IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エー.オン、スベリゲ、アクチボラグの特許一覧

特表2022-504671一対の導管を含むトレンチを充填するための方法、およびこのような充填されたトレンチ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】一対の導管を含むトレンチを充填するための方法、およびこのような充填されたトレンチ
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/028 20060101AFI20220105BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20220105BHJP
   F24D 10/00 20220101ALI20220105BHJP
【FI】
F16L1/028 J
F16L59/02
F24D10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021519794
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019077754
(87)【国際公開番号】W WO2020078891
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】18200378.0
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500377871
【氏名又は名称】エー.オン、スベリゲ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】E.ON Sverige Aktiebolag
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ペール、ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ、スコグストレム
(72)【発明者】
【氏名】フレドリク、ローゼンクビスト
(72)【発明者】
【氏名】ベングト、リンドフ
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB12
3H036AD09
3H036AE13
(57)【要約】
充填されたトレンチが開示される。充填されたトレンチは、それぞれの導管(3a、3b)において異なる温度の流体を送達するための一対の導管(3a、3b)であって、充填材料で囲まれている、一対の導管(3a、3b)と、第1の種類の充填材料(4a)で充填された第1の部分(5a)であって、充填されたトレンチの第1の充填された部分(5a)は、一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めている、第1の部分(5a)と、第2の種類の充填材料(4b)で充填された第2の部分(5b)とを含む。第1の種類の充填材料(4a)は、第1の熱伝導係数を有し、第2の種類の充填材料(4b)は、それよりも高い第2の熱伝導係数を有する。更に、このような充填されたトレンチを充填するための方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填されたトレンチであって、
それぞれの導管(3a、3b)において異なる温度の流体を送達するための一対の導管(3a、3b)であって、充填材料で囲まれている、前記一対の導管(3a、3b)と、
第1の種類の粒子状の充填材料(4a)で充填された第1の部分(5a)であって、前記充填されたトレンチの前記第1の充填された部分(5a)は、前記一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めている、前記第1の部分(5a)と、
第2の種類の粒子状の充填材料(4b)で充填された第2の部分(5b)とを含み、
前記第1の種類の前記充填材料(4a)が、第1の熱伝導係数を有し、第2の種類の前記充填材料(4b)が、第2の熱伝導係数を有することを特徴とし、前記第1の熱伝導係数は、前記第2の熱伝導係数よりも小さい、充填されたトレンチ。
【請求項2】
前記第1の種類の前記粒子状の充填材料の前記熱伝導係数が、1W/mKよりも低い、請求項1に記載の充填されたトレンチ。
【請求項3】
前記第1の種類の前記粒子状の充填材料の前記熱伝導係数が、0.58W/mKよりも低い、請求項1に記載の充填されたトレンチ。
【請求項4】
前記第1の種類の前記粒子状の充填材料の前記熱伝導係数が、0.3W/mK以下である、請求項1に記載の充填されたトレンチ。
【請求項5】
前記第2の種類の前記粒子状の充填材料の前記熱伝導係数が、1W/mKよりも高い、請求項1~4のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項6】
前記第2の種類の前記粒子状の充填材料の前記熱伝導係数が、1.75W/mKよりも高い、請求項1~4のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項7】
前記第2の種類の前記粒子状の充填材料の前記熱伝導係数が、3.5W/mK以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項8】
前記第1の部分(5a)および前記第2の部分(5b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、互いに水平方向に分離している、請求項1~7のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項9】
前記第1の部分(5a)および前記第2の部分(5b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、互いに垂直方向に分離している、請求項1~8のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項10】
前記第1の部分(5a)が、前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)の一方を囲んでいる、請求項1~9のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項11】
前記第2の部分(5b)が、前記一対の導管(3a、3b)の他方の導管(3a、3b)を、少なくとも部分的に囲んでいる、請求項10に記載の充填されたトレンチ。
【請求項12】
前記第2の部分(5b)が、前記一対の導管(3a、3b)の他方の導管(3a、3b)を囲んでいる、請求項10に記載の充填されたトレンチ。
【請求項13】
前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、平行に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項14】
前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れている、請求項1~13のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項15】
前記第1の部分(5a)が、前記トレンチの中央に配置され、前記第2の部分(5b)が、前記第1の部分(5a)の2つの側面に接する前記第1の部分(5a)の側面に位置している、請求項1~14のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項16】
前記充填されたトレンチのカバーとして配置される第3の部分(7)を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項17】
前記一対の導管(3a、3b)が、プラスチックの管類で形成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の充填されたトレンチ。
【請求項18】
それぞれの導管において異なる温度の流体を送達するための一対の導管(3a、3b)を含む、トレンチ(1)を充填するための方法であって、前記方法は、
前記一対の導管(3a、3b)が粒子状の充填材料(4a、4b)によって囲まれるように、前記トレンチ(1)を前記粒子状の充填材料(4a、4b)で充填すること(S506)を含み、
充填する前記動作は、
前記トレンチ(1)の第1の充填された部分(5a)が形成されるように、前記トレンチを第1の種類の粒子状の充填材料(4a)で充填することであって、前記トレンチ(1)の前記第1の充填された部分(5a)は、前記一対の導管(3a、3b)の間の空間を占めていることと、
前記トレンチ(1)の第2の充填された部分(5b)が形成されるように、前記トレンチ(1)を第2の種類の粒子状の充填材料(4b)で充填することとを含み、
前記第1の種類の前記充填材料(4a)が、第1の熱伝導係数を有し、前記第2の種類の前記充填材料(4b)が、第2の熱伝導係数を有し、前記第1の熱伝導係数は、前記第2の熱伝導係数よりも小さい方法。
【請求項19】
地面(9)から材料を取り除くことによって前記トレンチ(1)を形成すること(S502)を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、前記一対の導管(3a、3b)の前記導管(3a、3b)が、前記トレンチ(1)内で互いに平行に配置されること(S504)を更に含む、請求項18または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一対の導管を含むトレンチを充填するための方法、およびこのような充填されたトレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
地域暖房システムは、熱が生成されるところから遠く離れた多数の場所に、暖房を分配するためのシステムである。一般に、システムは、最も一般的には水である、加熱された伝熱媒体を多数の場所に分配する導管を備えた中央の熱生成部位からなり、加熱された伝熱媒体からその場所に熱を伝達するためのものである。伝熱媒体は、これを加圧することにより分配される。導管は、加熱された伝熱媒体が供給される送出導管と、使用後の伝熱媒体を送り返す戻り導管とで対になって配置される。加熱された伝熱媒体を送出導管から取り出し、次いで戻り導管に送り返すことにより、それぞれの遠隔地で加熱された伝熱媒体が利用される。
【0003】
システムの構成を単純化するために、一対の導管は、互いに隣接して平行に配置される。多くの場合、一対の導管は、加熱された伝熱媒体を加圧して運ぶため、それらを外界から隔離するために、ならびに外界を導管から隔離するために地下に埋められる。このようにするために、トレンチが地面に掘られ、2本の導管のそれぞれがトレンチ内に置かれて、それから充填される。導管は、互いに接触しないように、互いに離れて置かれている。トレンチには、導管の軸方向の熱の力が充填材料によって吸収することができるように選択された材料が充填されている。このことは、導管と充填材料との間の摩擦が軸方向の熱の力を十分に吸収するような充填材料を選択することによって行われる。
【0004】
地域暖房システムにおける最も大きな問題のうちの1つは、システムの熱の損失である。特に、システムが加熱された伝熱媒体を長距離にわたって輸送するときに損失が生じる。熱損失を減少させるために、導管は断熱されている。このことは、断熱材で導管を直接覆って囲むこと、または断熱箱の中に導管を配置することのいずれかによって行われる。また、送出導管および戻り導管は互いに影響を及ぼし合うこともあり、これにより送出ラインからの熱の損失が増加することもある。熱損失の少ない地域暖房システムが、継続的に必要とされている。
【0005】
地域暖房システムに加えて、地域冷房システムも存在する。これらのシステムは、類似の様式で機能するが、加熱された伝熱媒体ではなく、冷却された伝熱媒体を分配する。一般に、地域冷房システムは、中央部位で伝熱媒体を冷却し、導管を通じて遠隔地に冷却された伝熱媒体を分配する。地域暖房におけるように、伝熱媒体は、これを加圧することによって分配される。導管は、冷却された伝熱媒体が供給される送出導管と、使用後の伝熱媒体を送り返す戻り導管とで対になって配置される。冷却された伝熱媒体を送出導管から取り出し、次いで戻り導管に送り返すことにより、それぞれの遠隔地で冷却された伝熱媒体が利用される。地域冷房システム用の導管は、地域暖房システム用の導管と類似の様式で配置される。
【0006】
地域冷房システムでは、最も大きな問題のうちの1つは、システムの熱の利得である。特に、システムが冷却された伝熱媒体を長距離にわたって輸送するときに利得が生じる。熱利得を減少させるために、導管は断熱されている。このことは、断熱材で導管を直接覆って囲むこと、または断熱箱の中に導管を配置することのいずれかによって行われる。また、送出導管および戻り導管は互いに影響を及ぼし合うこともあり、これにより送出ラインの熱の利得が増加することもある。熱損失/利得の少ない地域暖房システムが、継続的に必要とされている。
【0007】
多くの場合、地域暖房導管および地域冷房導管は、互いに隣接して配置されている。これらの場合における問題は、地域暖房システムの導管と、地域冷房システムの導管とが、互いに影響を及ぼす可能性があるということである。これは両方のシステムにとっても問題である。
【0008】
地域暖房システムおよび地域冷房システムに加えて、現在、国際公開第2017076868(A1)号に記載の地域熱エネルギー分配システムが開発されている。このシステムでは、高温導管と低温導管とが、同一の地域熱エネルギー分配システム内で、熱および冷熱の両方を分配するために使用されている。このシステムの問題点は、高温導管と高温導管とが互いに影響を及ぼす可能性があることである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、温度の損失および/または利得が減少した、加熱および/または冷却された伝熱媒体を分配するためのシステムを提供することである。
【0010】
第1の態様によれば、充填されたトレンチが提供される。充填されたトレンチは、それぞれの導管において異なる温度の流体を送達するための一対の導管であって、充填材料によって囲まれている、一対の導管と、第1の種類の粒子状の充填材料で充填された第1の部分であって、充填されたトレンチの第1の充填された部分が、一対の導管の間の空間を占めている、第1の部分と、第2の種類の粒子状の充填材料で充填された第2の部分とを含み、第1の種類の充填材料が第1の熱伝導係数を有し、第2の種類の充填材料が第2の熱伝導係数を有する。
【0011】
このような充填されたトレンチによって、充填材料それ自体により、導管を互いに熱的に断熱することができる。地域暖房システムまたは地域冷房システムの送出導管を、同一の地域暖房システムまたは地域冷房システムの戻り導管から、より良好に断熱することができ、逆も同様である。また、地域暖房システムの導管は、地域冷房システムの導管から断熱することができ、逆も同様である。また、国際公開第2017076868(A1)号に記載されているように、地域熱エネルギー分配システムの導管を互いに断熱することができる。これは、第1の部分が導管の間の空間を占めており、第2の種類の充填材料で充填された第2の部分に対して異なる熱伝導係数を有するためである。これにより、温度の利得または損失が減少した、伝熱媒体を分配するためのシステムを構築することが可能となり得る。
【0012】
更に、この充填されたトレンチによる別の考えられる利点としては、導管の漏出を見つけ出すことが容易になり得るということである。これは、流体の漏出が、「裸の」導管から充填材料に直接漏出するからである。断熱層を含む導管、または断熱箱の中で断熱された導管を扱う場合、導管から漏出する流体は、漏出部分から移動して、その後に充填材料に漏出する可能性がある。
【0013】
その上、「裸の」導管の修復は、より容易に行うことも可能となる。これは、漏出を修復する前に断熱材を剥ぎ取る必要がなく、その後、同様に断熱層を修復する必要がないからである。
【0014】
第1の熱伝導係数は、第2の熱伝導係数よりも小さくてもよい。これにより、一対の導管の間の断熱性を、更に良好に高めることができる。
【0015】
第1の部分および第2の部分は、充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、互いに水平方向に分離していてもよい。これによって、互いに隣接して水平方向に配置されたトレンチの異なる部分を互いに断熱することができるトレンチを提供することが可能となる。
【0016】
第1の部分および第2の部分は、充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、互いに垂直方向に分離していてもよい。これによって、互いに隣接して垂直方向に配置されたトレンチの異なる部分を互いに断熱することができるトレンチを提供することが可能となる。また、これにより、最初に1つの部分を加え、次いでその上に他の部分を加えることによってトレンチを充填することができるため、充填することが簡単なトレンチを可能にする。
【0017】
第1の部分は、一対の導管のうちの1つの導管を囲んでいてもよい。これによって、充填材料により、導管のうちの一方をその周囲のすべてから断熱することができ、導管とその周囲との間の熱の相互作用を制御することができる。
【0018】
第2の部分は、一対の導管のうちの他方の導管を、少なくとも部分的に囲んでいてもよい。これによって、他方の導管とその周囲との間の熱の相互作用を制御することができる。
【0019】
第2の部分は、一対の導管のうちの他方の導管を囲んでいてもよい。これによって、他方の導管とその周囲との熱の相互作用を、更に良好に制御することができる。
【0020】
充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、一対の導管の導管は、平行に配置されてもよい。これによって、トレンチ内に導管を容易に配置することができ、トレンチを長距離にわたって延在させることができる。また、導管の間の距離を一定に保つことができ、これにより、トレンチの充填をより良好に制御することができる。このことにより、充填材料によって導管の互いの断熱性をより良好に制御することも可能となる。一対の導管は、延在部分のすべてを通して平行に配置される必要はないということが理解される。
【0021】
一対の導管の導管は、充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、水平方向に、垂直方向に、またはその両方の、水平方向および垂直方向に互いに離れていてもよい。これによって、導管の異なる設定が可能となる。それらを水平方向に離れさせることにより、他方の導管に接触したり、または到達したり、または干渉したりする必要なく、導管の一方に容易に到達することができる。また、このことにより、導管が垂直方向に離れないようにすることができ、これにより深さの小さいトレンチが可能となる。それらを垂直方向に離れさせることにより、異なる充填材料で導管を容易に囲むことが可能になる。これは、下方の導管の周りに充填材料を最初に加え、次いで別の充填材料を上部、つまり導管の最上部の周りに加えることにより行われる。また、このことにより、導管が水平方向に離れないようにすることができ、これにより幅の小さいトレンチが可能となる。導管を水平方向と垂直方向との両方に離すことにより、上記の効果および利点を組み合わせることができる。対角線方向に離れているのではなく、水平方向と垂直方向の両方において導管を互いにより近づけることができるので、より狭くかつより浅い、その両方のトレンチも可能となる。
【0022】
第1の部分は、トレンチの中央に配置されてもよく、第2の部分は、第1の部分の側面に位置してもよい。これによって、第2の部分の別の効果を利用しながら、第1の部分の断熱効果を利用して、導管を互いに断熱することが可能となる。例えば、第2の部分は、より安価な材料であってよく、またはより優れた構造的な品質を提供してもよく、またはトレンチの周囲環境に対してより良好な断熱をもたらしてもよく、またはトレンチの周囲環境との相互作用、例えば熱の相互作用の増大をもたらしてもよい。トレンチの周囲環境との熱の相互作用が増大することにより、トレンチの周囲環境において熱または冷熱を蓄積することが可能となり得る。
【0023】
トレンチは、トレンチのカバーとして配置される、第3の部分を含んでもよい。これによって、地上領域と接触しているトレンチの一部である可能性のある上部から、トレンチを保護することができる。
【0024】
一対の導管は、プラスチックの管類によって形成されていてもよい。これによって、導管は、安価で耐久性がある、またはその両方の性質を備えることができる。トレンチの充填材料によって断熱性を提供することができるため、プラスチックの管類には、更なる断熱性を提供する必要がなくてもよい。
【0025】
第2の態様によれば、それぞれの導管において異なる温度の流体を送達するための一対の導管を含む、トレンチを充填するための方法が提供される。方法は、一対の導管を充填材料で囲むように、トレンチを充填材料で充填することを含む。充填する動作には、トレンチの第1の充填された部分が形成されるように、トレンチを第1の種類の充填材料で充填することであって、トレンチの第1の充填された部分は、一対の導管の間の空間を占めていることと、トレンチの第2の充填された部分が形成されるように、トレンチを第2の種類の充填材料で充填することとが含まれる。第1の種類の充填材料は、第1の熱伝導係数を有し、第2の種類の充填材料は、第2の熱伝導係数を有する。第1の熱伝導係数は、第2の熱伝導係数よりも小さくてもよい。
【0026】
このような方法によって、充填材料それ自体により、導管を互いに熱的に断熱するトレンチを構築することができる。これにより、温度の利得または損失が減少した、加熱または冷却された伝熱媒体を分配するためのシステムを構築することが可能となり得る。
【0027】
方法は更に、地面から材料を取り除くことによってトレンチを形成することを含み得る。これにより、この方法によってトレンチが簡単な様式で地面に形成され、次いでトレンチを充填することができるということが提供され得る。更に、これにより、導管が地下に配置されるということが提供され得る。
【0028】
充填されたトレンチの水平上面断面図で確認されるように、方法は、一対の導管の導管を、トレンチ内で互いに平行に配置することを更に含み得る。このような様式で導管を配置することにより、トレンチを長距離にわたって延在させることができる。また、導管の間の距離が一定に保たれ、これにより、トレンチの充填をより良好に制御することが可能となる。このことにより、充填材料によって導管の互いの断熱性をより良好に制御することも可能となる。
【0029】
充填されたトレンチの上記で言及された特徴は、適用可能であれば、この第2の態様にも適用する。過度な繰り返しを避けるため、上記を参照されたい。
【0030】
本発明の更なる適用性の範囲は、下記で与えられる発明を実施するための形態により明らかになるであろう。しかしながら、発明を実施するための形態および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に実例として与えられているということを理解すべきであり、これによって、この発明を実施するための形態から、本発明の範囲内の種々の変更および変形が、当業者には明らかとなるであろう。
【0031】
従って、デバイスおよび方法は変更される可能性があるため、本発明は、特定の記載されたデバイスの構成部品、または記載された方法の動作に限定されるものではないことを理解すべきである。本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈によって明確に指示されない限り、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1つまたは複数の要素があることを意味するものと意図されるということに留意しなければならない。従って、例えば、「ユニット(a unit)」または「ユニット(the unit)」に対する言及は、いくつかのデバイス等を含み得る。更に、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」という語、および類似の表現は、他の要素または工程を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
ここで、実施形態を示す添付図面を参照して、本発明の上記および他の態様をより詳細に説明する。図は、特定の実施形態に限定するものとして解釈すべきではなく、むしろ、説明および理解のために用いられる。
【0033】
図に例示されるように、層および領域のサイズは例示の目的のために誇張される場合があり、従って、実施形態の一般的構造を例示するために提供される。同様の参照番号は、全体を通して同一の要素を意味する。
【0034】
図1】一対の導管を含む、充填されたトレンチの垂直側面断面図である。
図2】一対の導管を含む、充填されたトレンチの水平上面断面図である。
図3a-c】対応するトレンチ内で異なる位置にある一対の導管を示す、トレンチの垂直側面断面図である。
図4a-f】対応するトレンチの異なる位置にある第1および第2の部分を示す、トレンチの垂直側面断面図である。
図5】充填材料でトレンチを充填するための方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで、本発明の現在の好ましい実施形態が示される添付図面を参照して、本発明を以下で更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実装されてもよく、本明細書に記載された実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、徹底性および完全性のために提供され、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるために提供されている。
【0036】
図1には、一対の導管3a、3bを含む、充填されたトレンチ1の垂直側面断面図が示されている。トレンチ1は、地面9に形成されている。トレンチ1には、充填材料4a、4bが充填されている。導管3a、3bは、伝熱媒体を運ぶように構成されている。導管3a、3bは通常、異なる温度の伝熱媒体を運んでいる。導管3a、3bは、地域暖房システムの導管であってよい。導管3a、3bは、地域冷房システムの導管であってよい。導管3a、3bは、1つは地域暖房システムの導管であってよく、1つは地域冷房システムの導管であってよい。導管3a、3bは、国際公開第2017076868(A1)号に示される地域熱エネルギー分配システムの高温導管および低温導管であってもよい。一対の導管3a、3bを、充填材料4a、4bが囲んでいる。好ましくは、充填材料4a、4bは、一対の導管3a、3bを完全に囲んでいる。従って、一対の導管3a、3bは、充填されたトレンチの垂直側面断面図で確認されるように、そのすべての側面において充填材料4a、4bが周囲を囲んでいる。
【0037】
トレンチ1は、第1の部分5aおよび第2の部分5bを含む。第1の部分5aは、一対の導管3a、3bの間の空間を占めている。第1の部分5aには、第1の種類の充填材料4aが充填されている。第2の部分5bには、第2の種類の充填材料4bが充填されている。第1の種類の充填材料4aおよび第2の種類の充填材料4bは、粒子材料または粒子状材料であってよい。従って、トレンチを充填するために使用される充填材料は、粒子からなる材料であってよい。粒子のサイズは、0.1ミリメートル~5センチメートルまでの範囲であってよく、好ましくはmmの範囲であってもよい。第1の種類の充填材料4aは、第1の熱伝導係数を有する。第2の種類の充填材料4bは、第2の熱伝導係数を有する。第1の熱伝導係数は、第2の熱伝導係数よりも小さくてもよい。従って、第1の部分5aは、一対の導管3a、3bを互いに熱的に断熱することができる。
【0038】
今日では、導管を含むトレンチに一般的な充填材料は、湿った砂である。湿った砂は、0.58~1.75W/mKの範囲の熱伝導係数を有する。従って、約1W/mKである。
【0039】
第1の部分の充填材料は、湿った砂よりも低い熱伝導係数を有する材料であってよい。従って、第1の種類の充填材料の熱伝導係数は、1W/mKよりも低くてもよく、好ましくは0.58W/mKよりも低くてもよい。例えば、第1の種類の充填材料の熱伝導係数は、0.3W/mK以下であってよい。非限定的な例によれば、第1の種類の充填材料は石炭を含んでもよい。石炭の熱伝導係数は、0.26~0.63W/mKである。別の非限定的な例によれば、第1の種類の充填材料は泥炭を含んでもよい。第1の種類の充填材料は、異なる材料の混合物であってよい。第1の種類の充填材料は湿った砂を含んでもよい。
【0040】
第2の部分の充填材料は、湿った砂よりも高い熱伝導係数を有する材料であってよい。従って、第2の種類の充填材料の熱伝導係数は、1W/mKよりも高くてもよく、好ましくは1.75W/mKよりも高くてもよい。例えば、第2の種類の充填材料の熱伝導係数は、3.5W/mK以上であってよい。非限定的な例によれば、第2の種類の充填材料は塩を含む。塩の熱伝導係数は、5.28~6.38W/mKである。別の非限定的な例によれば、第2の種類の充填材料は珪岩を含んでもよい。珪岩の熱伝導係数は、3.60~6.62W/mKである。第2の種類の充填材料は、異なる材料の混合物であってよい。第2の種類の充填材料は湿った砂を含んでもよい。
【0041】
トレンチ1は、トレンチ1のカバーとして配置される、第3の部分7を含んでもよい。第3の部分は、第3の種類の充填材料で充填されていてもよい。第3の種類の充填材料は、第1および第2の種類の充填材料の熱伝導係数とは異なる熱伝導係数を有してもよい。第3の部分7は、例えば、そこに関連する道床および表面層を備える道路に相当するものであってもよい。
【0042】
図2では、トレンチ1の一部の図1におけるA-Aに沿った水平断面図が示されている。図示されるように、導管3a、3bは、トレンチ1内で平行に配置されていてもよい。一対の導管3a、3bは、トレンチ1に沿って延在していてもよい。
【0043】
図3a~cでは、異なるトレンチ1の側面断面図が図示されている。一対の導管3a、3bは、それぞれのトレンチ1内に配置されている。一対の導管3a、3bは、トレンチ1内に充填材料がない状態で示されている。図3a~cに図示されるように、一対の導管3a、3bは、トレンチ1内で異なるように位置付けられていてもよい。図3a~cのそれぞれは、トレンチ1内の一対の導管3a、3bが異なる位置付けにある、トレンチ1の垂直側面断面図である。
【0044】
更に、図3a~3cにも図示されるように、導管3a、3bは、互いに離れて配置されていてもよい。従って、導管3a、3bは互いに接触していない。その上、上記で言及したように、導管3a、3bはまた、導管3a、3bの長手方向の延在部分で確認されるように、平行に配置されていてもよい。
【0045】
図3aに図示されるように、一対の導管3a、3bは、トレンチ1の同一の深さに配置されていてもよい。更に、一対の導管3a、3bは、トレンチ1の垂直側面断面図で確認されるように、互いに水平方向に離れていてもよい。
【0046】
図3bに図示されるように、一対の導管3a、3bは、トレンチ1の異なる深さに配置されていてもよい。更に、一対の導管3a、3bは、トレンチ1の垂直側面断面図で確認されるように、互いに垂直方向に離れていてもよい。
【0047】
図3cに図示されるように、一対の導管3a、3bは、トレンチ1の異なる深さに配置されてもよく、すなわち、トレンチ1の垂直側面断面図で確認されるように、互いに垂直方向に離れていても、トレンチ1の垂直側面断面図で確認されるように、互いに水平方向に離れていても、その両方であってよい。従って、一対の導管3a、3bは、トレンチ1の垂直側面断面図で確認されるように、互いに水平方向および垂直方向の両方で離れていてもよい。
【0048】
導管3a、3bは、プラスチックの管類で形成されていてもよい。あるいは、導管は、鋼管で形成されていてもよい。
【0049】
図4a~fでは、異なるトレンチ1の側面断面図が図示されている。トレンチ1は、トレンチ1に充填材料の対の導管がない状態で示されている。その代わりに、図4a~fは、異なる充填材料で充填されている部分にトレンチを分割するための、様々な可能性を図示している。それぞれのトレンチに対して、第1の部分5aには、第1の種類の充填材料4aが充填されるように構成され、第2の部分5bには、第2の種類の充填材料4bが充填されるように構成されている。図4a~fに図示されるように、トレンチ1の第1の部分5aおよび第2の部分5bは、トレンチ1内で異なるように配置されていてもよい。トレンチ1の第1の部分5aおよび第2の部分5bのすべての配置で共通しているのは、トレンチ1の第1の部分5aが一対の導管3a、3bの間の空間を占めているということである。図5a~fでは一対の導管3a、3bが図示されていないが、これは、第1および第2の部分5a、5bがどのように互いに関係し得るかをよりよく図示するためである。
【0050】
図a~cに示される一対の導管3a、3bの代替的な相対的な位置付け、および図4a~fに示される第1および第2の部分5a、5bの相対的な位置付けは、様々な方法で充填されたトレンチ1内で組み合わせてもよい。一対の導管3a、3bの一方または両方が、第1の部分に囲まれていてもよい。一対の導管3a、3bの一方または両方が、第1の部分5aと第2の部分5bとの間に配置されていてもよく、部分5a、5bのそれぞれと接触していてもよい。一対の導管3a、3bの一方が、第2の部分5bに囲まれていてもよい。第1の部分5aが一対の導管3a、3bの間の空間を占めている状態で、一対の導管3a、3bの両方が第2の部分5bに囲まれていてもよい。
【0051】
更に、トレンチ1の第1の部分5aおよび第2の部分5bのすべての配置で共通しているのは、部分5a、5bの充填材料が共に、一対の導管3a、3bを完全に囲んでいるということであり得る。第1および第2の部分5a、5bは、互いに隣接して配置されていてもよい。第1および第2の部分5a、5bは、互いに接触していてもよい。第1および第2の部分5a、5bは共に、トレンチ1を完全に充填していてもよい。
【0052】
図4aに図示されるように、第1および第2の部分5a、5bは、互いに水平方向に分離していてもよい。第1および第2の部分5a、5bのそれぞれは、互いに水平方向に隣接してトレンチ1の部分を占めていてもよい。
【0053】
図4bに図示されるように、第1および第2の部分5a、5bは、互いに垂直方向に分離していてもよい。それぞれの部分5a、5bは、互いに垂直方向に隣接してトレンチ1の部分を占めていてもよい。
【0054】
図4cに図示されるように、第1の部分5aが、トレンチ1の中央に配置されていてもよい。更に、第2の部分5bが、トレンチ1の周辺に配置されていてもよい。トレンチ1の垂直断面図で確認されるように、第1の部分5aは、第2の部分5bによって囲まれていてもよい。トレンチ1の垂直断面図で確認されるように、第1の部分5aは、第2の部分5bによって完全に囲まれていてもよい。
【0055】
図4dに図示されるように、第1の部分5aは、トレンチ1の垂直断面図の水平方向で確認されるように、トレンチ1の中央に配置されていてもよい。第1の部分5aは更に、トレンチ1の垂直断面図を垂直方向に貫いて延在してもよい。第2の部分5bは、第1の部分5aの2つの側面に接する第1の部分5aの側面に位置していてもよい。トレンチ1の垂直断面図の水平方向で確認されるように、第2の部分5bは、第1の部分5aの2つの側面に接する第1の部分5aの側面に位置していてもよい。第2の部分5bは、トレンチ1の2つの部分を占めていてもよい。第2の部分5bは、第1の部分5aの2つの側面に接してトレンチ1の部分を占めていてもよい。
【0056】
図4eに図示されるように、第1の部分5aは、トレンチ1の垂直断面図の垂直方向で確認されるように、トレンチ1の中央に配置されていてもよい。第1の部分5aは、トレンチ1の垂直断面図を水平方向に貫いて延在してもよい。第2の部分5bは、第1の部分5aの2つの側面に接する第1の部分5aの側面に位置していてもよい。トレンチ1の垂直断面図の垂直方向で確認されるように、第2の部分5bは、第1の部分の2つの側面に接する第1の部分の側面に位置していてもよい。第2の部分5bは、トレンチ1の2つの部分を占めていてもよい。第2の部分5bは、第1の部分5aの2つの側面に接してトレンチ1の部分を占めていてもよい。
【0057】
図4fに図示されるように、第1および第2の部分5a、5bは、トレンチ1の垂直断面図で確認されるように、互いに対して対角線上に配置されていてもよい。
【0058】
図5に関連して、ここで、地域暖房および/または暖房を送達するための一対の導管を含むトレンチを充填するための方法を説明する。
【0059】
方法は、以下の動作を含む。S506では、トレンチを異なる種類の充填材料で充填する。この充填は、第1の種類の充填材料と第2の種類の充填材料とでトレンチを充填することによって行われる。トレンチの第1の部分を形成し、この第1の部分がトレンチ内に配置される一対の導管の間の空間を占めるように、第1の種類の充填材料による充填を行う。トレンチの第2の部分を形成するように、第2の種類の充填材料による充填を行う。
【0060】
方法は更に、S502にて、地面から材料を取り除くことによってトレンチを形成することを含み得る。
【0061】
方法は更に、S504にて、トレンチに一対の導管を置くことを含み得る。
【0062】
方法は、トレンチに導管を置く前に、トレンチを充填材料で部分的に充填することを含み得る。
【0063】
一対の導管の導管を順番にトレンチ内に置いてもよく、次いで、方法は、一対の導管のそれぞれの導管を置く間に、トレンチを部分的に充填することを含み得る。
【0064】
方法は、トレンチのカバーとして配置される、第3の部分を形成することを含み得る。第3の部分は、トレンチを第3の種類の充填材料で充填することによって形成されてもよい。
【0065】
本発明は、上記で説明した好ましい実施形態に必ずしも限定されるものではないことが、同業者により理解される。反対に、添付の特許請求の範囲内において多くの変形および変更が可能である。
【0066】
例えば、第1の熱伝導係数は、第2の熱伝導係数よりも高くてもよい。
【0067】
更に、第1の種類の充填材料4aは、第1の所定の色で着色されていてもよい。第2の種類の充填材料4bは、第2の所定の色で着色されていてもよい。第2の所定の色は、第1の所定の色とは異なっていてもよい。第1および第2の種類の充填材料を着色することによって、一対の導管の近くで地面を掘っているインフラストラクチャ施工者が、容易に一対の導管の存在に気づくことができる。異なる種類の充填材料に異なる色が付いていることにより、トレンチの特定の種類の部分を容易に見つけることができる。
【0068】
その上、方法は、トレンチ内に配置されるスペーサーの壁を置き、スペーサーの壁の一方の側では第1の種類の充填材料でトレンチを充填し、他方の側では第2の種類の充填材料でトレンチを充填することを含んでもよい。次いで、スペーサーの壁を取り除いてもよい。
【0069】
加えて、開示された実施形態に対する変形は、特許請求される発明を実施するに際して、図面、開示および添付の特許請求の範囲を検討することにより、当業者によって理解および達成され得る。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5
【国際調査報告】