(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】歯科補綴物
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520310
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 AU2019051222
(87)【国際公開番号】W WO2020028958
(87)【国際公開日】2020-02-13
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521148887
【氏名又は名称】インプラント ソリューションズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】タックマン,マイケル
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA12
4C159AA17
(57)【要約】
第1の係合プロファイルを有するインプラントフレーム(12)と、2本以上の歯を提供する又は2本以上の歯の装着を可能にし、オーバーレイの相当な長さに沿って延び、相補的な第2の係合プロファイルを画定する内部空洞を有するオーバーレイ(30)と、を含む、歯科補綴物(10)。方法は、インプラント位置の配置によって、及び突出したオーバーレイ係合プロファイルによって画定されるフレームの形態を表す第1のデジタルデータファイルを生成することと、オクルーザルテーブルによって部分的に定義される複数の歯の形態を表す第2のデジタルデータファイルを生成することと、複数の歯の前記形態によって部分的に、及びフレーム係合空洞プロファイルによって部分的に画定される組織のデジタルデータファイルである第3のデジタルデータファイルを生成することと、第3のデジタルデータファイルが所定の最小厚さを画定するように、前記第1のデジタルデータファイル及び/又は前記第3のデジタルデータファイルを修正することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の2本以上の歯の置換物を支持するために前記患者の口内に取り付けられるように構成されたインプラントフレームであって、前記インプラントフレームは外部表面を有し、前記外部表面は第1の係合プロファイルを画定する、インプラントフレームと、
前記インプラントフレームに固定され、前記2本以上の歯を提供する又は前記2本以上の歯の装着を可能にするように適合されたオーバーレイであって、前記オーバーレイは、前記オーバーレイの相当な長さに沿って延びる内部空洞を有し、前記内部空洞は、第2の係合プロファイルを画定する、オーバーレイと、
を含み、
前記第2の係合プロファイルは、前記第1の係合プロファイルに相補的であり、それによって、前記内部空洞内における前記インプラントフレームの前記外部表面の大部分の取り付けを可能にする、
歯科補綴物。
【請求項2】
前記オーバーレイの前記内部空洞は、成形された溝又は開放チャネルである、請求項1に記載の歯科補綴物。
【請求項3】
前記インプラントフレームは、前記インプラントフレームの前方部品内に先端咬合縁を含み、前記先端咬合縁は、口の前部に1本以上の歯を提供する又は1本以上の歯の装着を可能にするように構成された前記オーバーレイの少なくとも一部分を支持するために提供されている、請求項1又は2に記載の歯科補綴物。
【請求項4】
先端前方縁は前方の傾きを有する、請求項3に記載の歯科補綴物。
【請求項5】
前記前方の傾きは、最大約18度の角度を有する、請求項4に記載の歯科補綴物。
【請求項6】
前記インプラントフレームは、弓状のバーの形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科補綴物。
【請求項7】
前記インプラントフレームは、略T字プロファイルの断面形態を有し、前記T字プロファイルは、横断方向に延びる実質的水平部分と、前記実質的水平部分にほぼ垂直に延びる実質的垂直部分とを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科補綴物。
【請求項8】
前記インプラントフレームの前記T字プロファイルは、前記オーバーレイの端部に届かずに終了する、請求項7~10のいずれか一項に記載の歯科補綴物。
【請求項9】
前記実質的水平部分は、舌側部分と頬側又は唇側部分とを含み、前記舌側部分は、前記外部表面の一部を形成し、前記舌側部分は、前記インプラントフレームの長さに沿って咬合平面内で実質的に平坦である、請求項7又は8に記載の歯科補綴物。
【請求項10】
前記実質的水平部分と前記実質的垂直部分との間に、及び/又は前記垂直部分の舌側面と前記垂直部分の頬側又は唇側面との間に1つ以上の接線遷移表面を更に含む、請求項9に記載の歯科補綴物。
【請求項11】
前記患者の顎の一部への固定を提供する又は容易にするための1つ以上の形成物を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科補綴物。
【請求項12】
デジタルデータの使用によって、2部品歯科補綴物を設計する方法であって、前記2部品歯科補綴物はフレーム及びオーバーレイを含み、前記フレームは、患者の口内に埋め込まれ、複数のインプラント位置で固定され、前記オーバーレイは、複数の歯及び関連組織構造の置換物を提供し、当該方法は、
第1のデジタルデータファイルを生成することであって、前記第1のデジタルデータファイルは、所定のインプラント位置の配置によって部分的に、及び突出したオーバーレイ係合プロファイルによって部分的に画定される前記フレームの形態を表すデジタルデータファイルであり、前記フレーム形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、ことと、
第2のデジタルデータファイルを生成することであって、前記第2のデジタルデータファイルは、オクルーザルテーブルによって部分的に定義される前記複数の歯の形態を表す歯のデジタルデータファイルであり、前記オクルーザルテーブルは、必要な歯の配置を定義する、ことと、
第3のデジタルデータファイルを生成することであって、前記第3のデジタルデータファイルは、前記複数の歯の前記形態によって部分的に、及び前記オーバーレイ係合プロファイルに相補的な形状のフレーム係合空洞プロファイルによって部分的に画定される前記関連組織構造の形態を表す組織のデジタルデータファイルであり、組織構造形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、ことと、
所定のインプラント位置の前記配置に実質的に影響を及ぼすことなく、前記第3のデジタルデータファイルが、前記フレーム係合空洞プロファイルの全体の周りの前記関連組織構造に材料の所定の最小厚さを画定するように、前記第1のデジタルデータファイル及び/又は前記第3のデジタルデータファイルを修正することと、
前記変更済みの1つ又は複数のデータファイルに従い、患者の口内に導入し、埋め込むための前記フレーム及び前記オーバーレイの作成で使用するための設計を得ることであって、前記オーバーレイは、前記オーバーレイ係合プロファイルとフレーム係合プロファイルとの相互係合によって、前記フレームに固定するためのものである、ことと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記修正することは、前記オクルーザルテーブルの前記配置に実質的に影響を及ぼすことなく、前記第2のデジタルデータファイルを修正することも伴う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2及び第3のデジタルデータファイルは、前記オーバーレイの完全な形態を表す単一の結合データファイルで提供される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに以下の工程、即ち、
フレームの形態を表すデジタルデータファイルである第1のデジタルデータファイルを生成する工程であって、前記フレームは、2部品歯科補綴物の第1の部分を形成し、前記フレームは患者の口内に埋め込まれ、前記フレームは、所定のインプラント位置の配置によって部分的に、及び突出したオーバーレイ係合プロファイルによって部分的に画定され、前記フレーム形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、工程と、
複数の歯の形態を表す歯のデジタルデータファイルである第2のデジタルデータファイルを生成する工程であって、前記複数の歯は、オーバーレイの一部として提供され、前記オーバーレイは、前記2部品歯科補綴物の第2の部分に含まれ、前記複数の歯は、オクルーザルテーブルによって部分的に定義され、前記オクルーザルテーブルは、必要な歯の配置を定義する、工程と、
前記複数の歯と関連する組織構造の形態を表す組織のデジタルデータファイルである第3のデジタルデータファイルを生成する工程であって、前記組織構造は、前記オーバーレイの一部として提供され、前記複数の歯の前記形態によって部分的に、及び前記オーバーレイ係合プロファイルに相補的な形状のフレーム係合空洞プロファイルによって部分的に画定され、前記組織構造形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、工程と、
所定のインプラント位置の前記配置に実質的に影響を及ぼすことなく、前記第3のデジタルデータファイルが、前記フレーム係合空洞プロファイルの全体の周りの関連組織構造に材料の所定の最小厚さを画定するように、前記第1のデジタルデータファイル及び/又は前記第3のデジタルデータファイルを修正し、それによって、前記2部品歯科補綴物を画定する最終デジタルデータセットを生成する工程と、
を実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記修正する工程は、前記オクルーザルテーブルの前記配置に実質的に影響を及ぼすことなく、前記第2のデジタルデータファイルを修正することも伴う、請求項15に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記第2及び第3のデジタルデータファイルを生成する前記工程は、前記オーバーレイの完全な形態を表す単一の結合データファイルを生成することへと組み合わされる、請求項15又は16に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の歯及び関連構造の置換に使用するための歯科補綴物に関する。本発明はまた、補綴的歯科修復(prosthetic dental restoration)での使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科医は、自身の患者に審美的且つ耐久性のある補綴物を提供できる方法を絶えず探している。歯科医はまた、この結果を得るための費用対効果が高く且つ時間効率的な手法を探している。
【0003】
従来のアクリル加工された歯科用ハイブリッド修復物では、切削又は鋳造された骨組/バーを用いており、個々の人工歯は、加工されたアクリルによって骨組に保持される。この歯科補綴物は、最初にバーを例えばチタンで製造し、このバーに、加工されたアクリルを用いて義歯を手で取り付け、全ての部品を結合することにより製作される。このプロセスには、高度な技能及び研究室内での多大な時間を要する。アクリル系の強度を超える患者の咬合力のせいで従来のハイブリッドの人工歯が破損及び破壊することは珍しくない。こうした破損により、バーに取り付けるための交換用の人工歯を用意する必要がある。この従来のプロセスには個々の歯のデジタル記録が存在しないため、これには特に時間がかかる場合があり、このことは、一般に、補綴物を作り直す必要があることを意味する。
【0004】
歯科補綴物の一例は、Cagenix,Inc.による国際公開第2017/156405号パンフレットに記載されている。この文書は、個々の歯を受け入れるための又はベニアリングオーバーレイ構造体を受け入れるための複数の支持柱を有するブリッジング構造体の使用を開示している。
【0005】
改良された歯科補綴物、又は当該技術分野で周知のものの代替となる歯科補綴物を提供することが望ましい。
【0006】
本明細書における任意の先行技術の参照は、この先行技術が任意の管轄区において共通一般知識の一部を成すこと、又はこの先行技術が、当業者によって、合理的に、理解されると期待されること、他の先行技術の一部分と関連するとみなされること、及び/若しくは他の先行技術の一部分と組み合わされることを認めるものでも示唆するものでもない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
CAD/CAMソフトウェアの向上によって、本発明者は、従来の歯科補綴物の様々な特性を向上させ、その構成要素の再製作性の改善を提供する、新たな2部品補綴物及びこのような補綴物の製作方法を開発した。
【0008】
一態様では、本発明は、患者の2本以上の歯の置換物を支持するために患者の口内に取り付けられるように構成されたインプラントフレームであって、インプラントフレームは外部表面を有し、外部表面は第1の係合プロファイルを画定する、インプラントフレームと、インプラントフレームに固定され、2本以上の歯を提供する又は2本以上の歯の装着を可能にするように適合されたオーバーレイであって、オーバーレイは、オーバーレイの相当な長さに沿って延びる内部空洞を有し、内部空洞は、第2の係合プロファイルを画定する、オーバーレイと、を含み、第2の係合プロファイルは、第1の係合プロファイルに相補的であり、それによって、内部空洞内におけるインプラントフレームの外部表面の大部分の取り付けを可能にする、歯科補綴物を提供する。
【0009】
有利には、第1の係合プロファイルの相補形である第2の係合プロファイルは、インプラントフレームとオーバーレイとの間に密接な嵌合を伴う歯科補綴物を提供する。この密接な嵌合は、より従来の手法で作られた歯科補綴物よりも長持ちし得る、耐久性の増した歯科補綴物の製作の助けになる。本発明者は、本発明による歯科補綴物は従来の歯科補綴物に比べて最大40%頑丈となり得ることを見出した。
【0010】
更に顕著な利点は、後処理に関するものであり、製作後のインプラントフレーム上へのオーバーレイの取り付けが大幅に簡単なプロセスになる。インプラントフレームがCADソフトウェアでデジタルに提供されるだけでなく、オーバーレイも同様に、CADソフトウェアでデジタルに保存され得るため、歯科補綴物の再製作性も向上する。本発明によれば、オーバーレイの内部空洞は、一例では、インプラントフレームの外部幾何学的形状を実質的に反転させることによって製作され得る(インプラントフレームのプロファイルに相補的なプロファイルを用いることにより空洞を製作する)ため、オーバーレイの正確な表現を実現することができる。インプラントフレーム及びオーバーレイ両方のデジタル記録を有することで、歯科補綴物の製造の容易さ及び経済性を著しく向上させることができる。例えば、CAD/CAMソフトウェアを使用することで、インプラントフレーム及びオーバーレイの両方を同時に製造することができる。
【0011】
更なる利点は、オーバーレイ又はインプラントフレームのいずれかが破損した場合の、交換の容易さによるものである。上述したように、個々の歯を用意し、その後、インプラント構造体に取り付けることが慣例となっている。したがって、歯が破損した場合、新たな歯又は歯科補綴物全体を製作する必要があり、個々の歯のデジタル記録がなければ、そうした補修が、大幅により多くの時間がかかり、不便で、費用のかかる行為になる。本発明は、オーバーレイをオーバーレイのデジタル記録から直接、容易に再製造することができる歯科補綴物を提供する。
【0012】
本発明の別の利点は、インプラントフレームが、多くの異なるオーバーレイ設計に適応できる汎用フレームとして事実上機能し得るので、オーバーレイの製造の柔軟性をより高めることが可能なことである。オーバーレイは全て、インプラントフレームの係合プロファイルを実質的に反転した係合プロファイルを有して設計され得る。これは、例えば、同一のインプラントフレーム上に審美的に異なるオーバーレイを提供できることを意味する。オーバーレイはまた、異なる材料、例えば、構造的により頑丈な材料から製造することによりアップグレードすることができる。これは、同じ又は変更済みのデジタル記録を使用して、前記新たな材料からオーバーレイを単に製造することにより実現され得る。
【0013】
オーバーレイは、歯及び関連組織(歯肉)構造の両方を提供し、それにより、2本以上の置換歯を提供してもよい。或いは、オーバーレイは、2本以上の歯の装着を可能にしてもよい。例えば、オーバーレイは、部分的に、組織構造を含んでもよく、組織構造に置換歯が装着される。
【0014】
一実施形態においては、オーバーレイの内部空洞は、成形された溝又は開放チャネルである。
【0015】
一実施形態においては、インプラントフレームは、インプラントフレームの前方部品内に先端咬合縁(leading occlusal edge)を含み、先端咬合縁は、口の前部に1本以上の歯を提供する又は1本以上の歯の装着を可能にするように構成されたオーバーレイの少なくとも一部分を支持するために提供されている。一実施形態においては、先端前方縁は、好ましくは最大約18度の前方の傾きを有する。
【0016】
有利には、傾斜した前方先端縁は、オーバーレイとインプラントフレームとの間の係合の向上を提供することができる。なぜなら、この配置は、2つの部品間の耐分離性(resistance to separation)の向上をもたらす(オーバーレイをフレームから簡単に持ち上げて離すことはできない)からである。オーバーレイの前方部品の形態は、オーバーレイの後方部品に荷重を受けたときに、発生する、オーバーレイをインプラントフレームから持ち上げて離す傾向のある力に耐えられることを意味する。歯科補綴物の試験条件の1つは、インプラントフレームとオーバーレイとの間に歯科用接着剤を適用する前であっても、所与の荷重においてそうした持ち上げが生じないことである。
【0017】
更に、そのような形状は、インプラントフレームの係合面とオーバーレイの係合面との間の接着のために利用可能な表面積を増大させる。
【0018】
そのような前方縁の傾斜は、オーバーレイの一部を形成する前歯の自然な前方の傾きとほぼ一致し得る。これにより、全体的な嵌合及び耐荷重能力並びに挙動が向上する。
【0019】
更なる利点は、オーバーレイを、オーバーレイがインプラントフレームと係合したときに舌側と唇側との間に材料のより均一な分布を提供するより均質な設計のものにすることができることである。
【0020】
一実施形態では、インプラントフレームは、弓状のバーの形態である。このような実施形態においては、インプラントフレームは、歯の全列(上又は下)の置換物を支持するために十分な長さのものであってもよい。
【0021】
一実施形態においては、インプラントフレームは、略T字プロファイルの断面形態を有し、T字プロファイルは、横断方向に延びる実質的水平部分と、実質的水平部分に垂直に延びる実質的垂直部分とを有する。
【0022】
一実施形態においては、実質的水平部分は、唇側又は頬側部分と舌側部分とを含み、舌側部分は、外部表面の一部を形成し、舌側部分は、インプラントフレームの長さに沿って咬合平面内で実質的に平坦である。換言すると、咬合平面と、実質的水平部分の舌側部分の載置縁(landing edge)とは平行である。咬合平面は、2本以上の歯の頂部に対応する点から生成される最適平面であり得る(即ち、当該技術分野で周知のようにオクルーザルテーブル(occlusal table)に従う)。有利には、この構成では、圧縮(例えば、咀嚼)荷重がより良好に分散される。なぜなら、実質的水平部分の舌側部分が、圧縮荷重に耐えるための主なプラットフォームを提供するからである。
【0023】
一実施形態においては、歯科補綴物は、実質的水平部分と実質的垂直部分との間に、及び/又は垂直部分の舌側面と垂直部分の唇側又は頬側面との間に1つ以上の接線遷移表面(tangential transition surfaces)を更に含む。有利には、このことは、インプラントフレームが、構成要素を製造するときに有利な、相対的に滑らかな(断面の)プロファイルを有することを可能にする。接線遷移表面はまた、周期的又は静的荷重下にある場合に早期破壊につながる可能性のある、インプラントフレームにおける応力集中を低減する。
【0024】
一実施形態においては、インプラントフレームプロファイルの実質的垂直部分は、概して、実質的水平部分よりも長さが長く、且つ好ましくは、厚さが薄いものである。
【0025】
一実施形態においては、歯科補綴物は、患者の顎の一部への固定を提供する又は容易にするための1つ以上の形成物を更に含む。例えば、補綴物は、患者の顎骨に固定的に取り付けられたインプラントねじ又はピンにデバイスを装着することを可能にするための凹部を含んでもよい。
【0026】
一実施形態においては、インプラントフレームのT字プロファイルは、オーバーレイの端部に届かずに終了する。換言すると、インプラントフレームの長さは、オーバーレイの端部の前で終端する。これにより、無支持の回転荷重が存在しないことを確実にし、それにより、オーバーレイとインプラントフレームとの間の係合における回転防止機能を提供する。
【0027】
更なる態様においては、本発明は、デジタルデータの使用によって、2部品歯科補綴物を設計する方法であって、2部品歯科補綴物はフレーム及びオーバーレイを含み、フレームは、患者の口内に埋め込まれ、複数のインプラント位置で固定され、オーバーレイは、複数の歯及び関連組織構造の置換物を提供し、当該方法は、第1のデジタルデータファイルを生成することであって、第1のデジタルデータファイルは、所定のインプラント位置の配置によって部分的に、及び突出したオーバーレイ係合プロファイルによって部分的に画定されるフレームの形態を表すデジタルデータファイルであり、フレーム形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、ことと、第2のデジタルデータファイルを生成することであって、第2のデジタルデータファイルは、オクルーザルテーブルによって部分的に定義される複数の歯の形態を表す歯のデジタルデータファイルであり、前記オクルーザルテーブルは、必要な歯の配置を定義する、ことと、第3のデジタルデータファイルを生成することであって、第3のデジタルデータファイルは、複数の歯の前記形態によって部分的に、及び前記オーバーレイ係合プロファイルに相補的な形状のフレーム係合空洞プロファイルによって部分的に画定される関連組織構造の形態を表す組織のデジタルデータファイルであり、組織構造形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、ことと、所定のインプラント位置の前記配置に実質的に影響を及ぼすことなく、第3のデジタルデータファイルが、前記フレーム係合空洞プロファイルの全体の周りの前記関連組織構造に材料の所定の最小厚さを画定するように、前記第1のデジタルデータファイル及び/又は前記第3のデジタルデータファイルを修正することと、前記変更済みの1つ又は複数のデータファイルに従い、患者の口内に導入し、埋め込むための前記フレーム及び前記オーバーレイの作成で使用するための設計を得ることであって、オーバーレイは、前記オーバーレイ係合プロファイルと前記フレーム係合プロファイルとの相互係合によって、前記フレームに固定するためのものである、ことと、を含む、方法を提供する。
【0028】
有利には、2部品補綴物の両部品をデジタルに設計する能力を有することで、何らかの損傷が生じた場合又は変更が必要な場合に再製作することができる、カスタマイズされた、患者特有の歯科補綴物の製作を可能にする。当該方法はまた、2部品補綴物の両部品の同時設計及び最適化を可能にする。
【0029】
前記修正することは、前記オクルーザルテーブルの配置に実質的に影響を及ぼすことなく、前記第2のデジタルデータファイルを修正することも伴ってよい。
【0030】
前記第2及び第3のデジタルデータファイルは、前記オーバーレイの完全な形態を表す単一の結合データファイルで提供されてもよい。
【0031】
更に別の態様においては、本発明は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに以下の工程、即ち、フレームの形態を表すデジタルデータファイルである第1のデジタルデータファイルを生成する工程であって、フレームは、2部品歯科補綴物の第1の部分を形成し、フレームは患者の口内に埋め込まれ、フレームは、所定のインプラント位置の配置によって部分的に、及び突出したオーバーレイ係合プロファイルによって部分的に画定され、フレーム形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、工程と、複数の歯の形態を表す歯のデジタルデータファイルである第2のデジタルデータファイルを生成する工程であって、複数の歯は、オーバーレイの一部として提供され、オーバーレイは、前記2部品歯科補綴物の第2の部分に含まれ、複数の歯は、オクルーザルテーブルによって部分的に定義され、オクルーザルテーブルは、必要な歯の配置を定義する、工程と、前記複数の歯と関連する組織構造の形態を表す組織のデジタルデータファイルである第3のデジタルデータファイルを生成する工程であって、前記組織構造は、前記オーバーレイの一部として提供され、複数の歯の前記形態によって部分的に、及び前記オーバーレイ係合プロファイルに相補的な形状のフレーム係合空洞プロファイルによって部分的に画定され、組織構造形態は、少なくとも部分的に、1つ以上の保存された形態から選択される、工程と、所定のインプラント位置の前記配置に実質的に影響を及ぼすことなく、第3のデジタルデータファイルが、前記フレーム係合空洞プロファイルの全体の周りの前記関連組織構造に材料の所定の最小厚さを画定するように、前記第1のデジタルデータファイル及び/又は前記第3のデジタルデータファイルを修正し、それによって、2部品歯科補綴物を画定する最終デジタルデータセットを生成する工程と、を実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体を提供する。
【0032】
前記修正する工程は、前記オクルーザルテーブルの配置に実質的に影響を及ぼすことなく、前記第2のデジタルデータファイルを修正することも伴ってよい。
【0033】
第2及び第3のデジタルデータファイルを生成する前記工程は、オーバーレイの完全な形態を表す単一の結合データファイルを生成することへと組み合わされてもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、文脈で別段の記載がある場合を除き、「含む(comprise)」という用語、並びに「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含まれる(comprised)」などのこの用語の変化形は、更なる追加物、構成要素、整数、又は工程を除外することを意図していない。
【0035】
本発明の更なる態様及び前段落で記載した態様の更なる実施形態は、例として、及び添付の図面を参照して記載される以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態による歯科補綴物の後部斜視図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態によるインプラントフレームの後区の断面図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態によるインプラントフレームの前区の断面図を示す。
【
図4】インプラントフレームにオーバーレイを取り付ける前の、本発明の一実施形態による、オーバーレイを備える
図2の断面図を示す。
【
図5】オーバーレイがインプラントフレームに取り付けられている、
図4の断面図を示す。
【
図6】本発明の一実施形態によるインプラントフレームの製作方法を示す。
【
図7】本発明の一実施形態によるオーバーレイの製作方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、2部品歯科補綴物10を示す。2部品歯科補綴物10は、患者の口内に装着されるように構成されたインプラントフレーム12と、インプラントフレーム12に固定されたオーバーレイ30とを有する。横断方向への言及は、解剖学的肢位(即ち、患者は立位)において一般に理解される水平面に平行な方向への言及と解釈されるべきである。垂直方向への言及は、解剖学的肢位において一般に理解される垂直方向を指す。理解を容易にするために、歯科補綴物10は、患者の口内の下歯列を置換することを目的としているが、本発明は、患者の上顎及び上歯の修復にも同様に適用できることを理解されたい。
【0038】
インプラントフレーム12は、略横断方向に延び、(患者の口の下弓に設置された状態にあるときに)断面で見ると逆T字形の一般形態を有する弓状のバーの形態である。インプラントフレーム12は、いくつかのインプラント突起部又は他の適切な形成物14を介して患者の口内に装着される。インプラント突起部又は他の適切な形成物14は、インプラント(図示せず)に係合し、インプラント(図示せず)は、略垂直方向に下向きに延び、患者の下顎骨に固定されている。インプラントとインプラント形成物14との間の係合を補助するためにねじを使用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、インプラント形成物14は、患者の顎にインプラントフレーム12を直接固定的に装着することを可能にするピンの形態をとる。患者の口内における確実な装着を確保するためにインプラントフレーム12上に設けられるインプラント形成物14の数、形状、寸法、配置、及び向きに多くの因子が影響を及ぼす可能性がある。これには、とりわけ、インプラントフレームの位置決め、患者の身体的特性、インプラントフレームが製作される材料、及びインプラントフレームにかかる予想荷重を含み得る。
【0039】
ここで、インプラントフレーム12の後部の断面図を示す
図2を参照する。逆T字形の断面は、水平部分16及び垂直部分18を含む。理解されるように、用語「水平」及び「垂直」は、おおよそとしてのみ、即ち、それらの大まかな方向における向きを指すために用いられる。理解されるように、この文脈における水平方向は、水平面内における方向と同義である。垂直部分18は、水平部分16から垂直方向に延びる。
図1から分かるように、インプラントフレームのT字プロファイルは、オーバーレイ30の端部に届かずに終了する。これは、インプラントフレーム12と無支持のオーバーレイ30との間に回転荷重が存在しないことを意味し、これにより、回転防止機能を提供する。
【0040】
水平部分16は、舌側部分22及び頬側部分24を含む。
図2に見られるように、舌側部分22は、水平部分16の、頬側部分24よりも大きな部分である。舌側部分22は、インプラントフレーム12の全長に沿って概ね水平面内にある舌側棚状部25を含む。以下に記載されるように、舌側棚状部25は、オーバーレイ30がインプラントフレーム12上に取り付けられる際のオーバーレイ30用の載置棚状部(landing ledge)を提供し、舌側棚状部25は、取り付け後のオーバーレイ30による主荷重を支持するように構成されている。頬側部分24は、オーバーレイ30がインプラントフレーム12上に取り付けられる際のオーバーレイ30用の更なる載置棚状部を提供する頬側棚状部29を含む。垂直部分18は、舌側面26と、頬側面27と、上部面28とを含む。舌側棚状部25、舌側面26、上部面28、頬側面27、及び頬側棚状部29は、製造のために便利な形状をインプラントフレーム12に与える接線遷移表面を含む。例えば、インプラントフレーム12を機械加工(例えば、切削)する場合、接線表面により、あまり複雑でないツール及びより少ない数のツールパス(tool passes)の使用を可能にすることができる。この製造形態は、本明細書に記載されるような歯科用ハイブリッド設計においては一般的ではない。更に、接線表面は、周期的又は静的荷重下にある場合に早期破壊につながる可能性のある、インプラントフレーム12における応力集中を低減する。試験では、半径約4mmの接線表面が特に有益であることが判明した。
【0041】
舌側棚状部25と、舌側面26と、上部面28と、頬側面27と、頬側棚状部29とは、歯科補綴物10の第1の係合プロファイルを画定するインプラントフレーム12の上外部表面を共に形成する。しかしながら、当業者であれば、本発明の代替的な形態では、これら部品のいくつかは、インプラントフレーム12の上外部表面内に含まれなくてもよいと理解するであろう。例えば、頬側棚状部29は、上外部表面によって画定される第1の係合プロファイルの一部を必ずしも形成する必要はない。
【0042】
ここで、インプラントフレーム12の前区の断面図を提供する
図3を参照する。
図2との比較から明らかなように、インプラントフレーム12の前区は、インプラントフレーム12の前方領域内に先端咬合縁を提供する。理解されるように、インプラントフレーム12は、側方側(後方)位置から近心側(前方)位置に移動する、次第に傾斜が増大する(progressively increasing)前方傾斜垂直部分18を有する。この垂直部分18の前方傾斜は、オーバーレイ30が着座するための支持を提供する。前方の傾きの程度は、患者特有の因子又は製造関連の因子に応じて選択され得る。本発明者は、最適な前方の傾きは、最大約30°、好ましくは最大約18°の範囲であり得ることを見出した。以下に更に記載するように、インプラントフレーム12とオーバーレイ30は、オーバーレイ30をインプラントフレーム12上で斜めに摺動させることにより互いに組み合わせることができ、摺動係合を可能にするために厳密な形状が選択される。
【0043】
インプラントフレーム12の前方傾斜にもかかわらず、
図3からは、前区及び後区の両方において、舌側棚状部25が水平面内で概ね平坦なままであることも理解される。具体的には、舌側棚状部25は、インプラントフレームの長さに沿って咬合平面内で実質的に平坦である。換言すると、舌側棚状部25は、咬合平面(咬合平面は、歯の頂部に対応する点から生成される最適平面である)に平行である。これにより、インプラントフレーム12の全長に沿って均一な載置エリアを提供し、圧縮(例えば、咀嚼)荷重が十分に分散されることを確実にする。この理由は、舌側棚状部25が、荷重の方向に垂直な平面内に、そうした荷重に耐えるための実質的なプラットフォームを提供するからである。口の前方部に関する
図3では、参照番号27は唇側面を指し、参照番号29は唇側棚状部を指すことに留意されたい。
【0044】
図4は、互いに嵌合させる準備が整ったインプラントフレーム12の後区とオーバーレイ30を示す。オーバーレイ30は、相対的に深い溝又はチャネルの形態の内部空洞32を含む。内部空洞32は、オーバーレイ30の下部分にある、頬側当接リップ38と舌側当接面39との間の開口部34によって画定される。空洞32の内部表面は、舌側相手面35と、上部相手面36と、頬側相手面37とによって画定される。それにより、内部表面は、頬側当接リップ38及び舌側当接面39とともに、オーバーレイ30がインプラントフレーム12に取り付けられたときに第1の係合プロファイルと係合するように構成される第2の係合プロファイルを画定する。第2の係合プロファイルは、インプラントフレーム12の第1の係合プロファイルを実質的に反転させたものとして形作られる。したがって、オーバーレイ30がインプラントフレーム12に取り付けられると、舌側当接面39、舌側相手面35、上部相手面36、頬側相手面37、及び頬側当接リップ38は、それぞれ、舌側棚状部25、舌側面26、上部面28、頬側面27、及び頬側棚状部29に相補的に当接する。
【0045】
オーバーレイ30は、2本以上の歯を提供する又はそれらの装着を可能にするように適合されている。即ち、オーバーレイ30は、患者の置換歯(及び関連する歯肉)を提供する上部構造体の形態であり得る、又は代替的に、上部構造体に複数の歯を装着するための適切な構造体を提供し得る。示される実施形態は、オーバーレイが置換歯のみならず軟組織(歯肉)補綴部分も提供する前述の実施形態のものである。
【0046】
ここで、インプラントフレーム12と係合させたオーバーレイ30を示す
図5を参照する。これは、垂直部分18が開口部34を通過してオーバーレイ30の空洞32に入るように、オーバーレイ30をインプラントフレーム12の垂直部分18の上に装着することによりもたらされる。オーバーレイ30は、適切な歯科用セメント又は接着剤によってインプラントフレーム12にしっかりと締結される。セメント又は接着剤は、従来の歯科補綴物で用いられるものに比べて強力なものであり得る。従来の歯科補綴物では、インプラントバーに歯を保持するためにより弱いワックスを使用する。インプラントフレーム12とオーバーレイ30との間に歯科用セメントを収容するために、セメント用スペース、即ち、小さなセメント用オフセット21が設けられる。図示される実施形態に示されるように、セメント用オフセットは、上部面28と上部相手面36との間、舌側面26と舌側相手面35との間、及び頬側面27と頬側相手面37との間に設けられる。
図5に見られるように、セメント用スペースは、舌側棚状部25と舌側当接面39との間、及び頬側棚状部29と頬側当接リップ38との間には設けられない。なぜなら、これら表面の間では荷重に直接耐えることが必要だからである。これらのエリアにセメントを適用することはできるが、これらの載置平面にセメント用スペースがないことが要求されるということは、セメントがほとんど排出されることを意味する。
【0047】
図5に見られるように、第2の係合プロファイルは、第1の係合プロファイルを実質的に反転させたものとして形作られる。これは、特に、本明細書に記載される歯科補綴物の製造において多くの利点を有する。上述したように、本発明によってもたらされる利点の1つは、インプラントフレーム12及びオーバーレイ30の製造を同時に可能にする反転した又は相補的な係合プロファイルの使用である。
【0048】
以下に更に記載するように、本発明は、カスタマイズされたインプラントフレーム12及びオーバーレイ30の使用を伴う。これらは両方とも、歯科補綴物10の設計及び作成の一部として目的を持って製作されたものである。これはまた、歯科補綴物10の構成要素のうち破損したもののより簡単な再製作を可能にする。従来の方法とは異なり、歯科補綴物10の構成要素は、デジタルで記録される。即ち、1つ以上のファイルで維持又は保存され、歯科補綴物10の正確な表現を提供する。ファイルは、好ましくは、stlフォーマットなどのCADファイルである。当業者には理解されるように、セメント用スペースは、インプラントフレーム12及びオーバーレイ30の係合プロファイルを設計するときに指定することができる。これにより、設計の全体にわたり数々の異なるセメント厚さスペースを使用者に提供する。例えば、提供されるセメント用スペースの量は、歯科補綴物10の長さに沿って変化させることができる。理想的には、提供されるセメント用スペースは、組織表面に対して露出する際に、インプラントフレーム12とオーバーレイ30との間のセメントの継ぎ目が可能な限り最小であることを確実とする。
【0049】
図6は、インプラントフレーム12の製作方法40の一実施形態を説明する。方法の工程は、様々な設計の制約を考慮して設計を最適化するために、大半が反復される。制約のいくつかは患者特有の制約であり、他は、歯科補綴物の構成要素に関する制約である。以下、インプラントフレーム及びオーバーレイを製作するための工程を別々に説明するが、両構成要素の製作方法は、同時に行われるプロセスであることができ、インプラントフレームの製作とオーバーレイの製作との間の修正工程は歯科補綴物の最終形態に到達する前に行われることは理解されるであろう。検査工程及び最適化工程は、2部品歯科補綴物の両構成要素の設計と併せて行うことができる。以下に記載する方法は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読媒体上に記憶することができる。
【0050】
工程42において、目的の歯及び組織構造のデジタルファイルが適切に生成され、インプラントフレーム12を含むファイルも生成される。インプラントフレームのデジタルファイルは、1つ以上の保存されたインプラントフレームファイルから選択され、所定のインプラント位置によって部分的に定義された一般的なインプラントフレームファイルであってもよい。組織構造を含むデジタルファイルに関しては、これは、患者から受け取ったインプラントの印象をスキャンすること、受け取ったインプラントのモデルをスキャンすること、又は患者の口内を直接スキャンすることによって取得されてもよい。スキャンによって提供されるデータは、患者の口内に以前に挿入されたインプラントの位置及び/又は向きに関連する情報を含み、インプラントは、後で設計されるインプラントフレームと、対応するインプラント形成物を介して係合するように構成される。
【0051】
インプラントフレーム12は、突出したオーバーレイ係合プロファイルを画定する。歯のデジタルファイルは、複数の置換歯の形態を表し、必要な歯の配置を定義するオクルーザルテーブルによって部分的に定義される。このファイルの修正が可能なことは理解されるであろうが、オクルーザルテーブルの配置に実質的に影響を及ぼすべきではない。この実施形態における組織のデジタルファイルは、1つ以上の保存された組織構造から選択され、歯に付随する組織構造の形態を表す。組織のデジタルファイルは、複数の歯の形態によって部分的に、及びオーバーレイ係合プロファイルに相補的な形状のものであるフレーム係合空洞プロファイルによって部分的に定義される。組織のデジタルファイルと歯のデジタルファイルは、オーバーレイ30の完全な形態を表す結合ファイルであってもよい。
【0052】
工程44において、歯及び組織構造内に配置するためのインプラント形成物14のサイジングが行われる。インプラント形成物は、インプラントに装着されるように設計される。インプラントは、患者の口内に挿入され、例えば外科用ねじによって顎骨に取り付けられる。
【0053】
工程46において、オクルーザルテーブルから、歯の最上縁上の点をプロットし、最適平面を作成することにより、咬合平面が形成される。この平面上に、歯を表す点のセットがプロットされる。点の1つのセットは組織構造の前方領域にあり、ある点のセットは前方領域の両側にある。このようにして、オクルーザルテーブル上の各歯の中央を通る弧に近似するガイド曲線が生成される。
【0054】
工程48において、インプラントフレームの残りの幾何学的態様がデジタルレンダリングされ、押出インプラントフレームが生成される。
【0055】
工程50において、インプラントフレームは検査され、最適化される。これにより、設計に、例えば、バーが歯の範囲を超えて延びる、インプラント形成物がインプラントバーの範囲外に配置される等の欠陥がないことを確実にする。検査及び最適化が完了すると、ここで、インプラントフレーム12のデジタル記録が完了する。
【0056】
図7は、オーバーレイ30の製作方法60の一実施形態を説明する。工程62において、インプラントフレーム12は、別のデジタルファイルに入れられ、セメント付け領域を示すために、オフセット表面がインプラントフレームの垂直部分18の上に配置される。
【0057】
工程64において、インプラントフレーム12の外縁の3Dスケッチが作成され、それにより、オーバーレイ係合プロファイルを画定する。
【0058】
工程66において、組織構造を含むデジタルファイルが提供され、組織構造の下面上で、外縁を複製する点が選択される。これにより、インプラントフレーム12上のオーバーレイ係合プロファイルに相補的な形状のフレーム係合空洞プロファイルの形成を可能にする。
【0059】
工程68において、組織構造とインプラントフレーム12とが組み合わされ、嵌合目的で検査される。
【0060】
工程70において、インプラント形成物14の位置の配置に実質的に影響を及ぼすことなく、フレーム係合空洞が組織構造内に形成され、フレーム係合空洞プロファイルの全体の周りの組織構造に材料の所定の最小厚さが提供されているかどうかを決定する。
【0061】
工程72において、組織構造は、必要に応じて、検査され、最適化される。検査及び最適化が完了すると、ここで、オーバーレイ30のデジタル記録が完了する。
【0062】
インプラントフレーム12及びオーバーレイ30両方のデジタル記録を有することで、歯科補綴物10のこれら2つの構成要素の製造を同時にプロデュースすることを可能にする。構成要素のうちの1つ(多くの場合、オーバーレイ30)が破損した場合、構成要素は、その各々のデジタル記録から簡便に再製作することができる。当業者には理解されるように、いずれの構成要素も容易にアップグレードすることができる。例えば、所与のインプラントフレーム12を患者の口内に残して、より耐久性のある材料で作られたオーバーレイ30を患者に提供してもよい。
【0063】
インプラントフレーム12及びオーバーレイ30の適切なデジタル記録が生成されることにより、CAMソフトウェアを使用して、歯科補綴物の構成要素の機械加工操作をプログラムすることができる。歯科補綴物10を製造するための適切な手段としては、CNC(computerized numerical control:コンピュータ数値制御)機械加工(例えば、5軸機械)、削り出し切削法、付加レーザー焼結法、及びレーザー溶融法が挙げられる。インプラントフレーム12及びオーバーレイ30の製造に使用される適切な材料としては、チタン、ジルコニア、コバルトクロム、ポリエーテルエーテルケトン(peek)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(アクリル)、アセチル系プラスチック、ナノセラミックス、ガラス繊維、及び適切な複合材料が挙げられ得る。
【0064】
本明細書に開示され、定義された発明は、本文若しくは図面で言及した又は本文若しくは図面から明らかな個々の特徴のうちの2つ以上の代替的な全ての組み合わせに適用されることは理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全てが、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【国際調査報告】