(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】非接触式マイクロストリップ-導波路変換器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/107 20060101AFI20220105BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01P5/107 B
H01P3/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021519831
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019075096
(87)【国際公開番号】W WO2020078652
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515096169
【氏名又は名称】ギャップウェーブス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ、カールソン
(72)【発明者】
【氏名】エスペランサ、アルフォンソ、アロス
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス、グスタブソン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、エマニュエルソン
【テーマコード(参考)】
5J014
【Fターム(参考)】
5J014DA02
(57)【要約】
導波路モジュールおよびプリント基板(PCB)の一部分を含む、マイクロストリップ-導波路変換器。導波路モジュールは導波路開口および反復構造を含み、導波路開口は導波路をモジュールの外側へ取り付けるためにモジュールを通って延びるように配置され、反復構造は、モジュールの内側の導波路開口を取り囲み内側の導波路開口への経路を画定するように構成されている複数の突出要素を含み、反復構造は、ある周波数帯の電磁信号が経路を通って伝搬するのを許しながらも反復構造を通過した電磁信号の伝搬を弱めるよう構成され、変換器は、伝送線に接続され導波路開口への経路に面するように構成されているパッチアンテナを有するPCBをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロストリップ-導波路変換器用の導波路モジュール(130)であって、前記モジュール(130)はプリント基板PCB(110)と結合するよう構成され、前記PCBはパッチアンテナ(120)およびグラウンドプレーンを含み、前記モジュールは導波路開口(140)および反復構造(155)を含み、前記導波路開口は導波路を前記モジュールの外側(132)へ取り付けるために前記モジュールを通って延びるように配置され、前記反復構造(155)は、前記モジュールの内側(131)の前記導波路開口(140)を取り囲み前記内側(131)の前記導波路開口(140)への経路(145)を画定するように構成されている複数の突出する金属の、または金属化された要素(150)を含み、前記反復構造(155)は、ある周波数帯の電磁信号が前記経路(145)を通って伝搬するのを許しながらも前記反復構造を通過した前記電磁信号の伝搬を弱めるよう構成され、前記反復構造および前記グラウンドプレーンはギャップ導波路構造を構成し、前記反復構造は前記グラウンドプレーンから少し距離を置いて配置され、前記距離は前記導波路モジュール(130)の動作波長の四分の一より小さい、導波路モジュール(130)。
【請求項2】
前記反復構造(155)は、前記導波路モジュールに含まれる導電面から周期的に突出して配置される導電ピンを含むピン構造である、請求項1に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項3】
前記導波路開口(140)に対して垂直な平面に延びる導波路フランジを含み、前記反復構造(155)は前記導波路フランジと一体に配置される、請求項1または2に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項4】
前記反復構造(155)は前記導波路モジュールへ組み付けられる別体の荷台上に構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項5】
前記導波路開口(140)は矩形導波路、楕円形導波路、または円形導波路のいずれかを有する前記モジュールの前記外側(132)へ結合するよう構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項6】
前記導波路開口(140)への前記経路(145)に面するように構成されているパッチアンテナ(120)を含む前記プリント基板PCB(110)の一部分と結合するよう構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項7】
前記PCB(110)へはんだ付けされた複数の位置合わせ用タップ(160)のそれぞれを受け入れるように構成されている1つまたは複数の位置合わせ用穴(170)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項8】
前記PCB(110)は集積回路(510)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項9】
前記パッチアンテナ(120)は複数のアンテナ素子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項10】
複数の導波路開口(140a、140b)を含み、前記導波路開口のそれぞれはそれぞれのパッチアンテナ(120a、120b)と結合するよう構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)。
【請求項11】
伝送線(125)に接続されるパッチアンテナ(120)およびグラウンドプレーンを含むプリント基板PCB(110)であって、前記PCBは、反復構造(155)を通り抜ける導波路開口(140)への経路(145)を含む導波路モジュール(130)と結合するよう構成され、前記反復構造(155)は前記導波路開口(140)を取り囲むように構成されている複数の突出する金属の、または金属化された要素(150)を含み、前記反復構造(155)はある周波数帯の電磁信号が前記経路(145)を通って伝搬するのを許しながらも前記反復構造を通過した前記電磁信号の伝搬を弱めるように構成され、前記パッチアンテナ(120)は、前記PCBが前記導波路モジュール(130)へ組み付けられる際に前記導波路開口(140)への前記経路(145)に面するよう構成され、前記反復構造および前記グラウンドプレーンはギャップ導波路構造を構成し、前記反復構造は前記グラウンドプレーンから少し距離を置いて配置され、前記距離は前記導波路モジュール(130)の動作波長の四分の一より小さい、プリント基板PCB(110)。
【請求項12】
前記PCBに前記パッチアンテナ(120)に関連する場所ではんだ付けされて前記導波路モジュール(130)の位置合わせ用穴のそれぞれへ入るように構成されている少なくとも1つの位置合わせ用タップ(160)を含む、請求項8に記載のPCB(110)。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の導波路モジュール(130)および請求項8または9に記載のプリント基板PCB(110)を含む、マイクロストリップ-導波路変換器(100、200、300、400、600)。
【請求項14】
請求項13に記載の導波路変換器(100、200、300、400、600)を含む、無線またはレーダー送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して無線通信システムに関し、特に導波路伝送媒体に関する。マイクロストリップ伝送媒体から管状導波路伝送媒体への信号を通過するための配置が開示される。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークは、セルラーアクセスネットワークで使用される無線基地局や、例えばコアネットワークへのバックホールで使用されるマイクロ波無線リンク送受信機や、軌道上の人工衛星と通信する衛星送受信機などの無線周波数(RF)送受信機を含む。また、レーダー送受信機も高周波信号を送受信するためのRF送受信機を含む。
【0003】
伝送媒体は、高周波信号をRF送受信機から輸送する、およびRF送受信機へ輸送するのに使用される。一般的な種類の伝送媒体は導波路構造である。「導波路」という用語は、エンドポイント間で電磁波を伝達する任意の直線構造を指すことがある。導波路はしばしば中空の金属管または金属化された管状構造として実現され、マイクロ波の送信機および受信機をそれらのアンテナに接続する目的などで、一般的にはマイクロ波周波数で使用される。
【0004】
特殊な種類の導波路伝送媒体はマイクロストリップである。マイクロストリップは、プリント基板(PCB)技術を使って製造可能な一種の送電線であり、マイクロ波周波数信号を伝達するのに使用される。マイクロストリップは、誘電体層によりグラウンドプレーンから分離された導電ストリップからなる。アンテナ、結合器、フィルタ、電力分配器などのマイクロ波部品をマイクロストリップから形成することができて、装置全体が基板上の金属パターンとして存在する。マイクロストリップは平面伝送線の多くの形態のうちの一つであり、他の形態にはストリップ線路および共平面導波路があり、これらのすべてを同一の基板上に統合することが可能である。
【0005】
管状導波路への変換および管状導波路からの変換が、例えばマイクロストリップ伝送媒体と矩形導波路の間でしばしば望まれる。そのような変換は、導波路構造体へと延びるプローブまたは同種のものをしばしば含む。
【0006】
米国特許第7,265,558B1号明細書は、給電プローブを使った導波路変換器を開示している。
【0007】
米国特許第6,573,803B1号明細書は、リッジに基づくマイクロストリップ-導波路変換器を開示している。
【0008】
給電プローブおよびリッジは、変換器全体の性能を劣化させることのないように導波路構造内に慎重に配置する必要がある。要求される精度は周波数に伴い高くなる傾向があるが、これは、より高い周波数での動作はしばしばより小さな構成要素を意味するからである。そのような精度への高い要求は組み立てを複雑にし、コスト要因となる。
【0009】
製造中に導波路変換器を効率的に組み立てることを可能とする、高性能な変換配置が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示の目的は、例えば反射損失や挿入損失の点で高い性能を提供しつつも、製造中に導波路変換器の組み立てを効率的で組み立てやすくする、マイクロストリップと管状導波路の変換用の新しい変換配置を提供することである。
【0011】
この目的は、パッチアンテナを含むPCBと結合するように構成されているマイクロストリップ-導波路変換器用の導波路モジュールにより、少なくとも部分的には達成される。このモジュールは導波路開口および反復構造を含む。導波路開口は、導波路をモジュールの外側へ取り付けるためにモジュールを通って延びるように配置される。反復構造は、モジュールの内側の導波路開口を取り囲み内側の導波路開口への経路を画定するように構成されている複数の突出する金属要素または金属化された要素を含み、ある周波数帯の電磁信号が経路を通って伝搬するのを許しながらも反復構造を通過した電磁信号の伝搬を弱めるよう構成される。
【0012】
開口はモジュールの外側へ取り付けられる管状導波路などの導波路構造への接合部となり、経路は、PCBに配置されるパッチアンテナが無線信号を導波路へと放射し、また導波路から出てくる無線信号を拾うことを可能とする。反復構造は、電磁エネルギーが導波路とパッチアンテナの間をほぼ妨げられることなく通過できるが他の方向には通過できないように経路を効率的に密封するギャップ導波路構造を実現する。それゆえ、PCBと導波路の変換は、導波路とPCB上のマイクロストリップが電気的接触を必要としないという点で、非接触である。これは、例えばプローブおよび同種のものを高精度で組み立てる必要がないために利点であり、PCBはボルトまたは同種のものなどの締結手段を用いて導波路モジュールへ簡単に取り付けられ、反復構造が非接触な方法で変換器を密封するので電気的接触を確認する必要がない。
【0013】
いくつかの態様では、反復構造は導波路のフランジと一体に形成される。反復構造は、例えば、導波路への接合部を形成する導波路開口を含む金属要素へ直接機械加工される。これは、そのような機械加工は機械的精度が高く費用対効果の高い方法で行われるので、利点である。また、このような一体成型の反復構造は機械的に安定しており、利点である。
【0014】
いくつかの他の態様では、反復構造は導波路モジュールへ組み付けられる別体の荷台上に構成される。このように、反復構造は動作周波数帯に応じて、導波路モジュールの他の部品とは別に構成することができる。組み立てている間、異なる大きさを持つ異なる反復構造のキットを利用可能とすることができて、現在の動作シナリオに適した反復構造を選択することができる。導波路モジュールの他の部品を再使用することができるというのは利点である。
【0015】
更なる態様では、導波路モジュールは、PCBへはんだ付けされた複数の位置合わせ用タップのそれぞれを受け入れるように構成されている1つまたは複数の位置合わせ用穴を含む。この位置合わせ用の「タップおよび穴」の構成により位置合わせの精度が改善され、導波路モジュールのPCBへの組み付けが簡略化される。
【0016】
また、本明細書では、マイクロストリップ伝送線などの伝送線に接続されるパッチアンテナを含むPCBまたはPCBの一部分も開示される。PCBは、反復構造を通り抜ける導波路開口への経路を含む導波路モジュールと結合するよう構成される。パッチアンテナは導波路開口への経路に面するよう構成される。
【0017】
PCBは、こうして導波路モジュールとともにマイクロストリップなどの伝送線と導波路の間の高性能の変換器を形成する。この変換器は非接触で、かつ組み立て中にはんだ付けを必要としないため、費用対効果の良い組み立てを可能とする。
【0018】
複数の態様では、PCBは、PCBにパッチアンテナに関連する場所ではんだ付けされて導波路モジュールの位置合わせ用穴のそれぞれへ入るように構成されている少なくとも1つの位置合わせ用タップを含む。
【0019】
上述したように、この位置合わせ用の「タップおよび穴」の構成により位置合わせの精度が改善され、導波路モジュールのPCBへの組み付けが簡略化される。以下で説明されるように、位置合わせ用タップをはんだ付けすることでパッチアンテナに対してタップを高い機械的精度で配置することが可能となり、利点である。
【0020】
また、本明細書ではマイクロストリップ-導波路変換器および上述の利点に関連する方法も開示される。
【0021】
概して、請求項で使用されるすべての用語は、本明細書で明示的に別の定義がされていない限り、当技術分野におけるその通常の意味に従って解釈されるべきである。「a/an/the」が付された「要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」は、別途明示的に規定されていない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップの少なくとも1つの実例に言及していると解釈されるべきである。本明細書で開示されるどの方法のステップも、明示的に規定されていない限り、開示された順番通りに実行される必要はない。本発明の更なる特徴と本発明に伴う利点は、添付の請求項および以下の説明を検討することで明らかとなるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、本発明の範囲を逸脱することなく以下で説明されているものとは異なる実施形態を作り出すことができることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
これより、本開示を添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【
図1】PCBの一部分および導波路モジュールを模式的に示す。
【
図2】組み立てられた導波路変換器を模式的に示す。
【
図3】導波路開口に面して配置されたパッチアンテナを示す。
【
図5】パッチアンテナを含むPCBの一部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
これより、本発明の特定の態様が示される添付の図面を参照して、本発明を以下でさらに充分に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態で具現化することができて、本明細書に記載される実施形態および態様に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が綿密で完全であるように例として提供されており、本発明の範囲を当業者へ充分に伝えるであろう。本仕様書を通じて、類似の数字は類似の要素を参照する。
【0024】
本明細書では、「導波路」という用語は、別途明示的に記載されていない限り、金属化された管状構造を指す。例えば、金属化された管状構造は円形、楕円形、または矩形の断面の導波路とすることができる。また、導波路は、リッジ、二重のリッジ、または同種のものを含む配置などの他の既知の導波路構造を指しうる。
【0025】
本明細書では、「マイクロストリップ」という用語は、概して平面伝送媒体を意味する。したがって、例えばマイクロストリップに言及する場合は、別途記載されていない限りストリップ線路および同種のものが含まれる。
【0026】
通信周波数帯がどんどん高くなるのに伴い、送電部品はどんどん小さくなる。これは、導波路やフィルタなどの多くの構成要素の大きさは搬送波周波数の波長に比例して決定されるためである。このため、満足のいく性能を得るためにはますます高い機械的精度が必要とされるので、送電部品の製造が困難になる。
【0027】
無線送受信機またはレーダー送受信機は、概してプリント基板(PCB)の一部分の上に配置される1つまたは複数の集積回路に含まれる。送受信機は、集積回路内のポートを介して信号を送受信する。ポートはしばしば、PCB上のマイクロストリップを介して1つまたは複数のアンテナ装置に接続される。マイクロストリップ信号を導波路接合部へ、および導波路接合部からマイクロストリップ信号へ変換することがしばしば望まれる。この変換は、システム全体の性能にとって非常に重要である。
【0028】
本明細書で中心となる概念は、電磁場を減衰させる反復構造の使用である。そのような反復構造は、文献ではしばしば「ギャップ導波路構造」と呼ばれる。ギャップ導波路は、概して2つの部分、すなわち、互いに対して非常に接近して配置されるが必ずしも直接接触しているわけではない構造化された金属表面および平坦な金属表面でできている。構造化された表面は、人工磁気導体と呼ばれることもあるメタマテリアル表面を形成するピンまたは他の突出部により特徴づけられる。突出部は、電磁波が好ましくない方向へ伝搬するのを防ぐ障壁を作る。このようにして、ピンにより矩形導波路における壁が置き換えられる。これは、完全に密閉された金属筐体を必要とせずに行われ、利点である。
【0029】
図1は、PCB110の一部分および導波路モジュール130を模式的に示す。導波路モジュール130およびPCBの一部分は、互いへ取り付けられるように構成されている別の実体(entity)である。マイクロストリップ伝送線125に入力された信号は、PCB110上に配置されるパッチアンテナ120により放射される。マイクロストリップ伝送線およびパッチアンテナは既知であり、詳細についてここでは論じない。しかし、当業者は、
図1に示されていないグラウンドプレーンがパッチアンテナ120の裏面上に構成されていることを理解した。パッチアンテナおよびマイクロストリップ伝送線はもちろん双方向性であり、これは、伝送線へ入力された信号はパッチから放射されて、入射する電磁信号はパッチアンテナ120により拾われて伝送線125で出力される、ということを意味する。
【0030】
導波路モジュール130は、パッチアンテナ120を含むPCBの一部分と結合するよう構成される。モジュールは導波路開口140および反復構造155を含む。導波路開口140は、モジュール130を通って延びるように配置される。円形、楕円形、または矩形の導波路などの管状導波路は、導波路モジュールの外側132へ取り付けることができる。例えば、導波路モジュールは、例えばアルミニウムまたは同種のものなどの金属片から機械加工された導波路フランジを含みうる、または導波路フランジから一体に形成しうる。反復構造155は、モジュールの内側131の導波路開口140を取り囲み内側131の導波路開口140への経路145を画定するように構成されている複数の突出する金属の、または金属化された要素150を含む。
【0031】
PCB110の一部分は、伝送線125に接続されるパッチアンテナを含む。PCBは、反復構造155を通り抜ける導波路開口140への経路145を含む導波路モジュール130と結合するよう構成される。パッチアンテナ120は導波路開口140への経路145に面するよう構成される。
【0032】
上述したことによれば、突出要素150はPCB110のグラウンドプレーンとともにギャップ導波路構造の2つの部分を構成し、突出要素はPCBのグラウンドプレーン金属表面に非常に接近して配置される構造化された金属表面を構成する。ここで、非常に接近しているとは、動作波長の四分の一より小さな距離を意味する。反復構造は周期的、または準周期的な構造であることが理解される。結果として、突出部は、電磁波が好ましくない方向へ伝搬するのを防ぐ障壁を作り出す。突出要素の大きさ、および、その相対的配置により、周波数に依存する反復構造の減衰特性が決まる。ここで、好ましくない方向とは、パッチアンテナ120と導波路開口140の間の経路145から離れるすべての方向である。したがって、反復構造155は、ある周波数帯の電磁信号が経路145を通って伝搬するのを許しながらも反復構造を通過した電磁信号の伝搬を弱めるよう構成される。
【0033】
複数の態様では、反復構造155は、導波路モジュールに含まれる導電面から周期的に突出して配置される、金属ピンや金属化されたピンなどの導電ピンを含むピン構造である。導電ピンは、例えば矩形または円柱状の突出部として形成することができる。しかし、同様の効果を有する多くの異なる形状を使用できることが理解される。例えば、同一または同様の効果を有するキノコ型の突出部、または円錐形状の突出部も使用できる。
【0034】
一例では、導波路モジュールは、導波路開口140に対して垂直な平面に延びる導波路フランジを含む。この場合、反復構造155は、好ましくは導波路フランジと一体に配置される。それぞれの構造は、例えば、導波路フランジを作るものと同じ金属片から圧延される、またはそうでなければ機械加工される。
【0035】
しかし、反復構造155は、必ずしも導波路開口を形成する金属と一体に形成する必要はない。例えば、他のいくつかの態様では、反復構造155は導波路モジュールへ組み付けられる別体の荷台上に構成される。
【0036】
別体の荷台は、例えば、テトラフルオロエチレンの合成フッ素重合体であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の一片とすることができる。PTFEは高精度で成形して突出部を形成し、導波路開口と接続する機械加工で形成された木立または凹部に収まるようにすることができる。任意の種類の誘電材料またはプラスチック材料をこの挿入物に使用できることが理解される。この挿入物は金属化することができて、したがって、反復構造155であって、ある周波数帯の電磁信号が経路145を通って伝搬するのを許しながらも反復構造を通過した電磁信号の伝搬を弱めるように構成されている反復構造155を形成することができる。
【0037】
反復構造に別体の荷台を使用する利点は、少なくともブッシング(bushing)部材が導波路開口内で動作周波数帯に合った大きさの開口を形成するように構成されている場合に、反復構造の大きさを用途に基づいて選択することができて、一方で導波路モジュールの他の部品も再使用できることである。
【0038】
また、反復構造はPCBの一部分に形成することができる、つまり、PCB110から導波路モジュール130へと延びることができる。
【0039】
パッチアンテナ120は、経路145を通って導波路開口へと放射状に広がり、変換器を形成する。したがって、パッチアンテナと導波路開口140の位置合わせが必要である。位置ずれがある場合、例えば反射損失や挿入損失の点で性能の減少が予期できる。もちろん、いくらかの位置合わせはPCB110を導波路モジュール130へ保持するのに使用される従来の締結手段により達成される。しかし、通常の製造工程に対する機械的許容度は、法外に大きいことがある。
【0040】
パッチアンテナと導波路開口140の位置合わせを改善するために、1つまたは複数の位置合わせ用穴170を、任意選択で、PCB110へはんだ付けされた複数の位置合わせ用タップ160のそれぞれを受け入れるように構成することができる。はんだ付け工程は自動位置合わせ効果と関連しており、PCB上での組み立て中に、まずはんだペーストが高い機械的精度でPCB上に沈着される。第2ステップでは、表面実装部品がパッド上に配置される。第3ステップははんだの再溶融であり、はんだ接合が形成される。再溶融中に、表面張力による力および毛細管効果が表面実装部品へ作用して、部品がPCB上のより古いパッドに位置合わせされる。したがって、はんだ付けされた位置合わせ用タップは、PCB上のパッチアンテナに対して高い精度で配置されると期待できる。
【0041】
したがって、複数の態様では、PCB110は、PCBにパッチアンテナ120に関連する場所ではんだ付けされて導波路モジュール130の位置合わせ用穴のそれぞれへ入るように構成されている少なくとも1つの位置合わせ用タップ160を含む。一つの位置合わせ用タップが一つの固定点を与える、つまり、PCBはそれゆえ導波路モジュールに対して回転しうることが理解される。導波路モジュール内の機械加工された穴のそれぞれと2つ以上の位置合わせ用タップとにより、パッチアンテナ120が導波路開口140および経路145に対して固定される。
【0042】
図2は、組み立てられたマイクロストリップ-導波路変換器200を模式的に示す。導波路取付け用の導波路開口を有する導波路モジュール130の外側131が見える。マイクロストリップ、すなわち、変換器200へ入る伝送線125が見える。また、反復構造を形成する突出ピン150も見える。ここでは、矩形状導波路開口が使用される。しかし、他の種類の導波路も同じように適用可能である。
【0043】
図3は、導波路開口140に面して配置されたパッチアンテナ120の上面図を示す。ここでは、伝送線125はより大きなアンテナを構成するパッチの前に配置されるより小さなパッチを含む。フィルタおよび同種のものを含む任意の数のマイクロストリップ構造を、パッチアンテナ120と接続する伝送線125内に配置できることが理解される。パッチアンテナは導波路開口140へ通じる経路と位置合わせされる。したがって、放射された電磁エネルギーが導波路モジュール130の外側へ取り付けられた導波路へ入り、マイクロストリップ-導波路変換器が達成される。反復構造155を構成する突出要素150が示されている。
【0044】
図4は、複数の導波路開口を含む、例示の導波路変換器400を示す。PCB110上に配置される、無線送受信機もしくはレーダー送受信機、または他の集積回路などの回路410が示されている。第1伝送線125aおよび第2伝送線125bが、回路410からそれぞれ第1パッチアンテナ120aと第2パッチアンテナ120bへと延びている。したがって、2つの導波路変換器が一つのユニット内に統合されている。このようなマイクロストリップ-導波路変換器は、例えば多入力多出力(MIMO)送受信システム、またはバックツーバックテスト(back to back testing)回路にも適している。
【0045】
また、
図4はここでは穴として示される締結手段420、425を例証しており、ボルトによりPCBを導波路モジュール130へ固く保持するように構成できる。このような締結手段により、パッチアンテナと導波路開口の位置合わせの水準が与えられる。しかし、更なる機械的精度が求められる場合は、1つまたは複数の位置合わせ用タップ160を上述したようにPCB上に配置することができる。
【0046】
図5は、パッチアンテナを含むPCBの一部分の上面図を示す。このPCBは締結手段420および位置合わせ用タップ160を含む。また、
図5に示されるPCBは無線送受信機回路やレーダー送受信機回路などの集積回路を含む。
【0047】
図6は、上述の内容に従う導波路変換器を模式的に示す。例証とするため、導波路変換器の大きさは、
導波路120 長辺=3.0988mm、導波路120 短辺=1.5494mm、ピン150 高さ=1mm、ピン 周期P=1.94mm、ピン 幅W=0.95mm、ピンから基板への距離=0.1mm、マイクロストリップ パッチ幅=1.78mm、マイクロストリップ パッチ長さ=1.04mm、対応する二重スタブ 長さ=1mm、対応する二重スタブ 幅=0.79mm、スタブからパッチへの距離 0.43mm。
【0048】
図7は、方法を示すフローチャートである。以下を含む方法が示されている。マイクロストリップ-導波路変換器用の導波路モジュール130を形成することであって、モジュールは導波路開口140および反復構造155を含み、導波路開口は導波路をモジュールの外側132へ取り付けるためにモジュールを通って延びるように配置され、反復構造155は、モジュールの内側131の導波路開口140を取り囲み内側131の導波路開口140への経路145を画定するように構成されている複数の突出する金属の、または金属化された要素150を含み、反復構造155は、ある周波数帯の電磁信号が経路145を通って伝搬するのを許しながらも反復構造を通過した電磁信号の伝搬を弱めるよう構成される、形成することS1。
【0049】
また、方法は、伝送線125に接続されるパッチアンテナ120を含むPCB110を形成することであって、PCBは反復構造155を通り抜ける導波路開口140への経路145を含む導波路モジュール130と結合するよう構成される、形成することS2と、
パッチアンテナ120が導波路開口140への経路145に面するようにPCBを導波路モジュールへ組み付けることS3も含む。
【0050】
図8A~8Dは、パッチアンテナ120のいくつかの例を模式的に示す。
図8Aはパッチアンテナとして使用される開放端のスタブ、すなわち、スタブで終端されるマイクロストリップ片を示す。
図8Bは、マイクロストリップ伝送線の終端に配置される矩形素子を有するパッチアンテナの別の例を示す。素子は多くの異なる形状、例えば
図8Cに示される円盤形状を有することができる。
【0051】
パッチアンテナ120は複数のアンテナ素子を含んで、アレイアンテナを形成することができる。このアレイアンテナを使ってパッチアンテナの伝送ローブ(transmission lobe)を成形し、導波路開口へよりよく適合させることができる。また、アレイアンテナは電気的に操作可能とすることができて、これにより製造および/もしくは組み立て中、または、製造および/もしくは組み立ての後に、導波路変換器の校正が可能となる。
【国際調査報告】