(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】認知機能低下を評価及び監視するための装置及び診断方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20220105BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20220105BHJP
A61B 5/0285 20060101ALI20220105BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20220105BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20220105BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20220105BHJP
A61B 3/11 20060101ALI20220105BHJP
A61B 8/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/02 A
A61B5/02 310V
A61B5/02 310K
A61B5/0285 H
A61B5/08
A61B5/352 100
A61B3/12
A61B3/11
A61B8/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520148
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 AU2019051101
(87)【国際公開番号】W WO2020073094
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518047654
【氏名又は名称】ザ ブレイン プロテクション カンパニー ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】セレルマイヤー,デイビッド スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ディーンフィールド,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウーイハージ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ミリヤセヴィク,ゾラン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C127
4C316
4C601
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA06
4C017AA07
4C017AA08
4C017AA09
4C017AA11
4C017AA12
4C017AA14
4C017AA19
4C017AB04
4C017AB10
4C017AC03
4C017AC16
4C017AC23
4C017AC28
4C017AC30
4C017BC11
4C017BC20
4C017BC21
4C017BD04
4C017FF05
4C038SS08
4C038SV05
4C127AA02
4C127GG11
4C316AA06
4C316AA10
4C316AA28
4C316AA30
4C316AB16
4C316FC28
4C601DD03
4C601DD07
4C601DD11
4C601DD15
4C601DE01
4C601DE16
4C601EE09
4C601FF08
4C601KK36
(57)【要約】
患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価するための装置(10)であって、装置(10)が、患者の総頸動脈、内頸動脈、又は外頸動脈に隣接して配置されるように構成されたプローブ(12)と、プローブ(12)に関連する少なくとも2つのセンサ(101、102、104、106、108、110)と、を備え、センサが、頸動脈拍動の波の強度、頸動脈拍動の波の力、頸動脈拍動の圧力波形、脈波伝播速度、動脈コンプライアンス、動脈スティフネス、動脈径、微小塞栓数、心拍変動、及び目又は網膜への変化、の1つ以上を測定するように構成される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価するための装置であって、前記装置が、
患者の総頸動脈、内頸動脈、又は外頸動脈に隣接して配置されるように構成されたプローブと、
前記プローブに関連する少なくとも2つのセンサであって、
頸動脈拍動の波の強度、
頸動脈拍動の波の力、
頸動脈拍動の圧力波形、
脈波伝播速度、
動脈コンプライアンス、
動脈スティフネス、
動脈径、
微小塞栓数、
心拍変動、及び
目又は網膜への変化、
の1つ以上を測定するように構成される、センサ
を備える、装置。
【請求項2】
前記プローブと通信する1つ以上のセンサを有するリストバンドをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記リストバンドが、遠隔ECG電極、血圧圧平トノメトリセンサ及び血中酸素飽和度センサを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記センサが、1つ以上のドップラー超音波センサ及び/又はワイドビーム技術を用いる音響測定センサ、及び/又は微小電気機械(MEMS)歪みゲージ及び/又は音響センサ及び/又は光音響ドップラー流量測定センサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プローブが、適切な位置が患者の血管構造に対し決定される初期配置モード及びセンサが血管構造内からの血流特性及び血管構造の機械的特性に関する測定値を取得する動作モードで動作可能である、先行する請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記プローブが患者の皮膚に対して過度の圧力で配置されるかどうかを決定する及び示すように構成されたセンサをさらに備える、先行する請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記センサにより得られた測定値を表示するためのデジタルディスプレイをさらに備える、先行する請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
コンピュータと接続可能な出力データケーブルをさらに備える、先行する請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
無線データ送信器をさらに備える、先行する請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価する方法であって、前記方法は、以下のステップ、
診断装置のプローブを患者の総頸動脈、内頸動脈又は外頸動脈に隣接して配置するステップであって、プローブが少なくとも2つのセンサを有する、ステップと、
前記診断装置で第1の測定を行って
頸動脈拍動の波の強度、
頸動脈拍動の波の力、
頸動脈拍動の圧力波形、
脈波伝播速度、
動脈コンプライアンス、
動脈スティフネス、
動脈径、
微小塞栓数、
心拍変動、及び
目又は網膜への変化、
の1つ以上に関係する一次データを取得するステップと、
患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを予測するためにセンサから取得した測定された一次データを評価するステップ、
を含む、方法。
【請求項11】
後続の、
後の時点で診断装置を使用して第2の測定を行いかつ第1の測定と第2の測定の間の測定された一次データの差異を評価するステップと、
患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを予測するためにセンサから取得した測定されたデータを評価するステップ、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記データを評価するステップが、患者固有の所定のリスク因子の形態の二次データに基づいて重み付けを適用するステップを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記二次データが、医学的状態に関係しかつ
年齢、性別、肥満症、心房細動状態、脳卒中の既往歴、血圧、ボディマス指数(BMI)、コレステロール値(総及びHDL)、頭部外傷歴、糖尿病、心血管疾患(CVD)、緑内障の存在
の1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二次データが、ライフスタイルに関係しかつ教育レベル、喫煙歴、アルコール消費量、運動頻度及び強度の1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記二次データが、遺伝学に関係しかつ家族歴、特異的DNAマーカの1つ以上を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記二次データが、抗凝固薬、降圧剤、及びコレステロール低下薬(例えば、スタチン)を含む服薬中の薬に関係する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
患者を対応する人口統計と比較して患者の認知機能低下及び/又は認知症のリスクを評価するために測定された一次データ及び/又は二次データを保存されたデータと比較するステップをさらに含む、請求項10又は16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記プローブが、
前記センサを制御する及び/又は前記センサから得られたデータを記録するように構成された内部プロセッサと、
前記装置を動作させるように構成されたユーザインターフェースと、
前記センサからの出力を表示するように構成されたユーザディスプレイ装置、
を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記プローブが、
前記センサを制御する及び/又は前記センサから得られたデータを記録するように構成された外部プロセッサ、
前記装置を動作させるように構成されたユーザインターフェース、及び
前記センサからの出力を表示するように構成されたユーザディスプレイ装置、
に無線プロトコル又はケーブル接続により接続可能である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価するための装置であって、前記装置が、
患者の総頸動脈、内頸動脈、又は外頸動脈に隣接して配置されるように構成されたプローブであって、前記プローブが、一次データを取得するための以下のセンサ、
高周波音波が赤血球から跳ね返ることによる動脈を通る血流の近位測定及び遠位測定を提供するための動脈上の位置決めのための2つのドップラー超音波流量センサと、
心拍変動を計算するためのECG電極と、
動脈の動脈拍動のトノメトリを評価するためのMEMS歪みゲージ、
を含み、前記プローブが、プロセッサ、ユーザディスプレイ及びユーザ入力と通信する、プローブ
を備える、装置。
【請求項21】
患者の目又は網膜に関する一次データを収集するためのセンサを有する一体化された網膜撮像ユニットをさらに備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
患者の認知機能低下のリスクを評価及び/又は監視する方法であって、
請求項20又は21のどちらかに記載の装置を使用して一次データを取得するステップと、
年齢、性別、肥満症、心房細動状態、脳卒中の既往歴、血圧、ボディマス指数(BMI)、コレステロール値(総及びHDL)、頭部外傷歴、糖尿病(2型)、心血管疾患(CVD)の1つ以上を含む二次データを入力するステップと、
総合リスク評価を生成するために各入力一次データ及び各入力二次データに重み付けを適用することにより患者の認知機能低下のリスクを評価するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、認知機能低下を評価及び監視するための装置及び診断方法に関する。しかしながら、本発明は他の医療用途に用いられ得ることが当業者には分かるであろう。
【背景技術】
【0002】
心臓は、体内で最大の動脈である大動脈で始まる相互に接続された分岐動脈のネットワークを通じて、酸素を豊富に含む血液を体に供給する。
図1の心臓と選択された動脈の概略図に示すように、心臓に最も近い大動脈の部分は3つの領域:上行大動脈(大動脈が最初に心臓を離れ、上方に延びる)、大動脈弓、および下行大動脈(大動脈が下方に延びる)、に分けられる。3つの主要な動脈は、大動脈弓に沿って大動脈から、腕頭動脈、左総頸動脈、及び左鎖骨下動脈に分岐する。腕頭動脈は、大動脈弓から離れる方へ延び、その後、酸素を豊富に含む血液を頭頸部に供給する右総頸動脈と、血液を主に右腕に供給する右鎖骨下動脈に分かれる。左総頸動脈は、大動脈弓から離れる方へ延び、頭頸部に供給する。左鎖骨下動脈は、大動脈弓から離れる方へ延び、血液を主に左腕に供給する。右総頸動脈及び左総頸動脈のそれぞれはその後、別個の内頸動脈及び外頸動脈に分岐する。
【0003】
下行大動脈は、下向きに延び、下行胸部大動脈、続いて腹部大動脈を画定し、その後左右の腸骨動脈に分岐する。身体の様々な器官は、下行大動脈と接合し下行大動脈により供給される動脈によって供給される。
【0004】
心拍の収縮期には、左心室の収縮により血液が上行大動脈へ押し込まれ、動脈内の圧力が増加する(収縮期血圧として知られる)。左心室から排出される血液の体積は、脈波として知られる圧力波を生じ、これは動脈を通って伝播し血液を推進する。脈波は動脈を拡張させる。左心室が弛緩するとき(心拍の拡張期)に、動脈系内の圧力が減少し(拡張期血圧として知られる)、これが動脈を収縮させる。
【0005】
収縮期血圧と拡張期血圧との差が「脈圧」であり、これは一般に、他の因子のうち、心臓によって生じる収縮力の大きさ、心拍数、末梢血管抵抗、及び拡張期の「ランオフ」(例えば、動脈から静脈への圧力勾配を流れる血液)によって決まる。脳などの高流量の器官は、過度の圧力及び血流拍動性に特に敏感である。腎臓、肝臓、及び脾臓などの他の器官も、過度の圧力及び血流拍動性により時間が経つにつれて損傷される場合がある。
【0006】
このような敏感な器官への比較的一貫した流量を確保するために、動脈血管壁は、圧力波に応じて膨張及び収縮して、脈波エネルギーの一部を吸収する。しかしながら、血管構造が老化するにつれて、動脈壁は弾力性を失い、それにより脈波速度が増加し、動脈血管構造を通る波の反射が生じる。
【0007】
動脈硬化は、頸動脈及び他の大きな動脈が膨張し血流拍動性を減衰させる能力を損ない、それにより収縮期圧及び脈圧が増加する。したがって、動脈壁が時間とともに硬化すると、動脈は動脈血管構造の遠位分岐に過度の力を伝達する。
【0008】
研究は、一貫して高い収縮期圧、脈圧、及び/又は圧力の経時変化(dP/dt)が血管性認知症(例えば、脳への血液供給の低下又は脳内出血)などの認知症のリスクを増加させることを示唆する。理論に束縛されないが、高い脈圧は、血管性認知症及び加齢性認知症(例えば、アルツハイマー病)の根本的原因又は悪化因子であり得ると考えられる。したがって、血管性認知症及び加齢性認知症(例えば、アルツハイマー病)の進行は、動脈壁の弾力性の喪失とその結果としての脳血管への応力によっても影響される可能性がある。例えば、アルツハイマー病は、脳中の老人斑及び神経原線維変化の存在と一般に関連付けられる。最近の研究は、脈圧の増加、収縮期圧の増加、及び/又は圧力の変化率(dP/dt)の増加は、時間の経過とともに、老人斑及び神経原線維変化に寄与し得る脳での微小出血を引き起こす可能性があることを示唆する。
【0009】
脈圧の上昇は、血管の老化の特徴であり、脳の壊れやすい微小血管に対するその破壊的影響に起因して、認知機能低下及び認知症の潜在的なリスク因子であることが最近確認されている。
【0010】
中年期の高血圧と後年の認知機能低下又は認知症との関係性を裏付ける研究がある。
【0011】
血圧は、定期的に測定され、様々な潜在的な基礎疾患の存在の指標として用いられる。しかしながら、血圧測定だけで、認知機能低下を適切に測ることはできない。これは認知機能低下に関係しない種々の因子の結果として患者の血圧が上昇又は変動し得るためである。
【0012】
研究はまた、緑内障の存在及び/又は目及び網膜へのいくつかの観察可能な変化が、アルツハイマー病の患者、初期段階のアルツハイマー病の人々、及びアルツハイマー病を発症するリスクがより高い人々において観察される場合があることを示す。
【0013】
高い脈圧による脳の損傷の実際の原因として考えられるのは、頸動脈波が脳に向かって進む際のその「強度」である。したがって、脳に向かって進むパルス生成波の振幅の増加は、後年の認知機能低下の重要なリスク因子である可能性がある。
【0014】
非侵襲的な方法を使用して動脈の内圧を正確に測定することは今のところ不可能である。現在、この目的のために血管中又は血管周囲に測定プローブを配置することがあるが、これらの手技は非常に侵襲的である。
【0015】
血圧と血流の両方の変化の測定を必要とする波強度解析が、専門医による病院での使用又は外来患者への使用が意図された大型のかさばる超音波マシン(例えば、SSD-5500超音波システム、アロカ社、日本)で行われることがある。
【0016】
認知症を発症する又は将来の認知機能低下のリスクは現在、人の年齢、教育レベル、高血圧状態、コレステロール値、ボディマス指数、及び身体活動(例えば、CAIDE Risk Score App, Merz Pharmaceuticals GmbH)を含むアルゴリズムを含む様々な手段によって評価される。Kaffashian et al(2013)は、CAIDEをフラミンガム脳卒中リスクプロファイル(FSRP)と比較し、FSRPが10年認知機能低下とより強く関連付けられると結論付けている。
【0017】
認知機能低下のリスクを評価するためのこれらの現在の手段は、人口ベースであり、特定の人の動脈系の状態も、血圧パルスの波の強度及び他の特性に関するさらなるリスク因子も考慮に入れていない。
【0018】
発明の目的
上記の欠点の1つ以上を実質的に克服するか又は少なくとも改善すること、又は有用な代替物を提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0019】
第1の態様において、本発明は、患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価するための装置であって、その装置は、
患者の総頸動脈、内頸動脈、又は外頸動脈に隣接して配置されるように構成されたプローブと、
プローブに関連する少なくとも2つのセンサであって、
頸動脈拍動の波の強度、
頸動脈拍動の波の力、
頸動脈拍動の圧力波形、
脈波伝播速度、
動脈コンプライアンス、
動脈スティフネス、
動脈径、
微小塞栓数、
心拍変動、及び
目及び網膜への変化、
の1つ以上を測定するように構成される、センサ
を備える、装置を提供する。
【0020】
装置はさらに好ましくは、プローブと通信する1つ以上のセンサを有するリストバンドを備える。
【0021】
リストバンドは好ましくは、遠隔ECG電極、血圧圧平トノメトリセンサ、及び血中酸素飽和度センサを含む。
【0022】
センサは好ましくは、1つ以上のドップラー超音波センサ、及び/又はワイドビーム技術を用いる音響測定センサ、及び/又は微小電気機械(MEMS)歪みゲージ及び/又は音響センサ、及び/又は光音響ドップラー流量測定センサを含む。
【0023】
プローブは好ましくは、患者の血管構造に対する適切な位置を決定する初期配置モード、及び血管構造内からの血流特性及び血管構造の機械的特性に関する測定値をセンサが取得する動作モードで動作する。
【0024】
装置はさらに好ましくは、プローブが患者の皮膚に対して過度の圧力で配置されているかどうかを決定する及び示すように構成されたセンサを備える。
【0025】
装置はさらに好ましくは、センサによって得られた測定値を表示するためのデジタルディスプレイを備える。
【0026】
装置はさらに好ましくは、コンピュータと接続可能な出力データケーブルを備える。
【0027】
装置はさらに好ましくは、無線データ送信器を備える。
【0028】
第2の態様において、本発明は、患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価する方法であって、その方法は、以下のステップ、
診断装置の少なくとも2つのセンサを有するプローブを、患者の総頸動脈、内頸動脈、又は外頸動脈に隣接して配置するステップと、
診断装置で第1の測定を行って、
頸動脈拍動の波の強度、
頸動脈拍動の波の力、
頸動脈拍動の圧力波形、
脈波伝播速度、
動脈コンプライアンス、
動脈スティフネス、
動脈径、
心拍変動、
微小塞栓数、及び
目又は網膜への変化、
の1つ以上に関係する一次データを取得するステップと、
患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを予測するために、センサから取得した一次測定データを評価するステップ、
を含む方法を提供する。
【0029】
方法はさらに好ましくは、後続の、後の時点で診断装置を使用して第2の測定を行い、第1の測定と第2の測定との間の測定パラメータの差異を評価するステップと、患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを予測するために、センサから取得した測定データを評価するステップを含む。
【0030】
データを評価するステップは好ましくは、患者固有の所定のリスク因子に基づいて重み付けを適用するステップを含む。
【0031】
リスク因子は好ましくは、医学的状態に関係し、年齢、性別、肥満症、心房細動状態、脳卒中の既往歴、血圧、ボディマス指数(BMI)、コレステロール値(総及びHDL)、頭部外傷歴、糖尿病、心血管疾患(CVD)の1つ以上を含む。
【0032】
リスク因子は好ましくは、ライフスタイルに関係し、教育レベル、喫煙歴、アルコール消費量、運動頻度及び強度の1つ以上を含む。
【0033】
リスク因子は好ましくは、遺伝学に関係し、家族歴、特異的DNAマーカの1つ以上を含む。
【0034】
リスク因子は好ましくは、抗凝固薬、降圧剤、及びコレステロール低下薬(例えば、スタチン)を含む服薬中の薬に関係する。
【0035】
方法はさらに好ましくは、患者を対応する人口統計と比較して患者の認知機能低下及び/又は認知症のリスクを評価するために、測定データを保存されたデータと比較するステップを含む。
【0036】
リストバンド(又はフィンガーラップ)は好ましくは、遠隔ECG電極、血圧圧平トノメトリセンサ、及び血中酸素飽和度センサを含む。
【0037】
プローブは好ましくは、患者の血管構造に対する適切な位置が決定される初期配置モード、及びセンサが血管構造内からの血流特性及び/又は圧力特性に関する測定値を取得する動作モードで動作する。
【0038】
装置はさらに好ましくは、プローブが患者の皮膚を過度に押圧して配置されているかどうかを決定する及び示すように構成された圧力センサを備える。
【0039】
第3の態様において、本発明は、患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価するための装置であって、その装置は、
患者の総頸動脈、内頸動脈、又は外頸動脈に隣接して配置されるように構成されたプローブであって、プローブが、一次データを取得するための以下のセンサ、
高周波音波が赤血球から跳ね返ることによる動脈を通る血流の近位測定及び遠位測定を提供するために動脈上に位置決めするための2つのドップラー超音波流量センサと、
心拍変動を計算するためのECG電極と、
動脈の動脈拍動のトノメトリを評価するためのMEMS歪みゲージ、
を含み、プローブが、プロセッサ、ユーザディスプレイ、及びユーザ入力と通信する、プローブ
を備える、装置を提供する。
【0040】
装置はさらに好ましくは、患者の目又は網膜に関する一次データを収集するためのセンサを有する一体化された網膜撮像ユニットを備える。
【0041】
患者の認知機能低下のリスクを評価及び/又は監視する方法は好ましくは、
前述の装置を使用して一次データを取得するステップと、
年齢、性別、肥満症、心房細動状態、脳卒中の既往歴、血圧、ボディマス指数(BMI)、コレステロール値(総及びHDL)、頭部外傷歴、糖尿病(2型)、心血管疾患(CVD)の1つ以上を含む二次データを入力するステップと、
総合リスク評価を生成するために各入力一次データ及び各入力二次データに重み付けを適用することにより患者の認知機能低下のリスクを評価するステップ、
を含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態を、添付図を参照しながら具体例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図2a】認知機能低下をテストするための装置の正面概略図である。
【
図2b】認知機能低下をテストするための装置の背面概略図である。
【
図3】首の左側と右側の両方と接触させるための装置の三次元図である。
【
図4】
図2及び
図3の装置と共に用いるためのリストバンドの概略図である。
【
図5】患者の首と接触して配置される装置の側面図である。
【
図6】認知機能低下をテストするための装置の代替的な実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
患者の認知症及び/又は認知機能低下の絶対リスク及び/又は相対リスクをテストする及び監視するための装置10及び診断方法が本明細書で開示される。装置10は特に、総頸動脈又は内頸動脈を含む頸動脈内の血流及び/又は圧力特性を測定する際に用いることが意図される。頸動脈の生体力学的特性を測定することも意図される。しかしながら、装置10はまた、網膜及び目の血管構造を含む他の血管の測定を行うためのセンサを含んでよいことが理解されるであろう。代替的に、患者の目及び/又は網膜に関するデータは、別個の撮像装置で別個に取り込まれ、装置10に入力でき、又は代替的に、装置10によって取得されたデータ及び場合によっては患者固有のリスク因子にも基づいて、アルゴリズムに入力できる。
【0045】
本発明に係る装置10は、以下のパラメータ:
・dP/dt(圧力の経時変化)、
・脈圧、
・頸動脈波の強度、
・頸動脈波の力、
・脈波伝播速度、
・血流量、
・血液速度、
・微小塞栓数、
・動脈コンプライアンス、
・動脈スティフネス、
・動脈の直径と心周期に伴う直径の変化、
・心拍変動、
・目及び網膜の検出可能な変化、
の1つ以上を測定するのに用いることができる、外部から適用される非侵襲的テストを提供する。
【0046】
dP/dtは、パルスの立ち上がり速度の良好な指標を提供し、左心室の収縮性に部分的に関係する。
【0047】
頸動脈波の強度は、前進する圧縮波に関係する。
【0048】
脈波伝播速度は、動脈拍動が循環器系を伝播する速度である。脈波伝播速度は、動脈スティフネスの指標を提供する。
【0049】
装置
装置10は、一次診療、家族ケア、総合診療施設で用いられる、手持ち式の小型のオペレータ支援装置を提供することにより、現在の大型のかさばる超音波マシンに関連した欠点を克服する。装置10は、ユーザの首に接して配置されるプローブ12、又は代替的に、首の周りに配置されるカフ14としてなどの様々な構成で提供され得る。
【0050】
一実施形態では、装置10は、内蔵マイクロプロセッサ15及びソフトウェア並びにユーザ操作型制御、及び一体化されたユーザディスプレイ画面13又は装置10と関連付けられる他のこのようなデジタルディスプレイを有するプローブ12を含む。代替的な実施形態では、装置10は、ソフトウェアアプリケーションを動作させる別個の計算装置(例えば、ラップトップ、PC、又は移動電話)にケーブルで接続される又は無線(例えば、Bluetooth(商標))で接続される、かつディスプレイ画面13及び/又はさらなるユーザ入力制御も提供する、プローブ12を含む。遠隔計算装置もプローブ12に電力を供給でき、又はプローブは自己完結型の電源(例えば、充電式バッテリ)を有してよい。マイクロプロセッサ15を内蔵する又は外部に有する上記の実施形態は類似していること、及び本発明はいずれの形態でも具体化され得ることが当業者には分かるであろう。
【0051】
プローブ12は、以下の1つ以上を含む、いくつかのセンサ又は測定手段、又はセンサのアレイを含む。
・ドップラー超音波センサ102。ドップラー超音波は、高周波音波(超音波)が赤血球から跳ね返ることによる血管を通る血流の推定に用いることができる非侵襲的テストである。
・動脈の流動性の測定を頸動脈の近位領域及び遠位領域で行うことができるように、好ましくは2つのドップラー超音波センサ102(又はセンサのグループ)が存在する。好ましい実施形態では、動脈の流動性の測定を左右の頸動脈で同時に行うことができるように、4つのドップラー超音波センサ102が存在する。
・体積流量の超音波測定は、血管内の血液速度プロファイルの測定、又は高い空間分解能の必要性を低減するためのワイドビーム技術の使用を含み得る。
・位相ロック超音波トラッキングを、隣接する動脈壁(すなわち後ろ及び上の動脈壁)の位置、したがって各心周期内の動脈径の変化を決定するために用いることができる。精度を、この測定値をECGの測定値から導出した心周期でゲーティングすることにより向上させることができる。このデータを、動脈の生体力学的特性及び相対的健康状態に関するアルゴリズムで用いることができる動脈コンプライアンス及びスティフネスの計算に用いることができる。
【0052】
一実施形態では、血圧は、瞬間動脈断面積(測定された直径から計算される)及び動脈壁の弾性特性を用いて計算される。動脈壁の弾性特性は、脈波伝播速度(PWV)を計算することにより求めることができる。PWVを求める方法はいくつかあり、例えば、脈波伝達時間、又は動脈膨張波形の時間空間導関数を使用する方法、又はQA法として知られる体積流量(Q)及び動脈断面積(A)を使用する方法がある。この計算の精度は、ECG電極400を使用して心周期の無反射期間(すなわち初期収縮期)を推定することで高めることができる。これはまた、脈圧波形により求めることができる。
【0053】
プローブ12は、超音波測定(例えば、血圧をPWVの局所推定による動脈の断面積の変化と関連付けるブラムウェル・ヒル方程式)を使用して、又は頸動脈拍動の圧平トノメトリにより、圧力の経時変化及び脈圧を測定できる。動脈拍動のトノメトリを、微小電気機械(MEMS)歪みゲージ104により測定できる。
【0054】
血液速度は、超音波センサを使用して、又は超音波とレーザの組み合わせ(例えば、光音響ドップラー流量測定)により測定できる。
【0055】
波の強度分析は、以下の関係性:
波の強度=dP/dt×dU/dt
波の力=dP/dt×dQ/dt
(式中、dは一次導関数であり、tは時間である)により、血圧(p)、速度(U)、及び体積流量(Q)の測定値を使用して行うことができる。
【0056】
前述のように、プローブ12又はカフ14は、左右の頸動脈を同時に測定するために1つ以上のセンサ(すなわち、センサの組又はセンサアレイ)を有してよい。左右の動脈の測定は、アルゴリズムの予測力をさらに最適化するために患者の相対的健康状態に関するさらなる情報を明らかにできる。
【0057】
プローブ12は、微小塞栓を検出するためにさらなる超音波センサ106を含んでよい。
【0058】
プローブ12は、第2の遠隔電極と併せて用いられるECG電極400を有してよい。
【0059】
プローブ12は、呼吸音を選択的に検出するように調整された音響センサ108を有してよい。これは、呼吸によって導入される望ましくない変動の計算(例えば、波の強度)を補正するために用いることもできる。
【0060】
図2Aに概略的に示すように、プローブ12又はカフ14は、内部プロセッサ15と、センサによって得られた測定値を表示するためのデジタルディスプレイ13を含んでよい。プローブはまた、ユーザがプロセッサ15と通信すること、及びプローブ12に含まれる又は関連する各センサの動作を制御することを可能にするための、ボタン、タッチパッド、又は別のそのようなユーザインターフェース23を含む。
【0061】
代替的に、プローブ12は、遠隔デジタルディスプレイ13を有するコンピュータと選択的に接続可能な出力データケーブルを含んでよい。代替的に、プローブ12は、測定データを遠隔プロセッサ15に遠隔転送するための無線送信器と、関連するデジタルディスプレイ13及びユーザインターフェース23を含んでよい。例えば、プローブ12は、モバイル電話、タブレット、コンピュータ、又は他のこのようなプロセッサ15にインストールされたソフトウェアアプリケーションと通信するためのBluetooth(商標)送信器を有してよい。代替的に、プローブ12又はカフ14は、プローブ12から取得したデータを記憶するための、及び測定されたパラメータに基づいて認知機能低下リスクを計算するためにソフトウェアベースのアルゴリズムでそのデータを使用するための、一体化されたマイクロプロセッサ15を含んでよい。プロセッサ15は、テスト結果を記憶するためにメモリを含む。これは、一時的であってよく、又は代替的に、テスト結果は、例えば6か月又は12か月後に実施される、後で得られる結果と後に比較するために記憶されてよい。
【0062】
装置10はまた、第2のECG電極17(例えば、プローブ12の位置に対して反対の肩又は患者の胸の側部に配置される)、血圧カフ19(例えば、上腕動脈)測定、又は橈骨動脈上に配置された圧平トノメトリプローブなどの、遠隔センサからのさらなる入力を受け取るための機能部を有してよい。
図4に示した一実施形態では、装置10は、遠隔ECG電極310、血圧圧平トノメトリセンサ320、及び血中酸素飽和度センサ(光源33a及び検出器33b又は代替的にリストバンド300に一体化された反射パルスオキシメトリセンサ)を含む。したがって、装置10は、ハンドヘルドネックプローブ、リストバンド、及び移動電話、タブレット、PC、又はBluetooth、ケーブル接続、赤外線通信、又は別のデータ転送プロトコルを介して通信する統合プロセッサ15の形態のプロセッサ15を含んでよい。
【0063】
電極400及び/又は電極17によって行われるECG測定はまた、心拍変動を計算するのに用いることができる。心拍数の周波数スペクトルは、高周波(HF)成分と低周波(LF)成分の両方を含む。LFスペクトル成分とHFスペクトル成分の両方の(対照母集団と比較して)低レベルは、アルツハイマー病(AD)と関連付けられる。この測定値は、特定の個人の認知機能低下をモデル化するためにアルゴリズムに含められてよい。
【0064】
さらなる遠隔センサ入力としては、経頭蓋ドップラー(TCD)、及び超音波のエコーを測定することにより脳血管を通る血流の速度を測定するのに用いることができる他のタイプのドップラー超音波検査が挙げられる。
【0065】
上記の遠隔センサの1つ以上からのデータは、認知機能の感度及び/又は特異性を向上させるためにアルゴリズム計算に含められてよい。
【0066】
目及び網膜への検出可能な変化
目及び網膜と、アルツハイマー病及び/又は認知機能低下に関連し得る1つのさらなる疾患について行い得る4つの測定がある。アルツハイマー病の決定的な病変は脳で生じるが、この疾患は目に影響を及ぼすことも報告されており、これは脳と比較してより容易に非侵襲的に撮像できる。特定のタイプの白内障はアルツハイマー病に関連しており、網膜ベータアミロイドプラークの存在を含むいくつかの網膜の変化もこの疾患と関連付けられている。網膜と脳の血管構造との間に或る程度の相同関係があり、網膜はまた、脳の感覚の延長をなす神経細胞及び線維を含む。目は、血管構造又は神経組織を非侵襲的光学撮像に利用できる身体での唯一の場所である。
【0067】
アルツハイマー病及び/又は認知機能低下に関連し得る、目及び網膜の検出可能な変化を識別するために、以下の測定の1つ以上を行うことができる。
・網膜でのベータアミロイド(アルツハイマー病の特徴)の蓄積は、直接網膜撮像によって得られる。最近の調査は、網膜での蓄積は脳での蓄積を反映しており、重要なことに脳でよりも早い可能性があることを示している。
・皮質視覚障害も、アルツハイマー病に関連付けられている。
・ブルッフ膜と網膜色素上皮の間での蓄積である、網膜下ドルーゼン様沈着物。撮像技術を用いて、眼底反射率の幾何学的情報の分析によりドルーゼン様沈着物を決定撮像できる。
・光フラッシュに対する瞳孔の応答: 眼の瞳孔は、迅速な収縮とそれに続くより長時間にわたる再拡大により、網膜への照射を制御し明るい光フラッシュに動的に応答する。瞳孔計測法は、目に向けて光フラッシュを照射し、瞳孔サイズの経時変化を正確に検出及び測定することによりこの応答を調べる。瞳孔計測法は、アルツハイマー病における瞳孔フラッシュ応答の収縮期の変化として検出される、コリン作動性欠乏を識別するために用いられている。
【0068】
装置10は、上記の患者の網膜又は目への変化の1つ以上を測定可能な眼の撮像装置21を含んでよい。
【0069】
上記の目及び網膜への検出可能な4つの変化に加えて、緑内障が、アルツハイマー病と関連付けられており、後述するアルゴリズムの医学的状態部分、すなわち、患者に緑内障の病歴があるかどうかを入力することに含まれ得る。
【0070】
頸動脈上のプローブの位置決め及び位置合わせ
動脈上のプローブ12の位置を最適化する際に臨床医を支援するのに用いることができるいくつかの方法がある。好ましい位置は、プローブ12の軸が、動脈の長軸に沿って中心に位置合わせされる。
【0071】
プローブ12は、2つの動作モードを有してよく、第1のモードは動脈上のプローブ12の位置決めモードであり、第2のモードはデータ測定である。位置決めモードでは、センサは、信号の品質を自動的に決定し、容認できる位置決めのためにプローブ12をどの方向に移動又はツイストさせるかをプローブ12上(例えば、様々な色のLED又は矢印120)又は遠隔装置上(例えば、移動電話の画面)でユーザに示すことができる。
【0072】
例えば、プローブ上の超音波センサ102は、血液速度プロファイル(動脈の軸方向中心でより高い)を測定できる又は動脈の直径を測定できる。MEMS歪みゲージ104は、近距離場音響センサとして構成されてよく、音響最大値を決定する。位置決めが満足のいくものであれば、プローブ12は、測定モードに切り替わる(代替的に、ユーザは、測定モードを開始するための制御を有してよい)。
【0073】
図5を参照して、プローブ12又はカフ14のセンサは、(空気を排除するために)単回使用の(患者ごとに、使い捨ての)適合するゲル膜500により患者の皮膚1000に効果的に結合される。これは、超音波手技中によく用いられる半液体ゲルの代わりに用いられてよい。
【0074】
代替的に、プローブ12は、
図2Aに示すようにセンサのアレイ101を有してよい。センサアレイ101は、各タイプの複数のセンサを有し、したがって冗長センサを有し、その1つ以上は、動脈に対するその位置に応じて、他よりも高い信号品質を有するであろう。プローブ12(又は補助装置、例えば、移動電話/タブレット)中のプロセッサ15及びソフトウェアは、センサアレイの各センサからの信号強度及び品質から導出される信号最適化アルゴリズムに基づいて、どのセンサを測定値の記録に使用するかを計算する。
【0075】
装置10は、頸動脈に変形が生じ血流動態の測定に望ましくない変化/異常をきたすようにプローブ12が患者の首に過度に強く押圧されているかどうかを検出するための、さらなる圧力センサ110を有してよい。もしこれが検出される場合、可聴警報及び/又は可視警報がトリガされ得る。
【0076】
患者固有のリスク因子
患者の認知機能低下のリスクを評価するために、いくつかの分野にわたって検討されるべきいくつかのタイプのデータ、装置10から取得したセンサ測定値によって決まる一次データと、ライフスタイル又は先天的な遺伝である他の二次データがある。アルゴリズムを使用して、一次データと二次データの両方を入力して患者の個人的なリスクプロファイルを評価し、個人の認知機能低下のリスクを予測できる:
・頸動脈血流動態: dP/dt、脈圧、波の強度、波の力、PWV(装置10で識別及び測定される一次データ)、
・頸動脈生体力学: 頸動脈コンプライアンス、頸動脈スティフネス(装置10で識別及び測定される一次データ)、
・微小塞栓数(装置10で識別及び測定される一次データ)、
・医学的状態: 年齢、性別、肥満症、心房細動状態、脳卒中の既往歴、血圧、ボディマス指数(BMI)、コレステロール値(総及びHDL)、頭部外傷歴、糖尿病(2型)、心血管疾患(CVD)、緑内障の存在(患者の医療記録から得られる二次データ)、
・ライフスタイル: 教育レベル、喫煙歴、アルコール消費量、運動頻度及び強度(患者の医療記録から得られる二次データ)、
・遺伝子: 家族歴、特異的DNAマーカ(患者の医療記録から得られる二次データ)、
・投薬: 例えば、抗凝固薬、降圧剤、コレステロール低下薬(例えば、スタチン)(患者の医療記録から得られる二次データ)、
・他のテスト: 脳PETスキャン、脳MRI(患者の医療記録から得られる二次データ)。
【0077】
アルゴリズムは、一次データと二次データの両方を入力し、かつリスク及び/又は認知機能低下の評価を提供するために用いられる。
【0078】
一次データ又は二次データのいずれかがアルゴリズムにおいてより大きな重みを有する場合があり、したがって、装置10によって取得された一次データが必ずしも二次データよりも重要であるとは限らないことが当業者には分かるであろう。
【0079】
投薬及び運動レベル(より高いレベル)などの二次データ因子は、認知機能低下のリスクを下げる可能性があるアルゴリズムに含まれる。
【0080】
医療、ライフスタイル、及び遺伝的因子の形態の二次データのいくつかは、CAIDEリスクスコア(心血管リスク因子、加齢、及び認知症発症率)などの標準的手法に含まれる。
【0081】
装置10の一実施形態を
図6に示す。この実施形態では、プローブ200は、以下のように、前述のセンサのいくつかを含む。
【0082】
好ましくは頸動脈に沿って、近位と遠位の測定値を与えるための同じ動脈上での位置決めのために配置される2つのドップラー超音波流量センサ210、220。ドップラー超音波流量センサ210、220は、高周波音波(超音波)が赤血球から跳ね返ることによる血管を通る血流の推定に用いることができる非侵襲的テストを提供する。
【0083】
プローブ200は、心拍変動を計算するためにECG電極230を含む。
【0084】
加えて、プローブ200は、MEMS歪みゲージ240(トノメトリ用)を含む。動脈拍動のトノメトリが、微小電気機械(MEMS)歪みゲージ240によって測定される。
【0085】
ドップラー超音波流量センサ210、220とECG電極230は、装置10により直接取得される一次データを提供する。
【0086】
前述の実施形態によれば、プローブ200は、プロセッサ250、ユーザディスプレイ260、及びユーザ入力270と通信する。プロセッサ250、ユーザディスプレイ260、及びユーザ入力270は、内部又は外部(無線接続又はケーブル接続)にあり得る。
【0087】
この実施形態では、医学的状態の形態の二次データも装置10に伝達できる。
【0088】
二次データは、医学的状態:年齢、性別、肥満症、心房細動状態、脳卒中の既往歴、血圧、ボディマス指数(BMI)、コレステロール値(総及びHDL)、頭部外傷歴、糖尿病(2型)、心血管疾患(CVD)を含み得る。
【0089】
加えて、網膜撮像の結果(目又は網膜への変化に関する)は、一体化された網膜撮像ユニット280を通じて装置10により直接取得できる。代替的に、網膜撮像の結果は、既存の網膜テスト機器を使用して別個のテストにより取得でき、結果は、各実施形態に関連する、後述する様態で、リスクのモデリングのためにプロセッサ250に伝達される。
【0090】
認知機能低下のリスクのモデリング
装置10は、dP/dt、動脈波の強度、脈波伝播速度、動脈コンプライアンス、動脈スティフネス、及び微小塞栓数を含む前述の血流特性及び動脈特性を測定するために用いられる。患者を、装置10によって取得されたパラメータの形態の一次測定データが所定のレベルを上回る又は下回る場合に、テスト結果に基づいて認知機能低下の高リスク又は低リスクとして分類できる。一次データは単独で考慮されてよく、又は一次データは、モデリングの品質、結果の精度、及び認知機能低下の評価をさらに改善するために二次データと組み合わされてよい。
【0091】
装置10を用いるさらなるテスト(以上のテスト)をその後、血流特性(及び前述の他の特徴のいずれか)に関する一次データの変化を評価するために、以上後の時点で実施できる。例えば、患者を6か月ごとに装置10でテストして、一次測定データパラメータのそれぞれの経時変化を決定できる。測定パラメータの1つ以上が所定のレベルに達する及び超過する(又は連続したテストで特定の割合を超えて増加した)場合、患者を、認知機能低下のリスクが高いと特徴付けることができる。対照的に、測定パラメータの1つ以上が或る期間にわたって所定の量又はパーセンテージだけ変化する場合、患者を、認知機能低下のリスクが高いと特徴付けることができる。
【0092】
患者の認知機能低下のリスクの評価は、装置10により取得された一次データに基づいて行われてよい。加えて、結果をさらにカスタマイズするために、患者の個人的なリスク因子も考慮に入れることができる。例えば、患者に喫煙歴がある場合、統計的に認知機能低下のリスクが高まる。したがって、このカスタマイズは、様々な方法で行われてよい。例えば、測定された血流特性は、特定のリスク因子の存在に応じて変数を乗算することによって変わり得る。例えば、運動などのプラスのリスク因子は結果的に1未満の乗数を生じ、遺伝性認知機能低下の存在などのマイナスのリスク因子は、結果的に1よりも大きい乗数を生じることがある。
【0093】
代替的に、装置10によりテストされた結果が入力され値が割り当てられる、スコアカード式の評価を行うことができる。さらに、様々な重み付けが、年齢、体重、性別などの患者固有の因子と共に、様々なプラス又はマイナスのリスク因子の存在に基づいて適用される。このようにして、装置10により測定された結果を、特定の患者の個人的属性に合わせてカスタマイズできる。この結果の重み付けは、得られたデータが所与の患者の認知機能低下のリスクをより正確に予測できるようにする。
【0094】
様々なアルゴリズムが、装置10により取得された測定値(一次データ)に基づきかつ患者固有のリスク因子(二次データ)を考慮に入れて、患者の認知症及び/又は認知機能低下の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価するために採用され得ることが、当業者には分かるであろう。
【0095】
ソフトウェアプログラム又はアプリケーションは、装置10により測定された読取値(一次データ)に基づきかつ患者の個人的なデータ及びリスク因子(二次データ)と組み合わせて患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクの指標を取得するために用いられてよい。
【0096】
さらに、患者の測定データ(一次データ)及びリスク因子(二次データ)は、患者の認知機能低下及び/又は認知症の絶対リスク及び/又は相対リスクを評価するために、保存された患者データ又は仮想患者データのデータベースと比較されてよい。
【0097】
適用可能な人口ベースの研究結果を、特定の人へのアルゴリズムの感度及び/又は特異性を向上させるために、後の時点でアルゴリズムに組み込むことができる。
【0098】
実施例
1)装置10を使用する単一のテストに基づき認知機能低下のリスクが高いと特徴付けられる患者の仮想結果
例えば、CAIDEリスクスコアが高く、dP/dtが高く(400mmHg/秒以上)、頸動脈波の強度が高いと測定された人は、認知機能低下のリスクが非常に高いと分類される。
逆に、CAIDEリスクスコアが低く、dP/dtが非常に高く、頸動脈波の強度が高かった人は、認知機能低下のリスクが中~高と分類され、定期的に年1回の再検査を受ける必要がある。
【0099】
2)或る期間にわたり装置10を使用する2回(以上)のテストに基づき認知機能低下のリスクが高いと特徴付けられる患者の仮想結果
例えば、測定されたdP/dtは、12か月で30%増加し、動脈スティフネスは20%増加した。
【0100】
3)脈圧、dP/dt、及び頸動脈波の強度が非常に高く、2型糖尿病(45歳から)の50歳の女性は、認知機能低下のリスクが高いと分類できる。
【0101】
治療
患者を、装置10を使用して前述の単一のテストプロセス(又は或る期間にわたる繰り返しのテスト)によりテストした時点で、患者が認知機能低下のリスクカテゴリに分類される場合、医療介入が推奨される。これは医薬品の処方を含み得る。代替的に、血管内又は血管外装置を、患者の血流特性を変えるために、患者の血管の1つ以上の中又は周囲に作動的に配置できる。このような装置のいくつかの例は、出願人の先に公開された国際PCT特許出願PCT/AU2016/050734に記載されている。
【0102】
本発明は特定の例に関連して説明されているが、本発明は、多くの他の形態で具体化され得ることが当業者には分かるであろう。
【国際調査報告】