(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】放射線検出器及びその製造方法、電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20220106BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20220106BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220106BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L27/146 C
H01L27/144 K
H01L27/146 D
H01L29/78 613Z
H01L29/78 612C
A61B6/00 300S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020526404
(86)(22)【出願日】2019-10-08
(85)【翻訳文提出日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2019109893
(87)【国際公開番号】W WO2020103583
(87)【国際公開日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】201811392902.9
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910894639.1
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】507134301
【氏名又は名称】北京京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Xihuanzhonglu, BDA, Beijing, 100176, P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 勇
(72)【発明者】
【氏名】薛 ▲艶▼娜
(72)【発明者】
【氏名】方 浩博
(72)【発明者】
【氏名】白 ▲ル▼
(72)【発明者】
【氏名】▲華▼ ▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲麗▼▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲堅▼
【テーマコード(参考)】
4C093
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5F110
【Fターム(参考)】
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4C093CA38
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4C093EB17
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(57)【要約】
放射線検出器は、その上に複数の画素領域がアレイ状に配列された基板を含む。画素領域のそれぞれは、ソースとドレインを含む薄膜トランジスタ、及び、薄膜トランジスタの前記基板から離れた側に位置する光電センサ、を含む。光電センサは、互いに隔てられた第1電極と第2電極、第1電極と第2電極の前記基板から離れた側に位置し且つ第1電極と第2電極を覆う誘電体層、及び、誘電体層の前記基板から離れた側に位置する第1半導体層、を含む。第1電極はドレインに電気的に接続されている。第1電極の基板から離れた表面と基板との間の距離は第1距離である。第2電極の基板から離れた表面と基板との間の距離は第2距離である。第1距離と第2距離が略等しい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に複数の画素領域がアレイ状に配列された基板を含み、
前記画素領域のそれぞれは、
ソース及びドレインを含む薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの前記基板から離れた側に位置する光電センサと、
を含み、
前記光電センサは、互いに隔てられた第1電極と第2電極と、前記第1電極と前記第2電極の前記基板から離れた側に位置し且つ前記第1電極と前記第2電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層の前記基板から離れた側に位置する第1半導体層を含み、
前記第1電極は、前記ドレインに電気的に接続され、
前記第1電極の前記基板から離れた表面と前記基板との間の距離が第1距離であり、前記第2電極の前記基板から離れた表面と前記基板との間の距離が第2距離であり、前記第1距離と前記第2距離が略等しい、ことを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
前記誘電体層と前記基板との間に位置する第1絶縁層と、前記第1絶縁層と前記誘電体層との間に位置する第2絶縁層と、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層との間に位置する遮蔽層とをさらに含み、
前記遮蔽層が第1部分を含み、前記第1部分の前記基板上の正射影と前記第2電極の前記基板上の正射影が少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記遮蔽層の第1部分の前記基板上の正射影が前記第2電極の前記基板上の正射影を覆うことを特徴とする請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記基板と前記第1絶縁層の間に位置する共通電極をさらに含み、
前記第1電極、前記ドレイン及び前記共通電極の前記基板上の正射影が互いに少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする請求項2に記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記共通電極が第1厚さを有しており、前記ドレインが第2厚さを有しており、前記遮蔽層の第1部分が第3厚さを有しており、
前記第3厚さが前記第1厚さと前記第2厚さの和に略等しいことを特徴とする請求項4に記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記薄膜トランジスタは、互いに積層するゲートと第2半導体層がさらに含まれ、前記ゲートが前記基板と前記第1絶縁層との間に位置し、前記第2半導体層が前記ソースと前記ドレインに接続され、前記第2半導体層の、前記ソースと前記ドレインとの間の部分がチャンネル領域を形成し、
前記遮蔽層が第2部分をさらに含み、前記第2部分の前記基板上の正射影が少なくとも前記チャンネル領域の前記基板上の正射影を覆うことを特徴とする請求項5に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記第1電極、前記遮蔽層の第2部分及び前記ゲートの前記基板上の正射影が互いに少なくとも部分的に重なり、
前記ゲートが、前記第1厚さに略等しい厚さを有し、
前記遮蔽層の第2部分が、前記第2厚さに略等しい第4厚さを有することを特徴とする請求項6に記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記基板と前記第1絶縁層との間に位置しており、前記ゲートに接続されたゲート線をさらに含み、
前記第1電極、前記遮蔽層の第2部分及び前記ゲート線の前記基板上の正射影が互いに少なくとも部分的に重なり、
前記ゲート線が、前記第1厚さに略等しい厚さを有していることを特徴とする請求項7に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記共通電極と前記遮蔽層が同一の共通電圧信号端に電気的に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の放射線検出器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の放射線検出器を含む電子デバイス。
【請求項11】
放射線検出器を製造する方法であって、
その上に複数の画素領域がアレイ状に配置された基板を提供することと、
各画素領域内に、対応する薄膜トランジスタを形成することと、
各画素領域内の前記薄膜トランジスタの前記基板から離れた側に第1電極と第2電極を形成することと、
前記第1電極と前記第2電極の前記基板から離れた側に前記第1電極と前記第2電極を覆う誘電体層を形成することと、
前記誘電体層の前記基板から離れた側に第1半導体層を形成することと、を含み、
前記薄膜トランジスタがソース及びドレインを含み、前記第1電極と前記第2電極が互いに隔てられ、前記第1電極が前記ドレインに電気的に接続され、
前記第1電極、前記第2電極、前記誘電体層及び前記第1半導体層が光電センサを構成し、
前記第1電極の前記基板から離れた表面と前記基板との間の距離が第1距離であり、前記第2電極の前記基板から離れた表面と前記基板との間の距離が第2距離であり、前記第1距離と前記第2距離が略等しい、ことを特徴とする放射線検出器を製造する方法。
【請求項12】
前記第1電極と前記第2電極を形成する前に、
前記薄膜トランジスタの前記基板から離れた側に第1絶縁層を形成することと、
前記第1絶縁層の前記基板から離れた側に遮蔽層を形成することと、
前記遮蔽層の前記基板から離れた側に第2絶縁層を形成することと、をさらに含み、
前記遮蔽層が第1部分を含み、前記第1部分の前記基板上の正射影と前記第2電極の前記基板上の正射影とが少なくとも部分的に重なることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記遮蔽層の第1部分の前記基板上の正射影が前記第2電極の前記基板上の正射影を覆うことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板と前記第1絶縁層との間に共通電極を形成することをさらに含み、
前記第1電極、前記ドレイン及び前記共通電極の前記基板上の正射影が互いに少なくとも部分的に重なることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記共通電極が第1厚さを有しており、前記ドレインが第2厚さを有しており、前記遮蔽層の第1部分が第3厚さを有しており、
前記第3厚さが、前記第1厚さと前記第2厚さの和に略等しいことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各画素領域内においては対応する薄膜トランジスタを形成することは、互いに積層するゲートと第2半導体層とを形成することが含まれ、前記ゲートが前記基板と前記第1絶縁層との間に位置し、前記第2半導体層が前記ソースと前記ドレインに接続され、前記第2半導体層の、前記ソースと前記ドレインとの間の部分がチャンネル領域を形成し、
遮蔽層を形成することは、前記遮蔽層の第2部分を形成することが含まれ、前記遮蔽層の第2部分の前記基板上の正射影が少なくとも前記チャンネル領域の前記基板上の正射影を覆うことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1電極、前記遮蔽層の第2部分及び前記ゲートの前記基板上の正射影が互いに少なくとも部分的に重なっており、
前記ゲートが、前記第1厚さに略等しい厚さを有し、
前記遮蔽層の第2部分が、前記第2厚さに略等しい第4厚さを有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基板と前記第1絶縁層との間にゲート線を形成することをさらに含み、
前記ゲート線が前記ゲートに接続され、
前記第1電極、前記遮蔽層の第2部分及び前記ゲート線の前記基板上の正射影が互いに少なくとも部分的に重なり、
前記ゲート線が、前記第1厚さに略等しい厚さを有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2018年11月21日に提出された中国特許出願No.201811392902.9及び2019年9月20日に提出された中国特許出願No.201910894639.1の優先権を要求し、ここでその全ての開示内容は引用により合併する。
【0002】
本開示は、センシング技術の分野に関し、特に、放射線検出器、当該放射線検出器を製造する方法、及び、当該放射線検出器を含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
医療分野において、人体の被診断部位に対してX線撮影を行うときに、X線放射器とX線検出器が互いに対向するように配置され、被診断部位が当該X線放射器とX線検出器の間に配置されている。X線放射器は、被診断部位へX線を放射する。X線検出器は、被診断部位を透過したX線を受け、当該X線を可視光に変換する。次いで、X線検出器中のフォトダイオードは、当該可視光を電気信号に変換し、当該電気信号を信号読み取り回路に送信する。信号読み取り回路により読み取られた当該電気信号に基づき映像画面を形成することができる。
【0004】
現在、X線検出器は、PIN型フォトダイオードまたは金属-半導体-金属(MSM)型フォトダイオードが一般に採用されている。PIN型フォトダイオードと比較して、MSM型フォトダイオードは、大きい充填率及び良好な応答速度を有し、且つ、a-Si薄膜トランジスタとの良好な互換性を有するので、X線検出器にますます多く使われるようになった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施例によれば、基板を含む放射線検出器が提供されている。複数の画素領域は、基板上にアレイ状に配列されている。各画素領域は、薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタの基板から離れた側に位置する光電センサと、を含む。薄膜トランジスタは、ソースとドレインを含む。光電センサは、互いに隔てられた第1電極と第2電極と、第1電極と第2電極の基板から離れた側に位置し且つ第1電極と第2電極を覆う誘電体層と、誘電体層の基板から離れた側に位置する第1半導体層と、を含む。第1電極はドレインに電気的に接続されている。第1電極の基板から離れた表面と基板との間の距離が第1距離であり、第2電極の基板から離れた表面と基板との間の距離が第2距離であり、第1距離と第2距離が略等しい。
【0006】
ある実施例において、放射線検出器は、誘電体層と基板との間に位置する第1絶縁層と、第1絶縁層と誘電体層との間に位置する第2絶縁層と、第1絶縁層と第2絶縁層との間に位置する遮蔽層とをさらに含む。遮蔽層は、第1部分をを含み、第1部分の基板上の正射影と第2電極の基板上の正射影が少なくとも部分的に重なっている。
【0007】
ある実施例において、遮蔽層の第1部分の基板上の正射影は、第2電極の基板上の正射影を覆う。
【0008】
ある実施例において、放射線検出器は、基板と第1絶縁層との間に位置する共通電極をさらに有する。第1電極、ドレイン及び共通電極の基板上の正射影は互いに少なくとも部分的に重なっている。
【0009】
ある実施例において、共通電極が第1厚さを有しており、ドレインが第2厚さを有しており、遮蔽層の第1部分が第3厚さを有している。第3厚さは、第1厚さと第2厚さの和に略等しい。
【0010】
ある実施例において、薄膜トランジスタは、互いに積層するゲートと第2半導体層をさらに含む。ゲートは、基板と第1絶縁層との間に位置している。第2半導体層は、ソースとドレインに接続されている。第2半導体層の、ソースとドレインとの間の部分は、チャンネル領域を形成する。遮蔽層が第2部分をさらに含み、第2部分の基板上の正射影が少なくともチャンネル領域の基板上の正射影を覆う。
【0011】
ある実施例において、第1電極、遮蔽層の第2部分及びゲートの基板上の正射影は互いに少なくとも部分的に重なっている。ゲートは、第1厚さに略等しい厚さを有している。遮蔽層の第2部分は、第2厚さに略等しい第4厚さを有している。
【0012】
ある実施例において、放射線検出器は、基板と第1絶縁層との間に位置し且つゲートに接続されたゲート線をさらに含む。第1電極、遮蔽層の第2部分及びゲート線の基板上の正射影は互いに少なくとも部分的に重なっている。ゲート線は、第1厚さに略等しい厚さを有している。
【0013】
ある実施例において、共通電極と遮蔽層は、同一の共通電圧信号端と電気的に接続されている。
【0014】
本開示のある実施例によれば、上記のいずれか1つの実施例に記載された放射線検出器を含む電子デバイスが提供されている。
【0015】
本開示のある実施例によれば、放射線検出器を製造する方法が提供されている。当該方法は、その上に複数の画素領域がアレイ状に配置された基板を提供することと、各画素領域内に、対応する薄膜トランジスタを形成することと、各画素領域内の薄膜トランジスタの基板から離れた側に第1電極と第2電極を形成することと、第1電極と第2電極の基板から離れた側に第1電極と第2電極を覆う誘電体層を形成することと、誘電体層の基板から離れた側に第1半導体層を形成することと、を含み、薄膜トランジスタがソース及びドレインを含み、第1電極と第2電極が互いに隔てられ、第1電極がドレインに電気的に接続された。第1電極、第2電極、誘電体層及び第1半導体層は、光電センサを構成する。第1電極の基板から離れた表面と基板との間の距離が第1距離であり、第2電極の基板から離れた表面と基板との間の距離が第2距離であり、第1距離と第2距離が略等しい。
【0016】
ある実施例において、方法は、第1電極と第2電極を形成する前に、薄膜トランジスタの基板から離れた側に第1絶縁層を形成することと、第1絶縁層の基板から離れた側に遮蔽層を形成することと、遮蔽層の基板から離れた側に第2絶縁層を形成することと、をさらに含む。遮蔽層が第1部分を含み、第1部分の基板上の正射影と第2電極の基板上の正射影とが少なくとも部分的に重なる。
【0017】
ある実施例において、遮蔽層の第1部分の基板上の正射影は、第2電極の基板上の正射影を覆う。
【0018】
ある実施例において、方法は、基板と第1絶縁層との間に共通電極を形成することをさらに含む。第1電極、ドレイン及び共通電極の基板上の正射影は互いに少なくとも部分的に重なっている。
【0019】
ある実施例において、共通電極が第1厚さを有しており、ドレインが第2厚さを有しており、遮蔽層の第1部分が第3厚さを有している。第3厚さは、第1厚さと第2厚さの和に略等しい。
【0020】
ある実施例において、各画素領域内においては対応する薄膜トランジスタを形成することは、互いに積層するゲートと第2半導体層を形成することが含まれ、ゲートが基板と第1絶縁層との間に位置しており、第2半導体層がソースとドレインに接続され、第2半導体層の、ソースとドレインとの間の部分がチャンネル領域を形成する。遮蔽層を形成することは、遮蔽層の第2部分を形成することが含まれ、遮蔽層の第2部分の基板上の正射影が少なくともチャンネル領域の基板上の正射影を覆う。
【0021】
ある実施例において、第1電極、遮蔽層の第2部分及びゲートの基板上の正射影は互いに少なくとも部分的に重なっている。ゲートは、第1厚さに略等しい厚さを有する。遮蔽層の第2部分は、第2厚さに略等しい第4厚さを有する。
【0022】
ある実施例において、方法は、基板と第1絶縁層との間にゲート線を形成することをさらに含む。ゲート線はゲートに接続されている。第1電極、遮蔽層の第2部分及びゲート線の基板上の正射影は互いに少なくとも部分的に重なっている。ゲート線は第1厚さに略等しい厚さを有する。
【0023】
以下、図面を参照して、本開示の実施例をさらに非限定的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の実施例による放射線検出器の部分上面模式図である。
【
図2】本開示の実施例によるMSM型光電センサの作動原理の模式図である。
【
図3】
図1におけるA-A’線に沿う放射線検出器の部分断面模式図である。
【
図4】
図1におけるB-B’線に沿う放射線検出器の部分断面模式図である。
【
図5】本開示の実施例による電子デバイスの模式的なブロック図である。
【
図6】本開示の実施例による放射線検出器を製造する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面において、各図面における同様な図面符号は、一般的に同様または類似した部分を指す。また、図面は、必ずしも一定の縮尺で描くとは限らず、一般的に本開示の原理に重点を置く。
【0026】
本願において、第1、第2、第3などの用語で各種の素子、部材、領域、層及び/または部分を説明できるが、これらの素子、部材、領域、層及び/または部分がこれらの用語により限定されるべきではない、と理解することができる。これらの用語は、一つの素子、部材、領域、層または部分と別の領域、層または部分を区別するためのみである。このため、下記の第1の素子、部材、領域、層または部分を第2の素子、部材、領域、層または部分と呼んでもよく、本開示の示唆から逸れない。
【0027】
例えば、「…の下にある」、「…下にある」、「より下」、「…の下方にある」、「…上にある」、「より上」などのような空間上の相対的な用語は、本願において、説明の便宜上、図面に示す一つの素子または特徴と別の素子または特徴との関係を説明することができる。これらの空間上の相対的な用語は、図面に示す方向づけを除く使用中または操作中の装置の異なる方向づけをカバーすることを意図すると理解することができる。例えば、図中の装置の上下を逆とすると、「ほかの素子または特徴下にある」または「ほかの素子または特徴の下にある」または「ほかの素子または特徴の下方にある」と記載される素子は、「ほかの素子または特徴上にある」と方向づけられることになる。このため、「…下にある」及び「…の下方にある」という例示的な用語は、「…上にある」、及び、「…下にある」という両方の方向づけをカバーできる。例えば、「…の前にある」または「…前にある」と「…の後にある」または「次いで」のような用語は、例えば光が素子を通過する順序を類似的に表示できる。装置は、ほかの方式として方向づけられ(90度回転またはほかの方向づけ)、本願において使用される空間上の相対的な説明符号を対応的に説明することができる。また、層を「二つの層の間に位置する」と呼ぶときに、当該二つの層の間の唯一の層であってもよく、一つまたは複数の中間層があってもよいとさらに理解することができる。
【0028】
本願において使用される用語は、特定な実施例を説明するためのみであり、本開示を限定することを意図しない。ほかの注記が無い限り、本願において使用される「一つ」、「一」と「当該」ということは、複数である状況も含むことを意図する。「含む」及び/または「含有する」という用語は、本明細書において使用されるときに、係る特徴、全体、ステップ、操作、素子及び/または部材の存在を指定するが、一つまたは複数のほかの特徴、全体、ステップ、操作、素子、部材及び/またはその群の存在、または、一つまたは複数のほかの特徴、全体、ステップ、操作、素子、部材及び/またはその群の追加を排除するのではないとさらに理解することができる。例えば、本願において使用される用語である「及び/または」は、関連する例示された項目のうちの一つまたは複数のいずれか1つ及び全ての組み合わせを含む。
【0029】
素子または層は、「別の素子または層にある」、「別の素子または層に接続する」、「別の素子または層に結合する」または「別の素子または層に隣接する」と呼ばれるときに、直接的に別の素子または層にあり、直接的に別の素子または層に接続し、直接的に別の素子または層に結合し、または、直接的に別の素子または層に隣接し、または、中間素子または層が存在することができると理解することができる。それに反して、素子が「直接的に別の素子または層にある」、「直接的に別の素子または層に接続する」、「直接的に別の素子または層に結合する」または「直接的に別の素子または層に隣接する」と呼ばれるときに、中間素子または層が存在しない。しかしながら、いずれの場合においても、「…上にある」または「直接的に…上にある」を、「一つの層が下の層を完全に覆う」として解釈してはいけない。
【0030】
本願においては、本開示の理想的な実施例の模式図(及び中間構成)を参照し、本開示の実施例を説明する。このため、例えば製造技術及び/または公差の結果として図示の形状に対する変化を想定すべきである。このため、本開示の実施例は、本願において図示される領域の特定な形状に限ると解釈してはいけなく、例えば、製造による形状の偏差を含むべきである。このため、図において図示される領域は、本質的に模式的であり、その形状が、装置の領域の実際な形状の図示も、本開示の範囲の限定も意図しない。
【0031】
別段の定義がない限り、本願において使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示の属する分野の一般的な技術者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書において定義されるような用語は、関連する分野及び/または本明細書の文脈における意味と一致すると解釈され、本明細書で明示的に定義されない限り、理想化された、または、過度に正式な意味で解釈されるべきではないとさらに理解することができる。
【0032】
本開示の目的、技術案及び利点をより明瞭にさせるために、以下、図面を参照し、本開示の実施形態をさらに詳しく説明する。
【0033】
従来のMSM型フォトダイオードは、その特定の構造のため、通常その内部で発生する干渉を受けるため、当該MSM型フォトダイオードの電気的性能が劣り、放射線検出器の正確性に影響を与える。これに鑑みて、本開示の実施例は、改善された放線検出器の正確性に対し、いくつかのオプションを有利的に提供した。
【0034】
図1は本開示の実施例による放射線検出器の部分上面模式図であり、
図3は
図1におけるA-A’線に沿う放射線検出器の部分断面模式図であり、
図4は
図1におけるB-B’線に沿う放射線検出器の部分断面模式図である。これらの図には、明確にさせるために、いくつかの素子が省略されうる。
【0035】
図1、
図3及び
図4を参照し、当該放射線検出器100は基板101を含む。基板101は、例えばガラス、石英、プラスチックまたはほかの好適な材料で製造されてもよい。本開示はこれを限定しない。複数の画素領域が基板101上にアレイ状に配列されているが、図面においてそのうちの一つのみが示された。各画素領域は、薄膜トランジスタ102と、薄膜トランジスタ102の上に位置する光電センサ103とを含む。
【0036】
薄膜トランジスタ102はドレイン1021やソース1022などの構造を含む。既知のように、薄膜トランジスタ102は、一般に、ドレイン1021とソース1022が交換可能に使用されるように製造されている。このため、ある場合に、ドレイン1021が「ソース」と呼ばれてもよく、ソース1022が「ドレイン」と呼ばれてもよい、と理解することができる。
【0037】
薄膜トランジスタ102は、ゲート1024aと、第2半導体層1023とをさらに備える。ゲート1024aはゲート線1024bに接続されている。第2半導体層1023とゲート1024aは互いに積層し、第2半導体層1023がドレイン1021とソース1022に接続されている。
【0038】
光電センサ103は、互いに隔てられた第1電極1031と第2電極1032と、第1電極1031と第2電極1032の上に位置し且つ第1電極1031と第2電極1032を覆う誘電体層1033と、誘電体層1033の上に位置する第1半導体層1034とを含む。
図1に示すように、上方から観察するときに、第1電極1031が、くし状にパターニングされている。この例において、第1電極1031は、文字「E」の形状に類似した形状を有している。第2電極1032は、くし状の第1電極1031とインターデジタル構造を形成する指状部分と、指状部分へ高電圧を伝送する配線部分とを含むようにパターニングされている。第1電極1031と第2電極1032は互いに隔てられ、それらの間の距離が実際のニーズに応じて決められる。
図4に示すように、第1電極1031が接続電極113により薄膜トランジスタ102のドレイン1021に電気的に接続され、第2電極1032が薄膜トランジスタ102と電気的に絶縁されている。誘電体層1033は、一定の振幅値(例えば、範囲は200ボルト乃至400ボルトであってもよい)を有する高電圧に耐えられる。特定の厚さ(例えば、100ナノメートル乃至200ナノメートル)の場合、誘電体層1033は、高い電場の下で電子トンネリングが発生する。
【0039】
この例において、光電センサ103は、MSM型フォトダイオードであり、そのうち、誘電体層1033が例えばポリイミド(Polyimide、PI)で製造され、第1電極1031と第2電極1032が例えばアルミニウム、モリブデン、銅またはその合金で製造され、第1半導体層1034が例えばアモルファスシリコン(a-Si)で製造される。
【0040】
図示していないが、放射線検出器100は、シンチレータ(scintillator)をさらに含み、または、シンチレータ一とともに作動すると理解することができる。シンチレータは、放射線を吸収し、放射エネルギーを光電センサ103により検出可能な光に変換すると理解することができる。シンチレータは、実際のニーズに応じてX線、γ線またはほかの放射線に敏感であるように選択できることを説明しなければならない。このように、放射線検出器100は、例えばX線検出器やγ線検出器などの検出器とすることができる。
【0041】
図2は、当該MSM型光電センサ103の作動原理の模式図である。
図2を参照し、第2電極1032には高電圧(例えば、200ボルト)が印加されている。第1半導体層1034の表面に光を照射しない場合、第1半導体層1034は、高電圧が主に誘電体層1033と第1半導体層1034に割り当てられるように高い抵抗を有する。第1半導体層1034の表面に光(
図2の破線矢印で示すように)が照射されるときに、第1半導体層1034が、低下する抵抗を有し、これにより、大部の高電圧が誘電体層1033に割り当てられる。このとき、第2電極1032、誘電体層1033及び第1半導体層1034は、金属-絶縁体-半導体(metal-insulator-semiconductor,MIS)構造を構成する。当該MIS構造は、高電圧で電子トンネリング(即ち、ファウラー・ノルドハイム(Flower-Nordheim,FN)トンネリング)が発生し、トンネル電流を生成する(
図2の実線矢印で示すように)。当該トンネル電流を、光照射の検出のために、収集・読み出すことができる。
【0042】
図1、
図3及び
図4を参照し、実施例において、第1電極1031の基板101から離れた表面と基板101との間の距離が第1距離であり、第2電極1032の基板101から離れた表面と基板101との間の距離が第2距離であり、第1距離と第2距離が略等しい。ここで、「第1距離と第2距離が略等しい」ということは、第1距離と第2距離の差が一閾値より小さいことを意味する。この閾値は、第1電極1031と第2電極1032の上に形成されたフィルム層が均一な厚さを有するように選択される。即ち、「第1距離と第2距離が略等しい」という場合には、第1電極1031と第2電極1032の上に形成された誘電体層1033は、良好な厚さの均一性と平坦性を有する。これにより、当該MSM型光電センサ103は、良好な電気的特性を有し、よって、光照射の検出の正確性を向上させる。
【0043】
本願で使用される用語である「厚さ」は、基板101に垂直な方向におけるフィルム層の厚さを意味する。実施例において、誘電体層1033は、第1電極1031の基板101から離れた表面に位置する部分(説明の便宜上、第1サブ誘電体層と呼ぶ)が厚さt1を有し、第2電極1032の基板101から離れた表面に位置する部分(説明の便宜上、第2サブ誘電体層と呼ぶ)が厚さt2を有している。t1とt2が略等しい。すなわち、第1サブ誘電体層の厚さt1と第2サブ誘電体層の厚さt2の差は一閾値より小さい。この閾値は、誘電体層1033の電気的特性とフィルム層の製造プロセスなどの要素により決められてもよい。ある実施例において、この閾値は、当該第1サブ誘電体層の厚さt1と第2サブ誘電体層の厚さt2との差が光電センサ103の電気的特性に著しく影響しないように選択されてもよい。例示的に、この閾値の範囲は、当該第1サブ誘電体層と第2サブ誘電体層のうちの薄い層の厚さの[-10%,10%]であってもよい。
【0044】
ある実施例において、当該放射線検出器100は、誘電体層1033と基板101との間に位置する第1絶縁層105と、第1絶縁層105と誘電体層1033との間に位置する第2絶縁層106とをさらに含む。第1絶縁層105と第2絶縁層106は、光電センサ103の第2電極1032と薄膜トランジスタ102との間の電気的な隔離を提供する。
【0045】
図1、
図3及び
図4を引き続き参照し、当該放射線検出器100は、共通電極107と遮蔽層104をさらに含む。
【0046】
共通電極107は、基板101と第1絶縁層105との間に設けられている。この例において、共通電極107、ゲート1024a、ゲート線1024bは、同一の層に位置しており、一回のパターニングプロセスにより形成されてもよいので、略同じ厚さH1(「第1厚さ」)を有する。共通電極107の基板101上の正射影と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の基板101上の正射影は少なくとも部分的に重なっている。
図1に示すように、この例では、共通電極107は、E字状の第1電極1031の上半部分とほぼ重なるU字状部と、当該U字状部に共通電圧を伝送する配線部とを含むようにパターニングされている。それと類似して、図示していないが、薄膜トランジスタ102のドレイン1021も、共通電極107のU字状部とほぼ重なるU字状構造にパターニングされている。共通電極107のU字状部と薄膜トランジスタ102のU字状のドレイン1021は、蓄電コンデンサを構成する。放射線検出器100の操作中、共通電極107には、例えば接地電圧が印加され、薄膜トランジスタ102のドレイン1021が接続電極113を介してフォトダイオード103により生成されたトンネリング電流を受けることにより、当該蓄電コンデンサを当該トンネリング電流で充電する。次いで、当該蓄電コンデンサを跨ぐ電圧は、読み出されるよう、感知信号として薄膜トランジスタ103を介してデータ線120に送信される。
【0047】
遮蔽層104は、第1絶縁層105と第2絶縁層106との間に設けられている。遮蔽層104は、第1部分104aと第2部分104bとを含む。第1部分104aは、光電センサ103の第2電極1032を遮断する。具体的には、第1部分104aの基板101上の正射影と、第2電極1032の基板101上の正射影とは少なくとも部分的に重なる。一具体例では、遮蔽層104の第1部分104aの基板101上の正射影は第2電極1032の基板101上の正射影を覆う。遮蔽層104の第2部分104bは、薄膜トランジスタ102のチャンネル領域(及び、選択的に、ゲート線1024b)を遮断する。具体的には、当該第2部分104bの基板101上の正射影は薄膜トランジスタ102のチャンネル領域の基板101上の正射影を少なくとも覆う。遮蔽層104は、遮光性を有する導電材料(例えば、アルミニウム、モリブデン、銅、またはその合金)で製造されてもよい。薄膜トランジスタ102のドレイン1021及びソース1022の材料は、遮蔽層104の材料と同じであってもよい。
【0048】
具体的な一実施例において、第1電極1031の基板101上の正射影と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の基板101上の正射影とが少なくとも部分的に重なり、第1電極1031の基板101上の正射影と共通電極107の基板101上の正射影とが少なくとも部分的に重なる。即ち、共通電極107と薄膜トランジスタ102のドレイン1021は、少なくとも部分的に第1電極1031の直下に位置している。遮蔽層104の第1部分104aの基板101上の正射影は光電センサ103の第2電極1032の基板101上の正射影を覆う。つまり、遮蔽層104の第1部分104aは、少なくとも部分的に光電センサ103の第2電極1032の直下に位置している。
【0049】
第1電極1031の基板101から離れた表面から基板101までの第1距離と、第2電極1032の基板101から離れた表面から基板101までの第2距離との間に大きな差があれば、第1電極1031と第2電極1032の上に誘電体層1033を形成する場合には、誘電体層1033の第1電極1031の上方に位置する部分(即ち、第1サブ誘電体層)と誘電体層1033の第2電極1032の上方に位置する部分(即ち、第2サブ誘電体層)に一定の厚さの差(例えば、1000Å)があり、よって、光電センサ103の電気的特性が劣化してしまった。
【0050】
これに鑑みて、ある実施例において、遮蔽層104は、第1部分104aの厚さH3(「第3厚さ」)が共通電極107の厚さH1(「第1厚さ」)と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2(「第2厚さ」)の和にほぼ等しいように形成されている。このように、第1電極1031の基板101から離れた表面から基板101までの第1距離と、第2電極1032の基板101から離れた表面から基板101までの第2距離とがほぼ等しいことを許容できる(第1電極1031の厚さと第2電極1032の厚さとが略同じである場合)。
【0051】
以下、遮蔽層104の厚さを設定することにより誘電体層1033の第1電極1031及び第2電極1032の上の厚さの均一性を実現する方法について具体的に説明する。
【0052】
図3及び
図4に示すように、第1電極1031と基板101との間には、共通電極107と、ゲート絶縁層108と、薄膜トランジスタ102のドレイン1021と、パッシベーション層112と、第1絶縁層105と、第1パッシベーション層110と、第2パッシベーション層111と、第2絶縁層106とが存在する。第2電極1032と基板101との間には、ゲート絶縁層108と、パッシベーション層112と、第1絶縁層105と、第1パッシベーション層110と、遮蔽層104の第1部分104aと、第2パッシベーション層111と、第2絶縁層106とが存在する。図中に直観的に示していないが、それらは何れも一回のパターニングにより形成された層全体の構造であるため、ゲート絶縁層108と、パッシベーション層112と、第1絶縁層105と、第1パッシベーション層110と、第2パッシベーション層111と、第2絶縁層106は何れも基板101上の各箇所においてもほぼ均一な厚さを有する、ことを説明しなければならない。このため、第1電極1031と第2電極1032の厚さがほぼ同じである場合、遮蔽層104の第1部分104aの厚さH3が、共通電極107の厚さH1と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2の和に略等しいなら、第1電極1031の基板101から離れた表面から基板101までの第1距離は、第2電極1032の基板101から離れた表面から基板101までの第2距離にほぼ等しい。これにより、第1電極1031と第2電極1032の上の誘電体層1033は、良好な厚さの均一性を有することができる。
【0053】
ここで、「遮蔽層104の第1部分104aの厚さH3が共通電極107の厚さH1と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2の和に略等しい」ということは、(i)「遮蔽層104の第1部分104aの第3厚さH3が共通電極107の第1厚さH1と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の第2厚さH2の和にちょうど等しい」、及び、(ii)「遮蔽層104の第1部分104aの第3厚さH3と、共通電極107の第1厚さH1と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の第2厚さH2の和と、の間には、僅かな差がある」という2つの場合を含む。両方の場合にも、第1電極1031の基板101から離れた表面から基板101までの第1距離は、第2電極1032の基板101から離れた表面から基板101までの第2距離にほぼ等しい。このように、第1電極1031の基板101から離れた表面と第2電極1032の基板101から離れた表面との間の段差が小さいため、誘電体層1033を形成する際、誘電体層1033の第1電極1031の上方に位置する部分(即ち、第1サブ誘電体層)の厚さt1と誘電体層1033の第2電極1032の上方に位置する部分(即ち、第2サブ誘電体層)の厚さt2とがほぼ同じであることを許容する。
【0054】
また、遮蔽層104の第2部分104bは、薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2に略等しい厚さH4(「第4厚さ」)を有してもよい。
図3及び
図4に示すように、ゲート線1024b、ゲート1024a及び共通電極107が略同じ厚さH1を有しており、遮蔽層104の第2部分104bの厚さH4が薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2に略等しいので、ゲート線1024bの厚さと遮蔽層104の第2部分104bの厚さH4の和は、共通電極107の厚さH1と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2の和に略等しい。即ち、ゲート線1024bの厚さと遮蔽層104の第2部分104bの厚さH4の和は、遮蔽層104の第1部分104aの厚さH3に略等しい。このため、第1電極1031のゲート1024a/ゲート線1024bに対応する部分と基板101との間の距離も、第2電極1032と基板101との間の距離に略等しい。
【0055】
一実施例では、遮蔽層104に印加される電気信号は、共通電極107に印加される共通電極信号(例えば、接地電圧)と同じであってもよい。即ち、共通電極107と遮蔽層104は、同一の共通電圧信号端と電気的に接続されている。勿論、他の実施例も可能である。
【0056】
前述したように、誘電体層1033において電子トンネリングを実現するために、光電センサ103の第2電極1032には一般に高電圧(例えば、200ボルト)が印加される。この高電圧と比較し、光電センサ103のトンネリング電流により生成される、(ドレイン1021及び共通電極107により構成される)蓄電コンデンサを跨ぐ検知電圧は、一般に非常に小さい(例えば、1ボルト)。このように、第2電極1032と薄膜トランジスタ102のドレイン1021(または、ソース1022)との間には、約200ボルトの電圧差が生じ、検知電圧に対して強い干渉を有する。遮蔽層104(具体的に、第1部分104a)の遮蔽効果により、第2電極1032に印加された高電圧による当該干渉を低減することができ、検知電圧の正確度を向上させる。
【0057】
また、薄膜トランジスタ102の第2半導体層1023は、外界光の照射により、望まない光電流を発生させ、よって、当該薄膜トランジスタ102のオフ電流が大き過ぎる。上記の実施例では、遮蔽層104の第2部分104bの基板101上の正射影が第2半導体層1023のチャンネル領域の基板101上の正射影を少なくとも覆うので、当該第2半導体層1023に外界光が照射されるのを防ぐことができ、よって、薄膜トランジスタ102のオフ電流を減少し、当該放射線検出器100の電力消費を低減することができる。
【0058】
図1、
図3、
図4に示す薄膜トランジスタ102はボトムゲート構造であるが、薄膜トランジスタ102の構造はこれに限定されない。ほかの実施例では、薄膜トランジスタ102はトップゲート構造であってもよい。
【0059】
ある実施例において、
図3と
図4に示すように、遮蔽層104と第1絶縁層105との間に第1パッシベーション層110が設けられており、遮蔽層104と第2絶縁層106との間に第2パッシベーション層111が設けられている。これにより、金属フィルム層と絶縁層との接着性が強化されている。第1パッシベーション層110と第2パッシベーション層111は、本分野ではよく使用される材料を採用することができ、本開示は、これを限定しない。
【0060】
また、
図3と
図4に示すように、当該放射線検出器100は、信号線層109をさらに含み、これにより、各画素領域に対して電気信号を印加する。例示したように、当該信号線層109は、第1半導体層1034の基板101から離れた側に設けられている。当該信号線層109は、酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide、ITO)などの透明材料から製造された配線(図示せず)を含んでもよい。
【0061】
図5は、本開示の実施例による電子デバイス200の模式的なブロック図である。当該電子デバイス200は、上記のいずれかの実施例に記載された放射線検出器を含む。当該電子デバイス200の例は、例えば医療診断装置や地質探査装置などを含む。電子デバイス200は、上記の放射線検出器の実施例と同じ利点を有し、簡潔にさせるために、本願では説明を省略する。
【0062】
図6は、本開示の実施例による放射線検出器を製造する方法600のフロー図である。この方法600は、上記のいずれかの実施例において説明された放射線検出器に適用可能である。以下、
図3、
図4及び
図6を参照し、この方法600を説明する。
【0063】
ステップS601において、基板101を提供する。
【0064】
基板101は、例えばガラス基板、石英基板、プラスチック基板または他の好適な材料の基板であってもよい。本開示はこれを限定しない。一例では、基板101はフレキシブル基板であってもよい。複数の画素領域は、基板101上にアレイ状に配列されている。
【0065】
ステップS602において、各画素領域において、対応する薄膜トランジスタ102を形成する。
【0066】
薄膜トランジスタ102は、トップゲート型の薄膜トランジスタであってもよく、ボトムゲート型の薄膜トランジスタであってもよい。薄膜トランジスタ102を形成するプロセスステップは、その属するタイプにより決められる。例えば、当該薄膜トランジスタ102がトップゲート型である実施例において、ステップS602は、ドレイン1021とソース1022、第2半導体層1023、ゲート絶縁層108、ゲート1024aを基板101上に順次形成するステップを含むことができる。当該薄膜トランジスタ102がボトムゲート型(
図3及び
図4に示すような)実施例において、ステップS602は、ゲート1024a、ゲート絶縁層108、第2半導体層1023、ドレイン1021とソース1022を基板101上に順次形成するステップを含むことができる。一例では、一回のパターニングプロセスにより、基板101上にゲート1024aと、ゲート線1024bと、共通電極107とを同時に形成することができる。ドレイン1021及びソース1022は、実際の状況に応じて交換可能に使用することができる。
【0067】
第2半導体層1023を形成する方法を例として、薄膜トランジスタ102におけるフィルム層の形成に必要なステップを説明する。マグネトロンスパッタリング、熱蒸着またはプラズマエンハンスト化学気相蒸着(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition,PECVD)などの方法で基板101上に、一層の、一定の厚さを有する半導体材料を蒸着し、半導体材質層を得ることができる。次いで、パターニングプロセスにより半導体材質層を処理して第2半導体層1023を得る。このパターニングプロセスは、フォトレジストのコーティングと、露光と、現像と、エッチングと、フォトレジストの剥離とを含むことができる。半導体材料は、非晶質シリコンや多結晶シリコン(polycrystalline silicon,P-Si)などの材料であってもよい。当該第2半導体層1023の厚さは、実際のニーズにより決められてもよい。
【0068】
その後、パッシベーション層112を形成する。一層の、一定の厚さを有するパッシベーション層材料を蒸着(例えば、化学気相蒸着、物理気相蒸着)または塗布などの方法により形成してパッシベーション層112を得ることができる。当該パッシベーション層112は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、または、二酸化ケイ素と窒化ケイ素などの材料の混合材料で製造することができる。当該パッシベーション層112は選択可能なものでもよい。
【0069】
次いで、第1絶縁層105を形成する。第1絶縁層105を形成する方法は、上記のパッシベーション層112を形成する方法を参照してもよく、ここでは説明を省略する。当該第1絶縁層105は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、または、二酸化ケイ素と窒化ケイ素などの材料の混合材料で製造することができる。当該第1絶縁層105の厚さは、実際のニーズにより決められてもよい。
【0070】
次いで、第1パッシベーション層110を形成する。第1パッシベーション層110を形成する方法は、上記のパッシベーション層112を形成する方法を参照してもよく、ここでは説明を省略する。第1パッシベーション層110は選択可能なものでもよい。
【0071】
その後、第1パッシベーション層110、第1絶縁層105及びパッシベーション層112を貫く第1接触穴C1を形成する。第1接触穴C1は、薄膜トランジスタ102のドレイン1021の一部を露出させる。
【0072】
次いで、遮蔽層104と接続電極113を形成する。第1パッシベーション層110上及び第1接触穴C1の中に、マグネトロンスパッタリング、熱蒸着、またはPECVDなどの方法で、一層の、一定の厚さを有する、遮光及び導電の性質を持つ材料を蒸着して、遮蔽材質層を得ることができる。当該遮蔽材質層は、例えばアルミニウム、モリブデン、銅またはその合金であってもよい。次いで、パターニングプロセスにより遮蔽材質層をパターニングして、遮蔽層104と接続電極113を得る。形成された遮蔽層104は、厚さH3を有する第1部分104aと、厚さH4を有する第2部分104bとを含む。異なる厚さを有する第1部分104aと第2部分104bは、ハーフトーンマスク(halftone masking)により形成されても良い。
【0073】
当該遮蔽層104の第2部分104bの基板上の正射影は、薄膜トランジスタ102の第2半導体層1023のチャンネル領域の基板101上の正射影を少なくとも覆う。ある実施例では、当該遮蔽層104の第2部分104bの基板上の正射影は、ゲート線1024bの基板上の正射影をさらに覆う。ある実施例では、遮蔽層104の第1部分104aの厚さH3は、共通電極107の厚さH1と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2の和に略等しい。このように、後で形成される誘電体層1033の厚さの均一性を維持することに有利である。
【0074】
その後、第2パッシベーション層111と第2絶縁層106を順次形成する。第2パッシベーション層111と第2絶縁層106を形成する方法は、上記のパッシベーション層112を形成する方法を参照してもよく、ここで説明を省略する。第2パッシベーション層111と第2絶縁層106の中に、第2接触穴C2が形成されている。第2接触穴C2は、接続電極113の一部を露出させる。
【0075】
ステップS603において、各画素領域内の薄膜トランジスタ102上に第1電極1031と第2電極1032を形成する。
【0076】
マグネトロンスパッタリング、熱蒸着、またはPECVDなどの方法により第2絶縁層106上、及び、第2接触穴C2中に、一層の、一定の厚さを有する導電材料を蒸着して、電極材質層を得ることができる。次いで、電極材質層をパターニングプロセスによりパターニングして、第1電極1031と第2電極1032を得る。第1電極1031と第2電極1032は互いに隔てられている。各画素領域において、第1電極1031は、第1接触穴C1と第2接触穴C2を通じて、接続電極113を介して薄膜トランジスタ102のドレイン1021と電気的に接続され、第2電極1032は、第1絶縁層105と第2絶縁層106を介して、薄膜トランジスタ102と電気的に絶縁されている。第2電極1032の基板101上の正射影は、遮蔽層104の第1部分104aの基板101上の正射影により覆われている。
【0077】
第1電極1031の基板101上の正射影と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の基板101上の正射影とが少なくとも部分的に重なっており、第1電極1031の基板101上の正射影と共通電極107の基板101上の正射影とが少なくとも部分的に重なっている。即ち、共通電極107と薄膜トランジスタ102のドレイン1021は、第1電極1031の下方に少なくとも部分的に位置している。遮蔽層104の第1部分104aの基板101上の正射影は第2電極1032の基板101上の正射影を覆う。遮蔽層104の第1部104aの厚さH3は、共通電極107の厚さH1と薄膜トランジスタ102のドレイン1021の厚さH2の和にほぼ等しいので、第1電極1031の基板101から離れた表面から基板101までの第1距離と、第2電極1032の基板101から離れた表面から基板101までの第2距離とは略等しい(第1電極1031の厚さと第2電極1032の厚さがほぼ等しい場合)。
【0078】
ステップS604において、第1電極1031と第2電極1032の上に、第1電極1031と第2電極1032を覆う誘電体層1033を形成する。
【0079】
第1電極1031と第2電極1032が形成された基板101上に、蒸着(例えば、化学気相蒸着、物理気相蒸着)または塗布などの方法により、一層の、一定の厚さの誘電材料(例えば、ポリイミド)を形成して、誘電体層1033を得ることができる。第1電極1031の基板101から離れた表面から基板101までの第1距離と、第2電極1032の基板101から離れた表面から基板101までの第2距離とが略等しいので、第1電極1031と第2電極1032の上の誘電体層1033は、良好な厚さの均一性を有する。即ち、誘電体層1033の第1電極1031の上方に位置する部分の厚さt1は、誘電体層1033の第2電極1032の上方に位置する部分の厚さt2とほぼ同じである。
【0080】
ステップS605において、誘電体層1033上に第1半導体層1034を形成する。
【0081】
第1半導体層1034を形成する方法は、上記の第2半導体層1023を形成する方法を参照してもよく、ここで説明を省略する。第1電極1031、第2電極1032、誘電体層1033及び第1半導体層1034は、当該放射線検出器の光電センサ103を構成する。
【0082】
放射線検出器を製造する方法600は、上記の放射線検出器の実施例と同じ利点を有し、簡潔のために、本願では詳述しない。
【0083】
上記の実施例は、本開示を限定するものではなく、また、当業者にとっては、多くの取換可能な実施例を、特許請求の範囲から逸脱することなく設計することができる。特許請求の範囲において、括弧の内のいずれの参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。動詞である「含む」及びその語形変化の使用は、請求項に記載のそれら以外の要素またはステップの存在を排除しない。要素の前の「一」または「一つ」は、複数のこのような要素の存在を排除しない。互いに異なる従属請求項においてある措置を記載する特徴は、これらの措置の組み合わせが利益を得るために使用されないことを示していない。
【符号の説明】
【0084】
100 放射線検出器
101 基板
102 薄膜トランジスタ
1021 ドレイン
1022 ソース
1023 第2半導体層
1024a ゲート
1024b ゲート線
103 光電センサ
1031 第1電極
1032 第2電極
1033 誘電体層
1034 第1半導体層
104 遮蔽層
104a 第1部分
104b 第2部分
105 第1絶縁層
106 第2絶縁層
107 共通電極
108 ゲート絶縁層
109 信号線層
110 第1パッシベーション層
111 第2パッシベーション層
112 パッシベーション層
113 接続電極
120 データ線
200 電子デバイス
【国際調査報告】