(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】美容ロボット工学のための着脱可能なエンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
B25J 19/06 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518791
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 US2019051496
(87)【国際公開番号】W WO2020086193
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519169535
【氏名又は名称】ウィンク・ロボティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】アマンドソン,カート
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ,マイク
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング,ネイサン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707KS03
3C707KT01
3C707KT05
3C707MS02
3C707MS07
3C707MS27
(57)【要約】
本来そのような用途のために設計されていないロボットの組み込みを含む、美容用途に使用されるロボット(530)の安全な動作を確実にするためのデバイス(506、515、516)。ロボット(530)は、対象者(301)の天然睫毛上への睫毛エクステンション(502)の自動的な配置のために使用される。いくつかの実施形態では、安全障壁(515、516、521)が、物理的障壁(515、516)または光カーテン(521)によって提供される。本発明では、ロボット(530)は、エンドエフェクタ(1040)を使用し、このエンドエフェクタ(1040)は、安全障壁を貫通して延在するように構成され、かつ、人間対象者との接触時にロボットから容易に脱離するように構成された解放機構を含み、それにより負傷を防ぐ。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間対象者に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の安全障壁であって、前記人間対象者と前記ロボットとの間の相互作用を妨げるように構成され、それにより前記ロボットが前記人間対象者に危害を加えることを防ぐ、安全障壁と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を貫通して延在するように構成され、かつ、前記人間対象者との接触時に前記ロボットから容易に脱離するように構成された解放機構を含み、それにより前記少なくとも1つのエンドエフェクタが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、可撓性の支柱または管を含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記解放機構を横断する可撓性の動力伝達インターフェーシングを含み、それにより、前記解放機構を抑制することなしに前記解放機構の遠位での作動を可能にする、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項4】
コンピュータ視覚システムをさらに含み、前記コンピュータ視覚システムが、前記エンドエフェクタの遠位部分の配向を監視するように、また、前記配向を前記ロボットに伝えるように構成される、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットシステムが、前記ロボットシステムの幾何学的モデルを維持し、また、前記ロボットシステムが、前記遠位部分の前記配向に基づいて前記モデルを更新する、請求項4に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項6】
前記解放機構が、近位部分および遠位部分を含み、前記近位部分が、前記ロボットシステムに固定され、前記遠位部分が、前記エンドエフェクタに固定され、
前記近位部分および前記遠位部分が、嵌合する戻り止め特徴を含み、それにより、前記近位部分および前記遠位部分が、嵌合されたときに概ね一定の空間的関係性を有する、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項7】
前記嵌合する戻り止め特徴が、非対称的であり、それにより、第1の方向における嵌合解除が、第2の方向における嵌合解除よりも必要とする力が少ない、請求項6に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、爪磨きブラシを含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、入れ墨入れデバイスを含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項10】
前記安全障壁が、少なくとも1つの光カーテンを含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項11】
前記解放機構が、少なくとも1つの磁石を含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの磁石が、別の磁石、または磁性材料片に結合され、それにより互いに引き寄せられる磁性対(magnetic pair)を形成する、請求項11に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項13】
前記磁性対の2つの要素間の力が克服されたときに前記エンドエフェクタが前記ロボットから構造的に分離されるように、前記対の一方の側が、前記ロボットに恒久的に取り付けられ、他方の側が、エンドエフェクタに取り付けられる、請求項12に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項14】
前記可撓性の支柱または管が、遠位端部にアンビルを有し、前記アンビルが、少なくとも2つの穴を有し、前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記アンビルに対して遠位の輪を形成するために、前記少なくとも2つの穴を通って延びる可撓性コードをさらに含み、前記可撓性コードが、前記可撓性の支柱または管を通って前記可撓性の支柱または管の近位端部まで延び、前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記可撓性の支柱または管の前記近位端部にアクチュエータをさらに含み、前記アクチュエータが、前記可撓性コードを選択的に引っ張って前記輪の大きさを選択的に変えるように構成される、請求項2に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項15】
前記アンビルが、直径5~150マイクロメートル(ミクロン)の横断面を持つ溝を有する、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項16】
前記アンビルが、少なくとも1つの軸に沿った前記可撓性の支柱または管の中心軸に対して直角ではない、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項17】
前記可撓性の支柱または管が、真っ直ぐではない、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項18】
前記可撓性の支柱または管が、45度を超える曲りを有する、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記輪の前記大きさを大きくするように構成されたばね機構をさらに含む、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項20】
人間対象者に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記ロボットの周りの第1の安全障壁であって、前記第1の安全障壁を越える前記ロボットの動作を妨げるように構成された、第1の安全障壁と、
前記人間対象者の周りの第2の安全障壁であって、前記第2の安全障壁を越えて前記人間対象者が出ることを妨げるか、または前記人間対象者が前記第2の安全障壁を出たときに前記ロボットの動作を妨げるように構成された、第2の安全障壁と、
安全領域を含む、前記第1の安全障壁と前記第2の安全障壁との間の空間と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記第1の安全障壁および前記第2の安全障壁を貫通して延在するように構成され、かつ、前記人間対象者との接触時に前記ロボットから容易に脱離するように構成された解放機構を含み、前記安全領域が、前記少なくとも1つのエンドエフェクタによってのみ横断可能であり、それにより前記人間対象者と前記ロボットとの間の直接的な相互作用を妨げて前記人間対象者を危害から保護する、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【請求項21】
前記第2の安全障壁が、前記少なくとも1つのエンドエフェクタが前記人間対象者の生体構造の一部分にアクセスすることができるように前記一部分が突出することを可能にするように構成される、請求項20に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項22】
前記一部分が、前記人間対象者の少なくとも1本の睫毛を含む、請求項21に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項23】
前記一部分が、前記人間対象者の毛髪を含む、請求項21に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項24】
前記一部分が、400kPa(40N/cm
2)を超える許容圧力を有する人体の任意の領域を含む、請求項21に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項25】
人間対象者の一領域に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の安全障壁であって、前記人間対象者と前記ロボットとの間の相互作用を妨げるように構成された、安全障壁と、
前記領域に関する安全荷重に対応して決定された許容荷重または許容圧力と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を貫通して延在して前記許容荷重または前記許容圧力以下の荷重が加えられたときに構造的に脱離するように構成され、また、前記安全障壁により前記領域に制限される、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【請求項26】
ロボット、前記ロボットに結合されたエンドエフェクタ、および安全障壁を用いて人間対象者に美容処置を行う方法であって、
前記美容処置のために前記人間対象者の領域を選択するステップと、
前記領域に関する許容荷重または許容圧力を明確にするステップと、
前記領域へのアクセスを制限するように前記ロボットおよび前記安全障壁を配向するステップと、
前記許容荷重または前記許容圧力以下で脱離するように前記エンドエフェクタを構成するステップと、
前記処置を行うステップと
を含む、方法。
【請求項27】
人間対象者に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の少なくとも1つの光カーテンであって、所定の数の光路が同時に遮断されたときに前記ロボットを不能にするように構成された回路を含み、それにより前記ロボットが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ、少なくとも1つの光カーテンと、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記少なくとも1つの光カーテンを貫通して延在しかつ前記所定の数よりも少ない光路を遮断するように構成され、また、前記人間対象者との接触時に容易に脱離するように構成され、それにより前記少なくとも1つのエンドエフェクタが前記人間対象者に危害を加えることが防止され、前記ロボットまたは前記ロボットの一部分が、前記少なくとも1つの光カーテンを貫通して延在したときに前記所定の数よりも多い光路を遮断するように構成された、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、睫毛エクステンションを自動的に貼付するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]睫毛エクステンションは、世界中で人気を高めている。睫毛エクステンションは、通常、それらが天然睫毛繊維に1対1で固着されるという事実により、「人工睫毛」または「人工睫毛構造」と呼ばれるものとは区別される。「人工睫毛」は、まぶたに固着される裏当て材料(睫毛繊維の近位端に位置する薄い条片)に接続される(通常、片目分の)一揃えの睫毛繊維である。したがって、このプロセスは、より単純であり、家庭での使用のために提供される。しかし、睫毛エクステンションは、美容技術者により、通常シアノアクリレート接着剤を用いて、天然睫毛繊維それぞれに1本ずつ苦労して接着される。エクステンションは、米国特許第8,127,774号に示されるものなどの、分岐を有する場合があり、また、米国特許第8,113,218号で開示されるものなどの、近くの睫毛と連結させるためのいくつかの方式が存在する。
【0003】
[0003]睫毛エクステンションが初めて貼付される場合、装着にはかなりの時間がかかる場合があり、長いときで2時間におよぶ。装着中、各睫毛エクステンションは、ピンセットを用いて適切な向きで摘まみ上げられ、接着剤に浸され、次いで接着が生じるまで対象者の天然睫毛繊維のうちの1本に接して配置されていなければならない。この多大な労力に美容サロンの費用がかかるので、また、必要とされる時間の長さおよび費用が一部の顧客を思いとどまらせるので、いくつかの労力節約デバイスが提案されてきた。そのようなデバイスの1つは、米国特許出願公開第2014/0261514号で開示されている、手持ち式の睫毛用の分与器である。米国特許第8,701,685号に見られるように、工場から来るエクステンションが載るトレイに関して、労力節約の提案もなされてきた。これらのトレイは、人間にとって難しいのはプロセスのうちの接着ステップだけではないという事実に対抗することが意図されている。単に睫毛エクステンションをピンセットで摘まみ上げることのみでも、骨の折れることである。また、天然睫毛繊維にエクステンションを固着するために使用される事前装着の熱収縮チューブ片を各エクステンションに設けることにより接着剤の取扱いおよびエクステンションを接着剤に浸すステップが排除され得るということが提案されてきた。本明細書において説明される発明は、分岐したもの、相互連結されるもの、またはその他のものであるかどうかに関わらず、全ての睫毛エクステンションに当てはまり、また、接着剤、熱収縮チューブ、または他の方法によるかどうかに関わらず、天然睫毛への接着に関する全ての方法に当てはまる。
【0004】
[0004]したがって、それを行う際に生じる時間および費用の両方を減少させる、睫毛エクステンションをより効率的に装着するための方法が必要とされている。さらに、エクステンションの受け手が処置に安心するように、そのようなシステムは明らかに安全でなければならないということが必要とされている。人間と接触するが安全であることが保証され得るロボットシステムを作り出すことは、非常に困難である。本明細書において開示されるロボットシステムは、そのような安全性を提供するが、「本質的に安全な」または「協調的な」ロボット工学と通常呼ばれるものよりも遙かに低費用な方法でそれを行う。そのようなシステムでは、安全性は、典型的には、(フィードバックデバイスが故障したときの軸暴走(axis runaway)をなくすための)冗長フィードバックの使用を通じて、また、システムで使用される全てのソフトウェアの検証および確認試験と結び付けられた広範なコードレビューを通じて、保証される。そのようなシステムの例は、Sunnyvale、CaliforniaのIntuitive Surgical(登録商標)Corporationのda Vinci(登録商標)ロボット、および、San Jose、CaliforniaのRestoration Robotics(商標),Inc.のARTAS(登録商標)ロボットである。
【0005】
[0005]例えば、ARTAS(登録商標)ロボットは、高価であるが人間とロボットとの協調に安全であると評価された産業用ロボットアームのバージョンに基づく。さらに、近くの人間に対して危険な状況をもたらし得る全てのソフトウェアは、非常に注意深くレビューおよび試験される必要がある。これは、残念なことに、再度費用を上昇させ、かつ、プログラミングスタッフを大部分の市販のならびにオープンソースのソフトウェアライブラリおよびツールを再利用することから切り離す。そのようなソフトウェアの安全性を保証することは困難であり、また、医療用デバイスの場合、そのようなソフトウェアは、米国食品医薬品局(U.S.FDA)などの規制主体により「開発過程が不明なソフトウェア」と見なされ、人間の安全性に影響をおよぼすいかなる用途においても、使用するのはほぼ不可能である。
【0006】
[0006]本明細書において説明される発明は、人間と接触するロボットを安全なものにするための新規な方略を使用することにより、この問題に対処する。本発明は、睫毛エクステンションの仕事に適用可能であるだけでなく、ロボットによってなされ得る人間対象者に行われる他の処置にも適用可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]睫毛エクステンションの装着は、人間による手作業での貼付を必要とすることなしにエクステンションを配置するロボット機構によって自動化され得る。しかし、極めて高額かつ複雑なフェールセーフロボット機構およびソフトウェアが使用される場合を除いて、ロボットの誤動作が生じた際のエクステンション工程の安全性を保証するために、安全システムが提供されなければならない。本発明の主題は、本質的に安全なエンドエフェクタと、エンドエフェクタとともに取り付けられる解放機構と、ロボット機構に取り付けられる安全バリアとの併用である。睫毛エクステンションを把持することができかつたとえエンドエフェクタが人間に接触する場合でも人間を傷つける危険を冒さずに人間の顔の近くで動作することができるエンドエフェクタを取り付ける具体的な方法も、開示される。本発明は、美容の他の領域にも適用され、また、とりわけ入れ墨入れ(tattooing)での本質的に安全な実施形態が提示される。
【0008】
[0008]本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、以下の本発明の好ましい実施形態に関する詳細な説明をいくつかの図において同一の参照番号が共通の部品を意味する図面と併せて読めば、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0009]手作業での睫毛エクステンションを示す図である。
【
図2】[0010]自動的な睫毛エクステンションを行っている6軸ロボットを示す図である。
【
図3】[0011]ロボットとともに使用されているエンドエフェクタを示す図である。
【
図4】[0012]ロボットが誤動作しているがエンドエフェクタの使用により対象者は安全なままである暴走状態を示す図である。
【
図5】[0013]
図5Aは、単純な外れエンドエフェクタ(break away end effector)を示す図である。 [0014]
図5Bは、外れ状態における
図5Aのエンドエフェクタを示す図である。 [0015]
図5Cは、単純な外れエンドエフェクタの代替的な幾何形状を示す図である。 [0016]
図5Fは、外れ状態における
図5Cのエンドエフェクタを示す図である。
【
図6】[0017]
図6Aは、戻り止めおよび他の細部を含むエンドエフェクタの別の変形形態を示す図である。 [0018]
図6Bは、指向性戻り止めおよび他の細部を含むエンドエフェクタの別の変形形態を示す図である。[0019]
図6Cは、
図6Bのエンドエフェクタの代替的なバージョンを示す図である。
【
図7】[0020]コンピュータ視覚システムと協調して使用されているエンドエフェクタを示す図である。
【
図8】[0021]天然の人間の睫毛を隔離するために使用されるエンドエフェクタの一バージョンのための新規な先端部を示す図である。
【
図9】[0022]
図9Aは、異なる構成を有するエンドエフェクタの外れ接合部の別の実施形態を示す図である。[0023]
図9Bは、
図9Aのエンドエフェクタの組み立てられたバージョンの側面図である。
【
図10】[0024]
図10Aは、外れ接合部を組み込む睫毛エクステンション取扱いエンドエフェクタを示す図である。[0025]
図10Bは、外れ状態における
図10Aの睫毛エクステンション取扱いエンドエフェクタを示す図である。
【
図11】[0026]
図11Aは、
図10Aおよび10Bに示されたボーデンケーブルの代替的な取り回しを示す図である。[0027]
図11Bは、明瞭さのために単独に示された、
図11Aの下層の外れエンドエフェクタ構造を示す図である。[0028]
図11Cは、明瞭さのために単独に示された、
図11Aのボーデンケーブル1144を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0029]本発明のいくつかの実施形態が存在する。論述は、比較のための背景、および睫毛エクステンションのためのかなり単純な実施形態から始まる。次に、睫毛エクステンションエンドエフェクタに対する様々な改善点が論じられる。次いで、他の美容用途のために同じ基本安全システムを使用するいくつかの実施形態が提示される。最後に、睫毛エクステンションとともに使用するための例示的な実施形態が提供される。
【0011】
[0030]以下の説明は、多数の具体的な構成、パラメータ、などを説明する。しかし、そのような説明は、本発明の範囲の制限として意図されているのではなく、むしろ、例示的な実施形態の説明として提供されていることが、認識されるべきである。
【0012】
[0031]以下の説明において、「睫毛(eyelash)」という用語が使用される場合、それは、一個人の1本または複数本の天然睫毛繊維を意味するように意図されている。「睫毛エクステンション(eyelash extension)」または「エクステンション(extension)」という用語が使用される場合、それは、人工的な睫毛エクステンションを意味するように意図されている。
【0013】
[0032]
背景および最も単純な実施形態
最初に、現在の睫毛エクステンションの方法を示している、かなり単純な図である
図1を考慮する。このプロセスでは、美容師(図示せず)が、ピンセット500を使用して、睫毛エクステンション502を操作する。睫毛エクステンション502に接着剤を塗布した後、美容師は、睫毛エクステンション502を対象者301の睫毛505のうちの1本の天然睫毛に位置合わせして、接着剤が硬化するまで待つ。この作業における安全性は、専用のマネキンにエクステンションを貼付するために何時間も費やして学んできた美容師の訓練によって保証される。しかし、対象者301の眼にごく接近してピンセット500を操作することに付随する危険は、明白である。睫毛エクステンションで使用される鋭利なピンセットが眼をわずかにかすめることでさえ、重傷をもたらし得る。
【0014】
[0033]今や、ロボット工学およびコンピュータ視覚における進歩により、睫毛エクステンションの自動化を検討することが可能となった。厳密に言えば本発明の目的ではないが、そのようなシステムの主要特徴の簡単な記述が役立つであろうし、一システムが、
図2に図示されており、かつ、参照によって本明細書に援用されるWO2018/093971により詳細に記述されている。ここでは、ロボット530が、人間の腕におおよそ似ている6つのアクチュエータで構成される。そのような構成は、ロボット工学の分野では一般的であり、6軸ロボットアームと呼ばれることが多い。ロボット530は、ピンセットマウント531で終端し、このピンセットマウント531は、ピンセット500をロボット530に取り付け、かつ、ピンセット500を作動させる。この設計では、ピンセット500は、単純に、美容師によって使用されるであろうものと同じである。ピンセット500は、睫毛エクステンション502を把持し、ロボット530は、睫毛505のうちの単一の睫毛に沿って睫毛エクステンション502を位置合わせする。コンピュータ視覚システム504が、睫毛505の正確な位置を提供する。
【0015】
[0034]この設計に安全性を提供することは、ロボット530がピンセット500を対象者301の頭部に、特に眼に、偶発的に押し込まないことを確実とすることを必要とする。そのようなロボットは存在する。例えば、手術用ロボットは、近年ますます一般的になってきており、鋭い手術道具とともに患者の体内で使用されている。それでもなお、そのような設計にはいくつかの難点が存在する。第1に、優れた冗長性が、ハードウェアシステムに組み込まれなければならない。典型的には、検知および演算における冗長性が、最小限で提供される。これは、ロボットに費用および複雑さを追加する。第2に、ソフトウェアにはより多くの注意が払われなければならない。安全重視設計のソフトウェアを作成するための方法はよく理解されているが、非常に多くの時間がかかり、開発費を著しく増大させる。第3に、多くのそのようなシステムは、人間によって直接操作され、自律的に動作することはなく、人間オペレータがロボットの挙動を確認することができるというので安全性の層を追加する。最後に、そのようなプロセスは一般に、機械学習および人工知能などのより高度な演算技法(正確には、コンピュータ視覚とともに使用されることが多い高度なタイプの技法)を排除する。これは、そのような技法が正確に機能し、またあらゆる状況下で正確に機能し続けることを証明することが困難であり得るためである。
【0016】
[0035]これらの理由から、安全性を犠牲にすることなしにより安価でより慣例的なロボットを使用して軽い美容タイプの作業を行う方法が存在するのであれば、望ましいであろう。つまり、これらの追加的な難点を招くことのない本質的に安全なロボットを設計することはできるのであろうか。結局のところ、睫毛エクステンションなどの作業を行うことが可能な産業用途のために組み立てられた比較的安価で小型のロボットは非常に多く存在するが、それらの適用における制限は、人間の周辺で使用するための十分な安全性を得たいという要望である。本明細書において開示される発明は、美容用途において必要とされる小型かつ軽量なペイロードのためにこの問題を解決するデバイスである。当然ながら、求められる水準の安全性を対象者に提供するために、単独でまたは本明細書において開示される実施形態とともに使用され得る安全性のための多くの手法が存在することが、留意されるべきである。
【0017】
[0036]本発明の一実施形態が、
図3に示されている。ここでは、ロボット530が、エンドエフェクタ1140を装着されている。エンドエフェクタ1140は、間隙517において物理的障壁515を貫通して突出するが、ロボットフランジ532は、間隙517を通り抜けることができない。第2の障壁516が、対象者301の顔がどれくらい近くまで障壁515および間隙517に接近し得るかを制御する。物理的障壁515は、安全障壁の第1の例であり、ロボット530の最大の衝撃に抵抗するのに十分な強度のある任意の材料(金属、およびポリカーボネートのような耐衝撃プラスチックが非常に適切である)から作られ得る。エンドエフェクタ1140は、解放コネクタまたは解放機構を有して構成される。解放機構は、(対象者301との意図されていない衝突が生じた場合のような)エンドエフェクタ1140に著しい荷重が加えられた場合にエンドエフェクタ1140の先端部とロボット530との間の構造的な接続が解放されるように、構成される。これは、対象者301を対象者自身とエンドエフェクタ1140との間のいかなる著しい力からも保護する。これらの構成要素のうちのいくつかは、特定の実施形態では省かれ得るが、一般に、適切なエンドエフェクタおよび障壁により、本質的に安全になるようにロボットを改良することが可能である。
【0018】
[0037]
図4は、ロボット530が接触点520においてエンドエフェクタ1140により不注意に対象者301と接触した状況の結果を示す。ロボット設計における優れた実践は、そのような出来事を制限するであろうが、例えばロボット手術デバイスにおいて細心の注意が払われていないときには、ある時点でエンドエフェクタ506が対象者301に接触する可能性があることは、当技術分野ではよく理解されている。しかし、エンドエフェクタ1140は解放機構を含むので、エンドエフェクタ1140の先端部は、たやすく分離する。さらに、ロボット530は、物理的障壁515に接触しており、それによりさらなる運動が妨げられ、エンドエフェクタ1140の上流部分(この部分は、依然としてロボットに接続されている)は、第2の障壁516によって被包されている対象者301の顔に到達することができない。したがって、
図4の実施形態は、機械的手段により安全性が提供される、人間対象者の近傍で使用するための本質的に安全なロボットシステムを示す。
【0019】
[0038]いくつかの実施形態では、外れ接続部が、エンドエフェクタの一部として提供される。これは、エンドエフェクタとの衝突時にもたらされる最大限の力が正確に制御され得ること、外れ時に生成される力が非常に方向性のあるものであり得ること、エンドエフェクタは低荷重下では変形可能である必要がないこと、壊れるエンドエフェクタにより鋭い端部が生じないこと、および副次的便益としてエンドエフェクタの遠位部分が(例えば、衛生上の理由により)交換され得ることなどの、いくつかの理由で有利であり得る。
【0020】
[0039]
図5Aにおいて嵌合して示されている外れ機構または解放機構を含むエンドエフェクタのかなり単純な実施形態を最初に考察されたい。ここでは、示されたエンドエフェクタは、睫毛を隔離するために使用される1対のエンドエフェクタの半体であるが、本発明は、この用途に限定されない。エンドエフェクタは、近位部分1002および遠位部分1004、近位部分1002に固着された近位磁石1006、ならびに遠位部分1004に固着された遠位磁石1008からなる。近位磁石1006および遠位磁石1008は、互いに引き合うように配置される。例えば、これは、近位磁石1006のN極をその下側にし、遠位磁石1008のS極をその上側にすることによって達成され得るが、多くの極を持つ磁石の場合を含めて、同様に2つの磁石を互いに引き寄せることになる多くの類似の配置が存在する。磁石は、ここでは接着剤(図示せず)によって固着されているが、機械的ファスナ、プレス嵌め、または磁石を別の表面にしっかりと固着するための当業界で知られた多くの方法のうちのいずれかを用いて固着されてもよい。
【0021】
[0040]低い相互作用荷重1010の存在下では、遠位磁石1008および近位磁石1006は、動かずに接触したままである。
図5Bでは、高い相互作用荷重1012が、遠位磁石1008を近位磁石1006から剥がれさせて、遠位部分1004をもはや近位部分1002に接続されなくしている。近位部分1002がロボットシステムに接続され、遠位部分1004がエンドエフェクタであるかまたはエンドエフェクタに接続されている実施形態では、この作用は、安全性を確保するための1つの要素として使用され得る他に、遠位部分1004を交換して衛生状態を維持するための方法としても使用され得る。高い相互作用荷重1012が動作時に受けるであろういかなる作業荷重よりも大きいこと、および、高い相互作用荷重1012がエンドエフェクタの対象に被害または損傷を与え得るいかなる荷重よりも低いことを確実とすることにより、近位部分1002が対象者301に接触し得ないことが(適切に設計された安全障壁の使用を通じて)保証されているのであれば、エンドエフェクタによって扱われる対象の安全性および完全性が確保され得る。
【0022】
[0041]この設計の特性は、エンドエフェクタが外れる(または、脱離する)ときの限界荷重が、使用される磁石の強度に依存するだけではなく(この設計空間だけでも非常に多くの選択肢が存在する)、荷重の相互作用点と磁気結合との間の幾何学的関係にも依存することであり、それは、磁石の幾何形状にも依存し、それは、磁石と、近位部分1002と遠位部分1004との間で接触している任意の他の表面との間の摩擦係数にも依存する。これは、エンドエフェクタが外れるときの限界荷重の大きさを選択することのみならず、荷重が加えられる角度に応じてその大きさを選択することに関して、設計者に大きな自由度を与える。つまり、エンドエフェクタは、ある方向の荷重の下で他の部分よりも優先的に外れるように設計され得る。摩擦の諸係数の変動性により、外れ時にどの動作モードが最初に生じるか(例えば、磁石の滑りに対する剥がれ分離)が変更され得るので、厳密な解析解は、可能であるとはいえ、いくらか使用が制限される。本発明者らは、実際上、所望の外れ特性を得るには、経験的な特性評価および設計反復を行うことが最も有益であることを見出した。
【0023】
[0042]「希土類」磁石(例えば、ネオジム磁石)などの高力密度磁石が好まれるが、非排他的にフェライトやアルニコなどの様々な他のタイプの磁石も適する。いくつかの実施形態では、接着剤、両面テープ、および弾性バンドなどの、近位部分と遠位部分とを接続する他の手段が使用され得る。
【0024】
[0043]
図5Cおよび5Dは、磁石が横向きにではなく縦向きに結合するように磁石の軸が回転されている変形形態を示す。そうすることで、外れの配向が変更され、したがって、(外れ点における磁石の配向が合力に対して変化しているので)近位磁石1026と遠位磁石1028との間での分離の方式が変更され得る。この実施形態では、遠位部分1024は、破線1032に沿った純粋な圧縮力が近位磁石1026と遠位磁石1028との間に純粋な張力を発生させることになるように、わずかに異なる幾何形状を有する。したがって、外れを引き起こす圧縮力1030の水準は、単純に近位磁石1026と遠位磁石1028とを分離させる力の水準であるので、外れ機構を設計するのが非常に簡単である。この設計の簡単さが、この実施形態の利点である。
【0025】
[0044]近位セグメントおよび遠位セグメントの両方が磁石を有する必要はない。例えば、
図6Aでは、遠位セグメント1049が、磁石に引き寄せられる任意の材料(例えば、鉄、ニッケル、および一部の鋼鉄)で作られた磁性板1043を含み、一方で、近位セグメント1040が、磁石1042を含む。当然ながら、引力は、磁石と磁性材料との間では、2つの磁石の間よりも異なるが、これは、設計のさらなる融通性を、設計者に提供するだけである。当然ながら、磁石および磁性材料は、近位または遠位のリンクのいずれに配置されてもよく、ここでは、磁性材料を遠位リンクに置くという選択は、使い捨てとされ得る遠位リンクの製造費用を抑えたいという要望、および、磁性材料(特に、鋼鉄)は一般に磁石よりも安価であるということによってなされている。
【0026】
[0045]さらに、磁石1042および磁性板1043のどちらも、近位セグメント1040および遠位セグメント1049の本体に凹設され、かつ、表面と面一である。磁石または磁性材料のどちらかをそのそれぞれのセグメントの表面より下に凹設して、引力を大幅に減少させる空隙を磁石と磁性材料との間に作り出して、設計者にさらなる制御を提供することも可能である。当然ながら、非磁性材料(例えば、ほとんどのプラスチックおよび金属)で空隙を埋めて、結果的に磁石または磁性材料を近位セグメントまたは遠位セグメント内に完全に封入してもよい。これは、セグメントを清掃可能にすることまたはより製造しやすくすることに役立ち得る。例えば、遠位部分1049は、ステンレス鋼板インサート1043上に成形された射出成形プラスチック構成要素であってよく、プラスチック材料は、インサート1043の大部分を包んでもよい。この場合、磁性のあるステンレス鋼を使用することに注意が払われなければならない。
【0027】
[0046]
図6Aはまた、磁石1042と磁性板1043とが結合されたときに嵌合する、戻り止め受け部1045および戻り止め突出部1047を示す。戻り止め受け部1045および戻り止め突出部1047は、戻り止め1048を構成する。戻り止め1048は、遠位セグメント1049を近位セグメント1040に対して位置付けるのに役立ち、これは、遠位セグメント1049の先端部と近位リンク1040を駆動する任意のロボットシステムとの間の反復可能な幾何学的配置を確実にする。図示のように、戻り止め1048は、ページ内に延在して、双方向矢印1044に沿った運動を阻害するが、反対に、異なる戻り止めが双方向矢印1044の方向に沿って配置されて、ページ内への運動を阻害してもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の戻り止めを使用して両方の軸に沿った運動を阻害することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、これは、セグメントの幅または長さに伸びる戻り止めではなく、2つの点戻り止め(point detent)によって達成され得る。戻り止めは、配向を非常に正確に制御する、より複雑なキーイング特徴ですらあり得る。しかし、戻り止めは、外れを生じさせるのに必要とされる力を増大させる場合もあることに留意することが重要であり、設計者は、これらの要求を慎重に釣り合わせなければならない。
【0028】
[0047]
図6Bは、指向性戻り止め受け部1052および指向性戻り止め突出部1053を有する指向性戻り止め1051をさらに含む実施形態を示す。指向性戻り止め突出部1053は、右に引っ張られたときには「引っ掛かり」、左に引っ張られたときには「引っ掛から」ないので、右方向の係合解除力(disengaging force)1056は、左方向の係合解除力1055よりも大きくなり得る。これは、エンドエフェクタが押すのよりも大きな力で引くことが可能である必要がある場合に、有益である。ロボットによる睫毛エクステンションの特定の技術では、これは、外れが生じるときの圧縮力を増大させることなしに供給部から睫毛エクステンションを引っ張るのに有益である(供給部では、睫毛エクステンションは基材にテープで貼られることが多い)。
【0029】
[0048]
図6Cは、前述の実施形態の外れ機構が角度1059だけ回転されて、指向性戻り止め1051とエンドエフェクタに加えられる任意の力との間の関係性を変化させている、別の実施形態を示す。
【0030】
[0049]本発明は、コンピュータ視覚(機械視覚と呼ばれることもある)システムが使用される実施形態において特に有用なものである。
図7を考慮すると、
図7では、カメラ1153および1154が、コンピュータ1160と通信して、立体視的なコンピュータ視覚システム1161を一緒に構成している。遠位セグメント1049が、基準マーカ1152が取り付けられる基準マーカタング(fiducial marker tang)1150を含む。ロボットシステム1058が、図示されていない種々のアクチュエータおよび構造要素を通じて、近位セグメント1040ならびにカメラ1153および1154の両方に結合される。エンドエフェクタの設計における戻り止めの使用にもかかわらず、遠位セグメント1049の配向は、ある程度の不確実さを有する。基準マーカ1152がカメラ1153および1154で認められる場合、コンピュータ視覚システム1161は、遠位セグメント1049の配向における誤りを補正することができるようになり、したがって、遠位セグメント先端部1163の位置をより高い精度で推定することが可能になる。遠位セグメント先端部1163がよく目立ち認識するのが容易であるいくつかの実施形態では、コンピュータ視覚システム1161は、先端部1163の位置を直接測定することができる可能性があり、基準マーカ1150および関連する基準マーカタング1150の必要性をなくす。いくつかの実施形態では、強化された位置および配向の解像度を提供するために、複数の基準が使用され得る。いくつかの実施形態では、遠位セグメント1049の構成要素は、基準マーカとして直接使用され得る。いくつかの実施形態では、特に先端部1163の位置の直接測定が可能である場合には、レーザ測距器、LiDAR走査器、および種々の構造化された光センサなどの、他のタイプのコンピュータ視覚システムが可能である。
【0031】
[0050]上述のように、遠位セグメント1049と近位セグメント1040とを正確に位置合わせするのに十分なキーイング特徴を提供することは、外れ力を容認できないほどに増大させ得ることから、そのような特徴を提供することは実際的でない場合があるので、
図7に示された実施形態は、重要である。遠位セグメント1049と近位セグメント1040との間の外れ接触面は、押し合わせられる2つの表面を必要とするので、静止摩擦(「スティクション」と呼ばれることもある)を示す傾向がある。これは、遠位セグメント1049および近位セグメント1040は、両セグメントが外れるときにセグメントを分離するのに必要とされる力に近い滑り力(slip force)未満では互いに対して移動しないことを意味する。したがって、この滑り力未満では、遠位セグメント1049および近位セグメント1040は、単一のユニットとして働く。この滑り力を超えない限り、セグメント間の幾何学的関係は保たれる。結果として、コンピュータ視覚システムは空間における遠位セグメント先端部1163の位置を正確に把握するために、遠位セグメント先端部1163の配向を、継続的にではなく1回測定するだけでよい。これは、基準1152を伴わずにコンピュータ視覚システム1160による遠位セグメント先端部1163の配向の測定を可能にするために遠位セグメント先端部1163が無地背景の前で選択的に位置決めされ得るロボットシステムと協働する場合に、特に有用である。この測定が行われて、遠位セグメント先端部1163とロボットシステムとの間の関係性が知られると、エンドエフェクタは、再配向されることが可能であり、遠位セグメント先端部1163の位置は、さらなる測定を必要とすることなく知られ得る。いくつかの実施形態では、ロボットシステムは、遠位セグメント先端部1163の位置に関する若干の情報を、知られた幾何学的パラメータおよび様々なセンサに基づくそれ自体のモデルの形態で有することができ、その場合、測定は、単にモデルを精緻化するために使用され得る。
【0032】
[0051]
図8は、個々の睫毛を分離および隔離する用途において特に有用な遠位セグメント1049の実施形態を示す。詳細な
図1064は、ゴムまたは他のコンプライアント材料で作られた隔離先端部1062の側面図を示す。遠位セグメント1049が人に接触した場合、隔離先端部1062は変形し、次いで近位セグメント1040への外れ接続部が外れる。正面
図1065は、単一の睫毛を隔離するために使用される左右両方の隔離先端部(1062Lおよび1062R)を示す。隔離が効率的であるためには、両方の隔離先端部は、それらの最先端部で合わさらなければならず、そのため、角度1069は、ゼロ以上でなければならない。隔離先端部が平坦な側面を有さない実施形態では、先端部の最も遠位の点が、先端部の対が閉じられたときに接触する先端部の最初の部分であることを要求すれば、十分である。
【0033】
[0052]
図9Aは、特定の外れ接続部実施形態の斜視図を示し、
図9Bは、その側面図を示す。ここでは、ロボットへの近位接続部、およびエンドエフェクタの残りの部分への遠位接続部は、破断されている。近位セグメント1101および遠位セグメント1102は、戻り止め1105の雌雄を除き、同一である。したがって、適切に嵌合する戻り止めを各対が有する限りは、それらの近位および遠位としての指定には特にこだわらない。4つの磁石1108a~dが、2つの対に配置され、外れ接続部を一緒に保持し、かつ、矢印1110によって示されるように嵌合する。この実施形態では、斜面1103がさらに含まれ、この斜面1103は、双方向矢印1106の方向に沿った圧縮荷重下での係脱を促進する。斜面1103がこれに代えて垂直端部1109として
図9Bに示されるような垂直な特徴であった場合、近位セグメント1101の木口1110が垂直端部1109と衝突して、双方向矢印1106の方向における非常に高い圧縮荷重を受けるであろう。これは、有効な外れ荷重を著しく高めるはずであるので、多くの状況において望ましくない。
【0034】
[0053]外れ接続部は、これまで論じられた単なる睫毛隔離エンドエフェクタよりも複雑なエンドエフェクタに有用である。いくつかの実施形態では、それらは、外れ接続部が作動動力伝達装置によって互いに保持されないように把持部の作動が可撓性の接続または動力伝達装置を通じて提供される把持部とともに使用され得る。そのような可撓性の接続は、空気圧式もしくは液圧式などの流体動力接続部を通じてまたはボーデンケーブルもしくは撓み軸などの機械式動力伝達装置を通じて把持部に動力を伝達することによって提供され得る。当然ながら、外れ部を越えてからの動力の電気的な伝達が可能であるが、遠位セグメント上に電気モータを有することは、遠位セグメントの質量を増大させ、高加速度(時間を気にするロボット工学用途では一般的である)が外れ部を偶発的に分離し得る可能性が高まる。
【0035】
[0054]
図10Aは、(国際特許出願PCT/US2017/061899で開示されているものなどの)コード把持部1141およびボーデンケーブル1134を使用した睫毛エクステンションの操作のために設計されているエンドエフェクタ1140を示す。ボーデンケーブル1134は、シース1132およびケーブル1133からなる。この実施形態では、ケーブル1133は、目に見えないがケーブル1133の出口点1129の近くに配置されている接続部において、遠位セグメント1121の先端部に近いコード把持部1141の輪に接続する。シース1132は、可撓性であり、かつ、口輪1126aにより近位セグメント1120に結合され、口輪1126bにより遠位セグメント1121に結合される。単にケーブル1133の延長部であるケーブル1130が、図示されていないロボットシステムまで延在し、そこで、ケーブル1130は、電気モータなどのアクチュエータによって引っ張られ得る。戻り止め、近位磁石1122、および遠位磁性板1124は、
図6Bの実施形態と同じである。ロボットシステムによりケーブル1130が引っ張られると、コード把持部1141は、エクステンション1000を締め付ける。ロボットシステムによりケーブル1130が(穏やかに)押されると、コード把持部1141は、エクステンション1000を解放する。圧縮荷重は、シース1132によって支持され、かつ、ケーブル1133によって平衡を保たれるので、ボーデンケーブル1134を通じて伝達される作動力により、外れ部において荷重は生成されない。
図10Bは、外れ部が分離したエンドエフェクタ1140を単純に示す。
【0036】
[0055]
図11は、
図10と同じエンドエフェクタを示すが、ボーデンケーブル1144は、「S」形状の曲りではなく完全な輪を作っている。
図7Aは、完全な組立体を示し、下層の外れエンドエフェクタ構造、およびボーデンケーブル1144は、明瞭さのために
図11Bおよび11Cにそれぞれ別々に示されている。ボーデンケーブルにおける曲りは、外れが起こり得るように弛みを提供するのに必要である。いくつかの実施形態では、そうすることで必要とされる外れが妨げられないのであれば、特にエンドエフェクタへの高い引張荷重が望まれるのであれば、真っ直ぐなボーデンケーブルを提供することが可能であり得る。これらの例におけるボーデンケーブルからの作動荷重は、外れ部における荷重を生じさせないが、シースにおける曲りは、シースを真っ直ぐな状態から曲げることによってもたらされる残留応力に起因して、荷重を生成する。
図10の「S」曲りではなく、
図11に示されるように完全な輪を設けることは、外れ接続部において引張力ではなく曲げモーメントを生じさせる。いずれの設計も機能することができ、また、それは単に、外れ部の挙動を容認できないほどに変更することがなくまた空間的および幾何学的な設計要件を満たす設計を選択するということである。先に挙げられた他の動力伝達システム(特に、流体動力および撓み軸)のいずれもが同様の態様で荷重を生成するであろうことに留意することもまた、重要である。
【0037】
[0056]好ましい実施形態に関して説明されたが、本発明の精神から逸脱することなく様々な変更および/または修正が本発明になされ得ることが、理解されるべきである。具体的には、特定の好ましい外れコネクタまたは外れ機構が開示されてきたが、上記の目標を達成しながらも様々な接続構成が用いられ得ることが、容易に理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2020-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間対象者に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の安全障壁であって、前記人間対象者と前記ロボットとの間の相互作用を妨げるように構成されるように、頑丈な耐衝撃性材料から形成され、それにより前記ロボットが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ、安全障壁と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を貫通して延在するように構成され、かつ、前記人間対象者との接触時に前記ロボットから容易に脱離するように構成された解放機構を含み、それにより前記少なくとも1つのエンドエフェクタが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、可撓性の支柱または管を含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記解放機構を横断する可撓性の動力伝達インターフェーシングを含み、それにより、前記解放機構を抑制することなしに前記解放機構の遠位での作動を可能にする、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項4】
コンピュータ視覚システムをさらに含み、前記コンピュータ視覚システムが、前記エンドエフェクタの遠位部分の配向を監視するように、また、前記配向を前記ロボットに伝えるように構成される、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットシステムが、前記ロボットシステムの幾何学的モデルを維持し、また、前記ロボットシステムが、前記遠位部分の前記配向に基づいて前記モデルを更新する、請求項4に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項6】
前記解放機構が、近位部分および遠位部分を含み、前記近位部分が、前記ロボットシステムに固定され、前記遠位部分が、前記エンドエフェクタに固定され、
前記近位部分および前記遠位部分が、嵌合する戻り止め特徴を含み、それにより、前記近位部分および前記遠位部分が、嵌合されたときに概ね一定の空間的関係性を有する、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項7】
前記嵌合する戻り止め特徴が、非対称的であり、それにより、第1の方向における嵌合解除が、第2の方向における嵌合解除よりも必要とする力が少ない、請求項6に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、爪磨きブラシを含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、入れ墨入れデバイスを含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項10】
前記安全障壁が、少なくとも1つの光カーテンを含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項11】
前記解放機構が、少なくとも1つの磁石を含む、請求項1に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの磁石が、別の磁石、または磁性材料片に結合され、それにより互いに引き寄せられる磁性対を形成する、請求項11に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項13】
前記磁性対の2つの要素間の力が克服されたときに前記エンドエフェクタが前記ロボットから構造的に分離されるように、前記対の一方の側が、前記ロボットに恒久的に取り付けられ、他方の側が、エンドエフェクタに取り付けられる、請求項12に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項14】
前記可撓性の支柱または管が、遠位端部にアンビルを有し、前記アンビルが、少なくとも2つの穴を有し、前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記アンビルに対して遠位の輪を形成するために、前記少なくとも2つの穴を通って延びる可撓性コードをさらに含み、前記可撓性コードが、前記可撓性の支柱または管を通って前記可撓性の支柱または管の近位端部まで延び、前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記可撓性の支柱または管の前記近位端部にアクチュエータをさらに含み、前記アクチュエータが、前記可撓性コードを選択的に引っ張って前記輪の大きさを選択的に変えるように構成される、請求項2に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項15】
前記アンビルが、直径5~150ミクロンの横断面を持つ溝を有する、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項16】
前記アンビルが、少なくとも1つの軸に沿った前記可撓性の支柱または管の中心軸に対して直角ではない、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項17】
前記可撓性の支柱または管が、真っ直ぐではない、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項18】
前記可撓性の支柱または管が、45度を超える曲りを有する、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つのエンドエフェクタが、前記輪の前記大きさを大きくするように構成されたばね機構をさらに含む、請求項14に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項20】
人間対象者に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記ロボットの周りの第1の安全障壁であって、前記第1の安全障壁を越える前記ロボットの動作を妨げるように構成された、第1の安全障壁と、
前記人間対象者の周りの第2の安全障壁であって、前記第2の安全障壁を越えて前記人間対象者が出ることを妨げるか、または前記人間対象者が前記第2の安全障壁を出たときに前記ロボットの動作を妨げるように構成された、第2の安全障壁と、
安全領域を含む、前記第1の安全障壁と前記第2の安全障壁との間の空間と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記第1の安全障壁および前記第2の安全障壁を貫通して延在するように構成され、かつ、前記人間対象者との接触時に前記ロボットから容易に脱離するように構成された解放機構を含み、前記安全領域が、前記少なくとも1つのエンドエフェクタによってのみ横断可能であり、それにより前記人間対象者と前記ロボットとの間の直接的な相互作用を妨げて前記人間対象者を危害から保護する、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【請求項21】
前記第2の安全障壁が、前記少なくとも1つのエンドエフェクタが前記人間対象者の生体構造の一部分にアクセスすることができるように前記一部分が突出することを可能にするように構成される、請求項20に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項22】
前記一部分が、前記人間対象者の少なくとも1本の睫毛を含む、請求項21に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項23】
前記一部分が、前記人間対象者の毛髪を含む、請求項21に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項24】
前記一部分が、400kPa(40N/cm
2)を超える許容圧力を有する人体の任意の領域を含む、請求項21に記載の本質的に安全なロボットシステム。
【請求項25】
人間対象者の一領域に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の安全障壁であって、前記人間対象者と前記ロボットとの間の相互作用を妨げるように構成された、安全障壁と、
前記領域に関する安全荷重に対応して決定された許容荷重または許容圧力と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を貫通して延在して前記許容荷重または前記許容圧力以下の荷重が加えられたときに構造的に脱離するように構成され、また、前記安全障壁により前記領域に制限される、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【請求項26】
ロボット、前記ロボットに結合されたエンドエフェクタ、および安全障壁を用いて人間対象者に美容処置を行う方法であって、
前記美容処置のために前記人間対象者の領域を選択するステップと、
前記領域に関する許容荷重または許容圧力を明確にするステップと、
前記領域へのアクセスを制限するように前記ロボットおよび前記安全障壁を配向するステップと、
前記許容荷重または前記許容圧力以下で脱離するように前記エンドエフェクタを構成するステップと、
前記処置を行うステップと
を含む、方法。
【請求項27】
人間対象者に対して作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の少なくとも1つの光カーテンであって、所定の数の光路が同時に遮断されたときに前記ロボットを不能にするように構成された回路を含み、それにより前記ロボットが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ、少なくとも1つの光カーテンと、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記少なくとも1つの光カーテンを貫通して延在しかつ前記所定の数よりも少ない光路を遮断するように構成され、また、前記人間対象者との接触時に容易に脱離するように構成され、それにより前記少なくとも1つのエンドエフェクタが前記人間対象者に危害を加えることが防止され、前記ロボットまたは前記ロボットの一部分が、前記少なくとも1つの光カーテンを貫通して延在したときに前記所定の数よりも多い光路を遮断するように構成された、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備える、本質的に安全なロボットシステム。
【国際調査報告】