(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】グラフト化ポリ乳酸を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/06 20060101AFI20220105BHJP
C08L 51/08 20060101ALI20220105BHJP
C08J 3/21 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08L101/06
C08L51/08
C08J3/21 CFD
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520396
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(85)【翻訳文提出日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2019077087
(87)【国際公開番号】W WO2020074445
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(71)【出願人】
【識別番号】521148614
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ネザーランズ ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラプセル イノ
(72)【発明者】
【氏名】ピエステルト フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】アルデリンク エヴァート ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヘーン リサ
(72)【発明者】
【氏名】ギーセン パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】クレラー トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ラプセル アンドレ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AB11
4F070AB22
4F070AB24
4F070AC83
4F070AC88
4F070FA03
4F070FA17
4F070FC05
4J002BG071
4J002BN172
4J002CD191
4J002FA001
4J002GG02
4J002HA09
(57)【要約】
エポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸とを含む組成物であって、上記エポキシド官能性ポリマーは、1000g/mol~10000g/molの数平均分子量を有し、上記ポリ乳酸は、酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されており、かつ10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する、組成物が提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸とを含む組成物であって、前記エポキシド官能性ポリマーは、DIN 55672のパート2(2008年)に従って測定される1000g/mol~10000g/molの数平均分子量を有し、前記ポリ乳酸は、酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されており、かつDIN EN ISO 2114に従って測定される10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する、組成物。
【請求項2】
前記エポキシド官能性ポリマーは、エポキシド官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび別のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合生成物であるコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グラフト化ポリ乳酸は、前記酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または前記酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーならびに酸官能基も酸無水物官能基も含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性コモノマーを含むモノマーの混合物によってグラフト化されている、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は粒子の形であり、それぞれの粒子は、コアと前記コアの表面の少なくとも一部を覆う第1の被覆とを含み、前記コアは前記エポキシド官能性ポリマーを含み、前記第1の被覆は前記グラフト化ポリ乳酸を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の被覆は、1.0mgKOH/gから最大で10.0mgKOH/gまでの量でカルボン酸基を含むポリ乳酸を更に含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、前記エポキシド官能性ポリマーを含む粒子と前記グラフト化ポリ乳酸を含む粒子とのブレンドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記エポキシド官能性ポリマーと前記グラフト化ポリ乳酸との間の重量比は、2:1~1:2である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ポリ乳酸ブレンドを処理する方法であって、
a.以下:
i. 1.0mgKOH/gから最大で10.0mgKOH/gまでの量でカルボン酸基を含むポリ乳酸、
ii. 1000g/mol~10000g/molの数平均分子量を有するエポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマー、および、
iii. 酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されており、かつ10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する、グラフト化ポリ乳酸、
を準備する工程と、
b. 前記準備された成分を混合する工程と、
c. 前記混合物を溶融処理する工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
工程aにおいて、前記成分iiおよび前記成分iiiは、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物として準備される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は、請求項4~6のいずれか一項による粒子の形で準備される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記グラフト化ポリ乳酸は、0.1重量%~2.0重量%の量で、好ましくは0.1重量%~1.0重量%の量で準備され、ここで、前記重量%は、前記混合物中の前記成分i、前記成分ii、および前記成分iiiの重量に対して計算される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記エポキシド官能性ポリマーは、エポキシド官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび別のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合生成物であるコポリマーである、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記エポキシド官能性ポリマーは、工程aのiiにおいて、0.1重量%~2.0重量%の量で、好ましくは0.1重量%~1.0重量%の量で準備され、ここで、前記重量%は、前記混合物中の前記成分i、前記成分ii、および前記成分iiiの重量に対して計算される、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶融処理は、150℃から250℃の間の温度で、30秒~120秒、好ましくは30秒~60秒で実施される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融処理は、前記溶融処理された混合物を含むフィルムを形成することを含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項8~15のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるポリ乳酸生成物。
【請求項17】
フィルムの形状を有する、請求項16に記載のポリ乳酸生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフト化ポリ乳酸を含む組成物に関する。さらに、本発明は、ポリ乳酸ブレンドを処理する方法、および本発明による方法によって得ることができるポリ乳酸生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能な原材料を基礎とするポリマーを改質することで、より多くの利用分野への適用可能性が高められる。ポリ乳酸は再生可能なポリマーとして知られており、昨今多くの利用分野で使用され得る。しかしながら、ポリ乳酸の不利点の1つは、原材料の線形構造に基づくポリ乳酸原材料の限られた溶融強度である。ポリ乳酸の多くの用途には、例えば、ポリ乳酸フィルム、例えばインフレーションフィルムおよびキャストフィルムを作製するため、およびポリ乳酸を含有する発泡製品を作製するために、より高い溶融強度を有するポリ乳酸組成物が望まれる。
【0003】
特許文献1は、ポリ乳酸をエポキシ官能性アクリレートポリマーと反応させて、ポリ乳酸ポリマーに長鎖分岐を導入することによって、分岐状ポリ乳酸を作製する方法を記載している。エポキシ官能性アクリレートポリマーは、1分子あたり平均2個~15個の遊離エポキシド基を含む。この作製方法では、エポキシ官能性アクリレートポリマーのエポキシド基とポリ乳酸のカルボン酸末端基との反応によって、エポキシ官能性アクリレートポリマーがポリ乳酸に結合される。得られる分岐状ポリ乳酸は遊離エポキシド基を含む。
【0004】
非特許文献1には、エポキシ官能性アクリレートポリマーを用いた反応性押出による、PLA、PBAT、およびそれらのブレンドの熱安定性、レオロジー特性、および機械的特性の改善が記載されている。特定の例では、ポリ乳酸の反応性押出が、連鎖延長剤/分岐剤として記載され、グリシジルメタクリレートモノマーを含む、商品名Joncrylとして市販されているスチレン-アクリルコポリマーを用いて実施された。
【0005】
ポリ乳酸含有フィルムは、カルボン酸末端基を含むポリ乳酸と上記エポキシ官能性アクリレートポリマーとの混合物を溶融処理することによって作製される。この混合物中の上記エポキシ官能性アクリレートポリマーの量は最大で1重量%であり、ここで、重量%は、該混合物の総重量に対して計算される。
【0006】
ポリ乳酸を改質するための上記エポキシ官能性アクリレートポリマーの使用の不利点は、エポキシ官能性アクリレートポリマーのエポキシド基の限られた反応性のせいで、分岐状ポリ乳酸を形成する溶融処理が比較的遅いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,566,753号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】ポリマー・デグラデーション・アンド・スタビリティ(Polymer Degradation and Stability)97巻(2012年)第1898頁~第1914頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の問題を解決するポリ乳酸ポリマーが継続的に必要とされている。本発明の特定の実施形態は、溶融処理工程で処理されるポリ乳酸ブレンドの溶融強度を高める組成物を提供することを目的としている。本発明の特定の実施形態は、ポリ乳酸ブレンドの溶融強度を高めるための溶融処理時間を短縮するポリ乳酸ブレンドを処理する方法を提供することを目的としている。本発明の特定の実施形態は、ポリ乳酸ブレンドを処理する改善された方法を使用してポリ乳酸生成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸とを含む組成物であって、上記エポキシド官能性ポリマーは、1000g/mol~10000g/molの数平均分子量を有し、上記ポリ乳酸は、酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されており、かつ10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する、組成物を提供する。
【0011】
上記組成物は、エポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸とを含み、ここで、上記エポキシド官能性ポリマーは、1000g/mol~10000g/molの数平均分子量を有し、上記グラフト化ポリ乳酸は、10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する。グラフト化ポリ乳酸のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の量は、末端に酸末端基のみを有するポリ乳酸よりも多い。グラフト化ポリ乳酸は、グラフト化反応の結果としてグラフト化ポリ乳酸の鎖に沿った位置でポリ乳酸に結合された酸基および/または酸無水物基を含む。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、エポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸とを含む組成物であって、上記エポキシド官能性ポリマーは、100g/mol~4000g/molの範囲のエポキシド基当たりの分子量を有し、上記ポリ乳酸は、酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されており、かつ10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する、組成物を提供する。
【0013】
異なる実施形態では、本発明は、エポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸とを含む組成物であって、上記ポリ乳酸は、酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されており、かつ10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する、組成物を提供する。
【0014】
本発明の別の態様では、ポリ乳酸ブレンドを処理する方法であって、
a. 以下:
i. 1.0mgKOH/gから最大で10.0mgKOH/gまでの量でカルボン酸基を含むポリ乳酸、
ii. 1000g/mol~10000g/molの数平均分子量を有するエポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマー、および、
iii. 少なくとも酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されており、かつ10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する、グラフト化ポリ乳酸、
を準備する工程と、
b. 準備された成分を混合する工程と、
c. 混合物を溶融処理する工程と、
を含む、方法が提供される。
【0015】
さらなる態様では、本発明による方法によって得ることができるポリ乳酸生成物が提供される。
【0016】
本発明は、分岐状ポリ乳酸樹脂を含有するポリ乳酸生成物を製造する順応性のある効果的な方法を提供する。エポキシド官能性ポリマーおよびグラフト化ポリ乳酸を通常のポリ乳酸と組み合わせて含む混合物の溶融処理の間に、ポリ乳酸成分の分岐反応が増強され、加速される。分岐反応は、エポキシド官能性ポリマーのエポキシド基とグラフト化ポリ乳酸の酸基および/または酸無水物基との反応によって増強される。
【0017】
本発明では、ポリ乳酸生成物のレオロジー特性に対する優れた制御を達成することができる。特に、溶融物および/または得られるポリ乳酸生成物の他の所望の特性を実質的に一定に維持しながら、グラフト化ポリ乳酸を含有する溶融物の上記方法の溶融処理工程の間に、より短時間で溶融粘度を高めることができる。溶融処理工程の間に形成された分岐状ポリ乳酸ポリマーは、例えば、押出コーティングで加工される場合に、対応する線状ポリ乳酸ポリマーと比較して減少したネックインおよびより高いウェブ安定性を示し、フィルム押出およびシート押出、発泡、ブロー成形、ならびに押出発泡の操作でより簡単に加工される。
【0018】
エポキシド官能性ポリマー(ii)
エポキシド官能性ポリマーは、エポキシド官能基を含み、ここで、エポキシド官能性ポリマーは、1000g/mol~10000g/molの数平均分子量を有する。エポキシド官能基は、溶融処理工程の間にカルボン酸基に対して反応性である。
【0019】
分子当たりのエポキシド官能性ポリマーのエポキシド基の平均量は、分子当たり1個のエポキシド基から分子当たり100個のエポキシド基までの範囲内であり得る。本発明の利点は、エポキシド官能性ポリマーが、分子当たり2個~15個のエポキシド基、好ましくは分子当たり3個~10個のエポキシド基、より好ましくは分子当たり4個~8個のエポキシド基の範囲内の分子当たりのエポキシド基の平均量を有する場合に特に明らかになる。
【0020】
エポキシド官能性ポリマーは、適切には、100g/mol~4000g/mol、好ましくは150g/mol~700g/mol、より好ましくは20g/mol~400g/molの範囲内のエポキシド基当たりの分子量を有し得る。エポキシド官能性ポリマーは、1000g/mol~10000g/mol、適切には1500g/mol~5000g/mol、より適切には1800g/mol~4000g/molの数平均分子量を有する。数平均分子量は、DIN 55672のパート2(2008年)に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(溶離液:テトラヒドロフラン、標準:ポリスチレン)によって測定される。
【0021】
例示的な実施形態では、エポキシド官能性ポリマーは、エポキシド官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび別のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合生成物であるコポリマーである。
【0022】
エポキシド官能性ポリマーは、エポキシド官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび別のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合反応によって作製される。上記エポキシド官能性ポリマーは、共重合反応によって簡単に作製され得る。さらに、エポキシド官能性ポリマーの分子量および分子当たりのエポキシド官能性ポリマーのエポキシド基の平均量は、共重合反応に使用されるエポキシド官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーの量および他のエチレン性不飽和重合性モノマーの量を選択することによって簡単に制御され得る。
【0023】
例示的な実施形態では、エポキシド官能性ポリマーは、少なくとも1つのエポキシド官能性アクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートモノマーならびに少なくとも1つの他のアクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートモノマーによって作製されるアクリレートコポリマーである。
【0024】
エポキシ官能性モノマーは、エポキシド基と少なくとも1つのアクリル(CH2=CH-C(O)-)基またはメタクリル(CH2=C(CH3)-C(O)-)基とを含む。グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートは、そのようなエポキシ官能性モノマーの例である。追加のモノマーは、例えば、メタクリルモノマー、アクリルモノマー、ビニル芳香族モノマー、またはこれらの2つ以上の混合物であり得る。追加のモノマーは「非官能性」であり、これは、追加のモノマーが、PLA樹脂と反応する基、特に樹脂上のヒドロキシル末端基またはカルボキシル末端基と反応性である基を欠いていることを意味する。追加のモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、スチレン、ビニルナフタレンなど、または上記の2つ以上の混合物であり得る。好ましいコポリマーは、エポキシ官能性アクリルモノマーまたはメタクリルモノマー、少なくとも1つの追加のアクリレートモノマーまたはメタクリレートモノマー、およびスチレンなどのビニル芳香族モノマーのコポリマーである。
【0025】
アクリレートポリマーまたはコポリマーは、米国特許第6,552,144号明細書に記載される重合法に従って簡便に作製される。
【0026】
適切なアクリレートコポリマーは、BASF Resins B.V.社からJoncryl(登録商標)の商品名で市販されている。特に好ましい製品には、Joncryl(登録商標)4300、Joncryl(登録商標)4368、およびJoncryl(登録商標)4369のポリマーが含まれる。
【0027】
グラフト化ポリ乳酸(iii)
グラフト化ポリ乳酸は、酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーでグラフト化されたポリ乳酸であり、かつ10.0mgKOH/gから60.0mgKOH/gの間のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量を有する。
【0028】
グラフト化ポリ乳酸のカルボン酸基およびカルボン酸無水物基の総量は、典型的には、ポリ乳酸鎖または複数のポリ乳酸鎖(分岐状ポリ乳酸樹脂の場合)の末端にのみカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するポリ乳酸よりも多い。グラフト化ポリ乳酸は、グラフト化過程の結果としてグラフト化ポリ乳酸の鎖に沿った位置でポリ乳酸に結合された酸基および/または酸無水物基を含む。
【0029】
好ましくは、グラフト化ポリ乳酸は、ポリ乳酸鎖または複数のポリ乳酸鎖の末端にカルボン酸末端基および/またはカルボン酸無水物基を更に含む。カルボン酸末端基および/またはカルボン酸無水物基の量は、0.5~2.0の分子当たりの上記末端基、好ましくは1.0~2.0の分子当たりの上記末端基の範囲内であり得る。
【0030】
好ましくは、グラフト化ポリ乳酸は、2つの末端基を有する鎖状連結構造(catenated structure)を有する。グラフト化ポリ乳酸の鎖状連結構造は、1つのポリ乳酸鎖を有する。代替的に、グラフト化ポリ乳酸は、3つ以上の末端基を有する分岐状構造を有する。グラフト化ポリ乳酸の分岐状構造は、互いに結合されている少なくとも2つのポリ乳酸鎖を有する。
【0031】
酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーの例は、カルボン酸基を有する不飽和カルボン酸モノマーである。
【0032】
酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーの例は、カルボン酸無水物官能基を有するエチレン性不飽和重合性モノマーまたはその官能性誘導体である。
【0033】
不飽和カルボン酸モノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸などの2個~20個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸モノマーである。
【0034】
不飽和無水物モノマーの官能性誘導体の例には、これらの不飽和無水物モノマーのモノエステル誘導体、モノアミド誘導体、および金属塩(アルカリ金属塩など)が含まれる。
【0035】
これらのグラフト化モノマーは、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸シクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、およびx-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、ならびにマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アリルコハク酸無水物、シクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチルシクロヘキサ-4-エン-1,2-ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、およびx-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,2-ジカルボン酸無水物を含む。無水物グラフト化モノマーの官能性誘導体の例には、上述の例示的な無水物モノマーのモノエステル誘導体、モノアミド誘導体、および金属塩(アルカリ金属塩など)が含まれる。
【0036】
好ましいグラフト化モノマーは、無水マレイン酸である。
【0037】
上記グラフト化反応
ポリ乳酸をグラフト化するための処理条件は、適切には、有機過酸化物およびアゾ化合物などのラジカル発生剤の存在下で実施される。55℃~150℃の範囲内の1時間半減期温度(TH/1h)を有するラジカル発生剤が好ましい。適切な例は、ジアルキルペルオキシジカーボネート、例えば、ジブチルペルオキシジカーボネートおよびジセチルペルオキシジカーボネート(TH/1h=65℃)、ジラウリルペルオキシド(TH/1h=80℃)、ジベンゾイルペルオキシド(TH/1h=91℃)、tert.-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート(TH/1h=91℃)、tert.-ブチルペルオキシイソブチレート(TH/1h=98℃)、1,1-ジ(tert.-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(TH/1h=113℃)、tert.-ブチルペルベンゾエート(TH/1h=122℃)、ジクミルペルオキシド(TH/1h=132℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert.-ブチルペルオキシ)-ヘキサン(TH/1h=134℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert.-ブチルペルオキシ)ヘキシン-(3)(TH/1h=141℃)、およびジ-tert.-ブチルペルオキシド(TH/1h=141℃)である。
【0038】
ポリ乳酸をグラフト化するグラフト化反応は、好ましくは、ポリ乳酸の軟化温度または溶融温度を下回って固相で実施される。固相反応の利点は、非常に低い含有量の残留モノマー、例えば、グラフト化ポリ乳酸の重量に対して計算して0.01重量%以下の残留モノマーを達成することができることである。
【0039】
例示的な実施形態では、グラフト化ポリ乳酸は、上記酸官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーおよび/または上記酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーならびに酸官能基も酸無水物官能基も含まない少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性コモノマーを含むモノマーの混合物によってグラフト化されている。
【0040】
酸官能基も酸無水物官能基も含まない上記少なくとも1つのエチレン性不飽和重合性コモノマーもコモノマーと呼称される。これらのコモノマーは、上述の酸官能性および/または酸無水物官能性のエチレン性不飽和重合性モノマーのグラフト化反応を増強する活性化モノマーであり得る。
【0041】
これらの活性化コモノマーの例としては、このリストは網羅的な性質のものではないが、スチレンモノマーが含まれる。本明細書では、スチレンモノマーは、スチレンの化学構造を有する任意のモノマーまたはモノマーの組み合わせを意味すると理解されるべきである。スチレンモノマーの例としては、以下の、スチレン、α-メチルスチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロペニルトルエン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、ビニルビフェニル、ジメチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、アセトキシスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸、桂皮酸、または桂皮酸アルキルを挙げることができる。
【0042】
活性化コモノマーには、1,1-ジフェニルエチレン、スチルベン、フェニルアセチレン、ビニルピリジン、2-イソプロペニルナフタレン、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、シクロペンテン、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルスルフィド、フェニルビニルエーテル、アルキルフェニルビニルエーテル、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ナフチル、フラン、インドール、ビニルインドール、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、および塩化ビニルが含まれるとも理解される。
【0043】
スチレンモノマーは、好ましい活性化コモノマーを表し、更により好ましくはスチレンである。
【0044】
グラフト化ポリ乳酸の選択に関して特に制限はない。グラフト化ポリ乳酸は、結晶性または部分結晶性、L型もしくはD型またはそれらの混合物、封鎖型または非封鎖型、或いはブレンドであり得る。
【0045】
本発明の目的では、「ポリ乳酸」、「PLA」および「ラクチド」という用語は、構造-OC(O)CH(CH3)-の繰り返し単位を有するポリマーを、これらの繰り返し単位がどのようにポリマー中に形成されるかを問わずに示すために使用される。PLAは、好ましくは、少なくとも50重量%、例えば少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも98重量%のこれらの繰返単位を含む。
【0046】
好ましいPLAは、乳酸のポリマーまたはコポリマーである。特定のヒドロキシ酸、特に乳酸などのα-ヒドロキシ酸は、一般に「D」エナンチオマーおよび「L」エナンチオマーと呼ばれる2つの光学エナンチオマーで存在する。合成法では、D-乳酸またはL-乳酸のどちらかが生成され得るが、発酵法は通常(常にではないが)Lエナンチオマーの生成が優勢となる傾向がある。ラクチドも同様に、様々なエナンチオマー形で、すなわち、2つのL-乳酸分子の二量体である「L-ラクチド」、2つのD-乳酸分子の二量体である「D-ラクチド」、および1つのL-乳酸分子と1つのD-乳酸分子とから形成される二量体である「メソラクチド」で存在する。さらに、約126℃の溶融温度を有するL-ラクチドとD-ラクチドとの50/50混合物は、しばしば「D,L-ラクチド」と呼ばれる。これらの形態のラクチドのいずれかのポリマーまたはそれらの混合物は、本発明において有用である。光学純度が高まると(すなわち、D-エナンチオマーまたはL-エナンチオマーのいずれかであり得る優勢なエナンチオマーの濃度がより高いと)、得られるポリマーはより結晶性となる傾向がある。半結晶性ポリマーが望まれる場合に、該ポリマーは、L-乳酸エナンチオマー単位もしくはD-乳酸エナンチオマー単位のいずれかを単独で含むか、またはL-乳酸単位とD-乳酸単位との両方の混合物であって、エナンチオマーの一方(L-エナンチオマーまたはD-エナンチオマーのいずれか)が、乳酸繰返単位の総モル数に対して、最大で約5.0mol%、好ましくは約3.0mol%まで、より好ましくは約2.0mol%まで、特に約1.6mol%までを構成する混合物を含むことが好ましい。特に好ましい半結晶性コポリマーは、(乳酸繰返単位の総モル数に対して)98.4%~100.0%のL異性体および0.0%~1.6%のDエナンチオマーを含む。より非晶質のポリマーが望まれる場合に、コポリマー中の優勢なエナンチオマー繰返単位と他のエナンチオマー繰返単位とのモル比は、適切には、約80.0:20.0~約98.0:2.0、好ましくは88.0:12.0~98.0:2.0、特に(乳酸繰返単位の総モル数に対して)約90.0%~約98.0%のL-エナンチオマーおよび相応する約10.0%~約2.0%のDエナンチオマーである。一般に、エナンチオマー比の選択は、特定の用途および/または所望のコポリマー特性に依存することとなる。一般に、結晶化度が高いほど、コポリマーの熱的性能、寸法安定性、および弾性率は高くなる。
【0047】
ポリ乳酸(成分i)
ブレンドの主成分iとして本発明の方法により溶融物中で処理されるポリ乳酸は、カルボン酸基を1.0mgKOH/gから最大で10.0mgKOH/gまでの量で含むポリ乳酸である。ポリ乳酸は、上記の乳酸のポリマーまたはコポリマーである。ポリ乳酸は、カルボン酸末端基を含む。カルボン酸基の量は、少なくとも1.0mgKOH/gである。カルボン酸基は、ポリ乳酸とエポキシド官能性ポリマーのエポキシド基との分岐反応を増強する。
【0048】
好ましくは、ポリ乳酸は、ポリ乳酸鎖または複数のポリ乳酸鎖の末端にカルボン酸末端基および/またはカルボン酸無水物基を含む。カルボン酸末端基および/またはカルボン酸無水物基の量は、0.5~2.0の分子当たりの上記末端基、好ましくは1.0~2.0の分子当たりの上記末端基の範囲内であり得る。
【0049】
組成物
エポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーおよびグラフト化ポリ乳酸の組成物は、乾式ブレンド、例えば、粒子の乾式ブレンドであり得る。好ましくは、組成物の成分は、固体状態の成分で一緒に混合される。これは、エポキシド官能性ポリマーおよびグラフト化ポリ乳酸が、通常のグラフト化されていないポリ乳酸などのさらなる成分とのブレンドにおいて組成物を一緒に溶融処理する前には、実質的に互いに反応しないという利点を有する。
【0050】
例示的な実施形態では、上記組成物は、エポキシド官能性ポリマーを含む粒子とグラフト化ポリ乳酸を含む粒子とのブレンドを含む。
【0051】
好ましくは、粒子のブレンドは、比較的低い温度で圧縮され、例えば圧密化される。
【0052】
代替的には、組成物中の成分は、組成物中のエポキシド官能基を含むエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸との間で最小限の反応しか起こらないように合理的な低温および/または合理的な短時間でブレンドまたは混合される。
【0053】
例示的な実施形態では、上記組成物は粒子の形であり、それぞれの粒子は、コアとコアの表面の少なくとも一部を覆う第1の被覆とを含み、コアはエポキシド官能性ポリマーを含み、第1の被覆はグラフト化ポリ乳酸を含む。
【0054】
第1の被覆は、コアの表面の一部を覆うように配置されていてもよく、またはコアの表面全体を実質的に覆うように配置されていてもよい。好ましくは、第1の被覆は、粒子のコアを実質的に取り囲むように配置される。より好ましくは、第1の被覆は、粒子のコアを実質的に被包するように配置される。第1の被覆は、少なくとも部分的に、コアに含まれるエポキシド官能性ポリマーの保護をもたらす。こうして、エポキシド官能性ポリマーのエポキシド基の事前の反応が防止または低減される。
【0055】
さらに、コアと第1の被覆とを有する粒子は、組成物の成分を別のポリ乳酸に制御可能に添加してポリ乳酸ブレンドを形成するのに適切な措置を提供する。例えば、該粒子は、押出機などの溶融処理装置内の流れに組成物を均一に投入するのに有利であり得る。
【0056】
好ましくは、エポキシド官能性ポリマーおよびグラフト化ポリ乳酸は、ポリ乳酸ブレンド中の成分の溶融処理に望ましい重量比で粒子中に含まれる。
【0057】
実施形態では、粒子中のエポキシド官能性ポリマーは、部分的にコア中に、そして部分的に第1の被覆中に含まれ得る。好ましくは、粒子中のエポキシド官能性ポリマーは、完全に粒子のコア中に含まれ得る。
【0058】
第1の被覆は、粒子の外側被覆であり得る。
【0059】
該粒子は、実質的に丸形のコアと上記コアを被包する第1の被覆とを有する実質的に丸形の形状を有し得る。代替的には、該粒子は、コアが少なくとも部分的に第1の被覆によって覆われ、第1の被覆が少なくとも部分的にコアを包囲する、円柱形状などの任意の他の形状を有し得る。
【0060】
コアと第1の被覆とを有する粒子は、任意の適切な様式で得ることができる。
【0061】
一例では、該粒子は、共押出法で形成されたペレットであり得る。上記ペレットは、チューブを形成する第1の被覆とコアとを共押出して、コアを第1の被覆によって被包する工程、充填されたチューブを冷却する工程、充填されたチューブを、複数の個別のセグメントにチューブを切断する手段に通すことにより、複数の被包されたペレットを形成する工程を含む方法によって製造され得る。さらに、複数の個別のセグメントへのチューブの切断は、切断ペレットの端部の封止により支援され得る。閉端ペレットは、ペレットを作製する元となるチューブの各端部で少なくとも部分的に封止される。
【0062】
実施形態では、ペレットの直径、およびコアの重量と第1の被覆の重量との間の比率は、スループット設定などの適切な機械設定を使用することによって調整される。
【0063】
共押出法は、コア材料および第1の被覆用のポリマーが別々に溶融処理され、押出ダイでチューブが形成された後にのみコアと第1の被覆とが互いに接触するという利点をもたらす。したがって、溶融物中のコアのエポキシド官能性ポリマーと第1の被覆のグラフト化ポリ乳酸との混合が妨げられ、コアのエポキシド官能性ポリマーと第1の被覆のグラフト化ポリ乳酸との反応は最小限に抑えられる。さらに、形成されたペレットは、形成された直後に更に冷却され得る。
【0064】
閉端ペレットを製造する方法の例は、詳細な説明に更に記載されている。
【0065】
さらに、粒子の利点は、第1の外側被覆中のグラフト化ポリ乳酸が別のポリ乳酸と混合される場合に特に明らかになる。例示的な実施形態では、第1の被覆は、1.0mgKOH/gから最大で10.0mgKOH/gまでの量でカルボン酸基を含むポリ乳酸を更に含む。外側の第1の被覆に他のポリ乳酸を添加すると、外側の第1の被覆が湿気に対して影響を受けにくいという利点がもたらされ、これにより粒子の供給および投入などの粒子の取り扱い過程についての制御が支援される。さらに、第1の被覆中の追加のポリ乳酸のカルボン酸基は、ブレンド中の粒子の溶融処理の間にコアに含まれるエポキシド官能性ポリマーと反応することもできる。
【0066】
さらに、本発明の利点は、組成物の溶融処理の間にエポキシド官能性ポリマーの実質的に全てのエポキシド基が溶融物の成分中に含まれるカルボン酸基またはそれらの誘導体と反応するようなエポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸との間の比率である場合に特に明らかになる。エポキシド基との反応に利用可能なカルボン酸基の総量は、グラフト化ポリ乳酸に含まれるカルボン酸基を含む。特に、溶融物中のエポキシド基との反応に利用可能なカルボン酸基の総量は、溶融処理されるブレンド中に含まれる通常のグラフト化されていないポリ乳酸などの他の成分のカルボン酸基を更に含む。例示的な実施形態では、エポキシド官能性ポリマーとグラフト化ポリ乳酸との間の重量比は、2:1~1:2である。上記重量比は、さらなる成分を含まない上記組成物における重量比であり得て、エポキシド官能性ポリマーおよびグラフト化ポリ乳酸ならびに通常のグラフト化されていないポリ乳酸などのさらなる成分を含むブレンドの重量比であり得る。
【0067】
ポリ乳酸ブレンドの処理方法
ポリ乳酸ブレンドを処理する方法の生成物は、分岐状ポリ乳酸樹脂を含有するポリ乳酸生成物である。エポキシド官能性ポリマーおよびグラフト化ポリ乳酸を通常のポリ乳酸と組み合わせて含む混合物の溶融処理の間に、ポリ乳酸成分の分岐反応が増強され、加速される。ポリ乳酸ブレンドは、通常のポリ乳酸、エポキシド官能性ポリマー、およびグラフト化ポリ乳酸を含む。
【0068】
上記方法の例示的な実施形態では、工程aにおいて、成分iおよび成分iiは、本発明による組成物として準備される。
【0069】
上記方法の例示的な実施形態では、該組成物は、本発明による粒子の形で準備される。上述のように、該組成物の粒子は、工程bの間に形成されるポリ乳酸ブレンド中の該組成物の量を制御する際に利点をもたらす。
【0070】
上記方法の例示的な実施形態では、グラフト化ポリ乳酸は、0.1重量%~2.0重量%の量で、好ましくは0.1重量%~1.0重量%の量で準備され、ここで、重量%は、混合物中の成分i、成分ii、および成分iiiの重量に対して計算される。
【0071】
上記方法の例示的な実施形態では、上記エポキシド官能性ポリマーは、工程aのiにおいて、0.1重量%~2.0重量%の量で、好ましくは0.1重量%~1.0重量%の量で準備され、ここで、重量%は、混合物中の成分i、成分ii、および成分iiiの重量に対して計算される。
【0072】
上記方法の例示的な実施形態では、工程aで準備されるエポキシド官能性ポリマーiiとグラフト化ポリ乳酸iiiとの間の重量比は、2:1~1:2である。
【0073】
分岐反応は、エポキシド官能性ポリマーのエポキシド基とグラフト化ポリ乳酸の酸基および/または酸無水物基との反応によって増強されることが判明した。結果として、ポリ乳酸ブレンドの溶融処理は、所望のレオロジー特性を得る前により短い時間で実行することができる。
【0074】
上記方法の例示的な実施形態では、溶融処理は、150℃から250℃の間の温度で、30秒~120秒、好ましくは30秒~60秒で実施される。
【0075】
上記方法の例示的な実施形態では、溶融処理は、溶融処理された混合物を含むフィルムを形成することを含む。溶融処理の間に得られた溶融物は、フィルムを形成するのに優れたレオロジー特性を示す。上記フィルム形成工程は、フィルム押出工程であっても、インフレーション成形工程であっても、フィルムキャスティング工程であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0076】
酸価の測定
酸価は、規定の条件下で1gの物質を中和するのに必要とされるKOH量(mg)である。酸価は、DIN EN ISO 2114に従って、エタノール中の0.1NのKOHによる中和反応によって測定した。
【0077】
【0078】
ダイスウェル
ダイの狭窄部を通じたポリマー溶融物の押出の間に、ポリマー溶融物はダイによって変形される。ポリマー溶融物の粘弾性特性のため、変形の一部は可逆的である。ダイの狭窄部の通過により配向されるポリマー分子の遅延は、エントロピー弾性として説明される。押出されたポリマー溶融物によりダイの外側で断面直径d1が得られ、この断面直径は、この効果のためダイの狭窄部の断面直径d0と比較して拡大される。
【0079】
ダイスウェルの量は、とりわけポリマーの分岐および分子量に依存するので、ISO 1133によるメルトフローレートインデックスの測定の間のダイスウェルの測定は、両方の特性の測定を同時に組み合わせる簡単な方法である。
【0080】
この測定は、以下の工程:
・グラフト化ポリ乳酸の造粒物を80℃で4時間乾燥させる工程と、
・フルトフローレートを210℃/2.16kgで10分間測定する工程と、
・メルトフローレート測定の間に、ポリマー溶融物の2cm長のストランドを切断する工程と、
・ポリマーストランドを室温に冷やす工程と、
・ポリマーストランドの断面直径D(非緩和時のD)を測定する工程と、
・ポリマーストランドを暖かいシリコーンオイル浴(温度T)中で15分間熱処理する工程と、
・ポリマーストランドをエタノールで清浄化する工程と、
・ポリマーストランドの断面直径D(緩和時のD)を測定する工程と、
によって行った。
【0081】
ストランドの拡大は、
SA(非緩和時)=(非緩和時のD/2.095)-1
SA(緩和時)=(緩和時のD/2.095)-1
(ここで、非緩和時のDおよび緩和時のDは(mm)で表される)に従って計算される。
【0082】
溶融強度
レオロジー測定によるポリマー溶融物の溶融強度の測定は、とりわけ、マイスナー,J(Meissner, J)著,デーヌングスフェアハルテン・フォン・ポリエチレンシュメルツェン(Dehnungsverhalten von Polyaethylen-schmelzen),レオロジカ・アクタ(Rheologica Acta),第10巻(1971年),第230頁~第242頁に記載されている。
【0083】
Rheotens 71.97フィーダー-HCVレオグラフで、この測定を実施した。以下のパラメーターを使用した。
【0084】
HCVのパラメーター:
ダイ:円形キャピラリー30.0/2.0/180
温度:180℃
浸漬時間:10分間
ピストン速度:0.265mm/秒
Rheotensのパラメーター:
加速度:24mm/秒2
ダイとホイールとの間のギャップ:100mm
ホイール間のギャップ:ダイアル3
標準ホイール
試料を80℃で3時間乾燥させた。
【0085】
Fmaxの値(cN)は、ポリマー溶融物の溶融強度についての尺度と解釈される。
【0086】
閉端ペレット
少なくともエポキシド官能性ポリマーを含むコア材料とグラフト化ポリ乳酸を含むポリマー材料を有する外側層とを含む閉端ペレットを作製する方法は知られている。コア材料は外側層により実質的に完全に被包されている。この方法は、押出機の或る部分で外側層用のポリマーを同時に供給し、コア材料を同じ押出機の別の部分へと供給し、外側層とコアとを共押出することにより、コア材料で充填されたポリマーチューブを形成することによって、外側ポリマー層から構成されるチューブとエポキシド官能性ポリマーを含むコア材料とを同時に形成することを含む。充填されたチューブを最初に冷却し、その後に封止のための閉鎖装置(例えば、歯車)に通すことで、この歯車により、コア材料で充填されたポリマーチューブは同時に封止/溶接されて複数の別個のセグメントへと切断される。次いで、形成されたセグメントは更に冷却され、余分な水分を除去した後に分離器を経由して包装される。
【0087】
このような方法の既知の例は、BYK Netherlands B.V.社によるSKIN TECHNOLOGYと呼ばれる。
【実施例】
【0088】
【0089】
幾つかの溶融処理実験A~Fにおいて、ポリ乳酸(Ingeo 2003)を混合し、表2に示される添加剤と一緒に押出機中で表に示される溶融処理時間の間に溶融処理した。比較実験Aでは、添加剤を使用しない。比較実験Bおよび比較実験Dでは、Joncryl ADR 4368である添加剤i)だけを使用する。実験C、実験E、および実験Fでは、成分i)のJoncrylおよび成分ii)のPLA-g-ASの両方を添加剤として使用する。これらの実験C、実験E、および実験Fでは、溶融物中での成分i)のJoncrylと成分ii)のPLA-g-ASとの間の重量比は1:1である。
【0090】
実験Cおよび実験Eでは、添加剤i)および添加剤ii)は、押出機の供給物流へと別々に添加され得るか、または添加剤i)および添加剤ii)は、プレミックス組成物として供給物流へと一度に添加され得る。特定の例では、添加剤i)および添加剤ii)は、それぞれが添加剤i)の粒子および添加剤ii)の粒子を含む圧密化粒子として添加され得る。
【0091】
実験Fに使用される添加剤i)および添加剤ii)を、添加前に、閉端ペレットの方法(BYK Netherlands B.V.社によるSKIN TECHNOLOGYとして知られる)に従って押出物へと加工して、その閉端ペレットを作製した。閉端ペレットのコア材料は、添加剤i)のJoncryl ADR 4368を含有し、閉端ペレットの外側層は、添加剤ii)のグラフト化ポリ乳酸PLA-g-ASを含有し、ここで、コア材料は外側層により実質的に完全に被包されている。実験Fでは、作製された閉端ペレットを押出機の主供給物へと添加した。
【0092】
表2は、ポリ乳酸(Ingeo 2003)の量および溶融処理実験で使用される添加剤の量を示している。
【0093】
【0094】
実験A~Fの得られた押出物を、上記の測定方法に従ってダイスウェル特性および溶融強度特性について試験した。ダイスウェル数SA(緩和時)および溶融強度を表3に示す。
【0095】
【0096】
これらの結果は、PLA-g-ASおよびJoncrylの混合物をポリ乳酸主成分Ingeo 2003に添加すると、同じ溶融処理時間を維持した場合にダイスウェル数SA(緩和時)および溶融強度が大幅に上昇することを示している。実験B*対実験C(180秒で)および実験D*対実験E(45秒で)を参照のこと。さらに、Joncryl添加剤のみを添加する代わりにPLA-g-ASとJoncrylとの組み合わせを添加した場合に、適正なダイスウェルレベルおよび溶融強度をより短時間で得ることが可能である。実験B*対実験Eを参照のこと。
【0097】
さらに、実験Fは、粒子のコアに成分Joncrylを含み、粒子の外側層に成分PLA-g-ASを含むスキン-コア粒子により、溶融過程で同じ溶融処理時間および同量の成分を維持した場合にダイスウェル数SA(緩和時)および溶融強度が更に一層上昇することを裏付けている。実験E対実験Fを参照のこと。
【国際調査報告】