(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20220105BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20220105BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H05B33/14 B
C09K11/06 690
C07D307/91
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518759
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(85)【翻訳文提出日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 KR2019014150
(87)【国際公開番号】W WO2020085845
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0129371
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0132727
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509266480
【氏名又は名称】ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ・コリア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チシク
(72)【発明者】
【氏名】イ、スヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、スンヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イー、トンヒョン
【テーマコード(参考)】
3K107
4C037
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB08
3K107CC21
3K107DD59
3K107DD68
4C037SA10
(57)【要約】
本開示は、有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイスに関する。本開示の有機エレクトロルミネセント化合物は、発光層の中に含まれていてもよく、高い発光効率及び/又は優れた寿命特性を有する有機エレクトロルミネセントデバイスを製造するのに有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式1:
【化1】
(式中、
R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは無置換(5~30員)ヘテロアリールを表すが、R
2~R
4のうちの1つは
【化2】
に結合していることを条件とし;
R
9~R
16は、それぞれ独立して水素又は重水素を表し;
Ar
1は、置換若しくは無置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは無置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
D
Nは、N個の水素原子が重水素で置換されていることを意味し;
Nは8~50の整数を表す)
によって表される有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項2】
式1が以下の式1-1~1-3のいずれか1つ:
【化3】
(式中、
R
1~R
8、R
9~R
16、Ar
1、及びD
Nは請求項1で定義した通りであり、
Nは8~30の整数を表す)
によって表される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項3】
R
1~R
8、及びAr
1における前記置換アルキル、前記置換アリール、及び前記置換ヘテロアリールの前記置換基が、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン;シアノ;カルボキシル;ニトロ;ヒドロキシル;(C1~C30)アルキル;ハロ(C1~C30)アルキル;(C2~C30)アルケニル;(C2~C30)アルキニル;(C1~C30)アルコキシ;(C1~C30)アルキルチオ;(C3~C30)シクロアルキル;(C3~C30)シクロアルケニル;(3~7員)ヘテロシクロアルキル;(C6~C30)アリールオキシ;(C6~C30)アリールチオ;無置換の若しくは(C6~C30)アリールで置換された(3~30員)ヘテロアリール;無置換の若しくは(C1~C30)アルキル及び(3~30員)ヘテロアリールのうちの少なくとも1つで置換された(C6~C30)アリール;トリ(C1~C30)アルキルシリル;トリ(C6~C30)アリールシリル;ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル;(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル;アミノ;モノ若しくはジ(C1~C30)アルキルアミノ;モノ若しくはジ(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキルカルボニル;(C1~C30)アルコキシカルボニル;(C6~C30)アリールカルボニル;ジ(C6~C30)アリールボロニル;ジ(C1~C30)アルキルボロニル;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールボロニル;(C6~C30)アリール(C1~C30)アルキル;及び(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項4】
【化4】
に結合していないR
1~R
8が、それぞれ独立して水素又は重水素を表し;
Ar
1が、置換若しくは無置換(C6~C25)アリール又は置換若しくは無置換(5~20員)ヘテロアリールを表す、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項5】
【化5】
に結合していないR
1~R
8が、それぞれ独立して水素又は重水素を表し;
Ar
1が、無置換であるか、(C1~C6)アルキル、(C6~C15)アリール、及び(5員~15員)ヘテロアリールのうちの少なくとも1つで置換された(C6~C25)アリール;又は無置換であるか(C6~C12)アリールで置換された(5~20員)ヘテロアリールを表す、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項6】
Nが13~30の整数を表す、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項7】
式1で表される前記化合物が、以下の化合物:
【化6】
【化7】
【化8】
からなる群から選択される、請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセント材料。
【請求項9】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイス。
【請求項10】
前記有機エレクトロルミネセント化合物が発光層に含まれる、請求項9に記載の有機エレクトロルミネセントデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロルミネセント化合物及びそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセント(EL)デバイスは、より広い視野角、より大きいコントラスト比及びより速い応答時間を提供するという点で利点を有する自発光デバイスである。1987年に、Eastman Kodakにより、発光層を形成するための材料として小さい芳香族ジアミン分子とアルミニウム錯体とを使用することにより、最初の有機ELデバイスが開発された[Appl.Phys.Lett.51,913,1987]。
【0003】
有機エレクトロルミネセントデバイス(OLED)は、有機発光材料に電気を印加することによって電気エネルギーを光に変換し、通常、アノード、カソード及び2つの電極間に形成された有機層を含む。OLEDの有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子阻止層、発光層(ホスト材料及びドーパント材料を含有する)、電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等を含み得る。有機層において使用される材料は、機能に応じて、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等に分類することができる。OLEDにおいて、電圧の印加により、正孔がアノードから発光層に注入され、電子がカソードから発光層に注入され、高エネルギーの励起子が正孔と電子との再結合によって形成される。このエネルギーにより、有機ルミネセント化合物は励起状態に達し、発光は、有機ルミネセント化合物の励起状態が基底状態に戻ることに起因してエネルギーから発光することによって起こる。
【0004】
最近、ディスプレイのより大きい面積により、より繊細な及び鮮明な色を示すことができる発光材料が必要とされている。具体的には、青色発光材料の場合に、ADN及びDPVBiなどの材料がホスト材料として使用され、芳香族アミン系化合物、銅フタロシアニン化合物、カルバゾール系誘導体、ペリレン系誘導体、クマリン系誘導体、及びピレン系誘導体などの材料がドーパント材料として使用されている。しかしながら、これらの材料は、高い色純度の藍色を得ることが困難であり、且つ、波長がより短くなるにつれてより短い発光寿命を有するために問題がある。
【0005】
したがって、フルカラーディスプレイの実現においては、長い寿命を有する藍色の発光材料と、青色発光材料と共に好適なエネルギーレベルを有する他の有機材料の開発が必要とされている。
【0006】
米国特許第8,759,818号明細書及び米国特許出願公開第2014/0001459号明細書には、いくつかの水素原子が重水素で置換されているアントラセン部位を含む有機エレクトロルミネセント化合物が開示されている。しかしながら、これらの参照文献には、いくつかの水素原子が重水素で置換されており且つジベンゾフランが特定の位置で置換されているアントラセン部位を含む有機エレクトロルミネセント化合物は具体的に開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、第1に、優れた寿命特性を有する有機エレクトロルミネセントデバイスを製造するのに有効な有機エレクトロルミネセント化合物を提供することであり、第2に、有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセントデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
有機エレクトロルミネセントデバイスにおいては、青色発光材料又は青色発光デバイスの改良が重要である。しかしながら、有機エレクトロルミネセントデバイスが開発された初期から、青色ホスト材料としてアントラセンの主要部位を有する化合物を使用することに変化はなかった。そのため、青色発光材料又は青色発光デバイスの寿命特性を改善することには限界があった。寿命特性を改善するために、青色ホスト材料に含まれるアントラセン化合物の安定性を高めることができる。その方法の1つは重水素化である。アントラセン化合物を重水素化する場合、化合物のゼロ点振動エネルギーを下げることができ、それにより化合物の結合解離エネルギー(BDE)を上げることができる。結果として、アントラセン化合物の安定性を高めることができる。
図1は重水素化による結合解離エネルギーの増加を示すグラフである。具体的には、本発明者らは、以下の式1の特定の構造を有する有機エレクトロルミネセント化合物を重水素化すると、他の構造を有するアントラセン化合物と比較して、寿命のより顕著な改善が得られることを見出した。アリールの代わりにヘテロアリールをアントラセンコアに結合させることにより、正孔及び/又は電子の移動度を改善することができ、それによって駆動電圧を低下させることができる。
【化1】
式中、
R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは無置換(5~30員)ヘテロアリールを表すが、R
2~R
4のうちの1つは
【化2】
に結合していることを条件とし;
R
9~R
16は、それぞれ独立して水素又は重水素を表し;
Ar
1は、置換若しくは無置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは無置換(5~30員)ヘテロアリールを表し;
D
Nは、N個の水素原子が重水素で置換されていることを意味し;
Nは8~50の整数を表す。
【0009】
発明の効果
本開示による有機エレクトロルミネセント化合物を使用することにより、青色発光寿命が改善された有機エレクトロルミネセントデバイスを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】重水素化による結合解離エネルギーの増加を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示が詳細に説明される。しかしながら、以下の説明は、本発明を説明することを意図し、決して本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0012】
本開示における用語「有機エレクトロルミネセント化合物」は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用され得、且つ必要に応じて有機エレクトロルミネセントデバイスを構成する任意の層に含まれ得る化合物を意味する。
【0013】
本開示における用語「有機エレクトロルミネセント材料」は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用され得、且つ少なくとも1つの化合物を含み得る材料を意味する。有機エレクトロルミネセント材料は、必要に応じて、有機エレクトロルミネセントデバイスを構成する任意の層に含まれ得る。例えば、有機エレクトロルミネセント材料は、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔補助材料、発光補助材料、電子阻止材料、発光材料、電子緩衝材料、正孔阻止材料、電子輸送材料、電子注入材料等であり得る。
【0014】
本開示の有機エレクトロルミネセント材料は、式1で表される少なくとも1つの化合物を含み得る。式1で表される化合物は、発光層又は正孔輸送層に含まれ得るが、それらに限定されない。例えば、発光層に含まれる場合、式1で表される化合物は、青色発光用のホストなどのホストとして含まれ得る。本開示の一実施形態によれば、式1の化合物は、蛍光性ホスト、例えば青色発光用の蛍光性ホストであり得る。
【0015】
本明細書で以下、式1で表される化合物がより詳細に説明される。
【0016】
本明細書において、用語「(C1~C30)アルキル」は、鎖を構成する1~30個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐状アルキルであることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個である。上記アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル等が挙げられ得る。用語「(C2~C30)アルケニル」は、鎖を構成する2~30個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐状アルケニルであることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個である。上記アルケニルとしては、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチルブタ-2-エニル等が挙げられ得る。用語「(C2~C30)アルキニル」は、鎖を構成する2~30個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐状アルキニルであることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは2~20個、より好ましくは2~10個である。上記のアルキニルとしては、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-メチルペンタ-2-イニル等が挙げられ得る。用語「(C3~C30)シクロアルキル」は、3~30個の環骨格炭素原子を有する単環式又は多環式の炭化水素であることを意味し、ここで、炭素原子の数は、好ましくは、3~20個、より好ましくは3~7個である。上記のシクロアルキルには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が含まれ得る。用語「(3~7員)ヘテロシクロアルキル」は、3~7個、好ましくは5~7個の環骨格原子を有し、且つB、N、O、S、Si及びPからなる群、好ましくはO、S及びNからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むシクロアルキルであることを意味する。上記のヘテロシクロアルキルには、テトラヒドロフラン、ピロリジン、チオラン、テトラヒドロピラン等が含まれ得る。用語「(C6~C30)アリール」は、6~30個の環骨格炭素原子を有する芳香族炭化水素に由来する単環式環又は縮合環ラジカルであることを意味し、この場合、環骨格炭素原子の数は、好ましくは6~25個、より好ましくは6~18個である。上記アリールは、部分的に飽和され得、スピロ構造を含み得る。上記アリールには、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、フェニルテルフェニル、フルオレニル、フェニルフルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、アントラセニル、インデニル、トリフェニレニル、ピレニル、テトラセニル、ペリレニル、クリセニル、ナフタセニル、フルオランテニル、スピロビフルオレニル、アズレニル等が含まれ得る。より具体的には、アリールには、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、ベンズアントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル、ナフタセニル、ピレニル、1-クリセニル、2-クリセニル、3-クリセニル、4-クリセニル、5-クリセニル、6-クリセニル、ベンゾ[c]フェナントリル、ベンゾ[g]クリセニル、1-トリフェニレニル、2-トリフェニレニル、3-トリフェニレニル、4-トリフェニレニル、1-フルオレニル、2-フルオレニル、3-フルオレニル、4-フルオレニル、9-フルオレニル、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、o-テルフェニル、m-テルフェニル-4-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-3-イル、p-テルフェニル-2-イル、m-クアテルフェニル、3-フルオランテニル、4-フルオランテニル、8-フルオランテニル、9-フルオランテニル、ベンゾフルオランテニル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-キシリル、メシチル、o-クメニル、m-クメニル、p-クメニル、p-t-ブチルフェニル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニリル、4”-t-ブチル-p-テルフェニル-4-イル、9,9-ジメチル-1-フルオレニル、9,9-ジメチル-2-フルオレニル、9,9-ジメチル-3-フルオレニル、9,9-ジメチル-4-フルオレニル、9,9-ジフェニル-1-フルオレニル、9,9-ジフェニル-2-フルオレニル、9,9-ジフェニル-3-フルオレニル、9,9-ジフェニル-4-フルオレニル等が含まれ得る。
【0017】
本明細書において、用語「(3~30員)ヘテロアリール」は、3~30個の環骨格原子を有し、且つ、B、N、O、S、Si、及びPからなる群から選択される少なくとも1つ、好ましくは1~4つのヘテロ原子を含むアリール基である。上記ヘテロアリールは、単環式環、又は少なくとも1つのベンゼン環と縮合した縮合環であり得;部分飽和であり得;少なくとも1つのヘテロアリール又はアリール基を単結合によってヘテロアリール基に結び付けることによって形成されるものであり得;スピロ構造を含み得る。上記ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等などの単環式環型ヘテロアリール、及びベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾナフトチオフェニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ナフトチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、ベンゾインドリル、インダゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、ベンゾキナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾキノキサリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾカルバゾリル、ジベンゾカルバゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナントリジニル、ベンゾジオキソリル、ジヒドロアクリジニル等の縮合環型ヘテロアリールが挙げられ得る。より具体的には、ヘテロアリールとしては、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、ピラジニル、2-ピリジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、6-ピリミジニル、1,2,3-トリアジン-4-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、1-ピラゾリル、1-インドリジニル、2-インドリジニル、3-インドリジニル、5-インドリジニル、6-インドリジニル、7-インドリジニル、8-インドリジニル、2-イミダゾピリジニル、3-イミダゾピリジニル、5-イミダゾピリジニル、6-イミダゾピリジニル、7-イミダゾピリジニル、8-イミダゾピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル、1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル、2-フリル、3-フリル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、4-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニル、6-ベンゾフラニル、7-ベンゾフラニル、1-イソベンゾフラニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル、5-イソベンゾフラニル、6-イソベンゾフラニル、7-イソベンゾフラニル、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル、1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル、9-カルバゾリル、アザカルバゾリル-1-イル、アザカルバゾリル-2-イル、アザカルバゾリル-3-イル、アザカルバゾリル-4-イル、アザカルバゾリル-5-イル、アザカルバゾリル-6-イル、アザカルバゾリル-7-イル、アザカルバゾリル-8-イル、アザカルバゾリル-9-イル、1-フェナントリジニル、2-フェナントリジニル、3-フェナントリジニル、4-フェナントリジニル、6-フェナントリジニル、7-フェナントリジニル、8-フェナントリジニル、9-フェナントリジニル、10-フェナントリジニル、1-アクリジニル、2-アクリジニル、3-アクリジニル、4-アクリジニル、9-アクリジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-オキサジアゾリル、5-オキサジアゾリル、3-フラザニル、2-チエニル、3-チエニル、2-メチルピロール-1-イル、2-メチルピロール-3-イル、2-メチルピロール-4-イル、2-メチルピロール-5-イル、3-メチルピロール-1-イル、3-メチルピロール-2-イル、3-メチルピロール-4-イル、3-メチルピロール-5-イル、2-t-ブチルピロール-4-イル、3-(2-フェニルプロピル)ピロール-1-イル、2-メチル-1-インドリル、4-メチル-1-インドリル、2-メチル-3-インドリル、4-メチル-3-インドリル、2-t-ブチル-1-インドリル、4-t-ブチル-1-インドリル、2-t-ブチル-3-インドリル、4-t-ブチル-3-インドリル、1-ジベンゾフラニル、2-ジベンゾフラニル、3-ジベンゾフラニル、4-ジベンゾフラニル、1-ジベンゾチオフェニル、2-ジベンゾチオフェニル、3-ジベンゾチオフェニル、4-ジベンゾチオフェニル、1-シラフルオレニル、2-シラフルオレニル、3-シラフルオレニル、4-シラフルオレニル、1-ゲルマフルオレニル(germafluorenyl)、2-ゲルマフルオレニル、3-ゲルマフルオレニル、4-ゲルマフルオレニル等が挙げられ得る。「ハロゲン」としては、F、Cl、Br、及びIが挙げられる。
【0018】
加えて、「オルト(o-)」、「メタ(m-)」、及び「パラ(p-)」は、それぞれ置換基の相対位置を表す接頭辞である。オルトは、2つの置換基が互いに隣り合っていることを示し、例えば、ベンゼン誘導体における2つの置換基が1及び2位を占めている場合、それは、オルト位と呼ばれる。メタは、2つの置換基が1位及び3位にあることを示し、例えばベンゼン誘導体における2つの置換基が1位及び3位を占めるとき、それはメタ位と呼ばれる。パラは、2つの置換基が1位及び4位にあることを示し、例えばベンゼン誘導体における2つの置換基が1位及び4位を占めるとき、それはパラ位と呼ばれる。
【0019】
本明細書において、表現「置換若しくは無置換」における「置換」は、特定の官能基中の水素原子が別の原子又は別の官能基、即ち置換基で置き換えられていることを意味する。R1~R8、及びAr1における置換アルキル、置換アリール、及び置換ヘテロアリールの置換基は、それぞれ独立して、重水素;ハロゲン;シアノ;カルボキシル;ニトロ;ヒドロキシル;(C1~C30)アルキル;ハロ(C1~C30)アルキル;(C2~C30)アルケニル;(C2~C30)アルキニル;(C1~C30)アルコキシ;(C1~C30)アルキルチオ;(C3~C30)シクロアルキル;(C3~C30)シクロアルケニル;(3~7員)ヘテロシクロアルキル;(C6~C30)アリールオキシ;(C6~C30)アリールチオ;無置換の若しくは(C6~C30)アリールで置換された(3~30員)ヘテロアリール;無置換の若しくは(C1~C30)アルキル及び(3~30員)ヘテロアリールのうちの少なくとも1つで置換された(C6~C30)アリール;トリ(C1~C30)アルキルシリル;トリ(C6~C30)アリールシリル;ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル;(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル;アミノ;モノ若しくはジ(C1~C30)アルキルアミノ;モノ若しくはジ(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノ;(C1~C30)アルキルカルボニル;(C1~C30)アルコキシカルボニル;(C6~C30)アリールカルボニル;ジ(C6~C30)アリールボロニル;ジ(C1~C30)アルキルボロニル;(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールボロニル;(C6~C30)アリール(C1~C30)アルキル;並びに(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールからなる群から選択される少なくとも1つである。本開示の一実施形態によれば、置換基は、それぞれ独立して、(C1~C6)アルキル、(C6~C15)アリール、及び(5~15員)ヘテロアリールからなる群から選択される少なくとも1つである。具体的には、置換基は、それぞれ独立して、メチル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びカルバゾリルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0020】
式1によって表される化合物は、下記の式1-1~1-3のいずれか1つによって表され得る:
【化3】
(式中、
R
1~R
8、R
9~R
16、Ar
1、及びD
Nは式1で定義した通りであり、
Nは8~30の整数を表す)。
【0021】
式1において、R
1~R
8は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C6~C30)アリール、又は置換若しくは無置換(5~30員)ヘテロアリールを表すが、R
2~R
4のうちの1つは
【化4】
に結合していることを条件する。本開示の一実施形態では、R
2~R
4のうちの1つは
【化5】
に結合しており、R
2~R
4の残り、R
1、及びR
5~R
8は、それぞれ独立して水素又は重水素を表す。
【0022】
式1では、Ar1は、置換若しくは無置換(C6~C30)アリール又は置換若しくは無置換(5~30員)ヘテロアリールを表す。本開示の一実施形態では、Ar1は、置換若しくは無置換(C6~C25)アリール、又は置換若しくは無置換(5~20員)ヘテロアリールを表す。本開示の別の実施形態では、Ar1は、無置換であるか、(C1~C6)アルキル、(C6~C15)アリール、及び(5~15員)ヘテロアリールのうちの少なくとも1つで置換された(C6~C25)アリール;又は無置換であるか(C6~C12)アリールで置換された(5~20員)ヘテロアリールを表す。具体的には、Ar1は、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、フェナントレニル、ナフチルフェニル、フェニルナフチル、ビナフチル、ビフェニルナフチル、ジメチルフルオレニル、ジメチルベンゾフルオレニル、カルバゾリルフェニル、カルバゾリルナフチル、フェニルベンゾチアゾリル、フェニルベンゾオキサゾリル、ジベンゾチオフェニル、フェニルカルバゾリル、フェニルナフトチアゾリル、ベンゾナフトフラニル、フェニルベンゾカルバゾリル、19員の窒素含有ヘテロアリールなどを表し得る。
【0023】
式1において、DNは、式1のN個の水素原子が重水素で置換されていることを意味する。Nは、8~50の整数、好ましくは8~40の整数、より好ましくは8~30の整数、更に好ましくは13~30の整数を表す。下限以上の数で重水素化された場合、重水素化による結合解離エネルギーの増加は、寿命特性を顕著に増加させるのに十分である。上限は、各化合物中の置換可能な水素原子の数に応じて決定される。
【0024】
本開示の一実施形態では、式1において、
【化6】
に結合していないR
1~R
8は、それぞれ独立して水素又は重水素を表し;Ar
1は、置換若しくは無置換(C6~C25)アリール又は置換若しくは無置換(5~20員)ヘテロアリールを表す。
【0025】
本開示の別の実施形態では、式1において、
【化7】
に結合していないR
1~R
8は、それぞれ独立して水素又は重水素を表し;Ar
1は、無置換であるか、(C1~C6)アルキル、(C6~C15)アリール、及び(5員~15員)ヘテロアリールのうちの少なくとも1つで置換された(C6~C25)アリール;又は無置換であるか(C6~C12)アリールで置換された(5~20員)ヘテロアリールを表す。
【0026】
本開示の式において、隣接置換基が互いに結合して環を形成する場合、この環は、置換若しくは無置換の単環式若しくは多環式(3~30員)脂環式環若しくは芳香環、又はそれらの組み合わせであり得、ここで、形成される環は、B、N、O、S、Si、及びP、好ましくはN、O、及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し得る。本開示の一実施形態によれば、環骨格原子の数は、5~20個であり得る。本開示の別の実施形態によれば、環骨格原子の数は、5~15個であり得る。例えば、縮合環は、置換若しくは無置換ジベンゾチオフェン環、置換若しくは無置換ジベンゾフラン環、置換若しくは無置換ナフタレン環、置換若しくは無置換フェナントレン環、置換若しくは無置換フルオレン環、置換若しくは無置換ベンゾチオフェン環、置換若しくは無置換ベンゾフラン環、置換若しくは無置換インドール環、置換若しくは無置換インデン環、置換若しくは無置換ベンゼン環、又は置換若しくは無置換カルバゾール環であり得る。
【0027】
本開示の式において、ヘテロアリールは、それぞれ独立して、B、N、O、S、Si、及びPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有し得る。加えて、ヘテロ原子は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C6~C30)アリール、置換若しくは無置換(5~30員)ヘテロアリール、置換若しくは無置換(C3~C30)シクロアルキル、置換若しくは無置換(C1~C30)アルコキシ、置換若しくは無置換トリ(C1~C30)アルキルシリル、置換若しくは無置換ジ(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキルジ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは無置換トリ(C6~C30)アリールシリル、置換若しくは無置換モノ-若しくはジ-(C1~C30)アルキルアミノ、置換若しくは無置換モノ-若しくはジ-(C6~C30)アリールアミノ、及び置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル(C6~C30)アリールアミノからなる群から選択される少なくとも1つと結合し得る。
【0028】
式1で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【化8】
【化9】
【化10】
【0029】
本開示による式1の化合物は、当業者に公知の合成方法によって、例えば、以下の反応スキームに示されるように調製され得るが、それらに限定されない。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
反応スキーム1~3において、Ar1、R1~R8、R9~R16、及びDNは式1で定義した通りであり、Halはハロゲンを表す。
【0034】
加えて、式1で表される化合物の非重水素化誘導体は、公知のカップリング反応又は置換反応によって調製され得る。重水素化誘導体は、重水素化された前駆体物質を使用する類似の方法によって、又はより一般的には、非重水素化化合物を、三塩化アルミニウム若しくはエチルアルミニウムクロリドなどのルイス酸、トリフルオロメタンスルホン酸若しくはトリフルオロメタンスルホン酸-DなどのH/D交換触媒等の存在下で、重水素化溶媒、D6-ベンゼンなどを用いて処理することによって調製され得る。更に、重水素化度は、反応温度などの反応条件を変えることによって制御され得る。例えば、反応温度及び時間、酸当量等を制御することによって、式1におけるNの数を制御することができる。
【0035】
式1によって表される化合物の例示的な合成例が上に記載されたが、当業者は、それらの全てがブックワルド-ハートウィッグクロスカップリング反応、N-アリール化反応、H-mont媒介エーテル化反応、宮浦ホウ素化反応、鈴木クロスカップリング反応、分子内酸誘発環化反応、Pd(II)触媒酸化的環化反応、グリニャール反応、ヘック反応、環状脱水反応、SN1置換反応、SN2置換反応、ホスフィン媒介還元的環化反応等に基づくこと、及び具体的な合成例に明記されていない上の式1で定義されている置換基が結合している場合であっても上記の反応が進行することを容易に理解することができるであろう。
【0036】
本開示は、式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物を含む有機エレクトロルミネセント材料、及び本有機エレクトロルミネセント材料を含む有機エレクトロルミネセントデバイスを提供する。この材料は、本開示による有機エレクトロルミネセント化合物のみからなり得、又は有機エレクトロルミネセント材料に含まれる従来の材料を更に含み得る。
【0037】
本開示による有機エレクトロルミネセントデバイスは、第1電極、第2電極、及び第1電極と第2電極との間の少なくとも1つの有機層を含み、ここで、有機層は、式1で表される少なくとも1つの有機エレクトロルミネセント化合物を含み得る。
【0038】
第1及び第2電極のうちの1つは、アノードであり得、他は、カソードであり得る。有機層は、発光層を含み得、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層、及び電子阻止層から選択される少なくとも1つの層を更に含み得る。
【0039】
第2電極は、半透過電極又は反射電極であり得、有機エレクトロルミネセントデバイスは、形成される材料の種類に応じてトップエミッション型、ボトムエミッション型、又は両面エミッション型であり得る。
【0040】
第1電極及び第2電極は、それぞれ、透過性の導電性材料、半透過性の導電性材料、又は反射性の導電性材料で形成され得る。有機エレクトロルミネセントデバイスは、第1電極及び第2電極を形成する材料の種類に従ってトップエミッション型、ボトムエミッション型、又は両面エミッション型であり得る。加えて、正孔注入層は、p型ドーパントで更にドープされ得、電子注入層は、n型ドーパントで更にドープされ得る。
【0041】
本開示の式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔補助層、発光補助層、電子輸送層、電子緩衝層、電子注入層、中間層、正孔阻止層、及び電子阻止層の少なくとも1つに含まれ得、好ましくは、発光層に含まれ得る。発光層に使用される場合、本開示の式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物は、ホスト材料として含まれ得る。好ましくは、発光層は、少なくとも1つのドーパントを更に含み得る。必要に応じて、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物は、共ホスト材料として使用され得る。すなわち、発光層は、第2のホスト材料として、本開示の式1で表される有機エレクトロルミネセント化合物(第1ホスト材料)以外の化合物を更に含み得る。第1ホスト材料と第2ホスト材料との間の重量比は、1:99~99:1の範囲にある。
【0042】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに含まれるドーパントは、少なくとも1つのリン光性又は蛍光性ドーパント、好ましくは少なくとも1つのリン光性ドーパントである。本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスに適用される蛍光性ドーパント材料は、特に限定されない。
【0043】
有機層は、アリールアミン系化合物及びスチリルアリールアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を更に含み得る。
【0044】
加えて、本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、有機層は、周期表の1族の金属、2族の金属、第4周期の遷移金属、第5周期の遷移金属、d-遷移元素のランタニド及び有機金属からなる群から選択される少なくとも1つの金属、又は前記金属を含む少なくとも1つの錯体化合物を更に含み得る。
【0045】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスは、本開示の有機エレクトロルミネセント化合物に加えて、当技術分野において公知である、青色、赤色、又は緑色発光化合物を含有する少なくとも1つの発光層を更に含むことによって白色光を発し得る。加えて、これは、必要に応じて、黄色又は橙色の発光層を更に含み得る。
【0046】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、カルコゲナイド層、金属ハロゲン化物層及び金属酸化物層から選択される少なくとも1つの層(本明細書では以下、「表面層」)が、好ましくは、1つ又は両方の電極の内面上に配置され得る。具体的には、ケイ素又はアルミニウムのカルコゲナイド(酸化物を含む)層は、好ましくはエレクトロルミネセント媒体層のアノード面上に配置され、金属ハロゲン化物層又は金属酸化物層は、好ましくはエレクトロルミネセント媒体層のカソード面上に配置される。表面層は、有機エレクトロルミネセントデバイスに動作安定性を提供し得る。好ましくは、カルコゲナイドとしては、SiOX(1≦X≦2)、AlOX(1≦X≦1.5)、SiON、SiAlON等が挙げられ;金属ハロゲン化物としては、LiF、MgF2、CaF2、希土類金属フッ化物等が挙げられ;金属酸化物としては、Cs2O、Li2O、MgO、SrO、BaO、CaO等が挙げられる。
【0047】
正孔注入層、正孔輸送層、若しくは電子阻止層、又はそれらの組み合わせが、アノードと発光層との間に使用され得る。正孔注入層は、アノードから正孔輸送層又は電子阻止層への正孔注入障壁(又は正孔注入電圧)を下げるために多層であり得、ここで、多層のそれぞれは、2つの化合物を同時に使用し得る。正孔輸送層又は電子阻止層もまた、多層であり得る。
【0048】
電子緩衝層、正孔阻止層、電子輸送層、若しくは電子注入層、又はそれらの組み合わせを、発光層とカソードとの間に使用することができる。電子緩衝層は、電子の注入を制御する及び発光層と電子注入層との間の界面特性を改善するために多層であり得、ここで、多層のそれぞれは、2つの化合物を同時に使用し得る。正孔阻止層又は電子輸送層は多層であってもよく、多層のそれぞれが複数の化合物を使用していてもよい。
【0049】
発光補助層は、アノードと発光層との間、又はカソードと発光層との間に配置され得る。発光補助層がアノードと発光層との間に配置される場合、それは、正孔注入及び/若しくは正孔輸送を促進するために、又は電子のオーバーフローを防止するために使用することができる。発光補助層がカソードと発光層との間に配置される場合、それは、電子注入及び/若しくは電子輸送を促進するために、又は正孔のオーバーフローを防止するために使用することができる。加えて、正孔補助層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、正孔輸送速度(又は正孔注入速度)を促進する又は阻止するのに有効であり得、それによって電荷のバランスが制御されることを可能にする。更に、電子阻止層は、正孔輸送層(又は正孔注入層)と発光層との間に配置され得、発光層からオーバーフローする電子を阻止し、励起子を発光層中に閉じ込めて光漏れを防ぎ得る。有機エレクトロルミネセントデバイスが2つ以上の正孔輸送層を含む場合、更に含まれる正孔輸送層は、正孔補助層又は電子阻止層として使用され得る。正孔補助層及び電子阻止層は、有機エレクトロルミネセントデバイスの効率及び/又は寿命を改善する効果を有し得る。
【0050】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスにおいて、電子輸送化合物と還元性ドーパントとの混合領域又は正孔輸送化合物と酸化性ドーパントとの混合領域は、好ましくは、電極の対の少なくとも1つの表面に配置される。この場合に、電子輸送化合物は、アニオンに還元され、こうして混合領域からエレクトロルミネセント媒体に電子を注入する及び輸送することがより容易になる。更に、正孔輸送化合物は、カチオンに酸化され、こうして混合領域からエレクトロルミネセント媒体に正孔を注入する及び輸送することがより容易になる。好ましくは、酸化性ドーパントは、種々のルイス酸及びアクセプター化合物を含み、還元性ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、希土類金属、及びそれらの混合物を含む。還元性ドーパント層を電荷発生層として用いて2つ以上の発光層を有する有機エレクトロルミネセントデバイスを作製することができ、これは白色光を発する。
【0051】
本開示の一実施形態による有機エレクトロルミネセント材料は、白色有機発光デバイス用の発光材料として使用され得る。白色有機発光デバイスは、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)、又はYG(黄色がかった緑色)発光ユニットの配列に従って、平行サイドバイサイド配列法、スタッキング配列法、又はCCM(色変換材料)法等などの様々な構造物において提案されてきた。加えて、本開示の一実施形態による有機エレクトロルミネセント材料はまた、QD(量子ドット)を含む有機エレクトロルミネセントデバイスにも適用され得る。
【0052】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスの各層を形成するために、真空蒸発、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等などの乾式膜形成法、又はインクジェット印刷、スピンコーティング、ディップコーティング、フローコーティング等などの湿式膜形成法を用いることができる。
【0053】
湿式膜形成法を用いる場合、薄膜は、それぞれの層を形成する材料を、エタノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等などの任意の好適な溶媒に溶解させる又は拡散させることによって形成することができる。溶媒は、それぞれの層を形成する材料が、膜を形成するのにいかなる問題も引き起こさない、溶媒に可溶であるか又は分散可能である限り、特に制限されない。
【0054】
本開示の有機エレクトロルミネセントデバイスを用いることによって、ディスプレイシステム、例えば、スマートホン、タブレット、ノートブック、PC、TV、若しくは自動車用のディスプレイシステム、又は照明システム、例えば、屋外若しくは屋内照明システムを製造することが可能である。
【0055】
本明細書で以下、本開示の化合物の調製方法、及びそれの特性、並びにそれを含む有機エレクトロルミネセントデバイスの発光特性を、本開示の代表的な化合物に関して詳細に説明する。しかしながら、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0056】
実施例1:化合物C-1の調製
【化14】
3.5gの化合物1(8.3mmol)及び100mLのベンゼン-D6をフラスコの中に入れ、加熱して全ての化合物1を溶解した。混合物を室温まで冷却した後、4.4mLのトリフル酸(49.8mmol)をこれに添加した。混合物を室温で2時間30分間撹拌した後、20mLの重水をこれに添加した。10分撹拌した後、混合物をK
3PO
4水溶液で中和した。有機層をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムを用いて残留水分を除去した。得られた有機層を減圧下で蒸留し、カラムクロマトグラフィーによって分離して1.5gの化合物C-1(収率:41.3%)を得た。置換された重水素の数を、分子量及びNMRを用いて観察した。
【0057】
【0058】
デバイス実施例1:本開示による化合物を含むOLEDの製造
本開示による有機エレクトロルミネセント化合物を含むOLEDを以下の通り製造した:OLED用のガラス基板上の透明電極酸化インジウムスズ(ITO)薄膜(10Ω/sq)(ジオマテック株式会社、日本)を、順次、アセトン、エタノール、及び蒸留水での超音波洗浄にかけ、その後イソプロパノール中に保存した。ITO基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着した。化合物HI-1を真空蒸着装置のセルに導入し、次いで装置のチャンバー中の圧力を10-6トールに制御した。その後、セルに電流を流して上記導入された物質を蒸発させ、それによってITO基板上に60nmの厚さを有する第1正孔注入層を形成した。次に、化合物HI-2を真空蒸着装置の別のセルに入れ、セルに電流を流して蒸発させ、これにより第1の正孔注入層上に厚さ5nmの第2の正孔注入層を形成した。次いで、化合物HT-1を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流すことによって蒸発させ、それによって第2正孔注入層上に20nmの厚さを有する第1正孔輸送層を形成した。次いで、化合物HT-2を真空蒸着装置の別のセルに導入し、セルに電流を流すことによって蒸発させ、それによって第1正孔輸送層上に5nmの厚さを有する第2正孔輸送層を形成した。正孔注入層及び正孔輸送層を形成した後、その上に以下の通りに発光層を形成した:化合物C-1を発光層のホストとして真空蒸着装置の1つのセルに導入し、化合物BDを別のセルにドーパントとして導入した。2つの物質を異なる速度で蒸発させ、ドーパントを、ホストとドーパントの総量を基準として2重量%のドープ量で蒸着させて、第2正孔輸送層上に20nmの厚さを有する発光層を形成した。次に、化合物ET-1及び化合物EI-1を2つの他のセル内において1:1の比で蒸発させて、35nmの厚さの電子輸送層を発光層に蒸着した。電子輸送層上に厚さ2nmの電子注入層として化合物EI-1を蒸着した後、電子注入層上に別の真空蒸着装置によって厚さ80nmのAlカソードを蒸着した。このようにOLEDを作製した。
【0059】
その結果、2,000nitにおける輝度が100%から95%まで低下するまでに要した最短時間は76時間であった。
【0060】
比較例1:従来の化合物を含むOLEDの製造
発光層のホスト材料として化合物H-1を使用したことを除いて、デバイス実施例1と同じ方法でOLEDを製造した。
【0061】
その結果、2,000nitにおける輝度が100%から95%まで低下するまでに要した最短時間は11時間であった。
【0062】
比較例2:従来の化合物を含むOLEDの製造
発光層のホスト材料として化合物H-2を使用したことを除いて、デバイス実施例1と同じ方法でOLEDを製造した。
【0063】
その結果、2,000nitにおける輝度が100%から95%まで低下するまでに要した最短時間は25時間であった。
【0064】
比較例3:従来の化合物を含むOLEDの製造
発光層のホスト材料として化合物H-3を使用したことを除いて、デバイス実施例1と同じ方法でOLEDを製造した。
【0065】
その結果、2,000nitにおける輝度が100%から95%まで低下するまでに要した最短時間は13時間であった。
【化15】
【0066】
本開示において、発光層のホスト化合物の水素を重水素で置換することによって有機エレクトロルミネセントデバイスを製造することにより、寿命特性は、従来の化合物をホストとして使用する有機エレクトロルミネセントデバイスよりもはるかに優れていることが分かる。OLEDの寿命特性のこのような改善は、重水素化されていないか少ない重水素で重水素化された化合物と比較した重水素化された化合物のゼロ点振動エネルギーの減少に起因する材料の安定性の改善によるものであると理解される。更に、理論によって限定されることを意図するものではないが、青色発光蛍光有機エレクトロルミネセントデバイスの寿命を改善するためには電子移動度を制御する必要があり、またジベンゾフランはアリールよりも速い正孔移動度を有していることから、電子移動度の低下と同様の効果を得ることができる。理論によって限定されることを意図するものではないが、電子移動度の減少は、隣接する層の劣化を減少させる可能性があり、それによって寿命が増加する。そのような効果の局面において、アントラセンがジベンゾフランで置換されている化合物を重水素化することは、アントラセンがアリールで置換されている化合物を重水素化することと比較して有利な場合がある。
【国際調査報告】