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特表2022-5048813,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(BP-TMC)を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(BP-TMC)を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/20 20060101AFI20220105BHJP
   C07C 37/74 20060101ALI20220105BHJP
   C07C 39/17 20060101ALI20220105BHJP
   C07C 37/84 20060101ALI20220105BHJP
   C07C 37/86 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C07C37/20
C07C37/74
C07C39/17
C07C37/84
C07C37/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520366
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(85)【翻訳文提出日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2019076926
(87)【国際公開番号】W WO2020078743
(87)【国際公開日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】18201372.2
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイレン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】スライツ エリック
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィング ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデン アインデ ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ベッゲル フランツ
(72)【発明者】
【氏名】メタクサス コンスタンティノス
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC25
4H006AD11
4H006AD15
4H006AD33
4H006BC10
4H006BC51
4H006FC22
4H006FC52
4H006FE13
(57)【要約】
本発明は、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。特に、本発明は、ガス状酸性触媒の存在下で、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとフェノールとからの3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。この製造は、連続的に行うことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程:
(a)初期量の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン及び初期量のフェノールを含む初期混合物を準備し、或る量のガス状酸性触媒の存在下でこの初期混合物を反応させる工程、
(b)3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール、フェノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、ガス状酸性触媒、水、及び副生成物を含む反応混合物を得る工程であって、前記フェノールは未反応のフェノールであり、かつ、前記3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンは未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンである、工程、
(c)得られた反応混合物から、ガス状酸性触媒及び水を除去する工程、
(d)前記未反応のフェノール、前記未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、及び前記副生成物から、得られた3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールのうち、多量、好ましくは70重量%~95重量%の量、より好ましくは80重量%~90重量%の量を分離する工程、
並びに、次いで、以下のいずれかの工程:
(e1)工程(d)で得られた、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール、前記未反応のフェノール、前記未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、及び前記副生成物を含有する(d)の残余反応混合物のうち、多量、好ましくは90重量%~99.9重量%の量、より好ましくは95重量%~99重量%の量を工程(a)に戻す工程、及び、
(f)工程(d)で得られた、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール、前記未反応のフェノール、前記未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、及び前記副生成物を含有する(d)の残余反応混合物のうち、少量、好ましくは10重量%~0.1重量%の量、より好ましくは5重量%~1重量%の量を除去して、廃棄物回収及び廃棄物除去する工程、
又は、
(e2)工程(d)で得られた、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール、前記未反応のフェノール、前記未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、及び前記副生成物のうち、少量、好ましくは50重量%~90重量%の量、より好ましくは60重量%~80重量%の量を工程(a)に戻す工程、
又は、
(e3)工程(d)で得られた、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール、前記未反応のフェノール、前記未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、及び前記副生成物のうち、少量、好ましくは50重量%~90重量%の量、より好ましくは60重量%~80重量%の量を除去して、廃棄物回収及び廃棄物除去する工程、
を含む、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン及びフェノールから、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールを製造する方法。
【請求項2】
連続的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(c)において、前記反応混合物から、ガス状酸性触媒及び水を、蒸留によって、好ましくは底部を有する蒸留塔を用いて除去し、底部温度が好ましくは最大で130℃であり、より好ましくは120℃~125℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)において、前記未反応のフェノール、前記未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、及び前記副生成物から、得られた3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールのうち、多量、好ましくは90重量%~99.9重量%の量、より好ましくは95重量%~99重量%の量を、少なくとも以下の工程:
(d1)得られた3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールを、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物に変換する工程、及び、
(d2)前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物を、結晶化及び濾過によって分離する工程、
によって分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(d3)において、得られた3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物を、フェノール中で再結晶化することによって、少なくとも純度99.9重量%に精製する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(d4)において、前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物から、好ましくは乾燥によって、フェノールを除去することにより分離した3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン-ビスフェノール-フェノール付加物から3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
初期量の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンが、或る量の新たに添加した3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンと、或る量の未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとを含み、新たに添加した3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの量と、未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの量とのモル比が、2:1~15:1、好ましくは3:1~12:1、より好ましくは5:1~10:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記初期量のフェノールが、或る量の新たに添加したフェノールと、或る量の未反応のフェノールとを含み、新たに添加したフェノールの量と、未反応のフェノールの量とのモル比が、1:3未満、好ましくは1:7~1:4である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)において、前記初期混合物が、5重量%~25重量%、好ましくは10重量%~15重量%の副生成物、又は1重量%~4重量%、好ましくは2重量%~3重量%の副生成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水を添加しない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンと、フェノールとの反応を反応容器、好ましくは撹拌槽型反応器又はループフロー型反応器、特に撹拌槽型反応器で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記反応容器内の反応温度が、少なくとも30℃、かつ、最大で40℃、好ましくは少なくとも33℃、かつ、最大で37℃である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールが、95重量%超、好ましくは98重量%超、より好ましくは99重量%超、最も好ましくは99.9重量%超の純度で得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)において、未反応のフェノールの量と、未反応の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンの量と、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの量と、水の量と、副生成物の量との合計を100重量%として、得られた反応混合物が、55重量%~70重量%のフェノール、5重量%未満の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、15重量%~22重量%の3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール、3.5重量%~5.5重量%のガス状酸性触媒、0.5重量%~2重量%、好ましくは約1重量%の水、及び5重量%~20重量%の副生成物を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。特に、本発明は、ガス状酸性触媒の存在下で、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンとフェノールとからの3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノールの製造に関する。この製造は、連続的に行うことが好ましい。
【背景技術】
【0002】
ガス状酸性触媒の存在下、反応容器中で、第1の反応物質である3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(以下、TMC-oneという)と、第2の反応物質であるフェノールとから3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(以下、BP-TMCともいう)を製造すること自体は既知である。
【0003】
その反応は、基本的に以下のように進む。
【化1】
【0004】
特許文献1には、酸性触媒の存在下で、TMC-oneとフェノールとからBP-TMCを製造することが既に開示されている。特許文献1は、TMC-one及びフェノールからBP-TMCを形成する反応で得られるTMC-oneの収率を高めることにも対処している。この点、特許文献1では、フェノールとTMC-oneとを、少なくとも90モル%のケトンが反応するまで、前反応で反応させ、次いで、この反応混合物に、更なる量のフェノール及び/又は芳香族炭化水素を後反応で添加することが提案されている。さらに、特許文献1では、副生成物の生成によって、TMC-oneの収率が低下することが開示されている。
【0005】
欧州特許出願公開第1277723号には、酸性触媒の存在下で、ケトンとフェノールとからビスフェノールを製造することも既に開示されている。酸性触媒は、例えば、ガス状の塩化水素と硫化水素との混合物とすることができる。さらに、欧州特許出願公開第1277723号は、ケトン、例えば3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンと、フェノールとの反応から得られるビスフェノールの収率を高めることにも対処している。この点、欧州特許出願公開第1277723号では、水の添加によって、反応速度を低下させるか、又は反応を完全に止めることが提案されている。そして、欧州特許出願公開第1277723号では、ビスフェノールから、副生成物及び反応成分をできるだけ完全に分離することが教示されている。
【0006】
欧州特許出願公開第1277723号の内容は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0007】
欧州特許出願公開第1277723号によると、欧州特許出願公開第1277723号)において、ビスフェノールA(2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン(BPA))に対して達成することができる最大の選択性は、95.5%である。しかしながら、欧州特許出願公開第1277723号では、そのような高い選択性は、不連続プロセスに対してのみ開示されている。
【0008】
BP-TMCに関しても、収率が高いことが望ましい。BP-TMCは、BPAの製造と比較すると反応速度論が異なり、分解傾向がより高いため、そのような高収率を達成することはより困難である。特に、TMC-oneの初期量に対する、TMC-one及びフェノールからのBP-TMC形成の収率として、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の収率を達成することが望まれている。
【0009】
追加的には、BP-TMCを連続的に製造する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0995737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、TMC-oneの初期量に対する、TMC-one及びフェノールからのBP-TMC形成の収率として、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の収率を達成することを目的とする。
【0012】
本発明は、好ましくは連続プロセスにおいて、形成の収率を達成することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、請求項1の対象によって、本発明の目的が達成される。続く請求項において、好ましい実施の形態が記載される。
【0014】
特に、本発明の目的は、少なくとも以下の工程:
(a)初期量のTMC-one及び初期量のフェノールを含む初期混合物を準備し、或る量のガス状酸性触媒の存在下でこの初期混合物を反応させる工程、
(b)BP-TMC、フェノール、TMC-one、溶解酸性触媒(ガス状酸性触媒に由来し、この時点ではこの生成物流体に溶解している)、水、及び副生成物を含む反応混合物を得る工程であって、フェノールは未反応のフェノールであり、かつ、TMC-oneは未反応のTMC-oneである、工程、
(c)得られた反応混合物から、溶解酸性触媒及び水を除去する工程、
(d)未反応のフェノール、未反応のTMC-one、及び副生成物から、得られたBP-TMCのうち、多量、好ましくは70重量%~95重量%の量、より好ましくは80重量%~90重量%の量を分離する工程、
並びに、次いで、以下のいずれかの工程:
(e1)工程(d)で得られた、BP-TMC、未反応のフェノール、未反応のTMC-one、及び副生成物を含有する(d)の残余反応混合物のうち、多量、好ましくは90重量%~99.9重量%の量、より好ましくは95重量%~99重量%の量を工程(a)に戻す工程、及び、
(f)工程(d)で得られた、BP-TMC、未反応のフェノール、未反応のTMC-one、及び副生成物を含有する(d)の残余反応混合物のうち、少量、好ましくは10重量%~0.1重量%の量、より好ましくは5重量%~1重量%の量を除去して、廃棄物回収及び廃棄物除去する工程、
又は、
(e2)工程(d)で得られた、BP-TMC、未反応のフェノール、未反応のTMC-one、及び副生成物のうち、少量、好ましくは50重量%~90重量%の量、より好ましくは60重量%~80重量%の量を工程(a)に戻す工程、
又は、
(e3)工程(d)で得られた、BP-TMC、未反応のフェノール、未反応のTMC-one、及び副生成物のうち、少量、好ましくは50重量%~90重量%の量、より好ましくは60重量%~80重量%の量を除去して、廃棄物回収及び廃棄物除去する工程、
を含む、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン(TMC-one)及びフェノールから、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール(BP-TMC)を製造する方法によって達成される。
【0015】
工程(d)において、未反応のフェノール、未反応のTMC-one、及び副生成物から分離される、得られたBP-TMCのうちの多量とは、得られたBP-TMCの量と、未反応のフェノールの量と、未反応のTMC-oneの量と、副生成物の量との合計に対して、約10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%である。
【0016】
副生成物は、例えば、BP-TMCの異性体である。初期混合物、及びこの混合物から得られる反応混合物は、不可避不純物も含む。これらの不可避不純物は、例えば、反応物質及び触媒によって導入される。当業者であれば、全ての主要な不可避不純物の種類及び量が分かる。副生成物は、本発明の意味においては、不可避不純物ではない。
【0017】
驚くべきことに、TMC-oneの初期量に対する、TMC-one及びフェノールからのBP-TMC形成の収率として、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の収率が達成されることが分かった。
【0018】
この方法は、連続的に又は不連続的に行うことができるが、連続的に行うことが好ましい。
【0019】
TMC-oneと、フェノールとの反応を反応容器、好ましくは撹拌槽型反応器又はループフロー型反応器、特に撹拌槽型反応器で行うことが更に好ましい。
【0020】
更に驚くべきことに、連続プロセスの場合、工程(e1)又は工程(e2)をより頻繁に行う方が、TMC-one及びフェノールからのBP-TMC形成の収率がより高くなることが分かった。これは、工程(e1)又は工程(e2)のいずれかを含む本発明によるプロセスを2回行う、すなわち、プロセスを2サイクル行った後は、工程(e1)又は工程(e2)のいずれかを含む本発明によるプロセスを1回だけ行う、すなわち、プロセスを1サイクルだけ行った後よりも、TMC-one及びフェノールからのBP-TMC形成の収率がより高くなることを意味する。更に驚くべきことに、工程(e1)又は工程(e2)のいずれかを含む本発明によるプロセスを3回行う、すなわち、プロセスを3サイクル行った後は、工程(e1)又は工程(e2)のいずれかを含む本発明によるプロセスを2回だけ行う、すなわち、プロセスを2サイクルだけ行った後よりも、TMC-one及びフェノールからのBP-TMC形成の収率がより高くなった。よって、例えば、TMC-one及びフェノールからのBP-TMC形成の収率は、1サイクル後では約82%であり、2サイクル後では約96%であり、3サイクル後では99%超であることが分かった。
【0021】
理論に縛られるものではないが、当業者であれば、特に工程(c)で、得られた反応混合物から溶解酸性触媒及び水を除去する際に、得られたBP-TMCが分解又は除去されると考え、収率が高まるとは予想しないので、これらの結果は予想に反するものであった。よって、特にその増加率は驚くべきものである。本発明の意味において、プロセス1サイクルとは、少なくとも工程(a)及び工程(b)が行われる反応容器内の初期混合物の体積に対応する体積が反応容器を通過するときに行われる。
【0022】
工程(c)において、反応混合物から、溶解酸性触媒及び水を、蒸留によって、好ましくは底部を有する蒸留塔を用いて除去し、底部温度が好ましくは最大で130℃であり、より好ましくは120℃~125℃であることが更に好ましい。
【0023】
工程(d)において、未反応のフェノール、未反応のTMC-one、及び副生成物から、得られたBP-TMCのうち、多量、好ましくは70重量%~95重量%の量、より好ましくは80重量%~90重量%の量を、少なくとも以下の工程:
(d1)得られたBP-TMCを、結晶化によってBP-TMC-フェノール付加物に変換する工程、及び、
(d2)BP-TMC-フェノール付加物を、濾過によって分離する工程、
によって分離することが更に好ましい。
【0024】
工程(d3)において、得られたBP-TMC-フェノール付加物を、フェノール中で再結晶化することによって、少なくとも純度99.9重量%に精製することが更に好ましい。
【0025】
工程(d4)において、BP-TMC-フェノール付加物から、好ましくは乾燥によって、フェノールを除去することにより分離したBP-TMC-フェノール付加物からBP-TMCを得ることが更に好ましい。
【0026】
初期量のTMC-oneが、或る量の新たに添加したTMC-oneと、或る量の未反応のTMC-oneとを含み、新たに添加したTMC-oneの量と、未反応のTMC-oneの量とのモル比が、2:1~15:1、好ましくは3:1~12:1、より好ましくは5:1~10:1であることが更に好ましい。
【0027】
初期量のフェノールが、或る量の新たに添加したフェノールと、或る量の未反応のフェノールとを含み、新たに添加したフェノールの量と、未反応のフェノールの量とのモル比が、1:3以下、好ましくは1:7~1:4であることが更に好ましい。
【0028】
特に、本発明による方法が、工程(e1)及び工程(f)、又は工程(e2)を含むが、工程(e3)を含まない場合、工程(a)において、初期混合物が、5重量%~25重量%、好ましくは10重量%~15重量%の副生成物を含むことが更に好ましい。代替的には、特に、本発明による方法が、工程(e3)を含むが、工程(e1)及び工程(f)、又は工程(e2)を含まない場合、工程(a)において、初期混合物が、1重量%~4重量%、好ましくは2重量%~3重量%の副生成物を含むことが好ましい。
【0029】
本発明による方法では、水を添加しないことが更に好ましい。
【0030】
ガス状酸性触媒が、塩化水素及び硫化水素を含有することが更に好ましい。
【0031】
反応容器内の反応温度が、少なくとも30℃、かつ、最大で40℃、好ましくは少なくとも33℃、かつ、最大で37℃であることが更に好ましい。反応容器内の圧力が、少なくとも1bar(絶対圧力)、かつ、最大で10bar(絶対圧力)、好ましくは少なくとも1bar(絶対圧力)、かつ、最大で5bar(絶対圧力)、最も好ましくは少なくとも1bar(絶対圧力)、かつ、最大で2bar(絶対圧力)であることが好ましい。
【0032】
反応を三相条件下で行うことが好ましい。これは、反応容器内に、固体成分、液体成分、及び気体成分が同時に存在することを意味する。これらの成分は、反応物質であるTMC-one及びフェノール、触媒、生成物であるBP-TMC、水、並びに副生成物である。さらに、上記で説明したように不可避不純物も存在し得る。生成したBP-TMCの大部分、すなわち、得られるBP-TMCのうち、90重量%超、好ましくは95重量%超が、BP-TMC-フェノール付加物の結晶の形態にて固体状で存在する。生成したBP-TMCのごく一部、すなわち、得られたBP-TMCのうち、10重量%未満、好ましくは5重量%未満が、フェノールに溶解する。
【0033】
BP-TMCが、95重量%超、好ましくは98重量%超、より好ましくは99重量%超、最も好ましくは99.9重量%超の純度で得られることが更に好ましい。
【0034】
工程(b)において、未反応のフェノールの量と、未反応のTMC-oneの量と、BP-TMCの量と、水の量と、副生成物の量との合計を100重量%として、得られた反応混合物が、55重量%~70重量%のフェノール、5重量%未満のTMC-one、15重量%~22重量%のBP-TMC、3.5重量%~5.5重量%の溶解酸性触媒、0.5重量%~2重量%、好ましくは約1重量%の水、及び5重量%~20重量%の副生成物を含むことが更に好ましい。
【0035】
得られたBP-TMCは、ポリカーボネートの製造、例えば、特に相界面法又は溶融エステル交換法において、使用することができる。
【国際調査報告】