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特表2022-504757シリカ/アルミナモル比(SAR)が高いAEI型ゼオライトの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】シリカ/アルミナモル比(SAR)が高いAEI型ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20220105BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20220105BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20220105BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20220105BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220105BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/76 A
B01J35/10 301F
B01J20/18 D
B01J20/28 Z
B01J20/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520109
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019059611
(87)【国際公開番号】W WO2020096935
(87)【国際公開日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/755,598
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513089291
【氏名又は名称】パシフィック インダストリアル デベロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユンクイ
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,デ
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラシャペル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ガァン
【テーマコード(参考)】
4G066
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
4G066AA02A
4G066AA20A
4G066AA22A
4G066AA30A
4G066AA47A
4G066AA53A
4G066AA61A
4G066AA61B
4G066AA62B
4G066AB06D
4G066AB12D
4G066AB19D
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA25
4G066BA26
4G066FA03
4G066FA05
4G066FA21
4G066FA33
4G066FA34
4G066FA37
4G066FA38
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA07
4G073BA48
4G073BB03
4G073BB04
4G073BB44
4G073BB63
4G073BD06
4G073BD07
4G073BD21
4G073CZ03
4G073CZ05
4G073CZ50
4G073FA02
4G073FA03
4G073FB01
4G073FB02
4G073FB03
4G073FB04
4G073FB11
4G073FB14
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4G073FB22
4G073FB24
4G073FB25
4G073FB42
4G073FC12
4G073FC14
4G073FC19
4G073FC25
4G073FC27
4G073FC30
4G073FD01
4G073FD05
4G073FD08
4G073FD15
4G073FD17
4G073FD20
4G073FD24
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA08
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4G073GA12
4G073GA13
4G073GA14
4G073GB02
4G073UA05
4G169AA01
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169AA14
4G169BA07B
4G169BA15C
4G169BB02B
4G169BC31B
4G169BE17C
4G169BE28C
4G169BE38C
4G169CA03
4G169CA13
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EB18X
4G169EC04X
4G169EC05X
4G169ED05
4G169ED06
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB09
4G169FB14
4G169FB26
4G169FB36
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC07
4G169FC08
4G169ZA43A
4G169ZA43B
4G169ZB01
4G169ZB03
4G169ZB08
4G169ZB09
4G169ZC02
4G169ZC04
4G169ZC06
4G169ZC07
4G169ZE01
(57)【要約】
フッ化水素(HF)を使用せず、SAR≦5のFAUゼオライトNaY型、SAR≧5のY型ゼオライトまたはそれらの組み合わせの存在下で、水熱合成でAEI型ゼオライトを形成する方法。この方法を用いて形成されたゲル組成物は、シリカ、アルミナ、有機構造誘導剤(OSDA)およびアルカリ金属イオンの1種類以上の供給源と、ゼオライトシードと、水とを含む。このゲル組成は、以下のモル比すなわち、SiO/Al 18:1~100:1、MO/SiO 0.15:1~0.30:1、ROH/SiO 0.05:1~0.13:1、HO/SiO 5:1~20:1で規定され、Mはアルカリ金属イオンであり、RはOSDAに由来する有機部分である。このゲル組成物は、135℃~約200℃の温度で10時間~168時間反応させた後、シリカ/アルミナ比(SiO:Al)が15:1を超える結晶性AEI型ゼオライトを形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AEI型ゼオライトを製造する方法であって、
a)シリカ源を準備する工程と、
b)アルミナ源を準備する工程と、
c)有機構造規定剤(OSDA)を準備する工程と、
d)アルカリ金属イオン源を準備する工程と、
e)ゼオライトシードを準備する工程と、
f)前記シリカ源およびアルミナを、前記OSDA、前記アルカリ金属イオンおよび前記ゼオライトシードと水中で混合し、ゲル組成物を形成する工程と、
g)前記ゲル組成物を、約135℃~約200℃の範囲の結晶化温度まで加熱する工程と、
h)前記ゲル組成物を、10時間~168時間の範囲の時間、前記結晶化温度に維持する工程と、
i)前記AEI型ゼオライトを結晶化させ沈殿させて、前記ゲル組成物から、前記AEI型ゼオライトの結晶性析出物と母液とを形成する工程と、
j)前記結晶性析出物を前記母液から分離する工程と、を含み、
前記AEI型ゼオライトは、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が少なくとも15:1であり、
前記アルミナ源および前記シリカ源の少なくとも一部が、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が≦5であるFAUゼオライトNaY型、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が>5であるY型ゼオライトまたはそれらの組み合わせの形態である、方法。
【請求項2】
前記ゼオライトシードが、前記AEI型ゼオライト中に存在するシリカの量に対して0.01%~約10%の量で存在するAEI型ゼオライトシードである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼオライトシードが、前記AEI型ゼオライト中に存在するシリカの量に対して0.01%~約1%の量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲル組成物中に存在する全酸化物に対する前記AEI型ゼオライトの収率が30%を上回る、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲル組成物中に存在する全酸化物に対する前記AEI型ゼオライトの収率が50%を上回る、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカ源は、ケイ酸ナトリウム、シリカゾル、フュームドシリカ、オルトケイ酸テトラエチルまたはそれらの混合物から選択されるものを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルミニウム源は、アルミニウム金属、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムまたはそれらの混合物から選択されるものを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機構造規定剤(OSDA)は、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド、N,N-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド、テトラメチルホスホニウムヒドロキシドまたはそれらの混合物から選択されるものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属イオンが、1種類以上のアルカリ金属(M)を含み、Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)またはそれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲル組成物は、SiO/Alのモル比18:1~100:1、MO/SiOのモル比0.15:1~0.30:1、ROH/SiOのモル比0.05:1~0.13:1、HO/SiOのモル比5:1~20:1によってさらに規定され、
ここで、Mは前記アルカリ金属イオンであり、RはOSDAに由来する有機部分である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲル組成物におけるSiO/Alのモル比が20:1~60:1であり、MO/SiOのモル比が0.20:1~0.26:1であり、ROH/SiOのモル比が0.06:1~0.12:1であり、HO/SiOのモル比が7:1~15:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ゲル組成物を、約145℃~約165℃の範囲の結晶化温度まで加熱する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル組成物を、約24時間~約96時間の範囲の時間、前記結晶化温度で保持する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記AEI型ゼオライトのシリカ/アルミナモル比(SiO:Al)が18以上である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記AEI型ゼオライトのシリカ/アルミナモル比(SiO:Al)が15~23の範囲である、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記AEI型ゼオライトの平均粒度が5マイクロメートル未満である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記AEI型ゼオライトのBET比表面積が500m/gよりも大きい、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記AEI型ゼオライトは、立方体、正方形のフレーク、不規則な粒子またはそれらの組み合わせを含むモルフォロジーを示す、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の方法に従って調製されたAEI型ゼオライト。
【請求項20】
以下の成分すなわち、
1種類以上のシリカ源と、
1種類以上のアルミナ源と、
1種類以上の有機構造規定剤(OSDA)と、
アルカリ金属イオンと、
ゼオライトシードと、
水と、を含むゲル組成物であって、
前記シリカ源および前記アルミナ源の一部が、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が≦5のFAUゼオライトNaY型、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が>5のY型ゼオライトまたはそれらの組み合わせの形態であり、
前記ゲル組成物中の前記成分は、以下のモル比すなわち、
SiO/Al 18:1~100:1
O/SiO 0.15:1~0.30:1
ROH/SiO 0.05:1~0.13:1
O/SiO 5:1~20:1
で存在し、
ここで、Mは前記アルカリ金属イオンであり、RはOSDAに由来する有機部分であり、
前記ゲル組成物が、135℃~約1200℃の温度で10時間~168時間反応させた後、シリカ/アルミナモル比(SiO:Al)が15:1を超える結晶性AEI型ゼオライトを形成する、前記ゲル組成物。
【請求項21】
前記ゲル組成物中の前記成分が以下のモル比すなわち
SiO/Al 20:1~60:1
O/SiO 0.20:1~0.26:1
ROH/SiO 0.06:1~0.12:1
O/SiO 7:1~15:1
で存在する、請求項20に記載のゲル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、シリカ/アルミナモル比(SAR)の高いAEI型ゼオライトの製造方法、前記方法に従って形成されたAEI型ゼオライトならびに、このAEI型ゼオライトの製造方法を実施している間に形成され、かつ、このAEI型ゼオライトの製造方法で使用されるゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本セクションの記載は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、先行技術を構成しない場合もある。三次元の細孔を含むミクロ孔性ゼオライトは、ディーゼルエンジンから出る排ガスの選択触媒還元(SCR)において重要な役割を果たす。AEI型ゼオライトは、空洞の開口部が小さく、したがって水熱安定性が高いがゆえ、この用途で触媒担体として使用することができるアルミノシリケートゼオライトの1つのタイプを代表するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
AEI型ゼオライトを合成するには、構成単位としてFAUゼオライトY型を用いることができる。これは、FAUゼオライトY型の二重6員環からAEI型構造への水熱変換が速いためである。また、AEI型ゼオライトの合成に、シリカ/アルミナ(SiO:Al)比が高いY型ゼオライトを用いることもできる。しかしながら、このような合成方法では、高価な有機構造規定剤(OSDA)を大量に使用するため、低収率(例えば、25%以下)かつ高コストでのAEI型ゼオライトの形成になりやすい。この方法では一般に、OSDA:SiOのモル比を0.14より大きくする。このように、OSDAに付随する支出に対処するために、この方法では通常、未使用のOSDAを含有する母液を後続のバッチの調製で再利用する必要がある。
【0004】
さらに、フッ化水素酸の存在下でアルミナおよびシリカの前駆体からAEI型ゼオライトを合成することもできる。一般に、フッ化水素(HF)酸を使用すると、ゼオライト構造体へのアルミニウムの取り込みが阻害されることで、シリカ/アルミナ(SiO:Al)比が200を超えるゼオライトが得られる。フッ化水素酸(HF)は、人が触れると大変なことになるため、通常、工業プロセス、特に高温で行われるプロセスで使用するのは実用的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、広義には、シリカ/アルミナ比(SAR)が高いAEI型ゼオライトを製造する安価な方法、前記方法に従って形成されたAEI型ゼオライトならびに、このAEI型ゼオライトの製造方法を実施している間に形成され、かつ、このAEI型ゼオライトの製造方法で使用されるゲル組成物に関する。
【0006】
本開示の一態様によれば、AEI型ゼオライトを製造する方法であって、a)シリカ源を準備する工程と、b)アルミナ源を準備する工程と、c)有機構造規定剤(OSDA)を準備する工程と、d)アルカリ金属イオン源を準備する工程と、e)ゼオライトシードを準備する肯定と、f)シリカ源、アルミナ、OSDAおよびアルカリイオンを水中で混合し、ゲル組成物を形成する工程と、g)ゲル組成物を、約135℃~約200℃の範囲の結晶化温度まで加熱する工程と、h)ゲル組成物を、10時間~168時間の範囲の時間、結晶化温度に維持する工程と、i)AEI型ゼオライトを結晶化させて沈殿させる工程と、j)結晶性析出物を母液から分離する工程と、を含み、ゲル組成物はAEI型ゼオライトの結晶性析出物と母液とを形成する。
【0007】
このようにして形成されたAEI型ゼオライトは、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が少なくとも15:1である。この方法は、AEI型ゼオライトを生じるフッ化水素(HF)を使用しない水熱合成法である。FAUゼオライトNaY型および/またはY型ゼオライトは、原材料として、シリカの一部または全部とアルミナとからなる部分を含み、NaY型のシリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が≦5であるか、Y型ゼオライトのシリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が>5であるか、それらの組み合わせである。
【0008】
シリカに対して0.01%~約10%の量で、AEIゼオライトをシードとして添加してもよい。
【0009】
本開示の別の態様によれば、135℃~約200℃の温度で10時間~168時間反応させた後、シリカ/アルミナ比(SiO:Al)が15:1を超える結晶性AEI型ゼオライトを形成するゲル組成物が提供される。このゲル組成物は主に、1種類以上のシリカ源、1種類以上のアルミナ源、1以上の有機構造規定剤(OSDA)、アルカリ金属イオン源および水の各成分で構成される。ゲル組成物中の成分については、以下のモル比で存在させることができる。
SiO/Al 18:1~100:1
O/SiO 0.15:1~0.30:1
ROH/SiO 0.05:1~0.13:1
O/SiO 5:1~20:1
ここで、Mはアルカリ金属イオンであり、RはOSDAに由来する有機部分である。
【0010】
適用可能な別の領域は、本明細書に記載された説明から明らかになるであろう。この説明および具体例については例示目的にすぎず、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示をよく理解できるようにするために、一例として与えられる様々な形態を、添付の図面を参照しながら説明する。
図1図1は、本開示の教示内容による、AEI型ゼオライトを調製するための方法フローチャートである。
図2図2は、図1に示す方法に従って実施例1で作られたAEI型ゼオライトのX線回折(XRD)スペクトルである。
図3図3は、図2に記載したAEI型ゼオライトの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図4図4は、図1に示す方法に従って実施例2で作られた別のAEI型ゼオライトのX線回折(XRD)スペクトルである。
図5図5は、図4に記載したAEI型ゼオライトの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図6図6は、図1に示す方法に従って実施例3で作られたさらに別のAEI型ゼオライトのX線回折(XRD)スペクトルである。
図7図7は、図6に記載したAEI型ゼオライトの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図8図8は、図1に示す方法に従って実施例4で作られたさらに別のAEI型ゼオライトのX線回折(XRD)スペクトルである。
図9図9は、図8に記載したAEI型ゼオライトの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図10図10は、本開示の教示内容に従って形成された、調製したばかりのAEI型ゼオライトについてのNO変換率を示すグラフ表示である。
図11図11は、本開示の教示内容に従って形成された、水熱時効処理したAEI型ゼオライトのNO変換率を示すグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で説明する図面は、例示のためだけのものであり、どのような形であっても本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0013】
以下の説明は、本質的には単なる例にすぎず、決して本開示またはその応用範囲もしくは用途を限定することを意図したものではない。例えば、本明細書に含まれる教示内容に従って製造および使用される触媒担体は、本開示全体を通して、その組成および用途を一層完全に例示するために、選択触媒還元(SCR)触媒とともに説明される。このようなAEI型ゼオライトを、工業用触媒および/または環境用触媒に使用される吸着剤、イオン交換剤または担体材料などの他の用途に取り入れて使用することは、本開示の範囲内であると考えられる。明細書全体を通して、対応する参照数字は、同様のまたは対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0014】
本開示は、SiO:Alモル比(SAR)が少なくとも15であるアルミノシリケートAEI型ゼオライトを形成するための合成方法を提供する。この方法では、有機構造規定剤(OSDA)の使用を、OSDA:SiOモル比が約0.05:1~約0.13:1の間になるように制限する。この方法ではOSDAの使用量が少ないことに加えて、この方法で形成されるAEI型ゼオライトの収率が25%を上回ることから、コスト削減のために母液を再利用するといった追加の工程を必要としない安価な方法が得られる。
【0015】
また、得られるAEI型ゼオライトは、フッ素、フッ素含有化合物、フッ素イオンを実質的に含まない。本明細書で説明する合成方法について、高温で行われるがゆえにフッ化水素酸(HF)の使用を非現実的なものにしている水熱合成として説明する場合がある。さらに、上述した方法に従って形成され、本明細書でさらに規定されるAEI型ゼオライトは、ほとんどの用途で経済的に使用することができる。AEI型ゼオライトを形成する従来の合成方法を使用すると、これまで、自動車の排ガスに含まれるNOxの選択還元反応(SCR)における触媒用の担体材料などの用途では、AEI型ゼオライトの使用はコストがかかるものとなっていた。
【0016】
一般に、ゼオライトは、Tが最も一般的にはケイ素(Si)またはアルミニウム(Al)であるTO四面体単位の繰り返しで構成される結晶性または準結晶性のアルミノシリケートである。これらの繰り返し単位は、互いに結合して、内部に分子サイズの空洞および/または細孔を含む結晶性の骨格すなわち結晶構造を形成する。このように、アルミノシリケートゼオライトは、その骨格構造に取り込まれた原子として、少なくとも酸素(O)、アルミニウム(AI)およびケイ素(Si)を含む。
【0017】
「AEI」という表記は、ゼオライトの骨格構造を定義する国際ゼオライト学会(IZA)が定めたコードを表す。よって、「AEI型」ゼオライトとは、ゼオライトの一次結晶相が「AEI」であるアルミノシリケートを意味する。本開示のAEI型ゼオライトでは、ゼオライトに「FAU」などの別の結晶相または骨格構造がない、すなわち存在しない。言い換えれば、本開示のAEI型ゼオライトは、他の結晶相を実質的に含まず、2つ以上の骨格型の連晶ではない。
【0018】
ゼオライトの結晶相または骨格構造は、X線回折(XRD)データによって特性評価をすることができる。しかしながら、XRD測定は、ゼオライトの成長方向、構成元素の比率、吸着物質や欠陥などの存在、XRDスペクトルにおける各ピークの強度比や位置のずれなど、様々な要因の影響を受ける場合がある。したがって、IZAによって提供される定義に記載されたAEI構造のパラメータごとに測定される数値のずれが10%以下、あるいは5%以下、あるいは1%以下であれば、予想される公差の範囲内である。
【0019】
ここで図1を参照すると、シリカ/アルミナ(SiO:Al)比が少なくとも15であるAEI型ゼオライトを製造するための方法1が提供されている。この方法では、アルミナ源およびシリカ源として、あるいはアルミナ源およびシリカ源の一部として、シリカ/アルミナ(SiO:Al)比が5以下のFAUゼオライトNaY型、SiO:Alモル比が5を超えるY型ゼオライトまたはこれらの組み合わせを使用する。あるいは、形成されるAEI型ゼオライトのSiO:Alのモル比(SAR)は、少なくとも20、あるいは少なくとも23、あるいは約23、あるいは15~23である。AEI型ゼオライトが示すSiO:Al比については、蛍光X線(XRF)または誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法を用いて測定することができる。
【0020】
引き続き図1を参照すると、方法1は主に、以下の工程を含む。
a)シリカ源を準備する(5)。
b)アルミナ源を準備する(10)。
c)有機構造規定剤(OSDA)を準備する(15)。
d)アルカリ金属イオン源を準備する(20)。
e)アルミナ源および知り加減の一部を提供するゼオライトシードを準備する(25)。
f)シリカ源、アルミナ、OSDAおよびアルカリ金属イオンを水中で混合し、ゲル組成物を形成する(30)。
g)ゲル混合物を、約135℃~約200℃の範囲の結晶化温度まで加熱する(35)。
h)ゲル混合物を、10時間~168時間の範囲の時間、結晶化温度に維持する(40)。
i)アルミノシリケートAEIゼオライトを結晶化させてゲル混合物から析出させ、結晶性析出物と母液とを形成する(45)。
j)結晶性析出物を母液から分離する(50)。
【0021】
ゼオライトシードは、AEI型骨格の形成を促進するために、ゲル組成物に取り込まれる少量のAEIゼオライトを表す。「シード」として使用されるAEIゼオライトの量は、ゲル組成物中に存在するシリカの量を基準にして0.01%~約10%の範囲にすることができる。あるいは、シーディングで使用されるAEIゼオライトの量は、ゲル組成物中のシリカの量を基準にして0.01%~約5%の範囲であり、あるいは、シリカの量を基準にして0.01%~1%の範囲である。「シード」として使用されるAEIゼオライトは、好ましいと判断された場合には、焼成された形態であってもよいし、未焼成の形態であってもよい。
【0022】
シリカ源は、ケイ酸ナトリウム、シリカゾル、フュームドシリカ、オルトケイ酸テトラエチル、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が≦5であるFAUゼオライトNaY型、シリカ/アルミナ(SiO:Al)モル比が>5であるY型ゼオライトまたはそれらの混合物を含んでもよいし、本質的にそれらからなるものであっても、それらからなるものであってもよい。ゲル組成物中に存在するシリカの量は、所望のSiO:Al比であるAEI型ゼオライトを提供するために他の原料をシリカに対してそれぞれ本明細書で規定した範囲にするのに必要な量によって決定される。
【0023】
アルミニウム源は、アルミニウム金属、水酸化アルミニウム(例えば、ギブサイト、ベーマイトなど)、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムまたはそれらの混合物のうちの1つ以上を含んでもよいし、実質的にそれらからなるものであってもよいし、それらからなるものであってもよい。
【0024】
AEI型ゼオライトの調製に使用される有機構造規定剤(OSDA)は一般に、ゼオライトの骨格の分子形状とパターンを誘導または規定できる複雑な有機分子である。通常、ゼオライトの結晶はOSDAの周囲で形成する。結晶が形成された後、結晶の内部構造からOSDAを除去し、分子的に多孔質な空洞状の構造を残す。OSDAとしては、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド、N,N-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド、テトラメチルホスホニウムヒドロキシドまたはそれらの混合物をあげることができるが、これに限定されるものではない。あるいは、OSDAは、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムヒドロキシドである。
【0025】
アルカリ金属イオン源は、アルカリ金属(M)イオンを含んでもよいし、本質的にそれらからなるものであっても、それらからなるものであってもよく、ここでMは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはセシウム(Cs)として選択される。アルカリ金属イオンについては、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム、水酸化カリウムまたはそれらの組み合わせから得られる。あるいは、アルカリ金属イオン源は、水酸化ナトリウムである。ゲル組成物にアルカリ金属イオンが含まれていると、OSDAを好ましい状態で強制的にアルミニウムに配位させることにより、結晶化を促進しやすくなる。ゼオライトを吸着剤や触媒用の担体として使用する場合、ゼオライトの形成時にゼオライトの結晶構造に取り込まれたアルカリ金属原子を、イオン交換機構によって結晶構造内から除去することができる。イオン交換機構は、アルカリ金属イオンを、水素イオン、アンモニウムイオンまたは他の所望の金属イオンと交換することができる。
【0026】
この方法に従って形成されたAEI型ゼオライトの収率は、ゲル組成物中に存在する酸化物全体に対して30%を超える。あるいは、収率は40%を超え、あるいは50%を超える。このように、本開示の方法では、高い収率を得るために、ゲル組成物の形成に用いる水の一部として母液を再利用する必要はない。しかしながら、母液には未反応のOSDAが含まれるため、必要に応じて、ゲル組成物を形成するために原料を混合する水の少なくとも一部を母液に置き換えて使用してもよい。AEI型ゼオライトの結晶化と沈殿を促進するために、原料を混合する(30)際の水の量(図1参照)は、以下でさらに定義するように、水とシリカとのモル比(HO:SiO)が一般に少なくとも5:1かつ20:1以下になるような量である。
【0027】
本開示の一態様によれば、ゲル組成物を、シリカ(SiO)の量に対する各原料のモル比によってさらに説明することができる。これらのモル比には、表1に示すものが含まれる。ここで、Mはアルカリ金属イオンを示し、RはOSDAに由来する有機部分を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
あるいは、ゲル組成物を、シリカ(SiO)の量に対する原料のモル比によって説明することもでき、表2に提供されるものを含んでもよく、ここで、Mはアルカリ金属を示し、RはOSDAに由来する有機部分を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
図1の方法1の工程f)で形成されたゲル組成物を、調製直後、あるいは望ましい場合には、例えば約1~約24時間にわたって、ほぼ室温または100℃未満を含むがこれらに限定されるわけではない低温での時効処理などの混合時間を経た後に、水熱条件下においてもよい。大規模な製造では、AEI型ゼオライトの高い収率と適切な結晶化を達成するのに十分な混合状態が必要であるという点で、原料の混合時の劣化が望ましくない場合もある。
【0032】
このまま図1を参照すると、方法1の実施時、あらかじめ定められた結晶化温度で、あらかじめ定められた時間、ゲル組成物を加熱する(35)。この水熱合成では、135℃~200℃の範囲、あるいは約140℃~約190℃、あるいは約145℃から約180℃、あるいは145~165℃の範囲の結晶化温度を利用する。AEI型ゼオライトを結晶化させて沈殿させるために温度を維持する(35)時間は、15時間~168時間、あるいは約24時間~約96時間、あるいは約24時間~約48時間である。
【0033】
水熱反応が完了したら、残った液体(例えば、母液)から結晶性析出物の形態のAEI型ゼオライトを分離する。母液については廃棄してもよいし、必要に応じて、別のバッチのAEI型ゼオライトを製造する際に使用する水の少なくとも一部の代わりとして再利用してもよい。この分離では、濾過、デカンテーション、直接的な乾燥(蒸発など)を含むがこれらに限定されるものではない、従来の既知の方法のいずれかを使用することができる。
【0034】
母液からの分離後、OSDAおよび/またはアルカリイオンをいくらか含む可能性があるAEI型ゼオライトを回収し、任意に水洗した後、乾燥させてもよい。乾燥させた担体材料は、用途によっては乾燥状態のまま使用してもよいし、他の用途では、使用前に焼成を行ってもよい。AEIゼオライトを高温(例えば、>200℃、あるいは>300℃など)で焼成すると、多孔質構造に存在する残留OSDAが除去される。
【0035】
本開示の別の態様によれば、上述し、本明細書でさらに定義するプロセスに従って形成された乾燥AEI型ゼオライトは、平均粒度が5マイクロメートル(μm)未満、あるいは約2マイクロメートル未満、あるいは約1μm未満である。AEI型ゼオライトの平均粒度は、レーザー回折、動的光散乱およびふるい分けを含むがこれらに限定されるものではない、従来の既知の方法のいずれかを用いて測定することができる。
【0036】
また、本明細書で形成される「乾燥させた」AEI型ゼオライトは、BET比表面積を500m/gより大きくすることができ、あるいは少なくとも600m/g、あるいは700m/g以上にすることができる。AEI型ゼオライトの比表面積は、従来のBrunauer-Emmett-Teller(BET)法を用いて測定することができる。
【0037】
「乾燥させた」AEI型ゼオライトが示すモルフォロジーは、立方体、正方形のフレーク、不規則な粒子またはそれらの組み合わせもしくは混合物に類似する場合がある。あるいは、AEI型ゼオライトのモルフォロジーは、立方体、正方形のフレークまたはそれらの混合物に類似している。
【0038】
本開示の別の態様によれば、シリカ源、アルミナ源、有機構造規定剤(OSDA)、アルカリ金属イオン源、水および「シード」としての少量のAEIゼオライトを含むゲル組成物が提供される。ゲル組成物中に存在する各原料の量は、シリカの量に対して表1または表2のいずれかに示す比で与えられる。このゲル組成物を用いると、135℃~約180℃の温度で15時間~168時間の反応後、シリカ/アルミナ(SiO:Al)比が15:1を超える結晶性のAEI型ゼオライトが形成される。
【0039】
本開示の方法に従って形成されたAEI型ゼオライトの用途としては、限定されることなく、触媒用の担体材料、吸着剤または分離材料としての用途があげられる。また、「乾燥させた」AEI型ゼオライトは、焼成前に使用することもできるし、焼成後に使用することもできる。
【0040】
触媒は、1つ以上の触媒金属イオンが骨格中の原子と交換されているか、そうでなければゼオライトの細孔および/または空洞に浸透したAEI型ゼオライトを含むものであってもよい。AEI型ゼオライトに取り込むことができる触媒金属イオンの例としては、遷移金属のイオン、白金族金属(PGM)のイオン、金や銀などの貴金属のイオン、アルカリ土類金属のイオン、希土類金属のイオンまたはこれらの混合物があげられるが、これらに限定されるものではない。遷移金属は、銅、ニッケル、亜鉛、鉄、タングステン、モリブデン、コバルト、チタン、ジルコニウム、クロム、スズを含んでもよいし、本質的にそれらからなるものであっても、それらからなるものであってもよい。白金族金属としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、プラチナがあげられるが、これらに限定されるものではない。アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを含む。希土類金属は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ユーロピウム、テルビウム、エルビウム、イッテルビウム、イットリウムを含む。
【実施例
【0041】
以下の具体例は、本開示を説明するためにあげられたものであり、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者であれば、本開示に照らして、本開示の意図または範囲から逸脱したりこれを越えたりすることなく、本明細書に開示した特定の実施形態に多くの変更を加えることが可能であり、それでもなお同様の結果または類似の結果を得ることができる旨を理解するであろう。
【0042】
以下の実施例では、粒度分布の測定には株式会社堀場製作所のLA-920レーザー粒子サイザーを使用し、相および結晶性の測定には株式会社リガクのMiniFlex II DESKTOP X線回折計を使用し、BET表面積の測定にはマイクロメリティックストライスターII 3020を使用し、化学組成の分析にはSpectro Analytical Instruments Model FCPSA83D ICPを使用し、ゼオライトのモルフォロジーについては、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定する。
【0043】
実施例1-AEI型ゼオライトのバッチの調製及び特性評価
【0044】
本実施例で用いたアルミナ源は、シリカ/アルミナ比(SAR)37.74および9.55の高SARのY型ゼオライトであった。本実施例で利用したOSDA:SiO比は、およそ0.06:1であった。
【0045】
有機構造規定剤(OSDA)として、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド(TMPOH35%、Sachem Americas、テキサス州オースティン)合計212.84グラムを2リットルのビーカーに入れた。次に、NaOH(99%)38.55gを十分な量の蒸留水に溶解し、50%の溶液を得た。このNaOH溶液を、撹拌しながらゆっくりとOSDAに加えた。続いて、シリカ/アルミナ比(SAR)が37.74、強熱減量(LOI)が13.17%のY型ゼオライト(SARH-2H、PIDC、ミシガン州アナーバー)合計144.33グラムと、SARが9.55、LOIが10.92%のY型ゼオライト(SARH-1H、PIDC、ミシガン州アナーバー)67.64グラムを撹拌下で加えた。この混合物を10分間撹拌した。次に、ケイ酸ナトリウム(NaO:8.81%、SiO:28.80%、PQ Corp.、ペンシルバニア州マルバーン)1034.83グラムを上記混合物に加えた。得られたスラリーを10分間混合して、均一なゲルを形成した。次に、このゲルを2リットルのオートクレーブ反応容器に移した。シードとして、プロトン型AEIゼオライト合計2gをゲルに加えた。このゲルを165℃で20時間、水熱反応させて結晶化させた。反応生成物を漏斗フィルターに入れ、5リットルの脱イオン水で洗浄した。このウェットケーキを120℃のオーブンで一晩乾燥させた。得られた乾燥物を粉砕し、300μmのスクリーンでふるい、粉末状のAEI型ゼオライト約140gを得た。
【0046】
ここで図2を参照すると、本実施例で回収して乾燥させたゼオライトのX線回折(XRD)パターンを測定したところ、AEI型の構造または骨格が存在することがわかる。さらに、測定したXRDパターンは、このAEI型ゼオライトには、2θ約15.78°、18.24°、25.98°の方沸石、2θ約6.5°のモルデナイトの競合相ピークなどの他のタイプの結晶性ゼオライトの相または構造が実質的に含まれていないことを示している。
【0047】
ここで図3を参照すると、実施例1で回収して乾燥させたAEI型ゼオライト100のモルフォロジーでは平均サイズ2マイクロメートルの立方体105が優勢であることが、走査型電子顕微鏡写真に示されている。
【0048】
回収した粉末をマッフル炉にて550℃で8時間焼成し、残ったOSDAをゼオライトの空洞から除去した。次に、この焼成粉末に、室温で1時間、塩化アンモニウムを用いてイオン交換処理を2回ほどこした。固体と液体とを分離した後、固体を水中で洗浄し、オーブンで一晩乾燥させて、アンモニア型のAEIゼオライトを得た。アンモニア型のAEIゼオライトを450℃で16時間焼成することによって、プロトン形態のAEIゼオライトを得ることもできる。
【0049】
本実施例で形成したAEI型ゼオライトのシリカ/アルミナ比(SAR)を誘導結合プラズマICPで測定した。このAEI型ゼオライトのSARは、残留NaOが20ppmの量で存在する状態で16.58であった。
【0050】
比表面積(SA)、細孔容積(PV)および細孔径(PD)については、従来のBrunauer-Emmett-Teller(BET)法を用いて測定した。AEI型ゼオライトの新鮮な試料の比表面積は697.26m/gであったのに対し、細孔容積(PV)は0.316cm/g、細孔径(PD)は1.8ナノメートル(nm)であった。AEI型ゼオライトを900℃で3時間(10%が水蒸気で残りが空気で)水熱時効処理した後、時効後のAEI型ゼオライトではSA=701.75m/g、PV=0.311cm/g、PD=1.8nmであった。
【0051】
実施例2-AEI型ゼオライトの別のバッチの調製及び特性評価
【0052】
本実施例で用いたアルミナ源は、SAR35.11および9.19の高SARのY型ゼオライトであった。本実施例で利用したOSDA:SiO比は、およそ0.09:1であった。
【0053】
有機構造規定剤(OSDA)として、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド(TMPOH35%、Sachem Americas、テキサス州オースティン)合計342.14グラムを2リットルのビーカーに入れた。次に、NaOH(99%)21.66gを十分な量の蒸留水に溶解し、50%の溶液を得た。このNaOH溶液を、撹拌しながらゆっくりとOSDAに加えた。続いて、シリカ/アルミナ比(SAR)が35.11、強熱減量(LOI)が10.86%のY型ゼオライト(SARH-2H、PIDC、ミシガン州アナーバー)合計173.81グラムと、SARが9.19、LOIが14.46%のY型ゼオライト(SARH-1H、PIDC、ミシガン州アナーバー)74.18グラムを撹拌下で加えた。この混合物を10分間撹拌した。次に、ケイ酸ナトリウム(NaO:8.84%、SiO:28.86%、PQ Corp.、ペンシルバニア州マルバーン)1034.83グラムを上記混合物に加えた。得られたスラリーを10分間混合して、均一なゲルを形成した。次に、このゲルを2リットルのオートクレーブ反応容器に移した。シードとして、プロトン型AEIゼオライト合計2gをゲルに加えた。このゲルを165℃で96時間、水熱反応させて結晶化させた。反応生成物を漏斗フィルターに入れ、5リットルの脱イオン水で洗浄した。このウェットケーキを120℃のオーブンで一晩乾燥させた。得られた乾燥物を粉砕し、300μmのスクリーンでふるい、粉末状のAEI型ゼオライト約180gを得た。
【0054】
ここで図4を参照すると、本実施例で回収して乾燥させたゼオライトのX線回折(XRD)パターンを測定したところ、AEI型の構造または骨格が存在することがわかる。さらに、測定したXRDパターンは、このAEI型ゼオライトには、2θ約15.78°、18.24°、25.98°の方沸石、2θ約6.5°のモルデナイトの競合相ピークなどの他のタイプの結晶性ゼオライトの相または構造が実質的に含まれていないことを示している。
【0055】
ここで図5を参照すると、実施例2で回収して乾燥させたAEI型ゼオライト100のモルフォロジーには、立方体105、正方形のフレーク110、不規則な粒子115の組み合わせが含まれることが、走査型電子顕微鏡写真に示されている。平均粒度を測定したところ、約1μm未満であった。本実施例で形成したAEI型ゼオライトのシリカ/アルミナ比(SAR)を誘導結合プラズマICPで測定した。このAEI型ゼオライトのSARは、残留NaOが36ppmの量で存在する状態で20.98であった。
【0056】
比表面積(SA)、細孔容積(PV)および細孔径(PD)については、従来のBrunauer-Emmett-Teller(BET)法を用いて測定した。AEI型ゼオライトの新鮮な試料の比表面積は771.22m/gであったのに対し、細孔容積(PV)は0.293cm/g、細孔径(PD)は1.5ナノメートル(nm)であった。AEI型ゼオライトを900℃で3時間(10%が水蒸気で残りが空気で)水熱時効処理した後、時効後のAEI型ゼオライトではSA=729.27m/g、PV=0.286cm/g、PD=1.5nmであった。
【0057】
実施例3-AEI型ゼオライトの別のバッチの調製及び特性評価
【0058】
本実施例で用いたアルミナ源は、SAR35.11および9.19の高SARのY型ゼオライトであった。本実施例で利用したOSDA:SiO比は、およそ0.09:1であった。
【0059】
有機構造規定剤(OSDA)として、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド(TMPOH35%、Sachem Americas、テキサス州オースティン)合計448.12グラムを2リットルのビーカーに入れた。次に、NaOH(99%)11.34gを十分な量の蒸留水に溶解し、50%の溶液を得た。このNaOH溶液を、撹拌しながらゆっくりとOSDAに加えた。続いて、シリカ/アルミナ比(SAR)が35.11、強熱減量(LOI)が10.86%のY型ゼオライト(SARH-2H、PIDC、ミシガン州アナーバー)合計170.73グラムと、SARが9.19、LOIが14.46%のY型ゼオライト(SARH-1H、PIDC、ミシガン州アナーバー)72.87グラムを撹拌下で加えた。この混合物を10分間撹拌した。次に、ケイ酸ナトリウム(NaO:8.84%、SiO:28.86%、PQ Corp.、ペンシルバニア州マルバーン)1023.01グラムを上記混合物に加えた。得られたスラリーを10分間混合して、均一なゲルを形成した。次に、このゲルを2リットルのオートクレーブ反応容器に移した。シードとして、プロトン型AEIゼオライト合計2gをゲルに加えた。このゲルを165℃で24時間、水熱反応させて結晶化させた。反応生成物を漏斗フィルターに入れ、5リットルの脱イオン水で洗浄した。このウェットケーキを120℃のオーブンで一晩乾燥させた。得られた乾燥物を粉砕し、300μmのスクリーンでふるい、粉末状のAEI型ゼオライト約180gを得た。
【0060】
ここで図6を参照すると、本実施例で回収して乾燥させたゼオライトのX線回折(XRD)パターンを測定したところ、AEI型の構造または骨格が存在することがわかる。さらに、測定したXRDパターンは、このAEI型ゼオライトには、2θ約15.78°、18.24°、25.98°の方沸石、2θ約6.5°のモルデナイトの競合相ピークなどの他のタイプの結晶性ゼオライトの相または構造が実質的に含まれていないことを示している。
【0061】
ここで図7を参照すると、実施例3で回収して乾燥させたAEI型ゼオライト100のモルフォロジーには、正方形のフレーク110と不規則な粒子115の組み合わせが含まれることが、走査型電子顕微鏡写真に示されている。平均粒度を測定したところ、1μm未満であった。
【0062】
本実施例で形成したAEI型ゼオライトのシリカ/アルミナ比(SAR)を誘導結合プラズマICPで測定した。このAEI型ゼオライトのSARは、残留NaOが50ppmの量で存在する状態で22.01であった。
【0063】
比表面積(SA)、細孔容積(PV)および細孔径(PD)については、従来のBrunauer-Emmett-Teller(BET)法を用いて測定した。AEI型ゼオライトの新鮮な試料の比表面積は752.01m/gであったのに対し、細孔容積(PV)は0.311cm/g、細孔径(PD)は1.7ナノメートル(nm)であった。AEI型ゼオライトを900℃で3時間(10%が水蒸気で残りが空気で)水熱時効処理した後、時効後のAEI型ゼオライトではSA=771.83m/g、PV=0.319cm/g、PD=1.7nmであった。
【0064】
実施例4-AEI型ゼオライトの別のバッチの調製及び特性評価
【0065】
本実施例で用いたアルミナ源は、SAR5.0のFAU Y型ゼオライトであった。本実施例で利用したOSDA:SiO比は、およそ0.09:1であった。
【0066】
有機構造規定剤(OSDA)として、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド(TMPOH35%、Sachem Americas、テキサス州オースティン)合計317.03グラムを2リットルのビーカーに入れた。次に、NaOH(99%)121.81gを十分な量の蒸留水に溶解し、50%の溶液を得た。このNaOH溶液を、撹拌しながらゆっくりとOSDAに加えた。続いて、シリカゾル(40%SiO2、W.R.Grace、メリーランド州コロンビア)合計1046.3グラムを滴下して加えた。この混合物を10分間撹拌した。次に、SARが5、NaO量が8.82%、強熱減量(LOI)が24.88%のNaY82.95グラムを撹拌下で加えた。得られたスラリーを10分間混合して、均一なゲルを形成した。次に、このゲルを2リットルのオートクレーブ反応容器に移した。シードとして、プロトン型AEIゼオライト合計2gをゲルに加えた。このゲルを165℃で36時間、水熱反応させて結晶化させた。反応生成物を漏斗フィルターに入れ、5リットルの脱イオン水で洗浄した。このウェットケーキを120℃のオーブンで一晩乾燥させた。得られた乾燥物を粉砕し、300μmのスクリーンでふるい、粉末状のAEI型ゼオライト約180gを得た。
【0067】
ここで図8を参照すると、本実施例で回収して乾燥させたゼオライトのX線回折(XRD)パターンを測定したところ、AEI型の構造または骨格が存在することがわかる。さらに、測定したXRDパターンは、このAEI型ゼオライトには、2θ約15.78°、18.24°、25.98°の方沸石、2θ約6.5°のモルデナイトの競合相ピークなどの他のタイプの結晶性ゼオライトの相または構造が実質的に含まれていないことを示している。
【0068】
ここで図9を参照すると、実施例4で回収して乾燥させたAEI型ゼオライト100のモルフォロジーには、正方形のフレーク110と不規則な粒子115の組み合わせが含まれることが、走査型電子顕微鏡写真に示されている。
【0069】
本実施例で形成したAEI型ゼオライトのシリカ/アルミナ比(SAR)を誘導結合プラズマICPで測定した。このAEI型ゼオライトのSARは、残留NaOが30ppmの量で存在する状態で20.58であった。
【0070】
比表面積(SA)、細孔容積(PV)および細孔径(PD)については、従来のBrunauer-Emmett-Teller(BET)法を用いて測定した。AEI型ゼオライトの新鮮な試料の比表面積は757.69m/gであったのに対し、細孔容積(PV)は0.347cm/g、細孔径(PD)は1.8ナノメートル(nm)であった。AEI型ゼオライトを900℃で3時間(10%が水蒸気で残りが空気で)水熱時効処理した後、時効後のAEI型ゼオライトではSA=773.98m/g、PV=0.332cm/g、PD=1.7nmであった。
【0071】
実施例5-選択触媒還元(SCR)の性能
【0072】
実施例1~4で形成されたAEI型ゼオライトを用いて形成された触媒のNOx変換を試験するために、流動反応器を使用した。AEI型ゼオライト粉末を酢酸銅溶液に添加し、混合物を80℃で2時間時効させることによって、ゼオライトの構造に存在する銅(Cu)イオンをアルカリ金属イオンにイオン交換した。実施例1~4のゼオライトに取り込まれたCuOの含有量を測定したところ、4.22%(実施例1)、3.84%(実施例2)、3.90%(実施例3)、3.94%(実施例4)であった。図10に示すように、実施例1~4で調製したCu-AEIゼオライトの新鮮なサンプルは、250℃~600℃の広い温度範囲でNO変換率が90%を超えた。Cu-AEIゼオライト(実施例1~4)を850℃で16時間水熱時効処理した後も、図11に示すように、Cu-AEIゼオライトは、300℃~550℃までNO変換率が約85%以上となる。
【0073】
本開示の目的のために、本明細書では、「約」および「実質的に」という語は、当業者に知られた予想されるばらつき(例えば、測定における限界および変動)による測定可能な値および範囲に関して使用される。
【0074】
本開示の目的のために、本明細書で「[第1の数]と[第2の数]との間」または「[第1の数]から[第2の数]の間」であると述べるパラメータの範囲はいずれも、言及された数を含むことを意図している。言い換えれば、範囲は、「[第1の数]から[第2の数字]まで」として示した範囲と同様に解釈されることを意図している。
【0075】
本開示の目的のために、「重量」という語は、グラム、キログラムなどの単位で表記されるような質量値を意味する。さらに、端点による数値範囲の記載は、端点およびその数値範囲内のすべての数を含む。例えば、40重量%~60重量%の範囲の濃度は、40重量%、60重量%およびその間のすべての濃度(例えば、40.1%、41%、45%、50%、52.5%、55%、59%など)を含む。
【0076】
本開示の目的のために、「少なくとも1つの」および「1つ以上の」要素という表現は同義に用いられ、同じ意味を持ってもよい。単一の要素または複数の要素を含むことを示すこれらの表現については、要素の最後に「(複数)」というカッコ書きを付けて表すこともできる。例えば、「少なくとも1の金属」、「1以上の金属」および「金属(複数)」を同義に用いることができ、同じ意味を持つことを意図している。
【0077】
本明細書では、明確かつ簡潔な明細書を書くことができるような方法で実施形態を説明したが、本発明から逸脱することなく、実施形態を様々に組み合わせたり、分離したりできることが想定され、理解されるであろう。例えば、本明細書で説明した好ましい特徴はいずれも、本明細書で説明した本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0078】
当業者であれば、本開示に照らして、本開示の意図または範囲から逸脱したりこれを越えたりすることなく、本明細書に開示した特定の実施形態に多くの変更を加えることが可能であり、それでもなお同様の結果または類似の結果を得ることができる旨を理解するであろう。また、当業者であれば、本明細書で報告した特性はいずれも、日常的に測定され、複数の異なる方法で得られる特性を表していることも、理解するであろう。本明細書で説明した方法は、そのような方法の1つを表しており、本開示の範囲を越えることなく、他の方法を用いることができる。
【0079】
本発明の様々な形態についての上述した説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。網羅的であることや、開示された厳密な形態に本発明を限定することは、意図されていない。上記の教示内容に照らして、多数の改変または変形を施すことが可能である。ここに示す形態は、本発明の原理およびその実用的な用途を最もよく示すことで、当業者が、考えられる特定の用途に適した様々な改変を施して様々な形態で本発明を利用できるようにするために選択され、説明されたものである。このようなすべての改変および変形は、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内であり、特許請求の範囲が公正かつ適法に、公平に与えられる範囲に従って解釈される。
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【国際調査報告】