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特表2022-504244セルロースエーテルおよび/または多糖類と脂肪アルコールとを含む配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】セルロースエーテルおよび/または多糖類と脂肪アルコールとを含む配合物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220105BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20220105BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20220105BHJP
   C08L 1/26 20060101ALI20220105BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220105BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/38 C
C04B24/38 Z
C04B24/02
C08L1/26
C08L5/00
C08K5/05
C08K3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518579
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(85)【翻訳文提出日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2019076705
(87)【国際公開番号】W WO2020070189
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】18198634.0
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520181847
【氏名又は名称】エス・イー タイローズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】SE Tylose GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kasteler Strasse 45,65203 Wiesbaden,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ ハヴェニート
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ヨヘン ヘッカー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ネベル
【テーマコード(参考)】
4G112
4J002
【Fターム(参考)】
4G112PA02
4G112PB15
4G112PB39
4G112PB40
4G112PC05
4J002AB03W
4J002AB03X
4J002AB05W
4J002DM007
4J002DM008
4J002EC036
4J002EC046
4J002EC056
4J002FD018
4J002FD206
4J002FD207
4J002GL00
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのセルロースエーテルおよび/または少なくとも1つの多糖類と少なくとも1つの脂肪アルコールとを含む配合物、その製造、および特に建築材料におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのセルロースエーテルおよび/または多糖類もしくはその誘導体と、
(ii)少なくとも1つの脂肪アルコールまたはその二量体もしくは三量体と、
(iii)任意に少なくとも1つの水硬性結合材と、
(iv)任意に少なくとも1つの骨材と、
を含む、配合物。
【請求項2】
成分(i)および成分(ii)が、固体として存在する、請求項1記載の配合物。
【請求項3】
成分(i)および成分(ii)が、一緒になって粒子中に存在する、請求項1または2記載の配合物。
【請求項4】
成分(i)および成分(ii)が、前記粒子中に可能な限り均一に分配されているか、または成分(ii)が、成分(i)上に蓄積されている、請求項3記載の配合物。
【請求項5】
前記粒子のメジアン径d50が、0.01~1,000μm、好ましくは0.01~500μm、より好ましくは0.01~250μmの範囲である、請求項3または4記載の配合物。
【請求項6】
成分(i)および成分(ii)が、固溶体として存在する、請求項1から5までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項7】
前記多糖類およびその誘導体が、グアーガム、グアーエーテル、ローカストビーンガム、カラギーナンおよびペクチンから選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項8】
前記セルロースエーテルが、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)カルボキシメチルセルロースエーテル(CMC)、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMHEC)、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMHPC)、カルボキシメチルメチルセルロースエーテル(CMMC)、カルボキシメチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMMHEC)、カルボキシメチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMMHPC)、スルホエチルメチルセルロースエーテル(SEMC)、スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(SEMHEC)、スルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(SEMHPC)およびメチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(MHEHPC)、好ましくはメチルヒドロキシプロピルセルロースおよびメチルヒドロキシエチルセルロースから選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項9】
メチルセルロースが、1.4~2.2、好ましくは1.6~2.0の平均置換度DSメチルを有し;メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)が、1.2~2.2、好ましくは1.3~2.0の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.15~0.7の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有し;メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)が、1.2~2.2、好ましくは1.4~1.9の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.05~0.4、特に好ましくは0.1~0.35の分子置換度MSヒドロキシエチルを有し;ヒドロキシエチルセルロース(HEC)が、1.2~4.0、好ましくは1.6~3.5の平均置換度MSヒドロキシエチルを有し;エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)が、0.5~1.5の平均置換度DSエチル、および好ましくは1.5~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有し;メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)が、0.2~2.0の平均置換度DSメチル、および0.05~1.5の平均置換度DSエチル、および好ましくは0.2~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有し;カルボキシメチルセルロースエーテル(CMC)が、0.4~1.0の平均置換度DSカルボキシメチルを有し;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMHEC)が、0.1~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、および好ましくは0.8~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有し;カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMHPC)が、0.1~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、および好ましくは0.8~3.3の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有し;カルボキシメチルメチルセルロースエーテル(CMMC)が、0.005~1.0の平均置換度DSカルボキシメチルを有し、かつ好ましくは0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有し;カルボキシメチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMMHEC)が、0.005~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有し、かつ好ましくは0.8~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有し;カルボキシメチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMMHPC)が、0.005~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有し;かつ好ましくは0.8~3.3の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有し;スルホエチルメチルセルロースエーテル(SEMC)が、0.005~0.01の平均置換度DSスルホエチル、および好ましくは0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有し;スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(SEMHEC)が、0.005~0.01の平均置換度DSスルホエチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~0.3の分子置換度MSヒドロキシエチルを有し;スルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(SEMHPC)が、0.005~0.01の平均置換度DSスルホエチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~0.3の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有し、かつメチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(MHEHPC)が、1.2~2.0、好ましくは1.4~1.8の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~1.0、特に好ましくは0.3~0.5の分子置換度MSヒドロキシエチル、および好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.15~0.7の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有する、請求項8記載の配合物。
【請求項10】
前記セルロースエーテルが、10~5,000の平均重合度を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項11】
前記セルロースエーテルおよび/または多糖類が、20℃で少なくとも2g/lの水の、水への溶解度を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項12】
前記セルロースエーテルが、1~500,000mPa・s、好ましくは3~300,000mPa・s、さらに好ましくは6~60,000mPa・sの粘度(ヘプラー;2%溶液、20℃、20°dH)を有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項13】
前記脂肪アルコールまたはその二量体もしくは三量体が、合成または天然由来のものである、請求項1から12までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項14】
前記脂肪アルコールが、C6~30アルカノール、C6~30アルケノール、C6~30アルカンジエノール、C6~30アルカントリエノールまたはオキソアルコールである、請求項1から13までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項15】
成分(i)および成分(ii)が、合計で、前記成分(i)+(ii)の全重量に対して0~20重量%、好ましくは0~10重量%の残留水分を有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項16】
成分(i)と成分(ii)との重量比が、1:15~15:1、好ましくは1:4~4:1の範囲である、請求項1から15までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項17】
前記成分(i)および(ii)の割合が、前記配合物の全重量に対して0.1~100重量%、好ましくは0.1~1.0重量%、さらに好ましくは0.2~0.5重量%である、請求項1から16までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項18】
前記水硬性結合材が、セメント、焼石灰、ポゾラン、火山土および石膏、好ましくはセメントから選択される、請求項1から17までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項19】
前記骨材が、砂、砂利および合成充填材から選択される、請求項1から18までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項20】
(v)少なくとも1つのさらなるセルロースエーテルまたはその誘導体
をさらに含む、請求項1から19までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項21】
前記配合物が、ドライモルタル、タイル用接着剤、目止め剤、プラスター系、または複合断熱系用のドライモルタルである、請求項1から20までのいずれか1項記載の配合物。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項記載の配合物の製造方法であって、
(a)少なくとも1つのセルロースエーテルおよび/または多糖類もしくはその誘導体、少なくとも1つの脂肪アルコールまたはその二量体もしくは三量体、ならびに少なくとも1つの溶媒を混合するステップと、
(b)ステップ(a)により得られた混合物を、剪断下に、任意に高温で処理するステップと、
(c)ステップ(b)により得られた混合物を乾燥させ、任意に粉砕するステップと、
(d)任意に、ステップ(c)で得られた混合物を、少なくとも1つの水硬性結合材および任意に少なくとも1つの骨材と混合するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記溶媒が、水である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの脂肪アルコールおよび前記溶媒が、エマルションの形態で存在する、請求項22または23記載の方法。
【請求項25】
前記エマルションが、前記エマルションの全重量に対して5~40重量%の脂肪アルコールを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
ステップ(b)を、混ぜ込みまたは練り込み下に行う、請求項22から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
ステップ(c)により得られた混合物が、前記混合物の全重量に対して0~20重量%、好ましくは0~10重量%の残留水分含量を有する、請求項22から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
建築材料としての、または建築材料用添加剤としての、請求項1から21までのいずれか1項記載の配合物の使用。
【請求項29】
前記建築材料が、モルタル系、特に複合断熱系用のモルタル系、プラスター系、目止め剤およびタイル用接着剤から選択される、請求項28記載の配合物の使用。
【請求項30】
オープンタイムを延長するための、濡れ性を改善するための、可使時間を延長するための、および引張接着値を改善するための、請求項28または29記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのセルロースエーテルおよび/または少なくとも1つの多糖類と少なくとも1つの脂肪アルコールとを含む配合物、その製造、および特に建築材料におけるその使用に関する。
【0002】
建設産業においては、構造部材の結合またはコーティングに、特にセメント系接着剤、プラスター、目止め剤、ならびに複合断熱系向けの特殊な接着および補強用パテが使用されている。これらは、1つ以上の結合材(例えばセメント、水和石灰)、充填材(例えば様々な粒度の砂)、ならびに他の添加剤、例えばセルロースエーテル、分散粉末、デンプン、デンプン誘導体、例えばデンプンエーテルおよびAE剤から構成される混合物である。この建築材料は、工場で製造されて加工時には水と混合するだけでよいため、プレミックスドライモルタルと呼ばれている。
【0003】
セメント系タイル用接着剤は、通常は薄層法で施与されるが、これは、接着剤をクシ目コテで均一な層厚にて施与する水平な下地を必要とする。このようにして施与された接着モルタルの中に、タイルを全面に配置して整列させる。施工業者の目的は、効果的かつ効率的に作業を行うことであり、これには、広い面積に接着剤を施与して、引き続きタイルを配置できるようにすることが含まれる。これを達成するためには、接着剤は、タイル裏面が面状に確実に濡れるよう、可能な限り長いタイルの配置時間またはオープンタイムや濡れ時間を有する必要がある。薄層接着剤の主成分としては、セメント、砂および岩粉、ならびにセルロースエーテルが挙げられる。施工および固体モルタルの特性を最適化するために、他の添加剤、例えば分散粉末、デンプン誘導体、セメント促進剤、無機増粘剤および繊維が含まれていてもよい。
【0004】
タイル用接着剤のオープンタイムの測定は、ISO 13007やEN 1346に準拠して行われる。タイル用接着剤は、規格化されたコンクリート板に施与される。吸収性タイルは、所定時間後に接着剤中に設置され、所定の条件の下で数週間貯蔵され、その後、引張接着試験機によって引き裂かれる。結果として得られる引張接着値によってタイル用接着剤の種類が規定されて、ハイグレードの接着剤(C1およびC2)は、30分の設置時間後に≧0.5N/mmの引張接着値を達成することが望ましい。この試験と並行して、いわゆる濡れ試験をDIN EN 1347に準拠して実施することができる。そのために、オープンタイムの測定に使用されるのと同じ吸収性タイルを使用することができる。これらのタイルも同様に、所定時間後にモルタル層に設置され、2kgの重りを30秒間載せられ、その後除去されて、タイル裏面に残っているモルタル残分がパーセンテージで求められる。高品質のタイル用接着剤は、30分後にタイル裏面上にモルタルで濡れた面積を50%超有することが望ましい。
【0005】
タイル用接着剤の一般的な問題点は、櫛引されたモルタルの表面での早すぎる被膜形成や炭酸化であり、これは濡れ時間を短縮させ、ひいてはタイルの接着性を低下させ、オープンタイムの短縮を招く。複合断熱系用のプラスター、接着および補強用パテ、ならびに他のセメント系ドライモルタルも同様であり、早すぎる乾燥が、さらなる作業工程の妨げとなるか、または材料特性を悪化させる。以下の特許には、様々な用途での脂肪アルコールの使用が記載されており、その一部は、早すぎる乾燥の問題を解消することを目的としている。
【0006】
米国特許第3486916号明細書には、水硬性セメント混合物の注型品の表面の抑制膜により水の蒸発を遅らせる、脂肪アルコール(C14~20)のエマルションの使用が記載されている。
【0007】
欧州特許第0977716号明細書の主題は、プラスターおよびモルタル用添加剤としての8~72個のC原子を有する脂肪アルコールの使用である。飽和または不飽和、直鎖状または分岐状の脂肪アルコールがアルコール水性分散液として存在し、ここでは固体(シリケート)担体材料に施与され、製造された添加剤は粉末形で存在し、可使時間の延長やオープンタイムの延長といった、プラスターやモルタルに好ましい特性をもたらす。
【0008】
国際公開第2002/031069号や欧州特許第1322716号明細書などの他の特許では、エポキシ樹脂ベースのレベリング剤および絶縁性材料において、オープンタイムや可使時間を延長させるための添加剤としてワックスや脂肪アルコールを使用することについて言及されている。配合剤の形態は、粉末の形態であるか、または水性エマルションの形態で液状であり、粉末状の場合には、脂肪アルコール(C16~72)が担体に施与される。使用量は、調製物全体に対して0.1~2.0重量%である。
【0009】
国際公開第1995/004008号では、水硬性セメント混合物において石灰のエフロレッセンスを防止するC14~22脂肪アルコールを、セメント含有量に基づいて0.05~3重量%の使用量で使用することについて論じられている。
【0010】
米国特許出願公開第2003/0209170号明細書は、C12~22脂肪アルコールを収縮低減添加材と併用することにより、セメントおよびコンクリート構造物の表面上のダストを最小限に抑えることを目的としている。
【0011】
米国特許第5,807,502号明細書には、建設産業における消泡剤としてのC10~28脂肪アルコールの使用が記載されている。
【0012】
米国特許第9,005,752号明細書にも同様に、シリコーンオイルとともにシリケート担体材料に施与されるC16~18脂肪アルコール誘導体の、消泡剤としての使用が記載されている。この消泡効果により、曲げ引張強度および圧縮強度、ならびにドライモルタルの凍結融解保存時の引張接着値が向上することが望ましい。
【0013】
BASF(ルートヴィヒスハーフェン在)よりLoxanol OTシリーズとして販売されている脂肪アルコールを、塗料、分散結合性建築材料、プラスターおよびモルタルのオープンタイム延長剤として使用することも同様に知られている。ここでは、液体分散体およびシリケート担体材料上の脂肪アルコールは市販されている。
【0014】
従来技術には、脂肪アルコールや液体の形態の脂肪アルコールの使用が記載されている。なぜなら、これらは、粉末の形態や固体の状態では水にわずかにしか可溶でないためである。液状脂肪アルコールの、例えばエマルションまたは分散液の形態での使用は、これらをタイル用接着剤または複合断熱系用の接着および補強用パテといったドライモルタル系において使用したい場合には、使い勝手が悪い。この場合には、2成分系を提供する必要がある。1成分は、脂肪アルコール水相であり、これは練混ぜ水を兼ねる。第2の相は、ドライモルタル混合物からなる。この場合には、使用者による間違いや計量供給ミスを排除することはできない。また、商業において、および建築現場では、それに応じて貯蔵場所を広くする必要がある。したがって、乾燥混合物が好ましい。
【0015】
粉末状の脂肪アルコール添加剤は、通常、建築材料系に悪影響を及ぼすおそれのある担体材料を含んでいる。従来の粉末状の脂肪アルコール添加剤、例えばBASF社(ルートヴィヒスハーフェン在)よりLoxanol OT 5900に使用されているようなシリケート担体材料は、セルロースエーテルとは対照的に、乾燥プロセス中に固定されており、したがって、濡れ時間やオープンタイムを延長させるのにはさほど効果的ではない。
【0016】
本発明の課題は、建築材料系の濡れ時間および/またはオープンタイムを大幅に延長し、かつ建築材料系の引張接着値を大幅に改善する建築材料系用固体添加剤を提供することである。該添加剤は、乾燥建築材料系へのブレンドが可能であることが望ましい。この課題は、
(i)少なくとも1つのセルロースエーテルおよび/または少なくとも1つの多糖類もしくはその誘導体、好ましくは少なくとも1つのセルロースエーテルと、
(ii)少なくとも1つの脂肪アルコールまたはその二量体もしくは三量体と、
(iii)任意に少なくとも1つの水硬性結合材と、
(iv)任意に少なくとも1つの骨材と、
を含む配合物により解決された。
【0017】
粉末状の脂肪アルコールは、水溶性をごくわずかにしか示さないことが知られており、そのため、モルタル系においてその有効性を発揮させるためには、エマルションや分散液の形態であるか、または担体材料に担持させることが必要となる。上述したように、脂肪アルコールエマルションは使い勝手が悪く、従来の担体材料上の粉末状の脂肪アルコールは、オープンタイムおよび濡れ時間の点で十分な効果が得られていない。セルロースエーテルを用いて、脂肪アルコールを、安定した高反応性の粉末状形態に変換することができることが判明した。
【0018】
本発明による配合物は、配合物の全重量に対して好ましくは20重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは0~10重量%、さらに好ましくは0.01~8重量%の水を含む。
【0019】
本発明による配合物において、成分(i)および(ii)は、好ましくは固体として存在する。特に好ましくは、成分(i)および成分(ii)が一緒になって粒子を形成する。好ましくは、成分(i)および成分(ii)は、粒子中に均一に分配されている。このように、本発明による配合物におけるセルロースエーテルおよび/または多糖類および脂肪アルコールは、互いに融着していてもよいし、脂肪アルコールがセルロースエーテルおよび/または多糖類の周囲に膜を形成していてもよい。特に好ましい一実施形態では、成分(i)および成分(ii)は、固溶体として存在する。好ましくは、粒子のメジアン径d50は、0.01~1,000μm、好ましくは0.01~500μm、より好ましくは0.01~250μmの範囲である。
【0020】
好ましくは、セルロースエーテルは、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)カルボキシメチルセルロースエーテル(CMC)、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMHEC)、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMHPC)、カルボキシメチルメチルセルロースエーテル(CMMC)、カルボキシメチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMMHEC)、カルボキシメチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMMHPC)、スルホエチルメチルセルロースエーテル(SEMC);スルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(SEMHEC)およびスルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(SEMHPC)およびメチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(MHEHPC)、より好ましくはメチルヒドロキシプロピルセルロースおよびメチルヒドロキシエチルセルロースから選択される。
【0021】
特に好ましいのは、1.4~2.2、好ましくは1.6~2.0の平均置換度DSメチルを有するメチルセルロース;
1.2~2.2、好ましくは1.3~2.0の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.15~0.7の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有するメチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPC);
1.2~2.2、好ましくは1.4~1.9の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.05~0.4、特に好ましくは0.1~0.35の分子置換度MSヒドロキシエチルを有するメチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC);
1.2~4.0、好ましくは1.6~3.5の平均置換度MSヒドロキシエチルを有するヒドロキシエチルセルロース(HEC);
0.5~1.5の平均置換度DSエチル、および好ましくは1.5~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有するエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC);
0.2~2.0の平均置換度DSメチル、および0.05~1.5の平均置換度DSエチル、および好ましくは0.2~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有するメチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC);
0.4~1.0の平均置換度DSカルボキシメチルを有するカルボキシメチルセルロースエーテル(CMC);
0.1~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、および好ましくは0.8~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有するカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMHEC);
0.1~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、および好ましくは0.8~3.3の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有するカルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMHPC);
0.005~1.0の平均置換度DSカルボキシメチルを有し、かつ好ましくは0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有するカルボキシメチルメチルセルロースエーテル(CMMC);
0.005~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有し;かつ好ましくは0.8~3.5の分子置換度MSヒドロキシエチルを有するカルボキシメチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(CMMHEC);
0.005~1.0の平均置換度DSカルボキシメチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有し;かつ好ましくは0.8~3.3の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有するカルボキシメチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(CMMHPC);
0.005~0.01の平均置換度DSスルホエチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~0.3の分子置換度MSヒドロキシエチルを有するスルホエチルメチルヒドロキシエチルセルロースエーテル(SEMHEC);
0.005~0.01の平均置換度DSスルホエチル、および好ましくは0.2~2.0の平均置換度DSメチルを有するスルホエチルメチルセルロースエーテル(SEMC);
0.005~0.01の平均置換度DSスルホエチル、0.2~2.0の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~0.3の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有するスルホエチルメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(SEMHPC)、ならびに/または
1.2~2.0、好ましくは1.4~1.8の平均置換度DSメチル、および好ましくは0.1~1.0、特に好ましくは0.3~0.5の分子置換度MSヒドロキシエチル、および好ましくは0.1~1.0、より好ましくは0.15~0.7の分子置換度MSヒドロキシプロピルを有するメチルヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースエーテル(MHEHPC)
である。
【0022】
多糖類またはその誘導体は、好ましくはグアーガム、グアーエーテル、ローカストビーンガム、カラギーナンおよびペクチンから選択される。
【0023】
好ましい一実施形態では、セルロースエーテルおよび/または多糖類、特にセルロースエーテルは、20℃で少なくとも2g/lの水、より好ましくは少なくとも5g/lの水の、水への溶解度を有する。
【0024】
セルロースエーテルは、好ましくは10~5,000の平均重合度を有する。重合度は、ISO 5351-“Determination of Limiting Viscosity Number in Cupriethylenediamine (CED) Solution”に準拠したパルプにより測定される。
【0025】
セルロースエーテルの粘度は、ヘプラー;2%溶液、20℃、20°dHにより測定した場合に、好ましくは1~500,000mPa・s、より好ましくは3~300,000mPa・s、さらに好ましくは6~60,000mPa・sである。
【0026】
脂肪アルコールまたは二量体もしくは三量体(成分(ii))は、好ましくは合成または天然由来のものである。好ましくは、天然の脂肪アルコールは、植物性あるいは動物性脂肪から製造される。合成脂肪アルコールは、当業者に周知のプロセスによって製造される。合成により製造された脂肪アルコールには、いわゆるオキソアルコールも含まれる。
【0027】
好ましくは、脂肪アルコールは、C6~30アルカノール、C6~30アルケノール、C6~30アルカンジエノール、C6~30アルカントリエノールまたはオキソC6~30アルコールであり、より好ましくは、C12~22アルカノール、C12~22アルケノール、C12~22アルカンジエノールまたはC12~22アルカントリエノールである。本発明における「アルカン」とは、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい炭化水素基を意味する。好ましくは、直鎖炭化水素基が使用される。脂肪アルコールは、好ましくは第一級アルコールである。アルカンジエノールあるいはアルカントリエノールにおけるC=C二重結合は、交互に分布していてもよいし統計的に分布していてもよい。
【0028】
成分(i)および成分(ii)は、合計で、成分(i)および(ii)の全重量に対して0~20重量%、好ましくは0~15重量%、さらに好ましくは0.01~10重量%の残留水分を有する。
【0029】
好ましい一実施形態では、成分(i)と成分(ii)との重量比は、1:15~15:1、好ましくは1:4~4:1の範囲である。好ましい一実施形態では、配合物における成分(i)と成分(ii)との重量比は、1:15~15:1、好ましくは1:8~8:1、より好ましくは1:6~6:1、より好ましくは1:5~5:1、最も好ましくは1:4~4:1の範囲である。
【0030】
好ましくは、配合物全体における成分(i)および(ii)の割合は、配合物の全重量に対して0.1~100重量%、より好ましくは0.1~1.0重量%、さらに好ましくは0.2~0.5重量%である。配合物が成分(iii)および(iv)を含む場合には、好ましくは、配合物全体における成分(i)および(ii)の割合は、0.1~0.5重量%、より好ましくは0.2~0.4重量%である。配合物が成分(i)および(ii)のみを含む(すなわち、成分(iii)および(iv)を含まない)場合には、これらの成分の割合は、配合物の全重量に対して好ましくは80~100重量%、より好ましくは90~100重量%である。
【0031】
一実施形態では、配合物における成分(i)および(ii)の割合は、配合物の全重量に対して60~100重量%、好ましくは65~100重量%、より好ましくは70~100重量%、より好ましくは75~100重量%、より好ましくは80~100重量%、より好ましくは85~100重量%、より好ましくは90~100重量%、さらに好ましくは92~100重量%である。
【0032】
好ましい一実施形態では、配合物における成分(i)および(ii)の割合は、配合物の全重量に対して60~100重量%、好ましくは65~100重量%であり、成分(i)と成分(ii)との重量比は、1:4~4:1の範囲である。
【0033】
配合物は、少なくとも1つの水硬性結合材をさらに含むことができる。水硬性結合材として、特にセメント、焼石灰、ポゾラン、火山土および石膏、好ましくはセメントが使用される。
【0034】
配合物は、少なくとも1つの骨材をさらに含むことができる。適切な骨材として、好ましくは砂、砂利および/または合成充填材が使用される。
【0035】
配合物は、さらなる成分(v)をさらに含むことができ、この成分(v)は、少なくとも1つのさらなるセルロースエーテルを含む。さらなるセルロースエーテルは、好ましくはメチルヒドロキシエチルセルロースエーテルおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースエーテルである。
【0036】
好ましい一実施形態では、配合物は、ドライモルタル、タイル用接着剤、プラスター系、目止め剤および複合断熱系用のドライモルタルとして配合される。この場合、配合物は、成分(i)~(iv)の他に、当業者に知られているさらなる助剤、例えば、分散粉末、デンプン誘導体、セメント促進剤、無機増粘剤、繊維、消泡剤およびAE剤を含むことができる。
【0037】
他の態様では、本発明は、以下:
(a)少なくとも1つのセルロースエーテルおよび/または少なくとも1つの多糖類もしくはその誘導体、少なくとも1つの脂肪アルコールまたはその二量体もしくは三量体、ならびに少なくとも1つの溶媒を混合するステップと、
(b)ステップ(a)により得られた混合物を、剪断下に、任意に高温で処理するステップと、
(c)ステップ(b)により得られた混合物を乾燥させ、任意に粉砕するステップと、
(d)任意に、ステップ(c)で得られた混合物を、少なくとも1つの水硬性結合材および任意に少なくとも1つの骨材と混合するステップと
を含む、本発明による配合物の製造方法に関する。
【0038】
好ましくは、ステップ(a)において、溶媒として水が使用される。
【0039】
好ましくは、ステップ(a)では、分散液、好ましくはエマルション、特に好ましくは水中の、脂肪アルコールの水中油型エマルションが使用される。好ましくは、懸濁液、特にエマルションは、エマルションの全重量に対して5~40重量%の脂肪アルコールの脂肪アルコール含有量を有する。
【0040】
本発明による方法のステップ(b)は、好ましくは、混ぜ込みまたは練り込み下に行われる。ステップ(b)は、高温、特に20~45℃、特に好ましくは25~40℃の温度で実施してもよい。
【0041】
本方法は、ステップ(b)で各成分を完全に溶解させる実施形態(変法1)と、溶媒の存在下で脂肪アルコールまたはその二量体もしくは三量体をセルロースエーテルおよび/または多糖類に練り込む実施形態(変法2)とに区別することができる。後者の場合、好ましくは、脂肪アルコールエマルションは、セルロースエーテルおよび/または多糖類が完全に湿潤するまで、セルロースエーテルおよび/または多糖類に練り込まれる。セルロースエーテル/多糖類、脂肪アルコールおよび水のそれぞれの混合比は、脂肪アルコールおよびセルロースエーテル/多糖類の種類に応じて調整することができるが、ただし、(それぞれ乾燥状態での)成分(i)と成分(ii)との重量比は、好ましくは1:15~15:1、好ましくは1:4~4:1の範囲内であることを条件とする。
【0042】
変法1による配合物におけるセルロースエーテルおよび/または多糖類の割合は、セルロースエーテルおよび/または多糖類ならびに脂肪アルコール(乾燥)の合計重量に対して、好ましくは5~50重量%、より好ましくは約25~45重量%、さらに好ましくは約30~35重量%である。変法2による配合物におけるセルロースエーテルおよび/または多糖類の割合は、成分(i)および(ii)の合計重量(乾燥)に対して、好ましくは約50~99.9重量%、好ましくは約70~95重量%、さらに好ましくは約80~90重量%である。
【0043】
本発明による変法1による配合物における脂肪アルコール(乾燥)の割合は、成分(i)および(ii)(乾燥)の合計重量に対して、好ましくは50~95重量%、より好ましくは55~75重量%、さらに好ましくは65~70重量%である。
【0044】
本発明による変法2による配合物における脂肪アルコール(乾燥)の割合は、成分(i)および(ii)(乾燥)の合計重量に対して、好ましくは約0.1~50重量%、より好ましくは約5~30重量%、さらに好ましくは約10~20重量%である。
【0045】
変法1および2は、好ましくは、1~500,000mPa・s、好ましくは3~300,000mPa・s、特に好ましくは6~60,000mPa・sのヘプラー粘度を有するセルロースエーテルに適している。
【0046】
ステップ(b)により得られた生成物の後続の乾燥は、好ましくは、高温、特に20~45℃の範囲、より好ましくは25~40℃の範囲で、任意に真空下で行われる。相応する乾燥プロセスは、当業者に知られている。乾燥された生成物はさらに、任意に、当業者に知られているプロセスによって粉砕および/またはふるい分けされてもよい。好ましくは、ステップ(c)の後に、0.01~1,000μmの平均粒径d50を有する自由流動性の粉末が存在する。
【0047】
好ましくは、ステップ(c)により得られた混合物の残留水分含量は、混合物の全重量に対して0~20重量%、より好ましくは0~15重量%、さらに好ましくは0.01~10重量%の範囲である。
【0048】
本発明は、本発明による方法により得ることができる配合物にも関する。
【0049】
さらなる態様では、本発明は、建築材料としての、または建築材料用添加剤としての本発明による配合物の使用にも関する。本発明による配合物は、特に、該配合物が成分(iii)および(iv)を含まない場合には、建築材料用添加剤として使用される。該添加剤は、乾燥状態で単純に混合して建築材料に加えることができる。好ましい建築材料は、モルタル系、特に複合断熱系用のモルタル系、目止め剤、プラスター系およびタイル用接着剤から選択される。本発明による配合物が添加剤として使用される場合、該添加剤は、好ましくは0.05~0.6重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%、さらに好ましくは0.15~0.5重量%、さらに好ましくは0.15~0.45重量%の量で建築材料に投入される。
【0050】
本発明による配合物や添加剤は、建築材料、特にセメント系タイル用接着剤において、オープンタイム、濡れ性、可使時間および引張接着値に驚くべき影響を及ぼす。現在、本発明による配合物において、セルロースエーテルおよび/または多糖類と脂肪アルコールとを緊密に混合することは、施工時に建築材料表面への脂肪アルコールの移行を可能にすると考えられている。理論に縛られるものではないが、セルロースエーテルは、その界面活性特性により、空隙と湿ったモルタルとの間やモルタル表面に蓄積する(Jenni et al. 2004)。したがって、セルロースエーテルを輸送媒体とみなすことができる。セルロースエーテルと脂肪アルコールとの緊密な混合により、脂肪アルコールは、セルロースエーテルと融合するか、またはセルロースエーテル粒子の周りに蓄積することができ、その際、脂肪アルコールは表面により容易に移行し、したがって、例えば濡れ時間の延長およびオープンタイムの延長といった、その有益な特性を発揮することができる。脂肪アルコールと混合されたセルロースエーテルについての他の移行の可能性は、脂肪アルコールのよく知られた消泡効果であり得る(米国特許第5807502号明細書を参照)。前述のとおり、セルロースエーテルは界面活性特性を有しており、空隙と湿ったモルタルとの間に蓄積する。脂肪アルコールの消泡効果により、空気がモルタル表面へと上昇することができ、必然的に、脂肪アルコールと混合されたセルロースエーテルも表面へと移行しやすくなり、脂肪アルコールは、このようにして濡れ時間やオープンタイムの延長に寄与する。意想外にも、セメント反応が促進されたり、大幅に遅延したり、初期強度が低下するなどといった欠点は認められなかった。
【0051】
本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例:
本発明による配合物の製造:
変法1:
天然のC14~20脂肪アルコール(Loxanol OT 5840;エマルション中の脂肪アルコール濃度:約20重量%、BASF(ルートヴィヒスハーフェン在))の混合物の水性エマルションを水で1:1に希釈し、均質な溶液が得られるまで実験室用撹拌機(500rpm)を使用して撹拌した。次いで、この溶液に、高回転数(700rpm)で撹拌しながら、Tylose MOBS 6 P4を濃度5重量%で添加した(C1-1a)。セルロースエーテルをエマルションに導入する他の方法は、実験室用撹拌機(700rpm)を使用して撹拌しながら、セルロースエーテルを未希釈エマルションに直接添加することである(C1-1b)。どちらの手順でも、セルロースエーテルを完全に溶解させた後(約2時間)、溶液を浅いモールドに注ぎ、40℃で乾燥させた。完全に乾燥させた後、本発明による配合物を乳鉢内で乳棒を用いて細かく粉砕した。自由流動性のある粉体や細かな造粒体が得られた。また、類似の方法で、本発明による配合物を、Tylose MH 50 G4を用いて製造し、これを、以下、C1-2と称する。
【0053】
変法2:
Loxanol OT 5840を、実験室用混練機を使用して1:1の比で、セルロースエーテル、この場合はTylose MHF 15000 P4に練り込んだ。練り込みプロセスは、約60分であった。その後、混合物を真空下にて約40℃で乾燥させた。得られた本発明による配合物は、自由流動性の粉末として存在し、これを、以下、C2-1と称する。
【0054】
以下では、別途記載がない限り、または文脈から明らかである限り、パーセントは重量パーセントと理解されるべきである。「Atro」は「absolut trocken(絶対乾燥)」の略であり、「lutro」は「lufttrocken(空気乾燥)」の略である。以下の成分を使用した:
【0055】
セルロースエーテル(CE):
CE1:Tylose MOBS 6 P4、MHPC、DS 1.8、MS 0.28、粘度(2% atro、20℃、ウベローデ)4.8~7.2mPa・s
微粉末(エアジェットシーブ、<0.125mm:95%、<0.063mm:50%)
CE2:Tylose MH 50 G4、MHEC、DS 1.5、MS 0.2、粘度(2.85% atro、20℃、20°dH、Brookfield RV、スピンドル1)150~250mPa・s
造粒体(エアジェットシーブ、<0.5mm:95%、<0.125mm:30%)
CE3:Tylose MHF 15000 P4、MHEC、DS 1.7、MS 0.2、粘度(1.9% atro、20℃、20°dH、Brookfield RV、スピンドル5)11000~15000mPa・s 微粉末(エアジェットシーブ、<0.125mm:90%、<0.100mm:70%)
CE4:Tylose MHF 10015 P4、MHEC、DS 1.7、MS 0.2、粘度(1.9% atro、20℃、20°dH、Brookfield RV、スピンドル5)8000~12000mPa・s 微粉末(エアジェットシーブ、<0.125mm:90%、<0.100mm:70%)
【0056】
脂肪アルコールおよびセルロースエーテル-脂肪アルコールコンパウンド:
担体上のFA(参照1):Loxanol OT 5900(BASF社(ルートヴィヒスハーフェン在)の市販品)、シリケート担体材料上に担持された脂肪アルコール、粉末状、20℃での密度:約0.64g/cm、活性含有脂肪アルコール:約44%
FAE(参照2):Loxanol OT 5840(BASF社(ルートヴィヒスハーフェン在)の市販品)、脂肪アルコールエマルション、20℃での密度:約1g/cm;23℃での動粘度:約600mPa・s;活性含有脂肪アルコール:約20%
C1-1a、C1-1bおよびC1-2:変法1のセルロースエーテル-脂肪アルコール配合物、粉末状
C2-1:変法2のセルロースエーテル-脂肪アルコール配合物、粉末状
【0057】
担体上のFAもFAEも、本発明による変法1および2の配合物の参照材料である。両物質とも、すでに述べたように、BASF社の市販品であり、特にモルタル系や分散結合系のオープンタイムを延長するために使用されている。
【0058】
どちらの製品も、本発明による変法1および2の配合物と同様に、脂肪アルコールの一定の活性含有量を特徴とする。どちらの参照の濃度も、本発明による変法1および2の配合物中の脂肪アルコールの活性含有量と一致するように選択されている。
【0059】
いずれのタイル用接着剤混合物(以下、FKと称する)も、未修飾セルロースエーテルTylose MHF 15000 P4、または修飾セルロースエーテルTylose MHF 10015 P4のいずれかを0.4重量%の濃度で含む。これらのセルロースエーテルに加えて、タイル用接着剤混合物は、参照1、参照2、参照3、または本発明による変法1および2の配合物を含む。
【0060】
以下のタイル用接着剤混合物は、参照1を含む:
FK5、FK6、FK7、FK17、FK21、FK22、FK23、FK31、FK32およびFK33。
【0061】
参照1は、BASFの推奨するように、より高い濃度(処方物全体に対して0.5~2重量%)でも使用した。これは、混合物FK4、FK20およびFK30に代表される。
【0062】
以下のタイル用接着剤混合物は、参照2を含む:
FK8、FK9、FK10、FK18、FK24、FK25、FK26、FK34、FK35およびFK36。
【0063】
参照1はドライモルタル混合物にブレンドすることができたが、参照2は、ドライモルタルの練混ぜ水に加えて数分間撹拌した。参照2は、ドライモルタルに直接加えることができなかった。
【0064】
さらなる参照である、参照3および参照4は、元のセルロースエーテルに加えて本発明による変法1の配合物で使用されるセルロースエーテル;Tylose MOBS 6 P4またはMH 50 G4をも含む混合物FK2およびFK3である。また、このセルロースエーテルの濃度も同様に、変法1の配合物中に含まれるセルロースエーテルに適合されている。
【0065】
参照3および参照4も、参照1または参照2と併用して、共生効果を含めることも排除することもできるようにした。
【0066】
見て取れるように、参照の濃度は、本発明による変法1および2の配合物と同等となるように選択される。これにより、本発明による変法1および2の配合物によって提供される利点を、容易に検証することができる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
さらに、本発明による変法1の配合物の製造試験を、高粘度セルロースエーテルを用いて実施し、その際、これらの配合物を、同じタイル用接着剤調製物において、濡れ時間に対する有用性についても試験した。セルロースエーテルは、5%の濃度では均質化ができなかったため、その粘度に応じて、より低い濃度でアルコールエマルションに混ぜ込まなければならなかった。
【0072】
以下のセルロースエーテルを使用した:
CE5:Tylose MH 15000 YP4、MHEC膨潤遅延、DS 1.6、MS 0.15、粘度(1.9% atro、20℃、20°dH、Brookfield RV、スピンドル5)11000~15000mPa・s
微粉末(エアジェットシーブ、<0.125mm:90%、<0.100mm:70%)
CE6:Tylose H 60000 YP2、HEC、MS 2.0、粘度(1.0% atro、25℃、蒸留水、Brookfield LV、スピンドル3)2600~3400mPa・s
微粉末(エアジェットシーブ、<0.180mm:85%)
CE7:Tylose MHF 100000 P4、MHEC、DS 1.7、MS 0.2、粘度(1.0% atro、20℃、20°dH、Brookfield RV、スピンドル4)4100~5500mPa・s
微粉末(エアジェットシーブ、<0.125mm:90%、<0.100mm:70%)
CE8:Tylose MHS 300000 P3、MHEC、DS 1.7、MS 0.25、粘度(1.0% atro、20℃、20°dH、Brookfield RV、スピンドル5)8000~11000mPa・s
微粉末(エアジェットシーブ、<0.125mm:75%、<0.063mm:<40%)
【0073】
【表5】
【0074】
タイル用接着剤の試験方法
ISO 13007 およびDIN EN 1346に準拠したオープンタイム、およびDIN EN 1348またはDIN EN 12004に準拠した貯蔵試験
表2および表3に記載のタイル用接着剤を水と混合してモルタルとし、ここで、記載の処方物100重量部を、未修飾Tylose MHF 15000 P4を用いた試験では23重量部の練混ぜ水と混合し、修飾Tylose MHF 10015 P4を用いた試験では24または30重量部の練混ぜ水と混合した。修飾セルロースエーテルは、ハイグレードのタイル用接着剤(C2TE(S1))に使用されている。通常は、セルロースエーテルの修飾度が高いため、水の必要量はかなり多い。DIN EN 1308に準拠してタイル用接着剤の安定性Tを確保する(Tに到達するまで0.5mm)ためには、本発明による配合物を使用する際に必要な水の量を24重量部まで減少させなければならなかった。まず、混合物を最低設定で30秒間撹拌し、次いで1分間熟成させ、再度1分間撹拌し、5分間熟成させ、最後に再度最低設定で15秒間剪断した。その後、クシ目コテを用いてコンクリート板にモルタルを施与した(ISO 13007に準拠)。陶器製タイル(5×5cm)を5分ごとにモルタル床に設置し、30秒間2kgの重しを載せた後にモルタル床から持ち上げることにより濡れ性を測定した。タイル裏面の濡れ性を%で表した。オープンタイムや濡れ性が良好であるとするには、タイル裏面の50%以上の濡れ性が達成されなければならない。図1は、濡れ性の測定方法を説明するための図である。
【0075】
所定のコンクリート板(ここではSolana)にクシ目コテでタイル用接着剤を施与することにより、DIN EN 1346またはDIN EN 12004に準拠して、タイル用接着剤のオープンタイムEを測定する。モルタルを施与した10分、20分、30分、40分、50分および60分後に、1時間単位で4~8枚の陶器製タイルをモルタル床に配置し、2kgの重りで30秒間負荷をかける。60分後に最後の陶器製タイルをモルタル床に施与した後に、板を標準気候(23℃、湿度50%)で28日間貯蔵する。貯蔵後、引張接着試験機(Herion)を使用してコンクリート板からタイルを引き裂いて引張接着値を求める。C1/C2 E接着剤の基準を満たすためには、引張接着値が、30分後に≧0.5N/mmに達しなければならない。求めた値を、表6および表8に列挙する。
【0076】
また、DIN EN 1348またはDIN EN 12004に準拠した異なるタイプの貯蔵の引張接着値も同様に求めた。接着値が、C1接着剤の場合には≧0.5N/mmであり、C2接着剤の場合には≧1.0N/mmであることが必要である。表7および表9に列挙した値は、乾燥貯蔵または標準貯蔵(23℃、湿度50%で28日間)、高温貯蔵(標準気候で14日間、70℃で14日間)、および水中貯蔵(標準気候で1週間、標準温度の水で3週間)の後の引張接着値である。
【0077】
【表6】
【0078】
混合物FK1は、未修飾Tylose MHF 15000 P4のみを含み、最も低い濡れ性を示した。15分後には、タイル裏面の45%しかモルタルで覆われていなかった。混合物FK2およびFK3についても同様であり、これらの混合物は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えてさらに参照3または参照4を、本発明による変法1の配合物0.2重量%中に含まれる濃度で含んでいた。濡れ性は、混合物FK1よりも若干良好であり、15分の濡れ時間が達成された。
【0079】
混合物FK4は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照1を1.2重量%の使用量で含んでいた。この混合物は、25分までは良好な濡れ性を示したが、30分以降は、所望のタイル裏面の50%の濡れ性が得られなくなった。
【0080】
混合物FK5は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて同様に参照1を含むが、ただしこれは、0.305重量%という、より低濃度であった。活性脂肪アルコール濃度は、変法1の配合物0.2重量%中に含まれる脂肪アルコール濃度に適合されていた。混合物FK6およびFK7についても同様であり、これらの混合物は、本発明による変法1の配合物0.2重量%中に含まれる濃度で、参照3または参照4を追加的に含んでいた。どちらの混合物の濡れ性も、混合物FK5の場合よりもわずかにのみ良好であったが、いずれにせよ25分の濡れ時間を達成した。混合物FK5は、わずか15分しか達成しなかった。このように、どちらのセルロースエーテルもわずかな改善効果が認められた。
【0081】
混合物FK8~FK10は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照2を含んでおり、これはドライモルタルの練混ぜ水に予め加えておく必要があった。混合物FK8の濡れ性は著しくより良好であり、50分後にも依然として60%の濡れ性を達成したが、55分後には45%にしか達しなかった。FK9およびFK10は、参照2に加えて参照3または参照4を、変法1の配合物中に存在する濃度で含んでいた。ここでも、これは混合物FK8と同様に良好な濡れ性を示した。
【0082】
混合物FK11~FK13は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えてさらに、本発明による変法1の配合物を含んでいた。混合物FK11およびFK12の濡れ時間は、同様に卓越した値を示し、60分後には依然として65%の濡れ性を達成した。混合物FK13も同様に良好な値を示したが、60分後には50%の濡れ性にしか達しなかった。
【0083】
混合物FK14およびFK15は、使用された未修飾セルロースエーテルMHF 15000 P4が、ドライモルタルへの添加前に、本発明による変法1の配合物と混合されたことを特徴とした。本発明による配合物の濃度はわずかに低く、0.2重量%ではなく、0.165重量%が含まれていた。この場合にも、濡れ時間は60分より長く、タイル裏面は25分までは完全に濡れていた。
【0084】
混合物FK16は、本発明による変法2の配合物を含み、本発明による変法1の配合物を含む混合物よりもさらに良好な濡れ時間を達成することができた。60分後、濡れ性は依然として70%であった(図1)。
【0085】
混合物FK17は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えてさらに参照1を含んでいた。どちらの物質の濃度も、本発明による変法2の配合物0.5重量%中に存在するセルロースエーテルおよび脂肪アルコール濃度に適合されていた。濡れ時間は、混合物FK5と同等であった。
【0086】
混合物FK18は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えてさらに参照2を含んでいた。この場合にも、どちらの物質の濃度も、本発明による変法2の配合物0.5重量%中に存在するセルロースエーテルおよび脂肪アルコール濃度に適合されていた。濡れ時間は、混合物FK8と同様に良好であった。
【0087】
総じて、本発明による変法1および2の配合物を使用することにより、1時間以上のより長期の濡れを達成することができる。参照1および2(シリケート担体材料上の脂肪アルコールおよび液状脂肪アルコールエマルション)を含む混合物に比べて、濡れ時間がより長く、かつタイル裏面は、より大きな面積がタイル用接着剤により濡れていた。
【0088】
【表7】
【0089】
混合物FK19およびFK29は、30重量%および24重量%の水で、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末を含んでいた。30重量%の水を含む混合物FK19は、45分間の良好な濡れ時間を示した。24重量%の水を含む混合物FK29は、このような高度に修飾したセルロースエーテルにしては水分含有量が低すぎるため、15~20分の濡れ時間しか達成されなかった。
【0090】
混合物FK20およびFK30は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照1を1.2重量%の濃度で含んでいた。30重量%の水を含む混合物FK20は、良好な濡れ時間を達成することができなかった。参照1を過度に高濃度で使用すると、濡れ時間に悪影響を及ぼすと感じられた。
【0091】
24重量%の水を含むFK30は、予想どおり、FK20よりも劣悪な濡れ時間を示した。この場合、10分にしか達しなかった。
【0092】
混合物FK21~FK23およびFK31~FK33は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照1を含んでいた。ここでの活性脂肪アルコール濃度は、変法1の配合物0.2重量%中の活性脂肪アルコール濃度と一致していた。より低い濃度では、参照1は、参照1を含まないFK19およびFK29と比較して、より良好な効果を示したが、濡れ時間の改善は見られなかった。おそらく、参照1は、さらなる修飾剤との相容性を有しないものと考えられる。混合物FK22、FK23、FK32およびFK33は、さらに、参照3および4、Tylose MOBS 6 P4およびMH 50 G4を含んでいた。混合物中のセルロースエーテルの濃度は、本発明による配合物0.2重量%中のセルロースエーテル濃度と一致していた。30重量%の水を含む混合物の濡れ時間は同程度であり、参照3および4は濡れ時間に追加的な影響を示さなかった。24重量%の水を含む混合物では、混合物FK31と比較して、参照3または参照4により濡れ時間のわずかな改善を認めることができた。
【0093】
混合物FK24~FK26およびFK34~FK36は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて、練混ぜ水に加えた参照2を含んでいた。活性脂肪アルコール含有量は、活性含有量が変法1の配合物の乾燥エマルションと一致するように適合させた。ここでも、混合物は、水分含有量が30重量%と24重量%とで異なっていた。
【0094】
混合物FK25、FK26、FK35およびFK36はさらに、参照3または参照4を含んでいた。混合物中の参照、Tylose MOBS 6 P4およびMH 50 G4の濃度は、ここでも本発明による配合物0.2重量%中のセルロースエーテル濃度と一致していた。30重量%の水を含む混合物FK24~FK26は、非常に良好な濡れ時間を示し、60分後も依然としてタイル裏面の55%を濡らすことができた。セルロースエーテルの追加的な影響は認めることができなかった。24重量%の水を含む混合物FK34~FK36は、わずか45分の濡れ時間しか達成しなかった。ここでも、追加の参照3および4の影響は見られなかった。
【0095】
混合物FK27、FK28、FK37およびFK38は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて、Tylose MOBS 6 P4(FK27および37)およびTylose MH 50 G4(FK28および38)をベースとする本発明による変法1の配合物を含んでいた。ここでも、混合物は、水分含有量が30重量%と24重量%とで互いに異なっていた。30重量%の水を含む混合物FK27およびFK28は、60分後まで80または85%のタイル裏面の際立った濡れ性を示し、他のすべての混合物から明らかに際立っていた。24重量%の水を含む混合物FK37およびFK38は、50または55分の濡れ時間を達成することができ、これも同様に、同じ水分含有量のすべての混合物の中で最良の結果であった。
【0096】
本発明による変法1の配合物は、修飾セルロースエーテルと組み合わせても、どちらの水分率でも、参照1および2と比較して最良の濡れ時間を示した。
【0097】
【表8】
【0098】
見て取れるように、中粘度ないし高粘度のセルロースエーテルを含む本発明による配合物も非常に良好な濡れ時間を達成した。Tylose MHS 300000 P3を含む本発明による配合物C1-6では、1時間後でもタイル裏面の70%の濡れ性を達成することができた。
【0099】
【表9】
【0100】
DIN EN 1346に準拠したオープンタイム:
混合物FK1は、未修飾Tylose MHF 15000 P4のみを含み、最も低い引張接着値を示したが、このことは、未修飾であるために予想されたものであった。基準において満たされるべき30分は、満たされなかった。
【0101】
混合物FK2、FK3についても同様である。ここでは、未修飾セルロースエーテルに加えて参照3および4、Tylose MOBS 6 P4またはMH 50 G4を、これらが本発明による変法1の配合物0.2重量%の添加量と同じ濃度で存在するように加えた。ここでも、30分後に0.5N/mmの基準を満たさなかった。
【0102】
混合物FK4は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照1を1.2重量%の濃度で含んでいた。引張接着値はFK1の場合と比べてさほど高くなく、オープンタイムの大幅な改善は見られなかった。
【0103】
混合物FK5も同様に、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照1を含んでいた。しかしここでの活性脂肪アルコール濃度は、本発明による変法1の配合物0.2重量%の使用量に含まれる脂肪アルコール濃度に適合されている。引張接着値は、参照1の高濃度の場合に比べて顕著により良好というわけではなかった。
【0104】
追加的に参照3または4を含む混合物FK6およびFK7、すなわち、本発明による変法1の配合物中に含まれていたセルロースエーテル(Tylose MOBS 6 P4またはMH 50 G4)についても同様である。ここでも、濃度は、本発明による変法1の配合物0.2重量%中のセルロースエーテルの濃度と一致するように選択された。
【0105】
混合物FK8は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照2を含んでいた。活性脂肪アルコール濃度は、ここでもまた、変法1の配合物0.2重量%中に含まれる脂肪アルコール濃度と一致している。50分のオープンタイムの後に依然として0.59N/mmという良好な引張接着値が達成されたが、この値は、総じて、本発明による変法1および2の配合物を含む混合物の値よりも若干低い。
【0106】
追加的に参照3または参照4を含む混合物FK9およびFK10についても同様である。ここでも、参照3または4の濃度は、本発明による変法1の配合物0.2重量%中のセルロースエーテルの濃度と一致するように選択された。50および60分のオープンタイム後の接着値はわずかにより高く、60分後も依然として0.58または0.57N/mmに達していた。参照3または4が追加されたことによる若干のプラスの影響がここでの原因と考えられる。
【0107】
混合物FK11およびFK12は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて本発明による変法1の配合物を含んでいた。接着値は、60分後に依然として0.76および0.71N/mmであり、30分後に≧0.5N/mmという基準を満たしており、これは、参照1および2を含む従来の混合物では得られなかった。参照2と比較して、本発明による変法1の配合物を含む混合物は、特に60分のオープンタイム後により良好な接着値を達成した。
【0108】
混合物FK14およびFK15は、使用された未修飾セルロースエーテルMHF 15000 P4が、ドライモルタルへの添加前に、本発明による変法1の配合物と混合されたことを特徴とした。本発明による変法1の配合物の濃度は、ここでは0.2重量%ではなく0.165重量%とやや低かった。接着値も同様に他の混合物に比べてやや低かったが、60分後に0.55および0.63N/mmであり、依然として≧0.5N/mmの基準に達していた。
【0109】
混合物FK16は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて本発明による変法2の配合物を含んでいた。ここでも、非常に良好なオープンタイムの引張接着値が得られた。60分後に、依然として0.56N/mmの値が達成された。
【0110】
混合物FK17は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照1を含んでいた。活性脂肪アルコール濃度は、本発明による変法2の配合物0.5重量%の使用量中に含まれる脂肪アルコール濃度に適合されている。オープンタイムは、参照1を含む従来の混合物と同等であった。
【0111】
混合物FK18は、未修飾セルロースエーテルに加えて参照2を含んでいた。ここでも、活性脂肪アルコール濃度は、本発明による変法2の配合物0.5重量%の使用量中に含まれる脂肪アルコール濃度に適合されている。オープンタイムは、変法2の配合物を含む混合物と同等であった。しかし、この混合物の大きな欠点は、ドライモルタルの添加前に参照2を常に練混ぜ水に混ぜ込まなければならず、ドライモルタル混合物には加えることができないことである。
【0112】
DIN EN 1348に準拠した貯蔵タイプ:
未修飾Tylose MHF 15000 P4のみを含む混合物FK1は、ここでも再び最も低い引張接着値を示したが、これは、未修飾でありかつ分散粉末が存在しないため、予想どおりであった。しかし、0.5N/mmのC1基準は達成された。混合物FK2およびFK3についても同様である。上述したように、これらの混合物では、未修飾セルロースエーテルに加えて参照3または4が、本発明による変法1の配合物0.2重量%の添加量中と同じ濃度で存在するように加えられた。接着値の改善は得られなかった。
【0113】
混合物FK4は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照1を1.2重量%の濃度で含んでいた。ここでも、引張接着値は混合物FK1に対して改善を示さず、参照1の高い添加量は、高温貯蔵および水中貯蔵後の接着値にむしろ悪影響を及ぼした。
【0114】
混合物FK5は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照1を0.305重量%というより低い濃度で含み、活性脂肪アルコール含有量は、変法1の配合物中の脂肪アルコール濃度と一致していた。参照1の濃度が低いほど接着値が高く、FK1と比較して、標準貯蔵および水中貯蔵後の接着値のわずかな改善も見られた。
【0115】
混合物FK6およびFK7は、追加的にさらに参照3または4を、ここでも変法1の配合物中に0.2重量%で含まれる濃度で含んでいた。接着値は、FK5と同等である。
【0116】
混合物FK8は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照2も含んでおり、活性脂肪アルコール含有量は、変法1の配合物の脂肪アルコール濃度と一致していた。接着値を、極度に改善させることができた。追加的に参照3または4を含む混合物FK9およびFK10についても同様である。参照による改善は認めることができず、接着値はほぼ同じであった。
【0117】
混合物FK11およびFK12は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて本発明による変法1の配合物も0.2重量%の濃度で含んでいた。混合物FK14およびFK15は、0.165重量%を含み、Tylose MHF 15000 P4の修飾剤として加えることができた。標準貯蔵および水中貯蔵の引張接着値は、同様に良好な値を示したが、両混合物FK14およびFK15の水中貯蔵の接着値は、2.52または2.07N/mmと、大幅により高かった。
【0118】
混合物FK16は、変法2の配合物を含み、本発明による変法1の配合物を含む混合物FK11およびFK12よりも、特に標準貯蔵後に若干より高い引張接着値をさらに示した。
【0119】
混合物FK17は、未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて参照1を含んでいた。活性脂肪アルコール濃度は、本発明による変法2の配合物0.5重量%の使用量中に含まれる脂肪アルコール濃度に適合されている。異なる貯蔵タイプの接着値は、参照1を含む従来の混合物と同等であった。
【0120】
混合物FK18は、未修飾セルロースエーテルに加えて参照2も含んでおり、ここでも、脂肪アルコール濃度を本発明による配合物の濃度に適合させた。接着値は、標準貯蔵および水中貯蔵後には、本発明による変法2の配合物を含む混合物FK16の接着値よりも若干低かった。
【0121】
結論:
総じて、本発明による変法1の配合物を未修飾セルロースエーテルと組み合わせて使用することにより、極めて長期の濡れ、非常に長いオープンタイム、および非常に高い接着値をすべての貯蔵タイプで達成することができる。本発明による変法2の配合物の使用についても同様である。これに対して、オープンタイムを延長するために、シリケート担体に施与された脂肪アルコール(参照1)を使用することは、効果的ではない。水性脂肪アルコールエマルション(参照2)は、より効果的ではあるものの、良好な特性を発現させるためには、ドライモルタル混合物ではなく練混ぜ水に加えなければならず、これは使い勝手が悪い。
【0122】
【表10】
【0123】
【表11】
【0124】
DIN EN 1346に準拠したオープンタイム:
修飾セルロースエーテルを用いた試験を、異なる水分率で実施した。水は、使用されるセルロースエーテルの通常の必要な水分量である30重量%であり、これにより安定性も確保される。したがって、すべての混合物を30重量%の水で調合した。本発明による変法1の配合物は、接着剤にわずかな液状化作用を及ぼすため、水30重量%では≦0.5mmの安定性を達成することができなかった。安定性を確保するためには、必要な水分量を24重量%に減らす必要があった。
【0125】
混合物FK19およびFK29は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末を含んでおり、これが良好なオープンタイムの根拠となるものであった。しかし、FK19は60分後も依然として1.14N/mmの接着値を示したが、これは、このセルロースエーテルに必要な水分量が30重量%であることに起因するものであった。水分含有量がより低い24重量%であるFK29は、40分後にわずか0.34N/mmにしか達しなかった。
【0126】
混合物FK20および30は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照1を1.2重量%の濃度で含んでいた。ここでも、どちらの水分率でも、高濃度の参照1の悪影響が認められた。20分のオープンタイムしか得られず、C2接着剤としては不十分であった。
【0127】
混合物FK21およびFK31は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照1を0.305重量%というより低い濃度で含み、活性脂肪アルコール含有量は、またも本発明による変法1の配合物0.2重量%中の脂肪アルコール含有量と一致していた。どちらの水分率でのオープンタイムも、参照1を含まない混合物のオープンタイムとまたも同等であった。したがって、プラスの影響はなかった。
【0128】
混合物FK22、FK23、FK32およびFK33は、追加的にさらに参照3または参照4、または本発明による変法1の配合物中に0.2重量%で含まれていたのと同じ量のTylose MOBS 6 P4またはMH 50 G4を含んでいた。混合物FK23およびFK33は、どちらの水分率でも、それぞれ混合物FK21および31と比較して混合物FK22およびFK32よりも若干良好な接着値を得ることができた。Tylose MH 50 G4は、オープンタイムに対してわずかにプラスの影響を及ぼし、水30重量%でも24重量%と同様に認めることができた。
【0129】
混合物FK24およびFK34は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照2を含んでおり、ここでの脂肪アルコール含有量は、本発明による変法1の配合物0.2重量%中の脂肪アルコール含有量と一致していた。水24重量%での接着値は、特に30分のオープンタイムまでは水30重量%での接着値よりも高かった。接着値は、30分後には水30重量%ではいずれも依然として1N/mm超であったのに対し、水24重量%での接着値は1N/mm未満に低下した。60分後、この場合にはわずか0.53N/mmにしか達しなかったのに対して、より高い水分含有量では、この値は依然として1.28N/mmであった。脂肪アルコールを含まない混合物FK19およびFK29との直接比較では、いずれの接着値もより高く、水24重量%では大幅な差があった。
【0130】
混合物FK25、FK26、FK35およびFK36は、追加的に参照3または4を含み、その濃度は、本発明による変法1の配合物0.2重量%の濃度とまたも一致していた。混合物FK24およびFK34との直接比較において、どちらの水分率でもいずれの接着値もほぼ同一であり、参照3および4のプラスの影響もマイナスの影響も認められなかった。
【0131】
混合物FK27、FK28、FK37およびFK38は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて本発明による変法1の配合物を含んでいた。30重量%および24重量%の水で、混合物FK27およびFK37は、混合物FK28およびFK38よりも若干高い接着値を達成した。4つの混合物はすべて、参照2を含む混合物と直接比較して、50および60分後により高い接着値を示した。特に混合物FK27およびFK37では、部分的に、接着値がより高いという明らかな傾向が認められた。
【0132】
10、20および30分後の24重量%での混合物FK37の高い接着値が際立っており、これは2N/mm超も含まれていた。混合物FK38も同様に良好であったが、30分後には1.94N/mmで、2N/mmをわずかに下回った。
【0133】
このように、本発明による配合物により、脂肪アルコールエマルションとの混合物(参照2)と比較して、接着値の明らかな改善を達成することができた。
【0134】
DIN EN 1348に準拠した貯蔵タイプ:
混合物FK19およびFK29は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末のみを含んでいた。30重量%の水を含むFK19の場合には接着値がC2基準を満たしていたが、24重量%の水を含むFK29の場合には、接着値は、標準貯蔵および高温貯蔵についてのC2基準しか満たしていなかった。
【0135】
混合物FK20およびFK30は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照1を1.2重量%の濃度で含んでいた。どちらの水分率でも、またも参照1が貯蔵タイプの接着値に明らかな悪影響を及ぼすことを認めることができた。どちらの混合物でも、C2基準は満たされなかった。
【0136】
混合物FK21およびFK31は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照1を含んでおり、活性脂肪アルコール含有量は、またも本発明による変法1の配合物0.2重量%中の脂肪アルコール含有量と一致していた。接着値は、またも、より高い値を達成した。特に、水30重量%では、混合物FK19と同様の接着値を達成することができた。水24重量%では、接着値は総じて若干より低かった。いずれの水分率でも、すべての貯蔵タイプについてC2基準が達成されたわけではなかった。
【0137】
混合物FK22、FK23、FK32およびFK33は、追加的にさらに参照3または4、すなわち、本発明による変法1の配合物に0.2重量%で含まれていたのと同じ量のセルロースエーテル(Tylose MOBS 6 P4またはMH 50 G4)を含んでいた。混合物FK21またはFK31で得られた接着値の改善は確認することができなかった。
【0138】
混合物FK24およびFK34は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて参照2を含んでおり、活性脂肪アルコール含有量は、またも本発明による変法1の配合物0.2重量%中のアルコール含有量と一致していた。どちらの水分率での接着値も類似しており、水30重量%ではわずかに高い接着値となっている。しかし、混合物FK19およびFK29と比較して、有意により高い接着値を達成することができた。C2基準は、どちらの水分率でも満たされた。
【0139】
混合物FK25、FK26、FK35およびFK36は、追加的にさらに参照3または4、すなわち、本発明による変法1の配合物に0.2重量%で含まれていたのと同じ量のセルロースエーテル(Tylose MOBS 6 P4またはMH 50 G4)を含んでいた。混合物FK24またはFK34で達成された接着値の改善は、ここでも確認することができなかった。
【0140】
混合物FK27、FK28、FK37およびFK38は、修飾Tylose MHF 10015 P4および分散粉末に加えて本発明による変法1の配合物を含んでいた。どちらの水分率でも高い接着値を達成することができた。本発明による配合物を含まないおよび参照を含まない混合物と比較すると、接着値の明らかな改善を達成することができた。FK27およびFK37の混合物については、どちらの水分率でも高温保存後に非常に高い接着値を認めることができた。ここで、混合物FK38のみが依然として同等に良好であった。参照2を含む混合物と比較して、本発明による変法1の配合物では、圧倒的により高い接着値を達成することができた。
【0141】
結論:
本発明による変法1の配合物を修飾セルロースエーテルと組み合わせて使用することで、格段に長期の濡れ、非常に長いオープンタイム、および非常に高い接着値を、すべての貯蔵タイプで達成することができた。水性脂肪アルコールエマルション(参照2)を使用した場合と比較して、本発明による変法1の配合物によって、より良好な濡れ性と、それにより生じるより長いオープンタイムとを達成することができる。本発明による変法1の配合物は、配合物を含まない場合または参照1もしくは2を含む場合と比較して明らかに高い引張接着値の点で、貯蔵のタイプ、特に高温貯蔵にプラスの影響を及ぼすことができる。
【0142】
CEM II/A-SおよびCEM II/B-Pでの試験:
複合セメントを用いて試験を実施し、その際、タイル用接着剤混合物は、使用されたCEM I 52.5 Nの代わりにCEM II 42.5 R/A-SまたはCEM II 42.5 R/B-Pを含んでいた。
【0143】
ここでも、本発明による配合物を使用することにより、異なる貯蔵タイプの濡れ性、オープンタイムおよび引張接着値に対してプラスの影響を認めることができた。濡れ性も引張接着値も、CEM Iほど高くはなかったが、CEM II 42.5 R/A-Sでは60分までに0.58~0.75N/mmに達することができた。CEM II 42.5 R/B-Pに基づく混合物は、本発明による変法1の配合物のみで、40分後に依然として0.56または0.52N/mmの引張接着値を達成することができた。水性エマルションは、担体上に施与された脂肪アルコールと同様に、ここでは<0.2N/mmの値しか達成しなかった。
【0144】
異なる貯蔵タイプによる接着値は、本発明による配合物を使用することにより、水性エマルションと同様に同等の良好な値を示し、その大部分はC2の範囲、すなわち>1N/mmであった。
【0145】
他のドライモルタルのオープンタイムおよび可使時間の延長:
ETICS向け補強用パテ、石灰セメントプラスターにおいて、およびスキムコートやセメント面用パテにおいて本発明による変法1および変法2の配合物を使用してオープンタイムおよび可使時間を延長する試験でも、同様に良好な結果を得ることができた。
【0146】
ETICS向け補強用パテの補強メッシュ施与の施工時オープンタイムは、タイル用接着剤の濡れ時間と同等であった。60分後に、依然として問題なくメッシュを設置することができた。タイルを用いて、ここでも濡れ性を試験した。60分後に、依然として本発明による配合物はどちらも、タイル裏面の65または55%を濡らすことができた。
【0147】
石灰セメントプラスターの可使時間は、適切なセルロースエーテルを使用した場合、50~60分である。本発明の配合物を用いることで、可使時間を70分や90分に延長することができた。
【0148】
スキムコートやセメント面用パテにおいても、本発明による配合物の可使時間が長くなるなどのプラスの影響を認めることができた。
【0149】
多糖類を用いた試験:
水溶性物質および多糖類を用いてさらなる試験を実施した。これらの試験には、Tylovis PVA 18(ポリ酢酸ビニル)、ポリアクリルアミド、ペクチン、カラギーナン、グアーガムおよびその誘導体、ならびにローカストビーンガムを使用した。
【0150】
ポリアクリルアミドを除いて、すべての物質を本発明による変法2の配合物と同様に製造した。ここで、水性アルコールエマルションを水溶性物質に等しい部だけ練り込んだ。
【0151】
ポリアクリルアミドを過度に多量で使用すると処理が困難になるため、変法1の配合物の製造方法を選択した。エマルションを水で1:1に希釈し、完全に均質化した後、ポリアクリルアミドを練り込んだ。2hの混合時間後に、溶液を乾燥させ、次いで粉砕して粉末にした。
【0152】
このようにして製造した配合物を、前記と同様に、同じタイル用接着剤調製物中で0.3または0.4重量%の未修飾Tylose MHF 15000 P4に加えて0.2または0.5重量%で使用した。セルロースエーテルはすべての調製物において不可欠であり、なぜならば、さもなくば保水性も良好な施工性も得られず、許容可能な濡れ時間が達成されないためである。同じ23重量%の水分含有量では、セルロースエーテルをベースとする配合物を使用した場合のようには濡れ時間が延長されないことが判明した。
【0153】
グアーガムおよびその誘導体、ならびにローカストビーンガムも、最も長い濡れ時間を示し、45分後に依然としてタイル裏面の65または50%の濡れ性が達成された。50分後には濡れ性が低下して20%となった。カラギーナンおよびペクチンは40分という良好な濡れ時間を達成した。Tylovis PVA 18は、乾燥プロセスの際に配合物がケーキングを生じたため施工できなかった。
【0154】
このように、セルロースエーテルおよび多糖類をベースとする配合物は、オープンタイムや濡れ時間の延長に対して最良の効果を示す。
【0155】
文献:
Jenni, A.; Holzer, L.; Zurbriggen, R.; Herwegh, M.; Influence of polymers on microstructure and adhesive strength of cementitious tile adhesive mortar, Cement and Concret Research 35, 2005, 35-50.
【国際調査報告】