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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】VFA送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/372 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A61N1/372
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519691
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 US2019061601
(87)【国際公開番号】W WO2020102622
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/768,891
(32)【優先日】2018-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/683,413
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507020152
【氏名又は名称】メドトロニック,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ボナー,マシュー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】アスルソン,アンドレア・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】カーバー,ジーン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ヒルピシュ,キャスリン・イー
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB13
4C053CC02
4C053KK02
4C053KK10
(57)【要約】
機器、システム、および方法は、心房から心室(VfA)の心臓治療のための埋め込み型医療機器を送達する。VfA機器は、右心房から左心室心筋に延びる電極を備えた右心房(RA)に埋め込まれ得る。可撓性リードまたは別のプローブを潜在的な埋め込み部位に進め、電極、リードレット、リード、または心臓内機器などの医療機器の埋め込みのための正確な位置を特定するために使用し得る。いくつかの方法は、患者の心臓の右心房のKoch三角領域に潜在的な埋め込み部位を位置付けることと、潜在的な埋め込み部位の右心房心内膜に固定シースを取り付けることと、潜在的な埋め込み部位でガイドワイヤを介して医療機器を埋め込むことと、を含み得る。埋め込み型医療機器は、心臓内ハウジングおよびリードレットを含み得、これらは、これらの方法によって送達され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器送達システムであって、
患者の心臓の右心房のKoch三角領域の右心房心内膜に取り付け可能な固定要素を含む固定シース(fixation sheath)と、
前記固定シースを操縦するように構成された操縦可能要素と、
前記固定シースの管腔内に少なくとも部分的に配置可能な可撓性針と、
前記固定シースの前記管腔内に少なくとも部分的に配置可能なガイドワイヤと、を備える、医療機器送達システム。
【請求項2】
前記固定要素が、らせん状の取り付け要素を含み、前記固定シースが、前記操縦可能要素に対して自由に回転可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ガイドワイヤが、前記可撓性針の管腔内に少なくとも部分的に配置可能である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記固定シースの前記管腔内に少なくとも部分的に配置可能な拡張器をさらに備え、前記可撓性針が、前記拡張器の管腔内に少なくとも部分的に配置されている、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記可撓性針が、前記固定シースに対して長手方向に自由に並進可能(translatable)である、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記患者の心臓の前記右心房の前記Koch三角領域の前記右心房心内膜に埋め込むために、前記ガイドワイヤの上をまたは前記ガイドワイヤに沿って滑る(run)ように構成された埋め込み型医療機器をさらに備える、請求項1~5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記埋め込み型医療機器が、右心房電極、左心室電極、心臓内ペーシング機器、リードレット(leadlet)、およびリードのうちの1つ以上を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記埋め込み型医療機器が、前記右心房の前記Koch三角領域から前記右心房心内膜(right-atrial endocardium)および中心線維体(central fibrous body)を通って埋め込み可能な前記左心室電極であって、患者の心臓の左心室心筋の基底領域(basal region)および/または中隔領域(septal region)において、左心室に心臓治療を提供するか、または前記左心室の電気的活動を検知するように構成されている、前記左心室電極を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記埋め込み型医療機器が、前記患者の心臓の前記右心房に心臓治療を提供するか、または前記右心房の電気的活動を検知するように構成されている、請求項7または8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本技術は、概して、埋め込み型医療機器を送達するための機器、システム、および方法に関する。
【0002】
心臓伝導系には、洞房(SA)結節、房室(AV)結節、ヒス束、脚、およびプルキンエ線維が含まれる。心拍は、心臓の自然な「ペースメーカー」として説明され得るSA結節において開始される。SA結節から生じる電気インパルスにより、心房心筋が収縮する。電気インパルス、もしくは電気パルスまたは信号は、AV結節を介して心室に伝導され、心室が収縮し始める前に心房が収縮を停止させるように伝導を先天的に遅らせ、それによって適切なAV同期を提供する。電気インパルスは、AV結節から、ヒス束、脚、およびプルキンエ線維を介して心室心筋へ伝導される。
【0003】
AV結節の伝導不良またはSA結節機能の低下などの伝導系異常のある患者は、ペースメーカーなどの埋め込み型医療機器(IMD)を受け入れ、より正常な心調律とAV同期を回復することがある。心臓ペースメーカー、埋め込み型除細動器(ICD)、または心臓再同期治療(CRT)機器など、いくつかのタイプのIMDは、心臓内または心臓に隣接して位置決めされている1つ以上の埋め込み型の心内膜、心外膜、または冠状静脈リードにおける電極を介して、患者の心臓に治療用電気刺激を提供する。治療用電気刺激は、ペーシング、電気的除細動、または除細動のためのパルスまたはショックの形で心臓へ提供されてもよい。場合によっては、IMDは、心臓の内因性脱分極を検知し、その検知に基づいて心臓への治療刺激の送達を制御してもよい。
【0004】
心臓への治療用電気刺激の提供は、患者において発生することがある心室同期不全などの心臓状態に対処するのに有用である可能性がある。心室同期不全は、同期の欠如、または心臓の右心室と左心室の収縮のタイミングの違いとして説明されてもよい。収縮のタイミングの大きな違いは、心臓の効率を低下させる可能性がある。IMDによって心臓に提供されるCRTは、心臓の心室の電気機械的活動を再同期させることによって心拍出量を高めることがある。CRTは、右心房、右心室、および左心室をペーシングするときの「トリプルチャンバペーシング」を含んでもよい。
【0005】
心不整脈は、例えばICDから、心臓ペーシングに加えて心臓を電気的除細動または除細動するための電気ショック治療を提供することによって治療されてもよく、ICDは、患者の心拍を検知し、頻脈または細動の発現を検出するために不整脈検出スキームに従って拍を分類してもよい。検出される不整脈には、心室性頻脈(VT)、高速心室性頻脈(FVT)、心室細動(VF)、心房性頻脈(AT)、および心房細動(AT)が含まれ得る。心室性頻脈(VT)を治療し、多くの単形性の速いリズムを実質的に終了させるために、抗頻脈ペーシング(ATP)を使用することができる。
【0006】
デュアルチャンバ医療機器が利用可能であり、デュアルチャンバ医療機器は、右心房に配置されてもよい経静脈心房リード搬送電極と、右心房を介して右心室に配置されてもよい経静脈心室リード搬送電極と、を含む。デュアルチャンバ医療機器自体は、概して、皮下ポケットに埋め込まれ、経静脈リードは皮下ポケットにトンネリングされる。デュアルチャンバ医療機器は、心房電気信号および心室電気信号を検知し、正常な心臓リズムとAV同期を促進するために必要に応じて心房ペーシングおよび心室ペーシングの両方を提供することができる。いくつかのデュアルチャンバ医療機器は、心房性不整脈および心室性不整脈の両方を治療することができる。
【0007】
リードレスペースメーカーなどの心臓内医療機器は、患者の心臓内に完全に埋め込むために導入または提案されており、経静脈リードの必要性を排除する。リードレスペースメーカーは、治療用電気信号を送達するため、および/または心臓の内因性脱分極を検知するために、その外側ハウジングに1つ以上の電極を含んでもよい。心臓内医療機器は、患者の心臓のシングルチャンバ内で、検知およびペーシングなどの心臓治療機能を提供してもよい。シングルチャンバ心臓内機器は、心房性もしくは心室性の不整脈または細動のいずれかを治療し得る。いくつかのリードレスペースメーカーは心臓内式ではなく、心臓の外側に位置決めされてもよく、いくつかの例では、固定メカニズムを介して心臓の壁に固定されてもよい。
【0008】
一部の患者において、シングルチャンバ機器は、患者のニーズに適切に対処し得る。しかしながら、シングルチャンバの検知および治療のみが可能なシングルチャンバ機器は、すべての患者、例えば、いくつか形式のAV同期不全または頻脈を持つ患者の心臓伝導性疾患または異常に完全に対処できないことがある。より正常な心臓リズムを回復するために、場合によってはICD機能に加えてデュアルチャンバ検知および/またはペーシング機能が使用されてもよい。
【発明の概要】
【0009】
本開示の技法は、概して、シングルチャンバまたはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、房室同期ペーシング、非同期ペーシング、トリガ型ペーシング、心臓再同期ペーシング、または頻脈関連治療などの、心房からの心室(VfA)の心臓治療のための埋め込み型医療機器を送達するための、機器、システム、および方法に関する。VfA機器は、右心房から左心室心筋に延びる電極を備えた右心房(RA)に埋め込まれ得る。特に、本開示は、右心房のKoch三角領域に医療機器を送達および埋め込むための技法を提供する。様々な機器を使用して、潜在的な埋め込み部位として説明され得るKoch三角領域の概略位置を特定し得る。可撓性リードまたは別のプローブを潜在的な埋め込み部位に進め、電極、リードレット、リード、または心臓内機器などの医療機器の埋め込みのための正確な位置を特定するために使用し得る。いくつかの実施形態では、VfA機器は、組織貫通電極または左心室電極を含み得る。有利には、1つ以上の実施形態では、本開示の技法を使用して、1つ以上のVfA機器をVfA心臓治療のための埋め込み部位に正確に送達し得る。特に、本開示の技法は、同期不全の患者に同期ペーシングを提供するための機器を埋め込むために、ならびに中等度の心不全を有する徐脈患者にデュアルチャンバペーシングを提供するために使用され得る。
【0010】
一態様では、本開示は、医療機器を送達するための方法を提供する。本方法は、患者の心臓の右心房のKoch三角領域に潜在的な埋め込み部位を位置付けることを含む。本方法はまた、潜在的な埋め込み部位の右心房心内膜に固定シースを取り付けることを含む。本方法は、潜在的な埋め込み部位でガイドワイヤを介して医療機器を埋め込むことを含む。
【0011】
別の態様では、本開示は、医療機器送達システムを提供する。システムは、患者の心臓の右心房のKoch三角領域の右心房心内膜に取り付け可能な固定要素を有する固定シースを含む。システムはまた、固定シースを操縦するように構成された操縦可能要素を含む。システムは、固定シースの管腔内に少なくとも部分的に配置可能な可撓性針を含む。システムは、固定シースの管腔内に少なくとも部分的に配置可能なガイドワイヤをさらに含む。
【0012】
別の態様では、本開示は、心臓内ハウジングおよび心臓内ハウジングに結合されたリードレットを含む埋め込み型医療機器を提供する。機器はまた、心臓内ハウジング、リードレット、またはその両方に結合された複数の電極を含む。複数の電極は、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域において、左心室に心臓治療を提供するか、または左心室の電気的活動を検知するために、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って埋め込み可能な左心室電極を含む。患者の心臓の右心房に心臓治療を提供するか、または右心房の電気的活動を検知するために、右心房内に位置決め可能な右心房電極を含む。システムは、患者の心臓に心臓治療を提供するために複数の電極に動作可能に結合された治療提供回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するために複数の電極に動作可能に結合された検知回路と、を含む。システムは、治療提供回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を有するコントローラをさらに含む。コントローラは、右心房電極を使用して右心房、左心室電極を使用して左心室、またはその両方の電気的活動を監視するように構成されている。コントローラはまた、複数の電極のうちの少なくとも1つを使用して監視された電気的活動に基づいて心臓治療を提供するように構成されている。
【0013】
本開示の1つ以上の態様の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本開示に記載される技法の他の特徴、目的、および利点は、本明細書および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】患者の心臓に埋め込まれた心臓内医療機器と、例えば、図16図20の例示的な方法で使用するために患者の心臓の外側に位置決めされた別個の医療機器と、を含む、例示的な心臓治療システムの概念図である。
図2】例えば、図16図20の例示的な方法で使用するために患者の心臓に埋め込まれた電極を備えたリードを含む医療機器を含む例示的な心臓治療システムの概念図である。
図3】例えば、図16図20の例示的な方法で使用するために患者の心臓に埋め込まれた電極を備えたリードを含む医療機器を含む例示的な心臓治療システムの概念図である。
図4】例えば、図16図20の例示的な方法で使用するために患者の心臓に埋め込まれた電極を備えたリードを含む医療機器を含む例示的な心臓治療システムの概念図である。
図5図1の心臓内医療機器および患者の心臓の解剖学的構造の拡大概念図である。
図6】左心室の標準的な17セグメントビューにおける患者の心臓のマップの概念図であり、例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための様々な電極埋め込み位置を示している。
図7】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するためのリング電極として実装された遠位ハウジングベース電極を含む、遠位固定および電極アセンブリを有する心臓内医療機器の斜視図である。
図8】例えば、本明細書に記載の機能および治療を提供するために、図1図4および図22の医療機器のハウジング内に封入され得る例示的な回路のブロック図である。
図9】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための別の例示的な心臓内医療機器の斜視図である。
図10】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための心房運動検出器を使用して心房活動を検出する例示的な方法のフローチャートである。
図11】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための生理学的応答情報を表すための心音を検出する例示的な方法のフローチャートである。
図12】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための生理学的応答情報を表すための生体インピーダンスを検出する例示的な方法のフローチャートである。
図13】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための、電極装置、表示装置、および演算装置を含む例示的なシステムの図である。
図14】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
図15】例えば、図1図4および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための胴体表面電位を測定するための例示的な外部電極装置の図である。
図16】例えば、図1図4図13図15、および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するためのVfA医療機器を送達するための例示的な方法の概念図である。
図17】例えば、図16の方法で使用するために、Koch三角領域内に潜在的な埋め込み部位を位置付けるための例示的な方法の概念図である。
図18】例えば、図16の方法で使用するために、潜在的な埋め込み部位において右心房心内膜に固定シースを取り付けるための例示的な方法の概念図である。
図19】例えば、図16の方法で使用するために潜在的な埋め込み部位が受け入れ可能であるかどうかを決定するための例示的な方法の概念図である。
図20】例えば、図16の方法で使用するための医療機器の潜在的な埋め込み部位を準備するための例示的な方法の概念図である。
図21】例えば、図16図20の方法および/または図1図4図13図15、および図22の例示的なシステムおよび機器とともに使用するための医療機器送達システムの図である。
図22】例えば、図16図20の方法および/または図21の医療機器送達システムを使用して埋め込まれ得る埋め込み型医療機器の図である。
図23図21の医療機器送達システムの一例を示す図である。
図24図23の医療機器送達システムの構成要素をキットとして示す図である。
図25】リードとともに使用する図23の医療機器送達システムを示す図である。
図26】冠状静脈洞(CS)のカテーテルと中心臓静脈のガイドワイヤのX線画像である。図26Aは、横方向の画像が横方向に90度および頭蓋方向に25度であることを示す。弁面は、CSのカテーテルの曲線で示されている。図26Bは、心臓の背腹(DV)図を示しており、弁面のほぼ垂直な図を示している。角度は、横方向に0度、頭蓋方向に25度である。
図27】最初の貫通時のflexcath(例えば、操縦可能なシース)と針との配向を示すX線画像である。図27Aは、側面図を示す。図27Bは、DV図を示す。針の方向は、側面図では十分に先端がなく、DV図では、大動脈に向けられていない。flexcathおよび/またはらせんは、中心臓静脈(MCV)シースとCSシースとの交差によって示されるCS口内にある。
図28】第2の埋め込み位置と、上部に拡張器を備えた針と、を示すX線画像である。加えて、0.014インチのワイヤが左心室(LV)まで延ばされる。図28Aは、側面図である。図28Bは、DV図である。
図29】右心房(RA)からLVまで交差するガイドワイヤ上に配置されたリードの最終位置を示すX線画像である。電極は、リード線上に表示されている。図29Aは、側面図である。図29Bは、DV図である。
図30】flexcath、MCVリードカテーテル、およびCSカテーテルを示す、組織への針およびワイヤの2回目の通過を示す画像である。MCVシースおよびCSシースは、CS口のすぐ近くで交差している。図30Aは、側面図である。図30Bは、DV図である。
図31】最初の針の位置とワイヤ通路とを示すらせんの画像である。この試みの入口は、CS内にあるが、それでも三尖弁の近くであった。
図32】LVチャンバへのリード出口の画像である。リードは、三尖弁輪の近くの非常に低いCS口から、LVの後乳頭筋まで進んでいる。図32Aは、側面図である。図32Bは、DV図である。
図33】CS内のカテーテルとMCB内のワイヤとのX線画像である。図33Aは、側面画像が横方向に90度および頭蓋方向に25度であることを示している。弁面は、大動脈弁と並んでいるCSのカテーテルの曲線によって示されている。図33Bは、弁面のほぼ垂直な図を示す心臓のDV図を示している。角度は、横方向に0度、および尾方向に25度である。大動脈弁は、LVの中央にある。
図34】LVへの造影剤注入のX線画像である。図34Aは、側面図である。図34Bは、DV図である。
図35】最初の貫通時のflexcathと針との配向を示すX線画像である。図35Aは、側面図である。針の方向は、バルブ面のわずかに先端にある。図35Bは、DV図である。針の方向は大動脈に向かっているが、flexcathの先端はCSから遠く離れている。
図36】最初の埋め込み位置と、LV内に延びた拡張器を備えた針とを示すX線画像である。図36Aは、側面図である。図36Bは、DV図である。
図37】RAからLVへのリード交差の最終位置を示すX線画像である。側面図は、らせんのリードを示し、DV図は、LVチャンバのリード先端を示している。側面図のリード線のコースは、ガイドワイヤで示されている。図37Aは、側面図である。図37Bは、DV図である。
図38】針挿入前のflexcathの位置およびらせんを示すリードの2回目の埋め込みを示すX線画像である。図38Aは、側面図である。図38Bは、DV図である。
図39】針およびLV内に延びた拡張器を示すX線画像である。図39Aは、側面図である。図39Bは、DV図である。
図40】LV内に延びたワイヤ上の双極リードを示すX線画像である。図40Aは、側面図である。リードは、やや先端に進み、ワイヤはLV内にある。図40Bは、DV図である。リードは、大動脈に向かって進む。
図41】flexcathとCSカテーテルとを示す、組織への針とワイヤとの2回目の通過を示す画像である。MCVへの入口は示されていない。図41Aは、側面図である。図41Bは、DV図である。
図42】口の近くのCS内のリード入口部位を示す画像である。図42Bに見られ得るように、その部位は基部のすぐ上にある。示されているリード入口部位からの画像では、別の入口の部位が約1cm「下」に現れている。この別の入口の部位は、最初の、または元の貫通部位であり得、その後、2回目の試行を行う前にツールが取り外された。図42Aは、側面図である。図42Bは、DV図である。
図43】左側のチャンバのリード先端を示す画像である。弁は、僧帽弁であり、図43Aおよび図43Bの両方において、リード先端が後乳頭筋の下から突き出ているのが見られ得る。これは、チャンバの中央よりもLVの壁に向かって現れる。図43Aは、側面図である。図43Bは、DV図である。
図44】中隔を交差するリードを示す画像である。交差は、組織に対して比較的垂直である。これは変更できるが、ここでの目標は、垂直な経路でLVチャンバに出ることにあった。図44Aは、側面図である。図44Bは、DV図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の技法は、概して、シングルチャンバまたはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、房室同期ペーシング、非同期ペーシング、トリガ型ペーシング、心臓再同期ペーシング、または頻脈関連治療などの、心房から心室(VfA)の心臓治療のための埋め込み型医療機器を送達するための、機器、システム、および方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の様々な技法もまた、ヒス束ペーシング用途に適用され得る。本明細書では、ペースメーカーまたはICDなどの埋め込み型医療機器について言及しているが、その方法およびプロセスは、患者の心臓に関連する任意の医療機器、システム、または方法とともに使用することができる。様々な他の用途が、本開示の利益を有する当業者に明らかになるであろう。
【0016】
経静脈リードのない埋め込み型医療機器(例えば、リードレス機器)を提供することは有益であることがある。シングルまたはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、房室同期ペーシング、非同期ペーシング、トリガ型ペーシング、心臓再同期ペーシング、または頻脈関連治療などの様々な心臓治療のために使用できる埋め込み型医療機器を提供することも有益であり得る。さらに、心内膜および/またはヒス束伝導系のペーシングを容易にするために、医療機器を右心房のKoch三角領域に精密かつ正確な方法で送達するための技法を提供することが有益であり得る。
【0017】
本開示は、組織貫通電極および任意選択的に右心房電極および/または右心房運動検出器を含む、埋め込み型医療機器を提供する。埋め込み型医療機器は、右心房から左心室心筋に埋め込まれるVfA機器であってもよい。埋め込み型医療機器は、例えば、少なくとも測定された心拍数に基づいてペーシング遅延を適応させる適応心臓治療において使用され得る。生理学的反応の測定が行われてもよく、VfA機器は、生理学的反応情報に基づいて心臓治療を送達するように構成され得る。特に、VfA機器は、例えば、最適な房室(AV)ペーシング遅延を伴うペーシング治療を決定および送達することによって、異なる心拍数に基づいてペーシング治療を適応させるように構成され得る。有利には、1つ以上の実施形態では、患者の心臓の右心室の監視された電気的活動を使用せずにペーシング治療を較正または提供するために、本開示の技術が使用されてもよい。
【0018】
組織貫通電極は、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域に埋め込まれ得る。リードレス埋め込み型医療機器では、組織貫通電極は、機器のハウジングの遠位端領域からリードレスに延びていてもよく、右心房電極は、ハウジングにリードレスで結合されてもよい(例えば、ハウジングの一部であるか、またはハウジングの外側に位置決めされる)。右心房運動検出器は、埋め込み型医療機器内にあってもよい。リード付き埋め込み型医療機器では、1つ以上の電極は、埋め込み型リードを使用してハウジングに結合されてもよい。機器が埋め込まれるとき、電極は、患者の心臓の1つ以上の心房および/または心室の電気的活動を検知するために使用されてもよい。運動検出器は、患者の心臓の1つ以上の心房および/または心室の機械的活動を検知するために使用されてもよい。特に、右心房および左心室の活動が監視されてもよく、任意選択的に、右心室の活動が監視されてもよい。電極は、心房細動のためのシングルチャンバペーシング、徐脈のための房室同期ペーシング、非同期ペーシング、同期型ペーシング、心室同期不全のための心臓再同期ペーシング、抗頻脈ペーシング、またはショック治療などの、心臓治療を提供するために使用されてもよい。ショック治療は、埋め込み型医療機器によって開始されてもよい。同じく埋め込まれてもよい血管外ICDなどの別個の医療機器は、埋め込み型医療機器と動作的に通信してもよく、機器によって提供される信号パルス(例えば、トリガ、信号、または独特の電気パルス)などのトリガに応答して電気ショックを送達してもよい。
【0019】
本開示はまた、右心房のKoch三角領域に医療機器を送達および埋め込むための技法を提供する。様々な機器を使用して、潜在的な埋め込み部位として説明され得るKoch三角領域の概略位置を特定し得る。可撓性リードまたは別のプローブを潜在的な埋め込み部位に進め、電極、リードレット、リード、または心臓内機器などの医療機器の埋め込みのための正確な位置を特定するために使用し得る。特に、本開示の技法は、同期不全の患者に同期ペーシングを提供するための機器を埋め込むために、ならびに中等度の心不全を有する徐脈患者にデュアルチャンバペーシングを提供するために使用され得る。
【0020】
図1図4は、例えば、医療機器を埋め込み部位に送達するために図16図20に示される方法を使用して埋め込められ得る様々な心臓治療システムの例を示す。本開示は、リードレスおよびリード付きの埋め込み型医療機器を説明しているが、まず図1を参照すると、図1は、シングルまたはデュアルチャンバ治療のために構成され、かつ患者の心臓8に埋め込まれ得る心臓内医療機器10を含む心臓治療システム2の概念図を示している。いくつかの実施形態では、機器10は、シングルチャンバペーシング用に構成され得、例えば、シングルチャンバペーシングとマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)との間で切り替わってもよい。本明細書で使用される場合、「心臓内」は、例えば、心臓治療を提供するために、患者の心臓内に完全に埋め込まれるように構成された機器を指す。機器10は、標的埋め込み領域4における患者の心臓8の右心房(RA)に埋め込まれて示されている。機器10は、標的埋め込み領域4内における心房心内膜に対して機器の遠位端を固定する1つ以上の固定部材20を含んでもよい。標的埋め込み領域4は、ヒス束5(またはヒスの束)と冠状静脈洞3との間に位置してもよく、三尖弁6に隣接してもよい。機器10は、心房からの心室(VfA)機器として説明されてもよく、一般的に右心房に配置されながら、一方または両方の心室(例えば、状況に応じて、右心室、左心室、または両心室)を検知するか、または心室に治療を提供してもよい。特に、機器10は、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域に埋め込まれ得る組織貫通電極を含んでもよい。
【0021】
機器10は、リードレス埋め込み型医療機器として説明されてもよい。本明細書で使用される場合、「リードレス」は、患者の心臓8から延びるリードがない機器を指す。言い換えれば、リードレス機器は、患者の心臓の外側から患者の心臓の内側に延びていないリードを有してもよい。いくつかのリードレス機器は、静脈を通じて導入されてもよいが、一旦埋め込まれると、機器は、いかなる経静脈リードも有さない、または含まないことがあり、いかなる経静脈リードも使用せずに心臓治療を提供するように構成されてもよい。さらに、特に、リードレスVfA機器は、機器のハウジングが心房に位置決めされるとき、心室の電極に動作可能に接続するためにリードを使用しない。追加的に、リードレス電極は、電極とハウジングとの間にリードを使用せずに、医療機器のハウジングに結合されてもよい。
【0022】
機器10は、機器10の遠位端領域から延びる真っ直ぐなシャフトを規定する、または有するダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、心室の心内膜または心外膜の表面を完全に貫通することなく、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋14内に、または心室中隔に沿って配置されてもよい、または少なくとも配置されるように構成されてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、シャフトの遠位端領域に電極を有してもよいか、または含んでもよく、これにより、電極は、心室信号を検知して、心室パルスを提供するために(例えば、左心室の収縮を開始するために左心室を脱分極するために)、電極が心室心筋内に位置決めされてもよい。いくつかの例では、シャフトの遠位端領域における電極は、ペーシングおよび検知のための双極電極対において使用するために提供された陰極電極である。図示した埋め込み領域4は、ダーツ電極アセンブリ12の1つ以上の電極が心室心筋に位置決めされることを可能にしてもよいが、本明細書に開示される態様を有する機器は、マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)、マルチチャンバ検知を備えたシングルチャンバペーシング、シングルチャンバペーシングおよび/または検知、または必要に応じて他の臨床治療および用途のために、他の場所に埋め込まれてもよいことが認識される。
【0023】
機器10は、本明細書ではシングルダーツ電極アセンブリを含むものとして説明されているが、機器10は、心室の心内膜または心外膜の表面を完全に貫通することなく、心房心筋および中心線維体を通って、心室の心筋14内へ、または心室中隔に沿って配置された、または配置されるように構成された2つ以上のダーツ電極アセンブリを含んでもよいことを理解すべきである。追加的に、各ダーツ電極アセンブリは、シャフトの遠位端領域に、または他の領域(例えば、近位または中央領域)に沿って、複数の電極を有してもよいか、または含んでもよい。
【0024】
心臓治療システム2は、別個の医療機器50(図1の概略的に示されている)を含んでもよく、この別個の医療機器50は、患者の心臓8の外側(例えば、皮下)に位置決めされてもよく、かつ心臓治療を提供するために患者の心臓8に動作可能に結合されてもよい。一例では、別個の医療機器50は、血管外ICDであってもよい。いくつかの実施形態では、血管外ICDは、除細動電極を含む、または除細動電極を有する除細動リードを含んでもよい。治療ベクトルは、除細動リードにおける除細動電極と、ICDのハウジング電極との間に存在してもよい。さらに、ICDの1つ以上の電極は、患者の心臓8に関連する電気信号を検知するために使用されてもよい。ICDは、1つ以上の除細動または電気的除細動ショックを含むショック治療を提供するように構成されてもよい。例えば、不整脈が検知された場合、ICDは電気リード線を介してパルスを送信し、心臓にショックを与え、正常なリズムを回復してもよい。いくつかの例では、ICDは、心臓内にリード線を配置したり、心臓に直接電線を取り付けたりすることなく、ショック治療を提供してもよい(皮下ICD)。本明細書に記載のシステム2とともに使用され得る血管外皮下ICDの例は、2016年3月8日に発行された米国特許第9,278,229号(Reinkeら)において説明され得る。
【0025】
ショック治療(例えば、除細動リードの除細動電極によって提供される除細動ショック)の場合、別個の医療機器50(例えば、血管外ICD)は、制御回路を含んでもよく、この制御回路は、治療提供回路を使用して、前縁電圧、傾斜、送達されるエネルギー、パルス位相などを含む多くの波形特性のうちのいずれかを有する除細動ショックを生成する。治療提供回路は、例えば、単相、二相、または多相の波形を生成してもよい。追加的に、治療提供回路は、異なる量のエネルギーを有する除細動波形を生成してもよい。例えば、治療提供回路は、皮下除細動のために合計で約60~80ジュール(J)のエネルギーを提供する除細動波形を生成してもよい。
【0026】
別個の医療機器50は、検知回路をさらに含んでもよい。検知回路は、電極の1つ以上の組み合わせを介して検知された電気信号を取得し、得られた信号を処理するように構成されてもよい。検知回路の構成要素は、アナログ構成要素、デジタル構成要素、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。検知回路は、例えば、1つ以上の検知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、アナログ-デジタル変換器(ADC)などを含んでもよい。検知回路は、検知された信号をデジタル形式に変換し、処理および/または分析のためにデジタル信号を制御回路に提供してもよい。例えば、検知回路は、検知電極からの信号を増幅し得、増幅された信号をADCによってマルチビットデジタル信号に変換し、次いで、デジタル信号を制御回路に提供してもよい。1つ以上の実施形態では、検知回路は、処理された信号を閾値と比較して、心房または心室の脱分極(例えば、P波またはR波)の存在を検出し、心房の脱分極(例えば、P波)または心室脱分極(例えば、R波)の存在を制御回路に示してもよい。
【0027】
機器10および別個の医療機器50は、協力して、患者の心臓8に心臓治療を提供してもよい。例えば、機器10および別個の医療機器50は、頻脈を検出し、頻脈を監視し、および/または頻脈関連治療を提供するために使用されてもよい。例えば、機器10は、別個の医療機器50と無線で通信して、別個の医療機器50を使用してショック治療をトリガしてもよい。本明細書で使用される場合、「無線で」は、機器10と別個の医療機器50との間の金属導体を使用しない動作的結合または接続を指す。一例では、無線通信は、機器10によって提供される特有の、信号を送る、またはトリガする電気パルスを使用してもよく、この電気パルスは、患者の組織を通って伝導し、別個の医療機器50によって検出可能である。別の例では、無線通信は、機器10の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用して電磁放射を提供してもよく、この電磁放射は、患者の組織を通って伝播し、例えば、別個の医療機器50の別個の通信インターフェース(例えば、アンテナ)を使用して検出可能である。
【0028】
図2を参照すると、リード付き医療機器408は、1つまたはシングルの埋め込み型リード410を含み、埋め込み型リード410は、リードの遠位端領域に結合され、かつ患者の心臓8の内部に埋め込まれる組織貫通電極アセンブリ12を有する。リード付き医療機器408のハウジング420は、患者の心臓8の外側に埋め込まれ、かつ位置決めされてもよく、例えば、少なくとも測定された心拍数に基づいて、ペーシング治療を較正するおよび/またはペーシング治療を提供するように構成されてもよい。リード410は、右心房電極を含んでもよく、機器408は、デュアルチャネル対応機器(例えば、右心房および左心室の両方におけるペーシングおよび/または検知)として動作してもよい。いくつかの実施形態では、リード410は、右心房電極を含まなくてもよい。言い換えれば、リード付き医療機器408は、非同期、トリガ型、または別のタイプのシングルチャネルペーシングのために使用され得るシングルチャネル機器であってもよい。リード部410を使用するリード付き医療機器408は、例えば、図1に関して説明したのと同じまたは同様の方法で、組織貫通電極アセンブリ12が埋め込まれたときに、活動を検知するか、または左心室(LV)にペーシングを送達してもよい。
【0029】
図3を参照すると、リード付き医療機器418は、機器418が2つの埋め込み型リード410、412を含むことを除いて、図2のリード付き医療機器408と同様である。特に、埋め込み型リード412は、リード412の遠位端領域に結合された電極(例えば、右心房電極)を含んでもよく、リード410とは異なる位置に埋め込まれてもよい。いくつかの実施形態では、リード412は、右心房の異なる領域に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、各リード410、412は、デュアルチャネル機器418の1つのチャネルに寄与してもよい。例えば、リード410は、例えば、図1に関して説明したのと同じまたは同様の方法で、組織貫通電極アセンブリ12の組織貫通電極が埋め込まれたときに、活動を検知するか、または左心室(LV)にペーシングを送達してもよく、リード412は、活動を検知するか、右心房(RA)にペーシングを送達してもよい。
【0030】
図4を参照すると、リード付き医療機器428は、機器428が3つの埋め込み型リード410、412、414を含むことを除いて、図3のリード付き医療機器418と同様である。特に、埋め込み型リード414は、リード414の遠位端領域に結合された電極(例えば、右心室電極)を含んでもよく、リード410、412とは異なる位置に埋め込まれてもよい。いくつかの実施形態では、リード414は、右心室の領域に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、各リード410、412、414は、1つのチャネルをマルチチャネル機器428に寄与してもよい。例えば、リード410は、例えば、図1に関して説明したのと同じまたは同様の方法で、組織貫通電極アセンブリ12が埋め込まれたときに、活動を検知するか、または左心室(LV)にペーシングを提供してもよく、リード412は、右心房(RA)にペーシングを提供する活動を検知してもよく、リード414は、活動を検知するか、右心房(RV)にペーシングを提供してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、RVをペーシングするためのリード414上のRV電極と、LVをペーシングするためのリード410上のLV電極との間のペーシング遅延(例えば、RV-LVペーシング遅延、またはより一般的には、VVペーシング遅延)は、例えば、電極装置(例えば、ECGベルト)などの別個の医療機器を使用して較正または最適化されてもよい。VV遅延を較正または最適化するために、様々な方法を使用されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の異なるVV遅延においてペーシングを試験するために、医療機器428が使用されてもよい。例えば、RVは、LVよりも約80、60、40、および20ミリ秒(ms)進んでペーシングされてもよく、LVは、RVよりも約80、60、40、および20ミリ秒進んでペーシングされてもよく、同時RV-LVペーシング(例えば、約0msのVVペーシング遅延)であってもよい。次に、医療機器428は、例えば、ペーシングのために使用されたときに、電極装置を使用して測定された最小の電気的同期不全に対応するVVペーシング遅延を自動的に選択するように構成されてもよい。異なるVVペーシング遅延における試験ペーシングは、医療機器428によって設定された公称AV遅延、または患者の特性に基づく所定の最適なAV遅延などの特定のAV遅延を使用して実施されてもよい。
【0032】
図5は、図1の心臓内医療機器10および患者の心臓8の解剖学的構造の拡大概念図である。特に、機器10は、例えば、少なくとも測定された心拍数に基づいて、ペーシング治療のためにおよび/またはペーシング治療を提供するように構成されている。心臓内機器10は、ハウジング30を含んでもよい。ハウジング30は、密閉された内部キャビティを画定していてもよく、この内部キャビティには、検知回路、治療提供回路、制御回路、メモリ、遠隔測定回路、他の選択的なセンサ、および図8に関連して概略的に説明される電源などの機器10の内部構成要素が設けられている。ハウジング30は、チタンまたはチタン合金、ステンレス鋼、MP35N(非磁性ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金)、白金合金、または他の生体適合性金属または金属合金を含む導電性材料から形成されてもよい。他の例では、ハウジング30は、セラミック、ガラス、サファイア、シリコーン、ポリウレタン、エポキシ、アセチルコポリマープラスチック、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、または他の生体適合性ポリマーを含む非導電性材料から形成されてもよい。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、ハウジング30は、カテーテル提供を容易にするために、遠位端領域32と近位端領域34との間にほぼ円筒形に延びていると説明されてもよい。他の実施形態では、ハウジング30は、本明細書に記載の機能性および有用性を実施するために、角柱状または任意の他の形状であってもよい。ハウジング30は、機器10の埋め込み中に提供ツールと係合するために、例えば、近位端領域34に提供ツールインターフェース部材26を含んでもよい。
【0034】
ハウジング30のすべてまたは一部は、心臓治療中、例えば、検知および/またはペーシングにおいて電極として機能してもよい。示した例では、ハウジングベース電極24は、ハウジング30の近位部分(例えば、遠位端領域32よりも近位端領域34に近い)を取り囲むように示されている。ハウジング30が、チタン合金または上記の他の例などの導電性材料から形成される場合、ハウジング30の一部は、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または他の生体適合性ポリマーなどの非導電性材料によって電気的に絶縁されてもよく、導電性材料の1つ以上の別個の領域を、近位ハウジングベース電極24を規定するために露出させたままにする。ハウジング30がセラミック、ガラスまたはポリマー材料などの非導電性材料から形成される場合、チタン、プラチナ、ステンレス鋼、またはそれらの合金などの導電性コーティングまたは層が、近位ハウジングベース電極24を形成するために、ハウジング30の1つ以上の別個の領域に提供されてもよい。他の例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング30に取り付けられるかまたは組み立てられるリング電極などの構成要素であってもよい。近位ハウジングベース電極24は、ハウジング30が非導電性材料である場合、例えば、導電性ハウジング30または導電体を介して機器10の内部回路に電気的に結合されてもよい。
【0035】
示した例では、近位ハウジングベース電極24は、ハウジング遠位端領域32よりもハウジング近位端領域34の近くに位置付けされており、したがって、「近位ハウジングベース電極」24と呼ばれる。しかしながら、他の例では、ハウジングベース電極24は、ハウジング30に沿った他の位置、例えば、示した位置に対してより遠位に位置付けされてもよい。
【0036】
遠位端領域32において、機器10は、遠位固定および電極アセンブリ36を含んでもよく、これは、1つ以上の固定部材20および等しいまたは等しくない長さの1つ以上のダーツ電極アセンブリ12を含んでもよい。一例では、シングルダーツ電極アセンブリ12は、ハウジング遠位端領域32から遠位方向に延びるシャフト40と、シャフト40の自由な遠位端領域またはその近くにおける、先端電極42などの1つ以上の電極要素とを含む。先端電極42は、鋭いまたは斜めのエッジを有する鋭い先端または針状の先端を使用せずに、組織層内へおよび組織層を通って貫通するための比較的狭い先端直径(例えば、約1ミリメートル(mm)未満)を有する円錐形または半球形の遠位先端を有してもよい。
【0037】
ダーツ電極アセンブリ12のシャフト40は、通常は真っ直ぐな部材であってもよく、剛性であってもよい。他の実施形態では、シャフト40は、比較的剛性であるが、それでも横方向に制限された柔軟性を有すると説明されてもよい。さらに、シャフト40は、心臓の動きに合わせていくらかの横方向のたわみを可能にするために非剛性であってもよい。しかしながら、弛緩状態では、外力を受けていないとき、シャフト40は、少なくともシャフト40の高さ47だけハウジング遠位端領域32から離間して先端電極42を保持するために、示したように真っ直ぐな位置を維持してもよい。言い換えれば、ダーツ電極アセンブリ12は弾性であると説明されてもよい。
【0038】
ダーツ電極アセンブリ12は、先端電極42を所望の組織層、例えば、心室心筋内に配置するために1つ以上の組織層を貫通するように構成されてもよい。したがって、シャフト40の高さ47または長さは、予想されるペーシング部位の深さに対応してもよく、シャフト40は、埋め込み領域4に押し付けられたときに横方向または半径方向への曲げに抵抗するために、その長手方向軸線に沿って比較的高い圧縮強度を有してもよい。第2のダーツ電極アセンブリ12が使用される場合、その長さは、予想されるペーシング部位の深さに等しくなくてもよく、ペーシングエネルギーを組織に提供するための無関係な電極として機能するように構成されてもよい。長手方向の軸方向の力は、例えば、ダーツ電極アセンブリ12を標的埋め込み領域内の組織内に進めるためにハウジング30の近位端領域34に長手方向の押付け力を加えることによって、先端電極42に対して加えられてもよい。シャフト40は、長手方向において非圧縮性であり、かつ/または、例えば組織運動に合わせて一時的なたわみを許容するために、横方向または半径方向の力を受けたときに横方向または半径方向に弾性変形可能であると説明することができるが、横方向の力が減少したときには通常の真っ直ぐな位置へ戻ってもよい。シャフト40がいかなる外力にもさらされていない場合、またはその長手方向の中心軸に沿った力のみにさらされている場合、シャフト40は、示したように真っ直ぐな線形位置を保持してもよい。
【0039】
1つ以上の固定部材20は、通常は湾曲した位置を有する1つ以上の「タイン」として説明することができる。タインは、提供ツール内の遠位に延ばされた位置に保持されてもよい。タインの遠位先端は、限られた深さまで心臓組織を貫通してもよく、その後、提供ツールから解放されると、(図示した)通常の湾曲位置へ再び近位方向に弾性的に湾曲する。さらに、固定部材20は、例えば、2017年6月13日に発行された米国特許第9,675,579号(Grubacら)、および2015年9月1日に発行された米国特許第9,119,959号(Rysら)において説明された1つ以上の態様を含んでもよい。
【0040】
いくつかの例では、遠位固定および電極アセンブリ36は、遠位ハウジングベース電極22を含む。マルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)および検知のためのペースメーカーとして機器10を使用する場合、先端電極42は、リターン陽極電極として働く近位ハウジングベース電極24と対になった陰極電極として使用されてもよい。代替的に、遠位ハウジングベース電極22は、心室信号を検知して、心室ペーシングパルスを提供するために、先端電極42と対になったリターン陽極電極として働いてもよい。他の例では、遠位ハウジングベース電極22は、心房信号を検知して、標的埋め込み領域4における心房心筋にペーシングパルスを提供するための、陰極電極であってもよい。遠位ハウジングベース電極22が心房陰極電極として働く場合、近位ハウジングベース電極24は、心室ペーシングおよび検知のために先端電極42と対になったリターン陽極として、および心房ペーシングおよび検知のための遠位ハウジングベース電極22と対になったリターン陽極として働いてもよい。
【0041】
この図に示されているように、いくつかのペーシング用途における標的埋め込み領域4は、概してAV結節15およびヒス束5よりも下側の心房心内膜18に沿っている。ダーツ電極アセンブリ12は、心室心内膜の表面17を貫通することなく、標的埋め込み領域4における心房心内膜18を通り、中心線維体16を通って、心室心筋14内へ突き刺さるためのシャフト40の高さ47または長さを少なくとも部分的に規定してもよい。ダーツ電極アセンブリ12の高さ47または長さが標的埋め込み領域4内へ完全に進められると、先端電極42は心室心筋14内にとどまってもよく、遠位ハウジングベース電極22は、心房心内膜18と密接してまたはその近傍に配置されてもよい。ダーツ電極アセンブリ12は、様々な例において、約3mm~約8mmの先端電極42およびシャフト40の合計接続高さ47または長さを有してもよい。シャフト40の直径は、約2mm未満であってもよく、約1mm以下、または約0.6mm以下であってもよい。
【0042】
機器10は、ハウジング30内に音響または運動検出器11を含んでもよい。音響または運動検出器11は、1つ以上の制御回路80(図8)、検知回路86(図8)、または治療提供回路84(図8)に動作可能に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、音響または運動検出器11は、図10図12に示したように方法600、650または800とともに使用されてもよい。音響または運動検出器11は、心房の機械的活動(例えば、心房収縮)および/または心室の機械的活動(例えば、心室収縮)などの機械的活動を監視するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、音響または運動検出器11は、右心房の機械的活動を検出するために使用されてもよい。音響または運動検出器11の非限定的な例は、加速度計またはマイクロフォンを含む。いくつかの実施形態では、音響または運動検出器11によって検出された機械的活動は、機器10の1つ以上の電極によって検出された電気的活動を補足または置き換えるために使用されてもよい。例えば、音響または運動検出器11は、近位ハウジングベース電極24に加えて、またはその代わりとして使用されてもよい。
【0043】
音響または運動検出器11は、心拍反応の検出のために、または心拍反応IMDを提供するために使用されてもよい。心拍反応に関する様々な技術は、1992年10月13日に発行された「Optimization for rate responsive-cardiac pacemaker」と題する米国特許第5,154,170号(Bennettら)、および1996年10月8日に発行された「Method and apparatus for rate-responsive cardiac pacing」と題する米国特許第5,562,711号(Yerichら)において説明されている。
【0044】
様々な実施形態では、音響または運動検出器11(または運動センサ)は、HSセンサとして使用されてもよく、マイクロフォンまたは1軸、2軸、または3軸加速度計として実装されてもよい。一実施形態では、音響センサは、埋め込み型医療機器ハウジング内に取り付けられ、心音に関連する機械的運動に応答する圧電結晶として実装される。圧電結晶は、専用のHSセンサであってもよく、または複数の機能のために使用されてもよい。示した例示的な実施形態では、音響センサは、IMDハウジングの知覚可能な振動の形式で患者アラート信号を生成するためにも使用される圧電結晶として具体化されている。アラート状態を検出すると、制御回路80によって、患者アラート制御回路が、圧電結晶を活性化させることによってアラート信号を生成する。
【0045】
制御回路は、圧電結晶が、HS検知回路によってHS信号を検知するための「リスニングモード」において使用されるか、または患者アラートを生成するための「出力モード」において使用されるかを制御するために、使用されてもよい。患者アラートの生成中、HS検知回路は、制御回路によってHSセンサから一時的に切り離されてもよい。
【0046】
本開示の技法を用いた実装に適合させられ得る音響センサの他の実施形態の例は、一般に、米国特許第4,546,777号(Grochら)、米国特許第6,869,404号(Schulhauserら)、米国特許第5,554,177号(Kievalら)、および米国特許第7,035,684号(Leeら)において説明され得る。
【0047】
様々なタイプの音響センサが使用されてもよい。音響センサは、前述のように生成された心音のうちの1つ以上に応答する任意の埋め込み型のまたは外部のセンサであってもよく、それによって、時間および振幅において心音に相関させられた電気アナログ信号を生成する。次に、アナログ信号は処理されてもよく、これは、HS検知モジュールまたは制御回路80によって導き出されるような振幅または相対時間間隔などのHSパラメータを取得するための、HS検知モジュールによるデジタル変換を含んでもよい。音響センサおよびHS検知モジュールは、最適化されているCRTまたは別の心臓治療を提供することができるIMDに組み込まれてもよいか、または本明細書に記載された心拍パラメータ最適化手順の間に使用されるIMDまたは外部プログラマーまたはコンピュータとの有線または無線通信を有する別個の機器において実装されてもよい。
【0048】
図6は、患者の心臓の二次元(2D)心室マップ300(例えば、上から下を見た図)であり、標準的な17のセグメントビューにおける左心室320、および右心室322を示している。マップ300は、人間の心臓の異なる領域に対応する複数の領域326を含む。図示のように、領域326は、数字で1~17とラベル付けされている(例えば、これは、人間の心臓の標準的な17セグメントモデルに対応する、人間の心臓の左心室の17のセグメントに対応する、など)。マップ300の領域326は、基底前部領域1、基底前中隔領域2、基底下中隔領域3、基底下領域4、基底下外側領域5、基底前外側領域6、中央前部領域7、中央前中隔領域8、中央下中隔領域9、中央下領域10、中央下外側領域11、中央前外側領域12、頂端前部領域13、頂端中隔領域14、頂端下領域15、頂端外側領域16、および頂端領域17を含んでもよい。右心室322の下中隔および前中隔領域、ならびに右脚(RBB)および左脚(LBB)も示されている。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示の組織貫通電極のいずれかが、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域に埋め込まれてもよい。特に、組織貫通電極は、右心房のKoch三角領域から、右心房心内膜および中心線維体を通って埋め込まれてもよい。
【0050】
埋め込まれると、組織貫通電極は、左心室心筋の基底領域および/または中隔領域などの、標的埋め込み領域4(図1図5)に位置決めされてもよい。マップ300を参照すると、基底領域は、基底前部領域1、基底前中隔領域2、基底下中隔領域3、基底下領域4、中央前部領域7、中央前中隔領域8、中央下中隔領域9および中央下領域10のうちの1つまたは複数を含む。マップ300を参照すると、中隔領域は、基底前中隔領域2、基底前中隔領域3、中前中隔領域8、中隔下中隔領域9、および頂端中隔領域14のうちの1つまたは複数を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、埋め込まれたときに左心室心筋の基底中隔領域に位置決めされてもよい。基底中隔領域は、基底前中隔領域2、基底下中隔領域3、中央前中隔領域8、および中央下中隔領域9のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、組織貫通電極は、埋め込まれたときに、左心室心筋の高い下側/後側基底中隔領域に位置決めされてもよい。左心室心筋の高い下/後基底中隔領域は、基底下中隔領域3および中央下中隔領域9のうちの1つ以上の一部(例えば、基底下中隔領域のみ、中央下中隔領域のみ、または基底下中隔領域および中央下中隔領域の両方)を含んでもよい。例えば、高い下部/後部基底中隔領域は、一般に破線の境界として示した領域324を含んでもよい。示したように、破線の境界は、高い下/後基底中隔領域が位置付けられた場所の近似を表しており、これは、特定の用途に応じていくらか異なる形状またはサイズを取ることがある。
【0053】
図7は、例えば、少なくとも測定された心拍数に基づいて、ペーシング治療を較正するおよび/またはペーシング治療を提供することができる機器10の三次元斜視図である。示したように、遠位固定および電極アセンブリ36は、リング電極として実装された遠位ハウジングベース電極22を含む。遠位ハウジングベース電極22は、固定部材20の固定部材タイン20a、20b、および20cが心房組織に係合すると、心房組織と密接して、または心房組織に動作的に近接して位置決めされ得る。タイン20a、20b、および20cは、弾性変形可能であってもよく、埋め込み部位への機器10の送達中に遠位に延ばされてもよい。例えば、タイン20a、20b、および20cは、機器10が提供ツールから進められるときに心房心内膜表面を貫通し、提供ツール内にもはや拘束されなくなったとき、(図示したように)それらの通常の湾曲位置に戻ってもよい。タイン20a、20b、および20cがそれらの通常の位置へと再び湾曲すると、固定部材20は、遠位固定部材および電極アセンブリ36を心房心内膜表面に向かって引っ張ることができる。遠位固定部材および電極アセンブリ36が心房心内膜に向かって引っ張られると、先端電極42は、心房心筋および中心線維体を通って心室心筋内へ進められてもよい。次に、遠位ハウジングベース電極22は、心房心内膜表面に対して位置決めされてもよい。
【0054】
遠位ハウジングベース電極22は、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金などの導電性材料から形成されたリングを含んでもよい。遠位ハウジングベース電極22は、シングルの連続リング電極であってもよい。他の例では、リングの一部は、リング電極の導電性表面積を減少させるために、電気絶縁コーティング、例えば、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または他の絶縁コーティングでコーティングされてもよい。例えば、遠位ハウジングベース電極22の2つ以上の導電性の露出した表面領域を分離するために、リングの1つ以上のセクターがコーティングされてもよい。遠位ハウジングベース電極22の導電性表面積を減少させることは、例えば、導電性リングの一部を絶縁コーティングでコーティングすることによって、遠位ハウジングベース22の電気インピーダンスを増加させ、それにより、心筋、例えば心房心筋組織を捕捉するペーシングパルス中に送達される電流を減少させてもよい。より低い電流ドレインは、機器10の電源、例えば、1つ以上の充電式または非充電式電池を節約してもよい。
【0055】
上記のように、遠位ハウジングベース電極22は、リターン陽極としての近位ハウジングベース電極24と組み合わせて、埋め込み部位において心房組織にペーシングパルスを送達するための心房陰極電極として構成されてもよい。電極22および24は、(検知されるP波がない場合に送達される)心房ペーシングパルスを制御する際に使用するための、および陰極としての先端電極42およびリターン陽極としての近位ハウジングベース電極24を使用して送達される心房同期化心室ペーシングパルスを制御するための、心房P波を検知するために使用されてもよい。他の例では、遠位ハウジングベース電極22は、心室ペーシングおよび検知のための陰極先端電極42に関連してリターン陽極として使用されてもよい。
【0056】
図8は回路のブロック図である。回路は、1つの例による機器10を使用して例えば少なくとも測定された心拍数に基づいてペーシング治療を較正するおよび/またはペーシング治療を提供するという機能を提供するためにハウジング30(図7)内に封入されてもよいか、または本明細書に記載された任意の他の医療機器(例えば、図2の機器408、図3の機器418、図4の機器428、または図9の機器710)のハウジング内に封入されてもよい。別個の医療機器50(図1図4)は、類似の形式で構成されてもよい、いくつかのまたはすべての同じ構成要素を含んでもよい。ハウジング30内に封入された電子回路は、ソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを含んでもよく、これらは、心房および心室の電気心臓信号を共同で監視し、心臓治療が必要な時期を決定し、および/またはプログラムされた治療モードおよびパルス制御パラメータに従って患者の心臓に電気パルスを提供する。電子回路は、制御回路80(例えば、処理回路を含む)、メモリ82、治療提供回路84、検知回路86、および/または遠隔測定回路88を含んでもよい。いくつかの例では、機器10は、ペーシング治療の必要性を決定しかつ/またはペーシング速度を制御する際に使用するための、患者の生理学的な機能、状態または条件に相関させられた信号を生成するための1つ以上のセンサ90、例えば、患者活動センサを含む。例えば、1つのセンサ90は、動作を測定するための慣性測定ユニット(例えば、加速度計)を含んでもよい。
【0057】
電源98は、必要に応じて、構成要素80、82、84、86、88、90の各々を含む機器10の回路に電力を供給してもよい。電源98は、1つ以上の充電式または非充電式電池などの1つ以上のエネルギー貯蔵機器を含んでもよい。電源98と各構成要素80、82、84、86、88、90の各々との間の接続(図示せず)は、当業者に示された概略的なブロック図から理解されてもよい。例えば、電源98は、治療提供回路84に含まれた保持コンデンサを充電するために使用される電力を提供するために、治療提供回路84に含まれた1つ以上の充電回路に結合されてもよく、保持コンデンサは、例えば、DDI(R)などのデュアルチャンバペーシングモードに従って、ペーシングパルスを送達するための制御回路80の制御下で適切な時間に放電される。電源98は、様々な回路に電力を提供するために、検知増幅器、アナログ-デジタル変換器、スイッチング回路など、センサ90、遠隔測定回路88、およびメモリ82などの、検知回路86の構成要素にも結合され得る。
【0058】
示した機能ブロックは、機器10に含まれた機能性を表し、本明細書の医療機器10に起因する機能を生成することができるアナログおよび/またはデジタル回路を実装する任意のディスクリートおよび/または集積電子回路構成要素を含んでもよい。様々な構成要素は、特定用途向け集積回路(ASIC)、電子回路、プロセッサ(共有、専用、またはグループ)、および1つ以上のソフトウェアまたはファームウェアプログラムを実行するメモリ、組み合わせ論理回路、状態機械、または他の好適な構成要素、または説明されている機能を提供する構成要素の組み合わせなどの、処理回路を含んでもよい。本明細書に開示された機能性を実装するために採用されるソフトウェア、ハードウェア、および/またはファームウェアの特定の形態は、主に、医療機器において採用される特定のシステムアーキテクチャによって、および医療機器において採用される特定の検出および治療提供方法によって決定される。
【0059】
メモリ82は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または他のメモリ機器などの、任意の揮発性、非揮発性、磁気的、または電気的な非一時的なコンピュータ読み取り可能記憶媒体を含んでもよい。さらに、メモリ82は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含んでもよく、この非一時的コンピュータ読み取り可能媒体は、1つ以上の処理回路によって実行されると、制御回路80および/または他の処理回路が、ペーシング治療を較正しかつ/またはシングル、デュアル、もしくはトリプルチャンバでの較正されたペーシング治療(例えば、シングルチャンバペーシングまたはマルチチャンバペーシング)、または機器10に起因する他の心臓治療機能(例えば、検知するまたは治療を提供する)を実施する。命令を記憶する非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体は、上記に挙げた媒体のいずれかを含んでもよい。
【0060】
制御回路80は、心臓電気信号を検知し、検知された心臓イベント、例えばP波およびR波、またはそれらの不存在に応答して、心臓電気刺激治療の提供を制御するために、例えばデータバスを介して治療提供回路84および検知回路86と通信してもよい。先端電極42、遠位ハウジングベース電極22、および近位ハウジングベース電極24は、電気刺激パルスを患者の心臓および検知回路86に送達するために、および心臓電気信号を検知するために、治療提供回路84に電気的に結合されてもよい。
【0061】
検知回路86は、心房(A)検知チャネル87および心室(V)検知チャネル89を含んでもよい。遠位ハウジングベース電極22および近位ハウジングベース電極24は、心房信号、例えば、心房心筋の脱分極に付随するP波を検知するために、心房検知チャネル87に結合されてもよい。2つ以上の選択可能な遠位ハウジングベース電極を含む例では、検知回路86は、利用可能な遠位ハウジングベース電極のうちの1つ以上を、心房検知チャネル87に含まれる心臓イベント検出回路に選択的に結合するためのスイッチング回路を含んでもよい。スイッチング回路は、スイッチアレイ、スイッチマトリックス、マルチプレクサ、または検知回路86の構成要素を選択された電極に選択的に結合するのに好適な任意の他のタイプのスイッチング機器を含んでもよい。先端電極42および近位ハウジングベース電極24は、心室信号、例えば、心室心筋の脱分極に付随するR波を検知するために、心室検知チャネル89に結合されてもよい。
【0062】
心房検知チャネル87および心室検知チャネル89の各々は、それぞれの検知チャネルによって受信された心臓電気信号から、それぞれP波およびR波を検出するための心臓イベント検出回路を含んでもよい。チャネル87および89の各々に含まれる心臓イベント検出回路は、心臓電気イベントを検出するための信号品質を改善するために、選択された電極から受信された心臓電気信号を増幅、フィルタリング、デジタル化、および整流するように構成されてもよい。各チャネル87および89内の心臓イベント検出回路は、1つ以上の検知増幅器、フィルタ、整流器、閾値検出器、コンパレーター、アナログ-デジタル変換器(ADC)、タイマー、もしくは他のアナログまたはデジタル構成要素を含んでもよい。心臓イベント検知閾値、例えば、P波検知閾値およびR波検知閾値は、例えばタイミングインターバルに基づいて制御回路80の制御下で各それぞれの検知チャネル87および89によって自動的に調節されてもよく、検知閾値は制御回路80によって決定され、メモリ82に記憶されかつ/または制御回路80および/または検知回路86のハードウェア、ファームウェアおよび/またはソフトウェアによって制御される。
【0063】
検知閾値交差に基づく心臓電気イベントを検出すると、検知回路86は、検知イベント信号を生成してもよく、この検知イベント信号は制御回路80へ送られる。例えば、心房検知チャネル87は、P波検知閾値交差に応答して、P波検知イベント信号を生成してもよい。心室検知チャネル89は、R波検知閾値交差に応答して、R波検知イベント信号を生成してもよい。検知されたイベント信号は、心臓ペーシングパルスをスケジューリングするために使用される基本時間間隔を制御するペーシングエスケープ間隔タイマーを設定するために、制御回路80によって使用されてもよい。検知されたイベント信号は、特定のプログラムされたペーシングモードに応じて、ペーシングパルスをトリガまたは阻止してもよい。例えば、心房検知チャネル87から受信されたP波検知イベント信号により、制御回路80は、スケジュールされた心房ペーシングパルスを阻止し、プログラムされた房室(AV)ペーシング間隔で心室ペーシングパルスをスケジュールしてもよい。AVペーシング間隔が終了する前にR波が検知された場合、心室ペーシングパルスが阻止されてもよい。制御回路80が心室検知チャネル89からR波検知イベント信号を受信する前にAVペーシング間隔が終了する場合、制御回路80は、治療提供回路84を使用して、検知されたP波に同期させられた、スケジュールされた心室ペーシングパルスを提供してもよい。
【0064】
いくつかの例では、機器10は、徐脈ペーシング、心臓再同期治療、ショック後ペーシング、および/または特にATPなどの頻脈関連治療を含む様々なペーシング治療を提供するように構成されてもよい。例えば、機器10は、非洞性頻脈を検出して、ATPを提供するように構成されてもよい。制御回路80は、心臓イベント時間間隔、例えば、心房検知チャネル87から受信された連続するP波検知イベント信号間のP-P間隔、心室検知チャネル89から受信された連続R波検知イベント信号間のR-R間隔、およびP波検知イベント信号とR波検知イベント信号との間で受信されたP-Rおよび/またはR-P間隔を決定してもよい。これらの間隔は、非洞性頻脈を検出するための頻脈検出間隔と比較されてもよい。頻脈は、検出されている頻脈検出間隔の閾値数に基づいて、所与の心腔内で検出されてもよい。
【0065】
治療提供回路84は、心房ペーシング回路83および心室ペーシング回路85を含んでもよい。各ペーシング回路83、85は、充電回路、1つ以上の低電圧保持コンデンサなどの1つ以上の電荷蓄積機器、出力コンデンサ、および/または、それぞれのペーシング回路83、85に結合されたペーシング電極ベクトルにペーシングパルスを提供するために保持コンデンサ(複数可)がいつ充電および放電されるかを制御するスイッチング回路を含んでもよい。先端電極42および近位ハウジングベース電極24は、例えば、心房同期された心室ペーシングおよび基本的なより低い心室ペーシングレートを提供するために制御回路80によって設定されたAVまたはVVペーシング間隔の終了時に、心室ペーシングパルスを提供するための双極陰極および陽極対として心室ペーシング回路85に結合されてもよい。
【0066】
心房ペーシング回路83は、心房ペーシングパルスを提供するために遠位ハウジングベース電極22および近位ハウジングベース電極24に結合されてもよい。制御回路80は、プログラムされたより低いペーシングレートに従って1つ以上の心房ペーシング間隔を設定するか、またはレート応答センサが示したペーシングレートに従って設定される一時的なより低いレートを設定してもよい。心房ペーシング回路は、P波検知イベント信号が心房検知チャネル87から受信される前に心房ペーシング間隔が終了した場合に、心房ペーシングパルスを提供するように制御されてもよい。制御回路80は、同期させられたマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)を提供するために、提供された心房ペーシングパルスに応答してAVペーシング間隔を開始する。
【0067】
プログラムされたペーシング電圧振幅への心房または心室ペーシング回路83、85の保持コンデンサの充電、およびプログラムされたペーシングパルス幅のためのコンデンサの放電は、制御回路80から受信された制御信号に従って治療提供回路84によって実施されてもよい。例えば、制御回路80に含まれたペースタイミング回路は、様々なシングルチャンバもしくはマルチチャンバペーシング(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバペーシング)モードまたは抗頻脈ペーシングシーケンスに関連した基本ペーシング時間間隔を制御するために、制御回路80のマイクロプロセッサによって設定されたプログラム可能なデジタルカウンタを含んでもよい。制御回路80のマイクロプロセッサはまた、メモリ82に記憶されたプログラム値に基づいてもよい心臓ペーシングパルスの振幅、パルス幅、極性、または他の特性を設定してもよい。
【0068】
機器10は、治療提供回路84によって提供される電気刺激治療の必要性を決定しかつ/または制御する際に使用するために、患者からの信号を検知するための他のセンサ90を含んでもよい。いくつかの例では、心拍出量の増加の必要性を示すセンサは、加速度計などの患者活動センサを含んでもよい。患者活動センサによって示されるような活動の増加による患者の代謝要求の増加は、センサが示すペーシングレートを決定する際に使用するために、制御回路80によって決定されてもよい。制御回路80は、患者活動センサ(例えば、測定された心拍数)に基づいてペーシング治療を較正および/または提供するために使用されてもよい。
【0069】
心臓イベントを検知し、ペーシング治療の提供を制御するために制御回路80によって利用される制御パラメータは、通信インターフェースとして説明されてもよい遠隔測定回路88を介してメモリ82にプログラムされてもよい。遠隔測定回路88は、無線周波数通信または他の通信プロトコルを使用して、プログラマーまたはホームモニタなどの外部機器と通信するためのトランシーバおよびアンテナを含む。制御回路80は、外部機器からのダウンリンク遠隔測定を受信しかつ外部機器にアップリンク遠隔測定を送信するために遠隔測定回路88を使用してもよい。場合によっては、遠隔測定回路88は、患者に埋め込まれた別の医療機器へ/別の医療機器から通信信号を送受信するために使用されてもよい。
【0070】
図9は、別の例によるシングルまたはマルチチャンバ心臓治療(例えば、デュアルまたはトリプルチャンバ心臓治療)のための、例えば少なくとも測定された心拍数に基づいて、ペーシング治療を較正しかつ/またはペーシング治療を提供するために構成され得る別のリードレス心臓内医療機器710の三次元斜視図である。機器710は、ハウジング遠位端領域732からハウジング近位端領域734まで延びた、円筒状の外側側壁として示された外側側壁735を有するハウジング730を含んでもよい。ハウジング730は、心房および心室の心臓電気信号の検知および心房および心室のペーシングを含む、シングルまたはマルチチャンバ心臓治療を実施するように構成された電子回路を封入していてもよい。提供ツールインターフェース部材726は、ハウジング近位端領域734に示されている。
【0071】
遠位固定および電極アセンブリ736は、ハウジング遠位端領域732に結合されてもよい。遠位固定および電極アセンブリ736は、ハウジング遠位端領域732に結合された電気的に絶縁性の遠位部材772を含んでもよい。組織貫通電極アセンブリ712は、ハウジング遠位端領域732から延びており、複数の非組織貫通電極722は、絶縁性遠位部材772に直接結合されてもよい。組織貫通電極アセンブリ712は、ハウジング遠位端領域732から長手方向に延びており、ハウジング730の長手方向中心軸731と同軸であってもよい。
【0072】
遠位組織貫通電極アセンブリ712は、電気的に絶縁されたシャフト740および先端電極742(例えば、組織貫通電極)を含んでもよい。いくつかの例では、組織貫通電極アセンブリ712は、らせんシャフト740および遠位陰極先端電極742を含む能動固定部材である。らせんシャフト740は、シャフト遠位端領域743からシャフト近位端領域741まで延びていてもよく、シャフト近位端領域741は、絶縁性遠位部材772に直接結合されてもよい。らせんシャフト740は、シャフト長さに沿った心臓組織の検知または刺激を回避するために、電気絶縁材料、例えば、パリレンまたは本明細書に列挙された他の例でコーティングされてもよい。先端電極742は、シャフト遠位端領域743にあり、先端電極742が心室内へ進められるとき、リターン陽極としての近位ハウジングベース電極724を使用して、心室ペーシングパルスを送達し、かつ心室電気信号を検知するための陰極電極として働いてもよい。近位ハウジングベース電極724は、ハウジング730に外接したリング電極であってもよく、長手方向側壁735の非絶縁部分によって規定されてもよい。電極として働かないハウジング730の他の部分は、図7に関連して上述したように電気絶縁材料でコーティングされてもよい。
【0073】
LV心筋内へ貫通する2つ以上の(例えば、任意のタイプの)組織貫通電極を使用することは、より局所的なペーシング捕捉のために使用されてもよく、心房組織の捕捉に影響を与える心室ペーシングスパイクを軽減してもよい。いくつかの実施形態では、複数の組織貫通電極は、2つ以上のダーツ型電極アセンブリ(例えば、図7の電極アセンブリ12)、らせん型電極(例えば、電極アセンブリ712)を含んでもよい。複数の組織貫通電極の非制限的な例は、2つのダーツ電極アセンブリ、ダーツ電極が(例えば、中心を通って)貫通したらせん型電極、または2つの絡み合ったらせんを含む。複数の組織貫通電極は、双極または多極ペーシングのために使用されてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、LV心筋内へ貫通する(例えば、任意のタイプの)1つ以上の組織貫通電極は、多極組織貫通電極であってもよい。多極組織貫通電極は、1つ以上の電気的に活性でかつ電気的に別個の要素を含んでもよく、これらの要素は、1つ以上の組織貫通電極からの双極または多極ペーシングを可能にしてもよい。
【0075】
複数の非組織貫通電極722は、組織貫通電極アセンブリ712の周辺にある、絶縁性遠位部材772の周辺に沿って設けられてもよい。絶縁性遠位部材772は、機器710の遠位に面した表面738と、ハウジングの長手方向側壁735に隣接する機器710に外接する円周面739とを規定してもよい。非組織貫通電極722は、チタン、白金、イリジウム、またはそれらの合金などの導電性材料から形成されてもよい。図示の実施形態では、6つの非組織貫通電極722が、絶縁性遠位部材772の外周に沿って等距離で放射状に離間させられている。しかしながら、2つ以上の非組織貫通電極722が提供されてもよい。
【0076】
非組織貫通電極722は、非組織貫通電極722と嵌合するようなサイズおよび形状の絶縁部材772内のそれぞれの凹部774内にそれぞれ保持された別個の構成要素であってもよい。他の例では、非組織貫通電極722はそれぞれ、絶縁性遠位部材772内または絶縁性遠位部材772上に取り付けられた一体型部材の絶縁されていない露出部分であってもよい。電極として機能していない一体型部材の介在部分が、絶縁性遠位部材772によって絶縁されてもよいか、または周囲環境に曝される場合、電気絶縁コーティング、例えば、パリレン、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、または他の絶縁コーティングによってコーティングされてもよい。
【0077】
組織貫通電極アセンブリ712が心臓組織内へ進められるとき、少なくとも1つの非組織貫通電極722は、パルスを提供するためにおよび/または患者の心臓によって生成された心臓の電気信号を検知するために、心臓組織表面に当接して、密接して、または動作的に近接して位置決めされてもよい。例えば、非組織貫通電極722は、心室組織、例えば心室心筋および/または心室伝導系の一部と直接接触して遠位先端電極742が位置決めされるまで、組織貫通電極アセンブリ712が心房組織内へかつ中央繊維体を通って進められるとき、心房におけるペーシングおよび検知のために右心房心内膜組織と接触して位置決めされてもよい。
【0078】
非組織貫通電極722は、リターン陽極としての近位ハウジングベース電極724との組み合わせにおいて、心房ペーシングパルスを提供しかつ心房電気信号、例えばP波を検知するための陰極電極として集合的に機能するために、治療提供回路84と、ハウジング730によって包囲された検知回路86(図8を参照)とに結合されてもよい。検知回路86に含まれたスイッチング回路は、非組織貫通電極のうちの1つまたは複数を心房検知チャネル87に結合するために制御回路80の制御下で作動させられてもよい。遠位の非組織貫通電極722は、互いに電気的に絶縁されてもよく、これにより、個々の1つの電極722は、単独でまたは心房陰極電極としての電極722のうちの2つ以上の組み合わせにおいて働くために、治療提供回路84に含まれたスイッチング回路によって個々に選択されてもよい。治療提供回路84に含まれたスイッチング回路は、非組織貫通電極722のうちの1つまたは複数を心房ペーシング回路83に結合するために制御回路80の制御下で作動させられてもよい。非組織貫通電極722のうちの2つ以上が、マルチポイント心房陰極電極として作動するように一度に選択されてもよい。
【0079】
心房ペーシングおよび/または心房検知のために選択された特定の非組織貫通電極722は、心房捕捉閾値試験、電極インピーダンス、心臓電気信号におけるP波信号強度、または他の要因に基づいて選択されてもよい。例えば、低いペーシング捕捉閾値振幅と比較的高い電極インピーダンスとの最適な組み合わせを提供する陰極電極として機能する単一の非組織貫通電極722または2つ以上の個々の非組織貫通電極722の任意の組み合わせが、電源98から最小限の電流ドレインを使用して確実な心房ペーシングを達成するために選択されてもよい。
【0080】
場合によっては、組織貫通電極アセンブリ712がハウジング730を埋め込み部位に固定するとき、遠位に面した表面738は、心房心内膜表面に均一に接触してもよい。その場合、すべての電極722が、心房陰極を形成するために一緒に選択されてもよい。代替的に、遠位に面した表面738に沿って依然として均等に分散させられたより高い電気インピーダンスを有するマルチポイント心房陰極を形成するために、1つおきの電極722が一緒に選択されてもよい。代替的に、ペーシングされる心房組織に対する電極722の相対位置により最も低いペーシング捕捉閾値を達成する所望の部位においてペーシングを提供するために、絶縁性遠位部材772の片側に沿った1つ以上の電極722のサブセットが選択されてもよい。
【0081】
他の例では、遠位に面した表面738は、組織貫通電極アセンブリ712が心臓組織に入る位置および配向に応じて、隣接する心内膜表面に対して所定の角度に配向されてもよい。この状況では、非組織貫通電極722のうちの1つ以上が、他の非組織貫通電極722よりも、隣接する心内膜組織とより密接して位置決めされてもよく、他の非組織貫通電極722は、心内膜表面から離れて角度付けられてもよい。絶縁性遠位部材772の周囲に沿って複数の非組織貫通電極を提供することにより、心臓表面、例えば右心房心内膜表面に対する組織貫通電極アセンブリ712およびハウジング遠位端領域732の角度は、実質的に平行であることが要求されなくてもよい。解剖学的相違および位置の相違により、遠位に面した表面738は、心内膜表面に対して角度づけられてもよいまたは斜めになってもよいが、絶縁性遠位部材772の周囲に沿って分布した複数の非組織貫通電極722は、少なくとも複数の電極722のサブセットを使用して受け入れ可能なペーシング閾値および確実な心臓イベント検知を促進するために、1つ以上の電極722と、隣接する心臓組織との間の良好な接触の可能性を高める。絶縁性遠位部材772の全周に沿って円周方向に接触または固定することは要求されなくてもよい。
【0082】
非組織貫通電極722は各々、遠位に面した表面738に沿って延びる第1の部分722aと、円周面739に沿って延びる第2の部分722bと、を含むように示されている。第1の部分722aおよび第2の部分722bは、連続的な露出面であってもよく、これにより、活性電極表面が、遠位に面した表面738と円周面739とを接合する絶縁性遠位部材772の周縁776を包み込む。非組織貫通電極722は、遠位に面した表面738に沿った1つ以上の電極722、円周面739に沿った1つ以上の電極、各々が遠位に面した表面738および円周面739の両方に沿って延びた1つ以上の電極、またはそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。各非組織貫通電極722の各々の露出面は、それぞれの遠位に面した表面738および/または円周面と同一平面であってもよい。他の例では、各非組織貫通電極722の各々は、絶縁性遠位部材772から突出した隆起した表面を有してもよい。しかしながら、電極722の任意の隆起した表面は、滑らかなまたは丸みを帯びた、組織を貫通しない表面を規定してもよい。
【0083】
遠位固定および電極アセンブリ736は、ハウジング730の遠位端領域を封止することができ、電極722が取り付けられる基礎を提供してもよい。電極722は、ハウジングベース電極と呼ばれてもよい。電極722は、ハウジング730から延びたらせんシャフト740の遠位先端にある遠位先端電極742のように、活性電極部分をハウジング730から延ばすシャフトまたは他の延長部によって支持されていなくてもよい。絶縁性遠位部材の遠位に面した表面および/または円周面に結合された本明細書に提示された非組織貫通電極の他の例は、遠位ハウジングベースリング電極22(図7)、すなわちアセンブリ36の周囲に周方向に延びる遠位ハウジングベースリング電極(図7)、ボタン電極、他のハウジングベース電極、および他の周方向リング電極を含む。遠位の絶縁部材に直接結合された、中央の組織貫通電極の周囲にある任意の非組織貫通電極は、隣接する心臓組織にペーシングパルスを提供するための陰極電極として、個別に、集合的に、または任意の組み合わせで機能するように提供されてもよい。遠位リング電極22および/または周方向リング電極などのリング電極が提供される場合、リング電極の一部は、絶縁性遠位部材の遠位に面した面および/または周面に沿って複数の分布させられた非組織貫通電極を提供するために、コーティングによって電気的に絶縁させられてもよい。
【0084】
非組織貫通電極722および上記の他の例は、遠位固定および電極アセンブリ736に沿って提供された組織貫通電極よりも信頼性が高くかつ有効な心房ペーシングおよび検知を提供することが期待される。心房壁は、心室壁と比較して比較的薄い。組織貫通心房陰極電極は、心房組織内へ深く延びすぎることがあり、これは、心室組織の不意の持続したまたは断続的な捕捉につながる。組織貫通心房陰極電極は、心室組織に物理的に近接している組織貫通心房陰極電極を介して受信される心臓電気信号においてより大きな信号強度を有する心室信号により、心房信号の検知の妨害につながることがある。組織貫通電極アセンブリ712は、機器710の埋め込み位置を安定させ、非組織貫通電極722が心房において確実にペーシングし、かつ検知しながら先端電極742が心室組織において検知およびペーシングする合理的確実性を提供するために、心室組織に確実に固定されてもよい。機器710が、標的埋め込み領域4、例えば、図1に示したように心室中隔に埋め込まれると、非組織貫通電極722が右心房においてペーシングおよび検知を提供しながら、先端電極742は、左心室のペーシングために左心室組織に到達してもよい。組織貫通電極アセンブリ712の長さは、左心室組織に到達するために、遠位に面した表面738から約4~約8mmの範囲であってもよい。場合によっては、機器710は、双心房(右心房および左心房)捕捉を達成するために標的埋め込み領域4において非組織貫通電極722を介して心房ペーシング回路83から心房ペーシングパルスを提供し、かつ双心室(右心室および左心室)捕捉を達成するために標的埋め込み領域4から心室組織内へ進められた先端電極742を介して心室ペーシング回路85から心室ペーシングパルスを提供することによって、4室ペーシングを達成してもよい。
【0085】
図10は、例えば生理学的反応情報を表すために使用されてもよい図5の音響または運動検出器11を使用して心房活動を検出する例示的な方法600を示している。特に、方法600は、患者の心臓に埋め込まれたIMDによって行われてもよい(例えば、運動検出器11によって提供される)運動信号の分析に基づいて心房収縮を検出することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、運動信号は、患者の心臓の右心室などの心室内に埋め込まれたIMDによって提供されてもよい。方法600は、心室活性化イベントの識別時に心房収縮検出遅延期間を開始すること(630)を含んでもよい。方法600は、心房収縮遅延期間の終了時に心房収縮検出ウィンドウを開始すること(632)を含んでもよい。方法600は、心房収縮検出ウィンドウ内の運動信号を分析することを含んでもよい。
【0086】
方法600は、心房収縮検出ウィンドウ内で運動信号をフィルタリングし、フィルタリングされた信号を整流し、心房収縮検出ウィンドウ内でフィルタリングおよび整流された運動信号の派生信号を生成すること(634)を含んでもよい。方法600は、心房収縮検出ウィンドウ内の派生信号の振幅が閾値を超えるかどうかを決定すること(636)を含んでもよい。心房収縮検出ウィンドウ内の派生信号の振幅が閾値を超えると決定することに応答して(636の「はい」)、方法600は、心房収縮の検出(638)に進んでもよい。そうでなければ(636の「いいえ」)、方法600は、派生信号のフィルタリング、整流、および生成(634)に戻ってもよい。運動信号を提供する運動検出器を使用するための様々な技法は、2016年7月26日に発行された「Atrial contraction detection by a ventricular leadless pacing device for atrio-synchronous ventricular pacing」と題する米国特許第9,399,140号(Choら)に説明され得る。
【0087】
図11に関して説明するように、心音(HS)が検出され、生理学的応答情報を表すために使用されてもよい。本明細書に記載のように、S1~S4までの心音のうちの1つ以上の振幅および/または相対時間間隔は、血行力学的利益を達成するための心臓ペーシングおよび/または神経刺激を含むCRTまたは他の心臓治療に対する患者の血行力学的応答を最適化するのに有用である可能性がある。最初の心音S1は、心室収縮の開始に対応する。房室結節(AV結節)を通って活動電位が伝導すると心室収縮が開始し、心室心筋を急速に脱分極する。このイベントは、ECGのQRSコンプレックスによって区別される。心室が収縮すると、心室の圧力が上昇し始め、心室圧が心房圧を超えると、心室と心房との間の僧帽弁および三尖弁が突然閉じる。この弁閉鎖がS1を生成してもよい。S1は、約150msの継続時間および約20~250Hzのオーダーの周波数を有する。S1の振幅は、LV収縮性の代理測定を提供してもよい。したがって、S1振幅の増加は、LV収縮性の改善と正の相関があってもよい。QRSの開始からS1まで測定された前駆出期などの他の測定値が、心筋収縮性指数の代理として使用されてもよい。
【0088】
心室同期不全による僧帽弁および三尖弁の閉鎖の分離は、S1信号における別々のM1およびT1ピークとして観察することができる。M1(僧帽弁閉鎖音)およびT1(三尖弁閉鎖音)の併合は、心室同期の改善の指標として使用することができる。
【0089】
一般に、左心室圧(LVP)は、ECGのQRSコンプレックスおよび僧帽弁の閉鎖に続いて劇的に上昇し、大動脈弁および肺動脈弁が開いて血液を大動脈および肺動脈へ排出するまで、心室収縮中に上昇し続ける。心室収縮は、典型的に、駆出期の間、心室、大動脈、および肺動脈において血圧を上昇させ続ける。収縮が減少すると、大動脈弁および肺動脈弁が閉じるまで血圧が低下する。
【0090】
第2の心音S2は、心室収縮の終了および心室拡張期の開始付近において、大動脈弁および肺動脈弁の閉鎖によって生成されることがある。したがって、S2は、大動脈および肺動脈における拡張期血圧と相関させられていることがある。S2は、一般に、約120msの継続時間および25~350Hzのオーダーの周波数を有する。S1とS2との間の時間間隔、すなわち、S1-S2時間間隔は、心室等容性収縮(駆出前)および心周期の駆出期に対応する収縮期時間間隔(STI)を表してもよい。このS1-S2時間間隔は、1回拍出量の代理測定を提供してもよい。さらに、駆出前期間(Q-S1)とS1-S2時間の比は、心筋収縮性の指標として使用されてもよい。
【0091】
第3の心音S3は、心室の初期の受動的な拡張期充満に関連しており第4の心音S4は、心房収縮による心室の遅い能動的な充満に関連していてもよい。第3の音は、聴診器を使用して通常の患者において聞くことは一般的に困難であり、第4の音は、通常の患者において一般的に聞こえない。聴診器を使用した検査中の第3および第4の心音の存在は、病的条件を示していることがある。S3およびS4の心音は、心臓の拡張機能に関連しているため、ペースパラメータを最適化する際に使用されてもよい。一般に、これらの音は、最適なペースパラメータが特定されると最小化されるまたは消失する。S1~S4の心音およびそれらのタイミングの他の態様は、当業者に知られているような心臓ペースパラメータ最適化において有用であることがある。
【0092】
図11は、一実施形態による、ペース制御パラメータを最適化するために心音を使用するための方法のフローチャート800である。本開示の方法は、フローチャート800に示した1つ以上のブロックを含んでもよい。心臓治療を最適化するために心音を使用する他の例は、2017年5月9日に付与された「System and method for pacing parameter optimization using heart sounds」と題する米国特許第9,643,0134号に概略的に説明されている。
【0093】
ペースパラメータ最適化方法は、ブロック802において開始されてもよい。最適化プロセスは、外部プログラマーを介して受信されたユーザコマンドに応答して開始されてもよい。最初のIMD埋め込み時、外来通院の間、またはリモートでの患者モニタリングセッションの間、ユーザは外部プログラマーまたはネットワークコンピュータを使用してHSベース最適化手順を開始してもよい。追加的に、または代替的に、フローチャート800によって示したプロセスは、定期的に開始される、または検知されたHS信号を含み得る検知された生理学的信号に基づく治療提供または治療調節の必要性の検知に応答して開始される、自動化されたプロセスであってもよい。
【0094】
ブロック804において、最適化されるペース制御パラメータが選択される。制御パラメータは、AV間隔またはVV間隔などのタイミング関連パラメータであってもよい。ペーシングベクトルは、最適化のためにブロック804において選択されてもよい別の制御パラメータである。例えば、冠状静脈洞リードなどの多極リードが使用される場合、所与の心腔におけるペーシングのために複数の双極または単極ペーシングベクトルが選択されてもよい。特定のペーシングベクトルに関連したペーシング部位は、ペーシング治療の血行力学的利益に大きな影響を与えることがある。したがって、ペーシングベクトルは、本明細書に記載の方法を使用して最適化されてもよい1つのペース制御パラメータである。
【0095】
ペーシングシーケンスは、ブロック804において選択された試験パラメータの初期パラメータ設定を使用して、ブロック806において開始される。一実施形態では、AV間隔は最適化されており、心室ペーシングは、初期AV間隔設定において提供される。無傷のAV伝導を有する、すなわちAVブロックを有しない患者における固有のAV間隔をまず測定することによって、初期AV間隔設定がブロック806において選択されてもよいことが理解される。初期AV間隔は、デフォルトのペーシング間隔、最後にプログラムされたAV間隔、または試験される最小または最大のAV間隔であってもよい。代替的に、最適化のためにVV間隔が選択された場合、固有の心室間伝導時間がまず測定されてもよく、ペーシングされたVV間隔は、固有のVV伝導時間より長い、短い、またはほぼ等しいVV間隔において始まって繰り返し調節されてもよい。
【0096】
選択された試験パラメータを少なくとも2つの異なる設定に調節するための反復プロセスが行われる。パラメータは、任意の所望の順序で、例えば、増加、減少、ランダムなどで、異なる設定に調節されてもよい。例えば、AV間隔の調節中に、初期AV間隔は、測定された固有のAV伝導時間よりもわずかに長いかまたはほぼ等しくなり、その後、最小AV間隔試験設定まで繰り返し減少するように設定され得る。各ペースパラメータ設定を使用するペーシング中に、HS信号はブロック808において取得される。反復プロセスは、ブロック810において決定されるように、すべての試験パラメータ設定が適用され、各設定についてHS信号が記録されるまで、ブロック812において次の試験パラメータ設定に進む。
【0097】
個々の心周期から取得されたHSパラメータ測定値のアンサンブル平均化または平均化を可能にするために、HS信号が、複数の心周期に対して取得されてもよい。HS信号の信号対ノイズ比を改善するために、増幅、フィルタリング、整流、ノイズキャンセル技術または他の信号処理ステップが使用されてもよく、これらのステップは、任意のまたはすべてのタイプの心音を含むことがある取得される心音の各々に対して異なってもよいことが理解される。
【0098】
ブロック814において、各試験パラメータ設定について記録されたHS信号から、少なくとも1つのHSパラメータ測定値が決定される。例えば、プログラマーに含まれる、IMDプロセッサもしくは外部プロセッサ、または両方の組み合わせが、本明細書で説明されるHS信号分析を実施してもよい。一実施形態では、ブロック814において、S1およびS2が記録され、S1およびS2信号を使用してHSパラメータが測定される。例えば、S1の振幅、V-S2間隔(VイベントはVペースまたは検知されたR波であってもよい)、およびS1-S2間隔が測定される。S3および/またはS4の存在に追加的に注意してもよいまたはこれらの信号の測定が、関連するパラメータを決定するために行われてもよい。HS信号パラメータは、少なくとも2つの異なる試験パラメータ設定、例えば、少なくとも2つの異なるAV間隔、2つ以上の異なるVV間隔、または2つ以上の異なるペーシングベクトルに対して決定される。
【0099】
ブロック818において、ペースパラメータ試験設定の関数としてブロック810において決定された各HSパラメータの傾向が決定される。一実施形態では、V-S2間隔、S1振幅、およびS1-S2間隔の各々の傾向が決定される。他の実施形態は、S1信号の間のM1音とT1音の分離を決定することを含んでもよい。変化したペース制御パラメータに関するHSパラメータ(複数可)の傾向に基づいて、最適なペースパラメータ設定が、ブロック820においてプロセッサによって自動的に特定されてもよい。追加的に、または代替的に、HS傾向は、プログラマーまたはリモートネットワーク化されたコンピュータなどの外部機器上のブロック822で報告および表示される。
【0100】
試験されるペースパラメータが、例えば、多極電極がLVに沿った四極リードなどの心腔に沿って位置決めされるときのペーシング部位またはペーシングベクトルである場合、ペーシング部位またはベクトルは、心室収縮性のためのHSベース代理の最大化に基づいて選択されてもよい。一実施形態では、S1の振幅は、心室収縮性のための代理として使用され、最大S1に関連するペーシング部位またはベクトルは、最適なペーシングベクトル設定としてブロック820において特定される。
【0101】
ブロック818での各HSパラメータの傾向を決定することは、V-S2間隔傾向が、例えば、実質的に平坦な傾向から減少する傾向への突然の勾配変化を表すかどうかを決定することを含んでもよい。V-S2間隔の傾向の突然の変化に関連するAV間隔は、最適なAV間隔設定として特定されてもよい。最適なAV間隔は、他のHS傾向、例えば、最大S1振幅および/または最大S1-S2間隔に基づいてさらに特定されてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、自動的に特定された最適なペースパラメータ設定は、ブロック824においてIMDに自動的にプログラムされてもよい。他の実施形態では、臨床医またはユーザは、報告されたHSデータおよび推奨されるペースパラメータ設定(複数可)を検討し、推奨される設定を受け入れるか、またはHSデータに基づいて別の設定を選択してもよい。
【0103】
HS検知モジュールまたは回路は、制御回路80(図8)に動作可能に結合されてもよく、これらの心音のうちの1つまたは複数を検知するためにHSセンサからアナログ信号を受信するように構成されてもよい。例えば、HS検知モジュールは、心音の周波数、継続時間、およびタイミングに基づいて特定の心音を特に検知するように構成された1つ以上の「チャネル」を含んでもよい。例えば、ECG/EGM検知回路は、心音を検知するためにHS検知モジュールによって使用されるHS検知ウィンドウを設定するために、制御回路80によって使用されてもよい。HS検知モジュールは、心音信号の信号対ノイズ比を最適化するための1つ以上の検知増幅器、フィルタ、および整流器を含んでもよい。必要に応じて信号品質を改善するために、S1~S4の各音を検知するために、別個の独特の増幅およびフィルタリング特性が提供されてもよい。
【0104】
生理学的応答情報を表すために、生体インピーダンス、または心臓内インピーダンスが測定され、使用されてもよい。例えば、本明細書に記載のIMDのいずれも、電流を注入し、電極ベクトル構成の電極(例えば、選択された電極)間の電圧を測定することによって、心臓内インピーダンス信号を測定し得る。例えば、IMDは、第1の電極(例えば、RV電極)と三尖弁に近接するRVに位置付けられている電極との間に電流(例えば、非ペーシング閾値電流)を注入し、第1の電極と第2の電極との間の電圧を測定することによって、インピーダンス信号を測定し得る。使用できる別のベクトルは、LV電極からRV電極までである。他のベクトルペア構成が刺激と測定に使用される可能性があることを認識であろう。インピーダンスは、対象の組織または心腔を含む電極の任意のセット間で測定することができる。したがって、同じ2つの電極におけるインピーダンスを計算するために電流を注入して電圧を測定するか(バイポーラ構成)、または2つの別々の電極対において電流を注入して電圧を測定することができ(例えば、電流注入のための一対と、電圧検知のための一対)、これは、したがって、四極構成である。四極電極構成の場合、電流注入電極と電圧検知電極は互いに一列に並んでいて(または密接に平行であり)、電圧検知電極は電流検知フィールド内にあってもよい。例えば、SVCコイル電極とRV先端電極との間に1つの注入電流がある場合、電圧検知は、RVコイル電極とRVリング電極との間にあってもよい。そのような実施形態において、VfAリードが、LV心臓治療または検知のために使用されてもよい。インピーダンスベクトルは、心房および心室などの、対象となる特定の解剖学的領域を包含するように構成することができる。
【0105】
本明細書に記載の例示的な方法および/または機器は、1つ以上の電極ベクトル構成を監視してもよい。さらに、複数のインピーダンスベクトルは、別のインピーダンスベクトルに対して同時におよび/または定期的に測定されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、例示的な方法および/または機器は、インピーダンス波形を使用して、CRTを最適化するための選択データを取得してもよい(例えば、適用可能な基準点を見つけるため、そのような波形からの測定値の抽出を可能にするためなど)。
【0106】
本明細書で使用される場合、「インピーダンス信号」という用語は、生のインピーダンス信号に限定されない。生のインピーダンス信号は、インピーダンス信号を提供するために(例えば、アーチファクト、ノイズ、雑音、電磁干渉(EMI)、および/または外来信号を除去するために)処理、正規化、および/またはフィルタリングされてもよいことが暗示されるべきである。さらに、「インピーダンス信号」という用語は、インピーダンス信号の実数部および虚数部、インピーダンスに基づくコンダクタンス信号(すなわち、インピーダンスの逆数または逆元)などを含む、その様々な数学的派生物を含んでもよい。言い換えれば、「インピーダンス信号」という用語は、コンダクタンス信号、すなわちインピーダンス信号の逆数である信号を含むと理解されてもよい。
【0107】
本明細書に記載の方法および/または機器の1つ以上の実施形態では、様々な患者の生理学的パラメータ(例えば、心臓内インピーダンス、心音、R-R間隔などの心周期間隔など)を監視して、CRT(例えば、AVおよび/またはVV遅延を設定すること、例えば、インピーダンス一次微分dZ/dtを使用しておよび/または測定することによって心臓収縮力を最適化すること、ペーシング部位を選択すること、ペーシングベクトルを選択すること、リードを配置すること、または電気的および機械的観点(例えば、電気的捕捉は機械的捕捉を意味しない場合があり、心音とインピーダンスから機械的情報を見ることで、電気的刺激が心臓を捕捉するかどうかを評価するのに役立つ場合がある)の両方からペーシング捕捉を評価すること、ペーシングのための効果的な電極ベクトル構成を選択することなど)を最適化するための選択データの取得に使用し得る。例えば、2つ以上の電極間の心臓内インピーダンス信号は、そのような最適化を提供する際に使用するために監視されてもよい。
【0108】
図12は、機器パラメータオプションの1つ(例えば、最適なパラメータであってもよい潜在的なAV遅延などの、CRTを最適化するために使用されてもよい選択可能な機器パラメータの1つ)のための選択データを取得するための方法850の一例を示す。心臓治療を最適化するために心音を使用する他の例は、2017年7月18日に付与された「Cardiac resynchronization therapy optimization based on intracardiac impedance and heart sounds」と題する米国特許第9,707,399号に概略的に説明されている。
【0109】
示されるように、ペーシング治療は、複数の機器オプションのうちの1つを使用して提供される(ブロック852)(例えば、複数の機器パラメータオプションは、固有のAV遅延のパーセンテージ、例えば、固有のAV遅延の40%、固有のAV遅延の50%、固有のAV遅延の60%、固有のAV遅延の70%、固有のAV遅延の80%などの、選択、決定、および/または計算されたAV遅延であってもよい)。ペーシング(ブロック852)に使用される機器パラメータオプションのために、選択データは、複数の電極ベクトル構成のそれぞれにおいて取得される(例えば、心臓内インピーダンスは、複数の心周期にわたって監視され、選択データは、そのようなインピーダンス信号を使用して抽出される)。決定ブロック854によって示したように、選択データがすべての所望の電極ベクトル構成から取得されていない場合、選択データを取得するループ(例えば、ブロック858、860、862および864によって示されたループ)が繰り返される。選択データがすべての所望の電極ベクトル構成から取得された場合、治療を提供するために別の異なる機器パラメータオプションが使用され(ブロック856)、すべての異なる機器パラメータオプションのために選択データが取得されるまで(例えば、異なる機器パラメータオプションのために)図12の方法850が繰り返される(例えば、異なる機器パラメータオプションのそれぞれのために、複数の電極ベクトル構成のそれぞれにおいて選択データが収集される)。
【0110】
所望の電極ベクトル構成の各々のための選択データを取得する繰り返されるループ(例えば、ブロック858、860、862および864)に示したように、複数の電極ベクトル構成のうちの1つが、選択データの取得において使用するために選択される(ブロック858)。選択された電極ベクトル構成のために、少なくとも1つの心周期の収縮期部分の少なくとも一部に関連する時間基準点、および/または少なくとも1つの心周期の拡張期部分の少なくとも一部に関連する時間基準点が取得される(ブロック860)(例えば、心音の使用、インピーダンス信号の最小および最大の分析、RR間隔などの生理学的パラメータに基づくアルゴリズムの適用などによって)。例えば、心周期の収縮期および/または拡張期部分に関連する一時的基準点が取得されてもよく、心周期の収縮期および/または拡張期部分内の1つ以上の規定されたセグメントに関連する一時的基準点が取得されてもよく、かつ/または心周期の収縮期および/または拡張期部分の1つ以上の点および/または部分内の、またはそれらに関連する一時的な基準点が取得されてもよい。なおさらに、例えば、心周期の収縮期部分のみまたは拡張期部分のみに関連する一時的基準点が取得されてもよく、心周期の収縮期部分のみまたは拡張期部分のみにおける1つ以上の規定されたセグメントに関連する一時的基準点が取得されてもよく、かつ/または心周期の収縮期部分のみまたは拡張期部分のみにおける1つ以上の点および/または部分内の、またはそれらに関連する一時的な基準点が取得されてもよい。言い換えれば、心周期の収縮期部分と拡張期部分の両方に関連するか、または心周期のそのような部分の1つだけに関連する基準点が取得されてもよい。さらに、例えば、そのような基準点は、本明細書に記載の分析において使用するために心臓内インピーダンスを測定することができる、測定ウィンドウおよび/または期間(例えば、間隔、点など)を表してもよいか、または示してもよい。
【0111】
ほぼ同じ時間枠において(例えば、取得された基準点とほぼ同時に)、心臓内インピーダンス信号が、選択された電極ベクトル構成において取得される(ブロック862)。取得された基準点および取得された心臓内インピーダンス信号を用いて、インピーダンス信号からの測定値は、時間基準点(ブロック864)に基づいて抽出される(例えば、基準点間に規定された測定ウィンドウにおけるインピーダンス信号の積分、基準点の間に規定された測定ウィンドウにおけるインピーダンス信号の最大傾斜、基準点の間の時間、基準点における最大インピーダンスなど)。そのような測定値のうちの1つ以上は、機器パラメータオプションが治療を最適化するための有効な機器パラメータであってもよいことを測定が示してもよいかどうかの決定を許容するこのような測定のための所望の値と比較可能であってもよい(例えば、複数のこのような測定がある基準または閾値を満たしているかどうかに基づき、機器パラメータオプションが最適なパラメータであってもよいかどうかを決定するためにスコアリングアルゴリズムが使用されてもよい)。
【0112】
(例えば、図12に記載したように得られる)機器パラメータオプションの各々の測定データは、少なくとも1つの心周期のために決定される。1つ以上の実施形態では、そのような測定データは、複数の心周期のために取得される。測定データが取得される心周期は、任意の好適な心周期であってもよい。1つ以上の実施形態では、その間に測定データが取得される、選択された心周期は、呼吸周期に基づく。少なくとも1つの実施形態では、測定データは、呼吸周期の終わり(例えば、呼気の終わりの近く)に発生する心周期の間に取得される。
【0113】
図13は、電極装置110、表示装置130、および演算装置140を含む例示的なシステム100を示している。示されるように、電極装置110は、患者120の胸部または胴体の周りに巻かれたバンド内に組み込まれるか、または含まれる複数の電極を含む。電極装置110は、分析、評価などのために、各電極からの電気信号を演算装置140に提供するために、演算装置140に動作的に結合されている(例えば、1つまたは有線の電気的接続を通して、無線でなど)。例示的な電極装置は、2016年4月26日に発行された「Bioelectric Sensor Device and Methods」と題する米国特許第9,320,446号において説明され得る。さらに、例示的な電極装置110は、図14および図15を参照してより詳細に説明される。
【0114】
本明細書には記載されていないが、例示的なシステム100は、画像化装置をさらに含んでもよい。画像化装置は、非侵襲的な方法で患者の少なくとも一部を画像化する、または画像を提供するように構成された任意のタイプの画像化装置であってもよい。例えば、画像化装置は、造影剤などの非侵襲的ツールを除いて、患者の画像を提供するために患者内に位置付けられ得るいかなる構成要素または部品も使用してはならない。本明細書に記載される例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、画像化装置をさらに使用して、ユーザ(例えば、医師)に非侵襲的な支援を提供し、VfAペーシング治療を較正かつ/または提供し、機器を位置付けしかつ位置決めしてVfA心臓ペーシング治療を提供し、かつ/または心房からの心室のペーシング治療に対する評価に関連して、心房からの心室のペーシング治療のために患者の心臓に近接したペーシング電極またはペーシングベクトルを位置付けまたは選択し得ることが理解されたい。
【0115】
例えば、例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、患者の体内で、リードレス機器、電極、リードレス電極、無線電極、カテーテルなどを含むリードをナビゲーションするために使用され得る画像ガイドナビゲーションを提供する一方で、心房からの心室(VfA)ペース設定が最適であるかどうかを判定すること、または選択された位置情報(例えば、左心室の特定の位置を対象とする電極の位置情報)などの1つ以上の選択されたパラメータが最適であるかどうかを判定すること、を含む非侵襲的な心臓治療評価を提供してもよい。画像化装置および/または電極装置を使用する例示的なシステムおよび方法は、2013年6月12日に出願された、「Implantable Electrode Location Selection」と題する米国特許公開第2014/0371832号、2013年6月12日に出願された、「Implantable Electrode Location Selection」と題する米国特許公開第2014/0371833号、2014年3月27日に出願された、「Systems,Methods,and Interfaces for Identifying Effective Electrodes」と題する米国特許公開第2014/0323892号、2014年3月27日に出願された、「Systems,Methods,and Interfaces for Identifying Optical Electrical Vectors」と題する米国特許公開第2014/0323882号に説明され得る。
【0116】
例示的な画像化装置は、X線画像および/または他の任意の代替的な画像化診断法を捕捉するように構成され得る。例えば、画像化装置は、アイソセントリック蛍光透視法、バイプレーン蛍光透視法、超音波、演算断層撮影(CT)、マルチスライス演算断層撮影(MSCT)、磁気共鳴画像法(MRI)、高周波超音波(HIFU)、光コヒーレンストモグラフィー(OCT)、血管内超音波(IVUS)、二次元(2D)超音波、三次元(3D)超音波、四次元(4D)超音波、術中CT、術中MRIなどを使用して、画像または画像データを捕捉するように構成され得る。さらに、画像化装置は、ビデオフレームデータを提供するために複数の連続した画像を(例えば、連続的に)捕捉するように構成され得ることを理解されたい。言い換えれば、画像化装置を使用して経時的に撮影された複数の画像は、ビデオフレームまたは動画のデータを提供し得る。追加的に、画像は、二次元、三次元、または四次元で取得および表示することもできる。より高度な形態では、心臓または身体の他の領域の四次元表面レンダリングは、地図またはMRI、CT、または心エコー検査診断法によって捕捉された術前画像データからの心臓データまたは他の軟組織データを組み込むことによっても達成され得る。CTと組み合わせた陽電子放出断層撮影(PET)、またはCTと組み合わせた単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)などのハイブリッド診断法からの画像データセットはまた、解剖学的データに重畳された機能的な画像データを提供し、例えば、心臓または他の関心領域内の近位の標的位置(例えば、左心室内の位置、左心室空洞の高後基底および/または中隔野内の選択された位置を含む)を使用して治療装置をナビゲートすることができる。
【0117】
本明細書に記載の例示的なシステムおよび方法と併せて使用され得るシステムおよび/または画像化装置は、2005年1月13日に公開されたEvronらに対する米国特許出願第2005/0008210号、2006年4月6日に公開されたZarkhらに対する米国特許公開第2006/0074285号、2011年5月12日に公開されたZarkhらに対する米国特許公開第2011/0112398号、2013年5月9日に公開されたBradaらに対する米国特許出願第2013/0116739号、2005年12月27日に発行されたEvronらに対する米国特許第6,980,675号、2007年10月23日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,286,866号、2011年12月11日に発行されたReddyらに対する米国特許第7,308,297号、2011年12月11日に発行されたBurrellらに対する米国特許第7,308,299号、2008年1月22日に発行されたEvronらに対する米国特許第7,321,677号、2008年3月18日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,346,381号、2008年11月18日に発行されたBurrellらに対する米国特許第7,454,248号、2009年3月3日に発行されたVassらに対する米国特許第7,499,743号、2009年7月21日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,565,190号、2009年9月8日に発行されたZarkhらに対する米国特許第7,587,074号、2009年10月6日に発行されたHunterらに対する米国特許第7,599,730号、2009年11月3日に発行されたVassらに対する米国特許第7,613,500号、2010年6月22日に発行されたZarkhらに対する米国特許第7,742,629号、2010年6月29日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,747,047号、2010年8月17日に発行されたEvronらに対する米国特許第7,778,685号、2010年8月17日に発行されたVassらに対する米国特許第7,778,686号、2010年10月12日に発行されたOkerlundらに対する米国特許第7,813,785号、2011年8月9日に発行されたVassらに対する米国特許第7,996,063号、2011年11月15日に発行されたHunterらに対する米国特許第8,060,185号、および2013年3月19日に発行されたVerardらに対する米国特許第8,401,616号に説明されている。
【0118】
表示装置130および演算装置140は、例えば、電気信号(例えば、心電図データ)、機械的心臓機能および電気的心臓機能の1つ以上を代表する心臓情報(例えば、機械的心臓機能のみ、電気的心臓機能のみ、または機械的心臓機能と電気的心臓機能の両方)などのデータを表示および分析するように構成され得る。心臓情報は、例えば、電極装置110を使用して収集、監視、または収集された電気信号を使用して発生させられる、電気的不均一性情報または電気的同期不全情報、代替電気活性化情報またはデータなどを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、演算装置140は、サーバ、パーソナルコンピュータ、またはタブレットコンピュータであってもよい。演算装置140は、入力装置142からの入力を受信し、出力を表示装置130に送信するように構成され得る。さらに、演算装置140は、処理プログラムまたはルーチン、および/または1つ以上の他のタイプのデータ、例えば、少なくとも心拍数に基づいて、ペーシング治療を較正および/または送達するため、ペーシング機器の配置を目標とする際にユーザを非侵襲的に支援するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを駆動するため、および/またはその位置(例えば、ペーシングに使用される埋め込み可能な電極の位置、特定のペーシングベクトルによって送達されるペーシング治療の位置など)におけるペーシング治療を評価するためにアクセスすることを可能にするデータ記憶装置を含み得る。
【0119】
演算装置140は、入力装置142および表示装置130に動作可能に結合されて、例えば、入力装置142および表示装置130の各々との間でデータを送信し得る。例えば、演算装置140は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベースの接続、ネットワークベースの接続、インターネットを使用して、入力装置142、および表示装置130の各々に電気的に結合され得る。本明細書でさらに説明するように、ユーザは、入力装置142に入力を提供して、表示装置130に表示される、心臓治療に関連している1つ以上のグラフィック描写を操作または修正し、1つ以上の情報を表示および/または選択し得る。
【0120】
図示のように、入力装置142はキーボードであるが、入力装置142は、本明細書に記載の機能、方法、および/または論理を実施するために演算装置140に入力を提供し得る任意の装置を含み得ることを理解されたい。例えば、入力装置142は、マウス、トラックボール、タッチスクリーン(例えば、容量性タッチスクリーン、抵抗性タッチスクリーン、マルチタッチタッチスクリーンなど)などを含み得る。同様に、表示装置130は、少なくとも測定された心拍数、VfAペーシング治療を提供するために位置決めまたは配置されるリードレスペーシング機器のグラフィカルな描写、1つ以上の電極の位置のグラフィカルな描写、人間の胴体のグラフィカルな描写、患者の胴体の画像またはグラフィカルな描写、埋め込まれた電極および/またはリードなどのグラフィカルな描写または実際の画像などに基づいて、ユーザに情報を表示することができる任意の装置、例えば、心臓情報、テキストによる指示、電気的活性化情報のグラフィカルな描写、人間の心臓の解剖学のグラフィカルな描写、患者の心臓の画像またはグラフィカルな描写、ペーシング治療を較正および/または送達するために使用されるリードレスペーシング機器のグラフィカルな描写などを含むグラフィカルなユーザインターフェース132を含むことができる。さらに、表示装置130は、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードスクリーン、タッチスクリーン、陰極線管ディスプレイなどを含み得る。
【0121】
演算装置140によって記憶および/または実行される処理プログラムまたはルーチンは、計算数学、行列数学、分散判定(例えば、標準偏差、分散、範囲、四分位間範囲、平均絶対差、平均絶対偏差など)、フィルタリングアルゴリズム、最大値判定、最小値判定、閾値判定、移動窓アルゴリズム、分解アルゴリズム、圧縮アルゴリズム(例えば、データ圧縮アルゴリズム)、較正アルゴリズム、画像構築アルゴリズム、信号処理アルゴリズム(例えば、各種フィルタリングアルゴリズム、フーリエ変換、高速フーリエ変換など)、標準化アルゴリズム、比較アルゴリズム、ベクトル数学、または本明細書に記載された1つ以上の例示的な方法および/またはプロセスを実装するために必要な他の処理のためのプログラムまたはルーチンを含み得る。演算装置140によって記憶および/または使用されるデータは、例えば、電極装置110からの電気信号/波形データ、分散信号、ウィンドウ化された分散信号、様々な信号の一部または部分、電極装置110からの電気的活性化時間、グラフィック(例えば、グラフィカル要素、アイコン、ボタン、ウィンドウ、ダイアログ、プルダウンメニュー、グラフィックエリア、グラフィック領域、3Dグラフィックなど)、グラフィカルユーザインターフェース、本明細書に開示に従って採用される1つ以上の処理プログラムまたはルーチンからの結果(例えば、電気信号、心臓情報など)、または本明細書に記載される1つ以上のプロセスまたは方法を遂行するために必要とされる可能性のある他のデータを含み得る。
【0122】
1つ以上の実施形態では、例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、例えば、処理能力、データ記憶装置(例えば、揮発性または不揮発性メモリおよび/または記憶素子)、入力機器、および出力機器を含むコンピュータなどのプログラム可能なコンピュータ上で実行される1つ以上のコンピュータプログラムを使用して実装され得る。本明細書に記載のプログラムコードおよび/またはロジックを入力データに適用して、本明細書に記載の機能を実施し、所望の出力情報を発生させてもよい。出力情報は、本明細書に記載されているように、または既知の方法で適用されるように、1つ以上の他の機器および/または方法への入力として適用され得る。
【0123】
本明細書に記載のシステム、方法、および/またはインターフェースを実装するために使用される1つ以上のプログラムは、任意のプログラム可能な言語、例えば、コンピュータシステムとの通信に好適な高レベルの手続き型および/またはオブジェクト指向プログラミング言語を使用して提供され得る。任意のそのようなプログラムは、例えば、本明細書に記載された手順を実施するために好適な機器が読み取られたときに、コンピュータシステムを構成し動作させるためのコンピュータシステム(例えば、処理装置を含む)上で実行される汎用または特殊目的のプログラムによって読み取られる任意の好適な機器、例えば、記憶媒体に記憶され得る。言い換えれば、少なくとも1つの実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を使用して実装されてもよく、ここで、そのように構成された記憶媒体は、本明細書に記載された機能を実施するために、具体的かつ事前定義された方法でコンピュータを動作させる。さらに、少なくとも1つの実施形態では、例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、実行のためのコードを含み、プロセッサによって実行されると、本明細書に記載された方法、プロセス、および/または機能のような動作を実施するために動作可能である、1つ以上の非一時的な媒体にエンコードされたロジック(例えば、オブジェクトコード)によって実装されるものとして説明され得る。
【0124】
演算装置140は、例えば、任意の固定またはモバイルコンピュータシステム(例えば、コントローラ、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、ミニコンピュータ、タブレットコンピュータなど)であってもよく、一般に、処理回路を含むものとして説明され得る。演算装置140の正確な構成は限定的ではなく、本質的に、好適なコンピューティング機能および制御機能(例えば、グラフィックス処理など)を提供し得る任意の機器が使用され得る。本明細書に記載されているように、デジタルファイルは、本明細書に記載されているコンピューティング装置140によって読み取り可能および/または書き込み可能なデジタルビット(例えば、2進法、3進法などで符号化された)を含む任意の媒体(例えば、揮発性または不揮発性メモリ、CD-ROM、パンチカード、ディスクまたはテープなどの磁気記録可能な媒体など)であってもよい。また、本明細書に記載されているように、ユーザ読み取り可能な形式のファイルは、ユーザによって読み取り可能および/または理解可能な任意の媒体(例えば、紙、ディスプレイなど)上に提示可能なデータ(例えば、ASCIIテキスト、2進数、16進数、10進数、グラフィックなど)の任意の表現であってもよい。
【0125】
上記を考慮して、本開示による1つ以上の実施形態に記載される機能は、当業者に知られている任意の方法で実装され得ることが容易に明らかであろう。このように、本明細書に記載されたプロセスを実装するために使用されるコンピュータ言語、コンピュータシステム、または他のソフトウェア/ハードウェアは、本明細書に記載されたシステム、プロセスまたはプログラム(例えば、そのようなシステム、プロセスまたはプログラムによって提供される機能性)の範囲を制限するものではないものとする。
【0126】
患者の心臓の電気的活性化時間は、患者の心臓の状態を評価するため、および/または心室(VfA)心臓治療からの心室を患者に較正、送達、または評価するために有用である可能性がある。図13図15に示されるように、電極装置110を使用して、患者の心臓の1つ以上の領域の代理電気的活性化情報またはデータを監視または判定し得る。例示的な電極装置110は、患者120の体表面電位、より具体的には、患者120の胴体表面電位を測定するように構成され得る。
【0127】
図14に示されるように、例示的な電極装置110は、電極112、ストラップ113、およびインターフェース/増幅器回路116のセットまたはアレイを含み得る。少なくとも1つの実施形態では、電極のセットの一部が使用され得、その部分は、患者の心臓上の特定の位置に対応する。電極112は、ストラップ113に取り付けられ、または結合され得、ストラップ113は、電極112が患者の心臓を取り囲むように、患者120の胴体の周りに巻き付けられるように構成され得る。さらに示されるように、電極112は、患者120の胴体の後外側、側方、後外側、前外側、および前方の位置を含む、患者120の周囲の周りに位置決めされ得る。
【0128】
さらに、電極112は、有線接続118を介してインターフェース/増幅器回路116に電気的に接続され得る。インターフェース/増幅器回路116は、電極112からの信号を増幅し、信号を演算装置140に提供するように構成され得る。他の例示的なシステムは、無線接続を使用して、電極112によって検知された信号をインターフェース/増幅器回路116に送信し、次に、例えば、データのチャネルとして演算装置140に送信し得る。例えば、インターフェース/増幅器回路116は、例えば、アナログ電気接続、デジタル電気接続、無線接続、バスベース接続、ネットワークベース接続、インターネットベースの接続などを使用して、演算装置140および表示装置130の各々に電気的に結合され得る。
【0129】
図14の例では、電極装置110はストラップ113を含むが、他の例では、電極112の間隔および配置を助けるために、様々な機構、例えば、テープまたは接着剤のいずれかが用いられ得る。いくつかの例では、ストラップ113は、弾性バンド、テープのストリップ、または布を含み得る。他の例では、電極112は、患者120の胴体に個々に配置し得る。さらに、他の例では、電極112(例えば、アレイに配置される)は、パッチ、ベスト、および/または電極112を患者120の胴体に固定する他の方法の一部であっても、またはその中に位置付けされ得る。
【0130】
電極112は、患者120の心臓を取り囲み、信号が患者120の胴体を通って伝播した後、心臓の脱分極および再分極に関連する電気信号を記録または監視するように構成され得る。電極112の各々は、心臓信号を反映する胴体表面電位を検知するために単極構成で使用され得る。インターフェース/増幅器回路116はまた、単極検知のために各電極112と組み合わせて使用され得る戻り電極または無関心電極(図示せず)に結合され得る。いくつかの例では、患者の胴体の周りに空間的に分布した約12~約50の電極112があってもよい。他の構成は、より多くのまたはより少ない電極112を有し得る。
【0131】
演算装置140は、電極112によって検知され、インターフェース/増幅器回路116によって増幅/調整された電気的活動(例えば、胴体表面電位信号)を記録および分析し得る。コンピューティング装置140は、電極112からの信号を分析して、本明細書にさらに記載されるように、前方電極信号および後方電極信号としての心臓電気活性化時間、および代替心臓電気活性化時間、例えば、患者の心臓の1つ以上の領域の実際の、または局所的な電気活性化時間の代表を提供するように構成され得る。コンピューティング装置140は、較正、送達、および/またはVfAペーシング治療を評価するための使用のために、例えば、本明細書でさらに記載されるように、患者の心臓の1つ以上の前部中隔野の実際の、または局所的な、電気的活性化時間を代表する、前部中隔電極信号および代替心臓電気的活性化時間として提供するために、電極112からの信号を分析するように構成され得る。さらに、患者の胴体体の左前部表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の左前部左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、患者の胴体体の左側部表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の左側部左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、または代理的なものであってもよい。患者の胴体体の左後側表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の後側左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、患者の胴体の後側表面位置で測定される電気信号は、患者の心臓の後側左心室領域の電気信号の代表的なものであってもよく、または代理的なものであってもよい。1つ以上の実施形態では、活性化時間の測定は、心臓脱分極の発症(例えば、QRS複合体の発症)と、例えば、ピーク値、最小値、最小勾配、最大勾配、ゼロ交差、閾値交差などの適切な基準点との間の時間の期間を測定することによって実施することができる。
【0132】
追加的に、演算装置140は、電極装置110を使用して得られた代理電気的活性化時間を示すグラフィカルユーザインターフェースを提供するように構成され得る。例示的なシステム、方法、および/またはインターフェースは、電極装置110を使用して収集された電気情報を非侵襲的に使用して、患者の心臓状態を評価し、および/または患者に提供される、または提供されているVfAペーシング治療を較正、提供、または評価し得る。
【0133】
図15は、患者120の心臓を取り囲み、信号が患者120の胴体を通って伝播した後、心臓の脱分極および再分極に関連する電気信号を記録または監視するように構成された複数の電極112を含む、別の例示的な電極装置110を示している。電極装置110は、複数の電極112が取り付けられてもよく、または電極112が結合され得るベスト114を含み得る。少なくとも1つの実施形態では、電極112の複数またはアレイを使用して、例えば、代理電気活性化時間などの電気情報を収集し得る。
【0134】
図14の電極装置110と同様に、図13の電極装置110は、有線接続118を介して電極112の各々に電気的に結合され、電極112から計算装置140へ信号を送信するように構成されたインターフェース/増幅器回路116を含み得る。図示のように、電極112は、例えば、患者120の胴体の前面、側面、後外側、前外側、および後面を含む、患者120の胴体全体に分散され得る。
【0135】
ベスト114は、電極112が布に取り付けられた布で形成し得る。ベスト114は、患者120の胴体上の電極112の位置および間隔を維持するように構成され得る。さらに、ベスト114は、患者120の胴体の表面上の電極112の位置を判定するのを助けるためにマークされ得る。1つ以上の実施形態では、ベスト114は、患者の前部胴体に近接して位置決め可能な約17個以上の前部電極、および患者の前部胴体に近接して位置決め可能な約39個以上の後部電極を含み得る。いくつかの例では、患者120の胴体の周りに約25個の電極112から約256個の電極112が分散されてもよいが、他の構成は多かれ少なかれ電極112を有してもよい。
【0136】
本明細書に記載されるように、電極装置110は、患者の心臓の異なる領域を表す電気情報(例えば、電気信号)を測定するように構成され得る。例えば、患者の心臓の異なる領域の活性化時間は、患者の心臓の異なる領域に対応する表面領域に近接した表面電極を使用して測定された表面心電図(ECG)活性化時間から概算し得る。少なくとも1つの例では、患者の心臓の前中隔野の活性化時間は、患者の心臓の前中隔野に対応する表面領域に近接する表面電極を使用して測定された表面ECG活性化時間から概算し得る。すなわち、電極のセット全体ではなく、電極のセット112の一部を使用して、電極のセットの部分が対応する患者の心臓の特定の位置に対応する活性化時間を発生させ得る。
【0137】
例示的なシステム、方法、およびインターフェースは、患者の心臓の健康または状態の評価、および/または電極装置110の使用による心室からの心房(VfA)のペーシング治療などの心臓治療の評価(例えば、埋め込み中または埋め込み後に患者に現在提供されている心臓治療)において、ユーザに非侵襲的な支援を提供するために使用され得る。さらに、例示的なシステム、方法、およびインターフェースを使用して、VfAペーシング治療などの、患者に提供される、または提供されている心臓治療の構成または較正においてユーザを支援し得る(例えば、測定された心拍数に基づいて)。
【0138】
VfAペーシングは、心臓の心室の同期した均一な活性化を提供するものとして説明できる。一例として、心不全につながる可能性のある心房室(AV)ブロックまたは長期のAVタイミングを持ち、それ以外の場合は無傷の(例えば、正常な)QRSを有する患者は、VfAペーシング治療の恩恵を受けることができる。加えて、例として、VfAペーシングは、内因性心室伝導障害のある心不全患者に有益な活性化を提供する可能性がある。さらに、VfAペーシングを適切に配置することで、そのような患者に心室の最適な活性化を提供できる。さらに、左脚ブロック(LBBB)を有する心不全患者のための左心室(LV)再同期化は、VfAペーシングが、リードレス機器またはリードを心内膜血溜まりに露出させることなく、左室心内膜へのより容易なアクセスを可能にすることを見い出すことができる。同時に、その例では、これは、伝導系の一部を使用してLBBBを修正し、患者を効果的に再同期させるのに役立つ場合がある。
【0139】
電気的活動は、図13図15の電極112などの複数の外部電極を使用して監視し得る。電気的活動は、VfAペーシング治療中またはVfAペーシング治療がない場合に複数の電極によって監視し得る。監視された電気的活動は、患者へのVfAペーシング治療を評価するために使用することができる。説明されているECGベルトを使用して監視される電気的活動は、心臓に対するVfAペーシング治療の少なくとも1つのペーシング設定を評価するために使用できる。例として、ペーシング設定は、電極位置、ペーシング極性、ペーシング出力、ペーシングパルス幅、心房(A)タイミングに対してVfAペーシングが送達されるタイミング、ペーシングレートなどを含むがこれらに限定されない、任意の1つのパラメータまたはパラメータの組み合わせでもよい。さらに、一例として、リードレス機器またはペーシングリードの位置は、左心室腔の高後基底および/または中隔(HPBS)領域内で、またはそれに近接して、右心房を介してアクセスされる左心室内の位置を含み得る。さらに、HPBS領域のペーシング、またはそれに近接したペーシングは、選択的(例えば、HPBSの特定の領域の刺激を単独で含む)または非選択的(例えば、HPBSおよび他の心房および/または心室中隔領域の位置での複合ペーシング)であり得る。
【0140】
さらに、心室活性化の体表面等時性マップは、VfAペーシング治療中またはVfAペーシング治療の非存在下で監視された電気的活動を使用して構築することができる。監視された電気的活動および/または心室活性化のマップは、電気的不均一性情報(EHI)を発生させるために使用することができる。電気的不均一性情報には、電気的不均一性の測定基準の判定を含めることができる。電気的不均一性の測定基準には、患者の胴体の左側にある電極の活性化時間の標準偏差(SDAT)の測定基準、および/または患者の胴体の左側の電極の平均左心室活性化時間(LVAT)の測定基準を含めることができる。LVATの測定基準は、左心室により近位にある前面および後面の両方の電極から判定し得る。電気的不均一性情報の測定基準には、患者の胴体の右側にある電極の平均右心室活性化時間(RVAT)の測定基準を含めることができる。RVATの測定基準は、右心室により近い前面と後面の両方の電極から判定できる。電気的不均一性の測定基準は、患者の胴体の両側からの複数の電極信号から取られた平均総活性化時間(mTAT)の測定基準を含むことができ、または患者の胴体の右側または左側に位置付けられた複数の電極上の活性化時間の範囲もしくは分散を反映した他の測定基準(例えば、標準偏差、四分位間偏差、最新の活性化時間と最も早い活性化時間との間の差)、または患者の胴体の右側および左側の両方を組み合わせたものを含み得る。電気的不均一性情報の測定基準には、心臓の前中隔部分に近接した胴体上の電極の前中隔活性化時間(ASAT)の測定基準を含めることができる。
【0141】
電気的不均一性情報(EHI)は、1つ以上のVfAペーシング設定でのVfAペーシング治療の送達中に発生させられてもよい。電気的不均一性情報は、電気的不均一性の測定基準を使用して発生させることができる。一例として、電気的不均一性の測定基準には、SDAT、LVAT、RVAT、mTAT、およびASATの1つ以上を含めることができる。少なくとも1つの実施形態では、ASATのみが判定され、さらに使用され、および/またはASATは、他の値よりも重く重み付けされ得る。
【0142】
VfAペーシング治療に関連する1つ以上のペーシング設定を評価してもよい。ペーシング設定は、複数のペーシングパラメータを含むことができる。複数のペーシングパラメータは、患者の心臓の状態が改善した場合、VfAペーシング治療が左心室の望ましい部分(例えば、高い後部基底および/または中隔領域)を効果的に捕捉している場合、および/または測定基準である場合に最適である可能性がある電気的不均一性の割合は、ベースラインのリズムまたは治療と比較して、特定の閾値だけ改善される。少なくとも1つの実施形態では、ペーシング設定が最適であるかどうかの判定は、VfAペーシング中(およびいくつかの実施形態では、ネイティブ伝導中、またはVfAペーシングの非存在下で)の電気的活性から発生させられる電気的不均一性の少なくとも1つの測定基準に基づくことができる。少なくとも1つの測定基準には、SDAT、LVAT、RVAT、mTAT、およびASATの1つ以上を含めることができる。
【0143】
さらに、複数のペーシングパラメータは、電気的不均一性のメトリックが特定の閾値よりも大きいか、またはそれ以下である場合、および/または左心室を励起するためのペーシング治療の位置が、心臓の筋繊維の励起の特定のパターンを引き起こす場合、最適なものとなり得る。加えて、電気的不均一性の測定基準が左索枝ブロック(LBBB)の矯正を示す場合、および/または電気的不均一性の測定基準がプルキンエシステムの完全な関与を示す場合など、複数のペーシングパラメータが最適であってもよい。一例として、閾値(例えば、閾値30ミリ秒)以下のASATおよび閾値(例えば、30ミリ秒の閾値)以下のLVATの電気的不均一性の測定基準は、LBBBの補正、したがって、ペース設定が最適である。一例として、閾値以下(例えば、閾値30ミリ秒)のRVAT、閾値以下(例えば、閾値30ミリ秒)のASAT、および閾値(例えば、30ミリ秒の閾値)以下のLVATは、プルキンエシステムが完全に機能していることを示している可能性があるため、ペース設定が最適な場合がある。
【0144】
ペーシング設定は、ペーシング設定が許容可能であること、有益であること、患者の本来の心臓伝導系の完全な関与を示すこと、心室伝導障害(例えば、左脚ブロック)の修正を示すことなどを使用して、VfAペーシング治療に反応して最適であることを判定することができる。ペーシング設定は、ペーシング電極の位置(深さ、角度、スクリューベースの固定機構のための回転量などの1つ以上を含む)、電圧、パルス幅、強度、ペーシング極性、ペーシングベクトル、ペーシング波形、心房内事象またはペーシングされた心房内事象に相対的に、または内因性ヒス束電位に相対的に送達されるペーシングのタイミング、および/またはペーシング位置などのうちの1つ以上を含むことができる。ペーシングベクトルは、例えば、先端電極から缶電極、先端電極からリング電極などのように、VfAペーシング治療を送達するために使用される任意の2以上のペーシング電極を含むことができる。ペーシング位置は、リード、リードレス機器、および/またはVfAを送達するように構成された任意の機器または装置を使用して位置決めされた1つ以上のペーシング電極のいずれかの位置を参照することができる。
【0145】
VfAペーシング治療のペース設定を調整してもよい。少なくとも1つの実施形態では、ペーシング設定は、ペーシング設定が最適でないことに反応して調整してもよい。少なくとも1つの実施形態では、ペーシング設定は、ペーシング設定が最適範囲内にあることに反応して調整され得るが、ペーシング設定が、VfAペーシング治療にとってより有益であり、より有用であり、より機能的である、最適範囲内の位置にあることができるかどうかを判定するために、ペーシング設定を調整することができる。ペーシング設定を調整して、電気的不均一性の最適な測定基準を見つけることができる。
【0146】
1つ以上の実施形態では、ペーシング設定が最適であるかどうかの判定は、ECGベルトを使用する電気的不均一性の特定の測定基準に基づくことができる。少なくとも1つの例では、ペーシング設定は、電気的不均一性の測定基準が特定の測定基準値またはそれに近接するまで、電気的不均一性の測定基準の変化と相関する間隔で調整することができる。例えば、ペース設定を調整すると、電気的不均一性の測定基準が電気的不均一性の特定の閾値測定基準に近づく可能性があり、測定基準が特定の閾値に近づくと、ペース設定の調整速度を遅くすることができる。別の言い方をすれば、電気的異質性のメトリックが特定の閾値メトリックからさらに離れているので、ペース設定をより迅速に調整することができ、電気的異質性のメトリックが特定の閾値メトリックに近づくと、電気的異質性のメトリックが特定の閾値メトリックになるまで、ペース設定をよりゆっくりと調整することができる。
【0147】
本明細書に記載の機器、システム、および方法とともに使用され得る、患者の組織からの電気的活動を監視するために複数の外部電極を有する電極装置を利用するための様々な技法は、2018年3月23日に出願された、「Evaluation of Ventricle from Atrium Pacing Therapy」と題する米国特許出願番号第15/934,517号に開示されている。
【0148】
図16は、VfA医療機器を送達するための例示的な方法500を示している。方法500は、患者の心臓の右心房のKoch三角領域に潜在的な埋め込み部位を配置すること(502)から始めることができる。潜在的な埋め込み部位を配置する事に応答して、方法500は、潜在的な埋め込み部位内の右心房心内膜に固定シースを取り付けること(504)を含み得る。固定シースは、右心房心内膜に取り付け可能であり得る、らせんなどの固定要素を含み得る。固定シースは、可撓性針などの電気プローブを使用して最適な配向を見い出した後、医療機器を埋め込むための堅牢なアンカーを提供し得る。方法500は、潜在的な埋め込み部位でガイドワイヤを介して医療機器を埋め込むこと(510)をさらに含み得る。
【0149】
方法500は、潜在的な埋め込み部位が受け入れ可能であるかどうかを決定すること(506)を含み得る。潜在的な埋め込み部位が受け入れ可能である場合(512)、方法500は、潜在的な埋め込み部位が受け入れ可能であるとの決定に応答して、医療機器のための潜在的な埋め込み部位を準備すること(508)を含み得る。いくつかの実施形態では、医療機器は、潜在的な埋め込み部位を準備した後508に、埋め込まれ得る(510)。
【0150】
潜在的な埋め込み部位が受け入れ可能でない場合(512)、方法500は、例えば、心臓治療に使用される医療機器を埋め込むための最適な方向を見つけようとして、固定シースの向きを変えること(514)を含み得る。例えば、固定シースは、シースを押す、引く、またはねじることによって再び照準を合わせて、シースから針の新しい軌道を作成し得る。
【0151】
機器を埋め込むこと510は、右心房電極、左心室電極、および心臓内医療機器のうちの1つ以上を埋め込むことを含み得る。心臓内医療機器は、上記のリードレス医療機器に関して説明された1つ以上の電子部品を含み得る(図1を参照)。いくつかの実施形態では、左心室電極をリードレットに結合し得る。リードレットは、心臓内医療機器に結合し得る。リードレットと心臓内医療機器の両方を同時に埋め込み得る。例えば、同じガイドワイヤを使用して、リードレットと心臓内医療機器の両方をガイドし得る。いくつかの実施形態では、心臓内ハウジングは、心臓内ハウジングを埋め込み部位に向かって押すために使用され得るレセプタクルに取り付けられ得る。ガイドワイヤは、例えば、サイドシースを使用して、レセプタクルに結合し得る。ガイドワイヤは、例えば、心臓内ハウジングの前で、リードレットを埋め込み部位に向けてガイドするために使用され得る。
【0152】
医療機器の左心室電極は、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域において、左心室に心臓治療を提供するか、または左心室の電気的活動を検知するために、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って埋め込まれ得る。いくつかの実施形態では、左心室電極は、可撓性または半剛性のリードまたはリードレット上に配置され得る。他の実施形態では、左心室電極は、組織貫通電極と同じであり得る。
【0153】
医療機器の右心房電極は、患者の心臓の右心房に心臓治療を提供するか、または右心房の電気的活動を検知するように位置決めし得る。例えば、右心房電極は、右心房の中隔壁の表面に接触し得る。左心室電極は、左心室に向かって中隔壁内に、または中隔壁を通過して、あるいは左心室にさえも延びることができる。
【0154】
図17は、Koch三角領域内に潜在的な埋め込み部位を位置付けるための例示的な方法502を示している。方法502は、大心臓静脈を介して患者の心臓の冠状静脈洞に(例えば、頂点に)第1のガイドワイヤを導入すること(520)を含み得る。方法502はまた、患者の心臓の中心臓静脈に第2のガイドワイヤを導入すること522を含み得る。いくつかの実施形態では、第1および第2のガイドワイヤの交差は、Koch三角領域を位置付けるための略近傍を提供し得る。方法500は、第2のガイドワイヤの位置に対する第1のガイドワイヤの位置に基づいて潜在的な埋め込み部位を特定すること524をさらに含み得る。ガイドワイヤが説明されているが、他の細長い要素を使用して、患者の心臓の冠状静脈洞に、またはシースもしくはリードなどの中心臓静脈を通って横断し得る。
【0155】
Koch三角領域の略近傍が特定されると、方法502は、診断用カテーテル逆行性大動脈を患者の心臓の大動脈弁の非冠状動脈尖に配置すること、または心室造影図の大動脈図を捕捉すること526を含み得る。いくつかの実施形態では、DV図では弁面の最も垂直なビューを提供し、側面図では最も平行なビューに最も近い、または最も近いビューを提供する頭尾角度を特定し得る。方法502はまた、頭尾角を使用して、診断カテーテルの位置または大動脈造影図もしくは心室造影図で特定された大動脈弁の位置に基づいて、またはそれらに関連して、左心室電極の標的配置を特定すること(528)を含み得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、診断用カテーテルの先端は、弁面の平行および垂直の両方のビューにおける標的参照として使用され得る。標的の参照は、潜在的な埋め込み部位に医療機器のペーシング電極を挿入するために使用し得る。例えば、ペーシング電極は、埋め込み中に診断用カテーテルの先端から約1~2cm下に向け得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、標的の配置は、弁面の平行および垂直のビューを使用して大動脈造影図または心室造影図を補足することに基づいて、大動脈弁の位置に対して特定され得る。例えば、大動脈造影図またはLV心室造影図は、決定された頭尾角度を使用して、DV図および側面図の両方から補足され得る。
【0158】
図18は、潜在的な埋め込み部位において右心房心内膜に固定シースを取り付けるための例示的な方法504を示している。方法504は、患者の心臓540の右心房に、flexcathとして説明され得る操縦可能なシースを導入することを含み得る。操縦可能なシースを説明しているが、任意の適切な操縦可能要素を使用して、固定シースを潜在的な埋め込み部位に向け得る。方法504は、例えば、固定シースが少なくとも部分的に操縦可能なシース内に配置されている場合に、固定シースを潜在的な埋め込み部位にガイドすること542を含み得る。いくつかの実施形態では、操縦可能なシースが右心房に入ると、操縦可能なシースの曲線を引っ張ることができるので、操縦可能なシースの遠位端は、冠状静脈洞(CS)口の近くに位置決めされる。遠位端部分(例えば、最後のインチ)は、側面図ではより頂端を指し、DV図では大動脈を指し得る。側面図とDV図の両方を使用して、固定シースの適切な方向性を確保し得る。
【0159】
方法504はまた、例えば、固定シースがらせん状の固定要素を含む場合、操縦可能なシースに対して固定シースを回転させること544を含み得る。固定シースは、固定シースが操縦可能なシースに対して自由に回転できるように、操縦可能なシースに結合し得る。
【0160】
固定シースを回転させる前に、固定シースを操縦可能なシースから遠位に進めさせて、右心房心内膜の組織と係合させ得る。いくつかの実施形態では、造影剤を使用して、固定シースと組織との間の係合を容易にし得る。
【0161】
図19は、潜在的な埋め込み部位が受け入れ可能であるかどうかを決定するための例示的な方法506を示している。方法506は、固定シースに対して可撓性針および拡張器を進めさせて、潜在的な埋め込み部位内の組織と係合すること(560)を含み得る。一般に、可撓性針および拡張器は、固定シース内に少なくとも部分的に配置し得る。いくつかの実施形態では、可撓性針は、拡張器の端部を越えて数ミリメートル延びるように進めさせ得る。いくつかの実施形態では、トルカーツールを針の近位端部分に使用してツールをロックするので、拡張器は、針が拡張器の端から約2~3mm遠位にある点にある。針が組織に接触するまで、拡張器および可撓性針アセンブリを進めさせ得る。
【0162】
方法506は、可撓性針を使用して電気的活動を監視すること(562)を含み得る。いくつかの実施形態では、電位図(EGM)は、針を使用して記録され得る。方法506はまた、右心房と左心室との間の異なる深さでペーシングパルスを送達すること(564)を含み得る。いくつかの実施形態では、可撓性針を使用してペーシングパルスを送達することができ、電気的活動は、12誘導心電図(ECG)などの複数の外部電極を使用して監視し得る。
【0163】
方法506はまた、ペーシングパルスの送達に応答して、複数の外部電極を使用して(例えば、ECGベルトまたはベストを使用して)測定された電気的活動に基づいてペーシング閾値が受け入れ可能であるかどうかを決定すること(566)を含み得る。例えば、活性化パターンは、ECGベルトまたはベストで行われた電気的活動の測定値を使用してチェックし得る。いくつかの実施形態では、可撓性針および拡張器は、可撓性針がLVチャンバに到達するまで進めさせ得る。可撓性針が組織のペースを取り始めるまで、可撓性針を引き戻し得る。この時点で、ペーシング閾値が記録され得る。閾値が低い場合は、可撓性針が引き戻され得る。診断用カテーテルは、存在する場合、移動され得る。操縦可能なシースは、左心室電極の標的配置に向けて(例えば、診断用カテーテルに向けて)再び照準を合わせ得る。方法506は、ブロック560、562、564、および566に戻り得る。閾値が許容可能である場合、方法506は終了し得、医療機器のための潜在的な埋め込み部位を準備する方法508が開始され得る。
【0164】
図20は、使用する医療機器のための潜在的な埋め込み部位を準備するための例示的な方法508を示している。方法508は、ガイドワイヤを潜在的な埋め込み部位に進めさせること(580)を含み得る。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、LV組織および/またはチャンバ内にさらに進めさせられ得る。いくつかの実施形態では、可撓性針および操縦可能なシースは、ガイドワイヤを進めさせる前、進んでいる間、または進めさせた後に取り外され得る。方法508は、ペーシング閾値を試験するために、ガイドワイヤ上でペーシングリードを進めさせること(582)を含み得る。ペーシングリードは、ペーシング閾値を試験するために使用し得る。方法508は、ペーシングリードをガイドワイヤ上で進めさせる前、進んでいる間、または進めさせた後に、固定シースを取り外されること(584)を含み得る。いくつかの実施形態では、固定シースは、ペーシング閾値を試験した後に取り外され得る。いくつかの実施形態では、医療機器がガイドワイヤ上またはガイドワイヤに沿って埋め込むために進む前に、すべてのシースを取り外して、埋め込み部位にガイドワイヤのみを残し得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、ペーシングリードがガイドワイヤに取り付けられる前に、固定シースを取り外すことができる。これにより、リードが埋め込まれた後、シースをリードから簡単に外すことができる。
【0166】
一実施形態では、本開示の医療機器送達方法は、診断用カテーテルを使用するこの一般的な手順に従うことができる。
1.ガイドワイヤをCSの奥深くに配置し、大心臓静脈から頂点まで下ろす。このワイヤは、CS口の位置に関するガイダンスを提供し、バルブ面を示す。
2.中心臓静脈に別のワイヤを配置する。
3.これらの2本のワイヤの交差は、らせんシースを取り付けるおおよその場所である。
4.診断用カテーテルを大動脈弁の非冠状動脈尖に逆行性大動脈に配置する。このカテーテルの先端は、ペーシング電極の標的である。その狙いは、このカテーテルの先端から1または2センチメートル下にある必要がある。
5.心房にflexcathカテーテルを配置し、曲線を引っ張って、カテーテルの先端がCS口の近くにあり、カテーテルの最後の1インチがLV心内膜の診断先端を指しているようにする。シースの適切な方向性を確保するために、横方向とDVの両方を使用する。
6.らせんを取り付けたインナーシースをflexcathの先端にガイドする。flexcathの先端に隣接する組織にらせんを係合する。必要に応じて造影剤を使用する。
7.可撓性針を拡張器の数ミリメートル外側に前進させる。トルカーツールを針の近位端に置き、針が拡張器の端から約2~3mm遠位になる位置でロックする。
8.針が組織に触れるまで、拡張器/針の組み合わせを進めさせる。針からEGMを記録する。
9.針を通してペースを取り、Prukaに12誘導ECGを記録する。
10.一度に数mmだけ拡張器/針を前進させ、12誘導ECGでペースと内因性の拍動を記録する。
11.拡張器針がLVチャンバに到達したら、組織のペースを取り始めるまで拡張器/針を引き戻す。この時点でペーシング閾値を記録する。
12.閾値が低い場合は、針とワイヤを引き戻し、診断用カテーテルを移動させ、flexcathを診断用カテーテルに再び照準を合わせて、ステップ8に戻る。
13.良好な閾値がある場合は、ワイヤをLVの奥深くに押し込み、針とシースを取り外す。
14.ペーシングリードをワイヤ上に配置し、LVまで下げる。
15.ペーシング閾値を試験する。
16.らせんでシースを緩め、すべてのシースを取り外し、ワイヤをLV内に残す。
17.RVおよびLVリードと機器を追加する。
【0167】
別の実施形態では、本開示の医療機器送達方法は、頭尾角および大動脈造影図および/またはLV心室造影図を使用するこの一般的な手順に従い得る。
1.ガイドワイヤまたはシースまたはリードをCSの奥深くに配置し、大心臓静脈から頂点までおろす。このワイヤは、CS口の位置に関するガイダンスを提供し、バルブ面を示す。
2.中心臓静脈に別のワイヤを配置する。
3.これらの2本のワイヤの交差は、らせんシースを取り付けるおおよその場所である。
4.DV図で弁面に最も垂直なビューを提供し、かつ側面図で最も平行なビューを提供する頭尾角度を見つける。
5.大動脈血管造影図とLV心室造影図を取る。上記の4で決定された頭側/尾側の角度で、DV図と側面図の両方からこれらを取得する。
6.心房にflexcathカテーテルを配置し、曲線を引っ張って、カテーテルの先端がCS口の近くにあり、カテーテルの最後の1インチが、側面図ではより先端を指し、DV図では大動脈を指しているようにする。
7.らせんを取り付けたインナーシースをflexcathの先端にガイドする。必要に応じて造影剤を使用して、flexcathの先端に隣接する組織にらせんを係合する。
8.可撓性針を拡張器の数ミリメートル外側に前進させる。これを行う最も簡単な方法は、トルクラーツールを針の近位端に置き、針が拡張器の端から約2~3mm遠位になる位置でロックすることである。
9.針が組織に触れるまで、拡張器/針の組み合わせを前進させる。針からEGMを記録する。
10.針を通してペースを取り、Prukaに12誘導ECGを記録する。
11.一度に数ミリメートルだけ拡張器/針を前進させ、12誘導ECGでペースと内因性の拍動を記録する。
12.拡張器針がLVチャンバに到達したら、組織のペースを取り始めるまで拡張器/針を引き戻す。この時点でペーシング閾値を記録する。
13.閾値が低い場合は、針とワイヤを引き戻し、flexcathを再び照準を合わせて(例えば、横方向または頂端側など)、ステップ9に戻る。
14.良好な閾値がある場合は、ワイヤをLVの奥深くに押し込み、針とシースを取り外す。
15.ペーシングリードをワイヤ上に配置し、LVまで下げる。
16.ペーシング閾値を試験する。
17.らせんでシースを緩め、すべてのシースを取り外し、ワイヤをLV内に残す。
18.RVおよびLVリードと機器を追加する。
【0168】
図21は、操縦可能要素902、固定要素906を備えた固定シース904、拡張器908、可撓性針910、およびガイドワイヤ912のうちの1つ以上を含み得る医療機器送達システム900を示している。固定シース904の固定要素906は、患者の心臓の右心房のKoch三角領域の右心房心内膜に取り付け得る。可撓性針910は、固定シース904に対して長手方向に自由に並進可能であり得る。操縦可能要素902は、固定シース904を操縦するように構成され得る。
【0169】
患者の心臓に導入するために組み立てられるとき、可撓性針910は、固定シース904の管腔内に少なくとも部分的に配置され得る。拡張器908は、固定シース904の管腔に少なくとも部分的に配置され得、可撓性針910は、拡張器908の管腔に少なくとも部分的に配置され得る。ガイドワイヤ912は、固定シース904および/または可撓性針910の管腔内に少なくとも部分的に配置され得る。
【0170】
いくつかの実施形態では、固定要素906はらせん状の取り付け要素であり、固定シース904は、操縦可能要素902に対して自由に回転可能である。いくつかの実施形態では、操縦可能要素902は、操縦可能なシースであり得る。固定シース904は、操縦可能なシースの管腔内で少なくとも部分的に配置可能であり得る。
【0171】
様々な埋め込み型医療機器を、送達システム900と組み合わせて使用するように構成し得る。いくつかの実施形態では、医療機器は、患者の心臓の右心房のKoch三角領域の右心房心内膜に埋め込むために、ガイドワイヤ912の上またはそれに沿って滑るように構成され得る。例えば、埋め込み型医療機器は、右心房電極、左心室電極、心臓内ペーシング機器、リードレット、およびリードのうちの1つ以上を含み得る。左心室電極は、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域において、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って埋め込み可能であり、左心室に心臓治療を提供するか、または左心室の電気的活動を検知するように構成され得る。右心房電極は、患者の心臓の右心房に心臓治療を提供するか、または右心房の電気的活動を検知するように構成し得る。
【0172】
図22は、本明細書に記載の様々な方法で、および/または本明細書に記載の医療機器送達システムを使用して埋め込むことができる埋め込み型医療機器920を示している。機器920は、心臓内ハウジング922およびリードレット924のうちの1つ以上を含み得る。機器920は、心臓内ハウジング922、リードレット924、またはその両方に結合された複数の電極を含み得る。
【0173】
いくつかの実施形態では、複数の電極は、患者の心臓の左心室心筋の基底領域および/または中隔領域において、左心室に心臓治療を提供するか、または左心室の電気的活動を検知するために、右心房のKoch三角領域から右心房心内膜および中心線維体を通って埋め込み可能な左心室電極926を含む。図示のように、左心室電極926は、リードレット924の遠位端部分に結合されている。いくつかの実施形態では、患者の心臓の右心房に心臓治療を提供するか、または右心房の電気的活動を検知するために、右心房内に配置可能な右心房電極928を含む。示されているように、右心房電極928は、心臓内ハウジング922の遠位端部分に結合されている。
【0174】
心臓内ハウジング922は、ここでは再び示さないが、本明細書に記載のリードレスペーシング機器と同様の様々な構成要素を含み得る。特に、例示的な埋め込み型医療機器は、心臓治療を患者の心臓に提供するために複数の電極に動作可能に結合された治療提供回路と、患者の心臓の電気的活動を検知するために複数の電極に動作可能に結合された検知回路と、治療提供回路および検知回路に動作可能に結合された処理回路を含むコントローラと、をさらに含み得る。コントローラは、右心房電極を使用して右心房、左心室電極を使用して左心室、またはその両方の電気的活動を監視するように構成され得る。コントローラはまた、複数の電極のうちの少なくとも1つを使用して監視された電気的活動に基づいて心臓治療を提供するように構成され得る。
【0175】
図23は、医療機器送達システム900(図21)の1つの例示的なシステム940を示している。図示の実施形態では、可撓性針、拡張器、およびらせんを備えたらせんシース(例えば、固定シース)はすべて、操縦可能なシースの内側に少なくとも部分的に配置されている。操縦可能なシースの遠位端を組織に対して保持することができ、らせんを心臓の組織に取り付けることができる。針および拡張器は、LVにトンネリングすることができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、例示的なシステム940は、最初にらせんシースを操縦可能なシースの内側に取り付けることによって組み立てられ得る。これにより、らせんシースを操縦可能なシースとは独立して回転させて、らせんを心臓の所望の位置に固定することを可能にし得る。らせんシースが組織に固定されると、らせんシースは、針またはワイヤまたはリードを心臓に注入するための非常に安定したプラットフォームを提供し得る。
【0177】
次に、拡張器は、操縦可能なシースおよびらせんシースを備えた別の同軸シースとして説明され得、可撓性針を含み得る。拡張器を使用して、針をらせんシースに安全に下ろし得る。
【0178】
針を拡張器に装填し得、針の先端を拡張器の出口または遠位端のすぐ近位に配置し得る。らせんが組織に付着すると、針は拡張器の端を数ミリメートル超えて延ばされ得る。
【0179】
次に、ペーシングパルスを針に与え、Prukaなどの電気生理学的記録システムの12誘導ECGに応答を記録し得る。針および拡張器は、一度に数mmだけ押すことができ、12誘導ECGは、ペーシングの有無にかかわらず記録し得る。閾値が大幅に増加した場合、これは針がLVチャンバ内にあることを示し得る。
【0180】
閾値または活性化パターンが許容できない場合は、再位置決めが望ましい場合がある。針と拡張器は引っ込めることができ、操縦可能なシースは、操縦可能なシースを押し込んだり、引き出したり、回転させたりすることによって、単に「再び照準を合わせる」ことができる。新しい方向が見つかった場合、針をLVに再び挿入し、閾値と活性化を再び試験し得る。
【0181】
ペーシング閾値と心室活性化パターンが受け入れ可能な場合は、0.014インチのガイドワイヤを可撓性針を通してLV内に延ばさせ得る。
【0182】
図24は、例示的なシステム940の様々な構成要素をキットとして示している。例示的なシステム940は、Kochの三角形にねじ込まれたらせんを備えたシースと、ペースを取ることができる「針」またはトンネリングツールと、リードレットの容易な配置を可能にするためにトンネル内に残されるガイドワイヤと、を含み得る。リードレットは、リードレスペーサーシステムの一部としてガイドワイヤを介して送達され得る。そのようなシステムは、リードレットが便利な接続を提供するので、簡単な検索を容易にし得る。
【0183】
いくつかの実施形態では、例示的なシステム940は、より具体的には、操縦可能なシースと、柔らかい遠位セクションおよび端部に取り付けられた堅いらせん(操縦可能なシース内に適合し得る)を備えた真っ直ぐなシースと、先端が針のように鋭利にされた可撓性ハイポチューブと、可撓性ハイポチューブを受け入れる内径の拡張器と、リードを送達することができる0.014インチまたは0.018インチのガイドワイヤと、バイポーラLVリードと、を含み得る。ハイポチューブ/針の内径は、0.014インチまたは0.018インチのガイドワイヤを受け入れるサイズにすることができる。ハイポチューブ/針の遠位端は、最後の約2mmを除いて絶縁され得、これは、可撓性針からのペーシングと検知を容易にし得る。
【0184】
図25は、リードとともに使用されている例示的なシステム940を示している。例えば、針および拡張器を取り外して、リードで置き換え得る。図示のように、例示的なシステム940は、操縦可能なシースと、らせんシースと、らせんシースを出るように示される三極リードと、三極リードを出るガイドワイヤとともに使用するように構成され得る。
【0185】
本開示は、限定はされないが、開示の様々な態様の理解は、以下に提供される特定の例示的な実施形態の考察を通じて得られるであろう。例示的な実施形態の様々な変形、ならびに本開示の追加の実施形態が、本明細書で明らかになるであろう。
【実施例
【0186】
心房から左心室にワイヤを介してリードを送達するための構想をブタで試験した。実験の目標は、右心房の単一の機器から右心房および左心室のペースを取るようにすることであった。加えて、目標は、心臓の「再同期」を提供する試みにおいて、心室のペーシングに短いQRSを提供することであった。1つの理論は、中隔LVの高いペーシングが、急速な伝導を有すると考えられている心内膜線維と、急速な伝導を有することが知られている左脚ブロック線維との両方に関与し得るというものである。特に、試験された構想は、冠状静脈洞(CS)口の近くの右心房から基底左心室(LV)中隔へのワイヤペーシングリードの送達であった。
【0187】
実施例1
体重94kgのブタを使用した。ブタは背臥位の状態であった。頸静脈の切断を実施し、Sentrant 20Frシースを頸静脈に配置した。ガイドワイヤを冠状静脈洞に配置し、前脳室静脈を下に向け、中心臓静脈をバックアップした。これにより、中隔の輪郭が描かれた。リードを中心臓静脈に配置した。中心臓静脈リードとCSリードが交差する点により、Kochの三角形の標的を作成した。透視室を動かして、弁面に平行な視野と弁面に垂直な視野を示す角度を見つけた。これらの2つの画像は、図26A図26Bに示されている。
【0188】
次に、修正されたflexcathを冠状静脈洞に挿入し、曲線を引いてシャフトを左心室に向けてみた。MCVワイヤとCSワイヤとの交差を、flexcathが湾曲した後のflexcathの先端の開始点として使用した。その角度を0度の頭蓋画像に戻した。図27A図27Bに示される画像は、より正確な照準を提供し得る。次に、内側のシースのらせんを、シースを回転させることによって隣接する組織に取り付けた。前後の画像を図28A図28Bに示す。
【0189】
カテーテルの向きを変え、別の針注射を試みた。最終的な針の位置は、図28A図28Bに見ることができる。DV画像の針の角度は大動脈に近い。
【0190】
針と拡張器を取り外し、リードをワイヤ上でLV内に滑らした。リード位置を、図29A図29Bに示す。リードは、図28A図28Bの針とワイヤと非常によく似た位置にある。
【0191】
次に、動物を剖検に移し、心臓を開いてカテーテルとリードのコースを確認した。図30A図30Bに見られるように、CSカテーテルとMCVカテーテルは、CS口(実際には奇静脈口)の近くで出会う。flexcath、らせんシース、およびリードは、三尖弁輪の近く、またはKochの三角形の基部(TOK)のすぐ近くの組織に入る。
【0192】
針と拡張器をLVに通す最初の試みの間に、その軌道は正しくないと判定された。しかしながら、操作中に、らせんがシースから外れた。らせんはCS内で見つかった。図31のこの位置を図27A図27Bに示される透視画像と比較すると、MCVシースとCSシースとの交差を使用してCS口を示すことにより、らせんを取り付けを試みることでこの構造までの距離を推定できることが明らかになる。
【0193】
リードはLV内で見つかった。リードは心内膜を出て後乳頭筋近くのチャンバに入り、先端は後乳頭筋の後ろにあった。図32A図32Bに見られるように、先端は僧帽弁の近くでかなり基部にあった。
【0194】
実施例2
背臥位のブタを使用した。頸静脈の切断を実施し、短縮した24 Fr Micraのようなイントロデューサーを頸静脈に配置した。ワイヤをCSの奥深くに配置しようとしたが、大心臓静脈は頂点に到達する前に何にも分割されなかった。ガイドカテーテルは可能な限り遠位に配置した。中心臓静脈はカニューレ挿入の課題であった。リードを中心臓静脈に配置した。中心臓静脈リードとCSリードとが交差する点により、Kochの三角形の標的を作成した。透視室を動かして、弁面に平行な視野と弁面に垂直な視野を示す角度を見つけた。最適な角度は、側面画像とDV画像の両方で尾側25度であった。これらの2つの画像は、図33A図33Bに示されている。
【0195】
LV心内膜がどこにあるかを理解するために、側方とDVの両方から心室造影を行った。これらを図34A図34Bに示す。
【0196】
これらの画像を使用して、ナビゲーションに使用する心臓の解剖学的構造とランドマークの良好な定義が確立された。MCVリードは、flexcathの操作中に引き抜かれ、再埋め込みされなかった。ナビゲーションはMCVリードなしで実施した。flexcathは、両方のビューでMCVリードとCSシースとの交差に向けられる。らせんシースは、この点の近くで心臓に取り付けられる。次に、flexcathは、側面図では、側面図では大動脈弁のちょうど頂端に向けられ、DV図では大動脈に向けられるように湾曲および回転される。この方向での最初の試みを、図35A図35Bに示す。
【0197】
flexcathは、おそらく硬いflexcathによる心臓の歪みのために、図35A図35BのDV図においてCSから大動脈に向かって遠くに現れた。針とガイドワイヤを、LVまで延ばさせた。これらの画像は、図36A図36Bで見ることができる。
【0198】
0.014インチのガイドワイヤを針から外し、針と拡張器を取り外し、リードをワイヤ上でLV内に滑らせた。リード位置を図36A図36Bに示す。図示のように、らせんは頂点を向いていないが、ワイヤコースは左心室にある。リードは、図35A図35Bの針とワイヤと非常によく似た位置にある。リードを心室に押し込むことは非常に困難であった。おそらく組織がらせん内で拡張できないために、リードはらせんが組織内で結合された場所に正しく突き刺さった。
【0199】
次に、リードを取り外し、らせんを組織から切り離した。再びMCVリードなしで、2回目のリード注入を試みた。以前のように、flexcathを(前の画像に基づく推測を使用して)CS口にガイドし、次に頂端および大動脈に向かって湾曲させた。らせんを組織に係合させ、針と拡張器をらせんからLVチャンバに向けた。ペーシング閾値と12誘導ECGを途中で記録した。
【0200】
リードの2回目の埋め込みは、予想どおりに進んだように見えた。側面図では、リードはCSからわずかに先端にあるため、最終的な位置はかなり基部にある。DV図では、リードは大動脈の真下で交差しているように見えた。これにより、中隔がかなり垂直に交差するはずである。
【0201】
12誘導ECGを使用して、中隔を横切って針を進めさせながらペーシング閾値を取った。リード閾値は取っていない。
【0202】
次に、動物を剖検に移し、心臓を開いてカテーテルとリードのコースを確認した。図41A図43Bに見られるように、CS内のリード入口部位は、口に近く、基部に非常に近かった。flexcathリードがトンネリングされる前に、MCVリードが脱落した。しかしながら、MCVリードが所定の場所にあったときに保存された透視画像に基づいて、リードトンネルはCS口のかなり近くで開始することができた。2つのトンネルが互いに接近して始まっていることがわかる。しかしながら、LV内の最初のトンネルの出口が見つからず、リードやワイヤが所定の位置に残っていなかった。flexcath、らせんシース、およびリードは、三尖弁輪の近く、またはKockの三角形の基部(TOK)の非常に近くの組織に入った。CSおよびMCV構造の使用により、TOKを特定する位置が提供されたことがわかる。
【0203】
リードは、LVにおいて見つかった。それは心内膜を出て後乳頭筋近くのチャンバに入り、先端は後乳頭筋の後ろにあった。それは僧帽弁の近くでかなり基部にあった。それは、図43A図43Bに見られる。
【0204】
したがって、VFA送達システムおよび方法の様々な実施形態が開示されている。本明細書に開示された様々な態様は、説明および添付の図面に具体的に提示された組み合わせとは異なる組み合わせで組み合わされてもよい。本明細書に記載のプロセスまたは方法のいずれかの特定の行為または事象は、実施例に応じて異なる順序で実施されてもよく、追加、併合、または完全に省略されてもよい(例えば、全ての記載された行為または事象は、本技法を遂行するために必要ではない場合がある)ことも理解されたい。加えて、本開示の特定の態様は、明確にするためにシングルのモジュールまたはユニットによって実施されると説明されているが、本開示の技術は、例えば、医療機器に関連するユニットまたはモジュールの組み合わせによって実施されてもよい。
【0205】
1つ以上の実施例では、説明される技法は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装されることができる。ソフトウェアで実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体上に1つ以上の命令またはコードとして記憶され、ハードウェアベースの処理ユニットによって実行されることができる。コンピュータ可読媒体は、データ記憶媒体(例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または命令もしくはデータ構造の形態で所望のプログラムコードを記憶するために使用されることができ、かつコンピュータによってアクセスされることができる任意の他の媒体)などの、有形媒体に対応する非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。
【0206】
命令は、1つ以上のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、汎用マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、または他の同等の集積もしくは離散論理回路などの、1つ以上のプロセッサによって実行されることができる。したがって、本明細書に使用される「プロセッサ」という用語は、上記の構造のいずれか、または説明された技法の実装に好適な任意の他の物理的構造を指すことができる。また、技法は、1つ以上の回路または論理要素で完全に実装されてもよい。
【0207】
本明細書において引用されたすべての参考文献および刊行物は、組み込まれた任意の態様が本開示と直接矛盾する範囲までを除いて、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0208】
本明細書において使用されるすべての科学的および技術的用語は、別段の定めがないかぎり、当技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書において提供される定義は、本明細書において頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0209】
別段の定めがないかぎり、明細書および特許請求の範囲において使用された特徴のサイズ、量、および物理的特性を表すすべての数値は、「正確に」または「約」という用語のいずれかによって修正されると理解されてもよい。したがって、逆の定めがないかぎり、前述の明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本明細書に開示された教示を利用して当業者によって得られることが求められる所望の特性に応じて、または実験誤差の典型的な範囲内で変化することができる近似である。
【0210】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれるすべての数値(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)およびその範囲内に含まれるあらゆる数値を含む。本明細書において、「最大で」ある数またはある数「以下」という用語(例えば、最大で50)は、その数(例えば、50)を含み、ある数「以上」という用語(例えば、5以上)は、その数(例えば、5)を含む。
【0211】
「結合された」または「接続された」という用語は、直接に(互いに直接接触して)または間接的に(2つの要素の間にそれらの2つの要素を取り付ける1つ以上の要素を有して)互いに取り付けられた要素をいう。いずれの用語も、「動作的に」かつ「動作可能に」という用語によって修正されてもよく、これらは、その結合または接続が、少なくともある機能性を達成するために複数の構成要素に相互作用させるように構成されていることを説明するために互換的に使用されてもよい(例えば、データの形式の情報を送信しまたはそこからデータを受信するために、第1の医療機器が別の医療機器に動作的に結合されてもよい)。
【0212】
「上」、「下」、「側方」、および「端」などの、向きに関連した用語は、構成要素の相対位置を説明するために使用され、企図された実施形態の向きを制限することを意味するものではない。例えば、「上」および「下」を有すると記載された実施形態は、内容が明らかに別のことを指示しない限り、様々な方向に回転させられたその実施形態も包含する。
【0213】
「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、または「いくつかの実施形態」などへの言及は、その実施形態に関連して説明された特定の特徴、構成、組成物、または特性が、開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、全体を通して様々な位置でのそのような表現の出現は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構成、組成物、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な形式で組み合わされてもよい。
【0214】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかに別のことを指示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「または」という用語は、内容が明らかに別の指示をしない限り、「および/または」を含むその意味で一般に使用される。
【0215】
本明細書において使用される場合、「有する(have)」、「有している(having)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」などは、それらの制限のない意味で使用されており、一般的に、「含むが、これらに限定されない」を意味する。「から基本的になる」、「からなる」などは、「含む」などに含まれることが理解されよう。
【0216】
「および/または」という用語は、1つまたはすべての列挙された要素、または列挙された要素のうちの少なくとも2つの組み合わせを意味する。
【0217】
後続のリスト「の少なくとも1つ」、「の少なくとも1つを含む」、および「の1つ以上」という表現は、リスト内の項目のいずれか1つ、およびリスト内の2つ以上の項目の任意の組み合わせを意味する。
図1
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図32A
図32B
図33
図34
図35
図36A
図36B
図37
図38A
図38B
図39A-39B】
図40A-40B】
図41
図42
図43A
図43B
図44A
図44B
【国際調査報告】