(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】産業亜鉛めっきラインにおいて塗装重量均一性を制御する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/20 20060101AFI20220105BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20220105BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20220105BHJP
C23C 2/06 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C23C2/20
C21D1/00 112A
C23C2/40
C23C2/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520306
(86)(22)【出願日】2019-10-14
(85)【翻訳文提出日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2019077708
(87)【国際公開番号】W WO2020083682
(87)【国際公開日】2020-04-30
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521148669
【氏名又は名称】コッカリル・メンテナンス・エ・インジェニエリー・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・デュボワ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ・カレガリ
【テーマコード(参考)】
4K027
4K034
【Fターム(参考)】
4K027AA05
4K027AA22
4K027AB01
4K027AB42
4K027AC52
4K027AE24
4K034AA07
4K034AA19
4K034BA04
4K034CA04
4K034DA03
4K034DA04
4K034DA06
4K034DB02
4K034DB03
4K034DB04
4K034EA04
4K034GA18
(57)【要約】
産業亜鉛めっき設備において走行金属ストリップ(2)の少なくとも1つの側で塗装厚さの横方向均一性を制御して最適化する方法であって、この塗装を、液体金属浴液を含むポット(1)における溶融塗装によって付着させ、この方法は、-実際のノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(14、17)を取得するように、走行ストリップ方向に対して横方向に沿って、及びノズル(5、6)の近傍でノズル(5、6)とストリップ(2)との間の実際の距離プロファイルを測定するステップと、-平均傾斜、即ち、ノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(14、17)の1次線形回帰直線(18)の計算に基づいて、ノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(14、17)に対する第1の補正を計算するステップと、-第1の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(19)から2次線形回帰2次線(20)を引くことによって、その結果は、第2の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(21)であり、第1の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(19)に対する第2の補正を計算するステップと、-位置及び形状が物理的に補正された塗装金属ストリップを取得するように、第1にノズル(5、6)の位置及び第2に金属ストリップ(2)の形状をそれぞれ修正することによって、第1及び第2の対応する物理的補正として、第1及び第2の計算補正を産業亜鉛めっき設備に物理的に置き換えることによって、ノズルの位置及び横方向金属ストリップ形状に作用するステップと、-追加機器が利用できる場合、最適平坦度を有する塗装金属ストリップ(2)を取得するように、第3の物理的補正として、非接触アクチュエータシステム(22)を用いて、位置及び形状が物理的に補正された塗装金属ストリップに更に作用するステップとを少なくとも含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業亜鉛めっき設備において走行金属ストリップ(2)の少なくとも1つの側で塗装厚さの横方向均一性を制御して最適化する方法であって、前記塗装を、液体金属浴液を含むポット(1)における溶融塗装によって付着させ、前記溶融塗装は、
-前記ポット(1)の温度よりも高い温度に前記金属ストリップ基板(2)を加熱するステップと、
-少なくとも第1のデフレクタロール又はシンクロール(3)次いで少なくとも1つの第2のデフレクタロール(4)に前記金属ストリップ(2)を巻き付けることによって、前記浴液に前記金属ストリップ(2)を通すステップであって、前記第2のデフレクタロール(4)は、前記ストリップの平坦度を向上させるように意図されているステップと、
-前記液体金属浴液の出口で前記塗装ストリップに気体を吹き付ける拭き取りノズル(5、6)によって、前記ストリップ(2)の片側又は両側で前記走行ストリップ(2)によって運び去られる過剰塗装厚さを拭き取るステップと、
-この追加機器が前記設備で利用できる場合、前記ノズル(5、6)の後に設置される非接触アクチュエータシステム(22)に前記金属ストリップを通すステップであって、前記非接触アクチュエータシステム(22)は、前記ストリップの位置及び/又は形状を修正するために、前記走行ストリップに力を及ぼすことができるステップと
を少なくとも含み、
-実際のノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(14、17)を取得するように、走行ストリップ方向に対して横方向に沿って、及び前記ノズル(5、6)の近傍で前記ノズル(5、6)と前記ストリップ(2)との間の実際の距離プロファイルを測定するステップと、
-コンピュータを用いて、前記ノズルの歪度を考慮して前記ノズルを前記金属ストリップと平行に設定するために第1の補正を適用することを目的として、平均傾斜、即ち、前記ノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(14、17)の1次線形回帰直線(18)の計算に基づいて、前記ノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(14、17)に対する第1の補正を計算するステップと、
-前記ポット(1)における前記デフレクタロール(4)の調整によってクロスボウを補償するために第2の補正を適用することを目的として、第1の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(19)から2次線形回帰2次線(20)を引くことによって、その結果は、第2の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(21)であり、第1の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(19)に対する第2の補正を計算するステップと、
-位置及び形状が物理的に補正された塗装金属ストリップを取得するように、第1に前記ノズル(5、6)の位置及び第2に前記金属ストリップ(2)の形状をそれぞれ修正することによって、第1及び第2の対応する物理的補正として、前記第1及び第2の計算補正を前記産業亜鉛めっき設備に物理的に置き換えることによって、前記ノズルの位置及び横方向金属ストリップ形状に作用するステップと、
-前記追加機器が利用できる場合、最適平坦度を有する塗装金属ストリップ(2)を取得するように、第3の物理的補正として、前記非接触アクチュエータシステム(22)を用いて、位置及び形状が物理的に補正された前記塗装金属ストリップに更に作用するステップと
を少なくとも含む方法。
【請求項2】
前記第1、第2及び第3の物理的補正を、段階的に及び連続的に実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の物理的補正を、オペレーターによって手動で実行する、又はアクチュエータ制御処理によって自動的に制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非接触アクチュエータシステム(22)は、磁気アクチュエータシステムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記実際のノズルからストリップの距離のプロファイル(14)を、非接触センサーシステムによって測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非接触センサーシステムは、1つ又は複数のレーザー及びカメラを含む光学ヘッド(8)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ノズル(5、6)の前記位置を物理的に修正する前記ステップは、ノズル歪度補正である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属ストリップ(2)の前記形状を物理的に修正する前記ステップは、前記溶融浴液に前記シンクロール(3)を通した後に前記金属ストリップ(2)の前記クロスボウを減らすように、前記ポット(1)における前記第2のデフレクタロール(4)の位置を修正するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つの第2のデフレクタロール(4)だけがある場合、前記金属ストリップ(2)の前記形状を物理的に修正する前記ステップは、前記第2のデフレクタロール(4)に対する前記シンクロール(3)の相対位置を修正するために、他のロールは固定されて、前記ポットにおける前記シンクロール(3)又は前記第2のデフレクタロール(4)の前記位置を修正するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の物理的補正において、ノズル場所近傍における前記ストリップ位置及び形状の補正を最終決定して、ゼロに近い完全平坦度に対する前記補正された実際の距離プロファイルの標準偏差に達するために、前記非接触アクチュエータシステム(22)を駆動する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の物理的補正を、4次以上の線形回帰によって適合される前記第2の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線(21)に対して、前記非接触アクチュエータシステム(22)によって実行する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非接触アクチュエータシステム(22)を用いて実行される前記第3の物理的補正を、手動で実行する、又は制御処理によって自動的に制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記実際のノズルからストリップの距離のプロファイル(14)を、拭き取りゾーンから100mm~150mm未満で前記非接触センサーシステムによって測定し、前記非接触アクチュエータシステム(22)を、前記拭き取りゾーンから0.5mと5mとの間に設置する、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記溶融塗装は、前記ポット温度よりも高い温度に前記金属ストリップ基板を加熱する前記ステップの後に、前記ポットに入る前に制御温度に前記ストリップを冷却するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
Si、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Zr及びBi、これらの含有率は全組成重量の1%未満である、を含む群から選択される追加元素をおそらく有する、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はこれらの任意の混合物の浴液で浸漬塗装される鋼ストリップの場合、塗装厚さの前記横方向均一性を制御して最適化するために適用される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融亜鉛めっきラインにおいて付着される腐食保護塗装層の重量均一性を制御する改良及び簡易方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続産業亜鉛めっき処理において金属ストリップ上の塗装厚さを制御する最も一般的な方法は、含有率が1%未満のいくつかの不純物を有する亜鉛、アルミニウム及びマグネシウムの混合物が一般的に使用される液体金属を含むポットから走行ストリップが出てくる時に、走行ストリップによって運び去られる液体金属に対する気体のエアナイフ吹き付けを使用することである。
【0003】
液体金属温度にかなり近くまで加熱される還元焼鈍炉からストリップが出てくる場合、ストリップ自体を、シンクロールと呼ばれる浸漬デフレクタロールにまず巻き付け、次に、シンクロールによって生じるクロスボウを補正する機能を有する1つ又は2つのより小さい浸漬ロールに巻き付けることによって、ストリップはポットを通る。これらのより小さいロールの適切な位置は、上述のクロスボウを多少補正することができることが、当技術分野で知られている。
【0004】
更に、金属ストリップに付着される塗装厚さ(又は重量)は、液体特性、吹き付け又は拭き取りノズルからストリップの距離、気体を吹き付けるノズル開口部、ノズル出口気体速度、気体特性及びストリップ速度に主に左右されることが知られている。基板の粗さ又は拭き取り高さなどの他の変数も、最終塗装厚さに影響を与えることがあるけれども、最終塗装厚さの範囲は、かなり制限される。
【0005】
縦方向及び横方向における優れた塗装均一性はそれぞれ、製品品質及び操業コストの通常の顧客要件である。これは、市場が通常、最小耐食性を保証するように最小塗装厚さを要求する一方、どんな余分な塗装も製造業者に追加コストを与えるからである。3シグマ塗装重量は、古典的要件であるけれども、幾つかの機器製造業者は、平均の1%の1シグマを保証できるように主張する(50g/m2に対して0.5g/m2)。
【0006】
更に、前後方向における一定でないノズルからストリップの距離のために、塗装厚さの横方向変動が両方のストリップ側で生じることが知られている。これは実際に、ストリップがノズルの前で完全に平坦でない一方、ノズル線が完全に直線であるという事実に起因する。その結果、ノズルからストリップの距離がより短い場合、塗装厚さは、より薄い。
【0007】
図1は、移動ストリップ2、シンクロール3、より小さいデフレクションロール4、第1の側5及び第2の側6の上のノズルを有する典型的な状況を示す溶融液体ポット1の略図である。液体金属温度に近い温度まで、炉7で加熱され、おそらく焼鈍及び/又は冷却された後、ストリップ2は、ポット1を通り、シンクロール3によって転向される。
【0008】
次に、ストリップは、ポット出口で通過ラインを判定し、シンクロール3によって生じるクロスボウ形状を補正するように調整可能な片方又は両方のより小さいロール4を更に通る。様々な設計が存在するけれども、最も一般的な設計では、ストリップ形状が向上されるまで、補正ロールとも呼ばれる中間ロールを、オペレーターによって前後に移動させる。
【0009】
図2Aは、ノズル場所におけるストリップ形状の例を概略的に示す。ノズル5とストリップ2との間の距離及び反対側のノズル6とストリップ2との間の距離はそれぞれ、
図3と同様である状況から生じる。
図2Bは、1つのノズルバーが歪んでいる状況を示す。
【0010】
Duboisら(下記を参照)は、実際のノズルからストリップの距離を、例えば、下記のような4次関数又は4次の多項式関数によって実際にうまく近似されるn次多項式関数によって適切に適合することができることを示している。
距離(X)=A+B.X+C.X2+D.X3+E.X4 (1)
ここでXは、ノズルバーの中心からの位置であり、A、B、C及びDは、線形最小二乗法によって調整されるべきパラメータである。以下、この線形最小二乗法は、4次回帰法と呼ばれる。
【0011】
Aは、ノズルからストリップの平均又は平均的距離である一方、Bは、Xの関数で距離の平均傾斜に対応するノズルバーの歪度に起因する。Cは、ストリップタイル形状、クロスボウと呼ばれる対称プロファイル、又はストリップ幅にわたる平均ボウに関連している(Cは、形状の平均半径を表す)。定数D及びEは、S形状、又はW形状(又は中心形状から離れたクロスボウ)の場合に観測されるような逆湾曲などのおそらく対称でない特定の形状をモデル化するために設けられた項である。
【0012】
ノズルをうまく設計して調整するという条件で、均一な塗装の実現は、全ストリップ幅に沿ってほぼ一定のノズルからストリップの距離を得る必要があることが、理論から分かる。これは、下記の理由で、ラインにおけるオペレーターにとって困難な仕事である。
-ノズルからストリップの距離は、厳しい環境のために全ストリップ幅に沿って測定するのが困難であり、ストリップ幅は通常、500mmと2200mmとの間で変わり、最終的に、塗装ストリップの明るさにより、レーザーの使用が容易でない。
-ラインでオペレーターが利用できるアクチュエータはほとんどない。ノズルを各エッジで別々に移動させて調整することができる場合、歪度は、補正するのが容易である。ポットにおける小さいデフレクションロールの位置は、ストリップ自体を底部ロール又はシンクロールに巻き付ける場合、ストリップの塑性変形によって生じる横方向ボウを改善することができる。現在、シンクロールによって生じるクロスボウを補償することになっている補正ロールの浸透を与えることができる任意の有効なモデルは存在しない。このような状況は、ポットにおけるストリップの機械的特性が高温のために知られていないという事実、及び局所的に加えられるストリップ張力によって屈曲及び伸長が弾塑性領域で生じるという事実に起因する。
-現場で行う正しい動作は、操業中に見付けるのが困難である。なぜなら、式(1)のA及びBの値を容易に補正することができる場合、実際のストリップ形状が通常複雑であり、実際のストリップ形状を2次の単純な多項式によって正確にモデル化することができないという事実のために、クロスボウを補償する正しい補正は難しいからである。最終的に通常、式(1)の3次及び4次に対して別々にノズルでストリップ形状を直接補正するために実際に利用できる任意のデバイスは現場で存在しない。
【0013】
多くの補正システムは、先行技術で存在するけれども、これらの補正システムは、エアナイフの後の約120mに設置されたインライン塗装計器、又はエアナイフから近い距離におけるストリップ位置の測定及び制御を使用する。この方法は、ストリップがポットから出るとすぐに、ストリップ形状はまだ変わることが知られているので、ノズルでノズルからストリップの正確な距離を与えないという欠点を有する。
【0014】
特許文献1は、搬送される鋼板Sの板湾曲を補正するために磁力を使用する板湾曲補正デバイスを開示する。この板湾曲補正デバイスは、鋼板Sの板幅方向に整列され、板厚方向に鋼板Sを挟むように面する複数の電磁石と、鋼板Sに対して電磁石を移動させることができる移動機構と、電磁石に流れる電流に対する値に基づいて移動機構の動作を制御する制御ユニットとを含む。
【0015】
非特許文献1において、平均誤差及び歪み塗装誤差の両方を除去することに成功したけれども、クロスボウ塗装誤差に対して何もすることができない、既存の塗装重量制御システムは、電磁安定器を制御する可能性を利用する平坦度補正関数で改良されている。基本原理は、あらゆる計器走査に対して、上下側の塗装重量横プロファイルを2つの各線形及び非線形成分に分割することである。線形成分は、ナイフをストリップに再整列させることによって歪み誤差を補正するために使用される一方、非線形成分は、ストリップをナイフ間で平坦に保つように、安定器でストリップを変形させるために使用される。
【0016】
非特許文献2において、標準的な実行し易い方法論は、側毎の標準偏差だけでなく、ストリップ形状に関する量、ノズル調整、及び他の処理及び製品パラメータも計算するように提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】N.GUELTONら、“Cross coating weight control by electromagnetic strip stabilization at the continuous galvanizing line of ArcelorMittal Florange”,Metallurgical and Materials Transaction B-Springer(2016)47:2666-2680
【非特許文献2】M.DUBOIS及びJ.CALLEGARI、“Methodology to Quantify Objectively the Coating Weight Uniformity”,Iron & Steel Technology,AIST.org,Feb.2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、不完全なストリップ形状及び振動のためにノズルからストリップの距離の変動を適切な手段によって補正することから、ストリップの幅に沿ってノズルからストリップの距離の変動を減らすことにあり、更に、溶融亜鉛めっき設備において塗装重量均一性を向上させる産業的方法を提供することにある。
【0020】
更に、本発明の目的は、拭き取りノズルで平坦ストリップに達する動作パラメータを制御する方法論を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、産業亜鉛めっき設備において走行金属ストリップの少なくとも1つの側で塗装厚さの横方向均一性を制御して最適化する方法であって、この塗装を、液体金属浴液を含むポットにおける溶融塗装によって付着させ、この溶融塗装は、
-ポットの温度よりも高い温度に金属ストリップ基板を加熱するステップと、
-少なくとも第1のデフレクタロール又はシンクロール次いで少なくとも1つの第2のデフレクタロールに金属ストリップを巻き付けることによって、浴液に金属ストリップを通すステップであって、この第2のデフレクタロールは、ストリップの平坦度を向上させるように意図されているステップと、
-液体金属浴液の出口で塗装ストリップに気体を吹き付ける拭き取りノズルによって、ストリップの片側又は両側で走行ストリップによって運び去られる過剰塗装厚さを拭き取るステップと、
-この追加機器が設備で利用できる場合、ノズルの後に設置される非接触アクチュエータシステムに金属ストリップを通すステップであって、この非接触アクチュエータシステムは、ストリップの位置及び/又は形状を修正するために、走行ストリップに力を及ぼすことができるステップと
を少なくとも含み、
-実際のノズルからストリップの距離のプロファイル曲線を取得するように、走行ストリップ方向に対して横方向に沿って、及びノズルの近傍でノズルとストリップとの間の実際の距離プロファイルを測定するステップと、
-コンピュータを用いて、ノズルの歪度を考慮してノズルを金属ストリップと平行に設定するために第1の補正を適用することを目的として、平均傾斜、即ち、ノズルからストリップの距離のプロファイル曲線の1次線形回帰直線の計算に基づいて、ノズルからストリップの距離のプロファイル曲線に対する第1の補正を計算するステップと、
-ポットにおけるデフレクタロールの調整によってクロスボウを補償するために第2の補正を適用することを目的として、第1の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線から2次線形回帰2次線を引くことによって(その結果は、第2の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線)、第1の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線に対する第2の補正を計算するステップと、
-位置及び形状が物理的に補正された塗装金属ストリップを取得するように、第1にノズルの位置及び第2に金属ストリップの形状をそれぞれ修正することによって、第1及び第2の対応する物理的補正として、第1及び第2の計算補正を産業亜鉛めっき設備に物理的に置き換えることによって、ノズルの位置及び横方向金属ストリップ形状に作用するステップと、
-この追加機器が利用できる場合、最適平坦度を有する塗装金属ストリップを取得するように、第3の物理的補正として、非接触アクチュエータシステムを用いて、位置及び形状が物理的に補正された塗装金属ストリップに更に作用するステップと
を少なくとも含む方法に関する。
【0022】
好ましい実施形態によれば、方法は、下記の特徴のうち少なくとも1つ、又はこれらの特徴のうち幾つかの適切な組み合わせを更に含む。
-第1、第2及び第3の物理的補正を、段階的に及び連続的に実行する。
-第1及び第2の物理的補正を、オペレーターによって手動で実行する、又はアクチュエータ制御処理によって自動的に制御する。
-非接触アクチュエータシステムは、磁気アクチュエータシステムである。
-実際のノズルからストリップの距離のプロファイルを、非接触センサーシステムによって測定する。
-非接触センサーシステムは、1つ又は複数のレーザー及びカメラを含む光学ヘッドである。
-ノズルの位置を物理的に修正するステップは、ノズル歪度補正である。
-金属ストリップの形状を物理的に修正するステップは、溶融浴液にシンクロールを通した後に金属ストリップのクロスボウを減らすように、ポットにおける第2のデフレクタロールの位置を修正するステップを含む。
-1つの第2のデフレクタロールだけがある場合、金属ストリップの形状を物理的に修正するステップは、第2のデフレクタロールに対するシンクロールの相対位置を修正するために、他のロールは固定されて、ポットにおけるシンクロール又は第2のデフレクタロールの位置を修正するステップを含む。
-第3の物理的補正において、ノズル場所近傍におけるストリップ位置及び形状の補正を最終決定して、ゼロに近い完全平坦度に対する補正された実際の距離プロファイルの標準偏差に達するために、非接触アクチュエータシステムを駆動する。
-第3の物理的補正を、4次以上の線形回帰によって適合される第2の補正されたノズルからストリップの距離のプロファイル曲線に対して、非接触アクチュエータシステムによって実行する。
-非接触アクチュエータシステムを用いて実行される第3の物理的補正を、手動で実行する、又は制御処理によって自動的に制御する。
-実際のノズルからストリップの距離のプロファイルを、拭き取りゾーンから100mm~150mm未満で非接触センサーシステムによって測定し、非接触アクチュエータシステムを、拭き取りゾーンから0.5mと5mとの間に設置する。
-溶融塗装は、ポット温度よりも高い温度に金属ストリップ基板を加熱するステップの後に、ポットに入る前に制御温度にストリップを冷却するステップを更に含む。
-Si、Sb、Pb、Ti、Ca、Mn、Sn、La、Ce、Cr、Zr及びBi(これらの含有率は、全組成重量の1%未満である)からなる群から選択される追加元素をおそらく有する、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はこれらの任意の混合物の浴液で浸漬塗装される鋼ストリップの場合、塗装厚さの横方向均一性を制御して最適化するために、方法を適用する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】先行技術による、光学距離測定ヘッドが設けられた溶融亜鉛めっき設備を概略的に表す。
【
図2A】平行な拭き取りノズルバーで囲まれた金属ストリップを概略的に表す。
【
図2B】歪められた拭き取りノズルバーで囲まれた金属ストリップを概略的に表す。
【
図3】(4次の多項式曲線でおそらく適合された)金属ストリップの中心からの横方向位置に応じたノズルからストリップの距離の線図の例を表す。
【
図4】拭き取りナイフ支持体及び明るい金属ストリップの上でそれぞれレーザービームの反射を示す距離測定デバイス用の実施形態を表す。
【
図5A】距離測定カメラを実際の拭き取りノズル支持体/ケーシングに設置する実施形態を概略的に表す。
【
図5B】距離測定カメラを実際の拭き取りノズル支持体/ケーシングに設置する実施形態を概略的に表す。
【
図6】測定(バツ印)及び適合又は補間(実線)として金属ストリップの中心からの横方向位置に応じたノズルからストリップの距離の線図の例を示す。
【
図7】歪度(点線)を与える、
図6のデータの1次回帰(直線)を示す。
【
図8】
図7で計算されるような歪度に対する
図6の曲線の補正(実線)、及びこの補正曲線の2次回帰(点線)を示す。
【
図9】ストリップのクロスボウを表す2次項に対する
図8の曲線の補正(実線)を示す。水平点線は、ストリップ形状で高次の多項式項がない場合、ストリップの完全平坦度を表す。
【
図10】ストリップの幅に等距離で配置された5つの磁気アクチュエータを用いて、
図8の曲線の高次の多項式項が大域的に補正されている場合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、有利なことに、ストリップの平坦度を更に補正するために、エアナイフから0.5mと2mとの間に好ましくは設置された非接触アクチュエータ(例えば、電磁アクチュエータ)を使用することによって、ノズル位置、ポットロールの形状に対する多くの補正を実行する戦略と組み合わせた、全ストリップ幅に対するノズルからストリップの実際の距離の測定に関する。
【0025】
特に、本発明は、下記の要素の組み合わせである。
【0026】
最初に、鋼ストリップの1つ又は2つの側で全ストリップ幅に沿ってノズルからストリップの距離を測定するために、1つ又は複数の測定デバイスを提供する(
図3参照)。測定デバイスは、全ストリップ幅を調べることができる多くのカメラを用いて、光学的であることが好ましい。ラインで連続収集された画像を処理して、ノズルからストリップの距離の完全ストリッププロファイルを抽出する。有利なことに、光学測定手段(例えば、カメラ)を使用すると、拭き取りラインの100~150mm未満でノズルからストリップの距離を測定することができ、おそらく電磁アクチュエータゾーンで測定を回避することができる。
【0027】
図3における2つのプロファイルは、第1及び第2のノズルバー5、6からそれぞれ見られるように、対称である。
【0028】
任意選択的に、好ましくは、上述の4次多項式回帰方法を用いて、ノズルからストリップの距離の測定点の適合を実行することができ、ストリップは、ストリップ形状に関連している。平坦ストリップ形状を復元するために移動ストリップに適用されるべき必要な物理的補正について、以下説明する。
【0029】
次に、ノズルの歪度を考慮するために(式(1)におけるB項、
図2A及び
図2Bを参照)、第1の補正を、オペレーターに提案する、又は自動的に交互に実行し、その結果、ノズルは金属ストリップと平行に設定される(第1のアクチュエータの使用)。
【0030】
更に、クロスボウを補償するために、連続的に、第2の補正を、オペレーターに提案する、又はポット内の小さい浸漬ロールに対して自動的に交互に実行する。実際に、これは、平均測定クロスボウ、即ち式(1)におけるC項がゼロに近くなるまで、小さいロールの位置を調整することを意味する(第2のアクチュエータの使用)。
【0031】
ストリップがポットから出てくると、ストリップは、1対のエアナイフ5、6を通り、最後に、走行ストリップに非接触力を加えることができるアクチュエータのボックスに進む。このようなアクチュエータは、このような用途における周知の性能のために、電磁石(下記を参照)であることが好ましい(第3のアクチュエータの使用)。
【0032】
従って、磁気システムを含む非接触アクチュエータボックスという形での最終ドライブを、ストリップから末端位置に、典型的には、500mmと5mとの間に、しかし好ましくは500mmと2mとの間に、ノズル又はエアナイフ対にわたって適用し、設置する。このデバイスは、ストリップにわたって設置された多くの電磁アクチュエータを含み、拭き取りノズルの前で完全平坦度に理想的に近い平坦度を有するストリップ形状に達するストリップ形状補正を最終決定するために使用される。ストリップに作用する局所力を修正し、更に、磁石間のストリップ場所とは無関係に、ノズル場所における規定のストリップ位置に達するために、横方向にわたって各電磁アクチュエータを別々に駆動する方法論を実行する。
【0033】
幾つかの実施形態によれば、
図1及び
図4に概略的に示すように、ストリップの走行方向と横方向に、両方のノズル5、6及び拭き取りラインを調べるために、1つ又は複数のカメラ8を含む光学系を設置する。例えば
図5A及び
図5Bに示すように、拭き取りエアナイフ15、16をそれぞれ支持するデバイスに、又は更にカメラ8がノズルからストリップの距離を適切に測定することができるという条件で個別支持体に、カメラ8を設置してもよい。好ましくは、
図5A及び
図5Bに示すように、個々のノズルの間に、更に例えば、ノズル上の最大2m、しかしより好ましくはノズル上の約1mの距離で、カメラ8を設置する。ポットとノズルとの間のストリップ面は、液体乱流のために非常にぼんやりしている一方、塗装厚さが調整されている場所でストリップ面は明るくなることが知られているので、ストリップの明るさの変動を識別するために、例えば、カメラを含む光学デバイスによって取得される画像を処理することによって、拭き取りラインを金属ストリップ上で容易に識別することができる。別の使用可能な方法は、例えば、欧州特許第1 421 330 B1号明細書(
図4参照)に記載のように、拭き取り面上の投影レーザー線の反射を観測することである。較正の結果、レーザービームの第1の反射に対応する検出器又はカメラの実際の位置11(mm)を知ることができる。更に、レーザービームは、ストリップ上の位置12で反射され、その結果、第1の反射の水平面で虚像13の実際の位置を与える。所与の像を生成しているストリップ点の縦座標は、2つの像の縦座標の中点に対応する(
図4参照)。
【0034】
幾つかの実施形態によれば、使用されるカメラ8の数は、カメラの場所とノズル口との間の距離、及びストリップ幅に左右される。カメラを拭き取りラインから約1mの距離で設置する場合、典型的なカメラの数は、1000mの幅のストリップに対して2つである。しかし、カメラの数の適切な選択は、利用できる特定の設計及び空間との関連でケースバイケースの識別の問題である。
【0035】
カメラを、ストリップの両側に設置することができるけれども、これは必要ない。幾つかの実施形態によれば、カメラを、ストリップの一方の側だけに設置する。この場合、ノズル間の距離と、カメラ側のストリップからノズルの距離及びストリップ厚さの合計との間の差を計算することによって、他方の側のストリップからノズルの距離を取得する。
【0036】
他の実施形態によれば、カメラによって形成される画像に基づいてミリメートルでノズルからストリップの正確な距離を得ることができるために、ノズルで、又は交互に整備工場における較正手順で、幾つかの較正デバイスを使用してもよい。
【0037】
一旦ノズルからストリップの完全な横方向距離の測定値が1つ又は2つのストリップ側で取得されると、式(1)の4つの多項式項に理想的に従って、個々の項でプロファイルを分解するために、数学的処理を実行する。例えば、
図6は、実際に測定された典型的な横方向距離プロファイルを示す。当然、オペレーターが塗装重量の均一性に対してあまり敏感でない場合に得られる非常に悪い場合であるように思われる。
図6上のバツ印14は、例えば、既知又は決定位置で実際に測定されたノズルからストリップの距離を表している。測定点(バツ印14)があまりにも少ない場合、例えば、数学的適合又は補間によって、実線17を取得することができる。
【0038】
本発明による補正処理の第1のステップは、上述の距離プロファイルの歪度を除去することである。そのために、直線(
図7参照、平均傾斜は点線18である)で線形回帰を実行することによって、距離プロファイルの平均傾斜を計算する。上述の例では、0.36mm/mの歪度又は平均傾斜が得られる。
【0039】
次に、拭き取りノズル位置に関するストリップの歪度を補正するオペレーターによる手動で、又は自動的に(
図8参照、実線19のような補正距離)、上述の計算傾斜に基づいて、第1の補正を設備で実行する。
【0040】
更に、回帰適合を、2次成分曲線(
図8参照、2次成分は点線20である)で実行する。
【0041】
この2次項を物理的に除去するために、第2のアクチュエータとしての機能を果たすポット補正ロールを調整して補正し、プロファイルの2次をおそらく除去する(
図9参照、補正距離は実線21である)。
【0042】
距離プロファイルに対する3次及び4次多項式寄与を理想的に除去するために、ノズルの後に設置された非接触アクチュエータを使用して、ストリップの位置を横方向に(即ち、特定の横方向場所に)変更する。
図10に示す例では、5つの(電)磁石22を有する非接触アクチュエータを、典型的なストリップ幅及びノズルからストリップの距離の形状に対して使用する。
【0043】
ここで、プロファイルはポットの前側から見られ(各磁石はストリップを引き付けることになっている)、ストリップの前側はポットの前側でもあることを考えると、
-磁石M1は、ストリップの前側に設置され、(平均と比べて)強くストリップを引き付けて、前側でノズルからストリップの距離を減少し、
-磁石M2は、ストリップの後側に設置され、弱くストリップを引き付けて、前側でノズルからストリップの距離を増加し、
-磁石M3は、ストリップの後側に設置され、(M2と比べて)より強くストリップを引き付けて、前側でノズルからストリップの距離を増加し、
-磁石M4は、ストリップの前側に設置され、前側にストリップを引き付けて、前側でノズルからストリップの距離を減少し、
-磁石M5は、ストリップの後側に設置され、強くストリップを引き付けて、前側でノズルからストリップの距離を増加する。
【0044】
この例において、ストリップの前側又は後側における磁石の位置は全く任意であり、この例以外の磁石の任意の位置も、本発明の範囲に入ることに留意されたい。
【0045】
各測定点で、2つの側に対応する磁石を対向して装着することが好ましいけれども、1つの磁石だけでも有効である。
【0046】
5つの磁気アクチュエータの適切な動作の後、ノズルからストリップの距離は、最適化され、ストリップの幅に沿って理想的に一定である(
図10における水平点線を参照)。
【0047】
電磁石の力(従って、電磁石に送られる電流の強さ)は、ストリップの実際の測定位置に基づいている。これは、光学検出系が、実際のノズルからストリップの距離をまず測定し、段階的に距離プロファイルを補正する必要があることを意味する。
【0048】
ストリップに対する最適化作用は、処理の終わりに全又は完全平坦度をもたらすことができない場合がある。ポットロールの形状が完全であり、オペレーターが拭き取りに対する正しいパラメータを設定した場合にだけ、本発明システムによって得られる最良の結果が得られるべきである。これは、磁石を更なる補正のために使用する可能性がある前に、歪度及びロール位置に対する各ステップ1及び2中の補正最適化が優先される理由を説明する。
【符号の説明】
【0049】
1 液体金属ポット
2 移動ストリップ
3 シンクロール
4 デフレクションロール
5 第1の拭き取りノズルバー
6 第2の拭き取りノズルバー
7 還元焼鈍炉
8 レーザー光源及びカメラを有する光学ヘッド(又は任意の光学センサー/検出器)
9、10 (ノズルバー5又は6からそれぞれ見た)ノズルからストリップの距離
11 (拭き取りノズルケーシング上の)第1のレーザー反射点
12 (明るい走行ストリップ上の)第2のレーザー反射点
13 第2の反射点に対応する仮想点
14 ノズルからストリップの距離の測定点
15、16 拭き取りノズルケーシング(供給管)
17 ノズルからストリップの距離の適合(4次回帰)
18 1次回帰
19 歪度に対して補正された距離曲線
20 2次回帰
21 2次形状欠陥に対して補正された距離曲線(クロスボウ)
22 電磁アクチュエータ
23 電磁アクチュエータによって補正された最終距離曲線
【国際調査報告】