(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】繊維機械におけるエラーを低減するための方法
(51)【国際特許分類】
D01H 13/00 20060101AFI20220105BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
D01H13/00 A
D01H13/00 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519786
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019077370
(87)【国際公開番号】W WO2020074585
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】102018125064.9
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アルター
【テーマコード(参考)】
3C100
4L056
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA58
3C100AA59
3C100AA62
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB17
3C100BB33
3C100EE16
4L056AA00
4L056AA01
4L056ED01
4L056ED03
4L056ED05
4L056FB01
4L056FB17
(57)【要約】
本発明は、操作者の教育管理により繊維機械におけるエラーを低減するための方法に関する。発生するエラーの数を低減させることによって、所望の製品品質を保証し、繊維機械の費用のかかる修理や長い動作不能時間を減少させ、それによって、運用コストも削減され、経済効率と同時に操作安全性も向上する方法及びシステムを提供するために、本方法においては、方法ステップとして、最初に、少なくとも1つの繊維機械におけるエラー識別を行うステップと、それに続いて、エラーが発生している場合にエラー情報を検出するステップと、が含まれ、ここでは、その後、識別されたエラー若しくはエラー情報が既存の教育及び/又はトレーニングコンテンツ及び/又は既知のエラー情報と比較され、今後のエラー回避のために、エラーの考えられ得る原因に関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツが特定され、最後に、今後発生するエラーを回避し、操作者の操作技能を向上させ及び/又は操作安全性を高めるために、操作者のエラー固有の又はエラーによって惹起される継続訓練のための教育及び/又はトレーニングコンテンツが提供されることが提案されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の教育管理により繊維機械におけるエラーを低減するための方法であって、
-少なくとも1つの繊維機械におけるエラー識別を行うステップと、
-エラーが発生している場合にエラー情報を検出するステップと、
-識別されたエラーを既存の教育及び/又はトレーニングコンテンツ及び/又は既知のエラー情報と比較し、今後のエラー回避のために、エラーの考えられ得る原因に関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツを特定するステップと、
-今後発生するエラーの回避のために、操作者のエラー固有の継続訓練のための教育及び/又はトレーニングコンテンツを提供するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記エラー識別に後続して、エラーが操作者によって引き起こされたかどうか、又は、操作者の異なる行動によって防止することが可能であったかどうかが検査される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
識別されたエラーを個々のユーザ又はユーザグループに割り当てるために、前記繊維機械の使用中に操作者のIDが検出される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
後で発生するエラーをユーザ又はユーザグループの行動に割り当てるために、前記エラー識別に対して、操作者によって実施される操作行為が監視される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ユーザによって引き起こされたエラーがデータベースにおいて識別された後、前記エラーがそれを担当するユーザに割り当てられ、特に、操作者の使用行為の長期的な監視によって、個々のユーザ又はユーザグループの技能評価が行われ、これによって、後続してユーザ又はユーザグループに、操作技能の向上のための所期の教育又はトレーニングコンテンツを提供することが可能である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
特定された教育及び/又はトレーニングコンテンツに基づいて、オンライン教育が実施され、前記オンライン教育に対して操作者が自動的に招待又はログインされる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
教育及び特にトレーニングが、前記繊維機械において、携帯通信装置及び/又はトレーニング装置、特に携帯電話アプリを用いて行われ、前記教育及び/又はトレーニングコンテンツは、中央制御ユニットによって提供される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記トレーニング中に、トレーニングの進行及び場合によっては新たに行われる操作エラーを検出するために、前記携帯通信装置及び/又は前記トレーニング装置及び/又は前記繊維機械における操作者の操作行為が検出される、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
識別されたエラーに基づいて、メンテナンス管理が行われ、その間、特定の繊維機械のメンテナンスに関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツが、原因に関連して及び/又は定期的に操作者に提供される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
操作者の教育管理により繊維機械におけるエラーを低減するためのシステムであって、
-エラー識別のための及び/又はエラー情報を検出するための繊維機械への少なくとも1つのインタフェースを有する中央制御ユニットと、
-今後のエラー回避のために操作者を継続訓練するための、エラー情報に割り当てられた教育及びトレーニングコンテンツを含む中央データベースと、
-今後発生するエラーの回避のために、操作者のエラー固有の継続訓練のための教育及び/又はトレーニングコンテンツを提供するための出力インタフェースと、
を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者の教育管理により繊維機械におけるエラーを低減するための方法、及び、エラーを低減するための対応するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機などの繊維機械は、海外においては、熟練していない操作者によって操作されることが頻繁に起こる。さらに、繊維機械の操作者は頻繁に入れ替わるため、操作者全体の熟練度や知識レベルが大きく異なる可能性がある。新しく雇用された操作者は、繊維機械の操作に関する基礎的情報すら持っていないことがたびたび起こる。これにより、定期的に操作エラーが生じることによって、繊維機械及び当該繊維機械により作製された繊維製品の、特に、紡ぎ糸、撚糸又は布のエラー及び欠陥も引き起こされる。これらのエラー及び欠陥は、製品品質の低下と所望の品質の製品量の減少とにつながるのみならず、費用のかかる修理と繊維機械の長い動作不能時間とにもつながる。このことは、運用コストを増加させ、経済効率も低下する。さらに、繊維機械で発生するエラーは、操作安全性の低下につながり、操作者の負傷リスクの増加に関与する。
【0003】
独国特許出願公開第102015106470号明細書からは、発生したエラーの解消の際に操作者を支援するために、繊維機械のワークステーションの上位に置かれた制御部と、操作者の携帯通信装置との間において通信が確立される方法が既に公知である。この目的のために、制御部は、作業ステップを実施するための作業指示を操作者の携帯通信装置に送信し、欠陥のあるワークステーションの信号及び/又は携帯通信装置の信号を用いて作業ステップの実施を検出し、場合によっては、先行する作業ステップが実施されたら又は実施することができなくなったら直ちに、ワークステーションを操作するためのさらなる作業指示を操作者の携帯通信装置に送信する。このようにして、熟練していない操作者は、そのために必要な専門能力がなくても、発生したエラーを解消し、繊維機械を再び使用することができるようになるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015106470号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、本発明が基礎とする課題は、発生するエラーの数を低減し、それによって、所望の製品品質を保証し、繊維機械の費用のかかる修理や長い動作不能時間を減少させ、それによって、運用コストも削減され、経済効率と同時に操作安全性も向上する方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の方法及び請求項10に記載のシステムによって解決される。本発明の好適な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
操作者の教育管理により繊維機械におけるエラーを低減するための本発明に係る方法においては、第1の方法ステップとして、少なくとも1つの繊維機械におけるエラー識別を行うステップと、それに続いて、エラーが発生している場合にエラー情報を検出するステップと、が含まれる。後続の識別されたエラー又はエラー情報が既存の教育及び/又はトレーニングコンテンツ及び/又は既知のエラー情報と比較され、今後のエラー回避のために、エラーの考えられ得る原因に関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツが特定される。最後に、今後発生するエラーを回避し、操作者の操作技能を向上させ及び/又は操作安全性を高めるために、操作者のエラー固有の又はエラーによって惹起される継続訓練のための教育及び/又はトレーニングコンテンツが提供される。
【0008】
操作者の教育管理により繊維機械におけるエラーを低減するための本発明に係るシステムは、エラー識別のための及び/又はエラー情報を検出するための繊維機械への、特に繊維機械のローカル制御ユニットへの少なくとも1つのインタフェースを有する中央制御ユニットを備える。さらに、本システムは、今後のエラー回避のために操作者を継続訓練するための、エラー情報に割り当てられた教育及びトレーニングコンテンツを含む中央データベース、並びに、今後発生するエラーの回避のために、操作者のエラー固有の又はエラーによって惹起される継続訓練のための教育及び/又はトレーニングコンテンツを提供するための出力インタフェースと、を含む。
【0009】
本発明者は、エラー監視及び必要に応じた操作者の教育によって、繊維機械で発生するエラーの大半を迅速にかつよりわずかな労力で回避することができることを認識した。特に、個々の従業員のエラー固有の教育は、熟練していない又は資格のない操作者の効率的でかつ迅速な継続訓練を可能にする。発生するエラーの数の大幅な低減により、好適には、所望の製品品質が保証され、繊維機械の費用のかかる修理や長い動作不能時間が減少される。このことは、運用コストの削減、及び、経済効率の向上につながる。さらに、操作者のための操作安全性が向上し、作業条件が大幅に改善される。
【0010】
最初に、繊維機械とは、繊維製造、繊維加工又は繊維材料加工産業の任意の機械であり得る。しかしながら、好適には、繊維機械とは、多数の同種のワークステーションを備えた機械である。特に好適には、繊維機械は、紡績機、特にリング精紡機又はローター精紡機である。
【0011】
操作者の教育管理により繊維機械においてエラーを低減するとは、技術的な装置を用いて繊維機械のエラーが識別され、同様に技術的な装置を用いて教育及び/又はトレーニングコンテンツも編成され、後続して操作者に提供されることが理解される。これにより、操作者の操作技能が向上し、このことは、繊維機械の操作時に発生するエラーの低減につながる。即ち、教育管理の際には、教育及びトレーニングコンテンツが、固定されたスキーム又は固定されたスケジュールに従ってだけでなく、むしろ、少なくとも原因に関連して、即ち、発生したエラーに基づいて操作者に伝達され、これによって、繊維機械の操作に必要な基礎的情報の迅速な伝達を含めて大幅に効率的でかつより迅速な継続訓練が可能である。
【0012】
操作員又は操作者とは、基本的に、繊維機械において繊維機械の操作に必要な行為を行い、その際、好適には、操作過程の複数の個別で状況に応じて異なる作業ステップを実施しなければならない者である。この場合、操作者は、異なるタスクのグループに分けられるものとしてもよく、そのため、1つの操作者グループは、1つの特定のタスク又は1つのタスクフィールドのタスクのみを実行する。例えば、操作者の一部は、メンテナンス要員であるものとしてもよいし、及び/又は、運転開始を受け持つ者であるものとしてもよい。一方、操作者の他の一部は、操業中にのみ繊維機械に従事する。
【0013】
エラーとは、繊維機械の不所望な動作状態及び/又は計画外の動作状態を意味するものと理解され、この場合、繊維機械は、ここでは、完全に若しくは少なくとも限られた範囲において動作可能であり、又は、完全に故障している可能性もある。エラーは、例えば、繊維機械全体の又はその一部の欠陥、特に繊維機械の多数のワークステーションのうちの1つ又は複数の欠陥であるものとしてもよい。代替的又は付加的に、エラーは、例えば、糸が切れてしまった紡糸機における機能障害の場合のように、繊維機械において欠陥の存在なしで繊維機械によって処理された繊維又は製造された製品にも関係し得る。相応に、エラー識別とは、一般に、これらの不所望な動作状態及び/又は計画外の動作状態を特定することを意味するものと理解される。これには、欠陥、誤機能、機能制限、及び/又は、ユーザ若しくは操作者のエラーの監視が含まれる。エラー識別は、既存のセンサ及び/又はカメラを用いて、又は、繊維機械に付加的に配置されたセンサ及び/又はカメラを用いて行うことができる。さらに、エラー識別は、繊維機械自体で行うことも、繊維機械の内部制御ユニットを用いて及び/又は外部制御ユニットを用いて行うことも可能である。付加的に、好適には、例えば、繊維機械又は制御ユニットにおける操作者が発生した未知のエラーを入力することによってエラーを手動で通知することも可能である。
【0014】
エラーが識別されると、本発明によれば、後続してエラー情報を比較して関連する教育及びトレーニングコンテンツを特定することができるようにするために、エラー情報が検出される。ここで、エラー情報は、基本的に、発生したエラー及び/又はエラーに先行する繊維機械の動作データに関する任意の情報であるものとしてよく、それらの情報は、繊維機械によって提供されることも、外部手段又はセンサを用いて受け取ることも、可能である。これらのエラー情報は、特に、繊維機械の動作状態に関する情報であるものとしてよく、特に好適には、所望の動作状態からの逸脱に関する情報であるものとしてもよい。特に、繊維機械の設置場所、日時、時刻、エラー発生中の操作フロー、操作者の先行する操作行為、及び/又は、先行するメンテナンスに関する情報などのデータがエラー情報の一部であるものとしてもよい。好適には、技術者及び/又は専門家及び/又は開発者は、特に中央制御ユニットから、検出されたエラー情報へアクセスすることができる。
【0015】
エラー情報の検出及び場合によって後続する処理は、好適には、包括的なデータ分析及び/又はデータマイニング方法、即ち、総てのエラー情報への統計的方法の体系的な適用を含む。エラー情報の準備や前処理においては、例えば、データベースへの情報の構造化された格納又はエラー情報の最初の分類を行うことができる。
【0016】
教育及びトレーニングコンテンツは、基本的に、繊維機械の操作及び/又は取り扱いに関する情報若しくは技能を伝達することができるコンテンツである。教育及びトレーニングコンテンツは、ここでは特に、製造元情報、操作手順と操作マニュアル、取り扱い手順、チェックリスト、並びに、テキスト、画像、写真、アニメーション、ビデオ及び/又はオーディオコンテンツの形式のコンテンツを含むFAQリストであるものとしてよい。この場合、教育及びトレーニングコンテンツは、好適には、中央(知識)データベースを含む知識ネットワークの一部である。
【0017】
教育及び/又はトレーニングコンテンツは、ここでは継続的に、繊維機械の進捗中の開発及び/又はエラー回避及び/又はエラー修正に関する新たな情報に適合させることができる。この目的のために、好適には、技術者及び/又は専門家及び/又は開発者は、新たな教育及びトレーニングコンテンツを作成することができる。特に好適には、そのようなコンテンツは、新たな教育及びトレーニングコンテンツが修正又は防止すべき既知のエラー又はエラーパターンに割り当てられる。特に好適には、教育及びトレーニングコンテンツは、モジュール方式で構造化されており、この場合、各モジュールは、とりわけ特に好適には、特定の繊維機械部品又はその拡張レベルに適合させられている。いずれにせよ、教育とトレーニングとの間を区別することはできないが、教育とは情報と知識の理論的伝達に関し、一方、トレーニングとは、繊維機械における、又は、繊維機械若しくはその一部をモデル化若しくはシミュレートする装置における演習の実際の実施及び/又は情報の実際の伝達に関する。
【0018】
識別されたエラーに適した教育及びトレーニングコンテンツを特定するために、エラー情報の少なくとも一部と、先行するエラー及び/又は格納された教育及びトレーニングコンテンツのエラー情報との比較が行われ、この場合、特に好適には、それぞれの教育及びトレーニングコンテンツに以前の又は予測されたエラーに関する情報が既に割り当てられている。既存の教育及び/又はトレーニングコンテンツは、特に、中央制御ユニットで提供されるコンテンツである。
【0019】
エラーの考えられ得る原因に関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツの特定は、一般に、最初に、識別されたエラーの再発生を少なくともありえなくさせ好適には除外する教育及びトレーニングコンテンツにおける、ユーザ不特定の、ただし好適にはそれぞれの繊維機械又はそれぞれの設置場所に調整された選択を含む。この場合、関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツの特定は、専ら既知のエラーの解決手段の発見であるものとしてよいが、好適には、既知のエラーの解決手段からこれまで未知であるが類似したエラーへの拡張も含み得る。さらに、操作者への包括的な情報伝達を保証するために、発生した同一又は類似の既知のエラーに対して、複数の異なる教育及び/又はトレーニングコンテンツを提供することが可能である。さらに、発生したエラーに関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツに対して付加的に、これの基礎を形成するさらなる教育及び/又はトレーニングコンテンツをまだ提供することができ、そのため、今後のエラーを回避するために必要な基本的情報が最初に伝達される。
【0020】
操作者に対する教育及びトレーニング情報の提供は、ここでは、基本的には、任意の方法により行うことができ、その場合、教育及び訓練情報は、操作者に直接、特にデジタル又はオンラインにより提供することも、特定され提供された教育及びトレーニング情報にアクセス可能な教育又はトレーニングの実施者によって間接的に提供することも、可能である。しかしながら、好適には、教育及びトレーニング情報は、操作者に直接、特に好適には携帯及び/又は無線通信装置を用いて呼び出し可能に提供される。この目的のために、教育及びトレーニング情報は、とりわけ特に好適には、ウェブサーバ上において又はクラウドから集中的に呼び出し可能である。
【0021】
中央制御ユニットは、好適には、エラーデータベース、教育及びトレーニングコンテンツ、並びに、場合によってはさらなる情報を含む知識データベース、及び/又は、教育及びトレーニングコンテンツの集中的提供のためのウェブサーバを有する少なくとも1つの中央サーバである。エラー情報、並びに、教育及びトレーニングコンテンツは、基本的に、共通のデータベースに保管されるものとしてもよい。その上さらに、エラーを低減するためのシステムの中央制御ユニットは、任意のさらなる機能を有することができ、その場合、特に、企業のデジタルインフラストラクチャに統合されるものとしてよい。
【0022】
中央制御ユニットは、少なくとも1つの繊維機械とのデータ交換のためのインタフェースを有し、それを用いて、少なくともデータを繊維機械から受信することができる。教育及びトレーニング情報を操作者に出力することができるようにするために、中央制御ユニットは、さらに出力インタフェースを備えている。好適には、この出力インタフェースは、繊維機械の再生装置、特にスクリーン、特に接触感知スクリーンへのデータの再生若しくは伝送、及び/又は、例えば、携帯電話、タブレット、ラップトップ、他のポータブルコンピュータ、データウォッチ、データブレスレット、データゴーグルなどのユーザ装置へのデータの再生若しくは伝送を可能にする。好適には、繊維機械へのインタフェース及び/又は出力インタフェースは、データの検出及び出力に適している。
【0023】
本発明に係る方法の好適な実施形態においては、エラー固有の教育及び/又はトレーニングコンテンツによって、今後のエラーの回避が可能であるかどうかを特定することができるようにするために、エラー識別に後続して、エラーが操作者によって引き起こされたかどうか、又は、操作者の異なる行動によって防止することができたかどうかが検査される。ユーザが原因のエラーと他のエラーとの間のこの区別は、好適には、中央制御ユニットで行われる。このことは、ここでは、自動的に行うことも、技術者又は他の専門スタッフによって行うことも可能である。
【0024】
特に好適には、識別されたエラーを個々のユーザ又はユーザグループに割り当てるために、繊維機械の使用中に操作者のIDが検出され、これによって、個別の教育を行うことができ、及び/又は、トレーニングを、エラー発生を引き起こしたユーザに集中させることができる。この場合、操作者の検出は、個人的にユーザごとに個別に、又は、ユーザグループとして、例えば勤務スケジュールやシフトスケジュールに基づいて、行うことができる。個人的な検出は、例えば使用の前に繊維機械にログインすることによって行うことができる。
【0025】
本発明に係る方法の好適な発展形態においては、即時に又は後で発生するエラーをユーザ又はユーザグループの行動に割り当てるために、エラー識別に対して、操作者によって実施される操作行為が監視される。この場合、好適には、エラーの発生又は識別の直前に行われなかった操作行為にもエラーを割り当てることができるように、操作行為の継続的な検出が繊維機械において行われる。操作行為の監視は、ここでは繊維機械において、特に、ローカル制御ユニットを用いて及び/又は中央制御ユニットを用いて行うことができ、その場合、中央制御ユニットは、特に好適には、繊維機械に対して継続的なデータ接続を形成する。
【0026】
本発明に係る方法のさらなる好適な実施形態によれば、ユーザによって引き起こされたエラーがデータベースにおいて識別された後、当該エラーがそれを担当するユーザに割り当てられ、特に、操作者の使用行為の長期的な監視によって、個々のユーザ又はユーザグループの技能評価が行われ、これによって、後続してユーザ又はユーザグループに、操作技能の向上のための所期の教育又はトレーニングコンテンツを提供することが可能である。また好適には、特に、種々のユーザが、同様の技能又は類似の教育若しくはトレーニング要件のグループにも自動的に分けられ、求められた要件に基づいて、グループ内及び/又は現場において教育若しくはトレーニングの実施が後続する。従って、本方法は、操作者を有意義な継続訓練グループに統合することが可能である。
【0027】
好適には、さらに、ユーザごと又はユーザグループごとに、教育及び/又はトレーニングステップが検出される。さらに、提供された教育及びトレーニングコンテンツの参加状況や進捗状況を監視することができ、そのため、操作者の既存の技能を知り、それに応じてそれぞれの技能に応じた種々の仕事を操作者に割り当てることができる。
【0028】
本発明に係る方法の特に好適な発展形態においては、特定された教育及び/又はトレーニングコンテンツに基づいて、オンライン教育が実施され、当該オンライン教育に対して操作者、特にエラーを引き起こしたユーザが、好適には自動的に招待又はログインされることが想定される。この自動的なログイン及び/又は招待は、この場合、ユーザグループに行うことができるが、不十分な技能又は不十分な知識が識別された場合には、特定のユーザに行うことができる。オンラインにより提供することが可能な教育の実施には、この教育がいつでも任意の場所において操作者によって実施することができるという利点がある。
【0029】
基本的に、教育、特にトレーニングは、任意の方法により行うことができるが、その場合、好適には、教育、特にトレーニングが繊維機械において、携帯通信装置及び/又はトレーニング装置、特に携帯電話アプリを用いて行われ、この場合、教育及び/又はトレーニングコンテンツは、好適には、中央制御ユニットによって提供される。教育及びトレーニングコンテンツを携帯通信装置及び/又はトレーニング装置に伝送することにより、一方では、教育及び/又はトレーニングコンテンツを任意の時間に任意の場所において呼び出すことが可能になり、他方では、操作者が教育及び/又はトレーニングコンテンツに使い慣れた装置により、特に操作者の携帯電話により呼び出すことが可能になる。さらに、教育及びトレーニングコンテンツを携帯通信装置及び/又はトレーニング装置に伝送することにより、教育の少ないレベルから文字のわからないレベルまでの一部の操作者が理解することのできない記述されたコンテンツのみの使用だけでなく、むしろ、ビデオ、オーディオコンテンツ及び/又はアニメーションの形態のコンテンツも使用することができ、これらは読解力に関係なく理解することが可能である。
【0030】
本発明に係る方法の好適な実施形態においては、教育若しくはトレーニング中に、教育若しくはトレーニングの進行及び場合によっては再度行った操作エラーを検出するために、携帯通信装置及び/又はトレーニング装置及び/又は繊維機械における操作者の操作行為が検出され、これにより、簡単な方法によってさらにより大きい学習の進歩を達成することができる。特に好適には、ユーザが再度犯したエラーを識別し、直ちに修正される。さらに、情報及び操作技能の習得の際及び/又は教育若しくはトレーニングの進行の際のユーザの進捗が検出され、データベースに格納される又はユーザ若しくはユーザグループのデータベースエントリが、補足及び/又は更新される。
【0031】
本発明に係る方法の好適な発展形態によれば、識別されたエラーに基づいて、特に特定の繊維機械で発生したエラーの長期評価に基づいて、メンテナンス管理が行われ、その間、特定の繊維機械のメンテナンスに関連する教育及び/又はトレーニングコンテンツが、原因に関連して及び/又は定期的に操作者に提供される。このことは、特に、ユーザ若しくはユーザグループによって特定されずに発生したエラー、及び/又は、誤操作に基づかずに発生したエラーに当てはまる。このようにして、好適には、メンテナンスの欠如又はメンテナンスがまれにしか行われないことにまで原因がさかのぼる今後のエラーも回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下においては、本発明に係る方法の一実施形態の2つの例をより詳細に説明する。
【0033】
操作者の教育管理により繊維機械におけるエラーを低減するための方法の第1の実施形態においては、中央制御コンピュータが、データインタフェースを介して、250個の同一の紡糸ボックスを備えたローター精紡機のローカル制御コンピュータに接続されている。操作フロー中は、ローカル制御コンピュータによって、及び、場合によっては中央制御コンピュータに直接接続されたさらなるセンサによってエラーが識別される。これらのエラーについては、時刻、紡糸ボックスの数、エラーの種類などの種々の情報がエラー情報として検出される。中央制御ユニットにおいては、これらのエラー情報が定期的に評価され、その際に識別されたエラーは、過去に発生したエラーのエラー情報と比較され、並びに、これらのエラーの今後の発生を防止することができる教育及びトレーニングコンテンツが中央知識データベース内において利用可能かどうかが特定される。
【0034】
後続して発生したエラーの今後の防止のために特定された教育及び学習コンテンツが、この繊維機械の操作者全員に呼び出しのために提供され、この場合、この呼び出しは、インターネット対応の任意の装置、例えばコンピュータや携帯電話などを用いて行うことが可能である。操作者全員は、メッセージ内において設定された期間内に操作者によって選択された時点において教育又はトレーニングを実施するように要求するメッセージを自動的に受け取る。
【0035】
本方法の第2の実施形態においても同様に、エラー識別が行われるが、この場合、操作者は、繊維機械の操作前に当該繊維機械にログインし、その上さらに、操作者によって行われた操作行為が検出され、それにより、検出されたエラー情報の一部として、エラーに先行する操作行為、及び、ユーザのIDも、中央制御コンピュータに伝送される。
【0036】
後続して、先行する例のように、エラーに割り当て可能な教育及びトレーニングコンテンツを特定するためにエラー情報の比較が行われる。そのようなコンテンツを特定することができない場合は、当該エラー情報を含むメッセージが専門家又は開発者チームに伝送され、それによって、対応する学習及びトレーニングコンテンツを作成してシステムに入力することが可能かどうかを検査することができる。一方、適当なトレーニングコンテンツが見つかった場合は、当該コンテンツが、エラーを引き起こしたユーザに提供される。さらに、発生したエラーが一般的に重要であるかどうか、並びに、対応する学習及びトレーニングコンテンツをユーザグループに又は操作者全員に提供すべきかどうかが検査される。
【0037】
エラー情報の比較と同時に、エラーがユーザの使用行為によって引き起こされたかどうか、又は、異なるユーザ行動によって防止することができたかどうかが検査される。エラーが、ユーザによって引き起こされたものではない場合には、メンテナンス手段によってエラーが回避することができたかどうかが検査される。このケースにおいては、少なくとも繊維機械のメンテナンスを担当する操作者、場合によっては操作者全員に、メンテナンスを指導する教育及びトレーニングコンテンツが提供される。代替的又は付加的に、ユーザが原因ではないエラーを回避するための恒久的な解決手段を見つけ、場合によっては対応する教育及びトレーニングコンテンツを開発するために、専門家及び/又は技術者及び/又は開発者にも通知がなされる。
【0038】
エラーがユーザによって引き起こされた場合、最初に、このユーザのエラーにつながる欠落した情報が、技能データベースにおいて検出される。後続して、ユーザに対応する教育及びトレーニング資料が提供される。これは、ユーザの携帯電話又はコンピュータ上において実施されるべきオンライン学習として行うことができ、その実施及びフローは中央制御ユニットによって監視される。この場合、ユーザの進捗状況も同様に技能データベースに記録される。付加的又は代替的に、トレーニング及び/又は学習も、現場において及び/又は繊維機械上において行うことができる。この場合、個々のさらなる教育手段又はユーザのグループにおけるイベントであり得る。継続訓練手段への参加状況やその際に得られた進捗状況も、後続して技能データベースにおいて検出されるので、ユーザの新たに習得した情報及び技能は、記録により証明される。
【国際調査報告】