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特表2022-504089アーク溶接における溶接欠陥を検出するための方法およびアーク溶接システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】アーク溶接における溶接欠陥を検出するための方法およびアーク溶接システム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20220105BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20220105BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B23K9/095 510B
B23K31/00 N
B23K37/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518114
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(85)【翻訳文提出日】2021-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2019077120
(87)【国際公開番号】W WO2020074462
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】18382709.6
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520485516
【氏名又は名称】ゲスタンプ セルビシオス, エセ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ローデウァイク キース, ヤン
(57)【要約】
アーク溶接における欠陥を検出するための方法が開示される。本方法は、溶接中に赤外線センサーを使用して溶接部の平均溶融池温度を測定することを含み、赤外線センサーは溶接トーチとともに配置される。本方法は、少なくとも測定された溶融池温度に基づいて溶接部の欠陥状態を決定することをさらに含む。そのような方法を実行するために好適な溶接システムも提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク溶接における欠陥を検出するための方法であって、
溶接中に、赤外線センサーを使用して単一の測定スポットにおいて測定することによって溶接部の平均溶融池温度を測定することであって、前記測定スポットが溶融池を実質的に囲み、前記赤外線センサーが溶接トーチとともに配置された、溶接部の平均溶融池温度を測定することと、
少なくとも前記測定された溶融池温度に基づいて、測定された溶融池温度が予想される温度プロファイルから逸脱しているかどうかを検証することによって、前記溶接部の欠陥状態を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記予想される温度プロファイルが、欠陥を有しない複数の測定された溶接部からの平均温度プロファイルとして決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
測定された温度が、前記予想される温度プロファイルについて定義された帯域幅内にとどまる場合、前記予想される温度プロファイルからの逸脱がないことが決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2つの異なる時点間の温度勾配を計算することと、
前記温度勾配が所定の温度勾配しきい値を上回る場合、欠陥状態を決定することと
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
複数の温度勾配しきい値が定義される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
欠陥状態を決定することが、測定された溶融池温度における変動を識別することと、前記変動の振幅が振幅しきい値よりも大きいかどうかを検証することとをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
測定された温度プロファイルが、欠陥をもつ溶接部のプロファイルに実質的に対応するときに、前記予想される温度プロファイルからの逸脱が決定される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記欠陥状態が、溶落ち、ポロシティ、前記溶接部の不整合、フューズスルー、不安定な溶接部、接合されるべき工作物間のギャップの偏差、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つの欠陥に関係する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
欠陥状態が正であると決定されたときに異常信号を生成することをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記異常信号が生成されたときに工作物の溶接動作を停止することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融池を囲むように前記赤外線センサーのスポットサイズを調整することをさらに含む、請求1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融池温度が1から50msごとに、特に5から15msごとに測定される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アーク溶接が、突合せ継手、重ね継手、T継手、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つの継手に適用される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アーク溶接が、鋼、アルミニウムまたはそれらの合金のうちの少なくとも1つから製造された工作物に適用される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
アーク溶接トーチと、
赤外線センサーであって、前記赤外線センサーが溶融池に焦点を当てるように、前記トーチとともに配置され、測定ポットが前記溶融池を実質的に包囲する、赤外線センサーと、
前記赤外線センサーとデータ通信しているコントローラと
を備える溶接システムであって、
前記溶接システムが、請求項1から13のいずれか一項に記載の溶接欠陥を検出するための方法を実行するように構成された、溶接システム。
【請求項15】
前記赤外線センサーを清浄化するための清浄化システムをさらに備える、請求項14に記載の溶接システム。
【請求項16】
前記清浄化システムが、ノズルと、前記赤外線センサーのほうに流体を送る高圧源とを備える、請求項14または15に記載の溶接システム。
【請求項17】
前記清浄化システムが機械式ブラシを備える、請求項14から16のいずれか一項に記載の溶接システム。
【請求項18】
前記赤外線センサーがその中に固定された、耐熱材料から製造されたケーシングをさらに備える、請求項14から17のいずれか一項に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月8日に出願された欧州特許出願番号EP18382709.6の利益を主張する。
【0002】
本開示は、溶接プロセスにおける品質管理に関し、より詳細には、アーク溶接における欠陥を検出するための方法に関する。本開示はさらに溶接システムに関する。
【背景技術】
【0003】
工作物を溶接方法によって接合することは広く知られている。自動車産業または航空機産業など、いくつかの技術分野では、安全仕様の要件を満たすために溶接部(weld)の品質管理が極めて重要である。
【0004】
溶接部の品質管理は異なる方法で実行され得る。簡単な方法は、オペレータによる目視検査に基づき得る。しかしながら、その方法は、人員の適切な訓練を必要とし、時間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーを起こしやすい。
【0005】
溶接部のいくつかの他の品質管理は、引張強度試験、ニック破壊(nick break)試験、バックベンド(back bend)試験などの破壊試験によって溶接継ぎ目(weld seam)を検査することに基づき得る。他の方法は、遠隔目視検査、X線、超音波試験および浸透探傷(liquid penetration)試験などの非破壊試験に基づく。すべての場合において、知られている方法は、時間がかかり、かなりの材料と人的資源とを必要とする。
【0006】
CN107931802Aは、電気アーク溶接の溶接継ぎ目品質検出のための方法を開示している。その方法は、リアルタイム溶接赤外画像を形成するために、溶接中に、形成された溶接池の10mm後方の高温溶接継ぎ目領域を撮影するために、赤外線カメラが採用され、赤外画像は温度較正方法によってデジタル情報に変換され、溶接継ぎ目の幅と中心軌跡線(center track line)とを取得するために、収集されたデータに従って抽出と計算とが実行され、溶接継ぎ目の幅と中心軌跡線との変化によって溶接欠陥が判定されることを特徴とする。
【0007】
この方法の一態様は、IRカメラが固定式に配置され、したがって、IRカメラはトーチの軌跡の変化に対して適切な応答を与えることができないことである。
【0008】
米国特許第4594497号は、溶接ゾーンを赤外線カメラによって撮影することによる、溶接状態における溶接ゾーンの等温パターンの検出を含む、画像処理溶接制御方法を開示している。
【0009】
CN107081503は、溶接欠陥のリアルタイム検出のための赤外非破壊試験方法を開示している。赤外検出器は、放射強度を検出し、デジタル画像を表示する。
【0010】
これらの従来技術文献は両方とも、ピクセル化された温度分布を与えるデジタルカメラを採用する。温度の分布の分析から、溶接部のいくつかの態様が導出され得る。
【0011】
CN106216814は、信号検出および収集デバイスを備えるアーク溶接ロボットを開示している。信号検出および収集デバイスはレーザーセンサーと赤外線センサーとを備える。レーザーセンサーは継ぎ目追跡を実行し、赤外線センサーは、溶接継ぎ目温度を測定するために使用される、すなわち、両方のセンサーがグローゾーン(glowzone)を測定する。
【0012】
温度測定が、溶接動作が実行されるときにロボットによって採用される経路または角度に依存するので、この構成の一態様は、比較的高い複雑さ、および比較的不十分なフレキシビリティである。
【0013】
EP0092753は、赤外線センサー、好ましくは、アーク溶接動作中のアーク領域の観測のためにスペクトルフィルタ処理手段を備えた赤外線センサーのアレイの使用を開示している。フィルタは、3ミクロンまでの波長を有するすべてのIR放射をフィルタ処理で除去することによって、アーク自体によって生成された赤外放射のほとんどすべてを抑制する。たとえば、パドル(puddle)寸法を決定するために線形温度プロファイルが取得され得る。
【0014】
本開示は、上述の欠点のうちのいくつかを少なくとも部分的に解決する方法およびシステムの例を提供する。
【発明の概要】
【0015】
第1の態様では、アーク溶接における欠陥を検出するための方法が提供される。本方法は、溶接中に赤外線センサーを使用して溶接部の平均溶融池(weld pool)温度を測定することを含み、赤外線センサーは溶接トーチとともに配置される。本方法は、少なくとも測定された溶融池温度に基づいて溶接部の欠陥状態を決定することをさらに含む。
【0016】
本態様によれば、欠陥を検出するための方法は、赤外線センサーを使用した溶融池の温度測定に依拠し得る。赤外線センサーは、赤外線カメラとは対照的に、(赤外線カメラの場合における各ピクセルについての測定値の収集ではなく)あらゆる測定についての一意の値を与える。特異値(singular value)のデータ処理は、より速く、より簡単になり得る。赤外線センサーは、トーチとともに直接配置され、溶融池に照準を合わせるので、測定は溶接部の溶接幅と軌跡線とにかかわらず実行され得る。センサーは一定不変にトーチの経路をたどる。
【0017】
赤外線センサーを使用すると、溶融池温度は単一の測定スポットにおいて測定され得、測定スポットは溶融池を実質的に包囲する。溶融池温度は、したがって、溶融池の1つの特定のポイントにおける温度とは対照的に、平均溶融池温度と考えられ得る。
【0018】
第1の態様による方法は、知られているソリューションよりもフレキシブルで簡単な構成を提供する。本方法は、溶接経路およびトーチ軌跡が反復的であるかまたは変化している溶接動作において実行され得る。
【0019】
さらに、本方法は、ヒューマンエラーを起こしにくく、いくつかの従来技術ソリューションのようにかなりの材料と人的資源とを必要としない、アーク溶接における欠陥を検出するためのソリューションを提供する。オペレータは、欠陥のある溶接部が検出されたときにのみ関与し得、したがって、すべての得られた溶接部を検査することに時間を費やす必要がない。
【0020】
本方法は、作業温度の範囲にかかわらず実施され得、したがって本方法は、溶接されるべき工作物の材料に依存しない。第1の態様による方法は、トーチに対して静止しているかまたは移動され得る工作物を溶接するために実施され得る。
【0021】
測定は、リアルタイムで、すなわち、溶接と同時に実行され得る。測定は、実質的に連続的に、すなわち、測定が欠陥についての情報を与え得るように十分に高い周波数において行われ得る。測定のための好適な周波数は、たとえば、10Hz~1kHz、特に50~100Hzであり得る。
【0022】
さらなる態様では、溶接システムが提供される。溶接システムは、アーク溶接トーチと、赤外線センサーが溶融池に焦点を当てられるような方法でトーチとともに配置された赤外線センサーとを備える。溶接システムは、IRセンサーとデータ通信しているコントローラをさらに備え、溶接システムは、本明細書で開示される例のいずれか1つによる、溶接欠陥を検出するための方法を実行するように構成される。
【0023】
以下で、添付の図面を参照しながら、本開示の非限定的な例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一例による溶接システムを概略的に示す図である。
図2】溶接動作の例における図1のシステムのトーチおよびIRセンサーの縦断面図を概略的に示す図である。
図3】それのスポットサイズを調整するためのレンズをもつ図1のIRセンサーを概略的に示す図である。
図4】一例による、アーク溶接における欠陥を検出するための方法を表す流れ図である。
図5A-5B】目立つ欠陥のない溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および¥5Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図6A-6B】溶落ち(burn through)欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および6Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図7A-7B】不整合(misalignment)欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および7Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図8A-8B】重ね継手(lap joint)における不整合欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および8Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図9A-9B】T継手(T-joint)におけるギャップ(gap)欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および9Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図10A-10B】突合せ継手(butt joint)におけるギャップ欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および10Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図11A-11B】溶接送給中断(weld feed disruption)欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および11Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図12A-12B】ポロシティ(porosity)欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および12Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図13A-13B】不安定溶接欠陥をもつ溶接部に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフ、および13Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
図14】温度プロファイルと予想される温度プロファイルとの比較を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、一例による溶接システム1を概略的に示す。溶接システム1は、トーチ3と赤外線(IR)センサー2とを搬送するためのロボットアーム9を備え得る。
【0026】
図2は、溶接動作の例における図1のシステムのトーチおよびIRセンサー2の縦断面図を概略的に示す。
【0027】
一態様によれば、溶接システム1はアーク溶接トーチ3を備える。トーチ3は、電流がそれを通って流れる電極を搬送する。アーク溶接は、金属を溶融するのに十分な熱を生成するために電気を使用することによって、金属を金属に接合するために使用されるプロセスであり、溶融された金属が冷却すると、金属の結合が生じる。溶接点において金属を溶融するために電極とベース材料との間の電気アークが使用される。
【0028】
使用に際して、溶接されるべき工作物6中に溶融池WPが作成される。溶融池は、母材(base metal)がその溶融点に達した、溶接部の作業可能な部分として定義され得る。
【0029】
IRセンサー2は、トーチ3とともに配置されて示されている。この例に示されているように、IRセンサーはトーチ上に直接取り付けられ得る、すなわち、トーチ3は、それが移動する際にIRセンサー2を搬送する。IRセンサー2は、IRセンサー2が溶融池WPに焦点を当てるような形でトーチに対して位置決めされ、方向付けられる。
【0030】
IRセンサー2は、溶融池WPを包囲し得る測定スポット7を有し得る。この例による溶接システムは、IRセンサー2とデータ通信しているコントローラ8をさらに含む。
【0031】
いくつかの例では、コントローラ8は、IRセンサー2およびトーチ3とともに溶接セル(図示せず)中に配置され得るか、またはコントローラ8は遠隔に配置され得る。コントローラは、たとえば、溶接トーチを搬送するロボットアームに一体化され得る。コントローラはまた、溶接トーチおよびIRセンサーと有線接続または無線接続されているスタンドアロンシステムであり得る。
【0032】
図2に見られ得るように、IRセンサー2は溶融池WPに焦点を当てられ得る。グローゾーンGZは、溶接の方向DWを考慮して、トーチ3の後方に見られ得る。
【0033】
アーク溶接を実行するために、当業者には明らかなように、ワイヤWWがトーチ3に送給され得る。また、溶接領域を酸素および/または水蒸気から保護するようにシールドガスGSまたは保護ガスが使用され得る
【0034】
いくつかの例では、IRセンサーはCT 1M赤外線非接触センサーであり、1μmの波長を使用して、650~1000℃の範囲内で温度測定を実行することが可能であり得る。他の例では、IRセンサーは、1.6μmの波長において385~1600℃の範囲内で温度測定を実行することが可能な2Mセンサーであり得る。そのようなセンサーは、特に鋼を溶接するときの測定のために使用され得る。
【0035】
代替例では、IRセンサーは、2.3μmの波長において150~600℃の範囲内で温度測定を実行するように構成された3Mセンサーであり得る。IRセンサーのこの例はアルミニウム工作物ために好適であり得る。他の好適なIRセンサーも使用され得る。
【0036】
測定は、4ミクロンを下回る波長範囲、より詳細には3ミクロンを下回る波長範囲において最も感度が良い(したがって潜在的に最良の結果を与えることができる)ことがわかっている。そのような波長範囲では、トーチからの放射も測定されるが、取得された温度プロファイルは、溶接欠陥を示すために極めて信頼できることがわかっている。
【0037】
さらなる例では、システム1は、IRセンサーがその中に固定され得る保護ケースを備え得る。保護ケーシングは、アルミニウムなどの耐熱材料から製造され得る。IRセンサー2を溶接バックスパッタ(back spatter)から保護するためにセラミック材料の遮蔽層が使用され得る。遮蔽層は、かなり高い温度に耐えることができ、バックスパッタを跳ね返させるのに十分な硬さであり得る。溶接動作のアークから生じ得るUV線からIRセンサー2を保護するためにUVフィルタ処理ピースが使用され得る。センサーとともに配置された電気ケーブルまたはデータケーブルには、そのようなケーブルが溶融池からのスパッタによって溶融するかまたは損傷することを回避するために保護シールド、たとえばメッシュカバーが与えられ得る。いくつかの例では、編組(braided)ステンレス鋼カバーが使用され得る。
【0038】
いくつかの例では、トーチ3およびIRセンサー2はロボットアーム9によって搬送され得る。ロボットアーム9は、コントローラ8によって制御される複数のアクチュエータによって作動させられ得る。IRセンサー2は、トーチ3がロボットアーム9によって移動されるとき、IRセンサー2も移動されるような形で、トーチ3に関連付けられ得る。溶接欠陥を検出するための方法は、トーチ3によってたどられる経路と角度とは無関係であり得るので、これは、その方法を実行するためのシステム1のフレキシビリティを高め得る。
【0039】
システム1は、ノズルと、システム1を清浄化するために、センサーのほうに流体、たとえば空気を送るための高圧源とをさらに備え得る。代替または追加として、センサーを清浄化するために機械式ブラシ、たとえば鋼ブラシが使用され得る。一例では、機械式ブラシが固定式に配置され得、センサーをもつトーチは清浄化のためにブラシに向かって、およびブラシに沿って移動され得る。清浄化の頻度は状況に応じて決定され得る。一例では、センサーは、1つの構成要素中のすべての溶接が実行された後に清浄化され得る。溶接が実行された後に、構成要素がスティレージ(stillage)にまたは別のワークステーションに移動され得る。次の構成要素が次いで到着する。第1の構成要素が離されることと、次の構成要素が到着することとの間の時間は、たとえば、センサーと溶接トーチとの清浄化のために使用され得る。
【0040】
図3は、それのスポット7サイズを調整するためのレンズ21をもつ図1のIRセンサー2を概略的に示す。図3の例では、IRセンサー2は、IRセンサー2のスポット7サイズを調整するように構成された動作可能なレンズ21を備え得る。このように、ユーザは、赤外線エネルギーIEがIRセンサー2によってそこから受信され、測定され得る領域を調整し得る。したがって、スポット7のサイズは溶融池WPのサイズ(幅)に基づいて変更され得る。例として、スポットサイズは10~15mmの間、特に約13.5~14mmであり得る。
【0041】
いくつかの例では、IRセンサー2は、溶融池WPの平均温度を測定するように構成され得る。あらゆる測定において、測定される温度はスポット(測定領域)全体にわたる温度の結果となる。スポット7は、溶融池WPを実質的に包囲するようにサイズ決定され得る。いくつかの特定の例では、スポット7は実質的に円形であり、溶融池WPの幅と実質的に同様の直径を有し得る。
【0042】
いくつかの代替例では、スポット7のサイズは、スポット7が溶融池WPの幅よりも実質的に大きくなり得るように選定され得る。後者は、フューズスルー(fuse through)欠陥を検出するために有用であり得る。
【0043】
図4は、一例による、アーク溶接における欠陥を検出するための方法を表す流れ図を示す。
【0044】
さらなる態様によれば、アーク溶接における欠陥を検出するための方法100は、溶接中にIRセンサー2を使用して異なる時点における溶接部Wの溶融池温度を測定すること101と、少なくとも測定された溶融池温度に基づいて溶接部Wの欠陥状態を決定すること102とを含む。各時点は異なるタイムスタンプを指し得る。
【0045】
特に、溶融池温度は実質的に連続的に測定され得る。いくつかの例では、溶融池温度は10msごとに測定され得る。
【0046】
いくつかの例では、欠陥状態を決定することは、予想される温度プロファイルからの逸脱を検証することを含み得る。温度プロファイルは、時間経過に伴う温度、または位置に応じた温度を示し得る。そのような逸脱は、実質的に一定の温度が予想されるべきときの、温度の急激なジャンプまたは下落、あるいは温度のより漸進的な上昇または低下であり得る。特に、温度測定が予想される帯域幅から外れる場合、欠陥状態が登録され得る。
【0047】
予想される温度プロファイルとの比較は、測定タイムスタンプを、予想される温度プロファイルのための対応する時点と適合させることを含み得る。時間適合は、温度プロファイルの始点または終点に基づき得るか、または温度プロファイルの1つまたは複数の特性に基づき得る。
【0048】
代替的に、取得された温度時間プロファイルを予想される温度プロファイル上に適合させることは測定の位置に基づき得る。
【0049】
帯域幅は平均温度プロファイルについて定義され得る。平均温度プロファイルは、欠陥を有しない複数の測定された溶接部(たとえば100個またはそれ以上の溶接部)から決定され得る。帯域幅は、たとえば、温度測定の複数の標準偏差によって定義され得る。上側帯域、下側帯域、および帯域幅は、確率レベルを選定し、平均(または予想される)温度プロファイルに対する温度偏差の確率を決定することによって決定され得る。たとえば、ガウシアン確率分布が使用され得る。
【0050】
いくつかの例では、予想される温度プロファイルおよび標準帯域幅は欠陥のない複数の溶接部から定義され得る。予想される温度プロファイルおよび標準帯域幅は同等の溶接のために使用され得る。基準溶接部とは異なる1つまたは複数の溶接パラメータを採用する異なる溶接部が監視されるべきである場合、適応させられた増加した帯域幅が使用され得る。
【0051】
同様の溶接不良は、たとえば、使用される異なる材料にかかわらず、温度プロファイルにおける同様の変動につながることがわかっている。すなわち、異なる材料についての温度測定の絶対値は異なり得るが、溶接不良の検出は、特に、温度の絶対値ではなく温度の変動に基づき得る。
【0052】
IRセンサーと本明細書で提示された方法とを使用して検出または識別される溶接欠陥は、溶落ち、ポロシティ、溶接部の不整合、フューズスルー、不安定溶接部、接合されるべき工作物間のギャップの偏差、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つに関し得る。
【0053】
いくつかの例では、本方法は、2つの異なる時点間の温度差を計算することを含み得、欠陥状態を決定することは、温度差が差しきい値を満たすかどうかを検証することをさらに含み得る。コントローラ8は、少なくとも2つの異なる測定値間の溶融池温度差を計算し得る。例として、計算された温度差が差しきい値よりも小さい場合、欠陥状態は負であり、したがって、溶接部は欠陥がないと標示され得る。しかしながら、計算された温度差が差しきい値よりも大きいかまたはそれに等しい場合、欠陥状態は正であり、したがって、溶接部Wは欠陥があると標示され得る。
【0054】
さらなる例によれば、欠陥を分類することは、温度差が所定の間隔内で生じるかどうかを検証することを含み得る。温度差が差しきい値よりも大きいかまたはそれに等しい場合、上述のように、欠陥状態は正であり得る。温度差が、事前定義された間隔よりも速く起こる場合、溶落ちの分類が溶接部Wに割り当てられ得る。
【0055】
代替的に、サンプルデータは、それの絶対値が傾きしきい値よりも大きいかまたはそれに等しくなり得る傾き(すなわち変化率)を求めて分析され得る。傾きの絶対値が傾きしきい値よりも大きいかまたはそれに等しい場合、溶落ちの分類が溶接部Wに割り当てられ得る。
【0056】
いくつかの例では、欠陥状態を決定することは、測定された溶融池温度における変動を求めることまたは識別することと、変動の振幅が振幅しきい値を満たすかどうかを検証することとをさらに含み得る。例として、振幅が振幅しきい値よりも小さい場合、欠陥状態は負であり、したがって、溶接部は欠陥がないと標示され得る。しかしながら、振幅が振幅しきい値よりも大きいかまたはそれに等しい場合、欠陥状態は正であり、したがって、溶接部Wは欠陥があると標示され得る。
【0057】
さらなる例によれば、欠陥を分類することは、変動の振幅が振幅しきい値よりも大きいかまたはそれに等しいとき、溶接部にポロシティ欠陥を割り当てることを含み得る。
【0058】
いくつかの例では、方法100は、測定された溶融池温度と、相関させられた時点とから導出されるサンプルデータを生成することをさらに含み得、欠陥状態を決定することは、サンプルデータが、事前定義されたデータパターンを満たすかどうかを決定することをさらに含み得る。例として、サンプルデータが欠陥状態の事前定義されたデータパターンに実質的に一致する場合、同じ欠陥がサンプルデータについて検出され得る。いくつかの事前定義されたデータパターンを記憶するように、データベースがコントローラ8にとって利用可能であり得る。事前定義されたデータパターンは欠陥状態に、または欠陥がない溶接部に関係し得る。
【0059】
いくつかのさらなる例では、実行された溶接の相関させられた品質管理データが、データベースを更新し、拡張するようにフィードバックとして使用され得る。すなわち、品質管理において欠陥が見つかった場合、温度測定のデータは、データベースにアップロードされ、品質管理において見つかった欠陥にリンクされ得る。
【0060】
代替例では、方法100は、測定された温度対時間についてのグラフを生成することをさらに含み得、欠陥状態を決定することは、生成されたグラフの形状の少なくとも一部分が、事前定義されたグラフパターンを満たすかどうかを決定することをさらに含み得る。グラフは、相関させられた時点とともに、測定された溶融池温度から導出されるサンプルデータの例であり得る。グラフはスクリーン上に可視化され得る。グラフのいくつかの例は図5A図13A中に見られ得る。
【0061】
いくつかの例では、方法100は、欠陥状態が正であると決定されたときに異常信号を生成することをさらに含み得る。
【0062】
いくつかの例では、方法100は、異常信号が生成されたときに工作物6の溶接動作を停止することをさらに含み得る。欠陥に応じて、コントローラ8は、トーチ3を停止させるためのコマンドと、オペレータへの警戒信号とを生成し得る。
【0063】
いくつかの例では、方法100は、溶融池WPの幅を囲むようにIRセンサー2のスポット7のサイズを調整することをさらに含み得る。
【0064】
いくつかの例では、アーク溶接は、突合せ継手、重ね継手、T継手、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つの継手に適用され得る。いくつかの例では、アーク溶接は上述の継手のうちの1つに適用され得る。欠陥状態に関するデータパターンまたはグラフは、継手の異なるタイプにさらに分類され得る。
【0065】
いくつかの例では、アーク溶接は、鋼、アルミニウム、またはそれらの合金のうちの少なくとも1つから製造された工作物6に適用され得る。添付図、特に図5A図13Bでは、いくつかのケースは、鋼またはアルミニウム上で実行された溶接に属し、それのために、ある範囲の温度は他の範囲の温度よりも高くなり得る。しかしながら、本方法100およびシステム1は温度の範囲または絶対値にかかわらず実施され得る。特に、温度変動は絶対値よりも重要である。
【0066】
いくつかの例では、欠陥状態が正であると決定されたとき、必要な場合、溶接された継手が再加工され得る。
【0067】
いくつかの例では、方法100は、機械学習、データマイニング、人工知能、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つの手法を使用して実行され得る。
【0068】
それらの手法のすべてには、溶接動作を実行した後にそれらが利用可能になったときに、新しいサンプルデータが与えられ得る。データは、目視検査、非破壊試験または破壊試験を含み得る品質管理の後に、欠陥に、または「欠陥なし」に割り当てられ得る。
【0069】
溶接動作が実行される間の時間経過に伴う溶融池温度を取得するために、いくつかの実験を行った。実験は、本明細書で開示した方法およびシステムを実施することによって行った。それらの例のサンプルデータは、たとえば、機械学習アルゴリズムをトレーニングするために使用され得る。
【0070】
図5Aは、目立つ欠陥のない例示的な溶接部に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図5Bは、図5Aのグラフに関係する例示的な溶接部の画像である。温度変動が示されているが、これらはすべて、使用された機器と、測定における不可避の可変性とによるものである。すべての値は、予想される温度プロファイルの周りに構成された予想される帯域幅内に入る。
【0071】
図6Aは、溶落ち欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図6Bは、図6Aのグラフに関係する溶接部の画像である。図6A図6Bに示された例は、溶落ち欠陥をもつ溶接部に関する。グラフにおいて、溶落ちと相関し得る時間経過に伴う温度の下落が3つあるが、これは、下落に沿った最も高い温度と最も低い温度値との間の温度の差が差しきい値よりも大きくなり得るためである。さらに、温度の下落は、事前定義された間隔よりも速く行われ得る。特に、温度勾配の絶対値は特に高い。
【0072】
それらの下落に対応する3つの領域6A1、6A2、6A3が図6Aのグラフ中にマーキングされている。温度の下落は、グラフに描かれた線の低下する(負の)傾きをもつ第1の部分と、上昇する(正の)傾きをもつ第2の部分とを含む、一種の谷に類似し得る。温度の下落は、蓄積された熱によって完全に溶融された工作物6の一部分によって引き起こされ得る。いくつかの矢印は、領域6A1、6A2、6A3を、溶落ち現象が見られ得る画像の領域にリンクしている。材料が完全に溶融されてなくなると、溶接されるべき部片の下の空気が測定において含まれるので、IRセンサーの温度測定値は急速に下落する。溶落ちの後、温度は正常な予想される値に戻る。
【0073】
図7Aは、不整合欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図7Bは、図7Aのグラフに関係する例示的な溶接部の画像である。この例では、不整合溶接を、工作物EWの縁部を超える溶接によって生成した。プロットでは、温度は、それが工作物EWの縁部に近づくにつれて着実に下落することが見られ得る。温度下落は、溶接が実行される表面形状の変化によって引き起こされ得る。溶接が工作物EWの縁部を超えて進行する場合、表面形状は変化し得る。表面形状の変化は、熱放散を変化させ、それによって、測定された温度をも変化させ得る。
【0074】
不整合と溶落ちの両方の場合において、時間経過に伴う温度変動は溶接欠陥の存在を示す。しかしながら、明らかに、温度勾配は不整合と溶落ちとで異なる。本明細書で説明したようなシステムを用いると、溶接欠陥は、(たとえば、測定された温度が予想される帯域幅の範囲から外れることによって)認識され得るだけでなく、分類もされ得る。この分類の結果として再加工命令が生成され得る。
【0075】
例として、目立つ欠陥のない溶接部に関する帯域幅は、X1×予想される帯域幅の標準偏差内に入り得、不整合に関する帯域幅は、X2×予想される帯域幅の標準偏差内に入り得、溶落ちに関する帯域幅は、X3×予想される帯域幅の標準偏差内に入り得る。X1は最も低い値であり得、X2は、X1よりも高く、X3よりも低くなり得、X3は最も高い値であり得る。
【0076】
図8Aは、重ね継手における不整合欠陥をもつ例示的な溶接部に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図8Bは、図8Aのグラフに関係する例示的な溶接部の画像である。不整合は、トーチの先端を予想された経路から外れて移動することによって引き起こされる。
【0077】
時間0から400まで、トーチの先端は予想された経路をたどり得る。時間400から1050まで、トーチの先端は逸れ、温度は下落する。時間1050から、トーチの先端は予想された経路に戻り得、したがって、温度は上昇し、正常な値に戻る。温度下落は領域8A1中にハイライトされており、温度上昇は領域8A2中にハイライトされている。温度下落は、この場合も、溶接が実行される表面形状の変化によって引き起こされ得る。表面形状の変化は、熱放散と、測定された平均温度とを変化させる。
【0078】
測定された温度変化は図7よりも図8のほうが急激であるが、添付の写真から見られ得るように、これは図8の場合のより急激な不整合によって説明され得る。
【0079】
図9Aは、T継手におけるギャップ欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図9Bは、図9Aのグラフに関係する溶接部の画像である。
【0080】
図9A図9Bに示された例は、T継手の一方の端部に約2mmのギャップがあり、他方の端部に実質的にギャップがないT継手において実行された溶接に関する。ギャップは、接合されるべき2つの工作物間で発生した。図9Bでは、ギャップをもつT継手の端部は図の右側に対応する。
【0081】
図9Aに見られ得るように、ギャップが広がり得るにつれて、温度は着実に下落し得、それは、この例では、約2/3の距離において起こっている。この特定の例における2/3の距離におけるギャップはほぼ1.35mmであった。溶接が、ギャップをもつ端部に近づくと、領域9A1中に見られ得るように、温度は下降する。増大するギャップは溶接線の不十分な浸入を引き起こし得る。本明細書で開示した方法およびシステムのおかげで、溶込みが劣化し始める瞬間、たとえば、溶接が2/3の距離に到達する瞬間が検出され得る。約時間1500において、仮付け溶接(tack weld)によって引き起こされた小さい傾きの戻り(back up)が見られ得る。表面形状の変化は、熱放散を変化させ得、したがって温度を変化させ得る。このようにして、溶接中のギャップの偏差が検出され得る。
【0082】
図10Aは、突合せ継手におけるギャップ欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図10Bは、図10Aのグラフに関係する例示的な溶接部の画像である。図10A図10Bに示された例は、ギャップがごく僅かな継手の一方の端部からギャップが約3mmの他方の端部まで増大するギャップをもつ突合せ継手において実行された溶接部に関する。
【0083】
最も広いギャップをもつ端部は図10Bの右側にある。溶接部は、温度が下がり始めるほぼ中間まで、比較的安定したままである。すなわち、温度は、ギャップがより広くなると下がり始める。領域10A1を参照すると、溶接の端部に向かって、いくつかの溶落ちが起こったことを示すいくつかのスパイクが見られ得る。このようにして、溶接中のギャップの偏差が検出され得る。
【0084】
図11Aは、溶接送給中断欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図11Bは、図11Aのグラフに関係する溶接部の画像である。ワイヤWW送給は短時間、複数回中断された。プロット、特に領域11A1~A4から見られ得るように、不安定な温度変化は図11Bの画像中の溶接部の薄化とうまく整合する。スパイクが大きくなるほど、溶接部は薄くなり得る。
【0085】
図12Aは、ポロシティ欠陥をもつ溶接部の例に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。図12Bは、図12Aのグラフに関係する溶接部の画像である。ポロシティをあえて起こし、温度測定におけるそれの影響を測定するために、遮蔽ガスGSを溶接の中間あたりでオフに切り替えた。プロットを観測すると、溶融池温度の振幅は、溶接品質が低下し、ポロシティが増加するにつれて増加することが見られ得る。領域12A1は、ポロシティをもつ溶接部の部分に対応し得る。
【0086】
図13Aは、不安定溶接欠陥をもつ溶接部に関する、時間経過に伴う溶融池温度を示すグラフである。不安定溶接欠陥または「溶接不安定性欠陥」は、接合されるべき工作物に対してトーチの距離が変動することを意味する。図13Bは、図13Aのグラフに関係する例示的な溶接部の画像である。
【0087】
不安定溶接欠陥は、トーチ3と接合されるべき工作物6との間の相対的距離を増加および減少させることによって生成した。距離の変動は、不安定溶接をシミュレートするために数センチメートルであった。領域13A1、13A3はトーチの先端の距離の減少に対応し、領域13A2は距離の増加に対応する。減少する距離は、より高い溶接温度に対応するように見られ得、増加する距離はより低い溶接温度に対応するように見られ得る。
【0088】
前述のように、パターンを識別することによって溶接欠陥の検出を改善するために、機械学習、データマイニング、人工知能、またはそれらの組合せが使用され得る。事前定義されたグラフパターンは、たとえば、図5図13Aのそれらの例を含み得る。事前定義されたパターンは、欠陥状態に関する少なくとも1つの欠陥を含み得る。次いで、欠陥状態が決定された場合、どの欠陥が生成されたグラフに関係し得るかが決定され得る。
【0089】
機械学習または同様の手法が実施される例では、これらの手法には、実行された溶接に関係する品質管理データのフィードバックが与えられ得る。したがって、フィードバックは、手法の出力を向上させるために使用され得る。例として、品質管理データは、サンプルデータを特定の欠陥またはさらには欠陥なし条件に相関させることによって好適にラベル付けされたサンプルデータを含み得る。このようにして、データベースは、比較されるべきより多いパターンを有し得、機械学習または何らかの同様の手法はより正確な出力を生成することができる。サンプルはまた、溶接のタイプ、工作物の材料に従って分類され得る。さらなる例では、溶接パターンのさらなる分類は、電極のタイプ、溶接速度などの溶接パラメータに基づき得る。
【0090】
図14は、温度プロファイルと予想される温度プロファイルとの比較を概略的に示す。この特定の例では、温度プロファイルは、溶接部に沿った位置に応じた温度を示すが、時間経過に伴う温度を示す温度プロファイルも使用され得ることは、前の例から明らかであるはずである。
【0091】
監視されるべき溶接の前に、欠陥のない複数の溶接が実行されていることがあり、対応する温度プロファイルが保存されていることがある。前の測定から、平均(average)または平均(mean)温度プロファイルが決定され得、この温度プロファイルの近傍で、帯域幅が確立され得る。
【0092】
この例では、帯域幅は上側帯域13と下側帯域13Bとによって定義される。上側帯域13Aおよび下側帯域および13Bは、これらの帯域から外れる、欠陥のない溶接の確率が所定の確率レベルを下回るように決定され得る。
【0093】
標準(すなわち、予想される温度プロファイルと厳密に同等である)と考えられないことがある溶接部の場合、上側帯域15Aと下側帯域15Bとを用いて、増加した帯域幅15が確立され得る。増加した帯域幅は、通常の帯域幅13にある倍率を乗算することによって決定され得る。
【0094】
測定された溶接部温度17が(増加した)帯域幅を超える場合、欠陥が決定され得る。特定の例では、これは位置20の周りで起こる。欠陥のタイプのさらなる分類は、たとえば、特定の欠陥、および/または温度の変動の分析を示すプロファイルとの比較に基づき得る。
【0095】
いくつかの例では、方法100は、本明細書で開示した例のように、溶接システム1によって実施され得る。いくつかの代替例では、方法100は溶接システム1によって実施され得、コントローラ8はIRセンサー2とトーチ3とから遠隔に配置され得る。
【0096】
いくつかの例では、方法100は、構成要素の製造プロセスを監視するための品質システムまたは方法の一部として実行され得る。方法100の出力は、溶接部Wと接合された工作物6との品質を示すパラメータとして使用され得る。
【0097】
溶接部欠陥が検出され、随意に分類されると、適切なアラームまたは再加工行為が自動的にトリガされ得る。
【0098】
システムのコントローラ8は、上記で説明した方法を実行するために好適なハードウェア、ソフトウェアおよび/またはファームウェアを備え得るコンピュータなどとして構成され得る。別の態様では、コンピュータプログラム製品が開示される。コンピュータプログラム製品は、アーク溶接における欠陥を検出するための本明細書で開示した方法のいずれかを計算システムに実行させるためのプログラム命令を備え得る。
【0099】
そのようなコンピュータプログラム製品は、記憶媒体上(たとえば、CD-ROM、DVD、USBドライブ、コンピュータメモリ上、または読取り専用メモリ上)で実施され得るか、またはキャリア信号(たとえば、電気信号または光キャリア信号)上で搬送され得る。
【0100】
コンピュータプログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、コード中間ソース、および部分的にコンパイルされた形態のオブジェクトコードなどの形態か、またはプロセスの実施において使用するのに好適な任意の他の形態であり得る。キャリアは、コンピュータプログラムを搬送することが可能な任意のエンティティまたはデバイスであり得る。
【0101】
たとえば、キャリアは、ROM、たとえばCD-ROMまたは半導体ROMなどの記憶媒体か、または、磁気記録媒体、たとえばハードディスクなどを備え得る。さらに、キャリアは、電気ケーブルまたは光ケーブルを介してまたは無線または他の手段によって伝達され得る、電気信号または光信号などの伝送可能なキャリアであり得る。
【0102】
コンピュータプログラムが、ケーブルまたは他のデバイスまたは手段によって直接伝達され得る信号中に組み込まれるとき、キャリアはそのようなケーブルまたは他のデバイスまたは手段によって構成され得る。
【0103】
代替的に、キャリアは、コンピュータプログラムがその中に埋め込まれた集積回路であり得、集積回路は、関連がある方法を実行するために、または関連がある方法の実行において使用するために適応させられる。
【0104】
本明細書ではいくつかの例のみが開示されているが、他の代替、改変、使用および/またはそれらの等価物が可能である。さらに、説明した例のすべての可能な組合せもカバーされる。したがって、本開示の範囲は、特定の例によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を正しく読み取ることによってのみ決定されるべきである。図面に関係する参照符号が請求項において丸括弧に入れられている場合、それらは、請求項の理解度を高めることを試みるためのものにすぎず、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5A-5B】
図6A-6B】
図7A-7B】
図8A-8B】
図9A-9B】
図10A-10B】
図11A-11B】
図12A-12B】
図13A-13B】
図14
【国際調査報告】