(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】剥離を支援するための装置、並びにそれを使用する剥離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
H01L21/68 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518695
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019053960
(87)【国際公開番号】W WO2020072422
(87)【国際公開日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0118360
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コン,ボギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュヨン
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA03
5F131AA13
5F131AA33
5F131BA60
5F131CA09
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131EB01
5F131EB52
5F131EB81
5F131KA22
5F131KA54
(57)【要約】
キャリアガラスシートと極薄ガラスシートとを剥離するプロセスを支援するための装置。吸引プレートは、その上に着座させたガラス積層体を吸引保持するための吸引孔を画成する複数の吸引孔部と、ガラス積層体の極薄ガラスシートの一方の表面から突出する少なくとも1つのデバイス層を収容する少なくとも1つの凹所を画成する少なくとも1つの凹部とを含む。複数の吸盤は、それぞれ、該複数の吸盤が、極薄ガラスシート及びデバイス層の接触圧力に応じて弾性的に圧縮可能になるように、複数の吸引孔部に取り付けられる。真空ポンプは、複数の吸引孔部に接続されて、該複数の吸引孔部に負圧を印加する。コントローラは、真空ポンプを制御して、複数の吸引孔部に印加された負圧を調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のガラス積層体として接合されたキャリアガラスシートと極薄ガラスシートとを剥離するプロセスを支援するための装置であって、該装置が、
その上に着座させたガラス積層体を吸引保持するための吸引孔を画成する複数の吸引孔部と、前記ガラス積層体の極薄ガラスシートの一方の表面から突出する少なくとも1つのデバイス層を収容する少なくとも1つの凹所を画成する少なくとも1つの凹部とを含む吸引プレート;
前記極薄ガラスシート及び前記デバイス層の接触圧力に応じて、弾性的に圧縮可能になるように、それぞれ、前記複数の吸引孔部に取り付けられた複数の吸盤;
前記複数の吸引孔部に接続されて前記複数の吸引孔部に負圧を印加する真空ポンプ;及び
前記真空ポンプを制御して前記複数の吸引孔部に印加された前記負圧を調整するコントローラ
を含む、装置。
【請求項2】
前記凹部が、前記デバイス層の厚さより深い、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの凹部が、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの表面に配置されており、かつ
前記吸引プレートが、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの前記表面上の前記少なくとも1つの凹部を取り囲む周辺部をさらに含む、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの凹部が、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの表面に配置された複数の凹部を含み、かつ
前記吸引プレートが、前記複数の凹部を取り囲む周辺部と、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの前記表面の前記複数の凹部のうちの隣接する凹部間に配置されたリブとをさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記吸引プレートが、
前記複数の凹部のうちの各凹部に設けられた前記複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第1の流路であって、前記真空ポンプに接続する第1の流路;
前記周辺部に設けられた前記複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第2の流路であって、前記真空ポンプに接続する第2の流路;及び
前記リブに設けられた前記複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第3の流路であって、前記真空ポンプに接続する第3の流路
を備えている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記吸引プレートが、それぞれ、前記第1の流路、前記第2の流路、及び前記第3の流路上に配置された制御弁をさらに備えている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の流路が、それぞれ、前記複数の凹部に設けられた、個別に制御される複数の第1の流路を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の吸盤の各々が、
前記複数の吸引孔部のうちの対応する吸引孔部の内周面に固定された固定部であって、第1の孔部が前記固定孔部の長手方向に延びる、固定部;及び
前記固定部の先端に結合されて前記吸引プレートの上面から突出する動作部であって、第2の孔部が前記動作部の長手方向に延びて前記第1の孔部と連通しており、前記動作部が前記極薄ガラスシート又は前記デバイス層の接触圧力に応じて弾性的に圧縮可能である、動作部
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記固定部の外周面が、前記対応する吸引孔部の前記内周面とねじ嵌合する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記動作部がベローズを含む、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2018年10月4日出願の韓国特許出願第10-2018-0118360号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、剥離を支援するための装置、並びにそれを使用する剥離方法に関する。より詳細には、剥離を支援するための装置並びにそれを使用する剥離方法は、その一方の表面にデバイス層が突出している極薄ガラスシートと、該極薄ガラスシートのもう一方の表面に接合されたキャリアガラスシートとを剥離するプロセスを確実に支援することができ、その各々の上に厚さの異なるデバイス層が設けられた極薄ガラスシートを剥離するプロセスに共通に使用することができる。
【背景技術】
【0003】
概して、極薄ガラスは、入手可能であるにもかかわらず、取り扱いが難しいことから、適用性が低いという欠点を有している。厚さが20μm~250μmの極薄ガラスシートは、軽微な衝撃が加えられた場合でも引っかき傷が付きやすく、このような引っかき傷は、極薄ガラスシートの損傷又は破損の原因となりうる。これに関しては、一般的に、極薄ガラスシートよりも硬く、例えば0.5mm以上の厚さを有する薄いガラスシートを、極薄ガラスシートを接合する裏張りとして用い、得られた構造は、単一のユニット(シート)として取り扱われる。例えば、フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)、発光ダイオード(LED)サイネージなどの製造では、デバイス層がこのようなユニット上に堆積によって作製され、薄いガラスシートから極薄ガラスシートを剥離する剥離プロセスが最終的に行われる。
【0004】
フレキシブルOLEDの場合、封止フィルムが極薄ガラスシートの表面から少なくとも所定の厚さまで突出する。LEDサイネージの場合には、LEDチップが極薄ガラスシート上に搭載される場合、該LEDチップは、極薄ガラスシートの表面から少なくとも所定の厚さまで突出する。
【0005】
典型的には、上述したデバイス層が極薄ガラスシートと薄いガラスシートとからなるユニット上に作製された後、吸引プレート及び吸盤などの真空デバイスが、ある程度の真空力を使用して、極薄ガラスシートと薄いガラスシートとを剥離する。
【0006】
しかしながら、上述のように、極薄ガラスシート上のデバイス層によって提供される突起は、極薄ガラスシートと真空デバイスとの間の密着の度合いを低下させる可能性があり、問題がある。例えば、関連技術の剥離プロセスは、極薄ガラスシートの一方の表面、より具体的には、その上に複数のデバイス層が作製された極薄ガラスシートの一方の表面を、平らな吸引プレートの表面に対して吸引保持し、次いで、極薄ガラスシートの他方の表面に接合された薄いガラスシートを極薄ガラスシートから分離することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願公開第10-2016-0031637号明細書(2016年3月23日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数のデバイス層が極薄ガラスシートの一方の表面の一部から突出しているため、この複数の突出するデバイス層は、吸引プレートに密着することができるが、隣接するデバイス層間の極薄ガラスシートの一方の表面の部分及び極薄ガラスシートの一方の表面の周辺部は、吸引プレートに密着しない。したがって、極薄ガラスシートと吸引プレートとの間の密着度は、全体的に低下する。この状況において、吸引プレートが該吸引プレートに負圧を印加することによって極薄ガラスシートを吸引保持する場合、吸引プレートに密着していない極薄ガラスシートの周辺部は、吸引プレートに引きつけられる可能性があり、その結果、極薄ガラスシートが曲がるか、反ってしまう可能性がある。この場合、剥離プロセスを行うことが困難になりうる。加えて、極薄ガラスシートの曲がり又は反りの度合いが増すと、極薄ガラスシートが最終的に損傷し、それによって歩留まりに悪影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のさまざまな態様は、剥離を支援するための装置並びにそれを使用する剥離方法を提供し、該装置及び方法は、その一方の表面からデバイス層が突出している極薄ガラスシートと、該極薄ガラスシートの他方の表面に接合されたキャリアガラスシートとを剥離するプロセスを確実に支援することができ、その各々の上に厚さの異なるデバイス層が設けられた極薄ガラスシートを剥離するプロセスに共通に使用することができる。
【0010】
一態様によれば、単一のガラス積層体として接合されたキャリアガラスシートと極薄ガラスシートとを剥離するプロセスを支援するための装置が提供される。該装置は、その上に着座させたガラス積層体を吸引保持するための吸引孔を画成する複数の吸引孔部と、ガラス積層体の極薄ガラスシートの一方の表面から突出する少なくとも1つのデバイス層を収容する少なくとも1つの凹所を画成する少なくとも1つの凹部とを含む吸引プレート;複数の吸盤が、極薄ガラスシート及びデバイス層の接触圧力に応じて弾性的に圧縮可能になるように、それぞれ、複数の吸引孔部に取り付けられた複数の吸盤;複数の吸引孔部に接続されて複数の吸引孔部に負圧を印加する真空ポンプ;並びに、真空ポンプを制御して複数の吸引孔部に印加された負圧を調整するコントローラを備えている。
【0011】
凹部は、デバイス層の厚さよりも深くなりうる。
【0012】
少なくとも1つの凹部は、その上にガラス積層体が着座する吸引プレートの表面に配置することができ、該吸引プレートは、その上にガラス積層体が着座した吸引プレートの表面の少なくとも1つの凹部を取り囲む周辺部をさらに含みうる。
【0013】
少なくとも1つの凹部は、その上にガラス積層体が着座する吸引プレートの表面に配置された複数の凹部を含みうる。吸引プレートは、複数の凹部を取り囲む周辺部と、その上にガラス積層体が着座する吸引プレートの表面の複数の凹部のうちの隣接する凹部間に配置されたリブとをさらに含みうる。
【0014】
吸引プレートは、複数の凹部のうちの各凹部に設けられた複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第1の流路であって、真空ポンプに接続している第1の流路;周辺部に設けられた複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第2の流路であって、真空ポンプに接続している第2の流路;及び、リブに設けられた複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第3の流路であって、真空ポンプに接続している第3の流路を含みうる。
【0015】
吸引プレートは、それぞれ、第1の流路、第2の流路、及び第3の流路上に配置された制御弁をさらに含みうる。
【0016】
第1の流路は、それぞれ、複数の凹部に設けられた、個別に制御される複数の第1の流路を含みうる。
【0017】
複数の吸盤の各々は、複数の吸引孔部のうちの対応する吸引孔部の内周面に固定された固定部であって、固定孔部の長手方向に延びる第1の孔部を有する、固定部;及び、固定部の先端に結合されて吸引プレートの上面から突出する動作部であって、該動作部の長手方向に延びて第1の孔部と連通する第2の孔部を有し、極薄ガラスシート又はデバイス層の接触圧力に応じて弾性的に圧縮可能な、動作部を含みうる。
【0018】
固定部の外周面は、対応する吸引孔部の内周面とねじ嵌合されうる。
【0019】
動作部はベローズでありうる。
【0020】
ガラス積層体は、極薄ガラスシートよりも比較的厚く、かつ幅広であるキャリアガラスシートが、極薄ガラスシートを取り囲みつつ、該極薄ガラスシートに接合されるように、構成されうる。
【0021】
極薄ガラスシートの厚さは、20μm~250μmの範囲でありうる。
【0022】
装置は、ガラス積層体が吸引プレートに着座した後に、ガラス積層体のキャリアガラスシート上に配置された少なくとも1つの吸引キャップをさらに含みうる。
【0023】
少なくとも1つの吸引キャップは、コントローラによって制御される真空ポンプに接続され、該真空ポンプによって印加される負圧を使用して、キャリアガラスシートを吸引保持することができる。
【0024】
少なくとも1つの吸引キャップは、コントローラの制御下でキャリアガラスシートを持ち上げるために上下方向に移動可能になるように構成することができ、それによって極薄ガラスシートからキャリアガラスシートを分離させることができる。
【0025】
少なくとも1つの吸引キャップは、複数の吸引キャップを含みうる。コントローラは、真空ポンプを制御して、剥離伝播方向に連続的に複数の吸引キャップに負圧を印加することができる。
【0026】
吸引プレートは、水平方向に移動可能でありうる。
【0027】
吸引プレートは、ガラス積層体がその上に着座した後に少なくとも1つの吸引キャップの下に移動し、剥離が終了した後に初期位置に戻りうる。
【0028】
装置は、吸引プレートの周りに配置された第1~第4のトレイをさらに含むことができ、ここで、剥離されるガラス積層体は第1のトレイに配置され、剥離された極薄ガラスシートは第2のトレイに配置され、剥離されたキャリアガラスシートは第3のトレイに配置され、複数の紙シートは、第1~第3のトレイに供給される前に第4のトレイに載荷される。
【0029】
装置は、吸引プレート及び第1~第4のトレイを周回して、ガラス積層体、剥離された極薄ガラスシート、剥離されたキャリアガラスシート、及び複数の紙シートを輸送するガントリユニットをさらに含むことができる。
【0030】
単一のガラス積層体として接合されたキャリアガラスシートと極薄ガラスシートとを剥離する方法も提供される。該方法は、上述した装置の吸引プレートの上面の適所にガラス積層体を位置決めする工程;吸引プレートに負圧を印加して、吸引プレートの上面に配置されたガラス積層体を吸引保持する工程;及び、吸引プレートが極薄ガラスシートを吸引保持する間に、ガラス積層体の極薄ガラスシートからガラス積層体のキャリアガラスシートを剥離する工程を含みうる。
【0031】
ガラス積層体は、キャリアガラスシートが吸引プレートに接触しないように適所に位置決めされうる。
【0032】
極薄ガラスシートからキャリアガラスシートを剥離する工程は、キャリアガラスシートを吸引保持すること、及びキャリアガラスシートを一方の側から他方の側へと連続的に持ち上げることを含みうる。
【0033】
キャリアガラスシートを吸引保持する工程は、キャリアガラスシートの部分を剥離伝播方向に連続的に吸引保持することを含みうる。
【0034】
例示的な実施形態によれば、極薄ガラスシートの一方の表面から突出するデバイス層を収容するための凹所を有する吸引プレートが提供される。したがって、極薄ガラスシートと、該極薄ガラスシートの他方の表面に接合されたキャリアガラスシートとを剥離するプロセスを確実に支援することが可能でありうる。
【0035】
具体的には、例示的な実施形態によれば、剥離プロセスでは、極薄ガラスシートの一方の表面と吸引プレートとの間の密着度の差を最小限に抑えることができる。より具体的には、その上にデバイス層が設けられた極薄ガラスシートの一領域と吸引プレートとの密着度と、その上にデバイス層が設けられていない極薄ガラスシートの他の領域と吸引プレートとの密着度との差を、最小限に抑えることができる。これにより、負圧又は真空圧を使用した剥離プロセス中に極薄ガラスシートが曲がって損傷する可能性を低減することができ、それによってプロセスの歩留まりを向上させることができる。
【0036】
加えて、例示的な実施形態によれば、剥離プロセスを確実に支援することができるように、凹所全体、及び極薄ガラスシートに面する吸引プレートの上面の凹所を取り囲む周辺部には、複数の吸引孔が設けられる。
【0037】
さらには、例示的な実施形態によれば、長手方向に弾性的に圧縮可能な吸盤が、吸引プレートの凹所に設けられた吸引孔に配置される。この構成は、その各々の上に厚さの異なるデバイス層が設けられた他の極薄ガラスシートのための剥離プロセスに共通に使用することができる。
【0038】
加えて、例示的な実施形態によれば、金属から形成された吸引プレートと接触することによる極薄ガラスプレートに対する損傷を防止することができるように、長手方向に弾性的に圧縮可能な吸盤が、凹所の吸引孔だけでなく、周辺部及びリブの吸引孔にも配置される。
【0039】
本開示の方法及び装置はともに、本開示のある特定の原則を説明する役割を担う、本明細書に組み込まれる添付の図面及び以下の詳細な説明から明らかである、又はより詳細に記載されている、他の特徴及び利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置を示す平面図
【
図4】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置によって吸引保持されたガラス積層体を示す概略図
【
図5A】その上に厚さの異なるデバイス層が設けられたガラス積層体が例示的な実施形態による剥離を支援するための装置によって吸引保持される形状を比較する概略図
【
図6】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置における吸盤の接続構造を示す概略図
【
図7】吸盤が例示的な実施形態による剥離を支援するための装置の吸引孔に嵌合する概略図
【
図8】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置における、ある構造を有する凹所を示す平面図
【
図9】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置における、別の構造を有する凹所を示す平面図
【
図10】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置における、さらに別の構造を有する凹所を示す平面図
【
図11】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置における吸引キャップの適用を示す概略図
【
図12】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置を使用してガラス積層体が剥離される概略図
【
図13】例示的な実施形態による剥離を支援するための装置を概略的に示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0041】
これより、剥離を支援するための装置、並びにそれを使用する剥離方法について、添付図面を参照して説明する。
【0042】
以下の説明では、本開示に組み込まれる既知の機能及び構成要素の詳細な説明は、それらを含めることによって本開示の主題が不明確になる場合には省略される。
【0043】
図1~4に示されるように、例示的な実施形態による剥離を支援するための装置は、極薄ガラスシート12の一方の表面にデバイス層13を作製した後に、キャリアガラスシート11から極薄ガラスシート12を剥離するプロセスを支援するための装置であり、ここで、極薄ガラスシート12は、フレキシブル有機発光ダイオード(OLED)、発光ダイオード(LED)サイネージなどへと変換されるデバイス層13を作製するプロセスを促進するために、キャリアガラスシート11に接合されて単一のガラス積層体10を提供する。
【0044】
これに関して、例示的な実施形態による剥離を支援するための装置は、吸引プレート110、複数の吸盤120、真空ポンプ130、及びコントローラ140を含む。
【0045】
吸引プレート110は、その上に着座させたガラス積層体10を吸引保持するように構成された台である。極薄ガラスシート12の輸送時又は極薄ガラスシート12上へのデバイス層13の作製時の取り扱いが困難な場合があるため、ガラス積層体10は、極薄ガラスシート12を支持するように作製される。ガラス積層体10は、極薄ガラスシート12をキャリアガラスシート11に接合させることによって作製される。すなわち、ガラス積層体10は、極薄ガラスシート12がキャリアガラスシート11によって支持されている間に、デバイス層13を作製するプロセスが確実に行われるように作製される。
【0046】
ガラス積層体10は、異なる厚さ及び面積を有しているキャリアガラスシート11と極薄ガラスシート12とを接合することによって提供される。単一のガラス積層体10は、より幅広く、より厚いキャリアガラスシート11が極薄ガラスシート12を取り囲むように、すなわち、キャリアガラスシート11が極薄ガラスシート12の4つの側面のそれぞれを超えて延在するように、キャリアガラスシート11と極薄ガラスシート12とを接合することによって提供される。次に、複数のデバイス層13は、極薄ガラスシート12を例えば電極層を形成する酸化インジウムスズ(ITO)でコーティングし、ITO膜をパターン化し、該パターン化されたITO膜を絶縁膜でコーティングし、絶縁膜をパターン化して複数の絶縁層とし、パターン化された絶縁層上に、それぞれ、有機発光層を堆積させ、得られた構造を封止フィルムで封止することによって、ガラス積層体10上に作製される。本明細書では、複数のデバイス層13は、極薄ガラスシート12の表面から少なくとも所定の厚さだけ突出する。
【0047】
複数のデバイス層13の作製が完了すると、該複数のデバイス層13が作製された極薄ガラスシート12は、パネル切断などの後続の処理のために、キャリアガラスシート11から剥離する必要がある。
【0048】
例示的な実施形態によれば、極薄ガラスシート12とは、20μm~250μmの厚さを有するガラスシートのことを指しうる。上述のように、キャリアガラスシート11として、極薄ガラスシート12より幅広く、かつ厚いガラスシートが用いられうる。
【0049】
剥離プロセスでは、ガラス積層体10は、吸引プレート110上に着座し、次に、吸引プレート110によって吸引保持される。これに関して、吸引プレート110は、複数の吸引孔111a、111b、及び111cを画成して、ガラス積層体10と接触するときに該ガラス積層体10を吸引保持する、複数の吸引孔部を含む。
【0050】
例示的な実施形態によれば、吸引プレート110の上面は、凹所112を画成する凹部と、該凹所112を画成する凹部を取り囲む周辺部113とからなる。例示的な実施形態によれば、複数の吸引孔111aは、凹所112の各々に設けられる。加えて、複数の吸引孔111bも、周辺部113に設けられる。
図1及び8に示されるように、凹所112に設けられた複数の吸引孔111aの密度は、周辺部113に設けられた複数の吸引孔111bの密度より低くなりうる。これにより、凹所112によって生成された吸引力を周辺部113によって生成された吸引力よりも小さくすることができ、それによって、凹所112に収容されたデバイス層13が不良品になるのを防止することができる。しかしながら、
図9及び10に示されるように、凹所112に設けられた複数の吸引孔111aの密度は、周辺部113に設けられた複数の吸引孔111bの密度と同じであってもよい。
【0051】
上述のように、凹所112又は周辺部113に設けられた複数の吸引孔111a又は111bの密度は、剥離プロセスの条件又は環境に応じて変化しうる。したがって、例示的な実施形態によれば、凹所112又は周辺部113に設けられる複数の吸引孔111a又は111bの密度は特に限定されない。
【0052】
リブ114は、吸引プレート110の上面の隣接する凹所112間に設けられて、周辺部113とともに凹所112を画成しうる。しかしながら、
図9に示されるように、単一のデバイス層13が極薄ガラスシート12の一方の表面に設けられている場合には、リブ114は省略することができる。
【0053】
加えて、
図1及び2に示されるように、複数の吸引孔111cをリブ114に設けることができる。しかしながら、
図10に示されるように、極薄ガラスシート12の一方の表面に設けられた複数のデバイス層13間の距離が小さく、リブ114の幅が狭い場合には、吸引孔111cは省略することができる。
【0054】
上述のように、例示的な実施形態によれば、複数の吸引孔111a、111b、及び111cが吸引プレート110の凹所112全体、凹所112を取り囲む周辺部113、及びリブ114に設けられていることから、剥離プロセスを確実に支援することができる。
【0055】
例示的な実施形態による剥離プロセスでは、ガラス積層体10は、そこからデバイス層13が突出する極薄ガラスシート12の一方の表面が吸引プレート110の上面に面するように、極薄ガラスシート12の上面に着座する。すなわち、吸引プレート110の複数の吸引孔111a、111b、及び111cは、吸引によって、極薄ガラスシート12の一方の表面とデバイス層13とを保持する。本明細書では、凹所112は、デバイス層13を収容する吸引プレート110の上面の領域であり、凹所112の数は、極薄ガラスシート12の一方の表面に設けられたデバイス層13の数と同じである。
【0056】
例示的な実施形態によれば、デバイス層13を収容する凹所112は、デバイス層13の厚さより深くなるように設けられる。極薄ガラスシート12の一方の表面から突出するデバイス層13を収容するために凹所112が吸引プレート110の上面に設けられている場合、極薄ガラスシート12と極薄ガラスシート12の他方の表面に接合されたキャリアガラスシート11とを剥離するプロセスは、確実に支援されうる。
【0057】
すなわち、剥離プロセスでは、極薄ガラスシート12の一方の表面と吸引プレート110の上面との間の密着度の差を最小限に抑えることができる。より具体的には、その上にデバイス層13が設けられた極薄ガラスシート12の一領域と吸引プレート110の上面との密着度と、その上にデバイス層が設けられていない極薄ガラスシート12の他の領域と吸引プレート110の上面との密着度との間の差を、最小限に抑えることができる。これにより、負圧又は真空圧を使用した剥離プロセス中に極薄ガラスシート12が曲がって損傷する可能性を低減することができ、それによってプロセスの歩留まりを向上させることができる。
【0058】
加えて、例示的な実施形態による吸引プレート110は、第1の流路115、第2の流路116、及び第3の流路117をさらに含みうる。
【0059】
第1の流路115は、凹所112内の複数の吸引孔111aと真空ポンプ130との間に設けられ、複数の吸引孔111aと真空ポンプ130とを接続する。第1の流路115は、凹所112に設けられた複数の吸引孔111aを互いに接続することができる。したがって、真空ポンプ130によって印加される負圧は、第1の流路115を通じて複数の吸引孔111aに分散され、それによって吸引力を生成することができる。例示的な実施形態によれば、複数の第1の流路115は、それぞれ、複数の凹所112に設けられうる。この場合、複数の凹所112に設けられた複数の第1の流路115の各々は、個別に制御することができる。
【0060】
第2の流路116は、周辺部113に設けられた複数の吸引孔115bと真空ポンプ130との間に設けられ、複数の吸引孔115bと真空ポンプ130とを接続する。第2の流路116は、周辺部113内の複数の吸引孔111bを互いに接続することができる。したがって、真空ポンプ130によって印加される負圧は、第2の流路116を通じて複数の吸引孔111bに分散され、それによって吸引力を生成することができる。
【0061】
第3の流路117は、リブ114に設けられた複数の吸引孔111cと真空ポンプ130との間に設けられ、複数の吸引孔111cと真空ポンプ1300とを接続する。第3の流路117は、リブ114に設けられた複数の吸引孔111cを互いに接続することができる。したがって、真空ポンプ130によって印加される負圧は、第3の流路117を通じて複数の吸引孔111cに分散され、それによって吸引力を生成することができる。
【0062】
例示的な実施形態によれば、制御弁118が、それぞれ、第1の流路115、第2の流路116、及び第3の流路117に設けられうる。この構成に起因して、真空ポンプ130によって第1の流路115、第2の流路116、及び第3の流路117に負圧が印加された場合でも、凹所112に設けられた複数の吸引孔111a、周辺部113に設けられた複数の吸引孔111b、又はリブ114に設けられた複数の吸引孔111cに吸引力が生成するのを防止することができる。例示的な実施形態によれば、それぞれ、第1の流路115、第2の流路116、及び第3の流路117に設けられた制御弁118を制御することによって、剥離プロセスの条件又は環境に応じて、吸引プレート110の上面の面積に応じて吸引力を調整することができる。
【0063】
吸盤120は、それぞれ、複数の吸引孔111a、111b、及び111cに嵌合する。吸盤120は、極薄ガラスシート12及びデバイス層13の接触圧力に応じて、長手方向に弾性的に圧縮可能になるように構成される。具体的には、凹所112内の複数の吸引孔111aに嵌合する吸盤120は、デバイス層13と接触し、デバイス層13の接触圧力によって弾性的に圧縮される。加えて、複数の吸引孔111b及び111cに嵌合する吸盤120は、極薄ガラスシート12と直接接触して、極薄ガラスシート12の接触圧力によって弾性的に圧縮される。
【0064】
図5A及び5Bに示されるように、長手方向に弾性的に圧縮可能な吸盤120が凹所112の吸引孔111aに嵌合する場合、この構成は、その各々に異なる厚さを有するデバイス層13が設けられた他の極薄ガラスシート12のための剥離プロセスに共通に使用することができる。
【0065】
加えて、周辺部113及びリブ114に設けられた複数の吸引孔111b及び111cに嵌合する吸盤120は、極薄ガラスシート12の一方の表面が金属から形成された吸引プレート110の上面と直接接触することによって局所的に損傷されないように、極薄ガラスシート12を保護する役割を担う。
【0066】
図6及び7に示されるように、例示的な実施形態によれば、吸盤120の各々は、固定部121と動作部122とを含みうる。
【0067】
固定部121は、吸引孔111a、111b、及び111cのうちの対応する吸引孔の内周面に固定される。固定部121の外周面は、対応する吸引孔111a、111b、又は111cの内周面とねじ嵌合されうる。固定部121には、その長手方向に延在する第1の孔(図示せず)が設けられうる。例示的な実施形態によれば、固定部121は、金属から形成されうる。
【0068】
動作部122は、ベローズとして提供されうる。動作部122は、固定部121の先端の周りに取り付けられうる。この構成に起因して、動作部122は、吸引プレート110の上面から突出しうる。加えて、動作部122には、固定部121に設けられた第1の孔(図示せず)と連通する動作部122の長手方向に延在する第2の孔(図示せず)が設けられる。
【0069】
例示的な実施形態によれば、動作部122は、極薄ガラスシート12及びデバイス層13と実質的に接触又は密着しうる。例示的な実施形態によれば、動作部122は、極薄ガラスシート12又はデバイス層13の接触圧力に応じて、弾性的に圧縮される。動作部122が上述のように圧縮されるとき又は元に戻るときに、例示的な実施形態による剥離を支援するための装置は、その各々に異なる厚さを有するデバイス層13が設けられた極薄ガラスシート12のための剥離プロセスに共通に使用することができる。
【0070】
真空ポンプ130は、吸引プレート110、より具体的には、第1の流路115、第2の流路116、及び第3の流路117によって、吸引プレート110の上面に画成された凹所112、周辺部113、及びリブ114に設けられた複数の吸引孔111a、111b、及び111cに接続され、それによって、複数の吸引孔111a、111b、及び111cに負圧を印加する。より具体的には、吸盤120が、それぞれ、複数の吸引孔111a、111b、及び111cに嵌合するため、真空ポンプ130は、実質的に、複数の吸引孔111a、111b、及び111cに嵌合する吸盤120に負圧を印加する。
【0071】
真空ポンプ130によって印加されるこのような負圧は、対応する領域における複数の吸盤120に吸引力を生成する。その結果、剥離プロセスで複数の吸盤120に接触したまま維持される極薄ガラスシート12又はデバイス層13は、吸盤120によって吸引保持される。結果として、吸引プレート110の上面に着座したガラス積層体10を剥離することができる。
【0072】
コントローラ140は、真空ポンプ130を制御することによって複数の吸引孔111a、111b、及び111cに印加される負圧を調整する。例示的な実施形態によれば、コントローラ140は、真空ポンプ130を制御して、複数の吸引孔111a、111b、及び111cに対し均一な負圧を印加することができる。
【0073】
例示的な実施形態によれば、均一な負圧が、凹所112に設けられた複数の吸引孔111a及び周辺部113に設けられた複数の吸引孔111bに印加される場合でも、凹所112の複数の吸引孔111aの密度は周辺部113の複数の吸引孔111bの密度とは異なりうるため、凹所112と周辺部113とには、異なるレベルの吸引力が生成しうる。具体的には、均一な負圧が印加される場合でも、デバイス層13が設けられた凹所112には比較的小さい吸引力が生成される可能性があり、一方、デバイス層13が設けられておらず、極薄ガラスシート12の一方の表面と接触している周辺部113には、比較的大きい吸引力が生成されうる。例示的な実施形態によれば、吸引孔の密度は、面積に応じて異なるレベルの吸引力が生成されるように、面積に応じて変化するように設定される。しかしながら、これは一例であり、剥離プロセスの条件又は環境に応じて、面積に応じた吸引孔の密度が同じになるように、又は異なるように、調整することができる。同様に、吸引孔のサイズは、剥離プロセスの条件又は環境に応じて、適宜、調整することができる。
【0074】
図11及び12に示されるように、例示的な実施形態による剥離を支援するための装置は、少なくとも1つの吸引キャップ150をさらに含みうる。吸引キャップ150は、ガラス積層体10が吸引プレート110の上面に着座する場合に、キャリアガラスシート11上に配置される。吸引キャップ150は、コントローラ140によって制御される真空ポンプ130に接続され、真空ポンプ130によって印加される負圧を使用して、キャリアガラスシート11の上部を吸引保持する。
【0075】
例示的な実施形態によれば、吸引キャップ150は、上下方向に移動するように構成される。吸引キャップ150の上下方向の動きは、コントローラ140によって制御することができる。具体的には、吸引キャップ150は、キャリアガラスシート11を吸引保持している間に、キャリアガラスシート11を持ち上げるように、コントローラ140によって制御され、それによって、吸引プレート110によって吸引保持された極薄ガラスシート12からキャリアガラスシート11を完全に分離する。本明細書では、コントローラ140は、真空ポンプ130を制御して、複数の吸引キャップ150に対し、剥離が伝播する方向に負圧を連続的に印加することができる。
【0076】
例示的な実施形態によれば、吸引プレート110は、水平方向に移動可能になるように構成されうる。したがって、ガラス積層体10が吸引プレート110の上面に着座するときに、吸引プレート110は複数の吸引キャップ150の下に移される。剥離プロセスの完了時に、吸引プレート110は初期位置に戻されうる。
【0077】
図13に示されるように、例示的な実施形態による剥離を支援するための装置は、吸引プレート110の周りに配置された、第1のトレイ161、第2のトレイ162、第3のトレイ163、及び第4のトレイ164をさらに含みうる。剥離されるガラス積層体10は、剥離プロセスの前に、第1のトレイ161に配置される。剥離された極薄ガラスシート12、すなわち、キャリアガラスシート11から分離された極薄ガラスシート12は、第2のトレイ162に順次載荷される。剥離されたキャリアガラスシート11は、第3のトレイ163に順次載荷される。加えて、第1のトレイ161、第2のトレイ162、及び第3のトレイ163に供給される前に、複数の紙シートが第4のトレイ164に載荷される。
【0078】
上述のように、例示的な実施形態によれば、ガラス積層体10は、第1のトレイ161から吸引プレート110に移動し、剥離された極薄ガラスシート12は、吸引プレート110から第2のトレイ162に移動し、剥離されたキャリアガラスシート11は、吸引プレート110から第3のトレイ163に移動する。加えて、紙のシートが、第4のトレイ164から第1のトレイ161、第2のトレイ162、及び第3のトレイ163に移動する。
【0079】
ガラス積層体10、剥離された極薄ガラスシート12、剥離されたキャリアガラスシート11、及び紙のシートの上述の移動のために、例示的な実施形態による剥離を支援するための装置は、
図13に示されるように、ガントリユニット170をさらに含みうる。
【0080】
ガントリユニット170は、第1~第4のトレイ161~164を周回し、ガラス積層体10、剥離された極薄ガラスシート12、剥離されたキャリアガラスシート11、及び紙のシートを輸送する。ガントリユニット170の移動手順及び移動方法については後で詳細に説明する。
【0081】
これより、
図11~13を参照して、例示的な実施形態に従う剥離を支援するための装置を使用するガラス積層体を剥離するプロセスについて説明する。以下の説明において、
図11~13に示されていない構成要素については、残りの図を参照する。
【0082】
例示的な実施形態によるガラス積層体を剥離する方法は、位置決め工程、圧力印加工程、及び剥離工程を含む。
【0083】
まず、
図11及び13に示されるように、位置決め工程では、ガラス積層体10は、吸引プレート110の上面の適所に位置決めされる。具体的には、位置決め工程では、ガントリユニット170が第1のトレイ161に配置されたガラス積層体10を持ち上げた後、ビジョンアライメントが完了すると、次に、ガラス積層体10は吸引プレート110の上面の適所に位置決めされる。位置決め工程では、ガラス積層体10は、極薄ガラスシート12が下を向くように(図中)、吸引プレート110の上面に着座する。本明細書では、ガラス積層体10は、キャリアガラスシート11の底面が吸引プレート110の上面に触れないように適所に位置決めされる。
【0084】
吸引プレート110の上面の適所にガラス積層体10を位置決めするプロセスでは、極薄ガラスシート12の一方の表面から突出するデバイス層13は、吸引プレート110の凹所112に収容される。本明細書では、凹所112の複数の吸引孔111aに嵌合する複数の吸盤120は、デバイス層13と接触し、デバイス層13の接触圧力によって圧縮される。結果的に、極薄ガラスシート12は、平坦なプレートの形状を維持することができる。デバイス層13のない、極薄ガラスシート12の一方の表面の他の部分は、吸引プレート110の周辺部113及びリブ114に着座する。より具体的には、デバイス層13のない、極薄ガラスシート12の一方の表面の他の部分は、周辺部113及びリブ114の複数の吸引孔111b及び111cに嵌合する複数の吸盤120と接触しており、その結果、吸盤120全体が圧縮される。
【0085】
その後、圧力印加工程では、負圧が複数の吸盤120に印加されて、吸引プレート110の上面の適所に位置決めされたガラス積層体10を吸引保持する。すなわち、圧力印加工程は、コントローラ140によって真空ポンプ130を制御することによって、吸引プレート110の上面に負圧を印加する。結果として、ガラス積層体10は、吸引プレート110によって吸引保持され、吸引プレート110の上面に支持される。本明細書では、例示的な実施形態による剥離を支援するための装置では、凹所112の複数の吸引孔111aの密度は周辺部113及びリブ114の複数の吸引孔111bの密度とは異なりうることから、それぞれの領域に均一な負圧が印加されているにもかかわらず、凹所112には比較的小さい吸引力を生成することができ、周辺部113及びリブ114には比較的大きい吸引力が生成されうる。
【0086】
上述のように、圧力印加工程では、ガラス積層体10は、吸引プレート110に吸引保持され、次に、吸引プレート110は複数の吸引キャップ150の下に移される。
【0087】
第1のトレイ161の上部のガラス積層体10が剥離プロセスのために吸引プレート110へと移動するときに、第1のトレイ161に載荷された最上部のガラス積層体10間に挟まれた紙のシートが外部に曝される。例示的な実施形態によれば、紙のシートは第3のトレイ163に移動し、第4のトレイ164に載荷された紙のシートは第2のトレイ162に移動しうる。
【0088】
その後、
図12に示されるように、剥離工程では、下に配置された極薄ガラスシート12が吸引プレート110によって、より具体的には、複数の吸盤120に吸引保持され、かつ、上に配置されたキャリアガラスシート11が複数の吸引キャップ150によって吸引保持される位置で、キャリアガラスシート11が極薄ガラスシート12から剥離される。
【0089】
剥離工程は、吸引キャップ150を用いてキャリアガラスシート11を吸引保持し、次に、キャリアガラスシート11を一方の側から他方の側へと持ち上げることによって行われる。剥離工程では、キャリアガラスシート11の剥離対象部分を剥離伝播方向に連続的に吸引保持することができる。具体的には、負圧を印加することによって、剥離に供されるキャリアガラスシート11の部分の上に配置された複数の吸引キャップ150のうちの吸引キャップ150を連続的に持ち上げることによって、剥離プロセスを容易に行うことができる。
【0090】
キャリアガラスシート11がこの剥離工程において極薄ガラスシート12から完全に分離された後、複数の吸盤120に印加された負圧を解除することができる。このようにして、単一のガラス積層体10の剥離プロセスを完了させることができる。
【0091】
剥離プロセスが完了するとき、極薄ガラスシート12は吸引プレート110に吸引保持されたままであってよく、一方、キャリアガラスシート11は吸引キャップ150に吸引保持されたままでありうる。
【0092】
幾つかの実施形態では、別のガラス積層体10のための剥離プロセスを連続的に実施するために、極薄ガラスシート12を吸着保持している吸引プレート110を初期位置に戻し、次いで、極薄ガラスシート12に印加されている負圧を解除する。その後、ガントリユニット170は、極薄ガラスシート12を第2のトレイ162へと移動させるように動作する。
【0093】
その後、そこから極薄ガラスシート12が除去される吸引プレート110は、複数の吸引キャップ150の下に移され、次に、吸引キャップ150に印加された負圧が取り除かれ、それによって、吸引キャップ150によって吸引保持されたキャリアガラスシート11が吸引プレート110に着座する。
【0094】
その後、キャリアガラスシート11がその上面に着座する吸引プレート110は、初期位置に戻される。加えて、キャリアガラスシート11は、ガントリユニット170を動作させることによって、第3のトレイ163へと移される。
【0095】
その後、上記工程を繰り返すことによって、別のガラス積層体10のための剥離プロセスが行われる。
【0096】
加えて、例示的な実施形態に従う剥離を支援するための装置を使用してキャリアガラスシート11から剥離された極薄ガラスシート12は、複数のデバイス層13を個々のパネルへと変換するプロセスにおいて切断される。
【0097】
本開示の特定の例示的な実施形態の前述の説明は、図面に関して提示されているのであり、網羅的であること、又は本開示を本明細書に開示される正確な形態に限定することを意図するものではなく、上記教示に照らして、当業者にとって、多くの修正及び変形が明らかに可能であろう。
【0098】
したがって、本開示の範囲は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本明細書に添付された特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されることが意図されている。
【0099】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0100】
実施形態1
単一のガラス積層体として接合されたキャリアガラスシートと極薄ガラスシートとを剥離するプロセスを支援するための装置であって、該装置が、
その上に着座させたガラス積層体を吸引保持するための吸引孔を画成する複数の吸引孔部と、前記ガラス積層体の極薄ガラスシートの一方の表面から突出する少なくとも1つのデバイス層を収容する少なくとも1つの凹所を画成する少なくとも1つの凹部とを含む吸引プレート;
前記極薄ガラスシート及び前記デバイス層の接触圧力に応じて、弾性的に圧縮可能になるように、それぞれ、前記複数の吸引孔部に取り付けられた複数の吸盤;
前記複数の吸引孔部に接続されて前記複数の吸引孔部に負圧を印加する真空ポンプ;及び
前記真空ポンプを制御して前記複数の吸引孔部に印加された前記負圧を調整するコントローラ
を含む、装置。
【0101】
実施形態2
前記凹部が前記デバイス層の厚さより深い、実施形態1に記載の装置。
【0102】
実施形態3
前記少なくとも1つの凹部が、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの表面に配置されており、かつ
前記吸引プレートが、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの前記表面上の前記少なくとも1つの凹部を取り囲む周辺部をさらに含む、
実施形態1に記載の装置。
【0103】
実施形態4
前記少なくとも1つの凹部が、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの表面に配置された複数の凹部を含み、かつ
前記吸引プレートが、前記複数の凹部を取り囲む周辺部と、その上に前記ガラス積層体が着座する前記吸引プレートの前記表面に前記複数の凹部のうちの隣接する凹部間に配置されたリブとをさらに含む、
実施形態1に記載の装置。
【0104】
実施形態5
前記吸引プレートが、
前記複数の凹部のうちの各凹部に設けられた前記複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第1の流路であって、前記真空ポンプに接続する第1の流路;
前記周辺部に設けられた前記複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第2の流路であって、前記真空ポンプに接続する第2の流路;及び
前記リブに設けられた前記複数の吸引孔部のうちの吸引孔部が接続される第3の流路であって、前記真空ポンプに接続する第3の流路
を備えている、実施形態4に記載の装置。
【0105】
実施形態6
前記吸引プレートが、それぞれ、前記第1の流路、前記第2の流路、及び前記第3の流路上に配置された制御弁をさらに備えている、実施形態5に記載の装置。
【0106】
実施形態7
前記第1の流路が、それぞれ、前記複数の凹部に設けられた、個別に制御される複数の第1の流路を含む、実施形態6に記載の装置。
【0107】
実施形態8
前記複数の吸盤の各々が、
前記複数の吸引孔部のうちの対応する吸引孔部の内周面に固定された固定部であって、第1の孔部が前記固定孔部の長手方向に延びる、固定部;及び
前記固定部の先端に結合されて前記吸引プレートの上面から突出する動作部であって、第2の孔部が前記動作部の長手方向に延びて前記第1の孔部と連通しており、前記動作部が前記極薄ガラスシート又は前記デバイス層の接触圧力に応じて弾性的に圧縮可能である、動作部
を含む、実施形態1に記載の装置。
【0108】
実施形態9
前記固定部の外周面が、前記対応する吸引孔部の前記内周面とねじ嵌合する、実施形態8に記載の装置。
【0109】
実施形態10
前記動作部がベローズを含む、実施形態9に記載の装置。
【0110】
実施形態11
前記極薄ガラスシートよりも比較的厚く、かつ幅広であるキャリアガラスシートが、前記極薄ガラスシートを取り囲みつつ、前記極薄ガラスシートに接合されるように、前記ガラス積層体が構成される、実施形態1に記載の装置。
【0111】
実施形態12
前記極薄ガラスシートの厚さが20μm~250μmの範囲である、実施形態1に記載の装置。
【0112】
実施形態13
前記ガラス積層体が前記吸引プレートに着座した後に、前記ガラス積層体のキャリアガラスシート上に配置された少なくとも1つの吸引キャップをさらに含む、実施形態1に記載の装置。
【0113】
実施形態14
前記少なくとも1つの吸引キャップが、前記コントローラによって制御される前記真空ポンプに接続され、該真空ポンプによって印加される負圧を使用して、前記キャリアガラスシートを吸引保持する、実施形態13に記載の装置。
【0114】
実施形態15
前記少なくとも1つの吸引キャップが、前記コントローラの制御下で前記キャリアガラスシートを持ち上げるために上下方向に移動可能になるように構成され、それによって前記極薄ガラスシートから前記キャリアガラスシートを分離させる、実施形態14に記載の装置。
【0115】
実施形態16
前記少なくとも1つの吸引キャップが複数の吸引キャップを含み、かつ
前記コントローラが前記真空ポンプを制御して、剥離伝播方向に前記複数の吸引キャップに負圧を連続的に印加する、
実施形態15に記載の装置。
【0116】
実施形態17
前記吸引プレートが水平方向に移動可能である、実施形態13に記載の装置。
【0117】
実施形態18
前記吸引プレートが、前記ガラス積層体がその上に着座した後に前記少なくとも1つの吸引キャップの下に移動し、剥離が終了した後に初期位置に戻る、実施形態17に記載の装置。
【0118】
実施形態19
前記吸引プレートの周りに配置された第1~第4のトレイをさらに含み、剥離される前記ガラス積層体が前記第1のトレイに配置され、剥離された前記極薄ガラスシートが前記第2のトレイに配置され、剥離された前記キャリアガラスシートが前記第3のトレイに配置され、かつ複数の紙シートが前記第1~第3のトレイに供給される前に前記第4のトレイに載荷される、実施形態1に記載の装置。
【0119】
実施形態20
前記吸引プレート及び前記第1~第4のトレイを周回して、前記ガラス積層体、前記剥離された極薄ガラスシート、前記剥離されたキャリアガラスシート、及び前記複数の紙シートを輸送するガントリユニットをさらに含む、実施形態19に記載の装置。
【0120】
実施形態21
単一のガラス積層体として接合されたキャリアガラスシートと極薄ガラスシートとを剥離する方法であって、該方法が、
実施形態1に記載される装置の前記吸引プレートの上面の適所にガラス積層体を位置決めする工程;
前記吸引プレートに負圧を印加して、前記吸引プレートの前記上面に位置する前記ガラス積層体を吸引保持する工程;及び
前記吸引プレートが前記極薄ガラスシートを吸引保持する間に、前記ガラス積層体の極薄ガラスシートから前記ガラス積層体のキャリアガラスシートを剥離する工程
を含む、方法。
【0121】
実施形態22
前記ガラス積層体が、前記キャリアガラスシートが前記吸引プレートに接触しないように適所に位置決めされる、実施形態21に記載の方法。
【0122】
実施形態23
前記極薄ガラスシートから前記キャリアガラスシートを剥離する工程が、前記キャリアガラスシートを吸引保持し、前記キャリアガラスシートを一方の側から他方の側へと連続的に持ち上げることを含む、実施形態21に記載の方法。
【0123】
実施形態24
前記キャリアガラスシートを吸引保持する工程が、前記キャリアガラスシートの部分を剥離伝播方向に連続的に吸引保持することを含む、実施形態23に記載の方法。
【符号の説明】
【0124】
10 ガラス積層体
11 キャリアガラスシート
12 極薄ガラスシート
13 デバイス層
110 吸引プレート
111a,111b,111c 複数の吸引孔
112 凹所
113 周辺部
114 リブ
115 第1の流路
116 第2の流路
117 第3の流路
118 制御弁
120 吸盤
121 固定部
122 動作部
130 真空ポンプ
140 コントローラ
150 吸引キャップ
161 第1のトレイ
162 第2のトレイ
163 第3のトレイ
164 第4のトレイ
170 ガントリユニット
【国際調査報告】