(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】標的とする安定化した粘度を有する変性ジエンコポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20220105BHJP
C08F 4/48 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F4/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520163
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(85)【翻訳文提出日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 US2019055583
(87)【国際公開番号】W WO2020077063
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アスキー,ブライアン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,テレンス イー.
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J015DA12
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100CA04
4J100CA27
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA35
4J100HB61
4J100HE05
4J100JA29
(57)【要約】
イミン基含有ヒドロカルビルオキシシランとの反応によって変性し、続いて、ヒドロカルビルオキシシランで安定化する、安定化ジエンコポリマーを調製するプロセス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端変性を有する安定化ジエンコポリマーを調製するプロセスであって、
(i)溶媒中で有機リチウム化合物、ブタジエンモノマー、及びスチレンモノマーを、任意選択でビニル変性剤と一緒に組み合わせて、重合混合物を形成することと、
(ii)前記モノマーを重合させ、それによって、リビングポリマーを形成することと、
(iii)前記モノマーを重合させる前記工程の後、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物を前記重合混合物に導入することであって、前記イミン含有ヒドロカルビルオキシシランを、有機リチウム化合物1モル当たり約0.2~0.8モルの量で添加し、それによって、変性ポリマーを含む重合混合物を形成する、導入することと、
(iv)イミン含有ヒドロカルビルオキシシランを導入する前記工程の後、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランを、前記変性ポリマーを含む前記重合混合物に導入し、それによって、安定化重合混合物を形成することであって、前記ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランを、有機リチウム化合物1モル当たり約1~約12モルの量で添加する、安定化重合混合物を形成することと、
(v)ポリマー混合物を脱溶媒して、前記末端変性を有する安定化ジエンコポリマーを提供することと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
脱溶媒の前記工程が、前記安定化重合混合物の蒸気又は水凝固で、前記変性ポリマーを含む湿潤ポリマー塊を提供することと、前記湿潤ポリマー塊を乾燥させて乾燥変性ポリマーを提供することと、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
モノマーを重合させる前記工程が、ピーク重合温度を達成し、前記重合混合物にアミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物を導入する前記工程が、前記ピーク重合温度の後に行われる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
有機リチウム化合物、ブタジエンモノマー、及びスチレンモノマーを組み合わせる前記工程が、全モノマー100グラム当たり約0.05~約50ミリモルのブチルリチウムを用いることを含む、請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記リビングポリマーが、ポリスチレン標準及びポリスチレンマーク-フウィンク定数を使用してGPCによって求められるベースMpが1モル当たり約160~約280kgであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記リビングポリマーが、約5~約45重量%のスチレンマー単位と、約10~約80%のビニル含有量と、を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
変性ポリマーを含む前記重合混合物が、約10~約80モル%の変性ポリマーを含む、請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記アミン含有ヒドロカルビルオキシシランが、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、又はN-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンからなる群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。特定の実施形態では、前記イミン含有ヒドロカルビルオキシシランは、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンである。
【請求項9】
アミン含有ヒドロカルビルオキシシランを導入する前記工程が、前記アミン含有ヒドロカルビルオキシシランを有機リチウム化合物1モル当たり約0.3~約0.7モルの量で前記重合混合物に添加することを含む、請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランが、トリヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン、ジヒドロカルビルジヒドロカルビルオキシシラン、ヒドロカルビルトリヒドロカルビルオキシシラン、及びテトラヒドロカルビルオキシシランからなる群から選択される、請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランを導入する前記工程が、有機リチウム化合物1モル当たり約3~約10モルを導入することを含む、請求項1~10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
変性ポリマーを含む前記重合混合物又は前記安定化重合混合物に縮合促進剤を導入する工程を更に含む、請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
導入される縮合促進剤の量が、リチウム1モル当たり約1.0~約4.0モルの縮合促進剤である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記安定化重合混合物内の前記変性ポリマーが、50超のムーニー粘度(100℃におけるML
1+4)を有する、請求項1~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
以下の式を満たす、前記安定化重合混合物内に変性ポリマーを提供するように操作される、請求項1~14のいずれかに記載のプロセス:
脱溶媒時のムーニー粘度=44.7+[0.5218ベースMp]-[5.1官能化剤当量]-[4.765安定化剤当量]+[8.86縮合促進剤当量]
(式中、脱溶媒時のムーニー粘度は、50以上であり、Mpは、約160~約280kg/モルであり、官能化剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約0.2~約0.8モルであり、安定化剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約1~約12モルであり、縮合促進剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約1~約4モルである)。
【請求項16】
前記安定化ジエンコポリマーが、100℃で48時間加熱エージングした後、120未満のムーニー粘度(100℃におけるML
1+4)を特徴とし、前記プロセスが、以下の式を満たすように行われる、請求項1~15のいずれかに記載のプロセス:
エージング後ムーニー=-34.2+[0.828ベールのムーニー粘度]+[0.348ベースMp]-[0.425%カップリング%]+[98.9官能化剤当量]-[6.16安定化剤当量]
(式中、エージング後ムーニーは、120以下であり、ベールのムーニー粘度は、約35~約120であり、Mpは、約160~約280kg/モルであり、カップリング%は、約20~約80%であり、官能化剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約0.2~約0.8モルであり、安定化剤当量は、リチウム1モル当たり約1~約12モルである)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、全般に、標的とする安定化した粘度を有する変性ジエンコポリマーを目的とする。特定の実施形態では、ジエンコポリマーを、イミン基含有ヒドロカルビルオキシシランとの反応によって変性し、続いて、ヒドロカルビルオキシシランで安定化する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、特にタイヤトレッドの製造では、末端官能化を含むものなどの変性ポリマーを用いることが知られている。これらの変性ポリマーを用いて調製されたゴム加硫物は、ヒステリシス損失の低減を呈し、充填剤のデアグロメレーションに起因する機械的エネルギーの損失であるペイン効果の低下を示すことが観察された。
【0003】
ポリマー変性は、多くの場合、リビングポリマー種を、ポリマー鎖の末端に官能基を付与することができる化合物と反応させることによって達成される。例えば、米国特許第6,369,167号は、ブタジエンとスチレンとのランダムコポリマーなどのジエンポリマーをアニオン重合技術によって調製し、次いで、当該ポリマーをイミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物で末端化することを教示している。末端化変性剤とも称される末端化合物は、アニオン重合を開始させるために使用される有機リチウム化合物1モル当たり0.25~3モルの量で用いられる。
【0004】
同様の末端変性剤が米国特許第7,683,151号に開示されており、これは、見かけの活性部位に基づいて0.3モル当量以上を使用することを教示している。変性反応に続いて、この特許は、縮合促進剤(例えば、スズカルボキシレート)を添加して、ポリマー鎖末端におけるヒドロカルビルオキシシラン残基を縮合させる(ポリマーカップリングを生じさせる)ことを教示している。仕上げ後、得られた変性ポリマーは、10~150のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を有する。
【0005】
ヒドロカルビルオキシシラン残基は、エージング後ムーニー粘度を増加させることが見出されており、この増加は、水の存在下において官能性ポリマー間で生じるカップリングに起因すると考えられる。このカップリングは、水がヒドロカルビルオキシシラン置換基を加水分解してシロキシ置換基を形成するときに開始され、次いで、それぞれのポリマーのシロキシ置換基が縮合してカップリングすると考えられる。米国特許第6,255,404号は、変性ポリマーをアルキルアルコキシシラン(例えば、オクチルトリエトキシシラン)で処理し、それによって、ヒドロカルビルオキシシラン末端基を安定化させることによる、このムーニー粘度増加に対する対策を教示している。アルキルアルコキシシランは、開始剤1モル当たり1~20モルの量で添加してよいが、アルコキシシラン官能基の当量を超える量で存在する場合、アルキルアルコキシシランの可塑化効果(すなわち、過剰なアルキルアルコキシシランが油として作用する)に起因してポリマー粘度の低下が観察される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態は、末端変性を有する安定化ジエンコポリマーを調製するプロセスであって、(i)溶媒中で有機リチウム化合物、ブタジエンモノマー、及びスチレンモノマーを、任意選択でビニル変性剤と一緒に組み合わせて、重合混合物を形成することと、(ii)当該モノマーを重合させ、それによって、リビングポリマーを形成することと、(iii)当該モノマーを重合させる上記工程の後、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物を当該重合混合物に導入することであって、当該イミン含有ヒドロカルビルオキシシランを、有機リチウム化合物1モル当たり約0.2~0.8モルの量で添加し、それによって、変性ポリマーを含む重合混合物を形成する、導入することと、(iv)イミン含有ヒドロカルビルオキシシランを導入する上記工程の後、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランを、当該変性ポリマーを含む重合混合物に導入し、それによって、安定化重合混合物を形成することであって、当該ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランを、有機リチウム化合物1モル当たり約1~約12モルの量で添加する、安定化重合混合物を形成することと、(v)ポリマー混合物を脱溶媒して、末端変性を有する安定化ジエンコポリマーを提供することと、を含む、プロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物で変性され、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン化合物で安定化されたジエン系コポリマーを生成するプロセスの発見に少なくとも部分的に基づく。従来技術は、全般に、この性質のポリマーを検討しているが、本発明は、ポリマーの製造中の効率的な取り扱いを可能にする比較的高い初期粘度(すなわち、ポリマー脱溶媒時の)、及びタイヤなどのゴム物品の製造におけるポリマーの効率的な使用を可能にする比較的低いエージング後粘度(すなわち、著しいムーニー増大を伴わない)を有するポリマーを達成することに対する要望に基づくものである。1つ以上の実施形態では、本発明に従って生成されるジエン系コポリマーは、ブタジエンとスチレンとの変性コポリマーであり、変性コポリマーを単離する前に50超のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を有し、120未満のエージング後ムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を有する。従来技術は、イミン含有トリアルコキシシランで末端化したジエン系コポリマー、及び過剰なムーニー成長に対して類似ポリマーを安定化させるためのアルキルトリオキシシランの使用を検討しているが、従来技術では、ムーニー粘度などの重要なポリマー特性に重大な影響を与える要因の全て及びこれらの要因間の相互作用について理解されていない。特に、ポリマーの粘度(すなわち、ムーニー粘度)は、初期合成から長期エージングを通して、ピーク分子量、変性剤の量、安定化剤の量、カップリング効率、及び縮合触媒の量などの要因次第であることが予想外に見出された。これらの発見により、ポリマー脱溶媒時に比較的高いムーニー粘度を有すると同時に比較的低いエージング後ムーニー粘度を維持するコポリマーを得ることができる。
プロセスの概要
【0008】
1つ以上の実施形態では、本発明によるポリマーを形成するプロセスは、全般に、(i)反応性ポリマーを形成する重合工程と、(ii)その後の、当該反応性ポリマーを官能化する変性工程と、(iii)官能化ポリマーを安定化させる安定化工程と、(iv)安定化された官能化ポリマーを単離するポリマー脱溶媒工程と、を含む。1つ以上の実施形態では、プロセスは、加水分解及び/又は縮合工程を更に含んでいてもよい。これらの又は他の実施形態では、プロセスは、ポリマー生成物から水を除去するポリマー乾燥工程を更に含んでいてもよい。
【0009】
重合
1つ以上の実施形態では、重合工程は、溶液中で共役ジエンモノマー(例えば、ブタジエン)及びビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)をアニオン重合させて、反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーを含む重合混合物を提供することを含む。
【0010】
アニオン性重合技術を用いることによるポリマーの調製は、概ね知られている。アニオン重合の重要な機構的特徴は、書籍(例えば、Hsieh,H.L.;Quirk,R.P.Anionic Polymerization:Principles and Practical Applications;Marcel Dekker:New York,1996)及び総説(例えば、Hadjichristidis,N.;Pitsikalis,M.;Pispas,S.;Iatrou,H.;Chem.Rev.2001,101(12),3747-3792)に記載されている。アニオン性開始剤は、有利なことに、クエンチング前に、更なる連鎖成長のために追加のモノマーと反応可能な、又は特定の官能化剤と反応して官能化ポリマーを与えることが可能な、反応鎖末端を有するポリマー(例えば、リビングポリマー)を生成させることができる。反応性ポリマー鎖末端を有するポリマーを単に反応性ポリマーと称する場合もある。当業者には理解されるように、これらの反応性ポリマーは反応性鎖末端を含み、この反応性鎖端はイオン性であると考えられ、この反応性鎖端において官能化剤とポリマーの反応性鎖末端との間の反応が起こり、それによって、ポリマー鎖末端に官能性若しくは官能基を付与することができ、又は複数のポリマーを互いにカップリングさせることができる。
【0011】
アニオン重合されてこれらのポリマーを形成することができるモノマーとしては、共役ジエンモノマーが挙げられ、共役ジエンモノマーは、任意選択で、ビニル置換芳香族モノマーなどの他のモノマーと共重合化され得る。共役ジエンモノマーの例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、及び2,4-ヘキサジエンが挙げられる。2つ以上の共役ジエンの混合物を共重合において用いてもよい。共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーの例としては、ビニル置換芳香族化合物、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びビニルナフタレンが挙げられる。
【0012】
本発明の実施は、何れかの特定のアニオン性開始剤を選択することによって限定されることはない。例示的なアニオン性開始剤としては、有機リチウム化合物が挙げられる。1つ以上の実施形態では、有機リチウム化合物には、ヘテロ原子が含まれていてもよい。これらの又は他の実施形態では、有機リチウム化合物には、1つ又は2つ以上の複素環基が含まれていてもよい。有機リチウム化合物のタイプとしては、アルキルリチウム化合物、アリールリチウム化合物、及びシクロアルキルリチウム化合物が挙げられる。有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、n-アミルリチウム、イソアミルリチウム、及びフェニルリチウムが挙げられる。更に他のアニオン性開始剤としては、有機ナトリウム化合物、例えばフェニルナトリウム及び2,4,6-トリメチルフェニルナトリウムが挙げられる。
【0013】
アニオン性重合は、極性溶媒、非極性溶媒、及びこれらの混合物内で行われてもよい。1つ以上の実施形態では、溶媒を担体として用いて、開始剤を溶解するか又は懸濁させて、開始剤を重合系に送達するのを容易にしてもよい。
【0014】
1つ以上の実施形態では、好適な溶媒としては、有機化合物として、触媒の存在下でモノマーを重合する間に伝搬ポリマー鎖への重合も取り込みも受けないものが挙げられる。1つ以上の実施形態では、これらの有機種は、周囲温度及び圧力で液体である。1つ以上の実施形態では、これらの有機溶媒は、触媒に対して不活性である。例示的な有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素などの低い又は比較的低い沸点を有する炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2-ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、及び石油スピリットが挙げられる。また、脂環式炭化水素の非限定的な例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びメチルシクロヘキサンが挙げられる。上記の炭化水素の混合物を使用することもできる。低沸点の炭化水素溶媒は、典型的には、重合が終了した際、ポリマーから分離される。有機溶媒の他の例としては、パラフィン系オイル、芳香族オイル、又は一般に油展ポリマーに使用される他の炭化水素油など、高分子量の高沸点炭化水素が挙げられる。これらの炭化水素は不揮発性であるため、それらは、典型的には分離する必要がなく、ポリマー内に取り込まれたままである。
【0015】
アニオン重合は、ランダマイザ(極性コーディネーターと称される場合もある)又はビニル変性剤の存在下で実施してよい。当業者には理解されるように、2重の役割を果たし得るこれらの化合物は、ポリマー鎖全体にわたるコモノマーのランダム化を支援し得る及び/又はジエン由来のマー単位(mer units)のビニル含有量を調節し得る。ランダマイザとして有用な化合物としては、酸素又は窒素ヘテロ原子及び非結合電子対を有するものが挙げられる。例には、直線状及び環式オリゴマーオキソラニルアルカン;モノ及びオリゴアルキレングリコールのジアルキルエーテル(グリムエーテルとしても知られている);「クラウン」エーテル;三級アミン;直鎖状THFオリゴマー;などが挙げられる。直線状及び環式オリゴマーオキソラニルアルカンは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,429,091号及び同第9,868,795号に記載されている。ランダマイザとして有用な化合物の具体例には、2,2-ビス(2’-テトラヒドロフリル)プロパン、1,2-ジメトキシエタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジピペリジルエタン、ジピペリジルメタン、ヘキサメチルホスホルアミド、N-N’-ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、トリ-n-ブチルアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。他の実施形態では、スチレン分布をランダム化するために、カリウムアルコキシドが使用され得る。
【0016】
用いるべきランダマイザの量は、種々の要因(例えば、所望のポリマー微細構造、モノマー対コモノマーの比率、重合温度、及び用いる特定のランダマイザの性質)に依存する場合がある。1つ以上の実施形態では、使用するランダマイザの量は、アニオン性開始剤1モル当たり0.01~100モルの範囲であってもよい。
【0017】
アニオン性開始剤及びランダマイザを重合系に導入することを、種々の方法によって行うことができる。1つ以上の実施形態では、アニオン性開始剤及びランダマイザを重合すべきモノマーに別個に添加することを、段階的又は同時に行ってもよい。
【0018】
上述したとおり、有効な量の開始剤の存在下において、共役ジエンモノマーを、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーと一緒に重合させるによって、反応性ポリマーが生成される。開始剤、共役ジエンモノマー、コモノマー、及び溶媒の導入により、重合混合物が形成され、その中で反応性ポリマーが形成される。溶媒内で重合させると、ポリマー生成物が溶媒に溶解又は懸濁している重合混合物が生成される。この重合混合物は、ポリマーセメントと称される場合もある。
【0019】
用いるべき開始剤の量は、種々の要因(例えば、用いる開始剤のタイプ、構成成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び重合転化率、所望の分子量、及び多くの他の要因)の相互作用に依存する場合がある。1つ以上の実施形態では、用いられる開始剤の量は、モノマーの重量当たりの開始剤のミリモル数として表現され得る。1つ以上の実施形態では、開始剤負荷は、モノマー100グラム当たり約0.05~約50ミリモル、他の実施形態では約0.1~約25ミリモル、更に他の実施形態では約0.2~約2.5ミリモル、他の実施形態では約0.4~約0.7ミリモルの開始剤で変化し得る。
【0020】
1つ以上の実施形態では、重合は、当該技術分野で公知の任意の従来の重合容器内で行ってよい。例えば、従来の攪拌槽型反応器内で重合を行うことができる。1つ以上の実施形態では、重合に対して使用する構成成分を全て単一容器(例えば、従来の攪拌槽型反応器)内で組み合わせることができ、重合プロセスの全ての工程をこの容器内で行うことができる。他の実施形態では、2つ以上の構成成分を1つの容器内で事前に組み合わせてから別の容器に移し、そこでモノマー(又は少なくともその大部分)の重合を行うことができる。本発明の様々な実施形態は、複数の反応器又は反応ゾーンの使用を含むため、重合が行われる容器(例えば、槽型反応器)は、第1の容器又は第1の反応ゾーンと称される場合がある。
【0021】
重合は、バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスとして行うことができる。半連続プロセスでは、モノマーを必要に応じて断続的に充填して、すでに重合したモノマーと置き替える。1つ以上の実施形態では、重合混合物の温度を約-10℃~約200℃、他の実施形態では約0℃~約150℃、他の実施形態では約20℃~約110℃の範囲内で維持するように、重合が進行する条件を制御してよい。1つ以上の実施形態では、重合の熱を取り除くことを、熱的に制御された反応器ジャケットによる外部冷却、反応器に接続された還流凝縮器を用いることによるモノマーの気化及び凝縮による内部冷却、又は2つの方法の組み合わせによって行ってもよい。また、約0.1気圧~50気圧、他の実施形態では約0.5気圧~約20気圧、他の実施形態では約1気圧~約10気圧の圧力下で重合を行うように条件を制御してもよい。1つ以上の実施形態では、重合を行い得る圧力には、大部分のモノマーが確実に液相となる圧力が含まれる。これらの又は他の実施形態では、重合混合物を嫌気条件下で維持してもよい。
変性前のポリマー特性
【0022】
上で説明したように、本発明の特定の実施形態では、生成される反応性ポリマーは、スチレンとブタジエンとのコポリマーである。1つ以上の実施形態では、コポリマーはランダムであり、任意選択で、スチレン又はブタジエンのマイクロブロック(すなわち、3~10単位のスチレン又はブタジエンの繰り返し単位)を含む。1つ以上の実施形態では、コポリマーは、スチレン又はブタジエンの化学ブロック(すなわち、10単位を超えるスチレン又はブタジエンの繰り返し単位)を含まないか又は実質的に含まない。1つ以上の実施形態では、反応性コポリマーは、変性前の反応性コポリマーの総重量に対するスチレンマー単位の重量パーセントであるスチレン含有量によって特徴付けることができる。当業者には理解されるように、これは、投入モノマーの総重量(すなわち、投入したブタジエン及びスチレンの総重量)に対する投入スチレンモノマーの重量から求めることができる。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、変性前に、5重量パーセント超、他の実施形態では7重量パーセント超、他の実施形態では9重量パーセント超のスチレンを含む。これらの又は他の実施形態では、反応性ポリマーは、45重量パーセント未満、他の実施形態では30重量パーセント未満、他の実施形態では16重量パーセント未満、他の実施形態では14重量パーセント未満、他の実施形態では12重量パーセント未満のスチレンを含む。1つ以上の実施形態では、ポリマーは、約5~約45重量パーセント、他の実施形態では約7~約14重量パーセント、他の実施形態では約9~約12重量パーセントのスチレンを含む。
【0023】
1つ以上の実施形態では、本発明の態様に従って生成される反応性ポリマーは、ビニル含有量によって特徴付けることができ、これは、ポリマー鎖内の全不飽和に対する1,2マイクロ構造での不飽和の数として記載することができる。当業者には理解されるように、ビニル含有量は、FTIR分析によって求めることができる。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、10重量%超、他の実施形態では20重量%超、他の実施形態では35重量%超のビニルを含む。これらの又は他の実施形態では、反応性ポリマーは、80重量%未満、他の実施形態では60重量%未満、他の実施形態では46重量%未満を含む。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、約10~約80%、他の実施形態では約20~約60%、他の実施形態では約35~約46%のビニルを含む。
【0024】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、ピーク分子量(Mp)によって特徴付けることもできる。当業者には理解されるように、Mpは、適切な較正標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することによって求めることができる。本明細書の目的のために、GPC測定では、特に指定しない限り、ポリスチレン標準及びポリスチレンマーク-フウィンク定数を用いる。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、160kg/モル超、他の実施形態では170kg/モル超、他の実施形態では180kg/モル超のMpを有し、これはベースMpと称される場合もある。これらの又は他の実施形態では、反応性ポリマーは、280kg/モル未満、他の実施形態では260kg/モル未満、他の実施形態では250kg/モル未満のMpを有する。1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーは、約160~約280kg/モル、他の実施形態では約170~約260kg/モル、他の実施形態では約180~約250kg/モルのMpを有する。
【0025】
1つ以上の実施形態では、ポリマー分子の少なくとも約30%がリビング末端を含有し、他の実施形態では、ポリマー分子の少なくとも約50%がリビング末端を含有し、他の実施形態では、少なくとも約80%がリビング末端を含有している。
ポリマー変性
【0026】
上記のように、重合後、反応性ポリマーは変性を受ける。すなわち、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物を重合混合物に導入することによってポリマーの反応性末端が変性され、これは、官能化と称される場合もある。ポリマー鎖末端は、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン(本明細書の目的のために、官能化剤又は変性剤と称される場合もある)と反応して、ポリマー鎖末端に官能化剤の残基を提供すると考えられる。したがって、ポリマーと官能化剤との間の反応により、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン由来の末端基を含む1本以上のポリマー鎖を含むポリマー組成物が生成される。1つ以上の実施形態では、ポリマー組成物内のポリマー鎖の10モル%超、他の実施形態では30モル%超、他の実施形態では35モル%超のポリマー鎖が末端官能基を含む。これらの又は他の実施形態では、ポリマー組成物内のポリマー鎖の80モル%未満、他の実施形態では70モル%未満、他の実施形態では65モル%未満が末端官能基を含む。1つ以上の実施形態では、ポリマー組成物内のポリマー鎖の約10~約80モル%、他の実施形態では約30~約70モル%、他の実施形態では約35~約65モル%が末端官能基を含む。これらのポリマーは、官能化ポリマー又は変性ポリマーと称される場合もある。官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応からもポリマーカップリングが生じる場合があることを理解されたい。いずれの場合も、鎖末端官能基を有するポリマー及び官能化剤の残基とカップリグしたポリマーはいずれも、特に指定しない限り、変性ポリマー又は官能化ポリマーと称される。
【0027】
1つ以上の実施形態では、イミン含有ヒドロカルビルオキシシランとしては、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、又はN-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンを挙げることができる。特定の実施形態では、イミン含有ヒドロカルビルオキシシランは、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン又はN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンである。
【0028】
本発明の実施において用いられる官能化剤(すなわち、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン)の量は、開始剤に関連するリチウム又は金属カチオンに関して記載することができる。1つ以上の実施形態では、重合混合物に導入される官能化剤の量は、開始剤中のリチウム1モル当たり0.2モル超、他の実施形態では0.3モル超、他の実施形態では0.4モル超の官能化剤である。これらの又は他の実施形態では、リチウム1モル当たり0.8モル未満、他の実施形態では0.7モル未満、他の実施形態では0.65モル未満の官能化剤が重合混合物に導入される。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たり約0.2~約0.8モル、他の実施形態では約0.3~約0.7モル、他の実施形態では約0.4~約0.65モルの官能化剤が重合混合物に導入される。
【0029】
1つ以上の実施形態では、官能化剤は、ポリマーが溶媒内に溶解又は懸濁している間にポリマーセメントに導入される。当業者には理解されるように、この溶液は、ポリマーセメントと称される場合もある。1つ以上の実施形態では、その濃度などのポリマーセメントの特徴は、官能化前のセメントの特徴と同じ又は同様である。他の実施形態では、安定化剤は、ポリマーがモノマー内に懸濁又は溶解している間にポリマーに導入され得る。
【0030】
1つ以上の実施形態では、ポリマーの変性(すなわち、官能化剤のポリマーセメントへの導入)は、重合が行われた同じ容器内で行われる。他の実施形態では、重合が行われる反応容器の外側でポリマーの変性が行われる。例えば、下流の容器又は下流の移送導管内において重合混合物(すなわち、ポリマーセメント)に官能化剤を導入することができる。
【0031】
1つ以上の実施形態では、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、約10℃~約150℃、他の実施形態では約20℃~約110℃の温度で起こり得る。官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応が完了するのに必要な時間は、反応性ポリマーの調製に用いられる触媒又は開始剤のタイプ及び量、官能化剤のタイプ及び量、並びに官能化反応が行われる温度など、種々の要因に依存する。1つ以上の実施形態では、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、約30秒間~約90分間、又は他の実施形態では10~60分間行われ得る。
ポリマー安定化
【0032】
上述のように、変性後、変性ポリマーを安定化する。すなわち、変性ポリマーを含む重合混合物にアルキルヒドロカルビルオキシシランを導入することによって、変性ポリマーを安定化する。アルキルヒドロカルビルオキシシランは、末端官能基と反応すると考えられる。また、鎖末端官能基とアルキルヒドロカルビルオキシシランとの間の反応は、2つの分子の導入時又は組成物のエージング後に起こると考えられる。アルキルヒドロカルビルオキシシランと末端基との間の反応により、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン及びその後のアルキルヒドロカルビルオキシシランとの反応由来の末端基を含む、1本以上のポリマー鎖を含むポリマー組成物が生成される。
【0033】
1つ以上の実施形態では、安定化剤は、式Iによって規定され得るヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランである:
【化1】
(式中、R
2は、ヒドロカルビル基であり、R
3、R
4、及びR
5は、それぞれ独立して、ヒドロカルビル基又はヒドロカルビルオキシ基である)。特定の実施形態では、R
3、R
4、及びR
5は、ヒドロカルビル基である。他の実施形態では、R
3及びR
4は、ヒドロカルビル基であり、R
5は、ヒドロカルビルオキシ基である。他の実施形態では、R
3は、ヒドロカルビル基であり、R
4及びR
5は、ヒドロカルビルオキシ基である。特定の実施形態では、R
3、R
4、及びR
5は、全てヒドロカルビルオキシ基である。
【0034】
1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのヒドロカルビル基としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリール基、又はアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない。置換ヒドロカルビル基は、1つ以上の水素原子がアルキル基などの置換基で置き換えられているヒドロカルビル基を含む。1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビル基は、1個又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子から20個までの炭素原子を含んでいてよい。これらのヒドロカルビル基は、これに限定されないが、窒素、ホウ素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子などのヘテロ原子を含有し得る。
【0035】
1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのヒドロカルビルオキシ基としては、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、置換シクロアルコキシ基、アルケニルオキシ基、シクロアルケニルオキシ基、置換シクロアルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アリルオキシ基、置換アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルカリールオキシ基、又はアルキニルオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。置換ヒドロカルビルオキシ基としては、炭素原子に結合している1つ以上の水素原子がアルキル基などの置換基で置き換えられているヒドロカルビルオキシ基が挙げられる。1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルオキシ基は、1個又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子から20個までの炭素原子を含んでいてよい。ヒドロカルビルオキシ基は、窒素、ホウ素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリンの原子などであるがこれらに限定されないヘテロ原子を含有し得る。
【0036】
1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランのタイプとしては、トリヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン、ジヒドロカルビルジヒドロカルビルオキシシラン、ヒドロカルビルトリヒドロカルビルオキシシラン、及びテトラヒドロカルビルオキシシランが挙げられる。
【0037】
ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、プロピルトリフェノキシシラン、オクチルトリフェノキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、デシルトリフェノキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、エチルジエトキシメトキシシラン、プロピルジエトキシメトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン、オクチルジエトキシメトキシシラン、デシルジエトキシメトキシシラン、メチルジフェノキシメトキシシラン、エチルジフェノキシメトキシシラン、プロピルジフェノキシメトキシシラン、フェニルジフェノキシメトキシシラン、オクチルジフェノキシメトキシシラン、デシルジフェノキシメトキシシラン、メチルジメトキシエトキシシラン、エチルジメトキシエトキシシラン、プロピルジメトキシエトキシシラン、フェニルジメトキシエトキシシラン、オクチルジメトキシエトキシシラン、デシルジメトキシエトキシシラン、メチルジフェノキシエトキシシラン、エチルジフェノキシエトキシシラン、プロピルジフェノキシエトキシシラン、フェニルジフェノキシエトキシシラン、オクチルジフェノキシエトキシシラン、デシルジフェノキシエトキシシラン、メチルジメトキシフェノキシシラン、エチルジメトキシフェノキシシラン、プロピルジメトキシフェノキシシラン、フェニルジメトキシフェノキシシラン、オクチルジメトキシフェノキシシラン、デシルジメトキシフェノキシシラン、メチルジエトキシフェノキシシラン、エチルジエトキシフェノキシシラン、プロピルジエトキシフェノキシシラン、フェニルジエトキシフェノキシシラン、オクチルジエトキシフェノキシシラン、デシルジエトキシフェノキシシラン、メチルメトキシエトキシフェノキシシラン、エチルメトキシエトキシフェノキシシラン、プロピルメトキシエトキシフェノキシシラン、フェニルメトキシエトキシフェノキシシラン、オクチルメトキシエトキシフェノキシシラン、及びデシルメトキシエトキシフェノキシシランが挙げられる。
【0038】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーと官能化剤との間の反応を完了させるのに十分な時間が提供された後に、安定化剤をポリマーセメントに添加する。1つ以上の実施形態では、官能化剤をポリマーセメントに導入した時間から30分後、他の実施形態では15分後、他の実施形態では10分後に、安定化剤をポリマーセメントに導入する。
【0039】
本発明の実施において用いられる安定化剤(すなわち、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシラン)の量は、開始剤に関連するリチウムのモル数に関して記載することができる。1つ以上の実施形態では、開始剤中のリチウム1モル当たり1モル超、他の実施形態では2モル超、他の実施形態では3モル超、他の実施形態では4モル超の官能化剤が重合混合物に導入される。これらの又は他の実施形態では、リチウム1モル当たり12モル未満、他の実施形態では11モル未満、他の実施形態では10モル未満、他の実施形態では9モル未満、他の実施形態では8モル未満の官能化剤が重合混合物に導入される。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たり約1~約12モル、他の実施形態では約3~約10モル、他の実施形態では約4~約8モルの官能化剤が重合混合物に導入される。
【0040】
1つ以上の実施形態では、ポリマーの安定化(すなわち、安定化剤の導入)は、重合が行われた同じ容器内で行われる。これらの実施形態では、これは、変性が行われた同じ容器を含む。他の実施形態では、ポリマーの安定化(すなわち、安定化剤の導入)は、重合が行われた容器の外側で行われる。同様に、1つ以上の実施形態では、ポリマーの安定化は、ポリマーの変性が行われた容器の外側で行われる。例えば、1つ以上の実施形態では、重合が行われた容器の下流にありかつポリマー変性が行われた容器の下流にある容器又は移送ライン内において重合混合物(すなわち、ポリマーセメント)に安定化剤を添加することができる。本明細書の目的のために、重合容器に対して、安定化剤が導入される容器又は導管は、第2の容器又は第2の反応ゾーンと称される場合もある。
縮合促進剤
【0041】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーに官能化剤を導入した後、任意選択でクエンチング剤及び/又は抗酸化剤を添加した後、任意選択で安定化剤の後又は一緒に、任意選択で官能化ポリマーの回収又は単離後に、縮合促進剤を重合混合物に添加してよい。有用な縮合促進剤には、スズ及び/又はチタンカルボキシレート並びにスズ及び/又はチタンアルコキシドが挙げられる。一具体例は、チタン2-エチルヘキシルオキシドである。有用な縮合触媒及びその使用は、米国特許出願公開第2005/0159554号(米国特許第7,683,151号)に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、有機酸を縮合促進剤として使用することができる。有用なタイプの有機酸としては、脂肪族、脂環式、及び芳香族のモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及びテトラカルボン酸が挙げられる。有用な有機酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、2-メチルヘキサン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、及び安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の実施において用いられる縮合促進剤の量は、開始剤に関連するリチウムのモル数に関して記載することができる。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たりの縮合促進剤の量は、開始剤中のリチウム1モル当たり1.0モル超、他の実施形態では1.5モル超、他の実施形態では1.8モル超の縮合促進剤である。これらの又は他の実施形態では、リチウム1モル当たり4.0モル未満、他の実施形態では3.3モル未満、他の実施形態では3.0モル未満の縮合促進剤が重合混合物に導入される。1つ以上の実施形態では、リチウム1モル当たり約1.0~約4.0モル、他の実施形態では約1.5~約3.3モル、他の実施形態では約1.8~約3.0モルの縮合促進剤が重合混合物に導入される。
抗酸化剤
【0043】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーに官能化剤を導入した後、任意選択でクエンチング剤及び/又は抗酸化剤を添加した後、任意選択で安定化剤の後又は一緒に、任意選択で官能化ポリマーの回収又は単離後に、抗酸化剤を重合混合物に添加してよい。例示的な抗酸化剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールが挙げられる。
【0044】
1つ以上の実施形態では、ポリマーの形成後、加工助剤、及びオイルなどの他の任意選択の添加剤が、ポリマーセメントに添加され得る。
任意選択のクエンチング
【0045】
1つ以上の実施形態では、反応性ポリマーと官能化剤との間の反応が達成又は完了した後に、任意の残留している反応性ポリマー鎖及び触媒又は触媒成分を不活化するために、クエンチング剤を重合混合物に添加してよい。クエンチング剤としては、プロトン性化合物を挙げることができ、これには、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。使用されるクエンチング剤の量は、重合を開始するために使用されるリチウム1モル当たり0.5~10モルのクエンチング剤の範囲内であってよい。
脱溶媒時のポリマー特性
【0046】
上述のように、本発明のポリマーは、本明細書で以下に説明するような脱溶媒工程において、50超、他の実施形態では52超、他の実施形態では55超のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を特徴とする。1つ以上の実施形態では、本発明のポリマーは、脱溶媒工程において、約50~約105、他の実施形態では約52~約80、他の実施形態では約55~約70のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を特徴とする。本明細書の目的のため、特に明記しない限り、ムーニー粘度(100℃におけるML1+4)は、ASTMD 1648-17に従って求められる。
【0047】
加えて、1つ以上の実施形態では、本発明のポリマーは、脱溶媒工程において、20パーセント超、他の実施形態では30パーセント超、他の実施形態では40パーセント超のカップリング率を特徴とする。これらの又は他の実施形態では、本発明のポリマーは、脱溶媒工程において、80パーセント未満、他の実施形態では70パーセント未満、他の実施形態では65パーセント未満のカップリング率を特徴とする。1つ以上の実施形態では、本発明のポリマーは、脱溶媒工程において、約20~約80パーセント、他の実施形態では約30~約70パーセント、他の実施形態では約40~約65パーセントのカップリング率を特徴とする。当業者には理解されるように、カップリング率は、GPCによって求めることができる。本明細書の目的のために、カップリングは、ベースピークの2倍以上のピークを有するGPC曲線の面積率を指す(すなわち、カップリング率は、B/(A+B)・100%(式中、Aはベースピークの面積であり、Bは、ベースピーク(すなわち、A)の2倍以上の全てのピークの総面積である)。
【0048】
1つ以上の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に開示される範囲から、(i)ベースポリマーのピーク分子量、(ii)官能化剤の所望の負荷、及び(iii)安定化剤の適切な負荷、及び(iv)以下の式の範囲内で脱溶媒時に標的とするムーニー粘度(例えば、50超)を満たすための縮合触媒の適切な負荷を選択することを含む:
脱溶媒時のムーニー粘度=44.7+[0.5218ベースMp]-[5.1官能化剤当量]-[4.765安定化剤当量]+[8.86縮合促進剤当量]
(式中、脱溶媒時のムーニー粘度は、脱溶媒時の100℃におけるML1+4であり、ベースMpは、ポリスチレン標準及びポリスチレンマーク-フウィンク定数を使用してGPCによって求めたときのベースポリマーのピーク分子量(kg/モル)を表し、官能化剤当量は、ポリマーの重合を開始させるために使用されるリチウム1モル当たりの官能化剤のモル数であり、安定化剤当量は、ポリマーを安定化させるために使用されるリチウム1モル当たりの安定化剤のモル数であり、縮合促進剤当量は、縮合を促進するために使用されるリチウム1モル当たりの縮合触媒のモル数である)。
【0049】
1つ以上の実施形態では、ムーニー粘度が、50以上(又は本明細書に開示される他の範囲)であり、Mpが、約160~約180kg/モルであり、官能化剤当量が、リチウム1モル当たり約0.2~約0.8モルの官能化剤であり、安定化剤当量が、リチウム1モル当たり約1~約12モルの安定化剤であり、縮合促進剤当量が、リチウム1モル当たり約1~約4モルである場合、脱溶媒時のムーニー粘度について上記の式が満たされる。当業者には理解されるように、本明細書に開示される他の範囲(例えば、官能化剤当量の他の範囲)で前述の式が満たされる場合もある。
ポリマーの脱溶媒
【0050】
上述のように、安定化後、そして、任意選択で縮合促進剤及び/又は抗酸化剤を導入した後、ポリマー生成物(すなわち、安定化された官能化ポリマー)は脱溶媒を受ける。換言すれば、上記のように、有機溶媒中でポリマーを合成し、脱溶媒工程中に、有機溶媒をポリマーから分離する。
【0051】
特定の実施形態では、脱溶媒は、熱水及び/又は蒸気凝固を含む。例えば、安定化された変性ポリマーを含む重合混合物を、蒸気又は熱水流と組み合わせてよい。蒸気又は熱水流に関連する熱が、溶媒及び任意の未反応モノマーを揮発させる。次いで、ポリマー生成物が、例えば、ポリマークラムの形態で水相内に分散する。ポリマークラムの性質及びサイズは、概して、ミキサーの形態で機械的エネルギーを導入することによって操作することができる。
【0052】
1つ以上の実施形態では、ポリマークラムは、以下に記載される後続の乾燥工程まで、水内でクラム分散体として一時的に保存される。クラム分散体は、概して、ポリマー粒子又はクラムと水との混合物である。凝固ポリマーと称される場合もあるポリマー粒子は、概して、マクロスケールであり、少なくとも1mmを超える寸法を有する。このクラム分散体は、連続撹拌槽型反応器などの従来の反応器槽などの槽内に収容され得る。
【0053】
1つ以上の実施形態では、ポリマークラムを更に加工して、残留溶媒を除去し、ポリマーを乾燥させる(すなわち、ポリマーを水から分離する)ことができる。本発明の実施では、ポリマーは、濾過、圧搾、及び加熱のうちの1つ以上を含み得る従来技術を使用して乾燥させることができる。脱溶媒及び乾燥後、乾燥ポリマーの揮発分は、ポリマーの2.0重量%未満、他の実施形態では1.0重量%未満、他の実施形態では0.5重量%未満であり得る。
【0054】
他の実施形態では、ポリマー生成物は、熱及び/又は真空と連動して動作することができる押出機型装置である脱揮装置を使用することによって脱溶媒することができる。更に他の実施形態では、重合混合物は、直接ドラム乾燥させてもよい。
【0055】
ポリマーを脱溶媒し、乾燥させるために使用される方法にかかわらず、仕上げたポリマー生成物を乾燥ポリマーと称する場合もある。従来の技術を使用して、乾燥したポリマーを成形するか、又は他の方法で操作してベール(bale)にすることができる。
乾燥ポリマーのポリマー特性
【0056】
1つ以上の実施形態では、本発明の乾燥した未エージングポリマーは、有利なムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を特徴とする。具体的には、1つ以上の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥の24時間以内に、95未満、他の実施形態では90未満、他の実施形態では85未満のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を有する。これらの又は他の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥の24時間以内に、約35~約120、他の実施形態では約55~約95、他の実施形態では約60~約90、他の実施形態では約65~約85のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を有する。本明細書の目的のために、乾燥した未エージングムーニー粘度(100℃におけるML1+4)は、ベールのムーニー粘度と称される場合もある。
エージング後のポリマーのポリマー特性
【0057】
上述のように、本発明のポリマーは、有利なエージング後ムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を特徴とする。具体的には、1つ以上の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥後2年間エージングさせたとき、120未満、他の実施形態では105未満、他の実施形態では95未満のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を有する。1つ以上の実施形態では、ポリマーは、脱溶媒及び乾燥後2年間エージングさせたとき、約70~約120、他の実施形態では約80~約105、他の実施形態では約85~約95のムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を有する。本明細書の目的のため、具体的には、2年間エージング後ムーニー粘度に関して、2年間の室温エージングの代わりに、加速エージングを100℃で2日間行ってもよい。換言すれば、本明細書の目的のために、2つのエージング方法は、得られる粘度に対して同等に処理される。
【0058】
1つ以上の実施形態では、本発明の方法は、本明細書に開示される範囲から、(i)ベースポリマーのピーク分子量、(ii)官能化剤の所望の負荷、及び(iii)以下の式の範囲内で標的とするエージング後ムーニー粘度(例えば、120未満)を満たすための安定化剤の適切な負荷を選択することを含む:
エージング後ムーニー=-34.2+[0.828ベールのムーニー粘度]+[0.348ベースMp]-[0.425%カップリング%]+[98.9官能化剤当量]-[6.16安定化剤当量]
(式中、エージング後ムーニーは、100℃で48時間加熱エージングした後の100℃におけるML1+4であり、ベールのムーニー粘度は、脱溶媒及び乾燥の24時間以内の100℃におけるML1+4であり、ベースMpは、ポリスチレン標準及びポリスチレンマーク-フウィンク定数を使用してGPCによって求めたときのベースポリマーのピーク分子量(kg/モル)を表し、カップリング%は、GPCによって求めたときの脱溶媒時のカップリングポリマーの割合であり、官能化剤当量は、ポリマーの重合を開始させるために使用されるリチウム1モル当たりの官能化剤のモル数であり、安定化剤当量は、ポリマーを安定化させるために使用されるリチウム1モル当たりの安定化剤のモル数である)。
【0059】
1つ以上の実施形態では、ムーニー粘度が、120以下(又は本明細書に開示される他の範囲)であり、ベールのムーニー粘度が、約35~約120Mpであり、Mpが、約160~約180kg/モルであり、カップリング%が、約20%~約80%であり、官能化剤当量が、リチウム1モル当たり約0.2~約0.8モルの官能化剤であり、安定化剤当量が、リチウム1モル当たり約1~約12モルの安定化剤である場合、エージング後のムーニーについて上記の式が満たされる。当業者には理解されるように、本明細書に開示される他の範囲(例えば、官能化剤当量の他の範囲)で前述の式が満たされる場合もある。
産業上の利用性
【0060】
本発明のポリマーは、タイヤ部品の製造に使用可能であるゴム組成物の調製に特に有用である。ゴム混錬技術及びそこで用いられる添加剤は、全般に、The Compounding and Vulcanization of Rubber,in Rubber Technology(2nd Ed.1973)に開示されている。
【0061】
ゴム組成物は、本発明のポリマーを単独で又は他のエラストマー(すなわち、加硫化して、ゴム又はエラストマー特性を有する組成物を形成することができるポリマー)と共に使用することによって調製することができる。使用してもよい他のエラストマーには、天然及び合成ゴムが含まれる。合成ゴムは、典型的には、共役ジエンモノマーの重合、共役ジエンモノマーと他のモノマー(例えばビニル置換芳香族モノマー)との共重合、又はエチレンと1つ以上のα-オレフィン及び任意選択で1つ以上のジエンモノマーとの共重合から得られる。
【0062】
例示的なエラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのエラストマーは、無数の巨大分子構造、例えば、直線状、分岐状、及び星形構造を有することができる。
【0063】
ゴム組成物には、充填剤、例えば、無機及び有機充填剤が含まれていてもよい。有機充填剤の例としては、カーボンブラック及びデンプンが挙げられる。無機充填剤の例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、及びクレイ(水和アルミニウムシリケート)が挙げられる。カーボンブラック及びシリカは、タイヤの製造において用いられる最も一般的な充填剤である。ある実施形態では、異なる充填剤の混合物を有利に用いてもよい。
【0064】
1つ以上の実施形態では、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びランプブラックが挙げられる。カーボンブラックのより具体的な例としては、超摩耗ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、高磨耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、半強化ファーネスブラック、中級加工チャンネルブラック、ハード加工チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられる。
【0065】
特定の実施形態では、カーボンブラックの表面積(EMSA)は、少なくとも20m2/g、他の実施形態では少なくとも35m2/gであってもよく、表面積値は、ASTM規格D-1765によって、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)技術を用いて決定することができる。カーボンブラックは、ペレット化された形態又はペレット化されていない綿状形態であり得る。カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム化合物を混合するために使用される混合機器のタイプに依存し得る。
【0066】
ゴム組成物中で用いるカーボンブラックの量は、ゴム100重量部(phr)当たり最大で約50重量部であってもよく、約5~約40phrが典型的である。
【0067】
使用することができるいくつかの市販のシリカとしては、Hi-Sil(商標)215、Hi-Sil(商標)233、及びHi-Sil(商標)190(PPG Industries,Inc.;Pittsburgh,Pa.)が挙げられる。市販のシリカの他の供給業者としては、Grace Davison(Baltimore,Md.)、Degussa Corp.(Parsippany,N.J.)、Rhodia Silica Systems(Cranbury,N.J.)、及びJ.M.Huber Corp.(Edison,N.J.)が挙げられる。
【0068】
1つ以上の実施形態では、シリカは、その表面積によって特徴付けることができるが、表面積は、その補強特性の尺度となるものである。ブルナウアー、エメット、及びテラー(「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,1939,vol.60,2 p.309-319に記載されている)は、表面積を求めるための認められている方法である。シリカのBET表面積は、概して450m2/g未満である。表面積の有用な範囲としては、約32~約400m2/g、約100~約250m2/g、約150~約220m2/gが挙げられる。
【0069】
シリカのpHは、概して、約5~約7であり、又はわずかに7より高く、又は、他の実施形態では、約5.5~約6.8である。
【0070】
1つ以上の実施形態では、シリカを充填剤として(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)用いる場合、混合中にカップリング剤及び/又は遮蔽剤をゴム組成物に添加して、シリカとエラストマーとの相互作用を高めてもよい。有用なカップリング剤及び遮蔽剤は、以下に開示されている:米国特許第3,842,111号、同第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,674,932号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号、同第6,608,145号、同第6,667,362号、同第6,579,949号、同第6,590,017号、同第6,525,118号、同第6,342,552号、及び同第6,683,135号、なお、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
ゴム組成物中に用いるシリカの量は、約1~約100phr、又は他の実施形態では約5~約80phrであり得る。有用な上限範囲は、シリカによって与えられる高粘性によって限定される。シリカをカーボンブラックと共に用いるとき、シリカの量を約1phr程度に低くすることができる。シリカの量が低いため、使用するカップリング剤及び遮蔽剤の量を少なくすることができる。概ね、カップリング剤及び遮蔽剤の量は、使用するシリカの重量に基づいて、約4重量%~約20重量%の範囲である。
【0072】
硫黄又は過酸化物系硬化系を含む、多数のゴム硬化剤(加硫剤とも呼ばれる)が用いられてもよい。硬化剤は、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.20,pgs.365-468,(3rd Ed.1982)、特に、Vulcanization Agents and Auxiliary Materials,pgs.390-402、及びA.Y.Coran,Vulcanization,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,(2nd Ed.1989)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0073】
ゴム配合において典型的に用いられる他の構成成分もまた、ゴム組成物に添加されてもよい。これらには、促進剤、促進活性剤、油、可塑剤、蝋、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化用樹脂、脂肪酸、例えばステアリン酸、解こう剤、劣化防止剤、例えば抗酸化剤及びオゾン劣化防止剤が含まれる。特定の実施形態では、用いられる油としては、従来から伸展油として用いられているものが挙げられる。これは、前述したとおりである。
【0074】
ゴム組成物の全ての成分は、標準的な混合機器、例えばバンバリー又はブラベンダーミキサ、押出機、ニーダー、及び2ロールのミルを用いて混合することができる。1つ以上の実施形態では、構成成分を2段階以上で混合する。第1の段階(多くの場合、マスターバッチ混合段階とも呼ばれる)において、いわゆるマスターバッチ(典型的に、ゴム成分及び充填剤が含まれる)を調製する。早すぎる加硫(別名スコーチ)を防止するために、マスターバッチから加硫剤を除外してもよい。マスターバッチは、約25℃~約125℃の開始温度で混合してよく、吐出温度は約135℃~約180℃である。マスターバッチが調製されると、最終混合段階において、加硫剤をマスターバッチ内に導入して混合してもよく、この最終混合段階は、典型的には、比較的低温で実施され、それにより加硫のタイミングが早くなりすぎる可能性を減少させる。任意的に、しばしば再ミルと呼ばれる付加的な混合段階を、マスターバッチ混合段階と最終的な混合段階との間で用いることができる。ゴム組成物にシリカが充填剤として含まれる場合、1つ以上の再ミル段階が用いられることが多い。本発明のポリマーを含む種々の構成成分の添加を、これらの再ミル中に行うことができる。
【0075】
特にシリカ充填タイヤ配合物に適用可能な混合手順及び条件は、米国特許第5,227,425号、同第5,719,207号、及び同第5,717,022号、並びに欧州特許第890,606号に記載されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、最初のマスターバッチの調製は、カップリング剤及び遮蔽剤が実質的にない状態でポリマー及びシリカを含めることによって行う。
【0076】
本発明のポリマーから調製されたゴム組成物が特に有用であるのは、タイヤ部品、例えばトレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム、ビーズ充填剤などを形成する場合である。1つ以上の実施形態では、これらのトレッド又はサイドウォール配合物には、約10重量%~約100重量%、他の実施形態では約35重量%~約90重量%、及び他の実施形態では約50重量%~約80重量%(配合物内のゴムの総重量に基づく)の本発明のポリマーが含まれていてもよい。
【0077】
ゴム組成物をタイヤの製造において用いる場合、これらの組成物を加工してタイヤ部品にすることを、通常のタイヤ製造技術、例えば、標準的なゴム成形技術、成型技術、及び硬化技術により行うことができる。典型的には、加硫は、加硫性組成物を成形型内で加熱することによって行われる。例えば、約140~約180℃に加熱してよい。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫物と称され得、加硫物は、概して、熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する。他の成分(例えば、充填剤及び加工助剤)は、架橋された網状組織全体にわたって一様に分散してもよい。空気タイヤは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号で論じられているとおり作製することができる。
【0078】
本発明の実施を示すために、以下の実施例が調製され、試験された。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして見なされるべきではない。特許請求の範囲が本発明を定義するものとする。
【実施例】
【0079】
加熱/冷却ジャケット及び攪拌器ブレードを備えた378.5Lの反応器内で、いくつかのポリマーサンプルを調製した。ブチルリチウムを使用して、約18重量%のモノマーを含む重合混合物内でブタジエン及びスチレンとヘキサンとのランダム重合をアニオン的に開始させた。標的とするベース分子量は215kg/モル(ポリスチレン標準)であり、ブチルリチウム投入に基づいて達成された。スチレンのブタジエンに対する比を調整して、10重量%のスチレンを有し、残りがブタジエンであるポリマーを得た。ビニル含有量は、ブタジエンマー単位の41.5重量%を標的とし、これはビニル変性剤として2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパンを使用することによって得られた。例えば、1つ以上のサンプルにおいて、ヘキサン35.397kg、ヘキサン中33.0重量%のスチレン7.579kg、及びヘキサン中21.2重量%のブタジエン135.669kgを最初に反応器に投入し、次いで、3重量%ブチルリチウム0.511kgを添加し、続いて、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパン0.012kgを添加した。これは単なる例示であり、表Iに列挙される特性を達成するために、サンプル中の様々な構成成分(例えば、ブチルリチウム)を操作したことを理解されたい。
【0080】
モノマー及び溶媒を室温で反応器に投入し、撹拌し、33℃の安定化温度まで加熱した。次いで、外部加熱を中止し、ブチルリチウム開始剤を投入して、重合混合物を形成した。重合混合物により、概してブチルリチウム投入から約23分で発熱ピークを生じさせ、冷却ジャケットを用いて重合混合物を約85℃で恒温処理した。
【0081】
ピーク重合温度の約5分以内に、表Iに提供される量の3-(1,3-ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン(DMAPT)を反応器に投入した。重合混合物を約30分間継続的に撹拌し、次いで、エチルヘキサン酸(EHA)とオクチルトリエトキシシラン(OTES)とのブレンドを、表Iに示す量で反応器に投入した。次いで、0.252kgのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を投入した。プロセスのこの時点で、ポリスチレン標準及びポリスチレンマーク-フウィンク定数を使用してGPCによってピーク分子量を分析するため(この分析はカップリング率%を求めるためにも使用した)、並びにムーニー粘度(100℃におけるML1+4)を分析するためにサンプルを抽出した。プロセスのこの時点で分析されたポリマーは、「ブレンド槽」(例えば、ブレンド槽ムーニー)と称される場合もある。本明細書及び発明の目的のために、ブレンド槽ムーニー及び脱溶媒時のムーニーは、等価であると見なされる。
【0082】
次いで、重合混合物を水系脱溶媒プロセスに移した。具体的には、水を含む槽を約82℃の温度まで加熱した。重合混合物をこの槽にゆっくりと添加し、ヘキサンを揮発させ、凝縮器内で揮発物を回収した。ポリマーは、水の存在下において凝固して、凝固したポリマー分散体を形成した。次いで、グラインダ(すなわち、穿孔ダイを備えた単軸押出機)にポリマー-水混合物を通すことによってポリマーを脱水した。次いで、脱水されたポリマーを71℃のオーブン内で1時間乾燥させ、次いで、乾燥するまで(例えば、含水量約0.5重量%未満)60℃のオーブン内で加熱した。乾燥後、ポリマーをベールにし、ムーニー粘度(100℃におけるML
1+4)を測定して、ベール生ムーニーを得た。ベールのサンプルを、オーブン内に100℃で48時間置くことによってエージングさせた。次いで、これらのエージングしたサンプルのムーニー粘度(100℃におけるML
1+4)を測定した。
【表1-1】
【表1-2】
【0083】
表I中のデータを、Minitab(商標)を使用して線形最小二乗回帰分析によって分析した。この分析は、95%の信頼区間でブレンド槽及びエージング後ムーニーを予測するための上記の式を提供した。
【0084】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない様々な修正及び変更が当業者には明らかであろう。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に正式に限定されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-10
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端変性を有する安定化ジエンコポリマーを調製するプロセスであって、
(i)溶媒中で有機リチウム化合物、ブタジエンモノマー、及びスチレンモノマーを、任意選択でビニル変性剤と一緒に組み合わせて、重合混合物を形成することと、
(ii)前記モノマーを重合させ、それによって、リビングポリマーを形成することと、
(iii)前記モノマーを重合させる前記工程の後、イミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物を前記重合混合物に導入することであって、前記イミン含有ヒドロカルビルオキシシランを、有機リチウム化合物1モル当たり約0.2~0.8モルの量で添加し、それによって、変性ポリマーを含む重合混合物を形成する、導入することと、
(iv)イミン含有ヒドロカルビルオキシシランを導入する前記工程の後、ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランを、前記変性ポリマーを含む重合混合物に導入し、それによって、安定化重合混合物を形成することであって、前記ヒドロカルビルヒドロカルビルオキシシランを、有機リチウム化合物1モル当たり約1~約12モルの量で添加する、安定化重合混合物を形成することと、
(v)ポリマー混合物を脱溶媒して、前記末端変性を有する安定化ジエンコポリマーを提供することと、
を含むプロセス。
【請求項2】
脱溶媒の前記工程が、前記安定化重合混合物の蒸気又は水凝固で、前記変性ポリマーを含む湿潤ポリマー塊を提供することと、前記湿潤ポリマー塊を乾燥させて乾燥変性ポリマーを提供することと、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
モノマーを重合させる前記工程が、ピーク重合温度を達成し、前記重合混合物にアミン含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物を導入する前記工程が、前記ピーク重合温度の後に行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
以下の式を満たす、前記安定化重合混合物内に変性ポリマーを提供するように操作される、請求項1に記載のプロセス:
脱溶媒時のムーニー粘度=44.7+[0.5218ベースMp]-[5.1官能化剤当量]-[4.765安定化剤当量]+[8.86縮合促進剤当量]
(式中、脱溶媒時のムーニー粘度は、50以上であり、Mpは、約160~約280kg/molであり、官能化剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約0.2~約0.8モルであり、安定化剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約1~約12モルであり、縮合促進剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約1~約4モルである)。
【請求項5】
前記安定化ジエンコポリマーが、100℃で48時間加熱エージングした後、120未満のムーニー粘度(100℃におけるML
1+4)を特徴とし、前記プロセスが、以下の式を満たすように行われる、請求項1に記載のプロセス:
エージング後ムーニー=-34.2+[0.828ベールのムーニー粘度]+[0.348ベースMp]-[0.425%カップリング%]+[98.9官能化剤当量]-[6.16安定化剤当量]
(式中、エージング後ムーニーは、120以下であり、ベールのムーニー粘度は、約35~約120であり、Mpは、約160~約280kg/モルであり、カップリング%は、約20~約80%であり、官能化剤当量は、有機リチウム化合物1モル当たり約0.2~約0.8モルであり、安定化剤当量は、リチウム1モル当たり約1~約12モルである)。
【国際調査報告】