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特表2022-504555ケーシング装置の製造を改善するための方法およびシステム
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  • 特表-ケーシング装置の製造を改善するための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ケーシング装置の製造を改善するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/60 20060101AFI20220105BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220105BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B29C44/60
B29C44/00 D
B29C45/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519627
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(85)【翻訳文提出日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2019077552
(87)【国際公開番号】W WO2020074680
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】18200231.1
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ポタラジュ,サイラム
(72)【発明者】
【氏名】アルバース,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ライディング,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ローフ,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F206AB02
4F206AG20
4F206AM23
4F206AP05
4F206JA04
4F206JL09
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP18
4F206JP30
4F206JQ81
4F214AB02
4F214AG20
4F214AH51
4F214AM23
4F214AP05
4F214UA08
4F214UB01
4F214UM81
(57)【要約】
ケーシング装置(1)の製造を改善する方法であって、ケーシング装置(1)のケーシング構成要素(2)が製造され、このケーシング構成要素(2)の製造は、固体発泡体の内部を形成するためのポリマー混合物(4)をキャビティに射出することからなり、このキャビティはケーシング構成要素(2)によって形成され、この射出は射出装置(3)によって行われ、この射出は、射出装置(3)に入力された射出制御データ(5)に基づいて行われる、方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング装置(1)の製造を改善する方法であって、
前記ケーシング装置(1)のケーシング構成要素(2)が製造され、
前記ケーシング構成要素(2)はシェルを含み、
前記ケーシング構成要素(2)の製造は、キャビティ内に固体発泡体内部を生成するためのポリマー混合物(4)を射出することを含み、
キャビティは前記ケーシング構成要素(2)の前記シェルによって形成され、
射出は射出装置(3)によって行われ、
射出は前記射出装置(3)に入力される射出制御データ(5)に基づいて行われ、
前記キャビティ内への前記ポリマー混合物(4)の射出中に、射出プロセスを記述するための形成データ(6)が記録され、
前記キャビティ内に前記ポリマー混合物(4)を射出した後、前記ケーシング構成要素(2)の少なくとも1つの画像が記録され、
前記少なくとも1つの画像は、前記キャビティ内の前記固体発泡体内部の分布を決定するためのサーモグラフィ画像(7)を含み、
前記形成データ(6)、前記少なくとも1つの画像及び前記射出制御データ(5)に基づいて、前記射出装置(3)に入力するための新たな射出制御データ(10)を生成するための予測モデル(8)が更新される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの画像が、前記ケーシング構成要素(2)の欠陥を検出するための目視検査(11)を含み、
好ましくは、前記欠陥が、前記ケーシング構成要素(2)の所定の寸法仕様からの逸脱および/または前記ケーシング構成要素(2)の所定の表面輪郭からの逸脱を含む、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目視検査(11)は、前記ケーシング構成要素(2)のストライプ光走査を含み、
好ましくは、前記目視検査(11)に基づいて前記予測モデル(8)も更新される、
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー混合物(4)のコンポーネントチャージ(12)が前駆体製造設備(13)においてレシピデータ(14)に基づいて前駆体製造プロセスにおいて製造され、
前記コンポーネントチャージ(12)の前記前駆体製造プロセス中に、前駆体製造データ(17)が記録され、
好ましくは、前記予測モデル(8)も、前記前駆体製造データ(17)および/または前記レシピデータ(14)に基づいて更新される、
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体製造データ(17)は、前記コンポーネントチャージ(12)の前記前駆体製造プロセスを制御するための前駆体製造装置(16)に入力される前駆体製造設定(15)を含む、
ことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー混合物(4)の前記コンポーネントチャージ(12)が前駆体貯蔵プロセスで貯蔵され、
前記コンポーネントチャージの前記前駆体貯蔵プロセス中に、前駆体貯蔵データ(19)が記録され、
好ましくは、前記予測モデル(8)も前駆体貯蔵データ(19)に基づいて更新される、
ことを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
電荷特性データ(20)が前記コンポーネントチャージ(12)から測定され、
前記予測モデル(8)も前記電荷特性データ(20)に基づいて更新される、
ことを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記予測モデル(8)は相関変数間の相関を含み、
相関変数は、前記射出制御データ(5)、前記形成データ(6)および前記少なくとも1つの画像、好ましくは、前記サーモグラフィ画像(7)および/または目視検査(11)、レシピデータ(14)、前駆体生成データ(17)、前駆体記憶データ(19)および/または電荷特性データ(20)を含み、
特に、前記予測モデル(8)は、前記予測モデル(8)に入力された前記ポリマー混合物(4)のコンポーネントチャージ(12)の前駆体記憶データ(19)および/または前駆体生成データ(17)および/または電荷特性データ(20)に基づいて新しい射出制御データ(10)を生成するように構成される、
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー混合物(4)を射出する前記射出装置(3)のための前記射出制御データ(5)が、前記射出されたポリマー混合物(4)のコンポーネントチャージ(12)の前駆体貯蔵データ(19)および/または前記前駆体生成データ(17)および/または前記電荷特性データ(20)に基づいて、前記予測モデル(8)によって生成される、
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記予測モデル(8)が、前記相関変数に基づいて、更新されたレシピデータ(21)および/または更新された前駆体製造設定(22)を生成し、
特に、前記更新されたレシピデータ(21)および/または前記更新された前駆体製造設定(22)が、後続のコンポーネントチャージ(12)の製造のために、前記前駆体製造設備(13)、特に前記前駆体製造装置(16)に提供される、
ことを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記予測モデル(8)を更新することは、
前記相関変数の数値解析を含む、
ことを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記射出制御データ(5)が、
材料出力データ、コア温度、金型温度、材料温度、投与圧力、保持時間および/またはポンプ出力を含む、
ことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記形成データ(6)が、
周囲データ、特に温度、空気圧および/または湿度を含み、
好ましくは、前記形成データが、
泡漏れデータを含む、
ことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法において、
前記装置(1)は家電製品であり、好ましくは、冷蔵庫であり、
前記ケーシング構成要素(2)は、冷蔵庫ケーシング構成要素であり、
好ましくは、前記冷蔵庫ケーシング構成要素は、冷蔵庫扉ケース又は冷蔵庫壁ケースである、
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング装置の製造を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなケーシング装置またはケーシング付き装置の一例は家電製品である。家電製品、特に冷蔵庫は、機械的安定性と温度絶縁を提供する両方の役割を果たすケーシング構成要素を含んでいる。このようなケーシング構成要素は、ケーシング構成要素によって形成された適切なキャビティ内への発泡射出成形によって規則的に製造される。特に、キャビティは、ケーシング構成要素のシェルによって形成することができる。例えば、シェルは、ドアのシェルまたは家電製品のキャビネット壁のシェルであってもよい。このような製品の一般的な種類の製品欠陥は、キャビティ内の発泡体の不均一な又は不完全な分布に起因することがある。
【0003】
発泡体の分布におけるこのような不規則性はケーシング構成要素に不規則な力又は歪み荷重をもたらすことがあり、それは、たとえ外側シェル自体が仕様に適合する場合であっても、変形又はケーシング構成要素の所望の形状又は曲率からの逸脱をもたらすことがある。更に、シェル内のこのような不規則な発泡体分布は、ケーシング構成要素の変形を直ちにもたらすのではなく、しばらくして初めてもたらすことができる。変形が数日または数週間後にのみ起こる場合、欠陥は製造ラインまたは工場を出るときに、ケーシング装置の目視検査によって検出されず、販売時点または顧客への納品後にのみ目立つ。さらに、製造中に、例えば赤外走査の手段によって、不規則な泡の分配が検出されたとしても、これまでの選択肢は、それにもかかわらず、ケーシング構成要素を仕様内にあるものとして受け入れるか、またはそれを廃棄物として拒絶するかのいずれかのみであった。しかし、今までのところ、発泡体射出プロセスによるスクラップの発生をいかに減少させ、このプロセスの効率を改善するかという問題は、不十分に対処されてきた。
【0004】
先行技術の韓国特許第20150049921号明細書は合成樹脂発泡および成形製品の製造プロセスを一括して実行する連続発泡成形設備を開示しており、コンベヤ、ターンテーブルなどの移送装置、および射出装置、成形および脱型装置などの加熱装置に多数の型が取り付けられている。アルミニウム製の金型の表面につや消し塗料を塗布することにより、光学式温度計で非接触温度測定を実現できる。
【0005】
米国特許出願公開第2017/0031330号明細書は射出成形が実行されるときに、実行されている射出成形に関連する物理量を観察する状態観察部と、物理量データを記憶する物理量データ記憶部と、機械学習のための報酬条件を設定する報酬条件設定部と、物理量データおよび報酬条件に基づいて報酬を計算する報酬計算部と、報酬計算部によって計算された報酬、動作条件および物理量データに基づいて動作条件を調整する機械学習を実行する動作条件調整学習部とを含む射出成形システムを開示している。
【0006】
欧州特許第1615152号明細書は射出口を通過した通路から発泡ダイスまでの経過時間と厚さ項の項を含む関数として密度を入力し、連続の式と運動方程式に一度に計算した密度を代入して流速と圧力を求め、発泡材料の発泡流動挙動を解析する有限要素法を開示している。
【0007】
ドイツ特許第102006057772号明細書は、液体分散液で満たされた容器を有する装置を開示している。気体供給は液体分散液から泡を発生させるために誘導され、気体は液体分散液中で制御される。製造された発泡体のレベルを決定するためのユニットが提供される。生成された発泡体の導電率の時間分解検出のために、2つの電極が設けられている。生成された発泡体のラメラサイズ(lamella size)を検出するためのビデオカメラが提供される。
【0008】
米国特許出願公開第2016/0274561号明細書は、材料を構成要素に形成する機械を有する製造プロセスを制御する方法を開示している。この方法は、機械のための動作パラメータの初期セットを確立するステップと、機械から初期構成要素を生成するステップと、所望の構成要素に対するその許容性を決定するために構成要素を検査するステップと、構成要素の許容性を改善するために動作パラメータの変動を決定するステップと、動作パラメータの変化をもたらすステップと、それらの許容性を決定するために後続の構成要素を検査するステップとを含む。
【0009】
米国特許出願公開第2004/0059452号明細書はマシンビジョンシステムと組み合わせて使用するための無線画像処理方法および装置を開示しており、無線通信機はデータを分析し、製造プロセスに機能性を決定することができる画像をホストコンピュータに配信する。
【0010】
最も近い先行技術と考えられる米国特許出願公開第2015/0102716号明細書は、冷蔵庫機器を製造する方法を開示している。この方法は、ポリウレタンエラストマーを冷蔵庫機器の内側ライナーの表面上に塗布するステップと、冷蔵庫機器の外側ケースと内側ライナーとの間に画定されたキャビティ内にポリウレタンフォームを射出するステップとを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的はケーシング構成要素又はケーシング装置全体の不合格品を連続的に減少させることができ、製造プロセスの歩留まり及び効率を連続的に増加させることができるように、ケーシング装置の製造を改善する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ケーシング装置の製造を改善する方法に関して、本発明の目的は、請求項1に記載のケーシング装置の製造を改善する方法によって達成される。
【0013】
本発明はケーシング構成要素の目視検査データまたはサーモグラフィ検査データに加えて、フォーム射出成形プロセス自体に関する追加データを使用し、相関させて、更新された射出制御データを得て、製造プロセスを改善することができるという認識に基づく。このようにして、ケーシング構成要素のイメージング及びケーシング装置のケーシング構成要素内に作成された固形発泡体の分析は、ケーシング構成要素が依然として仕様の範囲内にあるか否かを決定するために使用されるだけでなく、発泡体射出成形プロセスの基礎となる射出制御データにフィードバックするための基礎を提供するためにも使用される。したがって、より多くの画像データがあるほど、プロセス自体を改善することができる。
【0014】
本発明による方法は、ケーシング装置の製造を改善するためのものである。本発明の意味におけるケーシング装置は、ケーシングを含む任意の装置である。好ましくは、装置のケーシングが外部ケーシングを提示する。また、ケーシングは、ケーシング装置の外側エンクロージャの一部のみであってもよい。本発明による方法では、ケーシング装置のケーシング構成要素が製造される。ケーシング装置のケーシング構成要素は、ケーシング構成要素によって形成されたキャビティ内に内部発泡体が配置されたケーシング装置の任意の構成要素とすることができる。本発明による方法では、ケーシング構成要素がキャビティを形成するシェルを含む。シェルは、金属およびプラスチックを含む任意の剛性材料によって形成することができる。シェルは、いくつかのシェル構成要素から組み立てることができる。
【0015】
本発明の方法ではケーシング構成要素の前記製造が固体発泡体内部を生成するためのポリマー混合物をキャビティ内に射出することを含み、キャビティはケーシング構成要素のシェルによって形成され、射出は射出装置によって行われる。本発明によれば、前記射出は、射出装置に入力される射出制御データに基づく。前記射出は、発泡射出成形としても知られている周知の反応射出成形プロセスに対応する。射出制御データはポリマー混合物の射出及び発泡体射出成形の他のステップを実行する際に、射出装置の動作を完全に又は部分的に、直接的に又は間接的に決定することができる。
【0016】
本発明による方法では、キャビティへのポリマー混合物の射出中に、射出プロセスを記述するためのデータの形成が記録される。このような成形データは、原則として、発泡体射出成形プロセスに関連する射出プロセス中または射出プロセス直後に記録される任意の種類のデータであってもよい。さらに、本発明による方法では、ポリマー混合物をキャビティ内に射出した後、ケーシング構成要素の少なくとも1つの画像が記録される。少なくとも1つの画像はケーシング構成要素全体を覆ってもよいし、ケーシング構成要素の一部のみを覆ってもよい。さらに、少なくとも1つの画像の各々は、それ自体が画像シリーズまたはビデオであってもよい。
【0017】
本発明による方法では、形成データ、少なくとも1つの画像、および射出制御データに基づいて、射出装置に入力するための新しい射出制御データを生成するための予測モデルが更新される。言い換えれば、予測モデルは、原則として任意の種類のデータであってもよい予測モデルに提供される入力に基づいて、射出装置に続いて入力することができる新しい射出制御データを生成するように構成される。形成データ、少なくとも1つの画像、および射出制御データは、予測モデルを更新または適応させるために使用され、したがって、予測モデルが新しい射出制御データをどのように生成するかを更新または適応させるために使用される。次いで、この新しい射出制御データは、関連する射出制御データが予測モデルを更新するために使用される射出に続いて、ポリマー混合物の射出のために使用され得る。
【0018】
好ましくは、ケーシング構成要素がケーシング装置構成要素-言い換えるとケーシング装置の構成要素-と共に組み立てられ、サーモグラフィ画像の記録後に組み立てられたケーシング装置を形成する。
【0019】
少なくとも1つの画像は、原則として、任意の種類の画像データを含むことができる。
【0020】
本方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの画像がケーシング構成要素の欠陥を検出するためのケーシング構成要素の目視検査を含む。特に、目視検査は、可視スペクトル内にあってもよい。原則として、目視検査は、任意の種類の欠陥に関係し得る。目視検査は、ケーシング構成要素全体又はケーシング構成要素の一部のみに関わる場合がある。ここで言及される欠陥は、所定の寸法仕様からのケーシング構成要素の逸脱を含むことが好ましい。代替的に又は追加的に、ここで言及される欠陥は、所定の表面輪郭からのケーシング構成要素の逸脱を含むことができる。
【0021】
また、ケーシング構成要素が組み立てられて組み立てられたケーシング装置を形成した後に目視検査が記録されることもある。この場合、組み立てられたケーシング装置の目視検査が、組み立てられたケーシング装置の欠陥を検出するために記録されることが好ましい。好ましくは、欠陥は、組み立てられたケーシング装置の所定の寸法仕様からの逸脱および/または組み立てられたケーシング装置の所定の表面輪郭からの逸脱を含む。
【0022】
記録された目視検査は、単一の画像を含むことができる。それはまた、一連の画像またはビデオを含んでもよい。本方法のさらなる好ましい実施形態では、目視検査が好ましくは組み立てられたケーシング装置のケーシング構成要素のストライプ光走査を含む。予測モデルも目視検査に基づいて更新されることがさらに好ましい。従って、予測モデルの改良のための追加的な入力があり、それにより予測モデルをより信頼性のあるものにするのに役立つ。
【0023】
本発明による方法では、少なくとも1つの画像が空洞内の固体発泡体内部の分布を決定するためのサーモグラフィ画像を含む。サーモグラフィ画像は、特に赤外線画像であってもよい。好ましくは、サーモグラフィ画像が発熱発泡生成反応によって生成される残留熱に基づく。特に、固体発泡体内部の分布は、キャビティ内の残留熱の分布に基づいて決定されてもよい。このアプローチにより、キャビティの外側に配置されたカメラでキャビティ内の状態に関する情報を得ることができる。サーモグラフィ画像は、目視検査が記録される前に記録されることがさらに好ましい。
【0024】
原則として、固体発泡体内部は、任意の種類の固体発泡体であってよく、したがって任意の発泡体材料からなる。特に、固体発泡体内部は、ポリマー発泡体内部であってもよい。好ましい実施形態では、固体発泡体内部がポリウレタン発泡体内部である。固体発泡体内部は、熱可塑性ポリウレタン発泡体内部であっても、熱硬化性ポリウレタン発泡体内部であってもよい。
【0025】
ポリウレタンは、消費者が毎日使用する主要な器具において重要な成分である。主要な器具のポリウレタンの最も一般的な用途は、冷蔵庫及び冷凍庫の断熱システム用の硬質発泡体である。硬質ポリウレタンフォームは、消費者用冷蔵庫および冷凍庫において必要とされるエネルギー定格を満たすために使用される費用効果の高い材料であり得る。硬質ポリウレタンフォームの良好な断熱特性は、微細な独立気泡フォーム構造と、不十分な熱伝導体である気泡ガスとの組み合わせに起因する。
【0026】
ケーシング構成要素は、外側ケーシング及び内側ライナーを備えることができる。特に、シェルは、外側ケーシング及び内側ライナーを含むことができる。外側ケーシングは、シートメタルを含んでもよく、またはシートメタルからなってもよい。内側ライナーは、ポリスチレンを含んでもよく、またはポリスチレンからなってもよい。キャビティは、外側ケーシングと内側ライナーとの間に形成されることが好ましい。固体発泡体内部は、構造材料及び断熱材料の両方として作用することができる。好ましくは、固体発泡体内部がケーシング構成要素と接着結合を形成する。特に、固体発泡体内部は、外側ケーシング及び内側ライナーと接着結合を形成することができる。したがって、断熱に加えて、固体発泡体内部は、構造的安定性を伝えることができる。
【0027】
原則として、ポリマー混合物のコンポーネントチャージ(component charge)は、任意の供給源から提供されてもよく、また、仕様以外にそれについての情報が存在しなくてもよい。しかしながら、本方法の好ましい実施形態は、ポリマー混合物のコンポーネントチャージが前駆体製造設備でのレシピデータに基づいた前駆体製造プロセスにおいて生成され、コンポーネントチャージ前駆体製造データの前駆体製造プロセスの間に記録されることを特徴とする。コンポーネントチャージは、発泡体射出成形プロセスに使用されるポリマー混合物を構成する任意の成分の単一チャージである。レシピデータはコンポーネントチャージのための処方、すなわち、コンポーネントチャージを生成するために使用される特定の成分およびそれらの比率を規定する。好ましくは、予測モデルはまた、前駆体生産データおよび/またはレシピデータに基づいて更新される。したがって、予測モデルをさらに改善するために、上流の生産ステップからのこの追加のデータも関与させることができる。
【0028】
本方法のさらに好ましい実施形態は、コンポーネントチャージがポリイソシアネートチャージまたはポリオールチャージであることを特徴とする。ポリイソシアネートおよびポリオールは、反応してポリウレタンを生成し得る。したがって、コンポーネントチャージは、それぞれの他の反応物質と固体発泡体を内部に形成するのに適している。
【0029】
原則として、前駆体生成データは、前駆体生成プロセスの間に測定され、何らかの方法でコンポーネントチャージの生成に関連付けられた任意のデータとすることができる。本方法の好ましい実施形態によれば、前駆体製造データは特に、コンポーネントチャージの前駆体製造プロセスを制御するために前駆体製造装置に入力されるユーザ設定可能な前駆体製造設定を含む。したがって、前駆体製造設定は、前駆体製造プロセスにおける前駆体製造装置の動作を直接的または間接的に決定する。
【0030】
本方法のさらに好ましい実施形態によれば、前駆体生成データは、コンポーネントチャージの前駆体生成プロセス中に測定された前駆体測定データを含む。原則として、これは、コンポーネントチャージの前駆体製造プロセスに関して測定される任意の種類のデータであってもよい。
【0031】
本方法の好ましい実施形態はポリマー混合物のコンポーネントチャージが前駆体貯蔵プロセスに貯蔵され、コンポーネントチャージの前駆体貯蔵プロセス中に、前駆体貯蔵データが記録されることを特徴とする。したがって、前駆体電荷を貯蔵する状況がどのようなものであったかについての情報がある。予測モデルも、前駆体記憶データに基づいて更新されることがさらに好ましい。コンポーネントチャージの貯蔵中の条件及びコンポーネントチャージの貯蔵の持続時間は実質的な方法で、例えば、コンポーネントチャージの早期劣化を引き起こすことによって、後続の発泡体射出成形の品質に影響を及ぼし得る。
【0032】
本方法のさらなる好ましい実施形態は、予測モデルが相関変数間の相関を含み、この相関変数が射出制御データ、形成データ、および少なくとも1つの画像、好ましくはサーモグラフィ画像および/または目視検査を含むことを特徴とする。言い換えれば、予測モデルは予測モデルへの入力としての1つまたは複数の他の相関変数に基づいて、予測モデルの出力として相関変数の1つまたは複数を数値的に、分析的に、または任意の他の潜在的に近似的な方法で決定する能力を提供する。予測モデルは、ソフトウェア、ソフトウェアの一部、またはソフトウェアが動作するパラメータなどのデータセットであってもよい。予測モデルは、単一のコンピュータ、コンピュータのグループ、または分散またはクラウドコンピューティング環境によって実行されてもよい。
【0033】
相関変数は、レシピデータ、前駆体生成データ、前駆体記憶データ、および/または電荷特性データも含むことが好ましい。特に、予測モデルは、予測モデルに入力されたポリマー混合物のコンポーネントチャージの前駆体貯蔵データおよび/または前駆体生成データおよび/または前駆体生成データに基づいて新しい射出制御データを生成するように構成されることが好ましい。このようにして、例えばスクラップの低減、品質の改善、またはプロセスの高速化に有利であり、かつ、これまでの特定のコンポーネントチャージの特性およびその製品履歴を考慮に入れて特に計算された、そのような射出制御データを得ることが可能である。
【0034】
本方法の好ましい実施形態では、ポリマー混合物を射出する射出装置のための射出制御データが前駆体貯蔵データおよび/または前駆体生成データおよび/または射出されたポリマー混合物のコンポーネントチャージの電荷特性データに基づいて予測モデルによって生成される。したがって、生成された射出制御データは、発泡射出成形プロセスにおいて実際に適用される。
【0035】
本方法のさらなる好ましい実施形態では、予測モデルが、相関変数に基づいて、更新されたレシピデータおよび/または更新された前駆体生成設定を生成する。特に、提供される更新されたレシピデータおよび/または更新された前駆体製造設定は後続のコンポーネントチャージの製造のために、前駆体製造設備、特に前駆体製造装置に提供されてもよい。したがって、予測モデルは発泡体射出成形プロセスを調整することによってケーシング構成要素を改善することができるだけでなく、より適切な構成要素チャージを得るために、上流の前駆体製造プロセスに更新を提供することもできる。
【0036】
原則として、予測モデルは、任意のメカニズムに基づいて更新されてもよい。本方法の好ましい実施形態は、予測モデルの更新が相関変数の数値解析を含むことを特徴とする。
【0037】
本方法のさらなる好ましい実施形態は、射出制御データが材料出力データ、コア温度、金型温度、材料温度、投与圧力、保持時間、および/またはポンプ出力を含むことを特徴とする。
【0038】
本方法の好ましい実施形態によれば、形成データは、周囲データ、特に温度、空気圧及び/又は湿度を含む。形成データは、泡漏れデータを含むことがさらに好ましい。特に、泡漏れデータは、射出プロセス中および/または射出プロセスの結果として漏れた泡の量を表すことができる。
【0039】
本方法の好ましい実施形態は、ケーシング装置が家電製品であることを特徴とする。特に、ケーシング装置が冷蔵庫であり、ケーシング構成要素が冷蔵庫ケーシング構成要素である場合がある。冷蔵庫ケーシング構成要素は、冷蔵庫のドアケースまたは冷蔵庫の壁ケースであることがさらに好ましい。
【0040】
さらなる有利で好ましい特徴は、図面に関する以下の説明において議論される。以下にそれを示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による方法の実施形態を実施するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に示すシステムはケーシング装置1の製造工程に関するものであり、本件ではケーシング装置1は家電製品であり、特に冷蔵庫である。ケーシング装置1の製造の一部として、ケーシング装置1のケーシング構成要素2が製造され、このケーシング構成要素2は、本件の場合、シェル付き冷蔵庫扉である。射出装置3において、ポリマー混合物4は、冷蔵庫ドアのシェルによって形成されたキャビティ内に射出される。この射出は、フォーム射出成形プロセスの一部として行われる。このようにして、シェルによって形成されたキャビティ内に固体形状の内部が形成され、それによってケーシング構成要素2が製造される。射出装置3の動作は、射出制御データ5によって制御される。発泡体射出成形プロセスの間、形成データ6は、射出プロセスを記述するための測定値を提供するために記録される。
【0043】
射出処理の後、サーモグラフィ画像7である画像が赤外線カメラによって記録される。記録された熱分布に基づいて、ケーシング構成要素2のキャビティ内の固体発泡体内部の分布を決定することができる。形成データ6、サーモグラフィ画像7、および射出制御データ5はソフトウェアアプリケーションとして実装され、分析システム9に常駐する予測モデル8を更新するために分析システム9に提供され、予測モデル8は射出装置3に入力するための新しい射出制御データ10を生成するように構成される。このような新しい射出制御データ10はそれ自体が不完全であってもよく、例えば、射出制御データ5に関する修正情報であってもよく、これは、それによって、ベースラインとしての役割を果たす。
【0044】
サーモグラフィ画像7に加えて、ケーシング構成要素2がケーシング装置1になるように組み立てられた後に、ここでは目視検査11であるさらなる画像が記録され、この画像は、ケーシング装置1上の欠陥として偏位した表面輪郭を検出するためのストライプ光走査を行うことを含む。
【0045】
前駆体製造設備13は、ここではポリオールチャージでポリマー混合物4のコンポーネントチャージ12を生成する。この製造は、一方ではレシピデータ14と、前駆体製造設備13の前駆体製造装置16に入力される前駆体製造設定15とに基づいている。前駆体製造プロセスの間、前駆体製造測定データ18が記録され、前駆体製造設定15と共に前駆体製造データ17を形成する。
【0046】
射出プロセスの前に、コンポーネントチャージ12は、しばらくの間貯蔵される。前駆体貯蔵プロセスを記述する前駆体記憶データ19は、貯蔵時間、ならびに温度、気圧および湿度などの周囲変数を含めて記録される。同様に、電荷特性データ20を測定し、記録するために、コンポーネントチャージ12について試験が行われる。
【0047】
目視検査11、レシピデータ14、前駆体記憶データ19、電荷特性データ20、および前駆体製造データ17は、目視検査11、レシピデータ14、前駆体記憶データ19、電荷特性データ20、および前駆体製造データ17に基づいて予測モデル8を更新するために、分析システム6にも提供される。
【0048】
特に、数値解析の手段によって、予測モデル8は、分析システム6に提供される様々なデータの継続的な提供に基づいて更新される。このようにして、これらの相関値間の相関、依存性、および関数関係を識別し、それに応じて予測モデル8を更新することができる。
【0049】
次いで、予測モデル8は、例えば特定の状況下での欠陥の回避に特に適した新しい射出制御データ10を提供することができる。例えば、予測モデル8は、前駆体記憶データ19によって示されるような特定の状況下で貯蔵されたコンポーネントチャージ12について、不規則な発泡体分布を回避するように発泡体射出成形プロセスを調整するために新しい射出制御データ10を生成しなければならないという条件で、情報の利点を用いて決定することができる。一方、わずかに異なるレシピデータ14を有するコンポーネントチャージ12は同じ欠陥を回避するために、異なる新しい射出制御データ10を必要とすることがある。大量の相関値を処理することは、例えば、予測モデル8に反映される数値解析によって、そのような洞察に到達するのを助けることができる。新しい射出制御データ10の他に、予測モデル8はまた、更新されたレシピデータ21および更新された前駆体製造設定22を提供し、これらは両方とも、後続のコンポーネントチャージ12のための前駆体製造プロセスを改善するために、前駆体製造設備13、特に前駆体製造装置16に提供される。
図1
【国際調査報告】