(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】耳適応症の治療のためのAAV1ベクター及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20220105BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220105BHJP
C12N 15/66 20060101ALI20220105BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220105BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20220105BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20220105BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220105BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220105BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/66 Z
A61K48/00
A61P27/16
A61K31/7088
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519808
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(85)【翻訳文提出日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 US2019055979
(87)【国際公開番号】W WO2020077295
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520299511
【氏名又は名称】デシベル セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DECIBEL THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】エリス、キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】グエン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】パレルモ、アダム
(72)【発明者】
【氏名】プレーゲルニッヒ、ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】シー、フーシン
(72)【発明者】
【氏名】ホイットン、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
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4C086MA05
4C086MA70
4C086NA14
4C086ZA34
(57)【要約】
本発明は、複数の内耳細胞型を形質導入するために使用することができるAAV1ベクター、ならびに難聴、聴覚消失、耳鳴、及び前庭機能障害の治療のためのそれらの使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象において発達した内耳細胞を形質導入する方法であって、前記対象に、有効量の血清型1アデノ随伴ウイルス(AAV1)ベクターを、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される3つ以上の内耳細胞型を形質導入する量で投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される5つ以上の細胞型を形質導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される10以上の細胞型を形質導入する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される15以上の細胞型を形質導入する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される20以上の細胞型を形質導入する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記AAV1ベクターが、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%を形質導入する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記AAV1ベクターが、前記対象の中耳または内耳に局所投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記AAV1ベクターが、経鼓膜または鼓膜内投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記AAV1ベクターが、表5のプロモーターのリストから選択されるプロモーターを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記AAV1ベクターが、偏在的なプロモーターを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記AAV1ベクターが、表2のリストから選択されるポリヌクレオチドを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ヒト対象の支持細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、GFAPプロモーター、GLASTプロモーター、HES1プロモーター、JAG1プロモーター、NOTCH1プロモーター、LGR5プロモーター、SOX2プロモーター、HES5プロモーター、及びSOX9プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドが、Sox9、Spalt様転写因子2(Sall2)、カルモジュリン結合転写活性化因子1(Camta1)、YRPWモチーフ2を有するHes関連ファミリーBHLH転写因子2(Hey2)、Gata結合タンパク質2(Gata2)、YRPWモチーフ1を有するHes関連ファミリーBHLH転写因子l(Hey1)、セラミドシンターゼ2(Lass2)、SRY-Box10(Sox10)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、Cut様ホメオボックス1(Cux1)、核受容体サブファミリー2群Fメンバー(Nr2f1)、HesファミリーBHLH転写因子1(Hes1)、RAR関連オーファン受容体B(Rorb)、Junがん原遺伝子AP-1転写因子サブユニット(Jun)、亜鉛フィンガータンパク質667(Zfp667)、LIMホメオボックス(Lhx3)、新生ヘリックス-ループ-ヘリックス1(Nhlh1)、MAX二量体化タンパク質4(Mxd4)、亜鉛フィンガーMIZ型含有1(Zmiz1)、ミエリン転写因子1(Myt1)、シグナル伝達兼転写活性化因子3(Stat3)、BarH様ホメオボックス1(Barhl1)、胸腺細胞選択関連高移動度群ボックス(Tox)、Prosperoホメオボックス1(Prox1)、核因子I A(Nfia)、甲状腺ホルモン受容体ベータ(Thrb)、MYCLがん原遺伝子BHLH転写因子(Mycl1)、リジン脱メチル化酵素5A(Kdm5a)、CAMP応答配列結合タンパク質3様4(Creb3I4)、ETSバリアント1(Etv1)、父性発現3(Peg3)、BTBドメイン及びCNCホモログ2(Bach2)、ISL LIMホメオボックス(Isl1)、亜鉛フィンガー及びBTBドメイン含有38(Zbtb38)、肢芽及び心臓発達(Lbh)、Tubby Bipartite転写因子(Tub)、ユビキチンC(Hmg20)、RE1サイレンシング転写因子(Rest)、亜鉛フィンガータンパク質827(Zfp827)、AF4/FMR2ファミリーメンバー3(Aff3)、PBX/Knotted1ホメオボックス2(Pknox2)、ATリッチ相互作用ドメイン3B(Arid3b)、MLX相互作用タンパク質(Mlxip)、亜鉛フィンガータンパク質(Zfp532)、IKAROSファミリー亜鉛フィンガー2(Ikzf2)、Spalt様転写因子1(Sall1)、SIXホメオボックス2(Six2)、Spalt様転写因子3(Sall3)、Lin-28ホモログB(Lin28b)、Pou4f3、調節因子X7(Rfx7)、Atoh1、アミノ酸328、331、及び/または334で変異を含むAtoh1バリアント、Gfi1、Sox4、Bdnf、Ntf3、Sox11、Tead2、Yap1、またはヌクレアーゼをコードするか、あるいはマイクロRNAである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ヒト対象の内耳の有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7Aプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、膜貫通及びテトラトリコペプチドリピート含有4(Tmtc4)、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ヒト対象の外有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、STRCプロモーター、及びATP2B2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドが、Strc、Tmc1、Myo7a、Ush1c、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、ISL LIMホメオボックス1(Isl1)、Clrn1、プロトカドヘリン関連15(Pcdh15)、カドヘリン関連23(Cdh23)、Chrna9、Chrna10、Ocm、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ヒト対象の蝸牛有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7Aプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記ポリヌクレオチドが、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、オトフェリン(Otof)、溶質輸送体ファミリー17メンバー8(Vglut3)、Strc、Chrna9、Chrna10、Ocm、Tmc1、Myo7a、Ush1c、ウィルリン(Whirlin)、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ヒト対象の内有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、OTOFプロモーター、線維芽細胞成長因子8(FGF8)プロモーター、及び溶質輸送体ファミリー17メンバー8(SLC17A8)プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチドが、Otof、Vglut3、ウィルリン、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、Myo7a、Tmc1、Ush1c、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ヒト対象の前庭有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、MYO7Aプロモーター、ATP2B2プロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチドが、ウィルリン、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヒト対象の柱細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、CD44プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
前記ポリヌクレオチドが、神経成長因子受容体(Ngfr)、Bdnf、Ntf3、テクトリン(Tectorin)ベータ(Tectb)、テクトリンアルファ(Tecta)、Gjb2、またはギャップ結合タンパク質ベータ6(Gjb6)をコードする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ヒト対象のらせん神経節ニューロン内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、BHLHE22プロモーター、SYNプロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAもしくはRGMAに指向されたshRNAである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ヒト対象の血管条の周辺細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、KCNQ1プロモーター、KCNE1プロモーター、及びGJB2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
ヒト対象の血管条の基底細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、CLDN11プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
ヒト対象の血管条の中間細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、KCNJ10プロモーター、GJB2プロモーター、及びTYRプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
前記ポリヌクレオチドが、Kcnq1、Kcne1、Tyr、Gjb2、Gjb6、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAである、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ヒト対象の境界細胞及び/または内指節細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、GLASTプロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項33】
前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、膜貫通タンパク質16A(Tmem16a)、Gjb2、またはGjb6をコードする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ヒト対象のダイテルス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、FGFR3プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項35】
前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、IKAROSファミリー亜鉛フィンガー2(Ikzf2)、Gjb2、またはGjb6をコードする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ヒト対象のヘンゼン細胞及び/またはクラウディウス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、FRZBプロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドが、Gjb2またはGjb6をコードする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ヒト対象のらせん隆起細胞及び/または根細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、SLC26A4プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチドが、Slc26a4である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ヒト対象の歯間細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、CEACAM16プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記ポリヌクレオチドが、Ceacam16、オトアンコリン(Otoa)、Gjb2、またはGjb6をコードする、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
ヒト対象のグリア細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、PMP22プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記ポリヌクレオチドが、Pmp22、Bdnf、Ntf3、またはミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)をコードする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ヒト対象の前庭暗細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、KCNE1プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
前記ポリヌクレオチドが、Kcnq1、Kcne1、またはSlc26a4をコードする、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ヒト対象の線維細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、POU3F4プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
前記ポリヌクレオチドが、Gjb2、Gjb6、またはコラーゲンをコードする、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヒト対象のスカルパ神経節ニューロン内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、TUBB3プロモーター及びSYNプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
前記ポリヌクレオチドが、BdnfもしくはNtf3をコードするか、または斥力ガイダンス分子BMP共受容体A(RGMA)に指向されたshRNAである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ヒト対象の支持細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Sox9、Sall2、Camta1、Hey2、Gata2、Hey1、Lass2、Sox10、Gata3、Cux1、Nr2f1、Hes1、Rorb、Jun、Zfp667、Lhx3、Nhlh1、Mxd4、Zmiz1、Myt1、Stat3、Barhl1、Tox、Prox1、Nfia、Thrb、Mycl1、Kdm5a、Creb3I4、Etv1、Peg3、Bach2、Isl1、Zbtb38、Lbh、Tub、Hmg20、Rest、Zfp827、Aff3、Pknox2、Arid3b、Mlxip、Zfp532、Ikzf2、Sall1、Six2、Sall3、Lin28b、Pou4f3、Rfx7、Atoh1、アミノ酸328、331、及び/または334に変異を含むAtoh1バリアント、Gfi1、Sox4、Bdnf、Ntf3、Sox11、Tead2、Yap1、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAであるポリヌクレオチドに作用可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項51】
前記プロモーターが、GFAPプロモーター、GLASTプロモーター、HES1プロモーター、JAG1プロモーター、NOTCH1プロモーター、LGR5プロモーター、SOX2プロモーター、HES5プロモーター、及びSOX9プロモーターからなる群から選択される、請求項50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
ヒト対象の内耳の有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAであるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項53】
前記プロモーターが、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7Aプロモーターからなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
ヒト対象の外有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Strc、Tmc1、Myo7a、Ush1c、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、Chrna9、Chrna10、Ocm、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAであるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項55】
前記プロモーターが、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、STRCプロモーター、及びATP2B2プロモーターからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
ヒト対象の蝸牛有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、Otof、Vglut3、Strc、Chrna9、Chrna10、Ocm、Tmc1、Myo7a、Ush1c、ウィルリン、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAであるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項57】
前記プロモーターが、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7aプロモーターからなる群から選択される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ヒト対象の内有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Otof、Vglut3、ウィルリン、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh14、Cdh23、Myo7a、Ush1c、Tmc1、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAであるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項59】
前記プロモーターが、OTOFプロモーター、FGF8プロモーター、及びSLC17A8プロモーターからなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
ヒト対象の前庭有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、ウィルリン、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAであるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
前記プロモーターが、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、MYO7Aプロモーター、ATP2B2プロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ヒト対象の柱細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Ngfr、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項63】
前記プロモーターが、CD44プロモーターまたはGJB2プロモーターである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
ヒト対象のらせん神経節ニューロン内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、もしくはヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、またはマイクロRNAもしくはRGMAに指向されたshRNAに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項65】
前記プロモーターが、BHLHE22プロモーター、SYNプロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
ヒト対象の血管条の細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Kcnq1、Kcne1、Gjb2、Gjb6、Tyr、もしくはヌクレアーゼをコードするか、またはマイクロRNAであるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項67】
前記細胞が、前記血管条の周辺細胞であり、前記プロモーターが、KCNQ1プロモーター、GJB2プロモーター、またはKCNE1プロモーターからなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞が、前記血管条の基底細胞であり、前記プロモーターが、CLDN11プロモーターまたはGJB2プロモーターである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞が、前記血管条の中間細胞であり、前記プロモーターが、KCNJ10プロモーター、GJB2プロモーター、及びTYRプロモーターからなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
ヒト対象の境界細胞及び/または内指節細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、Tmem16a、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項71】
前記プロモーターが、GLASTプロモーターまたはGJB2プロモーターである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
ヒト対象のダイテルス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、Ikzf2、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項73】
前記プロモーターが、FGFR3プロモーターまたはGJB2プロモーターである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
ヒト対象のヘンゼン細胞及び/またはクラウディウス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Gjb2またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項75】
前記プロモーターが、FRZBプロモーターまたはGJB2プロモーターである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
ヒト対象のらせん隆起細胞及び/または根細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Slc26a4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項77】
前記プロモーターが、SLC26A4プロモーターである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
ヒト対象の歯間細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Ceacam16、Otoa、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項79】
前記プロモーターが、CEACAM16プロモーターまたはGJB2プロモーターである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
ヒト対象のグリア細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Pmp22、Bdnf、Ntf3、またはMpzをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項81】
前記プロモーターが、PMP22プロモーターである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
ヒト対象の前庭暗細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Kcnq1、Kcne1、またはSlc26a4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項83】
前記プロモーターが、KCNE1プロモーターである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
ヒト対象の線維細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Gjb2、Gjb6、またはコラーゲンをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項85】
前記プロモーターが、POU3F4プロモーターまたはGJB2プロモーターである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
ヒト対象のスカルパ神経節ニューロン内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、BdnfもしくはNtf3をコードするポリヌクレオチド、またはRGMAに指向されたshRNAに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【請求項87】
前記プロモーターが、TUBB3プロモーター及びSYNプロモーターからなる群から選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記AAV1ベクターが、野生型AAV1キャプシドを含む、請求項1~87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項89】
前記AAV1ベクターが、AAV2逆位末端反復配列(ITR)を含む、請求項1~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
表5のプロモーターのリストから選択されるプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む、AAV1ベクター。
【請求項91】
前記ポリヌクレオチドが、表2に列記されるポリヌクレオチドから選択される、請求項90に記載のAAV1ベクター。
【請求項92】
表2に列記されるポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、AAV1ベクター。
【請求項93】
前記プロモーターが、表5のプロモーターのリストから選択される、請求項92に記載のAAV1ベクター。
【請求項94】
前記AAV1ベクターが、AAV2 ITRを含む、請求項90~93のいずれか1項に記載のAAV1ベクター。
【請求項95】
前記AAV1ベクターが、野生型AAV1キャプシドを含む、請求項90~94のいずれか1項に記載のAAV1ベクター。
【請求項96】
請求項88~93のいずれか1項に記載のAAV1ベクターと、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項97】
前記薬学的組成物が、内耳または中耳への局所投与用に製剤化される、請求項96のいずれかに記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の内耳細胞型を形質導入するために使用することができるAAV1ベクター、ならびに難聴、耳鳴、及び前庭機能障害の治療のためのそれらの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子療法は、難聴及び前庭機能障害などの内耳の障害を治療するための有望なアプローチとして最近浮上してきたが、それは、これらの障害の遺伝的原因を治療し、治療用タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導し、蝸牛インプラントよりも自然な音認識を伴う聴覚の温存または回復につながり得るからである。しかしながら、難聴及び/または前庭機能障害を引き起こす変異は、内耳の様々な異なる細胞型において特定されており、げっ歯類モデルにおける前臨床研究は、内耳のほとんどまたはすべての細胞型を形質導入するために使用することができる単一のウイルスベクターをまだ特定していない。さらに、ヒト治療をさらに予測するより大きな動物モデルにおいて行われている研究は最小限である。したがって、臨床的に関連する動物モデルにおいて内耳細胞の向汎性形質導入を呈するウイルスベクターが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型を有するAAV1ベクター(例えば、AAV1キャプシド)が、非ヒト霊長類の内耳において意外にも向汎性であるという発明者の発見に基づく。AAV1ベクターは、マウスの内耳におけるAAV1向性と比較して、また非ヒト霊長類における他のAAV血清型(例えば、AAV2及びAAV7m8)の向性と比較して、非ヒト霊長類の内耳の複数の細胞型において強い発現及び予想外に優れた向性を呈した。したがって、本発明は、AAV1ベクターを使用して霊長類(例えば、ヒト)内耳の細胞型を形質導入するための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載のAAV1ベクターは、1種以上の霊長類(例えば、ヒト)の内耳細胞において、内耳細胞の機能、再生、維持、発達、増殖、または生存を促進または改善する遺伝子に対応するポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの発現を促進するために、霊長類(例えば、ヒト)対象に投与することができる。本明細書に記載の組成物及び方法は、難聴(例えば、感音難聴)及び/または前庭機能障害(例えば、めまい(vertigo)、めまい(dizziness)、または不均衡)を治療または予防するために、霊長類(例えば、ヒト)患者に投与することができる。
【0004】
本発明の例示的実施形態は、以下に列挙される段落に記載される。
E1.霊長類対象において発達した内耳細胞を形質導入する方法であって、前記対象に、有効量の血清型1アデノ随伴ウイルス(AAV1)ベクターを、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)の内耳細胞型を形質導入する量で投与することを含む、前記方法。
【0005】
E2.前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される3つ以上の内耳細胞型を形質導入する、E1に記載の方法。
【0006】
E3.前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される5つ以上の細胞型を形質導入する、E2に記載の方法。
【0007】
E4.前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される10以上の細胞型を形質導入する、E3に記載の方法。
【0008】
E5.前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される15以上の細胞型を形質導入する、E4に記載の方法。
【0009】
E6.前記AAV1ベクターが、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞からなる群から選択される20以上の細胞型を形質導入する、E5に記載の方法。
【0010】
E7.前記AAV1ベクターが、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%を形質導入する、E1~E6のいずれか1項に記載の方法。
【0011】
E8.前記AAV1ベクターが、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型のすべての細胞を形質導入する、E1~E7のいずれか1項に記載の方法。
E9.形質導入が、蝸牛の長さ全体(例えば、前記蝸牛の基底から頂軸)にわたって生じる、E1~E8のいずれか1項に記載の方法。
【0012】
E10.前記AAV1ベクターが、前記蝸牛の基底から頂軸の長さにわたって、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の少なくとも20%(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%)を形質導入する、E1~E9のいずれか1項に記載の方法。
【0013】
E11.前記AAV1ベクターが、前記蝸牛の基底において、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の少なくとも20%(例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%)を形質導入する、E1~E10のいずれか1項に記載の方法。
【0014】
E12.前記AAV1ベクターが、前記蝸牛の中央において、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の少なくとも20%(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%)を形質導入する、E1~E11のいずれか1項に記載の方法。
【0015】
E13.前記AAV1ベクターが、前記蝸牛の頂部において、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の少なくとも20%(例えば、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%)を形質導入する、E1~E12のいずれか1項に記載の方法。
【0016】
E14.前記AAV1ベクターが、表5のプロモーターのリストから選択されるプロモーターを含む、E1~E13のいずれか1項に記載の方法。
E15.前記プロモーターが、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーターである、E14に記載の方法。
【0017】
E16.前記プロモーターが、シナプシン(SYN)プロモーターである、E14に記載の方法。
E17.前記プロモーターが、Jagged1(JAG1)プロモーター、Notch1(NOTCH1プロモーター)、ミオシン7A(MYO7A)プロモーター、溶質輸送体ファミリー1メンバー3(GLAST)プロモーター、及びPOUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)プロモーターからなる群から選択される、E14に記載の方法。
【0018】
E18.前記AAV1ベクターが、プレスチン(SLC26A5)プロモーター、オンコモジュリン(OCM)プロモーター、ステレオシリン(STRC)プロモーター、ミオシン15(MYO15)プロモーター、成長因子非依存性1転写抑制因子(GFI1)プロモーター、カリウム電位依存性チャネルサブファミリーQメンバー1(KCNQ1)プロモーター、カリウム電位依存性チャネルサブファミリーJメンバー10(KCNJ10)プロモーター、チロシナーゼ(TYR)プロモーター、SRY-Box2(SOX2)プロモーター、カルビンジン2(CALB2)プロモーター、塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックスファミリーメンバーE22(BHLHE22)プロモーター、ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質結合受容体5(LGR5)プロモーター、HesファミリーBHLH転写因子1(HES1)プロモーター、HesファミリーBHLH転写因子5(HES5)プロモーター、SRY-Box9(SOX9)プロモーター、ATPase血漿膜Ca2+輸送2(ATP2B2)プロモーター、CD44分子(CD44)プロモーター、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)プロモーター、Frizzled関連タンパク質(FRZB)プロモーター、溶質輸送体ファミリー26メンバー4(SLC26A4)プロモーター、がん胎児性抗原関連細胞接着分子16(CEACAM16)プロモーター、クラウディン11(CLDN11)プロモーター、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)プロモーター、カリウム電位依存性チャネルサブファミリーE調節サブユニット1(KCNE1)プロモーター、POUクラス3ホメオボックス4(POU3F4)プロモーター、ギャップ結合タンパク質ベータ2(GJB2)プロモーター、及びチューブリンベータ3クラスIII(TUBB3)プロモーターからなる群から選択されるプロモーターを含む、E14に記載の方法。
【0019】
E19.前記プロモーターが、SLC26A5プロモーターである、E18に記載の方法。
E20.前記プロモーターが、前記OCMプロモーターである、E18に記載の方法。
【0020】
E21.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E18に記載の方法。
E22.前記プロモーターが、前記ATP2B2プロモーターである、E18に記載の方法。
【0021】
E23.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E18に記載の方法。
E24.前記プロモーターが、前記TYRプロモーターである、E18に記載の方法。
【0022】
E25.前記プロモーターが、偏在的なプロモーターである、E1~E13のいずれか1項に記載の方法。
E26.前記プロモーターが、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである、E25に記載の方法。
【0023】
E27.前記プロモーターが、ニワトリベータ-アクチン遺伝子のCMV初期エンハンサー要素、プロモーター、第1のエクソン、及び第1のイントロン、ならびにウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプター(CAGプロモーター)に由来するハイブリッドプロモーターである、E25に記載の方法。
【0024】
E28.前記プロモーターが、切断型CMV-ニワトリベータ-アクチン(smCBA)プロモーターである、E25に記載の方法。
E29.前記AAV1ベクターが、表2のリストから選択されるポリヌクレオチドを含む、E1~E28のいずれか1項に記載の方法。
【0025】
E30.前記ポリヌクレオチドが、Strcをコードする、E29に記載の方法。
E31.前記ポリヌクレオチドが、膜貫通チャネル様1(Tmc1)をコードする、E29に記載の方法。
【0026】
E32.前記ポリヌクレオチドが、ハーモニン(Ush1c)をコードする、E29に記載の方法。
E33.前記ポリヌクレオチドが、アトナル(Atonal)BHLH転写因子1(Atoh1)をコードする、E29に記載の方法。
【0027】
E34.前記ポリヌクレオチドが、クラリン1(Clrn1)をコードする、E29に記載の方法。
E35.前記ポリヌクレオチドが、SRY-Box4(Sox4)をコードする、E29に記載の方法。
【0028】
E36.前記ポリヌクレオチドが、脳由来神経栄養因子(Bdnf)をコードする、E29に記載の方法。
E37.前記ポリヌクレオチドが、ニューロトロフィン3(Ntf3)をコードする、E29に記載の方法。
【0029】
E38.前記ポリヌクレオチドが、SRY-Box11(Sox11)をコードする、E29に記載の方法。
E39.前記ポリヌクレオチドが、ミオシン7A(Myo7a)をコードする、E29に記載の方法。
【0030】
E40.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E29に記載の方法。
E41.前記ポリヌクレオチドが、コリン作動性受容体ニコチン性アルファ9サブユニット(Chrna9)をコードする、E29に記載の方法。
【0031】
E42.前記ポリヌクレオチドが、コリン作動性受容体ニコチン性アルファ10サブユニット(Chrna10)をコードする、E29に記載の方法。
E43.前記ポリヌクレオチドが、Ocmをコードする、E29に記載の方法。
【0032】
E44.前記ポリヌクレオチドが、Tyrをコードする、E29に記載の方法。
E45.前記ポリヌクレオチドが、膜貫通及びテトラトリコペプチドリピート含有4(Tmtc4)をコードする、E29に記載の方法。
【0033】
E46.前記ポリヌクレオチドが、TEAドメイン転写因子2(Tead2)をコードする、E29に記載の方法。
E47.前記ポリヌクレオチドが、Yes関連タンパク質1(Yap1)をコードする、E29に記載の方法。
【0034】
E48.霊長類対象の支持細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、GFAPプロモーター、GLASTプロモーター、HES1プロモーター、JAG1プロモーター、NOTCH1プロモーター、LGR5プロモーター、SOX2プロモーター、HES5プロモーター、及びSOX9プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0035】
E49.前記プロモーターが、前記GFAPプロモーターである、E48に記載の方法。
E50.前記プロモーターが、前記HES1プロモーター、前記LGR5プロモーター、前記SOX2プロモーター、前記HES5プロモーター、及び前記SOX9プロモーターからなる群から選択される、E48に記載の方法。
【0036】
E51.前記ポリヌクレオチドが、Sox9、Spalt様転写因子2(Sall2)、カルモジュリン結合転写活性化因子1(Camta1)、YRPWモチーフ2を有するHes関連ファミリーBHLH転写因子(Hey2)、Gata結合タンパク質2(Gata2)、YRPWモチーフ1を有するHes関連ファミリーBHLH転写因子(Hey1)、セラミドシンターゼ2(Lass2)、SRY-Box10(Sox10)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、Cut様ホメオボックス1(Cux1)、核受容体サブファミリー2群Fメンバー(Nr2f1)、HesファミリーBHLH転写因子1(Hes1)、RAR関連オーファン受容体B(Rorb)、Junがん原遺伝子AP-1転写因子サブユニット(Jun)、亜鉛フィンガータンパク質667(Zfp667)、LIMホメオボックス3(Lhx3)、新生ヘリックス-ループ-ヘリックス1(Nhlh1)、MAX二量体化タンパク質4(Mxd4)、亜鉛フィンガーMIZ型含有1(Zmiz1)、ミエリン転写因子1(Myt1)、シグナル伝達兼転写活性化因子3(Stat3)、BarH様ホメオボックス1(Barhl1)、胸腺細胞選択関連高移動度群ボックス(Tox)、Prosperoホメオボックス1(Prox1)、核因子I A(Nfia)、甲状腺ホルモン受容体ベータ(Thrb)、MYCLがん原遺伝子BHLH転写因子(Mycl1)、リジン脱メチル化酵素5A(Kdm5a)、CAMP応答配列結合タンパク質3様4(Creb3I4)、ETSバリアント1(Etv1)、父性発現3(Peg3)、BTBドメイン及びCNCホモログ2(Bach2)、ISL LIMホメオボックス(Isl1)、亜鉛フィンガー及びBTBドメイン含有38(Zbtb38)、肢芽及び心臓発達(Lbh)、Tubby Bipartite転写因子(Tub)、ユビキチンC(Hmg20)、RE1サイレンシング転写因子(Rest)、亜鉛フィンガータンパク質827(Zfp827)、AF4/FMR2ファミリーメンバー3(Aff3)、PBX/Knotted1ホメオボックス2(Pknox2)、ATリッチ相互作用ドメイン3B(Arid3b)、MLX相互作用タンパク質(Mlxip)、亜鉛フィンガータンパク質(Zfp532)、IKAROSファミリー亜鉛フィンガー2(Ikzf2)、Spalt様転写因子1(Sall1)、SIXホメオボックス2(Six2)、Spalt様転写因子3(Sall3)、Lin-28ホモログB(Lin28b)、Pou4f3、調節因子X7(Rfx7)、Atoh1、アミノ酸328、331、及び/または334で変異を含むAtoh1バリアント(例えば、S328A、S331A、S334A、S328A/S331A、S328A/S334A、S331A/S334A、及びS328A/S331A/S334、例えば、配列番号4~10のいずれか1つの配列を有するバリアント)、Gfi1、Sox4、Bdnf、Ntf3、Sox11、Tead2、Yap1、またはヌクレアーゼ(例えば、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはガイドRNA(gRNA))をコードするか、あるいはマイクロRNA(miRNA、例えば、miR-183、miR-96、またはmiR-182)である、E48~E50のいずれか1項に記載の方法。
【0037】
E52.前記支持細胞が、前庭支持細胞である、E48~E51のいずれか1項に記載の方法。
E53.前記前庭支持細胞が、卵形嚢内にある、E52に記載の方法。
【0038】
E54.前記支持細胞が、蝸牛支持細胞であり、前記プロモーターが、SOX2である、E48~E51のいずれか1項に記載の方法。
E55.霊長類対象の内耳の有毛細胞(例えば、前庭有毛細胞及び/または蝸牛有毛細胞)内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7Aプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0039】
E56.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E55に記載の方法。
E57.前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miRNA、例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)である、E55またはE56に記載の方法。
【0040】
E58.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E55~E57のいずれか1項に記載の方法。
E59.前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、E58に記載の方法。
【0041】
E60.前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、E58に記載の方法。
E61.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E55~E57のいずれか1項に記載の方法。
【0042】
E62.霊長類対象の外有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、STRCプロモーター、及びATP2B2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0043】
E63.前記プロモーターが、前記SLC26A5プロモーターである、E62に記載の方法。
E64.前記プロモーターが、前記OCMプロモーターである、E62に記載の方法。
【0044】
E65.前記プロモーターが、前記ATP2B2プロモーターである、E62に記載の方法。
E66.前記ポリヌクレオチドが、Strc、Tmc1、Myo7a、Ush1c、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、ISL LIMホメオボックス1(Isl1)、Clrn1、プロトカドヘリン関連15(Pcdh15)、カドヘリン関連23(Cdh23)、Chrna9、Chrna10、Ocm、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、またはmiR-182)である、E62~E65のいずれか1項に記載の方法。
【0045】
E67.霊長類対象の蝸牛有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7Aプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0046】
E68.前記プロモーターが、前記GFI1プロモーターである、E67に記載の方法。
E69.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E67に記載の方法。
【0047】
E70.前記ポリヌクレオチドが、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、オトフェリン(Otof)、溶質輸送体ファミリー17メンバー8(Vglut3)、Strc、Chrna9、Chrna10、Ocm、Tmc1、Myo7a、Ush1c、ウィルリン(Whrn)、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)である、E67~E69のいずれか1項に記載の方法。
【0048】
E71.霊長類対象の内有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、OTOFプロモーター、線維芽細胞成長因子8(FGF8)プロモーター、及び溶質輸送体ファミリー17メンバー8(SLC17A8)プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0049】
E72.前記プロモーターが、前記OTOFプロモーターである、E71に記載の方法。
E73.前記ポリヌクレオチドが、Otof、Vglut3、ウィルリン、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、Myo7a、Tmc1、Ush1c、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)である、E72またはE72に記載の方法。
【0050】
E74.霊長類対象の前庭有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、MYO7Aプロモーター、ATP2B2プロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0051】
E75.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E74に記載の方法。
E76.前記プロモーターが、前記ATP2B2プロモーターである、E74に記載の方法。
【0052】
E77.前記前庭有毛細胞が、I型前庭有毛細胞であり、前記プロモーターが、ATP2B2プロモーターである、E74に記載の方法。
E78.前記前庭有毛細胞が、II型前庭有毛細胞であり、前記プロモーターが、CALB2プロモーターである、E74に記載の方法。
【0053】
E79.前記ポリヌクレオチドが、ウィルリン、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA )をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)である、E74~E78のいずれか1項に記載の方法。
【0054】
E80.霊長類対象の柱細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、CD44プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0055】
E81.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E80に記載の方法。
E82.前記ポリヌクレオチドが、神経成長因子受容体(Ngfr)、Bdnf、Ntf3、テクトリン(Tectorin)ベータ(Tectb)、テクトリンアルファ(Tecta)、Gjb2、またはギャップ結合タンパク質ベータ6(Gjb6)をコードする、E80またはE81に記載の方法。
【0056】
E83.霊長類対象のらせん神経節ニューロン内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、BHLHE22プロモーター、SYNプロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0057】
E84.前記プロモーターが、前記SYNプロモーターである、E83に記載の方法。
E85.前記らせん神経節ニューロンが、高い自発発火速度を有し、前記プロモーターが、CALB2プロモーターである、E83に記載の方法。
【0058】
E86.前記らせん神経節ニューロンが、求心性らせん神経節ニューロンであり、前記プロモーターが、BHLHE22プロモーターである、E83に記載の方法。
E87.前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(miRNA、例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)もしくはRGMAに指向されたshRNAである、E83~E86のいずれか1項に記載の方法。
【0059】
E88.霊長類対象の血管条の周辺細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、KCNQ1プロモーター、KCNE1プロモーター、及びGJB2プロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0060】
E89.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E88に記載の方法。
E90.霊長類対象の血管条の基底細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、CLDN11プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0061】
E91.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E90に記載の方法。
E92.霊長類対象の血管条の中間細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、KCNJ10プロモーター、GJB2プロモーター、及びTYRプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0062】
E93.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E92に記載の方法。
E94.前記プロモーターが、前記TYRプロモーターである、E92に記載の方法。
【0063】
E95.前記ポリヌクレオチドが、Kcnq1、Kcne1、Tyr、Gjb2、Gjb6、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)である、E90~E94のいずれか1項に記載の方法。
【0064】
E96.霊長類対象の境界細胞及び/または内指節細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、GLASTプロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0065】
E97.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E96に記載の方法。
E98.前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、膜貫通タンパク質16A(Tmem16a)、Gjb2、またはGjb6をコードする、E96またはE97に記載の方法。
【0066】
E99.霊長類対象のダイテルス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、FGFR3プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0067】
E100.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E99に記載の方法。
E101.前記ポリヌクレオチドが、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、IKAROSファミリー亜鉛フィンガー2(Ikzf2)、Gjb2、またはGjb6をコードする、E99またはE100に記載の方法。
【0068】
E102.霊長類対象のヘンゼン細胞及び/またはクラウディウス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、FRZBプロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0069】
E103.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E102に記載の方法
E104.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2またはGjb6をコードする、E102またはE103に記載の方法。
【0070】
E105.霊長類対象のらせん隆起細胞及び/または根細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、SLC26A4プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0071】
E106.前記ポリヌクレオチドが、Slc26a4である、E105に記載の方法。
E107.霊長類対象の歯間細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、CEACAM16プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0072】
E108.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E107に記載の方法
E109.前記ポリヌクレオチドが、Ceacam16、オトアンコリン(Otoa)、Gjb2、またはGjb6をコードする、E107またはE108に記載の方法。
【0073】
E110.霊長類対象のグリア細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、PMP22プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0074】
E111.前記ポリヌクレオチドが、Pmp22、Bdnf、Ntf3、またはミエリンタンパク質ゼロ(Mpz)をコードする、E110に記載の方法。
E112.霊長類対象の前庭暗細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、KCNE1プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0075】
E113.前記ポリヌクレオチドが、Kcnq1、Kcne1、またはSlc26a4をコードする、E112に記載の方法。
E114.霊長類対象の線維細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、POU3F4プロモーターまたはGJB2プロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0076】
E115.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E114に記載の方法
E116.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2、Gjb6、またはコラーゲンをコードする、E114またはE115に記載の方法。
【0077】
E117.霊長類対象のスカルパ神経節ニューロン(前庭神経節ニューロン)内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、TUBB3プロモーター及びSYNプロモーターからなる群から選択されるプロモーターに作動可能に連結された前記ポリヌクレオチドを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0078】
E118.前記プロモーターが、前記SYNプロモーターである、E117に記載の方法。
E119.前記ポリヌクレオチドが、BdnfもしくはNtf3をコードするか、または斥力ガイダンス分子BMP共受容体A(RGMA)に指向されたshRNAである、E117またはE118に記載の方法。
【0079】
E120.霊長類対象の支持細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Sox9、Sall2、Camta1、Hey2、Gata2、Hey1、Lass2、Sox10、Gata3、Cux1、Nr2f1、Hes1、Rorb、Jun、Zfp667、Lhx3、Nhlh1、Mxd4、Zmiz1、Myt1、Stat3、Barhl1、Tox、Prox1、Nfia、Thrb、Mycl1、Kdm5a、Creb3I4、Etv1、Peg3、Bach2、Isl1、Zbtb38、Lbh、Tub、Hmg20、Rest、Zfp827、Aff3、Pknox2、Arid3b、Mlxip、Zfp532、Ikzf2、Sall1、Six2、Sall3、Lin28b、Pou4f3、Rfx7、Atoh1、アミノ酸328、331、及び/または334に変異を含むAtoh1バリアント(例えば、S328A、S331A、S334A、S328A/S331A、S328A/S334A、S331A/S334A、及びS328A/S331A/S334、例えば、配列番号4~10のいずれか1つの配列を有するバリアント)、Gfi1、Sox4、Bdnf、Ntf3、Sox11、Tead2、Yap1、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)
をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)であるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0080】
E121.前記ポリヌクレオチドが、Atoh1をコードする、E120に記載の方法。
E122.前記ポリヌクレオチドが、Sox4をコードする、E120に記載の方法。
【0081】
E123.前記ポリヌクレオチドが、Sox11をコードする、E120に記載の方法。
E124.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E120に記載の方法。
【0082】
E125.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E120に記載の方法。
E126.前記ポリヌクレオチドが、Tead2をコードする、E120に記載の方法。
【0083】
E127.前記ポリヌクレオチドが、Yap1をコードする、E120に記載の方法。
E128.前記プロモーターが、GFAPプロモーター、GLASTプロモーター、HES1プロモーター、JAG1プロモーター、NOTCH1プロモーター、LGR5プロモーター、SOX2プロモーター、HES5プロモーター、及びSOX9プロモーターからなる群から選択される、E120~E127のいずれか1項に記載の方法。
【0084】
E129.前記プロモーターが、前記GFAPプロモーターである、E128に記載の方法。
E130.前記プロモーターが、前記HES1プロモーター、前記LGR5プロモーター、前記SOX2プロモーター、前記HES5プロモーター、及び前記SOX9プロモーターからなる群から選択される、E128に記載の方法。
【0085】
E131.前記支持細胞が、前庭支持細胞である、E120~E130のいずれか1項に記載の方法。
E132.前記前庭支持細胞が、卵形嚢内にある、E131に記載の方法。
【0086】
E133.前記支持細胞が、蝸牛支持細胞であり、前記プロモーターが、SOX2である、E120~E130のいずれか1項に記載の方法。
E134.霊長類対象の内耳の有毛細胞(例えば、前庭有毛細胞及び/または蝸牛有毛細胞)内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)であるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0087】
E135.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E134に記載の方法。
E136.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E134に記載の方法。
E137.前記ポリヌクレオチドが、Tmtc4をコードする、E134に記載の方法。
【0088】
E138.前記プロモーターが、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7Aプロモーターからなる群から選択される、E134~E137のいずれか1項に記載の方法。
【0089】
E139.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E134~E138のいずれか1項に記載の方法。
E140.前記蝸牛有毛細胞が、内有毛細胞である、E139に記載の方法。
【0090】
E141.前記蝸牛有毛細胞が、外有毛細胞である、E139に記載の方法。
E142.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E134~E138のいずれか1項に記載の方法。
【0091】
E143.霊長類対象の外有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Strc、Tmc1、Myo7a、Ush1c、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、Chrna9、Chrna10、Ocm、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)であるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0092】
E144.前記ポリヌクレオチドが、Strcをコードする、E143に記載の方法。
E145.前記ポリヌクレオチドが、Chrna9をコードする、E143に記載の方法。
【0093】
E146.前記ポリヌクレオチドが、Chrna10をコードする、E143に記載の方法。
E147.前記ポリヌクレオチドが、Ocmをコードする、E143に記載の方法。
【0094】
E148.前記ポリヌクレオチドが、Tmc1をコードする、E143に記載の方法。
E149.前記ポリヌクレオチドが、Myo7aをコードする、E143に記載の方法。
【0095】
E150.前記ポリヌクレオチドが、Ush1cをコードする、E143に記載の方法。
E151.前記ポリヌクレオチドが、Tmtc4をコードする、E143に記載の方法。
【0096】
E152.前記プロモーターが、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、STRCプロモーター、及びATP2B2プロモーターからなる群から選択される、E143~E151のいずれか1項に記載の方法。
【0097】
E153.霊長類対象の蝸牛有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh15、Cdh23、Otof、Vglut3、Strc、Chrna9、Chrna10、Ocm、Tmc1、Myo7a、Ush1c、ウィルリン、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)であるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0098】
E154.前記ポリヌクレオチドが、Atoh1をコードする、E153に記載の方法。
E155.前記ポリヌクレオチドが、Clrn1をコードする、E153に記載の方法。
【0099】
E156.前記ポリヌクレオチドが、Otofをコードする、E153に記載の方法。
E157.前記ポリヌクレオチドが、Tmc1をコードする、E153に記載の方法。
E158.前記ポリヌクレオチドが、Ush1cをコードする、E153に記載の方法。
【0100】
E159.前記ポリヌクレオチドが、Myo7aをコードする、E153に記載の方法。
E160.前記ポリヌクレオチドが、Vglut3をコードする、E153に記載の方法。
【0101】
E161.前記ポリヌクレオチドが、Strcをコードする、E153に記載の方法。
E162.前記ポリヌクレオチドが、Chrna9をコードする、E153に記載の方法。
【0102】
E163.前記ポリヌクレオチドが、Chrna10をコードする、E153に記載の方法。
E164.前記ポリヌクレオチドが、Tmtc4をコードする、E153に記載の方法。
【0103】
E165.前記ポリヌクレオチドが、Ocmをコードする、E153に記載の方法。
E166.前記プロモーターが、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、及びMYO7aプロモーターからなる群から選択される、E153~E165のいずれか1項に記載の方法。
【0104】
E167.前記プロモーターが、前記GFI1プロモーターである、E166に記載の方法。
E168.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E166に記載の方法。
【0105】
E169.霊長類対象の内有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Otof、Vglut3、ウィルリン、Atoh1、Pou4f3、Gfi1、Isl1、Clrn1、Pcdh14、Cdh23、Myo7a、Ush1c、Tmc1、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)であるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0106】
E170.前記ポリヌクレオチドが、Otofをコードする、E169に記載の方法。
E171.前記ポリヌクレオチドが、Atoh1をコードする、E169に記載の方法。
【0107】
E172.前記ポリヌクレオチドが、Vglut3をコードする、E169に記載の方法。
E173.前記ポリヌクレオチドが、Clrn1をコードする、E169に記載の方法。
【0108】
E174.前記プロモーターが、OTOFプロモーター、FGF8プロモーター、及びSLC17A8プロモーターからなる群から選択される、E169~E173のいずれか1項に記載の方法。
【0109】
E175.霊長類対象の前庭有毛細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、ウィルリン、Bdnf、Ntf3、Tmtc4、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)であるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0110】
E176.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E175に記載の方法。
E177.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E175に記載の方法。
E178.前記ポリヌクレオチドが、Tmtc4をコードする、E175に記載の方法。
【0111】
E179.前記プロモーターが、MYO15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、MYO7Aプロモーター、ATP2B2プロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択される、E175~E178のいずれか1項
に記載の方法。
【0112】
E180.前記前庭有毛細胞が、I型前庭有毛細胞であり、前記プロモーターが、ATP2B2プロモーターである、E175~E179のいずれか1項に記載の方法。
E181.前記前庭有毛細胞が、II型前庭有毛細胞であり、前記プロモーターが、CALB2プロモーターである、E175~E179のいずれか1項に記載の方法。
【0113】
E182.霊長類対象の柱細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Ngfr、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0114】
E183.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E182に記載の方法。
E184.前記プロモーターが、CD44プロモーターまたはGJB2プロモーターである、E182またはE183に記載の方法。
【0115】
E185.霊長類対象のらせん神経節ニューロン内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)もしくはRGMAに指向されたshRNAであるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0116】
E186.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E185に記載の方法。
E187.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E185に記載の方法。
E188.前記プロモーターが、BHLHE22プロモーター、SYNプロモーター、及びCALB2プロモーターからなる群から選択される、E185~E187のいずれか1項に記載の方法。
【0117】
E189.前記らせん神経節ニューロンが、高い自発発火速度を有し、前記プロモーターが、CALB2プロモーターである、E185~E188のいずれか1項に記載の方法。
【0118】
E190.前記前庭有毛細胞が、求心性らせん神経節ニューロンであり、前記プロモーターが、BLHLE22プロモーターである、E185~E188のいずれか1項に記載の方法。
【0119】
E191.霊長類対象の血管条内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Kcnq1、Kcne1、Gjb2、Gjb6、Tyr、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)であるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0120】
E192.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E191に記載の方法。
E193.前記ポリヌクレオチドが、Tyrをコードする、E191に記載の方法。
E194.前記細胞が、前記血管条の周辺細胞であり、前記プロモーターが、KCNQ1プロモーター、GJB2プロモーター、及びKCNE1プロモーターからなる群から選択される、E191~E193のいずれか1項に記載の方法。
【0121】
E195.前記細胞が、前記血管条の基底細胞であり、前記プロモーターが、CLDN11プロモーターまたはGJB2プロモーターである、E191~E193のいずれか1項に記載の方法。
【0122】
E196.前記細胞が、前記血管条の中間細胞であり、前記プロモーターが、KCNJ10プロモーター、GJB2プロモーター、及びTYRプロモーターからなる群から選択される、E191~E193のいずれか1項に記載の方法。
【0123】
E197.霊長類対象の境界細胞及び/または内指節細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、Tmem16a、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0124】
E198.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E197に記載の方法。
E199.前記プロモーターが、GLASTプロモーターまたはGJB2プロモーターである、E197またはE196に記載の方法。
【0125】
E200.霊長類対象のダイテルス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Bdnf、Ntf3、Tectb、Tecta、Ikzf2、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0126】
E201.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E200に記載の方法。
E202.前記プロモーターが、FGFR3プロモーターまたはGJB2プロモーターである、E200またはE201に記載の方法。
【0127】
E203.霊長類対象のヘンゼン細胞及び/またはクラウディウス細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Gjb2またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0128】
E204.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E203に記載の方法。
E205.前記プロモーターが、FRZBプロモーターまたはGJB2プロモーターである、E203またはE204に記載の方法。
【0129】
E206.霊長類対象のらせん隆起細胞及び/または根細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Slc26a4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0130】
E207.前記プロモーターが、SLC26A4プロモーターである、E206に記載の方法。
E208.霊長類対象の歯間細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Ceacam16、Otoa、Gjb2、またはGjb6をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0131】
E209.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E208に記載の方法。
E210.前記プロモーターが、CEACAM16プロモーターまたはGJB2プロモーターである、E208またはE209に記載の方法。
【0132】
E211.霊長類対象のグリア細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Pmp22、Bdnf、Ntf3、またはMpzをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0133】
E212.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E211に記載の方法。
E213.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E211に記載の方法。
E214.前記プロモーターが、PMP22プロモーターである、E211~E213のいずれか1項に記載の方法。
【0134】
E215.霊長類対象の前庭暗細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Kcnq1、Kcne1、またはSlc26a4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0135】
E216.前記プロモーターが、KCNE1プロモーターである、E215に記載の方法。
E217.霊長類対象の線維細胞内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、Gjb2、Gjb6、またはコラーゲンをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0136】
E218.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E217に記載の方法。
E219.前記プロモーターが、POU3F4プロモーターまたはGJB2プロモーターである、E217またはE218に記載の方法。
【0137】
E220.霊長類対象のスカルパ神経節ニューロン(前庭神経節ニューロン)内でポリヌクレオチドを発現させる方法であって、前記対象に、BdnfもしくはNtf3をコードするポリヌクレオチド、またはRGMAに指向されたshRNAに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0138】
E221.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E220に記載の方法。
E222.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E220に記載の方法。
E223.前記プロモーターが、TUBB3プロモーター及びSYNプロモーターからなる群から選択される、E220~E222のいずれか1項に記載の方法。
【0139】
E224.OTOFにおける変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Otofをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0140】
E225.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、smCBAプロモーター、MYO15プロモーター、及びOTOFプロモーターからなる群から選択される、E224に記載の方法。
【0141】
E226.前記プロモーターが、MYO15プロモーターまたはOTOFプロモーターである、E225に記載の方法。
E227.STRCにおける変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Strcをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0142】
E228.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、smCBAプロモーター、MYO15プロモーター、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、及びATP2B2プロモーターからなる群から選択される、E227に記載の方法。
【0143】
E229.前記プロモーターが、MYO15プロモーター、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、及びATP2B2プロモーターを含む群から選択される、E228に記載の方法。
【0144】
E230.アミノグリコシド誘発性両側性前庭機能低下を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Atoh1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0145】
E231.両側性前庭機能低下を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Atoh1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0146】
E232.加齢性前庭障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Atoh1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0147】
E233.前庭障害を有するか、または前庭障害を発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Atoh1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0148】
E234.難聴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Atoh1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0149】
E235.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、smCBAプロモーター、及びGFAPプロモーターからなる群から選択される、E230~E234のいずれか1項に記載の方法。
【0150】
E236.前記プロモーターが、GFAPプロモーターである、E235に記載の方法。
E237.GJB2における変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Gjb2をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0151】
E238.GJB2における変異に関連する加齢性難聴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Gjb2をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0152】
E239.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、smCBAプロモーター、及びGJB2プロモーターからなる群から選択される、E237またはE238に記載の方法。
【0153】
E240.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E239に記載の方法。
E241.SLC17A8における変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Slc17a8をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0154】
E242.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、smCBAプロモーター、MYO15プロモーター、及びOTOFプロモーターからなる群から選択される、E241に記載の方法。
【0155】
E243.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターまたは前記OTOFプロモーターである、E242に記載の方法。
E244.TMC1における変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Tmc1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0156】
E245.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E244に記載の方法。
E246.前記プロモーターが、MYO15プロモーターである、E244に記載の方法。
【0157】
E247.難聴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Ntf3をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0158】
E248.耳鳴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Ntf3をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0159】
E249.雑音下の発話を理解するのが困難であるか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Ntf3をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0160】
E250.シャルコー・マリー・トゥース病を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Ntf3をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0161】
E251.フリードライヒ運動失調症を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Ntf3をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0162】
E252.前記プロモーターが、SYNプロモーターである、E247~E251のいずれか1項に記載の方法。
E253.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E247~E251のいずれか1項に記載の方法。
【0163】
E254.難聴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Bdnfをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0164】
E255.耳鳴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Bdnfをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0165】
E256.雑音下の発話を理解するのが困難であるか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Bdnfをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0166】
E257.シャルコー・マリー・トゥース病を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Bdnfをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0167】
E258.フリードライヒ運動失調症を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Bdnfをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0168】
E259.前記プロモーターが、SYNプロモーターである、E254~E258のいずれか1項に記載の方法。
E260.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E254~E258のいずれか1項に記載の方法。
【0169】
E261.両側性前庭機能低下を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0170】
E262.加齢性前庭障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0171】
E263.前庭障害を有するか、または前庭障害を発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0172】
E264.難聴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox4をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0173】
E265.前記プロモーターが、GFAPプロモーターである、E261~E264のいずれか1項に記載の方法。
E266.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E261~E264のいずれか1項に記載の方法。
【0174】
E267.両側性前庭機能低下を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox11をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0175】
E268.加齢性前庭障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox11をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0176】
E269.前庭障害を有するか、または前庭障害を発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox11をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0177】
E270.難聴を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Sox11をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0178】
E271.前記プロモーターが、GFAPプロモーターである、E267~E270のいずれか1項に記載の方法。
E272.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E267~E270のいずれか1項に記載の方法。
【0179】
E273.USH1Cにおける変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Ush1cをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0180】
E274.前記プロモーターが、MYO15プロモーターである、E273に記載の方法。
E275.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E273に記載の方法。
【0181】
E276.MYO7Aにおける変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Myo7aをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0182】
E277.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E276に記載の方法。
E278.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E276に記載の方法。
【0183】
E279.CLRN1における変異に関連する単性聴覚消失を有するか、またはそれを発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、Clrn1をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0184】
E280.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E279に記載の方法。
E281.前記プロモーターが、CMVプロモーター、CAGプロモーター、及びsmCBAプロモーターからなる群から選択される、E279に記載の方法。
【0185】
E282.前庭機能障害を有するか、または前庭障害を発症するリスクがある霊長類対象を治療する方法であって、前記対象に、ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することを含む、前記方法。
【0186】
E283.前記プロモーターが、表5に列記される支持細胞プロモーター、スカルパ神経節プロモーター、前庭有毛細胞プロモーター、または前庭支持細胞プロモーターである、E282に記載の方法。
【0187】
E284.前記プロモーターが、MYO15である、E283に記載の方法。
E285.前記AAV1ベクターが、表2のリストから選択される前庭及び蝸牛有毛細胞、蝸牛及び前庭支持細胞、またはスカルパ神経節での発現のためのポリヌクレオチドを含む、E282~E284のいずれか1項に記載の方法。
【0188】
E286.前記ポリヌクレオチドが、ウィルリン、Sox9、Sall2、Camta1、Hey2、Gata2、Hey1、Lass2、Sox10、Gata3、Cux1、Nr2f1、Hes1、Rorb、Jun、Zfp667、Lhx3、Nhlh1、Mxd4、Zmiz1、Myt1、Stat3、Barhl1、Tox、Prox1、Nfia、Thrb、Mycl1、Kdm5a、Creb3I4、Etv1、Peg3、Bach2、Isl1、Zbtb38、Lbh、Tub、Hmg20、Rest、Zfp827、Aff3、Pknox2、Arid3b、Mlxip、Zfp532、Ikzf2、Sall1、Six2、Sall3、Lin28b、Pou4f3、Rfx7、Atoh1、アミノ酸328、331、及び/または334に変異を含むAtoh1バリアント(例えば、S328A、S331A、S334A、S328A/S331A、S328A/S334A、S331A/S334A、及びS328A/S331A/S334、例えば、配列番号4~10のいずれか1つの配列を有するバリアント)、Gfi1、Sox4、Bdnf、Ntf3、Tead2、Yap1、Tmtc4、Sox11、もしくはヌクレアーゼ(例えば、Cas9、TALEN、ZFN、もしくはgRNA)をコードするか、またはマイクロRNA(例えば、miR-183、miR-96、もしくはmiR-182)である、E282~E285のいずれか1項に記載の方法。
【0189】
E287.前記前庭機能障害が、めまい(vertigo)、めまい(dizziness)、または不均衡である、E282~E286のいずれか1項に記載の方法。
E288.難聴(例えば、感音難聴、聴覚消失、または聴覚神経障害)を有するか、またはそれらを発症するリスクがある霊長類対象を、前記対象に、ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することによって治療する方法。
【0190】
E289.前記プロモーターが、表5に列記されるIHCプロモーター、OHCプロモーター、支持細胞プロモーター、蝸牛支持細胞サブタイププロモーター、蝸牛有毛細胞プロモーター、またはSGNプロモーターである、E288に記載の方法。
【0191】
E290.前記AAV1ベクターが、表2のリストから選択されるIHC、OHC、蝸牛有毛細胞、前庭及び蝸牛有毛細胞、蝸牛及び前庭支持細胞、蝸牛支持細胞サブタイプ、またはらせん神経節ニューロンでの発現のためのポリヌクレオチドを含む、E288またはE289に記載の方法。
【0192】
E291.前記難聴、聴覚消失、前庭障害、前庭機能障害、または前庭機能低下が、有毛細胞(例えば、蝸牛及び/または前庭有毛細胞)の喪失に関連している、E224~E290のいずれか1項に記載の方法。
【0193】
E292.促進を必要とする霊長類対象の線維細胞において有毛細胞の再生を、前記対象に、ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することによって促進する方法。
【0194】
E293.前記プロモーターが、表5に列記される支持細胞プロモーター、前庭支持細胞プロモーター、または蝸牛支持細胞サブタイププロモーターである、E292に記載の方法。
【0195】
E294.前記AAV1ベクターが、表2のリストから選択されるIHC、OHC、蝸牛有毛細胞、前庭及び蝸牛有毛細胞、蝸牛支持細胞サブタイプ、または蝸牛及び前庭支持細胞での発現のためのポリヌクレオチドを含有する、E292またはE293に記載の方法。
【0196】
E295.増加を必要とする霊長類対象の支持細胞の数を、前記対象に、ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、有効量のAAV1ベクターを投与することによって増加させる(例えば、蝸牛及び/または前庭支持細胞、例えば、支持細胞増殖を増加させる)方法。
【0197】
E296.前記プロモーターが、表5に列記される支持細胞プロモーター、蝸牛支持細胞サブタイププロモーター、または前庭支持細胞プロモーターである、E295に記載の方法。
【0198】
E297.前記AAV1ベクターが、表2のリストから選択される、蝸牛及び前庭支持細胞、または蝸牛支持細胞サブタイプでの発現のためのポリヌクレオチドを含有する、E295またはE296に記載の方法。
【0199】
E298.予防または低減を必要とする霊長類対象の内耳細胞の損傷または死を、前記対象に、有効量の、本発明のAAV1ベクターまたは本発明の組成物を投与することによって予防または低減する方法。
【0200】
E299.前記内耳細胞の損傷または死が、聴覚毒性薬物誘発性損傷または死である、E298に記載の方法。
E300.前記聴覚毒性薬物が、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、及びアミカシン)、抗悪性腫瘍薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンなどの白金含有化学療法剤)、エタクリン酸、フロセミド、サリチル酸塩(例えば、アスピリン、特に高用量で)、及びキニンを含む群から選択される、E299に記載の方法。
【0201】
E301.前記内耳細胞の損傷または死が、音響外傷、疾患もしくは感染、頭部外傷、または老化に起因する、E298に記載の方法。
E302.耳鳴を有するか、または耳鳴を発症するリスクがある霊長類対象を、前記対象に、有効量の、本発明のAAV1ベクターまたは本発明の組成物を投与することによって治療する方法。
【0202】
E303.増加を必要とする霊長類対象の内耳細胞の生存を、前記対象に、有効量の、本発明のAAV1ベクターまたは本発明の組成物を投与することによって増加させる方法。
【0203】
E304.前記AAV1ベクターが、前記対象の前記中耳または内耳に局所投与される、E1~E303のいずれか1項に記載の方法。
E305.前記AAV1ベクターが、経鼓膜または鼓膜内投与される、E304に記載の方法。
【0204】
E306.前記AAV1ベクターが、外リンパに投与される、E304に記載の方法。
E307.前記AAV1ベクターが、内リンパに投与される、E304に記載の方法。
E308.前記AAV1ベクターが、卵円窓に、またはそれを通して投与される、E304に記載の方法。
【0205】
E309.前記AAV1ベクターが、正円窓に、またはそれを通して投与される、E304に記載の方法。
E310.前記AAV1ベクターが、内リンパ嚢に投与される、E304に記載の方法。
【0206】
E311.前記AAV1ベクターが、三半規管に、またはそれを通して投与される、E304に記載の方法。
E312.前記AAV1ベクターが、血清型2アデノ随伴ウイルス(AAV2)ベクターからの逆位末端反復配列(ITR)を含む、E1~E311のいずれか1項に記載の方法。
【0207】
E313.前記AAV1ベクターが、野生型AAV1キャプシドを含む(例えば、前記AAV1ベクターが、配列番号1~3のアミノ酸配列を有するキャプシドタンパク質を含有する)、E1~E312のいずれか1項に記載の方法。
【0208】
E314.前記AAV1ベクターが、約1×109ベクターゲノム(VG)/mL~1×1015VG/mL(例えば、1×109VG/mL、2×109VG/mL、3×109VG/mL、4×109VG/mL、5×109VG/mL、6×109VG/mL、7×109VG/mL、8×109VG/mL、9×109VG/mL、1×1010VG/mL、2×1010VG/mL、3×1010VG/mL、4×1010VG/mL、5×1010VG/mL、6×1010VG/mL、7×1010VG/mL、8×1010VG/mL、9×1010VG/mL、1×1011VG/mL、2×1011VG/mL、3×1011VG/mL、4×1011VG/mL、5×1011VG/mL、6×1011VG/mL、7×1011VG/mL、8×1011VG/mL、9×1011VG/mL、1×1012VG/mL、2×1012VG/mL、3×1012VG/mL、4×1012VG/mL、5×1012VG/mL、6×1012VG/mL、7×1012VG/mL、8×1012VG/mL、9×1012VG/mL、1×1013VG/mL、2×1013VG/mL、3×1013VG/mL、4×1013VG/mL、5×1013VG/mL、6×1013VG/mL、7×1013VG/mL、8×1013VG/mL、9×1013VG/mL、1×1014VG/mL、2×1014VG/mL、3×1014VG/mL、4×1014VG/mL、5×1014VG/mL、6×1014VG/mL、7×1014VG/mL、8×1014VG/mL、9×1014VG/mL、または1×1015VG/mL)の力価を有し、1μL~200μL(例えば、1、2、3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μL)の体積で投与される、E1~E313のいずれか1項に記載の方法。
【0209】
E315.前記AAV1ベクターが、1×107VG/耳~2×1014VG/耳(例えば、1×107VG/耳、2×107VG/耳、3×107VG/耳、4×107VG/耳、5×107VG/耳、6×107VG/耳、7×107VG/耳、8×107VG/耳、9×107VG/耳、1×108VG/耳、2×108VG/耳、3×108VG/耳、4×108VG/耳、5×108VG/耳、6×108VG/耳、7×108VG/耳、8×108VG/耳、9×108VG/耳、1×109VG/耳、2×109VG/耳、3×109VG/耳、4×109VG/耳、5×109VG/耳、6×109VG/耳、7×109VG/耳、8×109VG/耳、9×109VG耳、1×1010VG/耳、2×1010VG/耳、3×1010VG/耳、4×1010VG/耳、5×1010×VG/耳、6×1010VG/耳、7×1010VG/耳、8×1010VG/耳、9×1010VG/耳、1×1011VG/耳、2×1011VG/耳、3×1011VG/耳、4×1011VG/耳、5×1011VG/耳、6×1011VG/耳、7×1011VG/耳、8×1011VG/耳、9×1011VG/耳、1×1012VG/耳、2×1012VG/耳、3×1012VG/耳、4×1012VG/耳、5×1012VG/耳、6×1012VG/耳、7×1012VG/耳、8×1012VG/耳、9×1012VG/耳、1×1013VG/耳、2×1013VG/耳、3×1013VG/耳、4×1013VG/耳、5×1013VG/耳、6×1013VG/耳、7×1013VG/耳、8×1013VG/耳、9×1013VG/耳、1×1014VG/耳、または2×1014VG/耳)の用量で投与される、E1~
E314に記載の方法。
【0210】
E316.前記霊長類が、ヒトである、E1~E315のいずれか1項に記載の方法。
E317.前記対象が、成人である、E1~E316のいずれか1項に記載の方法。
E318.前記対象が、青少年である、E1~E316のいずれか1項に記載の方法。
【0211】
E319.前記対象が、小児である、E1~E316のいずれか1項に記載の方法。
E320.前記対象が、乳児または満期新生児である、E1~E316のいずれか1項に記載の方法。
【0212】
E321.前記有毛細胞が、蝸牛有毛細胞である、E55~E57及びE134~E138のいずれか1項に記載の方法。
E322.前記蝸牛有毛細胞が、IHCである、E321に記載の方法。
【0213】
E323.前記蝸牛有毛細胞が、OHCである、E321に記載の方法。
E324.前記有毛細胞が、前庭有毛細胞である、E55~E57及びE134~E138のいずれか1項に記載の方法。
【0214】
E325.前記支持細胞が、前庭支持細胞である、E48~E51及びE120~E130のいずれか1項に記載の方法。
E326.前記支持細胞が、蝸牛支持細胞(例えば、ヘンゼン細胞、ダイテルス細胞、柱細胞、内指節細胞、及び/または境界細胞)である、E48~E51及びE120~E130のいずれか1項に記載の方法。
【0215】
E327.前記方法が、前記AAV1ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の聴力を評価すること(例えば、聴力測定、聴性脳幹応答(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、または耳音響放射などの標準的な試験を使用して、聴力を評価すること)をさらに含む、E1~E326のいずれか1項に記載の方法。
【0216】
E328.前記方法が、前記AAV1ベクターまたは組成物を投与した後に、前記対象の聴力を評価すること(例えば、聴力測定、ABR、ECOG、または耳音響放射などの標準的な試験を使用して、聴力を評価すること)をさらに含む、E1~E327のいずれか1項に記載の方法。
【0217】
E329.前記方法が、前記AAV1ベクターまたは組成物を投与する前に、前記対象の前庭機能を評価すること(例えば、電気眼振図(ENG)またはビデオ眼振計(VNG)、姿勢図検査、回転椅子試験(rotary-chair testing)、ECOG、前庭誘発筋電位(VEMP)、または特殊臨床平衡試験などの標準的な試験を使用して、前庭機能を評価すること)をさらに含む、E1~E328のいずれか1項に記載の方法。
【0218】
E330.前記方法が、前記AAV1ベクターまたは組成物を投与した後に、前記対象の前庭機能を評価すること(例えば、ENGまたはVNG、姿勢図検査、回転椅子試験、ECOG、VEMP、または特殊臨床平衡試験などの標準的な試験を使用して、前庭機能を評価すること)をさらに含む、E1~E329のいずれか1項に記載の方法。
【0219】
E331.前記AAV1ベクターまたは組成物が、難聴の予防もしくは低減、前庭機能障害の予防もしくは低減、耳鳴の予防もしくは低減、難聴の発症の遅延、前庭機能障害の発症の遅延、難聴の進行の緩徐、前庭機能障害の進行の緩徐、聴力の改善、前庭機能の改善(例えば、平衡の改善またはめまい(dizziness)もしくはめまい(vertigo)の改善)、内耳細胞再生(例えば、蝸牛有毛細胞、前庭有毛細胞、もしくはらせん神経節ニューロンの再生)の促進もしくは誘導、有毛細胞数(例えば、IHC、OHC、及び/または前庭有毛細胞数)の増加、SGN数の増加、支持細胞数の増加(例えば、蝸牛及び/または前庭支持細胞、例えば、支持細胞増殖の増加)、支持細胞の有毛細胞への分化の増加(例えば、IHC及び/またはOHCへの蝸牛支持細胞分化の誘導、及び/または前庭有毛細胞への前庭支持細胞分化の誘導)、内耳細胞の損傷もしくは死(例えば、IHC、OHC、SGN、蝸牛支持細胞、前庭支持細胞、及び/または前庭有毛細胞の損傷もしくは死)の予防もしくは低減、内耳細胞の発達の促進もしくは増加、内耳細胞生存の促進もしくは増加(例えば、損傷した内耳細胞の生存の増加、損傷した内耳細胞の修復の促進、または内耳細胞の損傷または変性もしくは喪失のリスクがある対象の内耳細胞の保護)、内耳細胞機能の改善、リボンシナプスの保護、リボンシナプス形成の促進もしくは増加、有毛細胞とニューロン(例えば、SGN及び/または前庭神経節ニューロン)との間の結合(例えば、シナプス結合)の維持、あるいは有毛細胞とニューロン(例えば、SGN及び/または前庭神経節ニューロン)との間の結合(例えば、シナプス結合)の増加もしくは回復に十分な量で投与される、E1~E330のいずれか1項に記載の方法。
【0220】
E332.前記対象が、難聴(例えば、感音難聴、聴覚消失、または聴覚神経障害)を有するか、またはそれを発症するリスクがある、E1~E331のいずれか1項に記載の方法。
【0221】
E333.前記対象が、前庭機能障害(例えば、めまい(dizziness)、めまい(vertigo)、または不均衡)を有するか、またはそれを発症するリスクがある、E1~E332のいずれか1項に記載の方法。
【0222】
E334.前記対象が、前庭機能障害(例えば、めまい(dizziness)、めまい(vertigo)、または不均衡)を有すると以前に診断されている、E1~E333のいずれか1項に記載の方法。
【0223】
E335.前記対象が、難聴(例えば、感音難聴、聴覚消失、または聴覚神経障害)を有すると以前に診断されている、E1~E334のいずれか1項に記載の方法。
E336.前記難聴が、遺伝的難聴である、E234~E236、E238、E247、E254、E264、E270、E288~E291、及びE331~E335のいずれか1項に記載の方法。
【0224】
E337.前記遺伝的難聴が、常染色体優性難聴、常染色体劣性難聴、またはX連鎖性難聴である、E336に記載の方法。
E338.前記難聴が、後天性難聴である、E234~E236、E238、E247、E254、E264、E270、E288~E291、及びE331~E335のいずれか1項に記載の方法。
【0225】
E339.前記後天性難聴が、騒音性難聴、加齢性難聴、疾患もしくは感染による難聴、頭部外傷による難聴、または聴覚毒性薬物誘発性難聴である、E338に記載の方法。
E340.前記後天性難聴が、加齢性難聴である、E339に記載の方法。
【0226】
E341.前記難聴が、騒音性難聴である、E339のいずれか1項に記載の方法。
E342.前記難聴が、聴覚毒性薬物誘発性難聴である、E339に記載の方法。
E343.表5のプロモーターのリストから選択されるプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む、AAV1ベクター。
【0227】
E344.前記プロモーターが、GFAPプロモーターである、E343に記載のAAV1ベクター。
E345.前記プロモーターが、SYNプロモーターである、E343に記載のAAV1ベクター。
【0228】
E346.前記プロモーターが、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、STRCプロモーター、MYO15プロモーター、OTOFプロモーター、SLC17A8プロモーター、FGF8プロモーター、JAG1プロモーター、NOTCH1プロモーター、MYO7Aプロモーター、GLASTプロモーター、POU4F3プロモーター、GFI1プロモーター、KCNQ1プロモーター、KCNJ10プロモーター、TYRプロモーター、SOX2プロモーター、CALB2プロモーター、BHLHE22プロモーター、LGR5プロモーター、HES1プロモーター、HES5プロモーター、SOX9プロモーター、ATP2B2プロモーター、CD44プロモーター、FGFR3プロモーター、FRZBプロモーター、SLC26A4プロモーター、CEACAM16プロモーター、CLDN11プロモーター、PMP22プロモーター、KCNE1プロモーター、POU3F4プロモーター、GJB2プロモーター、及びTUBB3プロモーターからなる群から選択される、E343に記載のAAV1ベクター。
【0229】
E347.前記プロモーターが、前記SLC26A5プロモーターである、E346に記載のAAV1ベクター。
E348.前記プロモーターが、前記OCMプロモーターである、E346に記載のAAV1ベクター。
【0230】
E349.前記プロモーターが、前記OTOFプロモーターである、E346に記載のAAV1ベクター。
E350.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E346に記載のAAV1ベクター。
【0231】
E351.前記プロモーターが、前記ATP2B2プロモーターである、E346に記載のAAV1ベクター。
E352.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E346に記載のAAV1ベクター。
【0232】
E353.前記プロモーターが、前記TYRプロモーターである、E346に記載のAAV1ベクター。
E354.前記ポリヌクレオチドが、表2に列記されるポリヌクレオチドから選択される、E343~E353のいずれか1項に記載のAAV1ベクター。
【0233】
E355.前記ポリヌクレオチドが、Otofをコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E356.前記ポリヌクレオチドが、Strcをコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0234】
E357.前記ポリヌクレオチドが、Atoh1をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E358.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0235】
E359.前記ポリヌクレオチドが、Slc17a8をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E360.前記ポリヌクレオチドが、Tmc1をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0236】
E361.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E362.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0237】
E363.前記ポリヌクレオチドが、Sox4をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E364.前記ポリヌクレオチドが、Sox11をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0238】
E365.前記ポリヌクレオチドが、Ush1cをコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E366.前記ポリヌクレオチドが、Myo7aをコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0239】
E367.前記ポリヌクレオチドが、Clrn1をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E368.前記ポリヌクレオチドが、Chrna9をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0240】
E369.前記ポリヌクレオチドが、Chrna10をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E370.前記ポリヌクレオチドが、Tmtc4をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0241】
E371.前記ポリヌクレオチドが、Ocmをコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E372.前記ポリヌクレオチドが、Tyrをコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0242】
E373.前記ポリヌクレオチドが、Tead2をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
E374.前記ポリヌクレオチドが、Yap1をコードする、E354に記載のAAV1ベクター。
【0243】
E375.表2に列記される前記ポリヌクレオチドから選択されるポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーターを含む、AAV1ベクター。
E376.前記ポリヌクレオチドが、Otofをコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0244】
E377.前記ポリヌクレオチドが、Strcをコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E378.前記ポリヌクレオチドが、Atoh1をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0245】
E379.前記ポリヌクレオチドが、Gjb2をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E380.前記ポリヌクレオチドが、Slc17a8をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0246】
E381.前記ポリヌクレオチドが、Tmc1をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E382.前記ポリヌクレオチドが、Ntf3をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0247】
E383.前記ポリヌクレオチドが、Bdnfをコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E384.前記ポリヌクレオチドが、Sox4をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0248】
E385.前記ポリヌクレオチドが、Sox11をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E386.前記ポリヌクレオチドが、Ush1cをコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0249】
E387.前記ポリヌクレオチドが、Myo7aをコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E388.前記ポリヌクレオチドが、Clrn1をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0250】
E389.前記ポリヌクレオチドが、Chrna9をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E390.前記ポリヌクレオチドが、Chrna10をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0251】
E391.前記ポリヌクレオチドが、Tmtc4をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E392.前記ポリヌクレオチドが、Ocmをコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0252】
E393.前記ポリヌクレオチドが、Tyrをコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E394.前記ポリヌクレオチドが、Tead2をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
【0253】
E395.前記ポリヌクレオチドが、Yap1をコードする、E375に記載のAAV1ベクター。
E396.プロモーターが、表5のプロモーターのリストから選択される、E375~E395のいずれか1項に記載のAAV1ベクター。
【0254】
E397.前記プロモーターが、GFAPプロモーターである、E396に記載のAAV1ベクター。
E398.前記プロモーターが、SYNプロモーターである、E396に記載のAAV1ベクター。
【0255】
E399.前記プロモーターが、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、STRCプロモーター、MYO15プロモーター、OTOFプロモーター、SLC17A8プロモーター、FGF8プロモーター、JAG1プロモーター、NOTCH1プロモーター、MYO7Aプロモーター、GLASTプロモーター、POU4F3プロモーター、GFI1プロモーター、KCNQ1プロモーター、KCNJ10プロモーター、TYRプロモーター、SOX2プロモーター、CALB2プロモーター、BHLHE22プロモーター、LGR5プロモーター、HES1プロモーター、HES5プロモーター、SOX9プロモーター、ATP2B2プロモーター、CD44プロモーター、FGFR3プロモーター、FRZBプロモーター、SLC26A4プロモーター、CEACAM16プロモーター、CLDN11プロモーター、PMP22プロモーター、KCNE1プロモーター、POU3F4プロモーター、GJB2プロモーター、及びTUBB3プロモーターからなる群から選択される、E396に記載のAAV1ベクター。
【0256】
E400.前記プロモーターが、前記SLC26A5プロモーターである、E399に記載のAAV1ベクター。
E401.前記プロモーターが、前記OCMプロモーターである、E399に記載のAAV1ベクター。
【0257】
E402.前記プロモーターが、前記OTOFプロモーターである、E399に記載のAAV1ベクター。
E403.前記プロモーターが、前記MYO15プロモーターである、E399に記載のAAV1ベクター。
【0258】
E404.前記プロモーターが、前記ATP2B2プロモーターである、E399に記載のAAV1ベクター。
E405.前記プロモーターが、前記GJB2プロモーターである、E399に記載のAAV1ベクター。
【0259】
E406.前記プロモーターが、前記TYRプロモーターである、E399に記載のAAV1ベクター。
E407.前記AAV1ベクターが、AAV2 ITRを含む、E343~E406のいずれか1項に記載のAAV1ベクター。
【0260】
E408.前記AAV1ベクターが、野生型AAV1キャプシドを含む(例えば、前記AAV1ベクターが、配列番号1~3のアミノ酸配列を有するキャプシドタンパク質を含有する)、E343~E407のいずれか1項に記載のAAV1ベクター。
【0261】
E409.E343~E408のいずれか1項に記載のAAV1ベクターを含む、薬学的組成物。
E410.薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む、E409に記載の薬学的組成物。
【0262】
E411.前記薬学的組成物が、前記内耳または中耳への局所投与用に製剤化される、E409またはE410に記載の薬学的組成物。
E412.E343~E408のいずれか1項に記載のAAV1ベクターまたはE409~E411のいずれか1項に記載の薬学的組成物を含有する、キット。
【0263】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の説明、特許請求の範囲、及び図面において当業者に明らかである。
定義
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、記載される値を上回るまたは下回る10%以内の値を指す。
【0264】
本明細書で使用する場合、「投与」は、任意の有効な経路によって、対象に治療剤(例えば、本明細書に記載のAAV1ベクター)を提供または与えることを指す。例示的な投与経路を本明細書において以下に記載する。
【0265】
本明細書で使用する場合、「アデノ随伴ウイルス血清型1ベクター」及び「AAV1ベクター」という用語は、AAV1キャプシドを有するアデノ随伴ウイルスベクターを指す。「アデノ随伴ウイルス血清型1ベクター」及び「AAV1ベクター」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、野生型AAV1キャプシドタンパク質(VP1、VP2、及びVP3)を有するAAVベクターだけでなく、霊長類の内耳において広範な向性の野生型AAV1を有する配列修飾を伴う、AAV1キャプシドタンパク質を有するAAVベクターも指す。本明細書に記載の組成物及び方法で使用することができるAAV1ベクターとしては、野生型AAV1キャプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一(例えば、野生型AAV1キャプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3のアミノ酸配列に対して90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一)であるアミノ酸配列を有するAAV1キャプシドタンパク質を有するもの、ならびに野生型AAV1キャプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3のアミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸置換(例えば、最大5、最大10、最大15、最大20、最大25、最大30、最大35、最大40、最大45、または最大50の保存的アミノ酸置換)、及び/または1つ以上の非保存的アミノ酸置換(例えば、最大5、最大10、最大15、最大20、最大25、最大30、最大35、最大40、最大45、または最大50の非保存的アミノ酸置換)を有するAAV1キャプシドタンパク質を有するものが挙げられる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用することができるAAV1ベクターは、以下のアミノ酸置換:L129F、E418D、E531K、F584L、A598V、及びN642Hの6つすべてを含有しない。本明細書に記載の組成物及び方法で使用することができるAAV1ベクターは、プロテオソーム分解を低減するTyr252~Phe272(Y252F)、Tyr272~Phe272(Y272F)、Tyr444~Phe444(Y444F)、Tyr500~Phe500(Y500F)、Tyr700~Phe700(Y700F)、Tyr704~Phe704(Y704F)、Tyr730~Phe730(Y730F)、及びTyr733~Phe733(Y733F)などのキャプシドタンパク質上の1つ以上の表面露出チロシン残基に変異を有し得る。本明細書に記載の組成物及び方法で使用されるAAV1ベクターのキャプシドタンパク質は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,759,237号に記載のアミノ酸配列を有し、ポリヌクレオチド配列によってコードされ得る。AAV1キャプシドタンパク質はまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,749,492号に記載されるように修飾され得る。内耳の向性は、本明細書に記載の方法を使用して評価することができる。
【0266】
本明細書で使用する場合、「細胞型」という用語は、遺伝子発現データに基づいて統計的に分離可能な表現型を共有する細胞群を指す。例えば、共通の細胞型の細胞は、類似の遺伝子活性化パターン及び抗原提示プロファイルなどの類似の構造的及び/または機能的特徴を共有し得る。共通の細胞型の細胞は、生物における共通の組織(例えば、上皮組織、神経組織、結合組織、または筋肉組織)から単離されたもの、及び/または共通の臓器、組織系、血管、または他の構造及び/または領域から単離されたものを含み得る。
【0267】
本明細書で使用する場合、「保存的変異」、「保存的置換」、及び「保存的アミノ酸置換」という用語は、極性、静電電荷、及び立体体積などの類似の物理化学的特性を呈する1つ以上の異なるアミノ酸に対する1つ以上のアミノ酸の置換を指す。これらの特性を、以下の表1に20の天然に存在するアミノ酸の各々について要約する。
【0268】
【0269】
この表から、保存的アミノ酸ファミリーには、(i)G、A、V、L、及びI;(ii)D及びE;(iii)C、S、及びT;(iv)H、K、及びR;(v)N及びQ;ならびに(vi)F、Y、及びWが含まれることが理解される。したがって、保存的変異または置換は、同じアミノ酸ファミリーのメンバーに対して1つのアミノ酸を置換するものである(例えば、Thrに対するSerの置換またはArgに対するLysの置換)。
【0270】
本明細書で使用する場合、「発達した内耳細胞」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)における37週間以降(例えば、37週間、38週間、39週間、40週間、41週間、42週間以降)の分娩の開始として定義される、満期妊娠中に生じる発達プロセスを完了した内耳細胞を指す。ヒト成人、青少年、小児、乳児、及び満期新生児の耳は、発達した内耳細胞を含有する。発達した内耳細胞は、細胞特異的マーカーを発現し、本明細書に記載のAAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)を使用して形質導入することができる。
【0271】
本明細書で使用する場合、本明細書に記載の組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの「有効量」、「治療有効量」、及び「十分な量」という用語は、対象に投与されると、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量を指し、したがって、「有効量」またはそれに対する同義語は、それが適用される文脈に依存する。例えば、感音難聴、耳鳴、または前庭機能障害を治療する文脈において、それは、組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターを投与せずに得られた応答と比較して、治療応答を達成するのに十分な組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの量である。内耳細胞を形質導入する文脈において、それは、1つ以上の内耳細胞型(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15以上の内耳細胞型)を形質導入するのに十分な組成物、ベクター構築物、またはウイルスベクターの量である。そのような量に対応する本明細書に記載の所与の組成物の量は、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患または障害の種類、治療される対象(例えば、年齢、性別、体重)または宿主の同一性などの様々な要因に応じて変化するが、それでも、当該技術分野で既知の日常的な方法によって、当業者によって日常的に決定することができる。投薬レジメンを調整して、最適な治療応答を提供することができる。
【0272】
本明細書で使用する場合、「エンハンサー」という用語は、転写開始部位に対するエンハンサーの距離または定位にかかわらず、転写の効率を増加させることができる調節エレメントの種類を指す。したがって、エンハンサーは、転写開始部位の上流もしくは下流、またはプロモーターからかなりの距離に配置され得る。エンハンサーはまた、物理的及び機能的にプロモーターと重複してもよい。プロモーター配列(例えば、CMVプロモーター)を含むいくつかのポリヌクレオチドは、エンハンサー配列も含有する。
【0273】
本明細書で使用する場合、「発現する」という用語は、以下の事象のうちの1つ以上を指す:(1)DNA配列からのRNAテンプレートの産生(例えば、転写による);(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端プロセシングによる);(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;及び(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。
【0274】
本明細書で使用する場合、「異種」という用語は、天然に存在しない要素の組み合わせを指す。例えば、異種導入遺伝子は、それが作動可能に連結されるプロモーターによって天然に発現されない導入遺伝子を指す。
【0275】
本明細書で使用する場合、「増加する」及び「減少する」という用語は、それぞれ、参照に対する測定基準より大きいまたは小さい量の機能、発現、または活性をもたらす調節を指す。例えば、本明細書に記載の方法で組成物を投与した後、本明細書に記載される測定基準のマーカー(例えば、導入遺伝子発現)の量は、投与前のマーカーの量に対して、対象において少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%以上増加または減少し得る。一般に、測定基準は、投与が列挙された効果を有した時点で、例えば、治療レジメンが開始された少なくとも1週間、1ヶ月、3ヶ月、または6ヶ月後の投与後に測定される。
【0276】
本明細書で使用する場合、「内耳細胞型」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)対象の内耳(例えば、蝸牛及び/または前庭系)に見られる細胞型を指す。内耳細胞型には、内有毛細胞、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン(前庭神経節ニューロン)、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞が含まれる。
【0277】
本明細書で使用する場合、「局所的に」または「局所投与」は、全身効果ではなく局所効果を意図する身体の特定の部位における投与を意味する。局所投与の例は、皮膚、吸入、関節内、髄腔内、膣内、硝子体内、子宮内、病巣内投与、リンパ節投与、腫瘍内投与、内耳への投与(例えば、卵円窓、正円窓、または水平管などを介した外リンパまたは内リンパへの投与、例えば、鼓膜内または経鼓膜投与)、ならびに対象の粘膜への投与であり、投与は、全身効果ではなく局所効果を有することを意図する。
【0278】
本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」という用語は、第2の分子に結合された第1の分子を指し、分子は、第1の分子が第2の分子の機能に影響を及ぼすように配置される。2つの分子は、単一の連続する分子の一部であってもなくてもよく、隣接していてもいなくてもよい。例えば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なポリヌクレオチド分子の転写を調節する場合、プロモーターは、転写可能なポリヌクレオチド分子に作動可能に連結される。加えて、転写調節エレメントの2つの部分が、一方の部分の転写活性化機能性が他方の部分の存在によって悪影響を受けないように結合される場合、互いに動作可能に連結される。2つの転写調節エレメントは、リンカー核酸(例えば、介在する非コード核酸)によって互いに作動可能に連結され得るか、または介在するヌクレオチドが存在しない状態で互いに作動可能に連結され得る。
【0279】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシドのポリマーを指す。典型的には、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって結合されたDNAまたはRNA(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)に天然に見られるヌクレオシドから構成される。本用語は、天然に存在する核酸に見られるか否かにかかわらず、化学的または生物学的に修飾された塩基、修飾された骨格等を含有するヌクレオシドまたはヌクレオシド類似体を含有する分子を包含し、そのような分子は、ある特定の用途に好ましい場合がある。本出願がポリヌクレオチドを指す場合、DNA、RNAの両方、ならびに各場合において、一本鎖及び二本鎖形態(及び各一本鎖分子の補体)の両方が提供されることが理解される。本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド材料自体、及び/または特定の核酸を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、塩基の略語として使用される一連の文字)を指し得る。本明細書に提示されるポリヌクレオチド配列は、別途示されない限り、5’から3’の方向に提示される。
【0280】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼによって結合されるDNA上の認識部位を指す。ポリメラーゼは、プロモーターに作動可能に連結された導入遺伝子の転写を駆動する。
【0281】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列中の核酸またはアミノ酸と同一である候補配列中の核酸またはアミノ酸のパーセンテージとして定義される。核酸またはアミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の能力の範囲内の様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性パーセント値は、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して生成され得る。例示として、所与の核酸またはアミノ酸配列Aの、所与の核酸またはアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する配列同一性パーセント(代替的に、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに、それと、またはそれに対してある特定の配列同一性パーセントを有する所与の核酸またはアミノ酸配列Aと表現することができる)は、以下のように計算される:
100に(分数X/Y)を掛けたもの
式中、Xは、そのプログラムのA及びBのアライメントにおける配列アライメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一の一致としてスコア化されたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bにおける核酸の総数である。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが核酸またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AとBの配列同一性パーセントは、BとAの配列同一性パーセントと等しくないことが理解されるであろう。
【0282】
本明細書で使用する場合、「薬学的組成物」という用語は、任意選択で、対象に影響を及ぼす、または影響を及ぼし得る特定の疾患または状態を予防、治療、または制御するために、対象に投与される1つ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、及び/または担体と組み合わせて、治療剤を含有する混合物を指す。
【0283】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、及び合理的な利益/リスク比に見合った他の問題のある合併症を伴わずに対象の組織との接触に好適な、それらの化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指す。
【0284】
本明細書で使用する場合、「試料」という用語は、対象から単離された検体(例えば、血液、血液構成要素(例えば、血清または血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、神経組織、胎盤組織、または真皮組織)、膵液、絨毛膜絨毛試料、及び細胞(例えば、内耳細胞または幹細胞)を指す。
【0285】
本明細書で使用する場合、「転写調節エレメント」という用語は、ポリヌクレオチドの転写を少なくとも部分的に制御する核酸を指す。転写制御エレメントは、遺伝子転写を制御するか、または制御するのに役立つプロモーター、エンハンサー、及び他の核酸(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含み得る。転写調節エレメントの例は、例えば、Lorence,Recombinant Gene Expression:Reviews and Protocols(Humana Press,New York,NY,2012)に記載されている。
【0286】
本明細書で使用する場合、「対象」及び「患者」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)を指す。本明細書に記載の方法に従って治療される対象は、難聴(例えば、感音難聴、聴覚神経障害、もしくは聴覚消失)、耳鳴、もしくは前庭機能障害(例えば、めまい(dizziness)、めまい(vertigo)、もしくは平衡喪失)と診断されたもの、またはこれらの状態を発症するリスクがあるもの(例えば、年齢、頭部外傷、聴覚外傷(例えば、大きな騒音への暴露)、疾患もしくは感染、聴覚毒性薬物による治療、遺伝的変異、または難聴、耳鳴、もしくは前庭機能障害の家族歴に起因する難聴、耳鳴、もしくは前庭機能障害を発症するリスクがある対象)であり得る。診断は、当該技術分野で既知の任意の方法または技法によって行うことができる。当業者は、本開示に従って治療される対象が、標準的な試験を受けている場合があるか、または疾患または状態に関連する1つ以上のリスク因子の存在に起因するリスクがあるため、検査なしに特定されている場合があることを理解するであろう。
【0287】
本明細書で使用する場合、「形質導入」及び「形質導入する」という用語は、ベクター構築物またはその一部を細胞に導入する方法を指す。ベクター構築物が、ウイルスベクター、例えば、AAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)に含有される場合、形質導入は、細胞のウイルス感染、ならびにその後のベクター構築物またはその一部の細胞への移入及び/または組み込みを指す。本明細書で使用する場合、「内耳細胞型を形質導入する」ために必要なAAV1ベクターの量は、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の少なくとも20%(例えば、所与の細胞型の細胞の少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、または100%、例えば、所与の細胞型またはすべての内耳細胞型の細胞の20~25%、20~30%、20~35%、20~40%、20~45%、20~50%、20~55%、20~60%、20~65%、20~70%、20~75%、20~80%、20~85%、20~90%、20~95%、20~100%、25~30%、25~35%、25~40%、25~45%、25~50%、25~55%、25~60%、25~65%、25~70%、25~75%、25~80%、25~85%、25~90%、25~95%、25~100%、30~35%、30~40%、30~45%、30~50%、30~55%、30~60%、30~65%、30~70%、30~75%、30~80%、30~85%、30~90%、30~95%、30~100%、35~40%、35~45%、35~50%、35~55%、35~60%、35~65%、35~70%、35~75%、35~80%、35~85%、35~90%、35~95%、35~100%、40~45%、40~50%、40~55%、40~60%、40~65%、40~70%、40~75%、40~80%、40~85%、40~90%、40~95%、40~100%、45~50%、45~55%、45~60%、45~65%、45~70%、45~75%、45~80%、45~85%、45~90%、45~95%、45~100%、50~55%、50~60%、50~65%、50~70%、50~75%、50~80%、50~85%、50~90%、50~95%、50~100%、55~60%、55~65%、55~70%、55~75%、55~80%、55~85%、55~90%、55~95%、55~100%、60~65%、60~70%、60~75%、60~80%、60~85%、60~90%、60~95%、60~100%、65~70%、65~75%、65~80%、65~85%、65~90%、65~95%、65~100%、70~75%、70~80%、70~85%、70~90%、70~95%、70~100%、75~80%、75~85%、75~90%、75~95%、75~100%、80~85%、80~90%、80~95%、80~100%、85~90%、85~95%、85~100%、90~95%、90~100%、または95%~100%)を形質導入するのに必要な量として定義される。
【0288】
本明細書で使用する場合、疾患または状態に関して「治療」及び「治療すること」は、有益なまたは所望の結果、例えば、臨床結果を得るためのアプローチを指す。有益なまたは所望の結果は、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、1つ以上の症状または状態の軽減または回復、疾患または状態の程度の減少、疾患、障害、または状態の安定した(すなわち、悪化しない)状態、疾患または状態の拡散の防止、疾患または状態の進行の遅延または緩徐、疾患または状態の回復または緩和、ならびに寛解(部分的または完全であるかにかかわらず)を含み得るが、これらに限定されない。疾患または状態を「回復させること」または「緩和すること」は、治療の不在下での程度または時間経過と比較して、疾患、障害、または状態の程度及び/または望ましくない臨床症状が軽減され、及び/または進行の時間経過が緩徐もしくは延長されることを意味する。「治療」はまた、治療を受けていない場合、予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを意味し得る。治療を必要とするものには、既にその状態もしくは障害を患っているもの、ならびにその状態もしくは障害を患いやすいもの、またはその状態もしくは障害が予防されるべきであるものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0289】
【
図1A】CMVプロモーターの制御下でEGFPを発現するAAV1ベクターで処置された9~10週齢のマウスの内耳の一連の蛍光画像である。CBA/CaJマウス(n=6)において、0.1μL/分の流量で、1μLのAAV1-CMV-GFP(2.94×10
13ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を内耳の後溝に投与するために、片側注射を使用した。注射の2週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。代表的な耳の1つが示される。EGFP発現は、蝸牛の頂部、中央、及び基底部の回転で観察された(
図1A、左上パネル:蝸牛の頂部、下部パネル:蝸牛の中回転、右上パネル:蝸牛の基底回転)。
【
図1B】CMVプロモーターの制御下でEGFPを発現するAAV1ベクターで処置された9~10週齢のマウスの内耳の一連の蛍光画像である。CBA/CaJマウス(n=6)において、0.1μL/分の流量で、1μLのAAV1-CMV-GFP(2.94×10
13ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を内耳の後溝に投与するために、片側注射を使用した。注射の2週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。代表的な耳の1つが示される。高倍率画像は、EGFPが、内有毛細胞(IHC)、頂部領域における外有毛細胞(OHC)、及びらせん板縁の細胞において発現されることを示す(
図1B)。
【
図2A】CAGプロモーターの制御下でEGFPを発現するAAV7m8ベクターで処置された9~10週のマウスの内耳の一連の蛍光画像である。9~10週齢のCBA/CaJマウス(n=8)において、0.1μL/分の流量で、1μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を内耳の後溝に投与するために、片側注射を行った。注射の2週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。代表的な耳の1つが示される。EGFP発現は、蝸牛の頂部、中央、及び基底部の回転において観察された(
図2A)。
【
図2B】CAGプロモーターの制御下でEGFPを発現するAAV7m8ベクターで処置された9~10週のマウスの内耳の一連の蛍光画像である。9~10週齢のCBA/CaJマウス(n=8)において、0.1μL/分の流量で、1μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を内耳の後溝に投与するために、片側注射を行った。注射の2週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。代表的な耳の1つが示される。高倍率画像は、蝸牛の基底から頂部の範囲全体にわたってIHC、OHC、ならびにらせん神経節及びらせん板縁の細胞を含む複数の細胞型におけるEGFP発現を示す(
図2B;左側パネル:蝸牛の頂部;中央パネル:蝸牛の中回転;右側パネル:蝸牛の基底回転)。
【
図3A】CMVプロモーターの制御下でGFPを発現するAAV2ベクターで処置されたアカゲザルの内耳の一連の蛍光画像である。15μL/分の流量で、30μLのAAV2-CMV-GFP(3.39×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を内耳の正円窓に投与するために、片側(n=1匹の動物)及び両側(n=2匹の動物)注射を使用した。注射の4週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。代表的な耳の1つが示される。Myo7Aの免疫組織化学を使用して、有毛細胞を特定し(
図3A、右列のパネル)、GFP発現を使用して、AAV1感染性を監視した(
図3A、左列のパネル)。アカゲザルの内耳のAAV2-CMV-GFP形質導入は、蝸牛の基底-頂軸にわたってGFP発現をもたらした(
図3A、左上パネル:蝸牛の頂部、左中パネル:蝸牛の中回転、左下パネル:蝸牛の基底回転)。蝸牛GFP発現は、IHC内及びらせん板縁内の一部の細胞内で観察された(
図3A、左列のパネル)。
【
図3B】CMVプロモーターの制御下でGFPを発現するAAV2ベクターで処置されたアカゲザルの内耳の一連の蛍光画像である。15μL/分の流量で、30μLのAAV2-CMV-GFP(3.39×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を内耳の正円窓に投与するために、片側(n=1匹の動物)及び両側(n=2匹の動物)注射を使用した。注射の4週間後、内耳を除去し、基底膜の表面調製を行った。代表的な耳の1つが示される。GFP発現を、蝸牛の周波数マップに沿ってIHCにおいて定量化し、IHCの40~80%におけるGFPの発現を示した(
図3B)。
【
図4A】CAGプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノ随伴ウイルス血清型7m8(AAV7m8)ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の2週間(n=1匹の動物)または4週間(n=1匹の動物)後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。1匹の動物において、AAV7m8-CAG-EGFPでの内耳の形質導入の2週間後、EGFPの免疫染色を使用して可視化されるように、EGFP発現が蝸牛の基底回転で観察された(
図4A、上部パネル:破線の正方形は蝸牛の基底回転を示す)。EGFPは、らせん靭帯におけるIHC、OHC、及び線維細胞において発現された(
図4B、
図4Aの破線正方形の拡大;左上の挿入図:コルチ器官(organ of Corti)の拡大図)。
【
図4B】CAGプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノ随伴ウイルス血清型7m8(AAV7m8)ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の2週間(n=1匹の動物)または4週間(n=1匹の動物)後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。1匹の動物において、AAV7m8-CAG-EGFPでの内耳の形質導入の2週間後、EGFPの免疫染色を使用して可視化されるように、EGFP発現が蝸牛の基底回転で観察された(
図4A、上部パネル:破線の正方形は蝸牛の基底回転を示す)。EGFPは、らせん靭帯におけるIHC、OHC、及び線維細胞において発現された(
図4B、
図4Aの破線正方形の拡大;左上の挿入図:コルチ器官(organ of Corti)の拡大図)。
【
図4C】CAGプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノ随伴ウイルス血清型7m8(AAV7m8)ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の2週間(n=1匹の動物)または4週間(n=1匹の動物)後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。異なる動物では、注射の4週間後、EGFPの発現が蝸牛の基底-頂軸にわたって観察された(
図4C、破線の正方形は蝸牛の基底回転を表し、
図4Dで拡大される)。EGFPは、らせん靭帯におけるIHC、OHC、及び線維細胞において発現された(
図4D、パネルの左上縁部の挿入図において拡大されたコルチ器官)。
【
図4D】CAGプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノ随伴ウイルス血清型7m8(AAV7m8)ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の2週間(n=1匹の動物)または4週間(n=1匹の動物)後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。異なる動物では、注射の4週間後、EGFPの発現が蝸牛の基底-頂軸にわたって観察された(
図4C、破線の正方形は蝸牛の基底回転を表し、
図4Dで拡大される)。EGFPは、らせん靭帯におけるIHC、OHC、及び線維細胞において発現された(
図4D、パネルの左上縁部の挿入図において拡大されたコルチ器官)。
【
図4E】CAGプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノ随伴ウイルス血清型7m8(AAV7m8)ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の2週間(n=1匹の動物)または4週間(n=1匹の動物)後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。
図4Eに示されるように、一次抗GFP抗体の不在下での二次抗体は、蝸牛を染色しなかった(破線の正方形は、蝸牛の基底回転を示す)。基底において染色は観察されなかった(
図4F、
図4Eの正方形の拡大;左上の挿入図において拡大されたコルチ器官)。
【
図4F】CAGプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するアデノ随伴ウイルス血清型7m8(AAV7m8)ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV7m8-CAG-EGFP(9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の2週間(n=1匹の動物)または4週間(n=1匹の動物)後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。
図4Eに示されるように、一次抗GFP抗体の不在下での二次抗体は、蝸牛を染色しなかった(破線の正方形は、蝸牛の基底回転を示す)。基底において染色は観察されなかった(
図4F、
図4Eの正方形の拡大;左上の挿入図において拡大されたコルチ器官)。
【
図5】CAGプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するAAV1ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV1-CAG-GFP(9.9×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の4週間後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。
図5Aに示されるように、抗GFP抗体の不在下での二次抗体単独での染色は、蝸牛を染色せず、抗体の特異性を確認した。内耳のAAV1-CAG-GFP形質導入は、GFPの免疫染色を使用して可視化されるように、内耳の蝸牛及び球形嚢全体にわたって強固なGFP発現をもたらした(
図5B、左上の大きな円は蝸牛の頂回転を示し、左側の小さな楕円は血管条を示し、右下の小さな円は球形嚢を示す)。GFPの免疫染色は、蝸牛の頂回転(
図5C、
図5Bからの左上の円の拡大)及び球形嚢のすべての層(
図5E、
図5Bからの右下の円の拡大)において検出された。強固なGFPの発現が、らせん靭帯、ならびに血管条の周辺細胞及び中間細胞で検出された。血管条の基底細胞は、この切片においてGFPの発現を呈さなかったが、GFPの発現は、蝸牛の他の回転の基底細胞において可視であった(
図5D)。
【
図6】CMVプロモーターの制御下でGFPを発現するAAV1ベクターで処置されたアカゲザルの内耳の一連の蛍光画像である。15μL/分の流量で、30μLのAAV1-CMV-GFP(2.01×10
13ゲノムコピー/mLのウイルス力価)を内耳の正円窓に投与するために、片側(n=1匹の動物)及び両側(n=2匹の動物)注射を使用した。注射の4週間後、内耳を除去し、基底膜、卵形嚢、及び内襞の表面調製を行った。代表的な内耳の1つが示される。Myo7Aの免疫組織化学を使用して、有毛細胞を可視化し、GFP発現を使用して、AAV1感染性を監視した(
図6A~6C)。アカゲザルの内耳のAAV1-CMV-GFP形質導入は、蝸牛の基底-頂軸全体にわたってGFPの強い向汎性発現をもたらした(
図6A)。内有毛細胞(IHC)、外有毛細胞(OHC)、及び支持細胞内、ならびに非感覚らせん靭帯及びらせん板縁において、蝸牛GFP発現が観察された(
図6B、
図6Aの中回転におけるボックス領域の拡大)。卵形嚢及び内襞などの前庭構造はまた、感覚及び非感覚領域の両方において顕著なGFP発現を示した(
図6C)。
【
図7】CAGプロモーターの制御下でGFPを発現するAAV1ベクターで処置されたカニクイザルの内耳のパラフィン切片の一連の画像である。30μLのAAV1-CAG-GFP(3.15×10
10または3.15×10
11ゲノムコピー/耳)を15μL/分の流量で内耳の正円窓に投与するために、両側注射を使用した。注射の4週間後、内耳を除去し、切片化、取り付け、抗GFP抗体による免疫染色、及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。
図7Aに示されるように、抗GFP抗体は、非AAV注射した耳の蝸牛を染色せず、抗体の特異性を確認した。
図7Bは、GFPの免疫染色を使用して可視化されるように、内耳のAAV1-CAG-GFP(3.15×10
10ゲノムコピー/耳)形質導入が、蝸牛全体にわたって強固なGFP発現をもたらしたことを示す。GFPの免疫染色は、有毛細胞、支持細胞、内溝細胞、外溝細胞、及びらせん靭帯の細胞において検出された。より高用量のAAV-CAG-GFP(3.15×10
11ゲノムコピー/耳)は、
図7Cに示されるように、これらの細胞型においてより強いGFP発現を示した。
図7D~7Fは、それぞれ、核染色が除去された
図7A~7Cと同じ画像を示す(すなわち、これらの画像は、GFP標識のみを示す)。すべてのスケールバーは100μmである。
【発明を実施するための形態】
【0290】
発達した霊長類(例えば、ヒト)の内耳細胞(例えば、内有毛細胞、外有毛細胞、前庭有毛細胞、蝸牛支持細胞、及び前庭支持細胞などの蝸牛及び/または前庭系の細胞)を形質導入するための組成物及び方法が本明細書に記載される。本発明は、血清型1アデノ随伴ウイルス(AAV1)ベクターを使用して、霊長類(例えば、ヒト)対象において発達した内耳細胞(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15以上の異なる種類の発達した内耳細胞)を形質導入する方法を特徴とする。本発明はまた、AAV1ベクター、ならびにプロモーター(例えば、1つ以上の内耳細胞型において遺伝子発現を誘導するプロモーター)及び/またはポリヌクレオチド(例えば、治療用タンパク質をコードする遺伝子、例えば、正常な内耳細胞で発現する遺伝子、または内耳細胞の生存、再生、細胞運命、及び/または細胞増殖を調節するタンパク質をコードする遺伝子に対応するポリヌクレオチド)を含有するAAV1ベクターを使用して、霊長類(例えば、ヒト)対象の特定の内耳細胞型(例えば、外有毛細胞、前庭有毛細胞、または前庭支持細胞)においてポリヌクレオチドを発現させる方法を特徴とする。本明細書に記載の組成物及び方法は、霊長類(例えば、ヒト)の内耳細胞のすべてまたはサブセットにおいて1つ以上のポリヌクレオチドを発現させるために使用することができ、したがって、本明細書に記載の組成物は、難聴(例えば、感音難聴)、耳鳴、または前庭機能障害などの内耳細胞の損傷、変性、喪失、及び/または機能障害によって引き起こされる障害を治療するために、霊長類(例えば、ヒト)対象に投与することができる。
【0291】
内耳細胞
内耳にはいくつかの特殊細胞が存在する。蝸牛及び前庭系の両方は、内耳の主要な感覚細胞である有毛細胞を含有する。蝸牛有毛細胞は、音を感知することを担う内有毛細胞(IHC)と、低レベルの音を増幅すると考えられる外有毛細胞(OHC)の2つの主要な細胞型で構成されている。前庭有毛細胞は、前庭系の三半規管及び耳石器(例えば、卵形嚢及び球形嚢)に位置し、平衡感覚及び空間定位に寄与する運動感覚に関与している。らせん神経節ニューロンは、蝸牛有毛細胞を神経支配し、軸索を中枢神経系に送り、一方で、前庭神経節のニューロンは、前庭有毛細胞を神経支配する。支持細胞と呼ばれる非感覚細胞は、蝸牛及び前庭系の有毛細胞の間に存在し、有毛細胞の機械的刺激を可能にする構造的足場を提供すること、内リンパ及び外リンパのイオン組成を維持すること、ならびにリボンシナプスのシナプス形成を調節することなど、いくつかの重要な機能を行う。蝸牛内では、支持細胞は、5つの異なる種類:1)ヘンゼン細胞、2)ダイテルス細胞、3)柱細胞、4)内指節細胞、及び5)境界細胞に細分化することができ、これらはすべて、異なる形態及び遺伝子発現パターンを有する。蝸牛有毛細胞、蝸牛支持細胞、及び/またはらせん神経節ニューロンにおいて発現される遺伝子の変異は、これらの細胞の損傷、傷害、変性、または喪失(例えば、死)を有するため、難聴(例えば、感音難聴)、聴覚神経障害、聴覚消失、及び耳鳴と関連している。同様に、前庭系の細胞(例えば、前庭有毛細胞、前庭支持細胞、及び/または前庭神経節ニューロン)内で発現される遺伝子の変異、ならびに前庭系の細胞の損傷、傷害、変性、または喪失(例えば、死)は、前庭機能障害(例えば、めまい(vertigo)、めまい(dizziness)、及び/または平衡喪失)と関連している。遺伝子療法は、最近、難聴及び前庭機能障害を治療するための魅力的な治療アプローチとして浮上してきたが、難聴及び前庭機能障害の様々な原因に対処するために標的化される必要があり得る多数の細胞型を考慮すると、霊長類(例えば、ヒト)の内耳の多くの細胞型を形質導入するために広範な向性を有するウイルスベクターが必要である。
【0292】
本発明は、部分的には、緑色蛍光タンパク質(GFP)に作動可能に連結された偏在的なプロモーターを含有するAAV1ベクターを成体非ヒト霊長類の内耳に投与することにより、他のAAV血清型を使用して観察される向性とは対照的に、内耳のほとんどまたはすべての細胞型において向汎性質形質導入及びGFPの強い発現がもたらされるという発見に基づく。理論に束縛されることを望まないが、ヒトと非ヒト霊長類との間の高い類似度は、AAV1ベクターが、ほとんどまたはすべての発達したヒトの内耳細胞(例えば、ヒト成人、青少年、小児、または満期新生児におけるほとんどまたはすべての内耳細胞)を形質導入するために使用することができることを示す。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、発達した霊長類(例えば、ヒト)の内耳のすべての細胞内でポリヌクレオチドの発現を誘導することができるか、またはそれらを使用して、AAV1ベクターに含有されるプロモーターに基づいて、内耳の特定の領域(例えば、蝸牛もしくは前庭系)もしくは細胞型(例えば、内有毛細胞、外有毛細胞、前庭有毛細胞、蝸牛支持細胞、及び/または前庭支持細胞などの1つ以上の内耳細胞型)においてポリヌクレオチドの発現を誘導することができる。したがって、本明細書に記載の方法及び組成物は、内耳のすべての細胞型における遺伝的変異またはその損傷、変性、喪失、及び/または機能障害によって引き起こされる障害を治療するために、あるいは内耳細胞型の1つもしくはサブセットにおける遺伝的変異またはその損傷、変性、喪失、及び/または機能障害によって引き起こされる障害を治療するために、霊長類(例えば、ヒト)対象に投与することができる。
【0293】
いくつかの実施形態では、AAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)は、霊長類(例えば、ヒト)対象の発達した内耳細胞に、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン(前庭神経節ニューロン)、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞を含む群から選択される3つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、20以上)の内耳細胞型を形質導入するのに十分な量で投与される。AAV1ベクターによる内耳細胞の向汎性形質導入は、内耳全体にわたって(例えば、ポリヌクレオチドが偏在的なプロモーターに作動可能に連結されるAAV1ベクターにおいて)ポリヌクレオチドの発現を誘導するために使用され得る。3つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15以上)の異なる内耳細胞型を形質導入する能力は、例えば、すべての内耳細胞型において変異する遺伝子の野生型バージョンを送達するか、または高濃度で治療効果をもたらす大量の分泌タンパク質を産生するために、内耳の多くのまたはほとんどの細胞型においてポリヌクレオチドを発現することが望ましい治療アプローチに有益である。
【0294】
いくつかの実施形態では、AAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)は、特定の細胞型(例えば、蝸牛及び/または前庭支持細胞などの支持細胞、OHC、前庭有毛細胞、またはらせん神経節ニューロン)または領域(例えば、蝸牛または前庭系)においてポリヌクレオチドを発現させるために霊長類(例えば、ヒト)対象に投与される。細胞型特異的プロモーターは、1つ以上の細胞型における遺伝子発現を誘導するために、AAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)に含まれ得る。細胞型特異的発現を使用して、1つまたはいくつかの細胞型でのみ自然に発現されるポリヌクレオチドの内因性発現パターンを模倣することができる。このアプローチは、通常発現しない細胞におけるポリヌクレオチドの異所性発現を回避するために使用することができるという点で有益である。
【0295】
ヒト細胞における外因性ポリヌクレオチドの発現
ミオシン7A(MYO7A)、POUクラス4ホメオボックス3(POU4F3)、溶質輸送体ファミリー17メンバー8(SLC17A8)、ギャップ結合タンパク質ベータ2(GJB2)、クラウディン14(CLDN14)、コクリン(COCH)、プロトカドヘリン関連15(PCDH15)、及び膜貫通1(TMC1)などの様々な遺伝子における変異は、感音難聴及び/または聴覚消失に関連付けられており、MYO7A、POU4F3、及びCOCHにおける変異などのこれらの変異のいくつかも、前庭機能不全と関連している。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、発達したヒトの内耳細胞内で、ポリヌクレオチド(例えば、難聴及び/または前庭機能障害に関連する遺伝子、または内耳細胞の発達、機能、細胞運命特定、再生、生存、増殖、及び/または維持に関与する遺伝子の野生型形態などの健常な内耳細胞内で発現する遺伝子に対応する核酸)によってコードされるタンパク質の発現を誘導または増加させることができる。ポリヌクレオチドを含有するAAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)は、1つ以上の内耳細胞型におけるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現を誘導または増加させるために、ヒト対象に(例えば、対象の内耳に)投与することができる。ヒト細胞へのタンパク質の送達、及びヒト細胞におけるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの安定した発現のための幅広い方法が確立されている。
【0296】
本明細書に記載のAAV1ベクターは、1つ以上の内耳細胞型においてポリヌクレオチドを発現させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAV1ベクターは、1つ以上の細胞型において2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ以上)のポリヌクレオチドを発現させるために使用することができる。各細胞型において発現し得る内耳細胞型及びポリヌクレオチドのリストを以下の表2に提供する。表2のポリヌクレオチドの受入番号を表3に提供する。
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
【0312】
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
【0317】
【0318】
【0319】
【0320】
【0321】
【0322】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、遺伝子編集系の構成要素であるか、またはそれをコードする。細胞型特異的プロモーター(例えば、表5に列記される細胞型特異的プロモーター)に作動可能に連結された遺伝子編集系の構成要素を含有するAAV1ベクターを、細胞型特異的遺伝子編集に使用することができる。例えば、遺伝子編集系の構成要素を使用して、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子などの内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子において改変(例えば、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転座、反転、単一点変異、または他の変異)を導入することができる。例示的な遺伝子編集系としては、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターに基づくヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化された規則的な配置の短い回文リピート(clustered regulatory interspaced short palindromic repeat)(CRISPR)系が挙げられる。ZFN、TALEN、及びCRISPRに基づく方法は、例えば、Gaj et al.,Trends Biotechnol.31:397-405,2013に記載されている。
【0323】
CRISPRは、クラスター化された規則的な配置の短い回文リピートのセット(またはセットを含む系)を指す。CRISPR系は、CRISPR及びCas(CRISPR関連タンパク質)、または本明細書に記載の遺伝子を発現停止させるかまたは変異させるために使用することができる別のヌクレアーゼに由来する系を指す。CRISPR系は、細菌及び古細菌ゲノムに見られる天然に存在する系である。CRISPR遺伝子座は、交互のリピート及びスペーサー配列で構成されている。天然に存在するCRISPR系では、スペーサーは、典型的には、細菌にとって異種の配列(例えば、プラスミドまたはファージ配列)である。CRISPR系は、真核生物における遺伝子編集(例えば、特定の遺伝子の変更、サイレンシング、及び/または増強)での使用のために修飾されている。例えば、Wiedenheft et al.,Nature 482:331,2012を参照されたい。例えば、系のそのような修飾は、具体的に設計されたCRISPR及び1つ以上の適切なCasタンパク質を含有するプラスミドを真核細胞に導入することを含む。CRISPR遺伝子座は、RNAに転写され、Casタンパク質によって、スペーサーに隣接する反復配列を含む小さなRNAにプロセシングされる。RNAは、スペーサー配列に応じて、特定のDNA/RNA配列を発現停止させるようにCasタンパク質を指向するガイドとして機能する。例えば、Horvath et al.,Science 327:167,2010、Makarova et al.,Biology Direct 1:7,2006、Pennisi,Science 341:833,2013を参照されたい。いくつかの例において、CRISPR系は、Cas9タンパク質、DNAの両方の鎖を切断するヌクレアーゼを含む。例えば、同上を参照されたい。
【0324】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の使用のためのCRISPR系において、例えば、本明細書に記載の1つ以上の方法に従って、CRISPRのスペーサーは、標的遺伝子配列、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子などの内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子に由来する。
【0325】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、遺伝子編集のためのクラスター化された規則的な配置の短い回文リピート(CRISPR)系に使用するためのガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはZFNをコードするmRNAを含むか、またはそれらをコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子の核酸配列(例えば、DNA配列)を標的とする(例えば、切断する)TALENまたはTALENをコードするmRNAを含むか、またはそれらをコードする。
【0326】
例えば、gRNAは、遺伝子(例えば、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子)の改変を操作するために、CRISPR系において使用され得る。他の例では、ZFN及び/またはTALENは、遺伝子(例えば、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子)の改変を操作するために使用され得る。例示的な改変としては、挿入、欠失(例えば、ノックアウト)、転座、反転、単一点変異、または他の変異が挙げられる。改変は、細胞内の遺伝子に、例えば、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで導入され得る。いくつかの実施形態では、改変は、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴もしくは前庭機能障害に関与する遺伝子のレベル及び/または活性を低下させ(例えば、ノックダウンまたはノックアウト)、例えば、改変は機能の負の調節因子である。さらに別の例では、改変は、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子における欠損(例えば、欠損を引き起こす変異)を修正する。
【0327】
ある特定の実施形態では、CRISPR系は、標的遺伝子、例えば、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子を編集する(例えば、塩基対を付加または削除する)ために使用される。他の実施形態では、CRISPR系は、未成熟停止コドンを導入するために使用され、例えば、それによって標的遺伝子の発現を減少させる。さらに他の実施形態では、CRISPR系は、例えば、RNA干渉と同様に、可逆的に標的遺伝子をオフにするために使用される。いくつかの実施形態では、CRISPR系は、標的遺伝子、例えば、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子のプロモーターにCasを指向するために使用され、それによってRNAポリメラーゼを立体的に遮断する。
【0328】
いくつかの実施形態では、CRISPR系は、例えば、米国公開第20140068797号、Cong,Science 339:819,2013;Tsai,Nature Biotechnol.,32:569,2014、ならびに米国特許第8,871,445号、同第8,865,406号、同第8,795,965号、同第8,771,945号、及び同第8,697,359号に記載の技術を使用して、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子を編集するために生成され得る。
【0329】
いくつかの実施形態では、CRISPR干渉(CRISPRi)技術は、特定の遺伝子、例えば、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子をコードする遺伝子の転写抑制のために使用され得る。CRISPRiにおいて、操作されたCas9タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ-ヌルdCas9、またはdCas9融合タンパク質、例えば、dCas9-KRABまたはdCas9-SID4X融合物)は、配列特異的ガイドRNA(sgRNA)と対合し得る。Cas9-gRNA複合体は、RNAポリメラーゼを遮断することができ、それによって転写伸長を妨げる。複合体はまた、転写因子結合を妨げることによって転写開始を遮断することができる。CRISPRi法は、最小限のオフターゲット効果で特異的であり、多重可能であり、例えば、2つ以上の遺伝子を同時に抑制することができる(例えば、複数のgRNAを使用して)。また、CRISPRi法は、可逆的遺伝子抑制を可能にする。
【0330】
いくつかの実施形態では、CRISPR媒介遺伝子活性化(CRISPRa)は、例えば、本明細書に記載の1つ以上の遺伝子、例えば、内耳細胞機能を調節することが知られている遺伝子、例えば、感音難聴または前庭機能障害に関与する遺伝子の転写活性化に使用され得る。CRISPRa技術において、dCas9融合タンパク質は、転写活性化因子を動員する。例えば、dCas9を使用して、VP64またはp65活性化ドメイン(p65D)などのポリペプチド(例えば、活性化ドメイン)を動員し、遺伝子(複数可)、例えば、内因性遺伝子(複数可)を活性化するために、sgRNA(例えば、単一のsgRNAまたは複数のsgRNA)と共に使用することができる。複数の活性化因子は、複数のsgRNAを使用することによって動員され得、これは、活性化効率を増加させることができる。様々な活性化ドメイン及び単一または複数の活性化ドメインを使用することができる。活性化因子を動員するためにdCas9を操作することに加えて、sgRNAは、活性化因子を動員するように操作され得る。例えば、RNAアプタマーをsgRNAに組み込んで、VP64などのタンパク質(例えば、活性化ドメイン)を動員することができる。いくつかの例では、相乗活性化媒介物(SAM)系は、転写活性化に使用することができる。SAMにおいて、MS2アプタマーは、sgRNAに付加される。MS2は、p65AD及び熱ショック因子1(HSF1)に融合したMS2コートタンパク質(MCP)を動員する。CRISPRi及びCRISPRa技法は、例えば、Dominguez et al.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.17:5,2016により詳細に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0331】
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド
霊長類(例えば、ヒト)の細胞における目的のタンパク質の治療有効細胞内濃度を達成するために使用され得る1つのプラットフォームは、目的のタンパク質をコードする核酸の安定した発現を介して(例えば、霊長類(例えば、ヒト)の細胞の核もしくはミトコンドリアゲノムへの組み込みによって、または霊長類(例えば、ヒト)の細胞の核内のエピソームコンカテーマー形成によって)のものである。核酸は、対応するタンパク質の一次アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。外因性遺伝子を霊長類(例えば、ヒト)の細胞に導入するために、遺伝子を、ベクター、例えば、AAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)に組み込むことができる。内耳細胞への導入のために、AAV1ベクターは、霊長類(例えば、ヒト)対象の内耳に局所的に投与することができる。
【0332】
霊長類(例えば、ヒト)のRNAポリメラーゼによる目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの認識及び結合は、遺伝子発現に重要である。したがって、RNAポリメラーゼを動員し、転写開始部位での転写複合体のアセンブリを促進する転写因子に対して高い親和性を呈するポリヌクレオチド内の配列要素を含めることができる。そのような配列要素には、例えば、プロモーターが含まれ、その配列は、特異的な転写開始因子、及び最終的にはRNAポリメラーゼによって認識及び結合され得る。プロモーターの例は、オンライン刊行物のSmith,et al.,Mol.Sys.Biol.,3:73に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるプロモーターは、偏在的なプロモーター(例えば、内耳のすべての細胞においてポリヌクレオチドの発現を誘導または増加させるため)または細胞型特異的プロモーター(例えば、1つ以上の内耳細胞型におけるポリヌクレオチドの発現を誘導または増加させるため)であり得る。偏在的なプロモーターとしては、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、smCBAプロモーター(Haire et al.,Invest.Opthalmol.Vis.Sci.47:3745-3753,2006に記載される)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1αプロモーターが挙げられる。あるいは、ウイルスゲノムに由来するプロモーターも、霊長類(例えば、ヒト)の細胞内でのポリヌクレオチドの安定した発現に使用することができる。霊長類(例えば、ヒト)の細胞内でのポリヌクレオチドの発現に使用することができる機能的ウイルスプロモーターの例としては、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)プロモーター、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターが挙げられる。
【0333】
1つ以上の内耳細胞型において目的のタンパク質(例えば、表2に列記されるポリヌクレオチド)をコードする核酸を発現させるために本明細書に記載のAAV1ベクターに含まれ得る細胞型特異的プロモーターを、以下の表5に提供する。
【0334】
【0335】
【0336】
目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが霊長類(例えば、ヒト)の細胞に組み込まれると、このポリヌクレオチドの転写は、当該技術分野で既知の方法によって誘導され得る。例えば、発現は、霊長類(例えば、ヒト)の細胞を外部化学試薬、例えば、転写因子及び/またはRNAポリメラーゼのプロモーターへの結合を調節し、したがって遺伝子発現を調節する薬剤に曝露することによって誘導することができる。化学試薬は、例えば、プロモーターに結合した抑制タンパク質を除去することによって、RNAポリメラーゼ及び/または転写因子のプロモーターへの結合を容易にする役割を果たし得る。あるいは、化学試薬は、プロモーターの下流に位置する遺伝子の転写速度が、化学試薬の存在下で増加するように、RNAポリメラーゼ及び/または転写因子に対するプロモーターの親和性を増強する役割を果たし得る。上記の機構によってポリヌクレオチド転写を増強する化学試薬の例としては、テトラサイクリン及びドキシサイクリンが挙げられる。これらの試薬は、市販されており(Life Technologies,Carlsbad,CA)、確立されたプロトコルに従って遺伝子発現を促進するために霊長類(例えば、ヒト)の細胞に投与することができる。
【0337】
本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドに含まれ得る他のDNA配列要素は、エンハンサー配列を含む。エンハンサーは、DNAが転写開始部位での転写因子及びRNAポリメラーゼの結合に好ましい三次元定位を採用するように、ポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドの立体構造変化を誘導する別のクラスの調節エレメントを表す。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドには、目的のタンパク質をコードするものが含まれ、さらにエンハンサー配列が含まれる。多くのエンハンサー配列が現在知られており、例としては、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-胎児性タンパク質、及びインスリンをコードする遺伝子からのエンハンサーが挙げられる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのエンハンサーには、真核細胞に感染することができるウイルスの遺伝材料に由来するものも含まれる。例としては、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。真核遺伝子転写の活性化を誘導する追加のエンハンサー配列としては、CMVエンハンサー及びRSVエンハンサーが挙げられる。エンハンサーは、例えば、この遺伝子の5’または3’位に、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターにスプライシングされ得る。好ましい定位では、エンハンサーは、プロモーターの5’側に位置し、プロモーターは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドに対して5’側に位置する。
【0338】
本明細書に記載のAAV1ベクターは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含み得る。WPREは、転写物の核外輸送を促進することによって、及び/または新生転写物のポリアデニル化の効率を増加させることによって、転写レベルで作用し、したがって細胞中のmRNAの総量を増加させる。ベクターへのWPREの付加は、インビトロ及びインビボの両方で、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子発現レベルの実質的な改善をもたらすことができる。
【0339】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAV1ベクターは、レポーター配列を含み、このレポーター配列は、AAV1ベクター、例えば、細胞及び組織(例えば、蝸牛及び/または前庭系、または特定の内耳細胞型、例えば、IHC、OHC、蝸牛支持細胞、前庭有毛細胞、及び/または前庭支持細胞)中に含有される核酸の発現を検証するのに有用であり得る。導入遺伝子に提供され得るレポーター配列としては、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Cat)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野で周知の他のものをコードするDNA配列が挙げられる。本明細書に記載の偏在的なまたは細胞型特異的プロモーターなどのそれらの発現を駆動する調節エレメントと関連する場合、レポーター配列は、酵素、放射線、比色、蛍光、または他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む、従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを担持するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを担持するベクターは、ルミノメーターにおいて色または光産生によって視覚的に測定され得る。
【0340】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAV1ベクターは、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、表2に列記される2つ以上のポリヌクレオチド、例えば、AAV1ベクターは、2つの異なる目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する)を発現させるために使用される。いくつかの実施形態では、2つ以上のポリヌクレオチドは、バイシストロン性またはポリシストロン性発現カセットを使用して発現される。いくつかの実施形態では、ポリシストロン性発現カセットは、2つ以上のポリヌクレオチドの間に配置された内部リボソーム侵入部位(IRES)(例えば、2つの異なる目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの間に配置されたIRES)を含む。いくつかの実施形態では、ポリシストロン性発現カセットは、2つ以上のポリヌクレオチドの間に配置された口蹄疫ウイルス2A(FMDV2A)ポリヌクレオチド(例えば、目的のタンパク質をコードする各核酸の間に配置されたFMDV2Aポリヌクレオチド)を含む。
【0341】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の2つ以上のAAV1ベクター(例えば、2、3、4以上のAAV1ベクター)は、3kb以上(例えば、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、5.5kb、6kb、6.5kb以上)のコード配列を有するポリヌクレオチドなどの単一のポリヌクレオチド(例えば、表2に列記される単一のポリヌクレオチド)を発現させるために使用され得る。例えば、2つ以上のAAV1ベクターは、約6kbのコード配列を有するオトフェリンをコードするポリヌクレオチドを発現させるために使用され得る。2つ以上のAAV1ベクターが単一のポリヌクレオチドを発現させるために使用される実施形態では、ポリヌクレオチドのコード配列は、全長コード配列がインビボで再構成され得るようにベクター間で分割される。いくつかの実施形態では、2つのAAV1ベクターを含む二重ベクター系は、単一のポリヌクレオチド(例えば、表2に列記される単一のポリヌクレオチド)を発現させるために使用され得る。ポリヌクレオチドのコード配列の一部(例えば、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、5.5kb、6kb、6.5kb以上のコード配列を有するポリヌクレオチド)は、各AAV1ベクター内に含有され得る(例えば、一方のAAV1ベクターは、コード配列のN末端部分を含んでもよく、他方のAAV1ベクターは、コード配列のC末端部分を含んでもよい)。例示的な二重ベクター系としては、断片化された二重ベクター、重複する二重ベクター、トランススプライシング二重ベクター、及び二重ハイブリッドベクターが挙げられる。これらのシステムは、McClements and MacLaren,Yale J Biol Med.90:611-623,2017に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0342】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAV1ベクターは、ポリヌクレオチドの翻訳速度を増強させるか、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核外輸送を改善するポリヌクレオチド配列を含有する。これらの配列要素には、例えば、ベクターに担持される核酸の効率的な転写を指向するために、5’及び3’非翻訳領域、IRES、ならびにポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法との使用に好適なベクターは、そのようなベクターを含有する細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドも含有し得る。好適なマーカーの例としては、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはノーセオスリシン(nourseothricin)などの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が挙げられる。
【0343】
核酸送達のためのAAV1ベクター
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド(例えば、難聴及び/または前庭機能障害に関与する遺伝子、または内耳細胞の発達、機能、細胞運命特定、再生、生存、増殖、及び/または維持に関与する遺伝子の野生型形態などの健常な内耳細胞内で発現する遺伝子に対応するポリヌクレオチド)は、細胞へのそれらの導入を容易にするために、AAV1ベクター及び/またはビリオン(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法に有用なAAV1ベクターは、以下に示すように、アミノ酸配列番号1~3を有する野生型AAV1キャプシドタンパク質を含有する。
【0344】
いくつかの実施形態では、野生型AAV1キャプシドタンパク質VP1は、配列番号1のアミノ酸配列を有する:
MAADGYLPDWLEDNLSEGIREWWDLKPGAPKPKANQQKQDDGRGLVLPGYKYLGPFNGLDKGEPVNAADAAALEHDKAYDQQLKAGDNPYLRYNHADAEFQERLQEDTSFGGNLGRAVFQAKKRVLEPLGLVEEGAKTAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKTGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPATPAAVGPTTMASGGGAPMADNNEGADGVGNASGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSASTGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNDGVTTIANNLTSTVQVFSDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEEVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLNRTQNQSGSAQNKDLLFSRGSPAGMSVQPKNWLPGPCYRQQRVSKTKTDNNNSNFTWTGASKYNLNGRESIINPGTAMASHKDDEDKFFPMSGVMIFGKESAGASNTALDNVMITDEEEIKATNPVATERFGTVAVNFQSSSTDPATGDVHAMGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKNPPPQILIKNTPVPANPPAEFSATKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEVQYTSNYAKSANVDFTVDNNGLYTEPRPIGTRYLTRPL(配列番号1)
いくつかの実施形態では、野生型AAV1キャプシドタンパク質VP2は、配列番号2のアミノ酸配列を有する:
TAPGKKRPVEQSPQEPDSSSGIGKTGQQPAKKRLNFGQTGDSESVPDPQPLGEPPATPAAVGPTTMASGGGAPMADNNEGADGVGNASGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSASTGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNDGVTTIANNLTSTVQVFSDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEEVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLNRTQNQSGSAQNKDLLFSRGSPAGMSVQPKNWLPGPCYRQQRVSKTKTDNNNSNFTWTGASKYNLNGRESIINPGTAMASHKDDEDKFFPMSGVMIFGKESAGASNTALDNVMITDEEEIKATNPVATERFGTVAVNFQSSSTDPATGDVHAMGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKNPPPQILIKNTPVPANPPAEFSATKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEVQYTSNYAKSANVDFTVDNNGLYTEPRPIGTRYLTRPL(配列番号2)
いくつかの実施形態では、野生型AAV1キャプシドタンパク質VP3は、配列番号3のアミノ酸配列を有する:
MASGGGAPMADNNEGADGVGNASGNWHCDSTWLGDRVITTSTRTWALPTYNNHLYKQISSASTGASNDNHYFGYSTPWGYFDFNRFHCHFSPRDWQRLINNNWGFRPKRLNFKLFNIQVKEVTTNDGVTTIANNLTSTVQVFSDSEYQLPYVLGSAHQGCLPPFPADVFMIPQYGYLTLNNGSQAVGRSSFYCLEYFPSQMLRTGNNFTFSYTFEEVPFHSSYAHSQSLDRLMNPLIDQYLYYLNRTQNQSGSAQNKDLLFSRGSPAGMSVQPKNWLPGPCYRQQRVSKTKTDNNNSNFTWTGASKYNLNGRESIINPGTAMASHKDDEDKFFPMSGVMIFGKESAGASNTALDNVMITDEEEIKATNPVATERFGTVAVNFQSSSTDPATGDVHAMGALPGMVWQDRDVYLQGPIWAKIPHTDGHFHPSPLMGGFGLKNPPPQILIKNTPVPANPPAEFSATKFASFITQYSTGQVSVEIEWELQKENSKRWNPEVQYTSNYAKSANVDFTVDNNGLYTEPRPIGTRYLTRPL(配列番号3)
本明細書に記載の組成物及び方法に有用なAAV1ベクターは、(1)本明細書に記載のプロモーター(例えば、偏在的なプロモーターまたは細胞型特異的プロモーター)、(2)発現される異種配列(例えば、表2に列記されるポリヌクレオチド)、及び(3)異種遺伝子の組み込み及び発現を容易にするウイルス配列のうちの1つ以上を含む組換え核酸構築物である。ウイルス配列は、DNAの複製及びビリオンへのパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVのそれらの配列を含み得る。典型的な用途では、異種導入遺伝子は、内耳細胞の発達、機能、細胞運命特定、再生、生存、増殖、及び/または維持を促進することができる健常な内耳細胞で発現するタンパク質、あるいは遺伝性もしくは遺伝的難聴、聴覚消失、及び/または前庭機能障害(例えば、めまい(dizziness)、めまい(vertigo)、または不均衡)を有する対象において変異する有毛細胞タンパク質の野生型形態をコードする。そのようなAAV1ベクターはまた、マーカーまたはレポーター遺伝子を含有し得る。有用なAAV1ベクターは、全体的または部分的に欠失しているが、機能的隣接ITR配列を保持するAAV WT遺伝子のうちの1つ以上を有する。本明細書に記載のAAV1ベクターに含まれるAAV ITRは、特定の用途に好適な任意の血清型のものであり得る(例えば、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、またはAAV11 ITRであり得る)。本明細書に記載の方法及び組成物での使用に関して、ITRは、AAV2 ITRであり得る。AAVベクターを使用する方法は、例えば、Tal et al.,J.Biomed.Sci.7:279(2000)及びMonahan and Samulski,Gene Delivery 7:24 (2000)に記載されており、これらのそれぞれの開示は、遺伝子送達のAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0345】
本明細書に記載のプロモーター及びポリヌクレオチドは、プロモーター及び/またはポリヌクレオチドを霊長類(例えば、ヒト)の内耳細胞に導入するのを容易にするために、AAV1ビリオンに組み込むことができる。AAV1のキャプシドタンパク質は、ビリオンの外部非核酸部分を構成し、AAV1キャップ遺伝子によってコードされる。キャップ遺伝子は、ビリオンアセンブリに必要な、3つのウイルスコートタンパク質、VP1、VP2、及びVP3をコードする。AAVビリオンの構築は、例えば、US5,173,414、US5,139,941、US5,863,541、US5,869,305、US6,057,152、及びUS6,376,237、ならびにRabinowitz et al.,J.Virol.76:791(2002)及びBowles et al.,J.Virol.77:423(2003)に記載されており、それらのそれぞれの開示は、遺伝子送達のAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのAAV1ベクターのキャプシドタンパク質は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,759,237号に記載のアミノ酸配列を有し得る(及びポリヌクレオチド配列によってコードされ得る)。
【0346】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なAAVビリオンには、AAV血清型1に由来するもの(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)が含まれる。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、例えば、Chao et al.,Mol.Ther.2:619(2000)、Davidson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:3428(2000)、Xiao et al.,J.Virol.72:2224(1998)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000)、Halbert et al.,J.Virol.75:6615 (2001)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されており、それらのそれぞれの開示は、遺伝子送達のAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0347】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なのは、偽型rAAVベクターである。偽型ベクターとしては、AAV1に由来するキャプシド遺伝子(例えば、野生型AAV1キャプシド)を用いて偽型された所与の血清型(例えば、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAV8)のAAVベクターが挙げられる。偽型rAAVビリオンの構築及び使用を伴う技術は、当該技術分野で既知であり、例えば、Duan et al.,J.Virol.75:7662(2001)、Halbert et al.,J.Virol.74:1524(2000)、Zolotukhin et al.,Methods,28:158(2002)、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075(2001)に記載されている。
【0348】
薬学的組成物
本明細書に記載のAAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)は、感音難聴、聴覚消失、聴覚神経障害、耳鳴、及び/または前庭機能障害を患う霊長類(例えば、ヒト)患者などの患者に投与するためのビヒクルに組み込むことができる。AAV1ベクターなどのベクターを含有する薬学的組成物は、当該技術分野で既知の方法を使用して調製することができる。例えば、そのような組成物は、例えば、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington:The Science and Practice of Pharmacology 22nd edition,Allen,L.Ed.(2013)、参照により本明細書に組み込まれる)を使用して、及び所望の形態、例えば、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製され得る。
【0349】
AAV1ベクターの混合物は、1つ以上の賦形剤、担体、または希釈剤と好適に混合した水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物中及び油中で調製され得る。通常の保管及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有し得る。注射の使用に好適な医薬形態には、滅菌水溶液または分散液、ならびに滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる(US5,466,468に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。いずれの場合でも、製剤は無菌であってもよく、容易な注入性(syringability)が存在する範囲で流体であってもよい。製剤は、製造及び保管条件下で安定していてもよく、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されてもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、及び/または植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合、必要な粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物における使用によってもたらされ得る。
【0350】
例えば、本明細書に記載の医薬組成物を含有する溶液は、必要に応じて好適に緩衝され得、液体希釈剤は、最初に、十分な生理食塩水またはグルコースで等張性を付与され得る。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に特に好適である。この関連において、用いることができる滅菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に既知である。例えば、1回の投薬量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解され、1000mlの皮下注射液に添加されるか、または提案される注入部位に注射されるかのいずれかであり得る。投薬量のある程度の変動は、治療される対象の状態に応じて必然的に生じるであろう。内耳への局所投与のために、組成物は、合成外リンパ液を含有するように製剤化され得る。例示的な合成外リンパ液としては、約6~9のpH及び約300mOsm/kgの浸透圧を有する20~200mMのNaCl、1~5mMのKCl、0.1~10mMのCaCl2、1~10mMのグルコース、及び2~50mMのHEPEが挙げられる。投与の責任者は、いずれにしても、個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、霊長類(例えば、ヒト)の投与に関して、調製物は、FDA Office of Biologicsの基準によって要求されるように、滅菌、発熱性、一般的な安全性、及び純度基準を満たし得る。
【0351】
治療方法
本明細書に記載のAAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)は、内耳または中耳への局所投与(例えば、卵円窓、内リンパ嚢、正円窓、または三半規管などを通した外リンパまたは内リンパへの投与、例えば、経鼓膜または鼓膜内注射)、静脈内、非経口、皮内、経皮、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、及び経口投与などの様々な経路によって、感音難聴、聴覚神経障害、聴覚消失、耳鳴、及び/または前庭機能障害を有する対象に投与され得る。任意の所与の場合での投与に最も好適な経路は、投与される特定の組成物、患者、医薬製剤方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、患者の年齢、体重、性別、治療される疾患の重症度、患者の食事、及び患者の排泄速度に依存する。組成物は、1回、または2回以上(例えば、年に1回、年に2回、年に3回、隔月、または毎月)投与され得る。
【0352】
本明細書に記載されるように治療され得る対象は、感音難聴、聴覚消失、聴覚神経障害、耳鳴、及び/または前庭機能障害を有するか、またはそれらを発症するリスクがある対象(例えば、難聴、前庭機能障害、またはその両方を有するか、またはそれらを発症するリスクがある対象)である。本明細書に記載の組成物及び方法は、内耳の細胞に対する損傷(例えば、蝸牛有毛細胞、前庭有毛細胞、蝸牛支持細胞、前庭支持細胞、及び/またはらせん神経節ニューロン、例えば、聴覚外傷、疾患もしくは感染、頭部外傷、聴覚毒性薬物、または老化に関連する損傷)を有するか、またはそれを発症するリスクがある対象、感音難聴、聴覚消失、耳鳴、もしくは聴覚神経障害を有するか、またはそれらを発症するリスクがある対象、前庭機能障害(例えば、めまい(dizziness)、めまい(vertigo)、もしくは不均衡)を有するか、またはそれを発症するリスクがある対象、耳鳴(例えば、耳鳴のみ、または感音難聴もしくは前庭機能障害に関連する耳鳴)を有する対象、難聴及び/または前庭機能障害に関連する遺伝的変異を有する対象、あるいは遺伝性難聴、聴覚消失、聴覚神経障害、耳鳴、もしくは前庭機能の家族歴を有する対象を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態では、対象は、内耳細胞(例えば、蝸牛有毛細胞、前庭有毛細胞、蝸牛支持細胞、前庭支持細胞、及び/またはらせん神経節ニューロン)の損傷、変性、機能障害、または喪失に関連する、またはそれらに起因する難聴及び/または前庭機能障害を有する。本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の組成物での治療または投与の前に、難聴または前庭機能障害に関連することが既知である遺伝子における1つ以上の変異について対象をスクリーニングするステップを含み得る。対象を、当業者に既知の標準的な方法(例えば、遺伝子検査)を使用して遺伝的変異についてスクリーニングすることができる。本明細書に記載の方法はまた、本明細書に記載の組成物での治療または投与の前に対象の聴力及び/または前庭機能を評価するステップを含み得る。聴力は、聴力測定、聴性脳幹応答(ABR)、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射などの標準的な検査を使用して評価することができる。前庭機能は、眼球運動試験(例えば、電気眼振図(ENG)またはビデオ眼振計(VNG))、姿勢図検査、回転椅子試験、ECOG、前庭誘発筋電位(VEMP)、ならびに特殊臨床平衡試験、例えば、Mancini and Horak,Eur J Phys Rehabil Med,46:239(2010)に記載のものなどの標準的な試験を使用して評価され得る。これらの試験はまた、本明細書に記載の組成物での治療または投与の後に、対象の聴力及び/または前庭機能を評価するために使用することができる。本明細書に記載の組成物及び方法はまた、難聴及び/または前庭機能障害を発症するリスクがある患者、例えば、難聴もしくは前庭機能障害(例えば、遺伝性難聴もしくは前庭機能障害)の家族歴を有する患者、聴覚障害もしくは前庭機能障害をまだ呈さない、難聴もしくは前庭機能障害に関連する遺伝的変異を有する患者、または後天性難聴(例えば、聴覚外傷、疾患もしくは感染、頭部外傷、聴覚毒性薬物、または老化)もしくは前庭機能障害(例えば、疾患もしくは感染、頭部外傷、聴覚毒性薬物、または老化)のリスク因子にさらされる患者に予防的治療として投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、自己免疫性内耳疾患、炎症(例えば、内耳炎(labrynthitis)または前庭神経炎)、またはメニエール病に起因する難聴または前庭機能障害を治療するために使用される。
【0353】
本明細書に記載の組成物及び方法は、霊長類(例えば、ヒト)対象における内耳細胞の再生(例えば、蝸牛有毛細胞、前庭有毛細胞、またはらせん神経節ニューロンの再生)を促進または誘導するために、及び/または霊長類(例えば、ヒト)対象の有毛細胞(例えば、IHC、OHC、及び/または前庭有毛細胞)及び/またはSGNの数を増加させるために使用することができる。本明細書に記載の組成物及び方法はまた、支持細胞の数を増加させる(例えば、支持細胞増殖を誘導もしくは増加させることによって、蝸牛及び/または前庭支持細胞)、または支持細胞の有毛細胞への分化を誘導する(例えば、蝸牛支持細胞のIHC及び/またはOHCへの分化を誘導する、及び/または前庭支持細胞の前庭有毛細胞への分化を誘導する)ために使用することができる。内耳細胞の再生を促進もしくは誘導する、有毛細胞、SGN、及び/または支持細胞(例えば、蝸牛及び/または前庭支持細胞)の数を増加させる、及び/または支持細胞(例えば、蝸牛及び/または前庭支持細胞)の有毛細胞への分化を誘導する組成物から利益を受け得る対象には、内耳細胞(例えば、IHC、OHC、SGN、前庭有毛細胞、もしくは支持細胞(例えば、蝸牛及び/または前庭支持細胞)の損傷、変性、機能障害、もしくは喪失、例えば、外傷(例えば、聴覚外傷もしくは頭部外傷)、疾患もしくは感染、聴覚毒性薬物、または老化)に関連する内耳細胞の損傷、変性、または喪失の結果として難聴もしくは前庭機能障害を患う対象、ならびに異常な内耳細胞(例えば、正常で健常な内耳細胞と比較して適切に機能しない内耳細胞)、または遺伝的変異もしくは先天性異常に起因する内耳細胞数の低減を有する対象が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法はまた、内耳細胞の生存を促進または増加させる(例えば、損傷した内耳細胞の生存を増加させる、損傷した内耳細胞の修復を促進する、または内耳細胞の損傷、または変性もしくは喪失(例えば、老化に起因する内耳細胞の喪失、大きな騒音への曝露、疾患もしくは感染、頭部外傷、または聴覚毒性薬物)のリスクがある対象の内耳細胞を保護する)ために使用することができる。
【0354】
本明細書に記載の組成物及び方法はまた、聴覚毒性薬物で治療された、または現在聴覚毒性薬物による治療を受けている、またはすぐに治療を開始する対象における聴覚毒性薬物誘導性内耳細胞損傷または死(例えば、IHC、OHC、SGN、蝸牛支持細胞、前庭支持細胞、及び/または前庭有毛細胞の損傷もしくは死)を予防または低減するために使用することができる。聴覚毒性薬物は、内耳の細胞に対して毒性であり、感音難聴、前庭機能障害(例えば、めまい(vertigo)、めまい(dizziness)、または不均衡)、耳鳴、またはそれらの症状の組み合わせを引き起こし得る。聴覚毒性であることが見出された薬物としては、アミノグリコシド抗生物質(例えば、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、カナマイシン、バンコマイシン、及びアミカシン)、ビオマイシン、抗悪性腫瘍薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンなどの白金含有化学療法剤)、ループ利尿剤(例えば、エタクリン酸及びフロセミド)、サリチル酸塩(例えば、アスピリン、特に高用量で)、及びキニンが挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、聴覚外傷、疾患もしくは感染、頭部外傷、または老化に関連する内耳細胞損傷または死(例えば、IHC、OHC、SGN、蝸牛支持細胞、前庭支持細胞、及び/または前庭有毛細胞の損傷もしくは死)を予防または低減する。
【0355】
本明細書に記載の組成物及び方法はまた、内耳の有毛細胞とニューロンとの間の結合(例えば、蝸牛有毛細胞(IHC及び/またはOHC)とSGNまたは前庭有毛細胞と前庭神経節ニューロンとの間のシナプス結合)を維持または改善するために使用することもできる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、リボンシナプスを保護するか、またはリボンシナプス形成を促進もしくは増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、内耳のニューロン(例えば、SGNまたは前庭神経節ニューロン)による有毛細胞(例えば、蝸牛有毛細胞(IHC及び/またはOHC)または前庭有毛細胞)の神経支配を維持または増加させる。
【0356】
治療は、本明細書に記載のAAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)を含有する組成物を様々な単位用量で投与することを含み得る。各単位用量は、通常、所定量の治療用組成物を含有する。投与される量、ならびに特定の投与経路及び製剤は、臨床分野の当業者の技能内である。単位用量は、単回注射として投与される必要はないが、設定された期間にわたる連続注入を含み得る。投与は、内耳(例えば、蝸牛)への損傷を最小限に抑えるために、注入速度を制御するためのシリンジポンプを使用して行われ得る。AAV1ベクターは、例えば、約1×109ベクターゲノム(VG)/mL~1×1015VG/mL(例えば、1×109VG/mL、2×109VG/mL、3×109VG/mL、4×109VG/mL、5×109VG/mL、6×109VG/mL、7×109VG/mL、8×109VG/mL、9×109VG/mL、1×1010VG/mL、2×1010VG/mL、3×1010VG/mL、4×1010VG/mL、5×1010VG/mL、6×1010VG/mL、7×1010VG/mL、8×1010VG/mL、9×1010VG/mL、1×1011VG/mL、2×1011VG/mL、3×1011VG/mL、4×1011VG/mL、5×1011VG/mL、6×1011VG/mL、7×1011VG/mL、8×1011VG/mL、9×1011VG/mL、1×1012VG/mL、2×1012VG/mL、3×1012VG/mL、4×1012VG/mL、5×1012VG/mL、6×1012VG/mL、7×1012VG/mL、8×1012VG/mL、9×1012VG/mL、1×1013VG/mL、2×1013VG/mL、3×1013VG/mL、4×1013VG/mL、5×1013VG/mL、6×1013VG/mL、7×1013VG/mL、8×1013VG/mL、9×1013VG/mL、1×1014VG/mL、2×1014VG/mL、3×1014VG/mL、4×1014VG/mL、5×1014VG/mL、6×1014VG/mL、7×1014VG/mL、8×1014VG/mL、9×1014VG/mL、または1×1015VG/mL)の力価を有し得、1μL~200μL(例えば、1、2、3、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200μL)の体積で投与され得る。AAV1ベクターは、1×107VG/耳~2×1014VG/耳(例えば、1×107VG/耳、2×107VG/耳、3×107VG/耳、4×107VG/耳、5×107VG/耳、6×107VG/耳、7×107VG/耳、8×107VG/耳、9×107VG/耳、1×108VG/耳、2×108VG/耳、3×108VG/耳、4×108VG/耳、5×108VG/耳、6×108VG/耳、7×108VG/耳、8×108VG/耳、9×108VG/耳、1×109VG/耳、2×109VG/耳、3×109VG/耳、4×109VG/耳、5×109VG/耳、6×109VG/耳、7×109VG/耳、8×109VG/耳、9×109VG耳、1×1010VG/耳、2×1010VG/耳、3×1010VG/耳、4×1010VG/耳、5×1010×VG/耳、6×1010VG/耳、7×1010VG/耳、8×1010VG/耳、9×1010VG/耳、1×1011VG/耳、2×1011VG/耳、3×1011VG/耳、4×1011VG/耳、5×1011VG/耳、6×1011VG/耳、7×1011VG/耳、8×1011VG/耳、9×1011VG/耳、1×1012VG/耳、2×1012VG/耳、3×1012VG/耳、4×1012VG/耳、5×1012VG/耳、6×1012VG/耳、7×1012VG/耳、8×1012VG/耳、9×1012VG/耳、1×1013VG/耳、2×1013VG/耳、3×1013VG/耳、4×1013VG/耳、5×1013VG/耳、6×1013VG/耳、7×1013VG/耳、8×1013VG/耳、9×1013VG/耳、1×1014VG/耳、または2×1014VG/耳)の用量で対象に投与され得る。
【0357】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン(前庭神経節ニューロン)、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞を含む群から選択される3つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15以上)の発達した内耳細胞型を形質導入するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、すべてまたはほとんどの発達した内耳細胞型を形質導入するのに十分な量で投与される。
【0358】
本明細書に記載の組成物は、聴力の改善、前庭機能の改善(例えば、平衡の改善、またはめまい(dizziness)もしくはめまい(vertigo)の低減)、耳鳴の低減、AAV1ベクターに含有されるポリヌクレオチドの発現の増加、AAV1ベクターに含有されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の機能の増加、内耳細胞再生(例えば、蝸牛有毛細胞、前庭有毛細胞、またはらせん神経節ニューロンの再生)の促進もしくは誘導、有毛細胞数(例えば、IHC、OHC、及び/または前庭有毛細胞数)の増加、SGN数の増加、支持細胞数の増加(例えば、蝸牛及び/または前庭支持細胞、例えば、支持細胞増殖の増加)、支持細胞の有毛細胞への分化の増加(例えば、IHC及び/またはOHCへの蝸牛支持細胞分化の誘導、及び/または前庭有毛細胞への前庭支持細胞分化の誘導)、内耳細胞の損傷もしくは死(例えば、聴覚外傷、頭部外傷、聴覚毒性薬物、疾患もしくは感染、または老化に関連するIHC、OHC、SGN、蝸牛支持細胞、前庭支持細胞、及び/または前庭有毛細胞の損傷もしくは死)の予防もしくは低減、内耳細胞の発達の促進もしくは増加、内耳細胞生存の促進もしくは増加(例えば、損傷した内耳細胞の生存の増加、損傷した内耳細胞の修復の促進、または内耳細胞の損傷または変性もしくは喪失(例えば、老化に起因する内耳細胞の喪失、大きな騒音への曝露、疾患もしくは感染、頭部外傷、または聴覚毒性薬物)のリスクがある対象の内耳細胞の保護)、内耳細胞機能の改善、リボンシナプスの保護、リボンシナプス形成の促進もしくは増加、有毛細胞とニューロン(例えば、SGN及び/または前庭神経節ニューロン)との間の結合(例えば、シナプス結合)の維持、または有毛細胞とニューロン(例えば、SGN及び/または前庭神経節ニューロン)との間の結合(例えば、シナプス結合)の増加もしくは回復に十分な量で投与される。聴力は、標準的な聴力検査(例えば、聴力測定、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射)を使用して評価され得、治療前に得られた聴力測定と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%以上)改善され得る。前庭機能は、平衡及びめまい(vertigo)(例えば、眼球運動試験(例えば、ENGまたはVNG)、姿勢図検査、回転椅子試験、ECOG、VEMP、及び特殊臨床平衡試験)の標準的な試験を使用して評価され得、治療前に得られた測定と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%以上)改善され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、対象の発話を理解する能力を改善するのに十分な量で投与される。本明細書に記載の組成物はまた、感音難聴及び/または前庭機能障害(例えば、難聴もしくは前庭機能障害に関連する遺伝的変異を有する対象、難聴もしくは前庭機能障害(例えば、遺伝性難聴もしくは前庭機能障害)の家族歴を有する対象、または難聴もしくは前庭機能障害(例えば、聴覚毒性薬物、頭部外傷、疾患もしくは感染、または聴覚外傷)に関連するリスク因子にさらされたが、聴力障害もしくは前庭機能障害(例えば、めまい(vertigo)、めまい(dizziness)もしくは不均衡)を呈さない対象、または軽度~中等度の難聴もしくは前庭機能障害を呈する対象)の発症または進行を緩徐または予防するのに十分な量で投与され得る。ポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現は、免疫組織化学、ウェスタンブロット分析、定量的リアルタイムPCR、または検出タンパク質もしくはmRNAの技術分野で既知の他の方法を使用して評価され得、本明細書に記載の組成物の投与前の発現と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%以上)増加し得る。内耳細胞数、内耳細胞機能、有毛細胞もしくはSGN再生、またはAAV1ベクターに含有されるポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の機能は、聴力検査または前庭機能の検査に基づいて間接的に評価され得、本明細書に記載の組成物の投与前の内耳細胞数、内耳細胞機能、有毛細胞もしくはSGN再生、またはポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の機能と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%以上)増加し得る。内耳細胞損傷または死は、未治療の対象において典型的に観察される内耳細胞損傷及び死と比較して、5%以上(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、200%以上)低減し得、聴力及び/または前庭機能の標準的な試験に基づいて間接的に評価され得る。これらの効果は、例えば、本明細書に記載の組成物の投与後、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、25週間以上以内に生じ得る。患者は、治療に使用される投与の用量及び経路に応じて、組成物の投与の1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に評価され得る。評価の結果に応じて、患者は追加の治療を受けることができる。
【0359】
キット
本明細書に記載の組成物は、感音難聴または前庭機能障害の治療に使用するためのキットにおいて提供され得る。組成物は、プロモーター及び/またはポリヌクレオチドの核酸配列を含有するAAV1ベクターを含み得、単位剤形で、任意選択で、薬学的に許容される賦形剤(例えば、生理食塩水または人工外リンパ液)において、外有毛細胞、前庭有毛細胞、前庭暗細胞、前庭線維細胞、スカルパ神経節ニューロン(前庭神経節ニューロン)、前庭毛細血管の内皮細胞、前庭支持細胞、境界細胞、内指節細胞、内柱細胞、外柱細胞、第1列ダイテルス細胞、第2列ダイテルス細胞、第3列ダイテルス細胞、ヘンゼン細胞、クラウディウス細胞、らせん隆起細胞、根細胞、歯間細胞、血管条の基底細胞、血管条の中間細胞、血管条の周辺細胞、らせん神経節ニューロン、蝸牛毛細血管の内皮細胞、線維細胞、ライスナー膜の細胞、及びグリア細胞を含む群から選択される3つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15以上)の発達した内耳細胞型を形質導入するのに十分な量で提供され得る。キットは、本明細書に記載の方法を行うために、医師などのキットの使用者に指示する添付文書をさらに含み得る。キットは、任意選択で、組成物を投与するためのシリンジまたは他のデバイスを含み得る。
【実施例】
【0360】
以下の実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法がどのように使用、作製、及び評価され得るかの説明を当業者に提供するために提示され、本発明の純粋に例示であることが意図され、本発明者が本発明として見なす範囲を限定することを意図するものではない。
【0361】
以下の実施例は、AAV2及びAAV7m8血清型ベクターの向性と比較して、非ヒト霊長類の内耳におけるAAV1ウイルスベクターの予想外の優れた向性を示す。内耳のいくつかの細胞型の限定的な形質導入を呈したマウスにおけるAAV1向性とは異なり、非ヒト霊長類の内耳へのAAV1媒介導入遺伝子送達は、複数の細胞型の広範な形質導入を呈した。これは、マウスにおいて複数の内耳細胞型の広範な形質導入を呈したが、非ヒト霊長類の内耳においてはるかに制限された向性を示したAAV7m8などの血清型とは対照的である。
【0362】
以下に記載の実施例のすべてにおいて、AAV1ベクターは、配列番号1~3のアミノ酸配列を有するキャプシドタンパク質を含有する。
実施例1.導入遺伝子を担持するAAV1ウイルスベクターを含有する組成物のマウス蝸牛へのインビボ投与
マウスの内耳内のAAV1ウイルスベクターの形質導入の有効性を決定するために、CMVプロモーターの制御下でEGFP導入遺伝子を担持するAAV1ベクター(AAV1-CMV-EGFP)を含有する組成物を、内耳の後溝に注射することによって、9~10週齢のCBA/CaJマウス(n=6匹のマウス)の内耳の片側に送達した。2.94×10
13ゲノムコピー/mLのウイルス力価の注射(1μL)を、0.1μL/分の注入速度で行った。注射の2週間後、内耳を外科的に除去し、基底膜の表面調製を行った。内耳のAAV-1媒介形質導入を評価するために、EGFP発現を蛍光顕微鏡法を使用して直接観察した。EGFPの発現は、蝸牛の基底-頂軸全体を通して観察されたが、周波数マップの長さに沿って細胞型にわたって変化した。(
図1A、左上パネル:蝸牛の頂部、下部パネル:蝸牛の中回転、右上パネル:蝸牛の基底回転)。内有毛細胞(IHC)は、蝸牛の基底-頂軸にわたってEGFPを発現したが、外有毛細胞(OHC)は主に蝸牛の頂部領域でGFP発現を呈した。EGFPの発現は、らせん板縁のいくつかの細胞内でも観察された(
図1B)。
【0363】
実施例2.導入遺伝子を担持するAAV7m8ベクターを含有する組成物のマウス蝸牛へのインビボ投与
マウスの内耳内のAAV7m8ウイルスベクターの形質導入の有効性を決定するために、CAGプロモーターの制御下でEGFP導入遺伝子を担持するAAV7m8ベクター(AAV7m8-CAG-EGFP)を含有する組成物を、内耳の後溝に注射することによって、9~10週齢のCBA/CaJマウス(n=8匹のマウス)の内耳の片側に送達した。9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価の注射(1μL)を、0.1μL/分の注入速度で行った。注射の2週間後、内耳を外科的に除去し、基底膜の表面調製を行った。EGFPの発現は、全蝸牛にわたって観察された(
図2A)。高倍率画像は、蝸牛の基底から頂部の範囲全体にわたってIHC、OHC、ならびにらせん神経節及びらせん板縁の細胞を含む複数の細胞型におけるEGFP発現を示す(
図2B;左側パネル:蝸牛の頂部;中央パネル:蝸牛の中回転;右側パネル:蝸牛の基底回転)。
【0364】
実施例3.導入遺伝子を担持するAAV2ベクターを含有する組成物の成体非ヒト霊長類の内耳へのインビボ投与
成体非ヒト霊長類の内耳内のAAV2ウイルスベクターの形質導入の有効性を決定するために、CMVプロモーターの制御下でGFP導入遺伝子を担持するAAV2ベクターを含有する組成物を、正円窓膜を通して注射することによって、アカゲザルの内耳の片側(n=1匹の動物)及び両側(n=2匹の動物)に送達した。3.39×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価の注射(30μL)を、15μL/分の注入速度で行った。注射の4週間後、内耳を外科的に除去し、基底膜の表面調製を行った。Myo7Aの免疫標識を使用して、内耳の有毛細胞を特定し(
図3A、右列のパネル)、内耳細胞のAAV2媒介形質導入を、直接GFP蛍光によって測定した(
図3A、左列のパネル)。GFPの発現は、特にIHC及びらせん板縁のいくつかの細胞内で、蝸牛の基底-頂軸にわたって観察された(
図3A、左列のパネル)。アカゲザルの内耳のIHCにおけるAAV2-CMV-GFPベクターの形質導入の有効性を決定するために、GFPの発現を、蝸牛の周波数マップに沿ってIHCにおいて定量化し、40~80%の細胞においてGFPの発現が示された(
図3B)。
【0365】
実施例4.導入遺伝子を担持するAAV7m8ベクターを含有する組成物の成体非ヒト霊長類の内耳へのインビボ投与
成体非ヒト霊長類の内耳内のAAV7m8ウイルスベクターの形質導入の有効性を決定するために、CAGプロモーターの制御下でEGFP導入遺伝子を担持するAAV7m8ベクターを含有する組成物を、正円窓膜を通して注射することによって、アカゲザルの内耳の両側に送達した。9.4×10
12ゲノムコピー/mLのウイルス力価の注射(30μL)を、15μL/分の注入速度で行った。注射の2週間(n=1匹の動物)または4週間(n=1匹の動物)後、内耳を外科的に除去し、切片化、取り付け、及び組織学的分析のための抗GFP抗体による免疫染色のためにパラフィンに埋め込んだ。1匹の動物において、AAV7m8-CAG-EGFPでの内耳の形質導入の2週間後、EGFPの発現がほとんど蝸牛の基底回転で観察された(
図4A、上部パネル:破線の正方形は蝸牛の基底回転を示す)。EGFPは、らせん靭帯のIHC、OHC、及び線維細胞において観察された(
図4B、
図4Aの破線の正方形の拡大;左上の挿入図:コルチ器官の拡大図)。異なる動物では、注射の4週間後、EGFPの発現が蝸牛の基底-頂軸にわたって観察された(
図4C、破線の正方形は蝸牛の基底回転を表し、
図4Dで拡大される)。EGFPは、らせん靭帯のIHC、OHC、及び線維細胞において発現された(
図4D、パネルの左上縁部の挿入図で拡大されたコルチ器官)。陰性対照として、抗GFP一次抗体の不在下での二次抗体での免疫染色は、蝸牛内で染色を示さなかった(
図4E~F)。
【0366】
実施例5.導入遺伝子を担持するAAV1ウイルスベクターを含有する組成物の成体非ヒト霊長類の内耳へのインビボ投与
成体非ヒト霊長類の内耳内のAAV1ウイルスベクターの形質導入の有効性を決定するために、CAGプロモーターの制御下でGFP導入遺伝子を担持するAAV1ベクター(AAV1-CAG-GFP)を含有する組成物を、正円窓膜を通して注射することによって、アカゲザルの内耳の両側に送達した。9.9×10
12GC/mLのウイルス力価の注射(30μL)を、15μL/分の注入速度で行った。注射の4週間後、内耳を外科的に除去し、切片化及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。内耳のAAV1媒介形質導入を評価するために、パラフィン切片をウサギモノクローナル抗GFP抗体(Abcam EPR14104)で免疫標識した。GFPの発現は、蝸牛(
図5B及び5C)及び球形嚢(
図5B及び5E)を含む複数の内耳構造において観察された。強固なGFPの発現が、らせん靭帯、ならびに血管条の周辺細胞及び中間細胞で検出された。血管条の基底細胞は、画像に示される切片においてGFPの発現を呈さなかったが、GFPの発現は、蝸牛の他の回転の基底細胞において可視であった(
図5D)。抗GFP抗体の不在下での二次抗体単独での染色を陰性対照として使用して、抗体の特異性を確認した(
図5A)。
【0367】
カニクイザルの内耳で観察されたAAV1ベクターの広範な形質導入が他の霊長類種で観察され得るかどうかを決定するために、CMVプロモーターの制御下でGFP導入遺伝子を担持するAAV1ベクター(AAV1-CMV-GFP)の注射を使用して、アカゲザルにおいて別の一組の実験を行った。2.01×10
13GC/mLのウイルス力価を、内耳の正円窓を通して片側に(n=1匹の動物)及び両側に(n=2匹の動物)注射し、15μL/分の注入速度で30μLの組成物を送達した。AAV1ベクターの向性を、注射の4週間後、内耳の外科的除去、ならびに基底膜、卵形嚢、及び内襞の表面調製によってアッセイした。AAV1媒介GFP発現をGFP蛍光によって直接監視し、内耳の有毛細胞をMyo7aの抗体で免疫標識することによって特定した。蛍光イメージングは、内有毛細胞(IHC)及び外有毛細胞(OHC)層において強く顕著であった(
図6B)、蝸牛の基底-頂軸全体にわたって強固なGFPの発現を明らかにした(
図6A)。GFPの発現は、支持細胞ならびに非感覚らせん靭帯及びらせん板縁においても観察された(
図6B)。さらに、内耳の前庭構造は、卵形嚢及び内襞の感覚及び非感覚細胞において強いGFPの発現を示した(
図6C)。
【0368】
したがって、
図5及び
図6に示されるように、AAV1は、非ヒト霊長類の内耳内で強固な向汎性形質導入を呈する。蝸牛及び前庭の感覚及び非感覚細胞におけるこの広範な向性は、治療的利益のために活用することができる。異なるAAVキャプシドを使用して非ヒト霊長類の内耳で観察された向性の要約を以下の表6に提供する。
【0369】
【0370】
実施例6.低及び高ウイルス力価を使用した導入遺伝子を担持するAAV1ウイルスベクターを含有する組成物の成体非ヒト霊長類の内耳へのインビボ投与
成体非ヒト霊長類の内耳内のAAV1ウイルスベクターの形質導入の有効性に対するウイルス力価の効果を決定するために、CAGプロモーターの制御下でGFP導入遺伝子を担持するAAV1ベクター(AAV1-CAG-GFP)を含有する組成物を、正円窓膜を通して注射することによって、アカゲザルの内耳の両側に送達した。1.05×10
12GC/mL(3.15×10
10GC/耳、「AAV1低」)または1.05×10
13GC/mL(3.15×10
11GC/耳、「AAV1高」)のいずれかでのウイルス力価の注射(30μL)を、15μL/分の注入速度で行った。注射の4週間後、内耳を外科的に除去し、切片化及び組織学的分析のためにパラフィンに埋め込んだ。内耳のAAV1媒介形質導入を評価するために、パラフィン切片をウサギモノクローナル抗GFP抗体(Abcam EPR14104)で免疫標識した。
図7A~7Cは、非AAV注射耳(
図7A)、AAV低注射耳(
図7B)、及びAAV高注射耳(
図7C)におけるGFP標識を示す。
図7D~7Fは、核染色なし(すなわち、GFP染色のみ)で、それぞれ
図7A~7Cと同じ画像を示す。抗GFP抗体は、非AAV注射耳の蝸牛を標識せず、抗体の特異性を確認した(
図7A及び7D)。AAV1低注射耳は、有毛細胞、支持細胞、内溝細胞、外溝細胞、及びらせん靭帯を含む様々な細胞型において、蝸牛の基底から頂部まで強固なGFPの発現を示した(
図7B及び7E)。ウイルス力価の増加は、前述の細胞型におけるより強いGFPの発現、ならびに追加の細胞及び細胞型におけるGFPの発現をもたらした(
図7C及び7F)。したがって、AAV1は、ウイルス力価を増加させることによって増強され得る非ヒト霊長類の内耳内に強固な向汎性形質導入を呈する。
【0371】
実施例7.ヒト対象の内耳の外有毛細胞におけるポリヌクレオチドの発現
本明細書に開示される方法及び組成物によれば、当該技術分野の医師は、OHC内のポリヌクレオチドの発現を誘導するために、ヒト対象に、AAV1ベクターを含有する組成物(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)を投与することができる。この目的のために、当該技術分野の医師は、ヒト対象の内耳に(例えば、正円窓、卵円窓、もしくは水平管への、またはそれを介した投与、あるいは経鼓膜または鼓膜内注射などによって、内リンパまたは外リンパに)局所的に、OHC特異的プロモーター(例えば、SLC26A5プロモーター、OCMプロモーター、STRCプロモーター、またはATP2B2プロモーター)に作動可能に連結されたポリヌクレオチド(例えば、Strc、Chrna9、Chrna10、Ocm、Tmc1、Myo7a、またはUsh1cをコードするポリヌクレオチド)を含有するAAV1ベクターを含有する組成物を投与することができる。OHC内でポリヌクレオチドの発現を誘導するために、AAV1ベクターは、例えば、1×107VG/耳~2×1014VG/耳(例えば、1×107VG/耳、2×107VG/耳、3×107VG/耳、4×107VG/耳、5×107VG/耳、6×107VG/耳、7×107VG/耳、8×107VG/耳、9×107VG/耳、1×108VG/耳、2×108VG/耳、3×108VG/耳、4×108VG/耳、5×108VG/耳、6×108VG/耳、7×108VG/耳、8×108VG/耳、9×108VG/耳、1×109VG/耳、2×109VG/耳、3×109VG/耳、4×109VG/耳、5×109VG/耳、6×109VG/耳、7×109VG/耳、8×109VG/耳、9×109VG耳、1×1010VG/耳、2×1010VG/耳、3×1010VG/耳、4×1010VG/耳、5×1010×VG/耳、6×1010VG/耳、7×1010VG/耳、8×1010VG/耳、9×1010VG/耳、1×1011VG/耳、2×1011VG/耳、3×1011VG/耳、4×1011VG/耳、5×1011VG/耳、6×1011VG/耳、7×1011VG/耳、8×1011VG/耳、9×1011VG/耳、1×1012VG/耳、2×1012VG/耳、3×1012VG/耳、4×1012VG/耳、5×1012VG/耳、6×1012VG/耳、7×1012VG/耳、8×1012VG/耳、9×1012VG/耳、1×1013VG/耳、2×1013VG/耳、3×1013VG/耳、4×1013VG/耳、5×1013VG/耳、6×1013VG/耳、7×1013VG/耳、8×1013VG/耳、9×1013VG/耳、1×1014VG/耳、または2×1014VG/耳)の用量で投与され得る。
【0372】
組成物のヒト対象への投与後、当該技術分野の開業医は、様々な方法によって、遺伝子発現及び/またはポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質の発現、ならびに療法に応答する患者の改善を監視することができる。例えば、医師は、遺伝子発現及び/またはタンパク質産生を間接的に評価し、組成物の投与後に、聴力測定、ABR、蝸電図検査(ECOG)、及び耳音響放射(DPOAE)の歪成分などの標準的な試験を行うことによって患者の聴力を監視することができる。治療後に収集された聴力測定値は、治療前に得られた測定値と比較され得る。組成物の投与前の聴力検査結果と比較して、組成物の投与後の試験のうちの1つ以上において、患者が改善された聴力を呈するという所見(例えば、DPOAE測定によって指標とされる改善されたOHC機能)は、患者が治療に良好に応答していることを示す。その後の用量は、必要に応じて決定され、投与され得る。
【0373】
実施例8.AAV1ベクターの投与によるヒト対象の前庭機能障害の治療
本明細書に開示される方法によれば、当該技術分野の医師は、前庭機能(例えば、平衡、空間定位、正しい向き、歩行、及び/または前庭動眼反射)を改善または回復させるために、前庭機能障害(例えば、めまい(vertigo)、めまい(dizziness)、または平衡喪失)を有する対象、例えば、ヒト患者を治療することができる。この目的のために、当該技術分野の医師は、前庭細胞型特異的プロモーター(例えば、GFAPプロモーター、GLASTプロモーター、HES1プロモーター、JAG1プロモーター、NOTCH1プロモーター、LGR5プロモーター、SOX2プロモーター、HES5プロモーター、もしくはSOX9プロモーターなどの卵形嚢支持細胞特異的プロモーター、またはミオシン15プロモーター、GFI1プロモーター、POU4F3プロモーター、もしくはミオシン7Aプロモーターなどの前庭有毛細胞特異的プロモーター、)に動作可能に連結された導入遺伝子をコードするポリヌクレオチド(例えば、Atoh1、Gfi1、Sox11、Ntf3、Bdnf、ウィルリン、Sox11、Tmtc4、もしくはPou4f3をコードするポリヌクレオチド)を含有するAAV1ベクター(例えば、野生型AAV1キャプシドを含有するAAV1ベクター)を含有する組成物をヒト患者に投与することができる。AAVベクターを含有する組成物は、前庭機能障害を治療するために、例えば、内耳への(例えば、正円窓、卵円窓、もしくは水平管への、またはそれを介した投与、または三半規管への投与などにより、内リンパまたは外リンパへの)局所投与によって患者に投与され得る。前庭機能障害を治療するために、AAV1ベクターは、例えば、1×107VG/耳~2×1014VG/耳(例えば、1×107VG/耳、2×107VG/耳、3×107VG/耳、4×107VG/耳、5×107VG/耳、6×107VG/耳、7×107VG/耳、8×107VG/耳、9×107VG/耳、1×108VG/耳、2×108VG/耳、3×108VG/耳、4×108VG/耳、5×108VG/耳、6×108VG/耳、7×108VG/耳、8×108VG/耳、9×108VG/耳、1×109VG/耳、2×109VG/耳、3×109VG/耳、4×109VG/耳、5×109VG/耳、6×109VG/耳、7×109VG/耳、8×109VG/耳、9×109VG耳、1×1010VG/耳、2×1010VG/耳、3×1010VG/耳、4×1010VG/耳、5×1010×VG/耳、6×1010VG/耳、7×1010VG/耳、8×1010VG/耳、9×1010VG/耳、1×1011VG/耳、2×1011VG/耳、3×1011VG/耳、4×1011VG/耳、5×1011VG/耳、6×1011VG/耳、7×1011VG/耳、8×1011VG/耳、9×1011VG/耳、1×1012VG/耳、2×1012VG/耳、3×1012VG/耳、4×1012VG/耳、5×1012VG/耳、6×1012VG/耳、7×1012VG/耳、8×1012VG/耳、9×1012VG/耳、1×1013VG/耳、2×1013VG/耳、3×1013VG/耳、4×1013VG/耳、5×1013VG/耳、6×1013VG/耳、7×1013VG/耳、8×1013VG/耳、9×1013VG/耳、1×1014VG/耳、または2×1014VG/耳)の用量で投与され得る。
【0374】
組成物の患者への投与後、当該技術分野の開業医は、様々な方法によって、療法に応答して患者の改善を監視することができる。例えば、医師は、電気眼振検査、ビデオ眼振検査、回転試験、前庭誘発筋原性電位、またはコンピュータ化された動的姿勢図検査などの標準的な試験を行うことによって、患者の前庭機能を監視することができる。組成物の投与前の試験結果と比較して、組成物の投与後の試験のうちの1つ以上において、患者が改善された平衡、歩行、姿勢、及び/または前庭動眼反射を呈する所見は、患者が治療に良好に応答していることを示す。その後の用量は、必要に応じて決定され、投与され得る。
【0375】
他の実施形態
記載される本発明の様々な修正及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者に明らかであろう。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されているが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、当業者に明らかな、本発明を実施するための記載のモードの様々な修正は、本発明の範囲内であることが意図される。他の実施形態は、特許請求の範囲にある。
【0376】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含む。該ASCIIコピーは、2019年10月11日に作成され、51124-054WO3_Sequence_Listing_10.11.2019_ST25という名前で、サイズは38,358バイトである。
【配列表】
【国際調査報告】