(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】PI3Kアルファ阻害剤およびメトホルミンを用いたがんの処置方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/155 20060101AFI20220105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220105BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220105BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/565 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20220105BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K31/155
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/4439
A61P35/04
A61K31/519
A61K31/565
A61K31/4196
A61K45/00
A61K31/506
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021518880
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2019049086
(87)【国際公開番号】W WO2020076432
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グリーン, スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ジュー, ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】シュッツマン, ジェニファー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA07
4C084ZA362
4C084ZA512
4C084ZA752
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4C084ZB092
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4C084ZB332
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4C084ZC202
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4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
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4C086CB10
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4C086GA07
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA07
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA31
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA07
4C206ZB26
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
メトホルミンおよびPI3Kアルファ阻害剤を投与することによってPIK3CA変異がん患者を処置する方法が本明細書に説明されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルペリシブ(BYL719)、タセリシブ(GDC0032)、ブパルリシブ(BKM120)、ダクトリシブ(BEZ235)、ピクチリシブ(GDC0941)、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、HS-173、PIK-75、A66、YM201636、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、GSK1059615、コパンリシブ(BAY 80-6946)、アピトリシブ(GDC0980)、ボクスタリシブ(XL765、SAR245409)、セラベリシブ(serabelisib)(MLN1117、TAK-117、INK1117)、およびZSTK474、またはそれらの医薬として許容され得る塩からなる群から選択される、治療有効量のPI3Kアルファ阻害剤を投与することを含む、患者におけるがんの処置のための方法であって、前記患者がメトホルミンを用いて既に処置されている、方法。
【請求項2】
前記PI3Kアルファ阻害剤がアルペリシブ(BYL719)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PI3Kアルファ阻害剤が前記患者へ1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記PI3Kアルファ阻害剤の治療有効量が約1mg~約15mgであり、1日1回投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記PI3Kアルファ阻害剤の治療有効量が約6mgである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記PI3Kアルファ阻害剤の治療有効量が約9mgである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が局所進行性のまたは転移性のPIK3CA変異固形腫瘍に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が、乳がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、前立腺がん、および子宮がんからなる群から選択されるがんに罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が乳がんに罹患している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が局所進行性のまたは転移性のPIK3CA変異ホルモン受容体陽性乳がんに罹患している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記乳がんがHER2陰性である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記患者がさらに、パルボシクリブを投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記患者がさらに、フルベストラントを投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記患者がさらに、レトロゾールを投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者がさらに、パルボシクリブおよびフルベストラントを投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が肥満または糖尿病前症である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
メトホルミンの用量または投与計画が、PI3Kアルファ阻害剤の投与前に、前記患者において高血糖を緩和し、安定化させ、または縮減させるように調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記患者の血糖値が、メトホルミンを用いた処置の間に監視される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が500mg以上のメトホルミンを毎日投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、前記PI3Kアルファ阻害剤の投与前に約15日間、500mg~2000mgのメトホルミンを毎日投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、前記PI3Kアルファ阻害剤の初回用量投与で始まる、500mg~2000mgのメトホルミンを毎日投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、パルボシクリブおよびフルベストラントの投与前に約15日間、500mg~2000mgのメトホルミンを毎日投与されるのに続いて、前記PI3Kアルファ阻害剤が投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、前記PI3Kアルファ阻害剤の投与前に約15日間、メトホルミン、パルボシクリブ、およびフルベストラントを毎日投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、抗炎症薬、免疫調節薬、化学療法薬、アポトーシス増強剤、向神経性因子、心血管疾患を処置するための薬剤、肝疾患を処置するための薬剤、抗ウイルス薬、血液障害を処置するための薬剤、糖尿病を処置するための薬剤、および免疫不全障害を処置するための薬剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記追加の治療薬が、パクリタキセル、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、フルベストラント、レトロゾール、パルボシクリブ、ゲムシタビン、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、ペグフィルグラスチム、フィルグラスチム、ラパチニブ、タモキシフェン、ドセタキセル、トレミフェン、ビノレルビン、カペシタビン、およびイキサベピロンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記追加の治療薬が、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)または選択的エストロゲン受容体ディグレーダー(SERD)である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記追加の治療薬が、CDK4/6阻害剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記CDK4/6阻害剤が、パルボシクリブ、リボシクリブ、およびアベマシクリブから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記追加の治療薬が、エベロリムス、テムシロリムス、ダクトリシブ(BEZ235)、アルペリシブ(BYL719)、タセリシブ(GDC0032)、ブパルリシブ(BKM120)、BGT226、イパタセルチブ(GDC0068)、アピトリシブ(GDC0980)、ピクチリシブ(GDC0941)、セラベリシブ(MLN1117、TAK-117、INK1117)、INK128(MLN0128)、OSI-027、CC-223、AZD8055、SAR245408、SAR245409、PF04691502、WYE125132、GSK2126458、GSK-2636771、BAY806946、PF-05212384、SF1126、PX866、AMG319、ZSTK474、Cal101(イデラリシブ)、PWT33597、CU-906、AZD-2014およびCUDC-907からなる群から選択されるホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/mTOR経路阻害剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
がんの処置のための薬剤の製造における、アルペリシブ(BYL719)、タセリシブ(GDC0032)、ブパルリシブ(BKM120)、ダクトリシブ(BEZ235)、ピクチリシブ(GDC0941)、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、HS-173、PIK-75、A66、YM201636、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、GSK1059615、コパンリシブ(BAY 80-6946)、アピトリシブ(GDC0980)、ボクスタリシブ(XL765、SAR245409)、セラベリシブ(MLN1117、TAK-117、INK1117)、およびZSTK474、またはそれらの医薬として許容され得る塩からなる群から選択される、治療有効量のPI3Kアルファ阻害剤の使用であって、前記処置がメトホルミンを用いた処置を既に含んでいる、使用。
【請求項31】
がんの処置における使用のための、アルペリシブ(BYL719)、タセリシブ(GDC0032)、ブパルリシブ(BKM120)、ダクトリシブ(BEZ235)、ピクチリシブ(GDC0941)、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、HS-173、PIK-75、A66、YM201636、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、GSK1059615、コパンリシブ(BAY 80-6946)、アピトリシブ(GDC0980)、ボクスタリシブ(XL765、SAR245409)、セラベリシブ(MLN1117、TAK-117、INK1117)、およびZSTK474、またはそれらの医薬として許容され得る塩からなる群から選択される、治療有効量のPI3Kアルファ阻害剤であって、前記処置がメトホルミンを用いた処置を既に含んでいる、PI3Kアルファ阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月8日出願の米国仮出願第62/742,636号の優先権の利益を主張するものであり、該出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は概して、メトホルミンおよびPI3Kアルファ阻害剤を投与することによるPIK3CA突然変異がん患者の処置に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)は、成長因子受容体およびインテグリンによる活性化の際に、細胞の増殖、生存、および遊走を調節する脂質キナーゼである。PI3Kは、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスファート(PIP2)のリン酸化を触媒して、AKTおよびAKT/mTOR経路における他の構成要素のリン酸化に関与するセカンドメッセンジャーであるホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリホスファート(PIP3)を生成する(Cantley LC Science(2002)296(5573):1655-1657、Guertin DA,et al(2007)Cancer Cell 12:9-22)。PI3Kならびにその下流エフェクターであるAKTおよびmTORは、PI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路における主要な中心点であり、細胞周期の調節、細胞の成長、代謝、運動性、および生存にとって重要である(Rameh,et al(1999)J.Biol Chem.274:8347-8350、Cantrell DA(2001)J Cell Sci 114:1439-1445、Hanahan D,et al(2011)Cell 144:646-674、Vanhaesebroeck B,et al(2012)Nat Rev Mol Cell Biol 13:195-203)。
【0004】
PI3Kは、p85サブユニットとp110サブユニットとからなるヘテロ二量体である(Otsu et al(1991)Cell 65:91-104、Hiles et al(1992)Cell 70:419-429)。PI3Kα(アルファ)、β(ベータ)、δ(デルタ)、およびγ(ガンマ)と呼ばれる4つの異なるクラスIのPI3Kが同定されており、各々、異なる110kDaの触媒サブユニットと調節サブユニットp85とからなる。これらの4つのアイソフォームは、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CD、およびPIK3CGという4つの遺伝子の産物である。触媒サブユニットのうちの3つ、すなわちp110アルファ、p110ベータ、およびp110デルタは各々、同じ調節サブユニットp85と相互作用するのに対し、p110ガンマは、別個の調節サブユニットであるp101と相互作用する。ヒトの細胞および組織におけるこれらのPI3Kの各々の発現パターンは異なっている。PI3Kアルファ、ベータ、およびデルタ亜型の各々において、p85サブユニットは、SH2ドメインと標的タンパク質におけるリン酸化チロシン残基(適切な配列コンテキストに存在する)との相互作用により、PI3Kを形質膜へ局在させるように作用する(Rameh et al(1995)Cell,83:821-30、Volinia et al(1992)Oncogene,7:789-93)。
【0005】
複数の異なる機序を経たPI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路の調節障害は、PI3Kのp110アルファサブユニットをコードするPIK3CAの活性化突然変異および形質転換突然変異ならびに増幅を含む、固形腫瘍悪性腫瘍において説明されてきた(Gustin J,P et al(2008)Curr Cancer Drug Targets 8:733-740、Yuan TL,(2008)Oncogene 27:5497-5510、Courtney KD,et al(2010)J Clin Oncol 28:1075-1083)。PIK3CA遺伝子における活性化突然変異は主として、PI3Kアルファタンパク質のらせんドメインおよびキナーゼドメインをコードするエキソン9およびエキソン20(「ホットスポット」領域)において発生する(Bachman KE,et al(2004)Cancer Biol Ther 3:772-5、Samuels Y,et al(2004)Science 304:554)。
【0006】
乳がんのうちの最大70%には、PI3K/AKT/mTOR経路の何らかの形態の分子異常がある(Cancer Genome Atlas Network 2012)。PI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路の過剰な活性化は、ER+乳がん細胞株および異種移植モデルにおいて、内分泌療法に対する新規のおよび後天性の耐性をいずれも促進することが示された(Sabnis G,et al(2007)Clin Cancer Res 13:2751-2757)が、PI3K/AKT/mTOR経路の同時遮断は、抗腫瘍活性を増強しており(Boulay A,et al(2005)Clin Cancer Res 11:5319-5328)、このことは、PI3K/AKT/mTOR経路シグナル伝達の遮断が、ER+乳がん患者において治療上の利点を有するかもしれないことを示している。
【0007】
PI3K/AKT/PTEN経路は、がん薬物のような薬剤が、細胞増殖を阻害し、がん細胞の生存および化学的抵抗を準備する間質細胞からのシグナルを抑制し、アポトーシスの抑制を逆転させ、細胞毒性薬に対するがん細胞の本質的な抵抗を乗り越えることが期待されるであろうことから、該がん薬物開発のための魅力的な標的である。がんを処置するのに有用であるPI3Kα(アルファアイソフォーム)の追加の調節因子、特に、非突然変異PI3Kα発現細胞と比較して腫瘍を発現するα突然変異PI3Kについて選択的であるαPI3Kの阻害剤についての必要性がある。特に、PI3Kβ、PI3Kδ、およびPI3Kγアイソフォームと比較してPI3Kαアイソフォームを選択的に阻害するこのような薬剤についての必要性があり、該薬剤は、治療ウィンドウを結果的に増強させると期待することができる。
【0008】
高血糖は、PI3Kアルファ阻害剤を用いた処置と関係する用量制限毒性である(Juric D,et al(2013)Proceedings of the 104th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research;2013 Apr 6-10;Washington,DC.Philadelphia(PA):AACR、Cancer Res 2013b;73(8 Suppl):Abstract nr LB-64)。PI3K経路阻害剤を用いた高血糖についての管理ガイドラインでは、第一次処置としてメトホルミンが推奨されている(Hostalek U,et al(2015)Drugs 75:1071-1094、Busaidy et al(2012)J Clin Oncol 30:2919-28)。高血糖効果の緩和または管理は、PI3Kアルファ阻害剤を用いたがんの処置についての追加の機会を提供することがある。処置と関連する毒性を最小限にしながら治療上の利点を最大限にすることは、処置時間が長くなる可能性があるHR+/HER2陰性乳がんにおいて特に重要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、高血糖を緩和または管理するための抗高血糖薬メトホルミンを用いた処置の後、PI3Kアルファ阻害剤を用いてがん患者を処置する方法を提供する。
【0010】
本発明の一態様は、アルペリシブ(BYL719)、タセリシブ(GDC0032)、ブパルリシブ(BKM120)、ダクトリシブ(BEZ235)、ピクチリシブ(GDC0941)、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、HS-173、PIK-75、A66、YM201636、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、GSK1059615、コパンリシブ(BAY 80-6946)、アピトリシブ(GDC0980)、ボクスタリシブ(XL765、SAR245409)、セラベリシブ(serabelisib)(MLN1117、TAK-117、INK1117)、およびZSTK474、またはそれらの医薬として許容され得る塩からなる群から選択される、治療有効量のPI3Kアルファ阻害剤を投与することを含む、患者におけるがんの処置のための方法であり、この中で、患者はメトホルミンを用いて既に処置されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
これより本発明のある特定の実施形態を詳細に参照するが、それらの例は、添付の構造および式において例示されている。本発明は、列挙される実施形態と併せて説明されるが、該実施形態は、本発明を該実施形態に限定することを意図するものではないことは理解されるであろう。逆に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれることができる、全ての代替案、修正、および同等物を網羅することを意図するものである。当業者であれば、本発明の実施において使用され得る、本明細書に説明するものに類似のまたは同等の多数の方法および材料を認識するであろう。本発明は決して、説明される方法および材料に限定されるものではない。組み込まれる文献、特許、および同様の資料のうちの1つ以上が、定義される用語、用語の用法、説明される技法、などを含むがこれらに限定されずに、本出願と異なるかまたは矛盾する場合は、本出願が優先される。
【0012】
定義
「PI3Kアルファ阻害剤」という用語は、野生型および突然変異型を含む、PI3Kのアルファ(α)アイソフォームを調節する上で活性を有する化合物を指す。
【0013】
「comprise(を含む)」、「comprising(を含んでいる)」、「include(を含む)」、「including(を含んでいる)」、および「includes(を含む)」という語は、本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、述べられている特色、整数、構成要素、またはステップの存在を具体化することを意図するものであるが、これらは、1つ以上の他の特色、整数、構成要素、ステップ、またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0014】
「を処置する」および「処置」という用語は、治療的処置および予防手段または防止手段の両方を指し、その目的とは、がんの成長、発達または拡大など、所望ではない生理学的な変化または障害を防止するまたは減速させる(小さくする)ことである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかに関わらず、症状の軽減、疾患の程度の縮減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化していないこと)、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の寛解または緩和、および(部分的か完全かに関わらず)緩解が含まれるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けていない場合の生存予測と比較して延命させることも意味することができる。処置を必要とする者には、容態もしくは障害に既に罹患している者、および容態もしくは障害に罹患する傾向のある者、または容態もしくは障害を防止することになっている者が含まれる。
【0015】
「治療有効量」という句は、(i)特定の疾患、容態もしくは障害を処置する、(ii)特定の疾患、容態もしくは障害のうちの1つ以上の症状を減弱させる、寛解させる、もしくは排除する、または(iii)本明細書に説明する特定の疾患、容態もしくは障害のうちの1つ以上の症状の発症を防止するもしくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。がんの場合、治療有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させることができ、腫瘍の大きさを低減させることができ、末梢器官へのがん細胞の湿潤を阻害することができ(すなわち、ある程度減速させることができ、好ましくは停止させることができ)、腫瘍転移を阻害することができ(すなわち、ある程度減速させることができ、好ましくは停止させることができ)、腫瘍の成長をある程度阻害することができ、および/またはがんと関係した症状のうちの1つ以上をある程度緩和することができる。薬物が既存のがん細胞の成長を防止し、および/またはそれらを殺滅させることができる程度まで、この薬物は、細胞分裂抑制性および/または細胞毒性であってよい。がん療法については、有効性は、例えば、疾患の進行に至るまでの時間(TTP)を評価すること、および/または応答速度(RR)を決定することによって測定することができる。
【0016】
「検出」という用語は、直接的および間接的な検出を含む、いかなる検出手段も含む。
【0017】
「予後」という用語は、本明細書では、がんなどの腫瘍性疾患の、例えば、再発、転移の拡大、および薬物耐性を含む、がんに起因する死亡または進行の尤度の予測を指すために使用される。
【0018】
「予測」という用語(および予測することなどの変形)は、本明細書では、患者が薬物または薬物のセットに好ましくまたは好ましくなくのいずれかで応答する尤度を指すために使用される。一実施形態では、予測は、薬物または薬物のセットの応答の程度に関する。一実施形態では、予測は、患者が、処置、例えば、特定の治療薬を用いた処置、および/または原発腫瘍の外科的切除、および/またはがんの再発のないある特定の期間の化学療法の後に生存するかどうか、ならびに/あるいはそれらの後に生存する尤度に関する。本発明の予測方法は、いずれかの特定の患者にとって最も適切な種類の処置を選択することによって、処置の判断を下すために臨床的に使用することができる。本発明の予測方法は、例えば、所与の治療薬または治療上の組み合わせ、外科的介入、化学療法などを含む、所与の治療投与計画などの処置投与計画に患者が好ましく応答する可能性が高いかどうか、または治療投与計画後の患者の長期生存の可能性が高いかどうかを予測する上で貴重なツールである。
【0019】
特定の治療薬または処置選択肢に対する「耐性の上昇」という用語は、本発明に従って使用するとき、薬物の標準用量または標準処置プロトコルに対する応答の低下を意味する。
【0020】
「患者の応答」は、(1)減速または成長の完全な抑止を含む、腫瘍成長のある程度の阻害、(2)腫瘍細胞の数の低減、(3)腫瘍の大きさの低減、(4)隣接する末梢器官および/または組織内への腫瘍細胞の浸潤の阻害(例えば、低減、減速、または完全な停止)、(5)転移の阻害(例えば、低減、減速、または完全な停止)、(6)腫瘍の退縮(regression)または退縮(rejection)をもたらすことがあるがそうである必要がない、抗腫瘍免疫応答の増強、(7)腫瘍と関係する1つ以上の症状のある程度の緩和、(8)処置後の生存の長さの延長、ならびに/あるいは(9)処置後の所与の時点における死亡率の低下を含むがこれらに限定されない、患者への利益を示す何らかのエンドポイントを使用して、評価することができる。
【0021】
「バイオマーカー」とは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定および評価される特徴である。バイオマーカーには、予測、予後、または薬力学的(PD)といったいくつかの種類があってよい。予測バイオマーカーは、どの患者が特定の療法に応答する可能性が高いか、またはその利益を受ける可能性が高いかを予測する。予後バイオマーカーは、患者の疾患についてありそうな経過を予測するものであり、処置を誘導することができる。薬力学的バイオマーカーは、薬物活性を確認し、用量および投与スケジュールの最適化を可能にする。
【0022】
PIK3CA突然変異またはPIK3CA突然変異のセットを含む、バイオマーカーの状態の「変化」または「変調」は、それがインビトロでまたはインビボで生じるにつれ、薬力学(PD)を確立する上で通常採用される1つ以上の方法を使用した生物学的試料の分析によって検出され、該分析には、(1)生物学的試料のゲノムDNAまたは逆転写PCR産物を配列決定し、それにより、1つ以上の突然変異を検出すること、(2)メッセージレベルの定量またはコピー数の評価によって遺伝子発現レベルを評価すること、(3)免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学、ELISA、または質量分析によるタンパク質の分析により、リン酸化またはユビキチン化など、タンパク質の分解、安定化、または翻訳後修飾を検出すること、を含む。
【0023】
「がん」および「がん性」という用語は、調節されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的容態を指すかまたは説明する。「腫瘍」は、1つ以上のがん性細胞を含む。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。このようながんのより詳細な例としては、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平細胞がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、肺の腺がん、および肺の扁平上皮がんを含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)または胃がん(stomach cancer)(胃腸がんを含む)、膵がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん(liver cancer)、膀胱がん、肝細胞がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、大腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎がん(kidney cancer)または腎がん(renal cancer)、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん(hepatic carcinoma)、肛門がん、陰茎がん、および頭頚部がんが挙げられる。胃がんには、本明細書で使用される場合、胃のいずれかの部分で発症する可能性があり、胃全体にならびに他の器官、特に食道、肺、リンパ節、および肝臓に広がることがある胃がんが含まれる。
【0024】
「化学療法薬」とは、作用機序に関係なく、がんの処置において有用な生物学的(高分子)または化学的(小分子)化合物である。
【0025】
「哺乳動物」という用語には、ヒト、マウス、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、およびヒツジが含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
「添付文書」という用語は、治療製剤の適応症、使用法、薬用量、投与、禁忌についての情報、および/または使用に関する警告を含めた、このような治療製剤の商用包装物内に通例含まれる説明書を指すために使用される。
【0027】
本明細書で使用される「医薬として許容され得る塩」という句は、本発明の化合物の医薬として許容され得る有機または無機の塩を指す。例示的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸、グルクロン酸、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレンビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトアート))が挙げられるが、これらに限定されない。医薬として許容され得る塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなど、別の分子の混在物を包含することができる。対イオンは、親化合物上での電荷を安定化する何らかの有機または無機の部分であってよい。さらに、医薬として許容され得る塩は、その構造中に複数の帯電原子を有してよい。複数の帯電原子が医薬として許容され得る塩の一部である場合、複数の対イオンを有することができる。この故に、医薬として許容され得る塩は、1つ以上の帯電原子および/または1つ以上の対イオンを有することができる。
【0028】
所望の医薬として許容され得る塩は、当技術分野で利用可能な何らかの適切な方法によって調製することができる。例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸などの無機酸、または酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸もしくはガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸もしくは酒石酸などのアルファヒドロキシ酸、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸もしくは桂皮酸などの芳香族酸、p-トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸などのスルホン酸などの有機酸を用いた遊離塩基の処理などである。塩基性医薬化合物からの医薬として有用なまたは許容され得る塩の形成に適していると概してみなされる酸は、例えば、P.Stahl et al,Camille G.(eds.)Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley-VCH、S.Berge et al,Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1 19、P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201 217、Anderson et al,The Practice of Medicinal Chemistry(1996),Academic Press,New York、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,(1995)Mack Publishing Co.,Easton PAによって、およびThe Orange Book(Food&Drug Administration,Washington,D.C.のウェブサイト上)において考察されている。これらの開示は、それを参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0029】
「医薬として許容され得る」という句は、物質または組成物が、製剤を構成する他の成分および/または該製剤を用いて処置されている哺乳動物と、化学的におよび/または毒物学的に適合していなければならないことを示す。
【0030】
本明細書で使用される「相乗的」という用語は、2つ以上の単剤の相加的な効果よりも有効である治療上の組み合わせを指す。GDC-0077の化合物またはその医薬として許容され得る塩と、1つ以上の化学療法薬との間の相乗的相互作用の決定は、本明細書に説明するアッセイから得られた結果に基づくことができる。これらのアッセイの結果は、併用指数を得るために、ChouおよびTalalayの併用法とCalcuSyn(登録商標)ソフトウェアを用いた用量効果解析とを使用して解析することができる(Chou and Talalay,1984,Adv.Enzyme Regul.22:27-55)。本発明によって提供される組み合わせは、いくつかのアッセイ系において評価されてきており、データは、ChouおよびTalalayによって、「New Avenues in Developmental Cancer Chemotherapy」,Academic Press,1987,Chapter 2において説明されている抗がん薬間の相乗作用、相加作用、および拮抗を定量するための標準プログラムを利用して解析することができる。併用指数の値が0.8未満の場合は相乗作用を示し、値が1.2を超える場合は拮抗を示し、値が0.8~1.2の場合は相加作用を示す。併用療法は「相乗作用」を提供することができ、「相乗的な」、すなわち、一緒に使用される有効成分がこれらの化合物を個別に使用することからもたらされる効果の合計よりも大きいときに達成される効果を証明することができる。相乗効果は、有効成分が、(1)併用単位剤形中で同時製剤化され、同時に投与されるかもしくは送達されるか、(2)別個の製剤として交互にもしくは並行して送達されるか、または(3)他のある処方によって送達されるときに獲得することができる。交互療法で送達されるとき、相乗効果は、例えば、別個の注射器における異なる注射によってまたは別個の丸剤もしくは錠剤において逐次投与または送達されるときに獲得することができる。概して、交互療法の間、各有効成分の有効な薬用量は、逐次、すなわち、連続して投与されるのに対し、併用療法においては、2つ以上の有効成分の有効な薬用量は、一緒に投与される。併用効果は、BLISS独立性モデルおよび最上級単剤(HSA)モデルの両方を使用して評価された(Lehar et al.2007,Molecular Systems Biology 3:80)。BLISSスコアは、単剤からの増強の程度を定量し、BLISSスコアが0よりも大であれば、単純な相加作用よりも大きいことを示唆している。HSAスコアが0よりも大であれば、相応する濃度における単剤応答の最大効果よりも併用効果が大であることを示唆している。
【0031】
臨床試験薬
本試験において使用されることになっている治験薬製剤(IMP)は、GDC-0077、パルボシクリブ(IBRANCE(登録商標),Pfizer Co.)、レトロゾール(FEMARA,Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標),AstraZeneca)、およびメトホルミンの5つである。
【0032】
GDC-0077:
GDC-0077は、クラスIのPI3Kアルファアイソフォームの強力な、経口で生物学的に利用可能な、臨床段階の選択的阻害剤であり、他のクラスIのPI3Kベータ、デルタ、およびガンマアイソフォームに対する強力な生化学的阻害は>300分の1であり、突然変異体PI3Kを保有する腫瘍細胞の効力は野生型(WT)のPI3K細胞よりも高い(Braun,M.et al “Discovery of GDC-0077:A highly selective inhibitor of PI3K-alpha that induces degradation of mutant-p110 alpha protein” Abstracts of Papers,254th ACS National Meeting&Exposition,Washington,DC,USA,August 20-24,2017,MEDI-22、Garland,K.et al “Discovery of novel class of alpha selective PI3K inhibitors” Abstracts of Papers,254th ACS National Meeting&Exposition,Washington,DC,USA,August 20-24,2017,MEDI-103、Hong,R.et al “GDC-0077 is a selective PI3K alpha inhibitor that demonstrates robust efficacy in PIK3CA mutant breast cancer models as a single agent and in combination with standard of care therapies” 2017 San Antonio Breast Cancer Symposium,Dec.5-9 2017,San Antonio,TX,Abstract Publication Number:PD4-14、Edgar,K.et al “Preclinical characterization of GDC-0077,a specific PI3K alpha inhibitor in early clinical development” Cancer Research 77(13 Supplement):Abstract 156・July 2017)。
【0033】
GDC-0077(CAS登録番号2060571-02-8,Genentech,Inc.,米国特許第9650393号、(S)-2-((2-((S)-4-(ジフルオロメチル)-2-オキソオキサゾリジン-3-イル)-5,6-ジヒドロベンゾ[f]イミダゾ[1,2-d][1,4]オキサゼピン-9-イル)アミノ)プロパンアミドという名称は、次の構造を有する。
【0034】
GDC-0077は、PI3KのATP結合部位に結合することによってその活性を発揮し、それにより、膜結合型4,5-ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)から3,4,5-ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)へのリン酸化を阻害する。PIP2からPIP3へのリン酸化を阻害すると、AKTおよびpS6の下流の活性化が低下し、その結果、細胞の増殖、代謝、および血管新生が減少する。非臨床研究は、GDC-0077が変異体p110アルファを特異的に分解し、増殖を阻害し、PIK3CA変異乳がん細胞株のアポトーシスを誘導し、PIK3CA変異を保有するヒト乳房異種移植モデルにおける腫瘍成長を阻害し、pAKT(AKTのリン酸化型)、pPRAS40、およびpS6を含む下流のPI3K経路マーカーを低減させることを実証している。
【0035】
フルベストラント:
フルベストラントはERアンタゴニストであり、比較的耐性の高いHR+乳がんの閉経後の患者に有効な処置である。GDC-0077およびフルベストラントについての予想される毒性は重複していない。これらの内分泌療法は、異なる作用機序、異なるPK特性、およびGDC-0077との薬物間相互作用(DDI)についての異なる可能性を有しているので、レトロゾールおよびフルベストラントの両方と組み合わせてGDC-0077を検査することが重要である。
【0036】
フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca、CAS登録番号129453-61-8)は、抗エストロゲン療法後に疾患が進行した閉経後の女性におけるホルモン受容体陽性(HR+)転移性乳がんの処置のためにFDAによって承認されている(Kansra(2005)Mol Cell Endocrinol 239(1-2):27-36、Flemming et al(2009)Breast Cancer Res Treat.May;115(2):255-68、Valachis et al(2010)Crit Rev Oncol Hematol.Mar;73(3):220-7)。フルベストラントは、アゴニスト作用のないエストロゲン受容体(ER)アンタゴニストであり、エストロゲン受容体の下方調節および分解の両方によって作動する(Croxtall(2011)Drugs 71(3):363-380)。フルベストラントはまた、選択的エストロゲン受容体下方調節因子(SERD)でもある。
【0037】
フルベストラントは、(7α,17β)-7-{9-[(4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル)スルフィニル]ノニル}エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17-ジオールという名称であり、次の構造を有する。
【0038】
フルベストラントは、ER結合についてエストロゲンと直接競合し、タモキシフェンの部分アゴニスト特性を欠いている可逆的ステロイド系ERアンタゴニストのクラスに属している。ERへの結合の際に、エストロゲンシグナル伝達を遮断し、ERタンパク質の分解を上昇させる。ERに対するフルベストラントの親和性は、タモキシフェンの親和性のおよそ100倍である(Howell et al.(2000)Cancer 89:817-25)。フルベストラント(月1回250mg)は、抗エストロゲン療法後に疾患が進行した閉経後の女性のHR陽性MBCの処置のために、2002年にFDAによって、2004年にEMAによって承認された。多施設第III相試験では、フルベストラントは第2選択の設定においてアナストロゾール(非ステロイド系AI)と少なくとも同等であることがわかった(Howell et al.(2002)J Clin Oncol 20:3396-3403、Osborne CK,et al(2002)J Clin Oncol 20:3386-95)。フルベストラントはまた、進行性乳がんの第1選択の処置についてタモキシフェンと同じ活性もあり(Howell et al.(2004)J Clin Oncol 22:1605-1613)、非ステロイド系AIエキセメスタンと同様のAI後転移性疾患において患者における活性レベルを示す(Chia et al.(2008)J Clin Oncol 26:1664-1670)。高用量フルベストラント(月1回500mg)は、臨床利益率(CBR)および全体応答率の点でアナストロゾールと少なくとも同じく有効であること、ならびに進行性HR陽性乳がんに罹患している女性の第1選択の処置に対する進行時間が有意により長いことと関係していることが実証された(Robertson et al.(2009)J Clin Oncol 27:4530-4535)。高用量フルベストラントでは近年、500mgで処置されたER陽性進行性乳がん女性において、250mgで処置された患者と比較して優れた無増悪生存期間(PFS)が実証された(Di Leo et al.(2010)J Clin Oncol 28:4594-4600)。フルベストラント(250mgおよび500mg)は、これらの研究において十分に耐性があり、タモキシフェンよりもエストロゲン作用が少なく、結果的にAIアナストロゾールよりも関節痛が弱かった(Osborne et al.(2002)J Clin Oncol 20:3386-3395)。これらの結果、AIを用いた処置後に疾患が拡大した閉経後の女性に対して、現在承認されている米国および欧州連合(2010年)の推奨用量として、500mgのフルベストラントを月1回与えることが承認された。これらの研究は、フルベストラントが進行性乳がん患者にとって重要な処置選択肢であることを実証しており、このように、本研究のための適切な制御療法とみなされている。
【0039】
パルボシクリブ:
パルボシクリブは、サイクリン依存性キナーゼCDK4およびCDK6の選択的阻害剤である(Finn et al(2009)Breast cancer research:BCR 11(5):R77、Rocca et al(2014)Expert Opin Pharmacother 15(3):407-20、米国特許第6936612号、米国特許第7863278号、米国特許第7208489号、米国特許第7456168号)。パルボシクリブは、米国特許第7345171号において説明されているように調製および特徴づけすることができる。IBRANCE(登録商標)は、乳がんの処置のために承認されている。
【0040】
6-アセチル-8-シクロペンチル-5-メチル-2-(5-(ピペラジン-1-イル)ピリジン-2-イルアミノ)ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オンという名称のパルボシクリブ(PD-0332991,IBRANCE(登録商標),Pfizer,Inc.,CAS登録番号571190-30-2)は、次の構造を有する。
【0041】
パルボシクリブは、CDK4/6阻害剤であり、レトロゾールまたはフルベストラントと組み合わせて、HR+(陽性)/HER2-(陰性)乳がんの閉経後患者にとって有効な処置である。レトロゾールまたはフルベストラントとの併用で、パルボシクリブの主な毒性は好中球減少である(Finn et al(2015)Lancet Oncol 16:25-35、Turner et al(2015)N Engl J Med 373:209-19)。レトロゾールと組み合わせて、患者の36%がパルボシクリブの≧1用量の低減を必要とし、用量の保持およびサイクルの遅延はそれぞれ、患者の70%および68%において報告された(Finn et al(2016)J Clin Oncol 34(付録、要約507))。フルベストラントと組み合わせて、患者の34%がパルボシクリブの≧1用量の低減を必要とし、用量の保持およびサイクルの遅延はそれぞれ、患者の54%および36%において報告された(Cristofanilli et al.(2016)Lancet Oncol 17:425-39)。骨髄抑制は、GDC-0077の潜在的な毒性である。本研究の一実施形態では、パルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせて、またはパルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせて、GDC-0077用量漸増および用量コホート拡大に登録された患者では、好中球、ヘモグロビン、および血小板の計数を適切にスクリーニングし、CBCを研究処置全体で頻繁に差次的にモニターした。
【0042】
レトロゾール:
レトロゾールは、比較的耐性の高いHR+乳がんの閉経後の患者に有効な処置である。GDC-0077およびレトロゾールについての予想される毒性は重複していない。レトロゾール(FEMARA(登録商標),Novartis Pharm.)は、手術後のホルモン応答性乳がんの処置のための経口非ステロイド系アロマターゼ阻害剤である(Bhatnagar et al(1990)J.Steroid Biochem.and Mol.Biol.37:1021、Lipton et al(1995)Cancer 75:2132、Goss,P.E.and Smith,R.E.(2002)Expert Rev.Anticancer Ther.2:249-260、Lang et al(1993)The Journal of Steroid Biochem.and Mol.Biol.44(4-6):421-8、欧州特許第236940号、米国特許第4978672号)。FEMARA(登録商標)は、ホルモン受容体陽性(HR+)であるかまたは閉経後の女性の受容体状態が不明である局所性または転移性乳がんの処置のためにFDAによって承認されている。
【0043】
レトロゾールは、4,4’-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチレン)ジベンゾニトリル(CAS登録番号112809-51-5)という名称であり、次の構造を有する。
【0044】
メトホルミン:
ビグアニド薬であるメトホルミン(GLUCOPHAGE(登録商標),Bristol Myers Squibb Co.)は、腎障害または他の禁忌の証拠がない限り、新たに診断されたすべての患者の2型糖尿病を処置するための第1選択の経口投与処方薬である。(Dunning,T.et al,Diabetes Res Clin Pract.(2014)103,538-540)。GLUCOPHAGE(登録商標)(塩酸メトホルミン)錠およびGLUCOPHAGE(登録商標)XR(塩酸メトホルミン、Met HCl、CAS登録番号1115-70-4)徐放錠は、2型糖尿病の管理において使用される経口抗高血糖薬である。GLUCOVANCE(登録商標)(グリブリドおよびメトホルミンHCl,Bristol Myers Squibb Co.)錠は、2型糖尿病の管理において使用される2つの経口抗高血糖薬グリブリドおよび塩酸メトホルミンを含有している。
【0045】
抗高血糖薬メトホルミンは、2型糖尿病のための確立された標準治療の処置であり、肥満または糖尿病前症である患者における糖尿病予防のために、およびPI3K経路阻害剤と関係した高血糖のための第1選択の処置として推奨される(American Diabetes Association 2015、Hostalek U,et al(2015)Drugs 75:1071-1094、Busaidy NL,et al(2012)J Clin Oncol 30:2919-2928)。
【0046】
N,N-ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドおよび1,1-ジメチルビグアニドとしても公知のメトホルミン(pKa=12.4、CAS登録番号657-24-9)は、Werner,E.A.et al,J.Chem.Soc.(1922)121:1790-1794において開示されている。本化合物ならびにその調製および使用はまた、例えば、米国特許第3174901号においても開示されている。
【0047】
メトホルミンは、末梢のグルコースの取り込みおよび利用を上昇させることによって、肝グルコース産生を低下させ、インスリン感受性を改善すると仮定されている。メトホルミンは、肝グルコース産生を有効に阻害することができ、優れた安全性でインスリンに対する末梢組織の感受性を上昇させることができる。臨床研究はまた、メトホルミンが肥満、多嚢胞性卵巣症候群、1型糖尿病、およびインスリン抵抗性随伴性青年期肥満において使用することができることも示した。(Nestler,J.E.,New Eng.Jour.Med.(2008)358:47-54、Park、M.H.et al,Diabetes Care(2009)32:1743-1745、Van Der Aa,M.et al,Nutrition&Diabetes(2016)6,e228)。
【0048】
臨床試験
多施設の国際的な非盲検の第I相試験は、乳がんを含む局所進行性または転移性のPIK3CA変異固形腫瘍の患者において、局所進行性または転移性のPIK3CA変異ホルモン受容体陽性(HR+)/ヒト表皮成長因子受容体(EGFR)2陰性(HER2-)乳がんの処置のための標準治療の内分泌標的療法と組み合わせて、単剤として経口投与したGDC-0077の安全性、耐性、および薬物動態を評価するために設計されている。
【0049】
本研究の一実施形態では、標的母集団の組み入れ基準および除外基準は次のとおりである。
・PIK3CA変異腫瘍の状態の決定は、アーカイブのまたは新鮮な腫瘍組織またはctDNAからの結果に基づくことがある。患者は、PIK3CA突然変異を示す局所的なまたは中枢の検査結果に基づいて登録されることがある。PIK3CA突然変異は次のように定義されている。H1047R/Y/L、E542K、E545K/D/G/A、Q546K/R/E/L、N345K、C420R、G1049R、R88Q、M1043I。PIK3CA突然変異の検出確認は、臨床検査室改善法(CLIA)の認定する検査室またはそれと同等の検査室において決定されるものとする。
・HR+(ホルモン受容体陽性)は、≧細胞の1%におけるエストロゲン受容体(ER)の発現として定義されるか、または+地域の検査室もしくは地域の定義によるHRである。
・HER2-(陰性)は、0または1+のHER2免疫組織化学(IHC)スコア、またはHER2遺伝子増幅がないことを示す陰性の蛍光、発色、もしくは銀のインサイツハイブリッド形成検査に随伴する2+のIHCスコア2、または<2.0のHER2/CEP17比、または地域の臨床ガイドラインとして定義される。
・ホルモン受容体またはHER2について複数の検査結果が利用可能であり、必ずしもすべての結果が組み入れ基準の定義を満たしているわけではない場合、すべての結果を医療モニターと論議して患者の適格性を確立するものとする。
【0050】
閉経後は、次のうちの1つとして定義される。
・年齢≧60歳
・年齢<60歳、かつ12か月間の無月経、かつ経口避妊薬、ホルモン補充療法、または性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニストもしくはアンタゴニストがない場合の、地域の検査室の評価による卵胞刺激ホルモンおよび血漿エストラジオールの、閉経後の範囲内のレベル
・両側卵巣摘出をこれまでに行ったこと
【0051】
患者は、試験の登録のために次の組み入れ基準を満たさなければならない。
・署名された説明と同意用紙
・年齢≧18歳
・固形腫瘍における応答評価基準(RECIST),第1.1版ごとの評価可能または測定可能な疾患
・米国東部がん共同研究グループ(ECOG)のスケールが0または1
・≧12週間の平均余命
・次に定義する、研究処置の開始前の14日以内の適切な血液学的なおよび器官の機能:
・絶対好中球数≧1200/μL(被験者群B、E、およびFを除く、後述を参照されたい)
・ヘモグロビン≧9g/dL
・血小板≧100,000/μL
・空腹時血糖≦140mg/dLおよび糖化ヘモグロビン(HbA1c)<7%
・総ビリルビンが≦1.5×正常値上限(ULN)
・血清アルブミンが≧2.5g/dL
・ASTおよびALTが≦2.5×ULNだが、次の例外がある。
・肝転移が記録されている患者は、ASTおよび/またはALTが≦5.0×ULNであることがある。
・Cockcroft-Gault糸球体濾過量推定法に基づく血清クレアチニン≦1.5×ULNまたはクレアチニンクリアランスが≧50mL/分。
(140-年齢)×(体重(kg))×(女性の場合は0.85)
72×(血清クレアチニン(mg/dL))
・INR<1.5×ULNおよびaPTT<1.5×ULN
・ワルファリンを用いた抗凝固療法を必要とする患者には、2-3の間の安定したINRが必要とされる。人工心臓弁に凝固防止が必要な場合は、2.5-3.5の間の安定したINRが許容される。
・適切な腫瘍組織試料の確認(以下の段階特異的基準および指令のための検査マニュアルを参照されたい)
・妊娠の可能性のある女性(段階Iの被験者群Aならびに段階IIの被験者群EおよびFのみ)の場合:禁欲を続ける(異性間の性交を控える)か失敗率が年間<1%の非ホルモン避妊法を使用することへの同意、ならびに試験処置の間および試験処置の最後の投与後少なくとも60日間、卵子の提供を控えることへの同意(フルベストラントについての地域の処方情報に基づいて、患者は、フルベストラントの最後の投与後最長1年間は有効な避妊手段を使用するように勧告されることがある)。
・女性は、初潮後であり、閉経後の状態に到達しておらず(更年期以外に原因が同定されない無月経が≧12か月間連続)、外科的不妊手術(卵巣および/または子宮の摘出)を受けたことがない場合、妊娠の可能性があるとみなされる。
・失敗率が年間<1%の非ホルモン避妊法の例としては、両側卵管結紮術、男性不妊手術、および銅子宮内避妊器具が挙げられる。
・禁欲の信頼性は、臨床試験の期間ならびに患者の好ましい通常の生活様式に関連して評価するものとする。定期的な禁欲(例:カレンダー、排卵、症候性、または排卵後の方法)および膣外射精は、許容され得る避妊法ではない。
【0052】
本試験の一実施形態では、段階IIの被験者群Eに登録する患者に特異的な組み入れ基準は次のとおりである。
・組織学的に記録された局所進行性または転移性PIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの女性患者
・閉経前/閉経周辺期の患者は、周期1の1日目の少なくとも4週間前に開始し、試験処置期間中継続する、GnRHまたはLHRHアゴニスト療法を用いて処置されなければならない。
・絶対的好中球数≧1500/μL
【0053】
本試験の一実施形態では、段階IIの被験者群Fに登録する患者に特異的な組み入れ基準は次のとおりである。
・組織学的に記録された局所進行性または転移性PIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの女性患者
・閉経前/閉経周辺期の患者は、周期1の1日目の少なくとも4週間前に開始し、試験処置期間中継続する、GnRHまたはLHRHアゴニスト療法を用いて処置されなければならない。
・絶対的好中球数≧1500/μL
・ベースラインでBMIが≧30kg/m2またはHbA1cが≧5.7%かつ<7%の患者。
【0054】
一実施形態では、HR+/HER2-局所進行性/転移性乳がんの女性患者は、次の基準を満たす。
・腫瘍組織またはctDNAにおけるPIK3CA突然変異
・LHRHアゴニストに関する閉経後または閉経前/閉経周辺期
・アジュバント内分泌療法の完了の12か月間または12か月以内の進行
・転移性疾患に対する全身療法をこれまでに受けたことがないこと
・フルベストラント、SERD、PI3K、AKT、またはmTOR阻害剤処置をこれまでに受けたことがないこと
【0055】
本試験の一実施形態では、次の基準のうちのいずれかを満たす患者は、試験登録から除外される。
・炎症性乳がんまたは化生性乳がん
・脳軟膜疾患の既往歴
・抗-高血糖薬を必要とする1型糖尿病または2型糖尿病
・経口避妊薬の嚥下不能または嚥下拒否
・吸収不良症候群または経腸吸収に干渉するであろう他の容態
・既知かつ未処置の、または活発な中枢神経系(CNS)転移(対症制御のために抗痙攣薬またはコルチコステロイドを進行しているかまたは必要としている)。
・CNS転移の処置歴のある患者は適格であるが、但し、次の基準の全てを満たすことを条件とする。
・CNSの外部の測定可能または評価可能な疾患
・CNS転移についての療法としてのコルチコステロイドについての継続的な必要条件がなく、コルチコステロイドが登録前の≧2週間中止されており、CNS転移に起因する継続的な症状がないこと
・CNS-指向型治療の完了の際の改善のX線写真により実証されていること、およびCNS-指向型治療の完了とX線検査スクリーニングとの間の中間進行の証拠がないこと
・CNSのX線検査スクリーニングは、放射線療法の完了から≧4週間である
・頭蓋内出血歴または脊髄出血歴がないこと
・隔週またはより頻繁に再発性排液法を必要とする制御されていない胸水または腹水。留置胸膜カテーテルまたは留置腹部カテーテルは、患者が該法から十分に回復し、血行力学的に安定であり、対症的に改善され、医療モニターからの事前の承認があることを条件として、許可されることがある
・周期1の1日目から7日以内にIV抗生物質を必要とする危篤状態の感染症
・治験責任医師および/または試験眼科医の意見では、何らかの同時の眼または眼内の容態に起因する可能性のある視力喪失を予防または処置するために、試験期間中に医学的または外科的介入を必要とするであろう、該容態(例えば、白内障または糖尿病性網膜症)
・いずれかの眼における活動性炎症性(例えば、ぶどう膜炎もしくは硝子体炎)もしくは感染性(例えば、結膜炎、角膜炎、強膜炎もしくは眼内炎)の容態またはいずれかの眼における特発性ぶどう膜炎もしくは自己免疫と関係するぶどう膜炎の病歴
・毎日の日用酸素補給が必要な患者
・活動性炎症性疾患(例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎)または何らかの活動性腸炎(憩室炎を含む)の病歴
〇免疫抑制剤(例えば、スルファサラジン)を現に投与されている患者は、活動性疾患に罹患していると見なされ、それゆえ、不適格である。
・ビスホスホナート療法またはデノスマブ療法の継続使用を必要とする症候性高カルシウム血
・骨転移または骨減少/骨粗鬆症に対するビスホスホナート療法およびデノスマブ療法が許容されている。
・ウイルス性肝炎または他の肝炎、現在のアルコール乱用、または肝硬変を含む肝疾患の臨床的に重大な病歴
・既知のHIV感染
・治験薬の使用が禁忌である疾患または容態の合理的な疑いを与え、結果の解釈に影響を及ぼすことがあるか、または患者を処置合併症で高リスクにすることがあるいずれかの他の疾患、活動性のもしくは制御されていない肺機能障害、代謝機能障害、健康診断所見、または臨床検査所見
・GDC-0077の開始前4週間以内の重大な外傷性損傷または大手術。
・試験処置開始前3週間以内の化学療法、免疫療法、もしくは抗がん療法としての生物学的療法、または試験処置開始前2週間以内の内分泌療法(例えば、タモキシフェン、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、フルベストラント)だが、次のものを除く。
・段階I、被験者群A:閉経前の乳がん患者は、周期1の1日目の≧4週間前に開始された場合にのみ、試験でGnRHアゴニスト療法を継続することができる。
・規制当局によって承認されたキナーゼ阻害剤は、試験処置の開始の2週間前まで使用することができるが、但し、いかなる薬物関連の毒性も完全に解消されており、医療モニターから事前の承認が得られていることを条件とする。
・試験処置開始前の3週間以内または5半減期以内のいずれか短い方での治験薬を用いた処置。
・患者が臨床的に関連するいかなる毒性からも十分に回復し、医療モニターからの事前の承認があれば、より短い洗い出し期間が許容されることがある。
・試験処置の開始前4週間以内のがん療法としての放射線療法(骨転移に対する姑息的放射を除く)
・GDC-0077の開始前2週間以内の骨転移への姑息的放射
・脱毛症および段階≦2の末梢神経障害を除く、従来療法による未解決の毒性
・試験手順および経過観察手順の履行不能
・適切に処置した子宮頚部のインサイツのがん腫、非黒色腫皮膚がん、またはI期子宮がん以外の、スクリーニング前5年以内の他の悪性腫瘍の病歴
・投薬を必要とする活動性心室性不整脈もしくはうっ血性心不全または症候性である冠動脈性心疾患の病歴、
・臨床的に重大な電解質異常(例えば、低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症)
・先天性QT延長症候群、または>30分間隔の少なくとも2つのECGによって実証されるFridericiaの式(QTcF)>470msを用いて補正される先天性QT間隔延長、または原因不明の突然死もしくはQT延長症候群の家族歴
・QT間隔を延長することが周知である薬剤を用いた現行処置
・GDC-0077製剤、パルボシクリブ(I期およびII期、被験者群B)、レトロゾール(I期およびII期、被験者群BおよびC)、またはフルベストラント(II期、被験者群D)の構成要素に対するアレルギーまたは過敏症。
【0056】
II期、被験者群EおよびF:パルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせたGDC-0077:
段階II、被験者群EおよびFは、パルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせたGDC-0077の安全性、耐性、および薬物動態を通知する。パルボシクリブおよびフルベストラントの組み合わせは、HR+/HER2転移性乳がん患者においてフルベストラント+偽薬と比較して、無増悪生存期間(PFS)における有意な改善と関係しており(Cristofanilli et al.2016)、したがって、患者のための重要な標準治療処置である。
【0057】
段階II、被験者群F:肥満患者または糖尿病前症患者におけるメトホルミンの追加:
段階IIの被験者群Fは、肥満または糖尿病前症の患者を登録し、前記患者は、ボディマス指数が≧30kg/m2であるか、HbA1c≧5.7%をスクリーニングしている患者として定義され、該患者は、パルボシクリブおよびフルベストラントと一緒にメトホルミンを服用し、それに続いてGDC-0077が追加される。メトホルミンの早期投与は、メトホルミンを耐用可能な様式で有効量まで漸増するのに十分な時間を与え、したがって高血糖の発生をメトホルミン単独で有効に管理することができる軽度の事象に制限し、それによりGDC-0077の用量低減または中断を制限することが企図されている。抗高血糖薬を必要とする1型または2型糖尿病の患者、およびベースライン時に空腹時血糖値が>140mg/dLと高いまたはHbA1cが≧7%の患者は、本試験から除外され続ける。段階II、被験者群Fでは、患者は、周期1の1日目からメトホルミン500mgの総日用量を服用し、メトホルミンを3日(+2日)ごとに500mgの増分で増加させ、GDC-0077投与が始まる周期1の15日目まで最大で総日用量が2000mgになるまで耐用される。空腹時血糖値はベースラインで評価され、空腹時血糖値およびインスリンレベルは本試験の間監視される。高血糖と関係する症状には、多飲、多尿、過食、視力障害、またはアシドーシスが含まれる。
【0058】
段階II、被験者群E(パルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせたGDC-0077):本試験のこの部分では、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの患者を登録する。パルボシクリブおよびフルベストラントの組み合わせは、先行内分泌療法で進行したHR+/HER2転移性乳がんの患者においてフルベストラントにパルボシクリブを追加するとPFSにおいて有意な改善を実証したPALOMA-3試験からの結果に基づく標準治療処置選択肢として浮上している(Cristofanilli M et al(2016)Lancet Oncol 17:425-439)。
【0059】
段階II、被験者群F(パルボシクリブ、フルベストラント、およびメトホルミンと組み合わせたGDC-0077):抗高血糖薬メトホルミンは、2型糖尿病の管理のための確立された標準治療処置であり、許容され得る安全性および耐性の特性を備えている。加えて、臨床試験のデータは、米国糖尿病学会が、肥満および糖尿病前症の患者を含むリスクのある患者の糖尿病予防のためにメトホルミンについて考慮に入れることを推奨しているように、糖尿病予防におけるメトホルミンの利点を実証している。一般的なメトホルミンの副作用は本質的に胃腸のものであり、即時放出製剤の代わりに徐放性製剤を使用すること、開始用量を少なくすること、および1-2週間にわたって有効量まで緩徐に漸増することによって最小限にすることができる。重要なことに、不十分な熱量摂取または十分な熱量摂取のない激しい運動がない場合、メトホルミンは、その作用機序と高インスリン血症がないこととに基づいて、2型糖尿病患者または2型糖尿病以外の患者において低血糖を引き起こさない(GLUCOPHAGE(登録商標) U.S.取扱説明書、American Diabetes Association 2015、Hostalek et al Drugs(2015)75:1071-94)。
【0060】
したがって、本試験のこの部分では、ボディマス指数(BMI)が≧30kg/m2またはHbA1c≧5.7%をスクリーニングしているものとして定義される肥満患者または糖尿病前症患者は、パルボシクリブおよびフルベストラントと一緒にメトホルミンを服用し、それに続いてGDC-0077が追加される。メトホルミンの早期投与は、メトホルミンを耐用可能な様式で有効量まで漸増するのに十分な時間を与え、したがって本試験の間では高血糖の発生を、メトホルミン単独で有効に管理することができる軽度の事象に制限し、それによりGDC-0077の用量低減または中断を制限することが企図されている。患者は、周期1の1日目からメトホルミンを総日用量500mgで服用し、メトホルミンを3日(+2日)ごとに500mgの増分で増加させ、GDC-0077の投与が始まる周期1の15日目まで最大で総日用量が2000mgになるまで耐用される。
【0061】
試験目的
本試験では、乳がんを含む局所進行性または転移性のPIK3CA変異固形腫瘍の患者において、局所進行性または転移性のPIK3CA変異ホルモン受容体陽性(HR+)/ヒト表皮成長因子受容体2陰性(HER2-)乳がんの処置のための標準治療である内分泌療法および標的療法と組み合わせて、GDC-0077の安全性、耐性、薬物動態、薬力学的(PD)効果、および予備活性を評価する。
【0062】
本試験の一実施形態では、本試験についての具体的な目標および相応の評価項目を表1に概略する。
【0063】
評価および解析
臨床上の毒性は、GDC-0077による標的調節の信頼できる代用物ではないかもしれない。それゆえ、PDバイオマーカーを組織中で測定して、臨床的に達成可能な曝露が、企図した分子標的に及ぼす所望の効果を生じるのに十分であるかどうかを判定することができる。
【0064】
乳がんは、不均質な疾患であり、PIK3CAの突然変異状態は、患者によって異なることが示されている(Cancer Genome Atlas Network 2012)。本試験の一実施形態では、PIK3CA突然変異状態に加えて、GDC-0077を用いた処置の安全性および有効性と相関するかもしれない因子を特定する作業において、追加のバイオマーカーについて患者の試料を評価する。予測バイオマーカー試料は、GDC-0077に応答する可能性が最も高いPIK3CA駆動性の病理発生を有する患者を特定するために、投薬前に収集してよい。PDバイオマーカーは、患者におけるGDC-0077の生物活性の証拠を実証し、推奨される用量および用量投与計画の選択を支持し、PK試料収集スケジュールの可能性のある改定を通知するために評価する。
【0065】
血液試料は、ベースライン時、試験時、および疾患の進行時に収集される。腫瘍組織は、ベースライン時に、ならびに臨床的に実行可能であると見なされた場合は試験時におよび/または疾患の進行時に収集される。治験薬への応答を予測し、より重症の疾患状態への進行と関係しており、治験薬に対する後天性の耐性と関係しており、有害事象を発症させることに対する感受性と関係しており、または疾患生物学の知識および理解を高めることができる生殖系列突然変異および/または体細胞突然変異を特定するために、DNA抽出により、次世代配列決定(NGS)を介した分析が可能となる。
【0066】
他の実施形態では、バイオマーカーおよび患者試料の評価には、次のものを含むことができる。組織および循環バイオマーカーの評価、PIK3CA突然変異状態;薬力学的経路調節;ホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)発現解析;エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体(PR)分析;PI3K阻害剤に対する耐性に関連した遺伝子の配列決定;RNAおよびDNAの分析;体細胞腫瘍突然変異分析のための血漿試料;疾患進行時の腫瘍生検試料;QT/QTc心毒性評価;ならびにFDG-PET評価。
【0067】
GDC-0077を用いた処置方法
臨床試験および試験設計は、最初にメトホルミンを投与し、次にGDC-0077を投与することによって、がん患者を処置する方法を説明している。追加の治療薬は、該処置投与計画の一部であってよい。
【0068】
本発明は、治療有効量のPI3Kアルファ阻害剤、またはその医薬として許容され得る塩を投与することを含む、患者のがんの処置のための方法を含み、該患者はメトホルミンを用いて既に処置されている。
【0069】
PI3Kアルファ阻害剤は、アルペリシブ(BYL719、CAS登録番号1217486-61-7)、タセリシブ(GDC0032、CAS登録番号1282512-48-4)、ブパルリシブ(BKM120、CAS登録番号944396-07-0)、ダクトリシブ(BEZ235、CAS登録番号915019-65-7)、ピクチリシブ(GDC0941、CAS登録番号957054-30-7)、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587、CAS登録番号1197160-78-3)、HS-173(CAS登録番号1276110-06-5)、PIK-75(CAS登録番号372196-77-5)、A66(CAS登録番号1166227-08-2)、YM201636(CAS登録番号371942-69-7)、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458、CAS登録番号1086062-66-9)、GSK1059615(CAS登録番号958852-01-2)、コパンリシブ(BAY 80-6946、CAS登録番号1032568-63-0)、アピトリシブ(GDC0980、RG7422、CAS登録番号1032754-93-0)、ボクスタリシブ(XL765、SAR245409、CAS登録番号1349796-36-6)、セラベリシブ(serabelisib)(MLN1117、TAK-117、INK1117、CAS登録番号1268454-23-4)、およびZSTK474(CAS登録番号475110-96-4)からなる群から選択される。
【0070】
本発明は、治療有効量のGDC-0077またはその医薬として許容され得る塩を投与することを含む、患者のがんの処置のための方法を含み、該患者は、メトホルミンを用いて既に処置されており、GDC-0077は次の構造を有する。
【0071】
例示的な実施形態では、GDC-0077は、1日1回、患者に投与される。
【0072】
例示的な実施形態では、GDC-0077の治療有効量は、約1mg~約15mgであり、1日1回投与される。
【0073】
例示的な実施形態では、GDC-0077の治療有効量は、約6mgである。
【0074】
例示的な実施形態では、GDC-0077の治療有効量は、約9mgである。
【0075】
例示的な実施形態では、患者は、局所進行性のまたは転移性のPIK3CA変異固形腫瘍を有する。
【0076】
例示的な実施形態では、患者は、乳がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮内膜がん、前立腺がん、および子宮がんからなる群から選択されるがんに罹患している。
【0077】
例示的な実施形態では、患者は、乳がんに罹患している。
【0078】
例示的な実施形態では、患者は、局所進行性のまたは転移性のPIK3CA変異ホルモン受容体陽性乳がんに罹患している。
【0079】
例示的な実施形態では、乳がんは、HER2陰性である。
【0080】
例示的な実施形態では、患者はさらに、パルボシクリブを投与される。
【0081】
例示的な実施形態では、患者はさらに、フルベストラントを投与される。
【0082】
例示的な実施形態では、患者はさらに、レトロゾールを投与される。
【0083】
例示的な実施形態では、患者はさらに、パルボシクリブおよびフルベストラントを投与される。
【0084】
例示的な実施形態では、患者は、肥満または糖尿病前症である。
【0085】
例示的な実施形態では、メトホルミンの用量または投与計画は、GDC-0077の投与前に、患者の高血糖を緩和し、安定化させ、または縮減させるように調整される。
【0086】
例示的な実施形態では、患者の血糖値は、メトホルミンを用いた処置の間に監視される。
【0087】
例示的な実施形態では、患者は、500mg以上のメトホルミンを毎日投与される。
【0088】
例示的な実施形態では、患者は、GDC-0077の投与前に約15日間、500mg~2000mgのメトホルミンを毎日投与される。
【0089】
例示的な実施形態では、患者は、GDC-0077の初回用量投与から始めて、500mg~2000mgのメトホルミンを毎日投与される。
【0090】
例示的な実施形態では、患者は、パルボシクリブおよびフルベストラントの投与前に約15日間、500mg~2000mgのメトホルミンを毎日投与されるのに続いて、GDC-0077が投与される。
【0091】
例示的な実施形態では、患者は、GDC-0077の投与前に約15日間、メトホルミン、パルボシクリブ、およびフルベストラントを毎日投与される。
【0092】
例示的な実施形態では、患者は、抗炎症薬、免疫調節薬、化学療法薬、アポトーシス増強剤、向神経性因子、心血管疾患を処置するための薬剤、肝疾患を処置するための薬剤、抗ウイルス薬、血液障害を処置するための薬剤、糖尿病を処置するための薬剤、および免疫不全障害を処置するための薬剤からなる群から選択される追加の治療薬をさらに投与される。
【0093】
例示的な実施形態では、追加の治療薬は、パクリタキセル、アナストロゾール、エキセメスタン、シクロホスファミド、エピルビシン、フルベストラント、レトロゾール、パルボシクリブ、ゲムシタビン、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標),Genentech)、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標),Genentech)、ペグフィルグラスチム、フィルグラスチム、ラパチニブ、タモキシフェン、ドセタキセル、トレミフェン、ビノレルビン、カペシタビン、およびイキサベピロンからなる群から選択される。
【0094】
例示的な実施形態では、追加の治療薬は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)または選択的エストロゲン受容体ディグレーダー(SERD)である。
【0095】
例示的な実施形態では、追加の治療薬は、CDK4/6阻害剤である。
【0096】
例示的な実施形態では、CDK4/6阻害剤は、パルボシクリブ、リボシクリブ、およびアベマシクリブ(LY283519、VERZENIO(登録商標),Eli Lilly)から選択される。
【0097】
例示的な実施形態では、追加の治療薬は、エベロリムス、テムシロリムス、ダクトリシブ(BEZ235)、アルペリシブ(BYL719)、タセリシブ(GDC0032)、ブパルリシブ(BKM120)、BGT226、イパタセルチブ(GDC0068)、アピトリシブ(GDC0980)、ピクチリシブ(GDC0941)、セラベリシブ(MLN1117、TAK-117、INK1117)、INK128(MLN0128)、OSI-027、CC-223、AZD8055、SAR245408、SAR245409、PF04691502、WYE125132、GSK2126458、GSK-2636771、BAY806946、PF-05212384、SF1126、PX866、AMG319、ZSTK474、Cal101(イデラリシブ)、PWT33597、CU-906、AZD-2014およびCUDC-907からなる群から選択されるホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)/mTOR経路阻害剤からなる群から選択される。
【実施例】
【0098】
実施例1 製剤、包装、および取り扱い
GDC-0077(CAS登録番号2060571-02-8)薬品は、1mgおよび5mgの2つの錠剤強度の錠剤として提供される。1mgの錠剤は、白色~オフホワイト色の無地または斑点のある三角形または円形の錠剤であり、5mgの錠剤は、白色~桃色の無地または斑点のある円形の錠剤である。GDC-0077薬品の賦形剤には、微結晶性セルロース、乳糖、ステアリン酸マグネシウム、およびグリコール酸でん粉ナトリウムが含まれる。
【0099】
この試験の単剤の用量漸増部分において評価されるGDC-0077の開始用量は、約6~9mgを口腔(PO)により毎日投与される。患者は、割り当てられた用量レベルおよびスケジュールにより、服用する錠剤の数および強度について指示されることができる。本試験の一実施形態では、GDC-0077は、空腹時(すなわち、食事のおよそ1時間前または2時間後)に、および各日のおよそ同じ時刻±2時間で服用される。
【0100】
GDC-0077は、単剤(段階Iの被験者群A)として、およびHR+乳がんのための次の標準治療療法と組み合わせて投与することができる。すなわち、パルボシクリブおよびレトロゾール(段階IおよびIIの被験者群B)、レトロゾール(段階IおよびIIの被験者群C)、フルベストラント(段階IIの被験者群D)、ならびにパルボシクリブおよびフルベストラント(段階IIの被験者群Eおよび被験者群F)である。加えて、段階IIの被験者群Fに登録された患者はまた、試験処置の一環としてメトホルミンも服用する。
【0101】
パルボシクリブは、75mg、100mg、および125mgのカプセル剤として使用することができる。本試験の一実施形態では、パルボシクリブは、各28日周期の1-21日目に、ラベルが推奨する開始用量である125mg POで毎日投与される。患者は、特に指示がない限り、パルボシクリブを食物と一緒に、各日でおよそ同じ時刻±2時間で服用するように指示される。
【0102】
レトロゾールは、ボトルまたはブリスターパック内の2.5mg錠剤として入手可能である。本試験の一実施形態では、レトロゾールは、2.5mg POで毎日投与される。特に指示がない限り、患者は、空腹時(すなわち、食事のおよそ1時間前または2時間後)に、および各日のおよそ同じ時刻±2時間でレトロゾール用量を服用する。
【0103】
フルベストラントは、カートン内に5mLの注射剤として50mg/mLのフルベストラントを含有する無菌の単一患者用事前充填済み注射器として入手可能である。本試験の一実施形態では、フルベストラント500mgは、周期1の1日目および15日目にクリニック内で臀部に筋肉内投与される。その後の周期については、患者は各周期の1日目またはおよそ4週間ごとにクリニック内でフルベストラントを投与される。
【0104】
メトホルミン(FORTAMET(登録商標)、GLUCOPHAGE(登録商標)、GLUCOPHAGE XR(登録商標)、GLUMETZA(登録商標)、RIOMET(登録商標))は、ボトル内の500mg徐放性錠剤として供給されることができ、または試験サイトによって供給されることができる。本試験の一実施形態では、メトホルミンは、周期1の1日目で開始する500mg POの総日用量で投与され、3日(+2日)ごとに500mgほど増加し、周期1の15日目まで2000mg POの総日用量になるまで耐用される。
【0105】
実施例2 薬用量、投与、および服薬順守
段階Iの被験者群Aでは、GDC-0077の開始用量は、6mg POを1日1回である。周期1の1日目に、GDC-0077の単回用量は、午前の用量が投与された後最長48時間にわたって頻繁な採血に順応することができる臨床設定の患者に投与される。GDC-0077の1日1回の投与は、周期1の8日目に開始される。周期1の長さは35日で、その後のすべての周期(周期≧2)の長さは28日である。
【0106】
段階Iの被験者群Aのバックフィルコホートの被験者群BおよびC、ならびに段階IIの被験者群B、C、およびDにおいて、GDC-0077の1日1回の投薬は、周期1の1日目に開始され、各周期(周期≧1)の長さは28日である。
【0107】
特に指示がない限り、患者は、GDC-0077を当日±2時間の同じ時刻に服用する。患者は、割り当てられた用量レベルおよびスケジュールにより、服用する錠剤の数および強度について指示される。患者は、投薬日誌に各用量を服用する日時を記録するように依頼される。
【0108】
特に指示がない限り、GDC-0077は、空腹時(すなわち、食事のおよそ1時間前または2時間後)に服用するものとするが、空腹条件下で投与される、大規模なPK試料採取当日(周期1の1日目および15日目)を除く。空腹条件下での投与のために、患者は投与前に一晩少なくとも8時間、および投与後3時間絶食し、投与前1時間から投与後1時間まで飲水を控えるが、錠剤が丸ごと、240mL(8液用オンス)の水で嚥下される(噛まない)ときのGDC-0077投与を除く。
【0109】
PK試料は、空腹時脂質パネルを含む他の血液検査が行われると同時に収集される。患者は、PK血液試料が得られた後までGDC-0077の午前の用量を保持するように指示される。
【0110】
用量漸増コホートに登録された患者については、段階Iの被験者群Aの周期1の長さは35日であり、PK評価で開始され、その間、患者は全員、割り当てられた用量レベルで1日目にGDC-0077の単回空腹用量を投与される。初回用量の後に続いて、7日間のウォッシュアウトおよび、最長48時間の頻繁なPK試料採取を行い、ヒトにおけるGDC-0077の単回投与PK特性を決定する。GDC-0077の尿排出を測定するために、初回用量後8時間以内に尿試料が収集される。周期1では、継続的なGDC-0077の1日1回投与が8日目に開始され、4週間(8-35日目)継続される。後続の周期(周期≧2)の長さは28日である(GDC-0077で1日1回の4週間投与)。バックフィルコホートに登録された患者については、GDC-0077の毎日の投与は周期1の1日目に開始され、すべての周期の長さは28日である。
【0111】
段階IおよびIIの被験者群B(パルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせたGDC-0077用量漸増および用量-コホート拡大)の周期1から始まる際には、すべての周期の長さは28日である。患者は、各28日周期の1-21日目のパルボシクリブPOの1日1回投与と一緒に1-28日目に割り当てられた用量レベルでGDC-0077を、1-28日目のレトロゾールPOを1日1回投与される。患者は、パルボシクリブについての地域の処方情報に従って、GDC-0077、レトロゾール、およびパルボシクリブを食物と一緒に服用する。試験外来当日、GDC-0077、パルボシクリブ、およびレトロゾールは、診療所において投与され、患者は、投与前採血に先立って絶食する(一晩≧8時間)ように指示されるものとする。CBC、化学パネル、グルコースを含む地域の検査結果は、投与前に確認することができる。
【0112】
所与の周期において有害事象により、パルボシクリブの投与が保留された場合、パルボシクリブの投与を再開することができるようになるまで、次の投与周期は開始しないものとする。このように、現行の周期は28日を超えて延長されることができ、患者はGDC-0077およびレトロゾールを投与されることを継続することができる。次の周期の1日目は、パルボシクリブの投与が再開された時点に相応するものとする。その際、パルボシクリブは、GDC-0077およびレトロゾールとともに投与されることができる。
【0113】
段階IおよびIIの被験者群C(レトロゾールと組み合わせたGDC-0077の用量漸増および用量コホート拡大)の周期1で始まる際には、すべての周期の長さは28日である。患者は、各28日周期の1-28日目にレトロゾール2.5mg POを1日1回とともに、1-28日目に割り当てられた用量レベルでGDC-0077を投与される。患者は、空腹時(すなわち、食事の1時間前または2時間後)にGDC-0077およびレトロゾールの用量を服用するが、患者が絶食条件下で用量を服用する周期1および2の1日目は除く。試験外来当日、GDC-0077およびレトロゾールが診療所において投与される。
【0114】
段階IIの被験者群D(フルベストラントと組み合わせたGDC-0077用量コホート拡大)の周期1で始まる際には、患者は段階Iの被験者群Cにおいて決定されたMTD以下またはMAD以下でGDC-0077を投与される。フルベストラントと組み合わせたGDC-0077が、6人の患者の初回周期にわたって耐用であるといったんみなされる(安全性についての臨床試験開始前の時間)と、追加の患者が登録される。周期1の間、患者は、食品効果評価のために1日目(奇数番号の患者)または8日目(偶数番号の患者)のいずれかに交互の様式で割り当てられる。1日目(奇数番号の患者)または8日目(偶数番号の患者)に、GDC-0077は摂食条件下で投与される。摂食条件下での投薬については、患者は、試験サイトで提供される標準的な高脂肪食の前に、一晩≧8時間絶食する(実験室マニュアルを参照されたい)。患者は、GDC-0077の投与の30分前に標準的な高脂肪食を開始するものとする。患者は、≦30分で食事全体を消費するものとする。GDC-0077は、食事開始の30分後に240mL(8オンス)の水で投与されるものとする。投与後≧3時間まで食物は許可されないものとする。水は、薬物投与の前1時間および後1時間は許可されないが、GDC-0077の投与に必要とされる240mL(8オンス)の水分摂取を除く。1日目(偶数番号の患者)または8日目(奇数番号の患者)および15日目の際には、GDC-0077は絶食条件下で投与される。患者は、投与前の一晩少なくとも8時間および投与後3時間は絶食し、患者は、投与1時間前から投与後1時間まで水分摂取を控えるが、錠剤を丸ごと240mL(8オンス)ノイズで嚥下するGDC-0077の投与を除く。診療所におけるGDC-0077投与の当日、患者は、投与後3時間で標準的な低脂肪食を受け取る。特に指示がない限り、他のすべての用量は空腹時(食事のおよそ1時間前または2時間後)に服用する。
【0115】
患者は、周期1の1日目および15日目に、診療所で2回の5mL注射(各臀部に1回)として、フルベストラント500mgを臀部に緩徐に(1回あたり1-2分)筋肉内投与される。その後の周期(周期≧2)について、患者は、各周期の1日目に診療所で先に説明したような筋肉内注射を介してフルベストラントを投与される。試験処置を開始してから4週間以内にフルベストラントを投与された患者は、周期1で開始される各周期の1日目にフルベストラント500mgを投与される。
【0116】
段階IIの被験者群E(パルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせたGDC-0077用量コホート拡大)を周期1で始める際には、周期の長さはおよそ28日である。患者は、GDC-0077を1-28日目に、割り当てられた用量レベルで、1-21日目のパルボシクリブPO(経口で)および周期1の1日目および15日目に診療所で筋肉内注射を介したフルベストラントと一緒に投与される。その後の周期(周期≧2)について、患者はおよそ4週間ごとに診療所で筋肉内注射を介してフルベストラントを投与される。試験処置を開始してから4週間以内にフルベストラントを投与された患者は、周期1の1日目およびその後およそ4週間ごとにフルベストラントを投与される。
【0117】
患者は、パルボシクリブについての地域の処方情報に従って、GDC-0077およびパルボシクリブを食事と一緒に服用する。試験外来当日、GDC-0077およびパルボシクリブは診療所で投与され、患者は投与前採血の前に絶食(一晩≧8時間)するように指示されるものとする。所与の周期において有害事象により、パルボシクリブの投与が保留された場合、パルボシクリブの投与を再開することができるようになるまで、次の投与周期は開始しないものとする。このように、現行の周期は28日を超えて延長されることができ、患者はGDC-0077を投与されることを継続することができる。次の周期の1日目は、パルボシクリブの投与が再開された時点に相応するものとする。その際、パルボシクリブは、GDC-0077とともに投与されることができる。フルベストラントは、周期の開始とは関係なく、およそ4週間ごとに投与されることを継続する。
【0118】
段階IIの被験者群F(パルボシクリブ、フルベストラント、およびメトホルミンと組み合わせたGDC-0077用量コホート拡大)の周期1で始まる際には、周囲の長さはおよそ28日である。患者は、周期1で始まる1-21日目にパルボシクリブPOを1日1回、周期1の1日目および15日目に診療所で筋肉内注射を介してフルベストラントを投与される。その後の周期(周期≧2)について、患者はおよそ4週間ごとに診療所で筋肉内注射を介してフルベストラントを投与される。試験処置を開始してから4週間以内にフルベストラントを投与された患者は、周期1の1日目およびその後およそ4週間ごとにフルベストラントを投与される。加えて、患者はまた、周期1の1日目から開始されるメトホルミンを500mgの総日用量も投与され、およそ3日(+2日)ごとに500mg増加させ、周期1の15日目まで最大で総日用量が2000mgになるまで耐用される。患者は、周期1の15日目に開始される、割り当てられた用量レベルでGDC-0077を投与される。その後の周期(周期≧2)について、患者は1-28日目にGDC-0077を投与される。
【0119】
患者は、パルボシクリブおよびメトホルミンについての地域の処方情報に従って、GDC-0077、パルボシクリブ、およびメトホルミンを食物と一緒に服用する。試験外来当日、GDC-0077およびパルボシクリブは診療所で投与され、患者は投与前採血の前に絶食(一晩≧8時間)するように指示されるものとする。所与の周期において有害事象により、パルボシクリブの投与が保留された場合、パルボシクリブの投与を再開することができるようになるまで、次の投与周期は開始しないものとする。このように、現行の周期は28日を超えて延長されることができ、患者はGDC-0077およびメトホルミンを投与されることを継続することができる。次の周期の1日目は、パルボシクリブの投与が再開された時点に相応するものとする。その際、パルボシクリブは、GDC-0077およびメトホルミンとともに投与されることができる。フルベストラントは、周期の開始とは関係なく、およそ4週間ごとに投与されることを継続する。
【0120】
実施例3 試験設計
本臨床試験は、非盲検の、多施設の第I相試験であり、乳がんを含む局所進行性または転移性のPIK3CA変異固形腫瘍の患者において、局所進行性または転移性のPIK3CA変異ホルモン受容体陽性(HR+)/ヒト表皮成長因子受容体2陰性(HER2-)乳がんの処置のための標準治療の内分泌標的療法と組み合わせて、単剤として経口投与したGDC-0077の安全性、耐性、および薬物動態を評価するために設計されている。
【0121】
患者は2つの段階で登録される。すなわち、用量漸増段階(段階I)および拡張段階(段階II)である。患者は次の6つの投与計画のうちの1つに割り当てられる。すなわち、単剤としてのGDC-0077(被験者群A)、パルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせたGDC-0077(被験者群B)、レトロゾールと組み合わせたGDC-0077(被験者群C)、フルベストラントと組み合わせたGDC-0077(被験者群D)、パルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせたGDC-0077(被験者群E)、ならびにパルボシクリブ、フルベストラント、およびメトホルミンと組み合わせたGDC-0077(被験者群F)である。被験者群Aの用量漸増コホートにおける周期1の長さは35日であり、他のすべての周期の長さは28日である。
【0122】
段階Iは、3+3用量漸増設計を使用して、乳がんを含む局所進行性または転移性のPIK3CA変異固形腫瘍において単剤として投与されたGDC-0077の安全性、耐性、および薬物動態を評価する。単剤用量漸増におけるGDC-0077の開始用量は6mgである。被験者群Aにおいて少なくとも2つの用量レベルの単剤GDC-0077の用量制限毒性(DLT)評価が完了し、関連するすべての単剤の安全性および薬物動態(PK)データが治験責任医師と徹底的に検討された後、パルボシクリブおよびレトロゾール(被験者群B)またはレトロゾール単独(被験者群C)の標準治療投与計画と組み合わせて投与されたGDC-0077の安全性、耐性、および薬物動態は、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんにおいて同じ3+3用量漸増設計を用いて評価される。パルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせたGDC-0077(被験者群B)の開始用量は3mgであり、GDC-0077単剤用量漸増(被験者群A)における開始用量よりも1用量レベル低い。レトロゾールと組み合わせたGDC-0077(被験者群C)の開始用量は、GDC-0077単剤用量漸増(被験者群A)における6mgの開始用量を超過せず、利用可能なPKおよび安全性のデータに基づいて、被験者群Aについての開始用量よりも低くてよい。用量漸増段階の間、3-6人の患者のコホートを、GDC-0077の漸増用量レベルで評価し、単剤としてのならびにパルボシクリブおよびレトロゾール、またはレトロゾールと組み合わせたGDC-0077についての最大耐量(MTD)または最大投与量(MAD)を決定する。
【0123】
追加のPKおよび安全性のデータ、ならびにGDC-0077の作用機序に関する腫瘍薬力学的(PD)データを取得するために、局所進行性または転移性のPIK3CA変異乳がん(被験者群A)またはPIK3CA変異HR+/HER2-乳がん(被験者群C)の患者は、後述する用量漸増基準に基づいてMTDを超過しないことが示されている用量レベルでバックフィルコホート(段階Iの被験者群AまたはC)に登録することができる。処置開始前および1日1回(QD)の試験処置投与のおよそ2週間後の腫瘍生検は、バックフィルコホートに登録された患者に必要とされる。特定の用量レベルでバックフィルコホートを開くという依頼者の判断は、利用可能なPKおよび安全性のデータに基づいている。バックフィルコホートは、評価される用量レベルごとに最多およそ3-6人の患者を登録することができ、用量漸増で評価されるすべての用量レベルで開いていなくてもよい。処置前または処置中の生検で腫瘍組織が不十分な患者を置き換えるために、追加の患者を登録することができる。用量漸増判断の目的のために、バックフィルコホートに登録された患者は、DLT評価可能な集団の一部として含まれていない。
【0124】
パルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせたGDC-0077についてのMTDまたはMADが確立されると(段階Iの被験者群B)、およそ20人の追加の患者を用量コホート拡大(段階IIの被験者群B)に登録して、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんにおける段階I由来のパルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせてMTD以下またはMAD以下で投与されるGDC-0077の安全性、耐性、薬物動態、および予備抗腫瘍活性をさらに評価することができる。
【0125】
レトロゾールと組み合わせたGDC-0077についてのMTDまたはMADが確立されると(段階Iの被験者群C)、追加の患者を用量コホート拡大(段階IIの被験者群C)において登録して、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんにおける段階I由来のレトロゾールと組み合わせたMTD以下またはMAD以下で投与されるGDC-0077の安全性、耐性、薬物動態、および予備抗腫瘍活性をさらに評価することができる。
【0126】
GDC-0077についてのMTDまたはMADが段階Iの被験者群Cにおいて確立されると、患者を用量コホート拡大(段階IIの被験者群D)に登録して、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんにおけるフルベストラントと組み合わせた段階Iの被験者群Cにおいて決定されるMTD以下またはMAD以下で投与されるGDC-0077の安全性、耐性、薬物動態、および予備抗腫瘍活性を評価することができる。段階IIの被験者群Dでは、登録された最初の6人の患者(安全性についての臨床試験開始前の時間)が、追加の患者を登録する前の処置の初回周期(1-28日目)の間、安全性および耐性について評価される。
【0127】
加えて、GDC-0077についてのMTDまたはMADが段階Iの被験者群Bにおいて確立されると、およそ20人の患者を各々、用量コホート拡張(段階IIの被験者群Eおよび被験者群F)に登録して、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんにおけるパルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせたGDC-0077(段階Iの被験者群Bにおいて決定されるMTD以下またはMAD以下で投与)の安全性、耐性、薬物動態、およびよび抗腫瘍活性を評価することができる。被験者群Fは、肥満患者および糖尿病前症患者を登録し、該患者は、周期1の1日目に開始する抗高血糖薬メトホルミンと、周期1の15日目に開始するGDC-0077とを投与される。肥満患者および糖尿病前症患者は、ボディマス指数(BMI)が≧30kg/m2であるか、またはベースラインでHbA1c≧5.7%をスクリーニングしている患者として定義される。段階IIの被験者群Eおよび被験者群Fでは、合計6人の患者について各コホートにおける最初の3人の患者(安全性についての臨床試験開始前の時間)は、いずれかの被験者群に追加の患者を登録する前の処置の初回周期(1-28日目))の間、安全性および耐性について評価される。
【0128】
本試験は、最大28日間のスクリーニング期間、処置期間、および30日間の安全性経過観察期間または別の抗がん療法の開始のいずれか早い方で構成される。すべての患者は、試験全体を通して、および試験処置の最後の投与後少なくとも30日間、または別の抗がん療法の開始までのいずれか早い方で、有害事象について綿密に監視される。米国国立がん研究所有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events)(NCI CTCAE)第4.0版により、有害事象を等級分類する。
【0129】
GDC-0077のPK特性を特徴づけるために、投与前後のさまざまな時点で血液試料を採取する。
【0130】
治験責任医師が判断した許容され得ない毒性および明白な疾患の進行がない場合、患者は本試験が終了するまでGDC-0077を用いた処置を継続することができる。
【0131】
用量漸増段階:患者は、3つの被験者群にわたって用量漸増段階(段階I)に登録される。少なくとも3人の患者各々からなるコホートを、単剤としてまたは後述の用量漸増則に従った組み合わせ投与計画の一部として、GDC-0077の用量を漸増させて処置する。すべての用量漸増コホートへの最初の2人の患者の登録は、少なくとも24時間離れている。患者は、DLT評価ウィンドウ中に有害事象について綿密に監視される。段階Iの被験者群A(GDC-0077単剤)についてのDLT評価ウィンドウを、周期1の1-35日目として定義する。段階Iの被験者群B(パルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせたGDC-0077)または被験者群C(レトロゾールと組み合わせたGDC-0077)についてのDLT評価ウィンドウを、周期1の1-28日目として定義する。DLTとして特定された有害事象は、以下に定義するように、依頼者に24時間以内に報告される。
【0132】
DLT以外の理由でDLT評価ウィンドウを完了する前に本試験を中止した患者は、用量漸増決定およびMTD評価またはMAD評価にとって無価値と見なされ、同じ用量レベルの追加の患者に置き換えられる。段階Iの被験者群Aにおいて、DLT以外の理由でDLT評価ウィンドウの間、GDC-0077の3回を超える用量を取り損なった患者も置き換えられる。DLT以外の理由でDLT評価ウィンドウ中にGDC-0077もしくはレトロゾールの3回を超える用量を取り損なった患者(段階Iの被験者群Bまたは被験者群C)、またはDLT以外の理由でDLT評価ウィンドウ中にパルボシクリブの7回を超える用量を取り損なった患者(段階Iの被験者群B)も置き換えられる。DLT評価ウィンドウ中に、DLTの評価を混乱させる支持療法(以下にDLT定義の一部として説明される支持療法は含まない)を受ける患者は、医学的監視者の裁量で置き換えられることがある。パルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせたGDC-0077のDLTを定義するために、患者は、DLT評価ウィンドウ中に成長因子サポートを予防上処方されないものとする。
【0133】
拡大段階:多くの患者が拡大段階(段階II)に登録される。段階IIの被験者群Bでは、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの患者を、段階Iの被験者群Bにおいて決定したパルボシクリブおよびレトロゾールと組み合わせたMTD以下またはMAD以下のGDC-0077で処置し、追加の安全性、耐性、およびPKのデータ、ならびに臨床的な活性の予備証拠を取得する。段階IIの被験者群Cでは、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの患者を、レトロゾールと組み合わせた段階Iの被験者群Cにおいて決定したMTD以下またはMAD以下のGDC-0077で処置し、追加の安全性、耐性、およびPKのデータ、ならびに臨床的な活性の予備証拠を取得する。
【0134】
段階IIの被験者群Dでは、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの患者を、フルベストラントと組み合わせた段階Iの被験者群Cにおいて決定したMTD以下またはMAD以下のGDC-0077で処置し、追加の安全性、耐性、およびPKのデータ、ならびに臨床的な活性の予備証拠を取得する。段階IIの被験者群Dでは、登録された最初の6人の患者(安全性についての臨床試験開始前の時間)が、追加の患者を登録する前の処置の初回周期(1-28日目)の間、安全性および耐性について評価される。
段階IIの被験者群Eでは、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの患者は、パルボシクリブおよびフルベストラントと組み合わせたGDC-0077(段階Iの被験者群Bにおいて決定したMTD以下またはMAD以下のGDC-0077)を用いて処置し、追加の安全性、耐性、およびPKのデータ、ならびに臨床的な活性の予備証拠を取得する。被験者群Eと被験者群Fとの間で合計6人の患者について登録された最初の3人の患者(安全性についての臨床試験開始前の時間)は、追加の患者を登録する前の処置の初回周期(1-28日目)の間、安全性および耐性について評価される。
【0135】
段階IIの被験者群Fにおいて、局所進行性または転移性のPIK3CA変異HR+/HER2-乳がんの肥満患者または糖尿病前症患者は、パルボシクリブ、フルベストラント、およびメトホルミンと組み合わせたGDC-0077(MTD以下またはMAD以下のGDC-0077)を用いて処置し、追加の安全性、耐性、PKのデータ、ならびに臨床的な活性の予備証拠を取得する。肥満患者および糖尿病前症患者は、BMIが≧30kg/m2であるかまたは、ベースラインでHbA1c≧5.7%をスクリーニングしている患者として定義される。パルボシクリブ、フルベストラント、およびメトホルミンは、周期1の1日目に開始され、GDC-0077は、周期1の15日目に開始される。被験者群Eと被験者群Fとの間で合計6人の患者について登録された最初の3人の患者(安全性についての臨床試験開始前の時間)は、追加の患者を登録する前の処置の初回周期(1-28日目)の間、安全性および耐性について評価される。
【0136】
最初の拡大段階の用量レベルでの等級3もしくは4の毒性または他の許容され得ない毒性の頻度が、組み合わせ投与計画における選択したGDC-0077の用量の安全性または耐性が許容され得ないことを示唆している場合、その用量レベルでの自然増加は停止し、試験処置を継続する患者は、GDC-0077用量を低減させることができる。次に、より低い用量レベルで患者を拡大コホートに登録することを検討する。
【0137】
実施例4 統計的手法
一次解析:安全性は、有害事象の要約、臨床検査結果の変化、およびバイタルサインの変化を経て評価することができる。いずれかの量の試験処置を受けているすべての患者は、安全性の解析に含まれる。
【0138】
用量が変更された患者の割合を含むGDC-0077曝露は、割り当てられた用量レベルおよびコホートによって要約される。
【0139】
収集されたすべての有害事象データは、試験サイト、患者番号、および周期に関して列挙される。1日目の処置時または処置後に発生するすべての有害事象は、マップされた用語、適切なシソーラスレベル、およびNCI CTCAE第4.0版毒性等級によって要約される。加えて、死亡を含むすべての重篤な有害事象は、個別に列挙され、要約される。
【0140】
QT/QTcデータは、E14ガイドラインを使用して解析され、中心傾向の解析、カテゴリー解析、薬物曝露とQT/QTc間隔の変化との関連性の解析、およびECG波形の形態学的解析を含むことができる。
【0141】
標本の大きさの決定:最終的な解析は、患者の中止または試験の中止のいずれか早い方を経て収集された患者データに基づいている。概して、データは必要に応じて要約され、標本の大きさが小さなときは、表の代わりに一覧表が使用される。連続変数は、平均、標準偏差、中央値、および範囲を使用して要約され、カテゴリー変数は、計数および百分率を使用して要約される。
【0142】
本試験は、安全性が評価可能な集団における予備的な安全性、PK、PD、および活性の情報を取得することが企図されている。標本の大きさは、いかなる明示的な検出力およびI型の誤差を考慮することを反映していない。
【0143】
上述の発明は、理解を明確にする目的のために例証および実施例によって幾分詳細に説明したが、発明を実施するための形態および実施例は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されないものとする。本明細書に引用される全ての特許および科学文献の開示は、その全体が参照により明白に組み込まれる。
【国際調査報告】