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特表2022-504487免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たない新規三重らせんポリペプチド及び同ポリペプチドの使用
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  • 特表-免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たない新規三重らせんポリペプチド及び同ポリペプチドの使用 図1
  • 特表-免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たない新規三重らせんポリペプチド及び同ポリペプチドの使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たない新規三重らせんポリペプチド及び同ポリペプチドの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/22 20060101AFI20220105BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C07K1/22
C07K14/00 ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519170
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(85)【翻訳文提出日】2021-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2019081078
(87)【国際公開番号】W WO2020099442
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】18205679.6
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19167107.2
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513311653
【氏名又は名称】ナフィゴ プロテインズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Navigo Proteins GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ハウプツ,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジワーグ,マドレン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA20
4H045BA41
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明はタンパク質工学とタンパク質精製の分野に関連し、特に、三重らせん構造を有し、且つ、免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たない新規ポリペプチドに関連する。本発明はさらにアフィニティークロマトグラフィーなどの技術用途並びに治療及び診断における前記新規非Fc結合性ポリペプチドの使用に関連する。また、本発明は、三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる方法に関連する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三重らせん構造を有するポリペプチドであって、ヘリックス1、ヘリックス2、及びヘリックス3がそれらの位置に関してそれぞれ配列番号1の位置7~19、位置23~37、及び位置40~56に対応し、前記ポリペプチドが
(a)前記配列番号1の位置13に対応する位置にアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)から選択される酸性アミノ酸を含み、並びに
(b)前記配列番号1の位置31に対応する位置にアルギニン(R)、リシン(K)、及びヒスチジン(H)のうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸を含む、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たない、請求項1に記載の三重らせん構造を有するポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが
(a)前記配列番号1の位置13に対応する位置にアスパラギン酸(D)を含み、及び/又は
(b)前記配列番号1の位置31に対応する位置にアルギニン(R)を含む、
請求項1又は2に記載の三重らせん構造を有するポリペプチド。
【請求項4】
前記配列番号1の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のうちの1か所以上にセリン(S)がさらに含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の三重らせん構造を有するポリペプチド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項6】
標的タンパク質に対する結合親和性を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の三重らせん構造を有するポリペプチドを作製する方法であって、
(a)請求項1~4のいずれか一項に記載の1種類以上のポリペプチドを提供する工程、
(b)標的タンパク質と(a)の1種類以上のポリペプチドを接触させる工程、
(c)前記標的タンパク質に結合した請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む複合体を特定する工程、
(d)前記標的タンパク質に結合可能な請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドを得る工程
を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項5に記載の融合タンパク質、又は請求項6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチドを含む組成物。
【請求項8】
技術用途に使用される請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項5に記載の融合タンパク質、又は請求項6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチド。
【請求項9】
アフィニティークロマトグラフィーに使用される請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項5に記載の融合タンパク質、又は請求項6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチド。
【請求項10】
医薬品、診断薬、及び/又は予後予測薬として使用される請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項5に記載の融合タンパク質、又は請求項6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチド、又は請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
免疫グロブリンFcドメインに対する三重らせん構造を有するポリペプチドの結合親和性を低下させる方法であって、
(a)位置に関してそれぞれ配列番号1の位置7~19及び位置23~37に対応するヘリックス1及びヘリックス2についてヘリックス1及びヘリックス2内の少なくとも2か所のアミノ酸位置を変異形成のために選択することであって、配列番号1のアミノ酸配列内の位置13及び位置31に対応する位置を変異形成のための前記少なくとも2か所のアミノ酸位置として選択すること、並びに
(b)変異形成のために選択された前記少なくとも2か所のアミノ酸位置に変異形成を実施することであって、配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)から選択される酸性アミノ酸へ置換すること、及び配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン(R)、リシン(K)、及びヒスチジン(H)のいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸へ置換することを含む前記変異形成を実施すること
を含む、方法。
【請求項12】
前記変異が配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸(D)へ置換すること、及び配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン(R)へ置換することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変異が配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸のうちの1つ以上をセリン(S)へ置換することをさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項6及び11~13のいずれか一項に記載の方法に従って調製される三重らせん構造を有するポリペプチド。
【請求項15】
請求項1~4及び14のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項5に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンパク質工学とタンパク質精製の分野に関連し、特に、三重らせん構造を有し、且つ、免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たない新規ポリペプチドに関連する。本発明はさらにアフィニティークロマトグラフィーなどの技術用途並びに治療及び診断における前記新規非Fc結合性ポリペプチドの使用に関連する。また、本発明は、三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
組換え技術により作製されたポリペプチドの下流処理には宿主細胞内で発現させたポリペプチドの精製が含まれることが一般的である。この精製処理には1つ以上のクロマトグラフィー工程が含まれることが典型的であり、アフィニティークロマトグラフィーが多くの場合に捕捉工程として用いられる。アフィニティークロマトグラフィーは純粋で且つ濃縮された産物が一回の工程で得られる簡単且つ堅牢な方法であるが、効率的且つ標的特異的なタンパク質精製を可能にする先進的なツールが、アフィニティークロマトグラフィーなどの技術用途又は治療及び診断における使用に適切な新規分子の開発と同様に、現在では必要とされている。
【0003】
本発明は、三重らせん構造を有し、且つ、免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たない新規ポリペプチドを提供することによりこの必要性に応える。これらの新規ポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィーにおける正確な捕捉をタンパク質の非Fc依存性精製によって可能にするため、特に有利である。さらに、免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を持たないこれらの新規三重らせんポリペプチドにより、技術用途だけでなく治療及び診断にも有用である、非常に選択的な標的特異的分子の特定を可能にするライブラリーの作製が可能になる。この大要はただの例示であり、したがって本発明により解決される全ての問題を必ずしも説明するものではない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は以下の項目1~15を提供するが、特にそれらの項目に限定されるものではない。
【0005】
1.三重らせん構造を有するポリペプチドであって、ヘリックス1、ヘリックス2、及びヘリックス3がそれらの位置に関してそれぞれ配列番号1の位置7~19、位置23~37、及び位置40~56に対応し、前記ポリペプチドが
(a)前記配列番号1の位置13に対応する位置にアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)から選択される酸性アミノ酸を含み、並びに
(b)前記配列番号1の位置31に対応する位置にアルギニン(R)、リシン(K)、及びヒスチジン(H)のうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸を含む、
前記ポリペプチド。
【0006】
2.前記ポリペプチドが表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たない、項目1に記載の三重らせん構造を有するポリペプチド。
【0007】
3.前記ポリペプチドが
(a)前記配列番号1の位置13に対応する位置にアスパラギン酸(D)を含み、及び/又は
(b)前記配列番号1の位置31に対応する位置にアルギニン(R)を含む、
項目1又は2に記載の三重らせん構造を有するポリペプチド。
【0008】
4.前記配列番号1の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のうちの1か所以上にセリン(S)がさらに含まれる、項目1~3のいずれか一項に記載の三重らせん構造を有するポリペプチド。
【0009】
5.項目1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む融合タンパク質。
【0010】
6.標的タンパク質に対する結合親和性を有する項目1~4のいずれか一項に記載の三重らせん構造を有するポリペプチドを作製する方法であって、
(a)項目1~4のいずれか一項に記載の1種類以上のポリペプチドを提供する工程、
(b)標的タンパク質と(a)の1種類以上のポリペプチドを接触させる工程、(c)前記標的タンパク質に結合した項目1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む複合体を特定する工程、
(d)前記標的タンパク質に結合可能な項目1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドを得る工程
を含む、方法。
【0011】
7.項目1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は項目5に記載の融合タンパク質、又は項目6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチドを含む組成物。
【0012】
8.技術用途に使用される項目1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は項目5に記載の融合タンパク質、又は項目6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチド。
【0013】
9.アフィニティークロマトグラフィーに使用される項目1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は項目5に記載の融合タンパク質、又は項目6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチド。
【0014】
10.医薬品、診断薬、及び/又は予後予測薬として使用される項目1~4のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は項目5に記載の融合タンパク質、又は項目6に記載の方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有するポリペプチド、又は項目7に記載の組成物。
【0015】
11.免疫グロブリンFcドメインに対する三重らせん構造を有するポリペプチドの結合親和性を低下させる方法であって、
(a)位置に関してそれぞれ配列番号1の位置7~19及び位置23~37に対応するヘリックス1及びヘリックス2についてヘリックス1及びヘリックス2内の少なくとも2か所のアミノ酸位置を変異形成のために選択することであって、配列番号1のアミノ酸配列内の位置13及び位置31に対応する位置を変異形成のための前記少なくとも2か所のアミノ酸位置として選択すること、並びに
(b)変異形成のために選択された前記少なくとも2か所のアミノ酸位置に変異形成を実施することであって、配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)から選択される酸性アミノ酸へ置換すること、及び配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン(R)、リシン(K)、及びヒスチジン(H)のいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸へ置換することを含む前記変異形成を実施すること
を含む、方法。
【0016】
12.前記変異が配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸(D)へ置換すること、及び配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン(R)へ置換することを含む、項目11に記載の方法。
【0017】
13.前記変異が配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸のうちの1つ以上をセリン(S)へ置換することをさらに含む、項目11又は12に記載の方法。
【0018】
14.項目6及び11~13のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、又は得られる、又は調製される三重らせん構造を有するポリペプチド。
【0019】
15.項目1~4及び14のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は項目5に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0020】
本発明の概要は限定するものではなく、本発明の他の態様及び実施形態が以下の説明、例、及び図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、免疫グロブリンFc領域、特にIgG Fc領域に対する結合親和性を持たない配列番号9のポリペプチドを示す図である。SPR分光法(BIAcore)を用いる無標識相互作用アッセイによる分析。実線=Fc結合性タンパク質(配列番号17);破線=配列番号9のポリペプチド。屈折率の変化をリアルタイムで測定し、時間[秒]に対する応答単位又は共鳴単位[RU]としてプロットした。
図2図2は、配列番号16のFc結合性タンパク質(実線)に対して比較した、免疫グロブリンFc領域、特にIgG Fc領域に対する結合親和性を持たない配列番号1、2、3、5、7のポリペプチド(破線)を示す図である。SPR分光法(BIAcore)を用いる無標識相互作用アッセイによる分析。全ての濃度=1μM。屈折率の変化をリアルタイムで測定し、時間[秒]に対する応答単位又は共鳴単位[RU]としてプロットした。
図3図3は、配列番号16のIg結合性タンパク質又は野生型プロテインAドメインC若しくはドメインA若しくはドメインZに対して比較した、免疫グロブリンFc領域、特にIgG Fc領域に対する結合親和性を持たない配列番号1、2、3、5、7のポリペプチド(破線)を示す図である。SPR分光法(BIAcore)を用いる無標識相互作用アッセイによる分析。全ての濃度=10μM。屈折率の変化をリアルタイムで測定し、時間[秒]に対する応答単位又は共鳴単位[RU]としてプロットした。
図4図4は、特異的標的結合特性(BP)を有するプロテインA誘導体に融合した配列番号1(非Fc結合性タンパク質)の融合タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー後の量の改善を示す図である。製造業者の指示に従ってサンドイッチ免疫アッセイによりこれらの結合性タンパク質又は融合タンパク質の回収を定量化した。BP1はCysとHis10を有する結合性タンパク質1であり、BP2はCysとHis10を有する結合性タンパク質2であり、BP3はCysとHis10を有する結合性タンパク質2であり、ヒュージョン1は配列番号1-BP2-配列番号1という融合タンパク質であり、ヒュージョン2は配列番号1-BP1という融合タンパク質であり、ヒュージョン3はBP1-配列番号1という融合タンパク質であり、ヒュージョン4は配列番号1-BP3という融合タンパク質であり、ヒュージョン5はBP3-配列番号1という融合タンパク質である。この回収率は内部標準に対する測定シグナルの関係を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、表面プラズモン共鳴(SPR)等によって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たない、三重らせん構造を有する新規ポリペプチドを提供する。本発明の前記ポリペプチドはタンパク質工学とタンパク質精製の分野の欠落を埋める先進的且つ強力なツールである。特に、前記新規ポリペプチドは前記の免疫グロブリンFc領域に対する結合親和性の変化によって有利な効果をタンパク質精製に及ぼす。具体的には、既知のIg結合性タンパク質に対して比較すると、本発明により提供される前記新規ポリペプチドのためにFc融合タンパク質又は抗体自体がFcドメインからの干渉を受けず、標的タンパク質として利用可能になる。したがって、本発明の新規ポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィーにおける正確な捕捉を標的タンパク質の非Fc依存的精製によって可能にするため、特に有利である。この免疫グロブリンFcドメインに対する(SPRによって測定される)検出可能な結合親和性の欠如は、ヘリックス1、ヘリックス2、及びヘリックス3がそれらの位置に関してそれぞれ配列番号1の位置7~19、位置23~37、及び位置40~56に対応する場合、三重らせん構造を有するポリペプチドがヘリックス1内でアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)から選択される酸性アミノ酸を配列番号1の位置13に対応する位置に含み、且つ、ヘリックス2内でアルギニン(R)、リシン(K)、及びヒスチジン(H)のうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸を配列番号1の位置31に対応する位置に含むときに実現可能である。
【0023】
本発明の新規ポリペプチドは特に効率的且つ標的特異的なタンパク質精製を実現するだけでなく、新しいライブラリー設計の考え方に基づいた新しい価値のある分子の特定も可能にする。特に、三重らせん構造を有するこれらの新規非Fc結合性ポリペプチドにより、技術用途だけでなく治療及び診断にも有用である非常に選択的な標的特異的分子の特定を可能にするライブラリーの作製が可能になる。本発明の非Fc結合性ポリペプチドにより新しいライブラリー設計が可能になり、そのライブラリー設計は本発明者らによって特定される特定のアミノ酸置換に基づいており、且つ、それにより明確に実験上の選択肢が広がり、結合性タンパク質の特定のために設計された選別ストラテジーの成功率が上昇し得る。例えば、ライブラリースキャフォールドが適切な方法、例えばSPRによって測定されるような検出可能なFc結合親和性を持たないことによりFc部分に対する偽陽性ヒットが少なくなり、このようなライブラリーを選別及びスクリーニングの方法においてFcドメインと融合した標的タンパク質に対して適用することができる。実際には、それぞれ標的特異性が変化しているが、それでも特にSPRなどの適切な方法によって測定されるような検出可能なFc結合親和性を持たないことをさらに特徴とするより広範囲の新規標的特異的結合性分子のセットがこれにより作製される。
【0024】
本発明をさらに詳細に説明する前に本発明は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書において使用される用語法は単に特定の態様及び実施形態を説明することを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、それは添付されている特許請求の範囲によって反映されることも理解されたい。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語と科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。これにはタンパク質工学とタンパク質精製の分野の当業者が含まれるが、アフィニティークロマトグラフィーなどの技術用途並びに治療及び診断に使用される新規標的特異的結合分子の開発分野の当業者も含まれる。
【0025】
本明細書において使用される用語は「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」、Leuenberger,H.G.W、Nagel,B.及びKolbl,H.編、(1995年)、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 バーゼル、スイスに記載されているように定義されることが好ましい。
【0026】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈から別途必要とされない限り、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変異体は言及された整数若しくは工程、又は整数群若しくは工程群を内包するが、他のいかなる整数若しくは工程、又は整数群若しくは工程群も除外しないことを意味すると理解される。「含む(comprise(s))」又は「含む(comprising)」という用語は、「から成る(consists of)」又は「から成る(consisting of)」という限定が理由及び範囲を問わず必要とされる場合であればこのような限定を包含する。
【0027】
幾つかの文書(例えば、特許、特許出願、科学論文、製造業者の明細書、指示書、GenBank配列登録受託番号等)が本出願を通して引用される場合がある。本明細書中の何物も、本発明の日時が先行発明に基づいてこのような開示よりも前であるという資格がないと認めたものであると解釈されてはならない。本明細書中で引用される文書の中の幾つかは、「参照により援用される」と述べられる場合がある。このような援用された参照文献の定義又は教示と本明細書中に列挙されている定義又は教示との間で矛盾がある場合には本出願の文言が優先される。
【0028】
本明細書において参照される全ての配列は添付されている配列表において開示されており、その配列表はその全内容及びその開示によって本出願の開示内容の一部を形成している。
【0029】
本出願で使用される重要な用語の一般的な定義
「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語はペプチド結合で連結されている2個以上のアミノ酸からなるあらゆる鎖を指し、特定の長さの産物を指すわけではない。したがって、「ペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2個以上のアミノ酸からなる鎖を指すために使用される他のあらゆる用語は「ポリペプチド」の定義の中に含まれ、「ポリペプチド」という用語はこれらの用語のいずれかの代わりに、又はそれと互換的に使用される場合がある。「ポリペプチド」という用語には例えばグリコシル化のような当技術分野においてよく知られているポリペプチドの翻訳後修飾産物を指すことも意図されている。
【0030】
「三重らせん構造」又は「三重ヘリックス構造」という用語は、三重ヘリックスバンドルを有するポリペプチドであって、少なくとも48アミノ酸、好ましくは少なくとも50アミノ酸、より好ましくは少なくとも58アミノ酸、及びさらにより好ましくは58アミノ酸を含み、アミノ酸残基7~19を含むヘリックス1、アミノ酸残基23~37を含むヘリックス2、及びアミノ酸残基40~56を含むヘリックス3を有する前記ポリペプチドを指す。具体的には、ヘリックス1、ヘリックス2、及びヘリックス3はそれらの位置に関して基本的にそれぞれ配列番号1の位置7~19、位置23~37、及び位置40~56に対応する。様々な実施形態において、三重らせん構造を有する本ポリペプチドは56アミノ酸、57アミノ酸、又は58アミノ酸から構成され、58アミノ酸から構成されることが好ましい。
【0031】
したがって、本発明により提供されるポリペプチドは3つのらせん構造を含み、ヘリックス1、ヘリックス2、及びヘリックス3は配列番号1の配列のアミノ酸位置に対して相対的な以下のアミノ酸位置を含む。すなわち、ヘリックス1は基本的に配列番号1のアミノ酸配列の位置7~19に対応するアミノ酸位置であり、ヘリックス2は基本的に配列番号1のアミノ酸配列の位置23~37に対応するアミノ酸位置であり、ヘリックス3は基本的に配列番号1のアミノ酸配列の位置40~56に対応するアミノ酸位置である。本明細書は、本発明により提供される三重らせん構造を有するポリペプチドの実施形態であって、ヘリックス1がその位置に関して基本的に配列番号1のアミノ酸配列の位置6~19に対応し、ヘリックス2がその位置に関して基本的に配列番号1のアミノ酸配列の位置23~37に対応し、且つ、ヘリックス3がその位置に関して基本的に配列番号1のアミノ酸配列の位置40~56に対応する前記実施形態をさらに開示する。
【0032】
本明細書において開示されるように、本発明の三重らせん構造を有するポリペプチドは三重らせん構造を有する折り畳みポリペプチドと記載される場合もある。本明細書においてさらに開示されるように、本発明の三重らせん構造を有するポリペプチドは三重ヘリックスバンドル構造に折り畳まれるポリペプチドと記載される場合もある。
【0033】
「集合体」及び「ライブラリー」という用語は本明細書において互換的に使用される場合がある。ライブラリーはポリペプチド又はポリヌクレオチドの集合体であってよい。言い換えると、このライブラリーはポリペプチド又は核酸分子(ポリヌクレオチド)の集合体又は混合物、又は複数のポリペプチド若しくは核酸分子(ポリヌクレオチド)という形をとる場合がある。ライブラリーは変異体のコレクションであってよい。
【0034】
「改変」又は「アミノ酸改変」という用語はポリペプチド配列内の特定の位置におけるアミノ酸の置換、欠失、又は挿入を指し、置換は別のアミノ酸による置換を意味する。公知の遺伝コード、及び組換えDNA技術と合成DNA技術を考慮すると当業者はこのようなアミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築できる。
【0035】
本明細書において使用される「変異体」又は「誘導体」という用語は、少なくとも1か所のアミノ酸置換、欠失、又は挿入によって別のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を含む。本発明の「変異体」という用語は例えば配列番号1と比較すると最大で20アミノ酸の置換がある配列番号1に基づくポリペプチドを指す場合がある。本発明の変異体は本明細書のどこかで定義されるような三重ヘリックスモチーフを特徴とする。幾つかの実施形態では配列番号1のポリペプチドの変異体は、配列番号1のアミノ酸配列と比べて最大で6アミノ酸残基の欠失をN末端に含み、及び/又は最大で4アミノ酸残基の欠失をC末端に含む場合がある。
【0036】
「Fc領域」及び「Fcドメイン」という用語は本明細書において互換的に使用される場合がある。Fc領域は、免疫グロブリン、特にFc受容体と呼ばれる細胞表面受容体等と相互作用する抗体の尾部領域である。したがって、このFc領域又はFcドメインは免疫グロブリン、特に抗体のFc領域又はFcドメインを意味する。様々な実施形態において、このFc領域はヒトIgG、マウスIgG、ラットIgG、ヤギIgG、ウシIgG、モルモットIgG、及びウサギIgGを含む哺乳類IgG(抗体)に由来する。このFc領域はヒトIgM又はヒトIgAに由来してもよい。様々な実施形態において、このFc領域はヒトIgG(抗体)、例えばヒトIgG(抗体)、ヒトIgG(抗体)、又はヒトIgG(抗体)に由来し、ヒトIgG(抗体)に由来することがさらにより好ましい。様々な実施形態において、このFc領域は配列番号18又は配列番号19のアミノ酸配列を有するヒトIgG Fc領域、又は配列番号18若しくは配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその変異体のことを意味する。
【0037】
本明細書において使用される「標的」又は「標的タンパク質」という用語は特定の結合性タンパク質によって認識される抗原又はエピトープを有するタンパク質又はペプチド又はそれらの断片等を指す。本明細書に記載される場合、「Fc結合」は高い選択性と親和性を持って大半のIgGのFc領域と相互作用することを意味すると考えられてよい。この結合部位は、Fc領域のCH2ドメインとCH3ドメインとの間のヒンジ領域に局在するコンセンサス結合部位として知られる保存領域中に存在する。
【0038】
本明細書に記載される場合、「非Fc結合性ポリペプチド」はFc結合が無いポリペプチド、すなわち以下に記載されるような適切な方法、例えばSPR分析によって測定されたときにIgGのFc領域との検出可能な相互作用が無いポリペプチドを指す。
【0039】
「結合親和性」及び「結合活性」という用語は本明細書において互換的に使用される場合があり、それらの用語は本発明のポリペプチドが別のタンパク質、ペプチド、又はそれらの断片若しくはドメインに結合する能力のことを指す。結合親和性は平衡解離定数(K)によって測定及び報告されることが典型的であり、これは二分子間相互作用の強度を評価及び順位付けするために使用される。結合親和性及び解離定数は定量的に測定され得る。結合親和性を決定するための方法は当業者によく知られており、例えば以下の方法、すなわち表面プラズモン共鳴(SPR)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、結合平衡除外分析(KinExAアッセイ)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、フローサイトメトリー、蛍光分光法、等温滴定熱量測定(ITC)、超遠心分析法、放射免疫アッセイ(RIA又はIRMA)、及び強化化学発光法(ECL)から選択可能である。典型的には、解離定数Kは20℃台と30℃台との間の温度で決定される。別途特に指示されていない場合、本明細書において列挙されるK値はSPRにより25℃で決定されている。SPRによって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たないポリペプチドは、SPRにより25℃で測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たないポリペプチドを意味する。最も広範に使用されているSPRベースの系はBIAcore AB社製のBIAcoreである。本発明の様々な実施形態において、免疫グロブリンFcドメインへの結合親和性はBIAcore SPRシステムによって決定される場合がある。様々な実施形態において、前記分析物の濃度は1μMである(図1及び図2参照)。他の様々な実施形態において、前記分析物の濃度は10μMである(図3参照)。したがって、本発明の様々な実施形態において、本発明の前記ポリペプチドはSPRによって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を有しておらず、その場合にSPRアッセイにおける前記分析物の濃度は1μMであり、結合親和性は25℃で決定されることが好ましい。本発明の他の様々な実施形態において、本発明の前記ポリペプチドはSPRによって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を有しておらず、その場合にSPRアッセイにおける前記分析物の濃度は10μMであり、結合親和性は25℃で決定されることが好ましい。Ig Fcドメインに対する結合親和性は配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチドを参照して測定される場合があり(例えば図1参照)、又は代わりに配列番号16のアミノ酸配列を有するポリペプチドを参照して測定される場合がある(例えば図2又は図3参照)。配列番号16の配列と配列番号17の配列は以下のように位置1、位置11、位置35、及び位置42で異なる。すなわち、配列番号16は1l、11A、35R、42Lであり、配列番号17は1N、11S、35K、42Kである。あるいは、Fc結合親和性はいずれかのプロテインA野生型ドメイン又はその誘導体、例えば、ドメインC(配列番号20)又はドメインA(配列番号21)又はドメインZ(配列番号22)を参照して決定され得る。例えば、図3を参照されたい。
【0040】
「融合タンパク質」という用語は、少なくとも第1のタンパク質が少なくとも第2のタンパク質に遺伝的に連結されているものを含むタンパク質を指す。融合タンパク質は、元々別個のタンパク質をコードする2つ以上の遺伝子を連結することによって作製される。したがって、融合タンパク質は、単一の直鎖状ポリペプチドとして発現する同一の、又は異なるタンパク質からなる多量体を含む場合がある。
【0041】
本明細書において使用される場合、「リンカー」という用語は少なくとも2種類の他の分子を共有結合する分子をその広義で指す。
【0042】
「アミノ酸配列同一性」という用語は2種類以上のタンパク質のアミノ酸配列の同一性(又は差異)の定量比較を指す。基準ポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、そして最大パーセント配列同一性を達成するために必要であればギャップを導入した後にこの基準ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一の、配列内のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。この配列同一性を決定するため、クエリータンパク質の配列を基準タンパク質又はポリペプチド、例えば配列番号1のポリペプチドの配列に対して整列させる。配列整列の方法は当技術分野においてよく知られている。例えば、配列番号1等のアミノ酸配列と比較して任意のポリペプチドのアミノ酸配列同一性の程度を決定するためには自由に利用可能なSIM Local類似性プログラムが用いられることが好ましい(Huang及びWebb Miller著、(1991年)Advances in Applied Mathematics誌、第12巻:337~357頁)。多重整列分析にはClustalWが使用可能である(Thompsonら著、(1994年)Nucleic Acids Res.誌、第22巻:4673~4680頁)。
【0043】
本発明の実施形態の詳細な説明
本発明の新規ポリペプチドは、例えばSPRによって測定されたときに免疫グロブリンFcドメインに対して検出可能な結合親和性を示さない。この免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性の欠如は、ヘリックス1、ヘリックス2、及びヘリックス3がそれらの位置に関して基本的にそれぞれ配列番号1の位置7~19、位置23~37、及び位置40~56に対応する場合、三重らせん構造を有するポリペプチドがヘリックス1内でアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)から選択される酸性アミノ酸を配列番号1の位置13に対応する位置に含み、且つ、ヘリックス2内でアルギニン(R)、リシン(K)、及びヒスチジン(H)のうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸を配列番号1の位置31に対応する位置に含むときに実現可能である。以下の表1は、検出可能な免疫グロブリンFc結合が無い三重ヘリックスポリペプチドの例を示している。
【0044】
【0045】
以下の表2は、Fc結合を生じさせない三重ヘリックスポリペプチド内の特定のアミノ酸をまとめている。位置10、位置13、位置14、位置31、及び位置35は配列番号1内の位置に相当する。Dはアスパラギン酸であり、Rはアルギニンであり、Sはセリンである。
【0046】
【0047】
したがって、本発明は、非Fc結合性ポリペプチドであって、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される酸性アミノ酸を配列番号1の位置13に対応する位置に含み、且つ、アルギニン、リシン、及びヒスチジンのうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸を配列番号1の位置31に対応する位置に含む前記ポリペプチドを提供する。
【0048】
位置10、位置14、位置35の特定のアミノ酸による構造的特徴
本発明の様々な実施形態において、本明細書において開示される非Fc結合性ポリペプチドは、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10、位置14、及び/又は位置35に対応する位置のうちの1つ以上に極性側鎖を有するアミノ酸残基を含むこと、好ましくはセリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、ヒスチジン(H)から選択されるアミノ酸残基を含むことをさらに構造的な特徴とする。様々な実施形態において、本ポリペプチドは、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10若しくは位置14若しくは位置35、又は位置10及び位置14、又は位置10及び位置35、又は位置14及び位置35、又は位置10、位置14、及び位置35に対応する位置に極性側鎖を有するアミノ酸残基を含むことをさらに構造的な特徴とする。好ましくは、本明細書において開示される前記非Fc結合性ポリペプチドは、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のうちの1つ以上にセリンを含むことをさらに構造的な特徴とする。幾つかの実施形態では本明細書において開示される前記非Fc結合性ポリペプチドは、酸性アミノ酸を配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置に含み、且つ、塩基性アミノ酸を配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置に含むことに加え、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置の全てにセリンを含むことをさらに構造的な特徴とする。
【0049】
変異体
本明細書は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、23、24、25、26、27、28、29、及び30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有するポリペプチドであって、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される酸性アミノ酸を配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置に含み、且つ、アルギニン、リシン、及びヒスチジンのうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸を配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置に含む前記ポリペプチドであり、例えばSPRによって測定されたときにIgG Fcに対する検出可能な結合活性を有しないことを条件とする前記ポリペプチドも開示する。
【0050】
様々な好ましい実施形態において、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、23、24、25、26、27、28、29、及び30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有することによって規定される本発明のどの非Fc結合性ポリペプチドも、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ配列に対して少なくとも71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、又は79%の配列同一性を有する場合がある。その他の実施形態では本非Fc結合性ポリペプチドは配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。幾つかの実施形態では本非Fc結合性ポリペプチドは配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、又は88%の配列同一性を有する。好ましい実施形態では本非Fc結合性ポリペプチドは配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも89%の配列同一性を有する。他の実施形態では本非Fc結合性ポリペプチドは配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%又は95%の配列同一性を有する。
【0051】
配列番号1~15及び23~30の非Fc結合性ポリペプチドの全変異体は、本明細書のどこかで定義されるような三重らせん構造を有し、位置13の酸性アミノ酸と位置31の塩基性アミノ酸を有し、且つ、免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たず、好ましくは例えば表面プラズモン共鳴によって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たない。
【0052】
多量体
本発明の1つの実施形態では本非Fc結合性タンパク質は相互に結合した1コピー、2コピー、3コピー、又は4コピー、好ましくは1コピー又は2コピーの非Fc結合性タンパク質を含む。すなわち、本非Fc結合性タンパク質は単量体、二量体、三量体、又は四量体等であり得る。本発明の多量体は人工的に作製される融合タンパク質であり、一般的に当業者によく知られている組換えDNA技術により作製される融合タンパク質である。本明細書において開示される非Fc結合性タンパク質は、簡易型有機合成法又は固相担持型合成法などの多くの従来型及び周知の方法のうちのいずれかによって調製される場合があり、又は市販の自動合成装置によって調製される場合がある。幾つかの実施形態ではこの多量体はホモ多量体であり、例えば非Fc結合性タンパク質のアミノ酸配列が同一である。他の実施形態ではこの多量体はヘテロ多量体であり、例えば非Fc結合性タンパク質のアミノ酸配列が異なっている。
【0053】
融合タンパク質
本明細書は、1つの実施形態によると、本出願を通して開示されるような非Fc結合性ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。本明細書は、1つの実施形態によると、本出願を通して開示されるような1コピー以上、例えば2コピーの非Fc結合性ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。より具体的には、この融合タンパク質は本出願を通して開示されるような1コピー以上の非Fc結合性ポリペプチド、及び開示されるこのポリペプチドとは異なるその他のポリペプチドを含む。様々な実施形態において、本明細書において開示される前記非Fc結合性ポリペプチドとは異なるこのその他のポリペプチドは標的結合性タンパク質であり、好ましくは免疫グロブリン結合性ポリペプチド又は所定の標的に対する結合親和性を有するユビキチン変異タンパク質である。標的結合性タンパク質は所定の標的、好ましくはタンパク質標的に結合する能力を有するポリペプチドである。したがって、幾つかの実施形態は1コピー又は2コピーの本明細書において開示される非Fc結合性ポリペプチドと免疫グロブリン結合性ポリペプチドを含む融合タンパク質を包含する。したがって、他の実施形態は1コピー又は2コピーの本明細書において開示される非Fc結合性ポリペプチドと所定の標的に対する親和性を有する結合性ポリペプチドを含む融合タンパク質を包含する。したがって、他の実施形態は1コピー又は2コピーの本明細書において開示される非Fc結合性ポリペプチドとヒト血清タンパク質であるユビキチンの誘導体、例えば周知のAffilin(登録商標)分子を含むユビキチンベースの結合性タンパク質(ユビキチン変異タンパク質)が含まれている融合タンパク質を包含する。このような融合タンパク質は、所定の標的タンパク質を精製するためのアフィニティークロマトグラフィーでの使用にも特に適切である。
【0054】
幾つかの実施形態では融合タンパク質は例えば(N末端からC末端に向かって)以下の組合せ、すなわち
(a)非Fc結合性タンパク質-標的結合性タンパク質、
(b)標的結合性タンパク質-非Fc結合性タンパク質、
(c)非Fc結合性タンパク質-標的結合性タンパク質-非Fc結合性タンパク質、
(d)非Fc結合性タンパク質-非Fc結合性タンパク質-標的結合性タンパク質、
(e)標的結合性タンパク質-非Fc結合性タンパク質-非Fc結合性タンパク質、及び/又は
(f)標的結合性タンパク質-非Fc結合性タンパク質-非Fc結合性タンパク質-標的結合性タンパク質
を含む場合がある。
【0055】
幾つかの実施形態では融合タンパク質は配列番号1~15及び23~30からなる群より選択される非Fc結合性タンパク質、又はこれに対して少なくとも90%の同一性を有する非Fc結合性タンパク質を含む場合がある。幾つかの好ましい実施形態では融合タンパク質は配列番号1又は配列番号2から選択される非Fc結合性タンパク質を含む場合がある。幾つかの好ましい実施形態では融合タンパク質は配列番号27又は配列番号28から選択される非Fc結合性タンパク質、又はこれに対して少なくとも90%の同一性を有する非Fc結合性タンパク質を含む場合がある。
【0056】
このような融合タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィー中又はアフィニティークロマトグラフィー後にプロテインA又はプロテインA誘導体又は他の免疫グロブリン結合性タンパク質を検出するためのプロテインA浸出アッセイでの使用に特に適切である。プロテインA又はプロテインA誘導体又は他の免疫グロブリン結合性タンパク質は実施例において説明されるサンドイッチ免疫アッセイによって定量される。浸出アッセイにおいて使用される融合タンパク質は1コピー又は2コピーの本明細書に記載されるような非Fc結合性ポリペプチドとIg結合性タンパク質(好ましくはプロテインA又はプロテインAの誘導体又は人工Ig結合性タンパク質)から構成されることが好ましい。非Fc結合性ポリペプチドを含むこのような融合タンパク質の部分はIg結合性タンパク質の機能に干渉しない。少なくとも1コピーの非Fc結合性タンパク質に融合されている場合のプロテインA誘導体の改善された検出性の例が示されている。図4を参照されたい。
【0057】
前記融合タンパク質はプロテインAベースのIg結合性タンパク質の安定化に適切である可能性がある。例えば、非Fc結合性ポリペプチドをN末端又はC末端に含む融合タンパク質として発現する場合にタンパク質発現が改善する。
【0058】
さらに、少なくとも1コピーの本明細書において開示される非Fc結合性ポリペプチドとIg結合性ポリペプチドを含む融合タンパク質は、マトリックスまでの距離に有利な影響を与えるため、アフィニティークロマトグラフィーでの使用に特に適切である。
【0059】
前記融合タンパク質の部分は直接的にヘッドトゥテールで相互に結合している場合があり、又はリンカーによって結合している場合があり、そのリンカーはペプチドリンカーであることが好ましい。様々な実施形態において、ペプチドリンカーは前記融合タンパク質の2つの部分を立体的に分けるアミノ酸配列としてみなされる場合がある。このようなリンカーは1アミノ酸と10アミノ酸の間のアミノ酸から構成されることが典型的である。
【0060】
融合タンパク質は、非Fc結合性ポリペプチドをコードする遺伝子に本明細書に記載される前記ポリペプチドとは異なるポリペプチドをコードする遺伝子を遺伝的に融合する、又は組み合わせることにより形成されるタンパク質として特徴づけられる場合がある。したがって、前記融合タンパク質は一緒に翻訳された(間に停止コドンを含まない)2種類以上の遺伝子の産物としてみなされる場合がある。
【0061】
ライブラリー
幾つかの実施形態は配列番号1~15及び23~30に開示される単量体非Fc結合性タンパク質のうちのいずれか1つのスキャフォールド配列に由来する、又はこのようなスキャフォールド配列に基づく、又はこのようなスキャフォールド配列によって規定される新規ポリペプチドの集合体を提供し、特定の好ましいライブラリーの基礎がこれらの新規ポリペプチドによって形作られる。本発明において開示されるこのような小単量体スキャフォールド配列に基づくライブラリーの利点は、このようなライブラリーから特定されたタンパク質は高い構造的安定性により厳しい条件に耐えられることである。さらに、このようなタンパク質の非Fc結合性は幾つかの用途にとって有利である。
【0062】
幾つかの実施形態は、免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たないポリペプチドの集合体であって、三重ヘリックス構造を有することを特徴とする前記ポリペプチドの集合体を提供する。この集合体の免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たないポリペプチドは、配列番号1~15及び23~30のアミノ酸配列、例えば配列番号1又は配列番号27のアミノ酸配列に対して70%~90%の間、好ましくは70%~85の間の配列同一性を有することが好ましい。幾つかの実施形態は配列番号1又は配列番号27等のスキャフォールドに基づく複数の変異体を含むライブラリーを提供する。本明細書において提供されるこれらのライブラリーは、それぞれが場合によっては異なるアミノ酸配列を含む多様な配列のポリペプチド等を含む場合がある。ライブラリーのメンバー間の配列の違いがそのライブラリーに存在する多様性の原因である。無作為改変ヌクレオチド配列又は無作為改変アミノ酸配列は、多くの位置でヌクレオチド又はアミノ酸による置換、挿入、又は欠失が行われたヌクレオチド又はアミノ酸配列である。
【0063】
このようなライブラリーは、酸性アミノ酸を配列番号1の位置13に対応する位置に、塩基性アミノ酸を配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置に少なくとも有し、且つ、本明細書のどこかで説明されるように配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置に存在する特定のアミノ酸残基をさらに特徴とする場合がある配列番号1又は配列番号27等の変異体ポリペプチドを含む。さらに、幾つかの実施形態ではこれらのライブラリーは、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の変異体非Fc結合性ポリペプチドであって、事前に選択された非Fc標的に対する新規相互作用部位を作製するために3つのヘリックスのうちの2つについてそれぞれに少なくとも5か所のアミノ酸置換、すなわち配列番号1又は配列番号27等のランダム化された少なくとも10アミノ酸を有する前記変異体非Fc結合性ポリペプチドを含む。本明細書において開示されるライブラリーは、アミノ酸がランダム化された位置に関する、好ましくはヘリックス3及びヘリックス1内、又はヘリックス3及びヘリックス2内のアミノ酸がランダム化された位置に関する配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の変異体ポリペプチドを含む。
【0064】
したがって、本発明の幾つかの実施形態は配列番号1~15及び23~30のいずれか1つ、様々な実施形態において配列番号1などの非Fc結合性タンパク質、又は対応する三重らせんタンパク質に基づくライブラリーに関連し、このライブラリーの化合物は次の3つのヘリックスのうちの2つの中の10~16か所のランダム化された位置、すなわち(a)配列番号31及び配列番号32に示されるようにヘリックス2内の位置25、位置26、位置28、位置29、位置30、位置32、位置33、位置35、位置36、及び位置37から選択される位置における少なくとも5か所以上の変異、並びにヘリックス3内の位置42、位置43、位置44、位置46、位置47位置50、及び位置54から選択される位置における少なくとも5か所以上の変異を含み、(b)配列番号33及び配列番号34に示されるようにヘリックス1内の位置7、位置8、位置10、位置11、位置14、位置15、位置18、及び位置20から選択される位置における少なくとも5か所以上の変異、並びにヘリックス3内の位置42、位置43、位置46、位置47、位置49、位置50、位置53、及び位置54から選択される位置における5か所以上の変異を含む非Fc結合性タンパク質のうちの1つを含む。ヘリックス1、ヘリックス2、及びヘリックス3内の前記位置の確認は、配列番号1~15及び23~30のうちのいずれか1つ、様々な実施形態において配列番号1の中の対応する位置に関連して理解される。幾つかの実施形態では置換はC、G、N、又はPを除くいずれかのアミノ酸による置換であってよい。これはシステインが反応性のアミノ酸であり、他のシステイン含有ポリペプチドとジスルフィド結合を形成できるからであり、グリシンとプロリンはらせん構造を不安定化することが知られているからであり、最後にアスパラギンは分解を引き起こす腐食性の処理に対して特に敏感であるからである。
【0065】
幾つかの実施形態では三重らせん構造を有する本非Fc結合性ポリペプチドは配列番号31、32、33、又は34のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み、又はこのようなアミノ酸配列から構成される。
【0066】
ライブラリーの作製方法
本発明は、本明細書のどこかに記載される前記ライブラリーに加え、このようなライブラリーを作製する方法を提供する。最新式のライブラリー合成方法として、好ましいトリプレット・テクノロジー(Morphosys Slonomics)は例えば20種類の天然アミノ酸又は選別されたアミノ酸を分布させたランダムライブラリーを合成できる。例えば位置7~位置16でのこれらの20種類の天然アミノ酸のランダム分布を仮定すると配列番号1のポリペプチド又は配列番号2~15及び23~30のポリペプチドについて20の7乗(20)~16乗(2016)種類のユニークな変異体のプールが作製される。このプールの遺伝子/タンパク質が、配列番号1の非Fc結合性タンパク質又は配列番号2~15及び23~30の非Fc結合性タンパク質のこれらの変異体から成るライブラリーを構成する。
【0067】
ライブラリーディスプレイ
前記ライブラリーはリボソーム、バクテリオファージ、ウイルス、細菌、又は酵母細胞の表面上に、好ましくはリボソーム及びバクテリオファージの上にRNAに対する共役物として提示され、各標的に対する複数回のパンニングがこれに対して繰り返される。ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、mRNAディスプレイ法又は細胞表面ディスプレイ法、酵母表面ディスプレイ法又は細菌表面ディスプレイ法などの適切な提示及び選別方法、好ましくはファージディスプレイ法又はリボソームディスプレイ法によって本発明に従う接触を実施することが好ましい。本明細書において言及されるこれらの方法は当業者に知られている。
【0068】
本明細書に記載されるファージディスプレイ法では配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の組換え変異体が繊維状ファージ上に提示され、提示された変異体のコードDNAが同時にファージエンベロープ内に一本鎖の状態で詰め込まれて存在する。したがって、親和性濃縮の枠内でライブラリーからある特定の性質を有する変異を選択でき、それぞれ適切な細菌に感染させるか、又は別の濃縮サイクルに加えることによりそれらの遺伝情報を増幅することができる。ファージ表面での配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体の提示はシグナル配列とそのファージのカプシドタンパク質又は表面タンパク質の遺伝的融合により達成される。さらに、コードされるそのタンパク質は、検出及び/又はアフィニティークロマトグラフィーによる精製のためのアフィニティータグ又は抗体エピトープ、又はこの親和性濃縮の過程でこのタンパク質を特異的に切断するためのプロテアーゼ認識配列などのその他の機能性配列を含むことができる。
【0069】
ライブラリーからの選別方法
別の態様では本発明は、配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列のスキャフォールド変異体を含むライブラリーから標的タンパク質又は標的ペプチドに対する特定の結合親和性を有する前記変異体のうちの1つ以上を選別するための方法であって、(a)配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列のスキャフォールド変異体を含むライブラリーを提供する工程、(b)配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の1種類以上の変異体ポリペプチドと前記標的タンパク質又は標的ペプチドの相互作用を可能にする条件下でその相互作用に充分な時間にわたって前記ライブラリーを前記標的タンパク質又は標的ペプチドと接触させる工程、及び(c)10-5~10-12Mの範囲で前記標的タンパク質に対する特定の結合親和性(K)を有する配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の1種類以上の変異体ポリペプチドを前記ライブラリーから選別(特定)する工程を含む前記方法に関連する。
【0070】
変異体の選別法
ファージミドと呼ばれる細菌用のベクターが、配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体を単離する選別方法にとって適切であり、説明された前記融合タンパク質の遺伝子カセットがその中に挿入される。何よりもこのファージミドは繊維状ファージ(例えばM13又はf1)の遺伝子間領域又はその一部を含んでおり、この領域のためにこのファージミドを担持する細菌細胞がヘルパーファージによって重複感染すると共有結合により閉環したファージミドDNAがファージカプシド内にパッケージングされることになる。
【0071】
得られたファージ粒子は、それらの粒子上に提示されている本明細書において開示される配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体の任意の標的に対する結合に関して当業者に知られている方法によって選別可能である。この目的のためにこれらの提示されている配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体を標的物質に一時的に固定化でき、非結合性の変異を分離した後でそれらの変異体を特異的に溶離できる。このようにして得られたこれらのファージ粒子は、選択された標的に対する結合特性を用いた配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体の選別と増幅の連続サイクルにより再増幅及び濃縮可能である。
【0072】
濃縮ファージプール由来の配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体は個々のタンパク質発現のために発現ベクターにクローン化される。好ましいことに本明細書において開示される配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体の発現により自動化ハイスループットスクリーニングプラットフォーム上でELISAなどの確立された技術による特定の結合タンパク質のスクリーニングが可能になる。その後、所望の結合特性を有する特定されたクローンの配列を解析してアミノ酸配列を明らかにできる。その特定されたタンパク質は、例えば、特定された配列の変更と本明細書に記載されるようなファージディスプレイ工程、リボソームディスプレイ工程、パンニング工程、及びスクリーニング工程の反復に基づいた追加のライブラリーの作製による付加的な成熟工程の対象とされてもよい。発現させたこれらのタンパク質を標的タンパク質と接触させることでこれらのパートナー同士が互いに結合できる。この過程によりこの所与の標的タンパク質に対する結合活性を有するタンパク質の特定が可能になる。
【0073】
本発明により当業者は、SPRなどの適切な方法によって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たないことを除いて機能的であり、且つ、所与の標的に結合可能な配列番号1又は対応する非Fc結合性スキャフォールドアミノ酸配列の変異体の選別されたコレクションを濃縮することができる。
【0074】
ポリペプチドの作製方法
本発明はさらに、事前に規定された標的タンパク質に対する結合親和性を有する本明細書において開示されるような新規非Fc結合性ポリペプチドを作製するための方法であって、以下の工程、すなわち(i)本明細書において開示されるポリペプチドの集合体を提供する工程、(ii)標的タンパク質と(i)のポリペプチド集合体を接触させる工程、(iii)前記標的タンパク質に結合した本明細書において開示される非Fc結合性ポリペプチドを含む複合体を特定する工程、及び(iv)前記標的タンパク質に結合可能な本明細書において開示される非Fc結合性ポリペプチドを得る工程を含む前記方法に関連する。非特異的結合性ポリペプチドは数回の洗浄工程により除去され得る。この標的タンパク質に対する特定の結合親和性を有するタンパク質はこの標的タンパク質を付けたままである。標的タンパク質からの溶離後にポリペプチドを増幅し、この標的タンパク質との1回以上の接触工程の対象とすることができる。本開示は、前述の方法により得られる、又は得ることができる、又は作製される、又は調製される標的分子に対する結合親和性を有するこのような非Fc結合性ポリペプチドを包含する。
【0075】
標的分子に対する結合親和性を有する新規非Fc結合性ポリペプチドを作製するための前記方法は、前記標的タンパク質に対するこのポリペプチドの結合親和性を決定する追加工程を工程(iii)の後、工程(iv)の前に含んでもよい。この結合親和性は本明細書のどこかで説明されるように決定され得る。
【0076】
幾つかの実施形態は、配列番号1~15及び23~30の非Fc結合性タンパク質のうちのいずれか1つのポリペプチド、様々な実施形態において配列番号1のポリペプチドに由来する変異体タンパク質を作製するための方法であって、(i)ヘリックス3及びヘリックス2のそれぞれの中の少なくとも5か所の選択された位置、又はヘリックス3及びヘリックス1のそれぞれの中の少なくとも5か所の選択された位置において改変されている配列番号1~15及び23~30のいずれか1つのポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子の三連ヌクレオチドに対して変異形成を行う工程、(ii)1種類以上の変異体核酸分子を得る工程、(iii)適切な発現系内で(ii)において得られた1種類以上の変異体核酸分子を発現させる工程、及び(iv)選別及び/又は単離によりこれらの1種類以上の変異体タンパク質を濃縮する工程を含む前記方法に関連する。
【0077】
前記変異形成において、本明細書のどこかに記載される態様及び実施形態に従うどの構造的技術的特徴も考慮に入れられる。
【0078】
技術用途における本新規ポリペプチドの使用
本明細書は、本明細書において記載される方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有する新規ポリペプチドを含む本発明のいずれかの新規ポリペプチドの技術用途における使用、好ましくはアフィニティークロマトグラフィーにおける使用も提示する。
【0079】
本明細書に記載されるように、アフィニティークロマトグラフィー(親和性精製とも呼ばれる)は分子間の特異的な結合相互作用を利用する。例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、23、24、25、26、27、28、29、及び30の非Fc結合性タンパク質及びそれらに対して少なくとも90%同一であるタンパク質のうちのいずれか1つを含む融合タンパク質が本明細書に記載されるように浸出アッセイにおいて使用可能である。さらに、配列番号1~15及び23~30の非Fc結合性タンパク質及び少なくとも90%同一であるタンパク質のうちのいずれか1つが本明細書に記載されるように結合タンパク質用のスペーサーとして固体支持体に固定化される場合がある。タンパク質固定化の方法とアフィニティークロマトグラフィーの方法はタンパク質工学とタンパク質精製の分野でよく知られており、この分野の当業者は標準的な技法と設備を用いてこれらの方法を容易に実施することができる。
【0080】
様々な実施形態において、前記親和性精製法は、非特異的に親和性分離マトリックスに結合している幾つかの分子又は全ての分子をその親和性分離マトリックスから除去するために充分な条件下で実施される1回以上の洗浄工程をさらに含む場合がある。本開示の使用及び方法に適切な親和性分離マトリックスは、本明細書に記載される態様及び実施形態に従い、且つ、当業者に知られているマトリックスである。
【0081】
固体支持体への結合
本発明の様々な態様及び/又は実施形態において、本明細書に記載される方法のうちのいずれかによって作られる、又は得られる新規ポリペプチドを含む本明細書において開示される前記新規ポリペプチドが固体支持体に結合される。本発明の幾つかの実施形態では前記ポリペプチドは固体支持体への前記ポリペプチドの部位特異的共有結合のための結合部位を含む。特異的結合部位は、限定されないが、前記固相の反応基との特異的化学反応、又は前記固相と前記タンパク質との間に存在するリンカーとの特異的化学的反応を可能にする天然アミノ酸、例えばシステイン又はリシンを含む。
【0082】
幾つかの実施形態では本非Fc結合性タンパク質は追加のアミノ酸残基をN末端及び/又はC末端に含む場合もあり、例えばタグを含む、又はタグを含まない追加の配列等をN末端及び/又はC末端に含む場合もある。
【0083】
親和性分離マトリックス
別の実施形態では非Fc結合性ポリペプチドを含む親和性分離マトリックスが提供され、そのようなポリペプチドには本明細書に記載される方法のうちのいずれかによって特定されるポリペプチドが含まれる。様々な実施形態において、この親和性分離マトリックスは親和性精製マトリックスであってよい。
【0084】
好ましい実施形態では前記親和性分離マトリックスは固体支持体である。この親和性分離マトリックスは本発明により提供される少なくとも1種類の非Fc結合性ポリペプチドを含む。したがって、本明細書において開示されるポリペプチドである前記新規非Fc結合性タンパク質のうちのいずれもアフィニティー(分離/精製)マトリックスによるタンパク質の分離及び/又は精製で使用するために包含される。
【0085】
アフィニティークロマトグラフィー用の固体支持体マトリックスは当技術分野において知られており、これらの固体支持体マトリックスには例えばアガロース及び安定化アガロース誘導体、セルロース又はセルロース誘導体、多孔性ガラス、モノリス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、又は合成高分子化合物、及び様々な組成のヒドロゲルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
固体支持体マトリックスの形式はあらゆる適切な周知の種類の形式であってよい。本発明の新規タンパク質又はポリペプチドを結合するためのこのような固体支持体マトリックスは、例えば、限定されないが、以下のもの、すなわちカラム、キャピラリー、粒子、メンブレン、フィルター、モノリス、ファイバー、パッド、ゲル、スライド、プレート、カセット、又はクロマトグラフィーにおいて一般的に使用されており、且つ、当業者に知られている他のあらゆる形式のうちの1つを含む可能性がある。
【0087】
1つの実施形態では前記マトリックスはビーズとしても知られる実質的に球状の粒子、例えばセファロースビーズ又はアガロースビーズから構成されている。粒子状のマトリックスは充填ベッドとして、又は膨潤ベッドを含む懸濁状態で使用可能である。本発明の他の実施形態では前記固体支持体マトリックスはメンブレン、例えばヒドロゲルメンブレンである。幾つかの実施形態では前記親和性精製は、本発明のタンパク質が共有結合しているマトリックスとしてメンブレンを必要とする場合がある。前記固体支持体はカートリッジ中のメンブレンという形であってもよい。
【0088】
幾つかの実施形態では前記親和性精製は、本発明の新規タンパク質が共有結合している固体支持体マトリックスを含有するクロマトグラフィーカラムを必要とする。本発明の新規タンパク質又はポリペプチドは従来の結合技法により適切な固体支持体マトリックスに取り付けられ得る。固体支持体にタンパク質リガンドを固定化するための方法はタンパク質工学とタンパク質精製の分野でよく知られており、この分野の当業者は標準的な技法と設備を用いてこれらの方法を容易に実施することができる。
【0089】
組成物
さらに、本明細書は、本明細書に記載される対応する方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有する新規非Fc結合性ポリペプチドを含む本出願を通して開示されるような非Fc結合性ポリペプチドが含まれている組成物を提供する。様々な実施形態において、このような組成物は診断又は治療に有効な用量又は量の新規非Fc結合性ポリペプチドを含む。投与されるタンパク質の量は、特に、治療を受ける生物、疾患の種類、患者の年齢と体重、及び他の因子に依存し得る。
【0090】
様々な実施形態において、本組成物は非Fc結合性ポリペプチドと診断的に許容可能な担体を含む診断用組成物である。他の様々な実施形態において、本組成物は非Fc結合性ポリペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物である。これらの組成物は当業者に知られている他の補助的薬剤及び賦形剤を場合によっては含有する。それらには例えば安定化剤、界面活性剤、塩、緩衝剤、着色剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
少なくとも1種類の非Fc結合性ポリペプチドを含む組成物は当技術分野において知られている方法によって調製可能である。例えば、医薬製剤の種類は治療される特定の疾患の種類、投与経路、その疾患の重症度、治療を受ける患者、及び医学分野の当業者に知られている他の因子に左右される場合がある。
【0092】
本明細書はさらに、本明細書に記載される対応する方法によって得られる標的タンパク質に対する結合親和性を有する新規ポリペプチドを含むいずれかの新規非Fc結合性ポリペプチドの使用、又は組成物、医薬品、診断薬、及び/若しくは予後予測薬としての本明細書において記載される組成物の使用を提供する。
【0093】
三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる方法
本発明は、三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる、又は減弱化する方法であって、(a)位置に関してそれぞれ配列番号1の位置7~19及び位置23~37に対応するヘリックス1及びヘリックス2についてヘリックス1及びヘリックス2内の少なくとも2か所のアミノ酸位置を変異形成のために選択することであって、配列番号1のアミノ酸配列内の位置13及び位置31に対応する位置を変異形成のための前記少なくとも2か所のアミノ酸位置として選択すること、及び(b)変異形成のために選択された前記少なくとも2か所のアミノ酸位置に変異形成を実施することであって、配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される酸性アミノ酸へ置換すること、及び配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン、リシン、及びヒスチジンのうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸へ置換することを含む前記変異形成を実施することを含む前記方法も提供する。前記変異は配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸へ置換すること、及び配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニンへ置換することを含むことが好ましい。
【0094】
本明細書において記載される方法のさらに他の好ましい実施形態において、前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸のうちの1つ以上をいずれかのアミノ酸残基、好ましくは極性側鎖を有するアミノ酸残基、より好ましくはセリン、トレオニン、グルタミン、アスパラギン、及びヒスチジンから選択されるアミノ酸残基、さらにより好ましくはセリンへ置換することをさらに含む場合がある。本発明は、三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる、又は減弱化する本明細書において記載される方法に従って調製される三重らせん構造を有するポリペプチドを包含する。
【0095】
前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置10及び位置14、又は位置10及び位置35、又は位置14及び位置35、又は位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸をあるアミノ酸残基、好ましくは極性側鎖を有するアミノ酸残基へ置換することを含む場合がある。
【0096】
前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸のうちの1つ以上をセリンへ置換することを含むことが好ましく、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸のうちの2つをセリンへ置換することを含むことがより好ましく、それらの2つのアミノ酸の位置には配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10及び位置14、位置10及び位置35、並びに位置14及び位置35にそれぞれ対応する位置が挙げられる。特に好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸の全てをセリンへ置換することを含む。
【0097】
他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸のうちの1つ以上をトレオニンへ置換することを含み、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のうちの2つでアミノ酸をトレオニンへ置換することを含むことがより好ましく、それらの2つのアミノ酸の位置には配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10及び位置14、位置10及び位置35、並びに位置14及び位置35にそれぞれ対応する位置が挙げられる。
【0098】
特に好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のアミノ酸の全てをトレオニンへ置換することを含む。本明細書に記載されるように、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置10、位置14、及び位置35に対応する位置のうちのいずれか1つにおいてはセリン残基がトレオニン残基よりも好ましい。
【0099】
本明細書において記載される方法の様々な実施形態において、前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸へ置換することを含む場合があり、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置では配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン、リシン、及びヒスチジンのうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸へ置換することを含む場合がある。前記変異は、配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をグルタミン酸へ置換することを含む場合もあり、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置では配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン、リシン、及びヒスチジンのうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸へ置換することを含む場合もある。
【0100】
本明細書において記載される方法の他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸又はグルタミン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニンへ置換することを含む場合がある。本明細書において記載される方法の他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸又はグルタミン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をリシンへ置換することを含む場合がある。本明細書において記載される方法の他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸又はグルタミン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をヒスチジンへ置換することを含む場合がある。
【0101】
本明細書において記載される方法のさらに好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をリシンへ置換することを含む場合がある。本明細書において記載される方法の他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をヒスチジンへ置換することを含む場合がある。本明細書において記載される方法の他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をグルタミン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニンへ置換することを含む場合がある。本明細書において記載される方法の他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をグルタミン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をリシンへ置換することを含む場合がある。本明細書において記載される方法の他の好ましい実施形態では前記変異は、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をグルタミン酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をヒスチジンへ置換することを含む場合がある。
【0102】
三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる、又は減弱化する本明細書において記載される方法は、本明細書のどこかで説明されるように、配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有することをさらに特徴とする三重らせん構造を有するポリペプチドの結合親和性を低下させること、又は減弱化することを包含する。これには本明細書において開示される配列番号1~15及び23~30のあらゆる変異体非Fc結合性ポリペプチドが含まれ、特に配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ配列に対するパーセント配列同一性に関してより具体的な特徴を有するそれらの変異体ポリペプチドが含まれる。したがって、本発明は、三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる、又は減弱化する方法であって、配列番号1~15及び23~30のうちのいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ酸配列内の位置13及び位置31を選択すること、及び(b)変異形成のために選択された前記少なくとも2か所のアミノ酸位置に変異形成を実施することであって、配列番号1~15及び23~30のうちのいずれか1つ、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置のアミノ酸をアスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E)から選択される酸性アミノ酸へ置換すること、及び配列番号1~15及び23~30のうちのいずれか1つ、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置のアミノ酸をアルギニン(R)、リシン(K)、及びヒスチジン(H)のうちのいずれか1つから選択される塩基性アミノ酸へ置換することを含む前記変異形成を実施することを含む前記方法を包含する。
【0103】
様々な実施形態において、三重らせん構造を有するポリペプチドの免疫グロブリンFcドメインに対する結合親和性を低下させる本明細書において開示される方法によって作製される、又は調製される、又は得られる、又は得ることができる三重らせん構造を有する本ポリペプチドは、表面プラズモン共鳴などの適切な方法によって測定されるような免疫グロブリンFcドメインに対する検出可能な結合親和性を持たない。
【0104】
好ましい実施形態には配列番号1~15及び23~30のうちのいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の変異体ポリペプチドが挙げられる。幾つかの実施形態には三重らせん構造を有し、且つ、配列番号1~15及び23~30のうちのいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1のアミノ配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する非Fc結合性ポリペプチドが挙げられ、その場合に前記ポリペプチドは(a)配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置13に対応する位置に酸性アミノ酸残基、好ましくはアスパラギン酸(D)残基を含み、且つ、(b)配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置31に対応する位置に塩基性アミノ酸残基、好ましくはアルギニン(R)残基を含む。このようなポリペプチドはヘリックス3内において少なくとも5アミノ酸置換、6アミノ酸置換、7アミノ酸置換、又は8アミノ酸置換のうちのいずれかを含むことが好ましく、その場合にヘリックス3は配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置40~56に対応するアミノ酸残基、好ましくは配列番号1の位置42、位置43、位置44、位置46、位置47、位置49、位置50、位置51、位置53及び位置54に対応する位置から選択されるアミノ酸残基を含む。さらに、このようなタンパク質はヘリックス1のアミノ酸残基を含む位置、及びヘリックス1のすぐ隣の1番目の残基を含む位置において少なくとも6アミノ酸置換、7アミノ酸置換、又は8アミノ酸置換のうちのいずれかを含んでおり、その場合にヘリックス1は配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置7~19に対応するアミノ酸残基、好ましくは位置7、位置8、位置10、位置11、位置14、位置15、位置18、及び位置20に対応する位置から選択されるアミノ酸残基を含む。幾つかの実施形態ではこのようなタンパク質はヘリックス3内において少なくとも5アミノ酸置換、6アミノ酸置換、7アミノ酸置換、又は8アミノ酸置換を含んでおり、その場合にヘリックス3は配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置40~56に対応するアミノ酸残基、好ましくは配列番号1の位置42、位置43、位置44、位置46、位置47、位置49、位置50、位置51、位置53及び位置54に対応する位置から選択されるアミノ酸残基を含み、且つ、ヘリックス2のアミノ酸残基を含む位置において少なくとも5アミノ酸置換、6アミノ酸置換、7アミノ酸置換、又は8アミノ酸置換のうちのいずれかを含んでおり、その場合にヘリックス2は配列番号1~15及び23~30のいずれか1つの、様々な実施形態において配列番号1の位置23~37に対応するアミノ酸残基、好ましくは位置24、位置25、位置26、位置27、位置28、位置29、位置30、位置32、位置33、位置35、位置36、及び位置37に対応する位置から選択されるアミノ酸残基を含む。
【0105】
ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞
本明細書において開示されるポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド又は核酸分子を包含する1つの実施形態が提供される。その他の実施形態は、本明細書において開示される前記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドも包含する。本発明の前記単離ポリヌクレオチド又は核酸分子を含むベクター、特に発現ベクターがさらに提供され、同様に前記単離ポリヌクレオチド又は前記発現ベクターを含む宿主細胞がさらに提供される。例えば、本明細書において開示されるポリペプチドをコードする1種類以上のポリヌクレオチドを適切な宿主内で発現させる場合があり、そのようにして産生されたタンパク質を単離することができる。ベクターは、タンパク質の暗号情報を宿主細胞内に移すために使用可能なあらゆる分子又は物体(例えば核酸、プラスミド、バクテリオファージ、又はウイルス)を意味する。本発明に適用され得る適切なベクターが当技術分野において知られている。
【0106】
さらに、ポリヌクレオチド又は核酸又はベクターを含む単離細胞が提供される。適切な宿主細胞には原核生物又は真核生物の細胞、例えばベクターを担持する宿主細胞又は非ヒト宿主(細胞)が挙げられる。宿主細胞は核酸配列を用いて形質転換された細胞、又は核酸配列を用いて形質転換可能な細胞であって、それにより目的の遺伝子を発現する細胞である。適切な細菌性発現宿主細胞又は細菌性発現系が当技術分野において知られている。組換えタンパク質を発現させるためには当技術分野において知られている様々な哺乳類細胞培養系又は昆虫細胞培養系も使用できる。
【0107】
本発明のタンパク質の作製方法
その他の実施形態では説明されたような非Fc結合性ポリペプチドを作製するための方法であって、(a)非Fc結合性ポリペプチドを得るために前記非Fc結合性ポリペプチドの発現に適切な条件下で(適切な)宿主細胞を培養する工程、及び(b)場合によっては前記非Fc結合性ポリペプチドを単離する工程を含む前記方法が提供される。原核生物宿主又は真核生物宿主の培養にとって適切な条件は当業者によく知られている。
【0108】
非Fc結合性ポリペプチドは簡易型有機合成法又は固相担持型合成法などのいずれかの従来型及び周知の方法によって調製される場合があり、又は市販の自動合成装置によって調製される場合がある。これらのポリペプチドは従来の組換え技術単独で、又は従来の合成技術と組み合わせて調製される場合もある。
【0109】
1つの実施形態では本明細書において詳細に説明されるような非Fc結合性を調製するための方法であって、(a)非Fc結合性ポリペプチドをコードする核酸分子を提供する工程、(b)前記核酸分子を発現ベクター内に導入する工程、(c)前記発現ベクターを宿主細胞内に導入する工程、(d)培地中で前記宿主細胞を培養する工程、及び(e)前記非Fc結合性ポリペプチドの発現にとって適切な培養条件に前記宿主細胞を曝すことにより非Fc結合性ポリペプチドを作製する工程を含み、場合によっては(f)工程(e)で作製されたタンパク質又はポリペプチドを単離する工程を含み、場合によっては(g)前記タンパク質又はポリペプチドを本明細書に記載されるような固形マトリックスに結合する工程を含む前記方法が提供される。本発明の様々な実施形態において、前記非Fc結合性ポリペプチドの作製は無細胞インビトロ転写及び翻訳によって実施される。
【0110】
優先権出願である欧州特許出願第EP18205679.6号の開示全体が参照により本明細書に援用されており、このことは欧州特許出願第EP18205679.6号の開示内容全体が本出願の開示内容の一部を形作っていると考えられることを意味している。
【実施例
【0111】
本発明をさらに例示するために以下の実施例を提供する。しかしながら本発明はこれらの実施例に限定されず、以下の実施例は上記の説明に基づく本発明の実施可能性を単に示しているだけである。本発明の完全な開示のために本出願書において引用されている参照文献に対する参照も行われ、この参照文献は参照により本出願書に完全に援用される。
【0112】
実施例1.タンパク質の発現及び精製
T7プロモーターの制御下にある低コピー数プラスミドシステムを使用して大腸菌BL21(DE3)株内で全てのコンストラクトを発現させた。培地(自動誘導培地)中に含まれるラクトースによる誘導の後にタンパク質が可溶型で細胞質に生産された。前記発現プラスミドを用いてBL21(DE3)コンピテント細胞を形質転換し、この細胞を選択寒天プレート(カナマイシン)上に広げ、そして37℃で一晩にわたって培養した。カナマイシンを50μg/mlになるよう添加した3mlの2×YT培地中に単一のコロニーを接種して前培養にし、培養チューブ中のこれを従来の回転シェーカーにおいて37℃、200rpmで6時間にわたって培養した。1Lのエーレンマイヤーフラスコ中でカナマイシンを50μg/mlになるよう添加した300mlのZYM-5052(0.5%グリセロール、0.2%ラクトース、0.05%グルコース、0.5%イーストエクストラクト、1.0%カザミノ酸、25mM NaHPO、25mM KHPO、5mM NaSO、2mM MgSO、及び微量元素;Studier著、2005年を参照されたい)の中に3mlの前培養を接種して主培養とした。培養物を回転培養器に移し、30℃及び200rpmで培養した。グルコースが代謝された後にラクトースがこれらの細胞の中に入るようにすることで組換えタンパク質の発現を誘導した。最終的なOD600が約2~4になるように約17時間にわたって細胞を終夜培養した。回収する前にOD600を測定し、OD600が0.6になるように調節された試料を取り出し、沈殿させ、そして-20℃で凍結した。バイオマスを収集するために細胞を22℃、12000×gで15分間にわたって遠心分離した。沈殿物の重量(湿重量)を測定した。細胞は処理する前に-20℃で保存された。
【0113】
アフィニティータグを有するタンパク質をアフィニティークロマトグラフィーとサイズ排除により精製した。アフィニティークロマトグラフィー精製の後にAktaシステムとSuperdex(商標)200 HiLoad 16/600カラム(GEヘルスケア社)を使用してサイズ排除クロマトグラフィー(SE HPLC又はSEC)が実施された。このSECカラムは120mlの容積を有しており、2倍のカラム容積(CV)を用いて平衡化された。試料を1ml/分の流速で負荷した。シグナル強度が10mAUに達すると画分収集が始まる。SDS-PAGE分析の後に陽性の画分をまとめ、それらのタンパク質濃度を測定した。その他の分析としてSDS-PAGE、SE-HPLC、及びRP-HPLCが含まれた。モル吸光係数を使用して280nmでの吸光度測定値によりタンパク質濃度を決定した。Dionex HPLCシステム及びPLRP-S(5μm、300A)カラム(Agilent社)を使用して逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)が実施された。
【0114】
実施例2.表面プラズモン共鳴(SPR)によるタンパク質の分析
CM-5センサーチップ(GEヘルスケア社)上に500~1500RUのIgG-Fcドメイン(オフリガンド)を固定化し、SPRランニングバッファーを使用してこのチップを平衡化した。反応性エステル基を得るためにEDCとNHSの混合物を通過させることにより、表面上に曝されたカルボキシル基を活性化した。リガンドが結合するとこの表面上でタンパク質分析物が蓄積し、屈折率が上昇した。この屈折率の変化をリアルタイムで測定し、時間に対する応答単位又は共鳴単位としてプロットした。これらの分析物を段階希釈して30μl/分の流速でこのチップに負荷した。結合を120秒間にわたって実施し、解離を360秒間にわたって実施した。各実験の後に30μlの再生バッファー(10mMのHCL)を使用してこのチップ表面を再生し、ランニングバッファーを使用してこれを平衡化した。BIAcore 3000(GEヘルスケア社)を使用することにより結合試験を実施し、製造業者により提供されるBIAevaluation 3.0ソフトウェアによりラングミュアの1:1モデル(Rl=0)を使用してデータ評価を実施した。評価された解離定数(K)をオフターゲットに対して標準化し、表示した。図1は配列番号17のポリペプチド及び配列番号9のポリペプチドのIgG-Fcに対する結合親和性を示している。リアルタイムで測定され、時間[秒]に対する応答単位又は共鳴単位[RU]としてプロットされた屈折率の変化が示されている。
【0115】
配列番号17(参照図1)又は配列番号16(参照図2及び図3)又は野生型タンパク質ドメイン(図3参照)又はドメインZ(図3参照)を参照してIgG-Fcドメインに対する結合親和性を測定した。ラングミュアの1:1モデルにデータをフィットさせた後にc27については3nMのK値が計算され、配列番号9についてはK値を計算できなかった(図1参照)。例えば、配列番号16はIgG1への結合について1.15nMのKを有し、ドメインC(配列番号20)はIgG1への結合について3.87nMのKを有している。
【0116】
実施例3.本発明の非Fc結合性タンパク質を含む融合タンパク質を使用する浸出アッセイ
アフィニティークロマトグラフィーでは浸出したプロテインA誘導体又は免疫グロブリン結合性タンパク質が低レベルであることを確定することが信頼できる結果を得るために重要である。天然及び組換え型のプロテインAの検出用のプロテインA ELISAキット(Repligen社、カタログ番号9000-1)を製造業者の指示に従って浸出アッセイに使用した。試験された融合タンパク質は、標的に対する結合親和性を有するタンパク質BP1又はBP3に対してN末端側に融合された配列番号1、標的に対する結合親和性を有するタンパク質BP1又はBP3に対してC末端側に融合された配列番号1、及び標的に対する結合親和性を有するタンパク質BP2に対してN末端側とC末端側に融合された配列番号1である。BP1、BP2、及びBP3は、標的に対する特異的親和性を有する三重ヘリックス構造を含む58アミノ酸から構成されるタンパク質である。例えば、BP3は配列番号1に対して75.8%の同一性を有し、BP3は配列番号1と比べてヘリックス2とヘリックス3に改変を含む非Fc結合性タンパク質である。図4は特異的標的結合特性を有する誘導体との配列番号1の融合タンパク質の回収率の改善を示している。
【0117】
実施例4.ライブラリーの構築、ライブラリーの複製、変異体の選別
ライブラリーの構築とライブラリーの複製
スキャフォールド配列番号1(PAdelFc):
IAAKFDEAQSAADSEILHLPNLTEEQRNAFRQSLSDDPSVSLEVLGEAQKLNDSQAPK
アミノ酸残基7~19(ヘリックス1)、アミノ酸残基23~37(ヘリックス2)、及びアミノ酸残基40~56(ヘリックス3)に下線が引かれている。
【0118】
アミノ酸がランダム化された位置を含むライブラリーは、ランダム化された位置のアミノ酸分布を平均させると同時にシステイン及びその他のアミノ酸残基を除外するためにトリプレット・テクノロジー(ThermoFisher Scientific社、GeneArt、ドイツ)により合成されるか、又は合成トリヌクレオチドホスホラミダイト(ELLA deisBiotech社)により作製されたランダム化オリゴヌクレオチドによって自家合成された。ヘリックス3及びヘリックス2内、又はヘリックス3及びヘリックス1内の少なくとも5アミノ酸位置においてPAdelFc(配列番号1)をランダム化した。配列番号1に基づいて以下のライブラリーを作製した。
・ライブラリーPA02(配列番号31):ヘリックス2内の位置(25、26、28、29、30、32、33、35、36)及びヘリックス3内の位置(42、43、44、46、47、50、54)がランダム化されている。
・ライブラリーPA12(配列番号32):ヘリックス2内の位置(25、29、30、32、33、36、37)及びヘリックス3内の位置(43、46、47、50、51)がランダム化されている。
・ライブラリーPA03(配列番号33):ヘリックス1内の位置(7、8、10、11、14、15、18、20)及びヘリックス3内の位置(42、43、46、47、49、50、53、54)がランダム化されている。
・ライブラリーPA13(配列番号34):ヘリックス1内の位置(7、8、11、14、15、18)及びヘリックス3内の位置(42、46、49、50、53)がランダム化されている。
【0119】
ThermoFisher Scientific社によってGeneArtストリングDNA断片としてPA02及びPA03に対応するcDNAライブラリーが提供された。PCRによりヘリックス1~3を含むコード領域を増幅した。オーバーラップエクステンションPCR(oePCR)によって全長ライブラリー分子を作製し、このPCRではPAdelFcを鋳型配列として使用して非ランダム化領域を増幅した。
【0120】
ランダム化オリゴヌクレオチド(ELLA Biotech社)を使用してPA12及びPA13の複製を実施した。PAdelFc配列が鋳型として機能した。ヘリックス1及びランダム化ヘリックス2を含む1つの断片とランダム化ヘリックス3を含む別の断片のoePCRにより全長PA12を作製した。ランダム化オリゴヌクレオチド及び鋳型としてのPAdelFc配列を使用して1回のPCR工程でPA13のコード領域を得た。
【0121】
当業者に知られている標準的方法を用いて改変型pCD87SAファージミド(本明細書においてpCD33-OmpAと呼ぶ)と全ての作製したライブラリーPCR産物をライゲーションした。このpCD33-OmpAファージミドはOmpAリーダー配列とCT-pIIIへの直接融合部を含む。前記ライゲーション混合物のアリコットを大腸菌SS320株(Lucigen社)の電気穿孔に使用した。当業者に知られている確立された遺伝的組換え方法。
【0122】
TATファージディスプレイによる初期選別
ファージディスプレイを選別系として使用して前記未変性ライブラリーを前記標的に対して濃縮した。このライブラリーを担持するファージミドpCD33-OmpAを使用してSS320コンピテント細菌細胞(Lucigene社)を形質転換し、その後で当業者に知られている標準的方法を用いてファージ増幅と精製を実施した。選別のために前記標的タンパク質をダイナビーズ(登録商標)プロテインA又はダイナビーズ(登録商標)プロテインG上の前記標的のFc融合体として固定化した。ファージインキュベーション中の標的の濃度を200nM(1回目)から100nM(2回目)及び50nM(3回目)まで低下させた。標的ファージ複合体を上清から磁気により分離し、そして数回にわたって洗浄した。標的に結合したファージをトリプシンにより溶離した。このファージライブラリーからFc結合変異体を取り除くために2回目と3回目の前にIgGの固定化Fc断片(Athens Research & Technology社)を使用するファージの前選別を実施した。標的特異的ファージプールを特定するために各回の選別で溶離及び再増幅されたファージをファージプールELISAにより分析した。標的-Fc(2.5μg/ml)及びIgG1のFc断片(2.5μg/ml)をそれぞれ使用してミディアムバインディング・マイクロタイタープレート(Greiner Bio-One社)のウェルを被覆した。HRP結合抗M13抗体(GEヘルスケア社)を使用して結合したファージを検出した。
【0123】
標的結合ファージプールの発現ベクターへのクローン化
ファージプールELISAにおいて前記標的に対する特異的結合を示した選別プールを当技術分野において知られている方法に従ってPCRにより増幅し、適切な制限ヌクレアーゼで切断し、そしてStrep-TagII(IBA GmbH社)を含む発現ベクターpET-28a(Merck社、ドイツ)の誘導体にライゲーションした。
【0124】
シングルコロニーヒット分析
BL21(DE3)細胞(Merck社、ドイツ)の形質転換の後にカナマイシン耐性のシングルコロニーを培養した。自動誘導培地(Studier著、2005年、Protein Expr.Purif.誌、第41巻(第1号):207~234頁)を使用して384ウェルプレート(Greiner Bio-One社)中で培養することにより前記標的結合改変型スキャフォールド変異体を発現させた。細胞を回収し、その後でBugBuster試薬(Novagen社)により化学的又は酵素的に、及び凍結融解サイクルにより機械的にそれぞれこれらの細胞を溶解した。遠心分離後、生じた上清をハイバインド384 ELISAマイクロタイタープレート(Greiner Bio-One社)上で、固定化標的を使用するELISAによりスクリーニングした。結合したタンパク質をTMB-プラス・サブストレート(Biotrend社、ドイツ)と組み合わせたStrep-Tactin(登録商標)HRPコンジュゲート(IBA GmbH社)により検出した。0.2MのHSO溶液を添加して反応を停止し、プレートリーダーにおいて450nmと620nmで測定を行った。
【0125】
成熟選別及び分析
親和性成熟のために2回のパンニングを実施した。1回目と2回目にそれぞれ50nMと5nMの濃度で標的のFc融合体を使用した。両方の回について、IgGのFc断片を使用する前選別を実施した。特異的標的結合についてこれらの成熟及び選別されたプールを分析するためにファージプールELISAを実施し、続いて陽性プールを発現ベクターpET-28aにクローン化し、本明細書に記載されるようなヒットELISAを実施した。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022504487000001.app
【国際調査報告】