(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】電気モータを備えるターボ機械を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
F02C 9/48 20060101AFI20220105BHJP
F02K 3/06 20060101ALI20220105BHJP
B64D 27/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
F02C9/48
F02K3/06
B64D27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520364
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2019076660
(87)【国際公開番号】W WO2020078720
(87)【国際公開日】2020-04-23
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラッシ セドリク
(57)【要約】
高圧回転シャフト(22)にトルク導入装置を形成する電気モータ(ME)を備えるターボ機械(T)を制御するための方法であって、この方法では、電気モータ(ME)において提供される燃料流設定値QCMDおよびトルク設定値TRQCMDが決定され、この制御方法が、燃料流設定値QCMDを決定するために第1の燃料制御ループを実行するステップと、トルク設定値TRQCMDを決定するために第2のトルク制御ループを実行するステップであって、i.過渡速度設定値NHTrajAccelCons、NHTrajDecelConsの関数として、トルク修正変数ΔTRQCMDを決定するステップ、およびii.トルク修正変数ΔTRQCMDの関数として、トルク設定値TRQCMDを決定するステップを含むステップとを含む、制御するための方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械(T)を制御するための方法であって、前記ターボ機械(T)が、ガス発生器の上流に位置付けられた、一次空気流と二次空気流を区切るファン(10)を備え、前記一次空気流が、前記ガス発生器を通過し、前記ガス発生器が、低圧コンプレッサ(11)と、高圧コンプレッサ(12)と、燃焼チャンバ(13)と、高圧タービン(14)と、低圧タービン(15)とを備え、前記低圧タービン(15)が、低圧回転シャフト(10)によって前記低圧コンプレッサに接続され、前記高圧タービン(14)が、高圧回転シャフト(22)によって前記高圧コンプレッサ(12)に接続されており、前記ターボ機械が、前記高圧回転シャフト(22)にトルク導入装置を形成する電気モータ(ME)を備え、前記燃焼チャンバ(13)における燃料流設定値(Q
CMD)および前記電気モータ(ME)に提供されるトルク設定値(TRQ
CMD)が決定される方法において、前記制御方法が、
前記燃料流設定値(Q
CMD)を決定するために第1の燃料調整ループ(B1)を実行するステップであって、
i. 速度過渡意図(TopAccel、TopDecel)を、現在速度(NH)と決定された設定値速度(NH
CONS)との差の関数として検出するステップ、
ii. 過渡速度設定値(NHTrajAccelCons、NHTrajDecelCons)を決定するステップ、
iii. 前記過渡速度設定値(NHTrajAccelCons、NHTrajDecelCons)の関数として、燃料修正量(ΔQ
CMD)を決定するステップ、および
iv. 前記燃料修正量(ΔQ
CMD)の関数として、前記燃料流設定値(Q
CMD)を決定するステップ
を含むステップと、
前記トルク設定値(TRQ
CMD)を決定するために第2のトルク調整ループ(B2)を実行するステップであって、
i. 前記過渡速度設定値(NHTrajAccelCons、NHTrajDecelCons)の関数として、トルク修正量(ΔTRQ
CMD)を決定するステップ、および
ii. 前記トルク修正量(ΔTRQ
CMD)の関数として、前記トルク設定値(TRQ
CMD)を決定するステップ
を含むステップと
を含むことを特徴とする、制御するための方法。
【請求項2】
請求項1に記載の制御方法であって、
前記第1の燃料調整ループ(B1)を実行する前記ステップ中に、燃料設定値ストップ(TopButeeAccel、TopButeeDecel)を検出するステップと、
前記第2のトルク調整ループ(B2)を実行する前記ステップ中に、前記トルク設定値(TRQ
CMD)をゼロリセットするステップであって、速度過渡意図(TopAccel、TopDecel)を検出した場合、および燃料設定値ストップ(TopButeeAccel、TopButeeDecel)を検出した場合に、前記トルク設定値(TRQ
CMD)をゼロリセットするステップが阻止される、ステップと
を含むことを特徴とする、制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の制御方法であって、前記トルク設定値(TRQ
CMD)が、好ましくは少なくとも1つの低減勾配に従って徐々にゼロリセットされることを特徴とする、制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の制御方法であって、前記低減勾配が、前記第1の燃料調整ループ(B1)の応答時間の関数であることを特徴とする、制御方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の制御方法であって、前記トルク設定値(TRQ
CMD)を決定するために、前記トルク修正量(ΔTRQ
CMD)を二重積分するステップを含むことを特徴とする、制御方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の制御方法であって、前記トルク設定値(TRQ
CMD)が、前記電気モータ(ME)の構造によって決定される最大トルク値(TRQ
max)と、前記電気モータ(ME)の構造によって決定される最小トルク値(TRQ
min)との間の範囲内にあることを特徴とする、制御方法。
【請求項7】
コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータによって実行されたときに、請求項1から6のいずれか1項に記載の制御方法の前記ステップを実行するための命令を含むことを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のコンピュータプログラムの命令を含むメモリを備えることを特徴とする、ターボ機械用の電子制御ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の電子ユニットを備えることを特徴とする、ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用ターボ機械に関し、詳細には、航空機パイロットの制御レバーの位置の関数として所望の推力を提供するための、ターボ機械の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、ツインスプールのターボファンエンジン式の航空機用ターボ機械100が概略的に示してある。既知の態様では、ターボ機械100は、ガス流の方向における上流から下流に向かって、ファン110と、低圧コンプレッサ111と、高圧コンプレッサ112と、燃料流設定値Q
CMDを受信する燃焼チャンバ113と、高圧タービン114と、低圧タービン115と、排気一次ノズル116とを備える。低圧(LP)コンプレッサ111と低圧タービン115は、低圧シャフト121によって接続され、ともに低圧スプールを形成する。高圧(HP)コンプレッサ112と高圧タービン114は、高圧シャフト122によって接続され、燃焼チャンバも合わせてともに高圧スプールを形成する。LPシャフト121によって駆動されるファン110は、吸入空気を圧縮する。この空気は、ファン110の下流で二次空気流と、いわゆる一次空気流に分割され、二次空気流は、二次ノズル(図示せず)に向かって直接導かれ、この二次ノズルを介して排出されて、ターボ機械100によって提供される推力に加えられ、一次空気流は、低圧スプールと高圧スプールからなるガス発生器に入り、次いで一次ノズル116内に排出される。既知の態様では、ターボ機械100の速度を変更するために、航空機パイロットは制御レバーの位置を変え、それにより燃焼チャンバ113における燃料流設定値Q
CMDを変更することが可能になる。
【0003】
ターボ機械100の設計は、いわゆるポンピング現象に対する充分なマージンを考慮する必要がある。この現象は、コンプレッサのうちの1つのコンプレッサの翼に対して過剰に空気流が入ることによって引き起こされ、関連するコンプレッサの下流で圧力の大きく急激な変動につながり、また燃焼チャンバ113のシャットダウンにつながる恐れがある。この現象はさらに、コンプレッサの翼に対する激しい振動を引き起こし、したがって機械的な損傷につながる恐れがある。したがって、この現象の発生は特に防止されるべきである。使用中のコンプレッサの動作が、図によって全体的に示されており、この図は、出口と入口との間で得られる圧力比を、コンプレッサを通過する空気流量の関数として表しており、さらにこの図は、コンプレッサの回転速度の関数としてパラメータ化されている。この図には、ポンピング現象が発生する危険性をなくすために、超過すべきでない最大圧縮比の制限であるポンピングラインが存在する。既知の態様では、いわゆる動作ラインが規定され、この動作ラインは、ターボ機械100が安定した動作状態にあるときに流量の関数として得られる圧縮比に関する。この動作ラインの配置は、ターボ機械100の設計者の判断に委ねられており、ポンピングラインからのこの動作ラインの距離が、ポンピングマージンを表す。コンプレッサ効率(コンプレッサを回転駆動するために提供される仕事量に対する、空気に与えられる圧縮仕事量)は、第1近似に対し、ポンピングラインに近ければ近いほど良好であることに留意すべきである。その一方で、推力の増大を得るためにパイロットによって求められる、安定した動作からの加速(過渡フェーズ)は、コンプレッサにおいて、ポンピングラインに向かって動作値の逸脱を生じさせることになる。
【0004】
実際、燃焼チャンバ113に追加燃料を噴射すると、慣性力のために回転速度が上がる時間がなくても、圧縮比はほぼ瞬時に上昇する。次いで、追加燃料の燃焼により流体にもたらされるエンタルピーの変動は、各タービンによって提供される仕事量の増大を生じさせ、その結果、対応するスプールの回転速度を上げることになる。コンプレッサの図では、これは結果として、速度が再び安定したときに前の動作値の流量より高い流量に対応した動作値で、動作値を動作ラインに戻すことになる。
【0005】
したがって、ターボ機械100の設計者は、動作ラインを可能な限り高く配置することによってその配置を最適化して、そのコンプレッサのよりよい効率の恩恵を受けるようにしながら、その一方で、安全な加速を可能にするためにポンピングラインから充分な距離を保つよう試みるべきである。
【0006】
いかなるポンピング現象も防止するために、ターボ機械100は、電子ユニットによって実行される調整システムを備える。
図2を参照すると、調整システムは、安定化管理モジュール31と、過渡意図検出モジュール32と、速度軌道生成モジュール33と、選択モジュール34と、積分モジュール35と、停止管理モジュール36とを備える。
【0007】
安定化管理モジュール31は、ターボ機械100の速度NHと設定値速度NHCONSとの差の関数として、修正量を選択モジュール34に提供する。設定値速度NHCONSは、航空機パイロットによって操縦可能な制御レバーの位置に比例する。このような安定化管理モジュール31は、当業者に知られており、さらに詳細な説明はしない。
【0008】
過渡意図検出モジュール32の目的は、パイロットが望む過渡意図を検出することである。過渡意図検出モジュール32は、ターボ機械100の速度NHと設定値速度NHCONSとの差を判定する。制御レバーが定位置に保たれ、安定化管理モジュール31が実行されているとき、ターボ機械100の実際の速度NHは定常状態であり、設定値速度NHCONSに等しい。パイロットが制御レバーを動かすと、設定値速度NHCONSが瞬時に変動する。反対に、ターボ機械100の慣性および安定化管理モジュール31があるため、速度NHは瞬時に変動しない。したがって、過渡意図検出モジュール32は、設定値速度NHCONSと実際の速度NHとの差が所定の閾値S2より大きいときに、過渡意図を検出する。
【0009】
加速要求の場合には、速度の逸脱が所定の閾値S2より大きいとき(NH
CONS-NH>S2)、加速要求が検出される。同様に、減速の場合には、速度の逸脱が所定の閾値S2より大きいとき(NH-NH
CONS>S2)、減速要求が検出される。過渡フェーズが検出されると、過渡意図検出モジュール32は有効化信号を生成し、この有効化信号が、
図2に示す速度軌道生成モジュール33および選択モジュール34に送信される。
【0010】
加速要求の場合、速度軌道生成モジュール33は、加速(加速軌道)用の速度設定値NHTRANJACCを決定する。同様に、減速要求の場合、速度軌道生成モジュール33は、減速(減速軌道)用の速度設定値NHTRANJDECELを決定する。生成される軌道の関数として、速度軌道生成モジュール33は、修正量を選択モジュール34に提供する。
【0011】
このような速度軌道生成モジュール33は、当業者に知られており、特に米国特許出願公開第2013/0008171号および仏国特許出願第2977638(A1)号から知られており、さらに詳細な説明はしない。
【0012】
この例において、選択モジュール34が過渡意図検出モジュール32から有効化信号を受信するとき、有効化信号が受信されなければ、選択モジュール34は安定化管理モジュール31から修正量を選択し、有効化信号が受信された場合には、速度軌道生成モジュール33から修正量を選択する。このような選択モジュール34は、当業者に知られており、さらに詳細な説明はしない。選択された修正量は、積分モジュール35に提供される。積分モジュール35は、選択された修正量を積分することにより、燃料流設定値QCMDを決定する。
【0013】
停止管理モジュール36は、積分モジュール35によって決定された燃料流設定値QCMDの値を制限する。既知の態様では、停止管理モジュール36は、ポンピングからターボ機械を保護するために、当業者に知られているいわゆるC/P停止を実行する。この例では、停止管理モジュール36は、加速および減速における停止設定値を規定できるようにする。このような停止は、当業者に知られており、さらに詳細な説明はしない。
【0014】
速度軌道生成モジュール33および停止管理モジュール36は、加速軌道を規定できるようにし、これが結果として、ポンピングを防止するために燃料流設定値QCMDを制限することになる。このような調整システムは、仏国特許出願第2977638(A1)号から知られており、さらに詳細な説明はしない。なお、調整中に加速設定値を考慮することにより、過渡中にポンピングからエンジンを保護することが知られている(たとえば、米国特許第4543782号および米国特許出願公開第2003/0094000号を参照)。
【0015】
図3を参照すると、パイロットの制御レバーによって決定された設定値速度NH
CONS、所定の加速軌道NH
TRANJACC、および現在速度NHが、上側部分に示してある。下側部分には、最大停止燃料流Q
MAX(+++線で示す)、最小停止燃料流Q
MIN(---線で示す)、燃料流設定値Q
CMD(実線で示す)が示してある。
【0016】
パイロットが速度NHCONSの加速を指令したとき、現在の燃料設定値QCMDは、燃料停止モジュール36によって決定された最大停止燃料流QMAXによって制限されていることから、現在速度NHは遅延を伴ってゆっくり上がる。実際、QMAXによるQCMDの飽和は体系的ではなく、所定の加速軌道NHTRANJACCによって課される加速の強度、およびポンピングに対して利用可能なマージンに応じて異なる。このマージンが、速度軌道に追従するのに必要な加速度と両立不可能な場合には、QMAXによってQCMDが制限されることにつながり、現在速度NHは加速軌道NHTRANJACCに追従することができない。制限は、ポンピングに関する加速要求の範囲内で規定されるが、同じことが、ターボ機械のシャットダウンに対するマージンに関する減速要求にも当てはまる。
【0017】
過渡フェーズ中(加速中、減速中など)にターボ機械の応答時間を改善するために、ターボ機械に電気モータを装備して、ポンピング現象につながることなくターボ機械の速度を上げるための付加的な電気トルクを提供することが実現されている。この目的のために、低圧シャフトから動力を取り込み、高圧シャフトに動力を導入するための電気モータを備えた航空機用ターボ機械が、国際公開第2016/020618号から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0008171号明細書
【特許文献2】仏国特許出願第2977638号明細書
【特許文献3】米国特許第4543782号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0094000号明細書
【特許文献5】国際公開第2016/020618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の1つの目的は、充分なポンピングマージンを確保し、電気モータの電力消費を制限しながら、ターボ機械の応答時間を最適化するために、電気モータによって提供される電気トルクを最適に調整できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的のために、本発明は、ターボ機械を制御するための方法であって、ターボ機械が、ガス発生器の上流に位置付けられた、一次空気流と二次空気流を区切るファンを備え、一次空気流が、前記ガス発生器を通過し、ガス発生器が、低圧コンプレッサと、高圧コンプレッサと、燃焼チャンバと、高圧タービンと、低圧タービンとを備え、前記低圧タービンが、低圧回転シャフトによって前記低圧コンプレッサに接続され、前記高圧タービンが、高圧回転シャフトによって前記高圧コンプレッサに接続されており、ターボ機械が、高圧回転シャフトにトルク導入装置を形成する電気モータを備え、燃焼チャンバにおける燃料流設定値Q
CMDおよび電気モータに提供されるトルク設定値TRQ
CMDが決定される方法において、制御方法が、
燃料流設定値Q
CMDを決定するために第1の燃料調整ループを実行するステップであって、
i. 速度過渡意
図TopAccel、TopDecelを、現在速度NHと決定された設定値速度NH
CONSとの差の関数として検出するステップ、
ii. 過渡速度設定値NHTrajAccelCons、NHTrajDecelConsを決定するステップ、
iii. 過渡速度設定値NHTrajAccelCons、NHTrajDecelConsの関数として、燃料修正量ΔQ
CMDを決定するステップ、および
iv. 燃料修正量ΔQ
CMDの関数として、燃料流設定値Q
CMDを決定するステップ
を含むステップと、
トルク設定値TRQ
CMDを決定するために第2のトルク調整ループを実行するステップであって、
i. 過渡速度設定値NHTrajAccelCons、NHTrajDecelConsの関数として、トルク修正量ΔTRQ
CMDを決定するステップ、および
ii. トルク修正量ΔTRQ
CMDの関数として、トルク設定値TRQ
CMDを決定するステップ
を含むステップと
を含む、制御するための方法に関する。
【0021】
本発明により、特にターボ機械のポンピングまたはシャットダウンを防止するための制限に起因して第1の燃料ループの調整が制限されるとき、第2のトルク調整ループが、第1の燃料ループと連帯的に作用することを可能にする。したがって、ターボ機械の現在速度は、反応的に軌道設定値に追従することができる。ターボ機械の動作性は、こうして改善される。
【0022】
さらに第2のトルク調整ループは、有利には、ターボ機械のポンピングおよびシャットダウンの制限を拡張できるようにして、燃料設定値のより良好な調節を可能にする。言い換えれば、第2のトルク調整ループは、有利には、第1の燃料調整ループを改善することを可能にする。有利には、第2のトルク調整ループは、第1の燃料調整ループに取って代わるのではなく、動作制限に到達したときに第1の調整ループをサポートする。これは、速度調整の基本原理が乱されず、確実な調整が保証されることを意味する。
【0023】
好ましくは、制御方法は、
第1の燃料調整ループを実行するステップ中に、燃料設定値ストップTopButeeAccel、TopButeeDecelを検出するステップと、
第2のトルク調整ループを実行するステップ中に、トルク設定値TRQ
CMDをゼロリセットするステップであって、速度過渡意
図TopAccel、TopDecelを検出した場合、および燃料設定値ストップTopButeeAccel、TopButeeDecelを検出した場合に、トルク設定値TRQ
CMDをゼロリセットするステップが阻止される、ステップと
を含む。
【0024】
有利には、制御方法は、トルク設定値TRQCMDをゼロリセットするステップであって、継続的に実行されるが、燃料設定値調整の制限に到達したときには阻止されるステップを含む。言い換えれば、過剰な電力消費を防止するために、電気トルクは継続的には使用されない。燃料設定値調整の制限に到達したとき(ポンピング、シャットダウンなど)、電気トルクが高圧シャフトに導入されて、制限を拡張することが可能になる。言い換えれば、電気トルクは、導入されると、第1の燃料調整ループに調整マージンを提供する。このマージンが得られると、トルク設定値TRQCMDは、特に徐々に、ゼロリセットされてもよい。
【0025】
好ましくは、トルク設定値TRQCMDは、好ましくは少なくとも1つの低減勾配に従って徐々にゼロリセットされる。徐々にゼロリセットされることは、急なゼロリセットと反対であり、急なゼロリセットは、ターボ機械の速度の乱れを生じさせる。低減勾配に従って徐々にゼロリセットすることにより、第2のトルク調整ループがその影響を低減させて第1の燃料調整ループがその影響を回復できるようになる速度を制御できるようになる。
【0026】
好ましくは、低減勾配は、第1の燃料調整ループの応答時間の関数である。言い換えれば、ゼロリセット速度は、第1の燃料調整ループの関数として決定されることから、最適である。こうして、第2のトルク調整ループの影響の低減が、第1の燃料調整ループによって直接補填される。
【0027】
有利には、制御方法は、トルク設定値TRQCMDを決定するために、トルク修正量ΔTRQCMDを二重積分するステップを含む。二重積分は、永久にゼロの速度誤差を確保し、したがって所定の加速時間または減速時間を確保することから、有利である。
【0028】
好ましくは、トルク設定値TRQCMDは、電気モータMEの構造によって決定される最大トルク値TRQmaxと、電気モータMEの構造によって決定される最小トルク値TRQminとの間の範囲内にある。
【0029】
また、本発明は、コンピュータプログラムであって、前記プログラムがコンピュータによって実行されたときに、上に説明した制御方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラムに関する。また本発明は、前記コンピュータプログラムを記録するための媒体に関する。上述した記録媒体は、プログラムを記憶可能な任意のエンティティまたは装置とすることができる。たとえば、媒体は、ROM、たとえばCD-ROMもしくは超小型電子回路ROM、または磁気記録媒体、たとえばハードディスクなどの記憶媒体を備えてもよい。その一方で、記録媒体は、電気ケーブルもしくは光ケーブル、無線、または他の手段によって搬送されることが可能な電気信号または光信号などの伝送可能な媒体に対応してもよい。本発明によるプログラムは、特にインターネットタイプのネットワークにダウンロードされてもよい。あるいは、記録媒体は、プログラムが組み込まれる集積回路であって、当該の方法を実行するように適合された、または当該の方法を実行する際に使用されるように適合された集積回路に対応してもよい。
【0030】
また、本発明はさらに、上に説明したコンピュータプログラムからの命令を含むメモリを備える、ターボ機械用の電子制御ユニットに関する。
また、本発明は、上に説明した電子ユニットを備えるターボ機械に関する。
【0031】
単に例として提供される以下の説明を読み、添付図面を参照すると、本発明がよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】先行技術による燃料流設定値調整システムの概略図である。
【
図3】先行技術による、パイロットの加速指令の結果としてエンジン速度および燃料流設定値の増大を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態によるターボ機械の概略図である。
【
図5】本発明による、燃料流設定値およびトルク設定値の調整システムを示す概略図である。
【
図6】
図5の調整システムの第1の燃料調整ループを示す概略図である。
【
図7】
図5の調整システムの第2のトルク調整ループを示す概略図である。
【
図8】
図7の第2のトルク調整ループの積分モジュールを示す概略図である。
【
図9】本発明による、パイロットの加速指令の結果としてエンジン速度、燃料流設定値、およびトルク設定値の増大を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
これらの図は、本発明を実行するために本発明を詳細に開示しており、当然ながらこれらの図は、必要に応じて本発明をより明確に定義するために使用されてもよいことに留意すべきである。
【0034】
図4を参照すると、ツインスプールのターボファンエンジン式の航空機用ターボ機械Tが概略的に示してある。既知の態様では、ターボ機械Tは、ガス流の方向における上流から下流に向かって、ファン10と、低圧コンプレッサ11と、高圧コンプレッサ12と、燃料流設定値Q
CMDを受信する燃焼チャンバ13と、高圧タービン14と、低圧タービン15と、排気一次ノズル16とを備える。低圧(LP)コンプレッサ11と低圧タービン15は、低圧シャフト21によって接続され、ともに低圧スプールを形成する。高圧(HP)コンプレッサ12と高圧タービン14は、高圧シャフト22によって接続され、燃焼チャンバ13も合わせてともに高圧スプールを形成する。LPシャフト21によって駆動されるファン10は、吸入空気を圧縮する。この空気は、ファンの下流で二次空気流と、いわゆる一次空気流に分割され、二次空気流は、二次ノズル(図示せず)に向かって直接導かれ、この二次ノズルを介して排出されて、ターボ機械Tによって提供される推力に加えられ、一次空気流は、低圧スプールと高圧スプールからなるガス発生器に入り、次いで一次ノズル16内に排出される。既知の態様では、ターボ機械Tの速度を変更するために、航空機パイロットは制御レバーの位置を変え、それにより燃焼チャンバ13における燃料流設定値Q
CMDを変更することが可能になる。
【0035】
図4を参照すると、ターボ機械Tは、付加的なトルクを高圧シャフト22に提供するように構成された電気モータMEをさらに備える。ターボ機械Tの動作は、電子ユニット20によって制御され、この電子ユニット20は、ターボ機械Tの動作パラメータ、特にターボ機械Tの速度NHを表す信号を取得して、燃料流設定値Q
CMDおよびトルク設定値TRQ
CMDを電気モータMEに提供する。
【0036】
図5に示してあるように、電子ユニット20は、第1の燃料流設定値Q
CMD調整ループB1(以下「第1の燃料ループB1」と呼ぶ)と、第2の電気トルク設定値TRQ
CMD調整ループB2(以下「第2のトルクループB2」と呼ぶ)とを備える調整システムを備える。
図5に示してあるように、第1の燃料ループB1は、
- ターボ機械Tの速度NH入力と、
- 航空機パイロットによって操縦可能な制御レバーの位置によって規定される設定値速度NH
CONS入力と、
- ターボ機械Tに送信される燃料流設定値Q
CMD出力と、
- 複数の出力指標とを備え、複数の出力指標は、
- 加速過渡要求の指標TopAccel、
- 減速過渡要求の指標TopDecel、
- 加速C/P停止による修正子制御の飽和によって規定される加速停止の指標TopButeeAccel、
- シャットダウンC/P停止による修正子制御の飽和によって規定される減速停止の指標TopButeeDecel、
- 加速用の速度軌道設定値NHTrajAccelCons、
- 減速用の速度軌道設定値NHTrajDecelCons
である。
さらに
図5を参照すると、第2のトルクループB2は、第1の燃料ループB1によって生成されたすべての出力指標、すなわちTopAccel、TopDecel、TopButeeAccel、TopButeeDecel、NHTrajAccelCons、NHTrajDecelConsとともに、ターボ機械Tの速度NH入力を、入力として受信する。有利には、この調整システムにより、第2のトルクループB2は、高い優先度を維持している燃料ループB1の挙動の関数として適応性のあるトルク設定値TRQ
CMDを提供することが可能になる。
【0037】
この例において第1の燃料ループB1は、燃焼チャンバPS3への静圧入力も備える。
【0038】
各ループB1、B2の構造および動作を、ここで詳細に説明する。
【0039】
第1の燃料調整ループB1
既知の態様では、
図6を参照すると、第1の燃料ループB1は、安定化管理モジュール301と、過渡意図検出モジュール302と、速度軌道生成モジュール303と、選択モジュール304と、積分モジュール305と、積分の飽和関数、したがって燃料制御Q
CMDの飽和関数を満たす停止管理モジュール306とを備える。
【0040】
下記に説明するように、速度軌道生成モジュール303は、この軌道を制御するための指令を生成するようにも構成される。
【0041】
安定化管理モジュール301は、ターボ機械Tの速度NHと設定値速度NHCONSとの差の関数として、修正量を選択モジュール304に提供する。このような安定化管理モジュール301は、当業者に知られており、さらに詳細な説明はしない。
【0042】
過渡意図検出モジュール302の目的は、パイロットが望む過渡意図を検出することである。過渡意図検出モジュール302は、ターボ機械Tの速度NHと設定値速度NHCONSとの差を判定する。制御レバーが定位置に保たれ、安定化管理モジュール301が実行されているとき、ターボ機械Tの実際の速度NHは定常状態であり、設定値速度NHCONSに等しい。パイロットが制御レバーを動かすと、設定値速度NHCONSが瞬時に変動する。反対に、ターボ機械Tの慣性および安定化管理モジュール301があるため、速度NHは瞬時に変動しない。したがって、過渡意図検出モジュール302は、設定値速度NHCONSと実際の速度NHとの差が所定の閾値S3より大きいときに、過渡意図を検出する。
【0043】
本発明によれば、過渡意図検出モジュール302は、加速過渡要求の指標TopAccelおよび減速過渡要求の指標TopDecelも提供する。加速の場合には、速度の逸脱が所定の閾値S3より大きいとき(NHCONS-NH>S3)、加速過渡要求の指標TopAccelが有効化される。この機能は、比較器である加速サブモジュール302aにおいて実行される。同様に、減速の場合には、速度の逸脱が所定の閾値S3より大きいとき(NH-NHCONS>S3)、減速過渡要求の指標TopDecelが有効化される。この機能は、比較器である減速サブモジュール302dにおいて実行される。例として、閾値S3は200rpmである。
【0044】
過渡フェーズが検出されると、過渡意図検出モジュール302は有効化信号を生成し、この有効化信号が、
図6に示す速度軌道生成モジュール303および選択モジュール304に送信される。
【0045】
加速の場合、速度軌道生成モジュール303は、加速(加速軌道)用の速度設定値NHTrajAccelConsを決定する。同様に、減速の場合、速度軌道生成モジュール303は、減速(減速軌道)用の速度NH設定値NHTrajDecelConsを決定する。このような速度軌道生成モジュール303は、当業者に知られており、さらに詳細な説明はしない。さらに、生成モジュール303は、必要に応じて、軌道設定値に追従することが可能になる修正量を生成するようにも構成される。
【0046】
この例では、選択モジュール304が過渡意図検出モジュール302から有効化信号を受信するとき、有効化信号が受信されなければ、選択モジュール304は安定化管理モジュール301から修正量を選択し、有効化信号が受信された場合には、速度軌道生成モジュール303から修正量を選択する。このような選択モジュール304は、当業者に知られており、さらに詳細な説明はしない。
【0047】
選択された燃料修正量ΔQCMDは、積分モジュール305に提供される。積分モジュール305は、燃料修正量ΔQCMDを積分することにより、燃料流設定値QCMDを決定する。
【0048】
停止管理モジュール306は、積分モジュール305によって決定された燃料流設定値QCMDの値を制限する。既知の態様では、停止管理モジュール306は、当業者に知られているいわゆるC/P停止を実行する。この例では、停止管理モジュール306は、加速および減速における停止設定値を規定できるようにする。この目的のために、加速の場合、停止管理モジュール306は、加速C/P停止による修正子制御の飽和の指標TopButeeAccelを規定できるようにする。同様に、減速の場合、停止管理モジュール306は、シャットダウンC/P停止による修正子制御の飽和の指標TopButeeDecelを規定できるようにする。このような停止は、当業者に知られており、さらに詳細な説明はしない。好ましくは、停止管理モジュール306は、燃焼チャンバPS3における静圧および速度NH(高圧スプール速度)の関数として停止を決定する。
【0049】
上に示したように、このような調整は、ターボ機械Tに送信される燃料設定値QCMDを制限するためには最適であるが、かなりの応答時間を生じさせる。
【0050】
この欠点をなくすために、第2のトルクループB2が第1の燃料ループB1に結合されて、最適なトルク設定値TRQCMDが決定される。この目的のために、先行技術とは異なり、第1の燃料ループB1は、第2のトルクループB2に対して様々な出力指標、すなわちTopAccel、TopDecel、NHTrajAccelCons、NHTrajDecelCons、TopButeeAccel、TopButeeDecelを通信する。
【0051】
第2のトルク調整ループB2
第2のトルク調整ループB2の目的は、電気モータMEを節約して使用することである。したがって、トルク設定値TRQCMDは、軌道が制限され(TopButeeAccelまたはTopButeeDecel)、速度設定値NHCONSと実際の速度NHとの間の逸脱が、過渡制御(TopAccelまたはTopDecel)を有効化する必要性を示すときのみ有効化される。言い換えれば、トルク設定値TRQCMDは、燃料設定値QCMDがその動作範囲内に制限されるときのみ、有効化される。
【0052】
下記に説明するように、提供された電気トルクTRQCMDにより、動作値は動作制限から逸脱することが可能になり、したがって燃料設定値QCMDを再度適合させるための制御マージンが提供される。本発明により、第1の燃料ループB1と第2のトルクループB2は交代してターボ機械Tの動作性(応答時間など)を改善し、それと同時に、電気モータMEによる電力消費を制限する。
【0053】
図7を参照すると、第2のトルク調整ループB2は、指令決定モジュール401と、ゼロリセットモジュール402と、積分モジュール403と、スイッチ404とを備える。
【0054】
指令決定モジュール401は、
- ターボ機械の現在速度NH入力と、
- トルク指令の設定値量を提供する加速(加速軌道)用の速度NH設定値NHTrajAccelConsと、
- トルク指令の設定値量を提供する減速(減速軌道)用の速度NH設定値NHTrajDecelConsと
を含む。
【0055】
指令決定モジュール401は、減速サブモジュール401dおよび加速サブモジュール401aを備え、これらはそれぞれ、加速(加速トルク)用のトルク指令TRQTrajAccelCmdと、減速(減速トルク)用のトルク指令TRQTrajDecelCmdを計算するように構成される。
【0056】
この例では、加速サブモジュール401aは、加速(加速トルク)用の第2の導関数型の修正量TRQTrajAccelCmdを、加速(加速軌道)用の速度NH設定値NHConsおよび現在速度NH入力の関数として計算する。好ましくは、加速サブモジュール401aは、以下の伝達関数
【数1】
を満たす積分二重積分器型の修正子の形態であり、
ここで、
- Kは所定の逆定数であり、
- τ
NH、τ
Transit、およびτ
BFは、所定の時定数である。
【0057】
このような加速サブモジュール401aの構造は、当業者に知られている。減速サブモジュール401dの構造および機能も類似している。
【0058】
図7を参照すると、積分モジュール403による積分の前に、減速における減速指令または加速における加速指令を選択するために、スイッチ404によって指令の選択が実行される。
【0059】
ゼロリセットモジュール402は、第1の燃料ループB1からの複数の入力指標、すなわち
- 加速過渡要求の指標TopAccel、
- 減速過渡要求の指標TopDecel、
- 加速C/P停止による修正子制御の飽和によって規定される加速停止の指標TopButeeAccel、
- シャットダウンC/P停止による修正子制御の飽和によって規定される減速停止の指標TopButeeDecel
を含む。
【0060】
ゼロリセットモジュール402の目的は、トルク設定値TRQCMDをゼロリセットすることである。下記に説明するように、ゼロリセットは突然行われるのではなく、徐々に行われる。ゼロリセットモジュールは、継続的に実行される。それでもなお、ゼロリセットは、以下の場合に阻止される。
- 加速が要求されたとき、およびすでに加速ストップに到達しているとき(TopAccelおよびTopButeeAccelが有効)、または
- 減速が要求されたとき、およびすでに減速ストップに到達しているとき(TopDecelおよびTopButeeDecelが有効)。
【0061】
第1の燃料ループB1の燃料設定値QCMDが、許容された動作範囲から逸脱することが望まれるとき、ゼロリセットモジュール402はゼロリセットされない。したがって、トルク設定値TRQCMDは、動作値を動作制限から逸脱できるようにする。トルク設定値TRQCMDをゼロリセットすることは、燃料設定値QCMDによる調整が可能なときにのみ開始される。
【0062】
言い換えれば、第2のトルクループB2は、第1の燃料ループB1と相乗的に作用する。第2のトルクループB2は、第1の燃料ループB1をサポートする。したがって、安定化した速度では、トルク設定値TRQCMDがゼロリセットされて、電力消費が制限され効率が改善される。
【0063】
図7を参照すると、積分モジュール403は、
- スイッチ404からのトルク修正量ΔTRQ
CMDを受信する修正入力と、
- 電気モータMEの構造によって決定される最大トルク値TRQ
maxと、
- 電気モータMEの構造によって決定される最小トルク値TRQ
minと、
- ゼロリセットモジュール402によって提供されるゼロリセットRAZ入力と、
- トルク設定値TRQ
CMD出力と
を含む。
【0064】
この例では、積分モジュール403は、トルク修正量ΔTRQCMDを積分するための二重積分器である。これにより、永久にゼロの速度誤差が確保され、したがって所定の加速時間または減速時間が確保される。
【0065】
積分モジュール403の例が、
図8に詳細に示してある。この実装形態の例では、積分モジュール403は、トルク設定値TRQ
CMDをいくつかの傾斜または勾配に応じて規定できるようにする。
図8を参照すると、積分モジュール403は、積分器51、52の飽和値を計算するための2つのモジュールを含む。
【0066】
図8に示してあるように、電気機械MEの制約に関する最大トルクTRQmaxの制限と最小トルクTRQminの制限を満たすために、また電気モータMEの物理構造によって計算モジュール51、52の要求が制限された場合に備えて、計算モジュール51、52の発散を防止するために、2つの計算モジュール51、52は飽和させられることになる。
【0067】
各計算モジュール51、52は、トルク設定値TRQCMDの値を徐々に低減するために、ゼロリセットRAZ入力を含む。
【0068】
実際、付加的なまたは不足した機械的トルク設定値TRQCMDは、過渡が終了したら抑制されなくてはならない。実際、過渡に使用されるトルクは、もはや必ずしも現在の必要性に対応しておらず、望ましくない過剰な電力消費を生じさせることから、維持されなくてもよい。
【0069】
例として、減速の場合には、第2のトルクループB2は、決定された軌道に応じて速度NHを低減できるようにするため、抵抗トルクTRQCMDを課し、ターボ機械Tは、過渡の終わりにアイドル速度に到達する。抵抗トルクTRQCMDが、安定化したアイドルフェーズにおいて減速中に維持されると、次いでアイドル状態を維持するために必要な燃料が、この抵抗トルクを不必要に補填しなくてはならず、このことは、この動作フェーズにおいてもはや有用ではない。この場合、効率が損なわれる。この認識は、加速の終了フェーズ、および加速と減速が交互に行われるフェーズに当てはまる。
【0070】
図7に示してあるように、ゼロリセットRAZ指標は、それぞれの積分器51、52が有効にされたときに、ゼロリセットされることを可能にする。しかし、電気トルクTRQが急激に抑制されすぎることによる速度NHの乱れを防止するために、トルク設定値TRQ
CMDは、所定の勾配、この例では低減勾配QKGS(図示せず)に応じて緩やかに低減される。実際には、この例において、積分器の値が記憶され、過去の値の関数として徐々にゼロリセットされる。ゼロリセットRAZ指標がもはやゼロに向かっていないとき、積分器の値は再び増大し始める。
【0071】
有利には、低減勾配QKGSは、第1の燃料ループB1の応答時間の関数として事前決定されており、この応答時間は、試験およびシミュレーションによって得られる。したがって、第2のトルクループB2の積分モジュール403は、速度NHに対するその影響を低減し、これにより、供給されている電気トルクによって、動作値が制限QMAX、QMINから逸脱できるようになっているので、有利には、第1の燃料ループB1が燃料設定値QCMDを効果的に適応させることが可能になる。第1の燃料ループB1によって行われる補填は当然であり、制御されている。
【0072】
言い換えれば、第2のトルクループB2は、過渡中に第1の燃料ループB1を解放する。したがって、トルク設定値TRQCMDは、トルク調整を有効化するための条件が消失したときに、ゼロリセットされる。
【0073】
電気機械MEによって供給されたトルク設定値TRQCMDを抑制することは、同時に燃料設定値QCMDを適合させることによって補填されなくてはならず、そうでなければ、速度NHの乱れが体系的になる。有利には、燃料設定値QCMDを適合させることが自動で行われ、第2のトルクループB2において第1の燃料ループB1のための新規の指標を計算することは不要である。
【0074】
燃料流設定値QCMDおよび電気トルク設定値TRQCMDが決定される、ターボ機械の制御方法の実装形態の例を、ここで説明する。
【0075】
実装形態のこの例では、
図9に示してあるように、パイロットが制御レバーを操作して、ターボ機械Tの速度を時点t1(=5秒)において上げる。
【0076】
第1の調整ループB1は、過渡意図検出モジュール302を介して速度過渡を検出し、加速過渡要求の指標TopAccelを発する。同様に、速度軌道生成モジュール303は、加速(加速軌道)用の速度設定値NHTrajAccelConsを決定する。
図9に示してあるように、加速軌道は傾きの形態である。さらに、停止管理モジュール306は、燃料流設定値Q
CMDの値を制限し、最大燃料設定値Q
MAXを課す加速停止設定値TopStopAccelを規定する。
【0077】
時点t1とt2の間に規定された期間P1-2中には、最大燃料設定値QMAXによって燃料設定値QCMDが制限されることから、現在速度NHは、加速軌道設定値NHTrajAccelConsより低い。
【0078】
この期間P1-2中に、トルク設定値TRQ
CMDは時点t2まで徐々に増大する(
図9では慣例により、トルク増大は負の値を有する)。トルク設定値TRQ
CMDが増大するとき、現在速度NHは、付加的電気トルクに起因して増大し、反応的に加速軌道NHTrajAccelConsに追従することが可能になり、このことは非常に有利である。さらに、トルク設定値TRQ
CMDが増大するとき、燃料設定値Q
CMDは最大燃料設定値Q
MAXから逸脱し、したがって、もはや制限されることのない燃料設定値Q
CMDの調整範囲が提供される。
【0079】
また、時点t2とt3の間に規定される期間P2-3中には、現在速度NHが加速軌道NHTrajAccelConsに反応的に追従するように、第1の燃料ループB1によって、燃料設定値Q
CMDを適合させることが可能になる。燃料設定値Q
CMDが最大燃料設定値Q
MAXから逸脱するので、加速停止設定値TopStopAccelはもはや有効化されない。また、トルク設定値TRQ
CMDをゼロリセットすることが、期間P2-3にわたって実行されてもよい。
図9に示すように、ゼロリセットは、現在速度NHを急激に低下させないように、また第1の燃料ループB1が調整を引き継ぐことを可能にするように、徐々に実行される。
【0080】
時点t3において、時点t1と同様に、燃料設定値QCMDは、最大燃料設定値QMAXによって制限される。次いで、加速停止設定値TopStopAccelが有効化され、トルク設定値TRQCMDのゼロリセットが阻止されて、トルク設定値TRQCMDが再び増大する。時点t3において、トルク設定値TRQCMDには、取り消されるべき時間がなかった。同様に、時点t3とt4の間に規定された期間P3-4にわたって、最大燃料設定値QMAXによって燃料設定値QCMDが制限されることから、現在速度NHは、加速軌道設定値NHTrajAccelConsより低い。トルク設定値TRQCMDは、時点t4まで徐々に増大する。
【0081】
本発明によって、電気モータMEは、最適な軌道追従を可能にし、燃料設定値QCMD用の調整マージンを提供するように、節約して使用される。第1の燃料ループB1および第2のトルクループB2は、速度軌道の追従を最適化し、したがってターボ機械Tの動作性を改善するために、相乗的に実行される。
【0082】
当然ながら、これらの指標のうちの一部のみが使用されてもよい。同様に、当然ながら、他の指標を使用して、トルク設定値調整が精緻化されてもよい。
【国際調査報告】