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  • 特表-高弾性押出発泡体用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(54)【発明の名称】高弾性押出発泡体用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/32 20060101AFI20220105BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20220105BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20220105BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C08J9/32 CER
C08L101/00
C08K5/54
C08K5/14
C08K9/10
C08J3/24 A CEZ
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520415
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 KR2019013147
(87)【国際公開番号】W WO2020076037
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0119715
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521149585
【氏名又は名称】イ、ソ チョン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソ チョン
【テーマコード(参考)】
4F070
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA16
4F070AB04
4F070AC32
4F070AC52
4F070AC56
4F070AC63
4F070AD05
4F070AE12
4F070GA01
4F074AA13B
4F074AA17A
4F074AA21A
4F074AA25A
4F074BA91
4F074BB22
4F074CA22
4F074CC04Y
4F074CC06Z
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA09
4F074DA32
4F074DA35
4J002AA011
4J002AC031
4J002AC111
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB051
4J002BB071
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
4J002BB201
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4J002BP011
4J002EA017
4J002EA027
4J002ED077
4J002EK036
4J002EK046
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4J002EK076
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4J002EX018
4J002EX038
4J002EX068
4J002EX078
4J002EX088
4J002FB287
4J002FD146
4J002FD207
4J002FD208
4J002FD327
4J002GG00
4J002GM00
(57)【要約】
高弾性押出発泡体用組成物が提供される。組成物は、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーと、有機過酸化物と、熱膨張性マイクロスフィアと、シランカップリング剤と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーと、有機過酸化物と、熱膨張性マイクロスフィアと、シランカップリング剤と、を含む、高弾性押出発泡体用組成物。
【請求項2】
前記過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーが、エチレン系ポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレンゴム、熱可塑性エラストマー、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチレン系ポリマーが、エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エチレン-プロピレンゴムがEPMゴムまたはEPDMゴムである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン(SBBS)ブロックコポリマー、およびスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロックコポリマー、1,2-ポリブタジエン(1,2-PB)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性加硫物(TPV)、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱膨張性マイクロスフィアの膨張開始温度(Tstart)が、前記有機過酸化物架橋剤の1分半減期温度以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱膨張性マイクロスフィアの含有量が、前記過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー100重量部に対して0.5重量部~20重量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記シランカップリング剤がアルコキシシラン化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記シランカップリング剤の含有量が、前記過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー100重量部に対して1.5重量部~15重量部である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
水架橋を促進するための触媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記触媒が、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー100重量部に対して0.05重量部~1重量部の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーと、有機過酸化物と、熱膨張性マイクロスフィアと、シランカップリング剤と、を含む組成物を提供することと、
前記組成物を押し出して押出物を得ることと、
前記押出物を切断して高弾性押出発泡体にすることと、
を含む、高弾性押出発泡体を製造するための方法。
【請求項13】
前記ポリマーの融点以上の温度と前記熱膨張性マイクロスフィアのTstart以上の温度との間で温度が制御されるシリンダーを含む押出機中で、前記組成物が押し出される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記高弾性押出発泡体を水の存在下で架橋することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記高弾性押出発泡体が、自然にまたは湿潤環境において水架橋される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の組成物を押し出すことによって製造された窓枠ゴム。
【請求項17】
請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の組成物を押し出すことによって製造された発泡体ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高弾性押出発泡体用組成物に関し、より具体的には、発泡体製品中の欠陥の数を低減させるために発泡中に高度に安定であり、発泡体製品の低い永久圧縮収縮率および良好な耐熱性を実現する、高弾性押出発泡体用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、押出プラスチックおよびゴム発泡体は、以下の方法によって製造され、我々の日常生活において使用される。
【0003】
方法1:PEを、押出中に物理的発泡剤で発泡させる。押し出されたPE発泡体製品は、包装および断熱のために使用される。
【0004】
方法2:PEまたはEVAを、押出中に化学的発泡剤で発泡させる。押し出されたPEまたはEVA発泡体製品は、包装および断熱のために使用される。
【0005】
方法3:PEまたはPPを押し出して、電子ビームで架橋し、物理的発泡剤で発泡させる。押し出されたPEまたはPP発泡体製品は、包装および断熱のために使用される。
【0006】
方法4:PSを、押出中に物理的発泡剤で発泡させ、真空成形などの適切な成形プロセスによって成形する。押出PS発泡体製品は、カップヌードル包装などの食品包装に使用される。
【0007】
方法5:化学的発泡剤を含有するEPDMゴムを押し出して、超高周波(UHF)により表面架橋し、発泡ゾーンで発泡させる。押出EPDMゴム発泡体製品は、建物や車両の窓枠ゴム発泡体、および、エアコン冷媒配管の断熱ホースとして使用される。
【0008】
方法6:SEBS熱可塑性ゴムを、ガス注入口を有するシリンダーを含む押出機中で押し出し、一方で、超臨界ガスを、ガス注入口を通して押出機中に注入する。得られた押出発泡体製品は、断熱ホースとして使用される。
【0009】
しかしながら、これらの方法には多くの問題がある。具体的には、方法1および方法2は、材料が高倍率で発泡して架橋されず、発泡体製品の高い永久圧縮収縮率および非常に低い弾性を引き起こす、という問題を有する。したがって、方法1および方法2によって得られた発泡体製品は、高い力または圧力が加えられる用途には使用できず、それらの用途は包装および断熱に限定される。方法3は、方法1および方法2よりも永久圧縮収縮率が低いという利点を有するが、電子ビームによる架橋密度の過剰な増加が押出物を発泡させることを困難にし、その結果、必然的に架橋密度の低減が必要となり、発泡体製品の用途が制限される、という欠点を有する。方法4は、PSが、その特性に起因して硬くなく脆い傾向がある、という欠点を有する。方法5で得られた発泡体製品は、車両や建物の窓枠ゴムとして使用されるが、EPDMゴムは開放状態で発泡しその発泡倍率の均一性を維持することが困難であるため、多くの欠点を有する。長さ80~100mの発泡ゾーンおよび大面積工場を含む大型システムが、十分な発泡および架橋のために必要とされ、かなりのコストを伴う。車両用の典型的な窓枠ゴムは、硬質の中実枠組み層と発泡体とからなるアセンブリであり、中実枠組み層と接着剤層とが発泡せず発泡体層のみが発泡する三重押出(枠組み層+接着剤層+発泡体層)によって製造される。しかし、開放状態で発泡させた場合、中実層は発泡しないが、発泡層が三次元的に発泡するため、製品が反りやすい。この反りは発泡を最小限に抑えることによって最小限に抑えることができるが、発泡体はその密度が0.6~0.8g/mmとなるようにわずかにしか発泡させることができないので、発泡体を薄くすることは避けられず、窓枠ゴムの気密性が悪くなる。方法6は、簡単な装置を用いて実施され、良好な発泡安定性の利点を有し、均一な寸法を有する製品の製造を可能にする。しかしながら、SEBSは、限定された物性を有し、所定のレベルを超えて架橋されることはなく、発泡体製品の不十分な弾性回復、高い永久圧縮収縮率、および限定された耐熱性を引き起こす。これらの欠点のため、SEBSは、車両や建物用の窓枠ゴムには適用できないが、静的用途で断熱ホースを製造するために使用される。方法6における非常に高価な押出機の使用は、方法6を特別な目的以外の目的に適用することを困難にする。また、方法6では、SEBSの発泡倍率を上げるのに限界があり、発泡体製品の比重を0.5g/cc以下に下げることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の問題を解決するために、良好な発泡安定性によって寸法の欠陥および他の欠陥の数が低減されていて、単純な装置を用いて製造され、高い弾性、低い永久圧縮収縮率、および良好な耐熱性を有する押出発泡体を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様によれば、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーと、有機過酸化物と、熱膨張性マイクロスフィア(thermo-expandable microspheres)と、シランカップリング剤と、を含む、高弾性押出発泡体用組成物が提供される。
【0012】
本開示のさらなる態様によれば、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーと、有機過酸化物と、熱膨張性マイクロスフィアと、シランカップリング剤と、を含む組成物を提供することと、組成物を押し出して押出物を得ることと、押出物を切断して高弾性押出発泡体にすることと、を含む、高弾性押出発泡体を製造するための方法が提供される。
【0013】
本開示の別の態様によれば、組成物を押し出すことによって製造された窓枠ゴムが提供される。
【0014】
本開示のさらに別の態様によれば、組成物を押し出すことによって製造された発泡体ホースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、高弾性押出発泡体を製造する方法の一実施形態を示すプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、本開示の様々な実施形態をより詳細に説明する。本出願で使用される用語は単に特定の実施形態を説明するために使用されるものであり、本開示を限定することを意図するものではない。単数形で使用される表現は、文脈において明らかに異なる意味を有さない限り、複数形の表現を包含する。本出願では、「含む」または「有する」などの用語が本明細書で開示された特徴、数、操作、動作、成分、部分、またはそれらの組合せの存在を示すことを意図しており、1つまたは複数の他の特徴、数、操作、動作、成分、部分、またはそれらの組合せが存在し得る、または追加され得る可能性を排除することを意図していないことを理解すべきである。
【0017】
本開示の一態様は、高弾性押出発泡体用組成物を提供する。
【0018】
組成物は、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーと、有機過酸化物と、熱膨張性マイクロスフィアと、シランカップリング剤と、を含む。
【0019】
過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーは、エチレン系ポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレンゴム、熱可塑性エラストマー、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。これらの過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーは、押出中に架橋することができ、発泡体製品の高い弾性を実現するという点で、高弾性押出発泡体に適した物性を有する。
【0020】
エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーであってもよい。
【0021】
エチレンホモポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)からなる群から選択してもよい。
【0022】
エチレンコポリマーは、i)エチレンおよびii)C-C10α-オレフィン、不飽和C-C20モノカルボン酸のC-C12アルキルエステル、不飽和C-C20モノカルボン酸またはジカルボン酸、不飽和C-Cジカルボン酸の無水物、および飽和C-C18カルボン酸のビニルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーのコポリマーまたは当該コポリマーのアイオノマーであってもよい。
【0023】
好ましくは、エチレンがエチレンコポリマーの最大モル分率を構成する。典型的には、エチレンはポリマーの約50モル%以上を占める。より好ましくは、エチレンがポリマーの約60モル%以上、約70モル%以上、または約80モル%以上を占める。
【0024】
このようなエチレンコポリマーの具体例としては、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレンアクリル酸ブチル(EBA)コポリマー、エチレンアクリル酸メチル(EMA)コポリマー、エチレンアクリル酸エチル(EEA)コポリマー、エチレンメタクリル酸メチル(EMMA)コポリマー、エチレンブテンコポリマー(EB-Co)、エチレンオクテンコポリマー(EO-Co)等が挙げられる。
【0025】
エチレンコポリマーは、エチレンとα-オレフィンとのコポリマーであることが好ましく、高弾性の観点から好ましい。α-オレフィンとは、少なくとも3個の炭素原子からなり、末端炭素-炭素二重結合を有するオレフィンをいう。エチレンを除くエチレン/α-オレフィンコポリマーの実質的な残りは、1種以上の他のコモノマーを含む。コモノマーは、好ましくは3個以上の炭素原子を有するα-オレフィンである。α-オレフィンは、商業的入手性および購入の容易さの観点から、ブテン、ヘキセンまたはオクテンであることが好ましい。例えば、オレフィン/α-オレフィンコポリマーは、エチレン/オクテンコポリマーであり得る。この場合、コポリマーは、約80モル%以上のエチレンおよび約10~約15モル%、好ましくは約15~約20モル%のオクテンを含む。
【0026】
エチレン/α-オレフィンコポリマーはランダムまたはブロックコポリマーであってもよく、その具体例としてはポリオレフィンエラストマー(POE)およびオレフィンブロックコポリマー(OBC)が挙げられる。エチレン/α-オレフィンコポリマーの市販製品には、Dow ChemicalからのEngageおよびInfuse、三井からのTafmer、Exxon MobileからのExact、ならびにLG ChemからのLG-POEが含まれる。
【0027】
塩素化ポリエチレン樹脂は、塩素化ポリエチレンホモポリマー、共重合単位としてi)エチレンおよびii)共重合可能なモノマーを含む塩素化コポリマー、およびそれらの混合物からなる群から選択してもよい。
【0028】
このような塩素化ポリエチレンホモポリマーの具体例としては、塩素化高密度ポリエチレンホモポリマー、塩素化低密度ポリエチレンホモポリマー、および塩素化超高密度ポリエチレンホモポリマーが挙げられる。
【0029】
塩素化コポリマーは、i)エチレンと、ii)C-C10α-モノオレフィン、不飽和C-C20モノカルボン酸のC-C12アルキルエステル、不飽和C-C20モノカルボン酸またはジカルボン酸、不飽和C-Cジカルボン酸の無水物、および飽和C-C18カルボン酸のビニルエステルからなる群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、の塩素化コポリマーであり得る。このような塩素化コポリマーの例としては、塩素化グラフトコポリマーが挙げられる。
【0030】
好適な塩素化コポリマーの具体例としては、塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマー、塩素化エチレンアクリル酸コポリマー、塩素化エチレンメタクリル酸コポリマー、塩素化エチレンアクリル酸メチルコポリマー、塩素化エチレンメタクリル酸メチルコポリマー、塩素化エチレンアクリル酸ブチルコポリマー、塩素化エチレンメタクリル酸ブチルコポリマー、塩素化エチレンメタクリル酸グリシジルコポリマー、エチレンおよび無水マレイン酸の塩素化グラフトコポリマー、ならびにプロピレン、ブテン、3-メチル-1-ペンテンまたはオクテンおよびエチレンの塩素化コポリマーが挙げられる。ここで、コポリマーは、二元コポリマー、三元コポリマーまたは多元コポリマーであってもよい。
【0031】
好ましくは、塩素化ポリエチレン樹脂は、塩素化ポリエチレンホモポリマー、塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマー、塩素化エチレンアクリル酸ブチルコポリマー、塩素化エチレンアクリル酸メチルコポリマー、塩素化エチレンメタクリル酸メチルコポリマー、塩素化エチレンブテンコポリマー、および塩素化エチレンオクテンコポリマーから選択される。
【0032】
塩素化ポリエチレン樹脂中の塩素の含有量は、塩素化ポリエチレン樹脂の総重量に対して、30~70重量%、好ましくは30~50重量%であってもよい。塩素含有量が上記の下限未満であると、塩素化ポリエチレン樹脂の構造がポリエチレンと同様になる。この場合、塩素化ポリエチレン樹脂は反発弾性が不十分であり、剛性が高いため、屋外用途の所望の発泡体の製造に用いるには適していない。一方、塩素含有量が上記上限を超えると、塩素化ポリエチレン樹脂は硬度が過度に高く、脆くなる傾向があり、その結果、加工および発泡が困難となり、発泡体の製造が不可能となる。
【0033】
プロピレン系ポリマーは、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンコポリマーであってもよい。好ましくは、プロピレン系ポリマーはプロピレンホモポリマーである。プロピレンコポリマーは、プロピレン-エチレンコポリマーまたはプロピレン-α-オレフィンコポリマーであってもよい。プロピレン-α-オレフィンコポリマーにおいて、α-オレフィンの炭素数は4~20であってよい。例えば、α-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、または1-エイコセンであってもよい。これらのα-オレフィンは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
エチレン-プロピレンゴムは、EPMゴムまたはEPDMゴムであってもよい。EPMゴムは、エチレンとプロピレンの完全に飽和したコポリマーであり、EPDMゴムは、エチレン、プロピレン、および少量の非共役ジエンのターポリマーである。第3の成分としてのジエンは、例えば、1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)または5-エチリデン-ノルボルネン(ENB)であってもよい。EPMゴムおよびEPDMゴムの各々におけるエチレン対プロピレンの比は変化し得る。ポリマー中のエチレンの含有量は、45~75重量%の間で変化し得る。ゴム製品の分子量が高い場合に、約25~約50phrの鉱油をゴム製品に添加してもよい。EPMゴムおよびEPDMゴムは、過酸化物で加硫してもよい。加硫ゴムは、良好な高温性能及び低い圧縮収縮率が要求される用途に適している。
【0035】
熱可塑性エラストマー(熱可塑性ゴム)は、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、スチレン-ブチレン-ブタジエン-スチレン(SBBS)ブロックコポリマー、およびスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロックコポリマー、1,2-ポリブタジエン(1,2-PB)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、熱可塑性加硫物(TPV)、ならびにそれらの混合物を含む、スチレンブロックコポリマーからなる群から選択されてもよい。
【0036】
過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーのメルトインデックス(MI)は、ASTM D1238(230℃、2.16kg)によって測定して、1.0~50g/10分、好ましくは1.0~30g/10分、より好ましくは2.0~25g/10分の範囲である。過酸化物架橋性熱可塑性樹脂のメルトインデックスは、2.0~20g/10分の範囲が特に好ましい。過酸化物架橋性熱可塑性樹脂を押出機などの適切な装置を用いて溶融混練する場合、熱可塑性樹脂のメルトインデックスが高いほど、装置の負荷が低くなる。過酸化物架橋性熱可塑性樹脂のメルトインデックスが、上記の下限よりも低い場合、高すぎる圧力が加工機械に加えられ、機械に過酷な負荷を引き起こす。さらに、非常に少量の組成物が単位時間当たりに押し出され、これは経済的に不利である。一方、過酸化物架橋性熱可塑性樹脂のメルトインデックスが上記の上限を超えると、組成物の粘度が低くなり、押出ダイを通過した直後の混合物の粘着性が過度に高くなる。この場合、押出物の形状が十分に維持されず、押出物を成形することが困難になる。組成物は、任意選択で、1種または複数種の添加剤をさらに含んでいてもよい。この場合でも、同様の理由から、組成物のメルトインデックスを上記範囲に制御することが好ましい。
【0037】
一実施形態によれば、本開示の組成物に使用される熱膨張性マイクロスフィアは、その中に膨張性炭化水素化合物を封入したポリマー粒子である。膨張性炭化水素化合物は一般に粉末の形態であるが、揮発されるか、または熱分解されて、所定の温度を超えるガスを生成し、熱膨張性マイクロスフィア中に細孔を形成する。ポリマーは膨張してシェルを形成する。ポリマーは、その高い柔軟性および弾性のために破壊されない。熱膨張性マイクロスフィアが膨張中に過熱し破裂すると、ガスが組成物の成形中に熱膨張性マイクロスフィアから離脱し、最終的に失われ、その結果、ほとんどあるいは全く膨張が起こらない。ポリマーが破壊されない場合、優れた表面特性を達成することができる。
【0038】
熱膨張性マイクロスフィアは、組成物の成形中に加熱することによって膨張する。熱膨張性マイクロスフィアを含む組成物から得られる膨張成形品は、発泡体として形成することができる。
【0039】
好ましくは、膨張性炭化水素化合物の沸点は、シェルの軟化温度以下、例えば約100℃以下であり、この温度ではシェル形成ポリマーは膨張性炭化水素化合物中に溶解しない。膨張性炭化水素化合物としては、通常、揮発性発泡剤とも呼ばれる低沸点の液体材料が使用される。あるいは、膨張性炭化水素化合物として、熱分解した際にガスを発生させることができる固体材料を用いてもよい。
【0040】
適切な液体材料としては、例えば、C-C直鎖脂肪族炭化水素およびそれらのフッ素化物、C-C分岐脂肪族炭化水素およびそれらのフッ素化物、C-C直鎖脂環式炭化水素およびそれらのフッ素化物、C-C炭化水素基を有するエーテル化合物、または当該炭化水素基の一部の水素原子がフッ素原子で置換された当該エーテル化合物が挙げられる。このような液体材料の具体例としては、プロパン、シクロプロパン、ブタン、シクロブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、メチルヘプタン、トリメチルペンタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、COCH、COCH、COC等のハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。これらの液体材料は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。液体材料は、大気圧で60℃未満の沸点を有する炭化水素であることが好ましい。イソブタンは、中空マイクロスフィア中の液体材料として好ましい。固体材料は、熱分解してガスになるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)であってもよい。
【0041】
熱膨張性マイクロスフィア中に封入された膨張性炭化水素化合物の含有量は、特に限定されず、意図される用途に応じて変わり得る。例えば、封入された膨張性炭化水素化合物の含有量は、熱膨張性マイクロスフィアの総重量に対して、約0.5~約15重量%、好ましくは約1~約10重量%であってもよい。熱膨張性マイクロスフィアは、一般に、重合性モノマー、発泡剤などを含む混合物を水などの非相溶性液体中に機械的に分散させた後、モノマー液滴を懸濁重合させることによって調製してもよい。
【0042】
組成物に使用される熱膨張性マイクロスフィアは、膨張前に、約5~約60μm、例えば、約10~約50μmまたは約20~約35μmの範囲の平均粒径を有していてもよい。この範囲内で、熱膨張性マイクロスフィアは膨張中に破裂することなく適切な厚さを有するシェルを形成し、それらの熱膨張挙動を促進することができる。熱膨張性マイクロスフィアの膨張開始温度(Tstart)および最高膨張温度(Tmax)は、膨張性炭化水素化合物の沸点およびシェル形成ポリマーのガラス転移温度(T)に応じて決定することができる。
【0043】
膨張時にシェルを形成することができるポリマー、すなわちシェル形成ポリマーは、基本的に、膨張開始温度でその中のガスを膨張させるために軟化することができる任意の熱可塑性樹脂であってよい。具体的には、シェル形成ポリマーは、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリロニトリル樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、アセタール樹脂、セルロースエステル、酢酸セルロース、フッ素化樹脂、ポリメチルペンテンまたはこれらの混合物であってもよいが、これらに限定されない。シェル形成ポリマーは、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ポリエチレングリコール、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸グリシジル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、塩化ビニリデン、ブタジエン、スチレン、p-またはm-メチルスチレン、p-またはm-エチルスチレン、p-またはm-クロロスチレン、p-またはm-クロロメチルスチレン、スチレンスルホン酸、p-またはm-t-ブトキシスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ビニルエーテル、アリルブチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸又はマレイン酸を含む不飽和カルボン酸、及びアルキル(メタ)アクリルアミドからなるがこれらに限定されない群から選択される少なくとも1種のモノマーを含むポリマーまたはコポリマーであってもよい。ポリマーは、軟化温度、耐熱性、耐薬品性等の目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリマーは、優れたガスバリア特性を有する塩化ビニリデンを含むコポリマーであってもよい。あるいは、耐熱性、耐薬品性に優れたニトリルモノマーを少なくとも約80重量%以上含むコポリマーであってもよい。熱膨張性マイクロスフィアのシェルはニトリルモノマーと(メタ)アクリレートモノマーとのアクリルコポリマー(すなわち、アクリロニトリルコポリマー)を主成分として構成され、これは組成物の耐熱性のために好ましい。
【0044】
組成物は、過酸化物架橋性熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.5~20重量部、好ましくは3~15重量部、より好ましくは3~10重量部の熱膨張性マイクロスフィアを含んでいてもよい。熱膨張性マイクロスフィアの含有量が上記の下限未満であると、十分な発泡を達成することができない。一方、熱膨張性マイクロスフィアの含有量が上記の上限を超えると、過剰な発泡が起こることがあり、その結果、最終成形発泡体の強度が低下し、使用上の問題を引き起こすおそれがある。
【0045】
組成物は、加工特性の改善を助け、発泡体の物性を改善するために発泡体の製造に一般的に使用される金属酸化物および酸化防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0046】
添加剤は、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー100重量部に対して0.01~5重量部の量で使用してもよい。金属酸化物は発泡体の物性を向上させるために用いることができ、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カドミウム、酸化マグネシウム、酸化水銀、酸化錫、酸化鉛、酸化カルシウムなどが例として挙げられる。金属酸化物は、熱可塑性ポリマー100重量部に対して1~4重量部の量で使用してもよい。酸化防止剤の例としては、Sonnoc、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、およびSongnox 1076(オクタデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-ヒドロキシヒドロシンナメート)が挙げられる。酸化防止剤は、熱可塑性ポリマー100重量部に対して0.25~2重量部の量で使用してもよい。
【0047】
組成物の早期架橋は、ポリマーの発泡を妨げる。ポリマーの効率的な発泡のために、熱膨張性マイクロスフィアの膨張開始温度(Tstart)は、有機過酸化物架橋剤の1分半減期温度以下であることが好ましい。
【0048】
有機過酸化物架橋剤は、130~180℃の1分半減期温度を有する。このような有機過酸化物架橋剤の具体例としては、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシラウリレート、t-ブチルペルオキシアセテート、ジ-t-ブチルペルオキシフタレート、t-ジブチルペルオキシマレイン酸、シクロヘキサノンペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、t-ブチルハイドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、およびα,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンが挙げられる。
【0049】
一実施形態によれば、本開示の組成物は、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー100重量部に対して、0.02~4重量部、好ましくは0.02~3重量部、より好ましくは0.05~1.5重量部の有機過酸化物架橋剤を含んでいてもよい。有機過酸化物架橋剤の使用量が0.02重量部未満であると、十分な架橋が誘発されず、最終成形発泡体の耐摩耗性が悪くなるおそれがある。一方、有機過酸化物架橋剤を4重量部を超えて使用すると、過剰な架橋が誘発され、硬度が著しく上昇するおそれがある。
【0050】
組成物中に存在するシランカップリング剤は、組成物中に存在するラジカル開始剤の存在下で過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー上にグラフトされ、水の存在下で過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーの架橋を可能にする。組成物中に混合されたシランカップリング剤が存在することで、組成物のその後の押出によって得られる製品は、サウナ等の熱く湿った環境中に置くことによって、または水中で加熱した場合に、室温での長期間の貯蔵の間に架橋することができる。あるいは、組成物の押出によって得られる製品は、空気から水を吸収して、経時的に自然に架橋することができる。
【0051】
シランカップリング剤は、熱可塑性ポリマーに化学的に結合して、シラングラフト化コポリマーを形成し、架橋のための官能基を提供する働きをする。シランカップリング剤は、アルコキシシラン化合物であってもよい。適切なアルコキシシラン化合物の例には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが含まれる。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
架橋度は、組成物中のシランカップリング剤の量に応じて調節してもよい。
【0053】
一実施形態によれば、本開示の組成物中のシランカップリング剤の含有量は、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー100重量部に対して、1.5~15重量部、好ましくは2.5~12重量部、より好ましくは3~12重量部である。シランカップリング剤が上記の下限未満の量で存在すると、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーが効果的に架橋されず、耐熱性が不十分となる場合があり、その結果、夏季の高温で製品が凝集する傾向がある。一方、シランカップリング剤が上記上限を超える量で存在しても、架橋密度が所定レベルを超えて上昇することはなく、コストアップにつながる。
【0054】
有機過酸化物架橋剤は、熱可塑性ポリマー上にシランカップリング剤を化学的にグラフトする働きをすることができる。
【0055】
組成物は、任意選択で、グラフト工程後の水中での架橋に要する時間を短縮するために、触媒をさらに含んでいてもよい。適切な触媒の例には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、テトラブチルチタネート、ヘキシルアミン、ジブチルアミンアセテート、第一錫、第一錫オクトエート、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、およびナフテン酸コバルトが含まれる。ジブチル錫ジラウレートの使用が好ましい。
【0056】
触媒は、ポリマー100重量部に対して、1重量部以下、例えば0.05~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部の量で存在してもよい。上記の下限未満の量の触媒の存在は遅い架橋をもたらし、その結果、架橋のためにより多くのエネルギーおよび時間が必要となる。一方、上記上限を超える量の触媒の存在は、架橋速度の更なる向上に寄与しない。
【0057】
押出機中で組成物を押し出して発泡体にする際に、熱膨張性マイクロスフィアは、押出機中で膨張し、膨張状態で押出機から排出される。したがって、押出物の断面形状および寸法は押出機のダイとほぼ同じであり、高い押出精度が達成される。
【0058】
組成物の押出物を所定の長さに切断し、室温で、または水架橋またはシラン架橋が起こる熱サウナ中で貯蔵する。架橋密度がシランカップリング剤の量を変えることによって制御されるので、発泡体製品の高度な架橋を達成することができ、これは、発泡体製品の弾性および回復を最大にするのに有効である。
【0059】
一実施形態によれば、本開示の組成物を、二重または三重共押出して、硬質の中実枠組み層および発泡体からなる車両用の窓枠ゴムを製造してもよい。この実施形態では、発泡体が押出前に膨張し、押出後に再び膨張しない。したがって、発泡体の形状を維持しやすく、発泡体の膨張率を上げることにより、発泡体をより緻密かつ厚くすることができ、窓枠ゴムの設計の多様化に有効である。
【0060】
本開示のさらなる態様は、高弾性押出発泡体を製造するための方法を提供する。図1は、高弾性押出発泡体を製造するための方法の一実施形態を示すプロセスフローチャートである。図1を参照すると、工程S1において、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーと、有機過酸化物と、熱膨張性マイクロスフィアと、シランカップリング剤と、を含む組成物が提供される。各成分の詳細は、上述したものと同様である。
【0061】
工程S2では、組成物を押し出して押出物を得る。押出は、適切な押出機、例えば、Buss混練機、単軸押出機、または二軸押出機を用いて行ってもよい。スクリュー構成、温度設定、スクリュー回転速度、押出出力などの押出機の加工条件を変えることにより、様々な製品を製造することができる。
【0062】
混合物は、押出機のホッパーを通して導入され、スクリューによって移送され、押出機のシリンダー内で溶融され混合される。シリンダーは、溶融混合物が適切に流動可能であり、十分な発泡が達成されるような温度に加熱される。シリンダーの温度は、ポリマーの融点以上の温度、熱膨張性マイクロスフィアのTstart以上の温度、および熱膨張性マイクロスフィアのTmax以下の温度に制御されることが好ましい。シリンダーの温度がTmaxを超えると、熱膨張性マイクロスフィアは回転する押出機スクリューによって破片に破壊され得、その結果、熱膨張性マイクロスフィアから流出する成分は最終製品の色を変化させ得、発泡の程度を低減させ得る。
【0063】
シリンダーの温度は、ポリマーの種類に応じて変えてもよい。スクリュー回転速度および押出出力は、発泡押出物の比重および形状に応じて適宜制御することができる。加工条件は、必要に応じて変更してもよい。例えば、押出機のシリンダーを120~170℃の温度に維持してもよく、押出機のノズルを150~200℃の温度に維持してもよい。
【0064】
ポリマーと熱膨張性マイクロスフィアとの混合物の円滑な押出および発泡のために、押出温度は、熱膨張性マイクロスフィアの膨張開始温度よりも高いことが好ましい。
【0065】
熱膨張性マイクロスフィアの膨張開始温度は約100~約150℃、例えば、約110~約140℃であってもよい。熱膨張性マイクロスフィアの最高膨張温度は約150~約250℃、例えば、約180~約220℃であってもよい。膨張開始温度および最高膨張温度は、意図された用途に応じて適切に選択することができる。
【0066】
熱膨張性マイクロスフィアは、最高膨張温度で、それらの初期体積に対して、約10~約100倍、例えば約30~約60倍に膨張させてもよい。熱膨張性マイクロスフィアを含む組成物を加熱すると、熱膨張性マイクロスフィアが膨張し、得られる成形品は膨張した熱膨張性マイクロスフィアを含む。成形品中の熱膨張性マイクロスフィアの体積は、膨張前の体積よりも約10~約50倍、例えば約20~約40倍大きくてもよい。
【0067】
膨張した熱膨張性マイクロスフィアは、超軽量中空マイクロスフィアであり、最終製品の重量の低減に寄与する。さらに、膨張した熱膨張性マイクロスフィアの固有の高い弾性は、最終製品の機械的強度を維持し、強化することができる。一般的な発泡剤とは異なり、熱膨張性マイクロスフィアは、膨張後に均一なサイズを有する微細な独立気泡を形成し、最終製品の表面特性の改善をもたらす。独立気泡の弾性は、最終製品の収縮の防止にも寄与することができる。
【0068】
押出物は、熱膨張性マイクロスフィアによって膨張され、膨張状態で排出されるので、押出物の断面形状および寸法は、押出機のダイの断面形状および寸法とほぼ同じである。さらに、過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーの架橋が押出中に起こり、押出物の優れた耐熱性および高い圧縮回復率が実現される。
【0069】
過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーは、押出中に熱膨張性マイクロスフィアと均質化することができる。過酸化物架橋性熱可塑性ポリマーが有機過酸化物架橋剤によって架橋されると同時に、シランカップリング剤が過酸化物架橋性熱可塑性ポリマー上にグラフトされる。さらに、熱膨張性マイクロスフィアの膨張は、発泡体の優れた表面特性を実現する。
【0070】
工程S3において、押出物を切断して高弾性押出発泡体にする。例えば、押出物を水で冷却し、切断のためにコンベヤに送ってもよい。
【0071】
組成物を押し出し、切断して、中間製品または最終製品の形態の発泡成形発泡体を製造することができる。
【0072】
一実施形態では、組成物を押し出し、切断して、車両または建物用の窓枠ゴムまたは断熱用の発泡体ホースの形態の最終製品にしてもよい。
【0073】
本方法は、任意選択で、(S4)水の存在下で高弾性押出発泡体を架橋すること、をさらに含んでもよい。押し出された発泡体が湿った(熱水)環境に曝されると、工程S2において押出中にポリマー上にグラフトされたシランカップリング剤の存在が、架橋完了後の最終製品の良好な耐熱性を実現する。高弾性押出発泡体は、自然にまたは湿潤環境において水架橋されてもよい。例えば、室温で一般的な空気条件に曝された場合であっても、押し出された発泡体は、空気中に存在する水分によって水架橋を受け得る。すなわち、押し出された発泡体の高度な架橋は、輸送および貯蔵の間に自然に達成され得る。より迅速な水架橋が、サウナ施設のような高温多湿環境において可能になることが理解されるべきである。
【0074】
結論として、本開示の方法は、高価で複雑な装置を必要とせずに、単一の押出プロセスによる高度な架橋を有する押出発泡体の製造を可能にする。製造された押出発泡体は高弾性であり、低い永久圧縮収縮率を有する。これらの利点により、押出発泡体は、力または圧力が加えられる用途に使用することができる。シランカップリング剤の量を変えることによって架橋密度が制御されるので、押出発泡体の高度な架橋を達成することができる。したがって、過剰な発泡により発泡体製品の密度が低下(例えば、0.5g/cc以下)した場合でも、発泡体製品の高い寸法安定性及び耐熱性が維持される。
【0075】
本開示は、以下の実施例を参照してより具体的に説明される。しかしながら、これらの実施例は説明を容易にするために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の精神を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0076】
エチレンコポリマー-1:Elvaloy AC1330(Dupont、エチレンアクリル酸メチル(BA30%、MI 3.0))
【0077】
エチレンコポリマー-2:Engage 8200(DOW、エチレン-オクテンコポリマー、密度0.870g/cc、MI 5.0)
【0078】
エチレンプロピレンゴム-1:Vistalon 2504(Exxon、エチレン58%、ENB4.7%、ML1+4(125℃)25)
【0079】
熱可塑性ゴム-1:Tuftec H1052(旭化成、SEBS、スチレン20%、MI(230℃、2.16kg)13)
【0080】
過酸化物-1:DCP(ジクミルペルオキシド)
【0081】
TEMS-1:Expancel 930 DU 120(Akzo Nobel、Tstart:122~132℃、Tmax:191~204℃)
【0082】
発泡剤-1:OBSH(Dongjin Semichem、分解温度150℃)
【0083】
シランカップリング剤-1:Silquest A-171(Momentive、ビニルトリメトキシシラン)
【0084】
ジブチル錫ラウレート(DBTL):SONGWON Industrial Co., Ltd.
【0085】
組成物を表1に示すように調製した。各組成物を、シリンダー(直径40mm、温度150℃)とノズル(温度170℃)を有する押出機(L/D=30/1)のダイ(外径30mm、内径20mm)を通して押し出した。押出物を40℃の水で冷却し、コンベヤに送り、外径30mm、内径20mm、長さ100cmの押出発泡体ホースに切断した。発泡体ホースを、60℃の温度および80%の湿度のサウナ中で24時間、水によって架橋し、架橋ホースに対して種々の試験を行った。
【0086】
【表1】
【0087】
-発泡状態は、目視観察により判定した。
【0088】
-発泡体ホースは、発泡体密度が0.70未満の場合に「良好」であり、発泡体密度が0.70以上の場合に「不適切」であると判断された。
【0089】
-発泡体ホースは、ショアC硬度が50以下の場合に「適切」であり、ショアC硬度が50超の場合に「不適切」であると判断された。
【0090】
-静的圧縮回復率:発泡体ホース(外径30mm、内径20mm)の各々を長さ30mmに切断し、ASTM D395試験機に入れ、内径が20mmからゼロに減少するように圧縮した。23℃で7日間貯蔵した後、ホースを試験機から取り出した。30分後の内径の回復を、初期内径に対するパーセント(%)で表した。静的圧縮回復率が80%以上である場合、ホースは「適切」であると判断された。
【0091】
-動的圧縮回復率:発泡体ホース(外径30mm、内径20mm)の各々を長さ30mmに切断した。ホースを、上側プレートが上下に移動可能な装置の下側固定プレートに固定した。内径が半径方向でゼロになるように、上側プレートを毎分60回移動させた。上側プレートの300,000回の移動後の内径の回復を、初期内径に対するパーセント(%)で表した。ホースは、動的圧縮回復率が80%以上である場合に「適切」であると判断された。
【0092】
-ホースを70℃で7日間貯蔵したこと以外は、静的圧縮回復率の測定方法と同様にして、耐熱圧縮回復率を測定した。ホースは、耐熱圧縮回復率が70%以上の場合に「適切」と判断した。
【0093】
<比較例9>
熱可塑性ゴム-1(Tuftec H1052)を、ガス注入口を有するシリンダーを有する押出機中で押し出した。押出物を、ガス注入口から注入された超臨界ガスで発泡させて、押出発泡体(外径30mm、内径20mm)を得た。押出発泡体を30mmの長さに切断した。発泡体を上記の方法によって試験した。発泡体は、静的圧縮回復率が58%であり、動的圧縮回復率が65%であり、耐熱圧縮回復率が30%であることが分かった。この発泡体は、高弾性押出発泡体として使用するのに適していなかった。
図1
【国際調査報告】