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特表2022-505008機械の残存耐用寿命を予測するための装置および方法
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  • 特表-機械の残存耐用寿命を予測するための装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(54)【発明の名称】機械の残存耐用寿命を予測するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G05B23/02 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021507025
(86)(22)【出願日】2019-08-12
(85)【翻訳文提出日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2019071567
(87)【国際公開番号】W WO2020035439
(87)【国際公開日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】18188924.7
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ベルクス,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデブラント,マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ハリール,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】モゴレアヌ,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】シャム サンダー,スワティ
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA12
3C223BA01
3C223BB17
3C223CC01
3C223DD01
3C223EA06
3C223EB02
3C223FF05
3C223FF23
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH01
(57)【要約】
機械の状態データAに基づいて、各々が機械の残存耐用寿命予測を計算する、複数の互いに独立した基本シミュレーションが実行される。残存耐用寿命予測と、機械の性質を示す特徴データとが、ニューラルネットワークに供給される。ニューラルネットワークは残存耐用寿命予測の重みを出力する。残存耐用寿命予測が重みに応じて互いに重み付けされることにより、残存耐用寿命予測に基づいて最終予測はコンピュータ支援により計算される。その結果、基本シミュレーションとニューラルネットワークとの組合せから得られる、ハイブリッドモデルが生成される。従来とは対照的に、特定のシミュレーションモデルが手動で作成された少数の機械のみに関して、残存耐用寿命が予測可能であるのではない。その代わりに、ハイブリッドモデルは、同一機械クラスのみに属する、任意の他のタイプ及び構成の機械に関する状態監視も可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械、特にモータの残存耐用寿命を予測するための方法であって、
前記機械の状態データ(A)に基づいて、各々が前記機械の残存耐用寿命予測(P1,P2,P3)を計算する、複数の互いに独立した基本シミュレーション(B)がコンピュータ支援により実行され、
前記残存耐用寿命予測と、前記機械の性質を示す特徴データ(D)とが、ニューラルネットワーク(E)に供給され、
前記ニューラルネットワークは前記残存耐用寿命予測の重み(F)を出力し、
前記残存耐用寿命予測が前記重みに応じて互いに重み付けされることにより、前記残存耐用寿命予測に基づいて最終予測(G)はコンピュータ支援により計算される、
方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークは線形重みベクトルを出力し、
係数として前記重みを用いて前記残存耐用寿命予測が線形結合されることにより、前記最終予測は計算される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
センサは、前記機械の動作のセンサデータを捕捉し、
前記センサデータから、コンピュータ支援により前記機械の前記状態データは導出される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記センサデータは、捕捉後、クラウドに送信され、前記クラウドにおいて残りの方法ステップが実行されるか、又は、
前記状態データは、その導出後、クラウドに送信され、前記クラウドにおいて残りの方法ステップが実行される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記機械の前記状態データは、状態検知モジュール、特にニューラルネットワークによって、前記センサデータから導出される、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
機械、特にモータの残存耐用寿命を予測するための装置であって、1つ又は複数の演算ユニットを備え、
前記機械の状態データ(A)に基づいて、各々が前記機械の残存耐用寿命予測(P1,P2,P3)を計算する、複数の互いに独立した基本シミュレーション(B)が実行されるように、
前記残存耐用寿命予測を、前記機械の性質を示す特徴データ(D)と共に、ニューラルネットワーク(E)に供給するように、
前記ニューラルネットワークにより前記残存耐用寿命予測の重み(F)を出力するように、
前記残存耐用寿命予測に基づいて最終予測(G)を計算するようにであって、前記残存耐用寿命予測が前記重みに応じて互いに重み付けされるようにプログラムされている、
装置。
【請求項7】
前記機械の動作のセンサデータを捕捉するように構成されるセンサと、
前記センサデータから前記機械の前記状態データを導出するように構成されるニューラルネットワークと、を備える、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
コンピュータ可読データキャリアであって、
請求項1~5の何れか1項に記載の方法を実行するコンピュータプログラムが、プロセッサにおいて実行される場合、格納されている、コンピュータ可読データキャリア。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、
プロセッサにおいて実行され、この場合、請求項1~5の何れか1項に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械の残存耐用寿命を予測するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用途の機械の残存耐用寿命(英語では「remaining useful life」と称される)を予測するため、一般的には、状態監視(英語では「Condition Monitoring」)の分野のアプローチ、具体的には、いわゆる構造ヘルスモニタリングのアプローチが知られている。機械にかかる機械的負荷を監視することにより、その見込まれる残存耐用寿命を予測することができ、これにより、その修理時間及びダウンタイムを最小限に抑えることができる。機械の耐用寿命は延び、サービス間隔をより良好に計画することができる。
【0003】
残存耐用寿命を予測するため、一般に、各分野の専門家は、機械について、CADモデルと、有限要素法(FEMシミュレーション)を用いた構造力学モデルとを作成する。そして、例えば、とりわけ、機械に備えられる振動センサから供給することができるセンサデータから得られる、機械の状態データが計算される。状態データは、FEMシミュレーションの境界条件として考慮され、これにより、残存耐用寿命を予測することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明により、従来技術の代替が提供されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、本発明によって、機械、特にモータの残存耐用寿命を予測するために、機械の状態データに基づいて、各々がコンピュータ支援により機械の残存耐用寿命予測を計算する、複数の互いに独立した基本シミュレーションが実行されることにより、解決される。残存耐用寿命予測と、機械の性質を示す特徴データとが、ニューラルネットワークに供給される。ニューラルネットワークは残存耐用寿命予測の重みを出力する。残存耐用寿命予測が重みに応じて互いに重み付けされることにより、残存耐用寿命予測に基づいて最終予測はコンピュータ支援により計算される。
【0006】
本装置は、1つ又は複数の演算ユニットを備え、1つ又は複数の演算ユニットは、機械の状態データに基づいて、各々が機械の残存耐用寿命予測を計算する、複数の互いに独立した基本シミュレーションが実行されるように、残存耐用寿命予測を、機械の性質を示す特徴データと共に、ニューラルネットワークに供給するように、ニューラルネットワークにより残存耐用寿命予測の重みを出力するように、残存耐用寿命予測に基づいて最終予測を計算するようにであって、残存耐用寿命予測が重みに応じて互いに重み付けされるように、プログラムされている。
【0007】
下記の有利な点は、必ずしも独立請求項の主題によって、達成されなければならないものではない。この場合、むしろ、個々の実施形態、変形又は発展形態によってのみ、達成される有利な点でもあってよい。同様のことが以下の説明に関して適用される。
【0008】
本装置の演算ユニットは、例えば、プログラマブルコントローラ、マイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラ、システムオンチップ若しくはプログラマブルデジタルコンポーネント、例えば「フィールドプログラマブルゲートアレイ」(FPGA)、ワークステーション、サーバ、コンピュータネットワーク又はクラウドである。また、複数の上記演算ユニットによる、同一又は異なる計算ステップの並列実行も可能である。
【0009】
本方法及び本装置は、基本シミュレーションとニューラルネットワークとの組合せから得られるハイブリッドモデルを用いる。従来とは対照的に、特定のシミュレーションモデルが手動で作成された少数の機械のみに関して、残存耐用寿命が予測可能であるのではない。その代わりに、ハイブリッドモデルは、同一機械クラスのみに属する、任意の他のタイプ及び構成の機械に関する状態監視も可能にする。したがって、基本シミュレーションは、従来周知ではない機械にも適用することができる。FEMシミュレーション、場合によってはCADモデルを手動で作成する時間コストがかからなくなる。ニューラルネットワークは、どの基本シミュレーションを機械のエキスパートとしてどの程度援用するべきか、データ駆動型の決定を行う。
【0010】
特徴データに基づく最良の基本シミュレーションの手動ルックアップとは対照的に、ニューラルネットワークは、人間が直接アクセスできない特徴データの側面を評価し、暗黙的に学習することもできる。さらに、ニューラルネットワークは、特徴データ、状態データ及び残存耐用寿命の間の複雑な非線形の依存性も学習できる。学習はデータ駆動型で実行可能であるため、割り当てを手動で指定する必要がない。
【0011】
さらなる有利な点は、ニューラルネットワークは複数の基本シミュレーションを組み合わせ、互いに重み付けできることである。これにより、各基本シミュレーション自体よりも高い予測性能を有する集約モデルを生成する。
【0012】
基本シミュレーションを用いずに協働するニューラルネットワークを用いた純粋なデータ駆動型学習と比較すると、ニューラルネットワークが出力する重みが人間に可視であるという有利な点が得られるため、残存耐用寿命の予測に関してどの基本シミュレーションがどの程度援用されたか、把握可能である。これにより、保全エンジニア又は演算系エンジニアが、重みを監視し、必要に応じて修正する機会も与えられる。
【0013】
1つの実施形態によれば、ニューラルネットワークは線形重みベクトルを出力する。係数として重みを用いて残存耐用寿命予測が線形結合されることにより、最終予測は計算される。
【0014】
さらなる実施形態によれば、センサは、機械の動作のセンサデータを捕捉する。センサデータから、コンピュータ支援により機械の状態データは導出される。
【0015】
1つの発展形態において、センサデータは、捕捉後、クラウドに送信され、クラウドにおいて残りの方法ステップが実行される。あるいは、状態データは、その導出後、クラウドに送信され、クラウドにおいて残りの方法ステップが実行される。
【0016】
1つの実施形態によれば、機械の状態データは、状態検知モジュール、特にニューラルネットワークによって、センサデータから導出される。この場合、上記ニューラルネットワークとは別のニューラルネットワークに関する。
【0017】
コンピュータ可読データキャリアに、方法を実行するコンピュータプログラムは、プロセッサにおいて実行される場合、格納されている。
【0018】
コンピュータプログラムは、プロセッサにおいて実行され、この場合、方法を実行する。
【0019】
以下、本発明の実施形態例を、図面を参照してより詳細に説明する。図面中、同一又は同一の機能を有する要素には、特記されていない限り同一の参照記号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、機械の残存耐用寿命を予測するためのフロー図である。
図2図2は、製造プラントPP、産業用クラウドIC及び予知保全用ダッシュボードPMDの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、機械の残存耐用寿命を予測するためのフロー図を示す。最初に、センサは、機械の動作のセンサデータを捕捉する。多くの場合、振動のセンサ測定は特に重要である。機械とは、例えば、製造プラントにおけるモータである。センサデータは、周辺ユニットにおいて非集中型で収集され、プログラマブルコントローラに転送される。
【0022】
例えば、モータを監視するために、必要に応じてさらに温度センサ及びひずみゲージを補足可能な、2~3個のセンサ、例えば、振動センサ及び加速度センサが設けられる。センサは、好ましくは、駆動側のエンドプレート上に、可能な限りベアリング又はシャフト近傍に設けられる。振動センサの測定方向は、好ましくは、シャフトの横方向に方向付けられる。
【0023】
図1には詳細には示されていない状態検知モジュールは、センサデータから、状態データA、例えば、第1状態データA1として平行度のズレ、第2状態データA2としてモータのシャフトアライメントの角度のズレを導出する。状態検知モジュールは、状態データAとしてエラー又は異常、例えば平行度のズレや角度のズレ、又は一般的な動作パラメータ、例えばモータの回転速度もセンサデータから導出できる、AIベースの検知モジュールである。状態データは、例えば、そのようなエラー又は異常のタイプ、度合及び/又は箇所を含んでよく、各々の機械クラスに依存する。
【0024】
状態検知モジュールとして、ニューラルネットワーク、例えば畳み込みニューラルネットワーク(CNN)(英語でConvolutional Neural Networkの略)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)(recurrent Neural Network)、又は長短期記憶(LSTM)(英語でLong Short-Term Memoryの略)ネットワークが適している。
【0025】
このニューラルネットワークは、センサデータと状態データとの関係を学習するために、事前に訓練される。この訓練は、同一クラスの機械に対して堅牢で一般的に実行可能であるため、事前に行われる。
【0026】
また、上記センサを備える、複数の機械による実験構成のセンサデータ又は現実に用いられる機械のセンサデータが、事前に取り込まれる。センサデータには、各々の機械の状態データ(例えば、健全かエラーがあるか、必要に応じてどのエラーか)が手動でラベル付けされ、これにより訓練データが形成される。その後、ニューラルネットワークの訓練は、この訓練データを用いて行われる。
【0027】
図1に示す実施形態例では、このように訓練された状態検知モジュールが既に存在しているため、状態検知モジュールは、検査される機械のセンサデータに基づいて状態データAを即座に提供することができる。
【0028】
ここで、状態データAに基づいて、複数の互いに独立した基本シミュレーションBがコンピュータ支援により実行される。基本シミュレーションBとは、少なくとも機械の機械クラスに対応し、残存耐用寿命を予測するシミュレーションモデルである。機械クラスによって特定の特徴が設定される。このように、基本シミュレーション全体は、例えば、機械クラス、つまりモータか、特定のモータクラス、例えば電気モータか、下位クラス、例えば三相モータに関する。具体的に存在する機械に関して、基本シミュレーションBは、各々が各々のクラス内の様々なタイプの機械をシミュレートするため、正確な予測を行うことができなくてもよい。その一方、各基本シミュレーションは、これまで未知の機械の残存耐用寿命の予測に寄与する情報を含むことができる。所定の基本シミュレーションが予測に貢献できる程度は、機械の基本的な物理的性質と基本シミュレーションに起因する。ここで、その特徴データDに存在する機械のデータシートにおいて指定されている、特に機械の幾何学形状及び材料特性は重要な役割を果たす。特徴データDは、例えば、機械の特性、例えばその幾何学形状又はその材料特性を示すカタログデータである。
【0029】
ここで、第1基本シミュレーションB1は機械に関する第1残存耐用寿命予測P1を、第2基本シミュレーションB2は第2残存耐用寿命予測P2を、第3基本シミュレーションB3は第3残存耐用寿命予測P3を計算する。その後、残存耐用寿命予測P1,P2,P3と、機械の性質を示す特徴データDは、重みFを出力するニューラルネットワークEに供給される。状態検知モジュールの可能な実装として上述され、センサデータから状態データを導出するニューラルネットワークに対して、図1に示すニューラルネットワークEは独立している。
【0030】
残存耐用寿命予測P1,P2,P3が重みFに応じて互いに重み付けされることにより、残存耐用寿命予測に基づいて最終予測Gはコンピュータ支援により計算される。
【0031】
ニューラルネットワークEは、例えば、多層フィードフォワードネットワークであり、線形重みベクトル(w1,w2,w3)を出力する。この場合、係数として重みw1,w2,w3を用いて残存耐用寿命予測P1,P2,P3が線形結合されることにより、最終予測Gを計算することができる。
G=w1・P1+w2・P2+w3・P3
【0032】
残存耐用寿命予測P1,P2,P3と最終予測Gは、例えば、日又は月に基づく残り期間を示す数値であってよい。これら変数のデータ型として、例えば、ダブルワードで格納される浮動小数点数が各々選択されてよい。
【0033】
基本シミュレーションBとして、基本的に任意のブラックボックスモデル及びホワイトボックスモデルが適している。例えば、基本シミュレーションBには、機械の構成要素(例えば、ロータ、ステータ、ベアリングなど)間の関係と、それらの相互作用を実験式によりモデル化するモデルも適している。
【0034】
好ましくは、基本シミュレーションとしてFEMシミュレーションが用いられる。略してFEMは、機械をモデル化してシミュレートするために用いられる、従来技術から公知の有限要素法を示す。有限要素法においては、状態データAを境界条件として直接考慮する。FEMシミュレーションは、複雑な構造を有する機械、例えばこの場合モータなどにおいて、特に適している。
【0035】
残存耐用寿命を予測するために使用される前に、ニューラルネットワークEは訓練を受ける必要があり、訓練において、ニューラルネットワークEは、暗黙的に、個々の基本シミュレーションBへの任意の機械の割り当て、つまり、どの基本シミュレーションBがこの機械に特に良好に適しているかを学習する。
【0036】
また、訓練データは、多くの様々な状態データに関して基本シミュレーションが実行されることによって、生成される。まず、状態データの可能な限り現実的な範囲、つまり、例えば動作中に実際に発生する可能性があるエラーや異常などの状態をカバーする、状態データ空間内の領域を選択することによって、状態データは人工的に生成される。その後、この領域に値が等間隔格子に沿って生成される。ここで、状態データは、基本シミュレーション又は有限要素モデルによって処理される、多くの仮想的な異常を含んでいる。残存耐用寿命は、状態データの発生ごとに計算され、これにより、ニューラルネットワークEに関する訓練データとしてのペアデータが各々得られる。ペアデータは、入力データとしての各々の状態データと、出力データとしての各々の残存耐用寿命を含む。これらのペアデータを用いて、ニューラルネットワークEは訓練される。
【0037】
図2は、機械M、例えばモータが動作される、製造プラントPPを示す。機械Mの残存耐用寿命RULが計算され、保全エンジニアに出力されることになる。特に、機械Mに関して特定のシミュレーションモデルが存在しないため、機械Mはしたがって未知である。
【0038】
機械Mにはセンサが設けられている。この場合、センサデータから状態データを導出する上記状態検知モジュールが訓練されたときに用いられたものと同じタイプのセンサである。機械Mについて十分に質が高いセンサ測定が可能になる、センサを設置する適切な位置は、例えば、当業者によって又は規格に準拠して選択されるものである。機械Mは、状態検知モジュールの訓練に用いられた機械と同一の機械クラスに由来するため、構成、性能及び寸法が類似しており、そのため、状態検知モジュールは、機械Mの状態データもセンサデータから導出することができる。
【0039】
状態検知モジュールは、例えば、機械Mのセンサデータを受信し、状態データを産業用クラウドICに転送する組み込み産業用パーソナルコンピュータNBで実行するエッジ計算アルゴリズムとして実装される。あるいは、センサデータを、組み込み産業用パーソナルコンピュータNBに一時的にのみ格納することもできる。この場合、状態検知モジュールは、産業用クラウドICで機能し、センサデータが産業用クラウドICで受信されると直ちに状態データを導出する。
【0040】
産業用クラウドICは、上記の機械Mの特徴データと、機械Mの位置情報及び組み込み産業用パーソナルコンピュータNBの情報とを含む、機械Mに関する機械プロファイルMPを準備している。機械プロファイルMPは、機械Mの情報を有するハイブリッドモデルHMを供給する、産業用クラウドICの機械Mのインスタンスとして機能する。ハイブリッドモデルHMは、図1の基本シミュレーションB及びニューラルネットワークEを含む。状態データに加えて、ハイブリッドモデルHMは、機械プロファイルMPから機械Mの特徴データも受信し、予知保全用ダッシュボードPMDにおいて保全エンジニアに出力される、機械Mの残存耐用寿命RULを、図1に関して説明したように計算する。機械プロファイルMPを構成し、ハイブリッドモデルHMを訓練した後、このプロセスを完全自動で実行することができる。
【0041】
組み込み産業用パーソナルコンピュータNBとして、例えば、SIMATIC(登録商標)Nanoboxが適しており、あるいは、IoTゲートウェイ、例えば、SIMATIC(登録商標)IOT2040なども使用できる。産業用クラウドICとして、例えば、MindSphereが適している。
【0042】
上記アルゴリズム及び計算ステップは、例えば、機械の演算ユニット、プログラマブルローカルコントローラ、サーバ上又はクラウドにおいて実行されてよい。
【0043】
アルゴリズムとシミュレーションの具体的な構成は、センサと機械の技術に依存する。様々なセンサ技術及び機械タイプに関して、従来技術から多くの状態検知アルゴリズム及びシミュレーションアルゴリズムが知られており、これを用いて個々の計算ステップを実行することができる。
【0044】
本発明は、実施形態例に基づいて詳細に図示及び説明されてきたが、開示された実施形態例によって限定されるものではない。他の変形を、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、当業者は本開示から導き出すことができる。また、記載された実施形態例、変形、実施形態及び発展形態は自由に互いに組み合わせられてもよい。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の残存耐用寿命を予測するための方法であって、
前記機械の状態データ(A)に基づいて、各々が前記機械の残存耐用寿命予測(P1,P2,P3)を計算する、複数の互いに独立した基本シミュレーション(B)がコンピュータ支援により実行され、
前記残存耐用寿命予測と、前記機械の性質を示す特徴データ(D)とが、ニューラルネットワーク(E)に供給され、
前記ニューラルネットワークは前記残存耐用寿命予測の重み(F)を出力し、
前記残存耐用寿命予測が前記重みに応じて互いに重み付けされることにより、前記残存耐用寿命予測に基づいて最終予測(G)はコンピュータ支援により計算される、
方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークは線形重みベクトルを出力し、
係数として前記重みを用いて前記残存耐用寿命予測が線形結合されることにより、前記最終予測は計算される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
センサは、前記機械の動作のセンサデータを捕捉し、
前記センサデータから、コンピュータ支援により前記機械の前記状態データは導出される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記センサデータは、捕捉後、クラウドに送信され、前記クラウドにおいて残りの方法ステップが実行されるか、又は、
前記状態データは、その導出後、クラウドに送信され、前記クラウドにおいて残りの方法ステップが実行される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記機械の前記状態データは、状態検知モジュールによって、前記センサデータから導出される、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
機械の残存耐用寿命を予測するための装置であって、1つ又は複数の演算ユニットを備え、
前記機械の状態データ(A)に基づいて、各々が前記機械の残存耐用寿命予測(P1,P2,P3)を計算する、複数の互いに独立した基本シミュレーション(B)が実行されるように、
前記残存耐用寿命予測を、前記機械の性質を示す特徴データ(D)と共に、ニューラルネットワーク(E)に供給するように、
前記ニューラルネットワークにより前記残存耐用寿命予測の重み(F)を出力するように、
前記残存耐用寿命予測に基づいて最終予測(G)を計算するようにであって、前記残存耐用寿命予測が前記重みに応じて互いに重み付けされるようにプログラムされている、
装置。
【請求項7】
前記機械の動作のセンサデータを捕捉するように構成されるセンサと、
前記センサデータから前記機械の前記状態データを導出するように構成されるニューラルネットワークと、を備える、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
コンピュータ可読データキャリアであって、
請求項1~5の何れか1項に記載の方法を実行するコンピュータプログラムが、プロセッサにおいて実行される場合、前記コンピュータプログラムが格納されている、コンピュータ可読データキャリア。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、
プロセッサにおいて実行され、この場合、請求項1~5の何れか1項に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【国際調査報告】