(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】自動車用ハイブリッド駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 6/36 20071001AFI20220105BHJP
F16H 3/30 20060101ALI20220105BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20220105BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20220105BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20220105BHJP
【FI】
B60K6/36
F16H3/30
B60K17/04 G
B60K6/442 ZHV
B60K6/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518470
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(85)【翻訳文提出日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2019076325
(87)【国際公開番号】W WO2020070030
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】102018124633.1
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507413044
【氏名又は名称】テヒニッシェ・ウニヴェルジテート・ダルムシュタット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】リンダークネヒト・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュライファー・ジャン-エリク
(72)【発明者】
【氏名】フィーマン・アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
3J528
【Fターム(参考)】
3D039AA04
3D039AB01
3D039AB27
3D039AC37
3D202AA02
3D202EE13
3D202EE23
3D202FF08
3J528EA25
3J528EB37
3J528EB62
3J528EB63
3J528EB66
3J528EB76
3J528FA06
3J528FA13
3J528FB03
3J528FB12
3J528FC33
3J528FC64
3J528GA01
3J528HA23
3J528JJ04
3J528JM02
(57)【要約】
燃焼エンジン2と、変速機を介してハイブリッド駆動装置1の被動シャフト11と接続された第一の電気モーター4及び第二の電気モーター5とを備えた、自動車用のハイブリッド駆動装置1であり、この変速機が、それぞれ被動シャフト11と接続可能な第一の部分変速機9と第二の部分変速機9’を備え、第一の電気モーター4が第一の部分変速機9と接続され、第二の電気モーター5が第二の部分変速機9’と接続されており、燃焼エンジン2は、選択的に、変速機から連結解除するか、第一の部分変速機9と形状締結形態により接続するか、或いは第二の部分変速機9’と形状締結形態により接続することができる。第一の電気モーター4が、一定の変速比で第一の部分変速機9の第一の駆動シャフト7と接続され、第二の電気モーター5が、一定の変速比で第二の部分変速機9’の第二の駆動シャフト7’と接続されている。燃焼エンジン2は、第一の部分変速機9の第一の駆動シャフト7と形状締結形態により接続可能であるか、或いは第二の部分変速機9’の第二の駆動シャフト7’と形状締結形態により接続可能である。燃焼エンジン2は、ダイレクトギヤシフト機器12を介して、被動シャフト11と形状締結形態により接続することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼エンジン(2)と、変速機を介してハイブリッド駆動装置(1)の被動シャフト(11)と接続された第一の電気モーター(4)及び第二の電気モーター(5)とを備えた、自動車用のハイブリッド駆動装置(1)であって、
この変速機によって、二つの電気モーター(4,5)と被動シャフト(11)の間で少なくとも二つの異なる変速比を与えることができ、
この変速機が、それぞれ被動シャフト(11)と接続可能な第一の部分変速機(9)と第二の部分変速機(9’)を備え、
第一の電気モーター(4)が第一の部分変速機(9)と接続され、第二の電気モーター(5)が第二の部分変速機(9’)と接続されているハイブリッド駆動装置において、
燃焼エンジン(2)が、選択的に、変速機から連結解除可能であるか、或いは少なくとも一つの部分変速機(9,9’)と形状締結形態により接続可能であることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
燃焼エンジン(2)が第一の部分変速機(9)又は第二の部分変速機(9’)と形状締結形態により接続可能であることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項3】
請求項1に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
燃焼エンジン(2)が第一の部分変速機(9)及び第二の部分変速機(9’)と同時に接続可能であることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
第一の電気モーター(4)が一定の変速比で第一の部分変速機(9)の第一の駆動シャフト(7)と接続され、第二の電気モーター(5)が一定の変速比で第二の部分変速機(9’)の第二の駆動シャフト(7’)と接続されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
燃焼エンジン(2)が、第一の部分変速機(9)の第一の駆動シャフト(7)又は第二の部分変速機(9’)の第二の駆動シャフト(7’)と形状締結形態より接続可能であることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
第一の部分変速機(9)と第二の部分変速機(9’)が、それぞれシフト機器(15,15’)を用いて選択的に付与可能な二つの異なる変速比を可能にすることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
第一の電気モーター(4)が、歯車の二つだけの噛合いで、第一の部分変速機(9)を介して変速機の被動シャフト(11)と接続可能であることと、
第二の電気モーター(5)が、歯車の二つだけの噛合いで、第二の部分変速機(9’)を介して変速機の被動シャフト(11)と接続可能であることとを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
燃焼エンジン(2)が、歯車の二つだけの噛合いで、第一の部分変速機(9)を介して、或いは第二の部分変速機(9’)を介して変速機の被動シャフト(11)と接続可能であることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のハイブリッド駆動装置(1)において、
燃焼エンジン(2)が、ダイレクトギヤシフト機器(12)によって、変速機の被動シャフト(11)と形状締結形態により接続可能であることを特徴とするハイブリッド駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼エンジンと、変速機を介してハイブリッド駆動装置の被動シャフトと接続されている第一の電気モーター及び第二の電気モーターとを備えた自動車用のハイブリッド駆動装置に関し、この変速機によって、二つの電気モーターと被動シャフトの間で少なくとも二つの異なる変速比を与えることができ、この変速機は、それぞれ被動シャフトと接続可能な第一の部分変速機及び第二の部分変速機を備え、第一の電気モーターが第一の部分変速機と接続され、第二の電気モーターが第二の部分変速機と接続されている。
【背景技術】
【0002】
実際に既知の自動車用ハイブリッド駆動装置では、通常当該車両を駆動するために、少なくとも一つの電気モーターが別のエネルギー変換器と組み合わされる。その際、大抵の場合、電気モーターが燃焼エンジンと組み合わされて、燃焼エンジンを用いた過去10年の広範な経験に基づき、燃焼エンジンの適用範囲が広いことと、張り巡らされたサービスステーション網内において迅速に燃料補給できることとを、非常に高い効率と、例えば、制動プロセス時の容易なエネルギー回収手段とを提供する電気モーターの利点と組み合わせることができている。
【0003】
その場合、一つ又は複数の電気モーターと一つの燃焼エンジンの両方が同時にハイブリッド駆動装置の被動シャフトを駆動することができ、それは、並列式ハイブリッド駆動装置と称される。直列式ハイブリッド駆動装置では、電気モーターだけが動力伝達形態で被動シャフトと接続される一方、別のエネルギー変換器によって、通常は燃焼エンジンによって、電気モーターにより被動シャフトに伝達される動力の一部又は全部が提供される。実際には、エネルギー変換器、通常は燃焼エンジンが、選択的にその駆動力をハイブリッド駆動装置の被動シャフトに直に伝達するか、或いはその駆動中に発生した動力を別のエネルギー変換器に、通常は電気モーターに提供して、その機器の側でハイブリッド駆動装置の被動シャフトを駆動することができる混合形態も周知である。同様に、エネルギー変換器によって発生した動力を好適な貯蔵機器に供給して、必要に応じて再び取り出して、自動車を駆動するために使用できるようにすることが可能である。
【0004】
一方のエネルギー変換器と他方のそれにより駆動されるハイブリッド駆動装置の被動シャフトの間には、通常異なる変速比を可能にする変速機が配置されている。その変速機によって、一方における停車状態からの自動車の始動と他方における走行動作中の速い走行速度がそれぞれ出来る限り効率的に実現できるべきである。その際、多くの場合、エネルギー変換器によってそれぞれ回転状態に置かれる駆動シャフトの回転数が当該駆動機器にとって有利な回転数範囲内に留まるのが有利である。乗用車用の燃焼エンジンは、通常長く続く走行動作中において凡そ800回転/分~凡そ5,000回転/分の範囲内の回転数に対して設計されている。電気モーターでは、回転数が高い時に、大きなエネルギー密度によって、そのため小さな電気モーターを用いて、電気エネルギーを有利な手法で駆動力に変換できるので、広い回転数範囲内の動作に対して電気モーターを設計して、その際、20,000又は25,000回転/分まで、或いはそれ以上の最大回転数に対して電気モーターを設計することも可能である。変速機及びそれを用いて可能にする変速比によって、それぞれ当該エネルギー変換器にとって有利な回転数範囲内において自動車の駆動力を発生させるように、駆動力の発生に使用されるエネルギー変換器、例えば、燃焼エンジンと、少なくとも一つの電気モーターとを使用することが追求されている。
【0005】
特に、駆動力を専ら一つの電気モーターによって発生するのではなく、複数の電気モーターによって発生するか、任意選択として、駆動力を発生するために、燃焼エンジンを一時的又は連続的に変速機と連結できる、そのため、異なる回転数により駆動力を変速機に伝達する駆動装置では、しばしば、出来る限り連続して維持される、或いは出来る限り恒常的に変化する駆動力をハイブリッド駆動装置の被動シャフトに出来る限り効率的に伝達できるように、二つの変速比の間で変速機を切り替えるシフトプロセスを出来る限り短時間で複雑なプロセス無しに構成することは、追及する価値がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、燃焼エンジンだけによる動作と同様に、並びに電気モーターと燃焼エンジンの両方がそれぞれ発生させた全駆動力の一部をハイブリッド駆動装置の被動シャフトに伝達する混合動作と同様に、電気モーターだけによる動作を実現できる、一つの電気モーターと一つの燃焼エンジンを備えたハイブリッド駆動装置が記載されている。その場合、燃焼エンジンは、摩擦締結式クラッチを用いて、任意選択として、ハイブリッド駆動装置の変速機と接続されて、それによって、燃焼エンジンの駆動力をハイブリッド駆動装置の被動シャフトに伝達することができる。電気モーターを用いて、個々のシフトプロセスを支援することができ、電気モーターは、変速機の機械的な機能を代替して、燃焼エンジンの牽引力支援を実行することができる。その摩擦締結式クラッチは、燃焼エンジンを部分変速機と接続して、その結果、部分変速機を介して、複数の変速比の中の一つにより、任意選択として、電気モーターにより連続的に駆動できる被動シャフトを駆動するために、燃焼エンジンを接続することができる。
【0007】
特許文献2により、それぞれ当該電気モーターに割り当てられた部分変速機を介して、ハイブリッド駆動装置の被動シャフトと接続可能である二つの電気モーターを備えたハイブリッド駆動装置が周知である。二つの電気モーターと各電気モーターに割り当てられた二つの部分変速機を使用することによって、そのハイブリッド駆動装置を用いて、電気モーターが発生する駆動力のハイブリッド駆動装置の被動シャフトへの無中断による伝達が実現できる。通常はレンジエクステンダーとして使用される燃焼エンジンは、一つのクラッチを介して、二つの電気モーターの中の一つと、さもなければハイブリッド駆動装置の被動シャフトと直に連結することができ、その結果、直列ハイブリッド駆動と並列ハイブリッド駆動の両方が可能である。
【0008】
燃焼エンジンと変速機の間に摩擦締結式クラッチを使用することは、回転数の外部からの制御と適合を強制的に必要とすること無く、クラッチプロセス中のその時々の回転数の簡単かつ自律的な適合を実現できる。しかし、それは、しばしばハイブリッド駆動装置の動作中に、特に、一般的には関与するシンクロナイザ部品に引き摺り損失が発生するので、摩擦式クラッチ及びシフトプロセスに関与するシンクロナイザ部品を用いたシフトプロセスの実行中に、効率を多少低下させる負荷を発生させてしまう。外部からの制御、例えば、燃焼エンジンの制御への介入によって、それらの欠点の軽減を追求することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ特許公開第102016002863号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第102011117853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことから、ハイブリッド駆動装置の所要スペース、特に、一方の個々のエネルギー変換器と他方の被動シャフトの間に配置された変速機の所要スペースを出来る限り小さくして、ハイブリッド駆動装置の出来る限り効率的な動作を実現するハイブリッド駆動装置を構成することが、本発明の課題であると見做される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明に基づき、燃焼エンジンが、選択的に、変速機から連結解除可能であるか、或いは少なくとも一つの部分変速機と形状締結形態により接続可能であることによって解決される。この場合、任意選択として、燃焼エンジンが第一の部分変速機とのみ、或いは第二の部分変速機とのみ接続できると規定することができる。それに代わって、所定の用途に関して、燃焼エンジンが第一の部分変速機及び第二の部分変速機と同時に接続可能であることも有利であるとすることができる。
【0012】
燃焼エンジンを接続するための摩擦締結式クラッチ及び摩擦締結式シンクロナイザ部品を省くことによって、ハイブリッド駆動装置の比較的効率の良い動作を実現することができる。更に、本発明によるハイブリッド駆動装置は、比較的安価であり、必要な構造空間を極めて小さくした形で製作して、車両に統合することができる。それぞれ割り当てられた第一又は第二の部分変速機を介して被動シャフトと接続可能な二つの電気モーターを使用することによって、二つの電気モーターの中の一つによって、燃焼エンジンのシフトプロセスに必要な、その時々の回転数のシンクロナイズを実現することができ、その結果、燃焼エンジンの連結又は燃焼エンジンが関与するシフトプロセスのための摩擦締結式クラッチ又はシンクロナイズ部が不要になる。燃焼エンジンは、第一の部分変速機又は第二の部分変速機との選択的に実現できる形状締結式接続によって、異なる変速比で被動シャフトと接続することができる。更に、特殊なシフトプロセスのために、燃焼エンジンを二つの部分変速機と接続することができる。変速機から燃焼エンジンを完全に連結解除することも基本的には可能であり、その結果、所定の動作状況において有利であるとすることができる、電気モーターのみによる自動車の駆動が実現される。この場合、電気モーターのみによる駆動時でも、部分変速機及び異なる伝達形態を選択的に使用することができる。
【0013】
燃焼エンジンを接続する際の摩擦締結式クラッチを省くことによって、摩擦締結式クラッチを備えたハイブリッド駆動装置と比べて、ハイブリッド駆動装置に全体として必要な構造空間を削減することができる。二つの電気モーターと燃焼エンジンを専ら形状締結形態により被動シャフトと接続することによって、電気モーター及び燃焼エンジンが発生する駆動力の被動シャフトへの特に効率的な伝達が容易になる。更に、従来のハイブリッド駆動装置と比べて、必要な構造空間を非常に効率的に使用することができる。
【0014】
本発明による考えの有利な実施形態では、第一の電気モーターが一定の変速比で第一の部分変速機の第一の駆動シャフトと接続され、第二の電気モーターが一定の変速比で第二の部分変速機の第二の駆動シャフトと接続されていると規定される。この場合、第一の電気モーターを第一の部分変速機の第一の駆動シャフトと接続する一定の変速比と、第二の電気モーターを第二の部分変速機の第二の駆動シャフトと接続する一定の変速比とは、互いに同じであるか、或いは異なると規定することができる。第一の電気モーターと第二の電気モーターの有利な回転数及びその回転数で達成可能な駆動力も、選択的に同じであるか、さもなければ異なると規定することができる。第一の電気モーターを第一の駆動シャフトと接続する変速比と第二の電気モーターを第二の駆動シャフトと接続する変速比が異なると規定される場合、燃焼エンジンは、第一の駆動シャフト又は第二の駆動シャフトとの形状締結形態による接続によって、同じく異なる変速比で当該部分変速機を介して被動シャフトと接続することができる。第一の電気モーターと第二の電気モーターは、異なるが、それぞれ一定である変速比で第一の部分変速機又は第二の部分変速機と接続されている場合、互いに異なるが、当該電気モーターに関して特に効率的な回転数で動作することができ、それにも関わらず、駆動力の発生と被動シャフトへの伝達に関して、異なる変速比を実現することができる。
【0015】
本発明による考えの任意選択の実施形態では、第一の部分変速機と第二の部分変速機は、それぞれシフト機器を用いて選択的に付与可能な二つの異なる変速比を実現できと規定される。このようにして、二つの部分変速機を用いて、二つの電気モーターが発生する駆動力を被動シャフトに伝達するための全部で四つの異なる変速比を規定することができる。それと同時に、歯車の出来る限り少ない数の噛合いにより駆動力を被動シャフトに伝達できるとともに、個々の変速比の間の切替に必要なシフトプロセスの回数と複雑さが低減されるように構成されたハイブリッド駆動装置の比較的効率の良い動作を実現することができる。それぞれ実現可能なシフトプロセスに関する別の利点として、燃焼エンジンが同時に二つの部分変速機と接続できて、それに対応する駆動力を出力でき、それによって、燃焼エンジンのシフトチェンジ中でも、電気モーターの助けを借りて、形状締結形態で実現された複式クラッチを用いて駆動力の無中断の伝達を達成できることが挙げられる。これらの電気モーターは、燃焼エンジンから被動シャフトへの動力の連続的な伝達を実現できるように、牽引力支援機構として、並びに回転数の操作のために使用することができる。
【0016】
本発明による考えの特に有利な実施形態では、第一の電気モーターが、歯車の二つだけの噛合いで第一の部分変速機を介して変速機の被動シャフトと接続可能であるとともに、第二の電気モーターが、歯車の二つだけの噛合いで第二の部分変速機を介して変速機の被動シャフトと接続可能であると規定される。本発明では、燃焼エンジンも、歯車の二つだけの噛合いで被動シャフトと接続することができる。歯車の二つだけの噛合いで全体として四つの異なる変速比により二つの電気モーターを被動シャフトと接続できる手段によって、従来のハイブリッド駆動装置と比べて、ハイブリッド駆動装置の改善された効率及び明らかに小さい所要空間に関して大きな利点を得ることができる。本発明によるハイブリッド駆動装置は、変速機の著しくコンパクトな構成と二つの電気モーターの燃焼エンジンの周囲への配置とを可能にする。それによって、本発明によるハイブリッド駆動装置は、従来のハイブリッド駆動装置の利用可能な構造空間の規定及び制約が許容されない、或いは機能範囲を大幅に制限されたハイブリッド駆動装置だけが許される自動車においても採用することができる。
【0017】
本発明によるハイブリッド駆動装置の機能範囲は、駆動部と被動部が同軸に配置される場合に、任意選択として、燃焼エンジンがダイレクトギヤシフト機器を用いて被動シャフトと形状締結形態により接続可能であることによって拡張することができる。燃焼エンジンを被動シャフトと形状締結形態により接続することによって、燃焼エンジンが発生する駆動力を変速機の被動シャフトに、そのため自動車の駆動車輪に特に効率的に伝達することが実現される。このようにして、一つの別のシフト機器(ダイレクトギヤシフト機器)だけで、本発明によるハイブリッド駆動装置の機能範囲が更に拡張されて、燃焼エンジンから被動シャフトへの駆動力の直接的な伝達が実現される。このダイレクトギヤシフト機器は、既存のシフト機器に追加して実現できる別の切替位置としても構成することができる。
【0018】
任意選択として、特に省スペースで構造的に簡単なダイレクトギヤシフト機器は、このダイレクトギヤシフト機器が好適に構成されたシフトスリーブを用いて被動シャフトと回転ずれしない形で接続された第一の被動歯車との形状締結形態による噛合いを実現できることによって実現され、この形状締結形態による噛合いは、第二の被動歯車のギヤプーリーにおける少なくとも一つの切欠き又は成形部を介して行われる。第一の部分変速機又は第二の部分変速機から被動シャフトに駆動力を伝達する第一の被動歯車を貫通することによって、ダイレクトギヤシフト機器を用いて、燃焼エンジンの被動シャフトからハイブリッド駆動装置の被動シャフトへの形状締結形態による省スペースな貫通を実現することができる。
【0019】
例えば、燃焼エンジン又は変速機を過負荷から保護するために、追加の摩擦締結式クラッチを介して、燃焼エンジンを変速機と接続することは、基本的には可能であるが、必ずしも必要ではない。
【0020】
以下において、図面に模式的に図示された、本発明による考えの異なる実施例を図面に基づき例示して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車両内に横置きエンジンとして配置された燃焼エンジンと、それぞれ変速機を介して被動シャフトと形状締結形態により接続された二つの電気モーターとを備えた、本発明によるハイブリッド駆動装置の模式的な機能図
【
図2】車両に取り付けた状況の一例の側面図による
図1に図示されたハイブリッド駆動装置の模式的な構造図
【
図3】車両に取り付けた状況の一例の平面図による
図1に図示されたハイブリッド駆動装置の模式的な構造図
【
図4】車両内に横置きエンジンとして配置された燃焼エンジンを備えた、異なる構成のハイブリッド駆動装置の模式的な機能図
【
図5】
図4に図示されたハイブリッド駆動装置において、二つの別個のシフトユニットの代わりに使用できる、四つの異なるシフト状態に切り替え可能なシフト部品を備えた組合せ式シフトユニットの模式的な機能図
【
図6】車両内に横置きエンジンとして配置された燃焼エンジンを備えた、又しても異なる構成のハイブリッド駆動装置の模式的な機能図
【
図7】車両内に横置きエンジンとして配置された燃焼エンジンを備えた、又しても異なる構成のハイブリッド駆動装置の模式的な機能図
【
図8】車両内に縦置きエンジンとして配置された燃焼エンジンを備えた、異なる構成のハイブリッド駆動装置の模式的な機能図
【
図9】燃焼エンジンを形状締結形態により被動シャフトと直に接続できる、車両内に縦置きエンジンとして配置された燃焼エンジンを備えた、異なる構成のハイブリッド駆動装置の模式的な機能図
【
図10】燃焼エンジンを二つのシフトユニットを介して形状締結形態によりそれぞれ一つの部分変速機と接続でき、それによって、特に簡単で速いシフトプロセスを実現できる、車両内に縦置きエンジンとして配置された燃焼エンジンを備えた、又しても異なる構成のハイブリッド駆動装置の模式的な機能図
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1、4、6及び7には、それぞれ車両内に横置きエンジンとして配置された燃焼エンジン2と、走行方向に対して横向きの燃焼エンジン被動系統3とを備えた、本発明によるハイブリッド駆動装置1が図示されている。
図8、9及び10には、車両内に縦置きエンジンとして配置された燃焼エンジン2と、走行方向に対して平行な縦方向に配置された燃焼エンジン被動系統3とを備えた、本発明によるハイブリッド駆動装置1が図示されている。本発明によるハイブリッド駆動装置1の利点は、即ち、空転トルク無しに、或いは摩擦式クラッチの保持に必要なエネルギー無しに動作できる専ら形状締結式のシフト部品による特にコンパクトで省スペースな構造形態であり、ハイブリッド駆動装置1の歯車の少ない噛合いによって実現される、そのため特に効率的な動作が、自動車内にエンジンを配置する二つの変化形態によって実現又は達成できる。
【0023】
例示して図示された全ての変化形態において、本発明によるハイブリッド駆動装置1は、第一の電気モーター4と第二の電気モーター5を備え、それらは、それぞれ当該電気モーター4,5と回転ずれしない形で接続された歯車6,6’と第一又は第二の駆動シャフト7,7’と回転ずれしない形で接続された歯車8,8’との歯車の噛合わせを介して係合する。各電気モーター4,5が発生する回転モーメントは、それぞれの歯車の噛合わせを介して、第一又は第二の部分変速機9,9’のそれらに割り当てられた第一又は第二の駆動シャフト7,7’に伝達される。この場合、歯車の噛合わせは、それぞれ一定の変速比を有し、その結果、第一の電気モーター4が一定の変速比で第一の部分変速機9の第一の駆動シャフト7と接続され、第二の電気モーター5が一定の変速比で第二の部分変速機9’の第二の駆動シャフト7’と接続されている。一定の変速比は、それぞれ要件に応じて同じ大きさであるか、さもなければ場合によっては、明らかに異なるとすることができる。第一の電気モーター4と第二の電気モーター5も、例えば、有利な回転数及び駆動力に関して、同じであるか、或いは場合によっては、明らかに異なるとすることができる。同様に、二つの電気モーター4,5が、図示された実施例と異なる形で、一定の変速比で二つの部分変速機9,9’の第一又は第二の駆動シャフト7,7’と接続できるとすることが可能である。
【0024】
図1~7に図示された横置きエンジンとして配置された燃焼エンジン2を備えたハイブリッド駆動装置1では、二つの部分変速機9,9’の二つの駆動シャフト7,7’は、ディファレンシャル10を介して、ハイブリッド駆動装置1の被動シャフト11と接続されている。この場合、二つの部分変速機9,9’の歯車の噛合いは、同じ又は異なる形で実現できる、ディファレンシャル10の共通して使用されるディファレンシャル歯車によって実現される。
図1、4、6及び7では、このディファレンシャル10は、見る方向に対して、本発明によるハイブリッド駆動装置1の別のシフト部品又はコンポーネントの後方に配置されており、そのため、単に重なって見えるように破線で表示された形で図示されている。
【0025】
図9及び10の実施例に図示されている通り、燃焼エンジン2を縦置きエンジンとして配置した場合、被動シャフト11は、燃焼エンジン用被動シャフト3に対して同軸に配置することができ、それにより、ダイレクトギヤシフト機器12を介して、形状締結形態により燃焼エンジン用被動シャフト3と選択的に接続することができる。
【0026】
図示された全ての実施例では、二つの部分変速機9,9’は、第一の部分変速機歯車13,13’とそれと異なる形に構成された第二の部分変速機歯車14,14’とを備え、それらによって、異なる変速比を各部分変速機9,9’に与えることができる。好適に構成された形状締結式シフト機器15,15’によって、それぞれ割り当てられた電気モーター4,5の駆動力を当該部分変速機9,9’に伝達する二つの部分変速機9,9’の各駆動シャフト7,7’と、第一の部分変速機歯車13,13’又は第二の部分変速機歯車14,14’を選択的に接続するか、或いは二つの部分変速機歯車13,13’,14,14’の何れも接続しないことが可能である。このようにして、電気モーター4,5と二つの部分変速機9,9’の好適な設計によって、シフト機器15,15’の相応の操作によって選択的に与えることができる、二つの電気モーター4,5の駆動力をハイブリッド駆動装置1の被動シャフト11に伝達するための四つの異なる変速比を実現することができる。この場合、異なる変速比は、例えば、凡そ20:1~7:1又は3:1の範囲をカバーできる。同様に、更に別の部分変速機歯車とシフト機器を用いて、更に別の変速比を与えるとともに、ハイブリッド駆動装置1の動作に対して実現することが可能である。
【0027】
図1に図示された実施例では、燃焼エンジン2は、二つの形状締結式接続を可能にするシフト機器を介して、形状締結形態により二つの部分変速機9,9’の中の一つと選択的に接続可能である。
図4、6及び7に図示された実施例では、燃焼エンジン2は、それぞれ二つの別個の燃焼エンジン用シフト機器16,16’を介して、形状締結形態により二つの部分変速機9,9’の中の一つ又は二つの部分変速機9,9’と選択的に接続可能である。この場合、燃焼エンジン用シフト機器16,16’の二つのガイドスリーブ支持体18,18’の中の一つ、或いはシフト機器17又は
図5に詳しく図示された組合せ式切替機器17’の共通して使用されるガイドスリーブ支持体19を用いた、各歯車に固定されたクラッチ本体部の間の形状締結が、それぞれ動力を伝達するために利用される。例えば、
図1に図示されたシフト機器17では、一つのガイドスリーブを用いて、共通して使用されるガイドスリーブ支持体19と二つの隣り合う、それぞれ一つの歯車に割り当てられたクラッチ本体部の中の一つとの間の形状締結を選択的に実現することができる。組合せ式切替機器17’では、二つのガイドスリーブを用いて、共通して使用されるガイドスリーブ支持体19とそれぞれ一つの歯車に割り当てられた一つのクラッチ本体部又は二つの隣り合うクラッチ本体部との間の形状締結を選択的に実現することができる。この場合、好適なシフト規定によって、例えば、12:1~3:1の範囲で、全部で四つの異なる変速比を実現することができる。例示して図示された全ての実施例では、燃焼エンジン2は、相応のシフト規定によって、二つの部分変速機9,9’から連結解除することもできる。
【0028】
例示して図示された全ての変換形態では、ハイブリッド駆動装置1の被動シャフト11との燃焼エンジン2の形状締結による接続が、歯車の噛合い無しに、或いは歯車の二つの噛合いを介して行われる。それによって、電気モーター4,5を用いて電気的に発生する駆動力と燃焼エンジン2を用いて発生する駆動力の両方が、それぞれ歯車の最大で二つの噛合いによって、被動シャフト11に伝達することができる。歯車の少ない数の噛合いによって、本発明によるハイブリッド駆動装置1の特に省スペースな実施形態及び配置形態が実現可能である。同時に、ハイブリッド駆動装置の特に効率的な動作も実現される。
【0029】
図1~3に図示された実施例では、燃焼エンジン2は、シフト機器17を介して、二つの歯車8,8’の中の一つと選択的に接続可能であり、これらの歯車を介して、二つの電気モーター4,5も各部分変速機9,9’と接続されている。この場合、少なくとも一つの電気モーター4は、しばしば省スペース形態により燃焼エンジン2の直ぐ近くに配置することができる。
図1~3に図示された実施例では、二つの電気モーター4,5は、互いに逆方向を向いている。
図1に図示された実施形態に基づく本発明によるハイブリッド駆動装置1の個々のコンポーネントの配置構成が
図2及び3に例示して図示されている。
【0030】
図4に図示された実施例では、燃焼エンジン2は、一つのシフト機器17を介してではなく、二つの別個に配置された切替可能なシフト機器16,16’を介して、一つの部分変速機又は二つの部分変速機9,9’と選択的に接続可能である。一つの部分変速機又は二つの部分変速機9,9’と選択的に構築可能な形状締結式接続は、
図5に模式的に図示されている通り、二つの別個のシフト機器16,16’の代わりに使用される組合せ式切替機器17’を介しても実現することができる。この組合せ式切替機器17’は、二つの別個に配置された切替可能なシフト機器16及び16’と同様の機能を実現するが、一つの共通して使用されるガイドスリーブ支持体19だけを備える。この場合、シフト機器17を用いた構造的な実施形態及び実現形態に応じて、
図1に図示されている通り、第一の部分変速機9又は第二の部分変速機9’との形状締結式接続を選択的に行うか、さもなければ
図5に図示された組合せ式切替機器17’により、第一の部分変速機9又は第二の部分変速機9’との形状締結式接続、或いは二つの部分変速機9,9’との同時の形状締結式接続を選択的に行うことができる。
【0031】
図6に図示された実施例では、第一の電気モーター4がパンケーキモーターとして構成されて、燃焼エンジン被動系統3の延伸部に配置されている。パンケーキモーターの代わりに、それと異なる構成の電気モーター4も使用することができる。燃焼エンジン2は、二つの別個のシフト機器16,16’を介して、或いは
図6に別に図示されていない組合せ式シフト機器17’を介して、第二の部分変速機9’の歯車8’又は電気モーター4の被動シャフト20と選択的に接続することができる。それによって、二つの異なる電気モーター4,5とハイブリッド駆動装置1全体の特に省スペースな配置構成を実現することができる。燃焼エンジン2と同じ回転数範囲を有する電気モーター4を使用する場合、その配置構成によって、更に別の歯車を省くことができる。
【0032】
図7に図示された実施例では、二つの電気モーター4,5が同じ方向に向けて、かつ同じ周りに回転するように配置されている。そのような二つの電気モーター4,5の配置構成は、例えば、燃焼エンジン2の直ぐ近くに、電気モーター4,5を配置するスペースが入手できない場合に有利であるとすることができる。
【0033】
図8に図示された実施例では、燃焼エンジン2が縦置きエンジンとして車両内に配置されている。この燃焼エンジン用被動シャフト3は、シフト機器17を介して、第一の部分変速機9の歯車8又は第二の部分変速機7’の歯車8’と選択的に接続することができる。燃焼エンジン2の形状締結式接続は、二つの部分変速機9,9’の変速比を利用しており、全部で四つの異なる変速比でハイブリッド駆動装置1の被動シャフト11と形状締結により接続することができる。図示された実施例で燃焼エンジン2の直ぐ近くに同じ周りに回転して、同じ方向に向けて配置されている、二つの電気モーター4,5の好適な配置構成によって、本発明によるハイブリッド駆動装置1に関する特に効率的なスペース利用とそれにより得られる少ない所要スペースを実現することができる。
【0034】
燃焼エンジン2が同じく縦置きエンジンとして配置され、燃焼エンジン用被動シャフト3がハイブリッド駆動装置1の被動シャフト11と直線状に並んで配置されている、
図9に図示された実施例では、燃焼エンジン用被動シャフト3は、ダイレクトギヤシフト機器12を用いて、更に、迂回すること無く、部分変速機9,9’を介してハイブリッド駆動装置1の被動シャフト11と直に接続することができる。
【0035】
燃焼エンジン2が又もや縦置きエンジンとして配置されている、ハイブリッド駆動装置1に関する
図10に図示された実施例では、ダイレクトギヤシフト機器12は、基本的に燃焼エンジン用被動シャフト3をそれに割り当てられた部分変速機9と形状締結形態により接続することに関して、二つのシフト機器16の中の一つと機能的に統合されている。それによって、燃焼エンジン2のシフトプロセスを制御するために必要なフロー工程の数とシフトプロセスの全体として必要なシフト時間とに関する利点を得ることができる。主要な利点は、移行時間中に二つのシフト部品によって一つの部分変速機を操作可能であることである。
【国際調査報告】