォルニアの3つの別々の農場からのアーモンド、サクランボ、及びブドウ、ならびにアリゾナ、カリフォルニア、及びノースカロライナのソッドファームが含まれていた。
【0265】
土壌サンプルを、嵩密度及び全有機炭素(TOC)について分析して、単一の生育シーズン未満の間、組成物で処理したプロットからの土壌が、同じ作物を生育させる隣接する対照プロットよりも大きな有機炭素貯蔵を示したかどうかを判断した。データによれば、処理済土壌は、対照プロットからの土壌よりも高い有機炭素含有量を有することが分かる。
【0266】
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む本発明による組成物は、水と混合され、各作物の基部にマイクロスプリンクラー又は滴下潅漑を有する潅漑システムを通して分配される。ソッドについては、スプレーブームが使用され、その後、頭上潅漑が行われる。
【0267】
処理済プロットと同じ作物状況及び慣行の隣接する未処理プロットとの並行比較を行った。2~3回の処理を施した後、表面土壌サンプル(すなわち、上から6又は12インチ)を、処理済プロット内及び隣接する未処理プロット内の複数の位置から収集した。土壌サンプルを、面積ベース(例えば、エーカー当たり)で土壌の全炭素含有量を定量化するために、TOC及び嵩密度について分析した。
【0268】
TOCについて分析された土壌サンプルは、互いに直径約5フィートの円内に収集された10個の個々の土壌サンプルの複合体であった。嵩密度サンプルは、同じサンプリング領域内から収集された2つの追加の土壌サンプルの複合体であった。
【0269】
全てのサンプルは、処理が適用された最初の生育シーズン内に収集された。全てのプロットは、土壌サンプルを収集する前に組成物で2~3回処理し、最初の処理からの合計時間は約3~11ヶ月の範囲であった。3~5個の複製表面土壌サンプルを各プロットから収集した(以下の表7を参照)。
【0270】
【表7】
【0271】
土壌サンプルを、パーセントベース(乾燥重量)でTOC及び嵩密度(例えば、1立方センチメートル当たりの乾燥土壌のグラム数)について分析した。各プロット内の全炭素貯蔵量は、TOC含量に嵩密度を掛けて、与えられた面積(例えばエーカー)にわたる土壌サンプルのサンプリング深さ(6インチ又は12インチ)中の炭素の質量を定量化することによって計算される。炭素の質量は、炭素である二酸化炭素の重量分率(27.7%)で割ることによって二酸化炭素等量に変換される。
【0272】
有機炭素の結果及び炭素貯蔵データは、組成物で処理されたプロットにおいてより高いレベルの有機炭素含有量が見出されたかどうかを見積もるために評価される。
【0273】
図9は、未処理対照及び処理済プロットにおける土壌からの原料嵩密度の結果を示す。組成物は、必ずしも土壌の嵩密度に有意な影響を及ぼすとは予想されず、これらのデータは、対照及び処理済プロットの土壌特性が類似していることを示している。6つの畑のうち5つにおいて、対照プロットの嵩密度は、処理済プロットと同じ範囲内であった。
【0274】
評価した全てのプロットにおける土壌TOCは、NCソッドファームを除いて、試験した全てのファームで、概して、1%未満であり(図10)、TOCは3%超から1%未満の範囲であった。土壌TOCは、対照プロットよりも処理済プロットの方が高くなる傾向があり、反対の結果は2例であった。
【0275】
嵩密度の結果を、TOCの結果と組み合わせて、二酸化炭素当量として、土壌中の全炭素貯蔵量を計算する(図11)。TOCの結果と一致して、土壌有機物中の炭素貯蔵量は、場所や作物の種類に関わらず、処理済プロットにおいて高くなる傾向であった。平均で、炭素貯蔵量は、組成物で2~3回処理したプロットの方が、隣接する対照プロットより高い(以下の表8参照)。平均結果は、TOC及びバルク密度に違いはあるが、処理済土壌における炭素貯蔵量は、全てのファームからの対照土壌よりも大きいという一致した傾向を示している。
【0276】
【表8】
【0277】
実施例12-カリフォルニアソッドについての土壌炭素測定
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む、本発明の実施形態による組成物を、NanoGroTMと混合し、ブーム噴霧を用いて芝生場に適用し、通常の潅漑を用いて給水した。1回の休眠前処理を10月に行い、その後、約30日後にNanoGroTM適用を行った。処理は、土温が55°F未満に低下したときに停止した。
【0278】
土壌温度が55°Fを超えて上昇したら、NanoGroTMと混合した組成物を60日毎に1回適用し、続いて、各処理の30日後に、採取まで追加のNanoGroTM栄養パッケージを適用した。各処理領域は、以下の表9に示すように、同じサイズの未処理の切片(標準的栽培者慣行)と一致させた。
【0279】
【表9】
【0280】
プロットをサンプリングし、分析した。結果を以下の表10に示す。
【0281】
【表10】
【0282】
実施例13:カリフォルニアアーモンドについての土壌炭素測定
Trichoderma harzianum及びBacillus amyloliquefaciensを含む本発明の実施形態による組成物を、アーモンド樹が標準潅漑システムを通して生育している土壌に適用した。以下の表11に従って、全部で3回の処理を行った。
【0283】
【表11】
【0284】
アーモンド樹の20エーカーブロックを処理し、サンプリングし、未処理アーモンドの20エーカーブロックも対照としてサンプリングした。結果を以下の表12及び13に示す。
【0285】
【表12】
【0286】
【表13】
【0287】
実施例14-亜酸化窒素土壌排出量の減少-ジャガイモ
本発明の実施形態による組成物(以下の表14参照)を、ジャガイモ畑における肥料必要量(例えば、NPK使用)を減少させる能力について試験した。NPK使用量の減少は、土壌の塩分、栄養素の流出、及び土壌からの亜酸化窒素の排出を直接減少するのに役立つ。
【0288】
栽培者慣行プロットを、本発明の処理組成物の種々の実施形態と比較した(表14)。2ヵ月間にわたり2週間ごと(約)に4回の処理を行った。亜酸化窒素土壌排出量の60%の減少が観察された(図12)。
【0289】
【表14】
【0290】
本組成物で処理したプロットを、肥料を使用しなかったプロットとも比較した。これは、再植林及び牧草地再生のような、非受精作物/再生農業にとって特に興味深い。未処理プロットが亜酸化窒素シンクとして役立ち、処理済プロットがより多量(20%多い)の亜酸化窒素を隔離することが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】