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特表2022-504842TEVプロテアーゼバリアント、その融合タンパク質、調製方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】TEVプロテアーゼバリアント、その融合タンパク質、調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/57 20060101AFI20220105BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 9/50 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220105BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220105BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C12N15/57 ZNA
C12N15/40
C12N9/50
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021520311
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(85)【翻訳文提出日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2019071434
(87)【国際公開番号】W WO2020073554
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】201811177281.2
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811540443.4
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521148658
【氏名又は名称】上饒市康可得生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGRAO CONCORD PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1802, Dengfeng Building, Management Committee of Shangrao Economic Development Zone, Shangrao, Jiangxi 334000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】劉 日魁
(72)【発明者】
【氏名】鄒 暁龍
(72)【発明者】
【氏名】万 江華
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050CC05
4B050DD01
4B050FF03C
4B050KK11
4B050LL01
4B050LL03
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CD12
4B064CE03
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、TEVプロテアーゼバリアント、その融合タンパク質、調製方法および使用を提供する。また、本発明は、スクリーニングを通じて得られた独特の特性を有するTEVプロテアーゼバリアントおよび融合タンパク質を提供する。前記のTEVプロテアーゼバリアントは、宿主での発現において低い酵素切断活性を有し、好ましくは配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有し、前記のTEVプロテアーゼバリアントの制限部位は、EXXYXQG/S/Hから選択され、ここで、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくは、前記の制限部位が配列番号7および8から選択される。本発明のTEVプロテアーゼバリアントとポリペプチドとの融合発現は、現在の組換えポリペプチド生産プロセスに存在する問題を解決し、ポリペプチドの迅速かつ効率的な調製に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TEVプロテアーゼバリアントは、宿主での発現において低い酵素切断活性を有し、好ましくは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有し、
前記のTEVプロテアーゼバリアントの制限部位は、EXXYXQG/S/Hから選択され、ここで、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくは、前記の制限部位が配列番号7および8から選択される、
TEVプロテアーゼバリアント。
【請求項2】
前記のTEVプロテアーゼバリアントが、中/高程度の変性条件下で、好ましくは3M~5Mの尿素、好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の生体外環境下で、S219Vバリアントの生体外酵素切断活性を保持する、
請求項1に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項3】
前記の酵素切断活性が、前記のTEVプロテアーゼバリアントおよびその制限部位を含む融合タンパク質に対して測定されるものであり、
好ましくは、前記の制限部位が、EXXYXQG/S/Hであり、ここで、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくは前記の制限部位が配列番号7および8から選択される、
請求項2に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項4】
前記のTEVプロテアーゼバリアントが、以下の変異からなる群から選択される1つまたは複数の変異を含む、請求項1~3のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント。
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)またはヒスチジン(H)への変異、
配列番号1に示される配列の第138位に対応する位置でのイソロイシン(I)からリジン(K)への変異、
配列番号1に示される配列の第28位に対応する位置でのヒスチジン(H)からロイシン(L)への変異、
配列番号1に示される配列の第196位に対応する位置でのグルタミン酸(Q)からヒスチジン(H)への変異、
配列番号1に示される配列の第135位に対応する位置でのセリン(S)からグリシン(G)への変異、および
配列番号1に示される配列の第187位に対応する位置でのメチオニン(M)からイソロイシン(I)への変異。
【請求項5】
前記のTEVプロテアーゼバリアントが、以下の変異からなる群から選択される変異の組合せを含む、請求項1~4のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント。
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)への変異、および配列番号1に示される配列の第138位に対応する位置でのイソロイシン(I)からリジン(K)への変異;
配列番号1に示される配列の第28位に対応する位置でのヒスチジン(H)からロイシン(L)への変異、配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)への変異、および配列番号1に示される配列の第196位に対応する位置でのグルタミン酸(Q)からヒスチジン(H)への変異;ならびに
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からヒスチジン(H)への変異、配列番号1に示される配列の第135位に対応する位置でのセリン(S)からグリシン(G)への変異、および配列番号1に示される配列の第187位に対応する位置でのメチオニン(M)からイソロイシン(I)への変異。
【請求項6】
前記のTEVプロテアーゼバリアントが、配列番号1に示される配列の第219位に対応する位置でのセリン(S)からバリン(V)への変異を含む、
請求項1~5のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項7】
前記のTEVプロテアーゼバリアントが、宿主での発現において低い酵素切断活性を有し、好ましくは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有すること、および/または前記のTEVプロテアーゼバリアントが、中/高程度の変性条件下で、好ましくは3M~5Mの尿素、より好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の生体外環境下で、高い酵素切断活性を有し、好ましくはS219Vバリアントの生体外酵素切断活性を保持することという条件下で、
前記のTEVプロテアーゼバリアントが、前記の変異以外の1つまたは複数の変異をさらにを含む、
請求項1~6のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項8】
前記のプロテアーゼバリアントが、配列番号4、5または6に示されるアミノ酸配列またはそれらの相同体を含む、
請求項1~7のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項9】
前記の相同体が、配列番号4、5または6と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項8に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項10】
前記の相同体が、配列番号4、5または6と比較して、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、最も好ましくは少なくとも4個のアミノ酸部位の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む、
請求項8または9に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項11】
前記の相同体が、宿主での発現において低い酵素切断活性を有し、好ましくは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有し、および/または前記のTEVプロテアーゼバリアントが、中/高程度の変性条件下で、好ましくは3M~5Mの尿素、より好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の生体外環境下で、S219Vバリアントの生体外酵素切断活性を保持する、
請求項8~10のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項12】
前記の相同体が、タバコエッチウイルスに由来する、
請求項8~11のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項13】
請求項8~12のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントを含む融合タンパク質。
【請求項14】
前記の融合タンパク質が、TEVp-sTEV-Y1構造を含み、
ここで、Y1が、標的ポリペプチドであり;
TEVpが、請求項8~12のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントであり;
sTEVが、TEVプロテアーゼの制限部位であり、EXXYXQG/Sであり、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくは、前記の制限部位が配列番号7および8から選択される、
請求項13に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
前記の標的ポリペプチドが、ACTH、GLP-1/GLP-2、IFN-α、IFN-γ、Histatin、CCL5、SDF-1α、IGF-1、Leptin、BNP、Ex-4からなる群から選択され、好ましくはACTHであり、好ましくはヒトACTHであり、より好ましくは配列番号2に示されるアミノ酸配列のヒトACTHである、
請求項14に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
TEVpがsTEVを認識して切断することができるという条件下で、TEVpおよびsTEVが、直接接続され、または、1つまたは複数のアミノ酸残基を介して接続される、
請求項14または15に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
TEVpがsTEVを認識して切断することができるという条件下で、sTEVおよびY1が、直接接続され、または、1つまたは複数のアミノ酸残基を介して接続され、好ましくはsTEVおよびY1が直接接続される、
請求項14~16のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項18】
タグをさらに含む、
請求項14~17のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項19】
前記のタグが精製タグである、
請求項18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
前記のタグが、Hisタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ、NusAタグ、SUMOタグ、Aviタグ、T7タグ、Sタグ、Flagタグ、HAタグ、c-mycタグ、またはStrep IIタグからなる群から選択される、
請求項18または19に記載の融合タンパク質。
【請求項21】
前記のタグが、融合タンパク質のN末端にあるか、またはTEVpのN末端にない、
請求項18~20のいずれかに記載の融合タンパク質。
【請求項22】
請求項1~12のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント、または請求項13~21のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列であって、
好ましくは配列番号14~16から選択される、
ポリヌクレオチド配列。
【請求項23】
請求項22に記載のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド構築物。
【請求項24】
請求項22に記載のポリヌクレオチド配列、または請求項23に記載のポリヌクレオチド構築物を含む発現ベクター。
【請求項25】
前記の発現ベクターが、真核生物発現ベクター、または原核生物発現ベクターである、
請求項24に記載の発現ベクター。
【請求項26】
前記の発現ベクターが、真核生物発現ベクターであり、
好ましくは、pRS314、pYES2、バキュロウイルス-S2発現系およびpcDNA3.1からなる群から選択される、
請求項25に記載の発現ベクター。
【請求項27】
前記の発現ベクターが、原核生物発現ベクターであり、
好ましくは、pET系発現ベクター、pQE系発現ベクターおよびpBAD系発現ベクターからなる群から選択される、
請求項25に記載の発現ベクター。
【請求項28】
請求項22に記載のポリヌクレオチド配列、または請求項23に記載のポリヌクレオチド構築物、または請求項24~27のいずれかに記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項29】
前記の細胞が、真核細胞、または原核細胞である、
請求項28に記載の細胞。
【請求項30】
前記の細胞が、真核細胞であり、
前記の真核細胞が、サッカロマイセス・セレビシエ、昆虫細胞発現系からなる群から選択される、
請求項29に記載の細胞。
【請求項31】
前記の細胞が、原核細胞であり、
前記の原核細胞が、BL21、BL21(DE3)、BL21(DE3) pLysS、Rosetta2、Rosetta2 pLysS、Tuner(DE3)、またはOrigami 2からなる群から選択される、
請求項29に記載の細胞。
【請求項32】
請求項1~12のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントを調製する方法であって、
(1)請求項28~31のいずれかに記載の細胞の培養に適した条件下で、培地中で前記の細胞を培養すること;
(2)培地を回収するか、または細胞を溶解して、ライセートを回収すること;
(3)精製して前記のTEVプロテアーゼバリアントを得ることを含む、
TEVプロテアーゼバリアントの調製方法。
【請求項33】
標的ポリペプチドの調製における、請求項1~12のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントの使用であって、
ここで、前記のTEVプロテアーゼバリアントおよび前記の標的ポリペプチドが、融合タンパク質として発現され、好ましくは、融合タンパク質が請求項14~21のいずれかに記載の融合タンパク質である、
TEVプロテアーゼバリアントの使用。
【請求項34】
標的ポリペプチドを調製する方法であって、
(1)請求項13~21のいずれかに記載の融合タンパク質を適当な条件下で培地中で培養すること;
(2)融合タンパク質の封入体を得ること;
(3)約8Mの尿素または約6Mのグアニジン塩酸塩のような高変性条件下で、封入体を溶解すること;
(4)中/高程度変性条件下で、好ましくは3M~5M尿素、好ましくは3.5M~4.5M尿素、より好ましくは4M尿素または1M~2Mグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mグアニジン塩酸塩の条件下で、一定の温度、例えば20~40℃、好ましくは25℃で、例えば10~24時間、例えば12時間インキュベートすること;
(5)緩衝液、例えばTris-HCl、好ましくは50mMのTris-HClで希釈した後、TEVプロテアーゼを沈殿させること;
(6)TEVプロテアーゼ沈殿物を除去し、好ましくは遠心分離で除去し、前記の標的ポリペプチドを得ること;
(7)前記の標的ポリペプチドを精製することを含む、
標的ポリペプチドの調製方法。
【請求項35】
前記の精製が、塩析、限外濾過、有機溶媒沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーカラム、逆相高速液体クロマトグラフィーからなる群から選択される技術によって実施される、
請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2018年10月10日に出願された、発明の名称が「TEVプロテアーゼバリアント、その融合タンパク質、調製方法および使用」である、出願番号がCN201811177281.2である中国特許出願と、2018年12月17日に出願された、発明の名称が「TEVプロテアーゼバリアント、その融合タンパク質、調製方法および使用」である、出願番号がCN201811540443.4である中国特許出願との優先権を主張するものであり、それらの全体を参照により本出願の一部をなすものとして引用する。
【0002】
<技術分野>
本発明は、タンパク質分野に関し、具体的に、TEVプロテアーゼに関する。
【背景技術】
【0003】
TEVプロテアーゼ(TEV Protease)は、タバコエッチウイルス(TEV)Nlaプロテアーゼに由来する27kDaの活性ドメインであり、そのアミノ酸配列は配列番号1に示される。TEVプロテアーゼは、強い部位特異性を持ち、EXXYXQ(G/S)7アミノ酸配列を認識できる。最も一般的な配列は、グルタミンGln(P1)とグリシンGly(P1’)との間(即ち、P1とP1’との間)に制限部位を有するGlu-Asn-Leu-Tyr-Phe-Gln-Gly(またはENLYFQG)である。TEVプロテアーゼの配列特異性は、トロンビン、第Xa因子、およびエンテロキナーゼなどのプロテアーゼの配列特異性よりもはるかに高い。
【0004】
TEVプロテアーゼは、広い範囲のpH(pH4~8.5)および温度(4~34℃)に耐えられ、タンパク質の溶解性または安定性を増加させる一般的な添加剤(エチレングリコール、EGTA、洗剤および還元剤)に対してある程度の耐性がある。TEVプロテアーゼがエチレングリコール、EGTAおよび一部の洗剤(Triton X-100、Tweeen-20、およびNP-40)に対して感受性がないことを示す研究がある。1%のCHAPSの存在下では、活性が低下し、低濃度の変性剤(2Mの尿素、1%のSDS)および還元剤(0.7Mのβ-メルカプトエタノール)の存在下でも、ほとんどの活性を維持することができる(C.Sunら、2012)。
【0005】
野生型TEV酵素は、発現や溶解性などに一定の欠陥があるため、遺伝子工学技術によって改良された変異体に関する報告が多数ある。例えば、天然のTEVプロテアーゼでは、自己切断が起こる。発現および精製のプロセスにおいて、TEVプロテアーゼは、他のTEVプロテアーゼとの衝突によって、コンフォメーション変化を起こし続け、特定の部位で自己切断することで、完全なプロテアーゼは切断され、その活性が大幅に低下する。Lucastらによって発見されたS219N変異体は、安定性が大幅に改善されたが、溶解度は高くなく、タンパク質の約95%が封入体として沈殿物に存在する。Kapustらは、遺伝子工学を用いて天然のTEVプロテアーゼの遺伝子配列に点突然変異を行ったことで、安定性が高く、酵素活性がわずかに向上した変異体S219Vを得た。その安定性はS219Nの約100倍高かった。さらに、TEVプロテアーゼの発現収率は高くなく、溶解度も非常に低い。TEVプロテアーゼの約5%のみは、細胞破砕液の上清中に存在し、収量は12.5mg/Lであった。Van den Bergらは、DNAシャッフリング(DNA shuffling)、エラープローンPCR(error-prone PCR)により、収量を54mg/Lまで増加させることができる変異体TEVSHを発見した。その溶解度はS219Nよりもはるかに高いが、酵素活性の変化はほとんど見られなかった。Cabrita,L.D.らは、PoPMuSiCソフトウェアによる設計を利用してTEVプロテアーゼのシングルポイント変異体(single-point mutant)の安定性を解析し、野生型TEVプロテアーゼと比べ、溶解度と酵素活性がともに改善された5つの変異体をスクリーニングし、同時に、シングルポイント変異体と比べ、溶解度と酵素活性が大幅に改善された二重変異体(double mutant)を得た。TEVプロテアーゼ自体の欠点を考慮して、研究者は改良された変異体を検討している。例えば、TEV Ser135Gly変異体は、WTよりも安定であり、より高い温度(>40℃)に耐えることができる。また、TEVプロテアーゼの溶解度を大幅に増加させることができる変異(T17S、N68D、N177V)も存在する。
【0006】
TEVプロテアーゼは、ツール酵素としてタンパク質研究やバイオ医薬品の製造に広く使用されている。反応条件は、標的タンパク質の特性に応じて選択してもよい。ヒスチジンタグ付きの組換えTEVプロテアーゼを設計することにより、切断後にアフィニティータグを利用してTEVプロテアーゼを簡単に除去することができる。例えば、TEVプロテアーゼは、融合タンパク質を効率的に切断するためによく使用されるが、両方が可溶性である場合に限られる。現在、TEVプロテアーゼを使用して融合タンパク質を切断することによってタンパク質ペプチド薬物を調製する主流の技術は、ポリペプチドおよびタグタンパク質(例えばMBP)を融合発現させ、それらの間に制限配列で連結すること;融合タンパク質を精製すること;TEVプロテアーゼを調製すること;TEVプロテアーゼで融合タンパク質を切断すること;切断された生成物を分離、精製することである。このような製造方法は、プロセスが多すぎて効率が低い欠点を持ち、コスト管理に不利である。
【0007】
上記の組換えポリペプチド生産のプロセスに存在する問題について、本発明者らは、本発明によるポリペプチドの迅速かつ効率的な調製に適したTEVプロテアーゼバリアントを見出した。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、TEVプロテアーゼとポリペプチドとの直接融合発現を採用することにより、ポリペプチド医薬品の調製を大幅に簡略化することができることを見出した。従来のTEVプロテアーゼは、発現過程で大量の融合タンパク質を切断(自己切断)してしまい、その結果、ポリペプチドが早期放出され、細胞内でプロテアーゼによって加水分解されやすくなるため、精製に不利であり、工業的な生産に適しないという問題があった。従来のTEVプロテアーゼは、低濃度の変性剤(2M尿素、1%SDS)でその活性をほとんど維持することができる(C.Sun et al.,2012)が、多くのタンパク質は2M尿素などの低濃度変性条件下では完全に溶解できないため、TEVプロテアーゼの使用が制限されている。さらに、TEVプロテアーゼは、小規模な実験室での調製には低コストであるが、大規模な生産には大規模な発酵、精製、再生が必要であり、生産コストは依然として高い。
【0009】
本発明は、スクリーニングによって得られた独特の特性を有するTEVプロテアーゼバリアントおよび融合タンパク質を提供する。本発明の融合タンパク質は、ポリペプチドの迅速かつ効率的な調製に使用され、従来の組換えポリペプチド製造プロセスに存在する問題を解決することができる。
【0010】
本発明は、本発明のTEVプロテアーゼバリアントが、発現過程において細胞内でのプロテアーゼ切断活性がないまたは極めて弱いが、中/高程度の生体外変性条件下で良好な酵素切断活性を有するという事実に部分的に基づくものである。
【0011】
一側面において、本発明は、TEVプロテアーゼバリアントを提供する。
一実施形態では、TEVプロテアーゼバリアントは、宿主での発現において低い酵素切断活性を有していてもよい。好ましくは、TEVプロテアーゼバリアントは、宿主での発現において、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有していてもよい。
【0012】
一実施形態では、TEVプロテアーゼバリアントは、中/高程度の変性条件下で高いプロテアーゼ酵素切断活性を有していてもよい。好ましくは、中/高程度の変性条件は、3M~5Mの尿素、好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素、または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の生体外環境である。好ましくは、TEVプロテアーゼバリアントは、中/高程度の変性条件下でS219Vバリアントの生体外酵素切断活性を保持する。
【0013】
一実施形態では、酵素切断活性は、TEVプロテアーゼバリアントおよびその制限部位を含む融合タンパク質に対して測定されるものである。好ましくは、制限部位は、EXXYXQG/S/Hから選択され、ここで、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくは、前記の制限部位が、配列番号7および8から選択される。一実施形態では、融合タンパク質は、TEVp-STEV-Y1の構造を含んでもよく、ここで、Y1が、標的ポリペプチドであり;TEVpが、TEVプロテアーゼバリアントであり;sTEVが、TEVプロテアーゼの制限部位(EXXXYXQG/S/H)であり、ここで、Xが、任意のアミノ酸残基であり、好ましくは、前記の制限部位が、配列番号7および8から選択される。
【0014】
一実施形態では、TEVプロテアーゼバリアントは、以下の変異からなる群から選択される1つまたは複数の変異を含んでも良い。
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)またはヒスチジン(H)への変異;
配列番号1に示される配列の第138位に対応する位置でのイソロイシン(I)からリジン(K)への変異;
配列番号1に示される配列の第28位に対応する位置でのヒスチジン(H)からロイシン(L)への変異;
配列番号1に示される配列の第196位に対応する位置でのグルタミン酸(Q)からヒスチジン(H)への変異;
配列番号1に示される配列の第135位に対応する位置でのセリン(S)からグリシン(G)への変異;および
配列番号1に示される配列の第187位に対応する位置でのメチオニン(M)からイソロイシン(I)への変異。
【0015】
一実施形態では、TEVプロテアーゼバリアントは、以下の変異からなる群から選択される変異の組合せを含んでも良い。
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)への変異、および配列番号1に示される配列の第138位に対応する位置でのイソロイシン(I)からリジン(K)への変異;
配列番号1に示される配列の第28位に対応する位置でのヒスチジン(H)からロイシン(L)への変異、配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)への変異、および配列番号1に示される配列の第196位に対応する位置でのグルタミン酸(Q)からヒスチジン(H)への変異;ならびに
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からヒスチジン(H)への変異、配列番号1に示される配列の第135位に対応する位置でのセリン(S)からグリシン(G)への変異、および配列番号1に示される配列の第187位に対応する位置でのメチオニン(M)からイソロイシン(I)への変異。
【0016】
一実施形態では、TEVプロテアーゼバリアントは、配列番号1に示される配列の第219位に対応する位置でのセリン(S)からバリン(V)への変異を含んでも良い。
【0017】
一実施形態では、TEVプロテアーゼバリアントは宿主での発現において低い酵素切断活性を有し、好ましくは前記のTEVプロテアーゼバリアントは宿主での発現において配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有すること、および/または前記のTEVプロテアーゼバリアントは、中/高程度の変性条件下で、好ましくは3M~5Mの尿素、より好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の生体外環境下で、高い酵素切断活性を有し、好ましくはTEVプロテアーゼバリアントは中/高程度の変性条件下でS219Vバリアントの生体外酵素切断活性を保持することという条件下で、TEVプロテアーゼバリアントは、上記の変異以外の1つまたは複数の変異をさらにを含んでも良い。。
【0018】
一実施形態では、プロテアーゼバリアントは、配列番号4、5または6に示されるアミノ酸配列またはそれらの相同体(homologue)を含んでも良い。
【0019】
一実施形態では、相同体は、配列番号4、5または6と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでも良い。また、相同体は、前記のTEVプロテアーゼバリアントの前記特性を保持している必要がある。
【0020】
一実施形態では、相同体は、配列番号4、5または6と比較して、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、最も好ましくは少なくとも4個のアミノ酸部位の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含んでも良い。また、相同体は、TEVプロテアーゼバリアントの前記特性を保持している必要がある。
【0021】
一実施形態では、相同体は、宿主での発現において低い酵素切断活性を有していてもよい。好ましくは、相同体は、宿主中での発現において、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有していてもよく、および/または前記のTEVプロテアーゼバリアントは、中/高程度の変性条件下で、好ましくは3M~5Mの尿素、より好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の生体外環境下で、高い酵素切断活性を有する。好ましくは、相同体は、中/高程度の変性条件下で、S219Vバリアントの生体外酵素切断活性を保持する。
【0022】
一実施形態では、相同体は、タバコエッチウイルスに由来する。
【0023】
一側面において、本発明は、本発明のTEVプロテアーゼバリアントを含むことができる融合タンパク質を提供する。本発明者らは、本発明のTEVプロテアーゼバリアントを本発明の融合タンパク質に組み込むことにより、標的ポリペプチドを迅速かつ効率的に産生することができることを予期せず見出した。
【0024】
一実施形態では、融合タンパク質は、TEVp-sTEV-Y1構造を含んでも良い。
ここで、Y1は、標的ポリペプチドであり;
TEVpは、前記によるTEVプロテアーゼバリアントであり;
sTEVは、TEVプロテアーゼの制限部位であり、EXXYXQG/Sであり、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくは、前記の制限部位が配列番号7および8から選択される。
【0025】
一実施形態では、標的ポリペプチドは、ACTH、GLP-1/GLP-2、IFN-α、IFN-γ、Histatin、CCL5、SDF-1α、IGF-1、Leptin、BNP、Ex-4からなる群から選択され、好ましくはACTHであり、好ましくはヒトACTHであり、より好ましくは配列番号2に示されるアミノ酸配列のヒトACTHである。
【0026】
一実施形態では、TEVpがsTEVを認識して切断することができるという条件下で、TEVpおよびsTEVは、直接接続され、または、1つまたは複数のアミノ酸残基を介して接続されていてもよい。
【0027】
一実施形態では、TEVpがsTEVを認識して切断することができるという条件下で、sTEVおよびY1は、直接接続され、または、1つまたは複数のアミノ酸残基を介して接続されていてもよい。
【0028】
一実施形態では、融合タンパク質は、タグをさらに含んでも良い。
【0029】
一実施形態では、タグは、精製タグであっても良い。
【0030】
一実施形態では、タグは、Hisタグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ、NusAタグ、SUMOタグ、Aviタグ、T7タグ、Sタグ、Flagタグ、HAタグ、c-mycタグ、またはStrep IIタグからなる群から選択されてもよい。
【0031】
一実施形態では、タグは、融合タンパク質のN末端にあっても良い。
【0032】
一実施形態では、TEVpのN末端にタグはない。
【0033】
一側面において、本発明は、本発明のTEVプロテアーゼバリアント、または本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。ポリヌクレオチド配列は、好ましくは配列番号14~16から選択される。
【0034】
一側面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド構築物を提供する。
【0035】
一側面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列、または本発明のポリヌクレオチド構築物を含む発現ベクターを提供する。
【0036】
一実施形態では、発現ベクターは、真核生物発現ベクター、または原核生物発現ベクターであっても良い。
【0037】
一実施形態では、発現ベクターは、真核生物発現ベクターであっても良い。好ましくは、真核生物発現ベクターは、pRS314、pYES2、バキュロウイルス-S2発現系およびpcDNA3.1からなる群から選択される。
【0038】
一実施形態では、発現ベクターは、原核生物発現ベクターであっても良い。好ましくは、原核生物発現ベクターは、pET系発現ベクター、pQE系発現ベクターおよびpBAD系発現ベクターからなる群から選択される。
【0039】
一側面において、本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列、本発明のポリヌクレオチド構築物、または本発明の発現ベクターを含む細胞を提供する。
【0040】
一実施形態では、細胞は、真核細胞、または原核細胞であっても良い。
【0041】
一実施形態では、細胞は、真核細胞であっても良い。好ましくは、真核細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞発現系からなる群から選択される。
【0042】
一実施形態では、細胞は、原核細胞であっても良い。好ましくは、原核細胞は、BL21、BL21(DE3)、BL21(DE3) pLysS、Rosetta2、Rosetta2 pLysS、Tuner(DE3)、またはOrigami 2からなる群から選択される。
【0043】
一側面において、本発明は、以下の(1)~(3)を含む本発明のTEVプロテアーゼバリアントの調製方法を提供する。
(1)本発明の細胞の培養に適した条件下で、培地中で前記の細胞を培養する。
(2)培地を回収するか、または細胞を溶解して、ライセートを回収する。
(3)精製して前記のTEVプロテアーゼバリアントを得る。
【0044】
一側面において、本発明は、標的ポリペプチドの調製における、TEVプロテアーゼバリアントの使用を提供し、ここで、前記のTEVプロテアーゼバリアントおよび前記の標的ポリペプチドが、融合タンパク質として発現される。好ましくは、融合タンパク質は、本発明の融合タンパク質である。
【0045】
一側面において、本発明は、以下の(1)~(7)を含む標的ポリペプチドの調製方法を提供する。
(1)本発明の融合タンパク質を適当な条件下で培地中で培養する。
(2)融合タンパク質の封入体を得る。
(3)約8Mの尿素または約6Mのグアニジン塩酸塩のような高変性条件下で、封入体を溶解する。
(4)中/高程度変性条件下、好ましくは3M~5M尿素、好ましくは3.5M~4.5M尿素、より好ましくは4M尿素または1M~2Mグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mグアニジン塩酸塩の条件下で、一定の温度、例えば20~40℃、好ましくは25℃で、例えば10~24時間、例えば12時間インキュベートする。
(5)緩衝液、例えばTris-HCl、好ましくは50mMのTris-HClで希釈した後、TEVプロテアーゼを沈殿させる。
(6)TEVプロテアーゼ沈殿物を除去し、前記の標的ポリペプチドを得る。
(7)前記の標的ポリペプチドを精製する。
【0046】
一実施形態では、精製は、塩析、限外濾過、有機溶媒沈殿、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーカラム、逆相高速液体クロマトグラフィーからなる群から選択される技術によって実施される。
【0047】
本発明の利点
1.本発明のTEVプロテアーゼバリアントは、天然のN末端を有する様々なポリペプチドまたはタンパク質を産生するために広く使用される。
2.本発明のTEVプロテアーゼバリアントは、スクリーニングにより得られるが、直接得られた変異体は、要件を満たすことができないか、または部分的に要件を満たす。一連の変異点の組み合わせにより、さらに改善された独特の特性を備える改良型突然変異体を得ることが可能である。例えば、L111Fと他の変異点との組み合わせは、生体内活性がないかまたは極めて低いが、中程度の生体外変性条件下ではより高い活性を有することを特徴とする。
3.本発明の方法は、標的タンパク質を発現させるために、DNA組換え技術および原核生物発現系を採用しており、幅広い適用性を有する。
4.ブタ下垂体からACTHを抽出する方法と比較して、本発明の方法を使用してヒトまたはブタ由来のACTHを調製する場合の製造コストは、従来のブタの脳からの抽出による製造技術の製造コストよりも数百倍も低くすることができる。この方法は、生産サイクルを大幅に短縮し、生産時間およびコストを節約し、ブタの下垂体を得るために大量のブタの屠殺に依存する必要がなくなり、ブタ由来のACTHの使用による免疫原性アレルギー反応のリスクを回避し、薬の安全性を大幅に向上させることができる。また、本発明の方法で調製されたACTHは、人体から分泌されるACTHと全く同じものであるため、アミノ酸配列の精度および製品の純度が極めて高く、優れた生物活性を持ち、薬効を向上させ、副作用の発生を抑えることができる。本方法は、有機合成法に比べて、ヒト由来の全長ACTHの調製の難易度およびコストを大幅に低減し、操作が簡単で、高価な触媒や高圧装置を必要とせず、収率が高く、大量生産に適している。つまり、本方法は、製造プロセスが明確で簡単であり、再現性が良く、大規模生産の実現が容易であり、環境汚染を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、異なる濃度の尿素でのTEVP変異体12Dの消化効率のSDS-PAGEゲルクマシーブリリアントブルー染色画像である。矢印は標的タンパク質を示す。
図2図2は、異なる濃度の尿素でのTEVP変異体4Dの消化効率のSDS-PAGEゲルクマシーブリリアントブルー染色画像である。矢印は標的タンパク質を示す。
図3図3は、異なる濃度の尿素でのTEVP変異体32Cの消化効率のSDS-PAGEゲルクマシーブリリアントブルー染色画像である。矢印は標的タンパク質を示す。
図4図4Aは、異なる濃度の尿素でのTEVP変異体4Dの消化効率のSDS-PAGEゲルクマシーブリリアントブルー染色画像である。図4Bは、電気泳動バンドのグレー値の比較である。
図5図5は、TEVP変異体4D、12Dおよび32Cの生体内および生体外の酵素切断活性とS219Vとの比較である。矢印は標的タンパク質を示す。
図6図6は、TEVP変異体4D、12D、32CおよびS219Vの融合タンパク質の0.5M尿素での溶解度試験である。
図7図7は、プラスミドpET-28b-PD1-Aviの模式図である。
図8図8は、プラスミドpET-28b-ACTHの模式図である。
図9図9は、プラスミドAvi-TEV-sTEV-ACTHの遺伝子構造図である。
図10図10は、質量分析計で測定した、精製されたACTHの分子量を示すスペクトルである。
図11図11は、生体外で測定したACTH活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の目的、技術構成および利点をより明確にするために、本発明の実施形態をさらに詳細に説明するが、本発明の実施形態はそれに限定されない。
【0050】
TEVプロテアーゼ
TEVプロテアーゼは、融合タンパク質を効率的に切断するためによく用いられるが、切断は両方が可溶性である場合に限られている。現在、ほとんどのポリペプチド薬は、溶解性が悪く、通常、封入体として発現しており、TEVプロテアーゼの切断条件と一致しない。封入体は、高濃度の尿素またはグアニジン塩酸塩で溶解させる必要があるが、このような条件での切断が極めて困難である。従来のTEVプロテアーゼは、基質と同条件下で、効率的な切断活性と、同時溶解とを両立させることが困難であった。
【0051】
封入体は、精製に有利で、簡単な処理で比較的純粋な目的タンパク質を得ることができる。しかし、封入体タンパク質は、高濃度の尿素またはグアニジン塩酸塩で溶解する必要がある。このような条件下では、野生型TEVプロテアーゼは、不活性または極めて低活性であり、融合タンパク質を効率的に切断することができない。現在、改良されたTEVプロテアーゼに関する報告は多数あるが、切断に最適な条件は、いずれも生理的条件または非変性条件であり、通常、低濃度の変性剤(尿素またはグアニジン塩酸塩)に対してある程度の耐性を有しているが、ほとんどの封入体タンパク質は低濃度変性条件下で不溶性である。したがって、従来のTEVプロテアーゼは、上記の場合には適していない。
【0052】
本発明者らは、TEVプロテアーゼとポリペプチドを融合させてポリペプチド医薬品を調製するための理想的な製造条件が以下の通りであることを見出した。(1)該融合タンパク質は、封入体として発現する。これは、精製に有利であると共に、プロテアーゼの加水分解からタンパク質を保護することができる。(2)該融合タンパク質は、細胞内で自己切断しない。そうでなければ、精製に不利である。(3)該融合タンパク質は、高濃度の変性剤に溶解された後、中/高程度の濃度の変性剤を含む酵素切断反応系に希釈されると、TEVプロテアーゼが活性を回復し、効率的に自己切断してポリペプチドを放出する。(4)大容量のTEVプロテアーゼライブラリーからスクリーニングして進化させたTEVプロテアーゼバリアントは、その制限部位のP1’位置に幅広いアミノ酸スペクトルを有するため、天然のN末端を有する様々なポリペプチドまたはタンパク質の生産に広く利用することができる。
【0053】
本発明の方法
通常調製される自己切断性を有する融合タンパク質の構造は、US2010035300A1に提供されている。融合タンパク質の調製において、Hisタグは、発現させる標的タンパク質(例えば、EGFP)と密接に連結する必要がある。これは、融合タンパク質を細胞内で発現させると、従来の野生型TEVpまたは変異型TEVpが細胞内で一定の酵素切断活性を有し、自己切断が発生するためである。切断後のEGFPは、それに密接に接続されたHisタグを介して回収することができる。このHisタグがなければ、細胞内での自己切断が早すぎるため、タンパク質を回収することが難しくなり、EGFPを効率的に生産することができない。しかし、これはまた、特定のニーズに応じて、EGFPのHisタグをさらに除去する必要がある場合は、明らかに時間と手間がかかるという問題をもたらす。
【0054】
本発明において、融合タンパク質における標的タンパク質は、例えばHisのようなタグを含まなくてもよい。一実施形態では、融合タンパク質は、Avi-TEVp-sTEV-ACTHの構造を含み、ここで、AviはAviタグタンパク質であり、sTEVはTEVプロテアーゼ制限部位である。TEVpバリアント(例えば12Dバリアント)は、細胞内酵素活性が極めて低いため、発現した融合タンパク質はほとんど細胞内で溶解することはない。封入体を回収し、8M尿素で溶解し、環境を4M尿素に調整すると、12Dは、酵素の活性を発揮し、sTEVとして認識部位を切断する。切断した後、単純な希釈で尿素またはグアニジン塩酸塩の最終濃度を0.5Mに低下させる。TEVプロテアーゼは、溶解性が低いため、沈殿しやすいが、生物学的活性を有する放出されたポリペプチドは緩衝液に溶解しやすいことが多いため、遠心分離によって、高度に精製されたペプチドを得ることができる。これにより、追加のプロテアーゼ除去工程の必要性が巧みに排除され、後の精製プロセスが大幅に簡素化される。
【0055】
封入体の形成は精製に有利である。1)遠心分離によって高濃度で比較的純粋なタンパク質を容易に得ることができる。2)封入体は、プロテアーゼの加水分解からタンパク質を保護する。また、毒性タンパク質は不活性な封入体として発現し、宿主細菌の増殖に影響を与えない。例えば、本発明の方法に係るTEVP-ACTH融合タンパク質は、封入体として発現しているため、精製工程が大幅に簡素化され、より高い濃度と純度に達することができ、さらに、プロテアーゼの加水分解を受けないため、安定した高収量が得られやすい。
【0056】
本発明のACTHの生産法
本発明の方法で使用されるTEVプロテアーゼとACTHポリペプチドとの直接融合発現によるポリペプチド薬物の調製は、独特のTEVプロテアーゼバリアントに依存し、プロセスを大幅に簡素化することができる。従来のTEVプロテアーゼは、発現過程で大量の融合タンパク質を切断(自己切断)する。例えば、MBP-TEVP融合タンパク質はTEVPの調製に使用されるが、ポリペプチドが早期に放出され、精製が困難になり、工業生産には適していない。本発明は、独特のTEVプロテアーゼバリアントの融合タンパク質に基づいてタンパク質ポリペプチド医薬品を調製する方法および用途を提供する。このTEVプロテアーゼバリアントは、以下の特徴を有する。(1)生体内酵素切断活性が約0~10%と非常に低いため、TEVと融合して発現したポリペプチドが早期に放出されないことを確保にし、同時にポリペプチドの収率を増加させることができる。(2)融合タンパク質は、封入体として発現するため、その精製工程が大幅に簡素化され、より高い濃度と純度に達することができ、プロテアーゼによって加水分解されることがなく、安定した高収率が得られやすい。(3)封入体を8M尿素または6Mグアニジン塩酸塩に溶解した後、4M尿素または1.5Mグアニジン塩酸塩の酵素消化緩衝液に直接希釈すると、TEVプロテアーゼは活性を回復し、効率的かつ正確に自己切断し、ACTHポリペプチドを放出する。(4)切断した後、単純な希釈で尿素またはグアニジン塩酸塩の最終濃度を0.5Mに低下させ、遠心分離により、不溶性のTEVプロテアーゼと未消化の融合タンパク質から可溶性のACTHポリペプチドを分離することができる。従来の融合タンパク質によるポリペプチド医薬品の調製に比べて、プロセス全体が大幅に簡素化され、タンパク質発現から酵素消化産物の分離まで、わずか4つの工程で比較的純粋な粗生成物を得ることができる。
【0057】
本発明の目的は、以下の技術構成によって達成される。Avi-TEVP-sTEV-ACTHの構造式を有するTEVプロテアーゼバリアントとACTHポリペプチドとの融合タンパク質であって、ここで、Aviは、単一のビオチン化リジン部位を有する15アミノ酸の短いペプチドであるAviタグタンパク質であり;TEVPは、TEVプロテアーゼバリアントであり;sTEVは、L-グルタミン酸1-L-アスパラギン酸2-L-ロイシン3-L-チロシン4-L-フェニルアラニン5-L-グルタミン6-L-セリンの配列を有するTEVプロテアーゼ制限部位であり;ACTHは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するヒトACTHポリペプチドである。本発明では、TEVプロテアーゼおよび標的ポリペプチドは、プロテアーゼ消化アミノ酸配列(sTEV)で連結されている。融合タンパク質の発現とプロテアーゼの発現を同一工程に統合し、封入体として発現させることにより、大量に発現させることができるだけでなく、簡単な処理(超音波処理、洗浄、遠心分離)で比較的高純度の融合タンパク質を得ることができる(細胞内の生理的条件下では、TEVPバリアントは、溶解性が良くなく、酵素切断活性を持たないか、または極めて弱い活性を有しているため、自己切断を多く行わない)。封入体を8M尿素で溶解し、中/高程度濃度の変性条件(4M尿素、野生型TEVプロテアーゼはこの条件では活性が低い)に直接希釈した後、酵素の加水分解工程を開始することができ、ポリペプチドを放出する。酵素加水分解生成物を希釈した後、TEVプロテアーゼは溶解性が悪いため沈殿しやすいが、放出された生理活性を有するペプチドは緩衝液に溶解しやすいことが多い。したがって、遠心分離によって高純度のペプチドを得ることができる。これにより、追加のプロテアーゼ除去工程の必要性が巧みに排除され、後の精製プロセスが大幅に簡素化される。本発明のTEVプロテアーゼバリアントは、従来の組換え発現法および化学合成法では達成が困難またはコストがかかるポリペプチドの迅速かつ効率的な発現および精製のための、融合タンパク質法によってタンパク質ポリペプチド医薬品を調製するプラットフォームとして使用することができる。これは、特に宿主細菌に分解されやすいまたは毒性のあるポリペプチドを調製することに適している。このテクノロジープラットフォームは、下流プロセスの時間とコストを大幅に削減することができ、大規模な工業生産および小規模な実験室での調製の両方に適している。
【0058】
酵素切断活性または効率の測定
生体内の酵素切断活性は、SDS-PAGEゲルの結果に基いて算出することができる。具体的には、TEVプロテアーゼバリアントの封入体を10倍希釈した後、10%のβ-メルカプトエタノールを含む5×SDSローディング緩衝液を添加し、100℃で5分間煮沸し、ローディングしてゲルで電気泳動を行う。終了後、ゲルをクマシーブリリアントブルー染色液に入れて30分間染色した後、クマシーブリリアントブルー脱色液に入れ、背景が無色になるまで約20分間加熱して脱色する。次に、ゲルをゲルイメージングシステムに設置して撮影する。取得した画像をImage Jソフトウェアで処理し、バンドのグレー値を定量する。生体内酵素切断活性=1-融合タンパク質バンドのグレー値/(融合タンパク質バンドのグレー値+Avi-TEVPバンドのグレー値*融合タンパク質の分子量/Avi-TEVPの分子量)。
【0059】
本明細書において、電気泳動バンドのグレー値をImage Jソフトウェアで解析する方法は、現在の一般的な方法である。
【0060】
本明細書において、生体外酵素切断効率の算出方法は以下の通りである。
生体外酵素切断効率=1-酵素切断後の融合タンパク質バンドのグレー値/酵素切断前の融合タンパク質バンドのグレー値
【0061】
本明細書において、8M以上の尿素または6M以上のグアニジン塩酸塩を高濃度の変性剤とし、4M尿素を中程度の濃度の変性剤とする。中/高程度の濃度の変性条件とは、4M尿素または1.5Mグアニジン塩酸塩、50mM Tris-HCl(pH8.0)、1mM EDTA、2mM DTTを指し、反応温度は4℃~37℃、好ましくは25℃である。好ましくは、インキュベーションは、3M~5Mの尿素、好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の条件下、例えば20~40℃、好ましくは25℃の特定の温度、例えば10~24時間、12時間などの一定時間で行われる。
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0063】
実施例
実施例1:TEVプロテアーゼバリアントの取得
1. 大容量TEVプロテアーゼランダム変異ライブラリーの構築
1.1 実験材料
大腸菌TG1:supE hsd Δ5thiΔ(lac-proAB)F’[traD36proAB+lacIq lacZΔM15](Bio-viewshine Bio Technology社から購入)。ファージミドベクターpHEN1(BioVector NTCC plasmid vector strain cell gene collection centerから購入、カタログ番号Biovector786623)。DNAポリメラーゼ、T4 DNAリガーゼ、制限エンドヌクレアーゼはInvitrogen Trading社から購入した。プラスミド抽出キットおよびアガロースゲルDNA回収キットは、Tiangen Biotechen(Beijing)社から購入した。ランダム変異誘発キット(GeneMorph II Random Mutagenesis Kit)はAgilent Technologies社から購入した。プライマーの合成および遺伝子配列の決定は、Nanjing Genscript Biotech Corporationで行った。
【0064】
1.2 TEVPランダム変異ライブラリーの構築
1.2.1 ランダムミューテーションPCRによるTEVP DNA断片の調製
TEVP S219V遺伝子の大範囲のランダム変異は、pQE30-TEV(S219V)(この27kDaのTEV NIaプロテアーゼバリアント遺伝子は、Nanjing Genscript社により合成され、pQE30ベクターのBamH1とHindIIIの間にクローニングされた)をテンプレートとして使用したランダム変異誘発キット(GeneMorph II Random Mutagenesis Kit)で行った。PCRプライマーは、以下の通りである。
TEV-F:5-AATCTCGAGGGATCTAAAGGTCCTGGAGAAAGCTTGTTTAAGGGACCAC-3
TEV-R:5-AATGGATCCTTGCGAGTACACCAATTC-3
【0065】
具体的に、各工程はキットのプロトコールに従って操作し、PCRサイクル数およびテンプレート量を正確に制御し、PCR条件は中程度の変異条件に設定された。50μl反応系は、次のように調製した。PCRチューブに、41.5μlのddH2O、5μlの10×Mutazyme II反応緩衝液、1μlの40mM dNTP混合物(各最終濃度は200μM)、0.5μlのプライマー混合物(各プライマーは250ng/μl)、1μlのMutazyme II DNAポリメラーゼ(2.5U/μl)、1μlのTEVPテンプレート(テンプレート量10ng)を順次に添加した。PCR増幅条件は、95℃で3分間の前変性;95℃で30秒;60℃で30秒;72℃で50秒;合計32サイクル;72℃で10分間の最終伸長とした。PCR終了後、5μlの産物を採取して、キットにおける1.1-kbのゲル標準を分子量標準として、1%アガロースゲル電気泳動を行った。染色後、標的バンドの明るさを標準と比較し、PCRの収量を算出し、これをテンプレート量で割って増幅率を求めた。これを基づいて、PCR工程でのd値を算出した(計算式:2=PCR収量/初期テンプレート量)。本発明のTEVPランダムミューテーションPCRの最終的なd値は7.5であり、対応する変異頻度は約9変異/kb(説明書参照)であり、これは期待通りである。PCR産物をフェノールクロロホルムで抽出・精製した後、Xho1とBamH1でダブルダイジェストし、アガロースゲルDNA回収キットで消化産物を回収し、-20℃で保存した。
【0066】
1.2.2 線形化されたベクターの調製
ファージミドベクターpHEN1(BioVector NTCC plasmid vector strain cell gene collection centerから購入、カタログ番号Biovector786623)を線形化する前に、修飾を行った。まず、Aviタグ配列であるGLNDIFEAQKIEWHEをシグナルペプチドの下流に挿入し、得られた融合タンパク質をビオチン化してから、ストレプトアビジン磁気ビーズで固定化した。pET28b-PD1-Avi(Nanjing Genscript社で合成した。遺伝子構造はNco1-PD1遺伝子-Not1-BamHI-GGGSリンカー-aviタグ-Xho1である。PD1遺伝子のGenebankアクセッション番号は、NM_005018である。プラスミドマップを図7に示す。)を、AviタグのPCR増幅用テンプレートとして使用し、PCRプライマーは次のとおりである。
Avi-F:5-ACTCCATGGCCGGTCTGAATGATATTTTTGAAGC-3
Avi-R:5-AATCTCGAGCTCGTGCCACTCGATTTTCTG-3
【0067】
生成物をフェノールクロロホルムで精製し、Nco1とXho1でダブルダイジェストし、ゲルを回収した後、同様に酵素で消化したpHEN1ベクターにライゲーションしてpHEN1-Aviを得た。次に、sTEV(ヌクレオチド配列:GAAAATCTGTATTTTCAGAGC、アミノ酸配列:ENLYFQS)とヒトACTH遺伝子を含むタンデム配列をAviタグの後ろ(クローニングサイトXho1+Not1)に挿入した。sTEV-ACTHタンデム配列のPCR増幅用テンプレートは、pET28b-ACTH(Nanjing Genscript社で合成した。プラスミドマップを図8に示す。アミノ酸配列は、配列番号2に示す。ヌクレオチド配列は、配列番号13に示す。)であり、PCRプライマーは次のとおりである。
ACTH-F:AATCTCGAGGGATCTGGATCCGGAGGTGGCGGTAGCGAAAATCTGTATTTTCAGAGCTATAGCATGGAAC-3
ACTH-R:5-AATGCGGCCGCAAATTCCAGCGGAAATGC-3
【0068】
プライマーの上流にBamH1部位を追加導入し、フェノールクロロホルムでPCR産物を精製し、Not1とXho1でダブルダイジェストした後、同様に酵素で消化したpHEN1-Aviベクターにライゲーションして、pHEN1-Avi-sTEV-ACTHを得た。ベクターの線形化:pHEN1-Avi-sTEV-ACTHをXho1とBamH1でダブルダイジェストし、消化産物における大きな断片をゲルで回収し、-20℃で保存した。
【0069】
1.2.3 ライゲーションおよびライゲーション生成物の回収
消化して回収したベクター(pHEN1-Avi-sTEV-ACTH)を、インサートフラグメント(ランダムに変異したTEVP遺伝子)と1:3、1:5、1:10でライゲーションした。具体的に、まず、ベクターpHEN1-Avi-sTEV-ACTHを調製(1.2.2 線形化されたベクターの調製を参照)し、次に、インサートフラグメントを調製(1.2.1 ランダムミューテーションPCRによるTEVP DNA断片の調製を参照)し、両方をT4 DNAリガーゼ(Thermo Fisher Scientific)でライゲーションして、pHEN1-Avi-TEVp-sTEV-ACTHを得た。ライゲーションシステムはキットのプロトコールに従った。20μl反応系を例にとると、PCRチューブに、150ngの線形化されたベクター、対応する量のインサートフラグメント(ベクターに対するモル比は1:3または1:5または1:10)、2μlの10×T4 DNAリガーゼバッファー、1μlのT4 DNAリガーゼを順次に添加し、最後にddH2Oで容量を20μlになるように容量を調整した。形質転換によって生成されたクローンの数を計算することにより、最適なライゲーション比は1:5であると判定された。プラスミドマップを図9に示す。最適なライゲーション比は1:5であると判定された。異なる濃度のライゲーション生成物を用いて形質転換を行い、最適な形質転換生成物量を0.2μg(10μl)と判定した。ライゲーション生成物をフェノール-クロロホルム抽出で精製し、タンパク質および塩イオンを除去して、ddH2Oに溶解した。
【0070】
1.2.4 電気形質転換(electrotransformation)
電気穿孔法によりライゲーション生成物を宿主細菌TG1にトランスフェクトした。電気形質転換用コンピテント細胞の調製方法は、分子クローニング実験ガイド(第3版)に従った。10μlのライゲーション生成物を200μlの電気形質転換用コンピテント細胞と穏やかに混合して、氷浴に2分間入れ、0.2cmの孔隙を備えた予冷した電気形質転換キュベットに移して電気形質転換を行った。電気形質転換装置(Bio-Rad Gene-Pulser)のパラメーターは、2.5KV、25μF、200Ωであった。電撃した後、直ちに1mlのSOC培地を加え、吸い出した後、1mlのSOC培地で電撃キュベットを2回濯いだ。3mlの細菌液を合わせ、37℃、200rpmで45~60分間振とうした。10-2、10-3、および10-4の勾配で細菌液を希釈し、各勾配で100μlの菌体を採取して、SOC(25μg/mlのカルベニシリンを含む)の小プレートに広げ、残量を5000×gで5分間遠心分離し、菌体を回収した。再懸濁した後に、SOC(25μg/mlカルベニシリンを含む)の正方形の大きなプレート(25×25cm)に広げた。倒立したプレートを37℃で12~16時間インキュベートした後、小プレートでカウントを行った。そして、2YT培地で大プレート上のコロニーをすすぎ、塗布ロッドで軽く掻き取り、最終濃度が50%になるようにグリセロールを加えた後、チューブに分注し、-80℃で凍結保存した。ライブラリー容量の計算方法:容量プレート上のクローン数*希釈倍率*希釈前の細菌液の総体積。ライブラリー容量が1×10以上になるまで、電気形質転換を数回繰り返した。
【0071】
1.2.5 配列の決定および解析
一部の元の細菌クローンをランダムに選択し、コロニーPCRによって組換えプラスミドを検証した。PCR検証プライマーは次の通りである。
フォワードプライマー:5-CCACCATGGCCGGTCTGAATGATATTTTTGAAGC-3
リバースプライマー:5-TTGTTCTGCGGCCGCAAATTCCAGC-3
PCR陽性の組換えプラスミドを配列決定を委託(Genscript Biotechnology社)し、構築されたライブラリーのランダム性、ライブラリー容量、および存在度を評価した。
【0072】
1.2.6 ライブラリーの容量および多様性の評価
ベクターとインサートフラグメントとのモル比は1:5であり、10μlのライゲーション生成物を利用して電気形質転換を行った。形質転換効率は9×10cfu/μgDNAである。複数回の形質転換を組み合わせた容量は2.02×10で、スクリーニングのニーズを満たした。ペプチドライブラリーから20個のクローンをランダムに選び、配列を決定した。結果(表1)は、全体的な変異頻度が中/低程度(1.5~7個/kb)であることを示す。実際の値と理論値の間には一定の偏差がある。考えられる理由の1つは、同義突然変異がカウントされていないことであり、もう1つは、サンプル数が少ないことである。配列決定用サンプルの数が増えるにつれて、このような偏差は減少していく。上記の結果は、構築されたTEVPランダムファージライブラリーが、基本的なフレームワーク、ライブラリー容量、および多様性の観点から、設計要件を満たしたことを示す。
【0073】
表1 ランダムに選択されたクローンにおけるアミノ酸変異の分布
【表1】
【0074】
2. TEVPランダム変異ファージライブラリーからの標的クローンのスクリーニング
2.1 実験材料
HRP-M13抗体はBeijing Sino Biological社から購入し、96ウェルELISAプレートおよびELISA試薬はSangon Biotech(Shanghai)社から購入し、ストレプトアビジン磁気ビーズはNEBから購入し、D-ビオチン、IPTGなどの試薬はSangon Biotech(Shanghai)社から購入した。
【0075】
2.2 ファージライブラリーの培養
少なくとも1つのライブラリー容量の細菌を採取し、2xYT-CG(2xYT+100μg/mlカルベニシリンおよび2%グルコース)を含む2L三角フラスコに、初期OD600値=約0.1になるように加え、OD600が約0.5になるまで37℃、200rpmで振とうした。ヘルパーファージM130K07(Beijing Bio-viewshine Bio Technology社から購入)を加えて感染(MOI=20)させ、100rpmでゆっくり回転させながら37℃で1時間インキュベーションを続けた。その後、遠心分離(2000×gで20分間)により細菌を回収し、上清を可能な限り除去して廃棄した。1Lの2xYT-CK(2xYT+100μg/mlカルベニシリンおよび50μg/mlカナマイシン+200μmD-ビオチン)で菌体を再懸濁し、250rpm、25℃で一晩インキュベートした。翌日、パッケージされたファージを回収して精製した。細胞培養物を750mlの遠心分離ボトルに移し、氷中でわずかに冷却した。次に、大型ベンチトップ遠心分離機によって4500rpm、4℃で30分間遠心分離した。上清が濁った場合は、別の清潔なボトルに移し、このステップを繰り返した。上層の80%の上清(細胞ペレットを攪拌しないように)を別の新しい750ml遠心分離ボトルに移し、1/6容量のPEG/NaCl溶液(20%[w/v]のPEG-8000、2.5MのNaCl)を加え、混合した後、氷中に少なくとも2時間放置し、4500rpm、4℃で30分間遠心分離した。すべての上清を注意深く取り除き、10mlのPBSを加えた。ピペットで沈殿物を再溶解させ、2mlのEPチューブに移した。15000×g、4℃で20分間遠心分離して、残った菌体や破片を取り除いた。ピペットで上清を新しいEPチューブに注意深く移し、そこに1/6容量のPEG/NaCl溶液を加え、氷上に1時間置いてファージを再び沈殿させた後、15000×g、4℃で20分間遠心分離し、ファージ沈殿物を回収した。すべての上清を注意深く取り除き、廃棄した。さらに、ファージ沈殿物を適量のPBSで再溶解し、完全に溶解した後、15000×g、4℃で10分間遠心分離して、残った不溶性不純物を除去した。上清を新しいEPチューブに分注し、50%のグリセリンを加え、-80℃で長期間保存した。
【0076】
2.3ライブラリー力価の決定
Carol M Y Leeらの方法(M Y Lee,Carol & Iorno,Niccolб & Sierro,Frederic & Christ,Daniel.(2007).Selection of human antibody fragments by phage display.Nature protocols.2.3001-8.10.1038/nprot.2007.448.)に参照して、ファージライブラリーを2×YTで勾配希釈した。10-9、10-10、および10-11の希釈液について、それぞれ10μlを採取し、対数増殖期まで培養した新鮮なTG1細菌液200μlに加え、均一に混合し、37℃で30分間インキュベートし、2×YT-CGを含むプレートにすべて広げた。プレートを30℃のインキュベーター内で一晩インキュベートし、翌日、単一コロニーの数をカウントし、力価を算出した。
【0077】
2.4 ライブラリのパンニング(panning)
本発明のTEVPバリアントをパンニングする原理は以下の通りである。Aviタグは、15アミノ酸残基(GLNDIFEAQKIEWHE)で構成される短いペプチドタグであり、生体内および生体外の両方でもビオチンリガーゼによってリジン残基にビオチンをライゲーションすることにより、タンパク質のビオチン化を実現する。ビオチン化タンパク質は、特にストレプトアビジンによって結合される。これらの2つの反応に基づいて、本発明のTEVpファージは、生体内でビオチン化することができ、ビオチン化ファージライブラリーは、ストレプトアビジン磁気ビーズで固定化することができる。理想的な条件下では、細胞内で酵素切断活性を持つTEVPバリアントは、発現プロセスにおいて自己切断され、その結果、最終的に組み立てられたファージPIIIタンパク質は、末端にACTHのみを有し、Aviタグを有しないため、磁気ビーズで捕捉することができない。一方、細胞内で発現させた場合、酵素切断活性を有しないTEVPバリアントは、発現プロセスにおいて自己切断をすることがなく、その結果、最終的に組み立てられたファージPIIIタンパク質は、N末端がAvi-TEVP-sTEV-ACTHであり、N末端のAviタグがビオチン化されているため、ストレプトアビジンを含む磁気ビーズで捕捉することができる。磁気ビーズによって捕捉されたファージは、中/高濃度の尿素中でインキュベートされる。生理学的条件下で不溶性であるTEVPバリアントは、この条件下で溶解してその活性を回復し、酵素切断ができる。この条件下で消化されたファージは、自己切断により磁気ビーズから脱落し、溶液に入る。溶液を回収して、最初の標的ファージを取得し、増幅した後、次のスクリーニングを行うことができる。数回のスクリーニングの後、弱い生体内酵素切断活性を有し、且つ生体外変性条件下で酵素切断活性を有するTEVプロテアーゼバリアントがエンリッチ化される。遺伝子配列解析により、発現ベクターにクローニングした後に1つずつ確認できるエンリッチ化された配列を得る。各回のパンニング結果を以下の表2に示します。
【0078】
表2. 各回のパンニングのデータ
【表2】
【0079】
ファージパンニングの具体的なプロセスは次の通りである。
(1)ファージの固定化:清潔な2mlのEPチューブで、100倍のライブラリー容量のファージをTBST緩衝液(50mM Tris-HCl PH7.5、150mM NaCl、0.1%[v/v]Tween-20)に希釈し、適量のストレプトアビジン磁気ビーズを添加して混合し、4℃で回転させ、20分間インキュベートした。磁石で磁気ビーズを沈殿させた後、TBSTで5回洗浄して未結合のファージを除去した。
【0080】
(2)酵素切断のスクリーニング:3M尿素を含むTBS緩衝液を磁気ビーズに添加し、室温で1~2時間インキュベートした。磁石で磁気ビーズを沈殿させ、上清を可能な限り回収した。
【0081】
(3)ファージの増幅:OD600=0.5のTG1宿主細菌50mlに、溶出したファージを加え、37℃で1時間ゆっくり振とうした。100μg/mlのカルベニシリンおよび2%のグルコースを添加し、さらに2時間インキュベートした。ヘルパーファージ(M130K07(Beijing Bio-viewshine Bio Technology社から購入))を添加して感染(MOI=20)させ、ゆっくりと回転させながら37℃で1時間インキュベーションした。次に、遠心分離により細菌を回収し、上清を可能な限り取り除いた。100mlの2xYT-CK(2xYT+100μg/mlのカルベニシリンおよび50μg/mlカナマイシン+200μMのD-ビオチン)で菌体を再懸濁し、25℃、250rpmで一晩インキュベートした。翌日、パッケージされたファージを回収して精製した。培養物を清潔な50ml遠心管に移し、13,000g、4℃で20分間遠心分離した。上層の80%の上清を新しい遠心管に移し、1/6容量のPEG/NaCl溶液を加え、4℃で1時間以上沈殿させた。その後、再び遠心分離して沈殿物を回収し、適量のPBSを加えてファージ沈殿物を再懸濁し、さらに遠心分離して細菌の破片などの不純物を除去した。上清を回収し、1/6容量のPEG/NaCl溶液を添加し、氷上で1時間静置した後、再び遠心分離して沈殿物を回収し、適量のPBSに溶解した。次に、13,000gで10分間遠心分離して不溶性不純物を除去し、上清を別の新しいEPチューブに移し、増幅後の溶出液とした。
【0082】
(4)力価測定のために1μlの精製ファージを採取し、残りは次のパンニングまたは保存のために使用した。
【0083】
(5)シーケンシングによるスクリーニング配列のエンリッチ化の分析:3回のパンニング後、最終回で溶出したファージを使用して宿主細菌を感染させ、2xYT-CGプレートにプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。翌日、シングルクローンコロニーを選択し、コロニーPCRを行ってライブラリー配列に属するかどうかを確認し、陽性クローンを配列決定解析に供した。配列決定の結果を解析し、変異部位の頻度を統計することにより、最終的に最良の7つの変異体が候補クローンとして選定した。
【0084】
3. 候補クローンの特性評価
上記の7つの候補配列を消化(Nco1/Not1)し、発現ベクターpET28b(Novagen社から購入)にクローニングし、Rosetta2(DE3)(Hunan Youbio社から購入)にトランスフェクトして発現させた。発現条件:LB培地、37℃でOD600=約0.6になるまで培養した。誘導条件:37℃で250rpmで振とうし、2mM IPTG、4時間誘導した。細菌処理:遠心分離で細菌を回収し、細菌を再懸濁し、超音波によって破壊し、遠心分離で封入体の沈殿物を回収し、封入体を洗浄し、最後に、8M尿素(50mM Tris-HCl、1mM EDTA、2mM DTT、8M尿素、pH8.0)で封入体を溶解した。
【0085】
封入体タンパク質の希釈および消化試験:尿素の最終濃度を3Mまたは4Mになるように、TEVP消化緩衝液(50mM Tris-HCl、1mM EDTA、2mM DTT、pH8.0)で各候補クローンの封入体タンパク質を希釈した後、25℃で一晩消化した。翌日、SDS-PAGEゲルで電気泳動を行い、消化を確認した。タンパク質電気泳動バンドをImage Jソフトウェアで処理し、バンドのグレー値を算出した。
【0086】
消化条件の最適化:上記の消化試験で得られた陽性クローンは、異なる条件下で消化効率をさらに試験する必要がある。このような条件としては、異なる尿素濃度、異なる温度、異なるグアニジン塩酸塩濃度、反応溶液中のDTTおよびEDTA濃度が挙げられる。
【0087】
本発明は、上記のスクリーニングを通して、最終的に、生体内酵素切断活性が弱いが生体外活性が正常である3つの変異体を得た。試験結果を図1、2、3、4A-Bに示す。
【0088】
具体的なプロセスは、以下の通りである。8M尿素緩衝液に溶解した各TEVプロテアーゼバリアント-ACTH融合タンパク質を、1:10の比率で希釈液に添加した。希釈液は、異なる濃度の尿素を含む50mM Tris-HCl pH8.0、1mM EDTA、2mMDTTであった。尿素の最終濃度が4Mの場合、希釈液は、3.56M尿素、50mM Tris-HCl pH8.0、1mM EDTA、2mMDTTであった。各サンプルを均一に混合した後、直ちに2本のEPチューブに均等に分注し、そのうちの1本に5×SDSローディング緩衝液を添加し、100℃で5分間煮沸し、0時間の酵素切断サンプルとした。もう1本は、25℃で16時間自己切断した後、5×SDSローディング緩衝液を添加し、100℃で5分間煮沸し、16時間の酵素切断サンプルとした。その後、SDS-PAGE変性ゲルで電気泳動を実行し、各バリアントの0時間、16時間の酵素切断サンプルを検出した。電気泳動後、クマシーブリリアントブルーでゲルを染色し、脱色し、写真を撮った。Image Jソフトウェアで画像を処理して、電気泳動バンドのグレー値を算出した。計算方法は以下の通りである。
【0089】
生体内酵素切断活性=1-酵素切断前の融合タンパク質バンドのグレー値/(酵素切断前の融合タンパク質バンドのグレー値+Avi-TEVPバンドのグレー値×融合タンパク質分子量/Avi-TEVP分子量)。
【0090】
生体外酵素切断効率=1-酵素切断後の融合タンパク質バンドのグレー値/酵素切断前の融合タンパク質バンドのグレー値。
【0091】
表3に示すように、4D、12D、および32Cプロテアーゼバリアントの生体内酵素切断活性は、有意に低下し、4M尿素での生体外切断効率は、いずれも30%以上であった。本発明におけるACTHポリペプチドの調製に用いたTEVプロテアーゼバリアントは、表3に示すいずれかである。本発明でスクリーニングされたTEVプロテアーゼバリアントは、他の組換えポリペプチドおよびタンパク質の調製に使用することができる。
【0092】
表3は、複数のプロテアーゼバリアントとACTHとの融合タンパク質の収量(計算方法:融合タンパク質サンプルとBSA標準品と共に、SDS-PAGE変性ゲルで電気泳動を実行した後、クマシーブリリアントブルー染色溶液で染色し、脱色溶液で背景を取り除き、写真を撮影する。写真におけるBSA標準品バンドのグレー値をサンプルのグレー値と比較してサンプルの濃度を推定し、融合タンパク質の濃度と収量を算出する。)、生体内活性、および4M尿素に対する生体外耐性(対照としてS219Vを使用)を示し、タンパク質バンドのグレー値に基づいて比較する。データは、3つの異なるバッチで発現されたTEVPバリアントの融合タンパク質の収量、および生体内酵素切断と生体外酵素切断の比率の統計結果である。
【表3】
【0093】
注:ここで、融合タンパク質の収量は、酵素切断されていない融合タンパク質を指す。生体内で酵素切断された融合タンパク質は、役に立たないためカウントされない。S219Vは、野生型TEVPの第219位のアミノ酸がセリン(S)からバリン(V)に変異している。
4D:S219Vの第111位のアミノ酸はロイシン(L)からフェニルアラニン(F)に変異し、第138位のアミノ酸はイソロイシン(I)からリジン(K)に変異している。
12D:S219Vの第28位のアミノ酸はヒスチジン(H)からロイシン(L)に変異し、第111位のアミノ酸はロイシン(L)からフェニルアラニン(F)に変異し、第196位のアミノ酸はグルタミン酸(Q)からヒスチジン(H)に変異している。
32C:S219Vの第111位のアミノ酸はロイシン(L)からヒスチジン(H)に変異し、第135位のアミノ酸はセリン(S)からグリシン(G)に変異し、第187位のアミノ酸はメチオニン(M)からイソロイシン(I)に変異している。
【0094】
図1は、TEVp変異体12Dが4M尿素溶液で最も高い酵素切断効率を有することを示す。図2は、TEVp変異体4Dが4M尿素で最も高い酵素切断効率を有することを示す。図3は、TEVp変異体32Cが4M尿素で最も高い酵素切断効率を有することを示す。図4Aおよび4Bは、TEVpバリアント4Dが4M尿素、25℃の条件下で最も高い酵素切断効率を有することを示す。尿素濃度が4Mを超えると、各変異体の酵素切断効率が徐々に低下する。
【0095】
図5は、本発明でスクリーニングされたTEVp変異体4D、12Dおよび32Cの生体内酵素切断活性がS219V対照のそれよりも大幅に低く(0時間バンドの比較に基づく)、生体外酵素切断活性がS219Vと同等またはそれ以下であることを示す。
【0096】
図6は、0.5M尿素における各TEVp変異体の融合タンパク質の溶解度がいずれも低いことを示す(希釈された上清には少量のタンパク質のみがあり、ほとんどのタンパク質は希釈された沈殿物にあった)。これは、TEVP変異体融合タンパク質が0.5M尿素に希釈された後に、沈殿物として存在した。
【0097】
本発明におけるACTHポリペプチドの調製に使用されたTEVプロテアーゼバリアントは、表1に示すいずれかである。本発明でスクリーニングされたTEVプロテアーゼバリアントは、他の組換えポリペプチドおよびタンパク質の調製に使用することができる。
【0098】
実施例2:TEVP-ACTH融合タンパク質によるACTHポリペプチドの調製
1.TEVP-ACTH融合タンパク質発現ベクターの構築
実施例1において、融合タンパク質の酵素切断によって放出されたACTHのカルボキシル末端は、実際の生産において除去される必要があるHisタグを有する。したがって、PCRによってACTH遺伝子の下流に終止コドンを導入する必要がある。具体的には、実施例1の工程3で最も効果があったTEVプロテアーゼバリアント12Dを含むプラスミドをテンプレートとして、PCRによりベクターのオープンリーディングフレームにおけるAvi-TEVP-sTEV-ACTH領域を増幅した(TEVPバリアント12Dの配列は配列番号5であり、ACTH遺伝子の配列は配列番号13である。)。増幅は、KOD-plus DNAハイフィデリティポリメラーゼ(東洋紡)を使用して行った。増幅プログラムは、95℃で2分間の前変性、98℃で10秒間の変性、60℃で30秒間のアニーリング、68℃で1分間12秒間の伸長、30サイクル増幅である。遺伝子の下流に終止コドンを導入した。プライマーは次のとおりである。
TEV-ACTH-F:5-CCACCATGGCCGGTCTGAATGATATTTTTGAAGC-3
TEV-ACTH-R:5-AGAGCGGCCGCTTATTAAAATTCCAGCGGAAATGCTTCTGC-3
【0099】
ここで、下線部分は、それぞれ制限部位Nco1およびNot1である。PCR生成物およびベクターpET-28b(Novagen)を、37℃、Nco1およびNot1で3時間消化した後、断片をゲルで回収し、次に、20℃、T4 DNAリガーゼで2時間ライゲーションした。DH5αコンピテント細胞にライゲーション生成物を形質転換した後、形質転換した生成物をカナマイシン耐性(50μg/ml)LBプレートに塗布し、単一のコロニーが出現するまで培養した。単一のコロニーを選び、プラスミドを抽出し、酵素切断の検証を行った。組換えプラスミドは、Genscriptに委託して配列決定を行い、プラスミドpET-28b-Avi-TEVP-sTEV-ACTH(ここで、sTEV配列はTEVP-ACTHプラスミドにある)を得た。
【0100】
2. TEVP-ACTH融合タンパク質の誘導性発現、精製、酵素切断および検証
構築された発現ベクターを形質転換した。具体的には、50ngのプラスミドpET-28b-TEVP-sTEV-ACTHを、対応する化学コンピテント細胞Rosetta2(DE3)に加え、氷浴に30分間入れ、42℃で45秒間加熱ショックを与え、氷浴に2分間入れた。抗生物質を含まない1mlのLB培地を添加し、37℃で1時間培養した。100μlの細菌溶液を採取して、カナマイシン(50μg/ml)+クロラムフェニコール(34μg/ml)を含むLBプレートに塗布し、単一のコロニーが出現するまで37℃でインキュベートした。
【0101】
TEVP-ACTH融合タンパク質の誘導性発現:単一コロニーを採取し、カナマイシン(50μg/ml)とクロラムフェニコール(34μg/ml)を含むLB液体培地でOD600=0.5~0.8になるまで培養した。体積比1:50で培養物をLB液体培地に接種し、37℃で激しく振とうしながらOD600=0.5~0.8まで培養し、最終濃度2mMのIPTGを加え、37℃で4時間誘導した。発現過程において、TEVP-ACTH融合タンパク質は、不溶性の封入体として存在した。発酵が完了した後、菌体を回収し、超音波で破砕し、洗浄緩衝液(組成:50mM Tris-HCl、200mM NaCl、10mM EDTA、10mM β-メルカプトエタノール、0.5% Triton X-100)で数回洗浄し、TEVP-ACTH融合タンパク質の粗抽出物を得た。変性剤であるグアニジン塩酸塩または尿素を含む緩衝液(組成:50mM Tris-HCl pH8.0、1mM EDTA、2mM DTT、8M尿素または6M GuHCl)を添加し、TEVP-ACTH融合タンパク質を溶解し、変性溶液を調製した。
【0102】
TEVP消化緩衝液(3.556M尿素、50mM Tris-HCl、1mM EDTA、2mM DTT、pH8.0)で融合タンパク質変性溶液を10倍希釈し、尿素の最終濃度を4Mにし、25℃で一晩自己切断した。酵素切断生成物を8倍希釈(希釈液は50mM Tris-HCl pH8.0)した後、TEVプロテアーゼおよび未切断の融合タンパク質は、溶解性が低いため、沈殿(図6を参照)したが、ACTHポリペプチドは、溶液に溶解された。したがって、13000g、低温、高速、4℃で30分間遠心分離した後、上清を回収し、ACTH原液を得た。
【0103】
3. ACTHの精製および保存
0.22μmメンブレンフィルターでACTH原液をろ過して不純物を除去し、1kの限外ろ過遠心管理(Millipore社)で濃縮しながら脱塩し、50%の硫酸アンモニウムで沈殿させた。ACTHは、溶液の上層に懸濁物を形成し、これを注意深く回収してPBSで溶解し、限外濾過によって濃縮および脱塩を行い、高純度のヒトまたはブタ由来の組換えACTHの溶液を得て、次に凍結乾燥して保存した。
【0104】
4. ACTHの構造同定
精製されたACTHの分子量を質量分析計で測定した結果、測定された分子量は理論値と一致した。その結果を図10に示す。
【0105】
5. ACTHの活性測定
2週齢の健康なSDラットを1%ペントバルビタールナトリウム(40mg/kg)で麻酔し、無菌状態で副腎を摘出し、皮膜と髄質を取り除き、ハンクス平衡塩溶液に入れた。1mmの大きさにカットした後、I型コラゲナーゼおよびDNaseを含む消化液に移し、5分間隔で振とうしながら1時間消化した。ピペットを使用して数回ピペッティングすることにより細胞を機械的に分離して懸濁液を形成した。次に、これをセルシーブ(cell sieve)で濾過して50mlの遠心管に入れ、1000×gで10分間遠心分離した。上清を注意深く除去し、沈殿した細胞をハンクス溶液で2回洗浄し、最後に、20%のウシ胎児血清を含むDMEM/F12培地(Gibco)で再懸濁して、濃度を2×10個/mlに調整し、90mmシャーレに接種し、37℃、5%COの条件下でインキュベートした。倒立型位相差顕微鏡で副腎細胞の成長過程および形態変化を観察した。48時間の培養後、顕微鏡下で、副腎細胞は、付着して成長すること、細胞体積が増加していること、細胞体が円形または多角形になること、細胞体が大きいこと、細胞質が透明であること、細胞質中に規則的な大きさの粒子が多数存在していることが観察された。このようにして、ラット副腎皮質細胞を得た。
【0106】
精製されたACTHを、ex vivoでラット副腎皮質細胞とインキュベートした。具体的には、副腎細胞の各グループに、異なる濃度(0.1μU、0.2μU、2μU、20μU、200μU、1U=10μgタンパク質)のACTH(細胞とACTHとの体積比は400:1)をそれぞれ添加した。37℃で24時間培養した後、培地を採取して遠心分離し、細胞破片を除去した後、酵素結合免疫吸着測定法(酵素結合免疫吸着測定法について、He Shangjin et al.“The expression and significance of PCNA in rat adrenal cell culture.”Clinical Urology Journal of Surgery 21.8(2006):625-626を参照)によりコルチコステロン濃度を測定した。その結果、ACTHの濃度が増加するにつれて、コルチコステロンの濃度も徐々に増加することが分かった。ACTHは、細胞を刺激してステロイドホルモンを分泌させるため、生成されたコルチコステロンの濃度を測定することでACTHの活性を定量することができる(ELISA法)。結果は、精製後の複数バッチのACTHが高い生物活性と活性安定性を有することを示した。その結果を図11に示す。
【0107】
上記は、本発明の好ましい実施形態のみを示したものであり、いかなる形態でも本発明を限定するものではない。したがって、本発明の技術的本質に基づいて、本発明の技術構成の内容から逸脱することなく上記の実施形態になされた任意の単純な改変、同等な変更および修正は、依然として本発明の技術構成の範囲内にある。
【0108】
配列番号1(野生型TEVP)
GESLFKGPRDYNPISSTICHLTNESDGHTTSLYGIGFGPFIITNKHLFRRNNGTLLVQSLHGVFKVKNTTTLQQHLIDGRDMIIIRMPKDFPPFPQKLKFREPQREERICLVTTNFQTKSMSSMVSDTSCTFPSSDGIFWKHWIQTKDGQCGSPLVSTRDGFIVGIHSASNFTNTNNYFTSVPKNFMELLTNQEAQQWVSGWGLNADSVLWGGHKVFMSKPEEPFQPVKEATQLMNELVYSQ
配列番号2(ヒトACTHアミノ酸配列)
SYSMEHFRWGKPVGKKRRPVKVYPNGAEDESAEAFPLEF
配列番号3:TEVP(219V)ヌクレオチド配列
GGAGAAAGCTTGTTTAAGGGACCACGTGATTACAACCCGATATCGAGCACCATTTGTCATTTGACGAATGAATCTGATGGGCACACAACATCGTTGTATGGTATTGGATTTGGTCCCTTCATCATTACAAACAAGCACTTGTTTAGAAGAAATAATGGAACACTGTTGGTCCAATCACTACATGGTGTATTCAAGGTCAAGAACACCACGACTTTGCAACAACACCTCATTGATGGGAGGGACATGATAATTATTCGCATGCCTAAGGATTTCCCACCATTTCCTCAAAAGCTGAAATTTAGAGAGCCACAAAGGGAAGAGCGCATATGTCTTGTGACAACCAACTTCCAAACTAAGAGCATGTCTAGCATGGTGTCAGACACTAGTTGCACATTCCCTTCATCTGATGGCATATTCTGGAAGCATTGGATTCAAACCAAGGATGGGCAGTGTGGCAGTCCATTAGTATCAACTAGAGATGGGTTCATTGTTGGTATACACTCAGCATCGAATTTCACCAACACAAACAATTATTTCACAAGCGTGCCGAAAAACTTCATGGAATTGTTGACAAATCAGGAGGCGCAGCAGTGGGTTAGTGGTTGGGGATTAAATGCTGACTCAGTATTGTGGGGGGGCCATAAAGTTTTCATGGTTAAACCTGAAGAGCCTTTTCAGCCAGTTAAGGAAGCGACTCAACTCATGAATGAATTGGTGTACTCGCAA
配列番号4(4D TEVP)
GESLFKGPRDYNPISSTICHLTNESDGHTTSLYGIGFGPFIITNKHLFRRNNGTLLVQSLHGVFKVKNTTTLQQHLIDGRDMIIIRMPKDFPPFPQKLKFREPQREERICFVTTNFQTKSMSSMVSDTSCTFPSSDGKFWKHWIQTKDGQCGSPLVSTRDGFIVGIHSASNFTNTNNYFTSVPKNFMELLTNQEAQQWVSGWGLNADSVLWGGHKVFMVKPEEPFQPVKEATQLMNELVYSQ
配列番号5(12D TEVP)
GESLFKGPRDYNPISSTICHLTNESDGLTTSLYGIGFGPFIITNKHLFRRNNGTLLVQSLHGVFKVKNTTTLQQHLIDGRDMIIIRMPKDFPPFPQKLKFREPQREERICFVTTNFQTKSMSSMVSDTSCTFPSSDGIFWKHWIQTKDGQCGSPLVSTRDGFIVGIHSASNFTNTNNYFTSVPKNFMELLTNQEAHQWVSGWGLNADSVLWGGHKVFMVKPEEPFQPVKEATQLMNELVYSQ
配列番号6(32C TEVP)
GESLFKGPRDYNPISSTICHLTNESDGHTTSLYGIGFGPFIITNKHLFRRNNGTLLVQSLHGVFKVKNTTTLQQHLIDGRDMIIIRMPKDFPPFPQKLKFREPQREERICHVTTNFQTKSMSSMVSDTSCTFPSGDGIFWKHWIQTKDGQCGSPLVSTRDGFIVGIHSASNFTNTNNYFTSVPKNFIELLTNQEAQQWVSGWGLNADSVLWGGHKVFMVKPEEPFQPVKEATQLMNELVYSQ
配列番号7
ENLYFQS
配列番号8
ENLYFQH
配列番号9
EXXYXQ(G/S)
配列番号10(S219V)
GESLFKGPRDYNPISSTICHLTNESDGHTTSLYGIGFGPFIITNKHLFRRNNGTLLVQSLHGVFKVKNTTTLQQHLIDGRDMIIIRMPKDFPPFPQKLKFREPQREERICLVTTNFQTKSMSSMVSDTSCTFPSSDGIFWKHWIQTKDGQCGSPLVSTRDGFIVGIHSASNFTNTNNYFTSVPKNFMELLTNQEAQQWVSGWGLNADSVLWGGHKVFMVKPEEPFQPVKEATQLMNELVYSQ
配列番号11
EXXYXQS
配列番号12:sTEV(実施例で使用されたTEVp制限部位のヌクレオチド配列)
GAAAATCTGTATTTTCAGAGC
配列番号13:ACTH DNAヌクレオチド配列
AGCTATAGCATGGAACATTTTCGTTGGGGTAAACCGGTTGGTAAAAAACGTCGTCCGGTTAAAGTTTATCCGAATGGTGCAGAAGATGAATCGGCAGAAGCATTTCCGCTGGAATTT
配列番号14:TEV(4D)
GGAGAAAGCTTGTTTAAGGGACCACGTGATTACAACCCGATATCGAGCACCATTTGTCATTTGACGAATGAATCTGATGGGCACACAACATCGTTGTATGGTATTGGATTTGGTCCCTTCATCATTACAAACAAGCACTTGTTTAGAAGAAATAATGGAACACTGTTGGTCCAATCACTACATGGTGTATTCAAGGTCAAGAACACCACGACTTTGCAACAACACCTCATTGATGGGAGGGACATGATAATTATTCGCATGCCTAAGGATTTCCCACCATTTCCTCAAAAGCTGAAATTTAGAGAGCCACAAAGGGAAGAGCGCATATGTTTTGTGACAACCAACTTCCAAACTAAGAGCATGTCTAGCATGGTGTCAGACACTAGTTGCACATTCCCCTCATCTGATGGCAAATTCTGGAAGCATTGGATTCAAACCAAGGATGGGCAGTGTGGCAGTCCATTAGTATCAACTAGAGATGGGTTCATTGTTGGTATACACTCAGCATCGAATTTCACCAACACAAACAATTATTTCACAAGCGTGCCGAAAAACTTCATGGAATTGTTGACAAATCAGGAGGCGCAGCAGTGGGTTAGTGGTTGGGGATTAAATGCTGACTCAGTATTGTGGGGGGGCCATAAAGTTTTCATGGTTAAACCTGAAGAGCCTTTTCAGCCAGTTAAGGAAGCGACTCAACTCATGAATGAATTGGTGTACTCGCAA
配列番号15:TEV(12D)
GGAGAAAGCTTGTTTAAGGGACCACGTGATTACAACCCGATATCGAGCACCATTTGTCATTTGACGAATGAATCTGATGGGCTCACAACATCGTTGTATGGTATTGGATTTGGTCCCTTCATCATTACAAACAAGCACTTGTTTAGAAGAAATAATGGAACACTGTTGGTCCAATCACTACATGGTGTATTCAAGGTCAAGAACACCACGACTTTGCAACAACACCTCATTGATGGGAGGGACATGATAATTATTCGCATGCCTAAGGATTTCCCACCATTTCCTCAAAAGCTGAAATTTAGAGAGCCACAAAGGGAAGAGCGCATATGTTTTGTGACAACCAACTTCCAAACTAAGAGCATGTCTAGCATGGTGTCAGACACTAGTTGCACATTCCCTTCATCTGATGGCATATTCTGGAAGCATTGGATTCAAACCAAGGATGGGCAGTGTGGCAGTCCATTAGTATCAACTAGAGATGGGTTCATTGTTGGTATACACTCAGCATCGAATTTCACCAACACAAACAATTATTTCACAAGCGTGCCGAAAAACTTCATGGAATTGTTGACAAATCAGGAGGCGCATCAGTGGGTTAGTGGTTGGGGATTAAATGCTGACTCAGTATTGTGGGGGGGCCATAAAGTTTTCATGGTTAAACCTGAAGAGCCTTTTCAGCCAGTTAAGGAAGCGACTCAACTCATGAATGAATTGGTGTACTCGCAA
配列番号16:TEV(32C)
GGAGAAAGCTTGTTTAAGGGACCACGTGATTACAACCCGATATCGAGCACCATTTGTCATTTGACGAATGAATCTGATGGGCACACAACATCGTTGTATGGTATTGGATTTGGTCCCTTCATCATTACAAACAAGCACTTGTTTAGAAGAAATAATGGAACACTGTTGGTCCAATCACTACATGGTGTATTCAAGGTCAAGAACACCACGACTTTGCAACAACACCTCATTGATGGGAGGGACATGATAATTATTCGCATGCCTAAGGATTTCCCACCATTTCCTCAAAAGCTGAAATTTAGAGAGCCACAAAGGGAAGAGCGCATATGTCATGTGACAACCAACTTCCAAACTAAGAGCATGTCTAGCATGGTGTCAGACACTAGTTGCACATTCCCTTCAGGTGATGGCATATTCTGGAAGCATTGGATTCAAACCAAGGATGGGCAGTGTGGCAGTCCATTAGTATCAACTAGAGATGGGTTCATTGTTGGTATACACTCAGCATCGAATTTCACCAACACAAACAATTATTTCACTAGCGTGCCGAAAAACTTCATTGAATTGTTGACAAATCAGGAGGCGCAGCAGTGGGTTAGTGGTTGGGGATTAAATGCTGACTCAGTATTGTGGGGGGGCCATAAAGTTTTCATGGTTAAACCTGAAGAGCCTTTTCAGCCAGTTAAGGAAGCCACTCAACTCATGAATGAATTGGTGTACTCGCAA
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022504842000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-04-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下の変異からなる群から選択される変異の組合せを含む、TEVプロテアーゼバリアント。
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)への変異、および配列番号1に示される配列の第138位に対応する位置でのイソロイシン(I)からリジン(K)への変異;
配列番号1に示される配列の第28位に対応する位置でのヒスチジン(H)からロイシン(L)への変異、配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からフェニルアラニン(F)への変異、および配列番号1に示される配列の第196位に対応する位置でのグルタミン酸(Q)からヒスチジン(H)への変異;ならびに
配列番号1に示される配列の第111位に対応する位置でのロイシン(L)からヒスチジン(H)への変異、配列番号1に示される配列の第135位に対応する位置でのセリン(S)からグリシン(G)への変異、および配列番号1に示される配列の第187位に対応する位置でのメチオニン(M)からイソロイシン(I)への変異。
【請求項2】
前記のTEVプロテアーゼバリアントが、配列番号1に示される配列の第219位に対応する位置でのセリン(S)からバリン(V)への変異を含む、
請求項1に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項3】
前記のプロテアーゼバリアントが、配列番号4、5または6に示されるアミノ酸配列またはそれらの相同体を含
前記の相同体が、宿主での発現において低い酵素切断活性を有し、好ましくは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するS219Vバリアントよりも低い酵素切断活性を有し、および/または前記のTEVプロテアーゼバリアントが、中/高程度の変性条件下で、好ましくは3M~5Mの尿素、より好ましくは3.5M~4.5Mの尿素、より好ましくは4Mの尿素または1M~2Mのグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mのグアニジン塩酸塩の生体外環境下で、S219Vバリアントの生体外酵素切断活性を保持する、
請求項1または2に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項4】
前記の相同体が、配列番号4、5または6と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項5】
前記の相同体が、配列番号4、5または6と比較して、少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、より好ましくは少なくとも3個、最も好ましくは少なくとも4個のアミノ酸部位の置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含む、
請求項に記載のTEVプロテアーゼバリアント。
【請求項6】
請求項のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントを含む融合タンパク質。
【請求項7】
前記の融合タンパク質が、TEVp-sTEV-Y1構造を含み、
ここで、Y1が、標的ポリペプチドであり;
TEVpが、請求項のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントであり;
sTEVが、TEVプロテアーゼの制限部位であり、EXXYXQG/Sであり、Xが任意のアミノ酸残基であり、好ましくは、前記の制限部位が配列番号7および8から選択さ
TEVpがsTEVを認識して切断することができるという条件下で、TEVpおよびsTEVが、直接接続され、または、1つまたは複数のアミノ酸残基を介して接続され;TEVpがsTEVを認識して切断することができるという条件下で、sTEVおよびY1が、直接接続され、または、1つまたは複数のアミノ酸残基を介して接続され、好ましくはsTEVおよびY1が直接接続される、
請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記の標的ポリペプチドが、ACTH、GLP-1/GLP-2、IFN-α、IFN-γ、Histatin、CCL5、SDF-1α、IGF-1、Leptin、BNP、Ex-4からなる群から選択され、好ましくはACTHであり、好ましくはヒトACTHであり、より好ましくは配列番号2に示されるアミノ酸配列のヒトACTHである、
請求項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアント、または請求項のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列であって、
好ましくは配列番号14~16から選択される、
ポリヌクレオチド配列。
【請求項10】
請求項に記載のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド構築物。
【請求項11】
請求項に記載のポリヌクレオチド配列、または請求項10に記載のポリヌクレオチド構築物を含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項9に記載のポリヌクレオチド配列、または請求項10に記載のポリヌクレオチド構築物、または請求項11に記載の発現ベクターを含む細胞。
【請求項13】
請求項1~のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントを調製する方法であって、
(1)請求項12に記載の細胞の培養に適した条件下で、培地中で前記の細胞を培養すること;
(2)培地を回収するか、または細胞を溶解して、ライセートを回収すること;
(3)精製して前記のTEVプロテアーゼバリアントを得ることを含む、
TEVプロテアーゼバリアントの調製方法。
【請求項14】
標的ポリペプチドの調製における、請求項1~のいずれかに記載のTEVプロテアーゼバリアントの使用であって、
ここで、前記のTEVプロテアーゼバリアントおよび前記の標的ポリペプチドが、融合タンパク質として発現され、好ましくは、融合タンパク質が請求項7または8に記載の融合タンパク質である、
TEVプロテアーゼバリアントの使用。
【請求項15】
標的ポリペプチドを調製する方法であって、
(1)請求項6~8のいずれかに記載の融合タンパク質を適当な条件下で培地中で培養すること;
(2)融合タンパク質の封入体を得ること;
(3)約8Mの尿素または約6Mのグアニジン塩酸塩のような高変性条件下で、封入体を溶解すること;
(4)中/高程度変性条件下で、好ましくは3M~5M尿素、好ましくは3.5M~4.5M尿素、より好ましくは4M尿素または1M~2Mグアニジン塩酸塩、好ましくは1.5Mグアニジン塩酸塩の条件下で、一定の温度、例えば20~40℃、好ましくは25℃で、例えば10~24時間、例えば12時間インキュベートすること;
(5)緩衝液、例えばTris-HCl、好ましくは50mMのTris-HClで希釈した後、TEVプロテアーゼを沈殿させること;
(6)TEVプロテアーゼ沈殿物を除去し、好ましくは遠心分離で除去し、前記の標的ポリペプチドを得ること;
(7)前記の標的ポリペプチドを精製することを含む、
標的ポリペプチドの調製方法。
【国際調査報告】