(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】高ポリマー密度バイオコンジュゲート組成物及び関連方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/32 20060101AFI20220105BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220105BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K47/64
A61P43/00 111
A61K38/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519761
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 US2019055577
(87)【国際公開番号】W WO2020077060
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514104933
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ ワシントン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,シャオイ
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,ゼファン
(72)【発明者】
【氏名】ニウ,リチエン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB12
4C076EE17
4C076EE41
4C076FF68
4C084AA25
4C084MA66
4C084NA13
(57)【要約】
多層ポリマーバイオコンジュゲート、ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲート、及び多層のポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを含む高ポリマー密度を有するバイオコンジュゲート組成物、並びに前記組成物を作製する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子に共有結合した第1のポリマー及び前記第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合した第2のポリマーを有する前記生体分子を含むバイオコンジュゲート。
【請求項2】
前記第1のポリマーが前記生体分子を取り囲む第1の層を形成する、請求項1に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項3】
前記第2のポリマーが前記生体分子を取り囲む第2の層を形成する、請求項1又は2に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項4】
前記生体分子がタンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、核酸、細胞、ウイルス、又は細菌である、請求項1~3のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項5】
前記第1のポリマーが両性イオン性のポリマー又はペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項6】
前記第1のポリマーがEK含有ペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項7】
前記第2のポリマーが両性イオン性のポリマー又はペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項8】
前記第2のポリマーがEK含有ペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項9】
前記EK含有ペプチドが(EK)
nペプチドを含み、nが1~約50である、請求項6又は8に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項10】
前記第1のポリマーがEK含有ペプチドであり、前記第2のポリマーがEK含有ペプチド又は両性イオン性ポリマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項11】
第1のポリマーが2~約1000個の反応性基を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項12】
前記第1のポリマーが、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、及びプロリン残基から選択される1以上のアミノ酸残基を含むペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項13】
前記第1のポリマーが1以上のリジン残基を含むペプチドである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項14】
前記第1のポリマーが、アミン、カルボン酸、チオール、マレイミド、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及びアジド官能基から選択される1以上の官能基を含む非ペプチドポリマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項15】
第2のポリマーが1~約1000個の反応性基を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項16】
前記第2のポリマーが、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、及びプロリン残基から選択される1以上のアミノ酸残基を含むペプチドである、請求項1~14のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項17】
前記第2のポリマーが1以上のリジン又はグルタミン酸残基を含むペプチドである、請求項1~14のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項18】
前記第2のポリマーが水溶性の非ペプチドポリマーである、請求項1~14のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項19】
前記第2のポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーからなる群から選択される非ペプチドポリマーである、請求項1~14のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項20】
前記第2のポリマーがポリ(カルボキシベタイン)(PCB)ポリマーである、請求項1~14のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項21】
前記第1の層及び前記第2の層の中間に1以上の追加のポリマー層を更に含む、請求項1~20のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項22】
多層バイオコンジュゲートを作製する方法であって:
(a)第1のポリマーを生体分子に共有結合させて、前記生体分子を取り囲む第1のポリマー層を有する生体分子を提供すること;
(b)前記第1のポリマー層の前記第1のポリマーの少なくとも一部分に第2のポリマーを共有結合させて、前記生体分子を取り囲む第2のポリマー層を有する生体分子を提供すること
を含む、方法。
【請求項23】
生体分子内の反応性基の数を増大する方法であって、第1のポリマーを生体分子に共有結合させて前記生体分子を取り囲む第1のポリマー層を有する生体分子を提供することを含み、前記第1のポリマーが2~約1000の反応性基を含む、方法。
【請求項24】
前記第1のポリマー層の前記第1のポリマーの少なくとも一部分に第2のポリマーを共有結合させて、前記生体分子を取り囲む第2のポリマー層を有する生体分子を提供することを更に含み、前記第2のポリマーが1~約1000の反応性基を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子であって、前記第1及び第2の反応性基は異なる、生体分子;
(b)前記第1の反応性基に共有結合した1以上の第1のポリマー;及び
(c)前記第2の反応性基に共有結合した1以上の第2のポリマー
を含むバイオコンジュゲート。
【請求項26】
前記生体分子がタンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、核酸、細胞、ウイルス、又は細菌である、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項27】
前記第1の反応性基がアミン、カルボン酸、チオール、マレイミド、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及びアジド基から選択される、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項28】
前記第1の反応性基がアミン基である、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項29】
前記第2の反応性基がアミン、カルボン酸、チオール、マレイミド、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及びアジド基から選択される、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項30】
前記第2の反応性基がカルボン酸(又はカルボン酸塩)基である、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項31】
前記第1の反応性基がアミン基から選択され、前記第2の反応性基がカルボン酸(又はカルボン酸塩)基から選択される、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項32】
前記第1のポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーからなる群から選択されるポリマーである、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項33】
前記第2のポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーからなる群から選択されるポリマーである、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項34】
前記第1のポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、及びポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)ポリマーからなる群から選択される両性イオン性ポリマーである、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項35】
前記第2のポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、及びポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)ポリマーからなる群から選択される両性イオン性ポリマーである、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項36】
前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが同じである、請求項25~35のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項37】
前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーが異なる、請求項25~35のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項38】
前記第1のポリマーがポリ(カルボキシベタイン)(PCB)ポリマーであり、前記第2のポリマーがポリ(カルボキシベタイン)(PCB)ポリマーである、請求項25に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項39】
バイオコンジュゲートを作製する方法であって:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に1以上の第1のポリマーを共有結合させることであって、前記第1及び第2の反応性基は異なり、前記第1のポリマーは前記第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;及び
(b)1以上の第2のポリマーを前記第2の反応性基に共有結合させて、前記生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第2のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供すること
を含む、方法。
【請求項40】
生体分子に共有結合したポリマーの数を増大する方法であって:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に第1のポリマーを共有結合させることであって、前記第1及び第2の反応性基は異なり、前記第1のポリマーは前記第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;及び
(b)前記第2の反応性基に1以上の第2のポリマーを共有結合させて、前記生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第2のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供することにより、前記生体分子に共有結合したポリマーの密度を増大すること
を含む、方法。
【請求項41】
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子であって、前記第1及び第2の反応性基は異なる、生体分子;
(b)前記第1の反応性基に共有結合した第1のポリマー;
(c)前記第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合した第2のポリマー;及び
(d)前記第2の反応性基に共有結合した1以上の第3のポリマー
を含むバイオコンジュゲート。
【請求項42】
前記生体分子がタンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、核酸、細胞、ウイルス、又は細菌である、請求項41に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項43】
前記第1のポリマーが両性イオン性のポリマー又はペプチドである、請求項41又は42に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項44】
前記第2のポリマーが両性イオン性のポリマー又はペプチドである、請求項41~43のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項45】
前記第3のポリマーが、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーからなる群から選択されるポリマーである、請求項41~44のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項46】
バイオコンジュゲートを作製する方法であって:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に1以上の第1のポリマーを共有結合させることであって、前記第1及び第2の反応性基は異なり、前記第1のポリマーは前記第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;
(b)前記第1のポリマーの少なくとも一部分に1以上の第2のポリマーを共有結合させること;及び
(c)前記第2の反応性基に1以上の第3のポリマーを共有結合させて、前記生体分子に共有結合した第1のポリマー、第2のポリマー、及び第3のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に明白に組み入れられる2018年10月10日に出願された米国特許出願第62/743,670号の利益を主張するものである。
政府のライセンス権の陳述
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により授与された認可番号第R21EB027843号の下でアメリカ国防脅威削減局により授与された認可番号第HDTRA1-13-1-0044号による政府の支援の下でなされた。政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
天然に由来する生物剤(biologic agent)は格別の医薬的効果及び特異性をもつ薬剤候補の広範な宝庫を含む。酵素補充療法のような多くのバイオ療法レジメンは病気を完全に治すのに多数回の投与を要する。しかし、高い免疫原性の生体分子薬剤を繰り返し注射すると、患者の免疫反応の危険性も増大し、患者から延命治療を奪い、更には致命的な副作用を引き起こす可能性もある。基本的に、外来タンパク質に対する望ましくない免疫反応は、主として抗原特異的抗体(Ab)の生成によってそれらタンパク質の治療効果を弱める。一旦抗体が生体分子薬剤に結合すると、それらの薬理学的活性を直接中和する(中和)か、又は加速血液クリアランス(accelerated blood clearance)(ABC)によってそれらの治療剤曝露を減らす(非中和)。通常抗薬物抗体(ADA)といわれる、生体分子自体に対する抗体は、主としてタンパク質表面の低い保護ポリマー密度に起因して生じる。
【0003】
幾つかの生体分子は本質的に限定された結合部位を有しており、そのため高ポリマー密度バイオコンジュゲートを獲得するのが極めて難しくなるか又は伝統的な結合技術を使用するのが不可能になる。例えば、細菌に由来する酵素である有機リン加水分解酵素(OPH)は有機リン系殺虫剤及び神経剤に対して強力な触媒効力を示す。OPHモノマー1つにつき、ポリマーによる修飾のために到達できる水がアクセス可能なリジン基は4つだけである。PEG化のようなリジンを標的としたポリマー結合技術は利用できる結合部位の不足のためにOPHを充分な保護ですっかり覆うことができない。その他の場合、ポリマー結合工程中、最初に結合したポリマーが立体障害のためにその後のポリマーの結合をブロックする。
【0004】
本発明は、高ポリマー密度バイオコンジュゲート組成物を提供するために、生体分子に共有結合したポリマーの数を増大するか又は生体分子へのポリマー結合の効率を改善するのに有効な進歩した結合技術を提供しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高ポリマー密度バイオコンジュゲート組成物及び該組成物を作製するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、本発明は、多層ポリマーバイオコンジュゲートを提供する。1つの実施形態において、バイオコンジュゲートは生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合した第2のポリマーを有する生体分子を含む。
【0007】
本発明は多層バイオコンジュゲートを作製する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)第1のポリマーを生体分子に共有結合させて、生体分子を取り囲む第1のポリマー層(即ち、内側ポリマー層)を有する生体分子を提供すること;
(b)第2のポリマーを第1のポリマー層の第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合させて、生体分子を取り囲む第2のポリマー層(即ち、外側ポリマー層)を有する生体分子(即ち、多層バイオコンジュゲート)を提供すること
を含む。
【0008】
本発明は生体分子内の反応性基(例えば、アミン)の数を増大する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は第1のポリマーを生体分子に共有結合させて、生体分子を取り囲む第1のポリマー層(即ち、内側ポリマー層)を有する生体分子を提供することを含み、第1のポリマーは2~約1000の反応性基を含む。
【0009】
別の態様において、本発明はポリマーでバックフィルされた(backfilled,埋め戻された)バイオコンジュゲートを提供する。1つの実施形態において、ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートは:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子であって、第1及び第2の反応性基は異なる、生体分子;
(b)第1の反応性基に共有結合した1以上の第1のポリマー;及び
(c)第2の反応性基に共有結合した1以上の第2のポリマー(即ち、バックフィルされたポリマー)
を含む。
【0010】
本発明はポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを作製する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に1以上の第1のポリマーを共有結合させることであって、第1及び第2の反応性基は異なり、第1のポリマーは第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;
(b)1以上の第2のポリマーを第2の反応性基に共有結合させて、生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第2のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供すること
を含む。
【0011】
本発明は生体分子に共有結合したポリマーの数を増大する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に第1のポリマーを共有結合させることであって、第1及び第2の反応性基は異なり、第1のポリマーは第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;
(b)1以上の第2のポリマーを第2の反応性基に共有結合させて、生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第2のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供することにより、生体分子に共有結合したポリマーの密度を増大すること
を含む。
【0012】
更なる態様において、本発明は多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを提供する。1つの実施形態において、多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートは:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子であって、第1及び第2の反応性基は異なる、生体分子;
(b)第1の反応性基に共有結合した第1のポリマー;
(c)第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合した第2のポリマー;及び
(d)第2の反応性基に共有結合した1以上の第3のポリマー(即ち、バックフィルされたポリマー)
を含む。
【0013】
本発明は多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを作製する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に1以上の第1のポリマーを共有結合させることであって、第1及び第2の反応性基は異なり、第1のポリマーは第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;
(b)1以上の第2のポリマーを第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合させること;
(c)1以上の第3のポリマーを第2の反応性基に共有結合させて、生体分子に共有結合した第1のポリマー、第2のポリマー、及び第3のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供すること
を含む。
【0014】
本発明の前述の態様及び付随する利点の多くは、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することでより良く理解されることになるので、より容易に認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の代表的なペプチド(EK)
10-Cペプチドの調製の略図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の代表的なペプチドコンジュゲート(EK-アスパラギナーゼコンジュゲート):ASP-EK-S(単層コンジュゲート)、ASP-EK-D(二重層コンジュゲート)、及びASP-EK-T(三重層コンジュゲート)の調製の略図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:ASP-EK-S(単層コンジュゲート)、ASP-EK-D(二重層コンジュゲート)、及びASP-EK-T(三重層コンジュゲート)のサイズ分布を天然のアスパラギナーゼ(ASP)と比較して示すゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)である。
【
図3】
図3は、天然のASP、並びに本発明の代表的なペプチドコンジュゲートASP-EK-S、ASP-EK-D、及びASP-EK-Tのインビトロ抗アスパラギナーゼ抗体結合親和性を比較して示す。初期濃度は1μmol/mLであった。
【
図4A】
図4A-4Dは、天然のASP(4A)、並びに本発明の代表的なペプチドコンジュゲートであるASP-EK-S(4B)、ASP-EK-D(4C)、及びASP-EK-T(4D)の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)結果を比較して示す。
【
図4B】
図4A-4Dは、天然のASP(4A)、並びに本発明の代表的なペプチドコンジュゲートであるASP-EK-S(4B)、ASP-EK-D(4C)、及びASP-EK-T(4D)の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)結果を比較して示す。
【
図4C】
図4A-4Dは、天然のASP(4A)、並びに本発明の代表的なペプチドコンジュゲートであるASP-EK-S(4B)、ASP-EK-D(4C)、及びASP-EK-T(4D)の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)結果を比較して示す。
【
図4D】
図4A-4Dは、天然のASP(4A)、並びに本発明の代表的なペプチドコンジュゲートであるASP-EK-S(4B)、ASP-EK-D(4C)、及びASP-EK-T(4D)の疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)結果を比較して示す。
【
図5A】
図5A-5Cは、本発明の代表的なペプチドコンジュゲートであるASP-EK-Tの薬物動態プロフィールを用量:第1の用量(5A)、第2の用量(5B)、及び第3の用量(5C)の関数として天然のASPと比較して示す。
【
図5B】
図5A-5Cは、本発明の代表的なペプチドコンジュゲートであるASP-EK-Tの薬物動態プロフィールを用量:第1の用量(5A)、第2の用量(5B)、及び第3の用量(5C)の関数として天然のASPと比較して示す。
【
図5C】
図5A-5Cは、本発明の代表的なペプチドコンジュゲートであるASP-EK-Tの薬物動態プロフィールを用量:第1の用量(5A)、第2の用量(5B)、及び第3の用量(5C)の関数として天然のASPと比較して示す。
【
図6】
図6は、天然のASP及びASP-EK-T:天然のASP抗ASP、ASP-EK-T抗ASP、及びASP-EK-T抗EKに対する抗体力価を比較して示す。
【
図7】
図7は、天然のアスパラギナーゼ(ASP)のサイズ分布を本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:ASP-EK-PCB(単一のEK層)と比較して示すゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)である。
【
図8】
図8は、本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:ポリマーでバックフィルされたコンジュゲート(PCB-OPH)の調製の略図である。
【
図9】
図9は、天然の有機リン加水分解酵素(OPH)のサイズ分布を本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:バックフィル付のPCB-OPH及びバックフィルなしのPCB-OPHと比較して示すゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)である。
【
図10A】
図10A-10Cは、遊離のOPH(10A)の薬物動態プロフィールを本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:バックフィルなしのPCB-OPH(10B)及びバックフィル付のPCB-OPH(10C)と比較して示す。
【
図10B】
図10A-10Cは、遊離のOPH(10A)の薬物動態プロフィールを本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:バックフィルなしのPCB-OPH(10B)及びバックフィル付のPCB-OPH(10C)と比較して示す。
【
図10C】
図10A-10Cは、遊離のOPH(10A)の薬物動態プロフィールを本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:バックフィルなしのPCB-OPH(10B)及びバックフィル付のPCB-OPH(10C)と比較して示す。
【
図11A】
図11A及び11Bは、ラットモデルにおける、天然のOPH並びに本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:バックフィル付のPCB-OPH及びバックフィルなしのPCB-OPHに対する抗OPH IgG(11A)及び抗OPH IgM(11B)力価を比較して示す。
【
図11B】
図11A及び11Bは、ラットモデルにおける、天然のOPH並びに本発明の代表的なペプチドコンジュゲート:バックフィル付のPCB-OPH及びバックフィルなしのPCB-OPHに対する抗OPH IgG(11A)及び抗OPH IgM(11B)力価を比較して示す。
【
図12】
図12は、天然のOPHのサイズ分布を本発明の代表的なポリマーコンジュゲート:OPH-EK、OPH-PCB、バックフィルなしのOPH-EK-PCB、及びバックフィル付のOPH-EK-PCBと比較して示すゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な説明
本発明は高ポリマー密度バイオコンジュゲート組成物及び当該組成物を作製する方法を提供する。高ポリマー密度バイオコンジュゲート組成物は、バイオコンジュゲートに超低免疫原性を付与しつつ、同時に天然の生体分子の機能性を保存する1以上のポリマーで有利に取り囲まれた(例えば、覆われた)生体分子として特徴付けられる。
【0017】
1つの態様において、多層ポリマーバイオコンジュゲートが提供される。別の態様においてポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートが提供される。更なる態様において、多層のポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートが提供される。
【0018】
これらの高ポリマー密度バイオコンジュゲートは生物学的製剤を開発し、病気、疾患、又は状態を治療又は予防し、その他対象の健康又は幸福を改善するのに有用である。
【0019】
多層ポリマーバイオコンジュゲート
1つの態様において、本発明は多層ポリマーバイオコンジュゲートを提供する。1つの実施形態において、バイオコンジュゲートは、生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合した第2のポリマーを有する生体分子を含む。
【0020】
第1のポリマーは生体分子を取り囲む(又は実質的に取り囲む)第1のポリマー層(即ち、内側ポリマー層)を形成し、第2のポリマーは第1のポリマー層及び生体分子を取り囲む(又は実質的に取り囲む)第2のポリマー層(即ち、外側ポリマー層)を形成する。
【0021】
一定の実施形態において、第1のポリマーは生体分子を取り囲む第1の層を形成、第2のポリマーは生体分子を取り囲む第2の層を形成する。
【0022】
有利に修飾されて本発明の多層ポリマーバイオコンジュゲートを提供する生体分子には、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、核酸、細胞、ウイルス、又は細菌がある。代表的な生体分子は以下に詳細に記載する。
【0023】
一定の実施形態において、第1のポリマーは両性イオン性のポリマー又はペプチドである。一定の実施形態において、第2のポリマーは両性イオン性のポリマー又はペプチドである。
【0024】
これらの実施形態の幾つかにおいて、ペプチドはEK含有ペプチドである。本明細書で使用されるとき、用語「EK含有ペプチド」とは、実質的に同じ数のE(グルタミン酸)及びK(リジン)残基(例えば、約2~約100のEK残基)を有するペプチドをいう。一定の実施形態において、EK含有ペプチドは(EK)nペプチドであり、ここでnは1~約50である。これらの実施形態の幾つかにおいて、nは2~約50である。他の実施形態において、nは3~約50である。更なる実施形態において、nは4~約50である。他の実施形態において、nは5~約50である。更なる実施形態において、nは1~10である。
【0025】
EK含有ペプチドは更に1以上の追加のペプチド残基、例えばプロリン、グリシン、セリン、スレオニン、グルタミン、アスパラギン残基(例えば、EKX含有ペプチド、ここでXはP、G、S、T、Q、又はNである)を含んでいてもよいことが分かる。代表的なEKX含有ペプチドにはEKP及びEKGがある。ある種のEKX含有ペプチドにおいて、E:Kの比は1:1(又は実質的に1:1)であり、E:K:Xの比は1:1:nであり、ここでnは1又は0.1~1の端数である。
【0026】
これらの実施形態のその他において、ペプチドは組織化されてない組換えポリペプチド(URP)である。これらの実施形態の幾つかにおいて、URPは少なくとも40の連続したアミノ酸を含み、(a)URPに含まれるグリシン(G)、アスパラギン酸(D)、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、グルタミン酸(E)及びプロリン(P)残基の合計はURPの全アミノ酸の少なくとも80%を構成し、残りは、存在するとき、アルギニン又はリジンからなり、残りはメチオニン、システイン、アスパラギン、及びグルタミンを含有せず;(b)前記URPは少なくとも3つの異なる種類のアミノ酸を含み;そして(c)前記URP内の少なくとも40の連続したアミノ酸の少なくとも50%はChou-Fasmanアルゴリズムにより決定される二次構造を欠いている。組織化されてない組換えポリペプチドは、参照によりその全体が本明細書に明白に組み入れられる米国特許第7,855,279号に記載されている。
【0027】
これらのその他の実施形態の更に別の実施形態において、ペプチドはランダムコイルポリペプチドである。これらの実施形態の幾つかにおいて、ランダムコイルポリペプチドは50~3000のアミノ酸を含み、専らプロリン及びアラニンからなり、ここでポリペプチドはランダムコイルを形成する。一定の実施形態において、ランダムコイルポリペプチドは10%~75%のプロリン残基からなる。他の実施形態において、ランダムコイルポリペプチドは複数のアミノ酸反復配列を含み、6個以下の連続したアミノ酸残基が同一のアミノ酸である。ランダムコイルポリペプチドは、参照によりその全体が本明細書に明白に組み入れられる米国特許第9,221,882号に記載されている。
【0028】
バイオコンジュゲートの一定の実施形態において、第1のポリマーはEK含有ペプチドであり、第2のポリマーはEK含有ペプチド又は両性イオン性のポリマーである。
【0029】
第1のポリマーは、例えば第2のポリマーに更に共有結合させるのに利用できる反応性基を含む。一定の実施形態において、第1のポリマー(即ち、内側ポリマー層)は2~約1000の反応性基を含む。本明細書で使用されるとき、用語「反応性基」とは、化学的結合方法により共有結合させることができる官能基をいう。適切な反応性基には、アミノ(-NH2)基、例えばリジン残基のε-アミノ基、及びカルボン酸(-CO2H)又はカルボキシレート(-CO2-)基が含まれる。例えば、(EK)nであり、nが1~50であるEK含有ペプチドの場合、n=1では合計3つの反応性基に対して2つのアミン基及び1つのカルボン酸基があり、n=50では合計101の反応性基に対して51のアミン基及び50のカルボン酸基がある。
【0030】
一定の実施形態において、第1のポリマーはリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、及びプロリン残基から選択される1以上のアミノ酸残基を含むペプチドである。これらの実施形態の幾つかにおいて、第1のポリマーは1以上のリジン残基を含むペプチドである。
【0031】
他の実施形態において、第1のポリマーはアミン、カルボン酸、チオール、マレイミド、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及びアジド官能基から選択される1以上の官能基を含む非ペプチドポリマーである。
【0032】
第2のポリマーは、例えば第1のポリマーと更に共有結合させるのに利用できる反応性基を含む。一定の実施形態において、第2のポリマー(即ち、外側ポリマー層)は1~約1000の反応性基を含む。代表的な反応性基には、アミン、カルボン酸(カルボキシレート)、チオール、マレイミド、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及びアジド官能基のような官能基がある。
【0033】
一定の実施形態において、第2のポリマーは、リジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン、及びプロリン残基から選択される1以上のアミノ酸残基を含むペプチドである。これらの実施形態の幾つかにおいて、第2のポリマーは1以上のリジン又はグルタミン酸残基を含むペプチドである。これらの実施形態の幾つかにおいて、第2のポリマーは本明細書に記載されているEK含有ポリマーである。
【0034】
他の実施形態において、第2のポリマーは水溶性の非ペプチドポリマーである。親水性であり水溶性を有する代表的な第2のポリマーには、非ペプチドポリマー、例えばポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーがある。
【0035】
一定の実施形態において、第2のポリマーは両性イオン性ポリマー、例えばポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、及びポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)ポリマーである。1つの実施形態において、第2のポリマーはポリ(カルボキシベタイン)(PCB)ポリマーである。
【0036】
他の実施形態において、第2のポリマーは本明細書に記載されている組織化されてない組換えポリペプチド(URP)又はランダムコイルポリペプチドである。
【0037】
内側ポリマー層(第1のポリマー)及び外側ポリマー層(第2のポリマー)に加えて、多層バイオコンジュゲートは第1の層及び第2の層の中間に1以上の追加のポリマー層(例えば、1~10層)を含んでいてもよい。
【0038】
一定の実施形態において、追加のポリマー層の各々の組成は本明細書に記載されている第1のポリマー層の組成と同じである。
【0039】
一定の実施形態において、バイオコンジュゲートは3つの層を含み、最初の2つの層(即ち、内側ポリマー層)は同じ第1のポリマー(例えば、EK含有ペプチド)から誘導され、第3の層(即ち、外側ポリマー層)は同じポリマー(例えばEK含有ペプチド)又は異なるポリマー(例えば、両性イオン性ポリマー、例えばPCB、又は組織化されてない組換えポリペプチド又はランダムコイルポリペプチド)から誘導される。
【0040】
多層バイオコンジュゲートを作製する方法
別の態様において、本発明は多層バイオコンジュゲートを作製する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)第1のポリマーを生体分子に共有結合させて、生体分子を取り囲む第1のポリマー層(即ち、内側ポリマー層)を有する生体分子を提供すること;
(b)第2のポリマーを第1のポリマー層の第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合させて、生体分子を取り囲む第2のポリマー層(即ち、外側ポリマー層)を有する生体分子(即ち、多層バイオコンジュゲート)を提供すること
を含む。
【0041】
生体分子の反応性基の数を増大する方法
更なる態様において、本発明は生体分子内の反応性基(例えば、アミン)の数を増大する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は第1のポリマーを生体分子に共有結合させて、生体分子を取り囲む第1のポリマー層(即ち、内側ポリマー層)を有する生体分子を提供することを含み、第1のポリマーは2~約1000の反応性基を含む。
【0042】
一定の実施形態において、(EK)nペプチド(n=1~50)を第1のポリマーとして用いて、方法は、反応性基の数を2~51のアミン基又は3~101のアミン及びカルボン酸(カルボキシレート)基だけ増大する。
【0043】
一定の実施形態において、方法は、第2のポリマーを第1のポリマー層の第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合させて生体分子を取り囲む第2のポリマー層(即ち、外側ポリマー層)を有する生体分子(即ち、多層バイオコンジュゲート組成物)を提供することを更に含み、ここで第2のポリマーは1~約1000の反応性基を含む。これらの実施形態の幾つかにおいて、第2のポリマーは1~約50の反応性基を含む。
【0044】
代表的な多層ポリマーバイオコンジュゲートの調製及び特性決定は実施例1、2、及び3に記載する。
【0045】
以下、本発明の多層ポリマーバイオコンジュゲートについて更に記載する。
本明細書で使用されるとき、用語「多層ポリマーバイオコンジュゲート」とは、生体分子を取り囲むか又は実質的に取り囲む多層構造のポリマーを有するバイオコンジュゲートをいう。一定の実施形態において、多層ポリマーの層の数は2~10、2~8、2~6、2~4及び2~3の範囲であり、好ましい数は2~3である。幾つかの実施形態において、生体分子は多層構造ポリマーにより共有結合される。幾つかの実施形態において、生体分子は多数の多層構造ポリマーにより共有結合される。幾つかの実施形態において、ポリマーは生体分子からグラフト化されて多層構造を形成する。幾つかの実施形態において、多層構造のポリマーは予め構築された後、生体分子にグラフト化される。
【0046】
バイオコンジュゲート内側層
一定の実施形態において、多層ポリマーの「内側層」という用語は外側のポリマーと生体分子との間の層である。一定の実施形態において、内側層の数は1~10、1~8、1~6、1~4、及び1~2の範囲である。一定の実施形態において、内側のポリマーは2~約1000の反応性基を有する。少なくとも1の反応性基が生体分子からの反応性基の1つに連結しており、他は次の内側層ポリマー又は外側層ポリマーのための結合部位である。内側層ポリマーの結合は次の層ポリマー連結のためのより多くの結合部位を提供する。
【0047】
幾つかの実施形態において、第1のポリマー(即ち、内側のポリマー)はリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン及びトリプトファンから選択される反応性のアミノ酸残基を含む親水性のペプチドである。幾つかの実施形態において、親水性のペプチドはリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸及びシステインを含有する。幾つかの実施形態において、特に好ましい親水性のペプチドはリジン、グルタミン酸及びシステインを含有する。
【0048】
幾つかの実施形態において、内側のポリマーは、アミン、カルボン酸、チオール、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合及びアジド基から選択される反応性基を含む親水性の非ペプチドポリマーである。幾つかの実施形態において、特に好ましい親水性の非ペプチドポリマーはアミン、カルボン酸及びチオール基を含有する。
【0049】
親水性の内側層ポリマーの例には、ポリマー骨格又はポリマー側鎖のいずれかにアミン基を有するアミン含有ポリマー、例えばポリ-L-リジン及び他の天然若しくは合成のアミノ酸又はアミノ酸の混合物のポリアミノ酸、例えばポリ(リジン-コ-グルタミン酸)、ポリ(リジン-コ-アスパラギン酸)、ポリ(D-リジン)、ポリ(オルニチン)、ポリ(アルギニン)、及びポリ(ヒスチジン)、並びに非ペプチドポリアミン、例えばポリ(アミノスチレン)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(N-メチルアミノアクリレート)、ポリ(N-エチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリ(N-メチルアミノメタクリレート)、ポリ(N-エチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノメタクリレート)、ポリ(エチレンイミン)、第四級アミンのポリマー、例えばポリ(N,N,N-トリメチルアミノアクリレートクロリド)、ポリ(メタクリルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)及びそれらの誘導体がある。内側のポリマーの例には、合成のポリマー、例えばポリ(オキサゾリン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、及びポリ(アミノ酸)、例えばポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、及びポリ(グルタミン)からの中性のポリマー誘導体もある。
【0050】
バイオコンジュゲート外側層
第2のポリマー(即ち、外側のポリマー)層ポリマーは生体分子を保護し、バイオコンジュゲート全体の流体力学的サイズを増大する。一定の実施形態において、外側層ポリマーは1~1000の反応性基を有する。外側層ポリマーは内側層ポリマーと連結するために少なくとも1つの反応性基を有する。
【0051】
幾つかの実施形態において、外側層ポリマーは内側のポリマーと連結するために1つだけ反応性基を有する。連結後、外側層ポリマーは他の小さい分子又はポリマーで更に修飾するか又は連結することができない。
【0052】
幾つかの実施形態において、外側のポリマーはリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン及びトリプトファンから選択される反応性のアミノ酸残基を含む親水性のペプチドである。幾つかの実施形態において、親水性のペプチドはリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸及びシステインを含有する。幾つかの実施形態において、特に好ましい親水性のペプチドはリジン、グルタミン酸及びシステインを含有する。
【0053】
幾つかの実施形態において、外側のポリマーはアミン、カルボン酸、チオール、二重結合、三重結合及びアジド基から選択される反応性基を含む親水性の非ペプチドポリマーである。幾つかの実施形態において、特に好ましい反応性基はアミン又はチオール基である。本明細書で定義されているように、「親水性のポリマー」は水又は水と幾つかの極性有機溶媒、例えば低分子量アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、アセトニトリル及びテトラヒドロフランとの混合物に可溶性のものである。極性有機溶媒は好ましくは約0~50体積%の濃度で存在する。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「水溶性」は、ポリマー全体が、水性又は水性/有機溶液、例えば緩衝食塩水又は小量の有機溶媒を共溶媒として添加した緩衝食塩水に完全に可溶性でなければならないということを意味する。
【0055】
水溶性のポリマーの例には、ポリマー骨格又はポリマー側鎖のいずれかにアミン基を有するポリアミン、例えばポリ-L-リジン及び天然若しくは合成のアミノ酸又はアミノ酸の混合物の他のポリアミノ酸、例えばポリ(リジン-コ-グルタミン酸)、ポリ(リジン-コ-アスパラギン酸)、ポリ(D-リジン)、ポリ(オルニチン)、ポリ(アルギニン)、及びポリ(ヒスチジン)、並びに非ペプチドポリアミン、例えばポリ(アミノスチレン)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(N-メチルアミノアクリレート)、ポリ(N-エチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリ(N-メチルアミノ-メタクリレート)、ポリ(N-エチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノメタクリレート)、ポリ(エチレンイミン)、第四級アミンのポリマー、例えばポリ(N,N,N-トリメチルアミノアクリレートクロリド)、ポリ(メタクリルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、及び中性のポリ(アミノ酸)、例えばポリ(セリン)、ポリ(スレオニン)、及びポリ(グルタミン)がある。
【0056】
適切な外側層ポリマーには中性で負に帯電したポリマーがある。好ましい外側層ポリマーには中性のポリマーがある。
【0057】
他の適切なポリマーには天然に存在するタンパク質、例えばゼラチン、ウシ血清アルブミン、及びオボアルブミン、並びに複合糖類、例えばヒアルロン酸、デンプン及びアガロースがある。ポリマーはあらゆる生体適合性の水溶性多価電解質ポリマーであることができる。
【0058】
親水性のポリマーには、ポリ(オキシアルキレンオキシド)、例えばポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、天然又は合成の多糖及び多糖誘導体、例えばアルギン酸塩、キトサン、デキストラン、水溶性セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、及びポリアクリルアミド、例えばイソプロピルアクリルアミドもある。本明細書で使用される「誘導体」には置換、化学基、例えば、アルキル、アルキレンの付加、ヒドロキシル化、酸化及びその他の当業者により日常的に行われる改変を有するポリマーが含まれる。
【0059】
幾つかの実施形態において、好ましい外側層親水性ポリマーはポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(スルホベタイン)(PSBMA)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、及びポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)である。
【0060】
他の外側のポリマーには本明細書に記載されている組織化されてない組換えポリペプチド及びランダムコイルポリペプチドがある。
【0061】
バイオコンジュゲート生体分子
一定の実施形態において、多層ポリマーバイオコンジュゲートの生体分子はタンパク質、ペプチド、核酸、ウイルス、糖タンパク質、プロテオグリカン、又は脂質である。
【0062】
タンパク質又はペプチド。幾つかの実施形態において、生体分子はタンパク質又はペプチド、例えば酵素、サイトカイン、ホルモン、成長因子、抗原、抗体、抗体の特徴的部分、凝固因子、調節タンパク質、シグナル伝達タンパク質、転写タンパク質、及び受容体である。これらとしては、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-11、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-31、IL-32、IL-33、コロニー刺激因子-1(CSF-1)、マクロファージコロニー刺激因子、グルコセロブロシダーゼ、サイロトロピン、幹細胞因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、GM-CSF、(EOS)-CSF、CSF-1、EPO、有機リン加水分解酵素(OPH)、インターフェロン-アルファ(IFN-α)、コンセンサスインターフェロン-ベータ(IFN-β)、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)、トロンボポエチン(TPO)、Cas9、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas13a1、Cas13a2、Cas13b、アンジオポイエチン-1(Ang-1)、Ang-2、Ang-4、Ang-Y、アンジオポイエチン様ポリペプチド1(ANGPTL1)、アンジオポイエチン様ポリペプチド2(ANGPTL2)、アンジオポイエチン様ポリペプチド3(ANGPTL3)、アンジオポイエチン様ポリペプチド4(ANGPTL4)、アンジオポイエチン様ポリペプチド5(ANGPTL5)、アンジオポイエチン様ポリペプチド6(ANGPTL6)、アンジオポイエチン様ポリペプチド7(ANGPTL7)、ビトロネクチン、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンギオジェニン、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、骨形態形成タンパク質-1、骨形態形成タンパク質-2、骨形態形成タンパク質-3、骨形態形成タンパク質-4、骨形態形成タンパク質-5、骨形態形成タンパク質-6、骨形態形成タンパク質-7、骨形態形成タンパク質-8、骨形態形成タンパク質-9、骨形態形成タンパク質-10、骨形態形成タンパク質-11、骨形態形成タンパク質-12、骨形態形成タンパク質-13、骨形態形成タンパク質-14、骨形態形成タンパク質-15、骨形態形成タンパク質受容体IA、骨形態形成タンパク質受容体IB、骨形態形成タンパク質受容体II、脳由来神経栄養因子、カルジオトロフィン-1、毛様体神経栄養因子(ciliary neutrophic factor)、毛様体神経栄養因子受容体、クリプト(cripto)、クリプティック(cryptic)、サイトカイン誘発好中球走化因子1、サイトカイン誘発好中球走化因子2α、B型肝炎ワクチン、C型肝炎ワクチン、ドロトレコギンアルファ、サイトカイン誘発好中球走化因子2β、SLF、SCF、マスト細胞増殖因子、内皮細胞成長因子、エンドセリン1、上皮細胞増殖因子(EGF)、エピジェン、エピレギュリン、上皮由来好中球遊走因子、線維芽細胞増殖因子4、線維芽細胞増殖因子5、線維芽細胞増殖因子6、線維芽細胞増殖因子7、線維芽細胞増殖因子8、線維芽細胞増殖因子8b、線維芽細胞増殖因子8c、線維芽細胞増殖因子9、線維芽細胞増殖因子10、線維芽細胞増殖因子11、線維芽細胞増殖因子12、線維芽細胞増殖因子13、線維芽細胞増殖因子16、線維芽細胞増殖因子17、線維芽細胞増殖因子19、線維芽細胞増殖因子20、線維芽細胞増殖因子21、酸性線維芽細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、EPA、ラクトフェリン、H-サブユニットフェリチン、プロスタグランジン(PG)E1及びE2、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体、成長関連タンパク質、成長関連タンパク質a、IgG、IgE、IgM、IgA、及びIgD、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、DNAse、フェチュイン、黄体形成(leutinizing)ホルモン、アルテプラーゼ、エストロゲン、インスリン、アルブミン、リポタンパク質、フェトプロテイン、トランスフェリン、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、インテグリン、トロンビン、第IX因子(FIX)、第VIII因子(FVIII)、第Vila因子(FVIIa)、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)、第FV因子(FV)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、トロンビン(FII)、プロテインC、プロテインS、tPA、PAI-1、組織因子(TF)、ADAMTS 13プロテアーゼ、成長関連タンパク質β、成長関連タンパク質、ヘパリン結合上皮細胞増殖因子、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、肝がん由来増殖因子、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子受容体、インスリン様増殖因子II、インスリン様増殖因子結合タンパク質、ケラチノサイト成長因子、白血病抑制因子、ソマトロピン、抗血友病因子、ペグアスパラガーゼ、オルソクローンOKT 3、アデノシンデアミナーゼ、アルグルセラーゼ、イミグルセラーゼ、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子、神経成長因子受容体、ニューロポエチン(neuropoietin)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、オンコスタチンM(OSM)、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来内皮細胞成長因子、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体α、血小板由来成長因子受容体β、プレB細胞成長刺激因子、幹細胞因子(SCF)、幹細胞因子受容体、TNF、TNF0、TNF1、TNF2、形質転換成長因子α、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ホスホリパーゼ活性化タンパク質(PUP)、インスリン、レクチンリシン、プロラクチン、絨毛性ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、レプチン、エンブレル(エタネルセプト)、アクチビン、インヒビン、白血病抑制因子、オンコスタチンM、MIP-1-C、MIP-1-B;MIP-2-C、GRO-C、MIP-2-B、及び血小板因子-4が挙げられる。
【0063】
幾つかの実施形態において機能性の生体分子は、別の設計された機能性のポリペプチド配列であってもよい。幾つかの実施形態において機能性のポリペプチド配列は機能性ポリペプチドのドメイン又は断片である。幾つかの実施形態において機能性のポリペプチド配列は、場合によりポリペプチドの化学量論結合又は修飾をもたらすことがある認識配列である。幾つかの実施形態において機能性のポリペプチド配列は、融合ポリペプチドの発現又は精製を促進するのに有用な配列である。幾つかの実施形態において機能性のポリペプチド配列は、らせん、シート、ターン、フォールディング、及びスーパードメインを含む二次以上の高次特性の構造モチーフである。幾つかの実施形態において機能性のポリペプチド配列は混合荷電ポリペプチドともう1つ別の機能性生体分子との間に存在するリンカー配列である。
【0064】
幾つかの実施形態において、機能性の生体分子は、性能の少なくとも1つの面が改良された機能性のタンパク質を生成する合理的設計、指向進化、又はその他の幾つかの技術によって改変されたタンパク質である。
【0065】
用語「タンパク質」、「ペプチド」、「機能性タンパク質」、及び「機能性ペプチド」は同義で使用することができる。一定の実施形態において、ペプチドは大きさが約5~約40000、約5~約20000、約5~約10000、約5~約5000、約5~約1000、約5~約750、約5~約500、約5~約250、約5~約100、約5~約75、約5~約50、約5~約40、約5~約30、約5~約25、約5~約20、約5~約15、又は約5~約10のアミノ酸の範囲である。
【0066】
核酸。本発明の一定の実施形態において、生体分子は核酸(例えば、DNA、RNA、それらの誘導体)である。幾つかの実施形態において、核酸作用物質は機能性のRNAである。一般に、「機能性RNA」は、タンパク質をコードしていないが、代わりにそのメンバーが特徴的に細胞内で1以上の異なる機能又は活性を保有するRNA分子のクラスに属するRNAである。異なる配列を有する機能性のRNA分子の相対的な活性は異なることがあり、そのRNAが存在する個々の細胞型に少なくとも部分的に依存し得ることが分かる。従って、用語「機能性RNA」は本明細書であるクラスのRNA分子を指して使用されており、そのクラスの全てのメンバーが実際にそのクラスの特徴である活性をいかなる特定の組の条件下でも示すことを意味することは意図されていない。幾つかの実施形態において、機能性のRNAにはRNAi誘導性の実体(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、及びマイクロRNA)、リボザイム、tRNA、rRNA、三重らせん形成に有用なRNAが含まれる。
【0067】
幾つかの実施形態において、核酸作用物質はベクターである。本明細書で使用されるとき、用語「ベクター」とは、結び付けられている別の核酸を輸送することができる核酸分子(必ずではないが、通例DNA分子)をいう。ベクターは宿主細胞内で結び付けられる核酸の染色体外複製及び/又は発現を達成することができる。幾つかの実施形態において、ベクターは宿主細胞のゲノム内への統合を達成することができる。
【0068】
幾つかの実施形態において、ベクターはタンパク質及び/又はRNAの発現を指令するのに使用される。幾つかの実施形態において、発現させられるタンパク質及び/又はRNAは通常細胞により発現されない。幾つかの実施形態において、発現させられるタンパク質及び/又はRNAは細胞により通常発現されるが、ベクターが細胞に送達されなかったときに発現されるよりも低いレベルで発現される。幾つかの実施形態において、ベクターは本明細書に記載されている機能性のRNA、例えばRNAi誘導性の実体、リボザイムのいずれかの発現を指令する。
【0069】
ウイルス。幾つかの実施形態において、生体分子はウイルスである。一定の実施形態において、ウイルスは医学及び獣医学診療における医学療法及び診断並びに農業において有用性を有し、遺伝子治療(例えば所望の遺伝子産物の局所的発現のための遺伝子の送達)において、また非遺伝子治療用途、例えば限定されることはないがウイルス性腫瘍崩壊のために特に有用である。一定の実施形態において、ウイルスは以下の科及び属から選択される:アデノウイルス科;ビマウイルス科(Bimaviridae);ブニヤウイルス科;カリシウイルス科;カピロウイルス属;カルラウイルス属;カルモウイルス属;カリモウイルス属;クロステロウイルス属;Commelina yellow mottle virus属;コモウイルス属;コロナウイルス科;PM2ファージ属:コルチコウイルス科;クリプティックウイルス属;クリプトウイルス属;ククモウイルス属;φ6ファージファミリー;シストウイルス科;カーネーションリングスポット属;ダイアンソウイルス属;ソラマメウイルト属;ファバウイルス属;フィロウイルス科;フラビウイルス科;フロウイルス属;ジェミニウイルス属;ジアルジアウイルス属;ヘパドナウイルス科;ヘルペスウイルス科;ホルデイウイルス属;アイラー(liar)ウイルス属;イノウイルス科;イリドウイルス科;レビウイルス科;リポスリクスウイルス科;ルテオウイルス属;マラフィウイルス属;トウモロコシ白化萎縮ウイルス属;ミクロウイルス科(icroviridae);マイオウイルス科;ネクロウイルス属;ネポウイルス属;ノダウイルス科;オルトミクスウイルス科;パポバウイルス科、例えばアデノ随伴ウイルス;パラミクソウイルス科;パースニップ黄色斑点ウイルス属;パルティティウイルス科;パルボウイルス科;エンドウエネーションモザイクウイルス属;フィコドナウイルス科;ピコルナウイルス科;プラズマウイルス科;ポドウイルス科;ポリドナウイルス科;ポテクスウイルス属;ポティウイルス科;ポックスウイルス科;レオウイルス科;レトロウイルス科;ラブドウイルス科;リジディオウイルス属;サイフォウイルス科;ソベモウイルス属;SSV1型ファージ;テクティウイルス科;テヌイウイルス属;テトラウイルス科;タバモウイルス属;トブラウイルス属;トガウイルス科;トンブスウイルス属;トロウイルス属;トティウイルス科;ティモウイルス属;及び植物ウイルスサテライト。一定の実施形態において、導入遺伝子の送達の目的に特に好ましいウイルスには、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びポックスウイルスがある。アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスが特に好ましい。
【0070】
糖タンパク質及びプロテオグリカン。幾つかの実施形態において、生体分子は、タンパク質に結合した炭水化物である糖タンパク質又はプロテオグリカンである。糖タンパク質又はプロテオグリカンは天然でも合成でもよい。炭水化物はまた誘導体化された天然の炭水化物であってもよい。一定の実施形態において、炭水化物は単純又は複合糖類であり得る。一定の実施形態において、炭水化物は単糖、例えば限定されることはないがグルコース、フルクトース、ガラクトース、及びリボースである。一定の実施形態において、炭水化物は二糖、例えば限定されることはないがラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、及びセロビオースである。一定の実施形態において、炭水化物は多糖、例えば、限定されることはないが、セルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、デキストロース、デキストラン、グリコーゲン、キサンタンガム、ジェランガム、デンプン、及びプルランである。一定の実施形態において、炭水化物は糖アルコール、例えば限定されることはないがマンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール(malitol)、及びラクチトールである。
【0071】
脂質。幾つかの実施形態において、生体分子は脂質である。一定の実施形態において、脂質はタンパク質に結合している脂質(例えば、リポタンパク質)である。本発明に従って使用できる代表的な脂質には、限定されることはないが、油、脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、シス脂肪酸、トランス脂肪酸、グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ホルモン、ステロイド(例えば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(例えば、ビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質、及びリポタンパク質がある。
【0072】
幾つかの実施形態において、脂質は1以上の脂肪酸基又はその塩を含み得る。幾つかの実施形態において、脂肪酸基は消化可能な長鎖(例えば、C8-C50)置換又は非置換の炭化水素を含み得る。幾つかの実施形態において、脂肪酸基は酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリチスン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、又はリグノセリン酸の1以上であり得る。幾つかの実施形態において、脂肪酸基はパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファリノレン酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、又はエルカ酸の1以上であってもよい。
【0073】
ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲート
別の態様において、本発明はポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを提供する。1つの実施形態において、ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートは:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子であって、第1及び第2の反応性基は異なる、生体分子;
(b)第1の反応性基に共有結合した1以上の第1のポリマー;及び
(c)第2の反応性基に共有結合した1以上の第2のポリマー(即ち、バックフィルされたポリマー)
を含む。
【0074】
ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートにおいて、第1のポリマーは、第1のポリマー上の適切な官能基及び生体分子の第1の反応性基の反応により生体分子に共有結合される。次いで第2のポリマーがバイオコンジュゲートをバックフィルする:第2のポリマーは第2のポリマー上の適切な官能基及び生体分子の第2の反応性基の反応により生体分子に共有結合される。
【0075】
一定の実施形態において、第1の反応性基はアミン、カルボン酸(カルボキシレート)、チオール、マレイミド、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及びアジド基から選択される。他の実施形態において、第1の反応性基はアミン、カルボン酸(カルボキシレート)、チオール、及びマレイミド基から選択される。更なる実施形態において、第1の反応性基はアミン基である。
【0076】
一定の実施形態において、第2の反応性基はアミン、カルボン酸(カルボキシレート)、チオール、マレイミド、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及びアジド基から選択される。他の実施形態において、第2の反応性基はアミン、カルボン酸(カルボキシレート)、チオール、及びマレイミド基から選択される。更なる実施形態において、第2の反応性基はアミン基である。
【0077】
一定の実施形態において、第1の反応性基はアミン基から選択され、第2の反応性基はカルボン酸(又はカルボキシレート)基から選択される。
【0078】
ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートの1つの実施形態において、第1のポリマー及び第2のポリマーは、ポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーから選択される親水性で、実質的に水溶性のポリマーである。
【0079】
他の実施形態において、第1及び/又は第2のポリマーはEK含有ペプチドである。
更なる実施形態において、第1及び/又は第2のポリマーは上述された、米国特許第7,855,279号及び同第9,221,882号に記載されている組織化されてない組換えポリペプチド又はランダムコイルポリペプチドである。
【0080】
別の実施形態において、第1のポリマー及び第2のポリマーはポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、及びポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)ポリマーから選択される両性イオン性のポリマーである。
【0081】
ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートポリマーの上記実施形態の幾つかにおいて、第1のポリマー及び第2のポリマーは同じである(例えば、PCB/PCB、PSB/PSB、PC/PC、及びPTMAO/PTMAO)。上記実施形態の他において、第1のポリマー及び第2のポリマーは異なる(例えば、PCB/PSB、PSB/PCB、PCB/PC、PSB/PC、PC/PCB、及びPC/PCB)。
【0082】
更なる実施形態において、第1のポリマーはポリ(カルボキシベタイン)(PCB)ポリマーであり、第2のポリマーはポリ(カルボキシベタイン)(PCB)ポリマーである。
【0083】
有利に修飾されて本発明のバックフィルされたポリマーバイオコンジュゲートを提供する生体分子には、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、核酸、細胞、ウイルス、又は細菌がある。代表的な生体分子は上に詳細に記載されている。
【0084】
代表的なポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートの調製及び特徴付けは実施例4に記載される。
【0085】
ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを作製する方法
別の態様において、本発明はポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを作製する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に1以上の第1のポリマーを共有結合させることであって、第1及び第2の反応性基は異なり、第1のポリマーは第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;
(b)1以上の第2のポリマーを第2の反応性基に共有結合させて生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第2のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供すること
を含む。
【0086】
生体分子に結合したポリマーの数を増大する方法
更なる態様において、本発明は生体分子に共有結合したポリマーの数を増大する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に第1のポリマーを共有結合させることであって、第1及び第2の反応性基は異なり、第1のポリマーは第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;
(b)1以上の第2のポリマーを第2の反応性基に共有結合させて、生体分子に共有結合した第1のポリマー及び第2のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供することにより、生体分子に共有結合したポリマーの密度を増大すること
を含む。
【0087】
多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲート
更なる態様において、本発明は多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを提供する。1つの実施形態において、多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートは:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子であって、第1及び第2の反応性基は異なる、生体分子;
(b)第1の反応性基に共有結合した第1のポリマー;
(c)第1のポリマーの少なくとも一部分に共有結合した第2のポリマー;及び
(d)第2の反応性基に共有結合した1以上の第3のポリマー(即ち、バックフィルされたポリマー)
を含む。
【0088】
一定の実施形態において、第1及び第2のポリマーは、多層ポリマーバイオコンジュゲートに関して上記した第1及び第2のポリマーと同じである。一定の実施形態において、第1及び/又は第2のポリマーは両性イオン性のポリマー又はペプチド(例えば、EK含有ペプチド、例えば(EK)nペプチド、ここでnは1~50である)。
【0089】
他の実施形態において、第1及び/又は第2のポリマーはEK含有ペプチドである。
更なる実施形態において、第1及び/又は第2のポリマーは、上述された、米国特許第7,855,279号及び同第9,221,882号に記載されている組織化されてない組換えポリペプチド又はランダムコイルポリペプチドである。
【0090】
一定の実施形態において、第3のポリマーはポリ(カルボキシベタイン)(PCB)、ポリ(スルホベタイン)(PSB)、ポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)、ポリ(テトラメチルアミンオキシド)(TMAO)、ポリ(2-オキサゾリン)(POZ)、ポリ(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(ポリHPMA)、及びポリエチレングリコール(PEG)ポリマーからなる群から選択されるポリマーである。
【0091】
本発明のバックフィルされたポリマーバイオコンジュゲートを提供するように有利に修飾される生体分子には、タンパク質、糖タンパク質、プロテオグリカン、脂質、核酸、細胞、ウイルス、又は細菌がある。代表的な生体分子は上に詳細に記載されている。
【0092】
多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを作製する方法
もう1つ別の態様において、本発明は多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートを作製する方法を提供する。1つの実施形態において、方法は:
(a)1以上の第1の反応性基及び1以上の第2の反応性基を有する生体分子に1以上の第1のポリマーを共有結合させることであって、第1及び第2の反応性基は異なり、第1のポリマーは第1の反応性基に共有結合している、共有結合させること;
(b)第1のポリマーの少なくとも一部分に1以上の第2のポリマーを共有結合させること;
(c)1以上の第3のポリマーを第2の反応性基に共有結合させて、生体分子に共有結合した第1のポリマー、第2のポリマー、及び第3のポリマーを有するバイオコンジュゲートを提供すること
を含む。
【0093】
代表的な多層/ポリマーでバックフィルされたバイオコンジュゲートの調製は実施例5に記載される。
【0094】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は記載されている値の±5%を意味する。
以下、本発明を限定することなく例示する目的で実施例を挙げる。
【実施例】
【0095】
実施例1
代表的な多層ポリマーバイオコンジュゲート:Asp-EK-S、Asp-EK-D、及びAsp-EK-Tの調製及び特徴付け
この実施例では、代表的な多層ポリマーバイオコンジュゲートであるAsp-EK-S、Asp-EK-D、及びAsp-EK-Tの調製及び特徴付けについて記載する。高いポリマー密度は多数のリジン増幅によって達成される。
【0096】
異なるタンパク質は異なる表面残基分布(geo-distribution)を示す。タンパク質は十分な結合部位を提供するためにたくさんの到達できる表面基を必要とする。通常、リジン由来のアミン基がポリマーに結合するための反応性基として選ばれる。標的タンパク質が十分な表面リジンを含有していてもいなくても、本明細書に記載されているリジン増幅技術により、標的タンパク質上の高いポリマー密度を得るための解決策が提供される。
【0097】
(EK)10-Cポリペプチドの合成及び特徴付け
(EK)10-CはFmoc固相ペプチド合成(SPPS)によりLiberty Blue自動マイクロウェーブ支援ペプチド合成機(CEM)で合成した。配列合成スケールはRinkアミドMBHA樹脂上2.5mmolに設定した(0.6meq/g置換)。脱保護は20%ピペリジン/DMF溶液中マシンデフォルトマイクロ波条件で行った。カップリング反応は、5倍モルの試薬[0.2Mアミノ酸溶液(DMF中)並びに0.5MDIC(DMF中)及び1.0MOxyma(DMF中)]の存在下で、CEMから提供された2.5mmolカップリングサイクル法を用いることによって行った。開裂は20mlカクテル(TFA/フェノール/水/チオアニソール/EDT;82.5/5/5/5/2.5)を用いて180分室温で行った。開裂後、(EK)10-C-NH2を沈降させ、氷冷無水エチルエーテルで洗浄した。Econo-Pac 10DG Desalting Columnを用いて生成物の純度を更に高めた。
【0098】
合成プロセスの原理を
図1に示す。
多層ポリペプチド-アスパラギナーゼコンジュゲートの合成
EK-アスパラギナーゼ(EK-ASP)コンジュゲートはリジン増幅法を用いて調製した。最初に天然のASP上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/ml)に溶かし、ASP溶液(PBS緩衝液中2mg/ml、pH7.4)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なMOPS緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して5回超遠心分離して未反応AMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除いた。次いで、AMASで活性化されたASPを含有する残留溶液を(EK)
10-Cストック溶液(ASPに対して10質量倍過剰、MOPS緩衝液中)と合わせて第1のEK層変性を開始させた。結合反応を一晩4℃で保ち、同じ超遠心分離工程を実行して過剰のEKペプチドを除去した。精製されたASP-EK-単層(ASP-EK-s)コンジュゲートを更なる特徴付け及び次の結合工程のために2mg/mlで4℃の冷蔵庫内に貯蔵した。ASP-EK-二重層(ASP-EK-d)調合物は(EK)
10-Cペプチドを第1のEK層により増幅されたリジンに導入することによって調製した。同じAMAS活性化とそれに続くEK変性手順を実行し、得られたASP-EK-dコンジュゲートを超遠心分離(MWカットオフ:100k)により精製した。同じ方法により、ASP-EK-三重層(ASP-EK-t)調合物を調製し精製した。調製プロセスを
図2に示す。
【0099】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行ってASP-EK-S、ASP-EK-D、及びASP-EK-T生成物の大きさの差を特徴付けた。また、最終のすっかり被覆されたASP-EK-Tコンジュゲート生成物を得るために、疎水性相互作用カラム(HIC)を用いて十分に封入されなかったものを除いた。
【0100】
特異的結合親和性特徴付け
3層の両性イオン性ポリペプチド-タンパク質コンジュゲートが有意な遮蔽効果を提供することを示すために、インビトロELISA試験を行った。一般に、ストレプトアビジンをコートした96-ウェルを鋳型として用い、抗ASP抗体を一次抗体として使用し、次いでASP-EK調合溶液をウェルに加えた。洗浄後、HRP結合抗ASP抗体を二次抗体として導入した。このようにして、HRP/TMB反応により生じたOD値を用いてASPと対応する抗体との結合親和性を評価した。より高い結合親和性はより低い表面遮蔽能力を示す。全体として、ASP表面上のEK層の増大は特異的抗体結合からASPを有意に遮蔽すると推論された。具体的には、103pmol/mLの検出限界を有する天然のASPと比較して、単層コンジュゲートは結合親和性を105pmol/mLの検出限界までかなり低下させるが、それでも多少の結合親和性を有する。しかしながら、第2及び第3の層はASPの結合エピソードを殆どすっかり覆い、温和な条件下で十分な保護効果を示す。
【0101】
図2は、天然のASP、ASP-EK-S、ASP-EK-D、及びASP-EK-Tのインビトロ抗アスパラギナーゼ抗体結合親和性を比較して示す(初期濃度は1μmol/mLである)。
【0102】
非特異的結合親和性の特徴付け
大きさの増大にも関わらず、十分に包まれなかったコンジュゲートは殆どない。従って、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を使用して、生物学的活性を維持しながら十分に包まれたコンジュゲートを分離し精製した。高塩濃度緩衝液に溶解すると、サンプル溶質の溶媒和は低減し、露出されるようになった疎水性領域は媒質に付着した。次いで一連の低下する塩勾配Tris-HCl緩衝液を適用してサンプルをカラムから溶出させ、十分に覆われたサンプルを洗浄し集めた。HICの結果を
図4A-4Dに示す。
【0103】
1.13M濃度で溶出した天然のASPと比較して、超分岐コンジュゲートは2つのピークを示す。左のものは十分に覆われたコンジュゲートを表し、非特異的結合親和性をもたないローディング緩衝液と共に出て行く。他のものは1.76M濃度で溶出したが、これは少し非特異的結合を示す。表1はサンプル溶出勾配を示し、3層コンジュゲートが最良の結果を有する。
【0104】
図4A-4Dは、天然のASP(4A)、ASP-EK-S(4B)、ASP-EK-D(4C)、及びASP-EK-T(4D)のHICの結果を比較して示す。
【0105】
【0106】
超分岐ASP-EK-Tコンジュゲートのインビボ薬物動態及び免疫原性研究
全ての動物実験は連邦政府ガイドラインに忠実であり、University of Washington Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認された。動物を各々の研究の初めに処置群にランダム化し、1群当たり5匹の動物のサンプルサイズを使用した。C57LB/6匹マウス(雄、体重20~25g)はJackson Laboratoriesから購入した。
【0107】
2群のマウスを用いて天然のアスパラギナーゼ及び超分岐ASP-EK-tコンジュゲートの薬物動態(PK)を検討した。連続した3週の各々の週の最初の日に静脈内(IV)投与を行った。50μLの12.5mU/mLのASPサンプルを尾静脈注射法により投与した。その後注射時に対してそれぞれ5分、1、4、8、及び24時間の時点で血液サンプルを集めた。血液を21日に集め、間接ELISAによる免疫原性研究(IgM及びIgG抗体検出)に使用した。また、アスパラギナーゼ活性アッセイキットを用いて血液血清中の酵素含量を評価した。
【0108】
天然のASP群及びASP-EK-T群の両方のPK結果を
図5A-5Cに示す。全体として、ASP-EK-tコンジュゲートは天然のASPより顕著に優れており、注射後より長い期間生物活性を維持した。具体的には、ASP-EK-Tコンジュゲートは第3の注射後でさえ秀でた循環時間を維持し、天然のASPは明白なABC現象を示した。一方、ASP-EK-t群ではABC効果が観察されない。3度の投与後のASP-EK-tコンジュゲートの延ばされた変化しない循環時間は防汚(non-fouling)性及び大きさの増大を明らかにし、これらは共に免疫及び腎臓系による速いクリアランスを逃れる。
【0109】
図5A-5Cは、ASP調合物の第1の投与(5A)、第2の投与(5B)、及び第3の投与(5C)のPKプロフィールを比較して示す。
【0110】
IgG試験のための間接ELISAアッセイを
図6に示す。ASP-EK-tマウス群における抗ASP力価は天然のASP群よりずっと低い。これは、免疫原性エピソードがポリペプチドによりすっかり遮蔽されたことを立証した。また、ASP-EK-tマウス群における著しく低い抗EK力価は、合成されたポリペプチドが複雑な環境下でも超低免疫原性であることを示している。
【0111】
図6は、第3週でのマウス血清中の抗ASP及び抗EKIgG抗体の検出を比較して示す。
【0112】
実施例2
代表的な多層バイオコンジュゲート:Asp-EK-PCBの調製
この実施例では、代表的な多層ポリマーバイオコンジュゲートであるAsp-EK-PCBの調製について記載する。
【0113】
(EK)3-Cペプチドの合成
(EK)3-CはFmoc固相ペプチド合成(SPPS)によりLiberty Blue自動マイクロウェーブ支援ペプチド合成機(CEM)で合成した。配列合成スケールはRinkアミドMBHA樹脂上2.5mmolに設定した(0.6meq/g置換)。脱保護は20%ピペリジン/DMF溶液中マシンデフォルトマイクロ波条件で行った。カップリング反応は5倍モル過剰の試薬[0.2Mアミノ酸溶液(DMF中)並びに0.5MのDIC(DMF中)及び1.0MのOxyma(DMF中)]の存在下でCEMから提供された2.5mmolカップリングサイクル法を用いることにより行った。開裂は20mlのカクテル(TFA/フェノール/水/チオアニソール/EDT;82.5/5/5/5/2.5)を用いて180分室温で行った。開裂後、(EK)3-C-NH2を沈降させ、氷冷無水エチルエーテルで洗浄した。(EK)3-C-NH2を再結晶により更に精製した。
【0114】
PCB-SHポリマーの調製
4gのアミン基で終止したPCBポリマー(PCB-NH2、Mw:10k)をトラウト試薬(50mg)で活性化してPCB-SHを得た。2つの反応物質を500mLのHEPES緩衝液中で1時間撹拌し続けた。結合工程の直前にオペレーション緩衝液としてHEPESを用いて脱塩カラムにより未反応のトラウト試薬を除去した。HEPES中100mg/mlのポリマー溶液ストックを次の工程に直接使用した。
【0115】
Asp-PCBコンジュゲートの調製
最初に天然のASP上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/ml)に溶かし、ASP溶液(PBS緩衝液中2mg/ml、pH7.4)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なMOPS緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して5回超遠心分離して未反応のAMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除去した。その後、AMASで活性化したASPを含有する残留溶液をPCB-SHストック溶液と合わせ、4℃で4時間撹拌し続けた。結合反応を一晩4℃で維持した。Asp-PCBコンジュゲートを超遠心分離(Mwカットオフ:100k)により精製した。
【0116】
Asp-EKコンジュゲートの調製
最初に天然のASP上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/ml)に溶かし、ASP溶液(PBS緩衝液中2mg/ml、pH7.4)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なMOPS緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して5回超遠心分離して未反応のAMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除去した。次いでAMASで活性化したASPを含有する残留溶液を(EK)3-Cストック溶液(10質量倍過剰のASP、MOPS緩衝液中)と合わせて第1のEK層変性を始めた。結合反応を一晩4℃で維持し、同じ超遠心分離工程を実行して過剰のEKペプチドを除去した。精製したASP-EK-単層(ASP-EK-s)コンジュゲートを次の結合工程のために2mg/mLで4℃の冷蔵庫で保存した。
【0117】
Asp-EK-PCBコンジュゲートの調製
最初に天然のAsp-EK上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/mL)に溶かし、ASP溶液(PBS緩衝液中2mg/mL、pH7.4)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なMOPS緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して5回超遠心分離して未反応のAMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除去した。活性化されたAsp-EKコンジュゲート及びPCB-SHストック溶液を合わせ、4℃で4時間撹拌し続けた。過剰のポリマー及び未反応のタンパク質を透析ろ過(Mwカットオフ:100k、KR2iシステム、Spectrum)により除去した。
【0118】
図7に示されているように、多層Asp-EK-PCBコンジュゲートはAsp-PCB単層コンジュゲートと比較して顕著な大きさ改良を示した。Asp-EK-PCBコンジュゲートのサイズ分布も狭められ、Aspコンジュゲートの改良されたポリマー密度を示していることが留意される。
【0119】
実施例3
代表的な多層バイオコンジュゲート:ウリカーゼ-EK-PCBの調製
この実施例では、代表的な多層ポリマーバイオコンジュゲートであるウリカーゼ-EK-PCBの調製について記載する。
【0120】
(EK)3-Cペプチドの合成
(EK)3-CはFmoc固相ペプチド合成(SPPS)によりLiberty Blue自動マイクロウェーブ支援ペプチド合成機(CEM)で合成した。配列合成スケールはRinkアミドMBHA樹脂上2.5mmolに設定した(0.6meq/g置換)。脱保護は20%ピペリジン/DMF溶液中マシンデフォルトマイクロ波条件で行った。カップリング反応は5倍モル過剰の試薬[0.2Mアミノ酸溶液(DMF中)並びに0.5MのDIC(DMF中)及び1.0MのOxyma(DMF中)]の存在下でCEMから提供された2.5mmolカップリングサイクル法を用いることにより行った。開裂は20mlのカクテル(TFA/フェノール/水/チオアニソール/EDT;82.5/5/5/5/2.5)を用いて180分室温で行った。開裂の後、(EK)3-C-NH2を沈降させ、氷冷無水エチルエーテルで洗浄した。(EK)3-C-NH2を再結晶により更に精製した。
【0121】
Uri-EKコンジュゲートの調製
最初に天然のウリカーゼ(Uri)上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/mL)に溶かし、Uri溶液(PBS緩衝液中2mg/ml、pH7.4)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なMOPS緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して5回超遠心分離して未反応のAMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除去した。次いでAMASで活性化されたUriを含有する残留溶液を(EK)3-Cストック溶液(Uriに対して10質量倍過剰、MOPS緩衝液中)と合わせて第1のEK層変性を始めた。結合反応を一晩4℃で維持し、同じ超遠心分離工程を実行して過剰のEKペプチドを除去した。精製したUri-EKコンジュゲートを次の結合工程のために2mg/mlで4℃の冷蔵庫で保存した。
【0122】
Asp-EK-PEGコンジュゲートの調製
最初に天然のUri-EK上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/mL)に溶かし、Uri-EK溶液(PBS緩衝液中2mg/mL、pH7.4)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なMOPS緩衝液(0.1M、pH7.0)に対して5回超遠心分離して未反応のAMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除去した。活性化されたAsp-EKコンジュゲート及びPEG-SH(Mw5k)ストック溶液を合わせ、4℃で4時間撹拌し続けた。過剰のポリマー及び未反応のタンパク質を透析ろ過(Mwカットオフ:100k、KR2iシステム、Spectrum)により除去した。
【0123】
実施例4
ポリマーでバックフィルされた代表的なバイオコンジュゲート:PCB-OPHの調製及び特徴付け
この実施例では、ポリマーでバックフィルされた代表的なバイオコンジュゲートであるPCB-OPHの調製及び特徴付けについて記載する。
【0124】
この実施例では、有機リン加水分解酵素(OPH)を変性し、ポリマーでバックフィルされた代表的なバイオコンジュゲートであるPCB-OPHが提供される。OPHは大腸菌(E.Coli)内で発現後、二量体構造を示す。ポリマーで修飾することができる水が近づくことが可能なリジンがモノマー当たり4つだけある。PEG化のような一般的なポリマー結合技術は、結合部位不足のため充分な立体保護をOPHに提供することができない。限定されているリジンは別として、たくさんのグルタミン酸及びアスパラギン酸がOPH表面上に均一に分布しており、より多くの結合部位を提供して高いポリマー密度を達成する。結合は
図8に示されている2つの主要な工程を含んでいる。
【0125】
PCB-SHポリマーの調製
40gのアミン基で終止したPCBポリマー(PCB-NH2)をトラウト試薬(500mg)により活性化してPCB-SHを得た。2つの反応物質を500mLのHEPES緩衝液中で1時間撹拌し続けた。結合工程の直前にオペレーション緩衝液としてHEPESを用いた脱塩カラムにより未反応のトラウト試薬を除去した。HEPES中100mg/mLのポリマー溶液ストックを直接次の工程に使用した。
【0126】
マレイミド-NHS架橋剤(N-α-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)によるOPHの活性化
OPH(1g)をHEPES(200mL)に4℃で溶かし、架橋剤AMAS(150mg、ジメチルスルホキシド中20mg/mL)と合わせた。溶液を4℃で1時間撹拌し続け、オペレーション緩衝液としてHEPESを用いた脱塩カラムにより未反応のAMASを除去した。タンパク質溶液を限外ろ過により20mg/mLに濃縮した。
【0127】
PCB-OPHコンジュゲートの調製及び精製プロセス
OPH及びPCB-SHストック溶液を合わせ、4℃で4時間撹拌し続けた。過剰のポリマー及び未反応のタンパク質を透析ろ過(Mwカットオフ:100k、KR2iシステム、Spectrum)により除去した。次いでリジンで修飾したPCB-OPH(20k-OPH)を直接次のバックフィル工程に使用した。
【0128】
PCB-OPHコンジュゲートのカルボキシ基上のPCBバックフィル
1gの20k-OPH、40gのPCB-NH2ポリマー及び2gのスルホ-NHSを500mLのMOPS緩衝液(pH7.0)に溶かした。20mLのMOPS緩衝液中2gのEDCをタンパク質溶液に加えた。室温で4時間撹拌した後、混合した溶液を4℃で24時間更に撹拌した。過剰のポリマー及び小分子不純物を透析ろ過(Mwカットオフ:100k、KR2iシステム、Spectrum)により除去した。バックフィル後、PCB-OPHの流体力学的サイズは顕著に増大したが、これはPCB密度の増大を示す。
【0129】
図9は、天然及びPCB変性OPH調合物のSEC曲線を比較して示す。
OPHコンジュゲート調合物のインビボ薬物動態及び免疫原性研究
全ての動物実験は連邦政府ガイドラインに遵守しており、University of Washington Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認された。動物を各々の研究の初めに処置群にランダム化し、1群当たり6匹の動物のサンプルサイズを使用した。SDラット(雌、体重200~225g)はCharles Riversから購入した。第1及び第2投薬量のOPH調合物をそれぞれ1日及び15日に静脈内注射した。血液を収集し、PKプロフィールを分析した。二回の刺激投与の後、血清を28日及び35日に採取してIgM及びIgGレベルを得た。
【0130】
遊離のOPHは第1の注射後迅速なクリアランスを示した。ポリマー保護不足のOPH自体は、その大きさは腎臓のカットオフ限界より大きいにも関わらず長い循環時間を維持することができなかった。第2の投薬はABC現象を示したが、これは抗OPH抗体の生成によるものである。低いPCB被覆OPHに関して、それは天然のOPHと比較して顕著により長い循環時間を示したが、第2の注射後にABC現象も起こった。バックフィルされたPCB-OPHコンジュゲートは第1の用量の秀でた循環時間及び変化しない第2の用量PKプロフィールを示した。バックフィル技術による増大したPCB密度はインビボ薬物挙動で重要な役割を果たした。
【0131】
図10A-10Cは、遊離のOPH(10A)、バックフィルなしのPCB-OPH(10B)、及びバックフィル付PCB-OPH(10C)のPKプロフィールを比較して示す。
【0132】
IgG及びIgM試験のための間接ELISAアッセイをそれぞれ
図11A及び11Bに示す。バックフィルされたPCB-OPHで処置したラット群における抗OPHIgM及びIgG力価は天然のOPH又はバックフィルされてないPCB-OPHで処置した群よりずっと低かったが、これは免疫原性の発症がポリマーバックフィル技術により十分に遮蔽されたことを立証した。
【0133】
実施例5
PCBバックフィル付二重層OPH-EK-PCBコンジュゲートの高いポリマー密度
(EK)10-Cポリペプチドの合成及び特徴付け
(EK)10-CはFmoc固相ペプチド合成(SPPS)によりLiberty Blue自動マイクロウェーブ支援ペプチド合成機(CEM)で合成した。配列合成スケールはRinkアミドMBHA樹脂上2.5mmolに設定した(0.6meq/g置換)。脱保護は20%ピペリジン/DMF溶液中マシンデフォルトマイクロ波条件で行った。カップリング反応は5倍モル過剰の試薬[0.2Mアミノ酸溶液(DMF中)並びに0.5MのDIC(DMF中)及び1.0MOxyma(DMF中)]の存在下でCEMにより提供された2.5mmolカップリングサイクル法を用いることにより行った。開裂は20mlのカクテル(TFA/フェノール/水/チオアニソール/EDT;82.5/5/5/5/2.5)を用いて180分室温で行った。開裂後、(EK)10-C-NH2を沈降させ、氷冷無水エチルエーテルで洗浄した。Econo-Pac 10DG脱塩カラムを使用して生成物の純度を更に高めた。
【0134】
PCB-SHポリマーの調製
40gのアミン基で終止したPCBポリマー(PCB-NH2)をトラウト試薬(500mg)により活性化してPCB-SHを得た。2つの反応物質を500mLのHEPES緩衝液中で1時間撹拌し続けた。結合工程の直前にHEPESをオペレーション緩衝液とした脱塩カラムにより未反応のトラウト試薬を除去した。HEPES中100mg/mLのポリマー溶液ストックを直接次の工程に使用した。
【0135】
OPH-EKコンジュゲートの調製
最初に天然のOPH上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/mL)に溶かし、OPH溶液(HEPES緩衝液中2mg/ml、pH7.2)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なHEPES緩衝液(0.1M、pH7.2)に対して5回超遠心分離して未反応のAMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除去した。次いでAMASで活性化されたOPHを含有する残留溶液を(EK)10-Cストック溶液(OPHに対して10質量倍過剰、HEPES緩衝液中)と合わせてEK層変性を開始させた。結合反応を一晩4℃で維持し、同じ超遠心分離工程を実行して過剰のEKペプチドを除去した。精製したOPH-EKコンジュゲートを次の結合工程のために2mg/mlで4℃の冷蔵庫に保存した。
【0136】
OPH-EK-PCBコンジュゲートの調製
最初に天然のOPH-EK上のアミンをマレイミド-NHS二官能性架橋剤(N-マレイミドアセトキシスクシンイミドエステル、AMAS)により活性化した。アミン基に対して2当量のAMAS架橋剤をDMSO(20mg/mL)に溶かし、OPH-EK溶液(HEPES緩衝液中2mg/mL、pH7.2)に滴下して加えた。30分撹拌した後、反応混合物をタンパク質濃縮管(MWカットオフ:30kDa)中で新鮮なHEPES緩衝液(0.1M、pH7.2)に対して5回超遠心分離して未反応のAMAS及びあらゆる可能な小分子不純物を除去した。活性化されたOPH-EKコンジュゲート及びPCB-SHストック溶液を合わせ、4℃で4時間撹拌し続けた。過剰のポリマー及び未反応のタンパク質を透析ろ過(Mwカットオフ:100k、KR2iシステム、Spectrum)により除去した。
【0137】
PCB-OPHコンジュゲートのカルボキシル基上のPCBバックフィル
1gのOPH-EK-PCB、40gのPCB-NH2ポリマー及び2gのスルホ-NHSを500mLのMOPS緩衝液(pH7.0)に溶かした。20mLのMOPS緩衝液中2gのEDCをタンパク質溶液に加えた。室温で4時間撹拌した後、混合した溶液を更に4℃で24時間撹拌した。過剰のポリマー及び小分子不純物を透析ろ過(Mwカットオフ:100k、KR2iシステム、Spectrum)により除去した。
【0138】
図12に示されているように、各結合工程でOPH調合物の大きさが増大した。二重層OPH-EK-PCBコンジュゲートプラスPCBバックフィル材は最も高いポリマー被覆を達成したが、これは多層及びバックフィル方法の組合せがポリマー密度を顕著に増大したことを示している。
【0139】
説明のための実施形態を例示し記載して来たが、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができるということが理解される。
【0140】
排他的独占権が主張される本発明の実施形態は以下に定義されている。
【国際調査報告】