(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】バリチニブのマロン酸塩
(51)【国際特許分類】
C07D 417/14 20060101AFI20220105BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20220105BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220105BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20220105BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C07D417/14 CSP
A61P35/00
A61K31/517
A61K45/00
A61K33/243
A61K31/282
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518503
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(85)【翻訳文提出日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 SG2019050504
(87)【国際公開番号】W WO2020076239
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】10201808900X
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517306167
【氏名又は名称】アスラン ファーマシューティカルズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ロバート
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB07
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4C084ZC75
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4C206AA01
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4C206NA14
4C206ZB26
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、化合物(I)、すなわち、バリチニブの薬学的に許容される塩、塩を生成する方法、塩から得られる遊離塩基のより純粋な形態、およびそれらのうちのいずれか1つを含む医薬組成物に関する。また、併用療法の一部としての、例えば、化学療法剤と組み合わせた治療を含む、特に、癌の治療に使用するための塩、遊離塩基、またはそれらの組成物も提供される。本開示はまた、それらを含む組成物、および治療、特に、癌の治療におけるそれらのうちのいずれか1つの使用にも及ぶ。
【化1】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、
【化1】
またはその鏡像異性体の薬学的に許容される塩であって、マロン酸塩である、塩。
【請求項2】
前記化合物が、式(IA)である、請求項1に記載の塩。
【化2】
【請求項3】
前記塩の純度が、例えば、HPLCまたは同様の技術によって分析され、面積/面積値(面積%)として表される場合、97%以上、例えば、97.5%、98%、98.5%、99%、または99.5%である、請求項1または2のいずれか一項に記載の塩。
【請求項4】
塩が、例えば、HPLCまたは同様の技術によって分析され、面積/面積値として表される場合、0.1%以下のアニリン不純物C
18H
14ClN
5OSを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩。
【請求項5】
前記アニリン不純物が、式(II)の構造を有する、請求項4に記載の塩。
【化3】
【請求項6】
前記アニリン不純物が、0.09%以下、例えば、0.08%、0.06%、0.05以下で存在する、請求項4または5に記載の塩。
【請求項7】
前記塩が、例えば、HPLCまたは同様の技術によって分析され、面積/面積値(面積%)として表される場合、1.5%以下、例えば、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%以下のチアゾリン不純物C
22H
19CLN
6OS
2を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の塩。
【請求項8】
チアゾリン不純物が、式(III)の構造を有する、請求項7に記載の塩。
【化4】
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の塩を含む医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物が、経口投与用である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記マロン酸塩によって提供される遊離塩基当量の用量が、100mg~900mg、例えば、200mg~500mgの範囲、特に200mg、300mg、または400mgである、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
治療に使用するため、例えば、上皮癌などの癌の治療に使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の塩または請求項9~11のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項13】
治療有効量の請求項1~9のいずれか一項に記載の塩または請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む治療の方法であって、例えば、前記治療が、癌に対するものである、治療の方法。
【請求項14】
癌の治療のための薬剤を製造するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の塩または請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
前記式(I)の塩が、隔日投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【請求項16】
前記療法が、さらなる治療薬を含み、例えば、本明細書において、前記さらなる治療薬が、抗癌剤である、請求項14~19のいずれか一項に記載の塩、組成物、方法、または使用
【請求項17】
前記さらなる治療薬が、化学療法剤またはその組み合わせである、請求項16に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【請求項18】
前記化学療法剤が、白金ベースの化学療法剤、ピリミジン類似体、およびそれらの2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、請求項17に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【請求項19】
前記白金ベースの化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、リポプラチン、およびそれらの組み合わせを含む群から選択され、特にシスプラチンである、請求項18に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【請求項20】
前記化学療法剤が、フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、ゲムシタビン、ラルチトレキセド、タキソール、およびそれらの誘導体、BGC945、OSI-7904L、FOLFOX、FOLFIRI、およびFOLFIRINOX、ならびにそれらのうちの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項17または18に記載の塩、組成物、方法、または使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バリチニブなどの式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、塩を生成する方法、塩から得られる遊離塩基のより純粋な形態、およびそれらのうちのいずれか1つを含む医薬組成物に関する。また、併用療法の一部としての、例えば、化学療法剤と組み合わせた治療を含む、治療、特に、癌の治療に使用するための塩、遊離塩基、またはそれらの組成物も提供される。
【0002】
本開示はまた、新規の多形形態、それを含む組成物、および治療、特に、癌の治療におけるその使用にまで及ぶ。
【背景技術】
【0003】
治療が困難な癌は多くあり、療法は利用可能であるが、療法に対するある程度の耐性が存在するか、または存在するように見える。一次耐性は、癌が最初から治療に反応しない場合に生じる可能性がある。これは、使用される療法が特定の種類の癌を十分に正確かつ効果的に標的にしていないという事実が原因である可能性がある。二次的または後天的な耐性も非常に頻繁に生じ、これは、最初は患者が反応すると思われる療法が、時間の経過とともにその有効性を失うことを意味する。例えば、化学療法では、卵巣上皮、原発性腹膜癌と診断された患者の全体の約80%は、最初に行われる白金ベースおよびタキサンベースの化学療法の後に再発するであろう。化学療法による肝細胞癌の治療は、10~20%の奏効率が報告されている。これらは、あまり有望な統計ではない。
【0004】
耐性には多くの理由があり、例えば、いくつかの癌は、後期に発見される、および/または単に治療に反応しない。
【0005】
癌が療法の治療効果を回避するメカニズムには、以下が含まれるが、これらに限定されない。
i)癌を治療に対してあまり脆弱にしない突然変異(例えば、療法の作用部位の突然変異)、
ii)例えば、p-グリコシル化による腫瘍からの薬物の能動輸送、
iii)物理的防御、例えば、特定の免疫応答を阻害する間質および腫瘍関連マクロファージの構築、および
iv)ある特定の癌は、いくつかの抗癌療法によって引き起こされた損傷を修復するための経路を開発する。
【0006】
腫瘍の不均一性も耐性に寄与する可能性があり、細胞の小さな亜集団が、選択的な薬物圧力下で(例えば、癌幹細胞などのメカニズムを介して)それらが出現することができるようにするいくつかの特徴を獲得するか、または確率論的に既に所有している可能性がある。したがって、癌細胞のいくつか、または大部分が治療されたとしても、耐性細胞は、冬眠状態になり、後日再び出現する。これは、多くの癌患者が遭遇する問題であり、それは明らかに、効果的である治療選択肢を制限し、予後を悪化させる。
【0007】
癌療法ガイドラインは、推奨される癌治療について説明しており、これには、治療が採用される順番または順序に関する推奨が含まれる。したがって、患者が最初の療法(「第1のライン」)で疾患の進行を示した場合、次の療法(「第2のライン」)が推奨され、その次が続く。これらの療法の推奨は、入手可能な科学的データおよび経験に基づいており、ある療法に対する耐性が、別の療法が有効である可能性を排除しないことを示す。後期段階では、癌は、ほとんどの療法に反応せず、治療法の手段はこれ以上存在しない。これらの癌は、効果的である新しい療法が見つからない限り、完全に治療の効果はない。
【0008】
胆管癌は、一次および二次の両方の耐性の代表的な例であり、原発腫瘍およびいかなる転移の両方を完全に切除(外科的に除去)できない限り、不治であり、急速に致命的な悪性腫瘍であると考えられている。胆管癌の治療処置は、手術を除いて存在しない。残念ながら、ほとんどの患者は、診断時に手術不能な進行期の病気を患っている。胆管癌の患者は一般に、化学療法、放射線療法、およびその他の緩和ケア措置によって管理されるが、治癒することはない。これらは、切除が明らかに成功した(またはほぼ成功した)場合の補助療法(すなわち、術後治療)としても使用される。
【0009】
西半球では、胆管癌は、腺癌(腺を形成するか、またはかなりの量のムチンを分泌する癌)として分類される比較的稀な新生物である。西欧諸国では、それは、10万人あたり1~2例の年間発生率を有する。しかしながら、胆管癌の発生率は、過去数十年にわたって世界中で上昇している。さらに、発生率は、それが重大な問題として認識されているアジア諸国でより高くなっている。
【0010】
(R)-N4-[3-クロロ-4-(チアゾール-2-イルメトキシ)-フェニル]-N6-(4-メチル-4,5、-ジヒドロ-オキサゾール-2-イル)-キナゾリン-4,6-ジアミン(ASLAN001およびARRY-543としても知られるバリチニブ)(WO2005/016346に開示される実施例52を参照されたい)は、小分子汎HER阻害剤である。それは、潜在的に興味深く、効果的な治療薬である。
【0011】
バリチニブは、従来技術では、以下のスキームに要約されるように、チオ尿素コアをアニリン頭部基と反応させることによって調製される。
【化1】
【化2】
【0012】
この粗塩基物質は、本明細書ではステージ7物質と呼ばれる。
【0013】
しかしながら、バリチニブは、以下に説明する理由により、製造および精製が困難である。ステージ7の遊離塩基物質は、結晶性である。しかしながら、再結晶では、十分な純度の物質は得られない。商業的プロセスでは、濾過および洗浄を使用して化合物を単離することができる。しかしながら、バリチニブ遊離塩基は、フィルターを詰まらせるため、濾過が困難であり、これは、バリチニブ遊離塩基が、非常に細い小さな針、または微結晶物質のいずれかを形成する傾向があり、窒素圧および/または真空下でも液体の流れを制限するためである。
【0014】
分取HPLCを使用して、化合物の精製することができるが、大量の化合物が必要な場合、プロセスは遅く、法外に費用がかかる。加えて、分取HPLCでは、大量の溶媒を使用する必要があり、後に安全に廃棄する必要がある。したがって、分取HPLCを使用して大量の医薬品有効成分(API)を精製することは、商業的に実行可能ではない。最初に望ましくない不純物の含有量を最小限に抑え、非癌患者において、および/または予防的に、療法を採用できる可能性があるため、化合物をより高レベルの純度で、商業規模で製造することができれば、患者にとってより良いであろう。
【0015】
現在、バリチニブの製造プロセスには、さらに2つのステップ、すなわち、ジトシレート塩への変換(本明細書では「ステージ8」と呼ばれる)、次に遊離塩基への変換(本明細書では「ステージ9」と呼ばれる)が含まれ、これにより、約97%純粋な物質が得られる。この物質は、本明細書ではステージ9物質と呼ばれる。しかしながら、このステージ9物質に存在するさらなる1つまたは2つの不純物、例えば、アニリン不純物および/またはチアゾリン不純物を最小化することが望ましい。ステージ8物質の場合、これは、高分子量を有するため、臨床的にあまり望ましくなく、強いトシン酸の存在により、許容できない安定性プロファイルが生じる可能性がある。
【0016】
したがって、ステージ8およびステージ9物質の改善されたバージョンがさらに必要とされる。
【発明の概要】
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、マロン酸バルトリチニブが薬学的に許容される特性の良好なバランスを有し、少なくとも1つの不純物、例えば、アニリン不純物のレベルを低下させて商業規模で生成できることを見出した。
【0018】
有利なことに、本開示のバリチニブ塩は、結晶性であり、結晶形は針状ではなく、それは、良好な物理的および化学的安定性を有し、例えば、水和物を形成する傾向が低く、胃のpHで十分な溶解性を有する。対イオンと塩基の比率は1:1であり、これは複雑ではなく、塩の全体的な純度は一般に、現在のステージ9の遊離塩基とほぼ同じか、それ以上のレベルであるが、一般にアニリンおよび/またはチアゾリン不純物のレベルは低下している。
【0019】
したがって、現在主張されている塩は、高純度、高安定性を有し、商業規模で生成することができる。さらに、マロン酸塩はまた、式(I)の化合物の遊離塩基よりも濾過および取り扱いが容易であり得る。さらに、塩は、例えば、アニリン純度などの少なくとも1つの不純物のレベルが低下しているため、ヒトの療法に使用するのに安全であると考えられている。さらに、マロン酸塩から放出される遊離塩基は、以前は商業規模で除去することができなかったアニリン不純物の対応する低下したレベルを有する。遊離塩基のこのより純粋なバージョンは、治療薬として使用することができるか、または異なる薬学的に許容される塩に変換することができる。
【0020】
本発明は、以下の段落に要約される。
1.式(I)の化合物、
【化3】
またはその鏡像異性体の薬学的に許容される塩であって、マロン酸塩である、塩。
【0021】
2.式(I)の化合物が、以下である、段落1に記載の塩。
【化4】
【0022】
3.塩の純度が、例えば、HPLCまたは同様の技術によって分析し、面積/面積値(面積%)として表される場合、97%以上、例えば、97.5%、98%、98.5%、99%、または99.5%である、段落1または2のいずれか1つに記載の塩。
【0023】
4.塩が、例えば、HPLCまたは同様の技術によって分析され、面積/面積値として表される場合、0.1%以下のアニリン不純物C18H14ClN5OSを含有する、段落1~3のいずれか1つに記載の塩。
【0024】
5.アニリン不純物が、式(II)の構造を有する、段落4に記載の塩。
【化5】
【0025】
6.該アニリン不純物が、0.09%以下、例えば、0.08%、0.06%、0.05以下で存在する、段落4または5に記載の塩。
【0026】
7.該アニリン不純物が、0.04、0.03、0.02、0.01%以下、特に0.02%以下で存在する、段落6に記載の塩。
【0027】
8.例えば、HPLCまたは同様の技術によって分析され、面積/面積値(%面積)として表される場合、塩が、1.5%以下、例えば、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%以下のチアゾリン不純物C22H19ClN6OS2を含有する、段落1~7のいずれか1つに記載の塩。
【0028】
9.チアゾリン不純物が、式(III)の構造を有する、段落8に記載の塩。
【化6】
【0029】
10.段落1~9のいずれか1つに記載の塩を含む医薬組成物。
【0030】
11.1つ以上の単位用量、例えば、1つ以上の錠剤またはカプセルとして提供される、段落12に記載の医薬組成物。
【0031】
12.組成物が、経口投与用である、段落12または13に記載の医薬組成物。
【0032】
13.マロン酸塩によって提供される遊離塩基当量の用量が、100mg~900mg、例えば、200mg~500mgの範囲、特に200mg、300mg、または400mgである、段落12~14のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0033】
14.治療に使用するための、段落1~11のいずれか1つに記載の塩、または段落12~15のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0034】
15.癌、例えば、上皮癌の治療に使用するための、段落14に記載の塩または医薬組成物。
【0035】
16.段落1~11のいずれか1つに記載の塩、または段落12~15のいずれか1つに記載の組成物の治療有効量を投与することを含む治療の方法。
【0036】
17.治療が、癌に対するものである、段落18に記載の方法。
【0037】
18.癌の治療のための薬剤を製造するための、段落1~9のいずれか1つに記載の塩または段落10~13のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【0038】
19.式(I)の塩が、隔日で投与される、段落14~18のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0039】
20.療法がさらなる治療薬を含む、段落14~19のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0040】
21.さらなる治療薬が、抗癌剤である、段落20に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0041】
22.抗癌剤が、抗体分子などの生物学的治療薬である、段落20または21に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0042】
23.生物学的治療薬が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、EGFR阻害剤、HER阻害剤(HER-2阻害剤など)、抗CD20抗体分子、PARP阻害剤、RON阻害剤、抗CD30抗体、抗VEGF抗体、それらのうちのいずれか1つを含む多特異的な形態、およびそれらのうちのいずれか1つを含む抱合型を含む群から選択される抗体分子である、段落22に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0043】
24.さらなる治療薬が、化学療法剤またはその組み合わせである、段落14~23のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0044】
25.化学療法剤が、白金ベースの化学療法剤、フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、ラルチトレキセド、タキソールおよびそれらの誘導体、BGC945、OSI-7904L、FOLFOX、FOLFIRI、およびFOLFIRINOX、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、段落24に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0045】
26.白金ベースの化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、リポプラチン、およびそれらの組み合わせを含む群から選択され、特にシスプラチンである、段落25に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0046】
27.さらなる抗癌剤が、DHODH阻害剤である、段落14~26のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0047】
28.DHODH阻害剤が、以下から選択される、段落27に記載の塩、組成物、方法、または使用:テリフルノミド、レフルノミド、ブレキナール、アトバクオン、2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸(またはその薬学的に許容される塩、例えば、メグルミン塩などのWO2010/102826に開示されている塩)
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
式中、
R
3が、CF
2CF
3、CF
3、OCH
2CH
3、もしくはCH
2CH
3であり、
R
4が、F、CH
3、CF
3、SF
3、もしくはCLであり、または
それらのうちのいずれか1つの薬学的に許容される塩。
【0048】
29.さらなる治療薬が、小分子PARP阻害剤である、段落14~28のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0049】
30.癌患者を化学療法に対して感作する際に使用するための、段落14~29のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0050】
31.癌が、肝臓癌(肝細胞癌など)、胆道癌、乳癌(非ER+乳癌など)前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、骨癌、膀胱癌、頭頸部癌、甲状腺癌、皮膚癌、腎癌、および食道癌からなる群から選択される、段落14~30のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0051】
32.癌が、胃癌、肝細胞癌、および胆管癌、例えば、胆管癌からなる群から選択される、段落31に記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0052】
33.癌が、難治性であり、および/または化学療法などの少なくとも1つの癌療法に耐性がある、段落14~32のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0053】
34.癌が、HER陽性(HER1、HER2、HER3、および/またはHER4陽性など)またはHER増幅(HER1、HER2、HER3、および/またはHER4増幅など)である、段落14~33のいずれか1つに記載の塩、組成物、方法、または使用。
【0054】
35.遊離塩基として提供される、上記で定義された式(I)またはその鏡像異性体の医薬品有効成分(API)であって、例えば、HPLCまたは同様の技術によって分析され、面積/面積値(面積%)として表される場合、0.1%以下、例えば、0.09以下、0.08%以下、0.06%以下、0.05%以下のアニリン不純物C18H14ClN5OSを含む、医薬品有効成分(API)。
【0055】
36.化合物が、上記で定義された式(IA)のものである、段落35に記載のAPI。
【0056】
37.アニリン不純物が、上で定義された式(II)の構造を有する、段落35または36に記載のAPI。
【0057】
38.遊離塩基が、検出限界を超えて5つ以下、例えば、1、2、3、または4つの不純物を含む、段落35~37のいずれか1つに記載のAPI。
【0058】
39.遊離塩基が、例えば、HPLCまたは同様の手法で分析し、面積/面積値として表される場合、1.5%以下、例えば、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%以下のレベルでチアゾリン不純物C22H19ClN6OS2を含有する、段落35~38のいずれか1つに記載のAPI。
【0059】
40.チアゾリン不純物が、上記で定義された式(III)の構造を有する、段落39に記載のAPI。
【0060】
41.該チアゾリンが、0.75%以下、例えば、0.5%以下、特に0.4、0.3、0.2、0.1%以下で存在する、段落39または40に記載のAPI。
【0061】
42.少なくとも97%以上、例えば、97.5%、97.6、97.7、97.8、97.9、98.0、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99.0、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5%以上の純度を有する、段落35~41のいずれか1つに記載のAPI。
【0062】
43.段落35~42のいずれか1つに記載のAPIを含む医薬組成物。
【0063】
44.1つ以上の単位用量、例えば、1つ以上の錠剤またはカプセルとして提供される、段落43に記載の医薬組成物。
【0064】
45.組成物が、経口投与用である、段落43または44に記載の医薬組成物。
【0065】
46.遊離塩基の用量が、100mg~900mg、例えば、200mg~500mgの範囲、特に200mg、300mg、または400mgである、段落43~45のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0066】
47.治療に使用するための、段落35~42のいずれか1つに記載のAPIまたは段落43~46のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【0067】
48.癌、特に本明細書に開示される癌を治療する、例えば、癌患者を化学療法に対して感作する際に使用するための、段落47に記載のAPIまたは医薬組成物。
【0068】
49.段落35~42のいずれか1つに記載のAPIまたは段落43~46のいずれか1つに記載の組成物の治療有効量を投与することを含む治療の方法。
【0069】
50.治療が、癌、特に本明細書に開示される癌に対するものである、段落49に記載の方法。
【0070】
51.癌の治療のための薬剤を製造するための、段落35~42のいずれか1つに記載のAPIまたは段落43~46のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【0071】
52.式(I)のAPIが、隔日で投与される、段落35~51のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0072】
53.療法が、さらなる治療薬を含む、段落35~52のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0073】
54.さらなる治療薬が、抗癌剤である、段落53に記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0074】
55.抗癌剤が、抗体分子などの生物学的治療薬である、段落53または54に記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0075】
56.生物学的治療薬が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、EGFR阻害剤、HER阻害剤(HER-2阻害剤など)、抗CD20抗体分子、PARP阻害剤、RON阻害剤、抗CD30抗体、抗VEGF抗体、それらのうちのいずれか1つを含む多特異的な形態、およびそれらのうちのいずれか1つを含む抱合型を含む群から選択される抗体分子である、段落55に記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0076】
57.さらなる治療薬が、例えば、白金ベースの化学療法剤、ピリミジン類似体、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される化学療法剤またはそれらの組み合わせである、段落53~56のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0077】
58.化学療法剤が、白金ベースの化学療法剤、フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、ラルチトレキセド、タキソール、およびそれらの誘導体、BGC945、OSI-7904L、FOLFOX、FOLFIRI、およびFOLFIRINOX、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせを含む群から選択される、段落57に記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0078】
59.白金ベースの化学療法剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、リポプラチン、およびそれらの組み合わせを含む群から選択され、特にシスプラチンである、段落58に記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0079】
60.さらなる抗癌剤が、DHODH阻害剤である、段落53~59のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0080】
61.DHODH阻害剤が、上記の段落28に与えられたリストから選択される、段落60に記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0081】
62.さらなる治療薬が、小分子PARP阻害剤である、段落53~61のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0082】
63.癌患者を化学療法に対して感作する際に使用するための、段落35~62のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0083】
64.癌が、肝癌(肝細胞癌など)、胆道癌、乳癌(非ER+乳癌など)、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、骨癌、膀胱癌、頭頸部癌、甲状腺癌、皮膚癌、腎癌、食道からなる群から選択される、段落35~63のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0084】
65.癌が、胃癌、肝細胞癌、および胆管癌、例えば、胆管癌からなる群から選択される、段落64に記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0085】
66.癌が難治性であり、および/または化学療法などの少なくとも1つの癌療法に耐性がある、段落35~65のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0086】
67.癌が、HER陽性(HER1、HER2、HER3、および/またはHER4陽性など)であるか、またはHER増幅、段落35~66のいずれか1つに記載のAPI、組成物、方法、または使用。
【0087】
68.式(I)の化合物またはその鏡像異性体の遊離塩基を生成する方法であって、段落1~9のいずれか1つに記載の塩を少なくとも1つの溶媒に溶解し、続いて塩基を添加することを含む、方法。
【0088】
69.溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、塩化メチレン、二塩化エチル、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトニトリル:水、例えば、アセトン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、もしくはアセトニトリル:水を含むか、またはそれらからなる群から選択される、段落60に記載の方法。
【0089】
70.溶媒が、THFと水またはアセトンと水の組み合わせである、段落69に記載の方法。
【0090】
71.塩基が、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、水素化リチウム、水素化ナトリウム、および水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびカリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、またはトリエチルアミン、トリブチルアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)などの有機アミンを含むか、またはそれらからなる群から選択され、それは、好ましくは、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、アルカリ金属水素化物、またはアルカリ金属炭酸塩であり、最も好ましくは、4-(N、N-ジメチルアミノ)ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、水素化ナトリウム、カリウム炭酸塩、および炭酸セシウムである、段落68~70のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
72.段落68~71のいずれか1つに記載の方法によって得られる遊離塩基。
【0092】
一態様では、患者を化学療法に対して感作する際に使用するための、本開示によるマロン酸塩、組成物、または使用が提供される。
【0093】
一実施形態では、癌は、HER陽性(例えば、HER1陽性、HER2陽性、HER3陽性、HER4陽性、HER1およびHER2陽性、HER1およびHER3陽性、HER1およびHER4陽性、HER2およびHER3陽性、HER2およびHER4陽性、HER1、HER2およびHER3陽性、HER1、HER2およびHER4陽性、HER2、HER3およびHER4陽性、HER1、HER2、HER3およびHER4陽性)またはHER増幅(HER1および/またはHER2および/またはHER3および/またはHER4増幅など)である。
【0094】
独立した態様として、本明細書に開示される新規多形形態、それらを含む医薬製剤組成物、および治療、特に本明細書に開示される癌などの癌の治療におけるそれらのうちのいずれか1つの使用も提供される。
【0095】
一態様では、多形形態は、
図1に示される無水アルファ形態であり、例えば、9.2±0.2、10.35±0.2、16.25±0.2、18.6±0.2、18.6±0.2、任意に20.0±0.2にて、粉末回折パターンで少なくともX線(2-シータ値)を呈する(特に、Cu Kalpha放射線を使用して測定した場合)(R)-N4-[3-クロロ-4-(チアゾール-2-イルメトキシ)-フェニル]-N6-(4-メチル-4,5、-ジヒドロ-オキサゾール-2-イル)-キナゾリン-4,6-ジアミン(バリチニブ)である。
【0096】
【0097】
一態様では、上述の塩を製造するためのプロセスが提供され、それは、遊離塩基の形態の式(I)の化合物またはその鏡像異性体(バリチニブなど)をマロン酸と、好適な溶媒または2つ以上の溶媒の混合物の存在下で混合することを含む。
【0098】
一実施形態では、粗ステージ物質(粗ステージ7物質など)を使用して、本開示による塩を作製する。これは、現在の製造プロセスのうちの2つのステップを取り除くため有利である。
【0099】
一実施形態では、ステージ9の遊離塩基を使用して、本開示による塩を作製する。
【0100】
一実施形態では、プロセスは、式(I)の化合物またはその鏡像異性体を溶媒に溶解する前に、式(I)の化合物またはその鏡像異性体(バリチニブなど)を乾燥させることをさらに含む。
【0101】
一実施形態では、この方法は、例えば、溶解-結晶化-冷却プロセスによって塩を単離することをさらに含む。
【0102】
一実施形態では、塩は、4時間サイクルで1~40℃の範囲の温度サイクルによって単離される。
【0103】
一実施形態では、温度サイクルは、24時間以上実施される。
【0104】
一実施形態では、冷却/加熱速度は、1℃/分である。
【0105】
一実施形態では、プロセスで使用される溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、塩化メチレン、二塩化エチル、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、ジイソプロピルエーテル、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0106】
一実施形態では、プロセスで使用される溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、塩化メチレン、二塩化エチル、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトニトリル:水からなる群から選択され、例えば、アセトン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、またはアセトニトリルである。
【0107】
一実施形態では、溶媒は、アセトン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトニトリル:水からなる群から選択され、例えば、THFである。
【0108】
一実施形態では、溶媒は、THFと水の組み合わせである。
【0109】
一実施形態では、溶媒は、アセトンと水の組み合わせである。
【0110】
一実施形態では、溶媒は、アセトンである。
【0111】
一実施形態では、溶媒は、極性非プロトン性溶媒、例えば、テトラヒドロフランであり、特に溶媒は、無水形態で使用される。
【0112】
一実施形態では、式(I)の化合物またはその鏡像異性体は、10~15容量の溶媒、例えば、12容量の溶媒に溶解され、1Kgあたりのリットルとして表される(例えば、1Kgの固体は、10リットルの溶媒を必要とする)。
【0113】
一実施形態では、使用されるマロン酸の量は、使用される溶媒の量と質量(例えば、gまたはKg)が同等である。
【0114】
一実施形態では、1以上のモル当量、例えば、1、1.1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、2.75、または3モル当量としてのマロン酸が遊離塩基に添加される。
【0115】
一実施形態では、プロセスは、例えば、塩を少なくとも1つの溶媒に溶解し、続いて塩基を添加することによって、マロン酸塩を遊離塩基に変換するステップをさらに含む。
【0116】
一実施形態では、プロセスは、医薬組成物としてマロン酸塩またはそれに由来する遊離塩基を製剤化することを含む。
【0117】
一実施形態では、本開示による遊離塩基または塩が医薬組成物として提供される。
【0118】
一態様では、本開示による方法によって得られるマロン酸塩、遊離塩基、または薬学的に許容される塩が提供される。
【0119】
本発明者らは、驚くべきことに、遊離塩基をマロン酸塩に変換し、次にマロン酸塩を遊離塩基に戻すことにより、特定の不純物を、ジトシル酸塩などの塩では不可能な方法で低減できることを見出した。これにより、マロン酸塩またはそれに由来する遊離塩基または後者に由来する塩の形態の薬学的有効成分(API)を、望ましい不純物プロファイルを備えた商業規模(実験室規模ではなく)で調製することができる。
【0120】
したがって、一態様では、0.1%、0.09%、0.08%、0.06%、0.05%以下のアニリン不純物、例えば、C18H14CLN5OSを含む、遊離塩基として提供される、上記で定義された式(I)またはその鏡像異性体の医薬品有効成分(API)が提供される。
【0121】
一実施形態では、API(製造の最終段階での遊離塩基または塩)は、HPLCなどの分取液体クロマトグラフィーに供されていない。
【0122】
有利なことに、APIが商業規模で調製される場合、それは、改善された純度プロファイルを有する。不純物を除去することも、安定性プロファイルの改善に寄与する可能性がある。
【0123】
一実施形態では、化合物は、上記で定義された式(IA)を有する。
【0124】
一実施形態では、遊離塩基は、約483の分子量を有するチアゾリン不純物を含む。
【0125】
一実施形態では、チアゾリン不純物は、C22H19ClN6OS2である。
【0126】
一実施形態では、チアゾリン不純物は、上記で定義された式(III)の構造を有する。
【0127】
一実施形態では、該チアゾリン不純物は、1.5%w/w以下、例えば、1%w/w以下、例えば、0.9%w/w以下、0.8%w/w以下、または0.7%w/w以下、特に0.6%w/w以下で存在する。
【0128】
一実施形態では、該チアゾリンは、0.75%w/w以下、例えば、0.5%w/w以下、特に0.4、0.3、0.2、0.1%w/w以下で存在する。
【0129】
一実施形態では、APIは、少なくとも97%w/w、例えば、97.5%、97.6、97.7、97.8、97.9、98.0、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99.0、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5%w/w以上の純度を有する。
【0130】
一態様では、本明細書のようなAPIまたはそれに由来する塩を含む医薬組成物が提供される。
【0131】
一実施形態では、医薬組成物は、1つ以上の単位用量として提供される。
【0132】
一実施形態では、医薬組成物は、経口投与用である。
【0133】
一実施形態では、遊離塩基の用量は、100mg~900mg、例えば、200mg~500mgの範囲、特に200mg、300mg、または400mgである。
【0134】
一態様では、治療に使用するため、例えば、癌患者を化学療法に対して感作する際に使用するためなど、癌を治療するために使用するための、本明細書に記載されるAPI、それに由来する塩、またはそれらのうちの任意の1つを含む医薬組成物が提供される。
【0135】
一態様では、本明細書に記載のAPIまたは組成物の治療有効量を投与することを含む治療の方法が提供される。
【0136】
一実施形態では、治療の方法での使用のため、特に癌の治療のため、例えば、癌患者を化学療法に対して感作する際に使用するためなどに関して、API、それに由来する塩、またはそれらのうちのいずれか1つを含む医薬組成物が提供され、その方法は、治療効果量を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0137】
一態様では、癌の治療のための薬剤を製造するための、本明細書に記載されるAPI、それに由来する塩、またはそれらのうちのいずれか1つを含む組成物の使用が提供される。
【0138】
一実施形態では、API、それに由来する塩、またはそれらのいずれか1つを含む組成物は、隔日で投与される。
【0139】
一実施形態では、API療法は、さらなる治療薬を含む。
【0140】
式(I)の化合物に関して本明細書に記載される治療法および使用は、本開示のAPIに等しく適用される。
【0141】
一態様では、式(I)の化合物またはその鏡像異性体の遊離塩基を生成する方法が提供され、これは、上記のような塩を少なくとも1つの溶媒に溶解し、続いて塩基を添加することを含む。
【0142】
一実施形態では、プロセスで使用される溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、塩化メチレン、二塩化エチル、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、ジイソプロピルエーテル、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0143】
一実施形態では、溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、塩化メチレン、二塩化エチル、クロロホルム、四塩化炭素、アセトン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、およびアセトニトリル:水、例えば、アセトン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、またはアセトン:水からなる群から選択される。
【0144】
一実施形態では、溶媒は、極性非プロトン性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、特に無水で使用される溶媒である。
【0145】
一実施形態では、溶媒は、THF、水、およびエタノールの組み合わせである。
【0146】
一実施形態では、塩基は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、水素化リチウム、水素化ナトリウム、および水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびカリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、またはトリエチルアミン、トリブチルアミン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]ノン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)などの有機アミンを含む群から選択され、それは、好ましくは4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、水素化ナトリウム、カリウム炭酸塩、および炭酸セシウムである。
【0147】
一態様では、上記の方法によって得られる遊離塩基が提供される。
【0148】
一実施形態では、本開示による、バリチニブなどの式(I)の化合物のマロン酸塩または遊離塩基(APIを含む)、それに由来する塩、またはその医薬組成物は、例えば、さらなるHER阻害剤、例えば、式(I)の化合物(バリチニブなど)およびハーセプチン(トラスツズマブ)および/またはペルツズマブとの組み合わせとの併用療法で使用される。驚くべきことに、バリチニブとハーセプチンの組み合わせは、どちらかの実体単独よりも多くの治療活性を示す。
【0149】
一実施形態では、組み合わせには、アド-トラスツズマブ-エムタンシンおよびマロン酸塩、バリチニブなどの式(I)の化合物の遊離塩基(APIを含む)、またはそれに由来する薬学的に許容される塩、またはそれらのうちのいずれか1つを含むその医薬組成物が含まれる。
【0150】
HER阻害剤のこれらの組み合わせは、化学療法剤、例えば、本明細書に開示される化学療法剤とともに使用することができる。
【0151】
適切な用量のバリチニブは、HER1、HER2、およびHER4を直接阻害することが可能であり、HER3を間接的に阻害することが可能であると考えられている。
【0152】
一実施形態では、マロン酸塩、またはバリチニブなどの式(I)の化合物の遊離塩基(APIを含む)、それに由来する薬学的に許容される塩、またはそれらのうちのいずれか1つの医薬組成物は、少なくともHER1およびHER2、HER1およびHER4、またはHER2およびHER4の活性を阻害する。
【0153】
一実施形態では、バリチニブなどの式(I)の化合物の塩または遊離塩基(APIを含む)、またはその医薬組成物は、少なくともHER1、HER2、および/またはHER4の活性を阻害し、例えば、HER1、HER2、および/またはHER4の活性を直接阻害する。
【0154】
一実施形態では、バリチニブなどの式(I)の化合物の塩または遊離塩基(APIを含む)、またはその医薬組成物は、HER1、HER2、HER3、およびHER4の活性を阻害し、例えば、HER1、HER2、およびHER4の活性を直接阻害し、HER3の活性を間接的に阻害する。
【0155】
一実施形態では、本開示によるマロン酸塩、バリチニブなどの式(I)の化合物の遊離塩基(APIを含む)、それに由来する薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物は、28日の治療サイクルで投与される。
【0156】
一実施形態では、標的患者集団は、EGFRおよびHER2陽性であるか、またはHER2増幅である。
【0157】
一実施形態では、本開示の治療は、HER阻害が有効である非上皮癌に対して投与される。
【0158】
一実施形態では、本開示の治療は、例えば、段落31に記載されているような上皮癌、例えば、胃癌に対して投与される。一実施形態では、上皮癌は、癌腫である。
【0159】
一実施形態では、癌は、肝細胞癌、胆管癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、および食道癌を含む群から選択される。
【0160】
一実施形態では、胆管癌は、肝内胆管、左肝管、右肝管、総肝管、胆嚢管、総胆管、ファーター膨大部、およびそれらの組み合わせから選択される場所にある。
【0161】
一実施形態では、胆管癌は、肝内胆管にある。一実施形態では、胆管癌は、左肝管にある。一実施形態では、胆管癌は、右肝管にある。一実施形態では、胆管癌は、総肝管にある。一実施形態では、胆管癌は、胆嚢管にある。一実施形態では、胆管癌は、総胆管にある。一実施形態では、胆管癌は、ファーター膨大部にある。
【0162】
一実施形態では、本開示による併用療法などの療法は、例えば、手術後のアジュバント療法である。
【0163】
一実施形態では、本開示による併用療法などの療法は、例えば、手術前に腫瘍を縮小するためのネオアジュバント治療である。
【0164】
一実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。一実施形態では、癌は、原発性癌、続発性癌、転移、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、本開示による治療は、続発性腫瘍の治療に好適である。一実施形態では、癌は、転移性癌である。一実施形態では、本開示による治療は、原発性癌および転移の治療に好適である。一実施形態では、本開示による治療は、続発性癌および転移の治療に好適である。一実施形態では、本開示による治療は、原発性癌、続発性癌、および転移の治療に好適である。
【0165】
一実施形態では、本開示による治療は、リンパ節内の癌性細胞、例えば、本開示の癌の治療に好適である。
【0166】
一実施形態では、肝臓癌は、原発性肝臓癌である。一実施形態では、肝臓癌は、続発性肝臓癌である。一実施形態では、肝臓癌は、病期1、2、3A、3B、3C、4A、または4Bである。
【0167】
一実施形態では、胃癌は、病期0、I、II、III、またはIVである。
【0168】
一実施形態では、バリチニブは、例えば、本開示の併用療法の後、例えば、200mg、300mg、または400mgなどの100mg~500mgの範囲の用量で1日1回または2回投与される単剤療法として継続される。
【0169】
一実施形態では、単剤療法は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60か月以上の間投与される。
【0170】
一実施形態では、患者はヒトである。
【0171】
詳細な開示
本明細書における式(I)の化合物への言及は、他に示されない限り、式(IA)の化合物を含む。
【0172】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」は、治療法、特にヒトの療法での使用に好適な塩形態を指す。
【0173】
薬学的に許容される塩の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、およびリチウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩、アンモニウム塩、t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン、塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-N-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、およびトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン塩などのアミン塩、リシン塩、オルニチン塩、およびアルギニン塩などのアミノ酸塩、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、およびヨウ化水素酸塩などのハロゲン化物酸性塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、およびマレイン酸塩などのカルボン酸塩、またはグルタミン酸およびアスパラギン酸などのアミノ酸塩が含まれるが、これらに限定されず、それは、好ましくは、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、ハロゲン化物酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、またはアミノ酸塩であり、より好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、テトラメチルアンモニウム塩、リジン塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、オルニチン酸性塩、グルタミン酸塩、またはアスパラギン酸塩である。
【0174】
一実施形態では、塩は、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、2-5-ジヒドロキシ安息香酸、エタンジスルホン酸、フマル酸、ガラタリック酸(galataric acid)、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、1,5-ナフテレンジスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、およびDL-酒石酸からなる群から選択される酸、例えば、アジピン酸、ガラタリック酸(galataric acid)、マレイン酸、またはマロン酸から生成される。したがって、一実施形態では、酸は、マロン酸である。
【0175】
一実施形態では、薬学的に許容される塩には、HClおよびHBr塩などの強ミネラル酸の酸付加塩、およびメタンスルホン酸塩、トシレート、フロエートなど、ジトシレートなどの、それらのジ、トリの塩を含む、強有機酸の付加塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
使用することができる薬剤的に許容できる塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、および硫酸塩などの鉱酸塩、または酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、および安息香酸塩などの有機酸の塩が含まれる。
【0177】
本明細書で使用される「マロン酸塩」は、一般に、マロン酸の添加から形成される酸付加塩を指す。したがって、本開示の文脈におけるマロン酸塩は、マロン酸からの対イオンが存在する、式(I)の化合物、特にバリチニブを指す。
【0178】
本明細書で使用されるその鏡像異性体は、1つの立体異性体が他の立体異性体を超えて提供され、1つの立体異性体が少なくとも70%の鏡像異性体過剰率(ee)、例えば、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%eeで提供される。
【0179】
本開示の文脈における遊離塩基は、例えば、対イオンを含まない、例えば、脱プロトン化アミンの形態の、バリチニブなどの式(I)の化合物を指す。遊離塩基は、実際には溶液中でのみ利用可能である。遊離塩基が固体の物理的形態である場合、水素対イオンが塩基と結合し、分子の全体的な電荷がゼロになる。遊離塩基という用語は、一般に、対イオンを含まない非溶解形態の分子を含むために当技術分野で使用される。本明細書は、当技術分野で一般的に使用されているのと同じ方法で遊離塩基という用語を使用し、したがって、分子のすべての物理的形態を含む。
【0180】
別段の文脈で示されない限り、本明細書で使用される「それに由来する塩」は、式(I)、特にバリチニブの遊離塩基から作製された塩を指し、それは、本開示のマロン酸塩から遊離されているため、本明細書で論じられるより高いレベルの純度を有する。その遊離塩基から作製された薬学的に許容される塩は、以前に可能であったよりも純粋が高く、したがって、それが作製された遊離塩基の新規で有益な特性を有する。
【0181】
本明細書で使用される薬学的に許容される成分(API)は、例えば、実験室ではなく製造工場で商業規模で作製された、治療用の活性医薬剤を指す。工場規模で異なる機器およびプロセスが使用され、これは、場合により、化合物を作製するために利用できる合成経路を制限する。APIは通常、1つのバッチで少なくとも0.5Kg、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25kgの規模で作製される。実験室規模では、通常、0.5kgを作製するためにいくつかのバッチを組み合わせる必要がある。一実施形態では、APIは、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100kgなど、50kg以上の規模で作製される。
【0182】
実験室で小規模に作製された物質は、通常「化合物」と呼ばれる。対照的に、本明細書で使用される「API」は、臨床試験または商業販売のための活物質を供給するために使用される、商業的製造経路によって作製される化合物を指すために使用される用語である。
【0183】
本明細書で使用されているAPIには、実験室規模での調製は含まれていない。
【0184】
APIは、HPLCまたはLCMSなどの高速液体クロマトグラフィーによって精製されない。
【0185】
本明細書で使用される活性医薬成分または薬剤は、薬理学的効果、特に、有効な薬理学的効果を提供する化合物を指す。
【0186】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩への変換は、従来の方法で、例えば、化合物を適切な酸で処理して、酸付加塩を形成することによって行うことができる。これは、例えば、好適な酸を加える前に、化合物を適切な溶媒または溶媒の混合物に溶解することによって実施することができる。任意選択で、式(I)の化合物またはその鏡像異性体を乾燥させて、水または残留溶媒を除去してから、それを溶媒に溶解する。
【0187】
したがって、本開示は、薬学的に許容される塩を製造する方法を提供するし、それは、式(I)の化合物またはその鏡像異性体を少なくとも1つの溶媒に溶解し、続いて、例えば、マロン酸を添加することを含む。
【0188】
次に、生成された塩は、当業者に知られている、大規模API製造に共通の任意の適切な方法および乾燥装置を使用することによって単離することができる。例えば、温度サイクルを使用して塩を乾燥させることによる。真空トレイ乾燥機、ロトコン真空乾燥機、真空パドル乾燥機、またはパイロットプラントのローター蒸気を使用して、残留溶媒をさらに低減することができる。
【0189】
一実施形態では、乾燥は、大気圧または減圧、例えば、約200mmHg未満、または約50mmHg未満で、約35℃~約70℃などの温度で実施される。約1~20時間など、必要な結果が得られる任意の所望の期間実行することができる。乾燥は、製品の仕様に応じて、より短い時間またはより長い時間実行することもできる。温度および圧力は、使用されている溶媒の揮発性に基づいて選択され、前述のことは、一般的なガイダンスとしてのみ考慮されるべきである。乾燥は、トレイ乾燥機、真空オーブン、空気オーブンで、または流動床乾燥機、スピンフラッシュ乾燥機、フラッシュ乾燥機などを使用して好適に実施することができる。乾燥装置の選択は、十分に当業者の範囲内である。
【0190】
当業者は、塩を生成するための他の方法を知っているであろう。
【0191】
本明細書で使用される「高純度」は、少なくとも95%、例えば、95.5%、96.0%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、または100%の純度を有することを指す。
【0192】
一実施形態では、本開示の塩、特にマロン酸塩は、好適な安定性を有する。
【0193】
これは、不純物のレベルを下げると、ある特定の合成分解の原因および経路が削除される可能性があるからかもしれない。
【0194】
以下は、バリチニブなどの式(I)の化合物の最終形態に存在し得る不純物である。
【化8】
【化9】
【0195】
上記に開示された化合物式(II)アニリン、およびチアゾリン(上記に開示された式(III)の化合物)。
【0196】
本明細書で使用される「好適な安定性」は、少なくとも1週間、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間保存された場合に変化のいかなる有意な兆候も示さない塩を指す。一実施形態では、マロン酸塩(またはそれに由来する遊離塩基)は、40℃/75%の相対湿度で少なくとも1週間保存された場合、変化のいかなる有意な兆候も示さない。一実施形態では、マロン酸塩(またはそれに由来する遊離塩基)は、少なくとも1週間保存され、周囲光に曝された場合、変化のいかなる有意な兆候も示さない。一実施形態では、マロン酸塩(遊離塩基またはそれに由来する塩)は、80℃で少なくとも1週間保存された場合、変化のいかなる有意な兆候も示さない。一実施形態では、高い安定性は、マロン酸塩、API遊離塩基、またはそれらに由来する薬学的に許容される塩を、特に周囲温度で、18ヶ月など少なくとも12ヶ月、特に2年間保存する能力を指す。
【0197】
式(I)の化合物またはその鏡像異性体のマロネート塩、特にバリチニブの、式(I)の化合物またはその鏡像異性体の遊離塩基への変換は、従来の方法で、例えば、塩を溶媒に溶解し、続いて塩基を添加して、本開示の塩を化合物式(I)の遊離塩基に変換することによって行うことができる。
【0198】
一態様では、式(I)の化合物またはその鏡像異性体の遊離塩基を生成する方法が提供され、それは、式(I)の化合物の塩またはその鏡像異性体を溶媒に溶解し、続いて塩基を添加することを含む。
【0199】
一実施形態では、遊離塩基は、医薬品の酸付加塩を塩基性溶液(例えば、有機/水性共溶媒中の水酸化ナトリウム)に溶解することによって調製することができる。追加の塩基を添加して、酸付加塩が実質的に遊離塩基に変換されることを確実にすることができる。
【0200】
一実施形態では、遊離塩基は、式(I)の化合物またはその鏡像異性体の塩をTHF、エタナオール、および水の混合物に溶解することによって調製される。
【0201】
別の実施形態では、水とアセトンを組み合わせて、水性有機共溶媒を形成し、次いで、これを使用して塩を溶解することができる。次に、共溶媒系は、例えば、有機または無機塩基性化合物の溶液を共溶媒系に添加することによって、弱塩基を使用して塩基性化される。塩基が添加されている間、酸添加塩は、遊離塩基に変換される。
【0202】
一実施形態では、有機遊離塩基は有機溶媒によって完全に溶解され、水は官能性酸を溶解し、得られる溶液は、水性有機溶媒に完全に溶解した有機遊離塩基を含む。
【0203】
一実施形態では、溶媒系内の水は、溶媒が厳密に有機である場合よりも処理温度を高くすることを可能にする。
【0204】
バリチニブは、単剤療法として使用される場合、有意な抗癌活性を有する。しかしながら、患者がバリチニブの非存在下で化学療法に反応しなかった場合でさえ、バルリチニブが併用療法、特に化学療法で使用されると、効力の増加が観察される。理論に拘束されることを望まないが、バリチニブの投与は、耐性または難治性の患者において、化学療法の治療活性の少なくとも一部を回復させるようである。
【0205】
一実施形態では、本開示による式(I)の化合物は、患者をプラチンおよび/またはピリミジン類似体に対して感作する。
【0206】
一実施形態では、化学感作は、MATE1および/またはMATE2の阻害を介する。
【0207】
一実施形態では、化学感作は、ABCG2の阻害を介する。
【0208】
本明細書で使用される「化学療法に対する感作」は単に、式(I)の化合物と化学療法との組み合わせが、単独で使用される一方または両方の治療法と比較して効力が増加したという事実を指す。本開示による感作治療は、化学療法などの治療に対して主に耐性を有する患者に使用することができる。本開示による感作治療は、化学療法などの治療に対して二次耐性を有する患者に使用することができる。本開示による感作治療は、耐性となることを回避しようとして、耐性を示さなかった患者に使用することができる。
【0209】
したがって、一実施形態では、本明細書で使用されるように化学療法に対して癌患者を感作することは、癌細胞を化学療法の治療/殺傷効果および/もしくはバリチニブなどの式(I)の化合物に対して、または相互に両方の治療法に対して、式(I)の化合物で治療されていない「同じ」癌細胞と比較して、より感受性にすることを指す。
【0210】
化学療法に対する感作の利点を得るには、式(I)の化合物および化学療法の薬理学的効果が重複する、つまり、該治療法の治療レジメンが時間内に部分的に一致する時間枠内で化学療法を投与しなければならない。当業者は、これが何を意味するかを実際に理解するであろう。
【0211】
本明細書で使用される「併用療法の投与」は、組み合わせで使用される療法が同時に投与されることを必要としない。
【0212】
本明細書で使用される併用療法は、同じ治療期間にわたって使用される2つ以上の療法の様式、すなわち、連続療法の反対を指す。
【0213】
本明細書で使用される2つ以上の療法の様式は、異なる作用様式および/または異なる活性および/または異なる投与経路を有する少なくとも2つの療法を指す。
【0214】
他に示された文脈が別の方法で示されない限り、難治性および耐性は、癌が療法に反応しないか、または療法に対して十分に反応しない場合を指すために本明細書で交換可能に使用される。
【0215】
場合によっては、患者は、初期用量を1日2回300mgまたは200mgに減らすことで恩恵を受けることがある。
【0216】
他の患者は、非連続的なレジームで、例えば、毎日ではなく1日置きに薬を服用するか、または薬を4日連続で服用し、続いて1、2、または3日間服用せずに、バリチニブなどの式(I)の化合物を受けることで恩恵を受けることがある。
【0217】
一実施形態では、式(I)の化合物の塩または遊離塩基は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬製剤または組成物として投与される。
【0218】
一実施形態では、式(I)の化合物の塩もしくは遊離塩基(APIを含む)またはその医薬組成物は、例えば、錠剤またはカプセルとして経口投与される。
【0219】
一実施形態では、式(I)の化合物の塩もしくは遊離塩基またはその医薬組成物の治療レジメンは、化学療法が開始される前に開始され、少なくとも化学療法が開始されるまで継続され、特に少なくとも化学療法の間継続される。
【0220】
一実施形態では、式(I)の化合物の塩または遊離塩基(APIを含む)の治療レジームは、化学療法の開始と同時に開始され、少なくとも化学療法の間継続される。
【0221】
したがって、一実施形態では、式(I)の化合物の塩または遊離塩基(APIを含む)および化学療法は、同じ日に投与される。
【0222】
したがって、式(I)の化合物の遊離塩基の塩(APIを含む)の薬理学的効果および化学療法は、式(I)の化合物の効果が、癌細胞を化学療法に対してより感受性にすることができる場合、そのように感受性にしない場合と比較して、患者において重複する。
【0223】
一実施形態では、化学療法は、細胞毒性化学療法である。
【0224】
一実施形態では、本開示による併用療法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、例えば開示されたWO2008/058229のようなRON阻害剤を含む。
【0225】
一実施形態では、併用療法は、CTLA4阻害剤、PD-1阻害剤、またはPD-L1阻害剤などのチェックポイント阻害剤、特に抗体またはその結合フラグメントを含む。
【0226】
HER2の発現または過剰発現を評価するための分析試験は既知であり、当技術分野で利用可能である。
【0227】
癌
本明細書で使用される肝臓癌は、肝臓の癌、例えば、線維層状癌、胆管癌、血管肉腫、および肝芽腫を含む肝細胞癌を指す。
【0228】
本明細書で使用される胃癌は、胃の癌、例えば、扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、消化管間質腫瘍、または神経内分泌腫瘍を指す。
【0229】
本明細書で使用される前立腺癌は、前立腺の癌、例えば、腺管腺癌、移行上皮癌(尿路上皮癌)、扁平上皮癌、前立腺のカルチノイド、小細胞癌、または肉腫および肉腫様癌を指す。
【0230】
本明細書で使用される膵臓癌には、外分泌癌(嚢胞性腫瘍などのその稀な形態、および腺房細胞の癌を含む)、内分泌膵臓腫瘍(胃腫、インスリノーマ、ソマトスタチノーマ、ビポーマ、グルカゴノーマを含む)、膵芽細胞腫、膵臓の肉腫、およびリンパ腫が含まれる。
【0231】
本明細書で使用される胆道癌は、胆管癌(肝内、肝外)、胆嚢癌、および膨大部癌を指す。
【0232】
一実施形態では、現在開示されている薬学的に許容される塩は、胆管癌の治療に使用するために提供される。
【0233】
本明細書で使用される結腸直腸癌は、癌または結腸および/または直腸を指し、扁平上皮癌、カルチノイド腫瘍、肉腫、およびリンパ腫を含む。
【0234】
本明細書で使用される乳癌は、乳房の癌を指し、インサイチュでの乳管癌、インサイチュでの小葉癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉乳癌、浸潤性乳癌、パジェット病、乳癌の血管肉腫、ならびに稀な種類の乳癌、例えば、髄質乳癌、粘液性乳癌、尿細管乳癌、乳房の腺様嚢胞癌、転移性乳癌、基底型乳癌、および乳頭状乳癌を含む。
【0235】
本明細書で使用される卵巣癌は、卵巣の癌を指し、重篤な、類内膜、明細胞、粘液性、未分化または未分類、胚芽、ならびに他の稀な卵巣腫瘍、例えば、卵巣の奇形腫(成熟奇形腫および未熟奇形腫)、および境界性卵巣腫瘍を含む。上皮性卵巣癌は、重篤な、類内膜、明細胞、粘液性、および未分化または未分類である。
【0236】
卵巣癌には30種類以上あり、それらは、それらが発生する細胞の種類に応じて分類される。癌性卵巣腫瘍は、3つの一般的な細胞型から発生する可能性がある。
・表面上皮-卵巣の内層を覆う細胞
・胚細胞-卵子を形成することになる細胞、および
・間質細胞-ホルモンを放出し、卵巣の異なる構造をつなぐ細胞。
【0237】
本開示は、例えば、本明細書に記載されるような任意の発生源、特に上皮細胞からの卵巣癌の治療に関する。上皮性卵巣癌(EOC)は、卵巣のすべての癌の85~90パーセントを占める。
【0238】
一般的な上皮性腫瘍-上皮性卵巣腫瘍は、卵巣の外表面を覆う細胞から発生する。ほとんどの上皮性卵巣腫瘍は、良性(非癌性)である。漿液性腺腫、粘液性腺腫、およびブレンナー腫瘍を含む、いくつかの種類の良性上皮腫瘍がある。癌性上皮腫瘍は、癌腫であり、それらは、卵巣の内側を覆う組織で発生することを意味する。これらは、すべての種類の卵巣癌の中で最も一般的で最も危険である。残念ながら、一般的な上皮性卵巣癌の女性のほぼ70%は、病気が段階的に進行するまで診断されない。
【0239】
顕微鏡下での外観が腫瘍を癌性であると明確に識別しない卵巣上皮腫瘍がいくつかある。これらは、境界腫瘍または低悪性度の腫瘍(LMP腫瘍)と呼ばれる。本開示の方法は、後者の治療を含む。
【0240】
胚細胞腫瘍-卵巣胚細胞腫瘍は、卵子または卵を産生する細胞から発生する。ほとんどの胚細胞腫瘍は、良性(非癌性)であるが、癌性で生命を脅かし得るものもある。最も一般的な胚細胞の悪性腫瘍は、成熟奇形腫、胚芽細胞腫、および内胚葉洞腫瘍である。胚細胞の悪性腫瘍は、10代の若者および20代の女性に最も頻繁に生じる。今日、卵巣胚細胞の悪性腫瘍の患者の90%は治癒し、生殖能力を維持することができる。
【0241】
間質腫瘍-卵巣間質腫瘍は、卵巣をまとめる結合組織細胞、ならびに女性ホルモンであるエストロゲンおよびプロゲステロンを産生するそれらから発生する稀なクラスの腫瘍である。最も一般的な種類は、顆粒膜細胞腫およびセルトリライディッヒ細胞腫瘍である。これらの腫瘍は、非常に稀であり、通常は低悪性度癌と見なされ、約70%が病期Iの疾患として現れる(癌は、片方または両方の卵巣に限定される)。
【0242】
原発性腹膜癌-卵巣を切除することで卵巣癌のリスクは排除されるが、原発性腹膜癌と呼ばれるあまり一般的ではない癌のリスクは排除されない。原発性腹膜癌は、上皮性卵巣癌(最も一般的な種類)と密接に評価される。それは、腹膜(腹部の内層)からの細胞で発生し、顕微鏡で同じように見える。それは、症状、広がり、および治療において類似している。
【0243】
卵巣癌の病期
卵巣癌と診断されたら、医師が、癌が卵巣の外に広がっているかどうかを見分けることができる場合、手術中に腫瘍の病期を決定することができる。卵巣癌には、4つの病期、病期I(早期疾患)~病期IV(進行性疾患)がある。治療計画および予後(病気の予想される経過および結果)が癌の病期によって決定される。
【0244】
一実施形態では、卵巣癌は、I型、例えば、IA、IB、もしくはIC、タイプII、例えば、IIA、IIB、もしくはIIC、III型、例えば、IIIA、IIIB、もしくはIIIC、またはIV型。
【0245】
本開示は、特に本明細書に記載されるような、いかなる病期の卵巣癌の治療に関する。
【0246】
肺癌は、組織型によって分類され、組織病理学者が顕微鏡で観察した悪性細胞のサイズおよび外観によって分類される。治療目的のために、2つの広いクラスが、非小細胞肺癌と小細胞肺癌とに区別される。
【0247】
一実施形態では、上皮癌は、肺癌、例えば、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0248】
非小細胞肺癌-NSCLCの3つの主要なサブタイプは、腺癌、扁平上皮癌、および大細胞癌である。
【0249】
肺癌の約40%は腺癌であり、通常は、末梢肺組織に発生する。腺癌のサブタイプである気管支肺胞癌は、女性の非喫煙者に多く見られ、長期生存率が高い可能性がある。
【0250】
扁平上皮癌は、肺癌の約30%を占める。それらは、典型的には、大きな気道の近くで発生する。中空の空洞および関連する細胞死は、一般的に、腫瘍の中心に見られる。肺癌の約9%は、大細胞癌である。これらは、癌細胞が大きく、細胞質が過剰で、核が大きく、核小体が目立つことから、このように名付けられた。
【0251】
小細胞肺癌-小細胞肺癌(SCLC)では、細胞は、高密度の神経分泌顆粒(神経内分泌ホルモンを含有する小胞)を含有し、これは、この腫瘍に内分泌/腫瘍随伴症候群の関連性を与える。ほとんどの場合、より大きな気道(一次および二次気管支)で発生する。これらの癌は、急速に成長し、病気の初期に広がる。60~70%が診察時に転移性疾患を有する。
【0252】
一実施形態では、癌は、非小細胞肺癌である。
【0253】
一実施形態では、本明細書に開示される腫瘍溶解性アデノウイルスを使用する、腎癌、例えば、腎細胞癌、および/または尿路上皮細胞癌の治療が提供される。腎癌の他の例には、扁平上皮癌、傍糸球体細胞腫瘍(腎腫)、血管筋脂肪腫、腎腫瘍細胞腫、ベリーニ管癌、腎臓の明細胞肉腫、中胚葉性腎腫、ウィルムス腫瘍、混合上皮間質腫瘍、明細胞腺癌、移行上皮癌、逆乳頭腫、腎リンパ腫、奇形腫、癌肉腫、および腎骨盤の癌様腫瘍が含まれる。
【0254】
一実施形態では、癌は膀胱癌であり、例えば、膀胱の上皮内層(すなわち、尿路上皮)から生じるいくつかの種類の悪性腫瘍のいずれかである。膀胱癌の約90%は、移行上皮癌である。他の10%は、扁平上皮癌、腺癌、肉腫、小細胞癌、および体の他の場所の癌からの二次沈着物である。の病期を以下に示す。
【0255】
T(原発腫瘍)-TX原発腫瘍は評価できない;T0原発腫瘍の証拠がない;Ta非浸潤性乳頭癌;Tis上皮内癌(「扁平腫瘍」);T1腫瘍が上皮下結合組織に浸潤する;T2a腫瘍が表在筋(内側半分)に浸潤する;T2b腫瘍が深部の筋肉(外側半分)に浸潤する;T3腫瘍が蠕動組織に浸潤する;T3a微視的に;T3b肉眼的に(膀胱外腫瘤);T4a腫瘍が前立腺、子宮、または膣に浸潤する;T4b腫瘍が骨盤壁または腹壁に浸潤する
【0256】
N(リンパ節)-NX局所リンパ節は評価できない;N0局所リンパ節転移なし;N1最大寸法が2cm以下の単一リンパ節における転移;N2最大寸法が2cmを超え5cm以下の単一リンパ節、または最大寸法が5cm以下の複数のリンパ節における転移;N3最大寸法が5cmを超えるリンパ節における転移
【0257】
M(遠隔転移)-MX遠隔転移は評価できない;M0遠隔転移なし;M1遠隔転移。
【0258】
本明細書で使用される甲状腺癌は、濾胞性または濾胞傍甲状腺細胞に由来する甲状腺の癌を指し、乳頭状甲状腺癌(症例の75%~85%)、濾胞性甲状腺癌(症例の10%~20%)、甲状腺髄様癌(症例の5%~8%)であって、多くの場合、多発性内分泌腺腫症2型の一部である濾胞傍細胞の癌、分化度の低い甲状腺癌、治療に反応せず、圧迫症状引き起こす可能性がある未分化甲状腺癌(症例の5%未満)、甲状腺リンパ腫、扁平上皮細胞甲状腺癌、甲状腺の肉腫を含む。
【0259】
本明細書で使用される腎癌は、腎臓の癌、例えば、腎細胞癌および腎盂の移行上皮癌、例えば、扁平上皮癌、傍糸球体細胞腫瘍(腎腫)、血管筋脂肪腫、腎腫瘍細胞腫、腹管癌、腎臓の明細胞肉腫、中胚葉性腎腫、ウィルムス腫瘍、混合上皮間質腫瘍、明細胞腺癌、移行上皮癌、逆乳頭腫、腎リンパ腫、奇形腫、癌肉腫、腎盂のカルチノイド腫瘍を指す。
【0260】
本明細書で使用される膀胱癌は、移行上皮癌、上皮内癌、乳頭癌、ならびに扁平上皮癌および腺癌などのより稀な種類の膀胱癌を含む膀胱の癌を指す。
【0261】
本明細書で使用される食道癌は、食道扁平上皮癌、食道腺癌、および扁平上皮癌の変異体を含む食道の癌、ならびにとりわけ平滑筋肉腫、悪性黒色腫、横紋筋肉腫、リンパ腫などの非上皮性腫瘍を指す。
【0262】
本明細書で使用される頭頸部癌は、口癌、鼻咽頭癌、中咽頭癌、副鼻腔癌、および唾液腺癌を含む、首および/または頭の癌を指す。
【0263】
化学療法剤
化学療法剤(chemotherapeutic agent)および化学療法剤(chemotherapy agent)または細胞毒性剤は、文脈がそうではないことを示さない限り、本明細書で互換的に使用される。
【0264】
本明細書で使用される化学療法は、悪性細胞および組織を「選択的に」破壊する特定の抗新生物化学薬剤または薬物、例えば、アルキル化剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤を含む代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイドを含む抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、parp阻害剤、および他の抗腫瘍剤を指す。もちろん、これらの剤の多くには深刻な副作用があるため、この文脈では選択的に大まかに使用される。
【0265】
好ましい用量は、治療されている癌の性質に基づいて、担当医によって選択され得る。
【0266】
一実施形態では、本開示の療法は、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素、テトラジン、アジリジン、プラチンおよび誘導体、ならびに非古典的アルキル化剤を含む。
【0267】
一実施形態では、本開示の療法は、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、およびリポプラチン(シスプラチンのリポソーム版)、特にシスプラチン、カルボプラチン、およびオキサリプラチンなどの白金含有化学療法剤(プラチンとも呼ばれる)を含む。
【0268】
シスプラチンの用量は、正確な癌に応じて、約20~約270mg/m2の範囲である。多くの場合、用量は約70~約100mg/m2の範囲である。
【0269】
一実施形態では、本開示の療法は、ナイトロジェンマスタード、例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、およびブスルファンを含む。
【0270】
一実施形態では、本開示の療法は、ニトロソ尿素、例えば、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、およびセムスチン(MeCCNU)、フォテムスチン、およびストレプトゾトシンを含む。テトラジンには、ダカルバジン、ミトゾロミド、テモゾロミドが含まれる。
【0271】
一実施形態では、本開示の療法は、アジリジン、例えば、チオテパ、ミトマイシン、およびジアジクオン(AZQ)を含む。
【0272】
一実施形態では、本開示の療法は、代謝拮抗剤、例えば、抗葉酸剤(例えば、メトトレキサートおよびペメトレキセド)、プリン類似体(例えば、チオプリン、例えば、アザチオプリン、メルカプトプリン、チオプリン、フルダラビン(リン酸塩形態を含む)、ペントスタチンおよびクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、フルオロピリミジン、例えば、5-フルオロウラシルおよびそのプロドラッグ、例えば、カペシタビン[Xeloda(登録商標)])、フロクスウリジン、ゲムシタビン、シタラビン、デシタビン、ラルチトレキセド(トムデックス)塩酸塩、クラドリビン、ならびに6-アザウラシルを含む。
【0273】
一実施形態では、本開示の療法は、ピリミジン類似体、例えば、5-フルオロウラシルおよびそのプロドラッグ、例えば、カペシタビン[Xeloda(登録商標)])、フロクスウリジン、ゲムシタビン、シタラビン、デシタビン、塩酸ラルチトレキセド(トムデックス)、クラドリビン、ならびに6-アザウラシルなどのそのプロドラッグを含む。
【0274】
一実施形態では、本開示の療法は、アントラサイクリン、例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ダウノルビシン(リポソーム)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ドキソルビシン(リポソーム)、エピルビシン、イダルビシン、現在膀胱癌を治療するために使用されるバルルビシン、およびミトキサントロン、アントラサイクリン類似体、特にドキソルビシンを含む。
【0275】
一実施形態では、本開示の療法は、抗微小管剤、例えば、ビンカアルカロイドおよびタキサンを含む。
【0276】
一実施形態では、本開示の療法は、ビンカアルカロイド、例えば、完全に天然の化学物質、例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、ならびに半合成ビンカアルカロイド、例えば、ビノレルビン、ビンデシン、およびビンフルニンを含む。
【0277】
一実施形態では、本開示の療法は、タキサン、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、カルバジタキセル、およびそれらの誘導体を含む。本明細書で使用されるタキサンの誘導体には、例えば、ミセル処方におけるタキソールのようなタキサンの再製剤化が含まれ、誘導体には、タキサンである出発物質を修飾するために合成化学が使用される化学誘導体も含まれる。
【0278】
一実施形態では、本開示の療法は、トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、I型トポイソメラーゼ阻害剤、II型トポイソメラーゼ阻害剤、およびII型トポイソメラーゼ毒を含む。I型阻害剤には、トポテカン、イリノテカン、インドテカン、およびインジミテカンが含まれる。II型阻害剤には、ゲニステインとICRF193が含まれ、ICRF193の構造は次のとおりである:
【化10】
【0279】
II型の毒には、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、およびドキソルビシン、およびフルオロキノロンが含まれる。
【0280】
一実施形態では、化学療法剤はPARP阻害剤である。
【0281】
併用療法
一実施形態では、化学療法は、化学療法剤、特に、細胞毒性化学療法剤の組み合わせ、例えば、ピリミジン類似およびプラチンを含む。
【0282】
一実施形態では、使用される化学療法剤の組み合わせは、例えば、プラチンと5-FUまたはそのプロドラッグ、例えば、シスプラチンまたはオキサプラチンとカペシタビンまたはゲムシタビン、例えばFOLFOXである。
【0283】
一実施形態では、化学療法の組み合わせは、シスプラチンなどのプラチン、およびフルオロウラシルまたはカペシタビンを含む。
【0284】
一実施形態では、カペシタビンとオキサリプラチン(Xelox)の化学療法の組み合わせ。
【0285】
一実施形態では、化学療法は、場合によりオキサリプラチンと組み合わせた、フォリン酸と5-FUの組み合わせである。
【0286】
一実施形態では、化学療法は、場合によりオキサリプラチン(FOLFIRINOX)と組み合わせた、フォリン酸、5-FUおよびイリノテカン(FOLFIRI)の組み合わせである。レジメンは、以下から構成される:イリノテカン(90分にわたって180mg/m2のIV)、同時に、フォリン酸(120分にわたって400mg/m2[または2x250mg/m2]のIV);続いて、フルオロウラシル(400~500mg/m2のIVボーラス)、次いで、フルオロウラシル(46時間にわたって2400~3000mg/m2の静脈内注入)。通常、このサイクルは2週間ごとに繰り返される。上記の投与量は、サイクルごとに変動し得る。
【0287】
一実施形態では、化学療法の組み合わせは、微小管阻害剤、例えば、硫酸ビンクリスチン、エポチロンA、N-[2-[(4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-3-ピリジニル]-4-メトキシベンゼンスルホンアミド(ABT-751)、タキソール由来化学療法剤、例えば、パクリタキセル、アブラキサン、またはドセタキセルまたはそれらの組み合わせを利用する。
【0288】
一実施形態では、化学療法の組み合わせなどの本開示による療法は、mTor阻害剤を含む。mTor阻害剤の例には、エベロリムス(RAD001)、WYE-354、KU-0063794、パパマイシン(シロリムス)、テムシロリムス、デフォロリムス(MK-8669)、AZD8055、およびBEZ235(NVP-BEZ235)が含まれる。
【0289】
一実施形態では、化学療法の組み合わせなどの本開示による療法は、MEK阻害剤を含む。MEK阻害剤の例には、AS703026、CI-1040(PD184352)、AZD6244(セルメチニブ)、PD318088、PD0325901、AZD8330、PD98059、U0126-EtOH、BIX02189またはBIX02188が含まれる。
【0290】
一実施形態では、化学療法の組み合わせなどの本開示による療法は、AKT阻害剤を含む。AKT阻害剤の例には、MK-2206およびAT7867が含まれる。
【0291】
一実施形態では、併用療法は、オーロラキナーゼ阻害剤を含む。オーロラキナーゼ阻害剤の例には、オーロラA阻害剤I、VX-680、AZD1152-HQPA(バラセルチブ)、SNS-314メシレート、PHA-680632、ZM-447439、CCT129202およびヘスペラジンが含まれる。
【0292】
一実施形態では、化学療法の組み合わせなどの本開示による療法は、例えば、WO2010/038086に開示されているp38阻害剤、例えば、N-[4-({4-[3-(3-tert-ブチル-1-p-トリル-1H-ピラゾール-5-イル)ウレイド]ナフタレン-1-イルオキシ}メチル)ピリジン-2-イル]-2-メトキシアセトアミドを使用する。
【0293】
一実施形態では、この組み合わせは、Bcl-2阻害剤を利用する。Bcl-2阻害剤の例には、オバトクラックスメシル酸塩、ABT-737、ABT-263(ナビトクラックス)、およびTW-37が含まれる。
【0294】
一実施形態では、化学療法の組み合わせなどの本開示による療法は、代謝拮抗剤、例えば、カペシタビン(ゼローダ)、リン酸フルダラビン、フルダラビン(フルダラ)、デシタビン、ラルチトレキセド(トムデックス)、ゲムシタビン塩酸塩、およびクラドリビンを含む。
【0295】
一実施形態では、化学療法の組み合わせはなどの本開示による療法は、ガンシクロビルを含み、これは、免疫応答および/または腫瘍血管形成の制御の際に支援する可能性がある。
【0296】
一実施形態では、化学療法などの本開示による療法は、PARP阻害剤を含む。
【0297】
一実施形態では、化学療法などの本開示による療法は、DHODH酵素の活性の特異的阻害を伴う癌代謝の阻害剤を含む。
【0298】
一実施形態では、本明細書の方法で使用される1つ以上の療法はメトロノーム療法、すなわち低用量の抗癌薬による連続的または頻繁な治療であり、他の治療法と同時に行われることが多い。
【0299】
一実施形態では、例えば、2、3、4、5、6、7、8回などの複数サイクルの治療(化学療法など)の使用が提供される。
【0300】
一実施形態では、化学療法は28日間のサイクルで使用される。
【0301】
医薬組成物/製剤
別の態様では、本開示は、本開示の薬学的に許容される塩およびその薬学的に許容される担体および/または希釈剤、ならびに必要に応じて他の有効成分を含む医薬組成物を提供し、それらは、経口、血管内、皮下、筋肉内、または局所的に、それを必要とする哺乳動物における抗凝固剤としての使用のために投与することができる。
【0302】
本発明はまた、医薬または診断組成物の調製のプロセスを提供し、それは、本発明の塩または遊離塩基を薬剤的に許容できる賦形剤、希釈剤、または担体の1つ以上と一緒に添加および混合することを含む。
【0303】
本開示の塩または遊離塩基は、医薬または診断用組成物中の唯一の有効成分であり得るか、または上記のようなさらなる化学療法剤などの他の有効成分を伴うことができる。
【0304】
医薬組成物は、好適には、治療上有効量の本発明の分子を含む。本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、標的とする疾患または状態を治療、改善または予防するために、あるいは検出可能な治療または予防効果を発揮するために必要な治療薬の量を指す。治療有効量は、細胞培養アッセイまたは動物モデル、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、または霊長類のいずれかにおいて最初に推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するためにも使用され得る。次いで、そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0305】
ヒト対象についての正確な治療有効量は、病状の重篤度、対象の一般的な健康状態、対象の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性と治療に対する耐性/反応に依存するであろう。この量は、日常的な実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。医薬組成物は、投与量あたり所定量の本発明の活性剤を含有する単位剤形で都合よく提示され得る。
【0306】
組成物は、患者に個別に投与され得るか、または他の薬剤、薬物、もしくはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、連続的に、または別々に)投与され得る。
【0307】
本発明の塩または遊離塩基が投与される用量は、治療されるべき状態の性質、例えば、存在する病気/炎症の程度、および分子が予防的に使用されているか、または既存の状態を治療するために使用されているかに依存する。
【0308】
治療組成物中の薬学的に許容される担体により、患者による摂取のために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、および懸濁剤として製剤化することが可能になり得る。
【0309】
投与のための好適な形態としては、例えば、注射または注入による、例えば、ボーラス注射または持続注入による、非経口投与に好適な形態が挙げられる。
【0310】
製剤化されたら、本発明の組成物を対象に直接投与することができる。治療されるべき対象は、動物であり得る。しかしながら、1つ以上の実施形態では、組成物は、ヒトの対象への投与に適合されている。
【0311】
本発明の医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄腔内、脳室内、経皮、経皮性(例えば、WO98/20734参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、膣内、または直腸経路を含むがこれらに限定されない、様々な経路で投与することができる。
【0312】
皮下噴射器も本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる。典型的には、治療用組成物は注射剤として、液剤または懸濁剤として調製することができる。注射前に液体ビヒクルに溶解または懸濁させるのに好適な固体形態(例えば、凍結乾燥形態)も調製することができる。
【0313】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内で達成されるか、または組織の間質腔に送達される。組成物は病巣に投与することもできる。投薬治療は、単回投与計画または複数回投与計画であり得る。
【0314】
組成物中の活性成分は、化学分子であることが理解されるであろう。そのため、それは、胃腸管における分解を受けやすい可能性がある。したがって、組成物が胃腸管を使用する経路によって投与される場合、組成物は、結合タンパク質を分解から保護するが、それが胃腸管から吸収されると分子を放出する薬剤を含有する必要があるだろう。
【0315】
薬剤的に許容できる担体の徹底的な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,N.J.1991)を利用できる。
【0316】
一実施形態では、製剤は、吸入を含む局所投与用の製剤として提供される。
【0317】
好適な吸入用製剤には、吸入用粉末、噴射剤ガスを含有する計量エアロゾル、または噴射剤ガスを含まない吸入用溶液が含まれる。
【0318】
これらの吸入用粉末は、単糖類(例えば、グルコースまたはアラビノース)、二糖類(例えば、ラクトース、サッカロース、マルトース)、オリゴ糖類および多糖類(例えば、デキストラン)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)、またはこれらの互いとの混合物を含み得る。単糖類または二糖類、特にラクトースまたはグルコースの使用が適切に用いられるが、それらの水和物の形態で使用されることはない。
【0319】
吸入可能なエアロゾルを調製するために使用され得る噴射剤ガスは当該分野で公知である。好適な噴射剤ガスは、n-プロパン、n-ブタンまたはイソブタンなどの炭化水素、ならびにメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンまたはシクロブタンの塩素化および/またはフッ素化誘導体などのハロ炭化水素の中から選択される。上記の噴射剤ガスは、それ自体でまたはそれらの混合物で使用することができる。特に好適な噴射剤ガスは、TG11、TG12、TG134aおよびTG227の中から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)およびTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)およびそれらの混合物が特に適している。
【0320】
噴射剤ガス含有吸入用エアロゾルはまた、共溶媒、安定剤、界面活性剤(界面活性物質)、酸化防止剤、潤滑剤およびpHを調整するための手段などの他の成分を含有し得る。これらすべての成分は当該分野において既知である。
【0321】
本発明による噴射剤ガス含有吸入用エアロゾルは、5重量%までの活性物質を含有することができる。本発明によるエアロゾルは、例えば、0.002~5重量%、0.01~3重量%、0.015~2重量%、0.1~2重量%、0.5~2重量%、または0.5~1重量%の有効成分を含有する。
【0322】
あるいは、肺への局所投与は、例えばネブライザー、例えばコンプレッサーに接続されたネブライザー(例えば、Pari Respiratory Equipment,Inc.,Richmond,Va.によって製造されたPari Master(登録商標)コンプレッサーに接続されたthe Pari LC-Jet Plus(登録商標)ネブライザー)のような装置を用いて、溶液または懸濁液製剤の投与によることもできる。
【0323】
治療用懸濁液または溶液製剤はまた、1つ以上の賦形剤を含有し得る。賦形剤は当該分野において既知であり、緩衝液(例えば、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸塩緩衝液および重炭酸塩緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールを含む。溶液または懸濁液は、リポソームまたは生分解性ミクロスフェアに封入することができる。製剤は一般に、無菌製造方法を用いて実質的に無菌の形態で提供されるであろう。
【0324】
本開示による噴霧可能製剤は、例えば、ホイルエンベロープに詰められた単回投与単位(例えば、密封プラスチック容器またはバイアル)として提供されてもよい。各バイアルは、例えば2mL容量の溶媒/溶液緩衝液中に単位用量を含む。
【0325】
本明細書の文脈における「含む(comprising)」は、「含める(including)」を意味することが意図される。技術的に適切な場合には、本発明の実施形態を組み合わせることができる。
【0326】
本明細書では、特定の特徴/要素を含む実施形態が説明される。本開示はまた、該特徴/要素からなるまたは本質的になる別個の実施形態にも及ぶ。
特許および出願などの技術的参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0327】
本明細書に具体的かつ明示的に列挙されたいかなる実施形態も、単独で、または1つ以上のさらなる実施形態と組み合わせてのいずれかで、免責条項の原則を形成し得る。
【0328】
本明細書に明示的に開示される実施形態は、技術的に適切なものとして組み合わせることができる。
【0329】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれ、訂正を行うための基礎として使用され得る、2018年10月9日に出願されたシンガポール出願10201808900Xからの優先権を主張する。
【0330】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明するが、これらの実施例は単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0331】
【
図1】バリチニブのX線粉末回折(XRPD)分析の結果を示すグラフ
【
図2】バリチニブの熱重量分析(TG/DTA)の分析の結果を示すグラフ
【
図4】一次塩スクリーニングからのXRPD分析結果を表示す
【
図5】マロン酸の一次塩スクリーニングデータの結果を示すグラフ
【
図6】偏光レンズおよび非偏光レンズを使用して撮影したバリチニブのマロン酸塩のPLM分析画像(A)アセトンから、および(B)THFから
【
図7】バリチニブのマロン酸塩のXRPD分析の結果を示すグラフ
【
図8】偏光レンズおよび非偏光レンズを使用して撮影したバリチニブのマロン酸塩のPLM分析画像
【
図9】バリチニブのマロン酸塩のTG/DTA分析の結果を示すグラフ
【
図10】バリチニブのマロン酸塩のDSC分析の結果を示すグラフ
【
図11】バリチニブのマロン酸塩のDVS分析の結果を示すグラフ
【
図12】バリチニブのマロン酸塩のDVS XRPD後分析の結果を示すグラフ
【
図13】バリチニブのマロン酸塩のNMR分析の結果を示すグラフ
【
図14】バリチニブのマロン酸塩のHPLCによる純度分析の結果を示すグラフ
【
図15】バリチニブのマロン酸塩の貯蔵試験の結果を示すグラフ
【
図16】バリチニブのマロン酸塩の水和試験の結果を示すグラフ
【
図17】バリチニブのマロン酸塩の不均化試験の結果を示すグラフ
【
図18】バリチニブのマロン酸塩の熱力学的溶解度分析の結果を示すグラフ
【
図19】バリチニブのマロン酸塩の水溶性分析の結果を示すグラフ
【
図20】バリチニブのマロン酸塩の純度分析の結果を示すグラフ。黒い線は、バリチニブの純度を示す。灰色の線は、含水量%を示す。
【実施例】
【0332】
実施例1-使用した実験手法
X線粉末回折(XRPD)
XRPD分析は、Siemens D5000で実行し、3~30°の2-シータで試料をスキャンした。試料を試料ホルダーに挿入されたガラスディスク上で穏やかに圧縮した。次に、試料を反射モードで動作するSiemens D5000回折計に装填し、次の実験条件を使用して分析した。
【表1】
【0333】
偏光顕微鏡(PLM)
結晶化度(複屈折)の存在は、Moticカメラおよび画像キャプチャソフトウェア(Motic Images Plus2.0)を備えたOlympus BX50偏光顕微鏡を使用して決定した。特に明記しない限り、すべての画像は、20倍の対物レンズを使用して記録した。
【0334】
熱重量分析(TGA)
約5mgの物質を、開いたアルミニウムパンに正確に量り入れ、同時熱重量分析/示差熱分析装置(TG/DTA)に装填し、室温で保持した。次に、試料を10℃/分の速度で25℃~30時間に加熱し、試料重量の変化をいかなる示差熱イベント(DTA)とともに記録した。窒素を100cm3/分の流速で、パージガスとして使用した。
【0335】
示差走査熱量測定(DSC)
約5mgの物質をアルミニウムDSCパンに量り入れ、穴の開いたアルミニウム蓋で非密閉的に密封した。次に、試料パンをSeiko DSC6200(クーラーを装備)に装填した。試料および参照物を10℃/分のスキャン速度で約220℃に加熱し、得られた熱流応答を監視した。
【0336】
1H核磁気共鳴(1H-NMR)
1H-NMR実験をBruker AV400(周波数:400MHz)で実行した。各試料の1H実験は、重水素化DMSOで実行し、各試料は、約10mMの濃度に調製した。
【0337】
赤外分光法(IR)
赤外線分光法は、Bruker ALPHA P分光計で実行した。十分な物質を分光計のプレートの中央に配置し、以下のパラメーターを使用してスペクトルを取得した。
【表2】
【0338】
動的蒸気収着(DVS)
約10mgの試料をメッシュ蒸気収着バランスパンに入れ、Surface Measurement SystemsによるDVS-1動的蒸気収着バランスに装填した。試料を、安定した重量が達成されるまで(99.5%のステップ完了)、各ステップで試料を維持しながら、10%刻みで20~90%の相対湿度(RH)の傾斜プロファイルに供した。収着サイクルの完了後、同じ手順を使用して試料を乾燥させたが、0%の相対湿度まで乾燥させ、最後に20%の相対湿度の開始点に戻した。収着/脱着サイクル中の重量変化をプロットし、試料の吸湿性を測定できるようにした。
【0339】
カールフィッシャー電量滴定(KF)
約10~15mgの固形物質を正確にバイアルに量り入れた。次に、固体をMettler Toledo C30コンパクト滴定装置の滴定セルに手動で導入した。固形物を添加した後、バイアルを逆計量し、添加した固形物の重量を機器に入力した。試料がセル中で完全に溶解してから、滴定を開始した。含水量は、機器によってパーセンテージとして自動的に計算され、データが印刷された。
【0340】
高速液体クロマトグラフィー-紫外線検出(HPLC-UV)
以下に詳述する方法およびカラムは、Array Biopharmaから提供された。
【表3】
【0341】
表1に示される以下の勾配プログラムを使用した。
【表4】
【0342】
実施例2-一次塩スクリーニングの方法論
塩スクリーニングのためのバリチニブの調製
バリチニブを約80℃に設定した真空オーブンに入れ、約75mbarで最低3時間乾燥させた。この方法は、乾燥した物質の分析により無水α型を調製することが確認され、その結果を以下に示す。
【0343】
プロジェクト全体で使用されたすべての溶媒は、分子篩(3A、0.4~0.8mmのビーズ)を使用して乾燥させた。
【0344】
対イオンおよび溶媒の選択
スクリー二ングに使用した対イオンおよび溶媒をそれぞれ表2および表3に示す。
【表5】
【表6】
【0345】
塩スクリーニング実験の調製
各対イオンおよび溶媒(6つの溶媒の各々において、16の対イオンおよび1つの空白行)に関して、約25mgの乾燥バリチニブを300μlの割り当てられた溶媒中でスラリー化し、同等の質量の酸と混合し、これも割り当てられた溶媒に溶解した。酸が選択した溶媒に不溶性の場合は、代わりにスラリーを使用した。
【0346】
温度サイクリング
調製した乾燥バリチニブ/対イオン/溶媒の混合物を、最低24時間の4時間サイクルで40℃まで温度サイクルした(4時間経過後の冷却/加熱速度は、約1℃/分であった)。存在するいかなる固体をも単離し、分析前に周囲条件で乾燥させた。
【0347】
実施例3-二次塩スクリーニングの方法論
塩形態のスケールアップ
選択された各対イオンについて、約300mgのASLAN001(実施例2で説明したように乾燥)を12倍量の選択された溶媒中でスラリー化し、同等の質量の酸と混合し、これも選択された溶媒に溶解した。酸が選択した溶媒に不溶性の場合は、スラリーを使用した。
次に、乾燥したASLAN001/対イオン/溶媒の混合物を、室温と40℃の間で約4日間温度サイクル(4時間サイクル)した。
【0348】
表4は、二次スクリーニング用に選択された対イオンおよび溶媒システムを示す。
【表7】
【0349】
安定性テスト
各々の潜在的な塩を40℃/75%の相対湿度、高温(80℃)、および周囲光(密閉バイアル内で約22℃)に1週間曝して、安定性を決定した。得られた固形物をXRPDで分析して、いかなる変化があったかどうかを確証した。
【0350】
塩不均化試験
各潜在的な塩を室温(約22℃)の水中でスラリー化し、1、24、および48時間で過剰な固形物を採取し、XRPDによって分析した。上澄みのpHも監視した。
【0351】
水和試験
各潜在的な塩のスラリーをアセトン:水の混合物(3、5、および10%の水)で作成し、約48時間振とうした。次に、得られた固体をXRPDによって分析して、スラリー化にいかなる変化があったかどうかを決定した。
【0352】
熱力学的溶解度
各潜在的な塩のスラリーを、pH1、4.5、および6.8の培地で作成し、約48時間振とうした。次に、得られた溶液をHPLCによって分析し、溶解した物質の濃度を計算した。残りの固形物をXRPDによって分析して、スラリー化にいかなる変化があったかどうかを決定した。
【0353】
水溶性
各潜在的な塩のスラリーを脱イオン水中で作成し、室温で4時間および24時間攪拌した。4時間および24時間の両方の後、得られた溶液をHPLCによって分析し、溶解した物質の濃度を計算した。残りの固形物をXRPDによって分析して、スラリー化にいかなる変化があったかどうかを決定した。
【0354】
実施例4-乾燥したバリチニブの分析結果
・XRPD分析(
図1)は、バリチニブが一水和物とは異なる結晶形であり、無水α形と一致していることを示す。
・KF分析は、物質の含水量が0.85%であると示した。
・TGAは、120℃以下で0.5%の初期損失を示し、分解の開始は、約230℃で発生した。
・NMRトレースを
図3に示す。
【0355】
実施例5-一次塩スクリーニングの結果
乾燥バリチニブで実施された一次塩スクリーニングで得られた固形物のXRPDに基づく結果が
図4Bに示され、これは、一次塩スクリー二ングのXRPD分析結果を示す。
【0356】
一次塩スクリーニングの結果に基づいて、以下の対イオンを有する9つの潜在的な塩が識別された。
・アジピン酸
・フマル酸(おそらく3つの形態)
・ガラクタル酸
・マレイン酸
・マロン酸
・コハク酸(おそらく3つの形態)
・ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、および酒石酸も潜在的な塩を示したが、データが弱かった。
【0357】
二次スクリーニング用にスケールアップするために、4つの潜在的な塩を選択した。選択された対イオンおよび溶媒を以下の表5に示す。
【表8】
【0358】
実施例6-二次塩スクリーニングの結果
実施例6A アジピン酸塩
実施例3に詳述された手順を使用して、アジピン酸塩を酢酸エチル中で調製した。
・XRPD分析は、物質が結晶性であり、一次スクリーニング中に生成されたものと同じ形態であることを示す。
・NMR分析により、塩の形成およびAPI:酸の比率が1:0.9であることが確認された。
・HPLCによる純度分析は、97.12%の純度を示し、これは、出発物質の純度(97.82%)よりわずかに低かった。
・TG/DTAは、<150℃で0.5%の重量損失を示し、約160℃で分解が始まる。
・DSC分析は、<150℃の熱イベントを示さなかった。153.9℃でイベントが観察されたが、これは潜在的に分解の開始によるものである。
・KF分析は、物質が0.7%の水を含有していたことを示した。
・DVS分析は、物質が20~70%の相対湿度で0.27%の水を、全体で0.42%の水を吸収することを示した。DVS後のXRPDによって分析した場合、固体形態への変化は、観察されなかった。
・保管試験は、周囲光、40℃/75%の相対湿度、および80℃の3つの種類の保管すべてにおいて、物質が変化しないままであることを示した。
・塩不均化試験は、約48時間後に水中でスラリー化するとアジピン酸塩の形態が変化する可能性があることを示した。
・水和試験(すなわち、アセトン:水(3、5、および10%の水)中のスラリー)は、スラリー化後に物質が変化したことを示し、潜在的な水和リスクを示している。
・熱力学的溶解度の結果は、以下のとおりである。
・pH1 1.2613mg/ml
・pH4.5 0.0022mg/ml
・pH6.8<4.45x10-4mg/ml
【0359】
XRPDによりpH1およびpH4.5から固体形態の変化が観察され、潜在的な塩の形成を示している。
・水溶解度の結果は、以下を示した。
・4時間で0.1525mg/ml
・24時間で0.3573mg/ml
【0360】
固形物質は、スラリー化後も変化しないままであることが観察された。
【0361】
実施例6B ムケート塩(不安定)
実施例3に詳述された手順を使用して、ムケート塩を酢酸エチル中で調製した。
・XRPD分析は、物質が結晶性であり、一次スクリーニング中に生成されたものと同じ形態であることを示す。
・NMR分析により、塩の形成が確認され、API:酸の比率が1:1.26であることが示された。
・HPLCによる純度分析は、98.67%の純度を示し、出発物質の純度(97.82%)よりも高かった。
・TG/DTAは、おそらく未結合の溶媒または水が原因で、<150℃で5.7%の重量損失を示した。結果は、KF分析と一致していない。約160℃での分解の開始。
・DSC分析は、TGAによって観察された損失と一致する<150℃の広い吸熱を示す。
157.5℃でイベントが観察されたが、これは潜在的に分解の開始によるものである。
・KF分析は、物質が3.8%の水を含有していたことを示した。
・DVS分析は、物質が3.7%の初期含水量を有し、20~70%の相対湿度で1.58%、全体で2.25%の水を吸収することを示した。その後のXRPD分析は、高レベルの湿度に曝された後の形態の変化を示した。
・保管試験は、保管条件の各々において物質が変化しないままであることを示した。
・塩不均化試験は、水中で1時間および24時間スラリー化した後、XRPD回折図において遊離酸の存在を示した。ただし、48時間後、対イオンの存在は減少した。
・水和試験(すなわち、アセトン:水の混合物(3、5、および10%水)中のスラリー)は、塩が不均化しており、各XRPD回折図において対イオンが明確に存在することを示した。
・熱力学的溶解度の結果は、以下を示した。
・pH1 0.7856mg/ml
・pH4.5<4.45x10-4mg/ml
・pH6.8<4.45x10-4mg/ml
【0362】
XRPDによりpH1およびpH4.5から固体形態の変化が観察され、潜在的な塩の形成を示している。
・水溶解度の結果は、以下のとおりである。
・4時間で0.0556mg/ml
・24時間で0.0337mg/ml
【0363】
固体物質は不均化しているように見え、4時間後および24時間後の両方で対イオンが明らかに存在していた。
【0364】
不均化は、特定の種類のレドックス反応であり、反応からの元素が酸化および還元の両方を受けて、2つの異なる生成物を形成する。
【0365】
実施例6C マレイン酸塩(低純度)
実施例3に詳述された手順を使用して、マレイン酸塩をアセトン中で調製した。
・XRPD分析は、物質が結晶性であり、一次スクリーニング中に生成されたものと同じ形態であることを示す。
・NMR分析により、塩の形成が確認され、API:酸の比率は、1:1であった。
・HPLCによる純度分析は、93.75%の純度を示し、出発物質の純度(97.82%)よりも低かった。
・TG/DTAは、おそらく未結合の溶媒または水が原因で、<150℃で3.7%の重量損失を示す。結果は、KF分析と一致していない。分解の開始は、約150℃で観察された。
・DSC分析は、TGAによって観察された損失と一致する<150℃の広い吸熱を示した。分解の開始時に観察されるイベント。
・KF分析は、物質が1.8%の水を含有していたことを示した。
・DVS分析は、物質が2.6%の初期含水量を有し、20~70%の相対湿度で1.95%、全体で2.84%の水を吸収することを示した。XRPDによって分析すると、物質は、様々な相対湿度%に曝されている間、変化しないままであることが観察された。
・保管試験は、周囲光、40℃/75%の相対湿度、および80℃の3つの種類の保管すべてにおいて、物質が変化しないままであることを示した。
・塩不均化試験は、1時間および24時間の水中でのスラリー化でマレイン酸塩の形態に変化がないことを示した。48時間後、物質は、主に非結晶質であることが観察された。
・水和試験(すなわち、アセトン:水の混合物(3、5、および10%の水)中のスラリー)は、物質がスラリー化後も変化しないままであることを示し、水和リスクが低いことを示している。
・熱力学的溶解度の結果は、以下を示した。
・pH1 1.2138mg/ml
・pH4.5 0.0036mg/ml
・pH6.8<4.45x10-4mg/ml
【0366】
XRPDによりpH1およびpH4.5から固体形態の変化が観察され、潜在的な塩の形成を示している。
・水溶解度の結果は、以下を示した。
・4時間で0.2570mg/ml
・24時間で0.4089mg/ml
【0367】
固体物質は、スラリー化後も変化しないままであることが見られ、非結晶質含有量の増加の可能性がある。
【0368】
実施例6D マロン酸塩(良好な安定性および良好な純度)
実施例3に詳述された手順を使用して、マロン酸塩をアセトン中で調製した。結果は、
図7~19で見ることができる。
【0369】
・XRPD分析は、物質が結晶性であり、一次スクリーニング中に生成されたものと同じ形態であることを示す。
・NMR分析により、塩の形成が確認されたが、マロン酸に対応するピークが水の広いピークに非常に近い位置にあるため、積分は、正確ではない。
・HPLCによる純度は、97.99%の純度を示し、出発物質の純度(97.82%)よりわずかに高かった。
・TG/DTAは、<150℃の熱イベントを示さない。
・DSC分析は、<150℃の熱イベントを示さない。分解の開始は、約180℃で観察された。
・KF分析は、物質が0.7%の水を含有していたことを示した。
・DVS分析は、物質が20~70%の相対湿度で0.14%の水を、全体で0.35%の水を吸収することを示した。DVS後のXRPDによって分析した場合、固体形態への変化は、観察されなかった。
・保管試験は、周囲光、40℃/75%の相対湿度、および80℃の3つの種類の保管すべてにおいて、物質が変化しないままであることを示した。
・塩不均化試験は、水中でのスラリー化でマロン酸塩の形態変化がないことを示した。
・水和試験(すなわち、アセトン:水の混合物(3、5、および10%の水)中のスラリー)は、スラリー化後も物質が変化しないままであることを示し、水和リスクが低いことを示している。
・熱力学的溶解度の結果は、以下を示した。
・pH1 0.7687mg/ml
・pH4.5 0.0028mg/ml
・pH6.8 0.0020mg/ml
【0370】
XRPDによりpH1およびpH4.5から固体形態の変化が観察され、潜在的な塩の形成を示している。
・水溶解度の結果は、以下を示した。
・4時間で0.4947mg/ml
・24時間で0.6036mg/ml
【0371】
物質は、スラリー化後も変化しないままであることが観察された。
スラリー化後も変化しない。
【0372】
実施例7-HPLCによる純度分析の結果
HPLCによる純度分析の結果を以下の表6に示す。
【表9】
【0373】
アジピン酸塩は、出発物質よりもわずかに低い純度の物質を示し、RRT1.30で追加の有意な不純物があり、RRT1.35で追加の少量の不純物があった。
【0374】
ムケート塩(粘液酸は、ガラクタル酸としても知られている)は、出発物質よりも高純度の物質を示し、追加の不純物がなく、ヒドロキシ尿素不純物は、検出されなかった。約0.85%の純度の増加は、指定されたチアゾリン、カルバメート、およびヒドロキシ尿素不純物のレベルの低下、ならびに追加の不純物の非存在と関連した。
【0375】
マレイン酸塩は、出発物質よりも著しく低い純度の物質を示し、RRT1.26で追加の有意な不純物があった。追加の少量の不純物およびいくつかの既存の不純物のレベルの増加が観察された。
【0376】
マロン酸塩は、出発物質よりもわずかに高い純度の物質をもたらし、指定されたチアゾリンおよびヒドロキシ尿素不純物のレベルが低下した。
【0377】
実施例8-結論
アジピン酸塩は、水性条件で不均化する傾向を示し、水和しやすいことが観察されたため、二次スクリーニングでテストした4つの塩の中で最も進展しにくいことが見出された。不均化は、特定の種類のレドックス反応であり、反応からの元素が酸化および還元の両方を受けて、2つの異なる生成物を形成する。
【0378】
(ガラクタル酸からの)粘液酸は、容易に不均化することが観察されたため、さらなる進展のための好適な候補ではないことが見出された。しかしながら、純度の顕著な増加が観察され、この塩が遊離塩基の純度を改善するためのプロセス中間体として潜在的な選択肢であることを示唆している。したがって、一実施形態では、ムケートは、高レベルの純度を有する遊離塩基を生成するための「一時的なもの」として使用される。
【0379】
マレイン酸塩は、さらなる進展の有望な候補であることが見出されたが、
かなりの不純物が3%レベルで観察されたため、この塩を使用する前にさらに調査する必要があるであろう。
【0380】
マロン酸塩は、最も進展しやすい塩であることが見出され、使用された試験全体を通して良好な安定性を示し、遊離塩基よりも純度がわずかに上昇した。
【0381】
実施例9-マロン酸塩の詳細な純度分析
上記の結果に基づいて、本発明者らは、バリチニブ遊離塩基の代替の薬物としてのマロン酸塩の可能性をさらに調査することを決定した。
【0382】
予備段階の結果
最初に、ステージ9からのバリチニブ遊離塩基のマロン酸塩の予備段階の調製物を、実施例3に記載される方法を使用してアセトンから調製した。次に、マロン酸塩をHPLCによって分析し、分析結果を以下の表7に示す。
【表10】
・マロン酸塩は、97.99%の純度を有し、バリチニブ出発原料の純度(97.82%)よりわずかに高かった。
・<150℃の熱イベントはなく、180℃(DSC)付近で分解が始まり、マロン酸塩が比較的安定していることを示唆している。
・KF=0.7%の水。
・塩は、非吸湿性であり、DVS後のPXRDに変化はなかった。
・40℃/75%の相対湿度および80℃の環境光下でも塩は変化しなかった(データ見つからず)。
・不均化または水分補給は、観察されなかった。
【0383】
ステージ7のバリチニブ遊離塩基を使用して調製されたマロン酸塩
次に、マロン酸塩を2つの実験(PR78およびPR79)でTHF/水中で調製し、今回は、ステージ7のバリチニブを使用した。結果を以下の表8に示す。比較として、同じステージ7の投入物質を他の実験で使用した。2つの実験(PR27およびPR28)では、確立された再結晶化プロセスを使用して、ステージ7の物質を再結晶化した。さらに2つの実験(PR1およびPR24)では、確立されたプロセスを使用して、ステージ7の物質をジトシレート塩に変換した。
【表11】
【0384】
見てわかるように、PR78では0.21から0.03、PR79では0.02に、アニリン不純物が有意に減少し、つまり、バリチニブ遊離塩基をそのマロン酸塩に変換することにより、アニリン不純物が約10分の1に減少した。これは、既存のジトシレート塩の形成または確立された再結晶化プロセスと比較して、著しい改善である。
【0385】
同様に、PR78では2.44から0.93、PR79では0.77に、チアゾリンレベルも有意に減少し、すなわち、バリチニブ遊離塩基をそのマロン酸塩に変換することにより、チアゾリン不純物が約3分の1に減少した。これは、既存のジトシレート塩の形成または確立された再結晶化プロセスと比較して、著しい改善である。
【0386】
図20は、マロン酸塩(遊離塩基から生成)の純度および収率がTHF:水の比率によってどのように影響を受けるかを示す。黒い線は、使用した水の量を示し(THFに対する%)、灰色の線は、各実験から単離されたマロン酸塩の純度を示し、バーは、各実験の収率を(グラムで)示す。この図は、THF:水の比率がマロン酸塩の収率および品質に大きな影響を与えることを示しており、それぞれ7%および9%の水を使用した実験PR78およびPR79で最適なバランスが観察された。
【0387】
続いて、アセトン/水の溶媒システムを使用して、ステージ7の物質からマロン酸塩を生成した。2つの実験(17/22/82および17/22/84)のデータを表9に示す。
【表12】
【0388】
見てわかるように、両方の実験でアニリン不純物が0.19%から0.06%に減少し、両方のマロン酸プロセスでチアゾリン不純物が2.39%から1.44%および1.47%に減少した。これらの不純物のアセトン水溶媒システムパージは、既存のジトシレート塩の形成および確立された再結晶化プロセスよりも優れていた。
【0389】
したがって、様々な溶媒の組み合わせで、バリチニブのステージ7の遊離塩基をそのマロン酸塩に変換すると、既存の方法論と比較して、アニリンおよびチアゾリンの不純物レベルが有意に減少する。
【0390】
マロン酸塩を使用したバリチニブの遊離塩基の調製
次に、マロン酸塩が遊離塩基に正常に変換できたことを実証するために、マロン酸塩の代表的な試料を、2つの実験でステージ9へ、標準的なアプローチを使用して変換した(参照17/22/92および17/22/98)。結果を表10に示す。
【表13】
【0391】
見てわかるように、マロン酸塩の遊離塩基への変換は、高収率で達成することができ、高品質のAPIを生成する。アニリンまたはチアゾリン不純物の増加は観察されず、ステージ8の塩形成中に達成されたこれらの不純物の低レベルがステージ9の間に保存された可能性があることを実証している。
【0392】
さらに、製剤原料に存在するアニリンのレベルを100万分の1(ppm)で定量化するための新しい分析方法が開発された。実験17/22/92および17/22/98におけるアニリンのレベルは、この方法を使用して定量化され、結果を表11に示す。
【表14】
【0393】
これらのデータは、既存の分析方法論を使用して報告されたデータとよく一致しており、マロン酸塩が、既存の合成方法論と比較して、アニリン不純物のパージを大幅に改善することを確認する。
【0394】
結論
マロン酸塩は、観察されたアニリン不純物のレベルを改善すると思われ、最大で10分の1の減少が観察された。マロン酸塩は、チアゾリン不純物の選択的パージを提供すると思われる。
有利なことに、マロン酸塩の含水量は、典型的には1%未満であり、塩は、水和物を形成する傾向が低い。
【0395】
さらに、バリチニブのマロン酸塩は、結晶性であり、結晶形態は、針状ではない。針形態の結晶は、医薬品APIにとって望ましくないことがよくある。バリチニブ遊離塩基およびマロン酸対イオンは、1:1の比率で塩を形成する。塩は、胃のpH以上で十分な溶解性を有する。現在までに入手可能なデータは、バリチニブのマロン酸が好適に安定しており、医薬品としての使用に好適であることを示した。
【国際調査報告】