(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置ならびにアクチュエータ装置における漂遊磁場を補償するための方法
(51)【国際特許分類】
H02P 25/06 20160101AFI20220105BHJP
【FI】
H02P25/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519788
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019074266
(87)【国際公開番号】W WO2020074200
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】102018217352.4
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519453607
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, 30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス レーベライン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム フォム ドアプ
【テーマコード(参考)】
5H540
【Fターム(参考)】
5H540AA10
5H540BB04
5H540BB06
5H540BB09
5H540EE05
5H540EE20
5H540FA03
5H540FA13
5H540FB01
5H540FC02
5H540FC03
5H540FC07
(57)【要約】
電磁式のアクチュエータ装置(2)、特にリニアアクチュエータであって、少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)と、発生した少なくとも1つの電磁場に応じて長手方向(L)にかつ長手方向(L)と逆方向に移動可能なプランジャ(8)とを備えるアクチュエータ(4)と、センサ装置(10)であって、発生器要素(12)とセンサ要素(14)とを有し、発生器要素(12)はプランジャ(8)に配置されており、センサ要素(14)は、発生器要素(12)によって発生した磁場(18)に応じて、長手方向(L)に沿ったプランジャ(8)の瞬時の実際位置に関する情報を含む測定信号(SM)を発生させるように構成されている、センサ装置(10)と、作動中、測定信号(SM)をベースとした位置信号(SP)に応じて、少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)に制御電圧(UA)を印加し、これによって、プランジャ(8)を瞬時の実際位置から目標位置に移動させるように構成された調整器(22)を備える調整ユニット(20)と、を有し、作動中、少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)によって、漂遊磁場(26)が発生し、測定信号(SM)の適合は、この測定信号(SM)への漂遊磁場に起因した影響が補償されているように行われる、アクチュエータ装置(2)が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁式のアクチュエータ装置(2)、特にリニアアクチュエータであって、
少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)と、発生した前記少なくとも1つの電磁場に応じて長手方向(L)にかつ長手方向(L)と逆方向に移動可能なプランジャ(8)とを備えるアクチュエータ(4)と、
センサ装置(10)であって、発生器要素(12)とセンサ要素(14)とを有し、前記発生器要素(12)は前記プランジャ(8)に配置されており、前記センサ要素(14)は、前記発生器要素(12)によって発生した磁場(18)に応じて、前記長手方向(L)に沿った前記プランジャ(8)の瞬時の実際位置に関する情報を含む測定信号(S
M)を発生させるように構成されている、センサ装置(10)と、
作動中、前記測定信号(S
M)をベースとした位置信号(S
P)に応じて、前記少なくとも1つの電磁場を発生させるための前記少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)に制御電圧(U
A)を印加し、これによって、前記プランジャ(8)を前記瞬時の実際位置から目標位置に移動させるように構成された調整器(22)を備える調整ユニット(20)と、
を有し、
作動中、前記少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)によって、前記測定信号(S
M)に影響を与える漂遊磁場(26)が発生し、
前記調整ユニット(20)は補償装置(28)を有し、該補償装置(28)は、前記漂遊磁場(26)に関連した量(G)を特定し、該量(G)に応じて前記測定信号(S
M)を適合させて前記調整器(22)に伝送するように構成されており、前記測定信号(S
M)の適合は、該測定信号(S
M)への前記漂遊磁場に起因した影響が補償されているように行われる、
アクチュエータ装置(2)。
【請求項2】
前記漂遊磁場(26)に関連した前記量(G)は、前記制御電圧(U
A)に基づき前記少なくとも1つのアクチュエータコイルに流れるアクチュエータ電流(I
A)である、請求項1記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項3】
前記調整ユニット(20)内にさらに推定ユニット(32)が配置されており、該推定ユニット(32)は、前記漂遊磁場(26)に関連した前記量(G)、好ましくは前記アクチュエータ電流(I
A)を前記アクチュエータ(4)の少なくとも1つの状態量(Z)に基づき特定するように構成されている、請求項2記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項4】
前記推定ユニット(32)は、前記漂遊磁場(26)に関連した前記量(G)、好ましくは前記アクチュエータ電流(I
A)を、特に以下の前記状態量、つまり、
検出された最後のアクチュエータ電流(I
A)、
アクチュエータ温度、
前記少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)の電気的な抵抗、
前記少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)のインダクタンス、
前記プランジャ(8)の位置および速度、
前記アクチュエータ(4)の制御電圧(U
a)
のうちの少なくとも1つの状態量に基づき特定するように構成されている、請求項3記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項5】
前記補償装置(28)は、特定された前記量(G)から補正関数に基づき補正量を特定し、該補正量に基づき前記測定信号(S
M)を適合させるように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項6】
前記補正関数に基づき特定された前記補正量は、校正値によって補正され、該校正値はオフセットおよび/またはゲイン係数である、請求項5記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項7】
前記発生器要素(12)は永久磁石として形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項8】
前記センサ要素(14)は磁場センサとして形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項9】
前記発生器要素(12)は、該発生器要素(12)によって発生した前記磁場(18)の方向と、前記センサ要素(14)が配置された測定位置における前記漂遊磁場の方向とが、実質的に同方向であるように、前記プランジャ(8)に配置されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(2)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(2)であって、
少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)と、発生した前記少なくとも1つの磁場に応じて長手方向(L)にかつ長手方向(L)と逆方向に移動可能なプランジャ(8)とを備えるアクチュエータ(4)と、
センサ装置(10)であって、発生器要素(12)とセンサ要素(14)とを有し、前記発生器要素(12)は前記プランジャ(8)に配置されており、前記センサ要素(14)によって、前記発生器要素(12)によって発生した磁場(18)に応じて、前記長手方向(L)に沿った前記プランジャ(8)の瞬時の実際位置に関する情報を含む測定信号(S
M)が発生する、センサ装置(10)と、
前記測定信号(S
M)をベースとした位置信号(S
P)に応じて、前記少なくとも1つの電磁場を発生させるための前記少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)に制御電圧(U
A)を印加し、これによって、前記プランジャ(8)を前記瞬時の実際位置から目標位置に移動させる調整器(22)を備える調整ユニット(20)と、
を有し、前記少なくとも1つのアクチュエータコイル(6)によって、前記測定信号(S
M)に影響を与える漂遊磁場が発生する、
アクチュエータ装置(2)における前記漂遊磁場を補償するための方法であって、
前記漂遊磁場に関連した量(G)を補償ユニット(28)によって検出するステップと、
検出された前記量(G)をベースとして、補正量を生成するステップと、
前記補正量を前記測定信号(S
M)に適用することによって、該測定信号(S
M)を適合させるステップと、
適合させられた前記測定信号(S
M)をベースとした前記位置信号(S
P)を前記調整器(22)に伝送するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記補償装置(28)によって、特定された前記量から補正関数に基づき補正量を特定し、該補正量に基づき前記測定信号(S
M)を適合させ、前記補正関数に基づき特定された前記補正量を校正値によって補正し、該校正値はオフセットおよび/またはゲイン係数である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記校正値を規定するために、前記プランジャ(8)を、予め設定された既知の校正位置、好ましくは両方の終端位置へと、一度はアクチュエータ(4)が通電されていることによって移動させ、かつ一度はアクチュエータ(4)が通電されていないことによって移動させ、それぞれ前記プランジャ(8)の位置を前記センサ装置(10)によって検出し、さらに、それぞれの校正位置に対して前記補正関数により特定された、前記校正位置に対する値を、前記校正位置の実際の値と比較し、これに基づき、前記オフセットおよび前記ゲイン係数を特定する、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置ならびにこのようなアクチュエータ装置における漂遊磁場を補償するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータ装置、特にリニアアクチュエータは、今日、例えば、長手方向に沿った制御かつコントロールされるリニア運動が必要となるところで特に使用される。例えば、このようなリニアアクチュエータは、自動車工業では、いわゆる「シフトバイワイヤ」システムに使用される。このシフトバイワイヤシステムでは、リニアアクチュエータが、作動中、ギヤチェンジのためのリニア運動を実施する。
【0003】
リニアアクチュエータは、通常、最も単純な構造では、実質的にピン状に形成されたプランジャを有している。このプランジャは、いわゆる「アクチュエータコイル」によって取り囲まれている。つまり、アクチュエータコイルは、このアクチュエータコイルとプランジャとの間にギャップを形成して「プランジャに巻き付けられて」いる。アクチュエータの機能形態については、知られている電磁的な考えがベースとなっている。作動中、アクチュエータコイルに制御電圧が印加され、この制御電圧に基づきアクチュエータコイルの内部に流れるアクチュエータ電流が、アクチュエータコイルの近傍領域に電磁場を発生させる。この発生した電磁場が力をプランジャに加える。このプランジャは、力に基づき長手方向にかつ長手方向と逆方向に移動させられ、ひいては、リニア運動を実施する。
【0004】
このようなリニア運動は、通常、例えば、(間接的に)リニア運動の要因を成すアクチュエータ電流が(例えばアクチュエータ電圧の調整により)調整されることによって正確に制御可能となる。プランジャの瞬時の位置に関する情報を獲得するために、このようなアクチュエータ装置は、通常、ポジションセンサを有している。このポジションセンサは、プランジャの位置を規定するために、同じく(発生した固有の)磁場を利用するように構成されていることが多い。この場合の欠点は、両方の場(アクチュエータコイルの電磁場およびポジションセンサの磁場)が望ましくない形で相互に影響を及ぼし合ってしまうということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このことを前提として、本発明の根底にある課題は、磁場に起因した外乱が少なくとも減じられているアクチュエータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する電磁式のアクチュエータ装置によって解決される。有利な構成、改良形態および変化形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
電磁式のアクチュエータ装置は、特にリニアアクチュエータとして形成されており、以下、アクチュエータ装置とも略称する。
【0008】
アクチュエータ装置は、少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイルを備えたアクチュエータを有している。好適には、このアクチュエータは、2つの電磁場を発生させるために、2つのアクチュエータコイルを有している。さらに、アクチュエータは、発生した少なくとも1つの磁場に応じて長手方向にかつ長手方向と逆方向に移動可能なプランジャを有している。このプランジャは、特にピン状に形成されている。
【0009】
さらに、アクチュエータ装置はセンサ装置を有している。このセンサ装置は、発生器要素とセンサ要素とを有している。発生器要素はプランジャに配置されている。センサ要素は、発生器要素によって発生した、作動中にセンサ要素により検出される磁場に応じて測定信号を発生させるように構成されている。発生した測定信号は、長手方向に沿ったプランジャの瞬時の実際位置に関する情報を含んでいる。つまり、センサ要素は、プランジャのそれぞれ異なる位置において、磁場のそれぞれ異なる値(方向)を検出する。その後、この値に基づき、それぞれ異なる測定信号が発生する。
【0010】
さらに、アクチュエータ装置は、作動中、測定信号をベースとした位置信号に応じて、少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイルに制御電圧を印加するように構成された調整器を備えた調整ユニットを有している。なお、「測定信号をベースとした位置信号」とは、測定信号の値に基づきプランジャの実際位置を推測することができ、その後、この実際位置が位置信号の形態で調整器に伝送されることを意味している。少なくとも1つのアクチュエータコイルへの制御電圧の印加と、これに基づく結果としての少なくとも1つの電磁場の発生とが、プランジャの移動、特に瞬時の実際位置から(予め設定された)目標位置へのプランジャの移動のために役立つ。
【0011】
作動中、アクチュエータコイルによって、測定信号ひいては位置信号にも(マイナスの)影響を与える(望ましくない)漂遊磁場が発生する。
【0012】
調整ユニットは補償装置を有している。この補償装置は、漂遊磁場に関連した量(量とも略称する)を特定し、この量に応じて測定信号を適合させて調整器に伝送するように構成されている。測定信号の適合は、この測定信号が、特定された量に基づき、漂遊磁場に起因した影響が考慮されるように適合され、これによって、この影響が測定信号ひいては位置信号に関しても補償されているように行われる。
【0013】
この構成の根底には、すでに述べたように、センサ装置、特にセンサ要素が、プランジャの位置を間接的に検出する所望の磁場に加えて、アクチュエータの作動中に生じかつ所望の磁場に外乱として重畳する漂遊磁場をもセンサ要素によって検出されるという考えがある。つまり、漂遊磁場によって、発生器要素の磁場が、例えば、(漂遊磁場と磁場との建設的な重畳によって)望ましくない形で強化されているかまたは(漂遊磁場と磁場との破壊的な重畳によって)望ましくない形で弱化されている。両方の重畳事例では、これによって、測定信号ひいては位置信号にも、漂遊磁場に起因した影響が与えられ、したがって、調整器が、プランジャの瞬時の実際位置に関する誤った情報を獲得してしまう。これによって、プランジャ位置の位置正確な調整にマイナスの影響が与えられてしまう。
【0014】
補償装置の側での、漂遊磁場に関連した量と、この量に応じた測定信号の適合との特定によって、漂遊磁場と磁場との望ましくない重畳が補償されており、これによって、プランジャの位置の十分正確な調整が達成されている。したがって、漂遊磁場の特に外乱としての作用が、好ましくは完全に補償されている。
【0015】
好適な構成によれば、漂遊磁場に関連した量は、制御電圧に基づき少なくとも1つのアクチュエータコイルに流れるアクチュエータ電流である。この構成は、発生した漂遊磁場が、アクチュエータコイルの内部に流れるアクチュエータ電流に比例するという物理的な考えをベースとしている。さらに、アクチュエータ電流の検出は、技術的な観点から簡単かつ廉価に実現可能である。
【0016】
好適な改良形態によれば、調整ユニット内にさらに推定ユニットが配置されており、この推定ユニットは、アクチュエータ電流をアクチュエータの少なくとも1つの状態量に基づき特定するように構成されている。この特定は、特にアクチュエータ電流を測定することができないかまたは連続的には測定することができない場合に行われる。
【0017】
特に好適には、推定ユニットは、アクチュエータ電流を、特に以下の状態量、つまり、
検出された最後のアクチュエータ電流、
アクチュエータ温度、
少なくとも1つのアクチュエータコイルの電気的な抵抗、
少なくとも1つのアクチュエータコイルのインダクタンス、
プランジャの位置および速度、ならびに
アクチュエータ電圧(例えば、PWM制御におけるデューティサイクル+作動電圧)
のうちの少なくとも1つまたはそれ以上の状態量に基づき特定するように構成されている。
【0018】
なお、「検出された最後のアクチュエータ電流」とは、特に、例えば電流測定を一時的に利用できない場合に、電流測定をまだ利用することができていたときの測定済みの最後の電流値を意味している。
【0019】
合目的的には、補償装置は、特定された量から補正関数に基づき補正量(例えば補正値または補正係数)を特定するように構成されている。その後、作動中、この補正量に基づき、測定信号に補正量が適用され、これによって、漂遊磁場に起因した影響が考慮されるように、測定信号が適合される。なお、「補正関数」とは、特に補正量を特定するための、アクチュエータ電流に関連した関数である。つまり、測定信号を適合させるために、作動中に生じるそれぞれ異なるアクチュエータ電流に対して、それぞれ異なる補正量が特定される。これによって、測定信号の適合に関して、ひいては、磁場に外乱として重畳される漂遊電磁場の補償に関して、それぞれ異なるアクチュエータ電流に応答することができる。さらに、これによって、流れるアクチュエータ電流の高さに左右されずに、測定信号の適合がその都度十分正確に行われることが達成されている。
【0020】
補正関数に基づく補正量の特定と、これに応じた測定信号の適合とに対して代替的には、アクチュエータ電流値とプランジャの各位置との間の関数的な割当てが表に格納されている。この場合、この表は、例えば調整ユニットの内部メモリに(作動中に呼出し可能に)格納されている。
【0021】
好適な改良形態によれば、補正関数に基づき特定された補正量は、校正値によって補正される。この校正値は、好ましくはオフセットおよび/またはゲイン係数である。
【0022】
この構成は、磁場と漂遊電磁場との状況に基づく影響および/またはアクチュエータ電流測定のゲイン誤差が、オフセットまたはゲイン係数によって等化され、これによって、補償に有利な影響が与えられるという利点を有している。
【0023】
合目的的には、発生器要素が永久磁石として形成されている。これによって、磁場の発生に関して、発生器要素の特に簡単かつ廉価な構成が達成されている。
【0024】
さらに合目的的には、センサ要素が磁場センサ、例えば(多軸)ホールセンサとして形成されている。代替的には、受信ユニットが磁気抵抗式のセンサとして形成されている。受信ユニットを磁場センサとして形成することによって、発生器要素を永久磁石として形成することに類似して、センサ要素の特に簡単かつ廉価な構成が達成されている。したがって、まとめると、発生器要素とセンサ要素とを備えた完全なセンサ装置が簡単かつ廉価に実現されている。
【0025】
好適な構成によれば、発生器要素は、この発生器要素によって発生した磁場の方向と、センサ要素が配置された測定位置における漂遊磁場の方向とが、実質的に同方向である(したがって、つまるところ、両方の場の建設的な重畳が結果的に生じる)ように、プランジャに配置されている。この構成は、漂遊磁場の方向と磁場の方向とがベクトルの足し算の形態で重畳されて、合成場が生じるという考えに基づいている。さらに、例えばホールセンサまたは磁気抵抗式のセンサとして形成されたセンサ要素は、磁束に対する最小値を必要とし、これによって、出力信号、本明細書では測定信号が発生する。したがって、発生した磁場の方向と、漂遊磁場の方向とが、実質的に同方向であると、(合成場の程度により、)1つには、センサ要素によって総じて測定信号が検出されることが確保されている。さらに、これによって、位置信号を発生させるための測定信号の適合が、両方の場(磁場および漂遊磁場)の方向の、例えば互いに逆方向の方向設定と比較して著しく簡略化されている。
【0026】
上記課題は、本発明によれば、さらに、請求項10の特徴を有する、アクチュエータ装置における漂遊磁場を補償するための方法によって解決される。アクチュエータ装置は、特にすでに前述したアクチュエータ装置である。
【0027】
アクチュエータ装置に関して挙げた利点および好適な構成は、方法に同様に転用することができ、また、その逆も然りである。
【0028】
方法は、特に前述したアクチュエータ装置によって実施される方法である。この方法は、以下のステップを含んでいる。
【0029】
まず、漂遊磁場に関連した量が補償ユニットによって検出される。なお、「漂遊磁場に関連した量」とは、好ましくは、作動中に少なくとも1つのアクチュエータコイルを通って流れるアクチュエータ電流である。
【0030】
そして、検出された量をベースとして補正量が生成される。この生成は、好ましくは、検出された量に応じて補正関数によって行われる。
【0031】
次いで、生成された補正量が、検出された測定信号に適用されることによって、この測定信号の適合が行われる。
【0032】
次いで、適合された測定信号をベースとして位置信号が発生し、調整器に伝送され、これによって、プランジャの瞬時の実際位置が、適合された測定信号を基礎とした位置信号によって適合される。したがって、測定信号の適合によって、漂遊磁場に起因した影響が補償され、これによって、プランジャが実際位置から、好ましくは偏差なしに、予め設定された目標位置に移動する。
【0033】
好適には、補償装置によって、特定された量から補正関数に基づき補正量が特定される。この補正量に基づき、測定信号が適合される。補正関数に基づき特定された補正量は校正値によって補正される。この校正値は、好ましくはオフセットおよび/またはゲイン係数である。
【0034】
合目的的な改良形態によれば、校正値を規定するために、プランジャが、予め設定された、特に既知の校正位置に移動する。この既知の校正位置は、特にプランジャの両方の終端位置である。なお、「終端位置」とは、それぞれプランジャが最大の変位時に占める長手方向における位置および長手方向と逆方向における位置を意味している。
【0035】
両方の終端位置におけるプランジャの位置は、一度はアクチュエータが通電されていることによって、つまり、漂遊磁場が存在していることによって特定され、一度はアクチュエータが通電されていないことによって、つまり、漂遊磁場が存在していない場合に特定される。この特定は、プランジャの瞬時の実際位置に関する情報を含む測定信号の偏差を簡単かつ正確に検出することができるという利点を有している。つまり、アクチュエータが通電されていない場合のプランジャの位置の検出によって、外乱としての漂遊磁場は存在せず、これによって、センサ装置が、プランジャの位置の正確な値を供給する。アクチュエータが通電されているものの、プランジャの位置が不変である際の測定信号の検出によって、漂遊磁場により影響が与えられる測定信号を検出することができる。したがって、これら両方の測定信号の比較が、補償すべき差、つまり、漂遊磁場に起因した影響を供給する。
【0036】
補足的には、次いで、補正関数をベースとして補正量が生成され、この補正量が、両方の終端位置のうちの一方の終端位置におけるプランジャの位置を表す測定信号に適用される。これによって、前述した差の、補正関数に起因した補償が達成されている。最後、さらに補足的には、補正関数によって適合された測定信号が、実際に検出された(つまり、アクチュエータが通電されていない場合に特定された)測定信号ともう一度比較され、これに基づき、可能なオフセットと、さらに、ゲイン係数とが特定される。
【0037】
したがって、両方の終端位置ひいてはプランジャの長手方向および長手方向と逆方向における各極端位置が前述のように校正されたことに基づき、測定信号を適合させるための校正を、プランジャの、これら両方の極端位置の間にある全ての位置に対して適用することができる。
【0038】
本発明の実施例を、以下で図面に基づき詳しく説明する。この図面は部分的に大幅に簡略化して示してある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】アクチュエータと調整ユニットとを備えたアクチュエータ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
電磁式のアクチュエータ装置2(以下、便宜上、アクチュエータ装置2とも略称する)はアクチュエータ4を有している。このアクチュエータ4は、少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイル6を有している。さらに、アクチュエータ4は、発生した少なくとも1つの電磁場に応じて長手方向Lにかつ長手方向Lと逆方向に移動可能なプランジャ8を有している。このプランジャ8は、本実施例ではピン状に形成されている。
【0041】
さらに、アクチュエータ装置2はセンサ装置10を有している。このセンサ装置10は、発生器要素12とセンサ要素14とを有している。発生器要素12は、本実施例ではプランジャ8に配置されている。特に、発生器要素12は、本実施例では、プランジャ8の上側の端部16に配置されている。センサ要素14は、発生器要素12によって発生した磁場18に応じて測定信号SMを発生させるように構成されている。この測定信号SMは、長手方向Lに沿ったプランジャ8の瞬時の実際位置に関する情報を含んでいる。本実施例では、発生器要素12は永久磁石として形成されている。さらに、本実施例では、センサ要素14はホールセンサとして形成されている。
【0042】
さらに、アクチュエータ装置2は調整ユニット20を有している。この調整ユニット20は調整器22を有している。この調整器22は、作動中、測定信号SMをベースとした位置信号SPに応じて、少なくとも1つの電磁場を発生させるための少なくとも1つのアクチュエータコイル6に制御電圧UAを印加するように構成されている。このためには、調整器22が、例えば電力増幅器24、本実施例では電圧源に接続されており、これによって、制御電圧UAを提供することができる。調整ユニット20によって、プランジャ8を瞬時の実際位置から、例えば信号SSollの形態で予め設定された目標位置に移動させることが可能となる。この目標位置は、例えば入力量として調整器22に伝送される。
【0043】
アクチュエータ装置2の作動中には、アクチュエータコイル6によって漂遊磁場26が発生する。この漂遊磁場26は、目標位置への実際位置の位置正確な調整が誤差を随伴してしまうほど、測定信号SMに影響を与える。
【0044】
この誤差の随伴を補償するために、調整ユニット20が、本実施例では補償装置28を有している。この補償装置28は、漂遊磁場26に関連した量Gを特定し、この量Gに応じて測定信号SMを適合させて調整器22に伝送するように構成されている。漂遊磁場26に関連した量Gとして、本実施例では、制御電圧に基づき少なくとも1つのアクチュエータコイル6に流れるアクチュエータ電流IAが利用される。測定信号SMの適合は、測定信号SMへの漂遊磁場に起因した影響が補償されるように行われる。つまり、補償装置28による補償に基づき、調整器22が、測定信号SMをベースとした、漂遊磁場26により影響が与えられていない位置信号SPを獲得する。言い換えると、外乱としての漂遊磁場26があたかも存在していないかのように、測定信号SMをベースとした位置信号SPが提供される。
【0045】
漂遊磁場26に関連した量G、本実施例ではアーマチュア電流IAの測定は、本実施例では、例えば電流測定ユニット30によって行われる。この電流測定ユニット30は、さらにアーマチュア電流IAを伝送するために、補償ユニット28に接続されている。
【0046】
漂遊磁場26に関連した量Gの直接的な特定を把握することができないかまたは一時的に把握することができない場合には、調整ユニット20が推定ユニット32を有している。この推定ユニット32は、漂遊磁場26に関連した量Gをアクチュエータ4の別の状態量Zに基づき特定するように構成されている。この別の状態量Zは、本実施例では、合目的的に同じくアーマチュア電流IAに関連しており、ひいては、同じく漂遊磁場26に関連している。したがって、別の状態量は、例えば、最後に測定されたアーマチュア電流IA、制御電圧UA、アクチュエータ温度、少なくとも1つのアクチュエータコイル6の測定もしくは推定された電気的な抵抗および/または測定もしくは推定されたインダクタンス、ならびに例えばプランジャ8のおおよその位置および/または速度である。
【0047】
本発明は、前述した実施例に限定されるものではない。それどころか、当業者であれば、ここから、本発明の対象を逸脱することなしに、本発明の別の変化形態を導き出すこともできる。さらに、特に実施例に関連して説明した全ての個々の特徴は、本発明の対象を逸脱することなしに、別の形態にも互いに組合せ可能である。
【符号の説明】
【0048】
2 電磁式のアクチュエータ装置
4 アクチュエータ
6 アクチュエータコイル
8 プランジャ
10 センサ装置
12 発生器要素
14 センサ要素
16 上側の端部
18 磁場
20 調整ユニット
22 調整器
24 電力増幅器
26 漂遊磁場
28 補償装置
30 電流測定ユニット
32 推定ユニット
L 長手方向
SM 測定信号
SSoll 目標位置信号
SP 位置信号
IA アーマチュア電流
G 量
UA 制御電圧
Z 状態量
【国際調査報告】