(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】制振ダンパの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60G 13/06 20060101AFI20220105BHJP
F16F 1/38 20060101ALI20220105BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B60G13/06
F16F1/38 S
F16F15/08 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518699
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(85)【翻訳文提出日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2019074678
(87)【国際公開番号】W WO2020078635
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】102018125459.8
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】クリングナー・マルク
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー・マルティン
【テーマコード(参考)】
3D301
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3D301AA78
3D301DA33
3D301DB03
3D301DB11
3D301DB12
3D301DB16
3J048AA06
3J048BA19
3J048CB23
3J048DA01
3J048EA15
3J059BA42
3J059BD09
3J059CA14
3J059CB03
3J059DA22
3J059GA02
(57)【要約】
本発明は、ハブキャリアおよび/またはボディにおけるラバーマウントを介した取付手段による車両用の制振ダンパの取付構造であって、取付手段により、ラバーマウントの少なくとも二つのブッシュの一つがハブキャリア若しくはボディに関係する三つの並進自由度において固定され、ハブキャリアおよび/またはボディに、そして、上記ラバーマウントブッシュの一つに、取付手段の軸線周りにおける当該ラバーマウントブッシュの回転自由度が形状結合式の拘束部により拘束されるような手段が設けられ、その形状結合式の拘束部は、ラバーマウントブッシュの凸に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダセグメントと、ハブキャリア若しくはボディの凹に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダセグメントとが係合し合うことにより形成されている取付構造に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブキャリア(1)および/またはボディにおけるラバーマウント(2)を介した取付手段(4)による車両用の制振ダンパ(3)の取付構造であって、取付手段により、ラバーマウント(2)の少なくとも二つのブッシュ(2a,2b)の一つがハブキャリア(1)若しくはボディに関係する三つの並進自由度において固定され、ハブキャリア(1)および/またはボディに、そして、上記のラバーマウントブッシュ(2b)の一つに、取付手段(4)の軸線(A)周りにおける当該ラバーマウントブッシュ(2b)の回転自由度が形状結合式の拘束部により拘束されるような手段が設けられている取付構造において、
前記形状結合式の拘束部は、ラバーマウントブッシュ(2b)の凸に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダセグメント(2ba)と、ハブキャリア(1)若しくはボディの凹に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダセグメント(1a)とが係合し合うことにより形成されていることを特徴とする取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の取付構造であって、ハブキャリア(1)および/またはボディの凹に丸みを帯びた、円筒長手軸線(Z2)方向のシリンダセグメント(1a)の円筒長手軸線(Z2)に平行な断面は、これに嵌入可能な、ラバーマウントブッシュ(2b)の凸に丸みを帯びた、円筒長手軸線(Z1)方向のシリンダセグメント(2ba)の円筒長手軸線(Z1)に平行な断面よりも幅広に形成されている取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の取付構造であって、取付手段がネジ(4)である取付構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の取付構造であって、制振ダンパ(3)をハブキャリア(1)若しくはボディに組み付ける際に、ボディによる負荷が加わった状態でラバーマウント(2)、より正確にはラバーマウント(2)のエラストマ部材(2c)が設計位置において前記回転自由度に関して少なくとも略歪がないか或いは特定の歪が加わった状態を有するように、ハブキャリア(1)にボディによる負荷が加わっていない状態で、制振ダンパ(3)が、正確な締着のために、取付手段(4)によりハブキャリア(1)および/またはボディに対して位置付けられるように前記形状結合式の拘束部が配設されている取付構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の取付構造であって、シリンダセグメント(1a,2ba)は、円筒長手軸線(Z1,Z2)に平行な断面において四角形に形成されている取付構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の取付構造であって、形状結合式の拘束部は、ラバーマウントブッシュ(2b)の凸に丸みを帯びた二つのシリンダセグメント(2ba)と、ハブキャリア(1)若しくはボディの凹に丸みを帯びた二つのシリンダセグメント(1a)とが係合し合うことによって形成され、ラバーマウントブッシュ(2b)の両方のシリンダセグメント(1a,2ba)のそれぞれと、ハブキャリア(1)若しくはボディの凹に丸みを帯びた両方のシリンダセグメント(1a)のそれぞれとが、各円筒長手軸線(Z1,Z2)に平行な断面においてこれらが十字形を呈するように互いに対して配設されている取付構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の取付構造を製作する方法であって、順番に以下の、
-ラバーマウントブッシュ(2b)の凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)を、ハブキャリア(1)若しくはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)の方に向かって、凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1b)及びラバーマウント(2)の孔部(1b)のそれぞれの長手軸線(A)が互いに重なり合って位置するようにしながら移動させ、
-凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)の少なくとも一つの第一のエッジを、ハブキャリア(1)および/またはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)の少なくとも一つの第一のエッジに接触させ、
-ラバーマウントブッシュ(2b)の凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)を、長手軸線(A)に沿って、ハブキャリア(1)若しくはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)の方に向かってさらに移動させた後に、ラバーマウントブッシュ(2)の凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)を、ハブキャリア(1)若しくはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)の中に入り込ませるように移動させ、これにより、凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)の、ラバーマウント(2)の長手軸線(A)周りの回転を生じさせ、
-その回転により、ラバーマウント(2)のエラストマ部材(2c)が予荷重を受けるようにし、さらに、
-その後、取付手段(4)を用いて取り付けることにより、ハブキャリア(1)および/またはボディにラバーマウント(2)を固設する
ステップで進める方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の取付構造を製作する方法であって、順番に以下の、
-ラバーマウントブッシュ(2b)の凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)を、ハブキャリア(1)若しくはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)の方に向かって、凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1b)及びラバーマウント(2)の孔部(1b)のそれぞれの長手軸線(A)が互いに重なり合って位置するようにしながら移動させ、
-凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)を、ハブキャリア(1)および/またはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)の中に入り込ませるように移動させることが可能になるまで、ラバーマウントブッシュ(2b)を捻り、
-凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)を、ハブキャリア(1)および/またはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)の中に入り込ませるように移動させ、さらに、
-その後、取付手段(4)を用いて取り付けることにより、ハブキャリア(1)および/またはボディにラバーマウント(2)を固設する
ステップで進める方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法であって、ハブキャリア(1)および/またはボディの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント(1a)を、切削加工により製作する方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の方法であって、ラバーマウントブッシュ(2b)の凸に丸みを帯びたシリンダセグメント(2ba)を、冷間加工により製作する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハブキャリアおよび/またはボディにおけるラバーマウントを介した取付手段による車両用制振ダンパ、特にダンパ-サスペンションスプリング・ユニットの取付構造であって、取付手段により、ラバーマウントの二つのブッシュの一つがハブキャリア若しくはボディに関係する三つの並進自由度において固定されているものに関する。従来技術については、単なる一例として特許文献1を参照されたい。
【背景技術】
【0002】
自動車、特に乗用車の製造過程において、シャシのコンポーネントは、事前に組み付けられ、それも所謂アクスルキャリアに組み付けられ、このアクスルキャリアが後からボディと統合されるのが普通であり、これが一般に“結婚式”と呼ばれている。事前に組み立てられたシャシが統合されていない状態にあるときには、統合された状態においてボディ(=車体)がその上に支えられることになるサスペンションスプリングは、完全に負荷から解放されている。ボディとアクスルキャリアを組み合わせた後、サスペンションスプリングは、上述の結婚式の後に、また場合によってはコンベヤシステムに吊り下げられた車両で行なわれる後続の組立ステップの後に、車両が床に置かれると、車体の重さによる負荷がかかり、そのせいで或る程度圧縮される。同じことは通常、サスペンションスプリングと機能的に並列に接続された制振ダンパ(以下ではこれらを単に“ダンパ”とも呼ぶ。)にも当てはまり、その結果、制振ダンパは、大抵は大きく伸出した状態から、中間位置付近の部分的に縮入した状態へと移動させられる。
【0003】
予め組み立てられたアクスルキャリアに取り付けられたハブキャリアとともに、アクスルキャリアをボディと統合した後、さらに、完成した車両をその車輪の上に初めて置いたことで生じるサスペンションスプリングの先述の状態変化の後、そして通常はさらにダンパの状態も変化した後、ハブキャリアは、比較的大きく伸弛した位置から少なくとも略その所謂設計位置(構造位置・組み立て位置)(Konstruktionslage)へと概ね移行させられる。この最後に述べた位置、つまり“目標高さ位置”を、ハブキャリアは、満タンの燃料タンクや乗員など、所与の追加重量によって所謂標準的な負荷がかけられて初めて占めることが知られている。
【0004】
よく知られているのは、ボディに対するハブキャリアの高さがそのように変化するのに伴い、キャンバー角、トー角およびキャスター角によって記述可能なハブキャリアの位置が変化するということである。これにより、ラバーマウントを介してネジ等によりハブキャリアおよび/またはボディに取り付けられたダンパにおいて、このラバーマウントは、サスペンションスプリングがボディの重さによる負荷を受ける或いは受けた状態になると、サスペンションスプリングが負荷がかけられていない状態で組み付けられる際の殆ど歪みのない状態からスタートして、僅かながら負荷がかけられた状態へと移行することになる。従って、その基本的な構造に関してよく見かける前述のラバーマウントの二つのブッシュの間に設けられたエラストマ部材には、上述の設計位置において初めから僅かながらに応力が加えられている或いは歪みによる負荷がかけられており、これが車両の乗り心地に悪影響を及ぼしかねない。
【0005】
特許文献1は、上述の問題の改善策を示している。この場合には、ハブキャリアおよび/または車両構造(ボディ)におけるラバーマウントを介したネジ等による制振ダンパの取付構造が設けられており、そのネジにより、ラバーマウントの二つのブッシュの一つがハブキャリア若しくはボディに関係する三つの並進自由度において固定されている。ラバーマウントブッシュおよびハブキャリア若しくはボディにはこの場合、ネジの軸線周りにおけるラバーマウントブッシュの回転自由度が形状結合により拘束されるような手段が設けられている。そのような形状結合は、特許文献1において例えば、ラバーマウントブッシュの球冠形の端部と、同じくハブキャリアの球冠形の凹部との間のキー要素により形成される。さらに、ラバーマウントブッシュとハブキャリアの対向し合う球冠形の当接面の成形加工部であって、ネジに関して非回転対称の適した成形加工部により形状結合を形成することが提案されている。そのような成形加工部はここで、例えば四角形、六角形または二つの平坦部を呈するものとすることができる。さらに、ラバーマウントブッシュから突出した小さなノーズが提案されており、そのノーズが、そのノーズのために設けられたハブキャリア側の凹部にスナップ嵌めできる。
【0006】
特許文献1で述べられたような成形加工部は全て、製作上のかなりの手間とそれに伴う高いコストに直結している。それで例えば、六角形ないし四角形といった非対称な成形加工部を、空洞のような凹んだ球冠形のハブキャリアの当接面に手間をかけて作り込まなければならない。そのためには、成形加工部の輪郭、つまり例えば、六角形、四角形ないし二つの平坦部等の輪郭が、いずれもハブキャリアにおいてなぞらえられなければならない。これは時間と労力を要する。さらに、ハブキャリアないしラバーマウントブッシュの当接面における成形加工部の面積が(上述のノーズにおいては特に)小さいために、組み立てミスが起こり得る。それで例えば、ノーズや他の成形加工部の面積が小さいことで、ノーズがノーズ用に設けられた凹部にスナップ式に係入しないことがあり得る。組み立てミスが起きることになる。その場合、ラバーマウントには全く予荷重がかからない。
確かに、形状結合的な拘束により球冠形セグメント間に形状結合が形成される結果、ネジの軸線に関するラバーマウントの内側ブシュの回転自由度が拘束される。しかしながら、ラバーマウントブッシュがハブキャリアの球冠形セグメントへと捻じ込まれて、それにより予荷重が加えられるという予荷重プロセスが手を使ってさらに行なわれなければならない。これには、特別な予荷重用ツールが必要である。しかも、これにより追加の製作ステップが発生する。これにより追加の手間とコストが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願第102012218458号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、上述の欠点を回避し、手間をかけずに製作でき、簡素化された組み立てプロセスを可能にすると同時に、起こり得る組み立てミスを無くすことのできる制振ダンパの取付構造を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1の特徴部を有した制振ダンパの取付構造により解決される。有利な拡張および発展形態は、下位請求項の内容である。
【0010】
この課題の解決手段は、ハブキャリアおよび/またはボディ(=車両構造または車体とも称される。)におけるラバーマウントを介した取付手段による制振ダンパの取付構造、特にダンパ-サスペンションスプリング・ユニットであって、取付手段により、ラバーマウントの二つのブッシュの一つがハブキャリアに関係する三つの並進自由度において固定されているか或いはそのブッシュ自身の三つの並進自由度において固定されているものにある。その場合、ハブキャリアおよび/またはボディに、そして、上記のラバーマウントブッシュに、取付手段の軸線周りにおける当該ラバーマウントブッシュの回転自由度が形状結合により拘束されるような手段が設けられている。
このとき、特にネジなどが取付手段として使用される。
さらにこのとき、上記の形状結合式の拘束部は、ラバーマウントブッシュの凸に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダ(回転体)セグメント(凸型シリンダセグメント(回転体セグメント)とも称される。)と、それに適合する、ハブキャリア若しくはボディの凹に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダ(回転体)セグメント(凹型シリンダセグメント(回転体セグメント)とも称される。)とが係合し合うことにより形成されるようになっている。ハブキャリア若しくはボディの凹型シリンダセグメントは、シリンダセグメント形状の凹部として捉えることもできる。本発明の考え方では、回転体セグメント(シリンダセグメント)は、特に、(組み込まれた状態における)ラバーマウントの長手軸線に関して少なくとも略対称に形成された真っ直ぐな(そしてラバーマウントの孔部により空洞のある)円柱セグメントと捉えることができる。この凹型シリンダセグメントは、円柱状のセグメントの謂わば壁をなすものであり、それは、円柱のセグメントの壁形態の凹部と称することができる。
【0011】
ここで、車両の制振ダンパは、ラバーマウントの外側ブシュにおいて、例えば魚眼ベアリング部により支持されるようになっていることが好ましい。ラバーマウントの内側ブシュはさらに、ハブキャリア若しくはボディに、取付手段、特にネジにより取り付け或いはネジ留め或いはそれらに対して締着されていることが好ましい。
機能的にネジと協働するラバーマウントブッシュ(特に内側ブシュ)は、ハブキャリアに面したその端部、つまり凸型シリンダセグメントが、対応した形に作られたハブキャリア若しくはボディの当接部位上に、つまり凹型シリンダセグメント上に載る。
【0012】
従来技術とは対照的に、ラバーマウント又はハブキャリア若しくはボディの係合し合う領域は、球冠形セグメントではなく、シリンダセグメントである。これには特に、当接面の製作、或いは係合し合う領域、特にハブキャリア若しくはボディの領域の製作がかなり簡素化され、それに伴い費用効果が高まるという利点がある。この詳細については、明細書を通じて説明していくことにする。
【0013】
ラバーマウントブッシュの凸型シリンダセグメントと、ハブキャリア若しくはボディの凹型シリンダセグメントとの間での形状結合が可能となるように、これらのシリンダセグメントは、これらが係合し合うことができ且つ形状結合式の接続を形成するように設けられている。
【0014】
上述の形状結合式の拘束部が設けられ或いは形成されていることで、制振ダンパをハブキャリア若しくはボディに組み付ける際に、ラバーマウント、より正確にはラバーマウントのエラストマ部材が、設計位置において、つまりボディによる標準負荷がハブキャリアに加わった状態で、少なくとも上記回転自由度に関して少なくとも略歪(応力)がないか或いは決まった歪(応力)が加わった状態に移行させられるように、ハブキャリアにボディによる負荷が加わっていない状態で、制振ダンパが、正確な締着または固設のために、取付手段により(特にネジ等により)ハブキャリアおよび/またはボディに対して位置付けられるようになっていることが好ましい。
【0015】
ここで、ダンパは、ラバーマウントを介してハブキャリアおよび/またはボディにおける決まった位置或いは姿勢で組み付けられており、そのラバーマウントは、ダンパケーシングに基本的にはしっかり接続された前にも述べたよく見かける外側の外側ブシュと、取付手段、特に上述のネジ等を介してハブキャリア若しくはボディに基本的にはしっかり接続された内側の内側ブシュと、これら両方のブッシュの間の環状のエラストマ部材とを備えているものとされていることが好ましい。
【0016】
ダンパのこの位置ないし姿勢、従ってさらに上述のブッシュおよびそれらの間にあるエラストマ部材を有するラバーマウントの位置ないし姿勢が規定される或いは決定されることで、ラバーマウントのエラストマ部材が-、前に述べた“結婚式”、つまり、予め組み立てておいたアクスルキャリアとボディとを統合する際、ハブキャリアにボディの重さによる負荷が負担分に応じてかからないようにしてダンパがその両端で一方はボディに、他方はハブキャリアにしっかり取り付けられ或いは取り付けられているとき-、ラバーマウントのエラストマ部材が、ラバーマウントを固設するネジの回転軸線周りの回転方向に視て僅かながらその内部に応力が加えられるようになることが好ましい。ボディによる負荷がハブキャリアにかからない状態でのボディおよびハブキャリアに対するダンパの位置の固定の際にもたらされるエラストマ部材内の応力付加状態(Verspannung)は、ハブキャリアが負担分に応じて、つまり、その負担割合(普通の自家用車の場合にはこれは約25%である。)によりボディの負荷をかけられ、それに伴いボディに関する設計位置を占めるときには、この応力付加状態が少なくとも自ずと解消されるように選択され或いは決定されている。
従って、ボディとハブキャリアとの間にダンパを取り付け或いは組み付ける際には、ダンパに付属するサスペンションスプリングに負荷をかけることなく、付属のダンパ-ラバーマウント内に歪が形成され、その歪が、後でサスペンションスプリングの標準負荷(この負荷により、ハブキャリアがボディに対するその設計位置を占める或いはその位置に至る)により自ずと解消される。
【0017】
請求項1に特徴的な特徴部は、前述のやり方で、つまり、前述の方法に従って確実に自動車のライン生産において実行されるか或いは実行され得るのにとりわけ適している。確かに、形状結合による拘束部を用いなくても、ハブキャリアおよび/またはボディにラバーマウントを介して取り付けられた制振ダンパを特定の位置においてハブキャリア若しくはボディに動かないように組み付け、それにより、負荷のかかっていないサスペンションスプリングとともに制振ダンパをハブキャリアとボディとの間に組み付ける際に、ダンパ-ラバーマウントのエラストマ部材内に所望の予荷重が生成されるようにすることが基本的には理論上可能であるが、大量ライン生産において、ダンパ取り付けの際に付属のサスペンションスプリングに負荷をかけることなく上述の各エラストマ部材内に所望の予荷重が本当に生成されることが確実に保証されるのは、ハブキャリアおよびボディに対するダンパの位置が取り付けの際に正確に規定され、また、その位置が正確に維持される場合だけである。最後に述べた点については、ダンパが本発明の方法において特定の位置または姿勢でハブキャリア若しくはボディに取り付けることができる場合に初めて保証される。
【0018】
このこと、つまり、特定の位置でのみ取付可能であることは、大量生産に関しては、形状結合により比較的容易に実現することができる。この点について、例えば或るネジ若しくは上記のネジによりハブキャリアおよび/またはボディに取り付けられるラバーマウントブッシュの回転自由度の形状結合式の拘束部であって、形状結合が係合し合う二つの(一つは凹に、もう一つは凸に丸みを帯びた)シリンダセグメントにより実現されるものが、特許保護の申請対象となる特徴部である。これに対して、請求項4に記載されている形状結合式の拘束部を位置的に或いは空間的に確定することは、好ましくは、車両、特に乗用車のシャシ内のハブキャリアおよび/またはボディに制振ダンパを取り付けるのに用いられるラバーマウントの内側ブシュの回転自由度を拘束するという本質的な本発明の好ましい用途例を呈示する。その他に、以下に述べる方法に対する特許保護もクレームされており、その方法では、対応するサスペンションスプリングに負荷をかけることなく、ダンパを支えるラバーマウント内、或いはそのエラストマ部材内に歪が形成されるようにダンパが取り付けられ、その歪が、対応するサスペンションスプリングに負荷がかかると、自動的に略解消し、その結果、エラストマ部材は、標準的な負荷がかかると、従って設計位置にあると、上記の取付手段、特に、取付手段としての好適なネジにより拘束されたラバーマウントの回転自由度に関して、略歪のない状態となる。
【0019】
以下では、簡潔さのために、制振ダンパのハブキャリアにおける取り付けについてのみ説明するが、それによりダンパのボディにおける同様の取り付けを排除するものではない。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、ハブキャリアの凹型シリンダセグメント、言い換えればハブキャリア側のシリンダセグメント形状の凹部の円筒長手軸線に平行な断面は、ラバーマウントブッシュの凸型シリンダセグメントの円筒長手軸線に平行な断面より少なくとも僅かながら幅広に形成されている。この場合、シリンダセグメントの円筒長手軸線に平行に延在するような断面を問題としている。ここで、断面の幅は、シリンダセグメントの円筒長手軸線に沿った断面の寸法ないし大きさである。
ハブキャリアの凹型シリンダセグメントの上記の断面はこのとき、セグメント同士を前に押し出すだけで凸型シリンダセグメントが組み付け時に勝手に捻れ、ハブキャリアの凹型シリンダセグメントの中に滑り込む或いは入り込むのにちょうどいいぐらいに幅広であることが好ましい。
従って、凹型シリンダセグメントの上記の断面は、凸型シリンダセグメントの上記の断面よりも0.1%から10%ほど幅広に形成されていることが好ましい。しかしながら代替的に、凹型シリンダセグメントがその上記断面においてかなり幅広に形成され、例えばシリンダセグメントの円筒長手軸線の方向におけるシリンダセグメントの限界がないというのでも構わない。
こうして、ラバーマウントブッシュを追加的に手で捻ることで凸型シリンダセグメントの位置を決め、それによりハブキャリアのシリンダセグメント形状の凹部内に凸型シリンダセグメントがぴったり嵌り込む或いは進入できるようにする必要はもはやない。この方法の詳細な説明は、説明を進めるにつれてもっと後の方で行なう。
ラバーマウントブッシュの凸型シリンダセグメントに比べて若干大きめのハブキャリアの凹型シリンダセグメントにより、追加的な製作ステップを省くことができる。この場合、前に押し出しさえすれば凸型シリンダセグメントがハブキャリア内に必ず挿入されることになるように凸型シリンダセグメントの位置を調整するのに、ラバーマウントブッシュを手で捻らなければならないような製作ステップは省くことができる。従来技術では、シリンダセグメントの位置を調整するようにラバーマウントブッシュを回転させる動きは、普通は、作業従事者が応力付加工具をあてがってから、その工具を回転させることで実現される。ラバーマウントブッシュの凸型シリンダセグメントよりも大きなハブキャリアの凹型シリンダセグメントの好適な実施形態により、こういった応力付加工具並びに手で行う全ての応力付加プロセスを省くことができる。つまり、手では何もすることなく前に押し出すだけで応力が勝手に加わる。従って、製作ステップが一つ減り、コストを節約することができる。
【0021】
さらに、好ましくは、形状結合は、係合し合うシリンダセグメントによって形成されるものとされている。既に述べたように、その場合、シリンダセグメントが所謂真っ直ぐなシリンダセグメントであるように設けられていることが好ましい。このとき、シリンダセグメントは、シリンダ軸線に平行に切断された円柱によって出来ていることがさらに好ましい。すると、断面で半円形となるこのシリンダセグメントの面は、好ましくも(凸型シリンダセグメントの進入方向に関して視た場合に)凸型シリンダセグメントの最前面である。シリンダセグメントの他の全ての面はこのとき、好ましくも平らか平坦か平面的に(つまり湾曲していないように)形成されている。
好ましい状態では、その際、シリンダセグメントは、円筒長手軸線に平行な断面で四角形に形成されている。これに代えて、ラバーマウントブッシュの二つの凸型シリンダセグメントとハブキャリア若しくはボディの二つの凹型シリンダセグメントとが係合し合うことにより形状結合式の拘束部が形成されていることも同様に可能である。その場合、ラバーマウントブッシュは、二つの凸型シリンダセグメントを有し、ハブキャリアは、二つの凹型シリンダセグメントを有する。特に好ましくは、これらのシリンダセグメントはここで、構成要素ごとに互いに直角に配設されることで、これらがその断面において(各円筒長手軸線に平行に切断すると)十字形を形成するようになっている。
【0022】
上述の十字形はこのとき、従来技術に比べて、特に、“十字”の広い面のゆえに組み立てミスを防止することができるという長所を持つ。ラバーマウントブッシュの十字形がハブキャリアの十字形の凹部(またはその逆)に“カチッと嵌らない”ことに気付かないことは、十字の広い面により有利にも防止することができる。
【0023】
さらに、従来技術とは対照的に、ラバーマウントブッシュに、そして特にはハブキャリアに、この種の十字形をかなり容易に製作することができる。
【0024】
取付手段、特にネジ等を挿入するために、ラバーマウントブッシュとハブキャリアの両方が孔部を備えるものとされている。取り付けられた状態または組み立てられた状態では、これらの孔部の長手軸線は、このとき略重なり合っている。
【0025】
さらに、請求項1から6のいずれかにより形成されている取付構造を製作する方法がクレームされる。
【0026】
最初のステップでは、ラバーマウントブッシュの凸型シリンダセグメントを、ハブキャリアの凹型シリンダセグメント若しくはシリンダセグメント形状の凹部の方に向かって移動させる。このとき、ラバーマウントブッシュの長手軸線ないし回転軸線と、ハブキャリアの凹型シリンダセグメント内の孔部の長手軸線とが互いに重なり合って位置するようにしながら移動が行なわれることが好ましい。
この移動プロセスはここで、ラバーマウントブッシュの凸型シリンダセグメントの第一のエッジが、凹型シリンダセグメントのエッジに少なくとも点接触するまで行われる。このとき特に、車両の高さ方向に視て凸型シリンダセグメントの上側のエッジと、車両の高さ方向に視て凹型シリンダセグメントの上側のエッジとが互いに接触する。同時に、凸型シリンダセグメントの下側のエッジと、凹型シリンダセグメントの下側のエッジも接触して構わない。
両方のセグメントのそれぞれのエッジがこのように接触するのは、両方のシリンダセグメントが、この組み付けステップの間、これらが完璧に入り込み合うように動かされて互いに係合し合うことができるほどにはまだ位置が調整されていないからである。
このとき、(ハブキャリアおよびラバーマウントの孔部の)回転軸線は既に略重なり合っているが、両方のシリンダセグメントは、好ましくもネジの回転軸線周り若しくは凸型シリンダセグメントのラバーマウントの長手軸線周りに相応に回転した後にようやく係合し合うことができ、上述の形状結合を形成することができる。ラバーマウントブッシュがベアリング長手軸線周りに捻れることで、ラバーマウント内のエラストマ部材が捻れ、これにより予荷重が加えられる。
【0027】
上述のラバーマウントブッシュの捻り、つまり実質的な予荷重プロセスはこのとき、様々なやり方で行なうことができる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態で示されているように、ハブキャリアの凹型シリンダセグメントの(円筒長手軸線に平行な)断面が、ラバーマウントブッシュの凸型シリンダセグメントのものよりもシリンダセグメントの円筒長手軸線の方向に少なくとも僅かに幅広に形成されている場合には、予荷重プロセスを手を使って行なう必要はもはやない。その代わりに、凸型シリンダセグメントは、孔部の共通の長手軸線の方向にさらに押し進める際に、有利な滑りと力の加減で凹型シリンダセグメント内へと自ずと捻れていく。
【0029】
シリンダセグメントの(円筒長手軸線に平行な)上述の断面が、円筒長手軸線の方向に視て少なくとも略同じ幅に選択されている(つまり、圧入の形態となる)と、好ましくもラバーマウントブッシュは、例えばさらなる製作ステップにおいて、手を使って捻られてから凸型シリンダセグメントが凹型シリンダセグメント内に移動させられる。この例では、予荷重プロセスは手を使って行なわれる。
【0030】
手を使った予荷重プロセスの場合、ラバーマウントブッシュが回転する前に先ずセグメントのエッジが接触する或いは両方のシリンダセグメントが互いに突き合わされるように移動させられることも必要ない。
【0031】
ラバーマウントブッシュと、ハブキャリア(若しくはボディ)との間の形状結合が行なわれてから、ラバーマウントは、この予荷重が加えられた位置でハブキャリアに固設することができる。その場合、好ましくはネジを締め付けることにより固設される。組み立てプロセス中のこの予荷重が、ラバーマウントが車両の設計位置において歪のない状態になることを可能にする。
【0032】
既に上で触れたように、ハブキャリア若しくはボディの凹型シリンダセグメントが切削機械加工、特にフライス加工工程により製作されることがさらに好ましい。このとき特に、ディスクフライスを1回、或いは二つのシリンダセグメントの場合は2回、送り込むことで、この或いはこれらの凹型シリンダセグメントを製作することが好ましい。従来技術とは対照的に、形状結合のための成形加工部の輪郭を個別にフライス工程を通してなぞる必要はない。シリンダセグメントの形状のおかげで、適したフライスが一度或いは(シリンダセグメントの数に応じて)何度かハブキャリア内に入り込みさえすればよい。ハブキャリアの凹型シリンダセグメントを製作する手間が、従来技術に比べてかなり簡易化される。これによりコストと時間が削減される。
フライス加工に加えて、他の切削加工も同様に考えられる。
【0033】
ラバーマウントブッシュのこの或いはこれらの凸型シリンダセグメントはここで、好ましくは、冷間加工プロセスにおいて、特にスタンピング工程においてスタンピング部品として製作される。代替的に、凸型シリンダセグメントを鍛造プロセスにより、若しくは熱間プレスによる工程により製作することも可能である。
【0034】
これらの特徴および他の特徴は、請求項および明細書から、さらに図面からも明らかになり、個々の特徴は、本発明の一実施形態において、それぞれ個別にまたは下位の組み合わせの形で実施され、ここではそれらに対する保護がクレームされる。
【0035】
以下に、二つの実施例に基づいて本発明をさらに説明する。詳細に説明された全ての特徴部は、本発明に本質的であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1はここで、ラバーマウント2が制振ダンパ3(このうちラバーマウント2に直に接している部分だけが見えている。)を支えている或いはラバーマウント2を介してダンパ3がハブキャリア1に取り付けられているそのラバーマウント2が取り付けられたハブキャリア1の立体的な部分図である。ここで再度指摘しておくべきは、ハブキャリア2の代わりに、ボディの適した部位であって、本発明の然るべき態様でダンパ3がラバーマウント2を介して取り付けられている部位が用いられるのでもよいということである。その他には、説明した実施例においても、ハブキャリア1とは反対側の制振ダンパ3の端部は、もちろんボディに取り付けられている(もっともそこでは通常の仕方で取り付けられている。)が、ダンパ3は、不図示のサスペンションスプリングをさらに備えて全体がボディ側の所謂サポート受け部に支えられているダンパ-サスペンションスプリング・ユニットの構成部品であることが好ましい。
【
図2】
図2はここで、ラバーマウント2に接続されたダンパ3の端部の詳細図を示している。ここでは特に、組み込まれた状態でハブキャリア1に面する或いはハブキャリア1に係合するラバーマウント2の側が看取できる。
【
図3】
図3では、三次元的な詳細図において、
図1のハブキャリア1の一部分であって、ラバーマウント2がハブキャリアに接続される部分だけが看取できる。
【
図4】
図4では、ラバーマウント2の組み付けの第一工程、つまりこの場合、ハブキャリア1の、凹に丸みを帯びたシリンダセグメント形状の凹部1aに、凸に丸みを帯びたシリンダセグメント2baを係合させようとしているラバーマウント2のラバーマウントブッシュ2bが看取できる。
【
図5】
図5では、
図4に続く、組み付けの次の工程が看取できる。
【
図6】
図6には、ラバーマウント2或いはラバーマウント2のラバーマウントブッシュ2bの形状の代替的な実施例が三次元的な図で示されている。
【
図7】
図7は、
図5のラバーマウント2に適合するハブキャリア部位1を三次元的な図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
さて、先ず
図1を参照すると、ラバーマウント2が分かる。ラバーマウント2の外側ブシュ2aに制振ダンパ3がその魚眼ベアリング部3aで支持され、ラバーマウント2の内側ブシュ2bは、ネジ4によりハブキャリア1に取り付けられ、つまりネジ留めされている或いはハブキャリアに対して締着されている。二つのブッシュ2a,2bの間には、断面が環状のよくあるエラストマ部材2cが存在する。ネジ4と機能的に協働する内側ブシュ2bは、ハブキャリア1に面した内側ブシュの端部が、対応した形に作られたハブキャリア1の当接部位上に載る。ここで、内側ブシュ2bおよびハブキャリア1には、ネジ4の軸線A(長手軸線、回転軸線)周りにおける内側ブシュ2bの回転自由度が形状結合式の拘束部により拘束されるのに用いられる手段が設けられている。この形状結合式の拘束部は、以下の図に見られるように、内側ブシュ2bの凸に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダセグメント2baと、ハブキャリア1の凹に丸みを帯びた少なくとも一つのシリンダセグメント1aとが係合し合うことにより形成される。
【0038】
図2はここで、内側ブシュ2bを有したラバーマウント2の魚眼ベアリング部3aの立体的な詳細図を示し、内側ブシュ2bは、組み立てられた状態でハブキャリア1に面する自身の端部領域に、上記の凸に丸みを帯びたシリンダセグメント2ba(凸型シリンダセグメント2baとも称する。)を備えている。ここで、凸型シリンダセグメント2bの湾曲した外側のエッジは、その断面において円の一部ないし円のセグメントを形成している。
さらに、この端部領域は、凸型シリンダセグメント2baの端部に円筒形状の段部2bbを含み、この段部を通して上記のネジ4が差し込まれるとともに、この段部が、後で説明するハブキャリア1におけるダンパ3の組み付けのために軸線方向の(支承部2の回転軸線Aの方向の)ガイド部をなしている。円筒形状の段部2bbはここで、円筒形状の段部2bbの長手軸線がラバーマウント2の長手軸線上に位置しているか或るいはその延長をなすように凸型シリンダセグメント2baに設けられている。
従来技術とは対照的に、上記の形状結合は、端部領域としての球形のセグメントによってではなく、シリンダセグメントによって形成される。これには、特に製作の経済性に関して明らかな利点がある。
【0039】
図3には、組み付けの際に内側ブシュ2bの凸型シリンダセグメント2baが係合するハブキャリア1の領域が示されている。そのために、ハブキャリア1は、湾曲したシリンダセグメント形状の凹部1a若しくは凹に丸みを帯びたシリンダセグメント1a(凹型シリンダセグメント1aとも称する。)を有している。さらに、ハブキャリアは、湾曲したシリンダセグメント凹部1aの内部に貫通孔部1bを有し、この中に内側ブシュ2bの円筒形状の段部2bbが組み付け時に係合することで、ハブキャリア1における内側ブシュ2bの軸線方向における(ラバーマウント2ないしネジ4の回転軸線Aの方向における)ガイドが可能になる。
凹型シリンダセグメント1aはここで、その形状からして、好ましくもラバーマウント2の凸型シリンダセグメント2baに対する謂わば雌型とみなすことができ、それにより、凸型シリンダセグメント2baが凹型シリンダセグメント1a内に係合できるようになり、さらにその結果、必要な形状結合を形成することになる。
図示したハブキャリア1の凹型シリンダセグメント1bは、従来技術から知られている球冠形セグメントとは対照的に、かなり簡潔に手間もあまりかけることなく製作することができる。この場合、例えば、適したフライス、特にディスクフライスが、一つのシリンダセグメントにつき一回ハブキャリア1内に入って行き、所望のシリンダセグメント形状が実現ないし製作されさえすればよい。
【0040】
図4および
図5は、
図2のダンパ3(或いは、この場合、見易くするためにラバーマウント2の内側ブシュ2bだけが示されている。)とともにラバーマウント2を
図3のハブキャリア1に組み付ける相前後して連続する工程を示している。内側ブシュ2bはここで、二つのシリンダセグメント2ba,1aの形状結合が詳細に分かるように透明に描かれている。
図4に示されているように、最初の組み付け工程では、ダンパ3が、ラバーマウント2とともに若しくは凸に丸みを帯びたシリンダセグメント2baを有する内側ブシュ2bとともに、ハブキャリア1の凹に丸みを帯びたシリンダセグメント1aの方に向かって、ネジ4ないしラバーマウント2の回転軸線Aに沿って移動させられる。このとき、この移動プロセスの間、ラバーマウント2の回転軸線Aが、組み立てられた状態におけるネジ4の回転軸線A或いはハブキャリアの孔部1bの長手軸線と一致するようにする。内側ブシュ2bはつまり、ネジ4の回転軸線Aに沿ってハブキャリア1の方に移動させられる。次に、この移動プロセスは、内側ブシュ2bの凸型シリンダセグメント2baが、その円の一部の形をしたエッジによって、ハブキャリア1の凹に丸みを帯びたシリンダセグメント1aのエッジにぶつかるまで続けられる。
上記の円筒形状の段部2bbはここで、上記の孔部1bに係合し、その接続を軸線方向に(回転軸線の方向に)支持し或いは内側ブシュ2bを軸線方向にガイドする。
内側ブシュ2bの凸に丸みを帯びたシリンダセグメント2baが、ハブキャリアの凹に丸みを帯びたシリンダセグメント1aと形状結合していくようにするには、凸型シリンダセグメント2baが、凹型シリンダセグメント1a内に入り込める或いはその中に滑り込めるように、その回転軸線A周りに捻れる必要がある。
【0041】
ここで、好ましい実施例では、ハブキャリア1の凹型シリンダセグメント1aの円筒長手軸線Z2に平行な断面は、円筒長手軸線Z1の方向の凸型シリンダセグメント2baの断面よりも、円筒長手軸線Z2の方向に関して少なくとも僅かに幅広に形成されている。凹型シリンダセグメント1aの上述の断面の幅b2はつまり、好ましくも、凸型シリンダセグメント2baの上述の断面の幅b1よりも広い。
凸型シリンダセグメント2baは、ラバーマウント2の長手軸線Aに沿ってさらに前進させられることで、そのエッジが凹型シリンダセグメントのエッジで滑って、勝手に(回転軸線A周りに)回転しつつ凹型シリンダセグメント1a中に入っていく。つまり、エラストマ部材2cは、さらなる前進により捻れて、そのときに予荷重が加えられる。
ダンパ3の位置、従ってハブキャリア1に対する内側ブシュ2bの位置を組み付け時に正確に選択することで、対応するサスペンションスプリングに負荷をかけることなくエラストマ部材2cの中に上述の予荷重を生じさせることができる。こうして、両方のシリンダセグメント2ba,1aの位置によって予め決められた分だけ内側ブシュ2bが捻れ、それによりエラストマ部材2cに予荷重が加えられる場合にのみ、内側ブシュ2bをハブキャリア1に接続させることができる。
今述べた好ましい実施例に代えて、ハブキャリア1の凹型シリンダセグメント1aが凸型シリンダセグメント2baと同じ寸法を有していてもよい。このときには、捻りプロセスとそれによる予荷重プロセスとは、また手を使って、つまり、例えば内側ブシュ2bにあてがってこれを捻るのに適した予荷重用ツールを用いて行うこともできる。
図5に見られるように、予荷重プロセスの後、凹型と凸型のシリンダセグメント1a,2baの間に形状結合が確立され、ハブキャリア1は、ラバーマウント2のエラストマ部材2cに予荷重が加わった状態でダンパ3に接続されている。次に、この接続は、内側ブシュ2bの貫通孔部2bcとハブキャリア1の孔部1bを貫いて突出するネジ4(
図5では不図示)を締めることによって外れないようにすることができる。
【0042】
単体のシリンダセグメント1a,2baに代えて、複数の、例えば
図6および
図7に示されるように二つのシリンダセグメント1a,2baにより上述の形状結合が確立されるようにすることもやはり可能である。この場合、
図6において、魚眼ベアリング部3aと内側ブシュ2bの詳細図に(
図2と同様の見方で)示されているように、両方の凸型シリンダセグメント2baは、これらの(円筒長手軸線Z1,Z2に平行に横切る)断面が、十字形を形成するように互いに配設されていることが好ましい。
図7はここで、やはり十字形を形成する二つの凹型シリンダセグメント1aを有する、対応するハブキャリア1を示す。
図7のハブキャリアの凹型シリンダセグメント1aを製作するには、例えばフライス、特にディスクフライス等の切削加工工具が1回ではなく2回ハブキャリア1に入って行く必要がある。従来技術の球冠形の凹部における上述の外形をなぞるのに比べれば、これでもかなり容易である。
さらに、このような十字形には、複数の方向における(つまりこの場合には、既存の円筒長手軸線Z1,Z2の方向のそれぞれにおける)複数の点接触により、凸型シリンダセグメントが凹型シリンダセグメント上でより良好に支持されるという長所がある。これにより、セグメントの位置を相互に正確に設定できるようになり、最終的に予荷重で残る許容誤差を下げることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ハブキャリア
1a 凹型シリンダセグメント
1b 孔部
2 ラバーマウント
2a 外側ブシュ
2b 内側ブシュ
2ba 凸型シリンダセグメント
2bb 段部
2bc 孔部
2c エラストマ部材
3 ダンパ
3a 魚眼ベアリング部
4 ネジ
A 回転軸線
Z1 凸型シリンダセグメントの円筒長手軸線
Z2 凹型シリンダセグメントの円筒長手軸線
b1 凸型シリンダセグメントの断面幅
b2 凹型シリンダセグメントの断面幅
【国際調査報告】